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藤山国務大臣 アメリカがリセッションの域を脱して
景気が上昇しつつあることは、五、六月以外の大きな趨勢と申して差しつかえないと思います。ケネディ大統領が就任した前後がいわゆる
ドル危機の一番激しいときでありまして、大統領としても、財政の問題とあわせて内政の問題を
考えて参りますれば、少なくも就任後ある時期において
国内の
景気を
相当に回復する、そうして、
ドル防衛の仕事を全うすることはケネディ大統領の政治家として当然
考えるべきことだと思います。そういう
状況でございますから、ケネディ大統領のとっております
経済諸問題に対する手も、
景気を回復してリセッションからはい出していくという
政策にあることはむろんでありまして、そういう面がだんだんきいてきているということは明らかに言えると思います。ただ、この
状況が明年非常によくなるか、あるいはそういう
状況が続いていっても、それほどにはいかないかという点についてはいろいろの見方がございます。先般も
予算委員会で申し上げたのですが、加納久朗君のような方は私をつかまえて、
アメリカは来年は史上空前の
景気がくるお前は消極的でいかぬではないかというお小言を食ったことがあります。私は史上空前の
景気がくるとまではちょっと見かねるわけであります。しかし、引き続き
アメリカの
景気が上昇していくことは間違いないだろうと思います。
日本の
貿易が
アメリカの
景気に
相当左右されておりますことは、過去の事例から見ても当然でございまして、これで伸びていくということも
考えられます。ただ一方では、今国際政治が非常にむずかしい
状態でございますし、
アメリカにいたしましても、ヨーロッパ
共同市場との
関係というものは、
相当複雑な
関係を持っておるわけでありまして、従って、この問題につきましては、いわゆる大西洋を中心にした
一つの
経済の扱い方という問題について、かねてからいろいろ心配もしているわけでございます。そういう
意味において、
ドルの最近の
事情も必ずしも思った
通り防衛されていないという
状況にもあるわけでありますから、
国内の
景気が若干上昇いたしましても
ドル防衛というような
立場を、いわゆるシップ・
アメリカン、バイ・
アメリカンという問題は、
アメリカの議会方面においてもあるいは一般
民間においてもゆるめていくというようなふうに簡単には
考えられないではないか。でありますから、そういう
意味において、対米
貿易につきましては、いたずらに楽観をしておったんではいかぬのじゃないか。しかし、悲観をする必要はない。ただ、今申し上げたようなことでありますから、
アメリカの
景気が上昇してきて、
日本の
輸出ドライブのかかりました各商社が、過去のような異常な過当
競争をいたして参りますと、またいわゆる関税問題であるとか、あるいは数量規制であるとか、そういう
意味において自主規制を要請されるというようなことも起こって参らないとは限りません。過去の品目ばかりではなく、将来伸びるというような品目についても、そういうことが起こらないとは断言できないわけであります。そういう点については早期に
アメリカ側と十分話し合いをしまして進めて参らなければいかぬのでありまして、過去の事例を見ましても、
アメリカが国会等において論議され、あるいは通過した制限案もしくは関税案等について、ことごとくそれが成立しておるわけではありません。大統領のヴイトーによって制約された品物もたくさんございます。でありますから、そういう
意味においては日米両
政府間の十分な理解と
協力によりまして、そういう問題が起こりましても、その問題を早期に
解決する外交上の
方法を
考えて参らなければならぬと思います。そういう
意味におきまして対米
貿易というものが伸びることは伸びますけれども、それでは無
条件に非常に大きな
数字になるとも言えないと思います。でありますから、一方から申せばその
バランスを合わせるためには、
アメリカから
輸入するもの、特に今回の事態におきましては機械類でありますとか、あるいは将来の合理化に備え、あるいは将来の
日本の産業構造の変革に備えますパテント類というようなものの買い入れというものが多いのでありますから、そういうようなものについても
相当な考慮をして参らなければなりませんし、特に今日まででは
民間がいわゆる自分の分野を拡大するというような
意味で、
競争的に工場建設を急いでおりまして、そのために
日本のメーカーに注文したのでは機械が間に合わない、従って
アメリカに注文すればすぐ間に合うというようなものもございますから、そういうものもできるだけここで
設備投資を繰り延べていくならば、あるいはその時期を延ばしていくならば、
日本品で間に合うから
日本の機械を使うというような通産省における行政指導によりましてやって参るということによって、やはりある
程度輸入に関しても担保率の引き上げ等で機械的にやります以外に、そういう
意味でできるだけの
抑制をして参らなければならぬと思います。そうして一方では
輸出をできるだけ伸ばしながら、一方ではそういうような行政措置によって
輸入もできるだけ縮めて、その
バランスを合わせていくという努力をして参らなければならぬのでありまして、
景気がいいから、
輸出が伸びるからもう
輸入の
抑制はそう必要ない。一切伸ばせばいいのだというまでに
アメリカの
