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1961-11-02 第39回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十一月二日(木曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君    理事 中曽根康弘君 理事 山口 好一君    理事 岡  良一君 理事 原   茂君       秋田 大助君    佐々木義武君       石川 次夫君    松前 重義君       三木 喜夫君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 三木 武夫君  委員外出席者         原子力委員会委         員       石川 一郎君         源子力委員会委         員       兼重寛九郎君         源子力委員会委         員       駒形 作次君         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         科学技術事務次         官       鈴江 康平君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君         総理府技官         (科学技術庁放         射線医学総合研         究所長)    塚本 憲甫君         外務事務官         (国際連合局長         事務代理)   高橋  覺君         運 輸 技 官         (気象庁観測部         長)      川畑 幸夫君         参  考  人         (立教大学教授         ・日本学術会議         原子力特別委員         会幹事放射線         審議会緊急被爆         特別部会長)  田島 英三君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事長)  菊池 正士君     ————————————— 十月三十一日  一、科学技術振興対策に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力行政一般  に関する問題)  核実験に伴う放射能等科学的調査及び対策樹  立に関する件      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  原子力行政一般について調査を進めます。  本日は、主として放射能に関する問題、すなわち、放射性降下物蓄積の実態、これが人体に及ぼす影響、わが国における気象状況、並びに内閣に設置されました放射能対策本部活動状況について、参考人及び政府当局よりそれぞれ説明を聴取し、そのあと質疑に入ることにいたします。御説明は、御一人約十分程度お願いをいたします。  参考人の方には、わざわざ本委員会においでを願いまして、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  それでは、まず田島参考人よりお願いをいたします。立教大学教授日本学術会議原子力特別委員会幹事放射線審議会緊急被爆特別部会長田島英三君。
  3. 田島英三

