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1961-11-29 第39回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十一月二十九日(水曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君    理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君    理事 辻原 弘市君 理事 横山 利秋君       大久保武雄君    岡崎 英城君       久保田藤麿君    正示啓次郎君       津雲 國利君    永田 亮一君       楢橋  渡君    濱田 幸雄君       藤井 勝志君    坊  秀男君       吉田 重延君    石村 英雄君       佐藤觀次郎君    広瀬 秀吉君       藤原豊次郎君    堀  昌雄君       武藤 山治君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  委員外出席者         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    澄田  智君         大蔵事務官         (主計局総務課         長)      大村 筆雄君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      上林 英男君         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局次長) 吉岡 英一君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         大蔵事務官         (為替局長)  福田 久男君         建 設 技 官         (河川局計画課         長)      柴原孝太郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 十一月二十七日  委員楢橋渡辞任につき、その補欠として正示  啓次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員高見三郎辞任につき、その補欠として楢  橋渡君が議長指名委員に選任された。 同日  委員楢橋渡辞任につき、その補欠として高見  三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制金融証券取引及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。広瀬秀吉君。
  3. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大臣はだいぶお忙しいとのことで、私に与えられた時間も三十分でございますので、質問もできるだけ簡潔にやりたいと思いますが、大臣の方でも一つ明確に、その場のがれということでなしにお答えをいただきたいと思うわけです。  この前の委員会の際に、明年度予算編成基礎となる経済見通しの問題については、大体十一月の末ごろまでに確定をしたい、こういう意向で、大蔵省の大体の見通し経済企画庁の見通し通産省見通しというような形で新聞等にもそれぞれ報道されておるわけであります。あるいはまた日銀あたりでもそういう見解新聞に出しておるわけでありますが、この経済見通しについて、大蔵省としての現在の見通しというものを、はっきり一つここでお示しをいただきたいと思うわけです。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 来年度見通しがむずかしいので、今関係省で検討しておりますが、まだなかなか来年度予算編成基礎となるべき、ほんとう見通しが今固まってないというところでございます。前にも申しましたように、こういうときですから、今までとったいろいろな措置がどういう効果上げてくるかという、効果の現われがある程度出てきたところを見ないと、ほんとう見通しが立ちませんので、私どもはできるだけ見通しはおそくなる方が確実になると思って、今日まで推移を注視して参りましたが、十月の月の様子を見ますと、まだ国際収支回復の問題もはっきりとした形は現われてきておりませんが、将来これは改善されるだろうというようなことが予測できる、いわゆる先行指数——機械の受注がどうなっているか、それによって設備投資が減っていく傾向にあるのか、まだ相当の増勢をとっているのかというような先行きを見る基礎になる先行指数というものの中には、はっきりといろいろな傾向が十月は現われて参りました。卸売物価が下がってくる、信用状による輸入傾向というものが一ころよりずっと落ちてきているということははっきりしておりますし、そういういろいろの先行指数から見たら、よろやくここで基調変化が出てきたという結論を、この十月の月例報告では私どもきめましたが、これが十一月中どうなっていっているかということを、今資料を集めてやっておりますが、十一月中のいろいろな統計が確定するのは、やはりどうしても十二月中ごろ近くならないとわかりませんので、それらの資料を整えてから最後予算編成基礎になる政府見通しというものを、はっきりそのころにきめたいという日程で今作業をしておりますが、的確なことはきょう現在のところ、まだ私どもには自信を持って言えない段階であります。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それではこの前の答えと全く同じであって、何ら進展がない。おそければおそいほどいいということであったら、年を越して来年になって、それからまた、予算編成方針をきめていくというようなことにならざるを得ないわけです、やほり国民は、今先行き日本経済はどうなるだろう、どういう推移をたどるだろうということについて非常な心配をしているわけであります。しかも政府のかけ声によって今日まで、特にことしの一月以降の異常なまでの設備投資の行き過ぎ、こういう失敗も実は政府の施策によって高度経済成長政策というものを非常に誇大に宣伝をし、あたかもバラ色の幻想をまき散らし過ぎたというようなことから、今日の失敗というものが招かれているわけであります。そういうものについて、やはり修正すべき点はいち早く経済指標を修正して、その方向に持っていくというような態度を早くきめて国民にこれを示す、こういう態度がなければならぬと思うのです。そういうことでは私納得できないのでありまして、特に新聞等ではもういろいろ問題が提供されております。大蔵省筋見解はこうだ。一番シビアに問題を考えておるのは日銀のようでありますが、その次は大蔵省だ。その次は企画庁、あるいはその次が通産省というように、大体数中を、それぞれの見通しの的確な数字ではないとしても、その数字を並べてみますと、大体そういう順序になっている。やはり国の財政経済中心的に預かる大蔵省としては、もう少し自信を持ったものをいち早く提示をして、その方向に誘導するというような責任がやはりあろうと思います。こういうことについて、たとえば成長率をどのくらいにすべきなのか。先行き指数というものがまだ相当不確定なものがあるというようなことをおっしゃるわけでありますが、それはそれじゃ一体いつになったら確定できるのか、こういうようなことになりますと、これはおそければおそいほどいい。これでは問題は済まぬわけであります。今非常に国民は、金融引き締めの中にあって、いろいろな経済摩擦の中にあって、先行き見通しがいち早く示されるということ、その示される方向に従って国民も協力しようというような気持もやはりずいぶんあるだろうと思う。いつまでもずるずると見通しを立てないで引っぱっていくということは、やはり国民に対して相済まぬことだと思う。そういう観点からもう一度、重要な部分について大蔵省としてあなたがどう考えておるか、大蔵大臣はこういうふうにしたのだということを一つお聞かせいただきたいと思うのです。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 金融引き締め相当企業段階にまで浸透しておる状態でございますので、生産においてもある程度変化鈍化が出てきてもいいころだと私ども考えておりましたが、十月、十一月の鉱工業生産は依然としてまだ減っていない。前月比、毎月まだふえているという状態でございますし、今の見通しではやはり十二月ごろまで生産は上っていく。十二月前後から横ばいへ行くのじゃないかというのが当初の予想でございましたが、大体そういう当初の予想通りのコースを通るのじゃないかというふうには考えております。そうしますと、来年の下半期ごろから国際収支均衡が期せられるのじゃないかというふうに私どもは今のところは考えております。しかしまた一面、輸入思惑はなかった、私どもは今までそう思っておりましたし、また特別の思惑というものは確かになかったと思います。しかし経済規模がこう大きくなっておりますし、それに必要な輸入として相当原材料輸入も行なわれておりますので、在庫の蓄積というものはやはりある程度尾を引きますので、今の輸入担保率のああいう形の引き締めをやっておりますと、急に材料食いつぶしでしばらく買わぬというような情勢が出てこないとも限らぬ、そういう情勢になっていきますと、ここで輸出伸びるという形じゃなくて、輸人の激減という形で国際収支均衡が上半期にもすでに現われてくるというふうに見る向きもございますが、またそういう可能性も今十分あると私ども考えております。従って、先の見通しを立てる上に、ほんとうならこの十一月、十二月の推移を見ると、私どもはある程度明年度こういう方向経済がいくだろうということをはっきり示して、それに対する国民の協力を得ることもできると思うのですが、この一、二カ月一番重要なときに、まだはっきりした傾向が出ていない。先行きこういうふうになるだろうという先行指数だけが十月に初めてはっきりしてきているという状態でございますので、さっきも申しましたように、できるだけおそくなった方が私どもは確かな見方ができると思います。しかしそれを待ってはいられません。年末に予算編成するという以上は、年末までに私どもは、あるいは少し間違うかもしれませんが、今のところでは政府はこういう見通し考えるという、政府考えだけは予算編成期には確定したいと思ってやっております。おっしゃる通りまだ各役所間でも少しずつの見方の違いがございますし、いろいろ今調整している最中でございまして、私どもは、いずれにいたしましても来年度国際収支均衡という状態が出てくるということに持っていかなければ経済政策にはなりませんので、そういう目標のもとに予算編成あるいは金融政策、いろんな一連のものを、政府はこれから来年度のものを準備したいというので、今やっている最中でございます。ここでその作業が済みませんと、来年の経済伸び率をどういうふうに見るかというような問題もはっきり申し上げられませんので、もう少しその問題はお持ちを願いたいと思います。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵省は、国際収支均衡回復という問題を、短期決戦方向で、できるだけ短期間回復したいという気持を強く持っておられるようでありますが、この点について大蔵大臣はどう考えるのか。それから、その短期決戦国際収支均衡をすみやかに回復しようという気持の中から、大体国民生産伸びを何%ぐらいにしようとお考えなのか。鉱工業生産をどういう%に抑えようとなさるのか。またその短期決戦で大体いつごろのめどを置いて国際収支均衡回復をはかるか。明年度国際収支見通しをどの程度に見ているか。六億ドルに近い外貨をIMFや米国の市中三行あたりから借りるというような、あるいは農産物借款までその中に一億二千万ドル含まれるというようなことも新聞報道されているわけでございますが、そういう問題について大蔵大臣としての考え一つ聞かしていただきたいと思います。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 金融引き締め措置中心としたいろんな措置は、私どもはこれをとるときには相当長期にわたって持続的にやらなければいけないだろうという考えで臨んでおりましたが、しかしこういう措置は、あまりに長引くということはやはり摩擦が多いことでございますし、問題でございますので、なるたけ早くその効果が出て、そうして早目に緩和するという方向が好ましいというふうには考えております。こういう措置をとっていながら、これがいろいろな抵抗があるということで、せっかくとった措置も事実上どんどん緩和されてしまうというようなことになってしまいますと、効果が出てくることがそれだけ長引いてしまうというおそれは十分にございますので、たとえば金融の問題にしましても、設備投資を抑えるという目的から締めておるのでございますから、中小企業運転資金とか、こういうようなものにしわの寄らないような、いろいろな措置というものはとっていく。弾力的にいろいろな措置をとりますが、大筋を狂わせるようなことはしない。金融基調というものはやはりゆるめないで、所期の目的通り政府でやるのでなかったら、この効果の出方がおくれてしまうということを私どもは心配しておりますので、できるだけ効果を早く出して、そうして早く国際収支回復というような事態が見えてくるようにしたいというのが私ども考えでございまして、できるだけ早い方がいいという考えを私どもが持っていることは確かでございます。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その時期をいつごろに押えているか。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 やはり私は、下半期には国際収支回復というものがはっきり出てきたというところまで持っていくべきだと考えております。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 下期に国際収支均衡させたいという気持はわかるわけでありますが、しかしそうなりますと、先ほども重要な発言をなさっておるわけですが、輸入激減することによって、国際収支均衡というものがはかられるということは、激減というようなことでありますならば、やはりこれは問題があろうと思う。あくまで本筋は輸出を伸ばしていくということによって均衡回復するのが経済発展の原則からいって当然のことだろうと思うのです。そういうことになりまして、今経済界におきましても、内需の抑制から輸出振興へというようなことが非常に浸透して参りました。このことは、大蔵省のようにできる限り摩擦を少なくして政策効果上げようというような立場から、短期間にそういう状態に持っていこう、こういうこととその問題をからみ合わせて考えてみますと、一連のこれからとるであろう措置というものが、やはり一般大衆賃上げ、特に労働者階級賃上げを阻止するというようなことや、あるいは個人消費支出というようなものに対する政策的ないろいろな強制的な貯蓄方向消費抑制貯蓄方向というものが強く出されるのではないかと思う。そういうことが企業整備や、あるいは労働者の首切りや賃下げというようなものにからまる危険性というものを私ども非常に強く感ずるわけでありますが、そういう点について、大蔵大臣としてはどのように措置をされていくつもりか、お聞かせいただきたい。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 今私どもが心配しておりますのは、そういうような情勢が出てくるだろうというのではなくて、逆で、今のような引き締め政策をとっておっても生産鈍化というものはないし、まだまだ伸びる力が非常に多い。最近の状態を見ましても、中小企業設備意欲というものはまだ非常に強くて、農林省の窓口で見ますと、農地を転用させてくれ、そうして新たに工場を立てたいという申請というものが、一段とここで多くなっているというのが実態でございます。そうすると、なかなか国際収支の改善というものが長引いてくるということで、全労働賃金がそういうような状態になったり、企業整備というものが大きく社会問題になるような方向というのは考えておりません。むしろ逆で、まだまだ情勢から見たらそういう伸びようとする力が非常に強いということをどう調整しようかというのが私どもの苦心しておるところでございまして、そういう情勢が簡単にくるとは今思っておりません。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 かんじんの経済見通しの問題も具体的にはお答えをいただけないわけで、従って、その問題についても、そういう方向が出ないようにするのだということで、きょう実は私中小企業金融問題を中心にということでございまするので、この問題はこれ以上申しません。  次に、来年度の税の自然増収といいますか、これが約五千億に上り、そのほか専売益金増収やその他の雑収入が二百億、それから繰り越し剰余金七百六十億、約六千億に近いものが新規増加財源として見込まれるわけでありますが、これについて、この全部を予算規模の増大ということに振り向けることはおそらく非常に問題があるわけでありまして、これについて減税の問題が一番大きい問題になるわけであります。税制調査会でも、十二月の一日には、大体平年度千七百億の減税という形で答申が行なわれる予定だ、これは大体確実な報道であります。これに対して大蔵省は、何か千億程度減税にとどめるというような意向が表明されておるようであります。さらに財政法を一部改正して、一千億程度繰り延べ予約方式というようなことをやって、明後年度に使おうというようなことを考えているようでありますが、それらの問題について、特に減税規模を幾らくらいに——大蔵大臣としては税制調査会答申を尊重するという立場に立ってどのくらいにしようとなさっておられるのか。それから繰り延べ予約方式というようなものを財政法改正ということで提案されるおつもりであるのかどうか。この点を一つ明確にお考えを聞きたいのであります。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 税制調査会は、減税規模についても近く答申が出されるところまできておりまするので、十二月に入ったら答申が出るものと思っております。  それから減税についての与党要望というものも政府にすでに参っておりますので、私どもはそういう与党要望税制調査会答申というものを大体基礎にして政府案をきめたいと思っておりますが、今両者の要望も大体千七百億円前後の減税規模を示してきておりますので、政府案そこら中心の案になるのではないかと思っております。今年度は少なくとも税制調査会で検討した体系的な税制改正のもう最後段階へ入った年でございますので、間接税の問題もここで考えますし、中央、地方税税源調整の問題も考えなければなりませんし、また所得税についても考えたいと思っております。ことに中小所得者に対する所得税や、零細企業の製品を含む物品税の問題とか、中小企業に対する事業税、さらにもう一歩減税をしなければならぬと考えておりますので、そこらを勘案いたしまして、相当大幅な減税をやりたいと今立案中でございます。
  15. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 税制調調会では大体千七百億、与党の方では千八百億と言っておるわけです。大蔵大臣としては、少なくとも税制調査会答申の線は減税の総ワクにおいて大よそ大体において尊重される、こういうかまえと了解してよろしいですね。
  16. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体そのつもりでおります。
  17. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それから一千億のたな上げ資金といいますか、明後年度繰り延べ予約方式をとろう、これは当然今の財政法の建前からいけば、十四条の繰り越し明許の概念からは全く反するわけでありますが、そういう方向をとられるのか。それとも私は少なくとも産投会計あたりに繰り入れて、今一番高度経済成長にとってもおくれをとっている社会資本充実というような面、中小企業振興の問題、あるいは社会保障充実、こういうようなものにそれらの金を産投会計を通じて出していく、こういうお考えが最もいいのじゃないかと思いますが、その点についてどのようにお考えですか。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 今、私ども考えていますことは、こういう経済情勢に対処するときの予算でございますので、放漫予算は組みませんし、規模のいたずらに大きいということも問題でありますので、できるだけ予算規模は圧縮したいと思っております。その仕方は一つ減税によって圧縮いたしますし、もう一つはこの金は使わないといって、過去に一回やりましたような、いわゆるたな上げというような考えをもって臨むべきか、そうでなくて予算執行が弾力的にできるような考えをもって臨むべきかということについていろいろ考えましたが、やはり予算執行が弾力的にやれるような措置ということを考えるのがこの際いいのじゃないかというふうな考えを持っています。それでそのことは経済情勢を見て、予算を使わないで繰り延べることがあるかわりに、昭和三十三年でしたか、不況という形が出てきたときには、繰り上げ使用をどんどんやりましたが、予算というものは経済情勢変化するのに、一年間きめたらその通りにやるというようなやり方の方がほんとうは間違いであって、予算規模というものは経済情勢によって相当弾力的に運営できるというような仕組みで考えることの方が合理的だと思いますので、今度のような事態に対処するためには、そういう構想をもって臨むのがいいのじゃないかというような考えのもとに、今予算の査定をいろいろ急いでおりますが、どういうような幅でそういう考え方が織り込まれるかという数字見当は今まだ全くついていないところでございます。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 数字見当を私は伺っているのじゃないのであって、予算規模をそうふくらましたくない、これは基本的に正しいと思います。引き締め基調を堅持しようという段階でありますから、そういう方向は正しいと思います。しかしながら、今日やはりこういうような事態の中で、たとえば繰り延べ予約方式のようなものをとろうとしましても、来年度には各省のどういう費目でこれだけ使うのだ、何々省のどういう費目でこれだけ使うのだというようなことが予算書に上がってしまえば、やはりその政策効果というものは非常に減殺されて、その市場に対する景気刺激という要素は払拭することができないのじゃないかと思います。そういうようなことであったならば、その効果というものはあまり大したことはないのですから、やはり日本において一番おくれている社会資本充実、あるいは社会保障充実、こういうところに金を使っていく、これは国際収支の悪化ということに結びつきません、しかも国民生活のゆがんだ面を正していくというところに非常に重要な意義があろうと思う。そういうような方向に使うお考えがあるのかどうかという考えを聞いているわけです。その点一つ明確にしていただきたい。
  20. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは予算の、いわゆる今まで言われた柱といいますか、そういうものをどう考えるのだということでございましたら、大体基本的には去年の予算編成考え方と同じでいきたいと思います。民間の設備投資が進み過ぎたということになりますと、また政府公共投資がこれにつり合わないという事態になって参りましたので、必要な公共投資はやはりどうかしなければならぬ。それから社会保障面保障政策充実ということはこれは当然やらなければならぬことでございまして、昨年もその方針で臨みましたが今年も同じような方針で臨みたいと思っております。もちろんそういう重点的な予算配分の配慮はいたしますが、その際今言った景気調整的な考え方予算の中にどう織り込んでいくかという構想の問題について、私どもはこれを弾力的に執行できるような余地を作るという形でやりたいと考えているわけでございます。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この問題についてもなお追及したい点があるわけですけれども、この問題はあとで辻原委員の方からも質問される予定でありますので、次に問題を移したいと思います。中小企業金融問題についてお伺いしたいのですが、今日日本経済の最大なガンをなしている、構造的な害悪になっておりますのは、やはりいわゆる経済の二重構造といわれる姿だろうと思うのです。中小企業が貿易の面においてもあるいは国内の総生産の面においても、いろいろな面において相当な地位を占めておる。しかも政府所得倍増十カ年計画によっても将来とも産業界において占める地位というものは変わらぬのだといっておりますが、金融面における政府の諸施策というものは、中小企業において非常に貧しい施策しか持ち合わせがないわけであります。今日、労働センサスにおいて中小企業は大企業の一〇〇に対して五四、あるいは一人当たりの資本にいたしまして三六・四、機械設備にしましても二七・九で三分の一、労働者一人当たりの売り上げ六四・一%、平均賃金で六割、こういうようなきわめて明確な二重構造の姿というものが出ておるわけであります。これというのはやはり産業界における中心といいますか、いろいろ問題を論じ詰めて参りますと、どうしても金融問題に突き当たってくるわけであります。この金融問題の貧しさというものが、こういうような日本経済の二重構造、中小企業と大企業の、明確などこにも例を見ない二重構造の格差というものを生み出しておるのだと思います。大企業は金利負担の面だけをとってみましても大体一〇%程度中小企業は大づかみに言って一八%程度というのが金利負担になっている。金利の面においてそういう格差がある。また資金量においても、これは中小企業の占める地位から見れば、大企業に比べてきわめて少ない資金量でしかない。しかもその間に、具体的な手続やあるいは引き締めというような段階になりますと、さらにそういうものがいろいろな形で、支払いの遅延になったり、あるいは百二十日以上の手形決済の期間が延長されたり、あるいは材料の面を勝手に値上げをされたり、いろいろな形の問題というものが出てくるわけでありますが、そういうものに対して、とりあえずことしの年末金融としては、今まで例を見ない約八百億の手当をやったということはけっこうなことだと思うのであります。しかしながら今日日本商工組合で調査をいたしましたところが、資金借り入れが非常に困難になったというものが六七・二%に及んでおる、あるいは借入金に対する拘束預金の割合が非常にふえたというものが三割も出てきている、あるいは手形の割合が増大をしている、手形決済の期間は九十日から百二十日というものが六、七月の三八%から四四%にふえてきている、百二十日以上の手形決済のものが五・七%から一五%台にきている、これはわずか数カ月の間にこういうような手形決済が延ばされて、中小企業にしわが寄っているという現実が出ているわけであります。こういうような姿に今日なっておるわけであります。そういうものが特に引き締め段階において中小企業には加わってくるわけであります。こういうことで、きのうも銀行局長に伺いましたが、年末は何とか乗り切れるだろうという回答をいただいたわけであります。しかしながら来年の二、三月——ということは二、三月危機というようなこともいわれておるわけでありますが、ここらあたりで一番ひどい状況を迎えるのではないかと思うのですが、その段階において中小企業金融の問題として、年末金融とは別にその段階での手当というものをどういう形で考えられるか。けさの新聞にも一千億の買オペというようなことをいわれておりまするけれども、これは中小企業向けということではありません、全般的な揚超に対する若干の手当という形で出ておるわけでありますが、中小企業金融対策としての買オペなりあるいは政府資金の追加なりというようなものについて、どのようなお考えを今持たれておるか、この点をお伺いしたい。
  22. 水田三喜男

