運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1961-10-18 第39回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十八日(水曜日)    午前十時十七分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 岡本  茂君 理事 神田  博君    理事 始関 伊平君 理事 中川 俊思者    理事 多賀谷真稔君 理事 松井 政吉君       藏内 修治君    白浜 仁吉君       中村 幸八君    南  好雄君       井手 以誠君    田中 武夫君       滝井 義高君    中村 重光君       渡辺 惣蔵君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         通商産業大臣  佐藤 榮作君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君         農林事務官         (農地局長)  庄野五一郎君         通商産業政務次         官       森   清君         通商産業事務官         (大臣官房長) 塚本 敏夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      樋詰 誠明君  委員外出席者         大蔵事務官         (財務調査官) 佐竹  浩君         農 林 技 官         (農地局参事         官)      堀  直治君         通商産業事務官         (鉱山局石油課         長)      古沢  実君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十月十八日  委員長谷川四郎辞任につき、その補欠として  舘林三喜男君が議長の指名で委員に選任された。  同日  理事長谷川四郎君同月十八日委員辞任につき、  その補欠として始関伊平君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第二七号)  臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案(  内閣提出第二九号)  産炭地域振興臨時措置法案内閣提出第三〇  号)  石炭鉱山保安臨時措置法案内閣提出第三一  号)  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二名提出、  衆法第二号)      ――――◇―――――
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  まず、内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案臨時石炭鉱害復旧法の一部を改正する法律案産炭地域振興臨時措置法案石炭鉱山保安臨時措置法案及び勝闘田清一君外二名提出石炭鉱業安定法案、以上五法案を一括して議題とし、審査を進めます。  前会に引き続き質疑を続行いたします。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 私、大臣石炭問題の一般論の中でも特にきわめて具体的に現実に立った御質問をさしていただきたいと思うのです。大臣の腹がまえを一つきちっと御答弁願いたいと思います。  それは、石炭不況は戦後四回目の不況です。まず第一回は、終戦直後のあの惨たんたる敗戦の姿の中に、やはり石炭も同じようにそういう惨たんたる姿になったのですが、しかしその惨たんたる姿も、片山内閣傾斜生産石山灰産業は立ち直ることができたと思うのです。その後しばらくしてから、今度は統制が撤廃をされて、二十四年の九月以降過剰生産になってきた。しかしその過剰生産も、朝鮮動乱でまた再び回復することができた。それから朝鮮動乱が終わりまして、二十八年、九年のころになりますと、再び企業整備をやらなければならぬようになって不況がやってきたわけです。ところがその後に間もなく神武景気がやってきて、やはり石炭は一応の立ち直りを見せたわけです。そうしてその後三十三年ごろから再び石炭不況になってきたわけです。そのときに、私たちもそういう考え方だったのですが、少なくとも石炭で飯を食っておった人間というものは、また再び同じような――四年に一回くらい好況がやってくるわけですから、また好況がやってくるだろうと、まさかこのようないわゆるエネルギー革命――斜陽とかいうようなことはただ言葉だけであって、また何かいい夢がやってくるだろうという淡い夢を持っておったわけです。しかし一方、朝鮮動乱あるいは神武景気石炭界が酔っておる間に、電力業界は着々と石油に切りかえていくという事態が出てきたわけです。戦後十年で、油は七倍くらいに消費が増高してきておるわけです。石炭は十年で多分六百万か七首万トンしかふえていない、こういうことになってきたわけです。そこでこういう石炭景気の起伏の中で、四度目の正直かどうか知らぬけれども、どうにもならぬという事態になっているわけです。これはいろいろ不思議なことがあるわけですが、その不思議なことをお聞きする前に、まず第一に政府は、一体現在の日本石炭鉱業出炭能力幾らに見ておるかということです。やはり問題の出発点はここにあると私は思うのです。現在の日本出炭能力幾らと、政府はお考えになっておるか。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 毎回御説明いたしておりますように、経済ベースに乗る石炭出炭能力、これを三十八年の五千五百万トン、同時にそれを横ばいを続けていく、こういう基本的な考え方をいたしておるわけであります。ただ炭が出るというだけでなくて、経済ベースに乗る、新しいエネルギーと競合しても消化可能だ、こういう意味石炭数量でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 私がお尋ねする出炭能力というのは、三十八年度における出炭経済ベースの五千五百万トンというのでなくて、現実にスクラップにしなければならぬような炭鉱もまだ動いておるわけです、そういうものもひっくるめて、今の日本にはどの程度出炭能力がありますか。これが問題の出発点でなければならない。これを私はお聞きしたいのです。雑炭ややみの石炭もずいぶんありますけれども、実際に石炭が使われているのは、輸入なしに七千何ぼも使われているのだ。日本の場合はそういう形になっている。しかし実際出るのは五千五百万トンじゃおかしいじゃないかという質問を、岡田君もしておりました。しかし、一応政府の把握している今の日本出炭能力幾らなんだ。これが問題の出発点だと思うのです。
  6. 今井博

    今井(博)政府委員 現状では、五千五百万トンの出炭能力にはまだ達していないと思います。昨年度が五千二百八十万トン、ことしの上期が五千三百三十万程度のペースで出炭しております。下期に入ると五千四百万をこえる。一昨年は五千万トンを切るような状態でございます。問題はストライキをどう見るかという点がございます。ストライキはやはり年じゅう行事ということで、約二百万トン程度ストライキ減考えますと、現状では五千五百万トンの出炭能力にはまだ若干達していないというふうに考えます。ただ、雑炭を込めてどうだ、こう言われますと、雑炭は現在五百万トン程度出ている。これは統計にはっきり出てきませんで、はっきりした数字は申し上げられませんが、これは出炭規模としては同じでござまして、今まで捨てておったやつを利用するという関係でございますので、その五百万トンが出炭規模としてふえたこういうことにはならぬ。従って精炭ベース六千二百カロリーということで考えますと、五千五百万トンに荘子欠ける、こういうような性格になるというのが現状でございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうしますと、大体正常ベースで六千二百カロリー程度で見ると、日本出炭能力は五千四百万トン前後だ。雑炭五百万トンは、一応議論の外に置いて議論させてもらいたいと思うのです。そうしますと、現在、御存じの通り燃料石炭電力重油を見てみると、三つともそれぞれわが道々行きながら、非常なアンバランスが出てきておる。石炭不況である。しかし現実は、石炭不足状態だと思います。それから電力不足です。油は過剰です。油はどんどん値下がりしている。たとえば、われわれがガソリン・スタンドで自動車に補給するのに、ことしの初めごろは一キロリットル四十八円取っておった。それがだんだん競争が激しくなってきて、四十五円くらいでくれ始めた。最近は四十二円くらいでくれる。どうかしたら四十円でくれる。ガソリンは上がる状態より、下がり始めてきた。とにかくこういう状態になって、同じ日本三つの大きな燃料というものは、不況であり、過剰であり、電力のごときは不足をしている、こういう形が出てきているわけです。これは政府燃料政策総合性がないということを端的に示していると思うのです。  ここでそれらの総合性のないことをついていると時間がかかりますから、石炭そのものずばりで質問をしてみたいと思います。五千四百万トンの出炭能力があることがはっきりしてきた。そうすると今の日本貯炭一体山元でどの程度を見ておりますか。
  8. 今井博

    今井(博)政府委員 これは月によって変わりますが、この八月末で押えまして貯炭は七百十五万トンに達しております。ただしこれは大口工場が入っておりますので、いわゆる業者貯炭と称するものは百七十万程度でございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、山元貯炭百七十万トン、これはいろいろ議論がありますけれども、今庄でわれわれがこの委員会で論議をしてきた山元における適正な貯炭は大体三百万トン、消費者貯炭をひっくるめますと八百万トン程度適正貯炭といわれてきた。一番はっきりしている山元貯炭が百七十万トンであるということは、一体何を意味するか。だんだん冬場に向かって石炭需要期に入ろうとしているときには、石炭不足現象だと思う。これを一体大臣はどうお考えになるか。一方において石炭不況だといわれながらも、とにかく石炭の買い手が今現金を持って山にどんどん押し寄せてくる。そしてとにかく現金石炭を持っていく。一方の山、では首切りが行なわれて不況のあらしが吹いているが、ある山に行くと好況を謳歌しているというところも出てきている。こういうアンバランス状態が出てきているのだが、一体適正山元貯炭さえ欠く、百七十万トンしかない、石炭不足している、この実態を大田はどうごらんになっているかということです。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、需要はなかなか強い。生産需要に相応しておらない。だから過去の統計を見ましても、三十四年度は五千十九万トンの需要に対して生産は四千七百八十八万トン、三十五年度は五千三百五十四万トンに対して生産は五千二百六十万トン、こういうように需要は非常に強いという現象を現わしております。貯炭数量が大体最近は減っておる、こういう現象がある、これまた御指摘通りであります。この事態に対して、しからばどういうように生産計画が進み、また需要者のコストにこれが対応できるようになっているか、こういうことを考えてみますと、必ずしもその点では十分でございません。また、今の採炭可能な埋蔵量等から見ると、もう少し出し得る状況にあるわけでございます。これは先ほど局長が説例したような理由もあるでございましょうが、とにかく需要をまかなうには足らない。そこで大手の方といたしましては、恒久的需要というものを勘案して生産計画を立てる。その方は比較的うまく参っておると思います。非常に緊急な需要に対するものが、中小企業等を相手にして出炭要求をしておる、こういう面もあると思います。従いまして、炭鉱自体需給関係から見ると、もう少し景気がよくなきやならんじゃないか、こういうことがしろうとにはいわれるわけでございます。また他面、例にとられたガソリンにいたしましてもどんどん競争で安くなっている。しからば炭鉱側はお互いに非常な激烈な競争でもしておるかと申しなすと、最近はそういう事態はよほど緩和されてきている。しかも、なおかつ採算ベースになかなか乗らない、こういうものがあるわけでございます。ここに、石炭斜陽産業といわれながらも、五千五百万トンというものを確保することによって、基幹廃業としての将来性が、また信頼感がそこに生まれるのじゃないか。これを私どもが今まで指摘し、五千五百万トンということを申し上げておるのであります。問題の金融の面からきておる圧迫というものが、こういう需給関係にありながらも炭鉱を一そう苦しめておる、こういうことがあるのじゃないか、ここに一つの問題が残されておる、かように私どもは見ております。だから、今お話しになりましたように、場所によっては非常にもうかっているところもあるといわれますが、おそらくそれは小さな山で、伸縮自在の山じゃないか、かように私は考えます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 私の質問に半分くらい答えてくれたと思うのですが、問題は、供給が少なくて需要が多いということになれば、経済の普通の原則からいえば、これは安定してこなければならぬ。ところがそれが安定をしていないというところに、経済需要供給原則が、何か石炭には沿わないものが出てきていると思うのです。それは一体何なのかというと、今大臣が御指摘になった金融面からの圧迫がきておって、需要に対して供給が応ずることができないというのも、一つ問題点だと思うのです。しかしこれは、需要があるものならば、水が低きに流れるように、需要一つの刺激になって供給は自然に喚起されてくると思うのです。ところがこれがなかなかそういかないというところに、金融の問題のほかに、需要供給とを結ぶためには、これは意識的に結ばなければならぬ、意識的にそれを結ぶものは何かというと、これは政策だと思うのです。そこらあたり政府が何かてこ入れしたら、うまくいくようなものがあるような感じがするのです。悲しいかな、私はしろうとなので、そこらはちょっとわかりかねるのですが、それに対してどうなんですか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは私の方がよりしろうとでございますが、経済的に見ると、需要と申しておりますが、これはやはり競合エネルギーがございますから、そういう意味代替性というか、転換性があるものだと思います。だからその転換性のないようにする意味で、過去においてボイラー規制法なりその他によって、石油への転換をなるべく押えるという方法でやってきた。これは今申しますように、需要と申しましても価格に無制限にということでなしに、競争エネルギーがあまりますから、一定の価格以上のものになればそれは代替していく、こういうことだと思うのです。今私どもが苦労しておりますのは、その点にあるわけです。だから、炭価の千二百円下げというようなことを言わないで、そしてこれをあるがままの姿にしたら一体どうなるか、おそらく、石炭需要というものは強くても、これは代替するというか、よそへ逃げていく。だから石炭を千二百円下げて、そしてある程度需要というものを見合っていくのですが、その場合にやはり価格の面でもしも十分でないと、これは石油の方へかわっていく、ここに私どもの指導のむずかしさがある。今千二百円下げが可能であり、需要出炭を上回っておるのでございますから、労使の関係が調整され、出炭計画がうまくいくなら需要に対応し得る、こういう状態にあるのだ、かように私は考えます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、金融の面とそれから価格の面が出てきたわけで・す。価格はある程度大臣の言われるように、大臣たちが指向されておるように、大臣たちが指向されておるように、千二百円三十八年度までに下げさえすれば、これは何とか需要供給が見合って石炭産業というものは息を吹き返す、こういうお話のようです。  これは少しくどくなるようですから、それはそれにして、千二百円下げるための現実出炭能力というものは、五千四百万トン程度ある。そうすると、一体五千四百万トン程度出炭能力がある日本炭鉱生産構造というものは、大ざっぱに言ってどうなっておるか、これがやはり問題になってくると思うのです。
  14. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいまの生産構造というのは、いろいろなつかまえ方があると思います。非常に能率のいい山とそうでない山、そういうふうに大ざっぱに分けて考えますと、たとえば油に十分対抗していける山がどのぐらいあるか、こういうふうな御質問かと思いますが、現状で、何らの手を加えずに十分に競合エネルギーに対抗し得る山は一体どのぐらいあるかという点は、非常に算定はむずかしいのでございますが、一口に言って、二千五百万トンないし三千万トンぐらいの山は十分やっていけるのではないか、そういう試算をしたことがございます。しかし、これは何らの手を加えない場合でございまして、さらにいろいろな手を加えてやっていけば、その数字相当増加するというふうに考えます。非常に大ざっぱに申しますとそういう姿になるのではないか、かように考えます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 大体日本石炭生産構造の中で、能率を中心に考えてみれば、油に対抗できる山というものは二千五百万トンから三千万トンだ、こういうことになる。そうしますと、手を加えると二千六百万トンないし三千万トンがもっと上がってくる、四千万トンくらいになってくるでしょう。出炭能力が五千四百万トンなんですから、それから二千五百万トンないし三千万トンを引きますと、大体二千四、五百万トンの山は手を加えなければならぬ山だ、こういうことが出てきたわけです。これで問題の焦点がはっきりしてきた。もう私はきわめて合理的に質問していきますから、小学校の算術と同じで、しろうとがやるときにはこういう工合にぴしっとやっていくと、政策が出てくると思うのです。そこで、五千四百万トン引く二千五百万トンないし三千万トンですから、あとは二千四、五百万トンです。そうすると、二千四、五百万トンの山というものは一体どういう山なんだ、こういうことになる。全国炭鉱生産構造の推移というのがある。これは多分通産省の資料だと思うのですが、まずこれから見ていくと、こういうわけです。昭和三十六年度、ことしを基礎にすると新鉱群で七十万トン、それから増強群、すなわち手を加えたら相当出炭が出るという増強群が二千三百八十八万トン、それから維持群現状維持相当出炭が出るというのが千九百八十四万トン、それから切り捨てなければならぬ、おそらくスクラップ化されなければならぬだろう、現状でこのままならば、というその他に属するものが千三十八万トン、合計で三十六年で五千四百八十万トンですね。そうすると、日本出炭能力五千百万トンにちょうど見合ってきたわけです。従って、この数字から見ていきますと、維持群以下では、維持群が千九百八十四万トン、その他が千三十八万トンですから、これを合わせるとちょうど三千万トンになるわけです。従って日本石炭山で、とにかく手を加えなければ、この三番目の維持群以下の三千万トンは油に対してもうだめだ、こういうことなんです。そこでわれわれとしては、新鉱群には金を貸してやって縦坑を掘ってもらって新鉱を作る、こういう政策がここに当然目標として出てくるわけです。それから増強群については、増強するだけの金を出してやらなければならぬ。これはもう政策としてははっきりしてくる。そうすると維持群とその他の三千万トンに対して、政府一体何をなさんとするのか、こういうことなんです。もう問題は、三十八年に千二百円下げるということではなくて、今のところ、瀕死の重病人一体どういう対策をするかということが問題なんです。応急措置が問題なんです、そうして、応急措置の中から恒久的な五千五百万トン体制を作っていくというのが、われわれの方向でなければならぬ。これは与党であろうと野党であろうと、一致しておるところだと思うのです。そうすると、この維持群と切り捨てをやる群、合わせて三千万トン程度に対して、これが油に比肩をしていくための具体的な政策いかん、まず、ここから具体的に出発していきましょう。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御指摘通り、そこでスクラップ・アンド・ビルド政策を立てておるわけでございいます。近代化設備資金その他の方法によりこれらのものを育成強化する、また、整理炭田に対してはこの跡始末をつけていく、こういう考え方でございます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 スクラッフ・アンド・ビルド方式はもうわかっておるわけです。問題は、その内容なんです。一体、三千万トンの石炭重油との競争に立ち向かわせていくためには、千二百円炭価が引き下げられる状態になってこなければならぬ。なって、なお三千万トンの炭が出る体制ができないと五千五百万トン・ベースは確保できないわけです。従って、なぞはここから解かなければならぬ。このなぞを解けば、対策は一歩前進するわけです。そこで、そのなぞを解くためには、スクラップ・アンド・ビルド方式をとっていく。そうすると、今度は少し問題を具体的に提起していきますが、昨日も中川さんから御指摘がありましたように、いろいろたくさん隘路がありますから、その隘路一つ一つ切り開いて行く具体的な方策として、三千万トンのこの維持群と切り捨てられなければならぬ群とを、どういう工合に千二百円下げていくかという、この問題を解決する第一の質問点は、千二百円の炭価引き下げというときの重油の一キロリットルの価格は八千四百円です。これはもうはっきりしてきておるわけです。ところが、それが三十六年度における仮契約では六千円台になってきているわけです。まあ、これを七千円と見ても、とにかくもう千四百円油が下がってきた。最近は、われわれが小売で買うと、税金がかかって四十八円だったものが、四十円か四十二円でくれる。大きなカンで買いますと、もっと安くなってしまうわけです。それで、まず第一の隘路がここに一つあるわけです。これはもう計算ががらりと違ってきている。八千四百円と計算したものが七千円とか六十円になってくれば、もう計算基礎が違ってきたのです。池田内閣所得倍増計画が大きな狂いを生じたとじように 石炭合理化政策というものも、まず、ここに一つ目標達成隘路が出てきたわけですこれに対する対策一体どうおやりになるのか、これをまず第一に明白に答えてもらいたいと思います。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 一応の目安の千二百円下げという目標を立てておりますので、ただいまの石油が非常に下がったということ、これとは直接関係なしに当初の計画は進めていく。だから、石油の方に対しての対策は別途に考えるということで、これが安くなったから、当時考えたよりさらに石炭下げる、ここまでの考えはただいまいたしておらない。また、千二百円下げしたら、未来永劫に合理化しなくていいのかと申しますと、それはそうじゃない。これはもう産業自体が絶えず繰り返して合理化を進めていくと思います。しかし、千二百円下げに決定したときの石油との比価、これに重点を置いたような考え方はしない、これは今の政府がはっきりしておる考え方でございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 だいぶはっきりしてきました。そうしますと、千二百円下げるときには、資料としては、京浜市場における石炭価格一般炭六千二百カロリー六千三十九円、カロリー当たり九十七銭、こういうようにきめたわけです。その場合における重油価格というものをやはりきちっときめて、そうしてこれは出てきているわけです。その場合に、三十二年のC重油九千百二十二円は、当時カロリー当たり九十一銭、ところが、三十八年度の想定のC重油八千四百円は八十四銭、そうなると、これがおよそ見合っていくのだ。特に山元においては、重油には負けないということでしてきた。ところが、今の大臣の御答弁によると、重油価格とは切り離して千二百円下げてもらう、重油については、それは別に考えるのだということになれば、これは大臣、私がさいぜん、なぞを解いてもらいたいといったなぞの中身は、代替燃料に勝ち得るだけの力を持たなければならぬ、こういうことなんです。それはカロリー当たりの値段が重油の八十四銭に近づくこと、あるいはそれ以下になることが目標であったわけです。ところが、今の段階になって、重油とは切り離してよいということになると、これは当時の算定の基礎から政策転換をやったことを意味する。われわれ政策転換要求をやっているから、佐藤さんがそういうことに転換してくれれば賛成です。重油に何かの手を加えないと、そうはならないわけです。一体重油にどういう手を加えたならば、石炭重油と切り離して千二百円の切り下げ方針を貫いていけるか、こういう問題になるわけです。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今の価格引き下げで五千五百万トン、これは出なければ出ないでよいわけですが、五千五百万トンの目標で、その七割の長期引き取り、これを計画しておる。そうして、石炭業者はその意味において七割長期引き取りがとられるなら、一応その経営は安定したものと蓄えるだろう、その場合に、電力が一番の消費者になるわけでございますが、この電力料金を、高いものだけでやってはコストが非常に高くなる、そこで、一部安いものも使わせ、そうして適正なコストで電力料金を考えていく、これが一つ考え方であります。この考え方だと、重油は上げない方がよい、安いままであるのがよい、こういうことになるわけであります。しかし、それで押し通すというばかりの考え方でもない。  もう一つは、重油の場合に、国産重油と国外重油との関係もございますから、その辺の関係一つ勘案しなければならないし、今後の対策等から見まして、重油が非常に高くならないという姿であるなら、しんぼうのできる方法があるだろう、その辺、研究課題として私どもただいま研究している、こういうことでございます。だから、問題を狭めて考えてみますと、当然重油の方にも話が進展して参るでございましょうが、石炭に関する限りは、ただいま申し上げるような基本的な考え方、だから、掘ったその炭は、消費の安定的なものがたよりだ、こういうように実は思っております。
  21. 滝井義高

    滝井委員 七割だけ大体明るい見通しがつくことになるわけですね。そうしますと、業界で長期取引の契約をいろいろしておるようでございますが、とにかく、五千五百万トン三十八年に掘らしたら、その七割に当たる三千八百五十万トン程度政府が責任を持って長期取引の少なくとも裏づけをしていく、こう理解して差しつかえないわけですね。その点は……。
  22. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 さようでございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、そういうことがはっきりしてきますれば、一応石油との問題は切り離して、石油の値下がりその他に対する対策は、今度は別に、石油の段階できちっと政府に政治責任を持ってやっていただく、こういうことになるわけであります。これで第一の問題が七十点解けました。  原因の第二は、電気料金の値上がり、運賃の値上がり、坑木の値上がり、労賃の値上がり、これらのものが、今井さんの答弁でも二百円ちょっと上がってきたわけです。通産省から出ておる資料によりますと、三十二年から三十五年末での原価引き上げは七百三十九円、労務の値上がりその他で、千二百円の目標に対して実質五百七十六円しか値下がりができていないわけです。そうしますと、ここに第二の困難な問題が出てきておるわけです。坑木その他の問題は、政府価格差補給金でもやらなければなかなか直接手が打ちにくいのですが、運賃というものは、佐藤さんも昔の古巣の国有鉄道ですが、これはいろいろ担保をやって繰り延べしてもらっておるという問題がある。まず、やはりわれわれが問題にする場合に、政府も緊急対策の中にこれを入れておりますが、通産省としては――いずれこれは大蔵大臣にも来てもらって聞きますが、佐藤さんの主管大臣としての腹がまえ、これはわれわれ経済企画庁長官や何かに予算委員会で聞いたときは、三十億やそこらしかないのだから、私の方で責任持ちます、こう言ってきた。ところが、いつの間にか担保をとって繰り延べるという形に変わってきた。当面先へ延ばすという形になってきたのですが、この第二の隘路に対する佐藤さんの考え方はどういうことですか。
  24. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これはまだ結論が出ておりません。結論から先に申すと、結論が出ておらないということでございますが、御指摘通りに、運賃その他が上がってきている。この合理化を進めて参ります場合に、政府自身は低利資金の貸付その他によって経営合理化に一役買うということでございますが、これが幾らのウエートがあるという計算もなかなか立ちかねる。そういうような状況のもとにおいて、運賃等が上がってきた。そこで、果然それが問題になったわけです。そこで、前内閣持分に一応の対策が立てられておりますので、これをまず実施することが一番手っ取り早い方法だと思います。しかし、前内閣当時にきめたものが最終的対策とはなかなか言えないと思いますので、最終的対策はいかにするかということを、さらに残して研究しなければならぬと思います。ただいまの段階では、前内閣できめたそれが実施されておらない、それは一体どこに隘路があるのか、それからまず検討を始めておる。石炭業界等から見ますると、鉄道運賃は別といたしましても、海上運賃の値下げというか、負担が軽減されるような名案はないかというので、沿海航路の船で特別に能率のいい船を作れば、運賃コストを下げ得る、こういうことから、石炭専用輸送船の建造という問題を今提起いたしております。しかし、これはまた海運界そのものにも多大の影響がございますから、石炭業者の言い分だけでも解決しないと思います。とにかく、問題の所在が明確になっておるというだけでありまして、まだ結論は得ておらない。しいて申せば、前内閣時分に決定した閣議決定事項がなぜ実施されないか、この点を究明する、こういうのが今の第一段の対策でございます。
  25. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、問題の理解の仕方は、前の通常国会で予算を審議するころに実施を決定したものが、現実に実施されていない。従って、それがなぜ実施されなかったかという検討に入るが、同時に、最終的なもっといい案については、さらに検討をする、こういう理解ですね。
  26. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そうです。
  27. 滝井義高