    田島参考人 ただいま紹介されました田島でございます。放射能問題一般について意見を申し述べます。  まず、現在放射能が、ソ連核爆発再開によりまして、どういう影響をもたらすであろうかということからお話をいたします。  放射能の問題を取り扱いますのに、われわれが普通取り扱っておりますのは、一体、核爆発を起こしましてどのくらいの降下量があるだろうかということが第一の推定になりまして、それが人体にどのくらいの放射線量を与えるだろうかということを第二番目に推定いたしまして、それがどのくらいの人体的な影響をもたらすだろうかということで全体の推定量を推量するわけでありますが、何分にもこの方面の学問は、進歩の段階にありまして、わからないところがたくさんあります。ことに、この核爆発によって、われわれの受けます放射線量、個々の個人が受けます線量がきわめて——きわめてと申しますか、医療用その他のものに比較しまして非常に低い、しかも、放射線を受ける数が非常に多いというような場合に、これをいかに障害程度推定するかということは、はなはだ困難な問題であります。  第二番目といたしまして、現在どのくらいの放射性降下物をわれわれは覚悟しなければいけないだろうかという点であります。これから申しますことは、非常に仮定の多い話でありますので、その限りにおいて結論が非常にあいまいでありますけれども、それにもかかわらず、われわれはその研究の結果を待っているわけにいかないという事情があります。というのは、現在われわれが上から放射性降下物を受けておりますので、これを完全な研究ができてから推定その他をするということは、非常に時期を失するおそれがありますので、あるいは科学的な立場からいいますと、承認できないといいますか、確かでないような仮定でも、あえてしなければいけないという苦しい立場にあります。そのことを十分御承知の上で、私のお話を聞いていただければ大へんありがたいと思っております。  一九五八年に核爆発実験を一時的に停止しましたときの状況を申し上げますと、大体全体で——その前に、これからお話しします最も重要な、核爆発によって降下いたします放射性物質は、種々雑多、たくさんございますが、その種々雑多の一つずつの核種についてすべてを推定するということは繁雑でありますので、実際の障害立場から、ジェネラリティと申しますかを失わないで、幾つかの核種を取り出して推定するのがわれわれの常識になっております。その一つは、ストロンチウム九〇という点がいろいろな意味で重要であります。その理由というのは、核爆発するときにできる量が非常に多いということ、それから半減期が、人の寿命と比較いたしまして、ちょうどわれわれに工合が悪い。要するに、人の寿命何分幾つということになっておりますので、一たんこれを取り入れますと、極端な話をいたしますと、われわれのからだの中へ取り入れた放射性ストロンチウム九〇が放射線を出すのをやめるころわれわれが死ぬというような、ちょうど工合が悪いような状況になっております。非常に早い半減期のものでありますと、これはわれわれの方の寿命が長ければ比較的には安全でありますが、また、放射性半減期が非常に長いと、崩壊して放射線を出す率が少なくなりますので、これまた安全ということになりますので、ちょうど悪い工合になりますのがストロンチウム九〇であります。これが第二の理由。  第三番目の理由といたしますと、ストロンチウム九〇が、からだの中へ入りまして骨に沈着いたしますので、骨の中の非常に重要な器官を照射するという意味で厄介なしろものであります。従って、これは、障害として注目すべきものは白血病がその対象になります。あるいは骨腫瘍その他骨の病気が対象になります。  次に問題になりますのはセシウム一三七でありますが、これは人間生物の中に滞在している期間は短いものであります。しかし、軟組織に入りまして、遺伝的な障害を起こすというふうなこともあります。その他もう一つはプルトニウムが問題になるし、あるいは降下する時期が早いと、短い期間半減期のものが問題になります。  そこで、ストロンチウム九〇についてだけ、まず現在の状況お話ししたいと思います。先ほど話しかけましたような一九五八年の核爆発停止のときまでに、どのくらいのストロンチウム九〇を作ったかと申しますと、大体九メガキューリー——メガというのは百万でありますから、九百万キューリーといいますか、九メガキューリーくらい作りまして、そのうち三メガキューリーが、その実験場のすぐそばに落ちてしまったと推定されております。従って、成層圏及び対流圏、おもに成層圏でありますが、四・五メガキューリーくらいのものが打ち上げられまして、一九六一年のところでは、そのうちの大体四・五メガキューリーくらいが地上蓄積しております。これは、世界じゅうの土地の中にありますストロンチウム九〇の量をはかりまして推定したのが四・五メガキューリー、従って、五八年の終わりまで、リザンプションを行なうまでに成層圏中に入りましたものが、成層圏中に一・五メガキューリー現在残っております。従って、ソ連爆発をやらないでも、われわれはなお幾分かのストロンチウム九〇の降下を受けておったわけであります。