運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1961-10-10 第39回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十日(火曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 内田 常雄君 理事 中村 幸八君    理事 長谷川四郎君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       海部 俊樹君    神田  博君       佐々木秀世君    齋藤 憲三君       首藤 新八君    白浜 仁吉君       中垣 國男君    野田 武夫君       林   博君    原田  憲君       南  好雄君    加藤 清二君       久保田 豊君    多賀谷眞稔君       中村 重光君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         通商産業政務次         官       森   清君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衛君  委員外出席者         通商産業事務官         (企業局長)  佐橋  滋君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十月六日  福島県大滝根地区セメント工場建設条件整備充  実に関する請願(大竹作摩君紹介)(第一七一  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月六日  公共料金値上げ反対等に関する陳情書外百七十  三件  (第二八号)  中小企業振興対策確立に関する陳情書  (第二九号)  中小企業基本法制定促進等に関する陳情書  (第五五号)  臨海工業地帯造成のための財政措置に関する陳  情書(第六二号)  国土調査事業の推進に関する陳情書  (第六九号)  中小企業集団化のための振興資金増額等に関す  る陳情書(  第九五号)  北海道の電気料金値上げ反対に関する陳情書  (第九六号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ――――◇―――――
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本政策及び経済総合計画に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。板川正吾君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと議事進行で……。この際委員長を通じて資料を要求いたしたいと思います。と申しますのは、当委員会におきまして、さきに私、公正取引委員長出席を求めて、例の問題となっております十合百貨店と大和銀行の件です。大和銀行がその子会社の敷島不動産、これと合わせて独禁法十一条の規定以上に株式を取得した。そういうことで公取委員会の方に提訴をなされておりました。その後、敷島不動産は持株を放した、そういうことでいいじゃないか、こういうようなことも言っておったようです。きょうの朝日新聞を見ますと、その両者間に調停が成り立ちまして、提訴を取り下げたそうです。そこで、提訴を取り下げるならば、もう独禁法違反の問題については不問になるのかどうか、そういう点について公正取引委員長に来てもらって質問したいと思いますが、まず本件についての経過及びその考え方について、資料を提出してもらいたいと思います。
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 しかるべく取り計らいます。  板川正吾君。
  5. 板川正吾

    板川委員 私は、去る十月三日当委員会における経済企画庁長官所信表明といいますか、この表明に関しまして、若干の質問をいたしたいと思います。  この経済企画庁長官のごあいさつの中には、今年度の国民総生産は十六兆数千億に達し、昨年度の実績に対して一〇%に近い成長を遂げようとしておるというふうに言われておるのであります。また経済過熱説明になりますと、国民所得倍増計画に予定した昨年度の国民総生産十三兆六千億に対して、実質一七%以上という予想を著しく上回わるものである、こういうふうに二つの考え方を並列して出しておる。私はこの国民総生産は、三十五年度に対しまして九・八%だと予算委員会説明を聞いておるのですが、九・八%というのは、政府が公約をされた三年間九%という目途から見ると、そう大きな狂いがないはずです。そう大きく狂いがないのに経済過熱状態になったということは、この所得倍増計画の中に狂いがあるのじゃないか、こう思うのでありますが、この点をどうお考えになるか。どうも都合のいいときには、低く見積もった十三兆六千億をベースとして、一七%も上回ったから、従って過熱状況を押えるのだ、こういう説明をされる。しかし実際には、昨年度の実績に対して九・八%という見通しを発表されておるのでありますから、そう狂いのない、大差のない数字でもって過熱状況を招来せしめたというのは、どこかに狂いがあるのじゃないかという点からお聞きしたいと思います。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大体この計画を策定いたしました昨年の七月の国民総生産というものは、当時十三兆六千億というふうに考えられておったわけであります。従ってすべての計画を、それから三年後に十七兆六千億という目標を立てて進んで参ったわけであります。一月の見通しになりますと、御承知通り十三兆六千億というのが、すでに十四兆二千三百億でございましたか、そうなっておったわけであります。しかし、そういう状況でございましたが、さらに三月末日になりましての実績というものが、十四兆五千六百億というふうに上がったわけであります。従って、昨年度の推算と申しますか、というものが、倍増計画出発点考えたときの数字よりも非常に大きな数字が出てきたというところに、一応のこうした数字変化が起こってきておるわけでありまして、そういう点から見て、成長率の九・八%というものが、今お話のように、それじゃ九%と大して違わないじゃないかと言われますけれども、そういうところがらきた数字変化が現状をもたらした、こう考えざるを得ないのでございます。
  7. 板川正吾

    板川委員 三十五年度の国民総生産が、昨年度の七月ごろ想定した十三兆六千億、これを上回るであろうということは、ことしの当初あるいは昨年の暮れに、すでに一つ考え方としては、十三兆六千億を上回るということは、私は計算上出ておったんだろうと思うのです。ですから、それは架空数字であります。まあ当初は、なるべく低目に見積もるというのは当然でありましょうが、やはり国民所得を倍増するという考え方ならば、所得を十年以内に倍増するというわけでありますから、実績基礎として論議をされるというのが当然じゃないかと思うのです。それを、過熱したという説明をするときだけに一七%以上というようなことをことさら取り上げて、だから過熱したのだ言われる。こういう点が、どうも国民として納得しがたいところじゃないか。九%と大差がない、経済のことは、池田さんはおれにまかせてくれと言っておる。まかせてくれと言うには、一つ計画を持って、その計画通りに間違いなく経済が進行している−−間違いなくというても、少しの差は問題にしません。大差なくそれに沿っておるという状態であれば、国民はまかせるわけなんです。しかし池田さんの考え方からいえば、腹八分目で九%をきめたので、一〇%や一一%あっても日本の経済はびくともしない、こう言っておった。それが九%をわずか〇・八%こえた、一割ほどこえたというところで、大きな過熱状態を来たしたということが、私は所得倍増計画全体に、どこかに狂いがあるのじゃないか。この狂いを是正するということは、経済企画庁任務じゃないかと思う。ですから数字でごまかさないで、実態の上で議論をされる方がいいじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話のように、経済見通しを立てますことは、その当時の数字を集計して、そして一応数字的にはそれを表わしていかざるを得ないのであります。従って、かりに三十五年度の国民総生産というものは、三十六年度の三月末日から若干の日をたった後でないと、実は実数ははっきり出て参らない。その以前に、たとえば一月に予算を編成し国会に臨むというようなときにとります数字というものは、御承知通り、やはり十一月少しくらいの数字に相なるわけであります。でありますから、数字的な動きというものが、特に今日のように国民が非常な意欲をもって自由化にも対処していこう、あるいは国内産業拡大自分自身仕事に対するいわゆる市場占拠率拡大していこうというような意欲に燃えておりますときには、思わざる数字が出て参る場合が往々にしてあると思います。また今日がそれであったと思います。従ってこういうパーセンテージだけにしぼっていろいろ問題を考えますと、そこに若干誤りが起こってくるということはいえるのではないかと私どもも考えておるわけでございます。要するに昨年七月に所得倍増計画を十カ年でやろうといって、しかも最初の十三兆六千億から三カ年に十七兆六千億になるという数字が、本年にすでに十六兆五千億近くにはなりはしないかという勢いなのでありますから、そういう意味においてそれだけの数字の根拠の上に立っていろいろいたすことはいかがかと思います。でありますから、やはりそうした実態に即して行なう経済のことでありますから、できるだけ安定的に成長するように、そのときどきに細心の注意を払って、そうしてそういう状況の推移を見守っていかなければならぬと思うのでありまして、経済企画庁としても事務的には数字を整えて参りますけれども、私といたしましてはそういう意味で十分な数字の上には立ちますけれども、数字にはとらわれないで、できるだけ今後とも経済界の安定的な成長をはかるように進めて参りたい、こう考えておるのでございます。
  9. 板川正吾