    水田国務大臣 おっしゃられる通り、一月から三月の期間の金融政策が一番大事で、この期間をうまく乗り切れれば、大体いわれておる経済のいろいろな困難な状態を乗り切れるというふうにさえ私は思っておりますので、この期間の金融政策には特別に力を入れるつもりでただいまからいろいろな準備をいたしております。ですから、四千億といわれている揚超期でございますので、買オペというようなことも考えておりますし、また今やっておるような中小企業向け資金の供給のための買オペというようなことも考えておりますし、あらゆる必要な手段は私どもはとってこの一−三月の乗り切りはやって参りたいと思って、今頭を痛めておるのもその問題でございますので、これも必ず何とか善処したいと思っております。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間の注意を受けておりますので、最後に、中小企業と大企業との格差をなくしていくということが高度経済成長政策一つの大きな眼目であるということは疑いのないことでありますが、これに対して少なくとも今日までの金融というものはそういう形には全くきてなかった。ここ三十五年あたりから中小企業向けの設備資金の供給量というようなものも若干目立った形でふえて参りましたけれども、今日なお非常に低位にあるわけであります。今度の設備投資の問題もほとんど大企業の行き過ぎというような形で出ておるわけでありまして、これらのこまかい数字をあげて質問することはきょうは避けますけれども、先ほど申し上げたような中小企業の非常に貧弱な二重構造の姿というものも具体的にあげましたが、これからこういうようなものを解消するために、金融の面において、税制の面において特段の思い切った措置、たとえば中小企業信用保険公庫法ですかに基づいて百五十七億をことしの九月に十億ふやすというような、そういうみみっちいものではない、あるいは二百億くらいの国民金融公庫の出資金を一割かそこらふやすというような、そんなことではない、そういうような政府関係の中小企業向けの金融機関、こういうようなものの出資金なども何倍——二倍なり三倍というような形で、さらに全国銀行なりあるいはその他の民間の中小企業向けの金融機関の場合でも、金利の問題において、もっと金利を下げていく姿、それから資金量というものを今申し上げたように何倍という形でふやしていく、そういうようなものがなければ、日本経済二重構造、中小企業と大企業の格差というものは、絶対に私は直らぬと思います。こういうものについて具体的に今一体大蔵大臣としてどのようにこれらの対策を用意しているか、またそういう方向というものをどういうようにお考えになり、またそれに対する具体的な対策を用意されているか、この点について最後に伺いたいと思うのです。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 中小企業向けの貸し出し構成を見ますと、全国銀行、信託、開発銀行関係五一・五%、それから相互銀行、信用金庫、信用組合、この専門中小企業金融機関が三九・五%、それから政府関係機関が九%という構成になっておりますので、何といっても中小企業金融に対しては、今のところは政府機関以外の金融機関の比重が非常に大きゆうございますから、この貸し出し比率を落とさないという指導がやはり一番大切だと思っております。今回の場合も特にその点を私どもは強く指導したつもりでございますが、市中銀行は非常にこの問題には協力していただいて、今のところこれだけの金融引き締めをやっておりながら、中小企業向けの貸し出し比率を落としていないというような協力を得ておりますので、この点はさらに私どもは特に気をつけて今後指導をやっていく。同時に、政府関係機関の比重も八%台でございましたが、この十二月見込みとしてはようやく九%にいく状態でございますので、この比重は私どもはもう少し上げたいと考えております。これは今御承知のように、来年の国の財政投融資の各省からの要望がちょうど一兆五千億に上っておりますが、原資は私ども今見込まれるところでは八千億をちょっと出るかどうかということでございますので、各省の要望をこれから査定で大体半分に切るという作業を今やっておるときでございます。そういう資金の実情ともあわせて考えなければなりませんので、一挙に何倍にするというようなことはできないと思いますが、できるだけおっしゃられたような方向でこの資金を多くすることには私ども考えたいと思っております。
  25. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 答えが非常に抽象的であるわけですが、時間もありませんので長い時間かかって大臣をとっちめるわけにいかぬのですけれども、とにかく日本中小企業をこれから振興さしていく——今までのやつは今の大臣の答弁にもありましたように、銀行や専門機関というようなものの中小企業向けの貸し出し比率を下げないという、非常に消極的な立場であります。年末金融というようなそのつど主義の立場、こういうようなものから脱却して、画期的な中小企業金融充実、二重構造を解消するための積極的な金融施策というものを、本気になって、思い切ったものを一つ強くやっていただきたい。このことを最後要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  26. 小川平二

    小川委員長 辻原弘市君。
  27. 辻原弘市

    辻原委員 最初に、ただいま広瀬委員から質問をいたしました明年度予算編成にあたって約一千億程度の資金を、当初は何かこれを産投会計等に入れるやの報道も行なわれておったのでありますが、最近に至っては、新しい繰り延べ予約ですか、そういった方式のもとに明年度へこれをたな上げする、こういうことがしばしば新聞紙上に報道せられておるのであります。今広瀬君の質問に対して大臣が答えられました点で、非常に疑問とする点は、一つは法律論としてであります。それは御承知のように、現行財政法はすべてこれ単年度の方式をとっていて、予算というものは当該年度編成したならば、その執行は当然当該年度にこれを行ない終わる、この建前になっておるはずであるが、大臣お答えになりましたのを聞いておりますと、何か最近の景気の動向から、財政でもってすべて景気の調整をはかろうというような心組みをもって、予算というものは必ずしも当該年度執行を終わらなくてもいい、いま少し幅のある、弾力的な運用の方がよりベターであるというようなことを言われたのでありますが、そういたしますと、今まで私どもが理解をして参りました予算編成の、あるいは予算についての厳密な検討というものは、当該年度に限った場合に必ずしも必要ないではないか。言いかえてみると、かなり長期な計画、何カ年かの計画を持ったその上に一こまとして盛り上げられる予算という、そういう性格に変わってきはしないか、こういうことが疑問として出てくるのであります。従って、これは財政法なり国の予算を立てる場合の根本的問題でありますので、いま少し大臣からその見解を明確に承っておきたいと思います。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき言いましたような私ども考え方ほんとうにはっきりやろうとするのでしたら、会計法の問題と触れるんじゃないかと思います。触れても、今後予算の運営というものはそういうふうな方向がいいということでございましたら、私ども会計法を変えるということも考えて臨みたいという考えを持って、今その問題の検討はやっております。しかしそうでなくて、これがそういう考えで貫くことはなかなかむずかしいということでございましたら、現在の予算の運営においても、すでにいろいろなことが行なわれておりますので、会計法を変えないでもやれる範囲内の構想にとどめるということも考えられますし、その点は今私どもが検討中でございまして、まだ結論を出しておりません。
  29. 辻原弘市

    辻原委員 今のお答えからいたしますと、根本的問題に触れるという見解、さらにその前にはその背景としては、予算というものは必ずしも当該年度執行ということに限ったものではない、相当景気調整あるいは経済の何カ年計画にわたっての役割を果たすものという性格に改めたいという大臣のお考えのようにもとれますし、また一つは、そうではなくてやはり単年度方式というものを基本にして、従来やっておったようなやり方でもって本年度もやろう、すなわち財政法の検討に触れずにやっていこう、どちらにもとれるようなお答えでありましたが、けさほどの新聞を拝見いたしますと、十二月一日に開かれる財政制度審議会に、大蔵当局としてはその改正案を準備して、これに諮問をいたしたい、こういうことが構想として発表せられておるのでありますが、この構想は今のお答えとはいささか私は異なっておるようにも拝聴したのであります。この新聞の発表がその通りだとするならば、前段に言われた根本的に改正を加えて、そうして明年度予算に臨むという方針がすでに確定されたもの、こういうようにわれわれは受け取らざるを得ないのでありますが、この新聞発表はこれはどういうことなんでありますか、この点を一つお伺いしたい。
  30. 上林英男