ところが、今回ソ連爆発をいたしまして、その総トン数が、TNTで換算いたしまして、これは幾らと推定するかよくわかりませんが、気象庁あるいはこれは全くの新聞報道でありますが、朝日の社説などに出ておるところを見ますと、おそらく百四十メガトンくらい現在までにやっているだろう、こういうわけであります。ところで、この百四十メガトンから、一体どのくらいのストロンチウム九〇がさらに加わったかということを推定いたしますためには、爆弾の性能及びその打ち上げ方に大いによるのでありまするが、これがわからない以上、正確な数字は出てこないのであります。それで、かりに従来の、五八年前までの仮定と同じ仮定を使って計算いたしてみます。ただし、今度の新聞報道によりますと、かなり上空でやったという記録がありますので、悪い側に仮定を置きまして、その実験場近くに落ちる分は全然なかった、全部成層圏に打ち上げられたというふうに仮定いたしますと、成層圏あるいは対流圏とか、われわれの世界じゅうに振りまかれる分のストロンチウム九〇は、七メガキューリーくらいにふえているのではないかと思います。これは先ほど申しましたように危うい仮定の上に立っておりますので、その点は十分御承知いただきたいと思います。従って、その仮定が許されるといたしますと、現在、成層圏並びにわれわれが将来受けるであろうところのストロンチウム九〇の量が、大気圏中に八・五メガキューリーくらい残っているということになります。これが徐々に落ちてくるわけですが、従って、これからあとは若干その仮定で計算いたしますと、その仮定に、さらに、すぐに落ちて参りませんから、成層圏にとどまっている年数を約一年ぐらいと仮定いたします。これは半年と言う人もありますし、二、三年と言う人もありますので、これも明らかでない。それは一応平均の値として一年くらいと仮定いたしますと、全体として、現在の地上におけるストロンチウム九〇の量が約二・五倍になります。その二・五倍になりますのは、おそらく二年くらいあと、一九六一年か六二年、あるいはその半減期のとり方によって、来年あたりぐっと上がるかもしれませんが、今の仮定が正しいとしますと、おそらく二、三年の間に、現在あります地上におけるストロンチウム蓄積量の二・五倍くらいになると思います。現在どのくらいあるかということは、これは気象庁の三宅さんのデータによりますと、多分一平方キロメートル当たり二十七ミリキューリー、大体三十ミリキューリー程度だと思います。従って、われわれは、その値の二・五倍くらいまでは、あるいは最悪の場合に覚悟しなければいけないのではないかというふうに考えております。  このストロンチウム九〇が、植物に入り、あるいは食物を通してわれわれのからだの中に入って、結局は骨の中に沈積するのであります。現在、どのくらい人間からだの中に入っているかということがまた問題になるわけですが、これは、現在数字をあげてそのまま比例するかということになりますと、これまた問題であります。というのは、われわれのからだ環境とが、現在平衡状態になっているかいないかという問題もあります。それにもかかわらず、日本人の骨の中のストロンチウム九〇のデータを拝見しますと、サンプルの数が非常に少ないので、的確な代表的なデータは残念ながら今のところございませんですが、最大で三・四ストロンチウム単位ぐらいで、平均が一前後ではないかと思っております。これがだんだん大きくなっていくと、それによってわれわれの骨髄は、ちょうどスイッチのないレントゲン器械を背中にしょったような工合で、いつになっても、死ぬまで照射を受ける、ごくわずかでありますが、照射はふえていくわけです。  大体その照射程度はどのくらいか。誤りを起こさないために、どのくらいの照射の量を受けるかという大体の大筋の判断お話ししておきますと、英国の報告によりますと、一九五八年までのところですが、一年間一〇ミリレムレントゲンと同じように百分の一レムぐらい毎年受けております。この量はどのくらいの量かと申しますと、皆さんレントゲン写真をとるときにからだにいやでも受けますが、その量から比べますと、はるかに小さいものであります。はるかに小さいから、従ってそれは安心かというと、私は安心のところを強調しているのではないのであります。なぜかといえば、レントゲン診断治療を受ける数は非常に制限されている人の数でありますが、一方、生殖腺に対する照射の数は、きわめて多数の世界人類で、日本人について言っても、だれかれの区別なく受けるという点に問題があるのであると思います。それからもう一つ、ついでに申しますと、お医者さんから受けますレントゲンと比較して、評価の材料としてレントゲン医療用に使います放射線は、それによってわれわれがからだ診断してもらい、それによってわれわれのからだがなおっていくというプラスの面が非常に多々あることを、われわれは忘れてはならないのであります。しかるに、この生殖腺に対する線量は、微量であるといえども、われわれのからだプラスになる面は全然なく、マイナスの面だけしか残っていないという点にもう一つの問題があります。その点は、この線量を評価する、エヴァリュエーションする上に非常に重要なポイントであると思います。  どこまでお話ししてよいかちょっとわかりませんが、時間はどのくらいありますか。
  4. 前田正男