    板川委員 私が数字を言うのは、少し予想より違ったからどうこうといろので言いがかりをつけようとするのじゃないのです。ただ昨年七月に十三兆六千五百億を想定するときに大体低かったのです。それはなぜかというと、前年の民間設備投資が二兆一千六百億です。二兆一千六百億ならば、下村理論算出係数をもってすれば翌年が二兆円ほどとにかく総生産がふえるという建前になる。ですから、その理論通りに一応は三十四年度は十二兆五千億が三十五年度は十四兆五千億、二兆ほどふえたのです。これはその算出係数の一という数字が大体当たっておる。ですから、三十四年度の民間設備投資の額が二兆一千億というのが大体三十五年度にはわかっておったのですから、十三兆六千億というのは大体がベースを過少に置いたことなんです。しかしそれはあくまでも計画だから、まだきまっていないのだから、一つの想定をするというならいたし方がないのだけれども、われわれとすれば過少に評価をして倍増するというのは、これは結局国民所得倍増計画というのがごまかしの基礎ベースにしておったのじゃないか、こう思うのです。ですから私は、それがわかった以上は、三十五年度を基準にして十年間で所得を倍増するというなら、やはり実績基本として今後は論議をしてもらいたいのです。架空数字を置いて、それで過熱したから押えるのは当然だということは、実は国民をごまかすのじゃないか、こういう点を私は言っているのです。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん全部が架空数字であることはないわけであります。また今お話のような下村理論によります総生産の伸びというものが、はたして金科玉条のものであるとも考えにくいものであろうかと思います。でありますからその間に相当やはり検討をしたのでありますけれども、その検討そのものが必ずしも適正でなかったということは、ある程度いえるかもしれませんが、しかし何か作為をもって作ったという数字でないことは確かでございます。
  11. 板川正吾

    板川委員 下村博士算出係数が、多少狂いがあるかもしれないけれども、とにかく三十三年度以降では一応その議論が的中しておるようですね。三十三年度は国民総生産が十兆三千億、この場合の設備投資が一兆六千億、この一兆六千億が翌年の国民総生産ふえ高と大体合っている。三十四年度を基準として三十五年度も大体見当がつく。ですからその理論からいえば明らかに十三兆六千億というのは低過ぎたんだ、私は実績の十四兆五千億ときまった以上は、将来これで議論していただきたいということを要望します。  次に今回の経済過熱状況というのは、経済企画庁としては三十二年の前例もあります、二十八年の例もあるでしょう、予想が全くできなかったものかどうかということなんです。この朝日新聞の社説にもありますが、九%−−%が違ったからとうこうと言うのではない。それも問題ですけれども、そればかり私は言うんじゃないのです。しかし経済の今度の過熱があらかじめ経済企画庁として見通しができなかったものかどうか、将来のためにこの点は大いに議論しなくちゃいけないと思う。われわれとすれば、経済過熱する要因というものは、去年からことし大いにあったと思う。西ドイツなんかで非常な発展をしながら過熱をしなかったということは、あらかじめ事前に予防的な措置を講じた、行くところまで行ってから手を打つのじゃなくて、予防的な措置を講じてコントロールした、こう言われておる。そのコントロールするというのが経済企画庁任務じゃないでしょうか。そうすると、今度の経済過熱経済企画庁として予測できなかったものかどうか、なぜできなかったか、大丈夫だと思っておったのか、下村理論に圧倒されて、いいと思っておったのか、池田さんの言う通りになっておったのか、どういうことになるのですが、一つその間の考え方をお伺いしたい。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 数字的にはいろいろ相当な研究をして、そうしてむろん下村君の理論等参考にしたことはしておると思います。その他の学者その他の意見も聴取して、そうして数字的に整備をしてきた。ただお話しのように、経済企画庁として作っています数字は、実態の上に即した数字でないとは申せないのでありまして、ある程度実態の上に即した見通しとしてこれはやむを得ないことだと私は思います。ただ経済界動きというのは、私自身経済界におりまして相当に心理的な影響経済活動の上には受けたわけであります。ただ数字の冷厳な事実だけでもって経済人活動というものは左右されない。何か前途に対するある感じというものが相当経済人活動を刺激するということ、これは大きなファクターだと思います。でありますから数字数字として、やはり過去の趨勢を規範として将来にその数字を伸ばしていくというやり方をある程度とって、そして理論的にもそれを構成していかなくちゃならぬことは当然でございますけれども、しかしその運用にあたりましてはやはり心理的なそのときどきのいろいろな情勢、あるいは国際情勢変化等に対して注意深く見守りながら、今お話のようにいろいろそのときどきの手を考え、そうしてこれが誤りのないように持っていかなければならぬと思うのでありまして、私としてはそういう気持で今後の企画庁仕事をやって参りたい、こう考えておるのでございます。
  13. 板川正吾

