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1961-10-06 第39回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月六日(金曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 森下 國雄君    理事 床次 徳二君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 松本 俊一君    理事 岡田 春夫君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    椎熊 三郎君       竹山祐太郎君    福家 俊一君       堀内 一雄君    稻村 隆一君       受田 新吉君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局         長事務代理)  高橋  覚君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 十月六日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として受 田新吉君が議長の指名で委 員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。床次徳二君。
  3. 床次徳二

    床次委員 私はまず北方領土の問題に関しまして、お尋ねいたしたいと思います。さきに、かが国の北方領土に関しましては、フルシチョフ首相がすでに解決済みであるという書簡を寄せました。これに対しまして、池田総理がはっきりとわが国民の意思表示をいたしまして反論を加えたことに対しましては、国民といたしましてわれわれ心から賛意を表するものであるのでありまして、フルシチョフ首相の論拠というものは全く根拠はないと考えておるのであります。従ってわれわれは北方領土なるものはわが国固有領土である。だからすみやかに返還すべきものでありますが、むしろ論理的に申しますと、返還と申しますよりも、ソ連に不当に占拠せられましたところのわが領土をすみやかにわが国に返す、ソ連からわが国に引き渡すべきものであると私ども考えておるのでありますが、この際政府におかれましてはいわゆる国後択捉わが国固有領土であるという根拠を重ねて明らかにせられたいと思うのでありまして、これは過去の経緯にかんがみましてこの際政府が明瞭にせられることがきわめて大切だと存じまして特にお尋ねする次第であります。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いわゆる北方領土、ことに国後択捉わが国固有領土であるということにつきまして少し申し上げたいと思います。  まずもって経緯について申し上げますと、この問題については対日平和条約起草にあたって連合国領土問題についてわが国主張を入れるように政府としては終戦直後から歯舞色丹が北海道の一部である事実及び国後択捉わが国固有領土であって放棄すべき理由がない事実を裏づける資料を起草者たる米国政府に提出いたしておったわけであります。しかしながらサンフランシスコ会議に提出された条約案には千島列島の地理的な範囲を明確に規定しておりません。その結果、歯舞色丹についてはわが主張サンフランシスコ会議におけるダレス・アメリカ全権演説によって確認されておりますが、国後択捉についての解釈が明らかにされることがなかったのであります。サンフランシスコ会議平和条約最終案文によって締結し、署名するために招集されたものでありまして交渉のために設けられたものではございませんから、わが全権はその見解を述べることは認められましたが、条約案文について留保を行なうというようなことは認められていなかったのは、御承知通りであります。従いまして全権団国後択捉わが国固有領土である事実について会議の注意を喚起するために問題を提起し、これを将来に残したわけでございます。その内容につきましてはもうすでに御承知通りでございまするが、一八五五年の日露通条約並びに一八七五年の樺太千島交換条約においてこのことが明瞭になっておるわけでありますが、特にこの樺太千島交換条約第二款におきまして、千島というものはどういうものかということが明らかにされておるのであります。すなわちウルップ以北シユムシユに至る十八の島々をいうのでありまして、その島の名前が全部列挙せられておるのであります。  それを読ませていただきますと、「クーリル群島即チ第一「シユウシユ」島第二「アライド」島第三「パラムシル」島第四「マカンルシ」島第五「ヲネコタン」島第六「ハリムコタン」島第七「エカルマ」島第八「シヤスコタン」島第九「ムシル」島第十「ライコケ」島第十一「マツア」島第十二「ラスツア」島第十三「スレドネワ」及「ウシシル」島第十四「ケトイ」島第十五「シムシル」島第十六「プロトン」島第十七「チエルポイ」竝二「ブラツト、チエルボエフ」島第十八「ウルツプ島共計十八島の権理及ビ君主属スル」一切ノ権理ヲ大日本国皇帝陛下譲リ面今而後「クリル」全島ハ日本帝国属シ東察加地方「ラパツカ」岬トシユムシユ」島ノ間ナル海峡以テ両国境界トス」こういうことが明らかに書かれておるのであります。  これによって明瞭であると思いますが、先般予算委員会において講和条約締結当時の政府委員答弁が取り上げられて問題になっておったのでありまするが、この答弁はその当時における政府の一応の見解を述べたものでございますが、一方においていわゆる千島の中には南千島も入ると言いながら、他方日本政府としては南千島と北千島は歴史的に見て全く違うものであると考えており、その考え方は今後も堅持すると言っております。この二つの答弁は矛盾した内容を持っておるのであります。そこでそういう矛盾した内容を持つ明確を欠いた答弁がなされたわけでございまするがこのことはひっきよういたしまするに条約発効以前の各国の微妙な事態を反映して、その当時においてまだ占領下にあるわけでありますし、また各国平和条約を批准していないというその事態において、わが国立場のみを強く前面に押し出すことを避ける考慮もあったと考えられますが、これはいずれにもせよその当時における一応の考え方を述べたものにはかならないと思うのであります。その後さらに慎重に検討をいたしましたる結果、今申しましたように各種交渉からいたしましても国後択捉日本国領土であることは明らかでございまして、しかもなおサンフランシスコ講和条約で放棄いたしました千島列島の中には含まれていないとの解釈が明確化いたしまして、昭和三十一年重光外務大臣の言明となっておる次第でございます。このような解釈は、先ほども申し上げました一八五五年の日露通条約、一八七五年の樺太千島交換条約で、クーリル群島、従ってウルツプ以北十八の島をあげておりまする条約上の先例、及び一九四一年の大西洋憲章、及び一九四三年のカイロ宣言で宣明された領土の不拡大の原則から導き出されるものでございまして、平和条約の主たる起草者であるアメリカ政府も、一九五六年九月七日の覚書国後択捉の両島が日本国主権下にあるものとして認められるべきものであることを明らかにいたしておりましてその後歴代政府はこの解釈を堅持しておる次等でございます。
  5. 床次徳二

    床次委員 ただいまの大臣答弁によりまして、過去においては、一部不明瞭なものは、特残な事情によって一応答えられた答弁のために生じた。しかし、今日はこれが明瞭にせられたということにつきましては、われわれまことに喜ばしいことと考えておるのであります。この際われわれは、この国後択捉、さらに色丹歯舞も当然のことでありますがこれらがわが国固有領土であるということをはっきりと国民全体に周知徹底させることが、これらがわが国外交の基本の問題であると考えておるのでありまして、この際、政府におかれましては、十二分にただいま申しましたような趣旨を一般国民に普及徹底いたしますると同時に、単にこれが政府見解であるという見解を発表するにとどまらず、われわれはこの見解の線に従ってあくまでもその実現を期するのだという意味において具体的な今後の努力というものが伴うべきものと考えておるのでありまして、われわれは国民の一つの悲願といたしまして国民運動としてこれが推進せられるという一面と同時に、政府が、あるいは当時者あるいは連合国あるいは国連、あるいは一般世界各国に対して、われわれの立場というものを十分に宣明いたしまして、その実現に努めるということが必要であろうと思うのであります。しかしこの際いかなる措置をとるかということはきわめて微妙なことでありますので、あえてこれを政府に要求はいたしませんが、最善を尽くすべきものだと思うのでありますが、この際最も大事なことは、政府がかかる見解を発表し明瞭にせられました以上は今後この方針に従って十分に実現に対して努力するという強い重大なる決意が私はあってしかるべきものと思うのであります。これに対する政府の御意見を伺いたいと思うのであります。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まことに私もさように考えております。このわれわれの主張というものはまことに正しい根拠に基づくものでございますから、あくまでもこの主張を堅持して、やがてはこの主張のいれられることあるべきを期待いたしたいと思っておるのであります。しかしながら事外交に関する問題でございますから、周囲の客観情勢をよく見定めながら、われわれの主張を折に触れ、適当な時期にこれを貫徹しますようにあらゆる努力をいたさなければならぬと思うのであります。
  7. 床次徳二

    床次委員 私は万全の努力をいたししかも国民要望が可及的すみやかに実現するように一つ努力してもらいたいということを特に申し上げたいと思うのであります。  なお、このソ連がわが北方領土に対しますところの態度というものは、いわゆる帝国主義的な行動であると考えておるのでありまして、今日帝国主義に対しましてはすでに列国はもとより特にAA諸国におきましては、強くその排撃に努めておるところであります。しかも日本はそのAA一員でありますが、このAAといたしましては人種の平等、あるいは植民地解放、同時にあわせまして、この帝国主義反対ということについて、全くわれわれはAA諸国とは共感の立場に立ち得るものであると考えておるのでありまして、従ってわれわれ今後もわが主張を貫徹するにあたりましては、一般自由主義諸国に対して周知徹底することはもとより、特にAA諸国に対しましては十二分にわが国民の立場要望というものを説明をいたしまして、そうして理解を求めまして今後の実現のために協力を得るし、また実現のために資すべきものではないかと思うのでありますが、大臣の御意見を承りたいと思います。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 AA一員といたしまして、われわれが特に強く主張いたしておりますることは、植民地主義反対であります。また人種の不平等の扱いに対する排撃の声であります。この人種差別という問題については、われわれは一九一九年のヴエルサイユ会議以来、一貫としてこれを唱えておりますことは御承知通りであります。  なお帝国主義反対、これについてもわれわれはことさらに声を大にして言っておるとろでありまして、ただいまのお話については全面的に同感でございます。  なおこの際、私は別にこういうことを申すからと言って、特に相手を非難したりという気持で申し上げるのではなくて、むしろ悲しい思い出ということを述懐するにすぎない気持もありますが、一応われわれがソ連との関係において、この第二次世界大戦においてとっておった態度というものについてその当時の経緯を少し申し上げてみたいと思います。  われわれは中立条約ソビエトとの間に結んでおったわけでございますがこれに関する交渉経緯を申し上げさしていただきたいと思います。昭和十四年の夏、ノモンハン事件あと日ソ間に全般的な国境確定、及び紛争処理委員会に関する交渉及び通商予備交渉等が進行するに伴いまして、両国間に友好的な零囲気が醸成されて参りました。それにつれまして昭和十四年の十一月東郷ソ大使は時の有田外相に対しまして、日ソ不可侵条約締結交渉開始方を進言しております。翌年昭和十五年の夏、米内内閣日ソ間に安定した国交関係を保持することの方針を立てまして、中立条約ソ連側に提示することになりまして、七月二日、東郷大使からモロトフ外相に口頭で申し入れを行なっておるのであります。不可侵条約中立条約に変更いたしましたのは、日ソ間の政治的取りきめによりまして、日本欧州戦争不介入の方針が変更し、枢軸側に加担するような印象を与えることは、対米英関係に支障を来たすかもしれぬという考慮、及びこの条約の主たるねらいが元来ソ連蒋介石援助の行為、援蒋行為を中止させることを根本目的としたものであったからであります。  その後、この年の十月末に至りまして、近衛内閣のもとで建川大使日本側条約案ソ連側に提示しております、またリツベントロップ・ドイツ外相があっせんに努めまして、さらにソ連側が提示される等の交渉が行なわれて参りましたが、彼我の主張は相いれなかったのであります。結局、翌昭和十六年の三月から四月にかけて松岡、当時の外務大臣が訪欧の帰路、松岡スターリン会談において、合意を見まして、この年の四月十三日に日本側松岡建川ソ連側モロトフとの間に日本帝国及びソビエト社会主義共和国連邦間の中立条約というものが調印されるに至ったのであります。  時間をとりまして恐縮でございますが、この内容について申し上げますると、まず第一に、両国間に平和及び友好関係を堅持し、かつ相互に領土の保全及びその不可侵を尊重するということがまず第一点であります。  第二点は、条約国の一方が第三国の軍事行動の対象となる場合には、他方紛争の全期間中立を守るということであります。  第三は、この有効期間は五カ年間であるということであります。  その後、太平洋戦争が始まりまして直後、すなわち昭和十六年十二月九日、建川大使は、ヴィシンスキー外相代理に対して、日本の対米英宣戦通告を行なったあと情勢の大変化にもかかわらず、ソ連中立条約の精神を巖守するものと信じてよいかということを質問いたしましたのに対しまして、ヴィシンスキー外相代理は、守るために結んだ条約なんだ、だから日本が守る限りは、ソ連もこれを守るのは当然の義務だと答えたのであります。  中立条約有効期間が五カ年間ございまするが、期限満了一年前に締約国の一方から廃棄の通告が行なわれなければさらに五カ年延長されることになっておりました。ところが、条約効力発生、すなわち批准交換昭和十七年四月二十五日でありましたので、昭和二十年四月五日に、モロトフ氏は、わが方の佐藤大使に対しまして、条約調印後、事態は根本的に変化して、日本はその同盟国たるドイツ対ソ戦争遂行を援助し、かつソ連同盟国たる米英と交戦中である。このような状態においては日ソ中立条約はその意義を喪失し、その維持は不可能となった。よって、ソ連政府は同条約は明年、すなわち昭和二十一年四月期限満了以後は延長しないという意向であることを宣言すると通告宣言すると通告して参ったのであります。なおモロトフは、期限満了までの一年間については条約期間は終了しておらず、ソ連政府態度中立条約によって律せられる、すなわち、条約期限満了になったときは、それ以後は効力を失うことになるが、とにかく条約期間中はソ連はこの条約によって律せられるという言質を与えておったのであります。  昭和二十年の五月、ドイツ崩壊以後、日本側ソ連の参戦を阻止し、進んではなるべく日本に対して友好的態度をとらせ、さらに、できれば戦争終結について、日本にとって有利な仲介をしてもらおうという目的を持って広田・マリク会談を行ない、近衛特派大使を派遣するなどの申し入れを行なったのに対しまして、ソ連側態度を明らかにすることを避けて参ったのでありますが、ついに同年八月八日、逆にモロトフ氏は佐藤大使に対して中立条約の存在に言及することなく宣戦を布告して、同時にソ連軍は満州に入ってきたという経緯があるのであります。  すなわち、われわれはソ連との間にこちらから戦争をしたという気持は実はないのでありますが、こういうような諸般世界情勢からいたしまして、降伏をしたということであります。しかも大西洋憲章その他カイロ宣言等に何ら規定のない国後択捉というようなものが、われわれの領土として本来当然主張すべき権利を持っているにかかわらず、いまだにこういう状態になっていることをまことに残念と言わざるを得ないと思います。しかし残念であるからどうするのかということになりますと、これはなかなか微妙な問題でございますから、この点は十分に諸般情勢考えながら、主張はあくまでも主張として持っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  9. 床次徳二

