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1961-10-03 第39回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月三日(火曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 中野  四郎君    理事 大石 武一君 理事 齋藤 邦吉君    理事 永山 忠則君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       安藤  覺君    井村 重雄君       伊藤宗一郎君    浦野 幸男君       小川 半次君    加藤鐐五郎君       藏内 修治君    佐伯 宗義君       澁谷 直藏君    中山 マサ君       八田 貞義君    古川 丈吉君       松山千惠子君    渡邊 良夫君       淺沼 享子君    大原  享君       河野  正君    五島 虎雄君       田邊  誠君    中村 英夫君       吉村 吉雄君    井堀 繁雄君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         厚生政務次官  森田重次郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 高田 浩運君         厚生技官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚生事務官         (環境衛生局         長)      五十嵐義明君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (薬務局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (社会局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (保険局長)  森本  潔君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 十月三日  委員浦野幸男君及び古川丈吉辞任につき、そ  の補欠として南條徳男君及び一萬田尚登君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員萬田尚登君及び南條徳男辞任につき、  その補欠として古川丈吉君及び浦野幸男君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  厚生大臣より発言申し出があります。これを許します。厚生大臣灘尾弘吉君。
  3. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、先般の内閣改造にあたりまして厚生大臣の重責をになうことに相なりましたが、厚生行政について御造詣の深い各位の御協力を得まして、その責めを果たして参りたいと存じますので、何分よろしくお願い申し上げたいと思います。  この機会厚生省所管行政に関しまして所信の一端を申し述べたいと存じます。  あらためて申し上げるまでもなく、社会保障制度充実強化をはかり、国民の生活安定と福祉の向上をはかりますことは、現内閣の最も重きを置く施策一つといたしておるところでありまして、厚生省といたしましては、今日この意味においても特に重要な役割をになっておるのであります。  私はまことに微力ではありますが、全力を傾けまして、社会保障制度整備充実厚生行政各般施策推進に努めて参りたいと考えるものであります。  さて本年四月、拠出年令制度の発足による国民年金全面実施、また国民健康保険全面実施によりまして、いわゆる国民年金国民保険の体制も整い厚生行政も一応の整備を見た状況でありますが、しかしながら厚生行政個々施策について見ますと、特にその内容を充実し、その水準を上げていく必要のあるもの、あるいは相互にその調整を必要とするものも少なくないことを痛感する次第であります。すなわち、国民各階層を通じ、また都市、農村等を通じ、ひとしく保険福祉のサービスが適切に行なわれるよう各種の施策充実強化をはかり、肉づけを行なうことが緊要でありますので、その推進に大いに力を尽くしたい所存であります。国民年金法の一部改正法案公的年金通算制度創設のための法案児童扶養手当法案等は、いずれもこのような方針に基づきその一環として提案されたものでありますが、今国会においてぜひともこれら法案が成立いたしますことを心から期待するものであります。  次に診療報酬等社会保険医療に関する諸問題につきましては、私も就任以来鋭意これが解決努力して参ってきているところでありますが、先月中旬から開催いたしました関係者による懇談会において一応今後の進むべき方向も示唆されましたので、その線に沿い各方面協力も得て、問題の円満解決施策推進をはかるべくさらに努力をいたしたいと存じております。  その他低所得者福祉対策環境衛生対策等につきましても、その充実強化に努める考えでありまして、今回はとりあえず特に緊急を要します生活保護等につきその基準引き上げをはかるべく関係補正予算案を提案したのでありますが、その他につきましても、今後鋭意その方策につき検討を続けて参りたいと存じます。  なお、六月集中豪雨及び今次の第二室戸台風による災害対策につきましては、従来における対策等をも勘案いたしまして、適切な措置を講じたい考えであります。  以上、当面の問題につきまして申し述べた次第でありますが、ここに重ねて皆様方の御協力を心からお願い申し上げる次第でございます。(拍手
  4. 中野四郎

    中野委員長 次に、厚生政務次官より発言申し出がありますので、これを許します。厚生政務次官森田重次郎君。
  5. 森田重次郎

    森田政府委員 今回、はからずも厚生政務次官責めを負うことになりました。はなはだ不敏の者であり、かつふなれの者でございまして、はたしてその職責を全うすることができるかどうかにいささか考えさせられるものがございますが、皆様方の御鞭撻、御指導、御協力を仰ぎまして、大臣補佐役としての役割を何とか果たしたいと考えております。どうか今後ともよろしくお願いいたします。(拍手
  6. 中野四郎

    中野委員長 引き続き質疑を行ないます。  発言の通告がありまするので、これをお許しいたします。滝井義高君。
  7. 滝井義高

    滝井委員 今年の七月の内閣改造で、人格、識見ともに高い灘尾森田の両大臣並びに政務次官をわれわれの委員会にお迎えしたことは、非常に社会保障前進のために喜ばしいことだと思います。どうか一つ今後の厚生行政推進全力を傾注せられるように、心から冒頭にお祈りを申し上げたいと思います。  きょうは大臣就任後の初めての所信表明に対する御質問でございますが、当面する二、三の問題について遠慮なく質問をさしていただきますから、一つ忌憚なく所信を御表明願いたいと思います。それぞれ分担をして質問をいたしますが、私は主として医療費の問題を中心に御質問を申し上げたいと思います。  特に医療費の問題に入る前にお伺いをいたしたいのは、池田内閣所得倍増政策お作りになったわけです。これが今、日本経済をどういう工合に持っていくか大論争を起こしておる中心の課題でございますが、同町にその所得倍増政策にきびすを接して、さき厚生省社会保障長期計画と申しますか、厚生行政長期計画発表されたわけです。同時にそれに続いて経済企画庁が十年後の国民生活というのをお出しになったのです。海外に目を向けてみますと、時を同じくしてソビエトにおいても共産党が新綱領草案というものを発表をして、そして十年から二十年以内においては住宅も医療交通機関も無料になる、税金もなくなるという共産主義社会の理想の画を描いてみせておるわけです。ラオスとかベルリンとかキューバというような、こういう国際情勢の危機の中で、とにかく資本主義の国であれ、共産主義の国であれ、こういうものを出しておるということは、何かそこに意味深長なものがあると思います。その意味深長なものの中に、私たち資本主義の国と社会主義の国に、その計画の中に人間の共通したものが流れておるのを見出すことができる。それは人間というものが、やはりみずからの幸福を追求するという点については、これは一致しているんだという感じがするわけです。そこでこういうような国内、情勢の中で厚生省経済企画庁がわれわれ国民生活に密着をする二つ長期計画をお出しになっておるのですが、この二つ計画というものは両省で十分お話し合いになって、そして経済企画庁計画厚生省計画、そしてその根底に流れる池田内閣経済政策一大支柱である所得倍増計画、これらの三つのものが十分有機的な連携のもとに作られたものだと考えておるのですが、そういう三者の間には十分連携をとってお作りになったものなんでしょうかどうか、この点まず一つ御答弁願いたいと思います。
  8. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 さき厚生省発表いたしました厚生行政長期計画と申しますか、これについてのお尋ねでございますが、との長期計画は申すまでもなく一つ試案として発表いたしたものでございますが、まだこれが結論だというふうに固まったものではございません。一応の試案として発表いたしたように私も聞いておるのであります。私も、この長期計画という構想につきましては、ぜひ何か今後の行政の目安を作っていく、また計画的に物事を進めていくということは大事なことと考えますので、この長期計画につきましては、十分各方面意見も聞き、研究もいたしまして、なるべくこれを固めて参りたい所存でございますが、今出しておりますものは、当時から申しておりますように、一つ試案としてごらんに入れておるという程度のものと御承知を願いたいと思うのでございます。私もまじめにこの計画試案につきまして検討を加えて、将来一そう整ったものとして参りたい、こういう気持でおります。  それから、企画庁発表いたしました十年後の国民生活というような問題につきましては、ある程度の連綿はあったと存じますけれども、しかし、あの企画庁発表せられたものは企画庁として独自の立場で発表せられたものと私は承知いたしておるのであります。
  9. 滝井義高

    滝井委員 厚生省の御発表になりました厚生行政長期計画というのは試案である、各方面意見を聞いて灘尾厚生大臣研究をしたいそうでございますが、そうしますと、政府所得倍増計画との関係ですけれども政府所得倍増計画というのは、明らかに最近の情勢ではこれは非常に違ってきつつあるのですが、その高度成長の基本的な考え方は変える必要はないということは、池田さん依然として始終言われておるわけです。そうしますと、この国民所得に対して振替所得いわゆる社会保障に回す分が七%前後、すなわち十年後には一兆五千億程度になるというあの数字は幾分違うにしても、その基本的な考え方は同じになってくると思うのです。そうすると、その基本的な考え方に符節を合わせて厚生省古井厚生大臣時代に御発表になりましたこの厚生行政長期計画というものは、その池田さんの所得倍増政策における社会保障長期計画をさらに上回っておる。二千八百億程度上回っておるのです。これは、ベースのとり方を、ILOのベース社会保障費にとるか、あるいはいわゆる所得倍増ベースにとるかによっていろいろ違うようでございますが、池田さんの所得倍増ベースでいっても、振替支出で二千八百億、振替所得で二千六百三十億程度多いのですね。二千八百億というと年間二百八十億、これは相当な額なんですがね。こういうように、厚生省が単に絵にかいたもちの試案として御発表になっただけで、池田内閣経済政策支柱である長期倍増計画とは縁もゆかりもないものだとは言わせられないと思うのです。そうしますと、単なる試案だといっても、少なくとも責任ある大臣天下に向かって発表をして、そうして、医療で例をとってみれば、今の六割八分の給付を十年後には八割以上にする、こうおっしゃっているわけです。今六割八分が八割程度になるのですから、大した増加ではないような感じがするのですけれども、しかしこれは財政支出にしたら相当なものになります。十ヵ年後のはるかかなたのことを私はそうここで問題にする必要はない。問題にするのは、十ヵ年の計画をお立てになって、少なくとも池田さんが日本経済は三ヵ年で平均九%の成長をやるんだ、こうおっしゃったわけですから、この三ヵ年、九%の成長をやる、少なくともこれから三ヵ年の長期計画における年次計画一体どうなるんだ、このくらいははっきりしないと、来年度の予算要求も、それは風の間に間にゆれて、行き当たりばったりの見通しのない予算になるわけです。当然所得倍増計画というものの柱、そしてそれに見合ってあなた方が試案としてお出しになった厚生行政長期計画がある。そうするとその中で、倍増計画池田さんが三ヵ年と区切ってお出しになっているのだから、あなた方もその三ヵ年のうちにおける計画はどうなるんだ、これは少なくとも試案の中ではある程度肉づけをされて、非常に新鮮な血液が潤沢にかよわなくても、まあまあ細々ながらかようくらいの形は、私たちに見せてくれなければいかぬと思うのです。それなくして来年度の予算要求というものは私はあり得ないと思うのですがね。この点一体厚生大臣は、今は補正予算中心にした大ざっぱな所信をお述べになりましたけれども、すでに厚生省省議決定をして予算要求大蔵省にお出しになっておるはずだし、大蔵省もそろそろ査定にかかるし、内閣経済見通し予算編成基本方針をここ一、二ヵ月の間にお作りになる段階ですから、当然厚生省としてはこの機会に、池田内閣所得倍増政策の一番大事なこの三ヵ年の第二年度にあたる来年と再来年というものは、どういう基本的な考え方で、試案である長期厚生行政計画にマッチした二年分の構想をお持ちなのか、これは当然私は、大臣就任と同時に検討してお持ちになっていなければならない一番の問題点だと思うのです。これをこの機会にお示し願いたい。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 長期計画を策案ずるのにつきましては、もとより池田内閣のいわゆる所得倍増計画というものを頭に置いて、そして策案したことは間違いないことだと思います。ただいま申しましたように、このいわゆる長期計画につきましては、まだ固まったものではございません。私どもとしましてはなおよく検討いたしまして、何とか固まったものにしたいというつもりでよく検討を続けておるところでございますから、それとこの次の予算とがどうなっておるかというふうなことにつきましては、私ははっきりしたことは申し上げるわけには参らぬと思うのであります。ただわれわれといたしましては、経済成長所得倍増、従って生ずる財政収入増、こういうふうなものにつきましてはできるだけ社会保障方面にたくさん金が回るように懸命の努力をしなければならない、そういうつもりで予算にも当たっておるようなわけでございます。さように御了承願いたいと思います。
  11. 滝井義高

    滝井委員 努力はよくわかるのです。しかし努力をするからにはお互いに努力目標というものがなくちゃならぬと思うのです。社会党は、なるほど計画経済です。しかし保守党の文章を見ても経済計画というものは絶えずお作りになっておる。計画経済経済計画か、社会党と逆にしておるだけです。そうしますと、努力目標というものがなくて、ただ行き当たりばったりのその場その場限りのことでは、厚生行政というものはいつも文部行政と同じように、灘尾さんかつて文部大臣で御経験になった通り、いつもこみやられる、われわれのいなかの言葉でこみやられる、すみっこに追いやられる、こういう形になるわけです。これは、計画があることによって、それに向かって努力する。エマーソンじゃないけれども、恋を欲するならば恋に向かって努力しなければいかぬ、金がほしいならば金に向かって努力しなければならない。厚生行政前進をやろうとするならば、やはりがちっとした計画を立てて、それに向かってすべての人が努力するというところに初めて大きな成果が上がると思うのです。御存じの通りことしは四千五百億をこえる税の自然増があるのですから、今この自然増をめぐって、社会保障に持っていくのか、減税に持っていくのか、公共投資に持っていくのか、景気のたな上げ資金をやるのか、大きな論争が巻き起こっております。このときに一体厚生省日本経済現状から見て、これは当然相当のものを社会保障に持っていかなければならぬのだというふうに確信して、少なくとも日本の現在の段階における社会保障政策の生産的な役割を認識しておるならば、私はそういう主張が出てこなければならぬと思う。ところが何も厚生省にそういう計画がなくて、ただ努力します努力しますだけでは、われわれも協力のしようがないし、国民もはるかかなたの十年の像は描いてくれたけれども一体十年先よりかことしと来年と再来年はどうなるんでしょう、これがさっぱりわからぬじゃ話にならないと思うんですね。そこでそこらあたりを、これは私が何回もここで大臣が新しく就任するたびごとに主張しておる。就任した大臣は、努力します、作りますと言ってきた。ようやく古井さんがまあ形を作ったわけです。作ったが、今度は灘尾さんになると、それは試案でまだ固まったものでもなく、今から研究する、こういうことになりますと、私たちはある程度固まったものだから発表されたんだと思っておったんだが、そうでもないということになると、これはまた問題だと思うんですね。どうですかね、あなたとしては来年におけるこれだけ税の自然増がある、しかも自然増というものをどう使うかということが大きな経済政策論争になっておる。その場合に厚生大百としては、一体四千五百億のこの税の自然増に対してどのような態度と方針をもって臨まれようとするのか。
  12. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 税の自然増をどういうふうに配分していくかということは、これは政府にとりまして非常に大きな問題でございます。別にまだ結論が出ておるわけでもございません。これからの問題だと私は思っております。その場合におきまして、少なくとも厚生大臣といたしましては、この税の自然増について相当大幅に社会保障方面に振り向けなければならぬという考えのもとに、部内においてできるだけの努力はいたしたいと思っております。
  13. 滝井義高