    板川委員 学者統計中心経済見通しを立てた、実態を掌握していないために多少の行き過ぎがあった、こういうことは私はあり得ると思う。しかし経済企画庁はとにかく実態をつかんでいる行政庁でしょう。そうして数字もこれまた十分に使い得る組織を持っておる。ですから計画を立てて、実態とにらみ合わしてその間にもし狂いがあるならば、それを適当な機会に修正をするということはこれは経済企画庁仕事じゃないのですか。三十二年の経済の混乱からにがい経験を得て、経済企画庁を強化して、そういう点にしっかりやってもらおうということで経済企画庁が強化されたと思うのです。ですから実態ばかりではなくて数字もつかんで、両方を見ながらコントロールする、これは経済企画庁任務でしょう。そう考えてみますと、国民総生産算出については、御承知のようにいろいろ議論がありましたね。大來さんや都留さんやあるいは篠原博士ですか、そういう人々が中心下村さんと論争した。経済企画庁は前から九%は大体高過ぎる、新長期計画では六・五%ということを五年間に立てておったのですから、九%は高過ぎるという懸念を持っておったことは、大來さんの所論を見ましても事実なんです。下村さんの言い分を聞いておっても民間設備投資算出係数は一である、限界輸入依存度は九%である、これをわかりやすく言えば、設備投資が行なわれれば翌年それと同じ程度国民総生産がふえる、そのふえた国民総生産の九%程度輸入の増加を来たす、こういう建前になっている。そういう議論も多少の狂いがあるけれども、ある程度の、当たらずとも遠からずという指標があったのじゃないでしょうか。そうしますると、三十四年度における民間設備投資が二兆一千億、三十五年度が三兆五百億ですか、三十六年度が三兆九千億からあるいは三兆六千億というところでしょう。この民間設備投資がこういうふうに急速に予想外に伸びれば、従ってこれが限界輸入依存度の指数からいっても、国際収支赤字を来たすという、経済過熱するという予想は、経済企画庁としてはことしの初めすでに予想され得たんじゃないか。これも初めにわれわれ野党がその問題に慎重論の忠告をしたときに、経済企画庁がもっとしっかりして、多少のコントロールをするならば、今日あわててブレーキをかけなくたってよかったのじゃないか、こういうふうに考えるわけですが、どうでしょう。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 数字のことでありますから、ある程度理論によって数字を組み立て、見通しを立てたそれについて特段の−−理論的な立場の相違の方からいろいろあれば違った面もあろうかと思いますけれども、経済企画庁として過去の実績その他から類推した見地からして、数字そのものを立てたことについては、そう誤りがあったとも私ども考えません。が、しかし立てた経済情勢そのもの数字通りにいくかとなると、それは将来のこととしてはなかなか数字通りにいかない。非常に過熱する場合もあり、あるいは停滞する場合もこれは当然起こってくると思います。それには先ほど申しましたような国際経済状況もございますし、あるいは実際に産業に従事している人の心理作用というものも相当大きいわけでありまして、それらによって拡張意欲が燃えていく、ある場合には非常に沈滞的な控え目の気持になっていく、そういうことが大きくこの上に作用してくるのでありまして、お説のようにそういう産業人の心理的な影響あるいはその心理的な影響もととした産業拡大意欲というものが、どの辺で企画庁がキャッチできたか、また相当実態その他もキャッチできなければならぬじゃないかというお話のようでありますが、そういう点は企画庁においても絶えずながめておったことだと思うのであります。ただそれを数字的に修正し現わして現実に世の中に示し、あるいは政府施策の中に織り込みますのには若干の日がたつわけでありまして、企画庁事務当局自身がそういう感じだという政治的判断と申しますか、判断だけではいけないので、事務当局としてはやはり数字をそろえて、こういう状況に推移しつつあるから警戒を要する、あるいは修正を要するのだというふうに、そのときどきに数字をそろえて、上層政治的なところに出さなければならぬのだと思います。従って事務当局としては非常にむずかしいことだと思うのであります。私としてむろん個人的な判断というものは持って参らなければなりませんけれども、過去におきます事務当局数字が、あるいはそういう点についての注意がいかなかったじゃないかというおしかりでありますけれども、それに対しては今申し上げたような点があったのじゃないかというお答えを申し上げることが、私は適当だと思います。
  15. 松平忠久

    松平委員 ちょっと関連して。今の板川君の質問と同じようなことで、的確な情報でもないのですが、企画庁の中のある局長がそういう話をして、それがまた違った局長が雑誌に公表されている。その公表されているところを読みますと、大きく違ったというものの中で、世間でいわれているものは物価の問題と貿易の問題なんですが、その貿易の問題について、総合収支六億ドルかの黒字になるということを初め経済企画庁で、主として通産省大蔵省といった事務当局と打ち合わせをしたときに、これはきわめて弱いという発言もしておりますし、あの貿易計画というものは輸出入の総合収支がどうなるかということについては、企画庁としては数字が過大であるという考えを持っておったようであります。ところがそれがやはり押されてその数字が通ってしまっている。それで今日二億ドルの赤字になり、差し引きしますと八億ドルの赤字になるという。これが一社の経済だとすれば、そういう見込み違いだったら社長、専務は実際を言うと首になると思う。そういう重大な見通しの立て方について、企画庁の担当の者が自分考えを貫くことができなかった。そしてほかの省に押されてああいうような数字を作ったということを間接的に世間に公表しておる。そういうことは私は忠実じゃないと思う。企画庁立場としてはあくまで企画庁考えておることを通すべきであると思うのです。そういうことを開いておりますが、それは今の大臣のときではない、前の大臣のときであったからあなたには責任はないけれども、今の企画庁の運営としてはもって他山の石とするに足りると思うのです。  そこでお伺いしたいのだけれども、私は企画庁は今板川君が言うようにもっと高い立場に立って、今言われました心理的な影響もいろいろありますが、そういうものの把握にも努めるような態勢を作っていって、各省から出された数字をそのままうのみにするようなことなくしてやっていただきたいと思うのです。それについての大臣のお考えをこの際承っておきたいと思います。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 企画庁としてこうした見通しなりをいたします場合に、むろん企画庁自身十分機能を発揮するように内容を充実いたしまして、その線に沿ってりっぱな見通しを立てて参ることはこれは当然なことで、企画庁としてやらなければならぬことであります。ただ同時に企画庁自身実体行政を扱っておりませんので、実体の関係になりますと、見通し等についてはやはり実体を扱っておられる主務官庁意見というものをある程度参考にし、あるいはそれを他山の石として考えなければならぬことは当然だと思います。従ってそういう意味において十分経済実体を握っておられます各官庁の意向をも参考にしながらこういうものを作ること、そのことはやむを得ぬと思いますが、しかしそのこと自体があまりにもそれにのみとらわれてしまいますと、御指摘のような点も出てくると思うのであります。従ってその間のはっきりした企画庁としての立場を持ちながら、それぞれ実体を握っておられます官庁の御意見も加えてやるべきだ、こう考えております。
  17. 松平忠久

    松平委員 今実体とそうでないものと言われましたけれども、各官庁実体を握ってその数字も持っている。それでは企画庁はどういうことをするのですか。企画庁実体も何もなくて理論か何かをもとにして思想統一をするとか、計画統一をはかっていくのですか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 数字一般につきましては、むろんそれぞれの各省庁で直接当該数字を持っておられるのでございます。企画庁が全部の統計数字自分で作成するわけではございませんから、ある場合には日銀とか、総理府等からもとりますし、通産省大蔵省からも当然とらなければならぬ。理想から申せば企画庁自身が全責任を持ってそういう機能を果たして、統計は一元的にやるのが必要ではないかと私ども考えますが、そういうところまでにはまだいっておりません。各省庁からいただいて、その基礎数字の上に立って企画庁としては過去の実績動きを勘案し、必ずしも下村理論みたいなはっきりした理論を組んでというまでにはいっておらぬかもしれませんけれども、下村理論なりあるいは反下村理論なり、それらのものも参考にして、そして一つ数字を出して作っていくわけであります。ただ過去の数字整備はそれでよろしゅうございますけれども、将来の見通しとなりますれば、やはり貿易に関して外務省が国際経済をどう見ておるか、あるいは通産省が輸出商品についてどういうところを見ておるかという、若干はその方面の意見も入れなければなりませんから、予想となると各省庁意見が若干そういう意味においてウエートを持って出てくるということは、やむを得ぬことじゃないかと思います。経済というものは純理論通りに動かないのでありますから、従って見通しを作る場合には、そういうような主観的な問題は、各省庁意見も取り入れて作らざるを得ない場合があるのでありまして、その点はやむを得ないことではないかと思いますが、しかしそれはやはり企画庁として総合して、できるだけ適切な判断を各省庁見通しに対しても下さなければならぬことは当然でありまして、そういう点について今後とも万全を期して参りたいと思っております。
  19. 板川正吾