    滝井委員 従って、もっといい案ということになれば、当然一番いい案は、運賃の値上がり分を国が一般会計から国鉄に補給をするのがいい案です。そういう案でやってもらえば一番いいわけなんですが、何かそのほかにもっといいような案のお考えがあれば――もうこの委員会はあまりないですから、一つ大臣の腹を腹蔵なく語っておいていただきたい。
  28. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 研究の方向を申しますと、後払いでは最後に努力を払わなければならぬ。その意味炭鉱業者も非常に苦労だ。しかも、その後払いも十分に実施されておらないのですが、後払いということできめたことは、おそらく基本的対策はあとへ残したのだろうと思います。その場合に、過去においてあったような、国有鉄道自身が運賃割引をすることが可能か、また、国有鉄道自身が運賃割引ができなければあきらめざるを得ないのか、あるいは一般会計から補給をすることになるのか、そういう問題があるのだ、かように私は考えております。
  29. 滝井義高

    滝井委員 今の第二の問題は、国有鉄道が運賃を負けることが可能かどうか、あるいは一般会計から入れるかどうか、結局問題は二つにしぼられてくるのです。従って、その二つのどちらかに佐藤さんの腹をおきめになっていただけば、この問題は百点とれるわけです。そこまでくれば、大体腹はわかりましたから、一つ最後の御努力をしていただきたいと思います。  次には、第三の問題です。これはわれわれが千二百円の炭価引き下げをきめたときには夢想だもしなかったといえば語弊がありますが、まあ、考えていなかった、いわゆる九〇%自由化が三十七年十月に繰り上げられてきた。今年の外貨予算を見てみますと、下期で石油が二億七千百六十一万三千ドル、それから外炭が一億五百二十五万二千万ドル、ともに上期よりかふえてきているわけです。従って、重油にしても外炭にしてもたっぷり予算と、こう新聞は批評しているのですが、こういう状態になってきた。さいぜん石油の問題はちょっと別にしてと言われましたけれども、国内だけの問題ならば別にしておいてもいいと思います。けれども一つ政策として自由化を十月に繰り上げてくる、こういうことは、大きな意思が働いて政策が決定されているわけです。この問題が一体日本石炭産業にどういう影響を与えるとお考えになっておるのかということです。
  30. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん関係がないことはございませんが、この外貨予算をきめました当時の考え方に触れてみますと、申すまでもなく、設備投資、また鉱工業生産の拡大、それに見合うものを一応考えたわけでございます。ところで、最近は御承知のように設備投資の抑制等を手がけており、各業界を指導いたしております。今回のこの下期の外貨予算の使い方には一工夫をする考え方で、実は割当等についてもただいま考え中でございます。その考え方一体どうかと申しますと、予算がついておりますから、業界はもちろんこういう予算の割当を期待いたしておると思いますが、生産の面においての抑制が可能ではないか、かように考えますので、それらの点を十分検討した上で、要すれば、一時に外貨予算を分配しないで、これを二回に分けるとか、その他の方法によりまして、いわゆる設備投資抑制に協力し、同時に外貨の使い方にも御協力を願う、こういう考え方をとっておるのでございます。先ほど滝井さんが御指摘になりましたように、石油業界自身が非常な競争をしておる。それはガソリンの例でもわかるのでありますけれども、どんどん安売りをしておる。そういう状況のもとにおいて、外貨を使い、生産をフルにすることは、石油業界自身にとりましてもこれはいいことではないのでございます。だから、そういう意味で業界との話し合い並びに行政指導をこまやかにする、実はこういう処置をとっておりますので、この外貨予算の数字から直接石炭に対しての悪影響があると考えることは、やや考えが進み過ぎはしないかと思います。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、外貨予算が相当ゆったりとってあるけれども、その外貨予算によって外国から入ってくるエネルギーが現在の日本の国内炭に大きな刺激を与えないように、できるだけの政治的な配慮をやっていこう、こういうことですね。わかりました。  次は、これは労働大臣に聞かなければならぬところですけれども、あなたの今後の政策の立案の上に非常に関係してくる問題点ですから、問題点として提起をして大臣に意見をお伺をしておきたいのですが、それは五千五百万トンのベースを三十八年までに実施をしていく、そのことは安いエネルギーを恒常的に安心をして供給をするということです。このことは同時に、そこで働く人たちが非常に能率を上げるということが、大きな問題になってくるわけです。ところが最近における炭鉱労務者の年齢構成、これは三十六・六才といわれておったのだが、最近における日本の新規の若年労働力の不足というものは、炭鉱の中の優秀な技術者、優秀な働き手に、炭鉱に見切りをつけさせて、どんどん他へ出始めたということで、労働力の問題から日本の産業特に石炭産業合理化、近代化が阻害される面が出てき始めた。この点について主管大臣として、物である石炭が主管で、労働力の方はおれは知らぬということにはいかぬと思うのです。これは一体のものなんですが、これに対する大臣のお考えは、今後労働大臣といろいろ協議をされる上に重大な関心事であると思いますので、大臣の御見解を一つ伺っておきたいと思います。
  32. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 労働大団はもちろん一番当面の担当責任者で、ございますが、産業をあずかる面から見まして、労働力の推移変遷、これはもちろん重大な関係がございますので、通産省は通産省として主張を持っておるわけであります。そこでどういうことを考えておるかということですが、しばしば表現されておりますものは、今後は中高年層の離職対策ということが表面に出てくるだろうということがいわれております。いわゆる中高年令層の離職者の処遇の問題、これはわかることでございますが、私どもが一番懸念し、また心配するのは、今維持存続し、そして強化していこうという炭鉱、この炭鉱では、やはり絶えず若い人が入って労働力が更新していかないと、長期経営ということにふさわしくない。そこに心配がある。だから、若い人たちが安心して職場として選定できるような処置をとらなければならぬ。ここに問題があるわけでございます。だから離職者対策ということと労働力確保という両方の面から、これが対策考えなければならぬ。もう一つは、スクラップにしていく場合には若い者も中高年層もないのですから、そういうものの対策。この三つが、今後の労働力確保の面で一番大事な問題になるわけであります。  ところで、私どもの立場から一つ申し上げて、どうしても社会党の皆さん方の御協力を得たいと思いますのは、炭鉱事業が千二百円下げという大筋に乗った合理化を進めていこうという場合に、賃金の予定される向上率というものがあったはずなんです。いろいろ合理化を進めていくが、賃金そのものはおそらく年率三%というものがあった。実際はそれより以上に上回っておるのじゃないか。上回っていてもなおかつ千二百円下げが可能ならばそれはけっこうなことなんで、それをしいて三%にとどめる必要はないと思います。私があえてこのことを申しますのは、炭鉱の賃金というものは山によって非常に千差万別だということが言えるんじゃないだろうか、これを実は指摘したいのでございます。しばし言われておりますように、ちょっと想像のできないような、八千円あるいは五千円の賃金カットとか、非常に多額な賃金カットが行なわれる。そういうことが行なわれておるが、それらの山についてみても、なお平均給よりも高いような実際になっておる。だからやはり、賃金の体系というものがある程度整備されることが、炭鉱業整備の一つの基本の方向じゃないか。最近総評その他の方々からも、最低賃金制をここで樹立しろうという強い要望が出ております。これなども私はおそらく賃金体系について、今までのあるがままの姿の賃金体系、これは一つ工夫せざるを得ない、こういう点から出てきているんだろうと思います。今日、炭鉱が近代産業として生き返り、そして国の基幹産業としてその支柱をなすためには、あるがままの姿ということでなしに、ある一定の形を整えることがどうしても必要じゃないか。そういう意味で、ただいま申し上げる離職者対策についても万全を期するが、同時にまた、労働力の確保について積極的な意図を政府も示す、そういう意味で御協力を願いたい。これは労働省に対しましても、そういう立場で私どもは強くこれを要望する考えでございます。
  33. 滝井義高

    滝井委員 よくわかりました。人間の確保ということは、やはり合理化実施の上に非常に重要な問題に今なってきた。老齢化してきたわけですから。合理化法をお読みになってもおわかりのように、石炭鉱業合理化基本計画をお立てになる、そして基本計画から今度は四条で実施計画をお立てになるわけですね。その場合に合理化の実施計画に定める事項は、石炭生産数量とか、生産能率とか、生産費その他石炭鉱業合理化目標、それから工業の種類、費用の額その他石炭鉱業合理化のため実施すべき工事に関する事項、その他石炭鉱業合理化に関する重要事項、こういうようなものをやるわけです。もっとこれをくだいて言えば、金と物との計画については、割合にあるのです。ところが人の問題については落ちておる。合理化をやる場合には一体どの程度の人間を確保して――一人当たりの出炭能力は書いてあるのです。二十六・二トンに三十八年になったらやらなければならぬと書いておるが、その場合に、そこから出て行く人というものは一体どう始末をするのかというようなことは何もない。これはわれわれが率直に申し上げまして、合理化法を審議するときに、社会党は反対々々で実は深く中をえぐらなかった。そういう点が今になってみれば、一つ問題点を残しておったという感じもします。人間の問題については実はこれにない。だから山をつぶすことに急で、つぶされた山の労務者については、わずかばかりの離職金をやって、そしてさようなら、こういう形になってきている。それが累積して今こういう形になっておる。そこで今佐藤さんの御指摘になったように、合理化をやるにはきちっとして労務者の確保――きちっとした確保ということは、そこで安心して食える姿が同時に出ておるということです。そうして出ていく人についても、やはりそれ相応の就職のあっせん、前職の賃金の保障が行なわれる。去るも地獄、残るも地獄じゃなくて、去るも極楽、残るも極楽、こういう形が政策として出てこなければならない。ところが去るも地獄、残るも地獄で、残っておっても賃金が八千円とか五千円とか切り下げられておる。そこで、今後合理化をおやりになる場合については、こういう点の施策が今盲点になっておる。これは主管の省は労働省でしょうけれども、そもそも出産を縮小したり、伸ばしたりする主管庁は、石炭産業に関する限りは石炭局なり通産省がおやりになるのですから、十分労働省とお話し合いになって、そこらあたりの人の配置転換計画も、きちっと合理化計画には出させるようにしなければならぬと思うのです。こういう点については今まで全然やられていない。盲点なのです。これはさいぜん御指摘を申し上げましたように、三千万トンくらいの石炭をやるのですから、そのやる場合の隘路一つ一つやっておるのですが、これはやはり一つの大きな問題点だと思いますが、これはあなた、どうお考えになりますか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今までのところ、経営者に絶えず必要なる労務者の確保ということを指摘し、お話をしてみますると、炭鉱労務者の事業の従事への熱意と申しますか、家族が大体非常に多い。最近までのところでは、炭鉱で働いているお父さんが年をとる、そうすると、またあと子供が中へ入るということがあり、比較的今日までは確保に困らなかった。ところが最近の状況から見まして、地下の労働のつらさなり何なりから他の産業へ移り変わる者が非常に多くなった。こういうことで、経営者としては非常な苦境だということを実は申しております。これはだんだん労働状況が変わってきた結果、そういうような事態が起こるのだろうと思います。でございますから、今日労働力の確保という点を強く呼びかけて、それには適正な賃金体系ができ、そうして将来の離職あるいは疾病その他に対する保護が十分できる、安心して職場が選べるように、そういう処置をとることが望ましいことだと思います。これは経営者に対して私どもが指導し、また労働省に対しましても、炭鉱労務の特殊性ということに特に理解を持った処置をとるように強く要望したいという点でございます。
  35. 滝井義高

    滝井委員 合理化計画をお立てになるときには、やはり人の計画についてもきちっとしたものを立てなければ買い上げない、これだけの腹をぜひ持っていただきたいと思うのです。そうすると、今一応確実に切り捨てられなければならぬというような三千万トン程度のものをうまく五千五百万トンベースに乗ぜるためには、今三つ、四つの隘路を御指摘申し上げましたが、これらのものは非常に消極的な面なのです。現状より目標に到達しようとしたときに派生的に出てきた問題点です。今度は積極面がなければならぬと思うのです。今度は需要を積極的に拡大しなければうまくいかないわけです。消極面はいろいろ御説明をいただきましたので、七十点か八十点ぐらいは解決がつくという見通しがつきました。そうすると積極面で、千二百円の引き下げの努力をして玉千五百万トン・ベースを維持していくためには、今度は使ってくれる需要の側に、恒常的に安定をして石炭を使ってもらう、こういう約束が出てこなければならない。それには長期の取引で出炭の七割程度、三千八百万程度は使ってもらうことになるのだが、今度は需要拡大の具体的な方針、これを一体どういうところにポイントを置いて――私は四十五年とか五十五年とかは申しません、三十八年左ででけっこうです。ことしと来年と再来年三年間における需要の拡大の方向というものを、どういう産業に重点を置いて、どういうように計画的に拡大をしてくれるのか、こういうことです。
  36. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 一応ここに、見当をつけたものがございます。私などが石炭に当初関係したときは、石炭価格は、申すまでもなく、鉄道納炭が価格を決定するというような時代でございます。だから、非常にその時代は古い。運輸部門は一体どうかというと、今後の自由化なりその他の計画が実施される場合に、非常な需要減――減の方から先に申せば、おそらく鉄道で二百万トンの減、あるいは暖厨房関係で百三十万トン、さらにボイラー関係で千三百万トンという減、何らかの手を染めないと、こういう減があるだろう。それじゃ今後ふやし得る面は一体どうなんだろうかと考えてみますと、電力部門が大体八百万トン程度、鉄鋼、ガス部門で三百二十方トン程度、こういうようなことが実は考えられると思います。ただいまは何と申しましても石炭を左右するものは電力部門でございますから、電力用の納炭が炭価を決定している、こういう実情でございますし、大口消費者でもあるわけでございます。今後特に私どもが力を注ぐということになるとすれば、この電力部門である。それから鉄鋼、セメント、ガス等もそういうことが考えられると思います。そういうところが一つ問題点である。  それから、産炭地に事業が興れば、あらゆる努力をいたしましてそこでも石炭を使うような方法を指導したいものだ、最近もそういうようなお話を一、二聞くのです。北海道で新しい工場ができる、それが重油を使うというお話がありますので、これなどは事実重油を使うことが必ずしも経済的じゃございませんから、石炭を使わせるように指導するつもりでございます。ただいま申し上げるような電力関係のものでここで問題になりますのが、産炭地発電あるいは揚地発電、こういうような議論が行なわれている。今申し上げるような増の分と減の分とを見ましても、まだ相当減の方が多いのじゃないか。だから、石炭を使うものをそのかわりに確保しろというので、産炭地発電だとが、あるいは揚地発電、こういう議論が出ておるという状況でございます。      ――――◇―――――
  37. 有田喜一

    有田委員長 それでは、この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  本十八日理事でありました長谷川四郎君が委員辞任されましたに伴いまして、理事に欠員を生じましたが、この補欠選任に関しましては、委員長より指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 有田喜一

    有田委員長 御異議なしと認め、始関伊平君を理事に指名いたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  39. 有田喜一

    有田委員長 速記を始めて。  この際、午後零時十分まで休憩いたします。    午前十一時三十七分休憩      ――――◇―――――    午後零時十六分開議
  40. 有田喜一

    有田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  再び、内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案外四法案を一括して議題とし、休憩前の滝井委員の質疑を続行することといたします。滝井君。
  41. 滝井義高

    滝井委員 午前中通産大臣にずっと質問をしているわけですが、それは、日本石炭産業は、現在五千四百万トン程度出炭能力を持っておる、しかし、この五千四百万トンの出炭能力を持っている炭鉱というものを放置しておってそうして油と競争をさせるとすれば、三千万トン程度炭鉱というものはだめになる、従って、この際、千二百円の価格の切り下げを積極的にやらなければならぬ、これが一応の結論としてはっきりしてきた。しかし、千二百円下げるについては、油の値段が、当時千二百円下げ計画をしたときには八千四百円であったものが、現在では七千円あるいは六千円台ぐらいで仮契約をされようとしておる。それから電気料金や運賃の値上がり、労務費の値上がり等のために、相当これが千二百円引き下げの手かぜ足かせになっておる。それから来年の十月までに九割の自由化が行なわれるというような、自由化の繰り上げが行なわれる、それから炭鉱における新しい労働力の補充が困難になっておる、これがやはり千二百円炭価引き下げ一つ隘路になっている、こういう問題を一つ一つ質問をしたわけです。  そこで、ある程度答弁が出てきたのですが、その中で特に大蔵大臣にお尋ねをしておきたい点は、運賃の問題です。前の通常国会で、石炭を輸送する場合の運賃の値上がり分については、これは何とかしなければならぬということで、担保を取って延べ払いをするというような案が出てきたわけです。ところが、具体的に現在それが実施をされていないというのが大臣の答弁です。従って、まずこれをなぜ実施されなかったかということを検討する必要があると同時に、その検討だけが最終的なものでない、やはり最終的な政策というものはさらに検討して立てる必要があるだろう、そうすると、一体最終的なものというのはどういうことが考えられるかというと、二つの面が考えられる。一つは、現在の国有鉄道が石炭を輸送する運賃の値上がり分というものをまけてやるだけの能力が一体あるかどうかという点が一つ、もう一つは、一般会計から補てんをするという二つの面が最終的に一応考えられるだろう、こういうお考えが述べられたのです。これは大蔵大臣の予算編成の上に非常に大きな関係を持っている問題だと思うのです。そこでこの点について大蔵大臣としては一体どうお考えになっておるか。
  42. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この運賃問題は、この六月でございましたか、関係省の間でいろいろの角度から検討した結果、御承知のような形で一応きまった問題でございます。ところが、そのきまったものがまた現在実施されていないということは、担保の問題、そのほかいろいろな問題があると思いますが、まずこの際きまったことが実施できるように考えるのが先だというような面もございまして、私どもは、この運賃問題――きまったもを、すくに何カ月の間にきめ直すということもなかなかむずかしい事情がございますので、まず、きまったものはきまったものとしてこれが実施できるような方法をとりたい、どうやったらいいかということを、至急これは関係者の間で協議してきめようという話になりまして、この間の閣僚会議では、一番先にこの問題を取り上げて解決しようという相談ができたばかりでございまして、今その線に沿って関係者が検討している最中でございます。
  43. 滝井義高

    滝井委員 客観情勢は、炭鉱に担保を出せといっても、担保のできる情勢にないわけですね。われわれも炭鉱の経理をいろいろ調べているのですが、担保がないわけです。鉱区なんというものは、ほとんど開発銀行その他の担保に入ってしまっている。だから、何千万円という担保を今出すだけの能力がないわけです。そうしますと、担保を出して延べ払いをするということが一応おきまりになっているわけですが、担保がないということになれば、何かここに大蔵大臣としては腹をきめなければならぬ。そこで佐藤通産大臣の方としては、一ぺんそれは検討するけれども、やはり国鉄が運賃をまけ得るかどうか、それから一般会計から出すかどうかというような問題が、やはり一番問題だということなんです。そこで、きょうはお二方に来てもらうことになるわけですが、現地を見なければこの問題はきまらぬという問題じゃないわけですね。
  44. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 担保が出せないという実情なら、担保にかわるべき、たとえばこういうものの保証というようなものによって国鉄がそれを承知するというのならそれでもよろしゅうございますし、それでもなおいかぬという問題になるのかどうか、これからまずこの問題の解決に入ろうということで今やっているときでございますので、もう少し関係者が協議しないとこの問題は解決しないのじゃないかと思うのであります。
  45. 滝井義高

    滝井委員 まあそうかたくならなくても、個人的な御意見でけっこうです。しろうとですから、金融のことはよくわからぬけれども、われわれが常識で考えて、担保がなければ大体金を貸さないのですね。あとにも触れてきますけれども、今われわれの近所の炭鉱では、開発銀行から開発のための金がいくと、銀行が途中でみなとってしまっているのです。もう市中銀行がみなとってしまう、こういう形が出てきているわけです。従って、市中銀行がそういう状態ですから、国鉄に担保を出す余裕なんというものはないのです。そうすると、担保がなければ何か保証する方法がほかにというならば、大胆、考え得る保証する方法があれば、一つお数え願いたいと思うのです。
  46. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今お話を聞きますと、その問題にきのうから関係省の事務局が相談に入っておる、近く何とかの結論を出す方向で今やっておるという報告でございますので、もう少しこれを待ちたいと思います。
  47. 滝井義高

    滝井委員 いろいろあるのを、こういうこともある、こういうこともあるということは言えると思うのです。そのくらいの親切さはあっていいと思うのですよ。だから、一つ保証する方法を――佐藤通産大臣は、国鉄の能力があるかどうかというような点は、最終的な御答弁としてお答えになったのですが、その中間の、担保がだめなら保証する方法は、水田大蔵大臣としてお考えになっている点があれば一つお教えいただければ、われわれも研究させていただきたいのです。
  48. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 一番簡単なのは、一般会計からこの利子を補給してやったらいいじゃないかということを簡単に言われますが、これほどむずかしいやり方というものは実際にはない。こういう形をやろうとすると、国鉄自身のまた経営の根本的な問題にまで触れるので、公共負担というものを一体国鉄はどれだけやる能力があるか、能力だけじゃなくて、どれだけぐらいは公共負担の性格にかんがみてすべきであるかという問題にもなろうかと思います。御承知の通り、全部の国の資本を評価し律したら一兆何千億にもなるかもしれません。これだけの国の資本でやって、普通の私企業であったら配当というような問題もあるはずでございますが、こういう問題は全然ない。これは公共性によって、その配当というか、納付金もとらないということにもなっておりますし、また、これが一般私企業であったら、当然税金も払わなければならぬという性格のものですが、こういうものも払わない。なぜ払わないかといえば、これは国鉄の公共性ということからくるのですから、そういう恩恵との比較で、国鉄自身は公共性のためにこれくらい一般の経営に比べて負担してもいいのだという一つの限度も出てくると思います。そういう範囲内において、負担できるという場合には第一義的には負担すべきものであるし、それが負担できないというときに一般会計から納付するかという問題になるのですが、そういう根本問題が解決しないで、安易に個々の企業の運賃に対して一般会計から補給するというような措置は、私の方では簡単にとれない立場にあります。ですから、大ぜい寄って関係者が相談した結果も前回のような措置に落ちついたのでございますから、まずこの措置を実施できるような方向で解決するのが、私は当面の問題としては合理的じゃないかと思っております。
  49. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。もうちょっと突っ込みたいところだが、これは大体方向がはっきりしてきましたから、国鉄の負担能力の問題の検討も同時に始められなければならぬし、そういうことで八方ふさがりということになれば、一般会計という道が開ける、こういう検討の方向が大体両大臣の答弁ではっきりしましたから、それでけっこうです。  次は、さいぜんの質問の続きに入って、大体大蔵大臣になるわけですが、われわれが千二百円引き下げるためには、消極的な面の隘路は、今の国鉄運賃の問題もひっくるめていろいろ問題点を整理しました。そうすると、今度は積極的な面としての需要拡大の問題が答弁をされたわけです。特に今後石炭使用の減少する面は、鉄道とか暖房、それからボイラー、こういうものは千五百三十万トンくらい減少するわけです。増加する面は、電力八百万トンと、鉄鋼とかガス三百五十万トンで千百五十万トン、これは増と減とはバランスがとれておりません。おりませんが、一応積極的な面として電力、鉄鋼、ガス等で千百五十万トンの拡大ができ、しかもその拡大については、ある程度長期の保証というものに国も積極的に当たろう、こういうお考えです。それからもう一つ、積極的に拡大する面としては、産炭地の発電、揚地発電、こういう問題が積極的な問題として出てきたわけです。そこで、まず四十二年とか、四十五年とかというような、エネルギーの長期の考え方はいろいろあると思いますが、やはり当面緊急にわれわれが措置しようとすれば、昭和三十八年までに千二百円下げ得るかどうかという――佐藤さんが一貫して所信を貫こうとしておるその立場というものは三十八年ですから、ここまでの間にきちっとした計画の実施ができれば、それから先の展望というものは私はある程度ついてくると思う。そこで、三十八年までに、一体需要を拡大する面における電力とガスというものがどういう数量で拡大をされていくのかということですね。すなわち、三十六年度に幾ら、三十七年度は電力幾ら、三十八年度に電力は長期契約が千八百万トンになっておるわけですから、千八百万トン、この答えを一つ三十六、三十七、三十八、こう出してもらいたいのですが、これは数字ですから、大臣でなくても、局長でもかまわぬと思います。
  50. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 電気のことをまず申し上げすが、三十五年度の実績は、全体で千六百六二万三千トンの石炭消費いたしております。三十六年度の計画は千八百三十万五千トン、ただし、最近石炭需給が非常に逼迫しておりますので、実績は若干ショートするかもわかりません。三十七年度の電力需給関係にすでに織り込んでおりますものは二千十九万五千トン。ここ京では一応相当はっきりした計画を立てておりますが、その次の三十八年度は二千百六十一万五千トンということで、順次増加いたしまして、四十二年度に二千五百六万トン、そこまで毎年少しずつ引き取り量を上げ得るつもりでおります。
  51. 今井博

    今井(博)政府委員 鉄鋼とガスは原料炭の関係でございまして、鉄鋼とガスを合計して、三十五年度が千百三十三万トン、三十六年度が千二百五万トン、三十七年度が千三百二十万トン、三十八年度が千三百六十万トン、三十九年度が千四百五十万トンで.あります。
  52. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十八年に電力が二千百六十一万トンになるわけですが、長期契約というのは、三十八年は千八百万トンですね。だから、この二千百六十一万トンの中で千八百万トン保証する、こういうことになるわけですね、そう了解して差しつかえありませんか。
  53. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 一応九電力では、最小限千八百万トンまでは千二百円引きを条件として必ず引き取りますということを長期契約でお約束しておるわけでございまして、この九電力のほかに、いろいろ共同火力とか、あるいは住友共電というようなものがございますので、それが約二千百万トンのうち、九電力だけだと一応千八百二十七万トンということになっております。これだけは必ず責任を持って引き取るということで約束しております。
  54. 滝井義高

