○
八木(一)
委員 その点
大臣の非常に積極的なお取り組みに敬意を表したいと思います。これはぜひそうしていただきたいと思います。この前の
通常国会の
社会労働委員会において、そういう趣旨の附帯決議もついております。先ほど申し上げました
年金額の問題、年令の問題、それから
社会保障的に全部変える問題、すべてについて、大綱的な附帯決議がついておりますし、具体的な附帯決議もついております。附帯決議より以上に、
政府がもっと積極的にいろんなことに取り組んでいただくことを非常に
期待を申し上げているわけであります。
それでは次に通算の問題について、大綱的なことだけちょっと御質問いたします。
これについて、
厚生大臣は十分御
検討だと思いまするけれ
ども、この通算
制度についてはいろいろの経緯がございます。その経緯は、
社会保障制度審議会に、
政府の方から、この問題に関して諮問をされたわけであります。諮問をされたときに、いろいろな案が出ました。まず
年金持ち分移管方式というものと、もう
一つは二重加入方式、そういうものが最初
論議をされたわけであります。二重加入方式の中で内ばき二重加入方式というものが
論議されましたとき、それは
国民年金と厚生
年金だけの通算の方式としては非常に楽だけれ
ども、公共企業体の共済
年金と三
段階の通算のときには会計がぐしゃぐしゃになってしまうということで、内ばき二重加入方式というものは全部
反対にあいましてとられませんでした。それから外ばき二重方式というのは、
年金を全部下に備えつけて、その上に被用者
年金というものを乗っけるという方式でありますが、これは相当に賛成者が多かったわけでございます。
国民年金を労働者にも全部適用するということで、国庫支出を顧慮された方々が消極的でありまして、そのときには採択にならなかったわけでありますが、それについては、相当
検討をされる要があろうと思う方式であります。
最後に持ち分移管方式ということがいろいろ
論議をされました。持ち分というのは、
年金に入って、途中でやめるときに、自分の持ち分がある。それを次の
年金制度に持っていって、いろいろの計算をして通算をすればいいという方式であります。ところがそれについては、同じような形式でございまするけれ
ども、非常に
意見がかけ離れたわけです。そのとき、
社会保障制度審議会の、現在故人になられましたけれ
ども、第一生命のアクチュアリー出身の重役で、日経連の代表で出てこられた斎藤という
委員は、いろいろの
制度の脱退一時金をそのまま持っていけばよろしいという
考え方でありました。私はその
反対論でありますが、あと二、三の人も、それではいけない、完全な持ち分を移管しなければならないという
意見でした。今井
一男君という
人たちは、そのまん中辺の
意見なんです。完全な持ち分移管というのはどういう
考え方かというと、御承知の通り、厚生
年金制度を例にとりますと、厚生
年金で二十年
保険料を支払うと
年金をもらう要件ができるわけです。ところが十九年でその職をやめ、その
年金制度を離れると、もらう
金額ががくんと減るわけです。脱退一時金はもらえるけれ
ども、非常に少ない
金額になるわけです。その
金額の計算は、大体において二十年の場合、厚生
年金の場合には、自分が払った
保険料と、事業主の払った
保険料と、
国庫負担一割五分の分とが全部計算されて、それが
年金額の計算の基礎になっている。ですから、三つのものが計算されているわけです。ところが、十九年の人は、事業主分を取り去られ、
国庫負担の
期待分を取り去られて、自分の
保険料を基礎にして計算されている。その人の
保険料を
年金の予定率である五分五厘の
複利計算をし、そうして同じ階層の中で、早くある人がなくなって
遺族に
年金が支給された、早く障害
年金が支給された分を数字的に計算をして差し引かれたその残りをもらうというような計算になっているわけであります。ですから、二十年では相当の
金額でも、十九年ではぐっと減る。三分の一以下に減る。それが根本的な間違いでございまして、間違いだと断定しても差しつかえない。十九年なり十三年なり七年で職場をやめなければならない人は、何らかの
意味で不幸な人だ。からだの都合、家庭の事情、家族の事情、いろいろな事情で職場をやめなければならない。だれでも、なれた
経験の深い自分の職場で続けていった方が総体的にはしあわせであります。それなのにかかわらず、そういうようないろいろな事情、それからどうしても上司と気がくわない、いじめられるというようなことでやめるということ、こういうことでやめる人は不幸な人であるにかかわらず、その不幸な人が将来を保障される
年金額が断層でぐっと減るという
状態で、今の
社会保険制度の間違った
組み立てがされているわけですが、それではならないのではないか。特に
年金制度の通算につきましては、それを
考えなければならない。
ほんとうに概括的にいえば、二十年の
金額に対して二十分の十九くらいの
金額は保証された原資を持って、その厚生
年金から
国民年金に移っていって、厚生
年金が十九年であれば、厚生
年金の
保険料は高いから、
国民年金ではすでに二十五年くらい払った、あるいは三十年くらい払った計算になっている。あと十年払えば四十年満額払ったことになって三千五百円もらえるというような完全な持ち分を持った移管方式をとるべきだという