    前田委員長 簡単に、結論が出るところまでやって下さい。
  5. 田島英三

    田島参考人 私がただいま申しました点は、要するに、ソ連核爆発リザンプションによって、どのくらいの降下物があるかという点に集約をさせていただきたいと思います。今、ストロンチウム九〇についてお話しいたしましたが、セシウムについても、ほぼこの割合は同じであります。ただ絶対値にいたしますと、一・七倍か約二倍くらいになりますが、現在の地上におきまするセシウム一三七が、今度の核爆発によってどのくらいふえるだろうかという、その割合は、二・五倍というものがセシウムについても言えると思います。  それから、もう一つ非常に厄介な問題は、現在早く二、三日中でわれわれのところへ到達しておりまして、空気も汚染しておりますが、この汚染から受けますわれわれの線量に関しては、まだそのデータが不足のために、的確な判断はできない状態になっております。  これで私の初めの公述を終わります。
  6. 前田正男

  7. 塚本憲甫

    塚本説明員 ただいま委員長からの御紹介の塚本でございます。私は、おもに放射線人体に及ぼす影響について、わかりやすく御説明しろというお話でございましたから、それをいたしましょう。  手っとり早く申し上げますと、放射線影響には、非常にすぐに現われてくるものと、それから長くたってから現われてくるものとの二つがございます。従いまして、御存じのように、広島、長崎の場合に、原爆を受けたあとに惨たんたる状況が起こりましたけれども、この非常に遠距離におきます放射性降下物において起こってくるであろうことを申し上げますときには、まず簡単に申し上げますと、そういう急性の強い影響は心配しないでいいだろうということでありますし、また、その線量というものが、その場合、近距離におきましては大きなものになりますが、そういうことを想定する必要はないんじゃないか。しからば大丈夫かということになりますが、私は決して大丈夫ということを申し上げようと思っているのではないのでありまして、三十年、四十年たちましても、放射線影響というものは、あるものは消えないのだということを申し上げたいと思います。これをわれわれは晩発効果とか、あるいは遅発現象とか申しておりますが、そのおもなものを申し上げますと、先ほど田島参考人からお話がありましたように、白血病がふえてくるであろうということが一つ、それから、それは広い意味で言いますと、これは血液を作る造血臓器のガンのようなものでございますから、一般にそういう腫瘍がふえはしないかということであります。それからもう一つは、われわれの寿命が、微小な放射線を受けても幾らか縮みはしないか、寿命の短縮という問題がございます。それと並行しますとも言えますのは、加齢現象とわれわれは申しておりますが、早く年をとると申し上げたらはっきりするかと思いますが、年よりもふけるといいますか、いろいろなそういう問題、従って、寿命を短縮するだろう、こういうことだと思います。そういうことについて考えなければならないというのが、長い将来にわたっての問題でありますが、私は特別その方の専門ではありませんけれども、さらにもっと広い意味で、長い目で見ますと、もっと大きな問題は遺伝的な影響でございます。そういうことをわれわれは頭に入れておかなければならないと思います。  今度はまた、放射線というものの作用の方を、放射線をつかまえて言いますと、われわれに生物学的な作用でわかっておらないことが非常に多いわけであります。その中で一番問題になりますのは、それでは放射線というものは、どんなに低い線量であっても必ずそういう影響を持っているか、あるいはある線量までは心配がないんだが、その線量から上になるとそういういろいろなことが起こってくるか、これは学問的にも非常に議論がありますし、実験的にも、いろいろそれを確かめようという試みがありますけれども、その問題は非常に大きく皆さんに考えていただきたい問題だと思います。従いまして、もしも最低の線量まで——線量に応じて、たとえば線量が倍になればそういう障害も倍になるという仮定に立ちますと、ゼロでなければいかぬという理屈も一方において成り立つわけでありますが、人間を含めての複雑な生物現象は、一方においてそれ全体としての回復、それらのことがありますので、なかなかそう簡単に割り切れない問題があります。ことに遺伝の問題になりますと、今まで実験的に行ないましたいろいろな動物による結果から見ますと、遺伝的な効果は、線量と直線的な関係においてふえるという方のデータが出ておりまして、先ほど申し上げましたような限界線量が確かにあるんだというデータとしては、まだ残念ながら出ておりません。従いまして、そういう長い目で人類を見ますときに、今の放射能のレベルならば全く安心である、ここまで達しなければ何も心配しないでいいのだということは、非常に申し上げにくい問題だと思います。  ただ、もう一つお考えいただきたいことは、それならば放射線はゼロでなければいけないかということになりますけれども、地球上の人類が年々、こういう人工放射能の問題が始まります前から、宇宙線あるいは地殻から受けておる放射能があるわけでございます。そして、先ほど田島博士からお話がありましたように、この上にプラスされるところの医療診断治療に使われている放射線があるわけでございます。これを手っとり早く、わかりやすく御説明申し上げますと、大体世界じゅうにならしまして、多いところと少ないところとありますけれども、自然放射能が大体一〇〇——少な目に見積もって一〇〇と申し上げていいかもしれません。それに対して日本の場合の医療が四〇、それに対して、今田島さんのお話で、現在までの蓄積ストロンチウムから受けるもの、そのほかのものを合わせて一〇ぐらいな単位ではないかというお話があったわけでございますが、問題はさらに複雑化しまして、一四〇か一五〇になったというそこに意味があるのか、それとも、そういう意味でなしに、とにかく全体としてふえるということ、環境が変わってくるということが、どういうふうに人類影響してくるかということになりますと、先ほど申し上げましたような生物、ことに人間というものに対する生物学的な効果というものを、ここまでは大丈夫だとかここまでならば許せるだろうという意味には、解決をするだけの材料を、大げさに申しますと、世界じゅう、どこでもまだ持っていないわけでございます。従いまして、国連の科学委員会などで、できるだけそういうデータを集めて、それを世界のベースで、全人類にどういうふうに考えていったらいいかということを討議しておるようなわけでございます。  さらに詳しい点については、また御質問に応じて申し上げることにいたします。
  8. 前田正男

