運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1961-10-20 第39回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月二十日(金曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 岡本  茂君 理事 神田  博君    理事 始関 伊平君 理事 中川 俊思君    理事 多賀谷真稔君 理事 松井 政吉君       安倍晋太郎君    木村 公平君       木村 守江君    藏内 修治君       白浜 仁吉君    中村 幸八君       南  好雄君    田中 武夫君       滝井 義高君    中村 重光君       渡辺 惣蔵君  出席政府委員         通商産業政務次         官       森   清君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君  委員外出席者         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合委員長)  原   茂君         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     萩原吉太郎君         参  考  人         (八幡製鉄株式         会社社長)  稻山 嘉寛君         参  考  人         (帝国石油株式         会社社長)   岸本勘太郎君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十月二十日  委員舘林三喜男君及び濱田正信辞任につき、  その補欠として安倍晋太郎君及び木村公平君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員安倍晋太郎君及び木村公平辞任につき、  その補欠として舘林三喜男君及び濱田正信君が  議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十月十九日  産炭地域振興臨時措置法案の一部修正に関する  陳情書(第三二  六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、特に本件に関する各界の方々の御意見を聴取するため、日本石炭協会会長萩原吉太郎君、日本炭鉱労働組合委員長原茂君、帝国石油株式会社社長岸本勘太郎君、八幡製鉄株式会社社長稻山嘉寛君、以上の四君が参考人として御出席になっております。  この際、参考人方々一言あいさつを申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず、特に委員会要求をいれて御出席いただきまして、まことにありがとう存じました。  今さら申し上げるまでもなく、今日不幸にして不況下にある炭業界に対し、いかなる対策を講ずべきであるか、あらゆる時と場所において論議されておりまして、政府からは去る十六、十七の両日、閣僚の一員たる福永労働大臣九州におもむいてつぶさに炭鉱を視察してこられ、近く大蔵大臣及び通商産業大臣現場視察のために現地におもむかれると聞いております。また国会におきましても、今国会、衆議院においては特に本特別委員会が設置せられ、連日関係大臣出席され、委員各位の熱心なる討議が行なわれておる次第であります。石炭対策は、単に石炭のみの問題ではなく、日本産業の総エネルギー面における石炭対策として検討いたさなければならないことは言を待つまでもなく、石油業界電気業界鉄鋼業界方々にも御出席をわずらわしたような次第であります。  参考人各位におかれましては、それぞれの立場におかれて忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。ただ、時間の関係上、最初に御意見をお述べになります時間はお一人大体二十分程度に願い、引き続いて委員から質疑がありました場合にも、率直にお答え下さるようお願いいたします。  なお、発言の順位は委員長においてきめさせていただきます。  それでは、まず、参考人原茂君。
  3. 原茂

    原参考人 私は日本炭鉱労働組合中央執行委員長をやっております原です。  一番初めに、現在炭鉱はどういう状況にあるかという現状について簡単に説明をしたいと思います。  この二年の間に、労働者は大体約六万人が整理をされました。整理をきれました六万人のうちの一割程度青年あるいは技術者という、非常に就職のしやすい条件にある者で、六万人の約一割程度安定職場を求めて生活をしています。あとの九割の労働者はほとんど退職手当を食いつぶし、あるいは失業保険を食って何とか生きているというだけであります。結果においては、炭鉱周辺ニコヨン生活をせざるを得ない、あるいは生活保護法に基づいたそういうひどい生活をしている、まさに野たれ死にの一歩手前にあるわけです。また一面現在の職場にある労働者も、九州においてはニコヨン以下の賃金まで下がった賃金で、しかも労働時間は十時間とか十二時間というひどい労働強化の上に何とか生きている、こういう事情であります。特に昨年の暮れから本年に入りまして、大手の中にも五千円、一万円という賃下げが続いております。こういう実情にあります。一面能率化、千二百円のコスト引き下げに基づいて、合理化の方法として非常増産態勢的な形がとられているわけです。従いましてここでは、設備改善をされる事情にない石炭産業においては、結果においてひどい作業条件において働かなければならない。その結果、毎日約三人の死亡者が出たり、一日二百五十人のけが人が出ている、こういう事情にあります。一面生産性は二年前と比較いたしまして、当時一人一カ月当たりの能率が十四トンないし十五トンでありました。現在は二十トンから二十一トンと、約五割も生産性向上していろ。従って、他産業能率からいうならば、鉱工業の生産は二年間で約三〇%でありますけれども炭鉱の場合は五〇%の生産性を上げております。問題になります点は、職場労働者がどんどん減る、あるいは賃下げをされる、しかも災害が起きておる、こういう事情の中で生産性だけが向上していく実情は、労働者に対するものすごい犠牲となって現われている、この点が非常に重要なことだと思いますので、現在の炭鉱実情について申し上げておきます。  次に、これからそれではどういうことになるかと言いますと、千二百円のコスト引き下げという至上命令的な方針が変更がない限り、しかも一面貿易の自由化の繰り上げによりまして、来年の九月までにこの目的を達成するような勧告あるいは方針が明らかにされています。その結果においては、来年の九月までに再び六万人の労働者整理される運命にある。しかも、その労働者職場生活保障がないという実情の上にこの整理が予定されているところに問題があるわけでありますが、賃下げが現在以上にもっとひどい速度で行なわれることも、現在の政策の上において結果として明らかになる、こういうこともこれは間違いない事実であります。また災害は、能率向上という増産態勢の結果として、現在以上のひどい死亡者やあるいは負傷者が出ることも明らかです。こういう見通しの上に立つならば、まさにこれは殺人的な生産態勢の上に合理化計画されている、こういうふうに事実として指摘をせざるを得ない事情にあることを御理解願いたいわけです。特に現在政府において非能率炭鉱買い上げ、あるいは中小炭鉱買い上げ計画しておりますけれども、約九百万トンに及ぶ買い上げ計画があります。ところが、九州中小炭鉱の一年間の総生産量は約一千万トンでありますから、従って九百万トンの中小を対象にする賢い上げは、九州には中小炭鉱一つも残らないという計算になるわけですから、これはとうていわれわれの想像に及ばない大へんなことに発展をし、それが社会問題になる可能性があります。一面、約五百四十万に及ぶ、石炭産業運命をともにしている国民がいます。これは石炭産業の栄えること、滅びることとともに、今日は滅びる運命にありますから、たとえば特に九州の筑豊においては、滅びいく民族的な姿に炭鉱住民全体がなろうとしています。このことは、幾たびか問題がありました釜ケ崎のような結果にならないのが不思議なほどの実情にあることを御理解を願いたいわけです。こういう事情の上に、われわれ炭鉱労働組合としては、現在何を政府要求し、あるいは石炭政策転換を求めているのか、このことについて簡単に説明をしたいと思います。  一つには、何といっても、職場保障もなければ、生活保障もないまま首を切られるということは、近代的な社会においてはとうてい考えられないような実情にあります。しかもこれがわずか一年とか一年半の間に五万とか六万という大量の人員整理されることについて、どんな理屈がついても納得するわけにはいきません。従ってわれわれは、石炭産業に全部がしがみついておろうなどと考えてはいません。他の産業転換することを認めています。しかしそれは、行く先がきまらず、あるいは生活保障が立たないまま整理をされることに反対をいたしておるわけです。このことは非常に重要でありますので、特にわれわれとしては強調したいところです。  次には、現在は中小ニコヨン以下の賃金であり、それが基準みたいになった格好で、大手といえども賃下げ競争をしておる実情にございます。従って果てしない賃下げ競争は、結果において、せっかく職場にしがみついていましても、生活保障がありません。こういう事実を理解を願いまして、われわれとしては、少なくとも最低一万二千円の炭鉱労働者に対する保障賃金というものを確立するのはささやかな要求ではないか、こういう気持で、賃金の問題について明らかにしているところです。  それから次に、石炭産業需要の問題でありますけれども、これは現在五千五百万トンというのが一応何か社会常識的な数字となって、議論中心になっています。しかしこれは将来油との関係で、石炭の量が速い速度で拡大することは希望していない。ただ問題になります点は、五千五百万トンという量を固定的に考えますと、一面能率を上げるというととが計画になっておりますから、われわれが一生懸命働いて能率を上げることは、自動的にわれわれの仲間の首を切るというしかけになっています。そのことをわれわれが初めから認めて増産体制をしくことは、どなたが理解を願いましても非常に困難な問題に衝突をするわけですから、従いまして、エネルギー地位というものについて明らかにしていただきたいと思っています。現在総エネルギーの約三二%が、石炭地位になっています。それを数字で言いますと五千五百万トンであります。現在油の量というのは、総エネルギーのうちの約三〇%であります。水力発電によるエネルギーが約三〇%であります。その他天然ガスとかその他の燃料が約一〇%ということになっておりますから、われわれとしては、この数字は将来の目標として確立することは不可能な道ではない、こういう判断をいたしました。その点は、たとえば十年先になりますと、どういうことになるかというと、これは約五五%程度が油の地位になります。特に五千五百万トンで押えますと、十年先には一八%が石炭の量の地位ということになります。こういうことになりますと、国内資源である石炭はますます片すみに追い込まれて、輸入原料だけで日本エネルギー対策を立てるという結果になることを非常にわれわれは心配をしているわけです。  次に、現在生産体制の問題について一番緊急な問題として、どういうことが起きているか。それは、銀行がほとんど石炭産業には金融をいたしません。あるいは、政府保障も現在はありません。従って、自力で設備資金なり合理化ということを金の面で準備することは、事実上不可能に近いのです。大手の一部において、そのととはささやかに実行する可能性はありましょう。しかし千二百円のコスト引き下げというこの方針に基づく生産体制合理化は、およそ不可能に近い実情にあります。ことにひどいのは中小炭鉱でありまして、生産体制合理化どころか、保安を無視して増産をするという結果は、たとえば豊州炭鉱上清炭鉱のような実例が示しているところです。そういう意味では、この金融措置について政府が重大な関心を持って対策を立てることが必要だと思います。  もう一つは、これは石炭経営者にも政府にもわれわれが言っていることですけれども、近代的な経営合理化設備改善にあると思います。あるいは、技術改善にあると思います。ところが、御存じの通り、炭脈あるいは炭層というのは、自然の資源でございますから、一定の地域において広範に一つの層があるわけですけれども、現在では中小大手あるいは大手の中でもまちまちでありまして、一つの畑をお花灯のごとく区画整理をいたしております。従って、ここでは縦坑の開発による生産性の合理的な向上を、そういう意味から不可能にしておるわけです。従ってコストが置くなり、石炭の値段が高くなりますから、結果において労働者賃下げと首切りというしわ寄せになっている。非常にこのことは重要なことだと思いますので、このことについての整理統合を強く主張しているところであります。  次に、流通機構の問題について、いろいろありますが、時間がございませんから、すべてを述べることはできません。重要な面だけ一つ申し上げますと、現在、消費者大口生産者大口の間においては直接石炭価格が取りきめられますけれども中小あるいは小口消費者は、二重、三重の販売機構を通って、それが国民の手に渡るときには、山元で五千円の石炭が一万円、一万二千円もする、こういう大へん矛盾があるわけですから、こういう意味で、流通機構について重大なメスを入れる必要を炭労は強調しているところです。  重油の関税の問題について、二〇%かけろと要求をいたします。これは理由は二つございます。一つは、常に政府は予算ということを中心にして、必要を認めながら、財源というところから事実上産業発展をはばむ結果になっています。みずからそれに対案を持ってこいという姿勢をとっていますから、われわれとしましては、財源としては、輸入原料によって国内産業が壊滅される実情にあるならば、このことについて関税を考慮することは、財源の一案でもあり、一つには国内産業を守る意味で必要であるということを強調しているわけです。  いろいろありますけれども要求の重大な柱は三つございます。今言ったことを要約しますと、一つには、石炭需要の安定を要求いたします。二つ目には、雇用の安定ということを緊急な問題として要求をいたします。もう一つは、最低賃金保障という面について、同時に、どうしてもこの際この臨時国会中に国がどういう態度をとるべきかということを明らかにしてもらいたい、こういうことを特に強調しているわけです。従って、緊急な三つの問題と、生産態勢総合エネルギーという恒久的な問題については、今国会中に直ちにせっかちに解決することを望んでも無理だと思いますけれども、継続してこの問題の解決に当たる態勢をお願いしているところです。  次に、われわれがこういう要求をする上にあたって、現在の政府政策についてどういう関係にあるかということについて、この際われわれの考え説明したいと思います。  一つには、たとえば、労働組合ですから、いろいろな思想目的はあるけれども、この要求をめぐって池田内閣の打倒を呼びかけるとか、あるいはその矛盾についてわれわれの力をそういう方向発展させようという考えは、いささかもございません。現在ある国民の一産業であり、しかも五百四十万の国民を擁している石炭産業について、人道的な立場から、この際、国は思い切った政策が必要なのではないか、こういうことを要求しています。一つには、現在いろいろなことが言われていましても、結果において、求人難であり、人手不足であるということを言われているにもかかわらず、石炭産業だけが短期間に十数万という大量の殺人的整理社会的に認められることは、不思議ではないのか、こういうことが言えるわけです。一つには、消費物価はどんどん上がっています。あるいは一面ではベース・アップもされています。にもかかわらず、石炭産業だけが五千円、一万円の賃下げがあたりまえだということは、どうしてもわれわれは納得することができないのです。一面、中小においてニコヨン以下の賃金生活保護法を適用されるような賃金形態は、この際どうしても認められがたいということを御理解願いたいわけです。将来の石炭産業を安定さす意味において、需要が安定することによって直ちに安定にはなりません。現在、炭鉱の中から、経営者政策もありますけれども、若い者はどんどん他の産業に移動を始めています。あるいは重要な技術職員が他産業へと転換を始めています。これは需要の安定という道を選んでも、そこに働く労働者の質的な転換が行われ、結果においてけが人や年寄りばかり残る、こういう重大なことになる可能性が十二分にあるわけです。ヨーロッパにおいては、石炭産業がいかなる産業よりも最高の賃金を支払い、一番短い労働時間という待遇をしておるにもかからわず、若き者は他産業転換を始め、技術者はどんどん減って、新しく採用する余地がだんだんふさがれているのです。そういう一環として、日本青年労働者がドイツに行っている理由もそういうことを証明しているわけです。ましてや、賃下げ人員整理が続いているこの実情で、将来安心して働ける職場産業として理解ができない限り、結果において、労働者犠牲にすることができても、石炭産業は安定をしないという重大な危機に当面することを理解願いたいわけです。  最後に、こういう実情に対して、この際特段なメスを入れ、あるいは手術をするような、思い切った石炭産業政策がもし打ち立てられないとするならば、思想を越えて、結果において企業形態について問題になることは、時間の問題ではないだろうか。中小はもちろんのこと、大手といえども石炭経営者は、みずからが石炭産業の行き先について方向をきめるという重大なことが、時間の問題として発展をしてくる要素があります。もちろん労働組合ですから、社会化要求し、国営を要求していますけれども、これは思想の問題を越えて、結果において石炭産業を少しでも残すとすれば、その道を選ばなければならぬというような、新しい角度で議論をしなければならぬ重大な時期がくることは間近です。われわれはこのことを今要求してはおりませんけれども、この際思い切った政策転換がない限り、結果においてそうなることは、当然のことのように見通しとして明らかになっていますので、このことも含めて、政府並びに国会において十分議論されることを特にお願いして、私の意見を終わらしていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  4. 有田喜一