市場と申しますか、また
景気といいますか、そういうものを過大に見るのは、私はまだ早いのじゃないかと
考えるのであります。
それから東南アジア方面に対します
貿易は、むろん伸ばして参らなければなりませんけれども、また過去の
数字を見ておりましても、東南アジア方面その他には現に若干ずつ
輸出が伸びておるわけでありまして、決しろ減っておるわけではありません。しかしこれをもっと伸ばして、参ることのためには、やはり東南アジアの低開発国というものは、金融的にも財政的にも弱体でございます。従ってそれらをカバーしながら
考えて参らなければならぬのでありまして、従って
ドイツ等が長期の延べ払い方式を採用しておるというような問題については、
日本もやはりそういう問題を
解決していかなければならぬのであります。今回八月以降とりました一連の措置の中におきましても、通産省の非常な努力に、よりまして、大蔵省といろいろ問題のありました延べ払いの
問題等金融的に
解決しまして、国別に
相当な金額が延べ払いで出るような方向にも進んでおります。でありますから、そういう面も
考えて参らなければならぬと思います。同時に今申し上げたような
状況でありますから、東南アジア方面は片
貿易になっておるところが多いのでありまして、これはやはり若干ずつ何か向こうの物を買って参らなければならぬ。中近東方面でも、私、
外務大臣をしておりましたときも、イランやイラクのようなところではデーツをぜひ買ってくれ、そうでなければ
日本品は買えないぞというのですが、デーツなんというものはなかなか買えないもので困ったこともありますが、そういう
意味で向こうの鉱産資源なり農林産品等についてもいま少しく
日本が何らかの形で買えるような道が開けて参らなければならぬと思いますし、またそういうことが必要であろうとも思います。そういう手を打ちながらやはり伸ばして参る。これは一方では長期の
経済協力という
立場を進めながら、
貿易をそれに伴って振興させて参らなければならぬと思うのであります。そういう
意味においてはそういう面から
改善を加えて参りたいと思います。ことにそういう面で若干長期的な観点に立ってこれを伸ばして参るといえば、技術
協力ということが非常な大きな問題になって参ると思うのでありまして、これは既成の技術家の研修をやりますこと、あるいは将来当該国において産業
経済の官民の中心になるような人を、
日本で技術的な教育をするというような問題が非常に重要な問題でございまして、
日本で教育された人は自然
日本の機械を買い、
日本の部品を買うということになって参ります。そういう面についてはやはり文部行政なり何なりで十分画期的な方途を立てていただくことが、やはり国際親善の上からいいましても、あるいは
世界平和という上から、見ましても、あるいは
経済上の面からも必要なことだと思います。
第三に御
質問の中共との、あるいは共産圏との
貿易関係でございますが、原則から申しますと、これは相手方が国営
貿易の国でありますので、やりづらい点は普通の
状況でもございます。しかしちょうど私
外務大臣をしておりましたときに、日ソの通商協定を作ったのでありまして、初め一年の約束で作りましたが、その後向こう側の要請によりまして、三カ年間の長期契約をいたして、大体三億
ドルということでございましたが
実績ははるかに上回ってきております。でありますからそういう
意味におきまして
日本とソ連との間の
貿易というものは今の
状態でも拡大し得る
可能性があるわけでございまして、おそらく今後の日ソの
貿易についてはそう悲観をする必要はないのではないか。ただ中共の問題でございますが、これは私から申すよりも通産大臣から申し上げることでありますが、最近中共と
日本との間の
貿易関係について、技術的な障害がある
程度池田内閣のもとにおいて取り除かれておりまして、その方向においては
日本としても
相当積極的に出ておるわけであります。ただまことに遺憾なことには中共側がいわゆる友好商社の問題を持ち出しております。
貿易関係を友好商社に限りますということ
自体、向こう側にもし拡大の意図があるならば、若干認識不足ではないかと
考えるのでありまして、こういうような
態度が変更されますればおそらく
池田内閣の成立以来の通産省の
方針を進めて参って、中共との
貿易は拡大しているのじゃないかと思いますが、向こう側がいろいろ友好商社の問題を持ち出すものですから、先般の広州の見本市の実情等から見ましても、必ずしもその任にないような人が
競争で向こうから若干の物を買い、それが
国内であまり売れなかったということで、その人
自体も非常な見込み違いをいたしたような問題もございます。そういうような問題につきましては、向こう側にも反省をしてもらわなければ
貿易というものは円滑にはいかないのじゃないかと思います。ただ政治問題を別として
貿易を拡大して参りますことは、
日本のためにも必要なことでございまして、そういう
意味において
池田内閣としても十分前向きの姿勢で進めておられると思いますが、われわれといたしましても将来の問題を
考えて参ります場合に一
輸出貿易の拡大のたに、政治的問題を離れて共産圏との
貿易を十分に円滑に多量にやって参りますことは必要なことでございまして、現に
ドイツ等が中共と商売をしております現状から見まして、政治問題を離れてやれば地理的な近さもございますから、まだまだ拡大するものじゃないか。そういうことに対しての
準備はしなければならぬと思っております。