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久保田(豊)
委員 なかなかむずかしいので、これから留意してやりますでは、これはいつでも
政府はそういうことを言うのです。これは二、三年来問題になっているむずかしい問題です。しかし、何らかの合理的
解決策をこの辺で出しませんと、これは大へんなことになると私は思うのであります。ですから、特に
工業開発上の土地等については、
政府としては統一的な
方針を早く出さなければうそです。と申しますのは、各
政府機関、たとえば鉄道、あるいは建設省、あるいは電源
開発、そのほかそれぞれがみんな土地の補償価額の算定方式というのをきめておりますが、みな違っております。こういう不統一な
やり方ですから、
やり方も不統一です。そして算定の方法自体がみな違っておる。こういうことでは、私はなお
解決は困難になると思う。せめて企画庁が音頭でもとって、
政府なり、
政府関係機関なり、あるいは民間なり、大きなところのそういう算定方式の統一をする。そしてこういう場合の買い上げ方式も、たとえば会社直接で買う場合もあり、あるいは町村の委託買いをやる場合もあり、あるいはその他、方法もばらばらです。こういう点も、こういう
計画的な
立地計画をやる以上は、何らかの統一した方法というものをやれば、まだ違ってきます。建設
委員会その他でもいつでも問題になりますのは、全部いつでもむずかしいからということでしり切れトンボになって、依然としてばらばらな
方針がばらばらに行なわれておるということですから、これも土地を上げる
一つのあれであります。農民は、必ずしも土地だけをうんと値上げしようということは
考えておらないのであります。ほんとうの真意は、自分の生活が安定すればいいということであります。その生活の安定ということに対しての
政府側の保障がない、会社側の保障がありませんから、やむを得ず最後のよりどころとして土地を高く売らざるを得ないということになるわけでありますから、この点を十分に
考えて、何とかいたします、善処いたしますだけではなく、早急に、真剣に具体的に
考えてもらいたいと思います。それでなければ、農民のためにも不幸です。農民が土地の値上がりに対して、いわゆる土地ブローカーや脱農待機型になってしまって、ろくなことはありません。先のことを
考えてみますと、これはほんとうに農家が不幸になるもとであります。農民の
立場からいったって、私は決して幸福ではないと思います。この点については、むしろ今までの
政府の怠慢だと思う。そういう点は、
一つがっちり早急にまとめるように私は要望しておきます。
それからもう
一つ、これに
連関する問題として、いろいろの土地の取得
整備に関する問題で、
長官もおわかりかと思いますけれ
ども、私は、いろいろ現地的に問題になる点で、御参考に供しておきます。と申しますのは、よくどこでも紛争の種になって農民を怒らせる問題は、御
承知の赤線、青線その他の国有地というのがあるわけです。これは農地のあぜとか、あるいは河川敷であるとか、そういうところです。これを
政府の方は、国有地ですから、いつでも
地方団体に無償払い下げができる規定になっております。無償払い下げをして、それを道路用地その他にやろうというのであります。これは表面上とすればちゃんと面積が出ていますけれ
ども、実際はわからない。計算上の面積です。しかも、これは今まで
政府は一文も金を出したことがない。みんな農民が金を出して管理してきた土地であります。農民は、自分たちの
農業施設の一部としてやっておるのですから、名目上は国有地でありますけれ
ども、これをただ取り上げて
地方団体に無償譲渡をするなんという
やり方が、実は問題をこじらせる
一つの発端であります。こういう点は、まさか法律で作るわけにも参りますまいが、明確に
中央政府が指示すべきである。特に大蔵省の連中はけしからぬ。今までそういうところがどこに何反歩あり、何町歩あるということを知らなかった連中が、最後の段階になりますと、これを無償没収にかかってくる、無償引き上げにかかってくる。その場合、今まで小作料も国に対して払わなかったということをぬかして、私
どもはけしからぬと思う。この点についても、何らかの通牒その他の形で、こういうばかなことを行なわぬように、単なる法律論でなく、実質的に農民が作ったものであり、農民が長年にわたって管理した農地の一部である、これを今のようなばかなことをするということはやめるようにしていただきたいと思うのであります。これが一点であります。
それからこれは、やはりかえ地をある程度用意しなければ、問題が片づきません。かえ地は、その
地域の場合もありましょうし、あるいはその
地域のほかの
地域で新しくかえ地を開くという場合もありますが、やはり農地なりあるいはその他の宅地のかえ地をある程度準備しなければ、これは問題の合理的な
解決ができないのであります。ところが、官庁や会社がおやりになる場合は、これを大がいやらない。絶対にやらないといっていい。私
どもはずいぶんいろいろこういう問題とぶつかったけれ
ども、かえ地を用意してやったものは、最後まで円満に話が片づきます。ところがこれをやらない。町村長が本気になって、その上の官庁なり会社がその気になってやるならば、大がいかえ地の措置はできます。特にこの新かえ地を作る場合には、県の役割が重要であります。県がその気になれば、相当