    滝井委員 その大幅に社会保障に振り向けるということはわかりますが、社会保障に大幅に振り向けた場合に、一体日本経済というものに刺激の過熱になるのかならぬのか、極度に景気を刺激することになるのかならないのか。単に大幅に振り向けるというだけでなく、やはり必然的に大幅に振り向けなければならない理論的な根拠というものを、私は明らかにしてもらわなければいかぬと思う。そうでないと、経済の達者な池田さんの前にいけばあなたはやられてしまうわけです。どうしてもこれは日本経済現状からして、四千五百億の中で少なくとも千五百億なら千五百億、大幅に三分の一ぐらいは社会保障に持ってきてもらわなければ困るなら困るという、こういうことをはっきりしておかなければならぬと思うのです。私はここだと思うのです。日本経済全体として、こういうむずかしい景気状態になったときに、この景気の調節に一体どの程度社会保障というものが役立つのか。そして池田内閣所得倍増政策の間違いのために貧富の格差というものが縮められなければならなかったのがますます拡大をしておるというときに、社会保障が底上げをする役割をやるわけなんですが、その場合にそれが一体景気にどういう工合に影響を及ぼしてくるのか。こういうような問題が、やはりここで解明されなければならぬ。そして理論的な必然としては、四千五百億のうちで三分の一程度は持ってきても景気は刺激しない、それが池田内閣福祉国家への道に通ずるのだということを、今後の厚生大臣としてはわれわれの前に、国民の前に明らかにする必要があると思うんですよ。ただ社会保障を大幅に努力しますと言うだけでは、経済専門家である池田さんにやられてしまう、ごまかされる。今までの歴代の大臣はそれでごまかされてきた。中山さんは、ごらんなさい、選挙のときには社会保障減税公共投資とこう並んでおった。キャッチ・フレーズで一番は社会保障だった。それから減税で、公共投資だった。ところが選挙が始まったらいつの間にか社会保障が一番ビリに持っていかれて、公共投資減税社会保障になった。そして選挙が終わったら中山さんはぽんと首を切られた。だから中山さんは何と言ったかというと、私を池田内閣アサガオの花にしないで下さい。アサガオの花は朝ぱっと開くけれども夕方しぼんでしまう。そうして社会保障は、ごらんなさい、ほとんど何も前進しなかった。去年の税の自然増、いわゆる自由に使い得る財源の中における社会保障費の占める比率は、ごらんになる通りことしは昨年より減ってきた、そういう状態になったのです。私は、こういうように税の自然増の多いときには、理論的なバック・ボーンを持って要求してもらわなければならぬと思う。そういう点については、大臣が弱いというより厚生省幕僚諸君、高級の局長諸君経済に弱いのです。これは当然経済的に見て社会保障が必要だという理論的なバックをあなたに与えて、そしてあなたが総理なり大蔵大臣とやり合う、こういう形が今までないですね。だからいつも当てがい扶持の残り財源です。各省がいいところをとってしまって、そのあとに厚生省に来る、こういう形になってきています。だから当初の計画より絶えずおくれてきている。それは何も医療年金の問題だけでなく、尾村さんの担当する上下水道全部そういう形になってきている。だから十ヵ年計画を何回立てても、あるいは五ヵ年計画を何回やりかえても、目標を達成したためしがない。だからそういう点でこの際、いよいよこれから景気見通しをつけて経済成長数字を出す段階で、あなたの厚生行政としては、当然ことしはこれだけのものを絶対自然増財源の中からもらわなければならぬというものは、今から天下に公表する。これは先制攻撃です。先に発表しておけば、これはあなたにみんな加勢するのです。灘尾さんがあれだけ言っているのだから、みんな加勢して、これだけもらわなければならぬ、こういうことになる。その点ここで少しは大ぶろしきを広げてもけっこうですから、鮮明にしていただきたいと思う。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 滝井さんの御質問は、私に対しまする非常な激励、のお言葉とありがたく拝聴いたします。今度の自然増をどう分けるかというような問題につきましては、先ほど申し上げましたように、まだこれからの問題でございます。せっかく激励をいただきましたので、十分勉強いたしまして、池田総理に負けないようにやって参りたい、かように考えておる次第であります。ただ計画的にことしはこれだけ要るんだということを申し上げるのには、まだ私どもの方の研究不足だし、準備も不足じゃないかと思いますが、それぞれの施策につきまして、やはり重要なもの、緊急なものからやっていかなければならぬということは、これは当然なことだと私は思います。そういう意味合いにおきまして、私としましては自分の力のあらん限りを尽くして社会保障の方にとってくるというつもりでやるわけでございますので、この上ながら御鞭撻をお願いしたいと思うのでございます。  昨年の予算とことしの予算を比べてみますと、予算の比較というものが役に立つかどうかは問題でありますけれども、しかし少なくとも各省一般会計予算の中では厚生省予算の伸びが一番よかった。来年度におきましても、これに負けないように私は努力いたしたいと思います。かように考えておりますが、個々施策につきましては、やはり私が緊急と考え大事と考えることに重点を置いて、そしてできるだけ国民皆様方のためになるようにやって参りたい、こういう考え方でおりますので、御了承願いたいと思います。
  15. 滝井義高

    滝井委員 努力をせられることはけっこうです。しかしやはり目標をはっきりしてもらいたいと私は思うのですが、なかなか目標ははっきりできないようでございますから、少し具体的に入ってみたいと思います。  現在われわれが厚生行政長期計画を立てる場合に、何といっても一番問題は、医療保障に限って言えば国民健康保険です。さき厚生省は当委員会で、昨年十一月の選挙の前でございましたが、医療給付を七割にする、そのためには五カ年計画厚生省は立てておりますということをここで保険局から発表があった。われわれは当然この五カ年計画をおやりになるだろうと期待をしておったのです。その当時は五カ年計画をやるためには最終年度でどのくらいの国の負担が要るか。八百寒くらい要る。ところがいつの間にか精神病と結核の世帯主七割給付ということになってしまった。そして五カ年計画一体どうしたのだ。ここで堂々とやりますということを答弁した。ところがいつの間にか、そんなものは言ったか言わないかわからないぐらいに消えうせてしまった。国民健康保険というのは当然零細な中小企業あるいは農民を対象にするものです。しかも日本所得倍増計画で最も足元を洗われるのはこれらの層です。従ってこれらの受ける経済変動というものは非常に激しい。こういう経済変動の激しい国民を対象にする国民健康保険というものは、よほど周密な計画を立てて、経済成長に伴って一体どの程度農民が依存していくのか、どの程度中小企業が増加しあるいはなくなっていくかという綿密な計算の上に立って予算編成なり給付費の増加の計画は立てられなければならぬわけです。おそらく保険当局はそういうことを考慮してここで答弁したと思う。当時保険局の次長が私に答弁したのです。ところがその後にいつの間にか精神、結核の七割給付だけに変わってしまった。精神、結核七割給付にしたら幾ら金が要るか、三億五、六千万しか要らない。そういうちゃちなものに変わってしまった。そうして、社会保障はやりますと今でも池田さんはばかの何とかみたいに言っている。けれども朝顔の何とかでしぼんでしまった。だから一体この国民健康保険灘尾さんとしては今後どうされていくのかということです。これは私が御説明するまでもなく、長い間地方行政委員をやられておった灘尾さんですから御存じですけれども、最近自治省は何と言っているかというと、だんだん税の自然増が地方自治体でも国でも出てくる、だからみな減税が行なわれているのに、国民健康保険税だけ毎年々々増税だ、これは欠陥がある、しかも一般会計から国保の特別会計につぎ込まなければならぬという事態は矛盾をしている、これは何とかしなければいかぬということを言われ始めている。従って国民健康保険長期計画というものをいつの間にか撤回してしまった厚生省としては、国民健康保険については何か長期のお考えでもお持ちなのかどうか。それとも大蔵省とやり合って、負けたら負けたとき、勝ったら勝ったときで、出たとこ勝負で風の間に間に自然のままにお向きになるのか。そこらあたりを一つ……。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国民健康保険につきまして五カ年計画というものがあったのかなかったのかというようなことは、実は私つまびらかにいたしておらぬわけであります。ただ国民健康保険は実は頭の痛い問題であります。私の任務といたしましても、この国民健康保険というものをいかにして育成し、いかにして強化していくかということが非常に大きな仕事ではなかろうかと思っておるような次第であります。率直に申し上げまして現状国民健康保険というものに私ども満足しておるわけではございません。またこのままでいっては国民健康保険というものもうまく発展しないのであります。そこで政府としてこの問題については相当力を入れなければならぬということはよくわかっております。今後の問題といたしましては、一面において給付内容の改善をはかりますとか、あるいは療養の給付をするときの自己負担を減らしていきますとかというようなことも考えていかなければなりますまい。また同時に国民健康保険財政というものに対してもっともっと政府が援助しなければならないということは明らかだろうと思います。ただそれは一朝一夕にそう簡単に片づく問題とは思いませんけれども、その方向に向かってはあくまで努力して参らなければならぬ。療養給付率に対する国庫負担の問題につきましても皆さん方に非常に御熱心な御意見があるということもよく承知いたしております。同時にまた七割給付とか、五割給付とかいうような問題につきまして考えさせられるものがたくさんあるということもよく承知いたしておりますが、私はこれにつきましては逐次問題の解決をはかって参りたいという考え方でもって、何とかして国民保険というものを、ほんとうに国民保険という今日、ある意味においては一番大事な中心をなす保険だというふうにも考えられますので、これが育成強化ということについてはできるだけの努力はいたして参りたいと考えております。
  17. 滝井義高

    滝井委員 灘尾さんはなられたばかりで、きわめて抽象的に育成強化をされることを言われたのですが、もう少し政治は具体的でなければいかぬと思うのです。従ってもう少し具体的に一つ答えていただきたいと思うのですが、それは御存じの通り、今回医療費が一二・五%の引き上げが行なわれたわけです。当初国会で政府当局が説明をしたのは、一割の引き上げしか予算が組まれていないわけです。問題は一割の引き上げから話を進めていくことになるわけですが、当時古井厚生大臣は、現在の厚生省の持っておる資料によって医療費の改定をするとすれば一割が適正妥当であるという言明を私にされたわけです。いつの間にか一二・五%になったわけですが、まあ神様でないからそういう間違いがあるかと思います。とにかく一割がいつの間にか一割二分五厘になったわけです。それはあとで問題にするとして、とにかく一割の引き上げになりました。一割の引き上げになりますと、これはもう保険局が大臣に御説明になっておると思いますが、患者の窓口負担の増が四十六億、それから保険料の引き上げが九億五千七百七十万円程度、約九億六千万円、五十五億増加するわけです。そのほかに今度二分五厘上がっておるわけです。そうするとこれで幾らになるのか、まだ資料をもらっておらぬからわかりませんが、とにかくプラス・アルファがついたわけです。そのほかに国民健康保険医療内容を向上することで、ことしの四月一日から皆保険になって健康保険に準ずる形になってきたのですから、当然医療内容の向上の分がそれに加わってくるわけです。たとえば往診を保険の給付の対象にするとか、入院を対象にするとか、抗生物質を対象にするとか、歯科の補綴を対象にするという、こういうものが出てきておりますから、それが加わるわけであります。そうしますと、保険料の全国の平均は昨年が三千七百円だったのが、今年は四千百二十八円になったという説明があったわけです。三千七百円のものが四千百二十八円程度に三、四百円上がった上に、また医療費の引き上げの五十五億が積み重なってくるわけです。そしてその上に今度は二分五厘の積み上げがやってくるわけです。一割のときでも五十五億ですから、それに二分五厘のものが積み上がってくる、こういう形になりますとどういう事態になるかというと、結局国民健康保険保険料の負担が限界にきた、そしてその同じ被保険者は今度はことしの四月からの国民年金保険料を払うわけですから、保険料は医療内容で増加をする、医療費の引き上げで上がる、同じ人たちが今度は年金保険料を払う、そしてなお足らないと一般会計から一年間三十四、五億国保の特別会計につぎ込んでおる、こういうように、もはや国民健康保険は負担の加重が二重、三重に行なわれておるわけです。こういう中で一体この国保の危機をどう打開するかということを社会保障を第一に掲げておる保守党の政権が国民見通しを与えないという、私はこんな貧弱な政治はないと思うのです。そこで私はそういう点をもう少し政府はこの際明らかにしてもらう必要がある。これについては今度の補正予算においては何もこたえていない。だからこういう重大な問題を、全国の保険者が大会を開かなければ何もしないということでは私は問題だと思うのです。だからこの点について一体大臣としてはどう具体的に処理される方針なのか、きわめて具体的に一つお答え願いたいと思います。
  18. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 まことに私はごもっともな御質問考えるのであります。国民保険につきましては先ほど申しましたように、この基盤を確立する、強化するということが大きな課題であるということは申すまでもないことでございます。そうするのにはどうしたらよろしいかということが、私どもとしまして真剣に考究しなければならぬ問題でございます。なかなかこれに対する結論も容易に出ないというふうに思うのでございますが、ただわれわれといたしましてはさしあたり、一面においては療養給付に対する国庫負担率をもっと増さなければならないということを考えております。一面においては従来五割負担であったものが今回一部の病気につきまして七割負担ということになりましたが、そういう点についてはもっと負担率を上げなくちゃならない、かようなことを考えておるわけでありまして、来年度の予算におきましても、その点につきましてはある程度の引き上げをやりますためにせっかく検討をいたしておるところでございます。  今回の医療費の問題につきましては、通常予算におきまして一割増をお認め願ったわけでありますが、去る七月の医療協議会におきまして出ました答申の結果は、一〇%のところが一二%五くらいのところになっている。これにつきましては、ある程度予算の補正を必要とするものと私も考えるのであります。そのほか、現に今中央医療協に諮問をいたしておるわけでございますが、その諮問の結果どういう答申が出ますか、まだはっきり申し上げる段階ではないわけでございますが、あるいはこれによってまた予算の補正を必要とするというようなものが出てくるのではないかという私は期待をしておるわけでございます。そうなりますと、予算の補正をどうしてもしなければならぬ。実は私は、できることならこの臨時国会で予算の補正をお願いしたい、かようにも考えておりましたが、今申しましたように、前回の医療費の改定に加えて若干の改定を行ないたいと思っておりましたのが、結論を得ませんので、補正予算に計上することができなかったあわせて一つ、将来お願いいたしたい、かように考えている次第でございます。その際にも、私は、国民保険につきましては特に格段の配慮を必要とするというふうに考えております。従って、今回の医療費の引き上げに伴う引き上げにつきましては、国民保険につきましては、私は、少なくとも保険料とかいうふうな形における新しい負担はさせないようにいたしたい、こういうふうなつもりで財政措置について努力して参りたいと思うのであります。患者の負担がある程度増すであろうということは、これは想像せられるところでございますが、この問題は今後、従来五割といっておりましたものを七割にするとか八割にするとか、そういうような方式でもって漸次解決していかなければならぬのじゃなかろうか、かように考えておる次第であります。いずれにいたしましても、この診療費の引き上げによりまして国民保険の側に対しまして新たな負担はなるべくかけないということで財政当局とも話し合いをしていきたい、かように考えておる次第であります。
  19. 滝井義高

    滝井委員 これは保険局長でけっこうですが、一割の医療費の増のために要する総額は二百十七億だったわけですね。これが一二・五%に変わってきたわけです。その二・五%の増によって総医療費にどの程度の増加があるのか。そして、それはあとで一つ資料を出してもらいたいと思いますが、ここで御説明を願いたいのは、それによって具体的に、たとえば国民健康保険と健康保険に例をとって、国民健康保険では患者負担が一体幾ら増加することになるのか。それに対して国は一体幾ら措置をする考えなのか。現在国民健康保険については九十五億の医療費の引き上げの影響を一割で受けておったわけですね。その九十五億の中で国庫負担する分は、いわゆる法定分が二十三億、特別措置で十五億ですね。三十八億です。あとは全部患者、残りの五十五億は全部患者が負担をしているわけです。実質的に国が出した分は十五億円なんですよ。この実質的に十五億円お出しになったものに、一体今度の二分五厘引き上げの分は幾らその十五億に補正として加わってくる所存ですか。その二点について。
  20. 森本潔

