○赤松
委員 私はこの
委員会で、たとえば総評などの言う貧乏人根性を捨てろという
意味は、そういうことを
意味していると思うのです。つまり賃上げの要求にあたって、新しい生活実態を基礎にして賃上げを
考えなければならぬ。これは
政府自身が賃金を見る場合におきましても、やはりそういう新しい角度から見てもらいたいということを申し上げたわけでありますけれ
ども、特に年間のテレビその他の広告費を見ますると、千六百億円に達しておる。そうすると国民一人当たりに約千六百円負担がかかっておるわけです。その宣伝費あるいは広告費が消費者の利益になっておるかといえば、消費者の利益になっていないわけです。このことは逆に消費者がそれだけ負担しておるということになるわけですね。そこで
政府の方で、最近の新聞報道によりますと、誇大広告等についてあるいは景品、クイズなどをつけて売り出すところのああいう広告のやり方に対して、これを
規制することを
考えておるということを私は新聞で見たわけでありますけれ
ども、この点は超党派的に
考えていかなければならぬ問題だと思うのですね。こういう傾向が助長されますと――私は正しい消費生活、そしてレジャーを正しく楽しむということは大へんけっこうだし、またそうなければならぬと思うのですけれ
ども、要するに先ほど申し上げたように、今の物の買い方、あるいは物の買わせ方というものは、つまり消費構造というものが純粋に消費者の欲求順位によって決定されてはいない。むしろ独占資本の宣伝広告という物質力によって左右されておる。左右されておるというように言い切っていいかどうかは別問題としまして、相当大きな影響を受けておる。たとえば薬の宣伝な
どもちょっとテレビで見ると、あの薬を
一つ買いたい、こういう欲望が起きるわけなんですね。ですからわれわれの消費生活を正しくする、意義のあるものにするということのためには、ああいう傾向は排除するか是正していかなければならぬ、こういうように思うわけであります。今、日経連の力では盛んに賃金の限界などといっておりますけれ
ども、大蔵省の法人企業統計によりますと、これは三十四年度なんですが、六カ月の決算会社、大体最大百社の売上高及び利益金を出しておりますが、全国で売上高は十三兆九千億、この中にはもちろん私は
サービスも入っておると思うのでありますけれ
ども、これに対して百社の売り上げは三兆七千七百六億円、大体全体の二割七分を占めておるわけです。そして従業員の数からいいますと、やはり二割七分なんですね。全体の三百七十二万百四十五名に対して百万です。約三割近い二割七分一厘ということになるわけです。ところが純利益の方を見ますと、四割七分二厘を占めておる。この最大両社の会社が全国の会社の純利益の中で四割七分を占めておる。そしてこれを製造業だけに限っていえば、実に六五%の純利益を上げておる。これは大蔵省の法人企業統計に出ております。そうしますと、ここで一体だれが犠牲になっておるかといえば、言うまでもなく
中小企業及び零細企業が犠牲になっておる。また最近やかましい持株数を見てみますと、大蔵省の調べによりますと、株主の全体の九六%を五千株以下の人が占めておるわけです。九六%持っておりますけれ
ども、しかしこれは株主全体の九六%であって、今度は株式数からいいますと、十万株以上の大株主が全体の〇・二%、そして所有株は四八%を占めておるということなんです。ここから一体何が出てくるかといえば、一見資本主義はその株式を
大衆化しておるように見える。けれ
ども、決して
大衆化にはなっていない。依然として独占資本が大きくその主要な株を握っておるのだということが明らかになるわけでございます。ここに私は八幡製鉄、富士製鉄、日本鋼管、川崎製鉄、住友金属、神戸製鋼、この六大メーカーの大株主のリストを持っておりますけれ
ども、株の二割五分、もしくは三割あるいは四割近くを占めておるものは
銀行と生命保険と
事業会社です。この三つによって占められておる。一例をあげれば、八幡製鉄の場合は三菱信託、日本興業
銀行、大和
銀行、富士