    前田委員長 次に、川畑気象庁観測部長より御説明お願いいたします。川畑部長
  9. 川畑幸夫

    川畑説明員 九月の初めから実験が始まりまして、外電ではいろいろいわれております。大体、外電報告によりますと、二十六回実験が行なわれたことになっておりますが、私たちが現実にはっきりと確認できたのは十三回でございます。そのうち一番大きかったのは、二、三日前、十月三十日の実験でございます。この場合には、微気圧計のほかに、毎日使っております普通の気象観測用気圧計も、ほとんど全国その波を書いたのであります。これは、われわれが今まで、一九五四年以来経験いたしましたうちでは一番大きなものでございました。その次に大きかったのは、去る二十三日の実験でございます。やや小型でございましたが、それでもわれわれが経験したうちでは、第二番目の大きさでございました。三番目に大きかったのは、おとといの三十一日の晩に行なわれました実験でございまして、これも十メガトン前後の実験かと思います。二十三日に実験をやりまして、これは三日後に、裏日本の雨に放射能を含んでやってきたことがわかりました。三十日の超大型実験につきましては、まだ参っておりませんが、多分あしたかあさってごろからき始めるものと考えております。しかし、この場合に、日本に雨が降りませんと上空を素通りする、あるいは地上に下がってきましても、ただ地面をかすめていくだけで、それほど大きなものは観測されないかとも思いますが、雨が降りますと、多少大きなものが観測されるのではないかと思います。  今までの放射能の現われ方を見てみますと、概して裏日本、北海道の方に多いのが特徴でございます。これは、現在、ジェット気流日本の北の方に片寄っているためであろうと考えます。ちょうど日本ジェット気流の端に当たりますので、従って、一時的に放射能がふえることはございますが、すぐにあくる日には弱くなるというような経過をたどって、現在参っております。先ほど田島教授からもお話がございましたように、何しろ大型実験でございますから、大部分の放射能を含んだちりは、成層圏まで上がっているものと考えます。従って、今後かなり長く成層圏から地面に落下してくる。ことに来年の春ごろは、その落下が一番ふえるのではないかと考えます。ただ、誤解のないように申し上げておきますが、その場合には、短寿命放射能、各種の出すところの放射能は弱まっておりますので、カウントとかあるいはキューリーというようなものは、見かけ上はそれほど大きくはなりませんが、しかし、内容は、そういうようなストロンチウム九〇とか、いろいろ問題になる核種が多く含まれた割合になっていくことと考えます。  去る三十日の大型実験が今後どのようにやってくるかという予測でございますが、どの高さにちりが一番多くたまっているかということがわかりませんので、この予測は非常に困難でございますが、これは一応気流だけで推定しておりますところの図でございます。   〔図を示す〕  三十日の二十一時にここで実験が行なわれまして、それでジェット気流が、こういうふうに三十一日の夜中にはこの辺まできておると思います。一日の夜中にはこの辺にきていると思います。今後、従って、あと二十四時間くらいすれば、日本の北の方にこれはやってくる。分波ではございまするが、もう一つの筋道がございます。これは現在、三十一日の夜中にこの辺、一日の夜中にこの辺、これは少しおくれましてくると思いますが、いずれにしましても、あした、あさって、しあさってくらいのところにくる可能性があるように考えております。
  10. 前田正男