    滝井委員 一般炭で五千五百万トンの七割を保証する、こうなりますと、三千八百五十万トンですね。この五千五百万トン・ベースというのは、三十八年になったら五千五百万トンになるわけです。この三千八百万トンの内訳は、大体半分は電力へいくわけですね、千八百万トンいきますから……。そうすると、残りの二千万トン程度は何で保証されるかということになるわけですね。
  55. 今井博

    今井(博)政府委員 今の三千八百万トンとおっしゃいました中には原料炭が入っておりまして、それと一般炭との合計でございますので、その他は一応原料炭あるいは無煙炭、こういうふうにお考えになるといいのじゃないかと思います。
  56. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、千八百万トンは一般炭電力、残りは二千万トン程度になりますね。原料炭は二千万トンはないはずですがね。それを分けてみて下さい。
  57. 今井博

    今井(博)政府委員 その場合には、一番大きな需要はセメントだと思います。セメントは、現状は四百五十万トンでございます。これが四十二年度では六百万トン、三十八年度ではその中間の数字かと思います。ちょっと今正確な数字はわかりません。約五百万トン程度かと思います。
  58. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三千八百万トン程度を中で千八百万トンは一般炭電力、それから五百万トン程度一般炭はセメント、残りの千五百万トン程度は原料炭、こういうことになるのですね。それで一応数字が合いました。そうしますと、これで大体七割の需要というものが確定をすることになるわけですが、私、三千八百万トンというのは全部一般炭だと思っておったけれども、原料炭が入ってくるということになると、だいぶ話が違ってくるのですね。まあいいでしょう。原料炭もやむを得ぬです。そうしますと、自由化によって相当の過剰炭が出てくるわけですね。これは、今巷間伝えられておるところでも三百万トンや五百万トン、どうかすると一千万トンの過剰炭が出てくるという説が出ておるわけです。この対策と申しますか、過剰炭の運命というものは、一体自由化によって出てくるものはどう処理しようとするのか、これをちょっとあわせて御説明願いたい。
  59. 今井博

    今井(博)政府委員 もう一度全体の輪郭を申し上げますと、五千五百万トンの中で、原料炭と無煙炭については、一応現状では需給関係についてはほとんど心配がないと考える。こういたしますと、これが約手五百万トン、従って、それを差し引きました四千万トンが一般炭になるわけです。ここに自由化との関係で問題があるわけです。そこで、この四千万トンの中で電力に約半分、こういたしますと、あとの二千万トンが問題であります。その場合、この二千万トンの中で、いわゆる固定需要と申しますものがございます。これは、たとえば、鉄道用炭は減っておりますけれども石炭でなければいかぬ、こういう意味における固定需要、あるいはセメントも固定需要、こういうように考えますと、現状は一千万トンくらいあるわけですが、これが八百万トンくらいに落ちるだろう。これは固定需要といえども、暖房用炭なんかが若干落ちます関係です。そういたしますと、そのほかに産炭地における需要がどの程度あるかという現状を申しますと、産炭地は北海道と九州が主でございますが、これが現在五百万トンから六百万トン、このくらいの数字でございまして、これがどのくらいふえていくかという予測はちょっと困難でございますので、一応五百万トン程度に押えますと、先ほどの二千万トンから差し引きまして約六百万トンないし七百万トン、こういう数字が一応出てくるわけでございます。これにつきましては、過剰炭対策として、過日エネルギー懇談会というものを通産省に設け、学識経験者に集まっていただいていろいろディスカッションをいたしましたところ、これは電力以外に合理的に消費する方面はないのじゃないかということになりまして、そのうち約半分程度電力向けにしよう、そういうことによりまして、一応この過剰炭対策は十分見込みが立つのではないか、こういう結論になっております。半分と申しますのは、結局、その程度やればあとは大体何とかやっていけるのじゃないか、こういう意味でございます。
  60. 滝井義高

    滝井委員 これで大体五千立春万トンの炭の運命はずっときまってきたわけです。今インタロゲーションマークをつけなければならぬのは、あなたの説明でははっきりしないけれども、三百万トンぐらいならば何とかなるので、合理的に、たとえばいなかの家庭で使う方法だってある。何にでもまだ需要はあるのだから、これは三百万トンくらいの問題になれば何とかいくと思う。そこで、五百万トンないし六百万トンの過剰炭の三百万トンから四百二万トン程度電力に持っていく、こういう問題が、その次の需要拡大の産炭地の発電あるいは揚地発電の問題に関連してくるわけです。これは大臣としては、一体どちらに腹をきめるかということです。現在、出炭は、九州が四九・七%、北海道が三六・二%、常磐、宇部が一四・一%、これで九州が二千六瀞十四万トン、北海道が千九百四万トン、常磐、宇部が七百四十万トンです。岡田君の質問と私の質問大臣お聞きになって、岡田君の質問は、電力とか石油とか、いわゆるあすの問題を論議するのです。北海道はやはりあすの問題を論議する、九州はきのうの問題を論議するのです。従って、ここは、その中間の今日の問題を大臣はやってもらわなければいかぬことになるわけです。だから、南北の果てが、きのうときょうの問題をやりますから、ちょうど中央の東京ではきょうの問題をやって、そして九州の問題を解決し、北海道のあすへの売がかりと展望を与えてやる、こういうことになると思うのです。そうしますと、今の五百万ないし六百万トンの過剰炭というものを電力以外に使うことが不可能だとするならば――もう大体そういう結論になってきたのですが、そうすると、これは揚地でやるのか、それとも、産炭地で発電をやるかということを内閣としてはきわめなければならぬ時期がきていると思うのです。これに対する佐藤さんの腹がまえと申しますか、また現地を見なければ言えぬなんて言ってもらっても困るのですが、佐藤さんは山口県だからわかっておると思うのです。そこらの腹を一つお教えを願いたい。
  61. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 端的にお答えしますが、私の腹は、むしろ揚地発電の方に重点を置いております。と申しますのは、これはいろいろ議論があると思いますが、産炭地ですぐそれを使うということが、ただいまのところなかなか見当がつかない。そういうことを考えますと、電力消費地へ炭を持っていく方が手っとり早いのではないか、かように考えております。
  62. 滝井義高

    滝井委員 大臣の意向はだいぶはっきりしましたが、そうすると、大体これで三百万トンの過剰炭を使うとすると、しろうとだからよくわかりませんが、三百万トンあれば百万キロワットくらい起ります。そうすると、これは相当大規模なものを作らなければならぬと思うのですが、このお金は一体どの程度必要になりますか。
  63. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 大体五百六十億円程度というふうに考えております。
  64. 滝井義高

    滝井委員 金融引き締め、公定歩合、預金準備率、高率適用と、金融トロイカ方式でいかれておるわけですが、これは大蔵大臣になるわけですが、五百五、六十億くらいの金が百方キロワットの電力を起こすためには必要なんです。これは、その金を全部今ここで積んだってすぐにはなかなかできぬ。建設しなければならぬから二、三年はかかってくると思うのです。そうすると、その間に五百万ないし六百万トンの過剰炭は宙に浮くことになるのです。ここを一体どう結ぶかということが大きな問題点になると思うのです。ここらあたりの財政上の見通しとその結び方を、財政当局の大蔵大臣としては一体どう考えるかということです。私非常に理詰めで質問をしてきておりますけれども、やはりこのくらいきちっとしていかぬと、この話は進まないのですよ。二十億や三十億の金ならば、佐藤さんと私との問答で、佐藤さんが「よろしい、それはおれが引き受けた」でいいかもしれぬけども、やはりこれは大蔵大臣に入っておいてもらわぬと、五百五、六十億というのは簡単にはいかぬことになる。当然資金計画というものが、過剰炭の解消の問題とともにきちっと裏づけされておらなければならぬ。電力で過剰炭を解消するということはもうはっきりしておるのですから……。
  65. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 五百六十億と申しましても、今、先生御指摘のように、一年で全部ではございません。大体三年ないし四年ということになるかと思います。かりに――かりにと申しますのは、大体産炭地発電よりも揚げ地発電の方が合理的だろうということで、今検討を進めておるわけでございますが、その建設順序も、四十二年ごろまでに一応完成させるということを目標にしていろいろ試算しているわけでございます。御承知のように、最近の電力界の建設の資金というものは年間に約五千億、今年がすでに四千三百億、来年は五千億をこすわけでございまして、ここ当分の間、毎年平均五千億程度のものが電気聖業の発送電、変電、配電関係に使われるわけでございます。それを、かりに三十七年くらいからやるといたしましても、四十二年まででございますと、まだ六年くらいあるわけでございます。そうすると、五千億の中で毎年百億ないし百五十億程度のものは、これは特別に何か資金の確保というようなことをしなくても、大体従来の増資、社債発行あるいは興長銀行の借り入れに、できれば開発銀行からの財政資金の投入というようなこともあわせ考えていただくということをするならば、大体われわれとしては五千億の中の百か百五十億、多い年で二百五十億と思っておりますので、そう無理な資金調達ということにはならないのじゃないかと思います。
  66. 滝井義高

    滝井委員 今重病人が危篤の状態にあるわけです。危篤の状態にあるときに、今から六年も先のことを論議してもいかぬ。だから、私は、三十八年までに切って論議をしようとしておるわけです。今早急にリンゲル液なりブドウ糖液をやらなければ死んでしまうわけですから、相当大量の体液を補給しなければいかぬのです。従って、その体液を補給するのは何かというと、需要の拡大、すなわち、鉄鋼とか電力に長期の契約をしてもらうと同時に、過剰炭の――過剰炭というものは、もうことし来年で余っていくものなんですからね。自由化は来年の十月には来てしまうのです。だから、五百五、六十億の金をどう調達するか、しかも、それを早急に三十八年までの三カ年に調達する評価でなければいかぬ。四十二年でに六年もあるといって水をうめていけば、ますます過剰炭が出てくる。過剰炭を出すまいとすれば、出炭制限をするから首切りが出てくる、こういう問題を防ぐために千二百円下げますよ、五千五百万トンを確保しますよ、安定した安いエネルギー供給しますよ、そのための需要をはっきりしておかなければならぬ、こういう問題で論議をしてきておるわけです。  そこで、樋詰さん、あなたの答弁はわかったから、大尉、やはり三年間に五百六十億はどういうやりくりで確保するかということが問題なんです。だから、大蔵大臣も来てもらってお願いしておるわけです。
  67. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 滝井さんに一つ実情の食い偉いを申し上げます。  最初御説明いたしましたように、需要量に対して出炭量が必ずしもぴったり合っていない、今の目標数字の、三十八年で五千五百万トン、こういうことですね。今すぐ過剰炭、過剰炭と言われるが、今の状況のもとにおいての過剰炭というものは、需給関係からはないわけです。これは三十八年以後になってそういう問題が起こるだろうという、今の想定の問題からいろいろ言われるわけです。だから、産炭地発電だろうが、揚地発電だろうが、これは相当期間がかかる、こういうことになるわけです。それじゃ、今どうするのだ。先ほど来あなたのお詰めになりましたように、長期引取契約で大柱は立つのだ、こういうことでございますから、非常に理論的にお進めになりましたが、実情と、その間にちょっと食い違いがあるのではないか、私かように思います。
  68. 滝井義高

    滝井委員 いや、それはそうはならないのですよ。というのは、われわれが石炭廃業に投資をする場合に、前途の見通しがなかったら金はつぎ込まないのです。今、大手なり中小の事業主の諸君が大臣のところに来ておると思うのです。現在の資本主義社会において、石炭産業というものは投資の対象にならないことになっておるのです。それはどうしてかというと、前途の見通しがないからです。しかし、ここに政府が確実に三カ年間に百万キロワットの電力を起こす設備をやりますよ、こうなれば投資の対象になります。なぜならば、需要が安定するからです。ところが、今風のまにまにゆれて、大臣がさいぜんからわれわれに御説明したように、中小の炭鉱が今安全弁でやっておるわけで、足らぬ分は無理に掘ってきておる。だから合理化は進まない。売るがごとく売らざるがごとく、これで中小は掘っていくのです。こういう形になってきているのですから、そういう何か合理化を妨げるようなものをきちっと整理をしてやろうとすれば、やはり三十八年度までに五百六十億の金をきちっとつぎ込んで、百万キロワット保証しますよ、こういう形が出てこないと、今のような需要供給アンバランスであるにもかかわらず不況である、こういう変な現象が出てくる。いわゆる資本主義経済の理論で説明できぬような問題が出てくるのです。これは私は間違いじゃないと思うのです。だから、やはりこれは議論の一番大事なところたと思います。今向こうのお話のように、六年で、しかも資金のワクをふやさずして、先になったら五千億になる、その中の百億や百五十億というものは一%か二%にしか当たらぬわずかなものだから出ますなんという、あいまいな計画をしてこの石炭問題を論議しておったら、これは大へなんことになると思うのです。電気の樋詰さんはそれでいいかもしらぬけれども、今度は今井さんの方はたまらぬですよ、そんな不確定なことでは。
  69. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は、先ほど申したように、将来の石炭消費見通しというものは、今の過剰炭三百万トン――これはその数字自身もいろいろ検討を要しますが、これがあるとして、その特別火力発電を作るという計画があれば、もう炭鉱業界は安定すると思います。それがここ一、二伸先であろうと――私はあなたが言われるように、二年先だからだめだとかいうことにはならぬと思います。問題は現時点に立ち、そしてあすの石炭業界を考えたとき、長期の計画のものについての考え方で、ただいまの三百万トンの発電計画というものを持ち、今日の現状においては、先ほど来議論しておるように現在の消費量を確保する、そういうあらゆる方法をとっておるわけであります。これは別な表現をしてみれば、長期引取契約といりものが――電力業界としては石炭業界に対して、それを引き受けますと言っております、今カロリーの商い炭を出してくれれば、私の方はもっと使ってもよろしいとまで言っておるのです。だからこれは、供給の実情から見まして合っておらないということですから、今日の問題としては別に御心配は要らない。ただ、今御指摘になりますように、非常な融通性のある採炭をやっておるところの部門をいかに指導するかというのは別でございますが、供給のルートとしては一応みんな安心してたよるものを持っておる、こういうことは言えるわけです。
  70. 滝井義高

    滝井委員 この揚地発電の問題については、僕らは産炭地発電でなければいかぬという考え方ですが、大臣は揚地発電だ。われわれが産炭地発電でなければいかぬというのは、日本の保守党の政府でも、太平洋ベルト地帯、特に四大工業地帯に人口の集中することを防止する政策をおとりになっているわけです。そうしますと揚地発電をやることはそれをむしろ促進する形になるわけです。いわば都市における過剰人口の集中をますます強化することになるわけです。そして都市と農村、あるいは地域の格差を拡大することになる。これは政策的にいっても一貫性がないということにもなるわけです。そういう点で異論があるのです。しかし、これは佐藤通産大臣の立場としては、一応山分は揚地発電が合理的だと思っておる、こういうことですから、これはなお機会をあらためて議論をしたいと思います。それから今の過剰炭の処理方式についても、なお少し納得のいかないところがありますが、大蔵大臣の時間がありませんから、次に移ります。  そうしますと、とにかく需要をそういうように拡大をしていただくことははっきりしました。需要を拡大をしていき、消極的な面の隘路を排除していく、こういうことが一応議論の中ではっきりしてきますと、次には現状維持炭鉱、それから、どうにもならぬというその他の炭鉱、この三千万程度のものを、これから今いった隘路を排除してやって、需要の拡大の方向にこれを乗せていかなければならぬという、この問題が出てくるわけですけれども、これが合理化の一番重要な問題点になってくるわけです。そこで合理化の問題に入るわけですが、その場合に、一体石炭鉱業がもはや投資の対象にならぬ。今までは電力の問題ですが、今度は石炭鉱業そのものです。石炭鉱業そのものが投資の対象にならないんだ、こういう形です。しかし投資の対象にならなくて金がいかなければ、石炭鉱業は千二百円の切り下げもできなければ、五千五百万トンの確保もできない。安いエネルギー供給することはできないわけです。一体長期の資金計画というものを、三十八年までに限ってどうお立てになっておるのかということです。五千五百万トン・ベースを維持し、そうしてトン当たり千二百円の炭価の切り下げをやろうとするならば、一体どういう資金計画が具体的にこれに対応していけるかということです。
  71. 今井博

    今井(博)政府委員 ちょっと今資料を整理しておりますので……。
  72. 滝井義高

    滝井委員 それじゃ、いいです。その具体的な資金計画が出て参りますと、次に問題になるのは、今まで日本炭鉱景気調整の安全弁の形をとっておったのは、通産大臣指摘のように、中小炭鉱です。ところが現在中小炭鉱は、御存じの通り日本出炭の三分の一を占めておりますね。千七万トン程度占めている。スクラップ・ダウンする対象というもの、すなわち三千万トンの現状維持と、その他の群の中における相当の部分はこれが占めているわけです。ところが今一挙にこれをスクラップ化していくということは、時間がかかるので不可能だ。そうすると、やはり出炭をする限りにおいては五千五百万トンベースに貢献をしているのだから、当面これが何らかの形で堅実に生きていけるなら、生きていくという方策をとらざるを得ない。そのためには金融の措置が必要になってくるわけです。それで私は水田大蔵大塩にお尋ねをするわけですが、中小炭鉱に対する金融措置というものを大蔵省としてはどうお考えになっておるのかということです。
  73. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっきも申しましたように、とりあえずの問題として――石炭対策の根本問題はあとから私どもがじっくりやるとしましても、とりあえずの問題として離職者対策と中小炭鉱への金融問題と、先ほど申しました運賃の問題と、この三つの問題だけ関係者において至急検討して一つの方向を出したいということをきめて、今それをやっている最中でございます。さっきも言いましたように、きのうあたりから実際の関係省の具体的な相談にも入っているという状態でございますので、もう少し時間を置いてくれないと、こういう形でやったらうまくいくだろうという結論が、実は今すぐ私どもにも出ていないところでございます。いろいろの方法考えておりますが、たとえば開発銀行から云々ということも要望されておりますが、開発銀行の資金的余裕というようなものは、御承知の通り現在ございません。従って問題は地方開発の資金、これは開発では本年度特に私どもが多く準備した資金でございますが、この実情も一応割り振りがついているという状態でございますが、これは実情によってそういう地方開発の一環として、そういう資金のやり繰りという点もできないかとか、問題を私どもはたくさん出して一つ一つ今やっているところでございますので、今こうするという結論を持っておりません。
  74. 滝井義高

    滝井委員 大臣、御存じのように、国会は三十一月で終わってしまうわけです。そうしてこの委員会もそうだらだらと長く開ける委員会じゃないわけです、特別委員会ですから。石炭対策を緊急にやるためにできた委員会です。最終的に結論は出ないでも、今までの日本石炭鉱業の安全弁、景気調節の役割を演じてきたこの中小炭鉱、しかも三分の一の千七百万トンを出炭しておるというこの炭鉱が、気息えんえんたる状態にあるときに、応急的な緊急措置としては一体どういうものがあるのか。その中のどれとどれをとることが金融専門家の大蔵大臣としては望ましいのか。これは国会でガラス張りでやるわけですから、そう秘密にする必要はないと思う。率直に大臣の意見を述べてもらう、われわれ野党も、それはこうした方がいいじゃないかと述べる、そしてその成果を聞いておやりになることが私は筋だと思う。先に政府が何人かで連絡会議を開いて、そこできめたものを、野党なり炭労なり総評なり業界に押し付けるということであってはならぬと思います。そういう意味で、こっちはきわめて謙虚な気持で紳士的に御質問申し上げいるのです。
  75. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 だから私は、さっき申しましたように、今それをやっている最中だから、こうしたらよかろうという御意見があればお聞きしまして、どうなっているかといわれても、きょうは答えられないと最初からお断わりした通りであります。この二十二日に佐藤大臣と私が行くことになりましたが、何とか行くまでに、この中小炭鉱のこうやったらいいという一つのめどをつけていこうという話も今しているときで、これを今やっている最中でございますから、きょう現在では結論が出ていません。
  76. 滝井義高

    滝井委員 私は結論を言ってくれと言っているのではない。一体今中小炭鉱のこの金融の逼迫を打開するためには、どういう案とどういう案がありますかということを言っている。だから、あなたは金融の専門家なんだから、たとえば開発銀行からやる方法もありますとか、地方開発の資金、これは幾分つくだろう、こういうことなんです。あなたがそういう答弁をするなら、こっちは開き直らざるを得ない。というのは、大臣、具体的にお尋ねしますよ。ことし通産省が予算要求をしている財政投融資の計画で、開発銀行に生産設備の合理化のために百九十億要求しておるはずです。一体この百九十億の中で、内訳としては、緊急対策として登場するものはどういうものがありますか。これは何も現地に行かなければ答えられぬというものじゃないでしょう。お互いにこの危機の中で一生懸命やろうとしているのだから、あなたがここで、どういうものが緊急のものとしてとる対策一つになり得る、たとえばこういうものと、こういうものと、こういうものがあるということさえ言えぬで、それで現地に行ったって何も役に立たない。何も現地に行ったって問題が解決するものではありません。そういう態度だからいかぬのですよ。そういう秘密主義だからいかぬのですよ。ざっくばらんに出して――池田さんは心々改めて、決意を新たにしてやると言っているじゃないですか。大蔵大臣にもよくいうと言っておるじゃないですか。それを、きょうは聞いたってだめだ、現地に行かなければ何も言えないということなら、この委員会はきょうでやめて、現地を見てからやって下さい。私はこれで質問をやめます。
  77. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 現地を見なければやれないというのではなくて、現地に行くまでの間にとにかくそういう問題のめどをつけて行こうというので、今急いでやっているところでございまして、たとえば中小企業金融公庫を通じて緊急の融資をやる方法はどうしたらできるかとか、あるいは、商中を通ずる方法でやればこうなるとか、中小炭鉱についての金融のやり方を、今ちょうど関係者でやっている最中でございまして、今こうしたらいいという結論が出ていないと言っただけでございます。中にはとりあえず緊急を要している炭鉱もこれは御承知かもしれませんが、ございますので、これはもうそういう措置は間に合わないから、通産省とも話しまして、一般市中銀行から一時救済の策をとらせるというための措置を場合によったらとらざるを得ないだろうとか、一つ一つ、いろいろな問題がございますから、そういう緊急性の問題は緊急性として片づけるが、一般的にこの機関を通じてこういう資金を出すことは合理的だろうとかいうような問題を今やっている最中でございますので、できるだけ一両目の間に私どもはめどをつけたいと思っております。
  78. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうも開き直られて委員会を休まれたのでは、ことに重要法案もただいまかかっておりますので、非常に困ります。われわれも実は、大蔵省とただいま折衝しておる最中でございます。ややおくれておりますために内容を発表することができないので、ただいまのようなおしかりを受けるかと思いますが、ただいま一般的な問題として、今大蔵大臣が答えますように、あるいは開銀、あるいは商工中金、あるいは中小企業金融公庫、そういうもののいずれを通してやるか、あるいはどの程度の金額を必要とするか、これはただいま詰めておる最中でございます。  もう一つは、おそらく具体的な問題等について御懸念があり、そういう語を待っておれぬじゃないかというようなこともあろうかと思いますが、そういうものについては、ただいま大蔵大臣がお答えいたしたように、これはもう個々の具体的問題として処理していく、こういうような態度でそれぞれの事務当局を鞭擁しておる最中でございます。どうか御了承いただきたいと思います。
  79. 滝井義高

    滝井委員 少なくとも佐藤さんにしても大蔵大臣にしても、私に比べたら金融の専門家です。私は医者で、金融しろうとです。しろうとですけれども、少なくとも一国の大蔵大臣が、現在の日本の中小企業の金融について、開発銀行なり、あるいは商工中金なり、中小企業金融公庫なりから、どの程度の金をこの緊急の事態で出せるかという腹づもりがなくて、委員会に出てくるということが問題なんです。だから出てきたら、こういう程度の余裕がある、今の段階で、無理をすればこの程度の金は大体炭鉱に振り向け得るだろう、しかしこれは最終的にはもっと正確に検討しなければならぬ、だからそれは幾らかわからぬけれども、大ざっぱに言って百億程度の余裕は何とか出したい、しかしこれはなお関係大臣と協議をしなければならぬから、最終的なものじゃないが、これくらいは出したいという努力目標を掲げなければ、炭鉱労働者にこれから三十八年までに千二百円下げなさい、これから六万人は首を切るぞという目標次掲げたのですから、その目標に到達するところの資金の計画が、今にしてまだ立っていないという、こんなばかなことはない。石炭鉱業合理化法案は、いつ通ったんですか。三年も四年も前に通っている。当然政府はこれについての出炭能率その他を今考えているでしょうから、それに見合う財政計画というものがきまっていなければならぬ。それを、今話しているようなそんなばかなことはない。そうだとすれば、池田内閣石炭政策に対する怠慢です。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そうじゃありませんで、石炭合理化計画に対する資金手当というものは当然やるべきものでございまして、三十六年度の石炭業向けの開発銀行の貸し出しは、今のところ八十億を予定している。これはこれで当初の計画通り合理化は進めて、通常の計画に乗った合理化資金というようなものの手当は、もう私どもはしてございます。問題は緊張を要する問題に対する資金をどうするかということでございますが、国の財政投融資も、御承知の通り、繰り延べの措置をとっているときでございまして、今余裕のないときでございますので、これをどういう機関を通じて、どれだけ捻出しようかというのが実際は問題で、簡単な仕事でございませんので、関係者で今研究に入っているときでございます。先ほど私が申しましたように、あなたの質問が一日中かった、きょうは十分満足なお答えができないかもしれないからと事前にお断わりしたのも、そういう意味でございまして、今やっているところであります。
  81. 滝井義高