    ○上林説明員 今の新聞記事は推測記事だと思っております。私どもの方で発表いたしたのではございません。十二月一日に財政制度審議会を開きまして、財政法の問題につきまして御議論を願うつもりでおりますが、そのおもな問題点は、御存じのように前国会におきまして財政法二十九条の問題につきまして検討いたすことをお約束申し上げたわけでありますけれども、引き続きその検討をいたすことになるわけであります。ただ、今の御議論になっておりました点につきましては、もちろん財政法の問題点でもございますので、あるいはその際審議になることも考えられるわけでございますが、特に今の問題をはっきりと問題として議論をするとかあるいはそこで諮問をするというのではなく、自発的に委員の方々の御議論があるという程度である、こういうふうに考えます。
  31. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますと、この新聞の記事はさておきまして、今法規課長が言われましたのは、それは質問の主題ではありませんけれども、そうだとするならば、かりに予約繰り延べという方式を予算上とっても、それは必ずしもあなたとしては財政法十四条三の違反にはならない、こういう結論のもとに財政制度審議会が自主的に論議をやればよろしいし、やらなくてもそのことは可能なんだ、こういう前提に立っていると理解してよろしいか。
  32. 上林英男

    ○上林説明員 ただいまの点につきましては、財政自体が経済の動向に応じまして、またそれに適応いたしまして執行いたして参りますというのは、これは財政法の分野におきましても十分可能であると考えております。ただ、今御指摘がございました財政法十四条の三につきましては、今明許繰り越し費といたしまして、あるいは国会の御議決を経ました場合には、その要件に該当いたします場合には、翌年度に繰り越しまして使用することができることになっておるわけでございます。従来もこの十四条の三というものは、もちろん予算年度独立の原則の例外として行なわれておったわけであります。その場合におきまして、もちろん十四条の三におきましては、ここに掲げられておりますような要件があるわけであります。と申しますのは、年度独立の原則に対しまする例外でございますので、その例外にあたりましては、一定の要件に合致いたしました場合に限りこれを執行されることになっておるわけであります。この運用にあたりましては、もちろん従来におきましてはたとえば天候のかげんとか、あるいは用地の補償がおくれたという理由によりまして、明許繰り越し費により繰り越しをしておったのが今までの実際の例でございます。考え方によりましては、もちろんその年度に使用をする建前におきまして、あるいはその年度予算編成に基づきまする経済見通しの建前といたしましては、たとえば行政投資は十分にやっていかなければならぬという建前がある、そこでその年度にできるだけ執行し、それを使っていくという建前の判断のもとに予算に計上する、しかしながら経済の動向が微妙であります場合におきましては、その執行の時期を一時ずらすということも予算執行の過程においては必要になって参る場合もあるわけでございますので、そういうような場合におきまして、明許繰り越し規定によりまして、あらかじめ国会の議決をいただきましたところに従い翌年度に繰り越す、この限りにおきまして年度独立原則の例外であるということもまた言えるわけでございます。ただその点につきましては、確かに年度初めからそういうことを予定しているという点におきまして、若干今までの用地補償がなかなかできない場合もあるいはあるだろうという予想のもとにやっております場合とニュアンスが違うという御議論もあるいはあるかもしれません。もう少し政策的にもそういうことをはっきりと明示すべきではなかろうか、こういう御議論もあるわけでございます。そういう観点から申しますと、あるいはこの際財政法をもう一ぺんよく考え直してみて、そこらの点を政策的にもはっきり打ち出せる、あるいは今までの用地補償とかあるいは気候の状況とかというような客観点な事情をやってきましただけに、主としてこの規定を使って参りました過去の経緯などからかんがみれば、もう少しそういう意図によってこの明許繰り越し費の規定を活用できるという道をはっきりさした方がいいのではないかという御議論も十分あり得ると思うわけであります。そういうような点を勘案いたしまして、あるいは来年度予算編成の基本的な方針あるいは経済見通しの組み方というようなものも勘案いたしまして、もし必要であるならばこれを検討いたしたい、こういう考えでやっておるわけであります。
  33. 辻原弘市

    辻原委員 今るるお話がございましたので、私がただす点についてはそれによってかなり見解が述べられておるわけであります。今もお話のあった通り、基本的にやろうとするならば現行の財政法では十四条三項の繰り越し明許という方針でやらざるを得ない。しかしお話のあったように、従来の運用の慣例と申しますか運用の実態というものは、今論議をせられておるような性質のものでなかったことだけははっきりしている。少なくとも天候上あるいは気象上当然それによって左右されるような経費の支出に関することとか、あるいは事実上努力をしても、たとえば土地改良に対する土地の補償といったような場合、事実上これがおくれていくということが当初から予想されておる場合である。しかし今論議されておるのは、言いかえてみるならば景気の調整を行なうための資金のたな上げ。だからそれを十四条の三でもってやるということには、どう理屈をつけてみたって解釈としてはそこまでの拡大解釈は無理であるということは常識上明らかである。昨年、二十九条の場合これまた明らかなことを大蔵当局は強引に押し切って、そうして最後には政治的解決とかそういうことでこの根本問題の解決を本年度に延ばされておるわけであるけれども、その際も当然予算独立の原則に反する補正予算でもって他の投資会計に資金を繰り入れるといったような一つのやり方は、何といってもわれわれ一般的な法律解釈からは生まれない。大蔵省の法律解釈は非常に便利にできておりますから、どんなことでもやれる。そこに問題がある。従って、そういうことでなくて——それは財政政策としての根本議論はあります。それはそういうような資金のたな上げをやって、その時限においてその金をどう使うかということについての議論は別である。しかしながら、景気を調整する上において、予算規模を押える上において、ある程度の資金をたな上げしなければならぬということが必要であるとするならば、それは取り扱いができるように当然法律はそう正すべきであるというのが私ども考えなんです。しかしどうも今のお話によりますと、法文解釈の中ではかなり苦しい解釈をしておる。この十四条三の繰り越し明許には、その行ない得る理由として明らかに規定されることは二つの事項である。「性質上又は予算成立後の事由に基き」という、この二つの内容によってのみしか、あらかじめ明許の繰り越しを議決することは不可能である。その性質の中にはたして景気調整ということが含まれるかどうか、それはこじつけてあなた方のようなことを申せば、それは何だってできるということになるけれども、しかしそれはおのずから法律解釈の常識というものである。その点に立って考えてみるならば、今あなた方が場合によっては法改正もやるし、あまり議論が起こらなければ、私はむき出して言うならばあまり議論がここで出てこない、あまり問題にならなければ、まあほおかむりしてこれでやっていこうというような考え方に立っておるのではないか。だから二面二様のお答えが、今大臣なりあなた方の口から答弁されておる。そういうことではいけない、必ずすっきりさせて法律問題としては問題ない、そうなれば一体財政論として、そういう資金のたな上げをいかなる方向に使うかという政策論に議論が及ぶような形に持っていくことが、私は大蔵当局なり政府のやるべき方向であるということを申し上げる。そこでその点についてとかくの論議はいたしません、もう少し予算の明確になった暁に、われわれも本格的な議論をいたしたいと思います。  時間がございませんのでその次の問題に移りたいと思います。大臣に伺いますが、貿易収支の十月の実績が発表せられておりますが、それによりましても依然として一億ドルを上回る赤字になっております。従いまして、過去三カ月というのは連続一億ドルをオーバーする大幅な赤字がここに出ておるわけです。そこで私の伺いたいのは、今の時限においてこの三十六年度末における貿易収支の黒字、赤字はどういうことになるか、お見通しはどうでありますか、その点を最初に伺いたい。
  34. 水田三喜男

    水田国務大臣 問題は一月−三月の見方でございますが、さっきちょっと申しましたように、一月−三月の間においても在庫食いつぶしという現象が現われて、国際収支が黒字になるというととも考えられるんじゃないかという見方と、まだそうはならない、やはり一月−三月の間は相当の赤字が続くという見方といろいろございまして、そこら見通しがはっきり私どもにはまだつかめませんので、さっき申しましたような来年度見通しのむずかしさがそこにもあるのでございますが、大体まあ三月までは赤字幅はきわめて縮まることは予想できますが、この赤字は三月まで続くという見通しでございます。
  35. 辻原弘市

    辻原委員 たびたびその月々の貿易収支なりあるいは信用状の結果がわかりましたならば、それぞれこれについて今日まで議論をしてきたのであります。つど大蔵当局は、かなり希望的観測を述べられて、年度末には、これは一番当初のあれからいいますと、小幅ながら黒字に好転するんじゃないか、こういうことも言われてきた。ところがおそらく今大臣最後に言われたやはり一月から三月に至るこの間も、幅は縮まったといたしましても相当の赤字が出ることは私は必至であろうかと思う。従って、年間を通じて、当初予想いたしましたよりもはるかに大きな赤字幅が出ることは、もはや今日疑いない事実になってきた。はなはだわれわれとして憂うべき現象であります。そこで一体これらの赤字の原因は何であるか、その一つの私は参考として伺っておきたいのは、現在までの赤字幅の額それと現在までの対米貿易における赤字の幅、この二つをお答え願いたい。
  36. 福田久男

    ○福田説明員 お答えいたします。十月をちょっと合計しておりませんので分けて申し上げたいと思いますが、上半期におきまして、経常収支におきましては、六億六千四百万ドルの赤字になっております。それに十月が七千六百万ドルの赤字でございますから、合計いたしますと、七億四千万ドルでございます。総合収支におきましては、上半期中に三億五千五百万ドルで、十月が一億六百万ドルでございますから、合計いたしまして、四億六千百万ドル、これが四月から十月までの赤字の実績でございます。
  37. 辻原弘市

    辻原委員 もう一つ、対米貿易の赤字幅は……。
  38. 福田久男

    ○福田説明員 対米貿易で申しますと、上半期中四月から九月までの輸出は五億七千万ドルでございます。他方四月から九月までの輸入が十億三千万ドルでございますから、差引いたしまして、四億六千万ドルの貿易収支の赤字でございます。
  39. 辻原弘市

    辻原委員 今説明のありましたごとく、現在までに至る経常並びに資本取引、その他を総合いたしました赤字幅が四億六千万ドル、これが貿易収支の実情であります。その中で最も大きなウエートを占める対米貿易は、これまた今説明のありましたごとく、輸出輸入の関係を差し引いた額が、ここでくしくも四億六千万ドルと同額になっておる。私のここで大臣にお尋ねをいたしたい点は、貿易が赤字だ、逆調だと騒いでおりますが、その大半の問題というものは、この数字に明らかなごとく、対米貿易にあるということであります。ぴったり合っているのです。だから、対米貿易が少なくとも基本的に是正をされるならば、今日のような赤字は解消せられるということ、この点についての大臣の御見解はいかがですか。  〔「箱根会談では何をしたのか」と呼ぶ者あり〕
  40. 水田三喜男

    水田国務大臣 その通りでございますので、箱根会談が持たれて、論議されたのも、その問題が中心であったわけでございまして、あの会談によって、相当どもは両国の事情というようなものを了解し合いましたために、今後これらの問題の改善のために、さらに具体的ないろいろの相談をするということになっておりまして、現にそういう具体的な問題にまで今入っておるところでございますので、この問題を解決するのが、日本国際収支回復のために、やはり一番大きい問題でございますので、私どもは今後この対米貿易の問題を、今一番政策的にも重要視しているということであります。
  41. 辻原弘市

    辻原委員 今も不規則発言の中に、一体箱根会談では何をしたのだ、まさに私もそうだと思う。皮肉なことには、今月箱根会談が行なわれて、ほとんど各新聞のトップを飾りましたいわゆる日米経済協力の具体的な姿というものが、それぞれアメリカ側の出席者がお帰りになりました直後、一体アメリカ政府はどういうことをおやりになったか。はたしてその日米経済協力の線に従って、日本の貿易収支の根本的な悪結果になっておる対米貿易というものに対して、日本に好意的にそれを改善するための具体的措置がとられましたか。問題は逆である。新聞の報ずるところによりますと、ケネディ大統領は、去る二十一日、今日まで対米貿易の相当大きな部面を受け持って参りましたわが国の綿製品に対して、事実上関税引き上げのような措置を検討することを命じておるではありませんか。関税委員会に対して、賦課金を新たに賦すことがいいか悪いかということについての検討を命じておるではありませんか。それだけを言えば、はなはだ言葉としてはきれいであるけれども、その内幕は新聞各紙にいろいろと報道されておりますから、くどく申し上げる必要はないかと思いますけれども、事実上はケネディ大統領のアメリカ国内における、いわゆる繊維中小企業者に対する妥協政策の現われとして、この機会に——かつてアイゼンハワーの際にも問題が出ましたが、そのときの関税委員会相当議論をし、相当また日本の業界——今の経済企画庁長官をやっている藤山さんあたりはこの問題に相当な関心を持っているということを、当時私は予算委員会等でも質問をいたしました際にお答えになっておりましたが、その際は努力が功を奏したのか、あるいはアメリカの政策日本に対してより好意的になったのか、あるいはアイゼンハワーの力というものが功を奏したのか、いずれであったにいたしましても、関税委員会は賦課金の必要なしという結論を出した。ところが、現在いろいろ観測が伝えられていることを総合いたしますならば、必ずしもこの問題の先行きは楽観を許さない。所管は通産大臣であろうかと思いますけれども、私は、今財政全体に最も焦点的な問題である日本の貿易収支に、こういう具体的な事例がさらに今後悪影響を与えてくるということを非常に心配するのであります。これは箱根会談をやったその直後であります。その月であります。何で一体ケネディがそういうような指示をしなければならぬのか。私は日本国民立場に立って考えたならば、これはまことに不可解きわまる。しかも日本は過去五年間綿製品の自主調整を、かなり無理であったけれども、押えに押えてやってきた。通産省相当強引な指導行政をもってこれに当たってきた。しかも、本年度もがたがた強いワク拡大の要望があったにかかわらず、日本側としては一歩後退二歩後退、ほとんどその要望というものもいれられずして、ワクの規制というものが行なわれた。そういうふうに、日本としては賦課金あるいは関税の引き上げをやらされて、大きなデッド・ロックを作らないためにということで、まあいわばアメリカに頭を下げ通してきておる。にもかかわらず、ワクの決定が終わり、ほとんど日本としてとるべき措置がなくなったようなときに、この問題が持ち上がってきた。結論はまだだいぶ先でありましょうけれども、しかし、このことの動向というものは、これは私は単に綿製品にとどまらないと思う。あるいはミシンにしても、最近のアメリカの規制というものは一段ときびしくなってきている。一体これでもって、今大臣お答えになった、対米貿易が中心でこれを改善いたします、どこに改善しておりますか、ますます悪くなってきているではありませんか。これは一体どうなんです。
  42. 水田三喜男