    ○森本政府委員 一〇%引き上げに伴いますところの医療費の増は、先般前国会で申し上げました。今先生のお話の通りです。一〇%をこえます、すなわち二・五%分のこの医療費がどのくらい上がるのだという御質問でございます。これはなお詳細詰めねばなりませんが、およその概数として私たち持っております数字でございますが、各保険、それから生保その他の諸保といいますか、これらを含めまして大体八十五億程度医療費の増大になるのではないかと考えております。それから特に国保についてお話がございましたが、国保の医療費の増分は大体三十二億程度と思います。それからそれの内訳でございますが、処理の方法と申しますか、上がった分をどうするかということでございますが、御存じのように上がった半分の十六億程度は、これは患者負担という形で、五割負担でございますから、患者負担でございます。それから現行法上の二割五分というのがございます。これが三十二億ほどの二割五分でございますから、約八億程度はこれは法律上の国庫負担ということにお願いしたいと思っております。従いまして残りますのが約八億でございます。これがいわゆる保険料で処理すべき数字と思っております。これを全額いわゆる特別対策として見ますれば、八億見なければならぬ、こういう数字でございます。若干数字の変動があるかもしれませんが、一応ただいまの段階検討しております、腹づもりしております数字は今申しましたような数字でございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 そうすると大臣お聞きの通り、今回二分五厘予算よりか超過をした、医療費の引き上げをやったことによって、国保の患者はさらに十六億の患者窓口負担、八億の保険料の引き上げ、三十四億が増加するわけです。従って五十五億の今までのものに二十四億加えますから、約八十億、これが増加することになる。これではますます国民健康保険を圧迫することは火を見るより明らかなんです。ですからこれくらい緊急に補正を要する問題は私はないと思います。どうです大臣、この八億の保険料というものを、今の大臣の御言明では今後保険料を新しく患者に負担させることはないということです。そうしますと当然この八億というものは次の補正の場合には——第一次補正が今行なわれて国会で審議中ですが、第二次補正の場合には当然十五億の特別措置費に加えて、プラス八億として、新しく八億を特別措置に追加すると考えてよろしゅうございますか。
  22. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 次の補正の機会におきましては、私は、その八億につきましては、国民健康保険に迷惑がかからないように政府として措置したいというつもりで、財政当局と話をいたしたいと思います。
  23. 滝井義高

    滝井委員 八億は特別措置でやるということですね。そうしますと、二分五厘の分は、なお依然として十六億の患者負担が残ってきておるわけです。ここで問題は、国庫負担の問題になってくるわけです。私はもう割合に割り切っておるのです。国民健康保険を今後救おうとするならば、市町村の一般会計から国民健康保険の特別会計に相当な金を入れる方法と、それからもう一つは、国庫の負担を増加する、この二つしか道はないと思うのです。市町村は、たとえば県も含んでけっこうだと思いますが、地方自治体が一般会計からとにかく国保の特別会計に入れるか、あるいは国がやるという、この二本を並列する以外に方法がないだろう、今の制度を維持していく限りにおいては。そうしますと、さきにわれわれは現在の二割の医療給付に対する国庫負担と五分の調整交付金の中で、二割の国庫負担を五分すみやかに上げるべきである。そうすると、国保の総医療費は今年度は千四百億です。おそらく来年度は千六百億ぐらいになるのではないかと思われます。そうすると、四月から五分上げるとすれば、約七十億が出るわけです。これをもし灘尾厚生大臣の政治力によって七十億をことしの四月からおもらいになれば、これはこんな問題は一ぺんに解消してしまう。そこでどうしてもこれは法律改正がおできにならないというならば、これは厚生省が前例を開いてくれた、法律を作らくなても特別措置費として金を出す道を開いた、だから七十億の特別措置費を加えたらいい、十五億に。そうしますと、これによってどういうことができるかというと、一切の患者負担をパーにすることができるわけです。保険料の引き上げも何も要りません。これで国民健康保険は早天の慈雨を得たように生き生きとしてくるでしょう。四千五百億の来年自然増がある、しかもことしもなお二千億をこえる税の自然増があるのですよ。だからこの中からあなたが七十億、五分を、法律改正ができないならば、とりあえずことしとにかく特別の措置費にとしておとりになれば、国民健康保険の問題は、少なくとも今年の問題に関する限りは、医療費の引き上げまでひっくるめて解消することになる。しかもそういうことになれば、来年は大蔵省はこれは大へんだというので、二割五分はあなたが何ら一口も言わずしてもはやころげ込んでくる。だから戦いは先になってやればやるほど損です。もし来年になって、二割五分をあなたが主張されれば、来年はどこに圧力がくるかというと、小山さんの無拠出年金前進の方に今度は圧力がかってきます。そうなんです。それは今の大蔵省のやる予算の組み方というものは、一つの省にそう千億も二千億も一ぺんにやるような仕組みになっていないですね。過去の財政の歴史的な組み方を見れば、どこか一つ作れば、他の方を押えておる。ちょうどゴムまりを押えると同じで、こういう形になっておりますから、だから勝負は早い方がいい、とるものは先にとっておく、こういう形にいかなければならないと思うのです。幸いにこれは安藤前政務次官がここに証人としておられますが、ことしの四月の二十日に、院内大臣室で、池田総理、大卒官房長官、安藤厚生政務次官立ち会いのもとに、最重点的に、補正予算の場合には国民健康保険の金を出すことを了承しておるわけです。もしこれは大臣、疑いがあるならば、今予算委員長に幸いなっておる前山村国会対策委員長と、わが党の山本国会対策委員長をここに参考人として、池田総理も呼んで、一つこれは究明しなきゃならぬと思います。大臣は七月に大臣におなりになったのだから、四月のことは知らないと言われればそれまでです。しかし政治というものは、同じ保守党の政権で、同じ内閣総理大臣池田勇人氏のもとに続いておるのですから、まさか約束したものを、厚生大臣をかえたからおれは知らぬ、というわけには池田さん言わぬと思うのです。官房長官の大平氏もそうは言わぬと思うのです。従ってこれは私は、与党の横におられます柳谷氏以下、全部の理事も立ち会いのもとですから、まさかここで与党はキツネの最後っぺみたいなわけにいかぬと思うのです。私はこの点については、大臣、ここでそういうお約束があるとするならば私も努力しますという言明は一つしておいていただきたいと思うのです。これは理論的にいっても、当然今年から取られなければならない。今年これだけのものは、五十五億の患者負担をやらせ、その上に十五億やらせるとすれば、約七十億程度のものをやらせるわけですから、これは大へんなことですよ。だからことしの四月から五分上げれば、ちょうど七十億とれるわけですから、うまくいくわけです。どうですか大臣、この点は。
  24. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国民保険財政状況は非常に苦しいということは私も一番心配しておるわけでございます。今年における国民保険医療費というものが、一体どういうふうな状態になってくるだろうかというようなことについても、厚生省としましては真剣に検討しなければならぬものだと思います。もしその状況から見まして、非常に国民保険経済が赤字になってくるとかなんとかいうようなことでありますれば、それはそれとしてまた措置をしなければならないかというふうに私は考えておるわけであります。これはこれからの状況の推移というものもよく見た上で、結論を下さなければならぬと思います。  今お話しになりました療養給付率の従来の二割を五分上げるという問題については、前国会におきましていろいろお話し合いがあったということは私も伺いました。伺いましたが、厚生省といたしましては、療養給付率を変えるという問題は法律の改正を要する問題でもありますし、言いかえますならば、制度をこのまま恒久的制度としての問題ということにもなりまして、一時の赤字をどうするとかこうするとかいう問題ではないと私は思うのです。そういうふうな観点からいたしまして、療養給付費に対する国庫負担率の引き上げという問題は、私は通常国会において案を持って皆様方の御審議をわずらわしたい、これは通常国会ものだ、かような考え方をいたして、今度の補正予算には上せなかったようなわけでございます。さように御了承願いたいと思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一割引き上げ分による五十五億の患者負担と、それから新たに二・五%の引き上げによる国保の患者負担の十六億、これらの措置の方法がないわけです。これを全部患者に背負わしてしまうということになりますと、これは御存じの通り、現在の国民健康保険というのは中農以下の犠牲において中農以上が医療の恩恵を受けておる、いわば逆ピラミッドです。社会保障というものは、所得の高い人のより多き所得を、所得の低い方に切り離していくという役割を演ずるのが社会保障です。ところがそれが逆になるのです。下からよけいに吸い上げて、結局中農以上が国民健康保険保険証を使う。そして中農以下は売薬か配置薬かでがまんをしなければならね。こういういわば社会保障の逆ピラミッドを作ることになる。この点はやはりここらあたりで何らかの形で大臣踏み切っていただかなきゃならぬと思うのです。いずれこの問題は、私はこの国会における当委員会の一番重要な問題としてあとに残したいと思っております。まだ問題がありますから、先にしたいと思いますが、大臣はこれは来年から二割五分にやりたい、こういうことです。しかし、ではことしの今言った七十億ばかりの金は一体どうするのだ、この問題の解決の御答弁としては出てこない。それを患者負担にさせるとするならば、中以下の国民階層にとっては、医療保障としての国民健康保険はむしろ収奪の役割を演ずるという形が出てくる、こういう結論が出てこざるを得ないと思うのです。これはもう少し時間をかけて、なお次回には委員長にお願いをして、池田総理なり大平官房長官に来てもらって、白黒をはっきりしたいと思う。  次は、同じく国民健康保険に関連してくるが、同時にまた他の一般保険にも関連する問題になってきますが、医療懇談会の了解事項の中に診療報酬の緊急是正という項目がある。この緊急是正については今医療協議会でも問題になっておるようでございますが、政府の内部において検討をして、医療協議会に諮ることになっておるようでございます。緊急是正の内容というものをここに明らかにしてもらいたいと思う。緊急是正とは一体いかなる内容を持っておるのか、どういう点が緊急是正せられなければならぬものか、ここで政府考えを明らかにしてもらいたい。
  26. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいまお話がございましたように、医療懇談会におきまして、その了解事項といたしまして、現存の医療費につきまして、正確な医業実態調査を行なう前に、とりあえず改定を行なう必要があるのじゃないかという一つの事実を各関係者が認めたわけでございます。その具体的内容につきましては、これは非常に大幅な見方もありますし、あるいは小幅な見方もございまして、必ずしも一致はいたしておらぬのでございます。その点いろいろ意見の調整を要する点もあります。また政府の方といたしましても、一応の考え方は持っておりますが、まだこうという方法にいたしておるわけでございません。それらの点をただいま開催中の医療協議会におきまして御検討願う、その答申を持って政府として処理する、こういうことでございまして、ともかく何か緊急是正を要すものがあろうという点につきましては、関係者一同是認をいたしておるのでございますが、その内容につきましては、今申したような事情でございまして、ただいまこうであるということを申し上げるわけには参らないのでございまして、その点医療協議会におきまして十分慎重に御審議を願いたいと思っております。
  27. 滝井義高

    滝井委員 それは受け取れません。なぜならば、予算は国会がきめるところです。あなた方は国会には一割の予算しか出していないのに、いつの間にか勝手に行政府が二・五%だけ増加さした予算をお組みになっておる。国権の最高機関と医療協議会とはどちらが大事かということです。当然国会の中ではっきりしてこなければならぬ。緊急是正だって、医療懇談会の了解事項の中には、政府部内で検討して諮問することになっておる。従って、当然政府としては何が緊急是正しなければならぬものであるかということはおわかりのはずです。だからここで政府としては一体何が緊急是正と考えておるのか。それは、この七月の八日に告示をせられたあの点数表というものは、あれは医療懇談会お作りになったものじゃない。政府お作りになったものです。そうすると、政府お作りになったところの七月八日の告示の中で、一体どこに欠陥があるかということは、お作りになった政府自身がご存じなんです。ほかの者は知らない。一番知っておるのは政府です。なぜならば、その頻度とかあるいは難易度の具体的な資料を握っているのは、政府以外にだれも握っていない。古井厚生大臣がわれわれの前で大きくたんかを切ったように、少なくとも現在資料を持っているのは厚生省だ、われわれの資料で一割が適正であるということで、私は一割をしております、これは自信があります、だれが何と言おうと、これが最上のものであるということを、みえを切っておる。みえを切った厚生大臣が今いないから、悲しいことなんです。ところが、それがいつのまにか二・五%増に修正をされてきておる。そうしてその上にさらに緊急是正をやらなければならないという事態が起こってきておるのです。従って、緊急是正をやる内容は一体何なのか。そんなものは公表できぬはずはない。国民医療なんです。医療というものは国民のためにあるのです。医療懇談会委員のためや、あるいは療養担当者のためにあるのではない。国会でそれを言えぬということは、そういう僭越なことはないと思う。だから、一つここで一体どういうことが緊急是正をせなければならぬものなのか。七月八日の告示した点数表の中で、どういう点に大きな、自己反省をした結果、欠陥があったと厚生当局は考えておるのか。これは明らかになれるはずです。それを一つここで明らかにしてもらいたいと思う。これを言えぬというはずはない。
  28. 森本潔

    ○森本政府委員 先般の七月八日の告示に際しましては、厚生省の、原案をもととして、医療協議会の御意見をいれまして告示したわけでございます。これが完全無欠のものであったかということになりますと、協議会とされましても、役所としましても、一応これでいいということでございます。しかし神様でもございませんし、これがどこからついても間違いないのだというところまでは、これはちょっと申し上げかねる。ともかく一応役所なり協議会としましては、これでよかろうという常識的な結論と申しますか、数字に基づきましたところの結論を申したわけでございます。そういう事情でございまして、それが絶対どこからついても間違いないものであるということは、私は言い切れぬと思いますし、私たちもそう考えておらぬのであります。  それから、今回のこの緊急是正といわれておる内容について、欠点があるとすれば、それに基づいてやるのだろうから、どういうところが欠点だという御質問でございます。これは、やはり人それぞれによりまして見方が違いまして、先ほども申し上げましたように、何分にも、医療費の項目としましては、七百項目あるわけでございまして、それぞれについて意見がございます。掘り出せば幾らでも議論があると思います。しかし、それらの点につきまして、程度の差は大なり小なりございますが、何かそこに一致して、この辺は気をつけなければなるまいということが、お互いにばく然として持っておるわけでございます。それで、役所の方としましても、大体この辺が皆さんの考えておられるところじゃなかろうかというところは、一応めどは持っております。持っておりますが、まだ今回の諮問に際しましては、原案を付しまして、政府はこう思うがどうかという聞き方をしておらないのでございます。現行の診療報酬について、この際措置すべき事項について意見を問うというような聞き方をいたしております。審議の過程におきまして、役所の考え方なり、それから各委員考え方なり、こういうものを漸次調整して処理したい、こういう気持でございますので、一応役所には考え方はございますけれども、それをこの際申し上げてしまうのは、まだ協議会にも申しておりませんし、どこにも申しておりませんので、審議の過程で申し上げたいという気持でございますから、ここで申し上げることは、今申したような事情もございますから、しばらく差し控えさせていただきます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 それが秘密主義というものです。あなた方が七百有余告示をされた、初診料とか往診料とか盲腸の手術というものの中で、これが一体合理的であるか不合理であるかということは、昭和二十七年の三月と十月の調査以外に基本的な調査がないの、ですから、その基本的な調査をお握りになっているのはあなたのところ以外にないのですよ。しかも、その基本的な調査から、二十七年以来の物価の変動あるいは国民所得の変化、技術の進歩、こういうようなところを勘案をしておやりになるわけですから、従って、その資料を一番正確に握られておるのはあなた方なんです。これは失礼な言い分ですけれども、じゃ、医療協議会の一人一人の委員がどれがどれだということになれば、あなたの言われるように七百項目全部になる。それならば、七百項目全部おやりになるかというと、そうではないはずです。だから私はきょうはあなたが言わなければ、言うまでがんばりますよ。二点ある。一体政府としては緊急是正をやるための予算のワクはどの程度考えておるかということが一つ、そうすると、おのずから緊急是正をやらなければならぬ問題はしぼられるわけです。緊急というのがついているわけですから、七百全部が緊急ではないはずです。だからこの点あなたが言われなければ、きょうは言われるまでがんばりますよ。一体予算のワクをどの程度するのか。これは今度の国会における、あるいは次の補正予算における最も重大なポイントです。一体どの程度のワクの増加を考えておるのか。従ってその緊急是正の項目はどこだということがしぼられてくるわけです。この二点を、局長が答えなければ、大臣でわかっているはずです。これはもう新聞あたりにちらちら出てきているのですからね。だから、ここでどういう点を緊急是正しなければならぬ。これは政府基本方針をはっきり示すべきです。政党内閣ですよ。官僚内閣ではないのですよ。秘密にする必要はちっともない。もし、あなたがそれを秘密にしてがんばるなら、きょうは僕は日が暮れてもがんばります。はっきりこの二点を、一体緊急是正のために予算をどの程度とろうとしておるのか、一体どの項目が緊急だと厚生省当局としては考えておるのか。
  30. 森本潔