    板川委員 所得倍増計画経済企画庁でお立てになったのですね。従ってこの所得倍増計画を立てるときには、それぞれの官庁から数字を取り寄せて、経済企画庁でその実体とにらみ合せて計画を立てた。なるべくその実体に合せて正しい指標を作ったと思うのであります。ですから数字を作るのが問題じゃない。要するに作った数字を使うのが経済企画庁ですから、こまかい実際取り扱っていなくてはわからないような数字狂いのために、大きな狂いが生じたというのなら、これは経済企画庁を責めるわけにはいかないでしょう。しかし国民総生産が非常に計画より上回ってきておる、その原因は設備投資にある、こういうわかったこと、大きなこと、これは経済企画庁数字をつかまないから、実体を扱っていないからわからぬということじゃないと思うのです。経済企画庁経済のコントロールをするという庁であるならば−−資料を事務官から取り寄せて申し上げるというのじゃない。特に藤山さん副総理格でしょう。次の宰相をねらっているのじゃないですか。次の総理大臣をねらおうという方が、どうも下僚から数字を出されたというだけじゃなくて、実際に経済をコントロールするということじゃなくても、それは池田さんなりあるいは通産大臣なりの考え方にもし間違いがあれば、正しい主張をしていくべきじゃないかと思うのです。特に私が申し上げたいのは、この設備投資が一昨年二兆一千億、昨年三兆五百億、こういうふうに所得倍増計画見通しを上回って、膨大な伸び率を示しておるときに、そういうことはこの一月にわかっていたとさつき言いましたが、その一月のわかっておるときに金利を引き下げたということは、ますます設備投資を誘因し、経済過熱を引き起こした大きな原因だ、こう思うのです。こういう大きな判断、だれが見てもすぐわかる判断を、経済企画庁はそういう場合に一つの見解を持ってコントロールしないというのは、私は経済企画庁の失態ではないかと思う。もしそういう数字が、実態がわからないために十分でないというならば、私はその実態をつかみ得るように、経済企画庁の中の機構改革をされて、そうして今後こういう不安を国民が起こさないようにすべきではないかと思うのです。どう思いますか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お説の通り数字の上だけで楽観もできませんし、悲観もできないわけでありまして、やはり経済全般の動きを見て、そして数字と合わせて考えて参らなければならぬと思います。従って、先ほど申しましたように、経済企画庁としては十分確実な過去の趨勢から数字を見て組み立てて参りますことは当然でございまするが、しかし、将来の見通しを作ります場合には、むろん各省庁意見を十分に参考にしながら、一つ経済動向というものを推察して、そうしてそれによってある程度見通しを立てて参らなければならぬと思います。私も企画庁長官に就任いたしましてから、現在の実情に即するように、池田さんに進言をいたしました。池田さんも閣内民主主義でありますから、どういう意見もよく入れてこられておるわけでありまして、そういう意味において万全を期して今後ともやって参りたいと思います。ただ、企画庁のいろいろな機能を充実してやらなければいけないという御説に対しては、私はもっともだと思うのでありまして、企画庁が発足以来いろいろの経緯を経ておりますが、特に近年では、この所得倍増計画ができましてからは、各省間のいわゆる調整をするというだけでなしに、所得倍増計画という大きな将来計画に対して、企画庁が重要な役回りを持っておりますので、これらに対して対応できるような十分な機能を発揮するように、企画庁自身の強化をはかっていかなければならぬというのは、お説の通りだと私も思います。そういうことに向かっては今後とも力を尽くして参りたい、こう思います。
  21. 板川正吾

    板川委員 この点についての質疑は要望を付して終わりたいと思いますが、今までの答弁はどうも歯切れが悪い。藤山さんは安保のときはだいぶ歯切れよく答弁されておって、自分の本職の経済の問題になると、どうもさっぱり歯切れが悪いのは解せないのです。実態を見てといっても、どこで実態を見るのですか。これは数字で見るほかないでしょう。数字で把握せざるを得ないのじゃないですか。これは心理的動向といっても、心理的動向というのはやはり数字じゃないですか。ですから、その予想された数字と、その実態からはね返ってくる数字と照し合わせて狂いがあれば、これを事前に直すということが経済企画庁任務だ、こう私は言うのですよ。特に今度の経済過熱の原因は、私をして一言に言わしめれば、経済企画庁の中で大來さんは、もっと慎重論を前々から唱えておって、これは下村博士とは対脈的な議論をしておった。また貿易自由化でも、設備投資を非常に誘因するというので、山際日銀総裁なんかは、ドルが三十億ドル手持ちがないと、貿易自由化に踏み切るのは危険性あり、こういうことも再三言うておった。そのほかいろいろの人が、下村理論には疑問符を投げかけておったのですよ。池田さんは下村さんの理論をまるまる受け売って、下村池田コンビでやったのでしょうけれども、しかしそれに対していろいろと批判があったのですから、その批判を頭に置くならば、経済実態の行き過ぎについては、相当事前から警戒論を経済企画庁で打ち出されてもよかったんじゃないか。藤山さんになってようやくその自主性を取り戻そうとしているようですが、今まで前の大臣は、池田さんに巻かれちゃって、池田さんの言う通りになった。だからこういう過熱状況をここまで引っぱってきて、あわてて押えようということになったのだ、こう思う。それは経済企画庁がもっとしっかりしてもらいたい、また経済企画庁長官も、そういう点では大いにしっかりやってもらいたい、こういうことを要望申し上げます。  次に、三十六年度の貿易収支、一体どのくらいの見込みでおられるのか、それをまずお伺いしたいのであります。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一応事務当局から詳しく御説明いたさせます。
  23. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 それでは私から申し上げます。お手元に「三十六年度経済見通し中間暫定試算」というものをお配りしてあると思いますが、それをちょっとごらんいただきたいと思います。これの二枚目の方に国際収支のところがございますから、これで見ていただきたいと思います。  これにございますように、まず輸出でございますが、上の欄の経常取引のところにございますように、輸出は年度間におきまして、為替ベースで四十二億六千万ドルというふうに見ております。これは御承知のように、一月の見通しにおきましては、四十三億二千万ドル、三十五年度に比べて約一〇%増を見込んだのでありますが、対米輸出が相当不振でありまして、上期におきましては、ここにありますように二十億ドル程度である。ようやく八月、九月から、輸出入の信用状につきましては黒字が出てきたわけでありますが、しかしLCのベースを見ましても、前年の同期比程度停滞しておりまして、ただ対米輸出につきましては、最近は、LCベースで見ますとだいぶ好転のきざしが見えております。豪州その他の方面で、なお停滞を免れませんので、最初われわれが見通しました四十三億二千万ドルというものを、六千万ドル程度下回るのじゃないかというふうに見ております。これは大体通産、大蔵、企画庁、日銀一致した見通しでございます。これで前年度に比べまして三十六年度は一〇%増と見たものが八・七%増くらいにとどまるのじゃないかというふうに見ております。  それから輸入でございますが、これは一月の見通しにおきましては四十一億九千万ドルと見ておったのでありますが、上期におきまして非常に輸入がふえまして、下期につきましても鉱工業生産がある程度伸びが増加する。あるいは上期におきまして相当の原材料等の積み増しが行なわれておるというふうな点、それから先般御承知のような輸入担保率を引き上げた、なお九月の終わりには国際収支改善の総合対策を打ち出したというふうなことから見まして、下期には鉱工業生産の上昇に伴います原材料の輸入というものはある程度減る、こう見ておりますが、機械の輸入等あるいは飼料の輸入というようなものが下期には上期に比べて相当ふえますので、そういう点を計算をいたしますと、上、下の差で約一億八千万ドルくらいの減にとどまるのじゃないかということで、上期は輸入は二十五億七千万ドル、下期は二十三億九千万ドルと見まして、年度間で四十九億六千万ドルということの見通しを立てまして、それ以外に貿易外収支が相当悪化しておりますので、経常収支は年度間では八億八千万ドルの赤字というふうに見ておるわけであります。ただこれは国会で何度も大臣から言明があっておりますように、まだ国際収支の総合改善対策というものを打ち出したばかりでございまして、これらの今後の政策の浸透の工合等を見まして、三十六年度の国際収支見通しあるいは経済見通し等については最終的なものを作りたいということで、しかし、これは暫定的な中間試算ではございますが、関係省、日銀等におきまして一致した見通し、少なくとも事務的にはこの見通しでいこうということになっておるわけでございます。
  24. 板川正吾