    滝井委員 私が言うのは、一体捻出可能の金融機関というものはどういうものがあるかということなんです。今開発銀行が八十億ですね。ところがこれでは足らぬ、こういうことなんです。だからプラス・アルファをどこかで、緊急な対策としてしなければならぬ。そうすると、開発銀行の八十億はきまっている。しかもその八十億の行く運命もきまっている。どこに何が行くと、およそきまっている。それでは足らぬので、緊急に措置しなければならぬものが出てくるならば、たとえば中小企業金融公庫からもしょう、あるいは、三百五十億のワクを今度の補正予算と一諸におふやしになったでしょう、そういうワクの中からも一つ考えよう、私はそれをお尋ねしている。緊急な措置としての捻出をする機関というものが、一体どこにありますか、こういうところを言ってくれればいい。そうすると、こういうところからやりたい、しかし最終的な細目というものはまだ検討中だ、これならわかる。ところが、何も言わずにあなたはカタツムリみたいにからの中に入ってしまうので、僕は大きな声を出さなければならない。大きな声を出したって、あなたはおそれもしまいけれども、そうならざるを得ない。やはり、みな見ているわけです。だから、こういう金融機関から自分は捻出したいと思う、このくらいのことは当然言えると思う。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、年末の中小企業金融としての金を、今三百五十億円政府関係機関で捻出をしておるという状態でございますので、緊急的にはそのうちから相当のものを捻出しなければならぬと思うのでございますが、これによりますと、さらに一般の中小企業に影響を与えますので、これと関連した、また、政府のたとえば買いオペというものをどうするかとか、関連するところが多うございますので、そういうむずかしい問題についての検討を今やっておりますので、いずれにし策しても、何らかの対策はとりますが、きょう現在こうするというところまでまだいっておりません。
  83. 滝井義高

    滝井委員 これで終わりますが、だいぶわかってきました。一々こういっておるうちにだんだん出てきたのですが、最後に一つだけお尋ねしておきたいのですが、開発銀行は八十億ですね。そのうち中小炭鉱向けは幾らあるのですか。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今、中小炭鉱に対しては通産省の推薦が十七社ございまして、金額として大体十一億円くらいの申し込みがあります。
  85. 滝井義高

    滝井委員 この十七社というのは中小炭鉱ですね。そうしますと、問題はその実績が一体どうなっておるかということです。
  86. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 開発銀行の中小炭鉱向けの買い上げの実績は、ことしの八月現在の残高で五十三億六千八百万円です。
  87. 滝井義高

    滝井委員 金融の問題は最終的にはもう一日、二日待てということですから、待たしてもらいますが、一つ十分検討をお願いしたいと思います。資金の問題は今後の長期計画を立てる上に一番大事な問題でございますが、今の答弁でおぼろげに推定がついてきたのですが、最終的にはなお一日、二日待たしていただきます。  今まで需要の拡大からさらに資金計画について質問をしてきたのですが、同時に、今度炭鉱のスクラップ化をだんだん実施していくと、関係の自治体というものが相当悲惨な影響を受けることになる。この場合に当然、産炭地振興の問題が出てくる。そうすると、産炭地で一番悲惨な影響を受けておるのは、何といっても筑豊炭田です。筑豊炭田が、たとえば山田市のごときは昔の山田村に返ろうとする、こういう状態にきておるのですが、ご存じの通り、九州は日本電力の高いところです。電力料金の高いところに産業は興らない。こういうところに揚地発電より産炭地発電という理由も出てくることになると思うのですが、しかしそういう前に産炭地振興をしていく主体というものを作らなければいかぬことになるわけです。今それぞれの町村がやっておりますけれども、それでは総合一貫した産炭地の振興はできない。そうなりますと、産炭地振興の事業団というものを作らないと、振興の方向なり、まとまった、ぴしっとしたものができてこない可能性がある。この事業団というものはお作りになるお考えですか。
  88. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なかなかむずかしい問題でございます。もちろん、これから来年度の予算折衝なりますが、当方でいろいろ工夫しておる最中でございます。うまく予算の成立を見ることができるかどうか、非常にまだ疑問な点があります。
  89. 滝井義高

    滝井委員 あなたの腹がまえをお聞きしておるのです。僕は割合一つずつずっと碁石を置くように尋ねてきたのですが、やはり相当スクラップ・ダウンをしていくということになれば、たとえば筑豊に八十万から百万の人口がある、これが半減をして急激に四十万、五十万になるということになれば、これはどこかに民族移動をさせなければならぬ。その民族移動をさせる広域職業紹介というあのやり方が、必ずしもうまくいかなかったということです。労務者が停滞をしてうまくいかなかった。だから、産炭地を何とか振興しなければならぬという、ああいう立法になってきていると思うのです。そうしますと、そのにない手である産炭地振興の事業団みたいなもの、何か主体を作るかどうかということの大臣の腹がまえ、これがないと、大臣、予算折衝してうまくいくかどうか見てからというのでは、白虎隊ではないけれども、白装束を着て切り込んでいくという気魄がない。産炭地に乗り込んでも、それじゃしようがないですよ。
  90. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうも、気力がないといっておしかりを受けましたが、土地造成を主たる目的にし、中小企業団地等の形成といいますか、そういう意味の事業団を考え、これが成立を期しておるというのが、ただいまの状況でございます。
  91. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、大臣の意向としては産炭地事業団を作りたい、しかしそれは主として土地造成、団地を作る、こういう構想ですが、土地造成というと、日本経済基盤では、道路、港湾、用地、用水という、経済基盤の用地を作って、そしてそれを移住をしてくる産業に安く提供する役割を演ずるもの、こういう構想ですか。
  92. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 さようでございます。
  93. 滝井義高

    滝井委員 そこらあたり、もうちょっとしっかりねじを巻いてもらっておかないと困りますね。事業団はぜひ一つやってもらわなければならぬのです。  次に私が問題にしたいのは、維持群やその他能率の悪い炭鉱能率をよくし、能率をよくできないものはスクラップにしていくことになるわけです。ところがこのスクラップの過程で、一つの大きな問題が出てきているわけです。それは大臣御存じだと思いますが、今合理化の買い上げがあまり進捗しないのです。一体この進捗をしない原因はどこにあるかということですね。
  94. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 産炭地でしばしば対策を必要としておりますものに、鉱害の問題がございます。廃止した山の跡始末といいますか、その処置が十分できていない、ここに一つの問題があります。もう一つは、やめてしまった際の離職者等に対する退職金その他、あるいは給料の未払いというような、いろいろの困った社会問題を引き起こしておる。こういうような事態がありますので、そういう事柄がないように、円滑にそれらの点を解決できるような方法はないか、こういうことを検討してみますと、今の鉱業権そのものの処置といいますか、それが移るような形の点が一つは難点じゃないかというように指摘されますので、今後の休廃止の場合にこれらの点を跡始末ができるようにしよう、これが一つのポイントになります。
  95. 滝井義高

    滝井委員 その鉱害とか廃山の跡始末をできるように、具体的にはどういうことをおやりになるつもりなのかということですが、一つ私具体的な姿を示してみたいと思います。それは中小の山が買い上げられる。買い上げられますと、この事業主はやはりどこかに転換をしなければならない。その買い上げられたお金をもって何か新しい事業を興してもらえれば、そこに雇用しておった労働者をまた吸収することができるわけです。これは、やはり産炭地振興にも重要に結びついてくるわけですが、今それができないのですよ。それはどうしてできないかというと、大臣指摘されたように、鉱害その他の跡始末をやらなければならぬからです。そこで、この場合にどういう方式がとられるかというと、御存じのように、一億円で炭鉱を買い上げてもらいます、ところがここに鉱害が一億あると、この一億円は全部留保されてしまうのですよ。だから、一文もいかないわけです。へますると、鉱害が一億二千万円だと、二千万円追い銭を持っていかなければならないですよ。ところが、鉱業権者は金がないのですから、この追い銭を持っていこうとすれば、現在能率よく動いている炭鉱の利潤をこっちにつぎ込む以外にない。そうすると、動いておる炭鉱も足を引っぱられてだめになる。このように、金はなし、とてもみな困っておるのに、銀行は金を貸さないのです。そうすると、買い上げられたその金で、なんぼかもらってやろうとしておったのだが、留保されてしまう。一方、池田内閣経済の失敗で、物価が上がった、労賃が上がった。従って、一億で鉱害が復旧すると見ておったが、今度は留保しておった事業団が、物価が一割も二割も上がったから、一億では足らぬようになった。事業団で手出しをしなければならないが、手出しをする金がない。だから事業団は、一億の金を抱いたままでじっとしておる。だから、最後には事業団も追い詰められますよ。鉱業権者も追い詰められる。そして、一番困るのはだれかというと、労働者ですよ。労働者は離職金ももらえなければ何ももらえぬで、ぶらっと滞留しておる。しかも、鉱害の被害者も困っておるわけです。こういう状態です。これがいわゆるスクラップ化の現状です。だから、帳面の上ではなるほど多くの炭鉱が買い上げられたことになっておるけれども一体跡始末がその買い上げられた炭鉱全部ついておるかというと、ついていない。私はここを大蔵大臣に聞いてもらいたいと思ったが、行ってしまったからこの次にやりますが、こういう事態になっておる。これが一つの大きな険路なんです。千二百円下げるたためには、はなばなしいところは、さいぜん申しますように、運賃の問題とか、あるいは重油価格の問題とかいろいろありますけれども、何としてでもスクラップ化を大きく制約し、そして――足を引っぱっているのはこの問題です。これを今の段階でどう解決をするのかということです。
  96. 今井博

    今井(博)政府委員 鉱害の処理が、非常に山の整備のポイントであるということは、御指摘通りでございまして、整備をするにあたって、鉱害を処理する金をどういうふうにして調達するかということで、いろいろな案を実は考えて参りましたが、今回の合理化法の改正による整備基金の中に、鉱害の処理に必要な金の保証をするような仕組みになっております。しかし、これではまだ不十分だと思われますので、やはり直接に鉱害の処理資金が現ナマで貸せるような制度にまで持ってはいかないといかぬのじゃないか、こう考えまして、来年度は退職金のほかに、鉱害の処理資金というものを長期的に金融できるような基金を設置したいと思いまして、目下予算の要求折衝をいたしておる次第でございます。
  97. 滝井義高

    滝井委員 鉱害の処理基金というのは、この法案関係のある、ああいう銀行側の三億の基金で、銀行がその半分を保証するという、あれとは別にお考えになっているわけでしょうか。
  98. 今井博

    今井(博)政府委員 来年度は、あれとは別に、直接に金融をするような制度を考案したい、こう考えております。
  99. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、直接に金融をするということになると、それはやはり担保か何かをおとりになるのですか。何も担保をとらずに、鉱害処理のために金をお貸しになるということですか。そこらの技術上の取り扱いですが、その構想はどういうことになっておりますか。
  100. 今井博

    今井(博)政府委員 これは、現在まだ予算の要求中でございまして、どういうふうな結果になるかわかりませんが、技術的にその担保をどうとるかという点まで、実はまだ細目の検討に入っておりません。しかし、こういうものを考えましたのは、実際問題として現在の炭鉱には、担保が非常に行き詰まっておる、担保が非常に少なくなってきておるということから、こういう制度を考えておりますので、あまり過酷な担保というものは、これについては要求する意思は持っておりません。
  101. 滝井義高

    滝井委員 とにかく、現在の合理化をやっていく上に、留保金、あるいは保証金と申しますか、それをおとりになった事業団もお困りになっている。とられた事業主も困っている。そしてその事業主に使われておったところの労働者も困る。その事業主によって受けた鉱害の被害者も、みな困っている。だから八方ふさがりですよ。従って、この際物価その他が値上がりをしますと、事業団も困るのですから、事業団に何らかの使い得る資金というものを与える必要があるのです。たとえば、これは名前を言ってもいいのですが、有名な岡崎林平さんの真岡鉱業というのがある。これは留保金が少なかった。少なかったが、それをはるかに三千万円も四千万円もこえて、結局鉱害を処理しなければならぬことになった。従って、その事業団はそれを出し渋るわけです。まだ幾ら出すかわからないというような状態です。従って、買い上げられておるのだが、まだ最終的に片づいていないということです。こういう形のものが、私は今後至るところに出てくると思う。そうすると、そのことは労働者も困るし、事業主も困り、みな困ってしまう。こういう形になって、今事業団と岡崎さんと裁判をやらなければならぬということになっているわけです。こういう点を、スクラップをやる方針をお出しになったならば、最後の最後のところまできちっと国が責任を持つ姿をおとりにならぬと、一番底辺にあって圧迫される人が困るわけです。  そう一つ、その問題に関連してどういうことが行なわれるかというと、今度はこれを大手にとってみますと、今言ったような鉱害その他がうるさいですから、大手は今度は、先が見えた山は、これを中小に払い下げてしまう。そのときは、鉱害その他は一切引き受けますということで払い下げてしまう。そうすると、ますます問題は複雑になってくる。そうして中小が何ぼか掘っていく。今度その掘ったものを、またもうちょっと小さいところにやるわけです。そして、そのもうちょっと小さいところにやったときには、大手から払い下げたそのおやじはもうどこかへ行っていない。しかし、鉱業権はおやじの名前で残っている。そうすると、今度やった人は鉱業権者じゃない、元のおやじの名前でやっている、こういう問題が出てきている。これは合理化にかけようもどうしようもない。おやじはどこかへ行って無資力の形になっている。しかし、山は動いている。鉱害はどんどん拡大するけれども、とにかく石炭は出てきているという状態です。もう少しここらあたりの合理化――坑口の開設の制限その他を、相当ことしからは制限しているということを、昨日だったか答弁がありましたけれども、小型坑道というようなことで幾らでもでき得る。通産大臣が認めた以上の能率がなければやってはならぬといっておったが、小型坑道ならよろしいというので、小型坑道でやってしまった。小型坑道では通気が悪いから保安で人が死ぬ、こういう形が出てきている。こういう問題を、われわれは石炭政策転換にあたって、ぜひきちっとしてもらいたいと思うのです。これは恒久的な問題にも関連するが、同時に当面すでに、行政的な大きな隘路として出てきている問題ですから、速急にこれは大臣、専門家を督励していただいて、具体案をきちっとしてもらう必要があると思うのです。
  102. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのお話は、私も蒙をひらいていただいたようなお話であります。私も、問題があり、かなりむずかしいことだとは聞いておりましたが、大へん具体的にお話をいただきましたわけで、十分に事務当局を督励いたしまして、対策を立てるようにいたしたいと思います。いましばらく時間をかしていただきたいと思います。
  103. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣がおらぬようになったから、金融の問題ができませんから、これで一応やめますが、最後に、いろいろと石炭政策をおとりになるわけですが、そうしますと、石炭だけに特に金をよけいに一般財源からとっていくということになると、これは昨年も私はそういうことを感じたのですが、去年非常に通産省の石炭局は金をよけいに食った、ところがことしもまた通産省の石炭局がよけいに金を食うと、通産省の他の局が財源が一定しておるから押えられる、こういう問題があるわけです。そこでことし石炭を何とかしなければならぬというので、石炭局がよけいにとると、やはり他のものに影響してくる。これは私たちが勉強している厚生省でもそうです。保険局がよけいに金をとると、他の児童局なんかに金が回らぬですよ。だから、みんな保険局を恨むという形が出てくるのです。そこで石炭政策というものをいよいよ本格的におやりになる場合には、これは財源を見つけなければいかぬと思います。一般会計以外の財源というものを見つけて、そうしてそれをできるだけ確保して、その財源によってきちっとした独得の石炭政策をおやりになる、こういうことが、われわれが政策を立てる上に――非常に特殊性のある緊急事態を打開していくのですから、やはり特殊な財源を見つけるということが必要なんです。これについて水田大蔵大臣に尋ねたいのですが、いませんから、佐藤さんとしてはどうお考えになっていますか。
  104. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今御指摘になりましたような問題にただいま当面しつつある通産大臣と、大蔵大臣とは必ずしも同様の意見ではございません。もともと通産省の予算は非常に少ない予算でございます。総体で二百三十億程度でございますから、五割増し程度の予算も、これは組める予算ではない。ただいまもなお難航を続けておるような状況でございますが、しかし、大体金額的には両省歩み寄りができまして、予算要求をしようとすれば正式に受け付ける段階に、ここ一両日中で片づく問題ではないか、かように思います。しかしそれにいたしましても、総予算が非常に僅少でございます。従いまして、要求自体がただいま申し上げる通りでございますから、大蔵省と話のつく予算総額もおよそ見当がつく。そうすると緊急な対策、たとえば石炭対策であるとか、あるいは中小企業対策であるとか、あるいはまた自由化に対する諸政策、これは主として輸出振興の問題になりますが、そういうことを考えますと、予算の編成は非常に困難でございます。ただいま幸いにして石炭関係閣僚の会議を開いております。そういう意味石炭についての理解を深めて、石炭対策に万遺憾なきを期しておる、こういう状況ではございます。しかし、ただいま御指摘になりますように、特殊な財源、具体的に申すならば重油あるいは石炭等についての税の引き上げによって財源を確保する、こういう事柄にだんだん話が向いてくるのじゃないか、かように思います。ただいま私どもも全然それを相手にしないという形でなしに、種々研究はいたしております。しかし、かねて申し上げますように、エネルギー源そのものは低廉であることが望ましいのでございますから、必ずしもこの策が当を得たものとは今なおお考えてはならないのでございます。しかし総体の予算のやりくりの面から、これも研究の一つの問題として取り上げておる実情を申し上げて、御了承願いたいと思います。
  105. 滝井義高

    滝井委員 特殊財源については検討中だ、重油石油等に対して税をとる、参考までにお聞きをしたのですが、重油の関税をぎりぎりの一割のところまでとる、こうしますと、現状幾らで、そうして一割にしたときには、その際どの程度の財源が出るのか、これをちょっと参考までに教えていただきたいと思います。
  106. 古沢実

    ○古沢説明員 石油関係の関税でございますが、現在重油につきましてはCIFでございますが五百七十円、それから原油につきましては三百二十円の関税がかかっております。それで本年度の税収の見込みでございますが、関税関係で大体百四十一億円、こういうふうになっております。それをかりに一割にいたしますと、現在関税は従量関税になっておりますが、大体百八十円ぐらい上げるような形になりますが、一応前提としましてCIF価格が五千円としますと五百円くらいになりますから、現在の三百二十円との差額は百八十円ということになります。それでかりに来年度の原油の輸入の見込みが四千キロリットルとしますと、七十二億ぐらいのものがよけいにとれるという計算になろうかと思います。
  107. 滝井義高

    滝井委員 われわれがしろうと考え炭鉱の応急的な対策をとろうとする場合に、石炭そのもの考えてみると、五千五百万トンで、四千円としても二千二百億程度なんです。八幡製鉄一つ生産高と同じくらいのものなんです。そうしますと、一兆九千五百二十七億というのがことしの予算でありますが、来年度はこれが二兆三、四千億になる。この中から百億やそこらのものを出せば問題は片づいていくわけなんです。お互いにこうして目の色を変えてやっているのだけれども日本の国内資源をどうするかという腹がまえを少し政治家がお持ちになれば、考え方としてはそう私は大きな問題ではないと思う。というのは、総生産高が二千億くらいの問題なんですから、それが今非常に大きな燃料という生産基礎をなしている、こういうことですけれども、これはお金に換算してみると、八幡製鉄一社くらいの問題なんです。だから、ここらあたりに私は政治家の腹があると思う。幸か不幸か、こういう重大な石炭転換期に実力者の佐藤さんが通産大臣におなりになっておるのですから、これを機会に片づける以外にない、こうわれわれは考えております。  いろいろ悪たれをつきましたけれども、われわれも馬の足になって犬馬の労をとらしてもらいますから、どうか一つ佐藤さんも馬上天下をとる意味において、大いに石炭政策の前進のためにがんばっていただくことをお願いして、私の質問を終わります。
  108. 有田喜一

    有田委員長 中村重光君。
  109. 中村重光

    中村(重)委員 数日来各委員の大田との質疑応答で、非常に重要な石炭問題の焦点が一応浮き彫りにされてきたという感じもする、また、問題の解決の一つの路線が見出されてきたというような感じもするわけでありますが、しかし、そうした質疑応答の中で非常に疑問な点があるわけであります。それをずっと一応メモしてみたのであります。いろいろ具体的な問題は、法案審議という形におきまして後日質問することにいたします。その疑問点を、原則的な質問になりますが、一応お尋ねしてみたいと思うのであります。  石炭生産というものを、三十八年度までに五千五百万トンにするのだ、こういうことであります。ところが、中川委員指摘されましたように、石炭の埋蔵量というものは、現在確定埋蔵量二百億トンといわれておりますが、ボーリングその他を積極的にやることによって相当生産が期待されるのじゃないか、そういった予測があるわけであります。しかし、五千五百万トンというものに生産をくぎづけするといったような考え方大臣は持っておるのではなかろうかというような印象を強く受けるわけであります。石炭は言うまでもなく国内の重要資源でありますから、そこで通産大臣は、国内資源である石炭を積極的に開発するという意思を持っておられるのであるかどうか、まずその点に非常な疑問を感じたのであります。
  110. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 別にくぎづけするつもりはございません。ございませんが、ただいま計画し得る数字が五千五百万トンだ、こういうことを実は申しておるのでございます。五千五百万トン以上でなければならぬとか、以上は困るとか、こういうことを実は申してお為わけではございません。誤解のないように願います。
  111. 中村重光

    中村(重)委員 もちろん、以上はいけないのだ、そういうことは言われません。しかし、現有の経済ベースに乗る石炭出炭というものはまず五千五百万トンだ、そういった答弁を、昨日中川委員の資問にもされた。そこで、経済ベースというのは、大臣としてはどういった計算、どういつだ石炭政策の面から割り出そうとしておられるのか、その点疑問に感じるのでございます。
  112. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 五千五百万トン、千二百円下げというのは、一応重油との比価を考えるというのでございまして、それが当時の経済ベース、こういう考え方であります。しかし、その後重油の値段はどんどん下がって参りましたので、ただいまはそこまでは追い詰めませんということを実は申し上げておるのであります。だから、比較的にゆとりのある数字だ、かように御了承願いたいと思います。
  113. 中村重光

    中村(重)委員 昨日の答弁の中で、将来わが国の総合エネルギーの中心は石油に移る、そういうことで、逐年石炭の総合エネルギーの中に占める割合が低くなっていくということを数字をあげてお示しになっておられる。そういった大臣の答弁の中からうかがわれるものは、どうしても五千五百万トンというものを大臣は頭の中に描いており、それを突き破って国内資源である石炭生産を積極的に上げていこうという意欲が、非常に弱いという感じを強く受けるわけです。今各委員から指摘された点は、いろいろな問題が生じてくるであろうが、そういった場合にも、この石炭産業のわが国の総合エネルギーの中に占める位置づけというものは、やはり相当重要視されていかなければならないし、主要エネルギーとしてこれを考えていかなければならないのだ、そういったような質疑がなされたわけであります。その点に対しましては、ただいまいろいろと御答弁がございましたけれども、やはり現在の石炭政策隘路というようなものを打開していき、そうしてこの増産を強く推し進めていく意欲がなければならぬ、こう思うわけですが、その点に対してはどうお考えですか。
  114. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 中村さんと私と基本的にあるいは考え方が違うかもわかりませんが、今御指摘になります点で、意欲がないと言われるのは、これは見方の問題で、私は十分あると思う、かように申すだけですがエネルギー石炭から重油に移るということ、これは普通の常識的な傾向だと思います。それをわれわれが政治的に、また一国の経済的な立場から、何とかして石油へ移るその速度なり量なりにブレーキをかける、これが私どもの今やっておる点でございます。それらのことを考えまして、将来ともこの五千五百万トン消化ということ、これはなまやさしいことではないと思います。この七割消費を将来長期引き取りをする、かように申すから比較的楽に考えられるかもわかりませんが、これはもう業界の自由経済のもとにおいては非常に困難なことです。しかし、それをしもやり、さらにまた、可能な範囲の合理化をお勧めする。しかも千二百円この際は下げだ、しかし業界自身がみずからの意欲によって、あらゆる産業同様に、絶えず合理化を進めて下さい、こういうことを実は申し上げて、そうして石炭消費の最の確保をはかる。これはもう政府と業界とが一体になってやる、実はこういう気持でございます。今後の見通し、あるいは石炭消費の新しい面、それなども、いろいろ技術的な工夫などされますから、必ずしもその五千五百万トンにとらわれることはないし、たくさん使えるものならどんどん使っていく、そういう意味の努力はもちろん政府もしなければならぬと思いますが、大体の傾向そのものとすれば、あらゆるブレーキをかけ、片方で進めて参りましても、まあよいところの数字ではないか。これを昨日来というか、先だって来お話し申し上げておるのでございます。なお、こういう点をやれば非常に効果がある、こういうことがございますれば、もちろん私どももそういう名案を取り上げるのにやぶさかでございません。ただ、今の二百億トンの埋蔵量は、さらにこれから先に進めばうんと安く掘り出せるだろう、ただそういう想像だけでは、私どももその説に直ちに賛成するわけにはいかない、こういうことを実は申しておるのでありまして、各界の方々の良識ある御審議をいただいた数字が、先ほど来申し上げたような数字でございます。
  115. 中村重光