    有田委員長 以上で原参考人意見の開陳は終わりました。  引き続き、原参考人に対する質疑の申し出がありますので、これを許します。始関伊平君。
  5. 始関伊平

    始関委員 原さんにお尋ねをいたします。ただいまのお話、私どもごもっともだと思う点が多いのでございますが、一体私ども石炭産業というものを非常に大事な産業だと考えますのは、これがいわゆるエネルギー安定供給源だという意味で、国内にあるものですから、外国に依存するものとは非常に違う。そういう意味で、諸外国でも石炭産業は非常に大事にされておる。また、私どももそういう意味石炭対策は今急いで考えておるわけです。終戦後のどさくさの時期は別といたしまして、やや安定しかかってから今日まで十年余りですが、その間の実情は、理論的には石炭産業安定エネルギー供給源なんですが、現実の問題としては、いつもいろんなことで、また端的に申しますと、いろいろなストライキがありまして、それによる減産、使用者側に非常な不安を与え、不便を与えた、そういったようなことが、今日のいわゆるエネルギー革命一つの契機になったということは、否定できない事実である。従いまして、理論は別として、実際問題からいいますと、今日までの十年くらいの経験では、国内ではむしろ石油の方が安定供給源であって、石炭の方が不安定供給源になった、こういう不安がある。また、長期取引契約をいたしましたけれども電力業界なんかでもそういう不安を持っているやに聞くのであります。私はこれは必ずしも労働者側にだけお尋ねすべき問題とは思いませんが、また、ストライキ理由なくして勝手にやっているとは思いませんが、こういう点について、今後どうなるだろうかということについてどういうふうに考えておられるか、その考え方、見通しを伺いたい。  それからまた、需要の安定ということをおっしゃいましたが、これは何と申しますが、長期取引契約をできるだけ方々にやって、戦時中にやりましたような物資動賃計画的な意味でのものをやるとか、こういうことであるのか、あるいは二〇%関税引き上げの御要望でございますが、これができればほぼ競争条件が整うから、そういう前提条件の上においてはおのずから需要が安定するとお考えになっているのか、この二点についてあなたのお考えを伺いたい。
  6. 原茂

    原参考人 一番先に御質問がありました供給の安定、これは非常に結果においてまずいのではないか、また、将来どうなるのか、こういうことだと思うのですけれども、一番供給を不安定にしている原因は、エネルギー対策というものが絶えず国の政策がふらふらしている。これは主として通産省が中心になってやるのですけれども、あるときには、非常増産をするといって、七千万トン必要だといってみたり、二年ほどすると、いや、四千万トンでいいのだ、あとは掘るな、こういってみたりする。そこで、経営者の方では、大量に人を採用することを一生懸命考えているのだけれども、下請みたいな中小炭鉱アワ粒のごとくものすごくふえてくる。ところが、今度は、石炭は必要ないのだと政府がいうものだから、一ぺんに中小炭鉱をつぶす。実は戦後でも、二回にわたって十万人の労働者が大量に整理されておる。こういうことが供給の不安定の原因になっているわけです。従って、将来どうなるかといえば、たとえば、五千五百万トンというものを最低にして、将来こういう需要の安定を国の方針として立てる、こういうことになりますと、そこから起こる供給の不安定というのは実はないんです。今までは場当たり的な生産態勢というか、需要計画が国においてしょっちゅう変更されるところに、労使ともども大へん犠牲を負っているわけです。その点について、この際、長い目で、需要の安定が供給の安定という道につながる、こういうふうに御理解を願いたい。  それから、二面、ストライキが非常に多いのではないかという御指摘だと思うのですけれども、これは私が説明しましたように、ストライキというのは実は理由があってするわけです。理由がないのにただ単にやっているということになれば、大へんなことです。現在のように、五万人、六万人という人員整理が毎日のように出てくる。あるいは五千円、一万円の賃下げが毎日のように各職場に出てくるということになりますと、どんな神様的指導者が現われても、私は争議を防ぐことはできないと思うのです。そこのところがやはり重要なことでございますから、一応、生活職場の安定が争議の防止をすることになり、あるいはわれわれみずから指導者としても、そのことが結果的に供給の安定と争議の頻発を防ぐことになる、こういうふうに御理解を願いたいと思います。  それから需要の安定の問題について御質問がございましたけれども一つには、経済性の問題を無視はしていません。たとえば、現在の液体エネルギーというものは、世界的な規模で非常に利用価値が多いということを肯定いたします。ただ、どこの国でもそうですけれども国内産業として石炭というものは最低どのくらい必要かという、需要というものをこの際はっきりしてもらいたい。需要が確立しますと、そこからおのずから行くべき一定の方向がきまりますから、需要の不安定ということがなくなれば、そこに生産態勢の安定があり、あるいはそこに生活の安定が結果として生まれてくる、こういうことを実は考えています。  それから、需要の安定ということをただ量だけで確保しようとするのか、あるいは地位として確保しようとしておるのかという点について言いますと、われわれとしては、量として確保することよりも、地位として確保することが大切なのではないか。私が先ほど言いましたように、五千五百万トンを絶対にふやさぬという方針でありますと、十年後には日本の総エネルギーの一八%にしか石炭産業地位がならなくなります。ほとんど五〇%以上のエネルギー源というものが、外国のものによって支配されてくる、あるいはそれにたよらなければならぬということになりますと、これは国のエネルギーとして問題になるのではないだろうか。たとえばヨーロッパにおいても、現在イギリスは石炭が七五%のエネルギー地位を確保しております。ドイツにおいては七〇%の地位を確保している。あるいはフランスにおいては現在五五%の地位を確保しています。ヨーロッパ的な立場石炭産業というものをどういうふうにしようとするのかということを明らかにしていますものは、いかなる場合といえどもこれを総エネルギーの五〇%以下にすることは、国の産業として重大な影響をもたらす、こういうふうにいっていますけれども、われわれは、その五〇%を外国並みに確保することは現状において無理だと思いますので、むしろ、現在の三二%というエネルギー地位を確保してもらいたい。現在は五千五百万トンですけれども、結果においてこれが六千万トンとか六千五百万トンとかにふえるというのは、エネルギーの必要な量は現在の国の政策でも膨大に拡大する方針になっていますから、ここでは石油石炭もふえていく、結果においては、石炭のふえる量が非常に少なくて、輸入原料の方がものすごく多くなりますけれども、それにしても、三二%という現在の地位を確立していただくことは、労働組合要求という意味ではなくて、国の経済的な立場から必要最少限度のものだというふうに考えています。
  7. 有田喜一

    有田委員長 中川俊思岩。
  8. 中川俊思

    ○中川委員 原さんにお尋ねしますが、あなたの先ほど来の御意見を伺っておりますと、労働君の犠牲を強調されたり、あるいはあなたの関係していらっしゃる石炭産業を斜陽産業と書ってみたり、滅びる運命にあると雷ってみたり、それから政府に対する補償を要求されておるような面があるのですが、要するに、あなたの先ほど来の意見は、政府やわれわれに対する陳情のように私は聞いたのです。私は率直に申し上げますが、もっと自分の職業にプライドを持ってもらいたいと思う。ということは、日本エネルギーというものは、今日まで石油がない時代は石炭にたよってきておった。石炭産業というものが日本の経済発展にどのくらい貢献したか、私は大きな力があると思う。それがたまたま石油のために石炭が追いまくられて、そうして今や石炭産業というものは非常な苦境に立ち至った。そこで政府も何らかの手を打たなければならないというので、おくればせではございますが、とにかく最近いろいろ手を打っておる。しかし、私は、これは政府も手を打つけれども石炭業者も、また、あなた方もストライキをやる前にもっと要求される面があるんじゃないかと思う。たとえば、あなたは先ほど来五千五百万トンというものをえらい固持しておられるけれども、この方針は金科玉条ではありませんよ。五千五百万トンをふやしてもらうようになぜ努力をされないか。それから、エネルギーのうちで石炭は三二%しか使っていないとおっしゃるけれども、なるほどあなたがさっきおっしゃったように、イギリスでは、私どもの調査では八〇%、それから西ドイツは七〇%、全エネルギーのうち石炭はそれだけ使っておる。日本もそれを使うようになぜ持っていけないのですか。日本石炭埋蔵量はないのですか。もう資源はありませんか。私はあると思う。あるのに、なぜやらないか。エネルギー需要は年々ふえていっておるのですよ。ふえていっておる面は、みな石油にとられておるじゃありませんか。なぜそれを、石炭の方へエネルギー資源をとることに努力されないか。そういう方面にあなた方は努力されるべきであって、そういう点が、政府も熱意が足らぬが、あなた方も私は熱意が足りないんじゃないかと思うのです。どうなんです、その点は。
  9. 原茂

    原参考人 何と言っていいのかわかりませんけれども、うれしいような悲しいような感じですが、われわれは需要を大いにふやすということについて、少しも遠慮していないのです。だから、たとえば現在五千五百万トンというのは、これは理屈を越えて、本年度の計画は五千五百万トンである、これでけっこうですということは言っていないのです。むしろこれを最低にして将来はふやすべきである、こういうことを言っているのです。非常に心強い話を聞いたのですけれども、そのふやすというのは、これは労働組合が幾ら言っても、業者同士で需要計画をするわけですね。生産需要計画は業者同士でするので、おそらく私の次に参考人に来ておられる萩原さんの方へ話をしてもらった方がいいんじゃないかと思うのですけれども、われわれはそのことについては、今の御意見と全く同じであるということが私らの気持ですということの方がはっきりしていると思います。
  10. 中川俊思