    水田国務大臣 捨てておいたらもうそういう傾向が強くなることはわかっております。従って、そういう一連傾向を私どもが警戒して、こういうことはやめてもらいたいというような意味でこの会談に私どもが非常に意義を見つけておったものでございますから、従って、この会談のあとでこういうようなことが行なわれるということは、日本側にとって全く不可解だということで、私どもは今強い抗議を申しておりますが、この日米会談に参加した閣僚たちは、みんな確かにもっともだ、こういうことは非常に工合の悪いことだというので、会談に参加して日本問題を十分に理解していっておる方面は、今そういう事態にさせないようにという努力をみんながしてくれている最中でございますので、これはまだきまった問題ではございません。日本側はさらにこれに対しては抗議をいたしますし、向こうでもそういうようなことはすべきでないという世論が今出ておるときでございますのでもう少し末を見なければわかりませんが、これは会談がなくて捨てておいたらもう問題なくどんどんやられるべき傾向だったと私どもは思っております。ですから、あの会談を有意義にするためには、こういうものを一つ一つやめてもらうという努力をするよりほかございませんので、この努力は、私は必ず功を奏すると思っております。
  43. 辻原弘市

    辻原委員 まあ大蔵大臣は、努力が功を奏するということで、その見通しは非常に楽観をせられておるようでありますが、その通りであることをわれわれも期待をいたします。希望しますけれども、しかし諸般の情勢は、私は必ずしもそのように楽観できるものではないということも一つのファクターによって考えております。従って、箱根会談があったからまだこの程度で云々というような大臣の答弁は、これは三百代言にもひとしい。そういうことは箱根会談があったから、ケネディ大統領がそういうことの指示をしようとしておったけれども暫時延ばしたとか、あるいはアメリカの首脳部において、たとえば来日されたラスク長官がこれに対してかなり強硬な反対をされたというのならその努力の成果というものは大いにわかります。しかしそういうことはほとんどない。大臣は、いろいろ来られた人々については同情ある言葉をいただいておるということで非常に喜んでおるようでありますが、この問題をめぐってそういうことが具体的に現われておることを私はまだ聞いておりません。  なお、われわれとしてこの際政府に対して要望いたしたいことは、二十四日の閣議で問題になって、総理がお留守であるので、そこで検討した結果、朝海大使に訓令を発したということが新聞に出ておりますけれども、そういう程度で事を済ます問題ではないと思う。なぜなら、箱根会談があったんだから、これは国際不信義ですよ。何が一体日米経済協力ですか。当然ある程度の抗議をしてしかるべき問題である。一種の不信行為だ。だから現地の大使だけに訓令を発して、それぞれ手を打てなんということは、これは在来どういう場合にでもやり来たった方式なんです。しかし今何とかして四億六千万ドルというあの対米収支の逆調というものを是正しなければならぬということが日本経済の至上命令だとすれば、こういう具体的問題に政府が全力をあげるということがなくて、どうして国民が安心できますか。だからただ向こうの世論に期待をする、来た人は実情を知っているから何とかなるでしょうというような消極的なことではなくて、何か私はもう少し強力な手があるはずだと思う。場合によっては、池田さん、きょう東南アジアから帰ってくるそうですが、引き返してもらってもいいのです。そうして綿製品のみならず諸般の日本の雑貨あるいは機械類、こういうものは依然としてアメリカ国内において規制の強い動きがあるということに対して、国をあげてこれを解決せなければ対米収支が改善せられることは期待薄しであります。何か現在の事態においてもう少し政府として積極的な、具体的な、いわゆるアメリカとの折衝なりその対策というものを講ぜられておるのか、また講ぜられるお考えがあるのか、この点をもう少し具体的に聞かしておいていただきたい。
  44. 水田三喜男

    水田国務大臣 十分講ずるつもりでおります。ただ、あの会談が持たれる前に、事実上向こうの内部ではきまっておったという問題が頭をあげてきておるという、そういうものが二、三見られます。これは確かに形の上では不信行為でございますので、私どもは十分抗議をしましたが、もうあの前に事実上きまっておった、たとえば肥料の買い付けというような問題も、あれがあったからこれはもういかぬといってとめられないところまで実はきまっておったというような問題は、向こうが非常に恐縮して、いろいろそのかわりの策を考えるというようなことで考えている問題もございますし、今の賦課金の問題は、これはケネディ大統領が選挙に出るときの公約として掲げておったというような問題もあるようでございますが、しかしこれが公約であっても、こういう事態になったら日本に対する政策というものは、米国として変えなければならぬというようなことをまた一面向こうでも自主的にやって、向こうの世論を起こすというようなことにも非常に好意的な努力を今向こう側でもやっているときでございますので、どもは過去においてもうきまっておってやらざるを得ないところにきておるような問題についても、今後しばしばいろいろ折衝を要する問題が出ようと思いますが、そうではない、もっと前向きな問題としましては、大体あそこで了解を得た線でいろいろ米国のやり方も変わってくるというふうに私ども考えております。
  45. 辻原弘市

    辻原委員 時間がございませんので、さらにそれに関連する問題等についてお尋ねすることができませんが、こういった問題について、来月の十一日からジュネーブで国際的な会議が開かれる予定になっております。その性格等をいろいろ検討してみますると、これもやはり米国の要請によって、いわゆる各国の自主的な規制というものを日本に——いわゆる日本からの輸入に対して自主的な規制を各国が長期にわたってこれを取りきめよう、こういうことを目的に開かれる会議予定された。その中にいわゆる自主的規制というものでなくて、アメリカ自身が事実上の関税引き上げでもって臨もうということは、これも矛盾もはなはだしいと思う。従って綿業界は、片一方のアメリカで関税委員会の結論が出るまでは、そんな会議に行ったって意味ないじゃないかというふうな発言までしている。ここらに私が冒頭に申し上げました対日米経済協力の具体的な好意ある姿はどこにあるのか、アメリカの対日貿易に対する一貫した政策がどこに現われておるのかということを指摘しておるわけです。この問題は大臣の今後の努力、またある程度の希望的な見通しもあるということに期待をいたしまして、若干時間もあることですから、その後の施策についてはその都度ただして参りたいと思います。  さらにそれに関連をいたしまして、ジュネーブのパレ・デ・ナシオンで開かれておるガットの会議、この動向が非常に重大な問題だと思います。三十五条の援用問題の撤回を強く日本が要求しておりますが、これの見通しも、われわれには突っ込んだ見通しはわかりませんけれども、しかしどうも楽観を許されないような事態になっているように受け取れる。もしかりにこれらAA諸国の援用がそのままの形で行なわれる、しかもそれがそれぞれの自国について実効のあるような方法をとられたならば、日本輸出貿易に対する影響というものはかなり深刻度が加わるんじゃないか、こういうことを心配するのでありますが、この見通しは一体どうでありますか。今、藤山さんが行かれてせっかく努力をされておるようでありますが、一体このガット三十五条の援用問題については、政府としてどういう見通しに立っておられますか、これもあわせて伺っておきたい。
  46. 水田三喜男

    水田国務大臣 いろいろな国際会議で事あるたびごとに日本は三十五条の援用撤回を言っておりましたが、なかなかこの問題は実現されませんでした。ところが、最近になりまして、日本のこの要望をそのまま捨てておいていいかというようなことがようやく関係国の間で真剣な問題となってきまして、これは長くいつまでも放置すべき問題ではなくて、自分たらも解決しなければならぬという方向で今各国が動いておりますので、私は、今回はこれが解決されなくても、近き将来においては解決される方向へいくというふうに曙光は認めております。今度の場合にこれがうまくいくかどうかということについては、私どもはまだそういう確信は持っておりません。私はこの問題はまだ相当困難ではないかと思っております。
  47. 辻原弘市

    辻原委員 最後に、年末資金の金融の問題について、これは銀行局長でけっこうでありますが伺っておきたいと思います。  それは最近の金融市場を見てみましても、市銀の金詰まり等は一段と激化をいたしておるようでありまして、全般として黒字倒産のきざしも出ておりまするし、たまたま年末に至って特に中小企業等の年末資金の支給がもう差し迫ってきておるのでありますが、実情から見ますると、中小企業段階では、いわゆる営業資金、運転資金を、まあ何とか市中銀行その他で無理をして仰いでおりましても、年末資金まではなかなか手が届かないといったような、非常に業績悪化、金詰まりの現象が著しい企業が相当数見られるのであります。これらが、しかしながら年末資金を何とか支出をしなければいけない。この一時のいわゆる金繰りをしのげれば来年度はかなり明るい、こういうところもあるのであります。そういった場合、その資金手当をする者はだれかというなれば、私どもの知っている範囲でも、その任務は労働金庫がかなり負っているのです。ところが労金の最近のまた年末に向けての金融状況を見てみますると、非常にこれまた逼迫をしております。数字でもって簡単に申し上げますると、年末手当、賃金その他の資金としてこの年末に要するものが約八十九億、それから一般的な貸出資金として必要なものが約二十八億、合計いたしまして百十八億強となっておるのであります。これに対して現在手持ちの資金総量は、県なりあるいは市等の預託によって行なわれ得るものが四億七千万、それから自己資金の総量が七十二億、合計七十七億の自己資金しか現在手持ちとして持っておらない。従って、その不足分の四十一億については一体どうするのか。つい最近の一つの実例でありまするが、中小企業のかなりいい企業体でありましても、何としても年末資金を通常の金繰りの中から、たとえば一カ月あるいは二カ月というものを生み出すことはどうしてもこれはむずかしい、それをもしやるならば、早々と不渡り手形を出さなければならない、しかしその資金だけを別にどこかから用立ててくれるならば、かなり資金を出しても来年全般の見通しとしては、それぐらいは長期にわたって返済する力がある、だからこの際労働金庫からそれを貸し出してくれるならば相当の年末資金を出しましょうということで、労資の間の話し合いがつきまして、今それによって労金から年末資金の手当をしようとしている段階です。おそらく中小企業の場合には、話し合いがついた労使というものは現在の段階ではまだ比較的に少ないのであって、おそらくこれからそういう話し合いに入る。その結論は大半のものは年末資金については労金から仰ごうじゃないか、組合もそれについて労金との折衝をするし、また会社側もある種の保証をして、労金からそれを借り出そうということで、労使が円満に話し合いがつくという事例が今後もたくさん出てくると思うのです。ところがそれに対して労金のいわゆる手持ち資金というものが、かくのごとく四十億以上の不足を来たしておったのでは、これは単に企業の問題のみならず、労使の紛争に輪をかけるということに結果は相なる。従って、私たちとして望みたいことは、これは二十七、八年にも前例がございまするし、その前例に従って、この際国としては財政投融資の資金をもって郡市へそれを融資をし、その預託を見返りにして、いわゆる労働金庫の金詰まりを、資金量をふやしてそれら差し迫っておる資金手当の用に役立ち得るように、早急にその手段をとっていただきたいということでありますが、これについて一体銀行局としては過去の例に徴してやっていただく——やっていただかなければなりませんが、現在そういう結論を出されておりますかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  48. 大月高

    ○大月説明員 最近の年末の金融の状況からいたしまして、労働金庫に対する資金需要が非常に多い。それに対して資金が不足をいたしておりますので何らか対策を講じてほしい、特に財政資金を出してほしいという御要望があるということは承知いたしておるわけでございますが、この点につきましては労働金庫に対して財政資金を年末の対策といたしまして措置いたしました事例は、昭和三十二年をもって最後といたしております。先般の伊勢湾台風の際に若干の措置をいたしたことがございますが、大体において三十二年をもって打ち切りといたしておるわけでございます。その根本の理由といたしましては、労働金庫の資金のポジションが大体において余裕がございまして、どちらかといえば資金の運用の面において困っておるというような面が多いわけでございます。まあ年末の特殊な事情がございますので、今仰せのようないろいろな問題はあるかと思いますけれども、われわれがただいま見ておりますところでは、資金不足のために年末の需要に応じ切れないという事態はないというように判断いたしております。現在労働省におきましても、労働金庫に対する需要が実質的にどの程度になるかというような調査も進めておられるようでございまして、そういうような調査の結果も十分勘案して今後考えてみたいと思っておりますけれども、当面さようなことでございます。  それからなお最近の事例といたしましては、各都道府県におきまして、それぞれ地方公共団体の財政資金を労働金庫に預託するなりあるいは貸付をいたしまして、この金繰りの緩和に資しておられるという事例もございますので、もし若干の不足があるというような場合におきましても、そういう地方的な措置をもって足りるのではないか。それから全体としての労働金庫は別といたしまして、個々的な労働金庫については若干の資金の出入りがあるかと思いますが、これは全国の労働金庫連合会において相当の余裕がございますので、その間の彼此調整はつくのではあるまいか、こういうように考えております。ただ今申したように労働省においても今検討中でございまして、具体的な趨勢でもわかりましたならば、またその際にあらためて考えてもいいかと思いますけれども、ただいまのところの状況は今申しましたようなことでございます。
  49. 辻原弘市

    辻原委員 三十二年で打ち切ってということは、これは私の質問に対するお答えにはなりがたいと思うのです。それは三十三年、四年、五年の状況というものは、本年の状況と対比すべき性格のものではない。金繰りがここまで深刻にならなければ、おそらく労働金庫の金繰りというものは、あるいはあなたのおっしゃる通り若干の余裕があったかもしれない。しかし市銀その他の関係が今のように詰まって参りましたので、勢い賃金あるいは手当、こういった種類の資金というものは、あげて労働金庫に集中する傾向が今日ある。おそらくあなた方のお考えとしては、現在そういう傾向がまだはっきり数字として現われてないじゃないか、あるいは賃金等にいわゆる遅欠配というものが具体的じゃないのではないかとおっしゃるかもしらぬが、出るのはこれからなんです。そういうことがそれぞれ当該の企業体としてはすでに明確になっておるものが相当ある。従って、今から年末にかけてそういった需要が一段ときびしくなるということを私は申し上げておるので、その点は三十三年あるいは三十四年、三十五年といったようなそれぞれの年と比較をしてお考えになられては、われわれとしては銀行局は正確に実態をつかんでおられぬのじゃないかという疑問を持つのであります。従って、その点は一つ十分調査をされることはけっこうでありますが、調査をしていただいて、調査の結果、今労働省の方に資料を求めておるということでありますが、具体的に資金の不足を告げておるということが明らかになれば、当然それは三十二年以前の例にならって、私が申しましたような預託の方式を、いわゆる財政資金による方式をおとりになりますかどうか。その点だけを、ここで明確にしておいていただきたい。
  50. 大月高