    ○森本政府委員 先ほど来申しましたように、こうだという結論的なことは、政府意見としても今申し上げることでないし、協議会の意見として申し上げることでもないと思います。およそ私たちが推察いたしますにはこうであろうと考えております考え方と申しますか、この辺じゃないだろうかというような気持のところを申し上げて御了承を得たいと思います。  まず、いろいろ問題はございますが、先般の引き上げの結果、現実の状況といたしまして、一般の医家と申しますか、この辺におきましては、こういうような気持がございます。大体前回の引き上げでよかったのであろうが、どうも実際やってみますと、各科におけるアンバランスが相当あるじゃないか、ことに引き上げの影響の少ない科目は、大体内科、小児科辺が非常に収入が見込みより少ない、こういうような一つの空気がございます。大体関係者の方もそうじゃないだろうかという見方をしておられますし、役所におきましても、そういう結果が出るということも予想されます。こういうような点が一つございます。  それから歯科の方におきましては、補綴の医療費の引き上げがありましたが、これが五%あるだけでございます。この上げ方が他に比べて非常に少ないじゃないかという感じがございます。それから薬剤の方面についてもございます。大体いろいろございますが、およそ関係者の共通的な見方、あるいは役所等もそうじゃないかと想像されます点は、今言ったような辺じゃないだろうか。従いまして、たくさんの項目がございますが、だんだん詰めていきますと、緊急是正と申しますか、実態調査をやらずに急に引き上げるという措置をすべき場合の項目としましては、今申しましたような項目を中心にいたしまして、少数の項目で、また幅もそう大幅でないというような見当じゃないだろうかというのが大体私の見当でございますし、およそ医療担当者あるいは関係者の方の気持もその辺じゃなかろうかというような気持を持っておるわけでございます。その辺で大体の事情は御推察願いたいと思います。従いまして、内容はそういうような見当でございます。  それから、それによる医療費の値上げの幅、それに伴う財政の問題という点でございますが、今申しましたようなことでございますとしますと、この影響というものは、そう大きなものじゃないという感じがいたします。その辺もう少し数字を詰めぬと申し上げられませんが、大体今申し上げたようなことで御了承得たいと存じます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 大体わかりました。そうしますと、前回の引き上げで点数表の中にアンバランスが相当出てきておる。従ってそのアンバランス、いわゆる低い方の影響を受けておるのは内科、小児科だということになると、内科と小児科というのは、技術というのは診察しか現われてこないわけです。あとの薬とか注射というのは、あなた方は大体今までの基本方針では上げることもいじることも反対なんですからね。そうすると診察だということになれば、初診、往診、こういうところが問題になってくるわけです。こういうところを問題にするわけでしょう。こんなもの何もそう隠す必要はないですよ。こういうところがあなた方の行政が下手な証拠なんですよ。内科と小児科における診察料、往診料は安い、これを政府考えます、こういうことなんです。それから歯科の補綴は、入院料やら往診料は一割八分上げたけれども、歯科の補綴は五%しか上げていないのですよ。不満が起こることは当然ですよ。一緒に共同闘争をしておって片方は一割八分上げて補綴だけは五%では不満が起こる。これは当然です。そんなものは隠す必要は一つもない。そうすると一体入院料とか歯科の補綴ということになれば、頻度はきまっておる。そうすると、どの程度の額を上げるかということはかけ算をすればすぐ出てくるわけです。それから初診料と往診料には昼と夜としかないのです。夜を上げるか、昼を上げるかです。こんなものは小学校の生徒でもわかるわけです。夜間の往診料が幾ら、昼の往診料が幾ら、深夜の往診料は幾ら、頻度を握っておるのですから、それをかけ算をすれば出てくるでしょう。当然予算というものを考えなければこの問題の処理はできない。医療協議会にまかせると言ったって、予算の編成権を握っている政府が諮問機関の意見がなければ予算ができないなんというばかなことはないです、政党内閣ですから。一体どのくらいのワクをもってそれをやろうとしていますか。当然言ってちっとも差しつかえないのじゃないですか。そういうことになれば事態はおさまる。このくらいなら医療懇談会結論として自民党内閣は責任が持てるというものを出さなければどうしますか。当然じゃないですか。国権の最高機関の国会ですよ。諮問機関で言えて、国会で言えぬなんという、こういう国会を無視することをやるからいかぬのですよ。当然医療は、国の予算編成の根本をゆるがすものじゃないですか。一体ワクを幾らとお考えになっておりますか。二%ですか、三%ですか、五%ですか。自民党の三役は一円五十銭を上げるという約束をしておった。一円を相当上回る額というのは一円五十銭というのは当時の言わず語らずの暗黙の了解であった。ところが一円しか予算を組まなかった。苦肉の策として上げなかった。その後二・五上げた。そうすると一二・五です、そうするともう二・五上げなければ一五にならぬということです。そうすると公約通りの一円五十銭上げるのか、それよりもうちょっと上げるのか、もう少し低くするか、こういうことです。これは玉手箱じゃないですよ。天下に堂々として、医療協議会でも堂々とこれでやって下さいといえば国民も納得する。政府財政措置ができる。政党内閣の腹を示さないからいつももやもやする。あっちにうろうろ、こっちにうろうろしなければならぬ。ここで大臣天下にはっきりとこのくらいでやる——大体局長の話で項目はわかったのですから、大臣は責任を持ってどのくらいでやるかということを言明して下さい。そうするとそれに対する財政措置を国会としては当然考えなければならぬことになる。
  32. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の医療協議会に対する諮問につきましては、先ほど保険局長からお答え申し上げました通りでございます。厚生省が原案を持って、これについてどう考えるかというような諮問のいたし方をしておらないのでございます。審議の過程におきましては、厚生省側の考え方というものも申し上げる機会もあろうかと思いますが、諮問の仕方がそういう諮問の仕方をいたしておりますので、滝井さんは専門家ですから大体おわかりじゃなかろうかと思うのでありますが、ここではっきりこうだということは申し上げかねるという事情を一つ御了承願いたいと思うのであります。それからもちろん財政にも関係のあることでございますので、財政ということを考慮しないで諮問する、意見を問うということもあまりにも不用意だということにもなろうかと存じますが、やはりさような諮問の仕方をいたしておりますので、結果がどういうふうに出てくるかということについては、結果を見ないとわからない、こういうふうなことにもなるわけでございます。これが実施につきましては、もちろん財政当局との間において十分な話し合いもいたさなければなぬことと存じておりますけれども、今の段階におきまして、どれだけの予算をもってどうというふうなことにはなっていないのであります。いずれにしましても私はそう大幅な引き上げということにはなるまいと存じます。二%になりますかあるいは三%になりますか、まずその前後のことではなかろうかというふうに思っておりますけれども、しかしこれも答申がどういうふうに出てくるかそれによって考えなければならぬ要素もたくさんあろうかと思います。この際はこの程度で御了承いただきたいと思うのであります。
  33. 滝井義高

    滝井委員 それでわかりました。手品はないのですからね。二%とか三%の間ぐらい、こう言っておけばそれでいいのです、そうすればこっちはわかるのですから。ところがそういう数字もひた隠しに隠そうとするから大きな声を出して迫らなければならぬということになるのです。これで大体政府の腹はわかりました。わかりは早いんですよ。だから早く手の内をお見せになればいい。そうしますとこれでまた患者負担がふえる。二・五%引き上げることによって、さいぜんの御説明の通り、大体同じようになると思うのですが、約八十五億ということになるわけです。こうなりますと医療の内容を向上して、ストライキの起こった病院にストライキをしずめ、総辞退に突入しようとする医師会の総辞退をとめるために、政府が一割以外に緊急調整も入れたら新たに約七、八十億の金を医療の負担を増加しなければならぬという事態が確実に起こってきておる。そうすると、これを政府医療協議会にかけて諮問を得たら、それでもう政府の責任はのがれたというわけにはいかない。私はやはりここまではきちっと政府がはっきりさせておいてもらわなければいかぬと思うのです。きょうはそこまでは私は言いません。いずれこれは池田総理がきてから——二、三日のうちには医療協議会でも結論が出るだろうと思いますから、池田総理を呼んで、ここらあたりはもう少しきちっとしてもらいたいと思っております。これで大体厚生省考え方の全貌が明らかになりました。  そこでもう一つ言わなければならぬことがある。われわれ野党は人がいいもんだからいつもだまされてきておるわけですが、まず第一に国民健康保険の問題についても、これは今後の問題だけれども、今現実に関する限りは実行してくれていない。それから国会では一割でよろしいといっておったのがいつの間にか一二・五になっても、政府はわれわれ野党に、こういうふうになりましたが、これは了承して下さいということを一言半句も言わない。国会では厚生省は、自分たちの持っておる統計では一割で大丈夫だ、一割で向こうに諮問していきます。しかし向こうが何ぼかふやしてくれということになれば、そのときはまた考えます。諮問に対してそういう答申が出たら、それをまた国会に相談しなければならないはずです、予算を一割しか組んでいないのですから。それを二分五厘も勝手に行政がやるというわけにはいかないと思うのです。そういうような点もきょう私の方から言わなければ内容を明らかにしないということです。もう一つ三十四年の十一月を思い起こして下さい。一体委員会では何の決議をしたか。甲乙二表の一本化の決議をした。当面何よりも必要なことは甲乙二表の一本化だ、これを一つすみやかにおやりなさい、こういう決議をした。選挙前ですよ。あれから大臣何人かわったか知らぬけれども厚生省は一言半句もこれを言わないのです。私が何回か委員会で言いましたけれども、それは医療協議会に諮問してからというのだが、一体その緊急是正の前にこれをやらなければいかぬ、ところがきょうの新聞を見ると、緊急是正をやったら医療費は上げぬということを約束ができるかなんということが出ておるのです。国権の最高機関である国会は、昭和三十四年十一月に甲乙二表を一本化せいという議決をしているのです。これは国民の意思です。国民の意思をどうして実行しないのだということです。もう三十四年から三十五年、三十六年と二年になるのですよ。これは一体どうするつもりですか。大臣に聞くよりか先に保険局長に聞かなければならぬ。あなたは一体どうするつもりなんですか。
  34. 森本潔

    ○森本政府委員 ただいま御指摘のように、昭和三十四年に甲乙二表を一本化すべしという決議が当委員会でなされました。そのことは十分承知いたしております。その後私たちも早くこれをやりたいという気持でいろいろ考えたり、相談もしてみたのでございます。この問題をやるにつきましては、役所だけではとてもできない仕事でありまして、結局関係の学会と申しますか、専門的事項でございますので、そこで一つ意見をまとめていただきまして、それをもととしてやるという方法しか実はないわけでございます。そういう事情が一つ根本的にございまして、なかなかわれわれの力の及ばぬ点でございますが、そこまできょうまでの段階においては手順が進んでおらぬというのが実情でございまして、これはおしかりを受けましても、ただ力及ばずうまくやっておりませんということを申し上げるほかはないわけでございます。  そういう事態できょうまできておったわけでございますが、御存じのように先般医療懇談会というのが開催されまして、そこでいろいろな問題が議題になりまして、その際この甲乙の一本化ということもぜひしなければならぬということは、出席の皆さん方同感でございました。それで懇談会の了解事項の中におきましても、甲乙一本化については関係学会の意見を聞きまして、すみやかにこれをやるということに了解事項として了解されております。こういうことになりましたので、今後は前のような障害はないと思います。従いましてこの点すみやかに関係学会の御協力を得まして、原案を作りまして、それに基づいて作業をいたしたい、こういうことでございます。きょうまではそういう運びになっておりませんが、今後その運びが順調に参るだろうという考えをいたしております。  以上のようなことでございます。
  35. 滝井義高

    滝井委員 二年前に国会が議決をして、それが何も手がつけられていないということは怠慢なわけです。これはきょう初めてじゃないですよ。私は何回かここで言っている。それならば関係学会にすみやかに御諮問になったらいい。作業にすぐ取り組まれたらいいのです。こういう国会が議決したことはやらぬで、医療協議会のことばかり言うでしょう。医療協議会が国会よりも二段も三段も上の機関のような錯覚が厚生省にあるのです。それはあなたの方の諮問機関ですよ。われわれに関係ない。あれはあなた方が自由に諮問をしておやりになればいい。国会に出たら医療協議会と関係なく、政党内閣の政党大臣方針をここに持ってきたらいいのです。それは政党大臣方針の中に医療協議会の意見を取り入れられておるわけです。ところが何か政府はすぐ審議会をたくさんお作りになっておって、都合が悪いと審議会が結論出していないと言うのです。国会は一本化しなさいと結論出しているのです。これは国民の意思ですよ。すみやかに成案を作って医療協議会に諮問をするなり、医療協議会の専門委員会なり学会に諮るなりしなければいかぬと思うのです。大臣どうですか。これは直ちに諮るべきだと思うのですが、どうするつもりですか。これは与野党一致して議決しているのです。
  36. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 甲乙二表の一本化につきましては、今保険局長がお答え申し上げた通りでございます。私としましては一本化の方向に向かってこれから進んで参りたいと存じております。専門的なことでございますので、それぞれの向きの協力を得られませんと、なかなか進めるわけには参らぬわけでございます。何とか各方面協力を得て、この方向に検討を進めて参りたいと思います。
  37. 大石武一

    ○大石委員 関連。ただいま保険局長大臣の御答弁をお聞きしておりましたが、ちょっと二言注意いたしたいと思いますので、質問かたがた申し上げたいと思います。  今からなるほど二年前に甲乙二表の一本化をすることをここでも決議をし、その後何回も決議をしておる。そうして厚生省でも直ちにそれを実行いたしますということを約束しておるはずなのです。それにもかかわらず、今保険局長の答弁を聞きますと、これは間違いではないかと思いますが、学会に諮問もしなければなりませんのでまだそのことはいたしておりませんと言っておる。学会に諮問でもして、そうして今検討中でございますというなら話がわかるけれども、二年間何もしないで学会にも諮問しなかったというのは、少しこれは怠慢のそしりを免れないと思います。しかもこれは医師会がどうであろうとか保険団体と医師会とがけんかするとか、問題は全然別なんです。純粋に厚生行政の立場としてやらなければならぬ。しかも国会に約束したことなのです。それを交渉もせず、医師会と保険団体がけんかしておるからといって、別に甲乙二表の一本化に医師会が反対するはずもなかろうし、学会が反対するはずもなかろう。今まで一切手をつけなかったということは森本君だけの責任ではなかろうと思いますけれども、少し僕は怠慢過ぎると思う。厚生大臣もそれはそうすべきだというなら、滝井君のように直ちにしなければならぬということも当然だと思いますが、そのことについてもう一ぺん御決心を承りたいと思います。
  38. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は専門のことがよくわかりませんので、甲乙二表の一本化ということの内容が一体どういうことになるのかというようなことについてはわかりませんが、ただ現に甲乙二表がある。これを一本化した方がよろしいというのが大方の意見のように伺っております。今伺えば、国会でもさような議決があったように伺うわけでございますが、内容的にどういう方向にどう行ったらよろしいのかというふうなことは、これは専門家の御意見を伺わなければなりませんが、とにかくその方向に向かって手をつけていきたいということをはっきり言っているのです。
  39. 滝井義高