    ○中川委員 経営者の方にもお願いしますけれども、あなた方の飯を食っていく一番大事な点じゃありませんか。経営者の方にも話してくれというようなことを言わないで、あなた方自身のことじゃないですか。だから、そういう方面にあなた方がもっと熱意を入れなければ、十年先には石炭というものは一八%になるとあなたはおっしゃるが、そうなったらますます、石炭産業というものはすみっこへ追いやられることになるのですよ。しかも、あなたもよく御存じの通り、どこの国でも自分の国のエネルギー資源というものを自国のエネルギー中心基盤に置いておるでしょう。ということは、万一問題が起こった場合には、輸入だけにたよっておったら、たちまちまつ暗やみになってしまう。たとえばスエズの問題が起こったときに、通産省はあわてて石油業法を作り始めたでしょう、備蓄をやっておかなければ大へんだというので。幸いスエズの問題がすぐ片づいたから、石油業法も今日まで日の目を見ずにおるけれども、とにかく輸入資源にばかりたよっておったらそういう問題が起こるんだから、やはりこれも日本石炭がなければ仕方がないが、あるんだから。あるのをなぜやらないか。それから政府の補償、金融処置を何とかしてくれということをおっしゃるけれども、そういう点について炭労は、あなたはもっと積極的な争議をやったらいかがですか。政府要求したらどうですか。石炭産業というものはペイしないのだ。私はペイしないと思うのだ。だから石炭業者の中のあるものは、石炭なんか掘ったってもうからぬからというので、ほかの仕事をやるようになってしまう、私はそうじゃないかと思う。だからどこの国でも、石炭産業に対しては行政面で政府が援助しているんです。援助しなければ、石炭産業そのものはやっていけない。日本ではそういう点では政府に熱意がない。おとといも、さきおとといもその点を質問したが、政府も熱意がない。今そこに岸木さんが来ておるが、岸木さんの会社に対しても、一体政府は今日まで幾ら金を出しておるか。たった鼻くそほど、一億しか出し出ていない。そして将来は十億出すという。ほんとうですよ、よく聞いておいて下さい。フランスはサハラ油田をやるのに、四カ年に五十億ドル出しています。五十億ドルというと、日本円にして一兆八千億円です。イギリスは、石炭国有をやるのに十億ポンドですから、一兆円です。日本は今日まで、ここ五、六年間に日本エネルギー源に対して何ぼ出したかといいますと、通産省に調べさせたら、わずかに二百億以下です。二百億出していない。そして、石油が出ないの、石炭がどうしたのということを言うことは、ちゃんちゃらおかしいと思う。政府も開発、利用に対する熱意がないが、僕に言わせたら、あなた方も実際熱意がない。そして、月給を上げろ、月給を上げろばかりやっている。それでは石炭業者もやれないのだ。だから、そういう点をあなた方は炭労の力をもって政府に肉薄してもらわなければだめじゃないか。あなたが先ほど言ったのは、われわれに対する陳情だ。あなたの意見じゃない。陳情をここで言っているにすぎない。そういう方面にあなたはうんと力を入れてもらいたい。私はこの間多少、社会党の諸君とも一緒に回ってきたのですけれども、そういう点を調べると、実際日本エネルギー資源に対して熱意がありませんよ。これから年々急ピッチでエネルギー需要というものは伸びていくが、どうしてまかなうか。みな輸入に仰がなければならぬ。その輸入を仰ぐときに、戦争でも起こり、局地的な紛争でも起こったら、一体どうするのです。日本はまつ暗やみだ。そこに石炭局長おるのだが、石炭局長にどんどんあなた方炭労が言って、そうして炭労の力をもって――あなた方は大きな力を持っておるのだから、その力をもって政府を動かすだけの熱意を持ってもらいたい。そのことを私はお願いしておきます。
  11. 原茂

    原参考人 おそらく社会党と自民党が力を合わせれば、今言ったことが実現できるのじゃないかと思いますが、このことを一つお願いしておきます。
  12. 有田喜一

    有田委員長 それでは原参考人、どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  13. 有田喜一

    有田委員長 次に、参考人萩原吉太郎君にお願いいたします。
  14. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 わが国におきましては、これまで、石炭問題の解決は、重油の価格に対抗できるまで石炭の価格を引き下げることだという考え方が支配的でありました。昭和三十四年度の石炭合理化審議会の報告の根底となった思想も、この経済性追求が根幹となっておるのでございます。だが、炭価引き下げを世界いずれの国でも見られないようなドラスティックな方法ではかろうとした結果は、逆に石炭鉱業の合理化を破綻寸前に追い込む結果と相なっております。価格の一面だけの追及で石炭問題を片づけようとしたところが、本年初めから、実は多面的に取り上げねばとうてい解決されないということが現実の上で次第に明らかにされまして、従って世論もまた変化を示し、ここに今日石炭政策が刻下緊急の問題として大きく取り上げられるようになったのでございます。  今日中小炭鉱は、三日に一社の割合で閉山されております。大手炭鉱でも、こうして皆様に私が御報告している間にも、閉山するかどうかという決断をしなければならないところに追い込まれているものがあるのでございます。石炭問題は、最後の緊迫した段階において取り上げられておるのでございます。もしこの重大な段階においてもなお価格のみを問題にし、重油の価格まで際限なく引き下げることを要求されるなら、わが国の石炭産業は、燃料革命の渦巻の中に没落してしまうことは必定でございます。最終的に石炭は要らないのだというなら、それでよいかもしれません。しかし、国内資源である石炭は、何よりもまず確実に手に入るエネルギー源であること、また、他産業と違ってより大きな人間の問題をかかえているということから見て、国家的に見て当然存続させなければならないのであります。さらにまた、かりにエネルギー源を海外に仰いだとしたらどうか、現在でも毎年七億ドルの外貨が必要となります。  私は三年前、欧米諸国の石炭政策樹立の責任者に会って、国家として石炭存立の意味をどう考えているかをただしたのでございます。フランスの石炭公社の総裁バザヤック氏はこう言っておりました。エネルギーを最も安い価格で手に入れることは正しい原則ではあるが、エネルギー供給と入手の安全という要素を考慮に入れなければならないと。また西独のウエストリック経済省次官は、確実に入手し得るエネルギー資源を確保することが第一である、われわれのエネルギー政策の基本的態度は単なる市場経済ではなく、あくまでも秩序を維持する社会的市場経済にあるのだと言明しておりました。英国に至っては、動力次官のプロクター氏、石炭庁次官のコリンズ氏を初め、新聞人に至るまで、英国はスエズ動乱を決して忘れてはいない、英国経済自立のため、百年の歴史ある石炭鉱業を守り抜くであろうと言っていたほどであります。さらにアメリカにおいてさえ、ビューロー・オブ・マインズの人々、石炭会長のラオス氏は、一様に、輸入燃料がとだえた場合、これにかわる燃料を保護していなかったときの事態を考えるとき、初めてエネルギー政策は確立されるのだと強調いたしておりました。エネルギーは、価格の高いことによって生ずる障害よりも、不足によって生ずる障害の方がより大きいのであります。高いことによって生ずる障害は、ある程度努力によって緩和できるが、不足によって生ずる生産活動の停止は決定的なのでございます。  このセキュリティの問題とともに、石炭にはまた人間の問題があります。いかなる産業においても、その産業に働く人の問題をおろそかにしてよいということはありませんが、特に石炭問題においてこれが重大なのは、他産業に比べ石炭産業に働く人の数が多いからであります。もっと端的にいうならば、石炭産業は人による産業であります。石炭即人の問題に結びついているからでございます。直接石炭鉱業に働く人とその家族を合わせて百二十万人、産炭地の市町村の住民が百三十万人、さらにまた間接に石炭産業生活している人々を合わせると、全国でその数は五百万人をこえるのであります。経済の最終の目標が人間の幸福にあることは言うまでもありません。しかるに、もしその目標に反して、働く人々の不安と不幸をもたらすような――現にそれは予想以上の深刻さで現実に起きていることなのであります。そのような経済政策は、決して正しい経済政策とはいえないはずであります。私は、今春、石炭協会会長に就任するにあたって、石炭問題を社会問題として取り上げることを発表いたしましたのは、全くこのゆえからであります。  もとより価格がすべてでない石炭問題の対策が、今日の自由主義経済の中にあってはいかに困難な問題であるかは、われわれもよく承知するところであります。それだけにまたわれわれは政府に望むところが大きいのであります。関連産業に、また競合燃料にいささかの負担をかけずに石炭鉱業の危機を乗り切れるとは、遺憾ながら考えられないのであります。それはできるだけ避けねばならないし、また、自由経済のもとにあっては理論的に好ましいことでないことは知っております。しかし革命の過程において自由経済の原則のみをもってしては、不安定、動揺を繰り返すほかはありません。私は、国民経済の大局に立って考えていただいて、この転換期に他産業の協力を期待したいのであります。燃料革命の当初西独の石炭鉱業を救ったものは、実に友情の経済であったといわれております。われわれの政府に望むものは、エネルギー源全体の中でどれだけ石炭が保有されることが国民経済の上で妥当なのか、そして将来の人員縮小はどの程度でとどまるかの見きわめられるようなエネルギー政策の確立であります。つまり国民経済の中で正しく位置づけ、これを安定させるための抜本的、基本的施策を求めているのであります。  この際政府に強く望みたいことは、燃料革命に対処するのに、いかなる面にも摩擦のないような抜本策はありません、根本的解決の道と考えたなら、勇気を持って実行してほしいということであります。たとい理論として正しいとしても、現実の解決に役立たねば空論となるのであります。われわれの求めているのは、現実の打開策なのであります。従来政府の態度は、その案を持ちながらも、各省間の摩擦をおそれ――といいますよりは、これを重大視し、その緩和をはかることに意を用いてきました。常にその案は微温的なものに修正され、しかも後に問題を残すものとなりました。もはや現段階においては、抜本的対策がとられないならば、後に問題を残すというより、石炭鉱業は遠からず没落することとなると思います。かりに数社が余命をつなぎ得るとしても、それは国家経済の上から見れば意義がありません。その上なお大蔵省にあっては、大蔵省の性格あるいはその伝統のみにとらわれ、いかに財政投融資を切るかに意を尽くし、財政資金を出さざることをもって本業とするきらいがあると思います。事の必要性と緊急性とを考えようとしないと見られるのであります。自由主義経済をその建前とする西独が、石炭対策として重油に二五%の消費税をかけ、その一部を石炭輸送の運賃補助金に充て、またその一部を労務者の福祉対策費に充てたのであります。西独がこのような保護政策をとったのは政治的考慮からであると、ウェストリック次官は言明しております。その他の西欧諸国にあっても、政治的政策を進めているのであります。構造の変化に対処する道は、金融よりも財政的政策の方が本筋であり、また大きな役割を果たすという経済原則を、そして政治を考えていただきたいと思うのであります。  また、従来の政策は、とかく前提を置いた目論見書になりがちであったということであります。従って、前提がくずれてしまえば、単なる目論見としてあとに残るだけのものに終わっていたということであります。そればかりか、その前提のあったことさえ忘れてしまうことが往々にしてあるのであります。炭価を三十八年度までに千二百円引き下げる今日の命題にいたしましても、物価、運賃は横ばいであることを前提といたしております。しかるに坑木二〇%、運賃一五%の騰貴等によって、その前提はくずれているのであります。これに対する対策は、われわれの要望にもかかわらず、一向に実施されないのであります。現在大手十八社の平均能率は、三十四年の十五トンから二十二トンとなりました。その間炭価は一般炭七百円、原料炭七百五十円と力以上に値下げをいたしました。そこへもってきて、本年の物価、運賃の騰貴の結果として、三十六年上期の大手十八社の平均は、実に一トンについて三百五十円の赤字と相なっております。命題の以前に前提のあったことを忘れず、そして、その前提がくずれた場合はこれに真剣に取り組み、われわれの努力が実るようにしてほしいものであります。  元来、石炭問題は景気的なものではなく、産業革命の一つであります。経済問題というよりは政治問題であると言っても言い過ぎではないと思うのであります。石炭問題が必要としているのは、今日、政治なのであります。と申しましても、われわれは政府にだけ望むものではございません。また価格の追及を怠ってよいなどと毫も考えているものではございません。われわれはその使命の第一を石炭産業の体質改善と企業の合理化に置き、現在これに努力しているものであります。今後もなおその努力を続けていくことは言うまでもないのであります。しかしその合理化への道すら今や断ち切られようとしているのでございます。  その第一は、資金の逼迫であります。今年に入ってから石炭鉱業は次第に資金繰りが逼迫して参りましたが、最近では市中銀行は石炭鉱業に対する融資には全然振り向こうといたしません。市中銀行に融資を求めることが不可能に近い状態なのであります。大手十八社はばく大な赤字を出しているばかりか、これに加えて炭代の決済は手形が激増いたしております。しかも、これを割り引くことは困難であります。すなわち、炭代が金にならないのであります。その結果として年末には少なくとも二百億円をこえる運転資金が不足するものと見込まれております。金詰まりの深刻な今日、どうすることもできない状態に追い込まれているのであります。整理の協定はできたが、退職金の調達ができないという会社もあります。合理化資金を求めることもできないのであります。石炭鉱業は合理化推進をきめてはおりますが、もはや合理化したくとも資金から締め出されている現状であります。われわれにこれを求めるということは苛酷だと思うのであります。もし、市中銀行から締め出された石炭鉱業に対し、政府もまた財政資金を今まで通り締めているとしたら、事実の上で石炭は要らないのだという政府方針が明らかにされたことと考えざるを得ないのであります。  第二に、人の問題で行き詰まっているということであります。すでに三十三年度から三十五年度までに約六万人の人員整理されておりますが、このうち安定した職についた人は大手で約三八%、中小炭鉱を加えましてわずか一〇%程度にすぎないのであります。その他の人々は、毎日の生活にさえ事欠いている現状であります。しかもなお、今後さらに六万人の整理が行なわれようとしているのでありますが、離職者の行く先のない現状では、経営者としてこの上合理化を強行するととは耐えられないのでございます。炭労は石炭の置かれている構造的変化の立場を認識し、政治問題には頭から反対しているのではないのでありまして、再就職の場と最低生活保障を求めているのでございます。これ以上、政府の労務施策を待たずして、経営者も余剰人員整理し――これは合理化による能率向上の結果として余剰人員の生ずるのは当然でありますが、人員整理を強行することはできないと思います。この資金難と労務対策の不足の二点から、石炭鉱業の合理化は全く行き詰まっております。この国会において何ら抜本的対策が樹立されない場合には、好むと好まざるとにかかわらず、石炭鉱業は私企業として存続できるものかどうか、根本的な問題に取り組まなければならなくなると思います。英国が国営となって以来の赤字は、実に七千億をこえております。私は先年石炭庁のコリンズ次官に、英国の国営は失敗であったか成功であったかとただしましたところ、責任の立場にある者としては、失敗であったとか成功であったとか言えない、自分も国営の前は一石炭会社社長であった、国営というゆで卵になる前に半熟の時代がほしかったと述懐されておりました。国営の非能率であることは明らかであります。しかし私企業として存続し得ないとするならば、しかも石炭が国家的に必要であるとするならば、政府はここに抜本的な強力対策を生み出して、半熟の段階を打ち立てるよう切望してやまないものであります。私は、先日、総評、炭労の陳情団に池田総理が、想を新たにして抜本的対策を立てると言われたそうでありますが、このことに最大の期待をかけるものでございます。(拍手)
  15. 有田喜一