    床次委員 外交は、何と申しましても、善隣友好諸国と特に親善を強化することが必要でありますが、しかし自分の主張の正しいものに対しましてはあくまで相手をしてこれを了承せしめる、また、相手の不当なる主張に対しましてはこれを十分に退けるという強い決意がいると思うのでありまして、ただいまお話のありましたごとく、日ソ間におきましてはきわめて複雑なる経緯があるのであります。この問題を混同することなく将来の両国関係を処理していかれることを、特に要望するものであります。  最近政府アジアにおいて隣邦諸国との間の親善強化に努められておりますことは、まことにけっこうであります。韓国の問題あるいはビルマの問題、懸案を漸次解決しようという努力につきましては、われわれ多とするものであります。しかし、特にこの際考慮しなければならぬことは、今日アジア諸国は——われわれの近隣諸国、これはアジア諸国でありますが、特に経済的に非常に困窮しておる国が少なくないのでありまして、いわゆる諸外国の経済協力に待つものが多いのであります。わが国もこれらの諸国に対して協力をいたしておる次第でありますが、しかしわが国協力の実態を見ますとなかなかその要望に応じ得ないものがあります。今回の補正予算等におきましても、特に輸銀資金増加等を見ておることはけっこうなことではありますが、今日までの経過を見て参りますと、その実績を比較すると、各国と比べて、決してその質におきまして、また量において十分とは言えない。特に西欧あるいは中ソのごとき政治的な借款というものが入って参ります場合におきましては、この点非常に見劣りがするのであります。今日われわれが特にアジア諸国友好親善を進めよう、また半面におきまして、輸出増進あるいは資源の確保というような問題を考えます場合におきましては、特定の国々、特に提携親善を必要とする、密接な関係を作る必要があるという国に対しましては、その国が他の国と経済協力をいたしております際の条件に比べまして、著しく見劣りがしないだけの経済協力はなすべきものではないか。いわゆる協力条件緩和等に対しまして、もっと積極的に努力することが、アジア諸国に対して一そう親善を加えるゆえんである、これが将来のいわゆるAA日本との関係を一そう良好にするゆえんであると思うのでありまして、この点において、単純なる経済的な見地の経済協力から、もう一歩深いアジア諸国に対する経済協力を、外務大臣としてお考えがあるべきものと思うのでありますが御意見を伺いたいと思います。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 やはり私の気持ではアジアは一体だという気持を持つのであります。やはり日本繁栄というものは、アジア近隣諸国繁栄があって初めて完全な繁栄ができる。また近隣諸国においても、日本繁栄することによって、この繁栄が期待されるという関係であると思うのであります。西欧先進諸国は、つとに御承知のように、各種経済園、EFTAであるとか、あるいはEECであるとかいろいろ持ってやっておるわけでございますまた中南米諸国においてもさような傾向があるわけでございます。われわれはやはりそういう将来を見て、われわれの経済政策あるいは経済外交というものを進めなければならぬのではないかと考えておりまするが、しかしやはりそこに、最も適切なる協力をするというにはどういうことがいいかということについては、から回りせぬようにまた勇み足にならぬように、十分各種考慮をめぐらしていかなければならぬと考えておりまするが、根本的には今おっしゃった床次さんのお考えと私は全く同じように考えて、大いにこの経済協力について努力したいかように思っておる次第であります。
  11. 床次徳二

    床次委員 来年度予算等におきまして大いに外務大臣の御努力を期待いたす次第でありますが、よろしく一つお願いいたしたいと思います。  次に、沖繩の問題について二点ばかりお尋ねいたしたいと思います。  最近の新聞の報道によりますと、ソ連は、九月の二十七日に国連に提出いたしました、植民地解放宣言履行に関する覚書の中におきまして、太平洋諸島ないし沖繩米領の一部とみなすことを国連が否認し、これを国連の厳重な永続的な管理のもとに置くことを提案したと報ぜられておるわけであります。すなわち、昨年の十二月の十四日に総会で採択された植民地解放決議を米、英、ポルトガル、ベルギーなどの西欧植民地国大いにサボッているという、その事実をあげて、この宣言履行を促進するために、六二年を植民地主義完全一掃の年とする。その実施のために国連委員会を設ける等を提案し、なお国連は、たとえば太平洋諸島ないし沖繩米領土の一部と宣言するのを許し、その結果、永久にこれらが植民地としてとどまることを許すべきでないといっておるのであります。われわれは、沖繩に対しましては、当然潜在主権を持っておるし、われわれに復帰すべきものであると考えておるのであります。ただ、今日、沖繩小笠原平和条約第三条に規定せられていることは当然認められるのでありますが、しかしこの際、われわれは沖繩小笠原が引き続いて国連管理となるということにつきましては、絶対に賛成できない立場にあるわけであります。むしろ、われわれはすみやかにその施政権わが国返還せられるものと期待しておるわけであります。従ってこの際のソ連主張に対して政府はどうされるか、政府はこのソ連主張に対して、すみやかに意見を発表するなり、適当なる処置によりまして、同胞並びに沖繩住民に誤解を与えないように、というより、わが母国の強い決意を知らしめることが必要ではないかと思うのであります。この際国連におきましても、わが国民並びに沖繩住民の復帰の悲願ということをやはり明らかにする、同時にその実現に至りまするまでは、日米協力のもとに住民の福祉向上に努めるということを、これは世界に向かって十二分に明らかにする必要があるのではないかと思うのであります。その手段等につきましては、先ほどの問題と同じように、まことに微妙なものでありますが、これまた政府の御決意を伺っておきたいと思います。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 結論から申しますと、われわれは、沖繩潜在主権講和会議によって認められておるのであります、講和条約のダレス、ヤンガー米英両代表の演説によって認められておるのであります。その後アメリカ政府日本政府との間の共同宣言においてしばしばこのことに言及しておるのでありまするし、今さら国連信託統治などというようなことにするよりも、われわれからその施政権返還を申し出ておる点をアメリカ側においても十分了解しておりまするから、その時期をできるだけ早くする。しかもそれに至るまでの期間において、わが方としてもアメリカとの間で十分に話し合って、この沖繩における同胞の生活上の各種の困難を解決するのみならず、大いにその生活の繁栄に相ともに協力して努めていき、そして水の流るるごとくに日本施政権下に時を見て戻すということがよろしいと考えておるのであります。ただ、ただいまお話のございましたソ連が、昨年の国連総会で採択された植民地解放宣言を西側の諸国が実施していないということで、この九月二十七日、今次総会に対して宣言実施のための具体的な措置をとるべき旨の覚書を出したというこのことについて、少し申し上げてみたいと思います。  この覚書は、西側諸国が依然として植民地主義体制を維持せんとしておると攻撃した後に、アメリカもその同類であるということを申しまして、アメリカが一プエルトリコ、沖繩太平洋諸島に対して基地を設けて住民を搾取していると非難いたし、国連沖繩太平洋諸島が米国の領土となることを許してはならないと述べて、最後に、植民地解放宣言を実施するために、国連のトロイカ方式によるところの委員会を設けよという提案をいたしておるのであります。従ってソ連の提案は、伝えられるように、特に沖繩国連管理下に置くことを提案したというものではないのであります。そうではなくて、アメリカ沖繩を軍事基地として利用していることを攻撃するために、これに言及したものであります。なおこの覚書は十数ページに及ぶものでございまするが、沖繩に関する部分はわずか数行にすぎないのであります。沖繩目的として言ったものではないということは、これによって御了承願えると思います。ソ連がこのような提案を行なったねらいは、多数の新興独立国が国連に加盟した時期を選んで、反植民地主義、反帝国主義をことさらに宣伝して、西側を孤立せしめることによって、東西冷戦における自己の立場を有利に展開しようとしたものと思われるのであります。アメリカ沖繩において施政権を行使しておることは、これはサンフランシスコ条約第三条で認められておるところでございまするが、同時にアメリカは、わが国沖繩に対して潜在主権を有していることを確認しておりまするし、さらに沖繩住民の民生、福祉の増進のために努力し、また日米両国政府協力して着々と実効を上げつつある実情にかんがみまして、ソ連の言うように、これを他の植民地と同列に論ずることはまことに不当である、かように考えておる次第であります。
  13. 床次徳二