    中村(重)委員 大臣の御指摘通り、わが国の総合エネルギーというものが漸次石油に移っていく、そのことはやはり否定できない、そのように私も考えるのであります。今大臣は、いろいろと意見もある、しかし、ほんとうに石炭の増産がどの程度できるのであるかということに対する疑問というようなこともおっしゃったわけでございます。ところが、今石炭の抜本的解決策としていろいろな意見が出されておると思います。たとえば鉱区の統合の問題であるとか、あるいは休眠鉱があるが、これを何とか開発していかなければならないじゃないか、流通機構の問題というものも、これはやはり一元化していくのでなければ、非常にむだがあるというように、確かに傾聴に値する意見あるいは具体的な分析というものがなされておると思うわけであります。少なくとも担当省であるところの通産省がこれらの問題に対して耳を傾けていないということはあり得ない、同時に、そうした面に対して十分な検討というものがなされていないということはないと私は考えるわけであります。そうしたことに対して、この石炭の問題の隘路というものが大きく打開されていく面があるのではないか、こう思うわけでありますが、そうした点に対しては、大臣はどうお考えになっておられるか。
  116. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今後の新鉱の開発、これはもうしばしば発表いたしておりますように、原料炭重点に開発していくという基本的な態度をとっております。そうして、いわゆる鉱区の整理また統廃合、あるいは租鉱権の問題、これなども今日まであるいは業界等の話し合いにまかせておる面ももちろんございますが、場合によりましては、さらに行政指導、行政あっぜんを必要とするのじゃないか、かように考えておりまして、そういう点についての検討はもちろん続けておるような次第でございます。
  117. 中村重光

    中村(重)委員 そうした問題というのは、通産省としても今まで十分検討されてきておると思う。従って、長所というものはやはり多分に割り出されておるのではなかろうかと思うわけでございますが、その点に対して大臣は積極的に取り組んでいこうという意欲を持っておられるかどうか、検討の結果、具体的な問題もそこに現われておろうと思いますので、その点を一つ伺ってみたいと思います。
  118. 今井博

    今井(博)政府委員 鉱区の整理統合の問題あるいは鉱区調整の問題は、前々から各方面からいろいろな御意見がございまして、われわれもその点は十分検討を続けて参っておるわけであります。従って、鉱区調整の問題としましては、これは現在行政指導で、部分的でございますが、相当実績を上げておるつもりであります。しかし、鉱区を整理するとか統合するとかいう問題になりますと、現在の鉱業法では、勧告指導はできますが、問題を決定する権限が実はございません。それから、いま一つ、何と申しましても鉱区は財産権でございまして、これを整理統合するという問題は、戦争中からもいろいろいわれておりましたが、なかなか動かすことができないという実情がございまして、やはり、これをやりますには、先ほど申しましたような、相当の権限を持ちまして政府が決定する、そこまでのものを持ってやらないと、これは竜頭蛇尾に終わるという事情もございますので、鉱業法の審議会はこの点も相当議論をいたしておりまして、その辺とにかく一歩前進した規定を作る必要があるのじゃないか、こういうふうに審議が進められておる状態であります。従って、現状の範囲内でやり得る鉱区調整という問題になりますと、やはり一々具体的なケースをつかまえて、なるほどこれはやった方がいいというものを取り上げていくより今のところとしては処置がないということで、その範囲内においてはわれわれとしてはできるだけの実績を上げておる、こういうつもりでおりますが、なお、この点はさらに具体的なケースとして、もっと検討したいと考えております。
  119. 中村重光

    中村(重)委員 事務当局の答弁としては、それ以上のものは言えないと思う。私がお尋ねするのは、大臣の心がまえ、これに取り組む態度というものをお尋ねするわけです。昨日来御答弁がありましたように、私企業であるということにおいて非常な困難性がそこに横たわってくるということは、これは否定できません。しかしながら、石炭産業が国の基礎産業であるというこの事実、さらには資本主義国家におきましても、御承知の通り、イギリスは国営であり、フランスは公営である。私企業であるドイツにおきましても、流通面におきまして相当国がこれに対して統制を加えているという、こういう事実、このことからいたしましても、日本はそうしたヨーロッパ諸国以上にこの石炭問題というものは深刻であるということを考えるとき、現在の鉱業法がどうであるとか、あるいは財産権の問題が非常にむずかしいからというようなことで、従来のからを一歩も出ないという考え方であっては、このむずかしい石炭問題の解決はあり得ない。そういうことから申しまして、大臣はどれほどの熱意を持って、この石炭対策の抜本的解決というものに乗り出そうという意欲を持っておられるのであるか、その点を伺ってみたいと思います。
  120. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの点は、事務当局からもお答えいたしましたし、また中村さんの仰せになりました点、これについて私は反対するものでもございません。しかし、問題は、やはり円滑なる行政の遂行ということは、これはやはり政治のあり方として望ましいことでありますから、ただいまやっておることが間違っておるとも思いませんし、またこれはもう少し理解を深めるならば、必ず協力を得られることじゃないか。ことに最近の炭鉱事業に対して政府自身がこれだけ熱意を持って育成しておるこの事態から申すならば、経営者といえども、必ず政府考え方を理解し、協力してくれる、かように考えておりますから、行政指導の面でさらに効果の上がるような実績を一つ積みたいものだ、かように思っております。
  121. 中村重光

    中村(重)委員 大臣の答弁の通り、最近石炭問題の重要性が大きく浮かび上がってきて、これに対して通産大臣を中心として、前向きの姿勢をもって取り組んでいこうとしている意欲は、率直に認めるわけであります。従いまして、私どもも、この問題は、全く党派を越えて、イデオロギーにとらわれてこれを云々すべきものではないのだ、そうした考え方から質問もしておるわけであります。石炭産業が私企業であるというようなことではありますけれども、今までも国がいわゆる金融問題あるいは流通面におきまして、いろいろとこれに対して関与してきたという事実、これは否定できないわけであります。具体的な問題といたしまして、新昭和石炭というものがある。これによって需要供給という面におきましてある程度安定的な施策というものが講ぜられてきたということは、これは認めなければならぬと思うのですが、そうしたことからいたしまして、流通面というものは、当面最も積極的に取り組んでいかなければならないのではないか、その点に対しましては、ある程度具体的な考え方というものが大臣の胸中にもあるのではないか、その点について伺ってみたいと思います。
  122. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 石炭関係では、ただいまのような銘柄取引、これが一番問題であると思います。だんだん整理されつつあるようには思いますが、なかなか大へんな問題であります。こういったところに一つの問題がある。また、流通機構としての配炭公団というような構想があるかと言われると、ただいまそういう考え方の方向には進んでおりませんが、流通過程においての出費の軽減といいますか、経費の軽減、これは私どももいろいろ工夫して、そういう方向で考案してみたい、かように実は思っておるわけでございます。
  123. 中村重光

    中村(重)委員 流通上の問題というものは、続いて御質問申し上げるコスト・ダウンの点に関連して参りますので、あとでまたお尋ねしてみたいと思います。  先ほど滝井委員質問に対して大臣は、合理化計画を樹立した当時と異なってきておる現在の条件の中においても、石油の問題とは切り離して、三十八年度まで計画通りにこれを実施していくのだ、こういう御答弁があったわけであります。この点には私は非常な疑問を感じたわけですが、それにはもっと具体的な内容というものが示されなければ、これを石油と切り離すとおっしゃっても、これはなかなか簡単には、そうかなということで、これは信用できません。これは千二百円のコスト・ダウンをするときに、石油価格八千四百円というのはこのコスト・ダウンに対して相当重要なウェートを占めておったというこの事実からいたしまして、大臣がこれを切り離すんだとおっしゃるのは、私どもといたしましては、単なる答弁ということではどうしても受け取りかねるわけです。もっと具体的な案があろうと思いますので、お示し願いたい。
  124. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど五千五百万トンの七割の長期引取計画、その大綱のトン数はお示しいたしました。これが実現いたしておりますのが何よりもはっきりしたお答えじゃないか、かように思います。その以外に何か疑問にされるとすれば、ただいまの千二百円引きが実現しない際に、一体どうなるのかということだろうと思いますけれども、千二百円引きということをすでに大手もその他の方々も協力する態度でいらっしゃいますから、私はその計画通りであるということで、これを前提にして、電力を初め大手筋の長期引取契約を実施しておるわけでございます。それ以外に何かこういう点が不安だとおっしゃれば、つけ加えさせていただきます。
  125. 中村重光

    中村(重)委員 それ以外に疑問があるか、こうおっしゃるのですが、五千五百万トンの生産に対して、需要面は、先ほど滝井委員質問の中である程度バランスというものが出ては参りました。しかし、それはあくまでバランスであって、やはりこの需要面に対しては、どうしても千二百円のコスト・ダウンが大きな要素を占めておるわけです。ボイラー規制法というものもすでに失効していくという時期になっている。それに対しては、今一応こういう数字は出たのであるけれども、引取契約というものも先ほどお示しにはなりましたけれども、情勢というものは、池田内閣の高度経済成長という形において大きな狂いを来たしておるという面からいたしまして、必ずしも今まで立てておった計画がその通り推し進められていくというようには考えられない。やはりそこには法的な強力な規制というようなものがなければならない、私はそう考えるわけなんです。ただこういう形で需要はやるのだというようなことだけでなしに、もっと具体的な基礎の上に立った御答弁を願いたい。
  126. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまボイラー規制法は、三十八年秋までのものがございます。そのボイラー規制法の中にさらに追加する産業があるのじゃないか、こういう問題が御指摘の中に一つあるかと思います。それから、自由化は来年の十月を目標にしている、こういうことでございますから、来年が石炭の引き取りの面で安い石油と競合してどういうようになるか、こういう一つの御心配があるのだと思います。しかし、先ほど来のお答えで、長期引取契約というのは自由化を前提にして、なおかつ引き取るということでございますから、通産省自身としては別にそこに危倶、不安を持っておるわけではないのでございます。問題はそれではどこまでも業界にこれを徹底さすということ、あるいはさらにそれを法律事項にする、こういうところまでの考えが通産省にあるのか、こう言われるかと思いますが、そこまでは考えなくても、これでいいのじゃないか、大丈夫じゃないか、こういうふうに実は思っておるわけでございます。問題は、一方的な協力ということよりも、やはり業界で話し合っていくことが一番望ましいことでございますし、また、都合によれば、自分たちの方はもっと炭が出れば引き取ってもいいのだ、こうまで実は言っておりますので、かたい制限のある、拘束のある方法よりも、石炭出炭の将来等を考えるなら、むしろ弾力的な条項のある方が望ましいのじゃないか、かように考えますと、私は現在のあり方の方がむしろ望ましい姿じゃないか、かように思います。もちろん、これを実施しまして非常な不都合がくれば、その次の段階ではまた工夫しなければならないものがございましょうけれども、ただいまは、私どもはその心配を何らいたしておらない実情であります。
  127. 中村重光

    中村(重)委員 ただいまの答弁で、これが計画通りに進んでいくということは、業界に期待するところが大きいということがわかったわけなんですが、先ほどの滝井委員質問の中にも、労使の関係がうまく協調されていくならば、というような御答弁もあったように思うわけなんです。ところが、この石炭合理化という問題をめぐって、労使関係が非常に深刻な状態が起こっておるということは、大臣も御承知の通りでありますし、そうした問題をめぐって、現在の炭労の石炭政策転換の闘争というものも行なわれてきておる。このことを考えてみても、なまやさしいものじゃないということは、大臣も十分お考えになっていらっしゃるのではなかろうか、私はこう思うわけであります。先ほど来、大蔵大臣にいたしましても、また通産大臣も、現在までのところは、合理化計画通り進んでおるというような御答弁が実はあったわけです。数字としましてはそういうことであろう、こう思うわけですが、この合理化の過程において非常に深刻な問題が起こっておるということは、大臣も率直に認められるのではなかろうか、こう考える。いわゆる労働問題、首切りであるとか、賃下げであるとか、あるいは労働強化であるとか、もろもろの問題が起こっておるわけでありまして、大きな社会問題に発展をしておる現在の状態であります。このことを考えてみるときに、これから先の三十八年度までの計画というものが、今までのようなそうした労使関係をもっとなめらかにして、そして労使の関係が非常に協調されて、大臣が期待するような形において推し進められていくということが考えられるかどうか、この点に対しての大臣考え方一つ伺ってみたいと思います。
  128. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 計画は大体計画通り進んでおる、かように申しますが、ずいぶんそごしている点はございます。ただ、五千五百万トン三十八年、あるいは千二百円下げ三十八年、この大筋の目標には近づきつつある、こういうことは言えると思います。しかしながら、個々の場合にいたしましては、五千五百万トンの数字に近づき得ないものに、たとえば過去において相当熾烈な争議があった。こういうものが生産を阻害し、目標数字に達しない。これは先ほど滝井さんの質疑の中にもそういうものが出ておりますし、また、こういう事実はそのままお認めになるだろうと思います。あるいはまた、千二百円下げの場合に予定した賃金のアップ率は、大体三%といわれております。しかしながら、総体から見ますと、必ずしも三%ではない、それよりもやや上回っている面がある、こういう事態もあるようでございますから、必ずしも計画通りにぴしっと何もかもそろっているわけではございません。しかし、私ども考え方からいたしますならば、自由経済のもとにおいては、大体大筋は計画に乗っておる、こういうことが言えると思うのです。  ところで、ただいま御指摘になります労務関係の問題、これも先ほどお話がありましたように、今後の問題といたしましては、安定産業としての労務確保、こういう道が開けなければならないということは滝井さんにもお答えをいたしましたが、その場合に問題になりますことは、賃金のあり方というものが一つの問題でしょう。だからこそ総評の諸君も今回は、一万二千円の最低賃金制を採用してくれ、こういうことを言っておられるのだ、かように実は思います。こういう点が今後改善される面ではないか。なるほど賃金が八千円もカットされた、あるいは五千円もカットされた、ちょっと想像のつかないようなカットが行なわれております。しかも、それを組合側もやむを従ざる状態として了承されておる。こういう点が最近における新しい労使の関係だと私は思うのであります。これは山自身もかわいい、また自分たちの職場自身もかわいい、炭自身がかわいいんだ、こういう観点に立っての妥協すべからざるものを妥協した、こういう気持も多分におありだろうと思いますが、やはり一部においては、在来の炭鉱賃金の姿というものが、必ずしも各鉱の間に十分均衡のとれたというものでもないという、そういう点についての反省もあるのじゃないかと私は感ずるのでございます。今回の、炭鉱が安定産業として今後育成、維持される、こういう観点に立つこの事柄は、炭鉱を職場にする経営者並びに労働者だけでなく、国民全般も石炭産業というものに新たな認識を持っていく、これが一番大事なことだろうと思うのです。そういうような事柄ができるならば、労務の確保についても、いわゆる中高年令層の人ばかりになるというような危険もなく、順次新しい労務者の補給もできるでしょうし、また働く人も将来に希望が持てるということになるだろうと思うのであります。ことに滝井さんの質疑の中で強く私どもの胸を打ったお尋ねに、かつては炭鉱は去る者も地嶽、残る者も地嶽、こういうような言い方をされたが、去る者も残る者も仕合わせたというような炭鉱産業にしたいんだという、こういう気持は、今後は新しい意欲をもって労使双方に芽ばえてくるのじゃないか、それを私どもは強く期待する。そういう気持があり、そして一面において私ども石炭産業を安定エネルギー源としてこれを維持発展さしていく、こういう点へ結びつけていきたいものだ、かように私は思います。今回幸いにして、これは池田総理も指摘いたしておるところでございますが、今回の石炭対策の面では組合側も一体になり、また経営者側も大手といわず中小といわず一体になって、今まではいろいろないきさつがあったにかかわらず、これが一体の姿でこの石炭問題を解決しようとしておられる、これは不幸中の幸いだ、だから、この点をどこまでも生かしていきたいということを総理自身も述懐しておられますが、通産省といたしましては、所管省でありますだけに、この姿は新しい今後の炭鉱産業の行き方として大いにこれを強化したいものだ、かように私は思っておる次第であります。
  129. 中村重光

    中村(重)委員 確かに大臣が今答弁されるように、これは当然のことながら、積極的な態度をもってこれに取り組んでいこうという意欲は、先ほど申し上げた通りに、私ども認めておるわけであります。この機会にこそ一丸となってこの石炭問題の解決に当たっていかなければならぬ、こう考えるわけであります。ただいまの御答弁の中にもございましたが、現在賃金カットというものが次から次に起こいている。その中には、大臣の御指摘通り、賃金ベースとしては最高の賃金をとっておったある炭鉱においてカットが行なわれたというような、そういう例はございます。しかしながら、相当大幅の賃金カットが行なわれておる炭鉱において、平均賃金よりも下回っているところが賃金カットをされておる。こういう事実もあるわけであります。私どもが非常に心配いたしますのは、先ほど大臣の答弁を伺ってみましても、法的な規制もしない、三十八年度までは計画通り千二百円ダウンの合理化を実施していくんだ、こういうことでありますが、先ほど来滝井委員から指摘がありました通り、器具機材というものも上がってきておる。その他いろいろの条件が悪化してきて、非常に困難になっておる。こういう中においてこれを計画通りにお進めになっていくということになって参りますと、やはりどこかに無理が要求されてくるのではないか。その無理というものは、今までも非常な無理が行なわれてきた炭鉱労働者に対するところの、一方的な犠牲として強要されるのではないかということが心配されるわけであります。もちろん炭労の労働者諸君といたしましても、このことに対して非常な心配をしておるだろうと考えるわけであります。大臣は十分通産省の事務当局の説明によって御承知になっておられると思いますが、炭鉱の労働者の絶対量というものは、今減っておるわけですね。それにもかかわらず、他産業と比較いたしまして三倍、四倍という災害が出てきている事実であります。毎日二人ないし三人の炭鉱労働者が死んでいっている。昭和三十四年と三十五年を比較し、あるいは昭和三十六年度の実績というものの今までのところを見てみましても、この災害というものは上昇しつつある。このことを考えてみるときに、現在までの合理化というものは、やはり労働者に相当強いしわ寄せが行なわれておるのではなかろうかということが考えられるわけです。一炭鉱労働者の出炭能力をもって見ましても、十五トンであったものが二十トンになり、三十八年度までには約二十七トンという出炭をしょわされる、こういう計算になっておるようであります。これらの点に対して、今までの合理化のように、いわゆる労働者に大きな犠牲、非常に無理な犠牲が要求されたとは大臣はお考えになっていらっしゃらないかどうか。今後計画通りお進めになるという点について、なお、経営者にこれを期待するという場合において、今まで通り、あるいは今まで以上の労働者に対する犠牲が要求されるという心配は、大臣は持っていらっしゃらないかどうか、この点に対して伺ってみたいと思います。
  130. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 おそらく今後の問題は、ひとり炭鉱ばかりではないと思いますが、適正な労務管理がなされない限り、生産の向上などはないと思います。ましてや炭鉱のごとく、機械力の範囲が比較的狭い産業部門においては、労務管理が十分手厚いものでないと、なかなか生産の向上を期することはできぬだろうと思います。これらの点は、経営者といわず、それぞれの部門の人がよく理解しておることだと思いますし、また過去の合理化等において、あるいは労務者の負担において合理化が行なわれたということをしばしば聞かされるのでございますが、一、二の例を考えてみますると、炭鉱の労務者も、戦後の炭鉱労務者は大手においては非常に改善されておると私は考えますし、いわゆる労働者の犠牲においてということは、現実の問題としてはそうやれるものではない、かように私は思います。ただ最近のように賃金カットが行なわれたり、あるいは離職者が出たりすると、直ちにこれこそ労務者の犠牲じゃないか、こういうことを指摘されるかと思いますけれども、先ほど来申しますように、賃金カットそのものにいたしましても、適正な賃金であることが望ましいのでございますし、そういう意味においてはやはりごしんぼう願わなければならないし、ことに先ほど指摘するように、千二百円下げの際に一応予定したものが三%の昇給である、ところが実際はそれより以上に上がっておる、こういうような点もあるのであります。だから、この点は、私は、必ずしも労務者の犠牲とはいえないのじゃないか、ただ問題は山が休廃山する、あるいは非常な機械化が行なわれて、勤労者が職場を失う、これは失業対策あるいは再就職の機会が与えられるにいたしましても、明らかに犠牲ということが言えるかと思います。しかし、犠牲に対して国あるいは経営者なりがそれに対する手厚い処置をとりますならば、そこでごしんぼうが願いたい、かように私ども考える次第でございます。
  131. 中村重光

    中村(重)委員 大臣はその点は非常に楽観的な見方といいますか、業者に対する期待というものが非常に大きいようでございますけれども、やはり従来行なわれてきた労使間の深刻な問題というものは、真剣にこれを考えて将来の参考に資していく、こういうことでなければならぬと私は思うのであります。現在炭鉱におきましては、政府が投入いたしました近代化資金その他の資金と比較をいたしまして、社外投資というものが相当行なわれておる。このことも、私企業である炭鉱経営者が石炭産業以外に事業をやってはいけないという理屈はないじゃないかという議論はあろうかと思います。しかしながら、政府がそうした熱意を持って資金の投入をやっておるにかかわらず、炭鉱経営者がそうした炭鉱経営に対する熱意を示さないという証左の現われであるこの現実というものは、十分検討していかなければならないのじゃないか、こう思うわけであります。もう一つ合理化に現われた一つ現象として重視しなければならないことは、第二会社とか租鉱権炭鉱というものが非常に増加してきておるという事実であります。このことは、やはり低賃金で労働者を使っていこう、そう  いったような意図が中心になっておる、こう思うわけであります。このことも合理化というものの非常に無理な推進が行なわれてきておるという一つの証左であろうかと思うわけであります。この点に対して、大臣はどうお考えになっておるか。
  132. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 社外投資というもの、これはもちろん問題は程度の問題というか、あるいは、十分利益が上がって、そして石炭業の方にその利益を回してくれるなら、一がいに悪いとは言えないと思います。しかし、その方が主たる事業になって、石炭業が副になるようでは、これは今御指摘のような点もあろうかと思います。しかし、石炭自身に課せられた使命を達し、さらに余力があって他の方面で活動すること、これは必ずしも一がいに悪いとは言えぬ、かように思います。ただ、真剣な炭鉱経営者としては節度がある、かように一つは思う次第でございます。  もう一つの租鉱権の問題、これは今後の石炭産業のあり方の面から見まして、先ほどお尋ねのありました鉱区の整備あるいは新鉱の開発、これと同様に重大な問題として私ども対策を立てなければならぬ、かように実は思っております。事務当局でもいろいろ検討しているものがあるだろうと思いますから、私の説明の足らないところは補足させたいと思います。
  133. 中村重光

    中村(重)委員 局長にお尋ねしたいのですが、租鉱権の認可基準ですね、この点が非常に不明確である、この点はもう少し明確にしなければならぬという答弁を通常国会でされたというように記憶するわけですが、今どういったような準備を推進しておるのか、伺いたいと思います。
  134. 今井博

    今井(博)政府委員 この前の国会で、租鉱権の認可要件について答弁いたしました。それに基つきまして、現在の鉱業法によります租鉱権の認可要件、これは残鉱というものを経済的に開発する、こういうことが要件になるわけであります。この精神というものをできるだけ厳格に解釈して、炭量の非常に大きいものとか、過去に例がございましたそういうふうなものについては一切許可を与えてはいかぬというふうな現在の法規を厳格に解釈してやるような一つの基準を作りまして、その基準を、担当者を東京に集めまして、それは多少地区によってやり方が違いますが、厳格にやるような一つの示達をいたしております。  なお、特に租鉱権の中で、法規には該当しておるけれども、やはり相当問題だと思うのは、現地限りで処理してはいかぬ、これは東京へ持ってきて、東京の指示を仰いで処理する、実はこういう指示もいたしてございます。租鉱権の認可の数は極度にしぼっておるという状態でございますが、現地の実情からしまして、これを全部押えるわけには現在まだ至っておりません。
  135. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係がありますのでこれで打ち切りたいと思うのでありますが、最後に大臣に特に注意を喚起したいと思いますことは、今までの合理化というのは、通常国会で多賀谷委員からも強くこの点を指摘されておりましたが、労働者のみの犠牲によって推し進められてきておるという、この事実であります。ただいまの問題の租鉱権にいたしましても、あるいは第二会社の問題にいたしましても、炭鉱労働者の首切り、賃下げ、さらには労働強化等々、数え上げて参りますと、これは全く労働者のみの犠牲であります。中小炭鉱の買いつぶしということにいたしましても、労働者の犠牲であり、非常に弱い中小炭鉱の犠牲というものが出てきている。それに反してこの合理化の恩典に浴しているものは、いわゆる大手炭鉱であるという、この事実であります。ただいま大臣は、他の産業にいわゆる社外投資をする、それによって得た利益によって炭鉱経営をうまくやっていく、労働者に対するところの対策が非常にうまく行なわれていくというようなことであるならば、それでいいじゃないかという態度でございます。しかしそのことは、私は単なる御意見であると思います。少なくとも現実は、大臣が今おっしゃられたような御意見あるいは大臣の答えの通り進んでいないじゃないか、この現実の上に立って、そうして、切開してうみを出すものは出して、現在の石炭政策転換というものをやっていくのでなければならない状態に追い詰められてきておるという、この事実を十分一つ理解せられて、積極的に石炭政策転換の問題に取り組んでいただくように強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  136. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えするまでもないことだと思いますけれども、ただいま御意見をまじえてのお話でございましたが、御指摘通り、現在の石炭産業に対する対策が、弱小者、たとえば中小企業の犠牲において、あるいはまた労務者の犠牲においてなされるということがあっては相ならないと思います。そういう意味では、私どもも最善の注意を払って参るつもりでございます。どうかそういう意味でこの上とも御鞭撻を賜わりたいと思います。
  137. 有田喜一