    板川委員 これは為替ベースで計算されておりますか。
  25. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 今申し上げましたのは為替ベースです。
  26. 板川正吾

    板川委員 一表にあるのは通関ベースですか。
  27. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 そうでございます。
  28. 板川正吾

    板川委員 わかりました。  政府は来年昭和三十七年度の国民総生産をどの程度と見込むのですか。幾らか知りませんが、現在昭和三十六年度では十六兆五千億というふうに見込んでおるのですね。そうしますと来年度は幾らぐらいを見込むのですか。ここに「三十六年度経済見通し中間暫定試算」と、誤解のないようにだめ押しに書いてありますが、見通しですから−−それはちゃんとわかるものは実績で、あとになって計算すればわかるのですが、見通しですから、それは多少の狂いというものをどうこう言うのじゃないのですが、今のところ来年の国民総生産をどの程度に見込んでおるのですか。これは経済企画庁長官から。
  29. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、今回八月から一連の抑制的な方策を打ち出したわけでございます。これが相当きつい政策でもあろうかと思います。従って現在、いま少しく時間がたちませんと、これがどのように作用してくるかということが実ははっきり見通しできない段階にございますので、そういう点から申しまして、現在来年の国民総生産をどの辺に見通すかというととは非常にむずかしい問題だと思います。従って、われわれはこれらの処置が効果を上げてくるその過程を十分把握いたしまして、そうして将来の見通しをあらためて立てたい、こう考えておるのでございます。
  30. 板川正吾

    板川委員 率直なところ、ちょっと時間をかさないと今はっきりした見当がつかない、こういうところかと思うのです。しかし一つこれは考えてもらいたいのです。成長率を七・五%と見込むと十七兆六千億ですね。池田さんは五%でもいい、とは言っておりませんが、それでも計画のうちだからいいと言っておるのですが、五%なら十七兆一二千億、一応こういう計算が出ますね。そこで、都合のいいときに下村理論をとっても悪いのですが、下村理論の計算、いわゆる限界輸入依存度九%、こういう計算をされていきますと、昭和三十七年度は二十兆前後、こういう計算になるのじゃないですか、いかがですか。
  31. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 来年度幾らの国民生産の見積もりかということにつきまして、長官からお答えがあった通りでございますが、本会議その他で各大臣から言明になっておりますごとは、三十六年度十三兆六千億というふうに倍増計画ベースがなっておりますので、これから見ますと、今お手元にあります三十六年度の十六兆五千四百億には、ことしなるんじゃないか。これは名目でございまして、実質に直しますと十五兆九千七百億、三十五年度の価格に直しますとその程度に下がってくるわけです。そういたしましても、三十六年度は一七・四%、十三兆六千億をベースにすると一七・四%アップということになりますので、三十八年度の十七兆六千億、いわゆるこれから三年間九%で伸ばした線に持っていくには、どの程度の伸びでいいかということを、ただ算術的に計算をいたしますと、三十七年度が五%、これで三十五年度価格でありますが十六兆七千七百億ということになりまして、云う一度三十八年度に五%伸びますと十七兆六千億、これはもちろんそういう数字に合わして伸ばしただけでありまして、五%でも十七兆六千億にはなるのじゃないかということを申し上げておるわけであります。決して三十七年度の見通しを五%で立てたいというわけではありませんで、今とっております政策の浸透の効果を見まして、もうしばらくして経済企画庁としては見通しを立てたいというふうに考えておるわけであります。  それから輸入依存度のことを申されましたが、この輸入依存度というのは、要するに過去の分析から出てくる結果でございまして、将来の、少なくとも来年の見通しを立てるときにその依存度をすぐに当てはめまして、国民総生産が何兆になってもよろしい、あるいは成長率が幾らになっても大丈夫じゃないかということを言うのは、非常に危険なことじゃないかと思っておりまして、経済企画庁としてもそういうやり方はとっておりません。ただ十カ年計画というような非常に長期のものを見通す場合には、過去の基準年次における依存度がどうか、将来依存度というものはある程度上がっていく要素と下がっていく要素とございますので、そういう点を勘案いたしまして、倍増計画では、やや依存度は上がるというふうに見ておりますが、企画庁としてはそういうやり方をとりまして、関係省と相談をいたしまして、いわゆる積み上げ方式によって数字を出しまして、ただ検算をするときに依存度が幾らになるか、それはおかしいじゃないかということを計算をしておるわけであります。
  32. 板川正吾