    床次委員 沖繩の問題に関しましては、さきの池田ケネディ会談におきまして十分な検討がせられておる。その際に、新たにいわゆる公共建物に対しまして国旗の掲揚が認められたというような状態にあり、さらに共同宣言が発表されたのでありますが、今後可及的すみやかに内地と同じ状態、内地に復帰せしめ、同時にその復帰に至りまするまでにおきましては、その生活、状態あるいは産業等の状態につきましして、住民の福祉を十分に考慮する、これに対して日米協力をするということが必要だと思うのでありますが、わが国におきましても過去数年来、いわゆる積み上げ方式によりまして米国に協力して参り、その実現を見ておるわけでありますが、今回の池田・ケネディ共同宣言によりまして、さらに一そうの進展というものを期待しておるのであります。ライシャワー大使もすでに現地を見られまして、いわゆる内地並み、内地の県並みということに対しての理解を深めておるようであります。われわれといたしましても、一そう本土化の実をあげたいと思っておるわけであります。すでに明年度予算の編成の時期も迫っておりまして、この共同宣言の趣旨というものが十分に実現できるということを非常に期待して地元住民ももとよりさような立場にあるのでありますが、この点に関しましては、政府として一そう今後努力をせられまして、アメリカとの間のいわゆる協力の実が上がるように一つ努めていただきたいと思うのであります。この際、政府の御決意を伺いたいと思います。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 床次さんがこの沖繩の問題に非常に熱意をもって努力されていることについては、深く敬意を表しております。  この問題については、池田・ケネディ会談以後非常に順調に進んでおりまして、御承知と思いますが、ハーバード大学教授のケーセン氏を団長とする視察団が沖繩に到着いたしまして、十分われわれの趣旨に沿うた努力をしてみる——その結果を持って、この月の半ば過ぎになろうと思いますが、こちらに参ると思います。私どもお目にかかってよくこちらの話もいたし、ぜひ一つ沖繩住民の福祉を飛躍的に増進するような英断を求めたいと考えております。しかしそれにつきましても、先方にそれだけのことを言う以上は、やはりわが方としてもできるだけの協力をしなければならぬことは、日本国民のためにすることで当然だと思うのでありますが、これにつきましては、財政その他いろいろな事情もあるようでございますから、どうぞ一つ、これまた私の方からも御協力をお願いしたいと思います。
  15. 床次徳二

    床次委員 ただいまの大臣答弁、了承いたしました。現在進行中でありますので具体的なことを申し上げることは避けたいと思うのであります。政府の御努力を十二分にわれわれ要望いたしまして質問を終わります。
  16. 森下國雄

    森下委員長 松本(七)郎君。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 ただいま床次さんの質問に答えて外務大臣から北方領土問題に関する政府解釈、それから戦争中の経過などを御報告になったのですが、この政府解釈は、すでに鳩山内閣当時、日ソ国交回復の問題のときにいろんな外務委員会の論議の過程でそういう解釈政府は到達して、今日まで変えずにきていると思うのです。私どもは、先般も社会党としてその見解を明らかにしましたように、やはり日本側としては、サンフランシスコ条約でその一切の権利、権原を放棄した、その千島列島の中には南千島は入っていないのだ、当時の吉田全権もそう言ったし、またその後の日米話し合いの中でもアメリカはそれを認めているのだ、そういう解釈をとっているようですけれども、しかし北方領土問題を解決するのに最も大切な現実に相手方となっているソ連邦はこの解釈を認めないわけですね。そういうわけですから、一方的にどのような、法理的な解釈をとろうが、現実的な相手方との外交渉で問題を解決するためには、法理的な解釈だけではいけないと思う。それではその解釈で現実に解決ができるかどうかということも、現実的な外交上の処理としては一つの問題になる。ですから、社会党はこの前発表しましたように、これは千島全島固有領土であるという立場をとっております。しかしその固有領土政府は放棄していないのだという解釈をとっておりますけれども、しかし国際的には問題を残すように、明確にしないままでサンフランシスコ条約で権利権原一切を放棄したように諸外国に解釈されるようなサンフランシスコ講和条約そのものが間違いであって、当時これを結んだ自民党政府の責任であるということを社会党は明らかにしたわけなんですけれども、そのことは別としまして、その経過から考えてみますと、今外務大臣が説明された、鳩山内閣による交渉当時からいろんな過程を経て到達された現存政府の堅持されておる今の御方針で、はたしてそれではいつ平和条約の締結が可能になるのだろうか、こう考えて参りますと、日本国民の民族的な利益ということから、この領土問題が条約締結前に解決しなければ、いつまでもこのままの状態で放置しておくことがはたして民族的な利益に合致するものかどうか、こういう問題が非常に大事な点として浮び上がると思う。当時鳩山内閣が日ソ国交回復交渉中にこの問題でずいぶん国論が沸騰し、議論がなされ、当時の責任者である重光外務大臣もいろいろ苦慮されたあげく、御本人としては、やはりこういう段階になれば歯舞色丹日本領土ということで平和条約を締結する方がいいのではないかという心境にもなられたということを、公的な席ではありませんけれども重光さんの心境として私どもも聞いておったわけです。しかし四囲の情勢がそこまで踏み切ることを許さずに、曲がりなりにも共同宣告という形でそして実質的には領土問題はたな上げということになった。ですから当時の状況は、担当者の重光さんも長い将来を考えて、やはり日本民族の利益ということから考えればこれは歯舞色丹平和条約締結までいく方がいいのではないかという考えにも一時なっておられたというこの一事を見ましても、私どもは、この政府の今の法理的解釈解釈としまして、これも認めるわけにいきませんけれども実際にもり少し前進する措置というもの、外交交渉のやり方というものはないだろうか、これが私どもの今後の大事な問題点ではなかろうかと思うのです。今のような政府解釈ですと、相手であるソ連が、現に歯舞色丹でさえ今度新たな条件として米軍が日本から撤退しなければ現実には引き渡しはむずかしいというようなことも安保条約交渉中に出てきたほどですから、この日本解釈を認めてそして平和条約を締結するということはおそらく現実には不可能であると思う。そうしますと、今床次さんの御質問にもありました、できるだけ一つ適当な機会に領土問題が解決できて平和条約が締結できるように、言葉ではこれは一応つじつまが合うのです。けれども、現実の処理としては、こういう解釈ソ連交渉しましても、条約締結と同時に領土問題が解決するという一番望ましい姿での解決というものはおそらく現実にできないだろうと思う。その点は外務大臣も認ゆられるだろうと思うのです。この平行線をたどっておる限りは現実には平和条約も締結できないという見通しについては御同意されると思う。そうすれば、この問題が解決しない限りは平和条約の締結ができなくても仕方がないのだという立場を今後も堅持されるのかどうか。何らかそこのところに別な方法で現実的な処理の道を探り出そうというお気持はあるのかないのか、この点をまずお伺いしておきたい。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 当時の全権であった松本さんもいらっしゃいますが、領土問題についてはグロムイコ氏との間に、共同宣言の後に共同宣言と別個に書簡を交換されて、領土問題その他については引き続いて協議するということになっておることは御承知通りであります。そこでこの領土問題については、われわれはあくまでわれわれの主張か正しいと思いますからこれを主張して参ります。これはどこへ出しても、正しい主張は正しいのであります。事実は一つしかないのでありますから、それは力関係いかんにかかわらず主張したいと思うのであります。しかしながらそれではこれを主張して、先方がすぐにこれをのんで、この時点においてソ連側がわれわれの国後択捉については今まで不法に占拠しておったのだから日本に返しましょうといって平和条約を結ぶかどうかということになりますと、今の時点においてはなかなかそれは困難だろうと思うのです。しかしながら日ソ間には共同宣言がございまして、これは名前は共同宣言でございますけれども、両国はすべての問題を話し合いによって解決するとか、あるいは武力による威嚇または武力の行使を慎しむとか、あるいは国連憲章五十一条による個別的並びに集団安全保障の権利を認め合うとか、非常に条約としても恥ずかしくないような内容を持っておりますし、現にこの共同宣言のもとにおいて日ソ間には友好なる国交か持たれておりますし、また貿易等についても貿易取りきめもございますし、われわれはソ連に対して最恵国待遇までもお互いに認め合っておるのであります。従いまして、この主張はあくまでわれわれとしては主張して、いずれはソ連の理解を得る日もあろうかと思いまして、その日までこの主張をしんぼう強く続けて参りたいと考えておる次第であります。
  19. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると政府としては、共同宣言の評価はわれわれとはまた別の考えがございますけれども、とにかくこれが解決しない間は平和条約締結はしなくてもいいんだという気持である、方針であるということが今明らかになったわけですね。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 仕方がない、やむを得ない。
  21. 松本七郎

    松本(七)委員 仕方がないけれども、それを便法は特にあろうとも思わない、だからこのままでやむを得ないのだ、こういうふうに解釈していいんですね。積極的に何か他の方法で、現実的な処理を探す気持そのものもないのですか。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それでいいんだというと、ちょっとこれはニュアンスが違うと思うので、私ちょっと自席から申し上げたように、やむを得ないということだろうと思うのです。便法を探すとおっしゃいますが、私は便法といっても国際間の問題を簡単に便法でちよこちよことやるという工合になかなかいかぬのじゃないかと思います。
  23. 松本七郎

    松本(七)委員 それは私が当時重光外務大臣ともいろいろ話し合った中に、重光さんとしては、やはり平和条約という形でなしに、別な共同宣言とかそういう形での国交回復と、それから平和条約をきちっと結んだ場合の関係の深さというものには非常な開きがある。従ってそこの評価が一つの問題になりますけれども、便法という言葉は適当でないかもしれないけれども、その歯舞色丹でもって一応平和条約を結んで、これは今までの一般の国際法概念あるいは国際的な通念からいえば平和条約領土問題がたな上げされるとか、あるいは問題を先に持ち越すというような留保付の平和条約なんというものは、今までの通念から考えられません。ですけれども、それはやはり今までの通念とは違った考え方を土台にしておる国柄なんですから、その国の考え方がこれの扱いについて他の方法かあり得るというような道がある場合には、やはり日本の全体的な利益から考えてその方かいい場合もある。それはたとえば当時朝日新聞の編集局長の広岡さんが、共同宣言ができてからですけれどもフルシチョフと二人で会談されたことがある。あのときにもやはり将来世界が完全に平和になり日本が民主的な国になって再び軍国主義、帝国主義の復活のおそれがなくなった暁には、領土については再検討する余地かあるということを言っているわけですね。そういう考え方というものは私どもが向こうに行った場合にもやはり出てくるわけなんです。ですからその積極的な今後の打開策というものも、たとえば社会党では先ほど申しましたように、法理的な解釈はさっき私がちょっと御披露したように、また先般も声明を発したような建前をとっておりますけれども、法理論たけではいけない、実際政治面ではそれじゃどうかという点を、私はもう少し政府戦争状態のときのことから考えてみる必要がこの際あるのじゃないか。それはもうやむなしという、非常に仕方かないというお気持ならなおさら、政治的な面についてももう少し戦争当時のことから、ただその経過だけでなしに、その奥に秘められている深い事態世界史的な事態というものをもう少し深くこの際検討する必要があるのじゃないか。というのはなぜ私がこういうことをこの際再座強調しなければならないかと申しますと、先ほど大臣も言われたように諸般世界情勢から日本は降伏したんだ、だからそういう経過でもって北方領土がこのような措置になったのは非常に残念だ、残念だからこれをどうするというのじゃない、こういうことを言われるわけです。しかし下手をするとその残念だという気持が報復主義に通する危険があるわけなんです。ですから大臣気持はおそらくそういう気持で言われたのじゃないだろうと思いますけれども、そこはやはりこれからの情勢考えると私どもはっきりしておきたい。報復主義が出てくる危険はやはりあるのです。戦争というものの性質なり、あの経過をほんとうに深く考え、今後の日本の進路というものを考えていく気持が足りない場合には、とかく戦争に負けて残念だ、これが今座直ちにそのまま報復主義に通ずる空気が出てこないとは保証できないわけです。ですから外務大臣としてそういう報復主義は絶対にとらないのだという御決意だけは一つこの際承っておきたいのです。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 報復主義ということよりも、私はやはり正しいことは正しいと主張し、そして国の場合はそれを世界に認めてもらうという努力をすることは当然だと思います。
  25. 松本七郎