    有田委員長 以上で萩原参考人意見の開陳は終りました。  引き続き萩原参考人に対する質疑の申し出がありますので、これを許します。始関伊平君。
  16. 始関伊平

    始関委員 萩原さんに二、三の点についてお尋ねをいたしたいのでありますが、私の御質問申し上げる要旨といいますか、どういうつもりでお尋ねしておるかということを御了解願いますために、私の総合的エネルギー対策というものに対する構想をきわめて簡単に申し上げますが、今日、エネルギー問題、特に石炭問題が非常に深刻な事態になっている。その原因は申し上げるまでもなく、震源地は石油でございまして、いわば石油が台風の目のような関係になる。私は、総合的にエネルギー問題を考えます場合には、まず石油をどうするかということから考えて参らなければならない、こう存じております。私は石油の問題につきまして、少なくとも二つの点を指摘しなければならない。それはいわゆる国際石油カルテルのそれぞれの母国でありますイギリスやアメリカ――フランスもこのごろは、石油では持てる国であります。このような国では石油の価格が日本なんかに比べまして、比較的高いところで安定しておるという事実、日本ではそれに比べましてきわめて低位である。ガソリンにいたしましても、重油にいたしましても、低位であるにかかわらずますます下降しつつある。私は国際石油カルテルその他が、日本石炭業や、あるいは、岸本さんから意見書が出ておりますが、こういう国内石油あるいは天然ガスなどのエネルギー資源というものを壊滅さしてやろうという陰謀を持っておるとは思いません。しかしそういう主観的な意図があるなしにかかわらず、今のままで放任いたしますと、そういう結果にならざるを得ない、このように思うものでございます。そこで、きょうは石油代表は岸本さんだけでございますから、あしたはその点を聞いてみようと思っておるのでございますが、このような石油業界の乱雑な状態、過当競争、いわばダンピング市場に日本がなっておるのではないかと思われるような状態というものは、石炭あるいは国内石油資源というものから見まして黙視するに忍びないばかりではございませんで、これは石油業者自体もこういう状態には耐えられない、こう思うのでございます。そこで私は、これは要するにいろいろやってみますと、おそらくは立法措置が必要になると思いますけれども石油の価格安定、あるいは供給安定、こういう措置をまず講ずる必要がある。そうすることによりまして、ことにエネルギー革命とか何とか申しますけれども、重油と石炭とがある意味で競合しておりましたのは何十年来のことでありますが、ただこの四、五年来はそのギャップが開いてきたというにすぎない、こう思うのでありまして、私は、その下の方の石油価格というものをあるところで安定させる、まず第一にこういう方法を講じなければならないと思います。その次に、石炭業の合理化を極力進めていただく。両方から近寄るのでありますが、まだギャップがある。このギャップをどう埋めるか。これについては先ほど萩原さんのお話にも関連がありますが、この三段に問題を分けて解きほぐして参りたい、こう考えておるのであります。  そこで石油の問題はあしたにいたしまして、きょう二、三の点をお尋ねしたいのでございますが、ただいま萩原さんのお話にもございました、また、あなたの方で最近お出しになりました「石炭業界はかく考える」という意見書がございます。非常にたくさんのことが書いてございまして、私は半分くらいのことは同感であり、半分くらいは感心しないのでありますが、ただその中でこういうことが書いてある。「一、二〇〇円の炭価引き下げを実施した後においても、重油価格の低落に応じて無限にその後を追えというのでは、むしろ政策なきに等しく、石炭鉱業の安定は永久に得られないのではないだろうか。」こう書いてあるわけであります。私はこの点につきましては、千二百円でいいのか、あるいは千二百円マイナス・アルファであるのか、あるいは千二百円プラス・アルファであるのかという点は別といたしまして、とにかく裸のままで重油と競争させようという考え方は全く無理で不合理であると思います。しかし、千二百円の引き下げは一ぺんきまったことだからやる、また、石炭業界がそれに基づきまして忠実にやっていただいておるということについては、私は大いに多とするのでございますが、石炭業界の問題あるいはエネルギーをめぐる問題の根本にございます一つの大きい問題は、石炭鉱業というものの合理化についての最終目標というべきものが、今どこでも明らかにされておらないということだと思うのでございます。重油の価格を追っかけるんだ、千二百円だが、また下がったら、また千円下げるということならば、これはとてもやりきれない。その点は私は石炭業界と全く意見を同じくするものでございます。しかしながら、私は何と申しましても、石炭鉱業の合理化をやりまして、一応最終であると思われる限界に到達いたしましたならば、それ以上は、もうあらゆる方法を講じまして保護的な措置を講ずる、こういうふうにいくべきものだと考えております。  そこで一つお尋ねをいたしたいのでございますが、いろいろな社会的な問題で深刻な問題がある、また合理化資金の確保等いろいろ問題がございますから、幾多の前提条件があるでございましょうし、またそう急にはいかぬと思いますが、私はやはり日本石炭業の合理化の最終目標というものを、客観的に議論のないような形で打ち立てて、それについての国民理解を得なければいかぬだろうと思うのです。そこで私が参考にいたしたいのは、外国の例でございます。アメリカは御承知の通り一人一日当たり十三・七トン、これは日本の十五倍くらいでございます。しかしこれはけた違いで、日本に比較的近いのはイギリス、フランス、西ドイツで大体一人一日で坑内夫で二・二トン内外で二・一トンから二・八トンくらいだと思いますが、これを日本式にいたしますと、四十トンから五十トン。しかしヨーロッパ並みにやれといわれましても、日本の方は炭坑の条件その他が悪いという点があると思いますから、そういう事情を考慮すると、私はすぐそこまでいってもらいたいとは思いませんが、三十トンとか四十トンという一つ合理化目標が出てくるだろう。私は今までの、まず千二百円というものをきめて、それに到達いたしますためには能率をいかに上げるかということではなしに、今度は逆に――今までのような方法でいきますと、先ほど萩原さんのお話の中にもございましたように、途中で運賃が上がったとか、あるいは物価が上がったとか、いろいろ問題が起こるわけでございますが、そうではなしに、客観的なはっきりした、今申しましたような意味での合理化の最終目標というものをきめて、いつまでにやるか――その前提条件として何が必要かという問題は別として、特に先ほど萩原さんからお話がありましたように、離職者対策というような点には十分な措置を講じなければいかぬと思います。そうしてここまでいけばいいのだという目標をはっきりきめる、私の考えでは一日当たり出炭十トンとか何トンというめどをはっきりきめたらどうか、それが三十トンになるのか、四十トンになるのか、四十五トンになるのか、五十トンになるのかは研究してもらわなければいけませんが、そういうふうにして、一方また私に言わせれば、石炭業者の責任に属する事項はそこまでだ、こういう点をはっきりしたらいいと思いますが、いかがでございますか。まだお尋ねしたいことがありますが、先にその点をお尋ねしておきます。
  17. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 ただいま御質問のありました出炭目標、これはいかなる会社においても、各国においても、一つの目標をその力に応じて持っております。また通産省においても、政府においても二十六トンを四十八トンにしようというように聞いておりますが、問題はあらゆる条件が具備したとしたなれば、それは日本石炭といえどもあえて西独に劣らぬ。あるいは鉱区の整理等あらゆるものをやりまして、やれましょう。また、これについては組合員の各位も御努力願わなくちゃならないのでありますが、しかし問題は目標を立てる――これは立てておかなくちゃいけませんが、立てるだけでは先ほど申しました目論見書になってしまうのでありまして、われわれは、それが業者の責任であるといいますが、目標を立ててこれだけのことをしてもらいたいという点については、格段の御配慮を政府に願いたい、こう思うのであります。これは大、中、小の炭鉱がありまして、今ここで何トン、能率幾らということは申しませんが、現に大手のうちでは四十トンに到達している会社があるのであります。この一つの実例をもっても――これは条件を具備しておりますが、できないことではないと思うのでありまして、われわれはそういう目標を打ち立てるように努力はいたしますが、しかし先ほども申しました通り、これがもしたまたま算術的に見ての能率増進だったら大へんなのであります。人間の頭数を切って、割ってみたら多くなるというような行き方でないことを望むものであります。そうして能率を上げていくと、逆に人間が余ってくるという問題に当面いたしますので、それに対する離職者対策ということも要望いたしております。われわれとして最大努力を払って大体どのくらいの能率にまでいけるかと考えますと、いろいろな前提、またそれをやるために生ずる障害というものが非常にからんで参りますので、ここで何トンということは申し上げられませんが、そうしたものも取り払うことができ、また対策ができたならば、おそらく西独までいかないとしても、優にそれに近いところまでいく能力は山にはあると思います。しかし、そのためには非常に大きな問題が前にあるのでありまして、非能率炭鉱の閉鎖というようなこともあることはもちろんでありますが、ただ、そういういろいろな労務問題や何かすべてを取っ払って、純粋に日本炭鉱業者としてどれだけの力があるんだという御質問と解釈いたしますれば、私は西独に近いだけの能力は出し得る、こう考えております。
  18. 始関伊平

    始関委員 そこで、私の申しましたエネルギー対策の第三の問題に入ります。第三の問題と申しますのは、石油の価格を安定させる、それから石炭の方は目標まで下げる、時間もかかるし、条件もありますが、とにかく石油を、萩原さんのおっしゃるように、日本の行きつき得る最高の能率というものを目標にして、そこまで参りましてもまだギャップがある。そこでこのギャップの埋め方ですが、政府説明をいろいろ聞いておりますと、そのギャップはギャップでそのままにしておいて、価格のアンバランスはそのままにしておきまして、そうして石炭国内で使えるようにしよう、こういうことのように思います。それがつまりいわゆる長期引取契約でございます。その一番大きいものが電力であり、その次が鉄鋼である、こういうお話でございますが、しかしこれは、セメントになるともうその点はあやふやになる。石炭業界意見書によりますと、これは私はあまり感心しない点なのですが、どの産業で何は幾らで、石炭は幾らで、石油は幾らで――どれだけ使うかは政府の介入すべき事柄ではなぐ、「それは主力私企業相互の話し合いにまかすべきことだとして、問題の困難さを忌避するがごとき態度はとるべきではないと思う七」こう書いてあります。つまり、これは私が先ほど申し上げましたように、戦時中にありました物資動員計画というような頭で、高いものを業者に押しつけていこう、だから業界の力ではできないと思いますから、その点について政府は責任を持て、こういうことのように私は了解をいたすのでございます。一体こういうことでは需要の安定策になるのかどうか。私はならないと思うのでございますが、需要の安定策というものがこういうことで、それによって石炭業の経営者労働者も、もう大丈夫だ、金融機関も、それじゃ金融をつけてやろう、こういうことになり得るのかどうかということをお尋ねしたいのでございます。申し上げるまでもございませんが、これは非常に議論のしにくい点でありますけれども、問題は価格のギャップなのでありますから、その点について何らかの措置を講ずる。これはドイツあたりでも非常に議論がやかましかったと思いますが、とにかく一キロリットル当たり二千円ちょっとの消費税をかける、こういうことで解決をしておるのでございまして、私は長期引取契約というものに格別けちをつけようとは毛頭思わないのでございますが、それだけで一体やっていけるのかどうか。経営者労働者も安心してやっていけるのかどうか。その点を一つ、重大な問題ですから、率直にお考えを聞かせていただきたい。
  19. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 ただいまの御質問にお答えする前に、さきの質問に対していたしました私の答弁に対しましてお話がありましたので、重ねてその点に一言触れさしていただきたいと思います。  ある目標を立てて、そこまで到達した場合において、その後においてはということでございましたが、むしろそこまで到達することが問題なのでありまして、到達した暁において安定の手を打つということでは、安定の手がないと同じ結果になる、こう私は思うのであります。  それから第二段の御質問にお答えいたします。そこに、協会で出しました意見の中に、業界同士の間の契約を自由に放任しないで、政府もこれに介入することを要求するというふうな意味になっておりますが、これはこういうことでございます。率直に申しますと、われわれは先般、鉄、石炭、ガスその他と長期の取りきめをいたしました。そして、こうした長期の取りきめができた――一社々々ではございましたが、これが固まってできたということは、まことにけっこうな傾向なのでありまして、私は、先ほど申しました、西独における友情の経済の方向に足を踏み入れたものと解釈いたすのでありますが、われわれの心配しているのは、このままで年々の取引によってやっていって、この長期契約が絶対に確実にいくことを信頼しきってよいかどうかということに一まつの不安があるのでございます。これは稻山さんを前に置いてはなはだ恐縮でございますが、今は順調にいっております。しかし、今問題として取り上げられないLPGというものが非常に入ったならば、あの契約だったら、はたしてその通りの数量の取引をやっていこう、これは国民経済の上からいって必要であるからやっていくということが履行されるかどうか。私は、せっかくの好意というか、取りきめたことに対して信頼しないということははなはだ心苦しいのでありますが、現実の問題として安心しきっていられるのかどうか。こういうことは、ここに稻山さんが控えておられるのでございますが、私は現実の問題としていささか不安があるのでございます。そこで、需給審議会なり何なり、何らかの形において――これは押えつけることはできないかもしれません。そういうことはまたすべきものではありませんが、これに何らかの、必ずやれるような、それに、とまではいわなくても、実行しようということが確実視されるような道を政府においても加味して考えていただきたいということで、要は、長期取引云々について石炭業者は憶病かもしれないし、また、こういう立場にあるから非常にひがみっぽくなっているかもしれませんが、安心しきっておれないというところから、こういうような文章になって現われたものと御了解願いたいと思います。
  20. 始関伊平