    板川委員 私、依存度の問題を言ったのですが、算出係数ですね、民間設備投資算出係数、この議論でいくと、ことしの設備投資を押えたとしても三兆六千億ですか、そうするとこれを押えなければ、このままでいくならば、来年その程度国民総生産がふえることによって三十七年度は二十兆近くなるだろう、しかしそれを十七兆六千億ですか、五%程度上げてその程度で押えるということになると、実は本来自由に、規則措置をとらなければあるいは外貨の国際収支の心配がなくて自由に伸びたとすれば、物価差は別として二十兆円近く伸びるものが十七兆何千億かで押えられる。二兆数千億という資金が生産をしないということになって、大きな資金が寝るということになるじゃないか、要するに国家的にはそれだけ損失になるのじゃないか、こういうことを実は言いたかったのです。だから経済企画庁としてはそういう資本がむだに一年間寝るようなことのないような調整措置を事前にやるべきじゃないか、こういうことが言いたかったのです。  通産大臣が時間がないそうですから、通産大臣にちょっと質問をいたします。質問点は、この間十月三日の大臣所信表明、通産大臣として初めての所信表明をとくと伺ったわけですが、しかし率直のところどうもこのあいさつはあまり真剣味がこもっていないのです。うわのそらで言っておるというだけですね。これは下僚が書いたのを下読みもしないで読み上げたということじゃないかと思うのです。池田さんは通産大臣をうまくやって次は総理大臣、どういう気持がありました。あいさつの中でも膨大な考え方自分意見を述べてなかなか気魄があった。しかし通産大臣にはそういう踏み台にして上がろうという気魄がこのあいさつの中には見られない、全く残念です。そういうことで二、三質問をいたしたいのです。  あげ足をとるようなことになるのですが、このあいさつの全体の中に、今の国際収支赤字の原因がどこにあるか、それは輸出が伸び悩み、輸入が非常に多過ぎた、ここに原因がある。ですからこれはもう輸出振興というのが−−それは輸入を押えるというのは第二段です。消極的ですね。実際は池田さんが言うように輸入をまかなうような輸出をすればよかったのです。それを池田さんは、何、輸出なんというのはあまり重要視する必要はない、これは下村理論がそうなんです。大体二、三億ドルふえればいいのだ、間に合うのだ、国内需要を押えさえすれば景気がよくなるのだ、輸出は輸入をまかなえばいいという、輸出を非常に池田さんは軽視しておったのです。これは下村理論がそうなんです。だから輸入がふえ過ぎたら今度は輸出は輸入をまかなえないというのが一番の欠陥です。だからこの経済拡大発展させるというなら、通商産業大臣として輸出振興というのに一番の重点を置くべきじゃないか。ところがとれには、輸出の振興を基本とする積極的対策の充実をはかるというふうなことで、真剣に輸出振興をやるという気がまえがこのあいさつの中にないのですね。これは総理大臣の施政方針と同じですから……。池田さんのように輸出を軽視されているのでは困るので、一体通産大臣としてどういう輸出振興に対する考え方基本的な考えを持っているかということをお伺いしたい。
  33. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 貿易収支の面から見、また今板川さんの御指摘のように、輸入をまかなえるだけの輸出をしろ、これは私どもの基本的な態度であります。従いまして輸出振興についての気魄が弱いという御指摘でございますが、すでに輸出振興についての具体策等はそれぞれ発表し、とっておりまして、その関係の法律なども今回出ておりますから、これで御了承いただきたいと思います。問題は、輸出の振興という事柄も、輸入の抑制にいたしましても、いずれも短期間のうちになかなか効果の上がるものではございません。この点はよく御承知のことと思います。これだけ輸入がふえ、原材料がふえてきている。そうして生産は非常に高度に成長している。しかも輸出の数量が足りない。それは一体どこに原因があるのかと考えてみますと、旺盛な内需というものが、十分の輸出意欲を作り上げておらない、こういうことも見逃すことができない事実だと思います。ただいまやっておりますことは、消極的な態度でございますが、その意味において内需を押え、ことに設備投資についての抑制をはかり、そうして輸入を押えることと相待って担保率の引き上げ、その他の施策と相待って輸入の減退を来たし、同時に輸出振興策による、いわゆる輸出マインドの高揚によって輸出を伸ばしていこう、こういうことを実は考えているわけでございます。その点はその中に一応出ていることだ、かように私は読みながら理解しておったわけであります。
  34. 板川正吾

    板川委員 輸出金融あるいは輸出産業に対する税制上の優遇、そういったことで私はこの日本の輸出が根本的な改善をされるとは思わないのです。また今出されている法律程度をやっただけで、私は日本の輸出が大きな飛躍をするとは思えない。輸出振興の基本は、私は第一には低物価であること、物価政策をちゃんとして物価を安定させるということが第一だと思います。それから第二は市場拡大ということをねらわなければいけないということですね。第三は、今のこの輸出不振の原因はどこにあるのか、との原因は対米片貿易にあるのではないですか。ですからこの対米片貿易を是正するのだ、こういうような基本的な心がまえについて、実は大臣考え方を伺いたかった。それは法律を出していますからそれで尽せるというのじゃ、あの程度の法律じゃだめですよ。業界誌のいろいろの雑誌等見ても、輸出振興には根本的な対策というのがない、あるとするならば頭を徹底的に切りかえなくちゃということです。それはあるいは中国貿易等を考えなくちゃいかぬだろうということを言っておるのです。どうなんですか、こういう三点についての大臣のお考えは。
  35. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 第一、第二、これはもう無条件に私も賛成です。そこで物価の動向を見ておるわけでございますが、最近の国内の設備投資いわゆる産業の近代化、これは労賃等の大幅な引き上げがありましたにかかわらず、卸売物価というものが示しておるように横ばいの状態にある。むしろ生産増強によりまして生産費は安くなっている、こういうことが指摘できるのじゃないかと思います。そういう意味で輸出貿易の物価そのものは、現在の状況では心配することはないと私は思います。この点はいろいろ議論のあることでありますが、最近の労賃等の値上がりによりまして、いわゆる低賃金ということは、日本の場合にだんだん当たらなくなりつつありはしないか、かように思いますし、また能率化で、あるいは設備等がオートメーション化するとかというようなことで、生産自身を上げなくても済むような状況になっておる。これはただいま重ねて申しますが、卸売物価が安定している、横ばいしているということで、はっきりそれが指摘できると思います。従って、通産省として物価のあり方に非常に気をつけておること、これは弔う当然であります。企画庁が物価の総元締めだ、かように申しますが、通産省自身も輸出なりあるいは国内の生産等に力を入れる面から見ましても、これは非常に力を入れておるつもりでございます。  第二の点、市場が狭いということ、これはもう御指摘の通りであります。これは後ほどあるいは板川さんがお尋ねになろうとすることとも関連があるかと思いますが、こういう意味でわれわれが市場拡大ということをはかるという場合に、やはり日本の貿易自由化ということが必要になってくるわけであります。日本に対する差別待遇、これが日本の輸出市場を狭めておるのでありますから、外国をして差別待遇をさせないようにする。いわゆるガット三十五条というようなものを振りかざさないようにさす。そのためにも自由化は実は必要でございます。せんだって来外国のイギリスなどから来ている人たちともいろいろ話をしましても、今までの日本の貿易は狭い市場に対して深く浸透している、その結果市場を撹乱する、外国の商品に対して思わない打撃を与える、これは一つ変えてくれという話をしておりますが、それに対して私の方で率直に申しておるのは、差別待遇をしておる限り日本の輸出市場は非常に狭い、この市場を拡大することが必要だ、かように実は指摘をしておるわけであります。今日十月に実施する自由化を二カ月もおくらすというのも、市場拡大の方向で外交折衝をやらす、こういう立場にあるわけであります。これなどはただいま御指摘の通り考え方であります。必ずしもいわゆる共産圏貿易拡大するということでなしに、今の自由諸国の間におきましても、いろいろな差別待遇を設けられておる。これが日本市場を非常に狭くしたのだ。だからこれはそういう意味で打開していかなければならぬと思います。  また第三に御指摘なさいました日米貿易の片貿易、この点が問題じゃないか。ことしはたまたまちょうど外貨の不足額が、日米貿易の片貿易の金額とほぼ一致するような形になっております。この対米貿易拡大について、私どももあるいは繊維会議その他を通じて努力して参りました。参りましたが、今後の問題として近く日米合同会議なども開きますので、そういう機会におきましては十分当方の主張も徹底さして、そうして日米間の貿易を好転させる努力を続けて参りたい、かように考えます。
  36. 松平忠久