解決ができるのであります。これをぜひやってもらいたい。やらなければうまく問題が
解決つかないということを申し上げておきたい。
それからもう
一つは、いつも問題になりますのは、土地改良をやったという場合、まだ借金が残っておる。あるいは途中で打ち切りになりまして、補助金の返還を命ぜられる。これを土地価格の中に含んでいるというような格好で逃げる場合が多い。こういうのは、けしからぬ話であります。やはりこれは会社が持つか、あるいは市町村なり県なりどこかで持つか、はっきりしてやらなければだめであります。のみならず、今度そういう
工場用地ができますと、今までやった土地改良がだめになるだけでなく、新しくやり直さなければならない。これは補助金がつきません。ほとんどむずかしい。むずかしいけれ
ども、やらなければ残った農地の保持ができません。金がかかります。この負担をやはりしてやるということが、私はぜひ必要だと思うのであります。
もう
一つ、一番
解決の困難な問題は、どういうことかというと、この
工場用地の建設に
連関して間々起こる問題で、家屋や宅地、特に部落の一部または全部の移転という問題が起こってきます。この問題は、実は非常に
解決困難であります。しかし、これは金の持ちどころがないのであります。土地改良の経費の都市
計画の方では、なかなかこの金の出どころがありません。そうかといって、会社側は持たない。しかも、経費は非常に高い。一木一草まで補償しなければなりませんから、非常にかかります。この問題が
解決しないために
工場用地の
整備がうまくいかないという問題が間々ある。これも何らかの形で法的な基準なり、行政的な基準で金の出しどころを明確にして
解決してやるということは、ぜひ必要であります。これがないために問題がこじれて、いつまでたっても
解決がつかない。一部の連中が意地になって、最後には動かない。そのために
工場整備ができないという問題が、間々できるのであります。これは非常にむずかしい問題でありますが、お役人さんだって、実務をやっているやつは知っているはずであります。ところが、こういうむずかしい問題になると、
中央のお役人さんが現地に来てやることは少のうございますし、
地方のお役人さんも大がい逃げるので、非常に問題が複雑になるわけであります。電源
開発等では、割合農林省が親身になってやりますが、非常に金がかかるからいやがります。しかし、これはどうしても
解決しなければならぬ問題ですから・特に注意して、何らかの措置を講じてもらいたいと思うのです。
それから全般にいって、海岸の埋め立てその他の場合、漁場は、沿岸漁業、いそづき漁業では、畑や田と同じですから、もっと漁業補償は高く出すべきだ。今の段階では安過ぎます。この点をもう少し変えてもらいたいと思う。
それからいろいろの公害の問題ですが、これも実に
解決の困難な問題です。水質汚濁防止の二法ができましたけれ
ども、一番肝心な補償の問題と、それから公害防止の施設等の
整備の問題が抜けておりますから、あれはしり切れで、ざっくばらんに言いまして、何にも役に立ちません。この点も必ず起こる問題です。非常に因る問題です。ですから、この問題については、公害の防止施設を、建前からいいますと、会社側なり何なりが持つのが当然でしょう。しかし、非常に金がかかる場合があります。たとえば私の方で、富士地区の紙会社がたくさんありますが、ほんとうの汚水の防止をするには、三十数億銭が要るそうです。一軒々々でやったなら、なおできない。合同でやっても、三十数億の金が要る。たれ流しです。ですから、あの川はもちろん魚もいなくなりまして、あの海岸は、もとは有名ないいいそづき漁業地でした。それが沖合い一キロの間、沈澱物が一丈くらいたまっております。海の色が変わって、魚が何にもいない。にもかかわらず、これに対して補償を、昔知事があっせんしましてスズメの涙ほど出したということで、仕方がありませんから、私が、自分のことを言ってお聞き苦しいでしょうが、三年越しかかりまして・どうやら暫定の
解決をした。その向こうのある大きな会社ですが、ここの煙害の問題も、十数年もめておる。ところが、この煙害の防止の施設をすると、約三億円くらいかかる。出しておるのはどうかというと——ほとんど補償は出しておりません。実際には年々一千万円近くの災害をこうむっておるにかかわらず、補償を出していない。これを苦労しまして、どうやらそれより低い金で片づけましたけれ
ども、こういう点について
政府はきわめてあれです。ですから、この防止施設並びに損害補償は、こういう特に低
開発地帯では
解決してやらなければ、こんな
工業だの何だの来てもらったって、ありがたくないのがほんとうです。これと本気に取り組んでもらいたい。何回かこういう問題は
政府に迫りますけれ
ども、かつて
政府なり会社なりがまじめにこういう問題を取り上げたためしがない。こういう不誠意なことでは、私はいかぬと思うのであります。人間だって、
工場だって、自分のたれ流し、それによって他人に迷惑と損害をかけて知らぬ顔をしているなんて、そんな文明国はありません。そういう
工業化なら、やってもらわぬ方がいい。これは、
長官は
産業人でもありますし、ぜひ音頭をとって、魂を入れて