    始関委員 価格のギャップを補うもう一つの方法についてお答えがございませんが、お立場上どうもお話がしにくいように想像いたしますので、しいて答弁を要求いたしません。  最後に、もう一点お伺いいたしたいのでございますが、先ほど西独のエネルギー政策石炭政策についてお話がございました。私ども調べて参ったのでございますが、西独の石炭政策につきまして、私の印象では、あの石炭対策というものがきわめて限定的なものであるということでございます。生産合理化、いわゆるスクラップ・アンド・ビルド、合理化資金の調達等を含めまして、これは全く企業自体の力と責任でやっておるのでありまして、政府は何らの援助も協力もいたしておらない。西独の石炭業とほかの産業との結びつきの問題も、いろいろ事情の違う点もございますが、きわめて限定的である。しかも私をして言わしめれば、限定的ではありますけれども、非常にポイントをついた政策をやっております。一つは何かといいますと、私は非常に思い切ってやったと思いますが、一キロリットル当たり二千円余りの消費税をかけたということであります。これで競争上の条件のバランスをとった。ゴルフでいえばハンディをつけたようなことをいたしております。ですから、その先のことは業界が自分でやるということになるわけでありまして、長期取引契約がどうなっているかどうかということは全然申していない、金融も自然につく、こういうことでございます。あとは離職者対策、若干の運賃の補助ということでございまして、離職者対策はきわめて重要である。私は、日本の場合にも、これが一番根本的な問題だと考えております。価格のバランスを調整するということと離職者対策、ここに精力を集中いたしまして、関税収入をこれに充てるという行き方であります。ところが、政府説明を聞いておりますと、きわめて散漫でございまして、どこに中心があるかわからぬ。それと歩調を合わせまして、業界の御注文というものはきわめて多岐でありまして、これで見ますと、何もかも政府の責任だというふうな印象を私どもは受ける。それでは私企業の面目あるいは私企業としての実質がないではないかというように考えるわけでございます。ある程度考えてもいいと思いますが、しかしこれとこれさえやってくれれば、あとは業者の自力、また業界の自力でやっていけるのだ、そういうポイントがあるはずだと思う。その点につきまして御意見を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  21. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 われわれが陳情書を出す場合には、これすらも実はより抜いたのであります。八月上旬に出したものは、これの三倍にもなる。これはどういうことかというと、われわれは、この道もある、あの道もある、これもこうだということを言うのが目的でありまして、われわれの考えていることが全部履行されるとは、過去の経験からも考えておりませんが、これが一つのねらいなんだ、これはこうしてくれればいい、根本的にこれ一つはやってもらいたいというふうなことは、われわれ協会といたしましても、ものの順序と作戦があるのであります。一応PRのために使った資料で、並んでいるではないかと害われるとはなはだ恐縮なんでありますが、われわれは、これから山場にかかって参りましたならば、政府の動きと皆さんの動きの様子を見て、可能なものに向かって集中的なお願いをしたいつもりでございまして、やはり協会としては、協会としての効果を上げるための作戦というものもございますので、並んでいるのがどこが中心であるかと言われるとはなはだ恐縮でありますが、これでも問題点の所在をしぼってPRいたしたのが主眼でありまして、いずれまた、ただいまのおしかりまことにもっともでございますので、われわれは、これはどうしてもやってもらわなくちゃならぬということは、山場にかかれば当然再び重ねてお願いいたすつもりでございます。
  22. 有田喜一

    有田委員長 次に、多賀谷真稔君。
  23. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ただいま萩原参考人の、国内エネルギーとしての石炭地位を確立してもらいたいという発言がございました。従来私たちも、昭和二十九年ごろからの不況に際会をして、何度も石炭協会の代表の方に来ていただいた。ところがそれだけ強い発言が従来なされなかった。またその証拠には、国民所得倍増計画政府が樹立いたしましたときにも、エネルギー部会には当然石炭経営者の代表が入っておられるのですけれども、その案を見ると、先ほどからたびたび指摘がありましたように、昭和四十五年度においても五千五百万トン、こういう案ではたして国内エネルギーとしての石炭地位が確立されるかどうか、一体なぜ石炭経営者はこれをのんだのだろうか、こういう危惧を従来私は持っておったわけです。そこで私は質問いたしたいのですが、少なくとも埋蔵炭量が二百二億トンあるといわれ、そうして今後日本エネルギーの消費の伸びは著しいものがあるにもかかわらず、一体なぜ五千五百万トンでいいということを言われたのか。一体現在においても、昭和四十五年度までに五千五百万トンでいい、このベースでいくのだというお気持であるかどうか、その点をお伺いしたい。
  24. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 ただいま、国内資源の重要性についてなぜ業者は早くやらなかったかという、まずおしかりを受けたのでございますが、私は三年前政府に対して意見書を出しまして、四本の柱がある、その中においてこのセキュリティを大きな問題として説き、また社会党におきましても、実は時の委員長鈴木茂三郎氏に要求いたしまして、政策審議会に、勝間田氏が座長でしたが、出席いたしまして、この点を強調いたしたのでございます。もちろん自民党に対しましても十分総務会、政調会等に当たって、私は議会をかけずり回ったのでございます。セキュリティの問題をなぜ言わなかったかというが、業者はみな考えていたことでございます。ただ、われわれ業者が言うことに対して手前みそのように言って、世間が耳を傾けなかったということであります。石炭合理化審議会において稲葉、土屋両評論家のごときすらも、このわれわれの主張というものは軽くあしらっておりました。審議会においても、われわれは主張しないのじゃないのでございます。たまたまようやくこういうふうな多面的に見なければならないという段階になって、世間の世論がこれに耳を傾けてきてくれたということで、われわれは再び強く叫んでおるにすぎないのでございます。  それから第二に、なぜそのような需要の非常な増加があるのに五千五百万トンという線でいるのか。先ほど原君も言われた通り、もし石炭の占める割合というものが十分確保されたならば、あらゆる問題もこの一点から、労働問題も非常に緩和され解決されるのだ、もとよりわれわれは望むところなんでございます。われわれがこう申しましたのは、二つの理由がございます。第一に、日本だけじゃなしに、世界各国の情勢として石炭に対する需要の傾向いかん、その観点から見ましたことと、また、需要があっての生産でありますので、需要の今後の伸び、また石炭をどのくらい使うだろうという算定と、両者相待って見ると五千五百万トン以上は無理であるというところから、やむを得ず五千五百万トンに落ちついておるのでございます。ちょうど三年前私が回りましたとき、フランスでもドイツでもイギリスでも、おそらく需要は現在から見て数年にして約一〇%減に落ちつくのじゃないかという見解がありました。現に、欧州経済機構のロビンソン報告によりましても、石炭需要というものはまずもって十五年間横ばいであろうという報告をいたしております。そうしてこのロビンソン報告が土台となって、明年四月には各国が意見を出してこれを統轄するようになっているようでありますが、私は望むことは望みます。しかし、やはり現実の需要とミートすることによって生産の規模をきめなくちゃならないという考え方でございまして、国内資源という点から見ますれば、一トンでも多く使うようにしてもらいたいということは当然でありますが、考えて、これができるかできないかということにわれわれはやはり眼を向けざるを得ないのでございます。
  25. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、やはり業者が五千五百万トンの安全圏に逃げ込もうとするには、そこに問題があるだろうと思う。第一は鉱区の問題、第二は資金の問題ではないかと思うのです。先般やはり経営者の一人が日本経済新聞に時評を書いて、「わが国にルール屈指の大炭鉱をはるかにしのぐ大鉱区を有する炭鉱が四十もありながら、全炭田面積に対する既開発区域の割合はきわめて低い。」ということに対して警告を発しておるわけです。この趣旨は、炭田別、地域別の公益事業形態にすべきであるという形態論まで述べておるわけですが、この問題を取り上げましても、私はやはり鉱区の統合あるいは鉱区の開放という問題がどうしても開発のネックになっておるんじゃないか。第二点は、資金の問題として、一体鉱区があっても今のような金利においてペイするかどうか、ある炭鉱では十数年かかって鉱区を開発して、できても大体二百万トンぐらいの炭鉱ができると、こういうのですが、業界からいうと、大きな炭鉱になる。ところが、二百数十億もつぎ込んで二百万トンの炭鉱を十数年かかって開発してみても、四千円の値段に考えましても年間に最盛期で八十億の売り上げしかない。こういうことを考えると、確かに企業として一体ペイするかどうか。業者がどうも新鉱を開発しない気持もわからないことはない。金利だけでも食われてしまう。それだけの金があるならば、石炭なんかに投資しないで、ほかの方に投資した方がいいように感じられる。それは私企業であり、経営者考え方からするならば、そういう気持も起こるだろうと思う。そこであなたの方は、どのくらいのものであるならばどの程度開発されるんだ、そうすれば国内エネルギーとして石炭産業地位の確保ができるんだ、こういうことを率直にお述べになったらどうかと思うのですが、いろいろのネックの点を解決したらば一体どのくらいできるか、これをお聞かせ願いたい。
  26. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 ただいまわれわれ石炭業者、経営者が五千五百万トンという線で抑えたというのは、新鉱開発その他においてそろばんが合わないからそういうふうなことになるんだろうという御質問、まさにその通りなんです。私が先ほど申し上げました、需要を測定したということと実は同じになるのであります。なればこそわれわれは、需要のないようなものにまで生産を進めていくのであります。そのことはとりもなおさず、そろばんの合わない山には進み符ないということは、私企業として、これは経営を維持するためにそうなります。その通りでございます。私は、それが国民経済の上から見てよい、石炭鉱業全体の将来のためによいということを申しておるのではございません。私は五年前に、こういう発表をいたしております。私の山に、生産百万トン生産し得る能力のある炭田が二つ、遊休炭田としてあります。当時私は、この遊休炭田を政府に返納する、われわれの金では開けないのだ、資金がないのだ、これを政府の力によって開いてくれということを、鉱区開放論として当時の新聞に大きく記者会見で発表しておるのでございます。もし石炭鉱業の将来のためを考えるならば、鉱区の開放といいますか、また小さくは整理、統合が絶対に必要であることは同感でございます。ただこれは理論として言っておりますが、現実に会社経営安定の上にそれを実施することを理想として、われわれは努力したい。少なくとも私はそうした努力を重ねております。現にこの夏われわれは、自分の鉱区を隣の住友さんに分けております。これは向こうでやった方がきわめて能率的だということで分けております。その理想はやっておるのでございまして、そうなることをほんとうに望んでおるのでございます。しかしそれとこれとは別で、すべてがそういうふうになるという段取りにならないうちに、そろばんの合わないところをどんどんやっていたら、おっしゃる通り会社はその前につぶれてしまいます。そういうふうなことでございまして、私は石炭鉱業の将来という立場から見て、ここにも一つの大きな解決の道があるということについては、ただいまの御質問は取り違えないと思いますが、そういうことをおっしゃるのだと思うのですが、全く同感なんでございます。  それから第二に、それならどうしたらいいか、障害はどこかという御質問でございます。これは、どのようにしてくれということはあまりに大きな問題でありますが、われわれはそうした理想を持っております。現に、鉱区を出してしまうから政府でやってくれというようなことを言っておりますが、金融措置としてどういうふうにやってくれたらよいかということはきわめて数字的には困難でありますが、まず私の年来の主張として、もし新鉱があるならば、その営業に入ってやることは非能率でいけませんが、開発工事としては、ちょうど電発のように、政府でおやりになるのがいいと思っております。そして資金は政府で出しておやりになって、非能率炭鉱で働いている人がそこに寄っていったらいいんじゃないかと思います。これがどのくらいの金額で、どういくんだという計算は、実はあまりこまかいことはわかりかねるので御答弁申し上げかねますが、私は考えとしてはそう思っております。北海道に人のも入れて四つあるのですが、年産百万トンの山を四つ開きなさい、政府はこれを取り上げてよろしいといったが、あのとき、五年前にやっていたら、非能率炭鉱が閉鎖されて、そこに働いている人は全部そこに寄って、きわめて能率的な、近代的な炭鉱ができ上がっていたと思うのであります。実は石炭業者としては、決して会社の利益ばかり追求しておるのではありません。人のことはわかりませんが、私個人といたしましては、現実にこれは私が提唱しておった問題なんでございます。どうぞ御了解願いたいと思います。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、たとえば電発のごとく、あるいは石油資源開発株式会社のごとく、現在の休眠鉱区は政府でやる以外には手がないのじゃないかと思うわけです。われわれはその線に沿って一つの法律を出しておるわけですけれども、これは決して現在の私企業である炭鉱の既存会社を侵すものではない、こういうように考える。五千五百万トン以上を求めるとするならば、その方法以外にないのではないか、こういうように考えるわけです。炭鉱の方から出されておりますこの「石炭業界はかく考える」という中に、炭鉱自体のことは言っていないのですが、電力会社のことは言ってあるのです。それは政府機関として石炭火力発電所を設けてもらいたい、私はこれもけっこうです、反対ではありません。これもけっこうだけれども、自分のことは言わないで、よそのことを、一つ国費で電力会社の火力発電所を設けてくれ、ちょっとこの言い方は――私は、まずもう少し自己のことをやって、それからよそ様のことを言うべきではないか、こういう感じがするわけです。  それは別といたしまして、流通機構の面について、私はお聞かせ願いたいと思うのでございます。これも実は現在の石炭合理化法を出しましたときに、御存じのように昭和二十八、二十九年のあの不況のとき、すなわち非常に貯炭が余ったときに――三十年になってやっとああいう形の法律ができたわけです。問題はむしろ需給関係にある。当時は、大手炭鉱はつぶれるということはありませんでした。販売が不安定な炭鉱がつぶれていったわけです。ですから、需給関係の調整ということが非常に問題ではないか。ことに、雨が一割よけい降ると三百万トンからの石炭が要らなくなるという日本の自然条件における炭鉱の需給関係というものは、非常に調整が困難であるから、何らか調整会社が必要ではないか。こういうことをわれわれは当時叫んだわけですが、炭鉱の方からは賛成の意見が出なかった。ところが、今日石炭協会の方から出されております案を見ますと、需給調整会社の設立というのが出ている。これは法律に基づいてやってもらいたい、しかも輸入炭はこれで一手買い取りをしたい、こういう案であります。これは今後とも相当推進される気持があるかどうかということと、さらに現在、率直にいって、炭鉱労働者には案外同情がある、石炭についてはあまり同情がない。それは日常使うのに煙が出たり、かすが出たりするのも一つでしょう。しかし、一般国民は非常に高い石炭を買っておるというところに問題があるんじゃないかと思うのです。炭鉱が非常に不景気で貯炭が余っておるのに、東京において市販されておる石炭はやはり相当高かった。そこで、これはどうしても流通機構というものを整備して、一般市民に同情のあるような石炭、サービスをよくするような石炭が必要じゃないかと思うのです。第一、豆炭を使うにしても、石炭を使うにしても、容器なんかも全然サービスもないし、アフター・サービスもない。自分のところの石炭がどこに売られておるか、どういう人たちが使っておるかも御存じない炭鉱も相当多い。これでは、ほんとうに石炭需要の開拓はできないのではないかと私は思う。暖房用、厨房用なんかの需要は、努力すればまだ相当できるのではないか。現在、都市は御存じの都市ガス、その周辺はプロパン・ガスでしょう。しかしさらにその周辺になると、まだ石炭需要の開拓の余地があるのではないか。これは数からいえば大したことはないかもしれませんけれども、そういう面についてどう考えるか、流通機構の整備についてはどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  28. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 どうも私の答弁は、協会長としての答弁と私個人としての答弁と、二重人格になるおそれがあるのであります。と申しますのは、ただいまおしかりを受けました、今日需給調整会社考えながら、当時われわれが言ったときは乗らなかったじゃないか、これは率直に申して、いろいろな点から見て、協会において、石炭業者において長い見通しがないということだと思うのであります。決してわれわれはそれに対しては言いわけいたしません。その通りであります。ただ二重人格となるというのは、ただし私はそうでなかったということを言いたい、こういうことでございます。現に私は、あえてあの石炭の余ったときにも率先して長期安定取引を富士鉄とガス会社とに実行いたしました。当時、私はいろいろな点において物笑いになったのですが、これは個人としての萩原吉太郎への御質問なら、私は非常に異議があるのでございますが、石炭業者としてなかったということであったなれば、私はあえて弁解申し上げようもない次第であります。  それから、第二に、流通機構のいろいろな点の御質問がございましたが、確かにわれわれは改めなければならぬところが非常にございます。これは原君が指摘したように、また炭労が指摘したように、現実に起こっている大きなこの危機突破のための一つの処置としては、現実に人員整理が行なわれ、すでに六万人行なわれておる。しかるに、流通機構その他の整備において、その他打つべき抜本的な手において、業者でやればやれるであろう点において、なかなか遅々として進まないということも、これもまた認めます。しかし、私はそれではならないと思う。われわれ協会の事務当局といたしましては、おそまきながらも、この点についてこれだけのことを国会政府、世論に訴えておるのに、みずからのことができないようでは、これは言う資格がなくなりますので、これについては精力を集中してやり、またいろいろの意見もありますが、この意見の統一をはかってやっていくように努力いたす決心でございます。  それから最後に、需要の喚起ということについて努力が足りないということでございますが、まさにその通りでございます。われわれも、そうした需要の喚起ということにつきましては非常に努力しなければならないと思うのでございます。現に東北方面においては、まきを使っておるところも多いのです。なぜそこに開拓できないのか。われわれの努力が足りないことを認めまして、販売面についての努力も今後しなければならないと思うのであります。御質問需要喚起ということでございますが、私は、こういう機会に言うと、お手前のことばかり言っているようではなはだ心苦しいのでございますが、私が六年前、石炭化学の研究所を起こしましたのも、実はこういう意味において石炭需要、用途を見出そうというためでありまして、すでに初代亀山先生、次は技術院の黒川さんを迎えましてやってもらっております。この気持は各業者も持っておるのでございます。ただ、まだ至らないところがあることは、われわれがこうして皆さんにお願いする以上、われわれとしても今後ともそういう面にも十分意を尽さなくちゃならない点があるということは認めまして、お答えといたします。
  29. 有田喜一