    松平委員 ちょっと関連して佐藤大臣質問したいのですが、以上の三点の中で、輸出拡大について差別待遇を撤廃させることを考えられるのはこれは当然であります。当然でありますが、通産大臣一つ考え置きを願いたいと思うのは、日本の輸出商社の全般のあり方なんです。欧米諸国においてはそういうことはございませんが、しかしながら東南アジアあるいは中近東もしくはアフリカというところで、輸出商社の行なっておることを見ますと、いずれも支店長以下というものはすべてそこに腰かけをしているのだ、こういう態度です。二、三年そこでサラリーをもらっておるならば、あとは各商社の給与体系によってそれぞれ昇進をしていくのだということで、帰って部長になる課長になるということばかりを考えておる。そういう態度でありますから従って家族はほとんど連れて行っておりません。独身でもって行っておりますために、その社会に、ペネトレートするというか、社会に溶け込んでいって、そしてそこで経済の基盤を築くという努力はほとんどありません。私はそれはどこにあるかというと、各商社の人事管理の問題だろうと思う。もう一つは給与の問題だろうと思うのです。これらの点はアメリカ、ドイツあるいはイギリスと非常に違った点であります。たとえばイギリスにおいても植民地がそれぞれ今日独立をいたしておりますけれども、しかし経済はほとんどそのまま残っておる。そして支店長は土着をしてしまってその中に溶け込んで、そこで自分で商売をする、こういうことが今日イギリスの植民地が次々に独立ができてもイギリスの経済というものが、なおかつ相当維持されておる原因だろうと私は思う。日本は新しく市場を開拓するということもありますけれども、やはり各商社の私が今申しました欠点によって、いずれもどうもその社会において生活をしていく上においては溶け込んでおらぬ、そして要するに逃げ腰だということなんです。この問題で、日本の商社は何とか一つ人事管理面と給与の問題とを取り上げて、そこで腰を落ちつかせていくという、そういう方策をこの際とってもらいたいと思う。どうですか、このことについて御所信があったら承っておきたい。
  37. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 商社の出先の人事管理がまずい、ただいま言われるようにどうも溶け込まない、おそらく外国を回られてお感じになりますことは、非常に若い人たちが多い、こういうことをお感じになると思います。こういう意味では商社自身の人事管理も大事でございましょう。また若いためにお互いが仲間同士で競争したり、あるいは専門的な機械その他の知識が足らない、大へん輸出には不向きなような陣容でございます。今一口に商社と言われますが、大阪の輸出専門商社は別にいたしまして、大体大まかに見ましておそらく商社が扱っております仕事は、大体半分五〇%は国内の卸的な性格残り五〇%のうら三対二の割合で、三が輸入二が輸出というような割合になっております。これは非常に大まかでありますから正確にはなかなか当たりません。そこで私どもが輸出貿易商社という限りやはり貿易に重点を置いて、国内のいわゆる卸商社的な部類はなるべく手を引いて、少ない範囲に押えていただき、そして輸入もさることですが輸出の方にうんと力が入るようにしてくれないか、こういうことを実は指導しておるわけであります。ところが先ほど来お話がありますようになかなか内需が旺盛ですから、しかもまた内需は消費者物価、あるいは小売物価というものは、卸とは別にある程度上がっております。そうして輸出の場合におきましては、これは国際競争もあるし、相互の競争もあるし、そのためになかなか利益率というものを見ると輸入の方がよくて、輸出の方は非常に低い。そういう点が今の輸出が伸びない基本的な原因だと思う。だから、やはり輸出をすることによって非常にもうかるというような組織がないと困るのですが、やはりガットその他の制約を受けるし、なかなか思うようには参りません。だから輸出の保護あるいは助長と申しましても、私どものやることには一つの限度がある。そうすると、やはり国内と国外とのバランスがとれるような指導をすることが必要だと思います。もう一つは、輸入する場合でありますと、比較的に原材料でございますから技術的な判断はあまり必要としない。ところが、最近のように、輸出の場合に、綿製品でもそうですが、綿製品以外の機械部類になって参りますと、PRが非常に大事でございます。そういう意味で商社の専門よりもメーカー自身の協力を得ないと、うまくいかないところが非常にあるのです。だから貿易拡大するという場合に、非常に簡単に考えるわけにいかない。今の御指摘の点も確かにそういう欠点があるが、基本的に幾つも直していかなければならないものがある。ここに貿易、輸出、輸入というもののバランスをとることの困難さがあるわけであります。先ほど板川さんのお話しのように、輸入するものは輸出の利益でまかなっていくのだ、こういうことは絶対に基本的に必要だろう、それはどうしたらそういうふうになるかというので、いろいろ掘り下げた考え方をしているというのが、ただいまの通産省考え方でありますし、政府自身もそういう意味で各省の協力を願っておるという実情でございます。
  38. 板川正吾

    板川委員 念のために申し上げておきますが、大臣、卸売物価は上がらないといいますが、経済企画庁見通しですと、三十六年度に四・五%上がる、こういう見通しを立てております。しかしこれは大半が木材であって、木材を差し引くならば〇・八%であってほぼ安定している、こういうところだと思います。しかしこの木材が、実は私、不思議でならない。政府が低物価政策というのに熱心であれば、もっと木材の供給をふやして、たとえば輸入するなりして値上がりを防ぐような措置はできないものですか。この木材の輸出入の状況を見ると、昨年の輸入の量は、前年度に対して一割くらいしかよけいに入っておらない。総体の輸入というのは二割五分よけいにふえておるのだけれども、木材はその平均よりもはるかに少ない。ですから木材の価格はどんどん上がる。年間六千万立米も必要なのに、五十万や百万立米の官有林を払い下げたって、高くして払い下げたら材木屋にもうけさせるようなものであって、実際焼け石に水というような状態です。だから低物価政策をとろうというなら、こういう点ももうちょっと物価を下げるような努力をすべきじゃないでしょうか。
  39. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 非常にプリミティヴな議論をすれば、需給の関係で価格は安定するじゃないか、こういう言い方ができると思います。ところで木材は農林物資でございますから、河野農林大臣説明する方がいいかと思いますが、通産省の関係におきましては、今の輸入あるいは。パルプ材、ことに針葉樹のパルプ材、そういう意味で紙や繊維関係の方からも木材の需給に協力しようという態度を実はとっておりますが、木材の輸入そのものが、山にはありますけれども、これが建築用材になるとか、あるいはパルプ材料になるというのには、相当の時間のかかることであります。これはもう私が御指摘するまでもなく、林道が必要だとか、あるいは人が必要だとか、港までの輸送が大へんだとか、港湾の整備が不十分だとか、いろいろの問題があるわけであります。これは板川さんに申し上げるまでもないことなんで、これらの点はよく御承知だと思います。せんだってソ連の見本市があった。あの見本市には二間四方くらいのりっぱな写真が載っておる。これは山の木材をみんな切って谷川を埋めておる写真なんです。それでミコヤンが日本は木材が要るかと言うから、要る。木材なら君の方から買いもするから出してくれと言ったら、ミコヤン自身が、少し時間をかしてくれ。おれの方には、山にはうんと針葉樹はあるが、人手が不足だし、やはり港まで持ってくるのにそう簡単にはいかないし、港自身も困る、こういう問題なんです。よくいわれますことは、シベリヤ材が手に入るではないか、あるいはアラスカ材が入るではないかと必ずいわれますが、国内の官有林を払い下げるだけでも、計画を立ててそれが原木として出てくるまでに相当の時間がかかる。ちょうどそれと同じでございまして、輸入と申しましても、木材が右から左にしゃんと輸出をするように用意はアラスカやシベリヤにもしてない。そこらに実は問題があります。逆にそういうような状態があって、需給が円滑にいかないとなると、思惑売買があったり一思惑的に貯木されたりする、そういう点がむしろ逆な作用もする。だから今いろいろ政府が処置をとりまして、比較的木材価格が上がったままで横ばいをしておる。これは私はむしろ政策としては成功の方じゃないか。積極的に下げるわけに参っておりませんが、少なくとも思惑等を押えておるということだけは、これではっきりしているのではないか、かように実は考えておるのでありますし、最近建築その他の抑制等もいたしますから、需給関係では供給が不十分なら、需要の方もやはり押えるような仕組みでなければならぬだろう、かように思います。
  40. 板川正吾