    滝井委員 一本化の問題というのは、そうむずかしい問題ではないわけです。これはほんとうは二本作ってはいけなかったものを、当時厚生省が医界の分断工作をするためにお作りになった。今の甲表なんというものは何も科学的根拠はないのです、失礼な言い分ですけれども。国会で甲表の科学的な質問をまだ一回もしたことがない。われわれがやろうとしても、やる機会もないし、医療協議会が何だかんだと言って、ちっともその機会ができないわけです。それで、一体甲表がどういう科学的な根拠から出たかという手のうちをまだ厚生省は示していないのです。たとえば初診料十八点というのも、これはつまみ金です。科学的に出てきたものは、初診料は六・二〇三点なのです。それを先払い思想なんという勝手な思想を加えて十二点も加えているのです。だから一体その十二点は何と何を先払いしたかということは厚生省は答弁できない。だからこんなものは、やろうと思ったらすぐできるのに、やらないわけで、怠慢なのです。いつか私は、今から二年前に甲乙二表一本化の案を出したことがあります。こういう方向でやったらどうかと出したことがある。しかし厚生省がどうしてもなまけてやらぬので、こっちが幾分力扱けがして、ときどきしか言わなかった。舘林さんではないけれども、折に触れてしか言わなかった。しかし今度はそうはいかぬ。こういうふうに医療費問題というものが大きな問題になって、そうして事務の簡素化をはかろうとするならば、保険者団体もみな困っているのですから、これは大臣灘尾さんの——失礼な言い分ですけれども、そう厚生大臣を五年も十年もやるわけではないのですから、やはり重点的に一つ二つ大事なところをおやりになる。甲乙緊急是正をおやりになる。そのうち甲乙二表の一本化をおやりになる。これをやれば日本医療史に残ります。診療報酬が今五つくらい、甲地、乙地、乙の一、乙の二、こうやってみたら五つくらいになっておるのです。こういうものはあなたのときにやれば、灘尾厚生大臣のときに一本化されたと歴史に残る問題ですよ。だから私は直ちに熟慮していただいて断行していただきたいと思います。私は十分考えてやっていただくことには賛成ですから、学会に御諮問になるということを医療懇談会でおきめになっておれば、学会に一つの諮問をする態勢をとる、これなら御了承いただけると思いますが、どうですか、その点は。
  40. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 内部的にも十分検討いたしまして、すみやかにそちらの方向に向かって進んでいくようにしたいと思います。
  41. 滝井義高

    滝井委員 それからもう一つ問題がある。それはやはり同じように緊急問題です。地域差の問題。国家公務員の給与の体系においても、地域差はだんだんなしくずしになくすことになっている。この医療費の甲地、乙地、甲表と乙表との地域差、こういう点をどうするかということも、これはここで何回も言っている。かつて大阪近郊で医療協議会の了承を得て、一つ二つは甲地に直した前例もあるわけです。ところがその後乙地を甲地に引き上げるということは、それだけ医療費が増加をするんだから、保険経済の赤字のときにはだめです、黒字になったら何とかしますというのが、今までの一貫した政府の答弁だ。ところが今は健康保険に関する限りは二百億をこえる黒字が出ておったわけです。今は医療費が増加をしますから幾分問題が出てき始めました。しかしこの問題についても一挙におできにならなければ、私はこれは段階的にやる必要があると思う。この点については一体どうお考えになっているのですか、私はこれは緊急是正でやる問題だと思うのです。
  42. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ものの考え方といたしまして、私は現在の地域差の問題というのは、これは方向として撤廃すべきものじゃなかろうかというふうに考えておる次第でございます。ただおっしゃるように、一挙にこの問題を解決するということは、なかなか保険団体の事情から考えましても、財政面から考えましても困難なものがあろうかと考えますが、漸次その方向でやっていきたいというようなつもりで今度の医療協議会に御答申を求めておりますが、私どもとしましては、この地域差の問題もあわせて考えていただきたいというような心持を持ってこの医療協議会に臨んでおる次第でございます。
  43. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今度の医療協議会というのは、現在開催中の医療協議会ですね。
  44. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 取り上げていただければです。
  45. 滝井義高

    滝井委員 それに取り上げていただくようにお願いしておるということですが、地域差を撤廃したら、予算としてはどの程度予算が要るのですか。乙表における甲地と乙地の八%の差、あるいは甲表における五%の差、これを撤廃したら予算総額としてはどの程度のものが必要なのか。
  46. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ちょっと私申し上げますが、地域差を段階的に撤廃していくという考え方につきましては、私どもその意見を持っておりますが、まだ医療協議会において、今度の諮問について内容的な審議には入っておりませんので、今ここでどうということは実は申し上げかねる状況にあるということを一つ御了解願いたいと思います。
  47. 森本潔

    ○森本政府委員 地域差を全廃するとどういう影響があるかという御質問でございます。これは大体見当の数字でございますが、現在の甲表の五%、乙表の八%でございますが、これを大体平均しまして現在の総医療費で四%という見当を持っております。従いまして、ちょっと今手元に正確な数字を持っておりませんが、本年度の国民の総医療費を約五千億と見ますならば、四%でございますから、二百億という医療費の増を来たすわけでございます。それから、それが財政上どんな予算措置をしなければいかぬかという問題でございますが、これはまた別にそれぞれの各保険あるいは生活保護でございますとか、いろいろな制度がございまして、それぞれによってその措置の仕方が違って参ります。あるいはまた法律上の国庫負担も違って参ります。これはもう少し検討しなければなりませんが、大づかみの見当といたしましては、本年度約五千億の総医療費に対して四%の影響があるということでございます。
  48. 滝井義高

    滝井委員 これで大体政府の気持はわかりました。地域差については、政府は現在開催中の医療協議会に答申を求めておる。しかしそれが、一挙にやることは非常に多くの財政上の措置を必要とするから、とてもそれは不可能だろう、従って一応結論としては段階的ということになるだろうが、段階的なやり方についてはここでは言えない。わかりました。そういうことで一つ段階的にやってもらいたい。
  49. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今答申を求めておるというふうなお言葉がございましたが、これは先ほど申しましたような形で諮問いたしておりますので、その点は審議の過程において厚生省としてはそういう意見を申し述べるつもりだというふうに御了解を願いたいと思います。
  50. 滝井義高

    滝井委員 その点大臣の言われた通りでけっこうでございます。厚生省の意思がはっきりすればけっこうでございますから。  次は、こういうように緊急是正から、甲乙二表の一本化から地域差の撤廃へ、そしてだんだん医療制度の核心に問題が発展をしていくことになると、ここでやはり支払い側と受け取り側、あるいは公益代表が一堂に会して物事を討議する土俵というものがきちっと作られなければならぬと思うのです。現在少なくとも診療報酬と保険の指導の大綱に関する問題については、大臣の諮問機関としてあるのは医療協議会です。ところが医療協議会は、坂田君が厚生大臣をやめたとき以来非常にいびつな状態になっていることは、大臣御存じの通りです。従ってこれをレールに乗せるために、社会保障制度審議会に諮問をして、昨年十二月二十六日から始まった通常国会において、内閣委員会医療の診療報酬を討議するための二法案をお出しになったわけです。今度は内閣委員会にお出しになっていないのです。しかし大臣としてはこういうように問題が山積をしてきて、これをスムーズに解決しようとすれば、当然これはりっぱな土俵を作らなければならぬことになるわけですが、この医療協の改組方針というものは、政府が今度の臨時国会に臨むにあたって、前の国会に出したものはそのまま出すのだ——一部与野党の話し合いで修正を受けたものは、修正案を政府原案に入れて出すというような方針が見えてきておったわけですわ。医療協議会のあの二法については政府としてはどういう方針でお臨みになるのか。
  51. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今仰せになりました通りに、今度の臨時国会に提案する法律案につきましては、大体前に提案しましたものを出す、またききの国会において皆さんの御意見が固まっておった修正意見というふうなものについては取り入れて出す、こういうふうな考え方でいたしております。医療協議会並びにいま一つ医療報酬に関する調査会でございますが、その法案の取り扱いについては実は目下検討いたしておるところでございますが、かなり前の国会においても御議論があったように伺っておりますので、それらの点についてどう考えるべきかということを目下検討中でございます。できることなら早く結論を得まして国会の方に提案する運びにいたしたい、私はさように考えておる次第でございます。
  52. 滝井義高

    滝井委員 くどいようですが、御存じの通り国会は十月三十一日で終わってしまうわけです。そこでこれは大平官房長官が中に入って、古井厚生大臣と虚々実々の折衝をやったけれども、まとまらなかったのですね。そして最後は政防法等の関係もあって、どたんばで流れてしまったわけです。今度あなたがだれと折衝されるか知らぬけれども、虚々実々の折衝をやっておると、また流れる可能性があるわけです。そうしますと、これはせっかく医療のいいムードができようとしているのに、またこわれる可能性があるわけですね。われわれとしてももし政府与党の方で優柔不断で踏み切りがつかないとするならば、われわれの党議はまだまとめておりませんが、基本方針はきまっております。そこで政府が、もし医療の紛乱した事態を収拾する一つの糸口である医療協議会が、政府の内部の問題で提案ができないとするならば、社会党がこれを提案せざるを得ないことになるわけです。しかし社会党もそう混乱をするために法案々提出する意思は持っておりません。やはり日本全体の医療の大きな前進をはかるために、社会保障前進をはかるために、もし政府が優柔不断で話がまとまらかければ、社会党案でいくという形にならざるを得ない。そういうふうに社会党がいってしまうと、今度社会党社会党の意思をやはり貫いていかなければならぬことになりますから、ぐずぐずして十日も二十日もたってこれを出してきたって、こんなものは通らぬことになってしまうのです。そこで、私はここに希望しておくのですが、少なくとも十日前後までくらいには腹引きめてお出しになっていただかぬと、この委員会だって内閣委員会と連合審査その他を申し入れしなければなりませんから、そこらあたりくらいまでに一つ出していただきたいと思うのです。そういう緊急な事態があるということを腹に置いて政府はこの問題を処理していただくことを希望だけ申し述べておきます。  もう一つ、これはここで言っていいことかどうかは知りませんが、日本医療行政推進する上に非常に重要な問題ですから申し上げます。それは日本における公的医療機関の建設が実にばらばらであるということです。さき医療金融公庫法を審議するときに、厚生省は省議をもって、医療機関の整備計画なるものをお作りになったのです。私的医療機関については、これは行政指導で実行できつつあります。ところが公的医療機関並びにこれに類似するものについては、厚生省の統制がきかないのです。その典型的なものが非現業の国家公務員の共済組合の病院に現われてきた。それは神奈川県の川崎市に約千ベットの共済組合の病院ができようとしている。その川崎市の病院のベットの数を調べてみると、余裕は二百九十三しかないわけです。ところが東京の虎の門病院の患者を神奈川県の川崎市のその千ベッドの病院に入れようとしているわけです。そうすると、これは神奈川県にどういう影響が出てくるかというと、まず第一に神奈川県の住民の診療所を作ろうとしても、病院を作ろうとしても、千ベッドができるのですから、そこにはもう病院の余裕がないという事態が起こるわけです。この病院は神奈川県の県民を診療する病院ではないわけです。東京都内にある虎の門病院に来た入院を必要とする患者をそこに入れるわけです。しかもそれは二百九十三しかベッドの余裕がないのに千ベッド作ろうというわけです。そうしますと、神奈川県地区における医療金融公庫の貸し出しを私的医療機関が受けようとするときに、神奈川県は病院が過剰であるので、病院を建てようとしても医療金融公庫の恩恵を受けられないという事態が起こるわけです。この国家公務員の共済組合の理事長は一体だれかというと、これは厚生行政に練達たんのうな、かつて大蔵省の役人であった今井一男さんです。厚生省の内部において中央社会保険医療協議会やその他で、厚生行政前進のためには卓見を吐いておられるけれども、事一たび自分の方の病院になると厚生行政も何も無視してやるという実態。しかもそれは共済組合の病院をどこが所管しておるかというと大蔵省の主計局が所管をしておる。そうすると予算上強い権力を持っておる主計局、そうして公的医療機関に類似する共済組合の病院となると、厚生大臣の方は歯が立たぬわけであります。これに文句を言っておると大蔵省からやられるわけです。だから幾ら医務局長にわれわれが申し入れをしても、これは医務局長もやりようがないわけです。ここです。こういう問題について厚生行政が踏み切りがつかないならば、病院行政に関する限りは、日本厚生行政は要らぬと思います。  さき厚生省医療法の一部改正を国会に出してきた。そうしてこれは安保のあの混乱の中で流れた。そうしてその次厚生省が出すだろうと期待しておったら出さない。これをどうして出さないのか、ひそかに調べてみた。ところがこれをどうして出さないかというと各省が反対するのです。厚生大臣が病院行政を一元的に握るということについては、各省ががんとして反対をして進まないということです。すなわち共済組合というものは何かというと一つ保険です。従って日本医療行政というものは保険によって全部押えられてしまって医務局の行政はないのと同じです。この実態が端的に現われてきたのが共済組合の病院です。厚生省に来ては非常にうまいことを言う今井さんも、事一たび自分のことになると厚生行政を無視してやるというこの態度は許されぬと思うのです。従ってそういうためにどういう事態が起こりつつあるかというと、現在神奈川県においては神奈川県の医師会、特に川崎市の医師会は国家公務員の共済組合員証を持ってくる患者を見ない。これが一つです。もし知事がこれを許可するならば国民健康保険医を総辞退すると二度も決定して私のところに言うてきております。こういう状態になるとすれば、政府では、無医地区に病院を作らなければならない、都市に病院が集中することを排除しなければならぬと言っておるのに、公的医療機関のチャンピオンが、しかも大蔵省所管の国家公務員の共済組合がこれを破りつつある。そうしてしかも許可も受けないのにもうすでに病院の基礎工事をやり始めておる。こういう事態は厚生行政というものが地に落ちておるんですよ。一つこれを回復しなければならない。そうしてやはり医務局の行政整備計画に基づいてほんとうに遂行せられる道を今開かなければ大へんなことです。これをあなたはどうお考えになるか、これをどう処理するか、すでに工事は進みつつあります。私はこれはストップすべきだと思います。これができないとすれば厚生行政にわれわれは協力できない。そういう形になって今井さんが強行するならば、今後今井さんが厚生省委員になることにわれわれ社会党は徹底的に反対する。これだけを私は申し述べておきたいのですが、大臣のこの病院に対する措置をここではっきり宣明してもらいたい。
  53. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私まだ事情をつまびらかにしておりませんので、政府委員から答弁させていただきます。
  54. 川上六馬

    ○川上政府委員 ただいまお話のように、川崎市で国家公務員の共済組合の病院を作る問題で、地元の医師会から非常に強硬な反対が起きておるわけでありますが、医務局といたしましてもかねて医療法一部改正を提案いたしました趣旨にのっとりまして、なるべく適正な配置をしたいという考え方をいたしておるわけであります。しかし御承知のように現在の医療法におきましては、病院は構造設備その他条件がそろっておれば許可しなければならぬということになっております。それから今度の病院が外来をとらない、また入院患者も地元の方からとらない、こういうことを申しておりまして、共済組合の方は何ら地元の医師会には被害をかけないのだ、御迷惑をかけないのだということを申しておるわけでございますので、私の方といたしましてもこの病院の開設許可権を持っております神奈川県の衛生部に対しまして、一つ衛生部が中心になって両者の話し合いをするようにとりなして、これが円満に妥結させてもらいたいということを現在申し入れておるわけであります。  それから医療金融公庫の貸し出しの問題でありますが、もし今のように地元の患者は見ないのだということになりますと、地元の人口対の病床数——従来われわれが医療金融公庫などで考えておりました基準と一応関係がないことになりますので、そういうことが起きました場合におきましては、そういう点を考慮して、金融公庫の貸し出しにつきましては、地元の医師会、医師などの今後の金融に対して御迷惑をかけないような措置をしなければならぬ、こういうふうに一応考えておるわけであります。
  55. 滝井義高