    有田委員長 委員各位にお願いしておきます。実はだいぶ予定の時間を過ぎて参りましたが、まだ参考人あと三人残っていらっしゃる。ことに稻山参考人は午後講演会があって、その約束をされておるので、せっかく来てもらったのですから、ぜひやりたいと思いますので、一つ皆さん御協力を願いまして、質問はきわめて簡単に、参考人方々もなるべく要点だけ簡潔にお願いいたします。次に、蔵内修治君。
  30. 藏内修治

    ○藏内委員 萩原社長にごく簡単に、同僚委員から御質問がありました以外の点について御質問を申したいと存じます。  ただいまの石炭廃業の規範になっておりますのは、申すまでもなく、石炭鉱業合理化審議会による三十四年の決定でございます。これについて、ただいまその合理化基本計画並びに実施計画が現状とかなりそごをきたしておることは、業界各方面から指摘をせられておりますし、われわれもその点を非常に痛感をいたしている点がございます。しかしながら、いろいろ基本的な総合エネルギー対策の問題は一時おくといたしましても、石炭産業は、石炭という商品を採掘し、そうしてこれを販売しておる業態でございます。従いまして、石炭の価格、炭価というものが、やはり一番重要な問題としてしぼられてくるのじゃないか、私はそういう気がするのであります。きょういただきました要望書の中にも、石炭産業は現在すでに金融機関の投融資の対象になっておらぬというようなことが書かれております。それはその通りであり、また、現在いろいろ政府がこれに対して金融措置を講じても、それは今の危機に対する一時的な資金というか、運転資金に立ちどころに消えてしまって、銀行の投資対象という企業としての安定性はなかなか出てこない。そこで質問になるわけでありますが、昭和三十八年度には、この合理化計画では、石炭産業というものは一応エネルギーの自由競争に耐え得る段階まで持っていくということになっておるのでありますが、これについて石炭協会として希望というか、三十八年度にはおれたちは石油競争できるという見通しをお持ちになっておるかどうか、希望をお持ちであるかどうかという点が第一点であります。  それから第二点につきましては、この合理化計画の中にも、いわゆる標準炭価というものをきめるということが書いてあります。しかしながら、標準炭価というものは、現在全くこれは石炭の流通に対しては意味のない決定であるということも、御承知の通りであります。そこで、三十八年度に千二百円下げるということにはなっておりますけれども、このような経済変動の相当著しい情勢に際会した際には、むしろ毎年度において適当な炭価を決定していくのが適当ではないか。そうして新しい意味での標準炭価というものを設定をして、それに対して政府から価格に対する補助金ないし助成金というものを出すような形に持っていかない限り、この石炭の価格の安定といいますか、そういう意味での価格の安定、商品としての価格の安定というものは、私は出てこないのじゃないかという気がするのであります。石炭鉱業合理化法の中にも、第五条には、経済情勢の著しい変動の際に際しては、審議会の意見を聞いて合理化実施計画合理化実施計画を変更しなければならぬということが義務規定で書いてある。それにもかかわらず、六十二条には、その石炭の価格というものを、価格において変更するということではなくて、生産数量においてこれを調整するように書いてある。この件に対して、一体生産業者としてのお立場で、これでいいとお思いになるかどうか。この量的規制において調整をするという点は、私は現状では著しく不適当ではないかと思います。そういう点について、一括して御答弁を願いたいと思い  ます。
  31. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 千二百円を三十八年度あたりまでに下げる自信ありやいなやということについては、全くございません。私はもしそうした自信があるなれば、今日ここで皆さんに訴えておりません。これは千二百円の値下げをやらない、やらないでもかまわないのだ――大手が一たん決定した線は守りたいと思っておりますが、これは理論ではなくて現実でございまして、現実上できなくなっております。いろいろ先ほど申し上げました通り、本年二百円ないし二面五十円の値下げをいたしました。これもこの合理化審議会の路線であります。その結果、この三十六年上期の大手十八社の平均を見ますと、  一トン当たり三百五十円の赤字であります。さらに、もしまた合理化審議会において、千二百円の路線で明年もさらに二百円ないし二百五十円下げるとすれば、五百円ないし六百円の赤字が来年においては出て参ります。そうした場合に、われわれ遺憾ながら、その間においてこれをコストにおいて消すという自信は全くございません。従いまして、私は理屈でうまいことを言うのではなくて、われわれに、その千二百円下げる、そこで対抗していくということに自信があるかといえば、自信がない。いかにおしかりを受けようと、理論の上で何と申されましても、現実は現実でありまして、できない、自信がないとお答えするほかないのでございます。そのために私は政府に、想を新たにして抜本的な対策をここで立ててもらいたい。これは政府の態度がいいとか悪いとかいうことではなくて、われわれとしてはただ、現実がそうであって、それ以外に道がないということを訴えておる次第でございます。従いましてその場合に、調節について合理化審議会にいろいろ規定がございまして、ただいまおっしゃる通りでありますし、また価格がここまでいったらとかいろいろございますが、これはすでに私といたしましては、この合理化審議会の案というものが、千二百円のときの前提を全く無視して、しかもこれに対して真剣に取り組んで――これを彌縫しようというか、大きく実るように仕上げようということをなされない現状でございますから、従って、それから先、こういうことを言っていても、これは現にやっておらない現状において、非常に法案無視のようでありますが、そうした規定があっても、どちらがいいとも何ともわれわれは、言う段階ではないような気がいたしておるのでございます。はなはだありのままの真情を訴えて、答弁にならないかと思いますけれども、ほんとうにそれだけ石炭業者は、はたから見れば何だかしりをまくったような、まことに理屈の通らないことを強く言っているようでございますが、全くただいまのような、答弁になるかならないかしれませんが、そうした答弁をするより仕方がない現段階にあるという一点を、どうぞ御理解願いたいと思うのでございます。
  32. 有田喜一