    板川委員 時間がないようですから少し端折りますが、物価政策については実は私経済企画庁長官ととくとあとでやりたい。これはこの前少し指数でごまかされておりますが、ごまかされないところを一つやろうと思いますから、物価問題は経済企画庁長官に譲ります。  市場拡大問題ですが、これは自由諸国とのそうした向こうの差別的な問題については、いろいろ外交措置なりで、これを撤回して拡大していくことは異論がございません。ただ日本の置かれている位置として、中国との貿易を一方において——現在貿易不振なんですよ。貿易不振でおるのに、お隣の中国との貿易をしないでおいていいかどうかということは、国民が非常に疑問とするところだと思うのです。大臣は就任のときに、中国問題は前向きにやる、こういうふうにおっしゃられた。実はきのうある保守党の人とも話したのですが、これはちょっと余談になるにしましても、中国が来年あたりおそらく核実験をするだろう、原爆実験をするだろう、そうすると中国を除いて国連で核兵器禁止や協定をしても意味がないという状態が、明年あたりおそらくくるのではないか。そうしますると、ベルリン問題で世界が消滅するようなことにならない限りは、ベルリン問題で一つ話し合いがつけば、国連においても次は中国問題でしょう。そして中国問題が解決するようなときには、世界がもっと雪解けになって米ソの対立観念がずっと緩和されてくる時代になるんじゃないか。そういう状態になった場合には米国の軍需産業国内産業に転換せざるを得ない。そうすると、日本の対米輸出なんというのも、これまただんだんうるさい問題になってくるでしょう。従って将来五年後あるいは十年後か知りませんが、将来を考えますと、私は今にして中国の問題をやはり考え直す時期じゃないか。幸いに大臣は就任のときの約束として、前向きでやりたい、こうおっしゃられておる。おそらく通産大臣が将来総理大臣になられたころには、中国との貿易を大いにやろうという時代になるんだろうと思うのです。そうすると、この辺で中国問題を前向きで解決するという具体策としてどういうものを考えておられるか。それを一つ伺いたいということと、それからこれは小さい問題ですが、日中の輸出入組合が今つぶれかかっておる。これは将来のことを考えると、つぶしちゃまずいと思うんで、その点を大臣どういうふうにお考えになっておられるか。それからもう一つは、対米貿易は片貿易です。おっしゃられるように一−六のトータルで年率に計算しますと、昨年の実績よりも輸出が一億ドル減っております。輸入が五億ドルふえておる。そうしますると、前年から見て対米片貿易赤字は、前年度も片貿易ですが、六億ドルの赤字を今年は前年よりも、来たしておるという格好になる。これが総合収支赤字に以通った数字になるということですから、対米片貿易を是正するということは、大臣が言う貿易は相互主義の建前からいえば、これは是正してもらわなくちゃならぬと思う。そう言えば十一月二日の日米経済合同会議で議題とする。こういうことだろうと思うのです。日本の国会は、アメリカの国会みたいにうるさくないから、あるいは腰が弱いかもしれませんが、もし日米経済合同会議で成果が得られないようならば、今後は大いにうるさくせざるを得ない。この点をどうお考えになりますか。
  41. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 日中貿易は御承知のように民間協定第四次では、九千八百万ドル片道ということになっております。約一億ドルずつ、二億に近い貿易額があったわけでございます。ところが不幸にして長崎の国旗事件が起こり、その後も中絶いたしました。最近の日中貿易の金額はまことに微々たるもので、けたが違うという状況であります。日本側としては別に態度は変わっておらないのでありますから、ぜひとも漸次ふやしていくという方向へ持っていきたい、かように思います。基本的な外交方針等もございますから、その外交方針等で、政治、経済は別だという言い方をしておるし、またどこまでも相互主義の立場に立ち、そして内政不干渉という立場貿易を進めていく、この態度が非常にはっきりとしておるわけであります。最近は御承知通り強制バーター主義を変えまして、現金決済の方法にまで変わってきておりますから、その点は一つ改善されたわけであります。私は中共側に条件をつけるわけではございませんが、必要ならば、中共政府を承認しないカナダからやはり小麦を買っておりますし、しかも小麦は現金で即刻払いではなしに、そういう貿易がやられておる。そういうことを考えますと、日本と大陸の関係も今後必ず改善される、また改善されなければならない、かように考えます。  次の第二の問題として、いわゆる日中貿易を担当しております民間団体、これが最近組織がこわれるという非常に苦境に立ち至っております。いろいろむずかしい問題もあるやに伺いますが、ぜひともりっぱなものに作り上げたい、こういう実は考え方でございます。まだどうするということはきまっておりませんが、内々これに対してもいろいろ私ども調査をしておる段階であります。ただ私ども中共側に注文をつけたいのは、いわゆる友好商社という形はあまりいい形ではないと思います。だから貿易をやる以上、ああいうことを言わないで、やはり貿易を扱う者は門戸を開放して、そして特定な者のみに中共貿易を扱わせるという、ああいう考え方はやめていただいた方がいいのではないか。これはまた機会あるごとに、おそらく向こう側でも気づいているのでありましょうが、最近いわゆる友好商社の範囲を拡大しておるようでありますから、おそらくこれは向こうでも考えてくれるのではないかと思いますが、いわゆる民間団体というか、貿易担当の団体等が整備されることによって、こういう問題も解決しやしないか、かように思います。  第三の日米貿易でございます。日米貿易は過去二年前は大体同じような格好であった。当時アメリカは非常に心配をしたものであります。最近の状態では十対四・五、五を割っているというような数字でありましたが、七、八、九、やや上向きになっております。少し最近は輸出がふえておりますから十対六ぐらいにおさまりはしないか、もっとよくいけばあるいは七に近い数字になるのではないか、まあ七は無理なら六・五までにいきやしないか、こういうようなことで今努力をさしております。問題はやはり個々の品物について、もう少し手当をよくしないと十分の成果が上がらない、かように思います。  いずれにいたしましても、基本的にはよく話し合って、具体的に話を進めていきたい、かように考えております。
  42. 板川正吾

    板川委員 通産大臣に対しては貿易自由化の問題、それから経済企画庁長官に対しては物価問題等がございますから、もう一回時間をいただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  43. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十三日金曜日午前十時より開会することといたします。  これにて散会いたします。    午後零時八分散会