○八木(一)
委員 お
考えになっていることを率直に熱心に御披瀝をいただいて、非常にその点ありがたいと思います。ただ少し物足らない
感じがいたしますのは、これは今責任を持った地位におられますと、慎重な御答弁にならざるを得ないのかもしれませんけれ
ども、
経済力の相違ということは確かにございます。確かにございまするけれ
ども、それは克服できる問題であって、それから
財政の問題も、何も
財政がどれだけに限らなければならないという規定もありませんし、またその配分の問題も幾らでも
考える方法があるわけであります。要は、
社会保障を、すぐにはいかないにしても、イギリスより以上にやる。速急にそれに追いつくというような決心があれば、ほんとうの
政府の
方針がきまれば、
財政の問題はいかようでも、そのワクの問題も、あるいはまたその配分の問題も
考えられる問題でございますので、そういうことは十分御承知の上で、責任のある立場で慎重におっしゃったのだろうと思いますけれ
ども、
大蔵省の言いそうな
財政のワクというような問題にとらわれずに、
一つ推進をしていただきたいと思います。
それからもう
一つ、
社会保障の問題についてほんとうに憲法二十五条の精神を全部全
国民に均霑をさせるということが第一義的な、ほとんど一番重要なことであることは間違いございませんが、それ以外に意義がたくさんあることを先輩の
灘尾さんは十分御承知だろうと思います。そのほかのことについてもやはりいろいろの場で意義を強調しておきませんことには、まだ世の中にはわからずやがいて、貧乏人や病人を助けるだけでは積極性がないという間違った
考え方を持っている人が世の中にいますし、
政府部内にも、あるいは議会の部内にもおらないとも限らないわけです。その意味でも
社会保障というものがほんとうに全
国民の人権を、健康で文化的な生活を守る、それを保障するものであるということが第一義的であるけれ
ども、それをやることについて
経済の問題でも雇用の問題でも、すべての意味でいいことが
推進できるんだということをいろいろと御説明願いたいと思うわけです。どういう意味を持っているとお
考えですかという御
質問をしなければならない順番になったわけでございまするが、先輩にそんなことを申し上げてもなにかと思いまするので、私
どもの
考えております意義を申し上げまして、もしそれと違う御
意見があったら伺わしていただく、それと同じでしたら、そういうことで進めていただくというふうにしていただきたいと思います。
社会保障はほんとうに健康で文化的な生活をすべての
国民に保障するためにあるということが第一義的な意味であろうと思いますが、このほかに生産面や、あるいは構造面や、あるいは直接に
財政面、そういうような問題についても常時いい効果を表わすものだと私
どもは
考えております。まず第一に心理的なものでありますが、心理的なものというと、具体的なものがないように思う方も世の中にあるかと思うのですが、私
どもとしては、生活の実感から非常に大きなものだと思います。年寄りになっても完全に生活が保障されている、病気になっても、今の
国民健康保険のようなけちなものではなしに、完全に十割の給付が行なわれて、制限診療が行なわれないで、一番最新の医学をもって完全に病気が早くなおしてもらえるというような問題、あるいは遺族になっても、心配せずに子供に十分な教育が施せるというような問題、そういうような問題が完全に行なわれておりましたならば、これが勤労者階級であろうと、あるいは農民の人々であろうと、商売にいそしんでおる人々であろうと、そういうような心配なしにそのような仕事に従事できて、これは大きな意味で無形の
経済拡張、
日本の発展のために非常に大きなものになると思うのです。家庭を守る婦人にしてももちろんそうであります。またそれと同時に、具体的に
医療保障、
所得保障がされているという問題以外に、そういうことが完全であれば、家庭の中において、たとえば蓄積が少ないから病気になったらどうするという問題で主人が心配される、また奥さんがノイローゼになるというような問題がなくなりましたならば、
国民のしあわせの
程度は非常に増大をすると思うのです。その心理的な大きな意義があるということがまず
一つ考えられるわけであります。
それからもう
一つ、これは
社会保障の必然的な効果でありまして、具体的に今の二重構造の問題で
考えなければならない
所得再配分の問題でありますが、
所得再配分ということは具体的に
社会保障を通じて行なわれる、もちろん大衆
減税においても行なわれますけれ
ども、
社会保障が、
所得再配分をしなければならないときに、より密度の多い配分が行なわれて、非常に効果があるということになるわけでございまするが、そのことの効果というものは、今一時的に
経済が何とか、いろいろの問題が起こっておりますが、長い目で見まして、所程再配分によって、
国民の購買力が増大、安定をする、そのことが需要を広げて安定させる、生産を安定、拡大する、
景気の波を少なくする、雇用の増大と安定に役に立つという意味で、今
日本の重要課題になっているすべての問題に大きな
一つの
推進力になるわけであります。そういう点で
社会保障というものは非常な積極性を持っておる、生産拡大のためにも完全雇用の道を
推進することについても、大きな積極的な意味を持っておると私