    松本(七)委員 報復主義といいますと、日本が独力で武器を携えてどうこうすることとすぐ結びつけて考えられるから、そんなものはあら得ないと簡単に言われる。報復主義というのは何も日本の国力、自分一国の力だけでやるのが報復主義じゃない。今日の世界情勢を見れば、こういうふうに日本は安保体制というものによって、政府の言葉を借りれば安全保障のためにアメリカとこの条約を結んでいるのだこうはっきり言っておるのですが、これが侵略的なものかどうかということは議論が分かれるでしょう。それから軍事同盟だというわれわれの主張と、そうじゃない、これは完全な安全保障のためのものだという議論は安保条約当時さんざんやったことですからここで繰り返しはしません。しかし現にそういう結びつきがある今日、報復主義というのは何も日本の力だけでやるものじゃない、これは外国の力、ときによっては、めんどうくさければ領土問題が解決できるのは米ソが戦争する以外に解決の道かないのだという声さえちらほら現に起こっているのだから私は言うのです。そういうことが何らか別な方法でもっと前進し、そうしてほんとうに平和的な環境に近づくような行き方で領土問題が一歩前進する方法があればその方がいいわけですから、報復主義にこれが利用されない解決の方法というものがある場合には……。そういう意味で私は報復主義というものの危険性を言っておるのですから、一つはっきりそういうことはあくまでも阻止する決意を表明していただかなければ困る。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いわゆる通俗の意味における報復主義ということは、私の気持の中にはありません。しかし松本さんにお許しを願えばおれ漏らしを願いたいのですが、社会党の方も非常に御苦労を願って、ソ連に行っていろいろなお話をなさっていることも新聞その他で承知しております。その際に先方の当局者が言ったこととして伝えられていることは、いわゆる安保条約の問題が一番関心事であるわけですが、それをやめれば歯舞色丹については返還考慮しようということだけだったように思いますが、千島全般を返すという確約でも何かあるのですか。
  27. 松本七郎

    松本(七)委員 それは共同宣言平和条約ができれば歯舞色丹日本に引き渡すという約束ですね。それが安保条約が改定されたので、新しい条件が出てきたために、この約束履行を米軍が引き揚げてからでなければできないというのがグロムイコの覚書でしょう。その点が……(「おかしい」と呼ぶ者あり)おかしいとかなんとかいうことじゃなしに、事実を言っているのですが、その点が安保条約が破棄され、安保体制というものが打破されれば共同宣言の線に引き戻せるということなんです、先方がはっきり言っているのは。しかし、社会党の方針はそれをそのまま言っているわけじゃない。社会党の方針は安保条約をやめ、それだけではない。安保条約をやめるだけでは足りない安保条約を破棄するということが基本の当面の急務であるけれども、それだけではなしに、国内的には民主的な体制が確立される、それから国際的にも平和環境が実現できる、そしてそれらが日本に軍国主義、帝国主義の復活を完全に防止する保証となるという状態実現してこそ、初めて北方領土というものは再度われわれの要求が通る条件ができてくるのだ、こういうことを言っているのです。ですからソ連のこの前安保交渉中に出てきた覚書が、安保がなくなれば北方領土全部日本領土にするのだ、そんなことを言っているものでないということを御説明しておきます。  そこで、私ども社会党の考え方を少し言わしていただきますと、そういう経過から考えますと、さっき戦争のことをいろいろ言われましたが、それは確かに不可侵条約というものがありました。そして、先ほどお話のような両国交渉があって、そしてソ連の参戦ということになったのですが、その間にはヤルタ協定とか、つまり連合国側の話し合いがあるわけです。それは何しろ戦争中ですから、しかも。その戦争というのはファシズムを打倒しなければならぬという——今でこそ米ソは対立しておりますけれども、このファシズム、全体主義の打倒ということについては、ソ連米英仏も一致してこの戦争に当たったわけなんです。だから、その戦争を処理するために、戦争を終結させるためにヤルタ協定も必要だったでしょう。ですからその戦争がいかなる戦争であったかという日本国自体の反省というものがあれば、連合国としての戦争処理上やむを得なかったヤルタ協定、これは日本はもちろん入っていませんから、それを法的に承認するとかいう問題は起こりませんけれども、しかし戦争の処理のためにこれはやむを得なかった処置であるということは、日本戦争に対する反省と結びつけて評価しなければならぬ問題だと思うのです。しかし、それならばソ連側としても戦争処理上これはやむを得ない、あの当時はどうしてもファシズムを打倒しなければ世界の人類は救えないという至上な使命としてこの戦争遂行というものは連合国としてなされているわけですから、その後においてこの戦争処理上きめられ、あるいはそれに基づいて処理された領土の扱いについては、この戦争が終わったという条件、それに加わって、世界が完全に平和的になり、各国が民主的な方向に進んでいくという新しい条件ができた場合にも、そのまま戦争処理のために必要であった処置がいつまでも正当であるという評価をソ連側が続けるかどうか、これは問題があるのです。(「苦しい」と呼ぶ者あり)決して苦しいのじゃない。これは社会主義の原則からいっても、一般原則としてはやはり領土で拡大それから無賠償の原則があるわけです。それからさっきおっしゃるように大西洋憲章なりあるいはカイロ宣言にも領土不拡大ということがあるわけです。従って、私どもは法的な解釈が一方にあり、それから政治的な判断として大西洋憲章なりあるいはカイロ宣言あるいは社会主義の講和の原則等から考えて、やはり完全な新しい民主的な、平和的な条件のもとにおいてはこれを再考慮するという交渉が十分できる、こういう建前で私どもは先般あの社会党の方針なるものを発表したわけです。ですから、そういう観点から、政府としても現実的に処理する道を考え気持はないだろうか。これはもう全然一顧にも値しないのだという気持で、先ほど大臣が言われたように、やむを得ないという気持はありながらも、このまま平和条約なしで領土問題が解決するまでずっと存続されるお気持なのかどうか、これをもう一度確認しておきたい。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は先ず日本に民主的体制がないと松本さんが断定されておりますが、私は日本は非常に民主的な国だと思っておりますので、そういう前提が一つの問題になろうと思うのです。しかし、それはそれといたしまして、今のお話の中にも社会主義国も領土不拡大ということを言っておるし、しかも一九四一年の大西洋憲章並びにカイロ宣言、またそれを受けたポツダム宣言というもので領土不拡大を言うておれば、これはやはり客観的な事実によって日本固有領土であるということを認められれば、領土不拡大の方針と背馳するものであるということは、社会主義の国であろうと資本主義の国であろうと、事実、直理は一つしかないと私は思っております。  なお、やむを得ないということはしょうがないということで、何だというようなお話もございましたが、現在日がどうすると言われれば、残念ながら私どもとしては強国の言っていることについては、今この際特段にやり得る措置としては何もないのじゃないかと思う。ただ唯一のやり得ることは、こちらの主張主張として言っていく、それを認めてもらうまで続けていく、これ以外にないように思うのであります。  なお、国後択捉については、沖繩の防備のことばかり言われますけれども、これも非常な軍事基地になっておることは天下公知のことであるわけでございます。そういう事態になっておると、それをすぐ返せといっても、これはなかなかむずかしい情勢もいろいろあるんじゃないかろうかというふうなことも思うわけでございます。
  29. 戸叶里子

    戸叶委員 関連して。千島の問題にいたしましても、それからまた沖繩の問題、台湾の問題等を考えましても、私はサンフランシスコ条約の中にある題土の問題について、あのときに行った全権というものがいかに敗戦国とはいいながら、ああいうふうな卑屈な態度で臨んだということを非常に残念に思うわけでございます。そこで、今日では国際的な情勢もいろいろ変わってきておりますし、先ほどの床次委員沖繩に対する質問を伺っておりましても、講和条約の三条によってというようなことが絶えず引き合いに出されれております。こういうふうなたくさんの問題がありますし、また条約どいうものは永久に不変のものであるということもないわけでございますし、この際やはり公平な、また合理的な、最終的なそういった領土のいろいろな問題、国民の願いを込めた領土の問題の解決という意味から、この講和条約領土の問題等について、改正することを呼びかけるような態度日本政府がとってもいいんじゃないかということを私は考えるわけでございますけれども、こういうふうなお考えを全然お持ちにならないかどうかということをまず伺いたいと思います。
  30. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、条約を結んだらそれを守るということは世界秩序稚の根本だと思いますので、やはり条約を結んだ条章に従って行動すべきものだと思います。ただ、一度結んだ条約を、情勢が変わったから、ことに今度は講和条約のごときものを全部変えるというようなことを言い出してみたところで、これは何にもならぬのみならずそういうことをすることによって、かえってまかり間違いますれば日本世界緊張の焦点になるということも考えられますから、私はそういうことをする気持はございません。
  31. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣が大へんに自信を持ってそういうものは変えないといことをおっしゃったわけでございますけれども、条約を守るということは、これは当然のことではございますけれども、あの当時の全権がとってきた態度というものは今考えてみますと、領土の問題で日本国民として非常に残念な多くの問題を残しておるわけで、それが今日また問題になっており、また国際情勢というものもずっと変わって参りまして、しかも沖繩の問題等は、ことにあのままにされておくという——あの条約でも改正されなけば、沖繩の問題もなかなか解決できないのではないかと思われるような答弁も伺っておりますし、そうしてまた国民の感情としては、千島をあの条約で譲渡したということに対するいろいろな不満というものもある。そういったいろいろな問題を解決するには、やはりあのときの情勢と違っている今日の諸般情勢から見て、やはり条約を改正することを呼びかけていくぐらいの意気込みなりなんなりを今の政府が持っていくということが私は真の外交ではないかというふうに考えるわけでございますけれども、外務大臣はどんなに悪いものであっても仕方がないのだからこのままにしておくというふうな、そういうふうにお答えになってしまえばそれまでのことであって、やはり国民の願い、国民考えていることにもう少し耳を傾けていただいて、そういうふうな努力をしていただきたいということを私は重ねてお願いしたいと思います。
  32. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 一度結んだ条約、ことに戦争処理の条約などを気に入らぬからといって今度はまたこれを変えるということは、これはファシズムに通ずると思うのです。これは非常に危険なことだと思う。前のヒットラー時代にありましたことを別に言うわけではございませんけれども、非常に危険を伴います。従って私はこれはしない方がいいと思います。例の講和会議お話がございましたからついでに申し上げますと、講和会議千島、樺太の交換の経緯について若干触れられております点を援用いたしますと、これは御承知のように千島、樺太も日ソ両国国民の混住の地であったわけでございますが「一八七五年五月七日日露両国政府は平和的外交交渉を通じて樺太南部は露領としその代償として千島諸島は日本領とすることに話合いをつけたものであります。名は代償でありますが実は横太南部を譲渡して交渉の妥結をはかったのであります。」こういうことを言っております。そういうふうに一度結んだ条約というものは守っていくということが、これは国際間の平和維持の根本でございますので、私は講和条約に触れるということはいたしたくない、こう思っております。
  33. 松本七郎