    前田委員長 次に、三木国務大臣、原子力委員長より説明お願いいたします。三木国務大臣。
  11. 三木武夫

    三木国務大臣 最近にソ連核爆発実験がひんぱんに行なわれましたので、これに対して各省の連絡会議を何回も開きまして、その対策を協議いたしておったのでございますが、どうも各省庁の連絡会議というような形では十分でない。そこで、十月三十日の閣議で放射能の対策本部を内閣に置こうという決議をいたしまして、閣議の決定を経て、そして第一回の会合を昨日開いたのでございます。これは関係各省全部網羅して、私が本部長になって、内閣の官房副長官、科学技術庁の次官が副本部長になって、そして各省の関係、大蔵省も予算等に関係がありますので主計局長も入って、その他は放射能に関係を持つ各省の局長をもって組織をしたわけでございます。  第一回の会合を開いて決定をいたしましたことは、放射性降下物調査、分析の機能を強化しよう。今までもやっておったわけでありますが、しかし、十分とはいかない。そこで、その調査、分析の機能を強化する。そして、それについては各省庁あるいは研究所、こういう責任分担を明確にしよう。そして強力に連絡をとり合って、調査、分析の機能を強化しよう。しかも、国民が非常に不安に思っておりますから、対策本部として、月に何回か、現在の放射性降下物状況に対して報告書を国民に公表しよう。それは、いろいろその日その日の調査は、気象庁が今までやっておったような方法をとりますが、降下物に対する分析の評価は対策本部一本でやる。しかも、そういう場合に、国民に対してどういう注意をしてもらいたいというような発表は、個々にやらないで、対策本部一本でやる。それは月に何回かそういう報告をやろう。その対策本部で発表したことについては、各道府県知事に対して通達をする、そして各道府県の協力もこれによって得る。しかも、その場合に、発表はカウントということでなくして、今後マイクロ・マイクロキューリーに統一する。しかし、過渡期にはカウントということも付記はするけれども、これらの基準というものは、マイクロ・マイクロキューリーという基準をとりたい。こういうことを第一回の昨日の会合によってきめたわけでございますが、その場合に問題になったのは、放射性降下物調査、分析を行なって、国民に対して注意してもらいたいという注意線量といいますか、その基準というものはきめたい。これをいろいろ学問的に検討しますとむずかしい問題でありますが、しかし、まあ行政の担当者としては、ある程度の基準がなければ、いろいろ注意をしてもらいたいと言ったって、その場その場の勘で言うという性質のものでもないですから、これは一つ基準をきめたい。しかし、そのときどきに警戒といいますか、非常に警戒しなければならぬ場合というのは、一定の数量をきめてするというものではなくして、いろいろなそういう降下物の分析などをして、対策本部で協議をして、それ以上の処置を必要とする場合には、そのつど国民に対して注意を与え、あるいは対策を指示するようにしたい、こういうような形で今後発表していきたいということが、きのうの会議の重立った話し合った内容でございます。
  12. 前田正男

    前田委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  13. 前田正男

    前田委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。赤澤正道君。
  14. 赤澤正道

    赤澤委員 ソ連大型核爆発実験をするということは、早くから全世界予測されておりました。それがだんだん期日が迫っておるという情報でありましたので、先般、私、こういうフォールアウトによって、国民が非常な恐怖心に陥れられるということを予測して、この席で質問したわけですが、その直後に、はたせるかな大混乱が起こった。東京におってはわかりませんけれども、私は実は選挙区が米子でありまして、まさか米子で大きな測定の結果が全国各地に伝えられようとは思わなかった。ところが、先月の二十七日でしたかの新聞を見ますと、読売、朝日、毎日、全部三面トップにおきまして、米子に八万二百カウントの検出がされた。こういうことでして、私のところへ電話もかかるし、一体これはどういうことなのか、これでは命があぶないのじゃないかというふうな、あわてた詰問もあるような始末になってしまったわけです。ところが、その後に留意事項が発表されまして、地元の方では、気象庁がこういうことを言っておるがということであったのですが、これは容易ならぬ注意なんです。たとえば、ここに科学技術庁、厚生省、気象庁の共同発表で留意事項というのが出ておりますが、これを見ますと、八万二百カウントに対する措置として、天水の飲用者は、降り始めの雨水を用いないことが必要である。それから次には、天水は濾過して使用することが望ましい。入浴など、人体を清潔にすることが望ましい。そんなことは、みな清潔にするに越したことはないけれども、日常生活に非常な不安を与えるわけです。井戸はふたをしてフォールアウトの混入を防止し、河川の水は濾過して飲用することが望ましい。いろいろこういうことがありまして、住民としては迷ってしまうわけです。それから農民にしてみれば、畑から取った野菜は流水中で洗うことが望ましいといわれると、まあ菜っぱの類は食べてはいかぬという印象を与えるものだから、蔬菜を作っているものが非常な打撃を受ける。こういうことをいきなり警戒措置として発表なされた立場というものは、今の段階ではわからぬことはありませんけれども、発表を受けた住民としては大騒ぎすることはもっとも千万で、そのときには三木長官は、これについて至急対策本部を作って善処するという、今のようなことをおっしゃった、それが国民に対する義務であるというお話であったわけでありますが、実際今後のことを考えると、政府の方では、よほどしっかりした発表、もちろん科学的な検討を経た発表を一日も早く行なうことが望ましいわけです。それで、ただいま内閣に対策本部を作って、三木長官が本部長だということを言われて、いろいろ抱負を聞いたわけですが、これは大体科学技術庁の長官としてでなくて、原子力委員長として本部長の席につかれたと思うのですけれども、それはどういう感じですか。
  15. 三木武夫