    ○大月説明員 調査の結果によりましてどのようになりますか、そのときにおいて考えさしていただきたいと思います。
  51. 横山利秋

    ○横山委員 関連。きのうも大月さんにはお願いしておいたことですが、大臣にちょっと聞いていただきたいのです。一例でありますが、二日前に、名古屋の三菱の岩塚工場——岩塚工場というのは非常に大きな会社でありますが、全下請に対しまして、こういう趣旨の手紙を出しました。「十二月支払いは十二月三十日であるが、土曜日でもあり、十二月の支払いは非常に悪くなる見込みである。今から下請は十分打つ手を打ってもらいたい。どたんばになって騒いでも、当社としても何ともならないので、今から十分御検討をしていただきたい。例年は十二月年末繰り上げ支払いがあったが、本年は上記のような現状であるから、従って、三十七年一月十日ごろになる予定である。」こういう書面を全下請に出して、下請の工場はこれを見て、予測しなかったことではないけれども非常にびっくりいたしまして、そして金融対策をさっそくとらなければならぬし、従業員に対する年末手当の支給についても、別な角度で考えなければならぬ、こういうことでずいぶん騒いでおるわけであります。私は、親工場がこういう画一的な一方的な押しつけるような手紙を出すことについて、ずいぶん私は疑問を持つものでありますし、一体こういうやり方で天下りにやれるものかどうか、疑問を持つものでありますが、しかし、いずれにいたしましても、三菱のような大きな工場がこういうことをいたしましたからには、先ほど広瀬君も言っておりましたが、もう察するに余りがあると思うのであります。こういう現状にあって、十二月には加速度的にこの傾向が現実的に浮かび上がってくるのです。ですから、大月さんの言うように、また基準局で調べ、財務局で調べた現状の資料としては、遅欠配なり年末手当の分割支払いは、まだ数字は上がっていないのが当然でありまして、十二月にこの問題が日を追うて激しくなるものと私ども予想をしておるわけであります。ですから、御調査の結果、二つの問題がある。一つはそういうような事例は今ないということ。もう一つは、労働金庫が連合会に他の金融機関に比べて多少の資金量を持っておる。この二点があなた方の御意見のようでありますけれども、最初の方は今ないのがまだあたりまえのことであって、十二月に多くなることである。それから、連合会に資金量があるということは、他の金融機関に比べますと、比較的にあることは私どもも認めます。だから、辻原さんが言うように、そういう連合会からの自己資金をも含めて、労働金庫全体として調整して、あれだけさらけ出して引き上げて渡して、なおかつ四十一億ばかり足りない、こういうのでありますから、その点はよくお含みの上御答弁を願いたいし、御検討も願いたいのであります。大月さんの言う三十二年であれは終わりだという意味は、だれが終わりにしたか、どういう法律で終わりになったのか、私にはよくわかりませんが、現実問題としてこういう予測をもって措置をしてもらわなければ困るのでありまして、現状で判断をしていただいては因るのであります。その点につきまして、一つ、私は大月さんもおわかりになっておっしゃっておると思いますが、少し私と物の考え方に違いがあるような気がしてならないのでありますが、私どもの申し上げておりますことがよくおわかりの上で、もう一度御答弁を願いたいと思います。
  52. 大月高

    ○大月説明員 ただいまのお話の百十四億という数字は、承知はいたしておりますが、この結果については、まだ今のようにいろいろ事態が進行中でございまして、必ずしも正確ではないと思います。そういう意味で、労働省におかれても調査しておられる。もちろん単なる統計的なものではないと思いますけれども、十分事態推移を見まして考えたいと思いますが、基本的には、最初に申し上げましたように、ほかの金融機関に比べまして、労働金庫全体として相当資金上のゆとりもあることではございますし、どの程度のことになるかということにつきましては、十分事態推移を見ていろいろ相談いたしたい、こういうように考えております。
  53. 横山利秋

    ○横山委員 もう一つ大臣、二人で言っておりますことは、おわかりでございますね。それで大月さんの言う百十四億が要るということが適当であるかどうかという点については、それは予測上の数字でございますから、それが絶対だということは私も言えないし、あなたも言えないと思います。しかし長期の資金をたくさん貸してくれというのではないのです。日本経営者連盟でも年末には分割支払いをする、こういって統一的にしておるのであります。ですから、そういうことが労働紛争をますます拡大しないように、この点は大蔵省としても、なし得る限りの努力をいたす必要のある問題だと私は思うのです。大蔵大臣の御意見をちょっと聞かしていただきたいと思います。
  54. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは今銀行局長から言われましたように、事態がわかりましたら一つ善処したいと思います。それからもう一つ、前段の問題でございますが、そういう問題がいろいろ出てくる傾向がございます。と申しますのは、この暮れの三十一日は、銀行は預金は取り扱うが、そのほか一切取り扱わないというふうに全国銀行協会で大体きめたという話でございますが、そうしますと、中小企業もそうですが、特に大企業において、いろいろ困った事態が出てくる。もう今でも手形をよそからもらうというときには、たいていこの日付が十二月三十一日になった手形をもらうのが十二月三十一日に落ちない。すると、支払いがどうしても一月おくれる。このおくれるために、中小企業も非常に困るというような問題も出ておりますので、三十一日は、かりに貸し出しの仕事は一切やらぬことがあっても、そこらの点を考えて、三十日以前に必要な措置はやはり考えないと、いろいろな問題が起こるというようなことを、過日私ども日本銀行にも申しまして、そこらの対策は十分市銀と相談して善処してほしいということを言っておりました。日銀でも、そういう問題は十分私ども考えるということでございましたので、それが考えられないと、今言ったようなことが一般の傾向になる可能性がございますので、これは十分気をつけたいと思います。
  55. 辻原弘市

    辻原委員 今大臣なり大月さんの方から数字をあげて、その結果で善処したいということでありますから、もうこの点は、実情はかなりおわかりをいただいておることと思いますので、今大臣最後に言われましたような年末ぎりぎりに至ってどうにもならぬ、こういうことの情勢にならないように、一つなるべく早く労働省等の数字もとられて、そうして実情に見合った手当をしていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  56. 小川平二

    小川委員長 石村英雄君。
  57. 石村英雄

    ○石村委員 大蔵大臣にお尋ねします。もう通常国会も間近に迫ってきましたが、この三十七年度予算についてはいろいろのお話がありますが、三十六年度の第二次補正と申しますか、そういうものについてどの程度のことを考えていらっしゃるのですか、お尋ねいたします。
  58. 水田三喜男

    水田国務大臣 二次補正の問題については、来年度予算編成方針とからんで、今政府与党がいろいろ相談して、一応考え方がまとまっておりますが、景気調整というような考えのもとに、本年度の剰余金はできるだけ使わないことに大体意見が一致しておりますので、補正予算を組む場合でもできるだけ最小限の補正予算にとどめて、そして今年度の資金を使わずにたな上げするということで、やはりこれが景気調整に対する有力な一つ措置になりますので、そういう考えで私どもは臨みたいと思っております。ですから、補正予算の必要はあると思いますが、ある場合にも、最小限の補正予算ということにしていきたいと思っております。
  59. 石村英雄

    ○石村委員 今年度予算方針は一応それでわかりましたが、しかし具体的にこういうものだけは補正予算を組むんだということはあるのじゃないですか。もちろん景気調整の意味で、金がありさえすればどんどん使うというようなことはしない方針という意味ではわかりましたが、例の医療費の問題だとか、あるいは石炭対策の問題だとか、いろいろあると思います。そういうものについて、大体どの程度考えていらっしゃるか。何も正確なものでなくてけっこうですが、具体的にお示し願いたい。
  60. 水田三喜男

    水田国務大臣 補正予算については今のところまだ全然考えておりません。
  61. 石村英雄

    ○石村委員 じゃ、考えていないということは、やるともやらぬともきめていないという意味なんですか。ある程度は何とかしなければならぬが、どの分をどうするということを考えていない、こういうことなんですか。全然補正予算なんか組まないという意味で考えていないということですか。もちろん災害というような突発的なことがあれば別ですが、現在の時点において補正予算の必要なしと考えていらっしゃるのかどうか、その点をお答え願います。
  62. 水田三喜男

    水田国務大臣 今考えられる問題は、たとえば医療費の問題。計数は現在はっきりとしておりませんので、これからの作業に待つわけでございますが、補正要因としてはこういうものがあるという問題は二、三はございますが、そのほか特にここで補正予算を組まなければならぬと考えられるものはきわめて少ないと思います。
  63. 石村英雄

    ○石村委員 その要因の二、三のうちの一つとして医療費問題をお話しになりましたが、そのわずか二、三の問題のうち、あと一つ二つ、どんなものがありますか。
  64. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答え申し上げます。ただいま主計局におきましては、来年度予算の査定作業にかかりきりでございまして、それを一応終わりましたところで、二次補正の問題を、少なくともどういうものはやらなければならぬだろうかということを検討して参りたいという方針でやっておりまして、今、大臣より御答弁ございました医療費の補正の問題も考えられますが、その後判明いたしました実績等も研究いたしまして、どの程度を組めばいいかというような点も検討していきたいと思っておりますが、そのほかの要因につきましてもその際に全般的に検討して参りたい、かように考えております。
  65. 石村英雄

    ○石村委員 来年のことが忙しくてことしのことはあと回しだというのはおかしな話ですが、議論はやめにいたします。  ところで、その歳出の方について、特に三十六年度予算の歳出は予算通り執行なさる御方針ですか。それとも、ものによっては、こういう景気調整と申しますか、国際収支の悪化に対する対策として何らか繰り延べでもするというようなお考えが具体的にあるのかどうか、この点、お答え願いたいと思います。
  66. 大村筆雄

    ○大村説明員 先般、国際収支改善総合対策の中におきまして、官庁営繕系統につきましては約一割の繰り延べ、その他の公共事業系統につきましては五%の繰り延べ措置を閣議でおきめいただいたわけでありますが、その方針に基づきまして所要の繰り延べ措置を講じて参っているわけであります。そういうものが本年度じゅうに使いきれなくて来年度に繰り越すことに相なるのではないかと考えております。
  67. 石村英雄

    ○石村委員 その一割、五%という繰り延べの分で、大体総額どのくらいを繰り延べ予定としておりますか。大まかなところでいいのです。あまりこまかなところまでは必要ありません。
  68. 大村筆雄

    ○大村説明員 ただいま手元に資料を持ち合わせませんので数字的に申し上げかねるのでございますが、一般会計、特別会計政府機関とそれぞれやってございますので、現在概算いたしまして数百億の金額に相なるかと考えております。
  69. 石村英雄

    ○石村委員 数百億なんですが、こういう国際収支の対策として考えたことなんですから、ことしの予算について何百何十何億ということのこまかな数字は別として、二百五十億とか三百五十億とか、そのくらいのことは、ほぼわかることと私は思う。これは大蔵大臣お答えになってしかるべきことだと思います。
  70. 水田三喜男

    水田国務大臣 財政投融資の繰り延べと合わせて大体六百何十億といってよいかと思っております。
  71. 石村英雄

    ○石村委員 そうすると、ことしの歳入については、当初予算に対してどのくらいの自然増収考えていらっしゃいますか。
  72. 村山達雄

    ○村山説明員 経済が動いておりますのでなかなか的確なことは申し上げかねますが、十月までの収入実績の状況が今後まで続くといたしますと、十月までの収入歩合が補正後予算額に対して六一・一%であります。補正後予算額一兆七千六百四十六億、それに対しまして一兆七百八十六億、六一%、昨年同期の収入歩合が決算ベースで五二・一%、従いまして約九%収入歩合がよろしいわけでございます。これを一兆七千六百四十六億にこの九%だけいいというのでこれをかけまして、さらに補正予算で九百九十七億出してございます。それを加えて、その金額は大体補正後予算額に対する自然増収額であろうという推定をいたしますと、その数字は当初予算に対しまして二千五百八十五億程度になるということでございます。ですから補正後予算額に対しましては千五百八十八億……。
  73. 石村英雄

    ○石村委員 ただいまの数学は租税と印紙収入だけなんですか、専売納付金とかその他雑収入、そういうことは考えていないんですね。
  74. 村山達雄

    ○村山説明員 さようでございます。租税及び印紙収入だけでございます。
  75. 石村英雄

    ○石村委員 全般的にはどのくらいの自然増収考えておられますか。専売納付金も相当大きな金額だし、これが伸びるか伸びぬかでだいぶ違いますし、また雑収入等もことしの日銀貸し出しの膨大なことを思うと、日銀の納付金なんかも少々の金額じゃ済まないと思うのです。そうすると相当増収が雑収入でもあるのじゃないかと思うんですが……。
  76. 大村筆雄

    ○大村説明員 税収以外のその他の雑収入でございますが、目下この点につきましても来年度予算編成と関連いたしまして、本年度の収入見込みを検討中でございまして、まだ正確につかんでおりませんが、最低百億以上のものは増収を期待し得るというように考えております。
  77. 石村英雄

    ○石村委員 どうせ来年のさえやるのですから、ことしのくらいはもっと早くはっきりわかると思うのですが、こんなことを押し問等してもしようがありませんが、私は少なくとも当初予算に比べて三千億以上の増収があるのじゃないかと思うんですが、そうしたものと、それから繰り延べあるいは不用額等で相当な金額が結局三十八年に繰り越される、このように考えていいわけですね。今の繰り延べの分は来年度でしょうが、自然増収の分は三十八年にお使いになる、こういうふうに考えていいわけですね。大蔵大臣、そういう意味なんでしょう。
  78. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういうことになろうと思います。
  79. 石村英雄

    ○石村委員 そうしてこの今年度の終わりごろには、そうしますとずいぶんなお金があるわけなんですが、結局財政収入として揚超として大きなものが吸い上げられたままになるわけですが、予算としては使わないということなんで、結局それを新聞で——きのうも大月さんなんかにお伺いしたんですが、何らかの形で市中にその金を出すというお考えがあるようですが、大臣として具体的に御答弁をお願いいたします。
  80. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは御承知のように国の余裕金を活用する道を考えるべきだというような意見もございますので、私どもは、その場合にこういう資金をどういうふうに活用するかという問題はただいま検討中でございます。さしあたり今までやったことは、この中小企業向けの資金を供給するためのオペレーションというようなことを言って参りましたが、そういう活用の方法も今後は考えなければならぬかと思っております。
  81. 石村英雄