意見が、私もそうでございましたが、相当強力にあったわけです。そういうことで
論議をしたが。しかしながら役所側で事務的に非常に厳重に持ち分移管方式ではたえられないという
考え方があった。
一つ一つその原資を計算しなければならない――これは役所側が非常に怠慢であります。そういうことで宮尾君という
委員の方から便法がとられました。それは凍結方式という名前で本人は言われましたけれ
ども、今役所の方では、じゅずつなぎ方式という名前で呼んでおります。それは各
年金制度で持ち分をずっと凍結しておいて、そうしてその年令
制度が、五十五才あるいは六十才あるいは六十五才というような支払い時期に達したときに、その減額した
年金をその
年金制度から払う、こっちの
年金制度からもこっちに払ってもらう、そうしてその個人の財布の中で通算するという方式であります。それをじゅずつなぎ方式といわれているわけであります。その方式は、
一つの点は、財布の中で通算する。これは非常に役所の怠慢であります。もらう個人からみれば、これが五十五才や六十才や六十五才でごちゃごちゃにもらうのでは生活の設計が立ちません。まとめて同じ時期にもらわなければならぬ。三回ももらいに行くのではわけがわからなくなる。しょっちゅう金がもらえるからむだ使いするようになる。そういうことで、完全にまとめた
年金をすべきであるのに、役所がめんどうくさがって、めんどうくさい方を
国民に押しつけたというような方式は間違いだと思う。早晩それは解決して、
ほんとうに役所の方の計算で、
国民の方はそういうめんどくさい思いをしないで、はっきりした老後の生活の
計画が立つという方向に指導してもらわなければならない。それは
一つの方式であります。そういう点について御
検討願わなければならないと思いますが、それ以上に問題は、実質の中の
金額です。そのじゅずつなぎ方式の方針をとりましたときには、われわれが賛成をいたしましたときには、方式は縦横の問題である。その原資が、
ほんとうに十九年の人は二十年に対して二十分の十九ぐらいの
金額が保証された、従って事業主の分、
国庫負担の
期待分、それを保証された
金額が凍結された方式であるかどうかということについて、この提案者である宮尾
委員にただしたわけでありますが、その
意味だという答えがありました。これは
制度審議会の三年前の九月の速記録に載っているわけであります。そういうことで方針が確定をして、それならば賛成をしよう。縦横、財布の中の通算であろうとも、途中脱退者の利益がそれだけ完全に保証されるのならば、形式的な点は譲ってもよろしいということで、それが答申をされ、それがもとになって
厚生省がいろいろな案を作られたわけであります。
厚生省はそれをもとに作られていたところ、厚生
年金保険と
国民年金の間では、その方針の線にほとんど十分に近い案を作ってこられました。ところがかなり
程度の高い方のことについては、そういう
状態にないわけであります。先日は数字を持っておりましたが、きょうは用意して参りませんでしたが、公共企業体の共済
年金の、たとえば二十年入っていた人が、今数字は正確に覚えておりませんが、大体近いような概括的な数字を申し上げます。約十五万円もらえる場合に、十九年間公共企業体にいて、一年間厚生
年金に移った。同じ二十年間の期間だ。そのときには、これは一年の違いで半分以下の
金額になるわけです。それから
国民年金に通算する場合は、
国民年金は二十五年以上ないとくれない
条件になりますから、十九年と
国民年金の六年と通算する。合計二十五年だ。このときも半分以下です。そのように十九年の人はむちっくちゃに損になっておる。それで
政府の方は、小山さんなんか非常に熱心に各省との間でこれに取り組まれまして、最近の
国民年金と厚生
年金についてやや理想に近いものを作られた、その
努力については敬意を表してもけっこうであります。しかしながら少し高い
程度の共済
年金であろうとも、これもやはりそれほどとびきり金持ちではありません。働いて暮らして、その
年金を当てにして将来の生活設計を立てている。その人が一年違いでがくんと減る。しかもほかの
年金に通算されて、その一年の迷いですら半分以下という不合理なことは、全く不十分な通算
制度です。ないよりはましとおっしゃるかもしれません。今通算
制度ができなければ、同じ
程度の脱退一時金しかもらえないから、それは通算
制度がないよりましと言えるかもしれませんけれ
ども、そんなものは一年半も熱心に取り組みをされた通算
制度の完全な形とは言えないわけであります。一番底の点において完全な形はかなり
認めてもいいと思います。底は大半だから、その点は一番重点であることは
認めるけれ
ども、その上の方のカーブの修正があまりにも少ないという点が、通算
制度についての欠点の一番の中心点だろうと思う。そのほかいろいろな点については、同僚の各位から質問の御準備がありまするから、まだまだ欠点がございまするが、この通算
制度についてはそのぐらいにとどめておきたいと思いますが、こういうことについてこのカーブを大幅に――大幅にということは、とにかく完全な形にできるだけ近く急速に変えられる、間違った点を補完されるという必要があろう、この点についての
厚生大臣のお
考えを伺いたいと思います。