    有田委員長 滝井君。
  33. 滝井義高

    ○滝井委員 萩原さんに三点ばかり、少し露骨な質問ですけれども、率直にお尋ねしたいと思うのです。  それは今のお答えで、千二百円という三十八年までの引き下げは、ほとんど業界としては見通しがない、自信が持てないということがはっきりいたしたわけです。千二百円に見合って出る出炭量というものは五千五百万トン、こうなっておるわけです。五千五百万トンの目標を達成しようとすれば、千二百円の引き下げの隘路になっておる運賃の値上がりの問題とか、資材の値上がりの問題とか、あるいは自由化の繰り上げの問題、あるいは勤労者の老齢化の問題というようないろいろの隘路を、当然これは石炭に関心を持ち、それに関与しておるすべての者が協力をして、千二百円下げる上の隘路をやはり克服しなければならないと思うのです。しかし、さてそれを克服した上で、先日通産大臣にお尋ねしたのですが、五千五百万トンの炭が出た場合に、一体この需要すなわち五千五百万トンの炭の運命というものはどういう工合になっていくのだ、こういうことです。これに対して通産大臣はその七割は保証しましょう、必ず政府は七割はどんなことがあったって保証していく、こういうことになったわけです。三千八百万トンは保証する。ではその具体的な保証の仕方はどうなるのだ、こういうことになる。政府の答弁によりますと、こういうことがはっきりしてきたのです。  まず、五千五百万トンの中で原料炭、無煙炭が千五百万トンあります。これは今大体安定しておるから心配要りません。そうすると残りが四千万トンです。四千万トンの中で二千万トンを電力に持っていく。これは今、電力、鉄鋼等の長期契約というものは非常に不安定だ。ということでございましたが、これは政府がどんなことがあったって電力には二千万トンやらせますという大体言明がありました。そうすると、あとは二千万トンです。原料、無煙炭千五百万トンと今の電力二千万トン、三千五百万トンですから、あとの二千万トンの運命をどうするか、これが問題。あとの二千万トンの中の約八百万トンというものは、政府は、固定需要だからこれは動きませんと、こう説明したわけです。そうすると、残りは千二百万トンになる。一体この千二百万トンをどうするかということが、私は今後千二百円の隘路を克服して五千五百万トンが出たときの一番の問題点だと思う。そうするとその千二百万トンについて政府は、そのうちの約五、六百万トンは北海道あるいは九州における産炭地で使われる、従って残りの六百万トンが問題だ、こうなってきたわけです。こういう政府説明がございましたが、一体そのような五千万トン近くの使用の方法というのは、今のような政府説明で萩原さんの方の業界としては納得をするかどうかということが一つ。それからもう一つ、一番最後における六百万トンのこの過剰炭というものの新しい需要を拡大をする何かいい方法が、業界としてはあるかどうかということです。これは今政府は、六百万トンのうちの三百万トン程度については、揚地発電、産炭地発電、そのうちでも特に揚場発電をやりたい、こういう気持の表明があった。この六百万トンの運命と四千九百万トンの政府のそういう説明というものは、業界は大体その説明ならば納得がいく線であるかどうか、まずこの御説明を伺いたいと思います。
  34. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 非常にこまかい数字に入った御質問でございまして、また、それがしかも将来の見通しについての問題、さらにそれがまた通産大臣の答弁に対する批判になりますので、非常にむずかしい問題に相なったのでございますが、私は、三十八年五千五百万トン、これがどうも今見込んでいるよりも電力、鉄鋼それ以外において需要に若干の減りがくるのではないか、これをおそれておるのでございます。数字は今詳細に、手元に資料を持っていませんけれども、そういうこまかい点に入られることを支度してきたのですが、見込みは立っておりますが、実は私たちはぜひそうした不足の――六百万トンというふうなお話でしたが、われわれの方はそこまでは見ていないのですけれども、今後減ってくる分を電力会社にたよろう、また電力会社にたよるにしても、国営の発電所を作ってもらってとれを消化してもらうという方針で今動いております。それですから、通産大臣が言った数字一つ一つが妥当なりやいなやということは、私としても非常に数字にうといので、手元に資料がございませんししますが、少なくとも若干ショートしてくる、業界としてはそのショートを発電に求めようとしているという、答弁になるかならないかしれませんが、それでごかんべん願いたいと思います。業界としてはそういう見通しでございます。
  35. 滝井義高

    ○滝井委員 それからもう一つは、現在、あなたの方からも、原さんからも御説明がございましたが、炭鉱労務者が非常に老齢化してきたということです。三六・六才が最近はおそらく三八才くらいになっているのではないか。そうして優秀な技術者と若い人が、とにかく退職金さえくれればやめるという状態になってきた。この炭鉱労働力の老齢化に対する対策なくして、安いエネルギーと安定した供給というものはないと思うのです。その場合に一体経営者としては、この労働力の確保という問題についてどういう基本的なお考えを持っておるのか。
  36. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 その問題は全くわれわれ頭を悩めておる問題でありまして、これに対してどのような確保策を持っておるかということは、率直に申し上げると、今日の炭鉱労務者が置かれておる現状におきましては、その対策に悩んでおるのでございます。だから、こう補足してこうやるのだということの案というものは、確実なものはまだ打ち立てておりません。これは確かにその通り老齢化ということが炭鉱の将来に非常に大きな問題になって参りますが、これは石炭鉱業というものに対して一般の労働者に魅力がなくなってきている。この状態のもとにおいては、いかに手を打っていいか全くとほうにくれていると申し上げるよりほかないのでございます。しかし、われわれといたしましては、それでもまあ山元におきましては、ともかく一つ炭鉱地帯というものを形成しておるのでございますから、その子弟の入れかわりその他によってそれを吸収するようには努めておりますが、これなれば一般の労務者が来て働くのだ、昔炭鉱に来て働いたと同じように来るのだという自信はなかなかございません。
  37. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも、何もかも自信がなくなっておられるようですが、最後に、これもなかなか辛らつな質問ですが、実は炭鉱労働者にはある程度同情があるけれども炭鉱に対して、ということは炭鉱経営者に対してということなんですが、同情がないということの一つの大きな問題点として出てきているのは、特にこれは大手の代表の萩原さんに言うわけですが、大手が鉱害に対して最終責任を負わない状態が非常に多くなってきておるということなんです。たとえば、私は築豊炭田のまん中を故郷として生まれて育ってきたのですが、私の四十年の生涯の中で、私の家のあるところは、鉱業権者が四回かわったのです。そうして結局今どういうことになっておるかというと、もう名もなくと言ってはおかしいけれども、あまり有名になり過ぎて困っているのですが、とにかく非常に迷惑をかける状態になってきた。それは初めは大手が持っておったわけです。そうして大手は一切の責任を、もう四代かわったそこに負わしてきてしまったわけです。そうしてどういうことになっておるかというと、四代かわった人に炭は掘らせるけれども、炭の販売権は自分がみな取ってしまう、こういう形になってきた。従って、その地区の住民は一番初めに持っておった人を一番恨む、いわば大手の人を一番恨むのです。こういうやり方をもし日本大手石炭産業が今後も依然としてやるとするならば、やはりさいぜんから言ったように、もうすみやかに国営なり国家管理をやってもらった方がいい。なぜならば、出た炭は自分が販売権を持ってもうけておるけれども、鉱害の方は一つも知らないでほうり出しておる。こういう形はやはり大手の業者の中で自粛自戒してやるようにしないといかぬと私は思うのです。それが今、三井さんでも三菱さんでも公然と行なわれておる。いわゆる石炭産業の撤収をやるときには、自分の財産は確保するけれども、鉱害については令部捨てていくわけです。労働者を首切り、鉱害を捨てていく。それをいかに合理的に、いかに合法的にやっていくかということが、今の大手の一番大きな経営上の問題にもなっているようでもあるのです。こういうことはやはり、こういう石炭産業の危機に直面して国民的な支持を受け、国民とともにこれを打開しようとするならば、それをやっちゃいかぬと思うのです。現在五百四十万程度の人が石炭産業で食っているけれども、それらの人はみんな石炭産業を恨んでおる。それらは今まで石炭産業に恩恵を受けたことを忘れて、恨み始めている。これはどうしてかというと、合理化により閉鎖するということについては、これで石炭産業とお別れだという気持があるからです。こういう点に対する大手の代表としての人道的な見地からの御答弁を一ついただきたいと思うのです。われわれが石炭産業を人道的に今後守ろうとするならば、やはり大手の業者の鉱害その他については人道的な立場から片づけるというのが、フェア・プレーの精神ではなかろうかと思うのです。
  38. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 私としては非常に答弁のむずかしい御質問を受けたわけでございます。と申しますのは、率直に申しますと、実は自分は北海道にだけしか鉱区を持っておりませんので、協会長になった以上はそれではいけないのでございますが、協会長になって間もないので、鉱害の問題について現場の状態の把握ができておらない、そういう意味でございますから、きわめて抽象的な御答弁になると思うのでございますが、お話の通りであれば、もしこれが私が三井の社長であり、三菱の社長でその鉱区を持っておりますればまた違った、これはこうでございますとか、反対の理由をあげられるかもしれませんが、私は何も持っていないのでありまして、それができませんが、ただいまお話の通りとあれば、それは何といっても遺憾なことであると申し上げるほかないのであります。ただいま御質問のあったのをいい機会に、この点は私協会に帰りましてから、こういう御質問があったということで、人道上から見ても少なくとも大手としてはこういう質問があったことについて考慮してもらいたいということを、協会長としていたす所存でございます。
  39. 滝井義高

    ○滝井委員 実は、さいぜん多賀谷君が日本経済新聞の一部を、ある鉱区権者の意見を引用いたしました。あの中にも出ておるのですが、二キロ平方の鉱区が五百九十も日本にある。いわば日本は、耕して天に上るということがよくいわれますが、ある農民がずっと耕して山の上のところまで行って、夕暮れになったので、自分の植えたたんぼが幾らあるか数えてみたら、どうしても一枚だけ足らない、何回数えても一枚だけ足らない、それでもうやめたといって、かぶっていた帽子を取ったら、その帽子の下にたんぼが一枚あったという姿に、日本の鉱区というものは分断されておる。そのもとはといえば、みな大手から中小中小から零細、零細から何が何だかわけがわからぬ人にいく、こういう形なんです。これはお帰りになっていろいろお調べいただかなければならぬが、こういう形になっておる。そして、その販売権というものは大手が握っておる、こういうことは今後やはりやめていかなければならぬ。そして今後はもう大手が山をやめるときには、いさぎよく合理化事業団にお売りになることです。そうして、もしそこに炭が残っているとすれば、それは将来別の観点から開発をするというような基本方針を、やはりあなたの方でも討議されてお出しになっていただきたいと思うのです。
  40. 萩原吉太郎

    ○萩原参考人 ただいまの御質問については、私もその該当者でございます。実は昨年私のところでさんざん論議をいたした問題でありまして、こういう意味で、ただいまの御質問についてはまさに、お前はどう考えるかという質問で、先ほどの質問と違ってぴったり当てはまってしまったのでありますが、まあ私どももやってしまっておるのでございますけれども、これを締めていいかどうか、大手から租鉱に脱落して次から次へという、この行き方がいいのかどうか、われわれの方でも傍系会社として租鉱区を持っておりますが、はたしてこういう形がいいかどうか、さればといって、それを締めてしまうのもいかがかと、私どももその点をいろいろ考えておるのでありますが、少なくともこうした行き方は、大体において炭労の意見としてもそれはいかぬという意見のようでありますので、今後については、またすでにやったものについてもよく考えたいと思っております。     ―――――――――――――
  41. 有田喜一

    有田委員長 大へんおそくなりましたが、それでは次に稻山参考人にお願いしたいと思います。参考人稻山嘉寛君。
  42. 稻山嘉寛

    ○稻山参考人 先ほどから御意見を承っておりまして、まことに同感の御意見が多いのでございますして、もうこれ以上私は何も申し上げないでいいのじゃないかと思うわけでございます。と申しますのは、石炭産業が必要でありますことは、これはもう申すまでもないのでありまして、これはどうしても国のために保育していかなければならない問題だと思うのであります。ところが、これだけ意見が一致をなさっておられながら、なぜとれが実現されておらないのかということが、私はまことに不思議に思うのでありますが、結局勇気がないのじゃないか。政策をきめますときに勇敢でないということだろうと思います。  もう一つは、産業というものを、何か官民ともに他人の商売だと考えておるのではないか。こんなことを申し上げるとはなはだ変でありますが、仁徳天皇が民のかまどの栄えたのを見て、国として喜んだということであらねばならないと思うのであります。ところが、ただいまでは鉄が少しもうかり過ぎますと、製鉄屋けしからぬというようなこと、設備投資をちょっと使うと、われわれは国のために作っておるつもりでありますけれども、それはそうじゃなくて、もうけるために作っているのだろう、こういうように考える。また、鉄屋自体も社会性の認識が足りませんで、自分のもうけのために鉄を作っている人が非常に多いと私は思うのであります。それであってはいけないので、他人の鉄を作る――百姓が、自分の米を作るのじゃない、他人の米を作る、こういう自覚を持つ必要があろうと思うのであります。そういう考え方に立ちますならば、この皆さんの御意見が一致した石炭の問題、また、もう一つ大きな問題といたしまして船の問題があろうと思いますが、これらの問題にそんな長い時間をかけておるということがおかしいのでありまして、時は金であります。早く救済なされば五百億で済むものが、時間をかけると、一千億かかってしまうわけであります。どうぞ、鉄のために申しておるのではないのであり、国全体の産業としての石炭をお考え下さいまして、一日も早く石炭の安定をおはかり願いたい、私はこう思うのであります。ことに石炭の必要なことはもう当然でありまして、外国から重油を持ってくることももちろん必要でありますけれども、外貨の関係からいたしまして、そんな余裕のある外貨があるはずはないのでありますから、国の資源は、何としても使っていかなければならぬところであろうと思います。ただ、経済でございますから、石炭業界が立ち行くように、もうかる企業でなければ、これは成り立たたないわけであります。しかしまた、今度消費者の側から見ますと、安いのでなければいけないわけであります。何も安ければいいというような意味で申し上げているのではないのでありまして、あらゆる石炭の消費産業も、また輸出をどんどんしていかなければいけない、輸出競争力をつけていかなければいけない、また、国としても、低物価政策をはかっていかなければいけないのだろうと思うのであります。この、両面からいいまして、安い石炭であらねばならない。しかも、それが安い価格で売っても、なおもうかる石炭業者でなければいけない、こういうことだろうと思うのであります。この問題を解決いたしますために、われわれは長期の契約を――先ほど来お話し申し上げました萩原さんから、怪しいんじゃないかというようなお話がありましたが、決して怪しくない。われわれとしては、もちろん高くても、がまんしてとっていかなければならない立場でございます。ただ問題は、それは根本的な解決ではない。もっと根本的な問題があろうと思うのであります。  その根本的な問題というのは何かというと、結局安いコストにするためには生産性向上、ことに労使の協調あるいは企業内部の合理化をはかっていかなければならないわけであります。こういうことを解決するためには、必ず転職、離職、失業という問題が起きてくる。その失業を、当然差しつかえないんだといってそのまま何の対策もしないということは、これは福祉国家でなくてもそういうことはいけないのでありまして、どうしても社会保障制度の確立ということは、ぜひともやらなければいなけいと思うのであります。私は、一時、社会保障をやるべきだ、これはだれでもわかっているのですが、国に予算がない、こういうお話でございます。それは確かにないかもしれない。しかし、ないとは私は申し上げられないと思うのです。ということは、われわれにいたしましても、百人でいいところを百五十人完全雇用のためにかかえておるとするならば、五十人は、生産をしない人のために賃金を払っているのでありますから、その五十人を外へ出して、その五十人に払っている給料をつけて差し上げたらいいじゃないか、そうすれば能率は上がるわけです。そうしているうちに、国全体が、コストが安くなりますから産業が起こってくる、職場ができる、その職場へ新しい人をどんどん送り込んだらいいじゃないか、金のないということは理由にはならぬというような大げさなことを言ったことがあるのでありますが、それがそのまま採用されるなんということは毛頭思っておりません。しかし、そのくらいのドラスティックな勇敢な案が必要ではないか。また、金融をいたしますのに、年末二百倍要るんだというならば、三百億やっていただきたい。決して使ってしまいはしません。かえってよけいやると、子供は金を使わないというようなことであります。そういう意味で、どうぞ安い石炭、もうかる石炭業界にしていただきたい。そのために、もしかりに一時国家で補給してやらなければいけないということであるなら、補助金を差し上げてもいいと思うわけです。ただ、それは生産性を害するといけない、つまり競争心がなくなるといけませんから、今までのような補助金でなく、企業家が労務者の給料を三万円払う、しかし三万円は払えない、安い石炭にするためには三万円は払えないというならば、一万五千円企業者に払わせて、あとの一万五千円を国家で補給してあげれば、生産性を妨げずにできるのではないか。三十万の労働者がおられるそうでありますが、それに対して一万五千円ずつ月々払ったって、五千億も政府に税金があるそうでありますから、それを使えばいいと思います。  いずれにいたしましても、石炭業というものは大切なものであります。どうぞ、私たちも消費産業といたしましてできるだけの援助はいたしますが、問題の根本は国家の保護政策の問題だと思いますので、簡単でございますが、以上お話しを申し上げました。(拍手)
  43. 有田喜一