    松本(七)委員 この問題は、さらは一時をあらためて同僚から質問するそうですから、私は次の問題に移りたいと思います。  ベルリンの危機をめぐってソ連の核実験の再開引き続きアメリカの再開等でずいぶん国民も心配し、いろいろ議論が行なわれたのですが、御承知のように、党ではすぐソ連大使館にも申し入れをする、あるいはアメリカの再開にあたっては、アメリカにも直ちに抗議するというような運動を展開したわけです。いろいろな団体、石橋さんが会長をしておりました日ソ協会でも、実はあの最初の声明は決して支持するという声明じゃないのですけれども、あたかも支持するかのごとく受け取られて、この問題がいろいろ紛糾して、きのう全国理事会でまあ非常に遺憾だという意味の声明をしてケリがついたというか、一段落したわけですけれども、私ども考えるには、もちろん再開そのものも非常な問題です。これは社会党としてもきわめて遺憾であるということで意思表示をしたわけでございます。今後すみやかに実験再開を再度停止して、そうして実験の停止ばかりではなしに、禁止協定、完全な軍備撤廃という方向に向かうべきであると思うのです。けれどもそれと同時に、その実験そのものを早くやめ協定に達し全面軍縮にいくという運動をすると同時に、またその運動をするためにもう一つ必要なことは、やはりベルリンの危機の実態というものをよく知るということが私は必要だと思うのです。その点は、少し実験そのものにあまりに気をとられ過ぎてというか、ここまでに至った事態の推移というものがまだ不十分に理解されておるのじゃないかという気がする。私ども自身もそういうところも少し足りない点があるように思う。そこで、これも今後十分調べもし、研究も続けていかなければならないと思いますが、さしあたり大臣に伺いたいのは、危機がどのようにして高まってきたかというような過去の経過、詳しいことは省きまして、かなり危機が切迫しておったということは総理大臣も述べられており、私どももいろんな情報でそれを知ることができるわけです。たとえば九月二十四日の報道でしたか、ロバート・ケネディ——ケネディ大統領の弟で司法長官ですね、これが二十四日の夜のテレビの会見でベルリンの自由を救うため、もし必要ならケネディ大統領が核兵器を使うだろうことに疑問はない、こういうことを述べて、かなりの反響を呼んだこともあります。ソ連側が兵員の削減を中止したり軍事費の増加をやる。アメリカの方でもまた五〇%の核兵器ポラリス建造のための軍事費の増加をやる。あるいはミニツトマン・ロケットの費用の増加をやるなどいろいろなされてきて、このかなりせっぱつまった事態がベルリン問題、この東独の平和条約をやることの当否は別として、とにかくソ連は長年たって、いつまでもこのままでいられない、東独とだけの平和条約もやむなしという態度を表明し、それに対して今言ったケネディ司法長官のテレビ会談にもあるように、場合によっては核兵器を使うという言明にもあるように、非常に緊迫感が出てきたわけです。そこで幸いに、これからの情勢は再度話し合いの方向に向く曙光も出てきましたから、何とかそういう方向に政府としても極力お力添えを願いたいと思いますし、私どももまた、できるだけそういう方向に実現できるように努力をしなければならないと思いまするが、しかし危機は完全に去ったわけではない。いつこれがまた危機の激化という逆戻りをしないとも限らないわけです。そこで私か聞いておきたいのは、ベルリン危機をめぐる紛争、軍事的な紛争か局地的か全面的か、これはもう大てい紛争が起きれば全面的になる危険の方か大きいのですが、かりに局地的なものであろうが、ベルリンの危機をめぐる軍事紛争には直接、間接にも日本は一切介入しないのだという態度を、やはりこの際政府として責任のある言明をしていただかないと国民の間には、かなりその点に心配があるようには思いますので、その点を一つお願いします。
  34. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ベルリンの問題をめぐっての緊張が非常に建設的な方向で、先般もニューヨークでラスク・アメリカ、ヒユーム・イギリス、グロムイコ・ソ連、三者の間で話をされているということを、私ども非常にその面では明るい気持をもって見ているわけです。これがぜひドイツの民族に対する自主権あるいは希望というようなものも尊重しながらの方向で解決されていくということを、私ども希望いたします。しかし、われわれがこれに介入するとか、そういうようなことはこれは全然考えておりません。
  35. 松本七郎

    松本(七)委員 そうしますと、全然介入するあれはないということになれば、具体的には、かりにベルリン危機をめぐって米ソの間に紛争が起き、軍事的な紛争が起きたような場合に、安保条約でとにかく日本アメリカの基地があるのですが、安保条約はこれには何らの関係はないのだというふうに理解していいですね。
  36. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 同じようなことを先般ミコヤン氏が来たときも言われて、もしそういうようなことをやれば、日本は大へんなことになるぞというお話がございましたので、池田書簡にもはっきり申し上げておきましたが、安保条約はあくまで防衛的なものであって、これについてとやかく言うことはおかしい、日本に攻撃がない限り、あの条約は発動しないのだ、ということを申し上げたような次第でございます。
  37. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、日本に直接攻撃がなければ、かりにベルリン危機で軍事紛争が起こり、アメリカがその紛争解決のために日本の基地を使いたいという希望の表明があっても、これは全然問題にならない、拒否するだけだ、こういうふうに解釈していいですね。
  38. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 安保条約の建前は、何度も御説明しておるように、あくまで防衛的な性格のものであります。
  39. 松本七郎

    松本(七)委員 性格を聞いているのじゃない。それじゃベルリン危機をめぐっての紛争には日本の基地は絶対に使うことを拒否するという結論か政策としても当然出てきますねということを聞いているのです。そこをはっきり答弁して下さい、性格を聞いているのじゃないのだから。
  40. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は今申し上げているように、ベルリンの危機が建設的な方向で解決していくことを心から望んでいるのであって、これが激化することを望んでいればその場合どうこうということがありましょうけれども、全然話が違うと思います。
  41. 松本七郎

    松本(七)委員 だから、防衛的な条約の性格であり、それからベルリンの危機は建設的な方向で解決することを望んでおるというなら、なおさらのこと、そしてこれには全然直接、間接に介入しないという方針であるというなら、いかにベルリンを中心に危機か激化しようが、紛争になろうが、安保条約で規定した関係というものはこれとは無関係である、従ってこれには直接、間接日本の基地というものは利用されないという方針が出ると思うのです。それをことさら言葉を濁してそれに触れられないということになると、かえって何かそこに場合によっては使わせるのじゃないかという疑惑が国民の中に起こりますから、そういう疑惑を起こさないためにも、はっきりそれに触れた答弁をしていただきたい。
  42. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ベルリンの危機か起きました場合、安保条約があるから日本からベルリンに向けてどうこうということは考えられることでございません。
  43. 松本七郎

    松本(七)委員 直接ベルリンに向けなくても、そんなことを聞いているのじゃないのです。アメリカ日本の基地を使うこと自体は、直接であろうが間接であろうが、使うことを要求してくるかもしれない。そういう場合に今のお話からいえば、当然これは拒否するという結論が出ますかと言っているのです。
  44. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 だから安保条約は防衛的なものですということを何回も申し上げた。ほかの国のために日本の基地があるわけではございません。
  45. 松本七郎

    松本(七)委員 だから防衛的なものだという表現をしなくても、そういう表現をすること自体が、直接あなたがそれに触れられないということによって、国民の中に持たれている疑惑を晴らすことかできないのですから、もう少し直接に触れて、疑惑を持たない人なら問題ないけれども、持っている人がいるから聞いている。
  46. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 もう先ほどからの答弁で尽きておると思いますが……。
  47. 松本七郎

    松本(七)委員 それ以上の御答弁する意思がないようですから、これ以上は聞きません。  次には、日韓会談が近く再開されるという政府方針も聞いておったし、また韓国側も非常に積極的に乗り出すように聞いておったのですが、肝心な全権の問題で、きょうの報道によりますと何か韓国から異議が出てきて、相当延びるような事態に立ち至ったようなのですが、この経過と今後の政府方針を伺っておきたい。
  48. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日韓会談については、韓国側から再開したいという申し出がありましたから、われわれの方はこれに応ずるということをきめました。それから全権をきめられたいというので全権をきめようとしているわけであります。しかし韓国側から昨日以来情報がございまして今朝、伊関アジア局長のところへ、今こちらに来ております李東煥という代表が見えましてしばらく延期したいということを言って来られたようであります。従って延期することになっております。
  49. 松本七郎

    松本(七)委員 この日本側全権について、何かきょうの外務省の発表ですか、政府の発表ですか、内政干渉だというような意向を表明されておったようですが、全権の人選については今までも事前に何か韓国側から注文でもあったのですか。
  50. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の方は、これは経済関係の問題もあるから経済関係の相当な大家が当たるであろうということは前に言っておいたのでございます。それだけでございまして、今度の延す理由というのは一体全権に不満であるのかどうか、その点はまだ何も言ってきていないのであります。従って、わが方としては全権をきめる場合には杉さんにしよう——杉道助さんというのはジエトロの理事長であります。関西財界の大御所であります。日本経済界のトップ・レベルの人であることは松本さん御承知通りですが、その人にしようということにしております。会談が延びる以上は今すぐに発令をする必要はないから、会談をすることになったら発令をする、こういうことになっております。
  51. 松本七郎

    松本(七)委員 そうするとあくまでも杉さんはかえない。それで韓国がのまないならば会談がいつまで延びても仕方がない。こういう方針のように聞こえるのですがどうですか。
  52. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 もちろんこちらは会談を受けるについては杉さんにするというふうに内定しているわけでございます。韓国から会談を延ばしたいといってきておりますが、その理由はわからないのですが、とにかく会談をすることになったら杉さんが全権になるであろう、こういう手だてだけはとっておるわけであります。
  53. 松本七郎