    滝井委員 それでは根本的な対策は何もないわけです。これは建てても医療金融公庫の数のうちには入れません、それから地元の患者は見させません、こういうことです。それは殷鑑遠からず、医務局長は労災病院の患者を分析してごらんになるといいです。たとえばけい肺の病院だといって労災病院を作ります。これはけい肺専門だ、ほかのものは見ない。ところがけい肺なんかの患者というのは少ないから、二百ベッドも三百ベッドもある豪華な病院を作ったって、その病院はけい肺の患者で充満することはできない。従って健康保険の一般の患者が全部来てしまう。労災患者は四割、普通の健康保険の患者が六割になってしまう。そうすると県立病院がある、済生会の病院がある、その横に労災病院ががっとできると、公的医療機関同士が競合するわけです。こんな国の大事な税金並びにこれに準ずるような金を、むだに二重、三重の投資をやるところに日本経済の過度の成長が出てくるわけです。これは神奈川県のこの病院も同じです。窓口は東京の虎の門の病院に開いておるのです。そして入れる患者は共済組合だけではありませんよ。虎の門に行ってごらんなさい。ちゃんと一般の患者が来ています。そうすると神奈川県の者が見てもらって神奈川県の患者が入れば同じです。そんなしりの抜けたような政策ではだめなんです。ほんとうに医療行政を、少なくとも全国の公的医療機関が適正な配置のもとに日本医療を受け持とうとするならば、こういう二重、三重の投資というものはやめさせるのが合理的な経済主義ですよ。これを一つ厚生大臣力をお持ちなのですからやめさせなければいかぬです。もしこれをあなた方がやめさせ切らずに、このままやるというならば、僕らも厚生行政は信頼できないですから、神奈川県の医師会に総辞退だって何だってやらせざるを得ないです。ここらあたりは折り目を正さなければ、私的医療機関については医療機関整備計画行政指導しているのですよ。今、法律でなくても、見てごらんなさ。佐藤通産大臣でも何でも一割の繰り延べをおやりなさいと言って、どんどん行政指導をしておるじゃないですか。あれですよ。何も権力でやる必要はない、国家公務員の共済組合ですからおわかりのはすです。そういう点でお話し合いになったらいい。ただ国家公務員の共済組合というのは、国民年金とかあるいは厚生年金の積立金の運用の、あのお金を借りずに、自分で金を持っているのですから自由にやってしまうのです。金を持っておれば自由にやれるということになれば、医務局というのは要らぬということです。勝手に病院を建てる、県立病院の横に厚生年金病院を建てる、共済病院を建てる、健康保険病院を建てるということになる。強い者勝ちです。それでは日本医療というのは——資本正義の自由経済といっても、そんなむちゃくちゃな自由はない。資本主義といったって規則正しい自由なのですよ。野放図な、むちゃくちゃな、無秩序な自由ではないはずです。そういうことは大臣一つ十分お聞きになって検討して、今井さんとお話しになって、それでももし強行するというなら、僕らも今度は共済組合その他の経理を徹底的に洗います。これはやらざるを得ないです。こういう力の強いものがわが道を行く、天下泰平の政策をとるならば、これは戦わざるを得ない。十分一つ検討になって善処していただくことを希望して、終わります。
  56. 中野四郎

    中野委員長 この際、午後二時まで休憩をいたします。午後零時三十四分休憩      ————◇————— 午後二時七分開議
  57. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する質疑を続行いたします。八木一男君。
  58. 八木一男

    ○八木(一)委員 閣僚と内閣の編成が変わりまして灘尾さん、森田さんが厚生省大臣政務次官として、非常に人格、識見等の高いお二方がおいでになられたことにつきまして、私は非常にうれしく存ずる次第であります。どうか今までの御経験を生かしていただいて、厚生行政をよく推進をしていただきたいと御期待申し上げる次第であります。  それにつきまして厚生大臣にお伺いをいたしたいのでありまするが、厚生大臣のごあいさつにもございましたように、社会労働委員会のいろいろの論議を大きく参考にして、それをもとにして御推進になる気持をごあいさつで申し述べておられるわけでございまするが、今までの例といたしまして、各行政当局が各委員会の論議をそれほど十分に重視をしたという状態には今までなかったわけでございまするが、厚生省の方は比較的まあ委員会の論議について重視をしておられたようでございますが、それについても先ほど滝井君の御質問にあったように、まだ十分でない点がたくさんあるわけでございます。ここの論議につきましては与党、野党を問わずほんとうに真剣にやって参った経過もございまするし、今後もそれ以上にやって参ることになるであろうと思いまするので、国民の代表である議会の、しかも厚生行政を担当しているこの社会労働委員会の論議を十二分に生かして推進をしていただきたいと思いまするが、それについて厚生大臣の御所見を伺います。
  59. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほどのごあいさつにも申し上げましたように、御造詣の深い皆様方の御支持、御協力のもとに厚生行政を進めて参りたいと存じております。従いまして、この委員会、つまり国会を通じていろいろお述べになりましたことにつきまして私ども十分尊重いたしまして、ときに御意見と違う場合もあるかもしれませんけれども、まじめにお話を伺いまして、十分施策の参考にいたしたいと考えております。
  60. 八木一男

    ○八木(一)委員 厚生省の御担当になる仕事はたくさんありまして、そのおのおのについて私どもまた審議の責任を持っているわけでございまするが、何と申しましても、その中心の事項は社会保障制度の完成にあると思うわけであります。それにつきまして厚生大臣は強い決心を示されたと思うわけでございまするが、これはよほど強い決心でやっていただかなければならないと私ども考えているわけであります。と申しまするのは、社会保障制度を論ずるときに、往々にして役所においても、また学者といわれる諸君においても、諸外国との比較をもって論議を進める向きがあります。もちろん先進諸国のよいところは取り入れるためにそういうような比較が必要でございまするが、その比較の中において、非常に形式的に比較をされる向きがあるわけでございます。諸外国の予算に対する比率がどのくらいであるからどのくらいでよろしいとか、そういうような形式的な比較をされる向きがあるわけでございまするが、それではならないと思うわけであります。と申しまするのは、日本の国は社会保障をもって解決しなければならない状態、貧困であるとか疾病であるとか失業であるとか、そういう状態が諸外国よりも非常に多いわけであります。失業などという問題について、これは厚生省の担当ではなしに労働省の担当でございまするが、顕在失業は少なくなったなんということをよく言われますけれども、圧倒的な潜在失業があることは灘尾さんも十分御承知の通りでありまして、いかなる論議を尽くしても、どんな検討をしても、貧乏と疾病と失業というような問題について先進諸国よりもはるかに悪い状態が多いということは明らかな事実であります。従ってそれに対処すべき社会保障制度については、諸外国のような形式的な比率でとってはならない。諸外国の予算に対する率というようなものではなしに、諸外国の実際の個人一人当たりについてどのくらいやっているかということを参考にし、しかも今貧困やなにかはあるので、それ以上にわたるような、それ以上に実施できるような決心で物事に当たって参らなければならないと私ども考えており、また与党の社会保障に熱心な各位も考えておられると思うわけでございまするが、厚生大臣も同じようにお考えいただけると思うわけでございますが、それについての御決心を伺いたいと思います。
  61. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いろいろなことを申し上げます場合に、外国はこうなっている、外国と比べればこうだというようなことは往々われわれの方で申し上げることでございます。何かの目安というような意味で申し上げるわけでございますけれども、実質的に考えました場合には、これは仰せの通りだと私は思うのであります。同じ数字が現われておりましても、その数字の内容をなすものは国によって違い、生活事情によって違うということは、十分心して物事は考えていかなければならない。またそこまで実は調査の手も伸びていかなければならぬ。従来とかくそういう点においてまだ調査も不十分だというようなうらみは免れないと思うのでございますが、心がまえといたしましては、仰せになりましたような心がまえでやはり資料も整え、計画も立っていくべきであるということは、私もさように考えます。
  62. 八木一男

    ○八木(一)委員 くどいようですが、続いてその問題についてちょっと数字を申し上げますと、イギリスと日本社会保障費は、全体の比率で出してみると、個人当たりだと日本人は約九分の一くらいにしか当たっておらないわけであります。それを往々政府側、大蔵省あたりは予算に対する比率というような卑怯未練な手をもってごまかそうとする。そうではいけないのである。少なくとも同じでなければならないし、貧困や疾病や失業が多い現状、その問題が解決されていないところから見れば、それ以上でなければならないというふうに考えているわけであります。そのようなお考えで、一つ問題を進めていただけたら非常によいのではないかと思います。御答弁は同じだと思いまするので、先に進めて参りたいと思います。  そういたしますときに、いろいろの意味の、特に財政を担当している大蔵省の連中はなかなか頭がいいそうでありますが、頑迷でありまして、帳じりを合わせることだけが彼らの仕事だと思っておる。政治を進めることの方を第二義的に考えるという間違った態度があると思う。大蔵省が非常な実質上の権力を握っておるという現状でありますので、これを打ち破るには相当厚生省が強い決心を持って当たらなければなりませんし、大臣がお持ちになっている非常に強力な政治力をフルに発揮をしていただかなければならないと思うわけでございますが、それについて、先ほども滝井君が言われましたけれども、閣議においてあるいはまた予算折衝の実際的な過程において、灘尾先生が今までの経験と感覚を生かされまして、大蔵大臣何ものぞ、池田総理大臣と取っ組み合いの議論でもするというような意気込みで進めていただかないと、問題が多くて進まないと思いますが、それについての御決心をもう一回お聞かせいただきたいと思います。
  63. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 外国と日本との関係を比較する場合に、単なる数字の比較でやってはいかぬということは、先ほど申し上げました通り、私も同感でございます。ただ、同時にまた外国と日本との国力の相違とか経済力の相違と申しますか、あるいは国民所得の違いというようなことも——御承知のように国民所得はずいぶん違っておる。そういうものが違っておる国と国との間の問題でございますから、実質的に日本としてイギリスならイギリス並みのものができるかどうか、これは日本の力によって判断しなければならない問題でございます。そういう点は、また同様に八木さんの方でももちろん御了解いただける問題だと思うのでございます。つまり日本とイギリスと比べた場合にどうだ、こう申しましても、向こうさんの国力とこっちの国力といいますか、財政力が非常に違っておるというふうな場合もあるということは、もちろん御了解の上でのお話だろうと思います。  それから午前中も滝井さんからも非常に激励せられましたわけでございますが、また私たちといたしましても勉強の足らない点があることは十分了承いたしております。それからまた厚生省における諸準備というふうなものにおいても、資料その他において欠けている点ももちろんたくさんあることと思います。そういう点につきましては、各事務当局を督励いたしまして、できるだけやはり正確な、しかも実際に合う資料を作っていくことをまず考えなければならぬと思います。滝井さんのおっしゃるような準備をもって当たること、これは一番よろしいと思います。  それはそれといたしまして、予算に対する心がまえといたしましては、私は、日本がほんとうにしあわせな国になるためにも、単なる経済成長、単なる所得倍増というだけではいけないというのが基本の考え方でございますので、結局経済成長政策あるいは所得倍増計画を通じまして、全国民のしあわせが幾らかでも上がっていくような方向に努力する、これは私の責任だろうと思っております。そのつもりで、元気を出してやるつもりでおりますから、どうかよろしくお願いいたします。
  64. 八木一男