    ○石村委員 この前の、昨年の九月のこの委員会大蔵大臣は三十二年のときのことを取り上げて、あのときの政策は間違っておった、こういう批判をされたのです。たしか九月だったと思うのですが、そのとき私は重大な発言だと思いますから、論争する意味ではなしに、大蔵大臣としてのあなたのお考えをはっきりさしたいと思って関連質問で聞いたのですが、そのとき私がいろいろ関連質問で聞いた結果、私の受け取ったあなたの考え方は、三十二年のときの措置が間違っておったということは、措置自体があのときとられたことが間違いという意味ではなくて、早く外国から金を借りなかったからあんな措置をとらざるを得なかった、それが間違いだ、早く金さえ借りればあんな措置をしなくてもよかったのだという趣旨の御答弁があったと思うのです。ちょうど三十二年と同様な事態に今立ち至っておりますが、そういう意味かどうか知りませんが、日銀名義で二億ドル借りるとか、あるいはさらにIMFということが将来予定されておるようですが、やはり大蔵大臣としては三十二年のときも早く借りればよかったのだ、今度今ごろ借りる話をしておるのはそれほど詰まっていないからゆっくりやっておるのだ、こういうことだと思うのですが、そうなんですか。
  82. 水田三喜男

    水田国務大臣 経済に急激な変化を与えるということは好ましいことではございませんので、これはやはりこの引き締めにしても、徐々に大きい変化を与えないように引き締めていくということをするためには、やはり若干の時というものが必要であろうと思うのですが、三十二年のときのように外貨手当も何もしていなくて、ほんとうにこれ以上輸入が進んだら支払いに困るというどん底に追い込められておって、これをどうするかというような対策を立てるとしましたら、ああいうふうに急激な変化を与えることもやむを得ないという措置をとらざるを得ないということになりますので、私ども国際収支均衡回復の問題にしましても、これを大きい変化なしに、できるだけなだらかにその目的を達しようというためには、その間にしのぎのつくようなこともやはり考えて臨まなければならぬ、こういう趣旨を言ったのじゃないかと思っております。現在私どもは、来年の少なくとも下半期国際収支回復させるという目標で進んでおりますので、従ってその間において、急激なさらに今の措置に輪をかけたようなことをあわててとらなければならぬというような事態になっては困りますので、そういう事態を避けるために、私ども必要な、そこまで需給できる措置を準備しているということでございまして、これは当然必要な措置だろうと思います。
  83. 石村英雄

    ○石村委員 私は何もあなたの九月のときの御答弁を非難する意味で言っておるのでもなし、今のことについてどうこう言っているわけではないのです。ただ大蔵大臣としては、現状をどのように考えていらっしゃるかということ、その現状に基づいてどういう方策を考えていらっしゃるかということを明らかにしたい、こう思って聞いているだけなんです。何もあなたと議論しようとか、いいとか悪いとか、責任問題を追及しようとはこの委員会では考えておりません。私の言いたいことは三十二年のあのときの状況と現在の状況は、やはり同じような状態ではないかということなんです。なるほどまあ名目だけにしろ十五億ドル台の外貨もあるかもしれません。そうしてまた二億ドル手配をせられたということを言うかもしれませんが、そのことは大へんけっこうだと思いますが、しかし現在の金融情勢自体の窮迫度と申しますか、だれがきめたか、どうしてこうなったかということは別問題として、とにかく非常に窮迫しておるという事実自体は三十二年のとき以上ではないかと私は考える。これはいろいろな数字を今専門家のたくさんいらっしゃる大蔵省の方に対して言おうとは思いません。もう今、日銀としてはぎりぎりのところまで実際やっておるのじゃないかと思うのです。三十二年のときに比べれば、はるかに日銀券の発行歩合もその率が大きいわけです。貸し出し率も大きいし、銀行券の発行高も多いわけです。それでいて現実の事態は非常な窮迫なんです。先ほど三菱の例も引きました。従ってこういう事態に対して慎重に考えなければならぬということになれば、大蔵大臣としても別に反対はないでしょうが、ただやりようが財政の揚げ超というものが非常に影響しておるのですから、これをどう機敏にやるかやらぬかということになるよりほかに手はないじゃないかと私も考える。おもむろには輸出貿易が盛んになっていく時期を待つよりしかしようがないとしましても、やはり今の窮迫した事態を——とかにく内部的に金融面において偏在しているんじゃないか、決して、金融が窮屈だといって数的に基本である日銀券の問題をいえば少ないわけじゃない。それがこのように非常に困っている事態が生まれてくるということは、結局内部で偏在し、一部には非常な、やはり依然として拡張するという動きがあるからこういうことになってくる。その内部の偏在と申しますか、アンバランスを是正するということに政府の努力が重点的に行なわれなければ意味をなさぬと私は思うのです。中小企業に金を出すということは大へんけっこうです。出してもらわなければ困るわけですが、下手に出せば、出したからというので、それはもうあそこから出るからいいのだというので片方からとめられることになって、全般的には中小企業はなんのことかわからぬということにならざるを得ない。だからどうしてもアンバランスな資金需要——すべてがめぐりめぐってくることですから、大企業に対してもまためぐって困ってくることとは思いますが、そのアンバランスが起こらないように、そのアンバランスの非常に進み過ぎていることをどうしても押えるという方法を講じるよりほかしようがないと思う。これは私の考えなんで大蔵大臣としてはどうお考えか知りませんが、その点大蔵大臣はどのように——私のように内部的なバランスがあってそれを是正しなければならぬとお考えかどうか、お考えを聞かしていただきたい。
  84. 水田三喜男

    水田国務大臣 今三十二年の問題が出ましたが、三十二年と比べて国際収支の逆調という姿は大体同じでございますが、内容は相当違っておると思います。経済規模の違いもございますし、またあのときには経済基盤というものが十分にできておりませんときでございましたので、あれ以上に経済伸びようとすればいろいろな問題を起こすときに隘路にぶつかってしまっていた。従って電力、石炭、交通、運輸、こういう隘路にぶつかっていましたために、そういう面からもう物価破綻も起きてきたという状態でございましたので、経済均衡的に発展させるというためにはああいう措置をとらざるを得なかった。と同時に、捨てておいても経済均衡発展ということはあの段階ではもう望めない、行き詰まりに来ておったという状態だったと思います。従ってそれに対する措置効果というものも早く現われたということが言えると思いますが、そういうことから見ますと、今度のは少し事情が違いまして、あれ以後電力の開発も進んでおりますし、交通対策も非常に進んで、一連の社会投資があのときとは比較にならぬほど伸びておりますために、あのときのような隘路というものが今ない。従って伸び出すというと壁にぶつからないで、どんどんまだ伸びていく。ではほっておいてももうとまるようなところへいくかと申しますと、今言ったような隘路がないということ、従って物価破綻という現象も出てこない。今過熱々々と言われますが、もしほんとうの過熱であったら物価が今のような形ではあるまいと思います。卸売物価は昨年に比べて上がりましたが、諸外国のこの二、三年の上がり方に比べたら日本卸売物価はまだそう上がっておる国ではありませんし、この程度卸売物価でございましたら、まだ物価が破綻を来たしておる状態ではございませんので、捨てておけばもっと設備投資にしろどんどん伸びるという状態、そういう環境に今あると思います。しかしそれをそのままにしておいたらどうなるかといいますと、伸びる力は持っておっても国際収支の問題を起こし、外貨からの制約にぶつかっておりますから、その面から私どもはこれをここである程度抑えなければいかぬという必要に迫られて今度の政策をとったということでございます。捨てておけばどんどん伸びるときにこれを抑えるという措置をとったわけでございますから、その効果の期待という面におきましては三十二年のときよりも今の方がよほどむずかしいところにぶつかっておるのではないかと私ども考えております。従って、なかなか安易な考えでは臨めない、今の措置を緩めるというようなことを考えることはできないという考えで私ども臨んでおりますが、今あなたのおっしゃられたように、これだけの金融引き締めをやっておりながら、なおかつさっき話しましたように、まだ設備投資意欲が強い。大企業の方は大体私どもの行政指導やそのほかのいろんなことによりまして相当これが調整されておりますが、逆に中小企業の方面に投資意欲がまだ非常に強い。さっき話しましたように農林省あたりから、どうして急にみんな土地を転用したい、工場敷地を作って工場を建てたいという真剣な欲望を持って申請して来るのがなぜ、こんなにここへきて多いのだろうか、これをどう考えるかと言ってくるくらいにまだそういう面が多いときでございますので、私どもはひとり大企業の設備投資を抑えるというだけに終始できません。やはりこの際そういう中小企業方面の投資意欲についても適当な調整を考えなければならないというふうに考えておりますので、そういう点で政府のやり方としては、私は三十二年のときよりも考え方によってはむずかしいとすら思っておることでございますので、必要な金融緩和、運転資金というものについての配慮は十分いたしますが、金というものははっきり分けられるものでございませんので、ただ困る困るということによって、参考にこれを緩和するという方法をとったらまだ非常にあぶない問題を持っておりますので、その辺を十分に考えながら、私どもは必要な金融措置をとりながら、同時にやはり設備投資の行き過ぎは押えるという引き締め政策は続けていかなければなりませんので、そこらが非常にむずかしいことでございますが、そういう考えでまだまだここ数カ月の間は私は基調をゆるめないでやっていかなければ、目的は達せられない時期じゃないかというふうに考えております。
  85. 石村英雄

    ○石村委員 大蔵大臣の苦衷はよくわかりますが、今まで私たちは、こういう情勢の前に、政府方針として、ばく然とかもしれませんが、考えを聞いて理解しておったのは、大企業については抑えるが、中小企業設備投資のようなものは中小企業の体質改善という意味——自由化を控えて特にやらなければならぬことだから、押えないというように理解しておった。ところがただいまの話だと、中小企業設備投資意欲も旺盛だから適当に調整する、適当という言葉を使えば何をしたってかまわないわけですから、それっきりかもしれませんが、初めて聞いてちょっとびっくりしたように思うのです。やはり今度いろいろ中小企業金融対策をせられても、設備資金についての対策というものは、控えられるという御方針ですか。運転資金についての対策は立てるが、設備投資に使うような資金としては、中小企業にもこの際は抑えていかなければならぬ、そういう御方針で臨まれるわけですか。
  86. 水田三喜男

    水田国務大臣 いや、そうではございません。中小企業の必要な合理化投資ということは、私どもは特に押える考えは持っておりません。むしろ中小企業こそが体質改善のための、特に自由化を控えて設備革新をやってもらうときでございますので、この点を一から十まで押えるという考えは持っておりませんが、特に最近新たに土地を求めて工場を作るという計画の中には、これがほんとう中小企業の合理化投資であるのか、そうじゃなくて、ただ今の設備投資を抑えても、御承知のように消費というものが今は減退しておりませんので、こういう趨勢に対処するために、ただ今と同じ程度の設備をもう一カ所拡張するというようなものについては、これはこの段階においては、ある程度調整すべきものだというふうに考えておりますので、金融だけでこれを締めるというわけには参りませんし、また中小企業に対して行政指導ということは実際にはむずかしい問題でございますので、新たに土地を求めようというような、たまたまそういう申請が出てくるようなところを押えて、農林省においてもその辺の吟味を十分にしてもらうというような措置を今とり出しておるというところでございます。必要な合理化のための設備資金を、私どもはいたずらにに押えようとは考えていない。むしろ中小企業にはもう少しやってもらいたいと当初考えておったような気持は今でもまだ持っております。
  87. 石村英雄

    ○石村委員 気持はやってもらいたい。一方じゃやってもらいたくないというようなことで、不適当なものは、いかぬものはいかぬという同じような意味の言葉になってしまって、これ以上この問題をやったってしようがありませんので、次のお尋ねをいたします。例の東芝あるいは八幡というものの増資を繰り延べさせるということで、それに対して日銀の融資を考えるというお約束を大蔵大臣は関係者になさって増資の時期をずらさせた、こう新聞で見ておりますが、その通りでございますか。
  88. 水田三喜男

    水田国務大臣 第四・四半期はさっき申しましたように金融的には一番むずかしい時期でございますので、この期間に大企業の増資が集中するというようなことは、どうしても避けてもらわなければならぬと考えて、いろいろ業界の自主調整をお願いしておったのですが、これはなかなかむずかしい問題でございますので、私どもが見まして、特に大企業の増資を二カ月程度繰り延べてもらう、そして第四・四半期をはずれて四−六の期間にずらしてもらうことを要請したわけですが、各社も政府考え方に賛成してこれに協力するという態度をとりまして、この点はうまくいきましたが、しかし今後増資するという計画をする会社に対してならこれは問題がございませんが、すでに増資計画を発表してしまって、もういろいろな融資でも何でも進行しておるというものに対して、ただ機械的に待てというわけにも参りません。会社の実情を聞きますとすでに増資を当てにして一部の融資はやってしまっておるというようなところもございますし、そういうものをどうするかということは、当然増資の繰り上げをやる会社にとっては大きい問題でございますので、これを何にも措置しないというのでしたらその会社は大へんなことになるという事情にございますので、すでにいつ払い込みをとる、そのときに返済しますと言って借りてある金を、二カ月延びたからといって越せないものではありませんので、二カ月その返済を銀行側に待ってもらうとか、あるいは二カ月間の最小限のつなぎ資金という問題をどう見るかというようなことは、日銀やその会社の取引銀行においてそういう点を考えるということは当然だろうと思います。そういう点は一応関係者が考えるという了解のついたことは事実でございますが、別にそれを約束するということを条件にこの増資調整をやったというわけではございません。協力してくれるならほんとうに困るそういう問題についてはいろいろ金融界も協力してやろうということを関係者できめたというだけでございます。
  89. 石村英雄

    ○石村委員 その関係者が問題なんですが、あなたとあるいは八幡、東芝の重役とだけの関係者なんですか。それとも銀行さらに日銀そういうものを含めての関係者の間で話し合いができた、こういうことなんですか、その関係者の範囲を伺いたい。
  90. 水田三喜男

    水田国務大臣 関係者となりますと、やはり一番大もとは日銀だろうと思います。ですから日銀もこの際大局的にそういう要請に協力するという態度をとってくれるなら、その最小限の問題については銀行とも十分相談して考えましょうということでございます。
  91. 石村英雄

    ○石村委員 こんなことであなたに、日銀が一役買っておるだろうとかなんとかいうことを問い詰めてみてもしようがありませんが、そうすると株払い込みの増資を延ばさせたということは、結局資金的には何らの変更はない、これは一般の個人あるいは会社から払い込み資金を取るかわりに、日銀から印刷局に印刷させて出てきた日銀券をもってそれに充てるということで、考えようによると、むしろ金融引き締めでなくて、ここで大いになだらかなデフレにする意味で、一つ金融をゆるめようという一つ方針を、この際わずかかもしれません、何百億かもしれませんが、おとりになった、こういうように理解していいのですか。それともまだほかの意味があるのですか。
  92. 水田三喜男