    松本(七)委員 理由がわからないというわけですが、私どもの今までいろいろ聞いておったところではやはり全権の人選というものを非常に向こうは関心を持ち、これを重視しているように今まで聞いていたわけです。ですから政府もそれを事前に考慮しながら杉さんを人選されたのかと思ったのですけれども、その点はどうなんですか。やはり韓国の事情に少しうとくて韓国の考え方というものをはっきりつかめなかったというような点もあったのではないかという気がするのですが、そのいきさつを振り返ってみると、いまだに韓国か延ばすことを要求してきた理由はよくわからないということ自体がそのことを物語っているのじゃないかと思うのですけれども、もう少し韓国の考え方なり、促進しょうという空気から、今度急に延ばすようになった事態というのはこれから調べなければわからないというのではちょっとおそまつじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  54. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは意見を公式に申し上げているわけです。公式な話ではまだ何も聞いておりませんから、あくまで公式の場で公式の話をするほかはないと思います。従って、私どもの公式な態度を申し上げております。
  55. 松本七郎

    松本(七)委員 時間がありませんからまた別な機会に続けます。関連質問があるそうですからこれで終わります。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 関連して一言お伺いしたいのは朝鮮に行きたい人がいるようでございますけれども、外務省の方にパスポート申請に参りましたところが、上司の許可を得てからとかあるいはまた日韓会談に支障を来たすから、日韓会談の方が何とかなってからというような返事をしているようでごさいますけれども、全然今後お出しにならないのか、それともどういうようなお考えでいられるのか伺いたいと思います。
  57. 川村善八郎

    ○川村政府委員 三百名ほどの者が渡航を許可してくれ、旅券を発行してくれと言ってきていることは事実でございます。ただ問題は、日韓会談を目前に控えておりますし、その他諸般の事情等もございますので、まあこれは差控えておるということでございまして、決して永久にやらないというようなことは考えておりません。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 いつごろ大体お出しになる見通しでございますか。
  59. 川村善八郎

    ○川村政府委員 いつごろというような期間をきめることはこの際考えておりません。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 期間をきめることはできないでしょうが、日韓会談も今、松本委員から質問いたしました通り韓国側からその再開に対して難色を示しておるようでございます。そうなって参りますと、なかなかいついつというようなこともはっきり言っていただけないのじゃないかと思いますけれども、一方におきましてはもうすでに行きたいという意思表示をしておる人もたくさんいるわけでありますので、大体のめどくらいは話していただきませんと、ただ日韓会談に支障を来たすとか、そのあと諸般情勢というふうなお断り方たけでは納得できないのではないかと思うのです。ことに諸般情勢というのか何であるかということもちょっとわからないわけでございまして、そういう点をもう少しはりきりさせていただけたらと思います。
  61. 川村善八郎

    ○川村政府委員 現在私の方で調査をいたしました結果、あの中にはいろいろな分子もおりまするし、これを分析してより分けるというわけにもいきませんし、さりとて全体をやるというわけにもいきませんし、特に日韓会談を目前に控えておるというようなことから、どうしてもわれわれの方としてはやるわけにはいかないということで延期しておるような次第でございます。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 そういたしますと、あの方たちの中から適当だと思われる方は近いうちにやってもいいということもあるのですが、今のお話の裏を考えますと、そういうこともあり得るのですか。
  63. 川村善八郎

    ○川村政府委員 そういうことはございません。問題は三百人を要するに一からげにして考えております。どうしてもわれわれの方といたしましてはやるという意思はございません。しかしながらこれを永久にやらないかどうかという問題は、まだ私らの方で残る問題でございまして、この人たちをやがてやれるような時期を待っておるだけでございます。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 もう時間もないようですからこれ以上伺いませんけれども、すでに地方からは行けるものじゃないかしらというような考え方で上京しておる方もあるわけでございますし、さらにまた自分たちが行きたいというのをやたらに阻止されるという理由も納得できない人もおるわけでございまして今の政務次官の御答弁では永久というわけではないけれども、今のところは出さない、永久に出さないという理由はないでしょうけれども、今のところはという大体のめどはどのくらいか、おっしゃっていただけましたらおっしゃっていただきたいと思います。
  65. 川村善八郎

    ○川村政府委員 大体のめどといいましてもつけられないわけでございまして、要はあの中にいろいろな分子もございますが、それをどう分析するかということもわかりませんし、とにかく日韓会談を粉砕しようというようなやからがあることも事実であるので、そういうやからがあることを承知しながら出すことはできないわけであります。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 これでは時間をとるばかりでありますから、私は別の機会に質問しますけれども、今の川村政務次官のお言葉の中に、そういうやからもあるからというようなお答えだけは、ちょっとお控えになった方がいいんじゃないか、御訂正を願っておいた方が川村政務次官のおためになるのではないかと思います。
  67. 川村善八郎

    ○川村政府委員 御訂正申し上げます。とにかくあの分子の中にだいぶそういう過激な思想を持っておる者もございまして、それを分析することは容易でございません。従って、われわれといたしますれば、三百人というような大挙の渡航を許せということには応ずるわけにはいかないという態度でございます。
  68. 森下國雄

    森下委員長 川上貫一君。
  69. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣にお聞きします。時間が、だいぶたっておりますので、外務大臣はもうしりが動いておるだろうと思いますが、私の質問はごく簡単ですからごしんぼうをお願いします。  問題はやはり床次委員、それから松本委員が質問された千島の問題であります。この問題は私がまた質問するとすれば、ちょっと蒸し返しのように思いますけれども、今度の国会なりきようの委員会での質問や応答を聞いておりまして私の感ずることはどうもこれは一種の危険な傾向が出ておるということを感じる。たとえば全く条件の異なる沖繩千島を交換条件とするかのような論議も、予算委員じゃあったと思うのです。それからまた南北の千島全体の返還を要求することを、あたかも前提とするかのような質問があったと思うのです。また一方においては国後択捉は、これは完全に日本の領域なんだ。放棄なんかしたことはないのだというような論議もあったと思うのです。それでこれは政治問題もありましょうけれども当面する条件のもとでは政治的な問題と国際的な条約的な問題とをこんがらかしてはいけないと思うのです。これははっきり区別をして、はっきりさせなければ問題がこんがらがるだけだと思います。そこでこういう考え方、今私が述べましたような考え方は、どちらもちょっと誤ってはおらぬかというのが、われわれの考え方です。同時にこれには危険な考え方が伏在してはおらぬかという考え方なんです。そこであえて二、三の質問をするわけなのであります。蒸し返しをするわけではありません。私のはいつもの通り問題は簡単ですから、簡明に外務大臣の御答弁を願いたいと思う。  ます第一点ですが、サンフランシスコ条約というのは、これは政府としてはポツダム宣言履行の精神に基づいて締結されたものと考えておられるということは、御答弁を求める必要もないと思うのです。そこで聞くことなんですが、ポツダム宣言は御承知のように第八項で日本の領域について書いておる。これは本州、四国、九州、北海道はもうきまっております。それにわれらが決定する諸島とある。そこでわれら、すなわちポツダム宣言署名国ですが、私はこれはかりに連合国と言わしてもらいたいのですが、連合国がこのポツダム宣言の第八項に基づいて四つの大島のほかに国後択捉日本の領域として決定したことがあるのかないのか。このことをわれらが決定したこれとがありますか、ありませんか。
  70. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま川上委員からの御質問はポツダム宣言第八項これに書いております、「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並二吾等ノ決定スル諸小島二局限セラルベシ」。このわれらの決定する諸小島ということを連合国が決定したことがあるかということでございますが……。
  71. 川上貫一

    ○川上委員 そうじゃないのだ。国後択捉をわれらが日本国の領域として決定したことがあるかというのです。
  72. 中川融

    ○中川政府委員 国後択捉日本国の領域であるとも領域でないともいずれとも決定していないというのが現状でございます。
  73. 川上貫一

    ○川上委員 そうすればポツダム宣言の第八項によって、われらすなわち連合国という名称を使わしてもらいますが、連合国は決定したことはない。所属するとも所属しないともそれはどっちでもよろしい。決定したことはないということの御答弁がありました。  そこで第二の問題ですが、国後択捉はポツダム宣言にいう北海道なのですかどうですか。これは外務大臣
  74. 中川融

    ○中川政府委員 条約の問題でございますので、私からかわって御答弁いたしますが、国後択捉は北海道プロパー、北海道本島そのもの、これではなくて、ここに書いてあります諸小島こちらの方に入ると考えております。
  75. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると国後択捉日本の所属は、われらが、いわゆる連合国が決定しなければならぬのだということについてはどうお考えになりますか。
  76. 中川融

    ○中川政府委員 日本には本州、北海道、九州及び四国、この四つの島のほかに何千という実は小さな島があるわけでございまして、あるいは淡路島でありますとかあるいは隠岐でありますとかあるいは大島でありますとかあるいは江ノ島でありますとか、いろいろな島があるのでございまして、これらは全部いわば諸小島ということに入ると思うのでございます。これについて連合国が最終的に決定いたしますのは、あらゆる連合国が参加いたしました国際会議におきましてこれを決定すれば、これが決定するわけでございますが、御承知のようにそういう意味での国際会議というのは開かれておりません。従って連合国のうちの大部分との講和条約ということがサンフランシスコ平和条約であったわけでございます。ここにおきましてこの北方領土のことについては規定があるのでございますが、しかしながらその中のクーリール列島という字句については、はっきりした解釈が下されていないというのが現状であります。日本としては、もちろんこれについて日本としての独自な解釈をする自由が当然あるわけでございして、今政府がとっている立場はそういう立場から日本としての解釈をはっきりきめておる。従って国後択捉日本国領土である、こういう解釈をとっておるわけでございます。
  77. 川上貫一

    ○川上委員 日本解釈を聞いているのではない。実際どうなっておるかという具体的事実を聞いておる。日本政府がどんなことを解釈されようと、これはわれわれは批判はしますけれども、介入する余地はない。今の条約局長の御説によると、それなら小豆島はあれはどこのものですか。
  78. 中川融

    ○中川政府委員 当然日本国領土でございます。
  79. 川上貫一

    ○川上委員 しかしあなたの今の説明によると、連合国が決定しなくては領土にならぬ。
  80. 中川融

    ○中川政府委員 連合国が決定したときに日本領土からはずれるのでありまして、連合国が決定するまでは当然に日本領土でございます。
  81. 川上貫一

    ○川上委員 違いますよ。ポツダム宣言ではねてあるでしょう。日本の領域は四つの大島とこれに通じた島並びにわれらが決定する諸島とある。ちゃんとはねてあるのです。そんな答弁をしてはだめですよ。
  82. 中川融

    ○中川政府委員 御承知通りポツダム宣言日本の降伏の条件であります。日本が降伏する際に、こういう決定が将来連合国でなされるであろう。そういう場合には日本はこれに承服するという、いわば条件で降伏した、その意味のがポツダム宣言でありまして、最終的にこれが履行されるまではこの領土条項というものは確定しないわけであります。それが確定するまでは当然これは日本領土であるということになるわけでございます。もちろん日本がサンフランシスコ条約ではっきり放棄いたしました場合、これはもう日本領土からはずれております。しかしながら千島列島あるいはクーリル列島と申しますか、これの範囲はサンフランシスコ条約ではっきり確定していないのでありまして、そのときの日本全権国後択捉日本固有領土であるということは明確に発言しておるのでありまして、日本解釈を留保しておるわけでありまして、日本はこの解釈で今後もいくということになっておるわけであります。
  83. 川上貫一