どもは
考えているわけであります。そういう意味のことがございます。
その次に、もっと小さく
財政的にしぼって
考えてみたいと思います。そういうさっき申し上げたようなことを私
どもが主張すると、大体において全面的にどの
厚生大臣もその
通りだと言っていただいておりますが、
大蔵大臣あたりに言うと、それは是認するけれ
ども、しかし
財政的なワクがあるというようなことを言われるわけであります。これは非常に近視眼的な
財政観を持っておられる
大蔵大臣であろうと思います。問題は、一年、一回だけの収支のバランスの問題ではないわけであります。大きな意味で、最初よくやることによって問題が
解決して、後にそういう
財政支出を免れるということであれば、これは大いにやらなければならない問題ではないか。たとえば去年ポリオ・ワクチンの問題が取り上げられました。それでごくわずかですが、積極的な国の支出があった。このことによって小児麻痺の問題が去年の非常な流行期に、少しおくれましたけれ
ども、後半流行を抑えるのに相当の効果を表わした。これをもっと前から、もっと早くやっておったならば、それに要する後々の費用は少なくなったであろう。それはワクチンの問題でありますから、後々の金にしてもそう大したことはないかもしれませんが、結核の問題にいたしますと、御承知の
通り療法は医学的に非常に完成されているわけでありますが、完成されているのをなかなか根絶ができないのは——根絶といってもほんとうに重いところまでいってしまった人はとどまっているだけでなおらないかもしれませんが、ほとんど根絶という
言葉を使っていいような、将来の発生を防ぐという
状態にするためには、
経済的に対処することだけで大体足りるのです。ところがその問題が、八割国庫負担というものがこの前
推進はされましたけれ
ども、濃厚感染源だけという制限がついている。濃厚感染源の
一つ下がそういう趣旨がとられないために爆発して感染源になる。その人の不幸は言うまでもありませんけれ
ども、また公衆衛生上も非常にまずいことになる。ちょっとの金惜しみのために効果が表われないことがある。あれだけのりっぱな
医療技術が発達したときに、これを完全に資金をつぎ込んで対処すれば、後々の膨大な結核の対策費が少なくなることを
考えますと、
財政的に
考えても、こういう問題を
推進することの方がよいという
結論になるわけであります。それをほとんど
大蔵省の連中は
考えていない。
厚生省の方もそういう問題について強力に主張されたのかどうか知りませんが、主張された効果が表われておらない、少ないという点を私
どもは痛感しているわけでございますが、
財政的に見てもそういうことが非常によいので、大きな
財政的な見地で
社会保障というものが重視されてしかるべき点であると思います。
ちょっと前後いたしましたが、それとともに、さっきの問題に関連があるわけでございますが、全般的に
所得再配分がされて、国内の購買力が増大、安定をして、
経済が安定、拡大をし、雇用が増大、安定をするという問題のほかに、もう
一つ別に非常に効果がある問題があります。たとえば老齢
年金というものが今のような不十分な乏しい形でなしに完全に確立された場合には、農家の人が安心して早く農地の所有権、経営権を次代の子供に譲り渡すという問題が起こりましたならば、その若くなった世代の農業経営者は時代の感覚に見合って農業の近代化あるいは協同化という問題を進める。中小企業においてもしかりでございます。ということになりましたならば、そういう問題で産業を進める、
日本の
経済を
成長させる、農民の
所得を増すというようなことにも非常に役に立つわけであります。そういうような点で非常に大事であります。また労働問題にしましても、老齢保障が完全に早くから完成をされておりましたならば、労働力を新陳代謝をして、非常によい、清新な労働力を大事な生産点につぎ込んで生産を増すということにもなるわけです。そういうような非常に大きな意義も持っておるわけです。そのくらいのことは
灘尾厚生大臣は十分御承知だと思いますけれ
ども、
政府部内全部では
社会保障をそこまでの観点において理解を持つ人ばかりではないと思う。そういうような観点でもしぐんぐん排していただきますならば、本来の
社会保障がさっき言ったように急速に拡充されなければならない、完成をされなければならないということの大きな裏づけになって、これを進められるのにぐんと役に立つのではないかと思うわけであります。私
どももこういうことを申し上げているのは、このような論議が
会議録に載って、それが幾分の
社会保障を急速に拡大するお役に立つであろうかという意味でこういうことを申し上げているわけでありますが、速記録に載るよりは、直接に担当者である
厚生大臣の
灘尾さんがこういう問題について、当然前からお
考えになっておられると思うけれ
ども、
委員会においても同様な
意見の強力な
推進があるということを
一つのお力とされまして
推進をしていただければ非常に幸いだと思うわけであります。先ほど一人よがりなことを申し上げましたけれ
ども、私と
厚生大臣は同じようなお
考え方でおありになろうと思いますけれ
ども、もし違うといけませんので、同じお
考えでそのように強力に進めていただけるかどうか、
一つお伺いをいたしたいと思います。