解決するようにやってもらいたい。この点を強く要望しておきます。時間がありませんから、要望だけ申し上げておきます。
次は、転業保障の問題でありますが、御
承知の
通り、土地やなんかがなくなる。そうしますと、来た会社は、
最初官庁と一緒になって盛んにみんな採用するというのです。そして給料は幾らだと盛んに言うけれ
ども、さて進出に関する土地買収その他の問題が終わったら、はなもひっかけないという実情であります。ひどいものでありまして、採用しましても、ここに例がありますが、たとえば千葉県の茂原にできている東洋高圧の千葉
工場なんかは、本工はたった六百九十名です。臨時工が二千人から二千四百人。それは確かに採用しますけれ
ども、永久的な臨時工、社外工です。
賃金はうんと安い。こういう格好が多いのであります。これじゃ雇われても何の役にも立ちません。こういう
やり方でなく、中には良心的なものもあります。ですから、さっきあなたがおっしゃったように、大
工場はそんなばかなことはない。
全国一律
賃金になっておるなんて言ったって、このごろそんな良心的な会社は少ない。こういう新開地においては、全部が全部じゃありませんけれ
ども、これに似たような
やり方をやつ出ているのであります。そして新規の学卒の者だけは採って、臨時工に育てて安い
賃金で使う。中年以上あるいは二十八以上は、私
ども経験しておりますけれ
ども、ほとんど一年勤めても、臨時工か社外工です。これを本工に直すことは、ほとんど少ない。こういう状態ですが、特に大
企業に多いのであります。この点は、
長官も
認識を改めていただきまして、こういう点についても、
政府が何らかの行政介入をする。特に県や市町村は、進出事務が完了するまではうまいことを言って、完了してしまったら、もう会社というものは治外法権ですよ。何も力がないから、会社の中で何をやっているやら、全然くちばしもいれられないという実情になってしまいます。この点も、労働
関係か何かわかりませんけれ
ども、私は、もう少し
政府が権威を持って行政介入——法律規制とまでいかないでしょうけれ
ども、やっていただきたいと思うわけです。この点をお願いをしておきます。
次の問題は、
農業その他の転業の保障です。これも大体進出事務の完了するまではうまいことを言っていて、耕地が少なくなったらこういう新しい
農業をやったらいいとか何とか、県庁や市の連中がわんわん言うのであります。しかしながら、さて完了したらはなもひっかけない。ですから、農民は、大部分どうしていいかわからない。非常に
条件が違ってきますから、そこでどうしても
農業の方はさぼってしまう。そして日銭の入る方にころんでいく。そして
農業は荒廃をするという格好にならざるを得ないのであります。特にこういう低
開発地帯のごときは、片一方においては土地がどんどん上がりますから、
農業状況が悪くなる。片一方においては、労力がそういう臨時的な不安定な形でありますけれ
ども、
工業の方へ取られますから、
農業労働の質というものは、だんだん女、子供、年寄りが
中心になってしまって、しかも、これに対する指導がほとんど行なわれていない。特に
農業関係の必要な資金を貸してくれなんて言ったって、お前売った銭があるじゃないか、あれを使えばいいということで、ほとんど金を貸してくれません。実際にはこういう状態ですから、
農業の再編ができるはずがない。ですから、ほとんど全部が荒廃になってしまうというのが実情であります。そして結局は、農民が転落階級というようなことになって、比較的安く土地を手放すという
関係になる。これはまた、土地を売った程度の金では、新規に商業なり何なりやろうという場合に、資金が足りません。その場合の補強をするための資金をあっせんしてくれるかというと、これもしない。しかも、農民はみんなで共同で取った金を使うという習慣が、非常にないのであります。これは不得手であります。共同でやれば、たいがい内部でけんかを始めます。これは残念なことですが、そういう実情ですから、こういう点についても、
政府がもう少しやってくれなければならぬ。しかも、こういう状態ですから、土地は値が上がってくるから、住宅問題等の
解決は骨が折れてくる。それから労力が払底してきますから、
中小企業あたりにおいても、労力が払底して高くなってくる、人が得られない、かえって窮屈になってくる。もう
一つは、
最初のうちは、地場の
中小企業に進出
企業が提携をしてうまく育てるなんて、うまいことを言います。しかし、実際に今度進出が完了してしまうと、まず第一に、土建屋の大きなものが
中央から来て、下請が四段階ぐらいになって来る。現地のものはほとんど使わないという
関係になります。そしておもな関連
産業や下請
産業は、大部分その会社にくっついているものが
東京や横浜から進出してきておる。そして地場の連中を排撃してしまう。こういう格好ですから、実際の地場
産業、
中小企業等には、ほとんどプラスになる面は少ない。長い目で見れば多少購買力が増しましょうけれ
ども、当座においては、むしろプラスの面よりマイナスの面が多いというのが実情です。こういう点についても、
長官として、ぜひ何らかの形で——法律で規定することは困難でしょうが、
一つうまく指導してもらいたいと思いますが、御意見を伺っておきます。