    ○川上委員 日本政府解釈を聞きたくないんですがな、今。ないのだが、とにかく国後択捉は、連合国日本の領域としてポ宣言の第八項によって決定したことはない。これだけは明らかです。それから択捉国後はポツダム宣言にいうところの四つの島の一つの北海道ではない。これが一つの回答です。これはあとに残しておきます。  そこで、もう一つ、ちょっとこれは大臣に聞きたいのですが、条約局長ばかりに返事させぬで、大臣はもう二回目の大臣であって、非常によく調べておられる、賢明だという話ですからでき得る限り大臣から答弁してもらいたいと思う。  サンフランシスコ条約を調印します前に、クーリル・アイランド、いわゆる千島列島、これを北と南に分けた地図を作っておった国がどこがありますか。あれば、その国の名前を知らせてもらいたい。
  84. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 条約局長から……。
  85. 中川融

    ○中川政府委員 これは、日本の行政区画におきましては、千島の国というふうにいたしまして、その中に北千島、中千島南千島ということに分けていたのであります。従って詳細な日本地図には、そういうことが載っているものがあるかと思います。
  86. 川上貫一

    ○川上委員 どこの地図ですか。
  87. 中川融

    ○中川政府委員 日本の地図でございます。
  88. 川上貫一

    ○川上委員 日本の地図にはどう載っておるのですか。
  89. 中川融

    ○中川政府委員 日本国のその当時の行政区画として、北千島、中千島南千島というのがあったのでございまして、その意味ではそういう区画に分けた地図があったと私は推定いたします私がこの目で見たわけではございませんが、あり得ることと思います。
  90. 川上貫一

    ○川上委員 いや、それを聞いておるのじゃない。南千島と北千島に分けて北千島だけが千島列島だとしておる、こういう地図が、連合国のどこの国でこういう地図を作っておったのがあるか。日本の分も小学校時代から見ておりますからよう知っております。世界のどこにこの千島を二つに分けておる地図を作っておる国があったかどうかこれだけ聞けばいいのです。
  91. 中川融

    ○中川政府委員 私も各国の地図を調べたわけではございませんので的確には存じませんが、クーリル・アイランドというものを二つに分けた地図というものを特によく承知しておりません。
  92. 川上貫一

    ○川上委員 われわれの方で調べたのじゃないのです。そんな地図は世界じゅうにないのです。千島列島というものは一つなんです。政府の方もこれは知らぬ。これは第三の答弁です。  そこで、その次にお聞きしたいのですが、外務大臣はサンフランシスコ条約会議では、千島列島についてはきまっておらぬのだというような意味の御答弁がある。これはそういう意味ですか。
  93. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは私にお名ざしですから私がお答えいたします。  先ほどの問題にちょっと触れますが、日本で、御承知のように千島というものを総称して、北、中、南といって行政区画をさように決定しておったわけですから、外国から見れば、日本がそう言っておるのだから、いわゆるクーリル・アイランドというものはそこなんだろうということで、地図の上で、言っておったかもしれません。しかし、千島樺太交換条約には、先ほど申し上げたように明確にクーリル・アイランドというものがこれこれこういう島をさすものである、しかも境界線はこういう海峡であるというふうに、海峡の名前を指定しておるのでありますから、私は、交渉上それの方が正しいと思います。それから千島のことについて、私がどの機会にどういうことを言ったか、今申し上げたことより以外に私は申した記憶はございません。
  94. 川上貫一

    ○川上委員 今、千島樺太交換条約政府は切り札のように言っていらっしゃる。きょうもおやりになりました、床次委員の質問で。予算委員会でもやられたのじゃないかと思います。あれで、なるほど条約には、第二款に、現今所有しておるクーリル群島——以下十八島あるのですが、その権利を大日本帝国に譲り、そうしてこれから後、クーリル全島は日本帝国の領域に属する、という意味になっている。ところが、日本文はこういうふうになっているが、その時分にロシヤはフランス語を使っておったと思う、フランス語はどうなっておったか、ちょっと読んでみて下さいませんか。
  95. 中川融

    ○中川政府委員 フランス語でございますが、この第二款の前半といいますか、そのほとんど全部でございますが、これが今御指摘になった……。
  96. 川上貫一

    ○川上委員 群島日本語で訳したところだけでいい。
  97. 中川融

    ○中川政府委員 群島は「ル・グループ・デジール・ディット・クリル」です。
  98. 川上貫一

    ○川上委員 これはどういう意味ですか、ちょっと訳してみてくれませんか。
  99. 中川融

    ○中川政府委員 これはクリルと称せられる島の一群、こういうことでございます。
  100. 川上貫一

    ○川上委員 千島列島と称せられる島の一部、それが群島なんですね。
  101. 中川融

    ○中川政府委員 一部ではございません。一群でございます。群でございます。
  102. 川上貫一

    ○川上委員 群では何でもよろしい。ここにはこう書いてある。「ル・グループ・デジール・ディット・クリル」いわゆる島となっております。「デジール」、その中の「ル・グループ」で、その中の一定の島々なんです。これは何もあそこの千島を北半分だけ言うておるという証拠にはならぬ、絶対言うてない。逆に証拠になるのです。これを外務大臣は大へん強調なさる、どういうことなんですか。これは千島列島、つまり日本文で群と書いてある。クーリル・アイランドでなしに、そこが千島列島なんだ、この条約ではこうきめておるじゃないか。それを国後択捉は入らぬということの論証にしておられる。ところが仏文を読んでごらんなさい。国後択捉が完全に入るということになっている。一体、どういう工合で外務大臣はこれを引用なさるのか。あなたの方で工合悪いじゃないですか。
  103. 中川融

    ○中川政府委員 この条約解釈でございます。
  104. 川上貫一

    ○川上委員 条約解釈ではなく、この文章に書いてあることです。
  105. 中川融

    ○中川政府委員 書いてある文章の解釈でございますので私から申し上げますが、この仏文は日本文よりももっとさらに明確に、要するにこの十八島をクーリルと称するということが明らかに出てくるわけでございまして、「ル・グループ・デジール・ディット・クリル」、クーリルと称せられる島々のグループ、こういうことでございますので、従って、このグループがクーリルと称せられるということで、十八の島が書いてあるのでございます。だから、フランス文では明確に、この条約クーリルと称するものは十八の島であるということがはっきりしているわけでございます。
  106. 川上貫一

    ○川上委員 ここで私は論争することを好みませんがね、こんなことで。条約局長、もう少しフランス語を勉強した方がいい。そんな解釈は出てきはしません。これはどう訳してもいわゆる千島列島と称するものの中の一定の島々という文章です。いわゆる千島列島の中の一定の島なんだ、それがこの北の方のいわゆるグループなんです。これは論争したら長くなるばかりだから論争をしません。こんなのを種にとって、外務大臣あきまへんぜ。これは私は答弁にならぬと思う。これを種になさることは、ちょっとあまりよくない。あなたの損だということが一つです。これは私はこれ以上条約局長と論争するつもりはありません。  その次に外務大臣にお聞きするのですが、外務大臣は、さっき言うたことですが、政府答弁全体において、サンフランシスコ条約で何だか知らぬが、国後択捉の問題は残されておるかのごとく答弁をされてあるのです。この根拠は何ですか。
  107. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは一九四一年の大西洋憲章、それからカイロ宣言、それを受けたポツダム宣言、一貫して領土不拡大ということをいっているわけです。ですから、日本固有領土であるとだれが見ても明らかなところには戦勝国の新たなる領土主権は及ばない、こういうことに解釈できると思います。それが根拠でございます。  それから、その前に、川上さんはフランス語が大へんお上手で、私は知らないのですが、英語でいう場合にも似たような感覚ですね。川上と称せられる人というのだからこれはおれじゃないと言われても、これはやはり英語もフランス語も構成はそういうふうになっているわけです。その場合によって、その川上と称せられるというふうに言いますことは、これは御承知だと思います。中川条約局長のお答えした通りであります。
  108. 川上貫一

    ○川上委員 政府としてはそうでも言わなければもう仕方がないことだと思う。サンフランシスコ条約国後択捉の帰属についてはやはり残されておるというのは、条約のあの時分の討議からとらないでほかの政治論からとっておる。そこを聞いておるのじゃなくてサンフランシスコ条約会議連合国日本も行っておるのですから国後択捉は別なんだということの根拠会議の中のどこであるかというのを、議事録、演説、記録から言うてもらいたい。
  109. 中川融

    ○中川政府委員 まず一番もとは、サンフランシスコ条約に書いてありますザ・クーリル・アイランズということの定義が書いてないことでございます。正確に平和条約を結ぶ場合には、どの島が入る、どの島が入らない、付図までつけてはっきりするのが普通でございますが、サンフランシスコ条約には簡単にクーリル・アイランズと書いただけで、明確にどこまでということが規定してないのがまず根本でございます。従って、このクーリル・アイランズがどの範図に及ぶかということは、いわばサンフランシスコ条約の各署名国が自分で判断し、自分で解釈できるわけでございます。その際その解釈について一言言ったのは日本全権団だけでございますが、日本全権団はこの国後択捉日本固有領土であるということをはっきりそこで言っておるのであります。しかし結局条約全体としてはいわゆるクーリル・アイランズの地域的範囲を明確にしないまま残されており、各国によって批准され、発効されたということになっておるのでございまして、日本日本としての解釈をその後はっきりいたしまして、これを宣明しておるわけでございます。なお、御承知のようにアメリカ政府も一九五六年に至りまして、この日本解釈の結論に同意を表明しておるのでございます。
  110. 川上貫一

    ○川上委員 日本の代表、吉田元首相と思うのですが、それがある程度のことを言うた。これに共鳴した国がどこかありましたか。
  111. 中川融

    ○中川政府委員 日本全権の発言は会議の一番最後に行なわれたのでございまして、その後各国からの再発言はなかったのでございます。これに賛成も反対も実は表明されておりません。
  112. 川上貫一

    ○川上委員 これに賛成も反対も表明されておらぬ、言いっぱなしだ。イギリスの代表の演説の一節をちょっと聞かせて下さい。国後択捉千島の問題についてイギリスの代表のヤンガーが発言しておるはずです。これはどういう発言をしておりますか。
  113. 中川融

    ○中川政府委員 ヤンガー英国代表は、いろいろ発言をいたしましたが、国後択捉については特に発言していなかったと思います。
  114. 川上貫一

    ○川上委員 違います。イギリスの代表のヤンガー全権の記録がここにあります。現在ソ連が占領しておるクーリル・アイランズはこの条約日本は完全にその主権を放棄したと言うております。これはイギリスのヤンガーの演説です。ダレスの演説もあります。今ダレスが言うておるという意見がありますが、ダレスが言うておるのは歯舞色丹については若干の質問があった。がということを言っておるだけで、国後択捉の問題についてはほかに何に発言をしておりません。  そこでサンフランシスコ条約のここが問題なんです。政府解釈を聞いておるのじゃない、わかっておるのだ、何べんも言うておるのだ、その解釈が間違っておるから私は聞いておるのだがそれをもう一ぺん聞かしてもらっても私の質問には三文の値打もないのですそうではなくしてサンフランシスコ会議で、ここでこういう工合にこう決定して、そこで国後択捉領土権はこうなっておる。この説明がほしい。それがちっとも出てこない。外務大臣どう思いますか。これはそんなあやふやなことではいかぬのではないですか。サンフランシスコ会議でどうなったかということを、国際会議の具体的な事実からこうなんだという論拠を示してもらいたい。
  115. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国後択捉日本固有領土であるということを吉田全権は言うたわけです。それに対して反対はない。しかもそのあと各国が調印をしておる。そこでこの解釈はあいまいなまま残されておるのが実は事実だと思います。そこで一九五六年の九月四日になってアメリカの方は、これは日本側固有領土であるという解釈が正しいということを言ってきておるわけであります。これが今までの事実のすべてだと思います。
  116. 川上貫一