    有田委員長 井手以誠君。
  138. 井手以誠

    ○井手委員 石炭の問題では、また後日全般的な問題を関係大臣にお聞きいたしたいと思います。本日は提案された臨鉱法の改正案にそいてだけお伺いをいたしたいと思います。  提案されました今度の改正案の緊急認定による緊急工事、これはかねがね私ども要望した点であります。これは非常に大事な点でありますが、今後通産省では一体年間どのくらい緊急工事の工事費を予定されておるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  139. 今井博

    今井(博)政府委員 緊急認定制度によってどのぐらいのものを年間考えておるかという問題は、緊急の事態の問題でございますので、一応あらかじめどのくらいという範囲を予定いたしておりません。従って、これは鉱害全体の資金量の中で、無資力認定のワクがございますから、その無資力認定のワクの中で弾力的に操作したい、こう考えております。従って、緊急認定については年間幾らというワクは考えておりません。
  140. 井手以誠

    ○井手委員 安定鉱害については大体計画が立つわけですが、進行中の鉱害については、この緊急認定でなければならない炭鉱が非常に多いと思うのです。私の地区においても非常に多いのでありますが、私はかなりの事業費ないし予算を用意しておかなくてはならぬと思います。私は当局としてそのぐらいの用意はあるはずだと思うのですが、どうですか。
  141. 今井博

    今井(博)政府委員 緊急認定は、この法律にございますように、その鉱害がだれの責任かはっきりしない、こういう場合に緊急認定をやりまして、しかも一応応急工事をやろう、こういうわけでございますので、件数はかなり出てくるかもしれませんが、金額的に見ましてこれをあらかじめ幾らと予定することが非常に困難でございますので、一応ことしから来年に考えております無資力認定の資金のワク内で操作いたしまして、これが非常にたくさん出て足りないということになれば、あるいは予算措置を考える、こういうことにせざるを得ないと思います。
  142. 井手以誠

    ○井手委員 その程度のお考えでは、緊急認定、応急工事に対する用意が私は足りないと思います。御承知の通り、鉱業権者がはっきりしない、たとえば鉱区が競合したり、あるいは鉱害認定に至らない地すべりの関係があるとか、いろいろな事情で、加害者がわからない場合で、しかも民生安定のために緊急にやらなければならぬ工事は相当に上ると私は考えておるのであります。その点はお考えになりませんか。
  143. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいまのところは、そう大きな額にならないのじゃないかと想定いたしております。
  144. 井手以誠

    ○井手委員 大臣にお伺いをいたしますが、今まで鉱害復旧工事については努力をなさいましたけれども、なお予定の通りには進んでいないのであります。しかも今日判明しておりまする安定鉱害は二百四十億円、しかもさらに今後十年間に三百億円程度の安定鉱害が発生するであろうと、通産当局が認められておるのであります。従って、これを十カ年間にやり遂げるには、現在程度の鉱害復旧の予算では足りないのであります。そればかりではございません。ただいま申し上げておりまする緊急認定も、石炭局長ははっきり申しませんけれども、私は相当の金額になると思います。それを思えばこそ、地方からもこの緊急認定、応急工事の要望が非常に強いのでありますが、なかなか工事までには至りません。一年、二年あるいは五年、六年かかってもなかなか鉱害認定が出ない。しかも水田に陥没する、灌漑用水は不足する、そういう非常に困った事態、あるいは家屋が倒壊するという事態に対して、加害者が判明しない、あるいは相手が、鉱業権者の加害者がなかなかそれに応じないという場合には、どうしてもこの緊急認定によらなければならぬのであります。そういたしますと、鉱害復旧の予算というものに、大臣は特段の努力をしてもらわなくてはならぬと私は考えるのであります。今日八億円程度でありますけれども、今後十カ年間に五百億程度の復旧工事をやらなくてはならぬ鉱害の予想に対して、どういう御決意がありますか、その点をお伺いいたしておきたいと思うのであります。
  145. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 予定されます安定鉱害に対して、まずこれと取り組むことが第一の問題だと思います。そういう意味におきまして、これらの復旧に必要な資金の確保に最善を尽くして参りたい、かように思っております。
  146. 井手以誠

    ○井手委員 最善を尽くすだけでは、不安でございます。あなたの方の提案理由の説明にも「現在累積して残存している安定鉱害だけでも約二百四十億円に上り、」こう書いてある。しかも今までの説明なりあるいは資料によりますと、今後十年間に発生を予想される安定鉱害は三百億円と見込まれております。この五百億円以上に上るものを今後十年間にどうして復旧なさろうとするのか、その点安心のできる決意を一つ承りたい。最善ではいけません、毎年このくらいやるという決意を承りたい。最善じゃだめですよ。
  147. 今井博

    今井(博)政府委員 大臣が最善を尽くすと申されましたことを数字的に少し内容を申し上げますと、将来今後十年間に発生する鉱害はわれわれは約三百億ある、こう思っておりますが、これを原形復旧した場合にどのくらいの量になるかという数字でございまして、一応これを効用回復ということに重点を置きますと、この三百億が約百六十億程度の金額になる、こう推定いたしております。この点が一つ問題でございますが、そういうことから十年間の今後の処理計画といたしましては、先ほどの安定鉱害二百四十億を中心にいたしまして、十年間に安定した鉱害と将来の効用回復ということで計算して参りますと、約三百七十億程度の鉱害を処理する必要があるのじゃないかというのが、現在われわれの計画でございます。この三百七十億を十年間にやります場合には、毎年三十七億程度の鉱害を復旧しなければならぬ、こういうわけでございまして、現在では御指摘のように鉱害の処理は臨鉱法では毎年十七億程度の鉱害を復旧いたしております。そのほかに自己復旧とか打ち切り賠償とかそういうものを加えますと、おおむね十三億程度の金額になるわけでありまして、全体で三十億程度の鉱害が一応処理されるという数字になっておりますが、これをかりにこのまま十年間続けて参りましても、まだだいぶ七十億程度の鉱害が残ることになりますので、この全体の処理量をもちろん増加せねばなりませんが、中心はやはりこの臨鉱法による鉱害の復旧量の現在十七億程度のワクをぜひとも二十億以上の数字に持っていきたい、こう思いまして、今予算を要求いたしておりまして、二十億以上に持っていけば、この三百七十億程度の鉱害量は一応この十年間で解決できるのじゃないだろうかという見通しを立ててやっておるわけでございます。
  148. 井手以誠

    ○井手委員 あなたのおっしゃった効用回復の点には非常に問題が多いのであります。効用回復では被害者は承知をいたしません。少なくともやはり原形復旧でなくてはならぬと思うのです。それは臨鉱法改正の一番大きな要点であろうと思うのでございます。当局の言う効用回復というのは、被害者にとりましては、その要望の半ば程度にしかすぎないのであります。私は後日大臣にもあらためていろいろ相談いたしたいと思いますが、これは効用回復ということではいけません。鉱害については、あくまでも原形復旧ということを中心にしなければならぬと考えております。この中心問題は後日に譲ることといたしまして、現在十七億程度のものを少なくとも二十億程度以上にいたしたいという石炭当局の態度は、これはあまりにも遠慮し過ぎた数字であると私は考えるのであります。しかし、それはそれとして、四百億前後の鉱害に対して、少なくとも二十億は必要だという石炭局長考え方に対して、大臣はどうですか。あなたは実力者の筆頭でございますから、そのくらい、二十億、三十億の金はそうむずかしいことではないと思いますが、来.年度予算には、一つ鉱害復旧の費用は、緊急認定ということもございますので、二十億以上に上るように、あなたは努力をなさる御決意がございますか。
  149. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 十分努力していくつもりでございます。
  150. 井手以誠

    ○井手委員 来年の二月は予算でお目にかかることと思います。その予算の数字であなたの真価がわかるわけです。それを、私はあなたにげたを預けておきます。  この臨鉱法の改正案については、この前論議をいたしておりますから繰り返したくはないのでありますが、前の通常国会、すなわち去る五月二十九日の商工委員会におきまして、この改正案の質問を私がいたしました。同じ改正案でございますから、この会議録を朗読いたしまして、確認いたしたいと思います。  そこで午前中滝井委員から質問があり策した今度の改正案の応急工事でありますが、こういう場合はどうなりますか、この例が非常に多いのです。鉱害であると一般には常識的に思われるものが、科学的な調査が進まないために鉱害の認定が非常におくれておる、こういう例が非常に多いのです。たとえば、その周辺に地すべりがなくても、ここは地すべり地帯であるから、鉱害とはにわかに断定できないということがよくいわれるのです。いま一つは、昨年あなたの方にもいろいろお世話になりましたが、多久のような問題、炭鉱が掘進を進めて参りますが、鉱区が隣接しておりますから、どちらの方の炭鉱が加害炭鉱であるか明確でないという場合、しかし実際には灌漑用水もない、井戸の水も枯渇してしまったという場合には、それは加害者がはっきりされないから、にわかに鉱害としては認定できないというのが多久の問題である。そういう例が非常に多いのです。先刻一号と二号という話もありましたが、この場合はどうか、お伺いをいたしますが、急に灌漑水がなくなって植付ができないというようなものは、今度の緊急事態と認められるかどうか、応急工事に該当するかどうか。灌漑水も非常に減っており井戸の水も枯渇して非常に支障を来たして自衛隊の出動を求める、そういう場合は、この緊急事態における応急工事として該当するのでしょうか。
  151. 今井博

    今井(博)政府委員 この緊急認定制度に該当すると思います。
  152. 井手以誠

    ○井手委員 それでは、鉱害課長はよく御存じでしょうが、多久の場合は該当するわけですね。
  153. 今井博

    今井(博)政府委員 これは灌漑用水の非常に枯渇しておる状態の問題が、非常に緊急を要するかどうかという、その認定の度合いにかかると思います。いま一つは、この鉱害の復旧は第一の原則が話し合いということを基礎にして行なわれておりますので、割合話し合いが簡単につきそうだという場合には、この緊急認定制度を活用することは一応差し控えまして、その話し合いを急速に進めるという方向で、やはり問題を解決したいと思います。ただいまおっしゃいました多久の事態は、われわれも初めは緊急認定制度を考えましたときに、やはりこの多久の問題を念頭に置いてこういうふうに立案をした次第でございまして、それが先ほど申しましたように、水の問題が非常に緊急で放置できないという事態でございますならば、この制度を活用したい、こういうように考えます。
  154. 井手以誠

    ○井手委員 緊急事態であるかどうかということは、あなたも局長ですからもうおわかりだと思うのですが、百姓にとってたんぼの水がなくなったという場合は、これは緊急事態です。井戸の水がなくなったという場合は、緊急事態です。緊急事態でないというのは、山奥のいわゆる水利を得ておったり、畑が若干あるという程度、そういう場合には緊急事態でないかもしれぬ。しかし水田の場合、飲料水枯渇の場合、これはいかなる場合でも緊急事態です。そういうことをやはり念頭に置いて認定をしてもらいたい。  次にお伺いをいたしますが、今度の改正は十カ年間の延長になっております。申すまでもなくこの臨鉱法は鉱業法の補完法であると私どもは理解をいたしておるのであります。今進められておる鉱業法改正は、この臨鉱法は別建になさる、補完法として存続なさる御意思であるのか、あるいは鉱業法に全部吸収して、りっぱな鉱害対策を含めた鉱業法になさろうとするお脅えであるか、この点をお伺いいたします。
  155. 今井博

    今井(博)政府委員 現在の鉱業法の建前から申しまして、やはり鉱害の基礎的な理念とか、そういう鉱害の本質については鉱業法の中に規定を設けますが、現在の臨鉱法の考え方の基本でございまする国土の復旧という観点からいたしますと、鉱業法とはおのずから別の体系の法律になりますので、鉱業法の改正の場合にもこれに吸収するという考えはございません。やはり臨鉱法をできるだけ改正しまして、これをりっぱなものにしたい、こういう脅えでございます。
  156. 井手以誠

    ○井手委員 今度の改正案によりますと、期限の延長、緊急認定の二つが中心になっておるようであり策す。非常にけっこうなことですけれども、私はここでなお足りないものとしてお尋ねをいたしたいのは、予防措置のことが欠けておる。起こったものを何とか緊急措置をしなくてはならぬというよりも、むしろ鉱害が起こりそうな場合は予防措置をとらなくてはならぬ、鉱害が起きないような設備なりあるいは対策を講じなくてはならぬことは、これはわかりきったことであります。当初通産当局はそういう予防のために炭鉱が資金に非常に困っておりますので、資金の貸付の制度、あるいは鉱害金融公庫と申しますか、そういう融資の制度をかなり大きく考えられておったようでありますが、それはどういう意味でなくなって、緊急認定だけになったのか、その必要がなくなったと私は考えたくはないのでありますが、それはどういう理由によりますか。
  157. 今井博

    今井(博)政府委員 鉱害の資金について金融機能を、さらに強化したいということはかねがね考えておりまして、先生の御指摘のように初めはそういう案も脅えておったのでございますが、鉱害の関係一つ金融公庫を作るということは、いろいろな関係がございまして非常に困難でございますので、一応金融公庫を作ったりそういう新しい措置は断念いたしまして、そのかわりに現在鉱害復旧事業団が一般の預金部から金を借りておりますが、今までは県を通じましての転貸で、しかも非常に短期の金融を行なっておる、こういう次第でございます。これを預金部から直接に借りて、しかもそれを長期な金融に切りかえるというようなことをいたしまして、一応この金融機能を強化するということの一歩前進をはかったわけでございます。  それからいま一つ鉱害の予防措置につきましては、たとえば鉱業権者がシックナーを設置する、そういう場合の設備資金を、やはり鉱害の金融という考え方から、こういうものにも金を貸して、何とか鉱害の予防もやらせたいということを考えておりましたが、先ほどのような金融公庫というふうな抜本的な解決にまで至りませんので、この点は現在の復旧事業団というものを活用して、何らかのそういう金融機能を果たさせたいと思って検討はいたしておりますが、まだ各方面との折衝の結果こういたしますというところまでは参っておりませんが、やはり鉱害の予防についても、いま一段と工夫をこらしまして、できるだけ早い機会にそういう措置をとりたいと考えております。
  158. 井手以誠

    ○井手委員 先刻も午前中滝井君から御質問がありましたが、応急工事ということはどの程度のものでございますか。場合によっては恒久工事とほとんど変わらない、そうでなくては応急工事の費用がむだになる場合が非常に多いのでございます。今度の場合は応急工事だから、本来ならばこれは五千万円かけなければならぬけれども、五百万円でがまんしてもらおうという、二、三年程度のものですか。その辺の限界はどういうふうにお考えになっておりますか。いわゆる経済効果とかいろいろなことを、考えた場合、応急工事であるから五千万円のところを一割くらいで仕方がないというお考えですか。この対策は応急工事も恒久工事もない、一本だという場合には、やはり恒久工事をおとりになるお考えですか。たとえば水の問題、水道の問題、灌漑水の河川の枯渇した場合、下々掘ったために川の流れを吸い込んで脱水して、川の流れが水がなくなったという場合、これは応急工事では済まない場合が多いと思います。鉄管を引けばいい場合もありますけれども、いなかの川というのは一定の間隔でずっと井せきが設けられておりますが、そういう場合はどうなりますか。
  159. 今井博

    今井(博)政府委員 応急工事と恒久工事の区別は、御指摘のように非常にむずかしい問題でございまして、最初われわれが考えましたのは、たとえば橋梁を直す場合にかりの橋梁を作る、あるいは堤防のかわりにかりの堤防を作る、そういうことを念頭に置いておりました。ただいま先生の御指摘になりましたような応急工事即恒久工事というふうな場合には、これは応急工事でなくて、復旧工事でございますので、そういった本格的な復旧工事はこの緊急認定制度では処理できないということになるかと思います。従ってそういう場合にはやはり本格的な復旧工事をできるだけ急ぐという方法より現在ないのじゃないか、こう思っております。
  160. 井手以誠

    ○井手委員 そういたしますと、灌漑水の対策、飲料水の対策の場合に、復旧工事ではできないような場合には、いかに緊急な事態であろうと応急工事はできないということになりますか。
  161. 今井博

    今井(博)政府委員 これは実際その場にならないとはっきりしたことは申し上げられませんが、やはり現在の法律の緊急認定制度の制度自体からくる結論としては、応急工事でない復旧工事は、これは応急工事としてやるわけにはいかぬ。ただしこれはやはり一つの理屈でございますので、その事態々々に応じましてそういう非常に緊急の度合いの強い場合に、そういう緊急の度を緩和するという何らかの便宜の措置がうまく考えられますならば、これは応急工事として取り上げられ得ると思いますけれども、しかし応急工事と復旧工事が全然同じだ、こういう場合には非常に残念でございますが、この緊急認定制度としてはちょっと取り上げにくい、こう思います。
  162. 井手以誠

    ○井手委員 それでは重ねてお伺いいたしますが、何らかの工事をしなくては灌漑水が求められない、あるいは飲料水が求められないという緊急の事態には何らかの方法で応急工事をやってもらえるという結論になりますか。
  163. 今井博

    今井(博)政府委員 そういう場合には何らかの形において応急工事を考えまして、この緊急認定制度を活用したいと思います。
  164. 井手以誠

    ○井手委員 その場合に応急工事の費用はどういう負担になって参りますか。
  165. 今井博

    今井(博)政府委員 これは現在の法律で言いますと、六十六条の無資力認定でもって国と県の費用でこの工事をやる、こういう形になります。
  166. 井手以誠

    ○井手委員 六十六条な今ここに持っておりmせんが、そうすると国、県の負担の割合はどういうことになりますか。
  167. 今井博

    今井(博)政府委員 これは対象によっていろいろと違って参りますが、たとえば農地の場合を例にとりますと、国の補助率が八三%、県が一七%、こういうことに現在なっております。
  168. 井手以誠

    ○井手委員 そこで大臣にお伺いいたします。そういう緊急の事態で、今一番社会不安の種になっておりますのは飲料水です。水道の応急工事並びに復旧工事です。これは国の負担あるいは加害者の負担が非常に少ないために、実際問題として住民の負担が重くなって非常に困っておるのです。これは朝晩必要なものです。私はここで昨年もいろいろ申し上げましたから繰り返したくはありませんが、夏、水に不足いたしますと、一ぱいのバケツの水を四回も五回も使うのです。ふろには月に一回か二回くらいしか入れないのです。水源枯渇した場合にはそういう事態でありますけれども、負担の問題からなかなか水道の対策を講じて参ることができないのでありますが、大臣は水道の問題、水の問題でどういうふうにお考えになっておりますか。これは農地同様に、少なくとも農地くらいに国の負担を引き上げようではないかというお考えがおありになるかどうか。
  169. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これはほかとの権衡上なかなかなずかしい問題だと思いますけれども、よく研究さしていただきます。
  170. 井手以誠

    ○井手委員 石炭局長でもけっこうですが、私は水の問題は場合によっては農地の場合よりも深刻なものがあると思う。ところがそれほど深刻な水の問題が、負担割合のためにうまく解決しない。炭鉱側もなかなかこれはうんと承知しない。農地の復旧については、場合によっては折衝の末にやりましょうということも起こり得るでしょうけれども、水道の問題は一番難関ですよ。またこれくらい深刻な問題はないと思う、局長はよく御存じであろうと思いますが、今の状態はどうなのですか、事務的に答えられる範囲で……。研究しましょうだけではちょっと困る。
  171. 今井博

    今井(博)政府委員 おっしゃるように水道の問題は生活に直接響きますので、非常に重大な問題だと思っています。この場合に、先ほど大臣からお答えになりましたように、国の補助率が低いのは、一般の公共事業費の負担の割合というものから出ておりまして、別段大した理屈があるものではございませんが、今までの国全体の公共事業費を出します場合の負担割合からこういうものが出ておりまして、それが鉱害の場合にも適用されておる、こういう次第でございます。
  172. 井手以誠

    ○井手委員 負担割合をちょっと言って下さい。
  173. 今井博

    今井(博)政府委員 農地の場合は国の補助率五三%、上水道の場合は二五%、土木の場合は四〇%、下水道の場合は三三%、学校の場合は四〇%、こういった比率でございまして、上水道の比率が非常に低いということになっております。しかしこれは先ほど言いました無資力認定でもって国と県で負担するという場合には、上水道、下水道、学校というものは、国の補助と県の補助とはほとんど差がないということになっておりますので、先ほど申しました緊急認定制度、非常に緊急な問題で加害鉱業者がはっきりしないという場合には、できるだこの緊急認定制度というものを活用して、先ほど先生がおっしゃいましたような応急工事をやるというふうに持っていくのが取りあえずの処置かと思いますし、それからパーセンテージの低い国の補助平につきましては、現行法の改正審議会等においても一つ検討してみたい、こう考えます。  以上朗読いたしましたが、これについて政府の確認衣求めて私の質問を終わります。
  174. 今井博

    今井(博)政府委員 確認いたします。
  175. 滝井義高

    滝井委員 臨鉱法の質問を今度少しやらせていただくわけですが、今度の臨鉱法の改正で、六十六条関係の無資力の条文整理が行なわれているわけです。今後合理化を進めていく過程の中で、無資力の炭鉱というものが相当出てくる可能性があるわけです。そこで無資力の炭鉱の鉱害復旧について、やはり検討しなければならぬ問題点がたくさん出てきております。きょうは私農林省を呼んでいませんから、農林省の農地局にあす来ていただいてその点だけを質問したいと思いますが、きょうはまず第一に、無資力でこの鉱害を復旧する場合においては、国土保全という見地から、家屋の家上げの場合の土盛りの経費、農地の復旧の経費それから水道の経費――井戸が枯渇をしておるので、新しく水道を布設をするというような水道の経費、こういうものの費用を臨鉱で国なり地方公共団体が負担をして鉱業権者にかわってやる、こういうことしか今できないのですね、これを一応確認しておきたい。
  176. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいま御指摘通りでございます。
  177. 滝井義高

    滝井委員 そこで問題になるのは、まず第一に鉱業権者が復旧をする場合には、迷惑料というものを出すわけです。あるいは休業補償というのを出すわけです。お店が家上げになる、そうすると当然お店を閉じて休まなければならぬわけですから、この休業補償と今度は引っ越しその他の迷惑料が要るわけです。この迷惑料が、無資力で臨鉱復旧をやるときには出ないわけです。これは鉱業権者に臨時的に国が肩がわりしたのですから、鉱業権者の出す分は、法外なものを出せといったって、国の税金から出すわけですから、これはむずかしいと思うのです。何かやはり全国的にこの程度の売り上げのあった店には最小限この程度のものが一応の休業補償なんだ、この程度の迷惑料というのは出すのだという、そういう基準がやはり今後鉱害賠償一般をやる場合も必要だと思うのです。そのことが同時に、無資力の臨鉱の家屋復旧をやる場合にも、やはり国が負担するかしないかというときには非常に大きなめどになってくると思うのです。まずそういう全国的な基準を、今後の鉱毒の争いをなくすためにも一つ作る必要がある、そして今度は無資力のものについても、国が迷惑料なり休業補償をある程度出すという線までいかないと、これは合理化の問題で落ちこぼれた無資力炭鉱の復旧というのは、なかなかやはりできないと思うのです。こういう点を一体どう考え、どう処理するつもりなのか。
  178. 今井博

    今井(博)政府委員 現在の無資力認定は、御承知のように、国の費用と県の費用と、結局国家の力で鉱害を復旧するわけでございます。従ってどういう場合にやるかということについて非常に条件を限定いたしておるわけでありまするし、それから今先生の御指摘になりましたような、一極の迷惑料とか休業補償というふうな鉱害そのものに直接関係のない問題につきましては、無資力認定からはどうしてもそういうものが出てこない、国にそれだけの予算を要求するということも直接関係がございませんので、これはできないことになっております。しかし、実際問題とすると、この迷惑料をやはり出さないと、広い意味での鉱害復旧ということにならぬのじゃないかという点もわれわれはその通りだと思いますし、無資力認定にあたって一番困っておるのは、迷惑料とか休業補償とか鉱害直接関係ない費用でございまして、この点は今臨鉱法の改正審議会をことしの初めからやっておりまして、そろそろこの迷惑料をどうするかというところへこれから入るような段階でございますが、確かに、基準というふうなものがうまく作れれば、これはまた一つの進歩かと思います。  それから、この迷惑料をどうして捻出するか、この問題は、端的に申しますと、これはやはり復旧事業団あたりに何らかのファンドをひねり出させる、そういうファンドを持たせるのにどういう方法がいいかというところへ問題が来るのじゃないかと思います。これは、長年かかってもなかなか知恵が出ない問題でございますので、そう簡単に私は知恵が出ないのじゃないかと思っております。一案として昨年考えましたのは、たとえば国の出資を復旧事業団に要求して、そういう出資の金利あたりでこういう迷惑料を出したらどうかということも一案に考えてみた次第でありまして、実はこういう点は、今度先ほど申し上げました審議会で取り上げて十分検討するつもりでおりますので、もう少し時間をおかし願いたいと思います。
  179. 滝井義高

    滝井委員 現在巷間で言っておるのは、迷惑料というのは復旧費の二割くらいは出るのですね。うまくいくと二割、少なくとも一割ちょっとは出ておるのじゃないかと思うのです。それに復旧の間は店舗等であると休業しなければならぬわけですから、そうすると、復旧してもらうと、他の者にお客さんをとられてしまうわけです。従って、休業補償のほかに、今度かわりの店舗を建てるわけです。かわりの店舗を建ててやらせるわけですが、このかわりの店舗は、無資力の場合はやってくれますか。かわりの店舗を復旧する間に、かわりの住宅に引っ越して移るところがないといかぬわけです。それもお前やれ、被害者が全部自分で持つのだ、これではたかなか大へんだと思うのです。従って、休業補償とか迷惑料というものは検討の余地があるから検討してもらうとして、当面かわりのお店とかわりの住宅、これは何とかしないと、店舗も与えずして、家を上げるから、お前はどこでもいいから行っておれということは無理だと思うのです。だから、かわりの店舗とかわりの住居を無資力でも与えるかどうか。
  180. 今井博