    ○八木(一)委員 お考えになっていることを率直に熱心に御披瀝をいただいて、非常にその点ありがたいと思います。ただ少し物足らない感じがいたしますのは、これは今責任を持った地位におられますと、慎重な御答弁にならざるを得ないのかもしれませんけれども経済力の相違ということは確かにございます。確かにございまするけれども、それは克服できる問題であって、それから財政の問題も、何も財政がどれだけに限らなければならないという規定もありませんし、またその配分の問題も幾らでも考える方法があるわけであります。要は、社会保障を、すぐにはいかないにしても、イギリスより以上にやる。速急にそれに追いつくというような決心があれば、ほんとうの政府方針がきまれば、財政の問題はいかようでも、そのワクの問題も、あるいはまたその配分の問題も考えられる問題でございますので、そういうことは十分御承知の上で、責任のある立場で慎重におっしゃったのだろうと思いますけれども大蔵省の言いそうな財政のワクというような問題にとらわれずに、一つ推進をしていただきたいと思います。  それからもう一つ社会保障の問題についてほんとうに憲法二十五条の精神を全部全国民に均霑をさせるということが第一義的な、ほとんど一番重要なことであることは間違いございませんが、それ以外に意義がたくさんあることを先輩の灘尾さんは十分御承知だろうと思います。そのほかのことについてもやはりいろいろの場で意義を強調しておきませんことには、まだ世の中にはわからずやがいて、貧乏人や病人を助けるだけでは積極性がないという間違った考え方を持っている人が世の中にいますし、政府部内にも、あるいは議会の部内にもおらないとも限らないわけです。その意味でも社会保障というものがほんとうに全国民の人権を、健康で文化的な生活を守る、それを保障するものであるということが第一義的であるけれども、それをやることについて経済の問題でも雇用の問題でも、すべての意味でいいことが推進できるんだということをいろいろと御説明願いたいと思うわけです。どういう意味を持っているとお考えですかという御質問をしなければならない順番になったわけでございまするが、先輩にそんなことを申し上げてもなにかと思いまするので、私ども考えております意義を申し上げまして、もしそれと違う御意見があったら伺わしていただく、それと同じでしたら、そういうことで進めていただくというふうにしていただきたいと思います。  社会保障はほんとうに健康で文化的な生活をすべての国民に保障するためにあるということが第一義的な意味であろうと思いますが、このほかに生産面や、あるいは構造面や、あるいは直接に財政面、そういうような問題についても常時いい効果を表わすものだと私ども考えております。まず第一に心理的なものでありますが、心理的なものというと、具体的なものがないように思う方も世の中にあるかと思うのですが、私どもとしては、生活の実感から非常に大きなものだと思います。年寄りになっても完全に生活が保障されている、病気になっても、今の国民健康保険のようなけちなものではなしに、完全に十割の給付が行なわれて、制限診療が行なわれないで、一番最新の医学をもって完全に病気が早くなおしてもらえるというような問題、あるいは遺族になっても、心配せずに子供に十分な教育が施せるというような問題、そういうような問題が完全に行なわれておりましたならば、これが勤労者階級であろうと、あるいは農民の人々であろうと、商売にいそしんでおる人々であろうと、そういうような心配なしにそのような仕事に従事できて、これは大きな意味で無形の経済拡張、日本の発展のために非常に大きなものになると思うのです。家庭を守る婦人にしてももちろんそうであります。またそれと同時に、具体的に医療保障、所得保障がされているという問題以外に、そういうことが完全であれば、家庭の中において、たとえば蓄積が少ないから病気になったらどうするという問題で主人が心配される、また奥さんがノイローゼになるというような問題がなくなりましたならば、国民のしあわせの程度は非常に増大をすると思うのです。その心理的な大きな意義があるということがまず一つ考えられるわけであります。  それからもう一つ、これは社会保障の必然的な効果でありまして、具体的に今の二重構造の問題で考えなければならない所得再配分の問題でありますが、所得再配分ということは具体的に社会保障を通じて行なわれる、もちろん大衆減税においても行なわれますけれども社会保障が、所得再配分をしなければならないときに、より密度の多い配分が行なわれて、非常に効果があるということになるわけでございまするが、そのことの効果というものは、今一時的に経済が何とか、いろいろの問題が起こっておりますが、長い目で見まして、所程再配分によって、国民の購買力が増大、安定をする、そのことが需要を広げて安定させる、生産を安定、拡大する、景気の波を少なくする、雇用の増大と安定に役に立つという意味で、今日本の重要課題になっているすべての問題に大きな一つ推進力になるわけであります。そういう点で社会保障というものは非常な積極性を持っておる、生産拡大のためにも完全雇用の道を推進することについても、大きな積極的な意味を持っておると私ども考えているわけであります。そういう意味のことがございます。  その次に、もっと小さく財政的にしぼって考えてみたいと思います。そういうさっき申し上げたようなことを私どもが主張すると、大体において全面的にどの厚生大臣もその通りだと言っていただいておりますが、大蔵大臣あたりに言うと、それは是認するけれども、しかし財政的なワクがあるというようなことを言われるわけであります。これは非常に近視眼的な財政観を持っておられる大蔵大臣であろうと思います。問題は、一年、一回だけの収支のバランスの問題ではないわけであります。大きな意味で、最初よくやることによって問題が解決して、後にそういう財政支出を免れるということであれば、これは大いにやらなければならない問題ではないか。たとえば去年ポリオ・ワクチンの問題が取り上げられました。それでごくわずかですが、積極的な国の支出があった。このことによって小児麻痺の問題が去年の非常な流行期に、少しおくれましたけれども、後半流行を抑えるのに相当の効果を表わした。これをもっと前から、もっと早くやっておったならば、それに要する後々の費用は少なくなったであろう。それはワクチンの問題でありますから、後々の金にしてもそう大したことはないかもしれませんが、結核の問題にいたしますと、御承知の通り療法は医学的に非常に完成されているわけでありますが、完成されているのをなかなか根絶ができないのは——根絶といってもほんとうに重いところまでいってしまった人はとどまっているだけでなおらないかもしれませんが、ほとんど根絶という言葉を使っていいような、将来の発生を防ぐという状態にするためには、経済的に対処することだけで大体足りるのです。ところがその問題が、八割国庫負担というものがこの前推進はされましたけれども、濃厚感染源だけという制限がついている。濃厚感染源の一つ下がそういう趣旨がとられないために爆発して感染源になる。その人の不幸は言うまでもありませんけれども、また公衆衛生上も非常にまずいことになる。ちょっとの金惜しみのために効果が表われないことがある。あれだけのりっぱな医療技術が発達したときに、これを完全に資金をつぎ込んで対処すれば、後々の膨大な結核の対策費が少なくなることを考えますと、財政的に考えても、こういう問題を推進することの方がよいという結論になるわけであります。それをほとんど大蔵省の連中は考えていない。厚生省の方もそういう問題について強力に主張されたのかどうか知りませんが、主張された効果が表われておらない、少ないという点を私どもは痛感しているわけでございますが、財政的に見てもそういうことが非常によいので、大きな財政的な見地で社会保障というものが重視されてしかるべき点であると思います。  ちょっと前後いたしましたが、それとともに、さっきの問題に関連があるわけでございますが、全般的に所得再配分がされて、国内の購買力が増大、安定をして、経済が安定、拡大をし、雇用が増大、安定をするという問題のほかに、もう一つ別に非常に効果がある問題があります。たとえば老齢年金というものが今のような不十分な乏しい形でなしに完全に確立された場合には、農家の人が安心して早く農地の所有権、経営権を次代の子供に譲り渡すという問題が起こりましたならば、その若くなった世代の農業経営者は時代の感覚に見合って農業の近代化あるいは協同化という問題を進める。中小企業においてもしかりでございます。ということになりましたならば、そういう問題で産業を進める、日本経済成長させる、農民の所得を増すというようなことにも非常に役に立つわけであります。そういうような点で非常に大事であります。また労働問題にしましても、老齢保障が完全に早くから完成をされておりましたならば、労働力を新陳代謝をして、非常によい、清新な労働力を大事な生産点につぎ込んで生産を増すということにもなるわけです。そういうような非常に大きな意義も持っておるわけです。そのくらいのことは灘尾厚生大臣は十分御承知だと思いますけれども政府部内全部では社会保障をそこまでの観点において理解を持つ人ばかりではないと思う。そういうような観点でもしぐんぐん排していただきますならば、本来の社会保障がさっき言ったように急速に拡充されなければならない、完成をされなければならないということの大きな裏づけになって、これを進められるのにぐんと役に立つのではないかと思うわけであります。私どももこういうことを申し上げているのは、このような論議が会議録に載って、それが幾分の社会保障を急速に拡大するお役に立つであろうかという意味でこういうことを申し上げているわけでありますが、速記録に載るよりは、直接に担当者である厚生大臣灘尾さんがこういう問題について、当然前からお考えになっておられると思うけれども委員会においても同様な意見の強力な推進があるということを一つのお力とされまして推進をしていただければ非常に幸いだと思うわけであります。先ほど一人よがりなことを申し上げましたけれども、私と厚生大臣は同じようなお考え方でおありになろうと思いますけれども、もし違うといけませんので、同じお考えでそのように強力に進めていただけるかどうか、一つお伺いをいたしたいと思います。
  65. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 非常に有益な御指摘をいただいたと思うのでございます。社会保障の持っております意義について、きわめて簡明に、かつ明確に教えていただいたような次第でございます。私もこの方面のことにつきましては専門的ではございませんけれども、多少関係を今まで持っておりました。とかく社会保障とか社会福祉とか申しますと、いかにも非生産的なことでもやっているのじゃないかというような考え方を持たれる方が、少なくとも、最近はどうか知りませんけれども、昔われわれがやっておりました時代には多かったものです。私はその当時から思っていたのでありますが、社会保障とか社会福祉というものには、決して単なるその人をお助けするというだけのものではない、もっともっと広い意義もあれば効果もあるというふうに考えておりました一人でございます。今度の所得倍増とか経済成長とかということをわが政府が言っておるわけでございますが、この経済成長政策、所得倍増政策目標とするところといいますか、目的はやはりお互いのしあわせが増進する、すなわちもっとしあわせな国にする。言いかえれば社会保障等の完備をした国にしていくということになろうかと思うのであります。同時に私の言いたいのは、経済成長をやるためにも、いわゆる所得倍増計画を達成するためにも、社会保障を怠ってはならない。つまり今八木先生がおっしゃったような心持ちが私にもあるわけであります。これは私の一種の持論であると申し上げてよろしいと思うのであります。  問題はただ、八木先生のお言葉はつまり予算その他をとる場合において、もっと積極的にやれという御激励のお言葉と実は私は伺ったのであります。何にいたしましても国力の限界があり、そのときそのときの財政力の限界のあることでありますので、こちらの思うままに何もかもいくとは思いませんけれども、そういう心持ちで私は社会保障の意義を感じておりますので、同じような心持ちでできるだけの努力をいたしたいと考えております。
  66. 八木一男

    ○八木(一)委員 大へん前向きの御答弁をいただきまして満足をいたしました。  やや具体的な問題に少し入らしていただきたいと思いますが、社会保障の問題が論議されるときに、往々にして防貧が先か救貧が先かという問題がございます。これにつきましては私は両方とも大事だと思うわけでございますが、厚生大臣の御所見を一つ伺いたいと思います。
  67. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どちらが先かということになりますと、私もどちらが先というふうには言いにくい問題じゃないかと思います。とにかく現に目の前で捨て置けない人をまずもって助けなければいかぬということは当然のことでございます。しかし政治の方から申しますと、そういうふうな事態の発生を少なくとも少なくするというところに目標がなければならぬと思います。そのような意味におきましては防貧という問題は決しておろそかにできない。ちょうど病気の場合に疾病治療も大事ですが、病気にかからないようにするというととろに厚生行政として考えなければならぬところがあるということを申し上げるのと同じだと思います。
  68. 八木一男

    ○八木(一)委員 厚生大臣のおっしゃる通りでございまして、私もそのように思うわけであります。ただ私の意見をもう少し詳しく申し上げますと、将来の姿としては完全に防貧が完成しておって、自働的にいろいろな対処がされて、貧乏にならないという制度が完成されなければならないと思います。それが筋道だと思います。ところが往々にしてこの大事な議論がすりかえられて、それであるから、今の救貧対策を進めることについていろいろお話をすると、防貧が大事だからということを逃げ言葉にして救貧対策をおろそかにされる向きがあるわけであります。今の貧乏の問題、これは今までにいろいろな経済政策、雇用政策等が十二分にいっておらなかった、あるいは中小企業対策、農業対策が十分にいっておらなかったために貧乏が出た、しかも防貧対策である社会保障のいろいろな問題が非常に不十分であるために、さらにその貧乏が出ることに拍車をかけているというところから来ているわけであります。そういたしましたならば、当面の場合は救貧があくまでも先である。しかしながら、救貧があくまでも先であるということでそれしかしておらなかったならば、いつまでもそういう状態が続きますから、防貧を完成する道を進められると同時に救貧を即時対処をされる。当面ただいまの問題としては救貧の方が先だというふうな考え方を私どもは持っておるわけであります。厚生大臣も同じようなお考えでおありになろうと思いますが、もう一回……。
  69. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在とにかく生活の実情から申しまして、いわゆる貧困というものが存在しておるわけであります。現にその貧困の状態にある人を救うと言いますか、言葉はいろいろございますけれども、そういう人たちを引き上げていく、あるいは助けていくということがとにかくなさなければならぬことであることは、これは当然のことであると思うのであります。できることならば、いわゆる社会保障というものがほんとうに整備せられ、ほんとうに整ったというときには、どなたも少なくとも生活の面においていわゆる救貧という言葉を使わなくても済むような状態に持っていくのが私どもの立場じゃないかと思います。
  70. 八木一男

    ○八木(一)委員 救貧の問題は具体的な問題としては生活保護法の問題であり、あるいはまたほかのも一のを探し出せば年金の場合では福祉年金の問題、そういうような問題になろうかと思うわけであります。生活保護法につきましては、今度予算を少し大きくとりましたけれども、そのようになりましても、今の生活保護法の状態から見れば年初一八%、今度五%お上げになっても、はなはだ乏しいものであると考えるわけでございますが、それについてはいかがお考えでございますか。
  71. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 生活の底がどの辺にあるものかということになりますと、いろいろ議論のあるところと思いますが、厚生省といたしましてはその底を上げていきたいわけでございます。本年度は一八%上げていただき、今度の補正予算で、これはとりあえずの措置でございますが、五%ばかりお願いしておりますが、来年度の予算におきましてはさらにまたこの底上げを行ないたいというのが私ども考え方でございます。現状は決して満足すべき生活程度と言うわけには参らない、かように考えております。
  72. 八木一男

    ○八木(一)委員 今急に詳しい数字の持ち合わせがございませんけれども、ほんとに生活保護法の基準というものは低いもので、今年の一八%あるいは今度の五%が実現いたしたとしても、これはほんとうに低過ぎる問題であります。食事の一日の平均の数字を忘れましたけれども、昨年の数字では一日の平均が、ちょっと失念いたしましたけれども、低いものでありまして、このような状態では健康で文化的な最低生活を保障するということが生活保護法の第一条及び第二条でございますか、両方で書いてあるわけでございまするが、健康で文化的なのではなしに、わずか生活をかろうじて支えるというだけで、健康をみずから食って、自分のからだを食べて命をある程度臨時的に支えているという程度の基準にしかならないわけです。この最低のものでありまするから、ある程度ということでは困るのでありまして、ほんとうに健康で文化的な最低限度というものを実際のものにしていただかないと、これはほんとうに憲法二十五条がじゅうりんされたという法律的な、憲法的な問題より以前に、日本国民がほんとうに国家の手で放り出されておるということになろうかと思うわけであります。いろいろの諸統計で見ると、どんなに少なくとも昨年度の基準より倍必要であるという議論が多いわけでございますが、一番少ないものでも五、六割はすぐ上げないと健康を食っていくという状態であります。ところが、本年の初頭に一八%、今度五%しか対処がされておりません。このように財政的に余裕があるときに、このようなことでははなはだ乏しいわけでありまして、これについてさらに急速に対処される必要があろうと思いますが、これについてのお考えをお伺いしたいと思います。
  73. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 できるだけこの基準率の引き上げには努力して参りたいと考えます。
  74. 八木一男

    ○八木(一)委員 今、最初の御質問でございまするから、私の質問も抽象的になっておりますし、厚生大臣の御答弁も抽象的になっておりますが、これだけはもっと具体的に掘り下げて考えていただかなければならないと思います。たとえば、昨年の基準ではまだ下着の基準が二年間に三枚という基準でございます。二年間に三枚で、どっちみち基準の取り方は低い。ですから、一番粗末な下着に違いない。どんなに着こなしのいい人であっても、そのような粗末なものであっては、一日も二日も、夏のように汗をかいていればこれは裂けてしまう、破けてしまうというのが普通起こる事態であります。それが二年間に三枚であっては、極端にいえば下着のない生活を送らなければならない。これは文化的な生活とはどう考えても言えないわけであります。下着をはくことができない、つけることができない、そういう基準になっております。  それから、生活費も、先ほどちょっと数字は申し上げませんでしたけれども、たしか平均して一日四十七円というような数字が昨年は出ていたと思います。一日四十七円というような食費では、これはほんとうにちょっと中間層の人たちが畜犬にそう惜しみもせずに食べさせているその費用よりも少ないということになるわけであります。日本というこの興隆をしかけておる大きな国が、その大事な国民に憲法の条章によって保障されているととがそのような程度ではまことに恥ずかしいことです。そういうことで、考慮して、研究してという余地のない問題であり、少し待ってくれという余裕のない問題であります。この臨時国会に、もちろん五%ではなしに、もっと大きく対処していただかなければならないと思いまするが、ことに通常国会においては、このように今までのちょっと何%上げたからいいというような問題ではなくて、根本の規定が健康で文化的な最低生活をはるかに下回っている。文化的な要素は一つもない、健康的な要素も一つもない、自分の健康を食って、不健康な生活をしている。だから、ほんとうに健康で文化的な最低限度になるように急速に生活保護の基準を変えられて、またその基準を一々変えないで済むように、毎年々々、健康で文化的な最低限度の基準はどうであるか。文化的という要素は流動的であります。それからまた健康という要素も、食物の生産事情、食物のいろいろな加工事情、あるいはまた医療の進歩とか、予防の進歩とかいうようなものを考えましたならば、これも流動的であります。ですから、今基準よりも非常に下回っておるものを直すと同時に、今最低のものがちょっとでもおくれれば人権が非常に侵害されますから、毎年自動的に健康で文化的な最低限度に上げるように、そのような方策を考えられる必要がある。そういうことについてぜひお考えをいただきたいと思います。非常に民主的、科学的な調査に基づいて民主的な審議をするそういう審議会のようなものを作って、そして毎年七月ごろに基準を出す、人事院の勧告みたいなものです。明年度の生活保護の基準はいかがあるべきかという勧告を出す、政府はこの問題に関する限り、それに従って予算を組まなければならない。そのような問題でこの一番最低生活の問題をすき間なく、欠陥がなく実施をしていただく態勢を固めていただきたいと思います。いかに政府が一生懸命やってもその間時期的に非常にまずいことが起こる、しかも今根底がお話にならない程度に非常に低いわけでございますから、そういうような問題を抜本的に解決して推進をするということをぜひお考えいただきたいと思いますが、それについてのお考えを伺いたいと思います。
  75. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 生活保護基準を具体的にどの辺に求めるべきかという問題となりますと、これはかなりむずかしい問題だと思います。慎重な調査をし、また周囲の状況、社会の状況というふうなものを勘案して、つり合いのとれたものをやはり考えていかなければならぬということも言えるだろうと思います。ただ、御意見として今お話しになりましたことは、私どもとしましても非常に意義のある御意見のように思っております。できることなら合理的な生活保護基準を求めて、そしてそれがそのときそのときのあれで動くんじゃなくて、理屈に合った動き方をするような方式がもしできたら非常にいいんじゃなかろうかというふうに、これは私の考え方としては思っておりますが、そこまでいくのにはまた相当研究をする必要があるじゃないか。非常に有益な御意見として承っておきます。
  76. 八木一男