銀行、東京海上火災、三和
銀行、住友
銀行、日本生命、三菱
銀行、日鉄鉱業、以上の会社によって二〇%の株が八幡の場合握られておるわけです。そしてこの二〇%の株を所有する階級はだれであるかといえば、今言ったように
銀行及び
事業会社、いわゆる
金融機関と
事業会社が一体になっておる、戦前の日本の資本主義の構造からいえば、これは明らかに三井、三菱、住友、安田というような
金融資本のもとに日本の資本主義が置かれて、そのヘゲモニーはこういう
金融資本に握られておったけれ
ども、今では資本主義が変容して、
金融機関あるいは
事業会社が合体してコンツェルンを形成して、独占が日本経済を支配しておる。そういう中で今言ったように莫大な、つまり製造業でいえば、わずかに百社が六五%の利益を占める。さらに全体をいえば、この百社でもって四七%の利益を占めておる。こういうような日本産業の構造の中で、日経連が貧上げの余地がないというのは全く不当なんです。われわれは、日経連が質金の限界をどこに置くか、そのことはよく知りません。よく知りませんけれ
ども、少なくとも今日炭鉱労働者が要求しておるところの最低賃金一万二千円、これはあとで
滝井代議士が触れますけれ
ども、この一万二千円、あるいは私
どもが要求しておるところの最低賃金、一般的にいえば八千円なんというものは、決して無理な、要求でも何でもない。むしろ日本の産業構造の中において、その下積みになっておるところの低所得者の所得の底上げをすることが、池田内閣のいうところの所得倍増計画の根幹をなす。すなわち有効需要を高める、購売力を高める、そして日本の資本主義をバランスをとりながら繁栄の道へ導いていくということの基本的な政策でなければならぬ。もし池田内閣がそういう政策をとるならば、われわれは
制度の上において資本主義と社会主義の違いがあっても――
制度の上ではわれわれは妥協しません。しかし政策の上においてそういうような方向を池田内閣がとるならば、私
どもはそれに対して積極的な協力を惜しむものではないわけであります。ところがこの三月に日経連が、わずか三千円の賃上げに対して、屈服賃金を押しつけた、あるいは労働者を甘えさせたということから――私の判断が誤っておるかどうか知りませんが、石田博英君は気の毒に池田改造内閣からパージされた。これは日経連が厳重に抗議を申し入れて、当時石田労働大臣は非常にりっぱであったと私は思うのでありますけれ
ども、ついに彼はこの財界の要求の前に屈服せざるを得なかった。そして日本の財界がとる来一度の賃金対策、労務対策というものは、一方においてはいわゆる生産性をさらに高める、他方においては賃上げの限界を示して全体として賃上げを押えていく、そして低賃金構造の上に、日本の為替、貿易の自由化に備えて合理化を進めていく、これが彼らの政策だと思うのであります。
従って、ここで特に申し上げておきたいことは、先ほど私はいろんな資料を提示して、日本の労働者の消費水準の低さ、またその賃金の低さ、それに比べて日本の独占資本の利潤がいかに莫大なものであるかということを申し上げたわけであります。おそらく来年の春になれば新しい賃上げの要求が出てくると思います。そういう場合には、労働大臣は石田君以上にりっぱな人であると私は思うし、新しい感覚を持った人であると思うし、私もずいぶん長い間つき合ってあなたのことはよく承知しておるけれ
ども、今言ったようなことを頭の中に入れて労働政策をやっていただきたい、こういうように
考えるのであります。
実はきょうは生計費の問題につきまして、なおこまかくいろいろ
質問したい、こら
考えておりましたが、権利放棄というわけではないけれ
ども、僕は一般論をやれということで、一般論として今言っておきましたが、さらにまた労働大出に対してゆっくり
質問する機会があると思うのであります。同僚議員がそれぞれ手ぐすねを引いて待っておりますから、明日は一日労働問題について社人会党が
質問することになっておりますので、私の
質問はきょうはこの
程度で一応保留しておきたいと思います。