    今井(博)政府委員 これは事実上いろいろそういうお世話をするということは可能だと思いますが、必ずそういうものを確保するという点につきましては、今ちょっとはっきりした答弁を申しかねる状況でございます。これはやはりもともと国が当然やるべきだということから出ておるのじゃなくて、無資力認定で、鉱業権者が本来やるべきものが、鉱業権者がいないとか、あるいはできないとか、そういう鉱業権者の責任から実は本法はできておるわけでございますので、無資力であるからといって何から何まで全部国がやるということではむずかしいのじゃないか。もう少しここに妙案を持ってこないと、今先生がおっしゃったような問題は解決しない、根本的には私はそう考えております。
  181. 滝井義高

    滝井委員 何もかも国がやるのではなくて、休業補償や迷惑料はしばらくたな上げをしましょう、しかし、実際に今度は復旧しようとする場合に、今のような住宅難のときに、かわりの家もない、かわりの店舗もないというのでは、お店を出しておる人なんかお客さんをとられてしまうのですよ。まわりに競合する店がある、だからかわりの店舗というものが必要になってくるわけです。それは商売人自身にとっても必要だし、買う消費者にとっても買いつけておるお店がいいわけですから、ここらにもうちょっと考えてもらわなければならぬ点があるのじゃないか。そうしてこれならばバラックでいいと思うのです。便利がわらで安い材木でふけば、坪千円か二千円でできるのです。それを持っておって移動していけばいいのですから、無資力地帯に百軒家を復旧しようとすると、それを移動してかわりに使ったらいいのです。私の経験からいったら、そう金のかかるものじゃないと思うのです。このくらいの予算さえも話がつかない、妙案がないということになると、無資力ではなかなか進まないことになる。この程度のものは、政務次官、どうですか。これは今でもすぐにあるわけです。筑豊地帯で買い上げをやる、資力がない、金が足らない、全部吐き出したけれども金が足りないという場合があるわけですが、かわりの店舗、かわりの住居くらいの予算は――今度の臨鉱法の改正の中で六十六条の条文整理というやつは、無資力認定をやったらすみやかにやるためだという一つの変形として応急措置が出てきておるわけです。まだ責任がはっきりしない、従ってこれをやっておきましょうということは、いわば無資力認定の変形ですよ。最後になったら国がやってしまうということを意味するわけです。そうすると、豊州みたいなところでも、川原だけでなくて、住居もあるわけです。そういう場合に問題になってくると思うのです。そこでこれは何か政治的な判断で、また補正予算もどうせあることだし、来年度の通常予算でもいいですが、根本的な問題の迷惑料とか休業補償とかは鉱業法の改正なり、臨鉱法の改正がありますから、そのときにもう一ぺん検討するというなら、それでいい。とりあえずかわりの家とか、かわりの店舗だけは何とかする、これくらいの予算措置はしてもらわなければいかぬと思うのです。
  182. 森清

    ○森(清)政府委員 滝井さんの御指摘のように、無資力者に対して応急的に国が処置するというのですから、困っておる人たちを国がともかく助けようという、こういう法の趣旨からいえば、当然私はそういった問題も考えられていいんじゃないかと思いますので、一つ大至急に研究してみたいと存じます。
  183. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つ大至急に研究して、かわりの店舗とかわりの住む家くらいは何とかしてやらなければ、土盛りしてやる、土だけ持ってきて床下に置いてやるというだけでは、あまり知恵がなさ過ぎると思うのです。ぜひ一つそうしてもらいたい。  次は、宅地の問題です。家屋の打ち切りをやった場合に、その打ち切った家屋の打ち切りの料金の中には、宅地の打ち切りが含まれるかどうかという問題です。立法の趣旨からいうと、国土の保全なんです。国土の保全をするということは、陥没したその土地に土盛りをして家が上がる、こういうことになる。家が上がるのは間接なんです。国土保全でその土地に土を盛るということに、大蔵省は予算をつけておるわけです。これは立法の過程でそうなっておるわけです。そうしますと、土盛りをする金は家につくのではなくて、宅地につくことに理論的にはなる感じがする。ところがこの打ち切りの金というのは、家屋の方が取ってしまう。宅地の方は取らないのです。これは今争いの一つの焦点になっておるわけです。打ち切った場合に、その家屋の所有者が打ち切りの金をもらってしまっても、宅地の所有者が打ち切りを要求することができるかどうかという問題です。そこらあたりが今ぼやけているのです。そこで事業団が買い上げて、家屋の打ち切りをやってしまいます。そうすると、家屋は打ち切ったということで家屋の登録は済んでおる。ところが宅地の登録は済んでいない。従って宅地の所有者は、宅地の打ち切りをやって下さいとまた要来してくるわけです。そうすると、事業団なり鉱業権者の方は、あれは家屋の方に一緒に入っておる、いや入っておらぬ、こういうことなんです。この問題は今後われわれが臨鉱法をやる上に非常に重要な、今まで盲点になっておった点ですが、ここで明らかにしておく必要が出てくる。これは一体どういう見解をおとりになるのか。
  184. 今井博

    今井(博)政府委員 通常の場合は、家屋の打ち切りの中にそういうものは、含まれておる、こういう解釈をとっております。
  185. 滝井義高

    滝井委員 通常の場合は家屋の打ち切りの中に入っている、そうしますと、宅地の所有権は私が持っておった、家屋は今井局長さんが持っておったという場合に、あなたが打ち切りをみなお取りになってしまうと――これは臨鉱法で上げてもらえば、家も上がるし宅地も上がるから、価値は落ちないのです。ところが、家屋を打ち切ってしまって宅地をもとのままにしておけば、これは陥没しておるのですから水が入るわけです。打ち切った家屋の人はお金をもらっておるんだから、水が入ってもいい、打ち切っておるのですから適当な機会に直そう、ところが宅地の方は土盛りをしてもらっていないのですから、宅地の価値は相対的に下がる。そうすると、当然今度は鉱業権者なり事業団に向かって、宅地の打ち切りを下さい、もらえば私はそれで適当な機会に土盛りをいたします、こういうことになる。これは今井さんが土地も家屋もお持ちのときは、問題が起こらない。ところが、宅地の所有瀞と家屋の所有者と別の場合に問題が起こってくる。別でなくても今問題が起こっておるのです。おれは家屋を打ち切ったけれども、宅地は打ち切っておらぬのだという主張が、今出てきた。通常の場合は宅地も家屋の打ち切りの中に含まれておるものだけれども、問題をもっとはっきりするために、所有者が二つに分れておるというときには、宅地の所有者は当然鉱業権者あるいは事業団に向かって法律的に打ち切りの要求をすることができると思う。その点はどうですか。
  186. 今井博

    今井(博)政府委員 宅地と家屋の所有権が違っておる場合は、ただいま申しましたような趣旨に沿って、本来ならば家屋の所有者から宅地の所有者が金をとるというのが、私は法律的に見た筋道かと思います。ただ実際問題として、そういうことがはたしてできるかという問題は別にございますが、法律的にいえば、家屋がある場合の土地の評価は割合低くて、損害金額も従って相対的に小さいと考えられますので、やはりその家屋の打ち切りの中から分配するとい5のが筋道じゃないかと私は思うのであります。
  187. 滝井義高

    滝井委員 その場合には、一体宅地をどの程度で打ち切ったのか、家屋はどの程度で打ち切ったのかという内訳がないとわからぬことになる。そこで内訳がないと、家屋の所有者と宅地の所有者の間に、そのお金の分配についていざこざが起こる。いざこざが起これば、宅地の所有者が登録の判もつかない。そうすると、これは問題が片づかない。こういう問題があるわけですから、こういう点についても、あなたの方で全国の鉱業権者なり合理化事業団に、もう少しきちっとした指示をする必要がある。悲しいかな、被害者というのは案外弱い立場にあるし、それからこういう鉱業法なり臨鉱法というものに無知です。だから、判を押しなさいということで判を押してしまった、そして自分は宅地は打ち切っておらぬ、家屋だけだと思っておっても、実際は宅地もなっておった、こういうことになっておるわけです。だから、これはもう少しきちっとした大衆への指導をしていただいて、打ち切ったときにはそれぞれの物件ごとに内訳を明示して被害者に渡す、こういうことにしておいてもらわぬといかぬのじゃないか。このために今裁判になっております。家屋だけを打ち切ってもらった、私は宅地を打ち切っておらぬというのが出てきておる。こういう点はもう少しはっきりしてもらいたい。  それから、それを同じ形が出てきております。それはどういう形で出てきておるかというと、ここに一つの畑を持っております。農家は畑に続いてすぐに宅地がある。そして宅地に家が建っておる。いなかの御存じの通り宅地は広いから、宅地の一部は畑になっておる。そしてその宅地の一部の畑になったものの税金は宅地として払っておるわけです。そうすると、打ち切るときはどうして打ち切るかというと、そういう宅地になっている部分もおよそ見て、反当たり幾らだといってぼっと打ち切ってしまう。今度は登記所に行って調べてみると、たとえば畑は五反、宅地は一反あったとしますと、一反のうちの〇・五反が畑の中に入った形で、畑全部で幾らと打ち切っておるわけです。そうすると、お金はもらったわ、打ち切りの登記をしなければならぬ。そうすると、たんぼは五反じゃないか、畑は五反じゃないか、これは一体どうなったんだということで、その宅地であるけれども畑になっている〇・五反というのが宙に浮く可能性が出てくる。そうして今度は今言ったように、家の方はどうかというと、宅地もひっくるめて家は打ち切っているという形をとると宅地が盲点になるが、同時に宅地の分だけ畑というものが盲点になってきておるわけです。しかし登録はどうなるかというと、その一反の宅地が全部打ち切られてしまうのですね、こういう錯綜した問題が起こっているのです。そこで、これがまたいざこざが起こってくる。私は畑は打ち切ったけれども、宅地は打ち切っておらぬ、だからこの畑になっている〇・五反の宅地の打ち切りを下さい、こういうように出てくる。これがまた登録をやる上に一つの妨げになってくるわけです。こういうようなちょっとした事務処理上の問題というのが、きわめて大ざっぱに行なわれておるためにうまくいってないというところがある。こういう点についても、やはりきちんと畑の打ち切りは五反で幾ら、宅地は一反は幾ら、家は幾ら、こういうように明示をしていただくと、そういう問題がなくなる。いなかの農家はだだっ広い宅地をみな持っているのですから、その半分くらいが畑になっておる。われわれのうちだって、一反の宅地の中に家がありますよ。ところが半分くらいはカキやら何かがあり、自家菜園もやっている。だからそれが今度は地続きで二反も三反もの畑がありますと、その宅地の部分は、税金は宅地として払っておるけれども、打ち切るときには畑であったのか、宅地であったのか、何が何やらわからぬづくに終わった、こういう形になって、あとになって知恵の多いやつが出てきて、それは君、畑だけ打ち切って、お前の〇・五反の畑は宅地なんだから、もう一ぺん金をもらいなさい、こういうようにそそのかされると、農家はほんとうだと思ってまたもらいに行くことになるのです。だからそういう点は、もう少し何かぎちっとした行政指導というのですか、そういう打ち切りその他のときには、やはり合理化事業団がはっきりしなければいかぬと思うのです。それがはっきり行なわれていなかったから真岡炭鉱みたいな問題が次から次に軒並みに出てくる。そういう点は一つどう御指導になりますか。
  188. 今井博

    今井(博)政府委員 これは実際問題として非常にむずかしい問題が出るのでございまして、現在の賠償登録制度というものが、御承知のように包括的なやり方をやっておるのでございますので、これを相当こまかく改める必要がまずあるんじゃないかというふうな気が実はいたします。先ほどの宅地の問題も同じでございまして、ただいままた先生お尋ねになりましたが、畑と宅地というふうに農家についてもはっきりと分類してやるべきじゃないか、さらにそれに家屋も加えまして、従って農家については家と宅地と畑の三つに分数して賠償登録をさせるというふうなことをしないこと、ここはきちんといかないのじゃないか。ただ現在の賠償登録制度というのは、私は詳しくは知りませんが、やや包括的になっておるように思います。賠償登録をするときには何か一括して登録しておるようなやり方を実際とっておるようでございますので、これをもっと具体的に登録させるような措置が必要だと私は考えます。従って先ほどの家屋、宅地の問題、それから今の畑と宅地の問題等につきまして、これは実際問題として相当トラブルが起きると思いますので、もう少しこういう現在の登録制度をもっと具体的に分類してやるような何らかの指示をする必要が多少あるかと思いますので、この点もうちょっと具体的にその辺のやり方を徹底さしたい、こう考えます。
  189. 滝井義高

    滝井委員 それからもう一つ、金銭の支払いの問題です。これは合理化事業団の方と関連をしますが、臨鉱にも重要な関係がありますから尋ねますけれども、臨鉱で復旧をした場合には大した問題が起こらないのですが、打ち切りの場合には問題が起こってくるのです。それは、合理化事業団が留保金をお持ちになっているわけです。そうすると、炭鉱からAとBとCとDの家は全部打ち切りました、従ってこのABCD四軒の家の打ち切りは二百万円です、だから一つ二百万円下さい、こうやってくるわけですね。そうすると打ち切りの登録が出てきたんですから、二百万円を事業団は鉱業権者に払うわけです。そうすると、その金が一体確実にABCDの四人の者に行ったかどうかという運命には、事業団はもう関知しないのですね。それは登録が出てきたんだから、それでもうオーケー、こういうことになるわけです。私はここだと思うのです。ここは、なるほど鉱業権者のお金ですが、この支払いのときに鉱業権者だけにまかしてはいかぬということです。それで今後は、お支払いになるときに、鉱業権者あるいはその代理人と被害者とが両方やはりもらえる、金を与えるという方法にしてもらわないと、何しろ農民なり中小企業の諸君は、私が最初に申し上げますように、鉱業法なり臨鉱法を知らないわけです。知らないから、代得人のところに行く。賠償登録の書類を作るのは、実にややっこしいですよ。たとえば私なんかの家は、相続税は払っているけれども、名前はまだおやじのままですよ。ところがこれを打ち切りでやるとすれば、これをおやじから私の名前に変えて印鑑証明をとってやらなければならぬ。これが事務的に簡単にいかないのですよ。そうすると農家なり中小企業の皆さんは、自分が一日休んで役場から登記所に行って、そんなものをきちっと集めてくるのは大へんですから、それはもう炭鉱がわしの方がやってあげましょうといって判を借りてやってくれる。判を貸すんですからね。その過程で間違いが起こる。実際は被害者にいく金は百五十万円でも、留保している金をよけいに鉱業権者もとりたいのですから、それを二百万円にしてももらえることになる。そうして百五十万円をABCDの被害者にやっておけは、五十万円は運転資金になってくるわけです。こういうからくりが可能なんですよ。私はそれが今至るところで行なわれておるとは申しませんが、可能なんです。だから今のようにお互いに金詰まりになってくると、やはり貧すれば鈍するという言葉が昔からあるように、そういう何か抜け道ができるような制度というものは、できるだけ穴をふさいでおいてもらいたいということです。従って、事業団が留保金を鉱業権者に引き当てで支払うときには、やはりひもつきで、どことどこの鉱害が幾らで片づいたから幾ら払う、そうしてそれを払うときには、少なくとも事業団がお金を持って現地に行って、そうしてその炭鉱の事務所なら事務所に被害者が一人一人来て、そこで判をついてもらって書類と交換で引きかえをする、そのくらいの慎重さを持ってもらわなければいかぬと思う。特に筑豊炭田における今の惨たんたる状況の中で、鉱害の賠償、打ち切りをやっていくのですから、現金をもらうということは重大なことなんですよ。失業者が多いのですから。そうして、炭鉱が金を払う最後の機会なんですよ。これでもう炭鉱とお別れになるのですから、そういう打ち切りの金なんですから、支払いはよほど厳重に、被害者の手にきちっと渡るような方法をやってもらいたい。一つぜひ速急にそういう体制を確立してもらわなければいかぬと思うのですが、どうですか。
  190. 今井博

    今井(博)政府委員 今先生の御指摘になった例については、あまり実はそういう例を聞いていなかったわけですが、三年ほど剛に、そういう賠償金で渡した金が披露者の手に渡らなかったという事例が 件ございまして、そのためにその後登録証とかいろいろな証明書をとるようなことにしたのですが、今のお話だと、頭をはねるといいますか、そういう例のようでございます。これは現在のような金詰まりで、鉱業権者は中小炭鉱が割合多いということで信用が置けないといったような炭鉱の場合に、直接被害者に払うということを考えております。
  191. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つ、そういう中小企業の鉱業権者を信用しないというのじゃなくて、やはりお互いに貧すれば鈍するという、それをピンはねしたり着服したりする意思はないけれども、とりあえず運転資金がないから運転資金に回しておこう。きょう二百万円事業団に行ってもらったから、あす給料日だ、銀行は手形を割ってくれぬ、この二百万円でちょっと払っておこうとなる。このちょっと払っておこうが三カ月延び、五カ月延び、六カ月延びてしまう。そうすると被害者の方は今度は事業団に行くわけです。私は登録を早く出したのたが、どうなっておるか、いや、それは払ったぞ、こういうことになるので、問題が起こってくるわけです。だからこれはぜひ一つ、ごめんどうでしょうけれども、事業団の職員が現地においでになって、そしてきちっとお渡しになるという制度、あるいはそうでなければ、福岡でいえば福岡の事業団にお呼びになって、そして鉱業権者の前で被害者にお渡しになる。これくらいの制度は一つぜひお願いしたいと思うのです。  次は農地ですが、これはこの前一ぺん御質問を申し上げ、昨年も御質問を申し上げて、これで三回目です。無資力に炭鉱がなった場合に、田面の復田というものは臨鉱法で行なわれるわけです。ところが、それが畑であったりあるいは果樹園であったりしますと、何もないのです。なるほど考えてみるとたんぼには稲が植わり、果樹園にはナシの木やリンゴの木――リンゴは九州にはないけれども、ブドウの木が植わっておる。土盛りをするのだけれども、ナシの木やブドウの木を切ってしまって土盛りをされてしまったのでは、大へんだということで、あれは土盛りだから何も金を出さぬのだ、こういうことになっておるわけです。ところが国土保全という意味からいうと、炭鉱がナシの木やブドウの木の下を掘ってしまうと脱水陥落が起こってくる。そうすると、ナシやブドウが最盛期に水分を下から吸引されてしまうとナシやブドウにどういう影響が及んでくるかというと、ナシは水分が取られて固くなってしまう。ブドウだって質のいいブドウができない。これはわれわれのたんぼでわかるのですが、ずっとたんぼの下をポンプ・アップをやると、しょっちゅう灌漑をしておかないと水がたたえない。そして同時にこれは今金肥をまくわけですから、その肥料をまいたのも吸い込まれてしまって、栄養にならないのです。こういう形が起こってきておるわけです。そうしますと減収補償というものは、同じように田に出すように果樹園にも減収補償を鉱業権者は出すわけです。ここまでは同じなんです。ところが、今度無資力になって復旧する段になると、畑や何かは、幾分広大でもある、あるいは木が植わっておるということで、ほっぽり出されてしまう。ところがナシの木の姿を見ると、実はもう五年でほんとうはこのナシはなるのだけれども、下に炭鉱ができたために五年がぱあになって、すぐに老齢化していって、最盛期が非常に短くなる。こういう状態が出てくるわけです。これを何らかの形で米作農民と花卉園芸に補償する姿を作らないと、これから農林省は選択的な拡大をやり、果樹園芸をどんどん奨励しようというのに、こういう鉱害地におけるあれは全く惨たんたる状態になって、ナシの木に実がならない。次に今度は継ぎ木をして新しく若返えらそうとしても、金もない、こういう形になってしまうのですね。だからこれを何とかして下さいということで、あなたの方で研究するということになっておったのですが、前の国会からもう三、四カ月になるのですけれども、何かいい研究ができたかどうかをお尋ねするわけです。
  192. 堀直治

    ○堀説明員 前回にもそういうお話で、果樹等の鉱害につきまして適当な方策を立てなければならないのでございますれども、従来農林省の方では米麦等の穀物の方に重点を置きまして、果樹等に対しては一般の災害についてもあまり手厚い保護の道を講じていなかったために、そういったような点で多少手抜かりがあるわけでございます。今後御指摘のように、果樹等を成長財として育成していかなければなりませんので、そういったような畑地の対策というものに対してどういうふうな方法をとったらいいか、引き続いて研究中でございます。ただし、水田のような場合には、水が直ちにたまらなくなるとか、あるいは干水をして稲の植付ができなくなるとか、非常に被害の程度その他を算定することが簡単でございますけれども、お話のような水の抜けがひどくなるというような問題については、その程度の算定が非常に困難なために、なかなか適切な方途がまだ見つからないでおるというような状態でございます。続いて私どもの方でも通産省の方と協議をして、検討していきたいと考えております。
  193. 滝井義高

    滝井委員 一昨年ぐらいから研究してくれる研究してくれると言うだけですよ。これはあなたの方で選択的な拡大をやる作物でしょう。そうすると、鉱害地で、福岡県なんか何か所かが農林省の県の指定の園芸地区になっているでしょう。園芸組合を作って炭鉱の離職者がなけなしの退職金をはたいて粒々辛苦して作り上げたところに炭鉱ができてきて、そして脱水陥落さしてしまう。そうしてそれが無資力になったというときには、これはどうにもならぬわけです。これは臨鉱法ででもやってくれれば、なんぼか打ち切りがもらえる。ところが、無資力になれば、何にももらえないのです。だから、こういう点は次の通常国会までくらいには予算措置をして、何かしてもらわなければいかぬと思うのです。農地は完全にもとのものになるのですから、そうすると同じ果樹園が何もならぬでほっぽり出されるということになれば、農民は今度その老成したナシの木を切り倒していってはまた新しく植えなければならない。全部自費でやらなければならぬ。ところが、米のなる木の方はこれはやってもらえる、しかし果樹や何かはやってもらえぬということの方がおかしいのです。片方は一年で終わる、片方は十年、二十年いくというこの違いだけですからね。国土保全という意味だったら同じですよ。ただ国土にナシの木がくっついておるから問題で、片方は毎年株から切るからという違いだけですよ、これは何とか農林省としては当然お考えにならなければならぬ問題点だと思うのです。そこで、この前私が一番先に指摘したときには、なるほどわれわれの方の研究が足らない盲点でございます。速急にやりますということだった。この前言ったら、まだやっておりませんということです。きょうもまた同じですから、仏の顔も三度で、三度目ですけれども、それでは通常国会までに何か具体的な方針を出していただいて、そうして農地の復旧という同じ形で打ち切りをおやりになったらいいと思うのです。金額は農地より少なくてかまわぬと思うのです。新しく木を植えかえるだけのお金でも出してもらうとか、何かそういう形にしないと、同じ農民であまり不均衡過ぎるんですよ。国土保全といったって、なるほどこれは木があるから、土盛りはできませんね。これは速急に一つ堀さんどうですかね。
  194. 堀直治

    ○堀説明員 私の方の農地局の方でございますものですから、農地そのものに対する復旧の方ですといろいろ手があるわけですけれども、脱水というようなものは、程度によりましては、果樹等に対しても効果のあるような場合もあります。それからまた一朝早魃にあいますと、今お話しのように、非常に生育を阻害する、ナシの実も大きくならないというような場合もありまして、いろいろ程度が違うものでございますから、それで一定の基準をもってこれに対して補助を与えるとか、あるいは何かの措置を講ずるということが非常に困難になって参ります。畑全体にそういうような鉱害の陥没についての対策がむずかしいということが出てくるわけでございますけれども、別に振興局関係で果樹に対する対策というものも今研究中でございますので、それらともよく歩調をとりまして、善処していきたいと考えております。
  195. 滝井義高

    滝井委員 政務次官にこれは確認しておいてもらいたいのですが、実はこれは三度目の質問なのです。鉱害地には相当果樹園があるわけです。この問題が解決しないために、果樹の所有者というのは、相当泣き寝入っているわけです。これはやはりさいぜんの問題と同じように、早急に通産省と農林省の農地局の方と協議になって、何か救済の道を出していただきたいと思うのです。それは、たとえば植えかえの経費でもかまわぬと思うのです。あれは農地法で、私、昔、農地委員をやったことがありますが、ナシ畑その他をお売りになるときには、大体最小限どのくらいということをお見込みになっている、あるいはこれを切り倒したときには、どれくらい補償するというのがありますよ。だからそういうものを御参考になって、何か適当な補償をしてもらいたい。農地は土盛りをやるが、国が現金をやって悪いということはないと思うのです。大体鉱業法は金銭賠償の建前なのです。だから農地はこれは復旧は無資力だから国がしてあげましょう、現地は木が立っておるから復旧できない、だから本来の金銭賠償でいきましょうという場合に、ナシの木の一本の植えかえの費用だけあげましょう、こういう最小限度でもいいと思うのです。それを行って現地をお調べになって、木の植わっているものについて幾らと計節して、最小限度植えかえの経費をおやりになればいいわけです。何かこういう合理的な計算は、そうむずかしくなく、国がやるのですから、公平なものが出ると思うのです。そういう点ぜひお考えになっていただきたいと思うのですがね。
  196. 森清