    有田委員長 稻山参考人、ありがとうございました。  質問があるそうですからこれを許します。多賀谷君。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 瀞時間がないから恐縮ですけれども、実は鉄鋼に使われておる原料炭ですね。むしろ鉄鋼の方がよく原料炭の状態を調査されているのではないかと思うのですけれども日本の原料炭は開発の余地が相当あるのか。これは強粘結炭はもちろんあまりないのですけれども、弱粘結にしても、相当資金さえ投ずれば開発の余地があるのかどうか、こういう点がわかりましたら、お知らせ願いたいと思います。
  45. 稻山嘉寛

    ○稻山参考人 原料炭は、一応石炭生産量の二割くらいということで、大体限られておるようであります。し、かし、やりようによってはまだあるのではないかと思うのです。それは最近、新しい有明湾の問題とか、いろいろまだあるわけであります。のみならず、カロリーを上げればいいわけですから、選炭をしていけばコストは高くなりますけれども、原料炭として使える分は拡大されていくというようにわれわれは考えております。しかし、それもそろばん関係がありますから、やはり保護を与えなければできない問題だと思います。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 硫黄の処理とか、あるいはその他化学的な面において、従来、一般炭を原料炭にして使用するというような研究の面はどうなっていますか。
  47. 稻山嘉寛

    ○稻山参考人 サルファーの問題は、まあ脱硫をすればいいわけですが、しかし、脱硫が完全にいきませんと、どうしても脱硫をよけいするためにいろいろな原料を使わなければなりませんから、製鉄面、消費の面でコストが高い。そういう面でコスト関係を無視すれば、まだこういうものも使えないというわけではないと思います。それから、ことに、最近われわれの方で研究しておりますのは、砂鉄を中心にした製鉄であります。これですと、ロータリー・キルンで普通の石炭でやれるという研究を今いたしております。そういう面で製鉄業の需要はあるいはもっと拡大してくる可能性はあると思いますが、これはまだ有明製鉄を作りまして今後の問題でございますので、今ここでは申し上げられないのであります。     ―――――――――――――
  48. 有田喜一

    有田委員長 ありがとうございました。それでは、次に岸本参考人にお願いいたしたいと思います。参考人岸本勘太郎君。
  49. 岸本勘太郎

    ○岸本参考人 私が申し上げますことは、石炭対策関係のないことであります。日本石油と可燃性天然ガスの概況をお耳に入れてみたいと思いますが、これは非常に貧弱な産業であります。ただいま石油は、石油資源開発と私どもの方で半分ずつ、年間七十万トン出ております。可燃性天然ガスが七億立米でありますが、これは換算しますと大体七十万トンになります。合わせて百五十万トンの原油を年々生産しております。消費量の大体四%になるわけであります。就業しておる人員は全部で五千人であります。今の石炭を聞いていると、ほんとうに小さいもので、お話にならぬと思います。それだけに、来年の秋になって自由化になると、今国内で売っておるものは二割ほど高く、CIFで六千円のものが、私どもの方では大体七千五百円くらいでありますから、何らかの手を打たずに自由化になるということになると、一ぺんにふっ飛んでしまうような状態にあるわけです。非常にいい例をとりますと、山下太郎さんの当てましたアラビア石油、これは世界的奇跡のようなものですけれども、一本の井戸で一日に一千トン出る。私の方は二千木の井戸でそれだけしか出ない。だからお話にならぬ。競争力から申しましても、今私の方でやっておりますものは引き合わない。小さい井戸はどんどん廃棄する、なるべく新しい油田を発見して、その新しい油田の方に人員を移動していくという方針をとっております。幸いにして、ここ三、四年来探鉱の技術が非常に進歩いたしまして、そのために、きのうも私の方で、一本の井戸で百トン出る井戸が二本、直江津の近所であったのです。過去三年ほどに石油資源開発で発見しておる石油の埋蔵量は数百万トンに上っている。この七年間に、天然ガス石油を合わせますと、大体生産量が五倍以上になっておる。そのことは、探鉱活動を続けていけば日本にまだあるのだ。特に天然ガスの方は、三年くらい前までは、石油と一緒に出てくると、じゃまもの扱いをして埋めたものです。それが天然ガス天然ガスといわれ出したものですから、これだけ需要が多くなった。探鉱すればまだまだあるのじゃないかと思うわけです。来年、自由化になると会社の収入が減るということになると、大体売り上げの二割くらいは探鉱費に使っていたが、この探鉱活動ができなくなるのじゃないかというのが一番心配なんです。もしできれば、国が、地質調査所もあるのですから、国営の探鉱公社みたいなものを作って、非鉄金属だろうが――石炭は掘るかどうか知りませんが、石油であろうが、あらゆるものを公社の組織で日本中を探鉱していく。三井なら三井ということになると、自分の鉱区しかやらない。総合性が何もないわけです。もしも国で全部探鉱してやって、それが当たったら譲渡金を取るという仕組みになると、かりに石油の輸入が自由化されたとしても、十分競争になっていくのじゃないか。今申し上げますように、技術が非常に進みまして、ほとんど世界的水準に近いものだという状態になっております。関東平町なんか、あれだけ広いものなのに、一ぺんも探鉱してない。さっき中川先生のおっしゃったように、天然ガスの補助金というのは一年に三千万円、お話にならないくらいだ。イタリアでもドイツでも、あれだけの大きな川があって大平町があれば、ガスを目ざして試掘する。あんな関東平野があって何の調査もしないのは、日本だけですよ。私の方も金があれば自分でやりたいと思うのですが、膨大な金がかかりますから、予算もお願いしてあるのですが、できれば政府にお願いして、一ぺんか二へん関東平野を調べていただきたい。所得倍増とか、いろいろな問題が出てくれば、一ぺん地下資源の総ざらいを政府でおやりになったらいいのではないか。超党派的にどうぞお願いいたします。
  50. 有田喜一

    有田委員長 ありがとうございました。  それでは、多賀谷君。
  51. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国内エネルギー、ことに重要な流体エネルギーに携わっておられるわけですが、貿易自由化になった場合、国内石油外国石油の価格調整を何とかつかんでやらなければならない。従来は外貨割当というものがありましたから、その調整が行政指導でできたのでしょうが、単に行政指導ではできない状態になるのではないか。ですから、これは、天然ガスもそうですが、どうしても外国の輸入石油との間の調整を制度的に行なわなければいけないのではないかと思うのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  52. 岸本勘太郎

    ○岸本参考人 価格差補給金というようなものも考えられるのですが、考えても仕方がないので、大体消費量の四%しか出せない、だから、金額が少ないといえば少ないが、それよりも、むしろ探鉱助成金をいただくとか、今申し上げた国営の探鉱機関――探鉱公社ができて、まだほんとうに天然ガスなんか試掘してないのですから、前向きにそういうことをやっていただくことが必要だと思うのです。石油の価格が外国のよりも下がってくれば、政治的意図で下がるのなら別ですが、そうでなければ、アラビア石油も来年は一千万トン入るのですから、三十五万や四十万トン出して価格差補給金をもらって細々やっておってもしようがない。むしろ、私どものところでもたくさん鉱区を持っておるのでありますから、鉱区を一応全部一ぺん調べていただくということが最も大事なことであって、値段を下げざるを得ないということは覚悟しております。ガスの方は競争できると思う。液体ガスというのはまだ五年や十年は技術が進まないから、競争できると思うのですが、石油は中東あたりで要らぬほど出るんですからね、細々やっておってもしようがない。いい井戸があればもうかる。いい井戸から二十トン、三十トン出ると、運賃がただですから対抗できる。しかし、大勢としては、世界の政治的ルートのない石油価格にはわれわれはついていけない。だから、できるだけ探鉱活動をしたい、探鉱活動の分については・できれば政府の補助を願いたいというのが、今の考え方であります。
  53. 有田喜一

    有田委員長 白浜君。
  54. 白浜仁吉

    ○白浜委員 岸本さんにお尋ねします。これは実際家として非常に御答弁しにくい問題があろうかと思うのですが、自由化に備えてという問題を離れまして、私は私なりに、石油日本では専売制度にしたらどうかということを日ごろ考えておる一人でございますが、こういうような問題について何かお答えできますならば、御意見を聞かせていただきたいと思います。
  55. 岸本勘太郎

    ○岸本参考人 これは別に帝国石油がやっておらなければならぬというわけでもないから、専売制で思う存分もうかったら、それで探鉱活動をやるということなら、それはけっこうだと思うのです。やっておるところもあるらしいですから。
  56. 有田喜一

    有田委員長 神田君。
  57. 神田博

    ○神田委員 今のお話で、自由化になる場合の覚悟はできている、ただ、その場合、今なら探鉱の方に回している分を、自由化の方に回すというか、価格差の方に回す、探鉱の方を政府が見てくれれば十分やっていけるのではないか、もっと大きな探鉱をやったら、相当地下資源が発見できて、またこれを掘さくへ利用できる、こういう御意見のようでありますが、そうだとすると、一億円がいいか何億円がいいかわからないが、一体どの程度あればいいか、探鉱調査なりあるいは試掘をやるのに、政府の補助金はどの程度で、どのくらいの年限にわたってやることが妥当かということ――たまたま一億くらいというお話が出ましたし、今まで三千万円しかもらっていない、こういう話ですが、そういう点をもう少し掘り下げていただきたい。
  58. 岸本勘太郎

    ○岸本参考人 これは帝国石油だけで申しますと、大体年間五億円の探鉱、試掘費を使っております。石油生産の方は今まで百億ですか、政府の出資があったのですが、うちでは五億使っておりますのが、今度自由化になりますと、大体それくらいは値下がりをするだろう、だから、探鉱活動はなくなるというのが今の心配なんであります。新しいのを次から次に探しておるうちに、やはりギャンブルですから、いいのが当たると、きのうまではしおれておっても、きょうはえらく元気づいて祝い酒を飲む、そういうことはありましても、大体が五億ですから、年々政府がかりに十億なら十億、二十億なら二十億、五年間とか十年間、日本のほんとうの地下資源を調べるのだという気持で――そうして何とか株式会社というと、経営に当たる人はやはり配当してみたくなったり、会社ですから、成績が上がらなければいかぬという気持になるんです。さっきのお話のように、専売制度ということになると、タバコでも何でも、もうかるだけで、損することはない。だから、公社なんという名前になると、何とかという人が総裁になられて、別にバランス・シートをこまかく見るということはない。われわれの方は、赤字が出たとか、しょっちゅう見ておるけれども、あんなのはけちくさいです。だから、腹の太い人がなって、関東平野を掘るとか、北海道をやってみるとか、思い切ってできるんじゃないかと思います。
  59. 有田喜一

    有田委員長 以上で本日の調査は終えるのでありますが、最後に参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、大いに資するところがありました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍子)  次会は、明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五分散会