    水田国務大臣 私ども設備投資を全部押えてしまうという考えでなかったことは御承知の通り設備投資というものをできるだけこの三十六年度繰り延べさせようという目的で、今までいろいろな行政指導をしてきました。その結果計画自体は認めるが、繰り延べるというものもございますし、計画自体を削減して縮小させたところもございますし、これはまちまちでございますが、今の大企業の設備計画などは審議会にかかってある程度縮小させた計画でございます。この計画は実施させてよろしいものでございます。ただ、この実施は三十六年度をそれてやってもらいたいというのが私どもの趣意でございまして、ですから日本経済としては必要なものでございますからやめろというのじゃないが、できるだけあとへこの設備投資を延ばしてもらいたいというので、この趣意を貫きますことと、もう一つはさっき申しましたように、四千億の散超があるだろうといわれている第四・四半期に増資集中というようなものをやったら、この増資圧迫のためにいろいろむずかしい事態が起きることは目に見えておりますので、この時期を避けさせることが当面必要なことだと私ども考えましたので、そういう意味から増資調整をやったものでございまして、将来必要な設備投資はやらなければなりませんし、やるための必要な金はいつかは使われるものでございますが、この期間に増資されるのが困るという問題があったものでございますから、時期をずらしたのであります。これは大へんなことでございまして、決して同じことじゃないかというようなことにはならぬだろうと私は思います。
  93. 石村英雄

    ○石村委員 もう時間がありませんからやめますが、私も同じことじゃないと思うのです。ただ違うのは、私は日銀から金を出してやらせることが違うのだと思う。その方がむしろ今の金融問題については違いが大きいことだと思うのですが、これはこの程度でやめておきます。
  94. 水田三喜男

    水田国務大臣 誤解があるといけませんから申しますが、たとえば二百五十億の増資をやる、この計画がかりに延びたにしましても、たとえば八幡、富士において二百五十億の金がいつ要るかという問題を見ますと、すぐには要らない、大部分はすぐには要らないという実情でございますので、計画しちゃった以上あてにした金で、これだけはなければ困るという額はきわめて僅少の予定でございますから、二百五十億延ばされたから二百五十億金融で見てやるということじゃございませんので、見てやる部分はきわめてわずかだということが私どもの計算では出ております。その点は誤解のないように御承知おき願いたいと思います。
  95. 石村英雄

    ○石村委員 きわめてわずかとおっしゃるのですが、今度の融資の具体的な数字を言って下さい。
  96. 水田三喜男

    水田国務大臣 私の聞いたところではほんとうにきわめてわずかでございます。
  97. 石村英雄

    ○石村委員 ほんとうにきわめてわずかといっても、千円もきわめてわずか、十億もきわめてわずか、百億もきわめてわずか、こういうことはすべて相対的な言葉ですから、すべてあるものよりも大きいとか小さいとか、多いとか少ないとかいうことでないと、きわめてわずかじゃわかりません。しかも日銀がこれについて見るという大きな問題がある数字です。百万や二百万なら東芝や何について日銀が見るということはないと思う。やはり日銀がうしろで見ると言うからには、相当な金額でなければ言わないと思うのです。大きな金額から見ればきわめてわずかかもしれません。しかし比較するものによっては大へん大きな金額かもしれません。日銀がうしろだてとしての金額、きわめてわずかというのは幾らですか。
  98. 水田三喜男

    水田国務大臣 私どもはもう少し大きい金額になりはしないかと想像したのですが、ほんとうにきわめてわずかで、一、二割いくかいかないかの程度のものです。
  99. 武藤山治

    ○武藤委員 関連。大臣に参考までにちょっとお尋ねしておきたいのですが、今日の国際収支の悪化を招いたのは設備投資の増大であることは常識なんですね。そこで、今日本に会社と名のつくものが大体四十三万あるそうですが、一億円以上の資本金を持つ会社の設備投資をした金額、大体どのくらいになりますか。あるいは本年度計画でもよろしゅうございます。
  100. 水田三喜男

    水田国務大臣 ちょっとその数字を今持っておりませんが、普通、銀行を通じて計画調査したり何かしているのは、百五十社とか何とかというものをとってみて、それからそのほかの類推金額を出したりいろいろなやり方をいたしておりますが、一億以上というもので、特に調査した資料はないんじゃないかと思います。
  101. 武藤山治

    ○武藤委員 私どもがいろいろ資料を調べてみると、一億以上の会社が日本全国で千七百五ある。そのうち大体二十億以上の資本金の会社は、今日の設備投資が非常に大きな部分を占めておる。会社総資産、そういう面から見てもそういうでかい企業は大体七割を占めておる。そういうところの設備投資を個別に徹底的に行政指導をやって、できるだけ中小企業や商店や一般大衆の犠牲を少なくして、こういう経済危機というものを乗り切るのが私は最も公平な措置だと思う。ところが今の政府のやり方を見ておると、大企業は以前に計画を立てたから、この設備計画だけは何とか方法を講じてやらなければならぬといって、こっそり日銀から金を出したというようなことをやったのでは、国際収支をこういうように悪化せしめた一番大きな中心に目を向けていないという気がする。これでは非常に不公平なやり方だと思う。中小企業の諸君がこういうやり方を聞いたら憤慨して今の政府を支持しません。そういう点千七百五の大資本中心設備投資抑制するという具体的な措置をもっと考えなければならぬ。私はそう思う。そういう点について大臣どう考えますか。
  102. 水田三喜男

    水田国務大臣 ごもっともでございまして、それをやらないで、たとえば設備投資抑制するために、金融引き締め措置ということだけでそういうことをやろうとしましたら、これはしりが抜けて、そちらの方はどんどん資金を使うのですから、金融引き締めたしわが、全部中小企業に寄ってしまうということになりますので私どもはそれを恐れた。金融引き締め政策を早くとれというような世論もずいぶんありました。皆さん方からも国会でだいぶ言われたように思いますが、それをすぐとるとしますと、その前に準備がやはり要る。まず大きいところの設備投資を個々に抑えてかかるというような行政措置を先にやっておかないとむずかしい問題になると思いましたので、ことしの夏はもっぱらその仕事を私どもはやりました。銀行を通じて各大企業の設備投資資金面からこの投資計画を変更させたり、いろいろの指導をやる、また通産省も合理化審議会を通じてそれらの準備を全般的にやるというような措置を先行させておいて、それから公定歩合の引き上げ中心にする一連措置をとるということをやったのでありまして、そういう点を私どもは十分承知して順序をつけてやったつもりであります。
  103. 武藤山治

    ○武藤委員 大臣は順序をつけてやったと言うのですけれども、具体的な資料を見ませんと信用できませんから、たとえば先ほどの答弁などを聞いておっても、中小企業の投資まで抑えるという考えにならなければならぬ、そういうようなことを言ったと思うと、今度はいや必要なものだけは認めるのだ、新規に土地を買う投資は認めないのだ、どうも大臣の答弁に一貫性がありません。少なくとも二十億以上の資本金を有する大会社の設備投資計画抑制したという具体的な資料をこの次の委員会までに御提出願いたいと思います。
  104. 水田三喜男

    水田国務大臣 二十億以上というので調査ができるかどうかはわかりませんが、前に申しましたように、代表的な主要企業の百五十社の設備計画をどういうふうに抑制したかというのは、最近実態調査をいたしましたので、これによって約八%今のところは抑制されている計算が出ておりますが、まだ今進行中でございますので、三月までには当初ねらったように一割の抑制はできたということになるのではないかと私ども考えておりますが、今まで調査した結果でございましたら、この資料はお出しできますが、二十億と切られると、ちょっと間に合わないと思います。
  105. 小川平二

    小川委員長 堀昌雄君。
  106. 堀昌雄

    ○堀委員 時間が八分ばかりしかありません。この前に私は十二分やらしてもらって、臨時国会以来都合二十分しかやらないというようなことで、大蔵大臣と論議をかわすことはできませんが、次会に一つ大臣委員会の権威を高めるためにゆっくりと御出席いただくという前提のもとに、簡単に一つ伺います。  きょう一番私が伺いたかったことは、先ほど石村さんがお触れになった例の八幡、東芝等の増資繰り延べに関して大蔵大臣が直接これらの社長と話し合った中で、そのあとの融資のめんどうを見るという話が出たという点なんです。日銀法ですか、大蔵省の銀行法ですか、こういういろいろな問題で見ますと、どうも私は今の金融行政というものが一体どこできまって、どこがやって、どうなるのかという点にいろいろな疑問があるわけです。時間がありませんからこの問題には触れませんけれども、ただ一点だけお伺いをしておきたいことは、大蔵大臣がそこでそういうつなぎ融資を約束されたという場合には、日銀との関連はどういうふうになるのかということです。そうして日銀が市中銀行に対して貸し出しをする場合には、それはひもつき融資のような格好、別ワク融資というような格好で、銀行にその分だけを別ワクで与えるということを考えておられるのか、その点だけを一点……。
  107. 大月高

    ○大月説明員 ただいまの問題、解釈の問題、考え方の問題でございますので事務的にお答え申し上げますと、大蔵大臣といたしましては融資の約束をした事実もございませんし、また約束をいたしましても、日本銀行ないし市中銀行はこれに拘束されるという建前のものではございません。また日本銀行が融資の約束をしたという事実もございません。もちろん一般の企業に対する融資は日本銀行がやるものではございませんので、市中銀行が実行するものでございますので、日本銀行が約束する筋のものでもない。これは非常にはっきりしておる事実でございます。それで今度の問題の考え方につきましては、先ほど大臣からお話がございましたように、増資をやるについては金が必要だ。それを二カ月繰り延べてほしい。その間の金繰りがどうなるかという事実があるわけでございますが、これは当然その繰り延べという問題があれば問題である。それでもちろん大蔵大臣といたしましても、そういう事実があるということは十分御承知の上の問題ということでございますが、さてそれをどういうように考えるかということになりますと、増資の繰り延べをするについて金融の問題があるということでございますので、日本銀行としてもその事実を十分承知してもらわなくてはいかぬという問題があるわけでございます。そういう意味でこの問題については、日本銀行当局は繰り延べの事実があるということは十分に承知いたしております。  それから次に市中銀行といたしましては、これからずっと先の話でございます。数カ月先の話しでございますので、そのときそのときの個別の企業の金繰りを見まして、融資をするかしないかをきめるという意味で、具体的な数字はいまだ申し上げ段階でもないと思いますし、また事実確定しておらない。しかし見通しとしては先ほどお話がございましたように、増資の金額に比べましてそう大きい数字にはなるまいというように推測されておるわけであります。それでは市中銀行がそういうことでもし融資すべき金額ということになりまして融資する場合に、日本銀行がどういう態度をとるかということになると思いますので、その場合は増資の繰り延べがあったという事実を承知した上で市中銀行から借り入れの申し込みなり、あるいは貸してもいいかという相談があった場合に、そういう事実があったということを承知した上で査定をするだろう、こういうことだと思います。  それでは、増資の繰り延べをやっても設備の抑制という趣旨にかなわないじゃないかという問題につきましては、これらの企業は産業合理化審議会の審議の対象になっておりまして、いつでも繰り延べをやるということはきまっておりまして、そういう繰り延べを実施いたします前提のもとに金融考える、しかも問題になるのは大部分運転資金の問題であろうと思いますので、むしろ設備投資というよりも、どのくらい在庫があり、どのくらい金繰りの必要があるかというようなことを見て考える、こういう性質のものと考えております。
  108. 堀昌雄

    ○堀委員 今の答弁を聞きますと、大蔵大臣は別に何にも約束しなかったということにならざるを得ないということです。全部約束はできないことになっておる。そうすると一体大蔵大臣、さっきそういうふうな取り扱いをするようにきめたと言われたが、それはうそですか、何にもやらなかった、そういうことを言わなかったのか、今、銀行局長のお話でいったら、大蔵大臣として約束できるものは何もないじゃないですか、どうですかそこは。
  109. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき言葉が少し足らなかったかもしれませんが、申しましたように、金融をどうこうするから繰り延べろというような要請をやったんではない。繰り延べの要請にまず応じてもらって、もらったあとそういう問題が出ることをわれわれは承知しておる。これについてはそのままほうっておけないことだろうから、これはわれわれとしても考えるということを言ったわけでございますが、それではどういうふうに考えるかと申しますと、さっき言ったように何といっても最後日銀の問題になろうと思いますが、日銀がどうこうするというのではなくて、直接的には市中銀行がこの金融をやることになるでしょうが、その場合にぎりぎりにしぼって繰り延べをやったことについてこれだけのことは何とか見てやらなければいかぬというようなものがきまってくるでしょう。きまってきた場合にほかの全体の金融のやり繰りで何も日本銀行に借りに行かなくても済む場合もあるでしょうし、どうしても銀行としては済まないで、これくらいは日銀査定のときに見てもらわなければならぬという問題も出てくると思います。それで出てくるからそういう問題はあるかもしれぬが、あらかじめ承知しておってもらいたいということは当然でございまして、銀行局長が言われたように、日銀もそういう繰り延べについては各社にあるということを承知しておるということでございますから、幾ら、いつ融資するとか何とかいうものがきまっておる問題ではございませんし、幾ら融資しますということを約束したというようなことも全然ございません。
  110. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんから触れませんけれども、私は追って委員会日銀の問題、大蔵省金融行政に対する問題、市中銀行の金融に対する根本的な問題を大臣にゆっくり伺ってみないと、何か心の中が混乱しておるような感じがしてなりません。それはそこまでにいたしまして、あと一つだけ伺っておきたいことは、実はこの間第二室戸台風がございまして、大阪地区が非常な被害がございました。最近は伊勢湾に来たり、あるいは大阪に来たり、来年はあるいは東京に来るかもしれぬという、日本は最近台風のコースが少し東にずれてきておって、大都市に集中的に被害をもたらす傾向が強いわけです。そこで見ておりますと、東京とか大阪とか、こういうところは地方財源が豊かであるから、地方がやればいいではないかというような空気が政府の方には強いように見受けられるわけでありますが、この問題の一つの土台になっておるのは、私は地盤沈下という問題が非常に大きな問題になっておると思う。地盤沈下はなぜ起こるかというと、工業用水の工場によるくみ上げであります。工業用水のくみ上げの量は生産性に応じて上がってきておるために、生産が上がれば上がるほど土地が下がるという結果が出てくる。ところがその生産に見合うところの税収は、国が法人税として吸い上げるのであって、地方の固定資産税は、必ずしも生産が上がればその固定資産税が上がるというわけにいかないという因果関係があるわけです。  そこで、基本的な点だけ伺っておきたいのですが、一体大蔵大臣は、この問題について、当然主要なる産業地帯における地盤沈下と、台風に対する災害については、国として相当の責任を考える必要があるのではないかと私は思いますが、その点についての大臣の基本的な見解を伺っておきたいと思います。
  111. 水田三喜男