    ○森(清)政府委員 仰せの通り、国が応急に処置する場合に、原形復旧ということが建前になっておる関係で、今も堀さんと滝井さんとの質疑応答を聞いておりましたが、なかなか実際問題としてはむずかしい場合が多々あると思いますが、仰せの通り農林省ともよく相談いたしまして、何らかの方法を講じたいと思うのであります。
  197. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそうしていただきたいと思います。  次は、今度はもう一ぺん農地に返りますが、無資力の認定をされる、そうして農地の復旧をやります。そうすると農地の復旧をやるときには休耕をしなければならぬわけであります。そうしますと、無資力の場合に休耕補償を出すかどうかということが一つ、それから復旧をしたあとのたんぼというものは、昔のりっぱなときに比べて、これはいろいろな土を入れますからちょっと減収するわけです。それで減収補償をやるわけです。こういうものは、無資力の場合にはお出しになるかどうかということです。
  198. 今井博

    今井(博)政府委員 無資力の場合には、それはできないことになっております。
  199. 滝井義高

    滝井委員 ここに一つ問題があります。農家は田地田畑を耕して食っているわけです。ところが、復旧工事をやるためには、全部たんぼに土を置くわけですから、そのときには掘り返して土を置くわけです。表土を置いて、それから下に、われわれのところで言えば水分の吸収しやすいかまがすを置くわけです。それから今度は赤土か何か持ってきて置いて、今度は上に今までのたんぼの土を置いていくわけです。それで農林省が検査に来て、よろしい、こういうことになるわけですが、そうするとその間は休耕しなければならぬことになるわけです。もちろん米を作る時期をできるだけ避けて、麦まきのときにやってくれるにしても、麦まきは休耕する。それから今度は翌年米を植える段になりますと、前年よりかできないという、こういう補償が問題になるわけです。その減収の補償は問題にしないにしても、休耕補償は国がやる場合にしても、何かやはり考えてもらわなければならぬと思う。これを考えてもらえぬと、さいぜんの家の問題と同じです。住む家もなく、臨鉱でやろう、耕す土地もなくて復旧してやろうというたって、農民はその間食わずにおれということと同じですから、やはりちょっと片手落ちになる。それで一体農林省はどう今後処理するかということです。通産省としてはやっぱり休耕補償くらいはしてやって、最低生活が農民にできる補償は、幾ら無資力の臨鉱法といってもやってもらわなければならぬと思いますが、これはどうお考えになりますか。
  200. 今井博

    今井(博)政府委員 これは現在無資力制度がやはり効用回復ということを主眼としておりますので、根本的な制度の趣旨からくる大きな問題だと思います。従って、今、先生のおっしゃいましたような休耕補償、先ほどの休業補償の問題とか、こういった一連の問題は、無資力認定をやります場合の、ある意味における一つ問題点だと思います。これは非常にむずかしい。しかし大事な問題でありますので、今、早急に結論を出せと害われてもなかなかむずかしいと思います。鉱業法の、今の臨鉱法の改正審議会で今年一ぱいで結論を出す手はずになっておりますので、ここで一つ取り上げて十分討議をいたしまして、何らかの対策考えたいこう考えております。
  201. 滝井義高

    滝井委員 今、政務次官のお聞きの通り、旧六十六条の無資力の認定を受けても、非常に盲点になる点があるのです。というのは、今まで無資力認定を受けて、臨鉱で復旧するという額が多くても、最近二億くらいです。従って、それは農地だとか、公共土木みたいなところが多くて、こういう民生に直接関係する部面は今まで放置されておった。ところが、今後こういう点はだんだんやらなければならぬという問題点が出てきますと、どうしても六十六条の条文整理だけではなくて、その内容の充実をはからなければならぬ点が出てきておるわけです。無資力問題は、今後合理化が進めば進むほど、相当出てきます。特に来年あなたの方では六百三十万トンのスクラップ・ダウンに追加するに、六百二十万トンか何か追加するでしょう。そうすると、ますますこういう問題は多く出てくる。そうすると、一切のそのしわが地域における農民なり家屋を持っている住民に令部寄ってくるわけです。それを何らかの形で国が救済する方法をとらなければ、非常に問題だと思うのです。ぜひ一つ無資力問題に現われるもろもろの隘路を解決していただきたいと思うのです。ここ二、三年来、私は非常にいろいろの問題点があるので、前に樋詰局長ともずいぶん議論はしたのです。しかし、まだ解決ができないのです。  もう一つ、無資力の大きな隘路はどういうところにあるかというと、これは鉱業権にも関係してきますが、その炭鉱の鉱害を受け、滝井義高が無資力になったから国から全部やってもらいます、農地も復旧してもらった、家屋も上げてもらった、こうなりますと、滝井義高は無資力の認定を受けて、そして臨鉱で全部家屋も農地も復旧してもらって、終わったとたんに滝井義高は有資力になるのです。それならば、その鉱区は鉱害がない鉱区になるのですから、いわばきれいな鉱区になる。そうすると、これは薄層でも残っておるということになれば、これはまた売れるのです。きのうまでは無資力認定をされた滝井義高が、たちどころに、終わったとたんに有資力になっちゃう、六十六条にはこういう矛盾があるのです。そういうものについても、もう今度はここに坑口を開設することを禁止するという防ぐ方法が法律にはないのです。だから国の金で無資力の滝井義高を有資力に返してやることになる。こういう点についても、きちっと整理しなければならぬ問題で、ずいぶんこれは盲点があると思うのです。ぜひ一つ総合的に六十六条の条文の整理をして、いろいろ分かれておりますけれども、それを一つきちっと対策を立ててもらいたいと思うのです。  それから最後に、これは農林省にも関係してきますが、Aという炭鉱一つの鉱区を持っておったとする、その鉱区を半分に切って、半分は合理化にかけて売ってしまう。残りの半分については、新しく鉱業権者を作って、ここに炭鉱を始めたわけです。この半分にぴしゃっと切って売った方の側に、天水田のたんぼが三町とか五町とかあるとします。そして今度は、新しく鉱業権者を指定した方の炭鉱が稼働を始めるわけです。そうすると、脱水陥落が起こってくるわけです。天水田ですから、これは灌漑の方法がないわけです。一体この灌漑をだれが責任を持ってやるのかという問題が起こってくるわけです。事業団は、これは私の買い上げたところだけれども、私は知らない、こうなる。そうすると、今度はこの動いている炭鉱に行って、お前が坑口から水を揚げるからこういう脱水陥落が起こるんだから、一つお前がやれと言うと、いや、これは私の鉱区じゃありません、こういうことになる。脱水陥落というやつは水かけ論なんです。その炭鉱一つならこれだということが言えるのですけれども、筑豊炭田などは付近に衣で隣接して幾らでも炭鉱がやっておるのですから、どこの炭鉱の水揚げによってこの脱水陥落が起こったかということがわからぬわけです。こういう問題が起こってくるわけです。そうしますと、当然事業団がどこかから灌漑水をポンプ・アップをして、天水田に引く以外に解決の方法はない。ところが事業団はこれを毎年やるには、そこに何らかの金がなければだめなんです。これを一体どう解決するか、これは現実の問題です。今は無理やりに元の鉱業権者に川からポンプ・アンプをさせて、灌漑水ととしているわけですが、筑豊炭田は鉱区が錯綜しておるために、こういったことが起こってきたわけです。こういう場合に一体通産省なり農林省は、この何町歩にわたる天水田というものをどうするか。これは天水田というよりか湧水田なんですね。御存じの通り、筑豊炭田の基盤は石灰石なんです。そして鐘乳洞になっている。その鐘乳洞の水が土地の弱いところにふき出るわけです。これをわれわれのところでは、たぎりと言います。出泉と書くのですが、冷たい水が出てくるその出泉で何町歩という田んぼを灌漑しているわけです。ところが炭鉱が水揚げをやりますと、この鐘乳洞の地下水を全部揚げてしまうわけです。従って、いわばこの天水田類似の、出京によってまかなわれておる田んぼというものは、みんなからからになる、そういう状態が起こってきているわけです。そうすると、事業団も鉱業権者も何町歩という田んぼを、自分がそこで炭鉱をやめた後にも毎年まかなうということは不可能なんです。これは一つ方法は、その炭鉱がはっきりしておれば、その炭鉱の買上代金からリザーブをして、これを基金にして、これを六分とか七分に回しながらその利子でやることができるわけです。ところが毎年ポンプ・アップをして、管理人もつけてやると、これは耕地面積が広いと百万円以上かかる。そうするとここに何千万円かの金を基金としてとらなければ、利子でまかなえぬという問題が起こってくる。何千万円の金を買上代金の中からリザーブされたら、鉱業権者は大へんなんです。これは問題がまとまらないのです。だからこれが隘路になって買い上げができない、こういう問題が出てきておるわけです。こういう現実に起こっておる農地上の問題を、一体どう通産省なり農地局は解決しようとするのかということです。
  202. 今井博

    今井(博)政府委員 脱水陥落の問題は、非常にむずかしい問題だと思います。特に今のように広範囲にそういう問題が起こります場合には、どうしても因果関係を徹底的に究明しなければならぬ。これは急場の間に合わぬかもしれませんが、ことし科学認定制度を作りまして、その因果関係を科学的に究明するということを、実はことしから始めております。今先生のおっしゃいましたような事例が非常に緊急を要するという場合には、この科学認定制度を適用する。科学認定制度というのは、学校の先生その他専門家による調査員が現在十五、六人でございますが、それらの方に集まっていただいて、現在問題になっておる七カ所についてそういう特殊な調査をやっております。それを適用して調査し、因果関係を徹底的に究明する以外に方法がないのじゃないかと思うのですが、これを一つ来年度は相当拡充したいと思っております。
  203. 滝井義高

    滝井委員 これは現実に起こっておるものですから、今から調査してやるということではなかなか問題だと思うのです。整備事業団が買い上げてしまっているところでも、整備事業団は金がないからやれないわけです。これは何も農地だけに起こる問題ではない。脱水陥落によって家屋が狂ってきますから、今度は家屋にも起こってくるわけです。筑豊炭田のように鉱区が錯綜をしておると、今後整備事業団がお買い上げになった鉱区の中にも、こういうものが非常に起こってくると思うのです。そうすると、連帯責任として事業団がそれを全部かぶれるかというと、そういう予算はないのですから、かぶれる情勢にないですね。従って、今あなたのおっしゃるように、科学認定をやるために、十五、六人の人で七カ所調査されておる、こういうことだが農民にしてみればこれはすぐ今日の問題であり、あすの問題なんですから、どういう方法が今われわれのところでやられようとしておるかというとこういう方法が主張され始めたのです。それは今私が申しましたように、一つの鉱区を二つに切って、そしてここに炭鉱一つ許したわけですから、この炭鉱がやっておるらしいということを見ても、この炭鉱はおれは関係ないと逃げるわけです。そこでわれわれのところは、その附近には古洞、廃坑の跡が幾らでもあるわけです。そこで、基盤水を揚げるから湧水が起こらないという理論になるわけです。従って古洞に水を入れよう、どっどっと古洞にポンプ・アップをして川の水を入れていく、こういう方法を農民がとろうとしたわけです。そうすると今度は通産局の方では、そうやられては大へんなんです。なぜならば、この古洞は今掘っている炭鉱の基盤の水に通じているわけです。これをどっどっと水を入れられると、掘っておるところの切羽に水が回り回って押し寄せていくんですね。そうすると掘れなくなるわけです。だから、これは保安上困るからそれをしてはいかぬと、こうなるわけです。そうすると一体、農民はどうしてくれるのか、ちょっと待って下さい、今から調査します、これでは農民が聞かない、こういう問題が起こっている。それでこれは結局私に言わしめれば、付近に五つも六つも炭鉱があって、みんながプール資金を出してこれをやるということになれば、これが一番いい。ところが悲しいかな、五つ六つ動いておる炭鉱というのは先が見えているわけです。三年か、長くとも五年あるかないかですよ。ですからプールして出しても、三年か五年はいいけれども、そのあとどうするかということになると、この解決がつかない。従って、私は、飛躍するようであるけれども、こういう脱水陥落の問題については、やはり国が責任を持つ以外に方法はないじゃないかと思う。幸いに事業団には、炭鉱から買い上げた古いポンプがあるわけです。その古いポンプとモーターを持ってきてそこへ据えてやる。そうして農民に自主的に管理さして、電気料金だけ国から払うとか、悪くなれば幾分の修繕費を出すぐらいのことを、今の段階ではやる以外に、脱水陥落の問題については実際問題として方法がないようなんですね。鉱区権者は逃げてしまう。幾ら通産局がその関係炭鉱を来いと言って呼び出したって出てこないですよ。行けば金を取られますからね。それじゃ強権発動してお前のところだと言えばできる態勢かというと、そういう態勢にない。これは被害農民が泣き寝入りです。私は、この脱水陥落の問題は、無資力の同じようなケースとして取り上げなければならぬ問題じゃないかと思うのですが、どうですか。
  204. 森清

    ○森(清)政府委員 滝井さんの言われた脱水陥落の大きな例は、佐賀県において児受けられますけれども、実は私どももこの問題には非常に腐心をしており、頭を悩ましております。今仰せのように、大きな水をポンプ・アップしてこれに流すという方法一つの案であろうかと思って、実は寄り寄り協議をしているところでございます。しかし、今滝井さん御自身が言っておられましたように、無資力の問題はさまざまの問題にからんできまして、なかなかむずかしい問題であるだけに、最終的な結論はまだ出ておりません。
  205. 滝井義高

    滝井委員 農地局の方も、今お聞きのように、農地問題に関連をして旧臨鉱法の条文整理が今度の改正で行なわれておりますが、これに関連して農地問題で解決されていない盲点が相当あるわけです。それらの問題を農地局においても通産省の石炭局においても十分お打ち合わせになって、無資力問題と関連をして一つ速急にお片づけいただくようにお願いして、これで終わります。
  206. 有田喜一

  207. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 臨鉱法の一部改正で、このたび特定の応急工専に対する費用の特例であるとか、あるいは無資力の場合における控除金の問題であるとか、いろいろの手当ができておるのですが、特定の応急工事に対する処置ができるくらいなら、私はかねがね問題になっております盗侵掘の場合、これは当然国として処置すべきではないか、こういうように思うわけです。盗侵掘の場合というのは、これは森政務次官は初めてかもしれませんが、要するに、正式な鉱業法に基づく操業でないわけです。ですから鉱業法にいう鉱害ではない、こういう理屈になるわけです。ですけれども、これは不法行為ですから、むしろ損害賠償の対象になるのであって、この臨鉱法あるいは鉱業法の賠償の対象にならないのだ、こういう理論で進められておる。ところが被害者の側は、これは地下を監視しておるわけではあり衣ぜんから、成規の鉱業の操業であろうとあるいはそれが盗侵掘であろうとわからないわけです。また、それを監査する義務もない。権利もないわけですね。ですから、問題が起こって鉱害いわゆる損害が起こった場合に初めて問題にして、請求をすれば、それはそうでなかった、これは第三者による盗侵掘だ、こういうことになって、この臨鉱法及び鉱害賠償の規定に載らない。これはやはり当然国として措置すべきではないか、こういうように考えるわけですが、それに関連をいたしましてこの五十三条の三の五行に書いてあります規定は、盗侵掘の場合入るかどうか、これを一つ伺いたい。
  208. 今井博

    今井(博)政府委員 盗侵掘の場合は入る。盗侵掘かどうかわからないという意味において、この規定は一応適用になるとわれわれは考えております。
  209. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、従来非常に問題になっておりました盗侵掘の問題は、その損害が非常に著しくて、かつ、民生の安定を著しく阻害すると考えられる場合には入る、こう考えていいわけですか。
  210. 今井博

    今井(博)政府委員 五十三条三の第一項の第一号の規定に、後段のとこに、「その他の特別の事情により」云々とあります。これに触れて放置しておくことは非常に危険であるという場合には、この応急工事に該当するものと考えます。
  211. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、盗侵掘の場合には今までよりもやや救済ができる、こう考えていいと思いますが、そういたしますと、盗侵掘の問題は、いわゆる鉱害の中に入れて救済をすべく、そういう方向で進められておるかどうか、これは鉱業法の改正審議会の問題にも関連しますが、どういう方向にあるか、お聞かせ願いたい。
  212. 今井博

    今井(博)政府委員 現在鉱業法の改正審議会では、まだはっきりした結論が出ておりませんが、方向としては盗侵掘者に対して無過失責任を課する、こういう方向で現在審議がなされております。
  213. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 盗侵掘に対する無過失責任ですか。
  214. 今井博

    今井(博)政府委員 そうでございます。
  215. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 無過失責任はわかりましたが、その責任の賠償はこの臨鉱法に載るわけですか。
  216. 今井博

    今井(博)政府委員 これを臨鉱法でどういうふうに受けてこなすかという問題は、この鉱業法審議会でなくて鉱害対策審議会で今論議をしておる最中でございます。結論はまだ出ておりません。
  217. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 鉱害対策審議会というのは、何ですか。先ほどから臨鉱法改正審議会というのは出ておるが。
  218. 今井博

    今井(博)政府委員 これはこの前の国会の委員会で決議を受けまして、臨鉱法について非常にたくさんの改正根本問題がある、これについてはそれぞれ審議会を設けて検討する、こういう委員会の決議で、実はことしから鉱業法の改正審議会とは別個に臨鉱法の改正審議会を設けまして、鉱業法改正審議会で根本問題をやりまして、事鉱害に関する問題は、それを受けまして臨鉱法の改正審議会でやる、こういうことで両方並行してやっております。
  219. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に、最近御存じのように、休廃山の炭鉱が非常に多くなりました。現在の鉱業法並びに臨鉱法は、それは規定はないことはありません、消滅した場合には消滅時の鉱業権者が賠償の責任を負うということは明記してあるのですけれども現実問題として、この臨鉱法にいたしましても、あるいは鉱業法にいたしましても、事業の継続をしておるという面を前提に条文ができておるわけです。そこで、休廃山後における処置というものは、なるほど消滅時の鉱業権者に責任はあるのですけれども現実問題では、この一本の条文では、私はなかなか処置が円滑にいかないのじゃないかと思うのです。たとえば、水道の管理なんかにしましても、これは永久に管理費が要るわけです。というのは、鉱害によって従来の井戸が枯渇した。そこで水道を布設した。そうしてその水道の管理一切は鉱業権者が持っておる。これがどのくらい続くものであるかということが問題になるでしょう。水道は、そのうちに水が出るという問題がある。井戸水は、その地帯が全部休廃山になってしまえば、それは水が出るという問題もありましょうが、一つや二つの炭鉱がなくなったのでは水が出ない、こういう問題がある。灌漑用水の問題でもその通りです。ですから、打ち切り補償でいける分はいいのですけれども、かなり長い間管理、運用しなければならぬ。その管理、運用の要るというような面についても、問題が一つある。  その次に、現在合理化法では鉱業権を事業団が譲渡を受けるわけですから、当然連帯責任を負いますから、力のある整備事業団の方に会社は請求するでしょうから、あるいは問題がないかもしれない。これは現実の問題として、行政措置として問題があるかもしれないが、法律的には問題がないかもしれない。ところが、今度できます石炭鉱山保安臨時措置法における鉱害の処理というものは、私はこれは問題を残すと思う。これは廃止をいたしました事業者に最終的な賠償義務がある。そこで今度ある一定の代金を出して、そうして事業団が廃止事業者に代理をして債務の弁済に当たるわけですが、その金額が少なかった場合に一体どうするか。十分の賠償ができなかった場合は、打ち切りできるかどうか。これはできない。そうした場合の処理は一体どうなのか。山を廃止するくらいの鉱業権者ですから、弁済能力がない。そうした場合は一体どうするのか。それからまた、合理化法も今後改正をして鉱業権の譲渡をしないんだ、そうして封鎖をするんだという考え方に立つならば、これまた同じ問題が起こる。それから滝井さんがおっしゃったように、ナシの木の脱水陥落における補償の問題、あるいは復旧におけるいわゆる休耕しておる間、耕すのをやめている間の補償の問題、こういうことも言ってきますと、私はもうここまでくると、それを国でやるということになると、もう一歩進んで抜本的に考え直したらどうかと思うのです。  そこで私は、今の通産大臣に聞いておっても間に合わぬから、あすの通産大臣の森さんにむしろ聞きたいと思うのですけれども、これは大へんな状態になると思うのです。そうして無資力でやるとか、加害者がやたら出てくるわけです。結局跡始末は、新潟県の地盤沈下ではないけれども政府がやらなければならぬようになる。そうすると、私は今のうちにもう一歩足を進めて抜本的な対策を講じた方がいいと思う。先ほども話がありましたが、今大手の炭鉱は、全部賠償責任を廃山をするときには次の鉱業権譲渡者に渡すのですね。そうしてたとえば、その鉱業権が、譲渡する場合に価格が一億円なら一億円とするならば、そのうち鉱害が六千万あるとすれば、大手は残金四千万円しか受け取らない。そして新しい鉱業権者に賠償義務を譲った形にする、こういう形で譲渡が行なわれている。それが小さな鉱業権者ですから、やがてお手あげをする時期がくるわけです。とても膨大な賠償をし切れるものではない。結局そのしわ寄せは被害者にくるか国にくるか、どちらかです。ですから今はっきりした対策を整えておかないと、大へんな状態になるのではないか。そこで政府一体どうされるつもりであるか。あえて私見を言うならば、経営の中から賠償だけを切り離して、たとえば今労働基準法の規定するところの補償義務を政府が担保して、いわゆる労災保険がやっているように、保険制度を確立すべきではないかと思う。そして国がかわって保険者になって被害者と交渉し、その保険料を払う、そうすると大きな炭鉱も小さな炭鉱も、その資力の有無にかかわらず、被害者は均等公平に損害の給付を受けるわけですね。今このことをやっておかないとなかなかできないのではないか。今なら、今の鉱業権者から納付金を取ることができると思う。メリットによって納付金を取る。大体どのくらい賠償予定の額があるか、それなら年々どのくらい納付金を取ればいい、トン当たり納付金を取っていくわけですね。現在でも二対一で政府が補助金を出しているのですから、ある一定額の補助金を出して一つの会計でおやりになったらどうか。そうしておかなければ、今後これだけ多くの休廃山が出るときに処置ができなくなるだろう、こういうふうに考えるのですが、次官、どういうふうにお考えですか、御答弁願いたい。
  220. 森清

    ○森(清)政府委員 その道の大家の多賀谷さんのお考えは確かに傾聴に値するものがあると思います。しかし今われわれの考えておりますことは、力のあるものはあるもの同士で、確かにあなたの言った通り、それの賠償――その中から賠償に充てられるから問題はありませんが、力のない場合には、整備事業団が買い上げた場合は、それだけのものは頭から取ってしまって、それを罹災者に天引きでやってしまう、こういうことでございますから、いつまでたっても買い上げができないとかなんとかいうことはないと思うのです。
  221. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実はこれは大きな話をしたのですが、答弁は小さな具体的な話になりましたが、現実にそれでも被害者が泣いておるから問題が片づいたように見える労働者が泣いておるから問題が片づいたように見える。加茂炭鉱の例をたびたび引用して恐縮ですが、事業団が三億何千万金を出して買い上げた。ところがほとんどそれが賠償に充てられた。いな、それよりも二倍くらい賠償があったわけですね。そこで被害者をそれで納得させたけれども、労働者の方は二千万円からある退職金、賃金未払いのうち、わずかに百万円程度しかもらってないのですよ。ですから、労働者が泣いたから、あの問題は片づいたわけですね。しかし、私は今後買い上げられる炭鉱の中には、賠償を十分今まで払ってきた炭鉱もあるでしょうが、そうでない炭鉱相当多いのではないか。また現実に保安で閉鎖を勧告される炭鉱には、相当の賠償金があるはずです。とてもこのくらいの金額では賠償は片づかないだろう。しかもそれは消滅時の鉱業権者、要するに廃止業者が責任を持つのですから、これは大へんなことになるだろう、こういうことなんですね。そこで私はそういう方向で今からやっておかないとできないのじゃないかと思うのですがね。
  222. 森清

    ○森(清)政府委員 炭鉱全般にわたりまして恒久策衣講ずる場合には、今多賀谷先生の申されたようなことも含めまして、いろいろ根本的な問題が横たわっていると思います。ようやく炭鉱問題というものが今日非常にスポット・ライトを浴びて参りまして、いろいろな問題を逐次片づけていかなければならないのでありますが、今その賠償に関する問題等に関しましても、われわれといたしましてもいろいろな角度から根本的に検討はしておりますが、一足飛びにそこまでいっていいかどうかという問題は、さらに熟考を要する問題ではないかと考えておる次第であります。
  223. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 一定飛びと申しましても、納付金を取るのですからね。あらかじめ賠償金額が予定されるわけです。年々賠償を現実にしておるデータもあるし、具体的にこの物件、この物件と当たるわけですから、私は、納付金を取るわけですから、制度として踏み切れば、そうむずかしい問題でないのではないかと思うわけですけれども現実すでに賠償の事務というものは、合理化事業団で、いわば廃山後の炭鉱の賠償の事務をやった経験も幸いにしてある。ですからこういったものを生かすならば、私はできるのではないかと思う。今すぐそれができるとは考えませんけれども、やはりそういうことを計画しておやりにならないと、この問題は解決しないのではないかということと、最近のように、ものすごく閉山が続きますと、その必要性を一そう感ずる、こういうわけであります。  ちょっと続いて質問しますけれども、廃止業者が放棄した鉱区の鉱害の賠償をした後に相当賠償が残っておるとしたならば、その業者が無資力であるならば無資力でやりますか。
  224. 今井博

    今井(博)政府委員 無資力でやります。
  225. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと、一応事業団が代理で債務の弁済をやって、足りない場合は無資力でやる、こう考えていいわけですね。
  226. 今井博

    今井(博)政府委員 それが即無資力になるとは限りませんが、いろいろな調査をしまして、これは無資力と判定した場合は、無資力の規定を適用いたします。
  227. 有田喜一

    有田委員長 それでは、本日はこれにて散会し、明日は午前十時から理事会、理事会散会後委員会を開きます。    牛後四時十三分散会