    ○川上委員 ダレスが書簡をよこしておりますが、国際的取りきめというものはダレスの書簡くらいで動くものではありません。ダレスの手紙じゃないですか。国際的な取りきめが手紙一本で動いてたまりますか、あなた方は…(「フルシチョフの手紙」と呼ぶ者あり)われわれはフルシチョフの手紙で動いておると言うておらぬ。よけいなことを言うな。駄って聞く方が紳士的なんだ。  これはダレスの書簡ということをおっしゃるが、その前に日本アメリカに聞き合わせたことがある。それは三十一年の三月十日の衆議院の外務委員会で返事を発表されております。その返事によるとアメリカ政府はサンフランスコ会議の議事録中にも講和条約の中にも千島列島については何ら定義できる論議を行なわなかった、こう言うておる。それだからあとでダレスが、あれは日本の権利があるものだと思うとかなんとか言ったってそれはダレスが思うのであって——前に、アメリカの回答にその論議は行なわれなかったと回答しておる。そのあとでダレスがあれは日本のもののようだ、こう言うておるのにすぎない。だからダレスの書簡というものは政府がお取り上げなさる論拠にはなりませんとわれわれは考える。これはどうなんですか。
  117. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その後に至って今ダレスの手紙がなんだというお話がございましたが、これはアメリカ国務省としての見解を表明しておるわけであります。それはもちろん公的にアメリカ政府意見を代表しておる、こう解釈するのが普通だと思います。
  118. 川上貫一

    ○川上委員 アメリカ一国だけの考えサンフランシスコ会議の問題の決着をつけるわけにいきません。それはアメリカの意向ということを政府はよく言われますがアメリカ政府の意向だけで国際会議が動くわけではない。韓国の請求権の問題でもアメリカに請うてきた。今度の韓国の会談を始めるのもアメリカの意向だ。これをわれわれは危険だと言うておる。こういうことをたてにとって国会で答弁をなさる態度が危険だということを言っておる。サンフランシスコ会議は国際会議です。なるほどソ連その他は参加しておりません。この点においては遺憾な点がありますけれども、少なくともあそこに寄った各国の国際会議——それをアメリカ一国が、国務省であろうが、アメリカ政府であろうが、単独解釈をする権力はない。それはしてもよろしいしてもよろしいけれども、それはアメリカ解釈だけであって、サンフランシスコ条約このものを動かすことはできないとわれわれは考える。これは外務大臣、どうお考えになりますか。
  119. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いやアメリカ考え方はどうだと言われるから、アメリカはこうだと言ったのであります。この千島の定義というものは、日本ソ連との間の条約上の文書によればこうなっておるという事実を申し上げた。そこで国後択捉の問題について最終的にサンフランシスコ会議においてこの結論が出ておるかということになると、これはまだ不確定であると言わざるを得ないということはさっき言ったわけです。そこで普通の条約ならば、さっき条約局長が言ったように、領土の問題は区画を明瞭に確定するというのが普通に行なわれていることだそうですが、とにかく千島ということだけしかいっていない。そこで千島とは何ぞやということになる。千島とは何ぞやということになると、国後択捉固有領土であるし、ウルップ以北十八島嶼ということは歴史的に明確である従って、固有領土は奪わずという今度の戦争の戦勝国の間の取りきめからいえば、これは当然わが国領土であろう、こういうことをいっているわけです。
  120. 川上貫一

    ○川上委員 同じことを政府は繰り返すが、私の質問は結論が出ている気がするのですが、もう一つ聞くのは、連合国国後択捉日本帰属を決定したことはない、これは政府答弁です。間接的にいろんなことをいわれるだけなのだ。それから国後択捉はポツダム宣言では北海道ではない。政府は、今の外務大臣のお考えでも、国後択捉はサンフランシスコで放棄したもののうちに入っておらぬ。そうすると国後択捉はどんなことになるか。
  121. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはまた同じことを言わざるを得なくなるのですけれども、御承知のように戦前は千島は全部日本領土であったのですね。そこでその行政権の行使の対象としては北千島、中千島南千島というものを全部分けて日本が行政権をそこに行使しておったわけです。従って北海道の一部としては行政権を行使していなかった。あとで今度の戦争の結果、千島というものを放棄したというので、この問題は千島は一体として行政権は国内的には行使していたけれども、条約による千島の中には入らないものが外に出たということです。これは固有領土である、こういうことであります。
  122. 川上貫一

    ○川上委員 質問が違うのです。それはわかっておる、今択捉国後というものは国際関係上はどういうことになっておるのかということを聞いておる。
  123. 中川融

    ○中川政府委員 日本領土でございます。
  124. 川上貫一

    ○川上委員 日本領土じゃないじゃないですか。いつきまったんですか。きまっておらぬです固有領土だということをおっしゃる。これは聞いておきます。固有領土ということを日本が言うておることと、日本領土と決定したということは別ですよ。固有領土というものは、これは日本領土に組み入れるのだという世界的取りきめも何もないです。固有領土であるということを主張するということは間違うておると思うけれども、それをただやめなさいとだけ言いおるのではない。そうじゃない。択捉国後日本領土であるという決定はないのですから。そうすれば国後択捉は北海道じゃない。連合国は決定したことはない。サンフランシスコ条約では放棄してはおらぬと政府は言うのです。そうしたら国後択捉は宙に浮いておる。これは連合国は決定したことはない。それを政府はあれは自分のものだ、固有領土だということを言うておるけれども。これには主観的な意図というものはいろいろありましょうが国際法的に決定されたものがないのです。連合国は決定しておらぬのです。そうすると、国後択捉という島は国際的にどういうことになっておるのかというと、日本領土である。その返事は外務大臣ほんまにあきまへんぜ。そういうことを言うておると、私はもう時間がありませんから……。(「ほんまにやめた方がいいよ」と呼ぶ者あり)いやもう少しやめませんがね。やめた方がいいなどというとやめるわけにいかない。よけいなことを言われると、私は委員の権利ですからやめません。(「持ち時間があるよ。」と呼ぶ者あり)保障された権利だ、持ち時間は決定しておらぬ。政府見解は誤りです。何といってもきょうの応答からわかる。国後択捉の帰属というものが日本になっておるという的確な国際法的根拠はありません。解釈するだけなのです。そこで私は言いたいのですが、日本政府がどんなに解釈しておっても、ポツダム宣言というものはヤルタ協定、カイロ宣言の上に立った宣言であることは間違いないです。これはもう世界の常識です。だからこそさすがにサンフランシスコ条約でも千島列島の放棄をきめたのです。だからこそ西村条約局長があの直後に、この千島列島の中には南千島千島を含みますと言うておるのは正しいのです。これが正しいのです。あと後段でいろいろ言うとかあるいはサンフランシスコ条約で吉田全権が言うたとかいうことは法的根拠にはなりません。法的には西村条約局長答弁が正しい。このことはわかり切っておる。それをねじ曲げていろいろしようとしておるのです。ここに私は問題があると思うのです。今ごろになって池田首相も外務大臣も盛んにいわゆる後段というものを持ち出したり、あるいは吉田全権の発言の一部をたてにとったりして、択捉国後千島に含まれていないということを強調しております。ことに池田首相のごときは、予算委員会で、特にこの問題については御静粛に聞いてくれということまで念を押しておるのとす。きょうのここの同僚委員の質問に対しても、外務大臣はまことに熱心に、待っていましたといわんばかりに政府見解を述べられておる。これは松本委員が言われたが、全く千島問題を持ち出してソ連に対する報復主義をあおり立てておると思うのです。この報復主義はけしからぬという人があるかもしれませんが、全く報復主義です。そして軍国主義の復活の重要な武器にしようとしておるのです。  このことは間違いない。現は西ドイツをごらんなさい。世界アメリカの先兵となって緊張の激化をやっておるのは、ヨーロッパーでは西ドイツアジアでは日本だと世界的にいわれておるのです。そのアデナウアーは領土問題を持ち出して、東プロシャからオーデル・ナイセの線までの奪還を主張してこれで報復主義をあおり立てて、軍国主義を復活しました。外務大臣アメリカから帰ってきて、わざわざ行ってこれに面会しておられるはずです。これとウリ二つです。これは全く済んでしまって、実際に国際法的にもどこの国も承認しない、アメリカだけは別かしらぬけれども、どこの人民も承服できない、また言い出してもとても実現はしそうにないということを、百も政府承知しておるはずなのだ。それをわざわざ持ち出して国民をあおり立てる、これは報復主義です。そして軍国主義復活の武器にしようとしておる、この点については外務大臣は特に胸に手を当てて考えられる必要があると思う。こういうことが危険でないのですか、こういう形で国民を煽動して、そうして日本の報復的な、軍国的なこれを作り上げていこうという結果がどういう結果をもたらすか、外務大臣はお考えになりますか。私はこの問題は単なる千島の問題ではなくて、千島の問題を取り上げても——外務大臣はなかなかおとなしい顔をしておられるから、主観的にはあるいはそうでないかもしれませんけれども、今の政府のいき方の中に入っておって、実質的には今私の言ったような方向の政治をやってござる。外務大臣としてこういう問題はこういう形で取り扱うべきじゃない。なぜこれをつっぱって、実際においては実現せぬことがわかっておる。私は一つ聞くが、戦争をするつもりですか。これを実現できなければぶっ放すつもりですか。あなたはお笑いになりますけれども、どのようにしてこんなことが通ると思いますか。私ははっきり言いますがね。ソ連だから日本の国のどこでもやりさえすればいい、こんなことを私は言うておるんではない。それははっきりしておきます。そうでない。国際的取りきめというものに根を置かないで、日本政府はとにかく報復主義、軍国主義的なものを国民にあおり立てる。この問題のもたらす結果についてどう考えるかということです。ごらんなさい。これは実現しそうにないことはあなたは知っているでしょう。どうしてもこれは戦争するに違いない、こう言われても仕方がないでしょう。現に自民党の中にさえ、これは戦争かいという意見があるそうであります。これは真偽はわかりませんが……。  私はこれ以上質問しませんが、この千島の問題は今度の日韓会談の問題と相伴うて、日本における将来の運命を非常に危険な方向に持っていく政府態度であり、私はこの政府態度に対する質問の中でも、幾分危険な考え方がひそんでおるということを考えますから、あえてこういう質問をしたのです。この問題についてはまだ残っておりますが、次の外務委員会のときに時間を得まして、この問題と韓国、南朝鮮の問題についてあらためて質問をさせてもらいたいと思います。  きょうの質問はこれで終わります。
  125. 森下國雄

    森下委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十二分散会