    水田国務大臣 防災対策は特に大都市において必要だと思います。そのために東京も大阪も年次計画を立てて、防潮堤の問題も早く善処したらいいということで、特に両市は特別の計画を立てさせて今それを実行しております。その場合、ただいまのところでは東京、大阪については国が三割の補助をやってやる、それで工事を急ぎなさいというようなことになっております。それで、今回の台風の結果から見ましても、もう少し防災対策を強化する必要がありはせぬかと私ども考えますので、特に大阪に対しましては、今年度さらに何億かの追加工事をやったらどうか。大阪もやりたいと申しておりますので、それをやるについては、今年度は特に計画以上に多くやるとするなら、起債において政府考えようという一応の約束を今してございます。これがどういうふうにいくか、その後の結果は聞いておりませんが、今年とりあえずそういうことをしましたにしても、来年度からこれをどうするかという問題は当然出てきますし、また現に出ております。これはこれからの問題でございまして、補助率をもっと上げるべきだという意見もございますが、この防災対策と申しますと、大都市だけじゃなくて全国的な問題でございますので、その場合に国の補助率をどうしたらいいか、富裕県と貧弱県に対するやり方は当然違っていいでしょうし、富裕県がかりに補助率を少なくするという場合には、将来の財源から見て余裕はあるのですから、それでは富裕県に起債の充当率を多くしてやろうというような問題も起こるかもしれませんし、その辺の均衡をどういうふうにするかということについて、今私どもは研究中でございます。この予算編成最後のときまでには、この問題をはっきり具体的にきめたいと思います。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 もちろん検討中でしょうが、私はただものの考え方ですね——今おっしゃった防災は全国必要なのですが、その災害は自然的な災害の場合と人為的に起こっている場合とがあります。もちろん工業用水道のくみ上げを制限しなければならぬという問題が次にくるでしょうが、現実にはそれは工業の生産性と見合って上がっていって、国が税収として吸い上げているという事実があるから、そこで私は災害は忘れたころにくるといいますけれども、急がなければならぬものはやはり急いでやる。急ぐためには、やはり国で補助率が幾ら上がるとかどうとかということだけでなく、もっと真剣に考えていただく必要があるのではないか、こういう感じがしますから、そこで今緊急対策等が出ておるのについて、もう少し大蔵省側としても——この損失は莫大なんですよ。きょう時間があれば少し大阪地区あるいは名古屋地区における国全体の財政としての損失を申し上げたいのですが、これは国の費用だけじゃなくて、国全体が受けた損失と、それに対してこれから防災的にやるものと比べれば、これは私は問題にならない比重だと思います。そういうことを考えていただくならば、やはりこれは相当重視していただかなければならぬと思っていますが、その点もう一回。
  113. 水田三喜男

    水田国務大臣 相当重視しておりますが、さっきのお話ですが、税金をとっておるのは国だけじゃございませんで、法人税、事業税は大都市もとっているのでございます。そこで、国と地方がどういう負担でやるのがいいかというのをきめればいいということになると思いますが、災害対策を一から十まで国がやるという建前には今なっておりませんで、災害を受けて困るのはその地方であって、まず自分たちが災害を受けて困るから、それに対してどういう対策を立てていくかということが中心であって、財政上この対策が非常にむずかしいというものに対して、国もそれに手助けをするという建前でこれは対策を立てるべきものだと思います。従って、大都市においては、一朝災害が来たら市民が困るのですから、むしろ行政の一番中心がそれを考えてやってもいいことでございまして、まず何よりも自分自身で対策を立ててやる。そうして負担がしきれぬから国からこれだけやってくれというならいいのですが、そうじゃなくて、国がこれだけ出してくれれば災害対策をもっと強化できるが、それでなければできぬと、どうせやらなければならぬものをその補助率がきまらない間は計画が進まないというようなやり方では困るのじゃないか。富裕県、財源に余裕のあるところは、災害が来ることがわかっていたら、なぜもっと力を尽くしてやらぬかというのが私ども考えで、この間も大阪に行ってそのことを言ってきました。こちらは金が足らぬから貸してくれというんなら起債なら見ようと言っているんだが、起債じゃだめで、補助率を上げなければやれないなんということでいつまでぐずぐずしているか、来年来るかもしれないからことしやれ、私に大阪府知事と兼ね合わせたら、一、二年で高潮対策ぐらいやってしまうぞと言って、だいぶ大阪におこられましたが、やはり地方は地方でみずからそれをやるということになってくれて、そして国にこうしてくれと言うならいいのです。今逆で、見てくれるかくれないか、それでなければ対策が立てられないという態度では困ると私は言いましたが、そうだと思います。それから地下水のくみ上げ等で沈むのだ、これは国が法律を出してくれなければやれないというのですから、必要によって国も法的な規制のことをやらなければいけないと私は思っていますが、法律がないからどんどん地盤は下がっていくのだ、じゃ下がっていくのを見ておっていいのか、見ておっていかぬ、いかなければどういうことをやったか。地盤沈下地帯にビルがどんどんできているのですが、そのビルについて、地下水を使わないようにということを一ぺんでも当局はやっているかと申しますと、やった例というのは一つもございません。水道の水を使ってくれといえば、それじゃコストが高くつく、やはり地下水でやる方が安いのだといってみんな新たにビルを作る連中でも水道の水を使わないで、冷装房置でも何でも全部地下水を使う。それを今まで府市当局は見ておって、一つもそれをやめてくれとかいうような指導もしていないで、何にもしないで、ただ地盤が沈むのだ、これは国が法律を出してくれるか、法律に伴った補助金を出してくれるのでなければやれないという態度もどうかということで、私もいろいろ言って参りましたが、これはただ国の補助金にたよるというだけでは解決しない問題だろうと思っています。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんからこれでやめますが、今の見解には私はいろいろ異議があります。あらためて年内にもう一回委員会を開いていただくことにしまして、私の質問はこれで終わります。
  115. 小川平二

    小川委員長 ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  116. 小川平二

    小川委員長 速記を始めて。  堀委員
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいまの災害関係の緊急対策の問題の中でちょっと二、三伺っておきたいとがあります。建設省は今度大阪地区緊急高潮対策の計画について大蔵省側に予算の要求をされておるように聞いておるわけですが、この緊急三カ年の計画とこれまであります特別高潮対策の五カ年計画との関連はどういうふうになっておるのか、ちょっと先に伺っておきます。
  118. 柴原孝太郎

    ○柴原説明員 三十六年の第二室戸台風におきまして、大阪は大災害を受けまして、高潮の大災害が起こりましたのでございますが、実はすでに治山治水十カ年計画が閣議決定を見ておるのでありまして、われわれの方といたしましては、これに基づきまして、鋭意治水事務を進めてきたわけでありますが、ことしになりまして、相次いで大災害の襲来を見ましたので、われわれの方としては、大幅に治水事業を繰り上げ実施という線で現在事務的に折衝しております。  高潮につきましても、れは地盤沈下等いろいろ関連もありまして、特に災害のひどかった大阪、兵庫地区並びに東京等の地区におきまして、いろいろの緊急を要する部分につきまして計画を目下検討しておりまして、これによりまして事務的な折衝の段階であります。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると五カ年とか十カ年とか年度計画がございますね。それを繰り上げて緊急の中でやってもらう、こういう考えでございますか。
  120. 柴原孝太郎

    ○柴原説明員 治山治水十カ年計画の大幅繰り上げという線で参りたいと思っております。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、今度の大阪地区緊急対策というものの中の問題は、これまでの大阪湾高潮特別対策というものを圧縮して早くやってもらいたい。だからその範囲等は今度大阪湾が大阪地区と変わっていますが同じことだというふうに理解してよろしいわけですね。
  122. 柴原孝太郎

    ○柴原説明員 現在大阪地区並びに京都地区に関して緊急のものからできるだけ早く促進したいという計画のもとに作業を進めておりますのは、今回の災害によって広がった部分も含めております。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 具体的に大阪地区は西はどこからどこまでですか。
  124. 柴原孝太郎

    ○柴原説明員 現在尼崎から大阪一帯でございます。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 堺までですか。
  126. 柴原孝太郎

    ○柴原説明員 大和川筋まででございます。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 西は川で言ったら何ですか。
  128. 柴原孝太郎

    ○柴原説明員 武庫川筋でございます。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと宮崎主計官の方にお伺いしたいのですが、今のようなことで私のわからなかった点がちょっとわかりましたのは、特別対策を繰り上げるというので、別に緊急対策を要求しているんじゃないように考えるのですが、大蔵省はどういうふうに理解をしておられましょうか。
  130. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 お答え申し上げます。ただいま建設省の方でお話がありました通りでありまして、大阪方面の高潮対策事業は、昨年度の治山治水十カ年計画の際におきましても重要な事業として議論になったところでございまして、その際に十カ年計画相当額を織り込んだわけでございますが、今回の災害にあたりましてこれを促進するということが主眼でございますが、その際従来の計画で見落しておった点、あるいは単価等において変更を来たした点、計画潮位の点で従来の計画では及ばなかったような問題などの追加がそれぞれ入った御要求があるわけでございます。で、私の方といたしましても、今回の災害の状態にかんがみまして、この問題はやはり非常に重要でございまして、早急に方針を立てなきゃならぬということで建設省の方ともいろいろお打ち合わせをしておる最中でございます。
  131. 堀昌雄

    ○堀委員 さっき大臣は地方が主体になってやるべきで、国は補助ですから助けてやるんだとおっしゃったが、私は部分的に必ずしもそうではない、多少国としての責任のある部分もあるんじゃないかと思いますけれども、そういう政治的な問題はさておいて、現在非常に建設省で要望されておるのは補助率を少し上げてもらいたいという御要望が出ておるやに聞いておりますが、これは補助率を上げるとかあるいは事業ワクをふやすとか、いろいろなことがあるだろうと思いますが、どっちにしても私は、結果は資金がたくさん出るかどうかということになるんじゃないかと思います。補助率を上げることと事業ワクを広げることとは質は違いますけれども、結局国の資金が出るかどうかということが先決になるんじゃないかと思うのです。そこで、政務次官に伺いたいのですが、こういう場合に、今大蔵省としては、基本的には資金はふやされるんだと思いますが、大体どういう格好で資金はふやす方向か、ふやさない方向か、それから補助率を上げ方向か、事業ワクを広げる方向か、その他について次官の方でお答えいただきたい。
  132. 天野公義

    ○天野説明員 今そういう点諸般の事情を考えていろいろ査定したり研究しておるところでございます。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 諸般の事情で検討中はけっこうなのですけれども、そうするとまだ全然考え方方向というか、資金をふやすという点は大体お考えになっておるのでしょうか、その点だけ。
  134. 天野公義

    ○天野説明員 災害を受けたところ、また災害の予想されるところ、そういうところにつきましては、資金量をふやして仕事を促進していくという基本方針には変わりないわけでございますが、それではそれをどうするかというような問題につきましては、今予算の査定をやっている最中で、いろいろ研究している段階でございます。
  135. 細田義安

    ○細田委員 関連して。さっき大蔵大臣がおれば、二、三時間びっしりお聞きしたいと思ったのですが、堀さんと大体同じような考え方ですが、東京へ行きましても大阪へ行きましても、道路を歩きましても、あの詰まっておる姿は、金があってやらないからということじゃないのでありまして、金があってもいなかでは坪五百円で買える。しかしこちらでは坪百万円でなければ土地を提供してくれぬという財源の大きな需要というものに質的な差がある。それから水田氏の考えは民生保護県みたいなところに日本の大府県を持っていこうという考え方です。政治家として腕前があり、見識があるなら、私は東京、大阪に近づけるような努力をして政治を営まなければならぬ、こういう基本的な考え方に立っておるわけであります。従って、財源調整の問題は入るけれども、要るのだ。しかも常に行政指導とかなんとか言っているのだから、もっと行政をうまく指導して効率的な公共事業の推進、こういうものをやって参ればいいわけであります。従って、次の機会がありましたら、堀さんと、与野党の問題じゃありませんから、日本全体の問題として政治のあり方、地方行政に対する見方、地方の自主的な権限の問題、民主主義をどう育てて参るかということの基本的な基調に立っての諸問題というものがあるわけです。先ほどちょっと関連質問をしようと思ったのですが、時間がありませんでしたのでやめたのでありますが、私の方はそういう考え方に立ってこの幾多の問題、これは大阪でも東京でも山積しておるのです。海に行ったって海は三十日も四十日も般をつないで、一ぱいだ。では東京がなまけておるかといえば、どんなやつがやってきたってうまくいかない。せいぜいみんな努力しておるわけです。財源調整とか税源調整とか軽く言える言葉じゃないのです。私は長年この問題と取り組んで参りましたが、こういう点で政務次官もおりますから、あなたも東京ですが、お考えはどうか。よく水田大蔵大臣にこの次は四つに組んでしっかりやりましょうということを言っておったということを告げてもらいたいと思います。
  136. 天野公義

    ○天野説明員 私も東京出身でございまして、大阪の問題、東京の問題、よくわかると思います。細田委員のお話の点につきましては、よく大臣に伝えておきまして、次の機会にゆっくり御議論を伺いたいと思います。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 これで終わりますが、ちょっと主計官の方に伺っておきたいのです。今建設省が出されておる緊急対策についての範囲は、やはり大蔵省としても今のお話のような武庫川から大和川までということで考えられるとすれば考えられる、こういうことになりますね。
  138. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 先ほど申し上げましたように、今度の災害に徴しまして計画の内容を若干変更して持ってきておられるのでありますので、これについて今いろいろ検討しておるわけであります。計画の範囲についてどうかということにつきましては、こういった問題が結論を得るのと同時にきめたい、こういうふうに思っております。特にこれからこれの範囲でこうするということにまだ結論はできておりません。
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 それはおっしゃる通りで、最終的な結果としてはそうだと思いますけれども、ただ今度、大阪湾特別高潮対策であったものが大阪地区という言葉になぜ変わったのかわかりませんが、そういう表現がされておりまして、そうすると、私は尼崎にいるのですが、これはもうまさに武庫川から大和川というのは大阪地区としては一環した部分だと理解しておるのに、そういう地区などという言葉が新たに出てきたものですから、そういう点は、一応大阪市に限るというようなふうに理解しないでもよいだろうと私も思っておりますので、その点をちょっと伺っただけで、その検討の内部がどうなっておるかということを伺っておるわけじゃないのですが、考え方としてはそういうふうに理解してよろしいですね。
  140. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 今回の災害の潮位、そういったものを対象にして議論をしておるわけでございますから、当然検討の範囲としては入っておると思います。ただ問題は、計画の切り上げをいたすにいたしましても、緊急何カ年計画というような考えもございます。それから全体の計画相当年数かけて計画的にやるというような考え方もございます。その辺の取り方いかんにより地区の見方どもいろいろ変わってくると思います。そういう点は私どもももちろん検討しておりますが、建設省の方でもいろいろ今、まだ検討の最中でございます。よくお打ち合わせをしてきめて参りたいと思います。
  141. 小川平二

    小川委員長 次会は来たる十二月八日午前十一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十五分散会