    ○八木(一)委員 次に、生活保護の問題で生活保護法の第一条に「この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」というふうにあるわけであります。この条文のあとの方を見ますると、第一条に規定した自立の助長という問題につきましてはほとんど具体的な規定に欠けておるわけです。行政措置として具体的な規定に欠けておる非常に不合理な生活保護法の不合理さを埋めるために厚生省当局ではへ理屈——いい意味のへ理屈を考えて埋めようとしておると思いますが、やはりそれにも限界があって、自立助長ということはなかなかできておらないと思います。この問題で生活保護法を、前の問題もそうでございますが、改正をする必要がある。との自立助長の問題についての厚生大臣の御見解を伺いたいと思います。
  77. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 生活保護法の目的は、単にこれを助長するというだけでなしに、自立の助長ということは、これは確かに基本の考え方だろうと私は思います。ただ、実際問題として、その自立させる方法というものが、生活保護の対象となっておる人たちに対してどの程度のものがあるかということになりますと、これはお教えを受けなければならぬ問題じゃないかと思うのでございますが、なかなかいい方法もないのじゃなかろうかと思っております。十分一つこの問題については研究さしていただきたいと思います。
  78. 八木一男

    ○八木(一)委員 抽象的な具体的な質問をしましたのでおわかりにくかったと思いますが、厚生大臣の御答弁では、何か職業補導とかそういうようなことを考えての御答弁のように思いましたが、そういう問題ではないのです。もちろん職業補導も必要ですし、内職の指導とか、そういうことも必要だろうと思います。そういうことに対する資金の貸付とか、そういうことも必要だと思います。それはもちろん、職業訓練とか雇用の面とか、零細の自立業の育成の面とか、そういう面で十分に考えられなければならない問題でありますが、生活保護法としての自立助長という点は、焦点が別の点にあると私は思います。そういうようなほかの面の対策——何らかの収入を得る。収入を得たときに、第四条の規定で、結局その収入が収入認定をされて、生活保護法の生活扶助の中から引かれるわけであります。一生懸命働いて、何らかの収入を得る。何らかの収入を得たけれども、実際には生活保護法でもらっている扶助の金額以下でありましょう。ですから、それだけは引かれてしまって、実生活はそれだけふえない。そういうふうに生活保護法というものは非常に後半間違って規定をされておるわけです。第一条等はよく書かれているわけでありますが、それから以下は——第一条、第二条、第三条まではいいんですが、第四条以下がはなはだけしからぬと思うのです。そういうことでありますので、この第一条の精神を生かすためには、働いて、くたびれだけ残ったというようなことのないようにしなければならないと思う。未亡人が、子供にちょっとでもおいしいものをたまには食べさしてやりたい、ちょっとでもましなものを身につけさしてやりたいというので一生懸命働いて、何らかの収入をあげたものは、今の法規上は、はっきりと収入認定されて差し引かれますから、実質収入は同じ——お母さんがくたびれただけ、仕事している間気の毒な子供たちをかまってやれなかっただけ不幸が増すことになる。働いたことが不幸を増すのでは自立助長にはならない。そういうような点を根本的に直していただかないと、これはびっこのがんじがらめの法律になる。厚生省の方では今勤労控除というものをやっておられます。けれども、勤労控除は行政的にはうまくやっておられるかもしれませんけれども、あまねくすべての職種にやっておられるかどうかはなはだ疑問である。失対事業に働いている人は勤労控除の対象に即時なるでしょう。ところが、未亡人の人がどこかのうちのお手伝いにちょっと臨時的にいって、そこでお礼をもらわれたという問題がこういう勤労控除の中に認定されているかどうかは——されているところもあるかもしれませんが、必ずしも全部されているとは限らない。あらゆる、どんなことで働いても、働いたことが実生活をうるおすというようにならなければ——実際には、働いた方がいい、自分も働きたいと思っても、そういうことにならなければ、ほんとに健康を維持するに足らない食物しか食ってないから、働けばくたびれてしまって仕方がない。しかも母親は乏しい食糧の中から子供にたくさん食べさしておりますから、実際の基準以下ですから、そういうことになる。  それからもう一つ、勤労控除というものは非常にむずかしい解釈といいますか、いい意味で一生懸命考えられたわけだ。必要経費の控除という理屈で今実施をしておられる。この非常に間違った生活保護法を行政的に最大限度に、善意をもって解釈されて、必要経費ということで収入認定をしないというやり方は非常にいいと思う。私は拡大解釈しても、こういうことなら幾らでもかまわない。かまわないけれども、やはり必要経費ということだけでは限度がある。その限度の一番大きなものは何かといえば、六人世帯の生活保護を受けている世帯、二人世帯の場合でも、勤労に出る人一人だけの控除でありますから、その効果は一人しか——世帯の多い人には一人当たりの効果が少ししか及ばない、わけです。五人の世帯だったら、勤労控除で——ほんとうは必要経費があるからそれだけふえないのです。地下たびが要るとかタオルが要るとか、石鹸が要るとか、ほんとうはふえないのです。かりにふえたと仮定しても、そういう生活保護を受けた人だったら、一人分の勤労控除が、今度最高二千百六十円とかになったという話ですけれども、前は千二百円ぐらいです。それだけの収入増加があるとしても、五人豪族ではそれが二百四十円ぐらいということになる。ですから、これだけではまかないきれない、自立助長ということに。それに対して、生活保護を受けている世帯の一人当りについて全部、いかなる職業で働いても、いかなる収入であっても、ある程度の、生活をほんとうに前進させるための控除が必要だろうと思う。そういうことによって、働いたら少しはキャラメルも食べさせることができるということになれば、一生懸命に働くでありましょう。働くことによって、働くことにもなれ、勤労にもなれ、商売にもなれ、それに自信もその程度が増してくる。そうして自立することができるのに、それがされていないので機会が持てない、商売にもなれない、自信もつかない、お得意様もつかないということであれば、これはだめですが、そういうふうに、働きながら収入を増していければ、生活意欲が出て、それをやっていくうちには自立することもできるということになろうかと思います。そういう意味で、全般的に家族数に比例して収入認定を一定割合控除するように——そういうような仕組みに変えないで、口に助長を言っても、ほかに職業補導その他をやっても、その間の期間が耐えられませんから、なかなか済まないのじゃないか。そういう意味で生活保護法を変えていく、りっぱに成長さしていくというお考えをとっていただきたい。これについての厚生大臣のお考えをお聞きしたい。
  79. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今お述べになりましたことは、この生活保護に関連して私どもしばしば聞くところでございます。この辺をどういうふうにやったらよろしいのかということが一つ研究課題だと私は思います。現行法から申しますと、お話の通りかなりむずかしい面もあるようでありますが、現行法の建前としてはまたやむを得ない制約だということにもなろうかと思うのでございます。十分一つ研究さしていただきたいと思いますが、なお私のお答えでは不十分の点もあるように思いますので、社会局長から御説明いたさせます。
  80. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 補足して申し上げます。  八木委員はもう申し上げるまでもなく、よく御承知の上で御質問になっていることと思いますが、生活保護は社会保障制度一つの中核として採用したものでありまして、これは全国民が、理由のいかんを問わず、最低生活を割るようになりました場合に、これをもって最低生活の線で食いとめたい、そうして社会に再起していただく、こういう制度でございます。従いまして国民といたしましては、できるだけ——最低生活に陥るということは、御自身についても不幸でありますが、またその最低生活に陥ったために国の保護を受ける。それは回り回って他の国民の税金でございますから、極力そういう、他の国民に御迷惑をかけることは避けると申しますか、そういう意味からいたしまして、生活保護を適用いたします場合に、その困っている人が自分で努力し、できるだけのことは自分でしていただくということが前提になる。その意味で補足性の原理ということが出てくることは、お認めいただかねばならぬと思うのであります。しかし、そういういろいろな手を尽くしましても、なおかつどうにもならぬという場合には生活保護を適用しなければならないわけであります。しかしながら、そういう不幸な事態に陥りました方についても、私どももできるだけいろいろ手助けをしてあげ、また指導を要するところがあれば指導もしてあげて、そうして早く社会に自立更生していただく、これが私どもの願いでもありますし、この法の建前でもございます。事実、われわれ力は足りませんけれども、今日において毎年、生活保護家庭から約四割の方は社会に更生していかれるわけで、また特に家族の中に働き手のある、いわゆる稼働世帯におきましては、その更生率はさらに著しいものがあるわけでございます。もちろん社会に自立更生と申しましても、それはわれわれの普通の人の考えておる堂々たる自立更生ではないと存じますけれども、とにもかくにも社会に一本立ちになって、自主性とプライドを持って社会生活を営んでいただくようにお願いする、こういうことになっておるわけでございます。そこで、その場合に、そういう線からいたしまして、極力——働けない場合にはいたし方ございませんけれども、働ける能力を持ち、意欲を持っている限りにおきましては、その方々に職業をあっせんしてあげるというようなことが当然起こってくるわけでございます。職業安定あるいは失業対策事業、あるいはまた不完全な能力しかない方には授産事業なり、いろいろなことでもって収入を自力で得させるようなことを私どもお世話しておるわけでございます。その場合に、その収入が何ほどかありました場合、これはそのまま差っ引くということでありますれば、まさしく八木先生のお話のように、働くほど疲れてばかを見る、こういうことになるわけで、もちろんそういうようなことは、私どもはいたしておらぬわけでございます。当然その働きに従って必要な経費とか、経費といってもエネルギーの代償とか、あるいは職場の経費とかいうものについて私ども考えておるわけでございます。たとい差っ引けば同じじゃないかとなりましても、やはりそういうことで働いていない場合にはおいしいものも食べられない。働けばそれだけエネルギーも必要でありますので、それだけの収入があれば、それだけうまいものが食える。しかし、働くというからにはエネルギーを使っておるわけでありますから、差し引き一緒かというと、同じである場合もありますが、そうばかりとも言えない、かように考えるわけであります。その収入認定の際にも、極力気持といたしましては、願わくはこの働いたという事実から漸次発展して、早く保護家庭から社会に自立更生していただけるようにというようなことからいたしまして、勤労控除についても漸次改善をはかり、また勤勉控除とかというような、いろいろなものを私どもとしては考えておるわけでございます。さような点につきまして、基本的にはお認めいただけるのではなかろうか。個々の点につきましては、いろいろ私どもも勉強せねばならぬ点があると自分でも思っております。ただ遺憾ながら、まだいろいろな私どものデータなどが不足で、また私どもの勉強が不足のために、なかなか皆さん方によくやったと言われるまでに至らないのは残念でありますけれども、これは今後とも努力して参りたい。お話の、たとえば勤労控除の規模を家族数において云々ということにつきましては、これはここでどうこう申し上げるつもりはありません。そういうお考えも承って、私どもとしては研究いたしたい、かように考えます。
  81. 八木一男

    ○八木(一)委員 社会局長、一生懸命御答弁になったのでありますが、一番最初に言われたことが困るわけです。その考え方をやめていただかないと困ると思います。それから厚生大臣も聞いていただきたいと思うのですが、非常にほかの答弁はいいのです。ですが、国民の税金でまかなわれるものであるからということをおっしゃいました。それはやはりそういうことを大蔵省が言うわけです。税金でまかなわれて、国民は納税の義務を持っている。ところが国民は憲法を順、守する義務を持っている。政府は健康的で文化的な最低生活をあらゆる国民に保障しなければならない。政府がそれをやる義務を持っている。国民協力する義務がある。納税者のものでありますからというけれども、そういうようなことで大蔵省にいつも押えられていると思うのですが、太宰さん、少なくとも厚生省では、今のことは別にあれですけれども、お使いにならないでいただきたい。ほんとうの基本的人権の最低のものはじゅうりんされているわけです。それを直すときに、国民の税負担があったというようなことでは問題は進みません。税負担は国民の義務なのです。憲法を順守するのは国民の義務なのです。そうしたら当然やらなければならない税負担をぶうぶう言う連中がけしからぬわけです。最低の生活を保障するのに、具体的な問題として、さっきは申し上げなかったけれども、たとえば生活保護法の中の、一日の子供に対する嗜好品費はたしか三十銭か四十銭で、キャラメル一個にならない。一箱じゃないのです。一箱の中の一個分にならない。がんぜない子供を二、三人未亡人がかかえ込んでおるときに、キャラメルを一つ食いたいというときには一生懸命にならざるを得ない。それで一生懸命働いたのが全部差っ引かれたら何にもならない。勤労控除というのは現行法が悪いわけで、これは太宰さん初め社会局が一生懸命になっておりますが、この法律は第一条から第三条まで完全無欠で、第四条以下はめちゃくちゃな法律で、こんなでたらめな法律はあったものではない。そういう悪い法律の元を行政的に何とか食いとめようとして、そういう理屈を考え出されて、必要経費という意味で勤労控除を考え出された努力、これは認めたいと思う。ところが、幾らやっても、現行法がある限り、厚生省努力がそれを少し上増しすることにしかすぎないわけです。その壁を打ち破る仕事が灘尾さんのお仕事だろうと思う。もちろん社会局全体もやっていただかなければならない。こういうような不合理きわまる点がまだ六つほどあるのですが、時間がなくなったからあれにしますけれども、とにかく生活保護法というものは第三条までは非常にいい。ところが第四条以下は実に悪い。前は極楽のような法律であって、あとは地獄のような法律で、第四条以下はそういう非常に矛盾をはらんだ法律です。ところが生活保護について宣伝されるときに、一条、二条、三条は非常にいい法律であるように言われて、実際に当たっては四条以下を猛烈に適用して、地獄の法律にするというようなことが今行なわれている。それを地獄としないように努力されておるようでありますけれども、さっき例にあげたように、キャラメル一個も一日に渡らないような内容です。そこで努力する。努力したものが全部差っ引かれて、疲れだけが残り、キャラメルも食べられない。子供には、せめて母親の愛情で、十分には回らないけれども楽しくさせてやろうと思って、一生懸命働いたものを差っ引かれたら、だれも勤労意欲など出っこない。そういう問題に対処するために、第一条のりっぱな条文で自立を助長するということを第四条以下で具体化するように直していただきたい。直す方法としては、今の解釈では十分にいかない。家庭の員数全体、母親なり姉なり兄なり、じいさん、ばあさんでもいいが、その人たちが一生懸命働いたものが実として残るというふうにすれば、勤労意欲がどんどん出る。その意欲が出て、いろいろな職業なり商売になれることによってほんとうの自立ができる。そういうものをぜひ作り上げていただきたい。第四条以下では扶養義務の問題とか、個人単位あるいは世帯単位の問題であるとか、いろいろ大問題がございますが、きょうはお約束した時間が参りましたから、ここで中断いたしまして、後ほど続けさせていただきたいと思いますが、この問題について厚生大臣が、技術的な点は事務局におまかせになってけっこうですけれども、大所高所からお読みになったら、実にけしからぬ法律ですから、大臣がそれを直すために生活保護法の抜本的改正に踏み切る準備をされて、通常国会くらいまでにぜひ出していただきたい。そういうおつもりで一つ検討願いたいと思います。今国会中にどのような構想がとられて、どのようなものを出される決心であられるかということをお伺いしたいと思いますが、ぜひ一つ検討願いたいと思います。またそういうふうに前向きで、そういうことがよくなるような意味で進めていただきたいと思いますが、それについて御答弁願います。
  82. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 八木さんの生活保護法に対する御批評でございますが、はたしてこれが首尾一貫しておるのか、していないのかということになりますと、制度としてもこれはなかなか大きな問題でございます。ことに社会保障といたしましても一番重要な法律の一つなので、御質問の御趣旨につきましては十分一つ検討さしていただきたいと思います。
  83. 中野四郎

    中野委員長 他に御質問もなければ、本日はこの程度にとどめ、次会は明四日水曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。午後三時十分散会