    三木国務大臣 どういう感じかという御質問の趣旨がどういうことなのかよくわかりませんが、まことに困ったことである、こういう放射能降下物の対策に、原子力委員長が狂奔せんならぬ事態はまことに困る。私も原子力の平和利用、原子力の開発ということを大いに推進しようとして就任をした、それがこういうネガチブと言えば言えるような仕事のために、毎日連絡会議を開いたり、対策本部を作ったりするこの現在の事態は、まことに遺憾千万であるというふうに考えておるわけであります。対策と申しましても、これはもう百パーセントの対策というものはないわけでありまして、こういう核爆発実験のような事態というものが、国際的な協定で一日も早く停止されることが一番の問題である。そこで、対策として非常に限界があるわけですから、もう少し大きく世界的に、この問題を考える問題も含んでおるという感想でございます。
  16. 赤澤正道

    赤澤委員 感じと申し上げたから質問がおかしなことになってしまったのですが、私が言わんとするところは、やはり同じような対策協議会のようなものを、昭和二十九年六月十八日の閣議で、例のビキニの十五メガトンの核実験をアメリカがやった直後にきめたわけであります。そのときに、原爆被害対策に関する調査研究連絡協議会というものを内閣が作りました。そうしてやったのだが、そのときには、乗組員がいろいろな放射線を浴びたということで、やはり生命に関するような事態が中心になったものですから、一応厚生省がこれをリードしたという記憶があるわけです。しかし、こういうことでは、私は今の事態ではもう承認できない。こういう事態にあたって、原子力委員会としての責任体制を明らかにすることが必要であるということを私は感じておるわけでありますが、そういった意味で、原子力委員長が本部長としての責任を負われるという意味ではないかと思ったのですけれども、これは菊池先生としてはどういう御感想でしょうか。つまりこの問題を扱うについて、原子力委員会としてどういう立場が必要なのか、これは委員長から一つ
  17. 三木武夫

    三木国務大臣 原子力委員会がこの問題に直接関係があるとは言えませんが、対策本部を私が作りましたのは、やはり原子力委員会の性格から言えば、この問題が直接責任かどうかということは、いろいろ議論があると思います。しかし、これだけ国民が不安な状態に置かれておるときに、とにかくそういう問題について、いろいろ日ごろ検討もしておるのは科学技術庁でございますから、ばらばらになっておるような状態を、科学技術庁が中心になって一元的な対策を作ることが必要である、また、行政の責任であるということで、科学技術庁を中心にした対策本部を作ったのでございます。原子力委員会との直接の関係はどうかということになってくると、ずいぶんいろいろむずかしい議論になると思います。当然科学技術庁としてはそういうお世話をすることが適当であるという判断で、対策本部の世話役を買って出たわけでございます。
  18. 赤澤正道

    赤澤委員 兼重先生、どうですか、御感想を。
  19. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 私がこういう問題にお答えするのが適当かどうかわかりませんけれども、実はこういうようなことについていろいろ対策が必要であるのではないかということで、ソ連実験再開が声明されました直後に、委員会の席上で石川委員から発言があったのでございます。それで当時から、いろいろこの問題につきまして、実際にやるのはやはり行政官庁がやるのでありまして、御存じのように、現在それに対して完全な組織ができておるわけではございませんから、急いでやる場合には臨時的な対策が必要である、そういうことの対策を科学技術庁原子力局の方でいろいろ検討をし、また、関係の方と相談をしてもらっておりましたために、現在の対策本部というようなものまできたわけでございます。それで、外見上ははなはだあわててできたような印象を与えておるかもしれませんけれども、実験再開の声明がありましたときから裏の方ではやっておりましたことでございますので、今日ここにきましたのは、やはりそれがなければ、ここまで準備が整わなかったのではないかと思います。今の準備が決して完全ではないかもしれませんけれども、たとえば昨日の対策本部での相談など、現在の段階では非常に適切な結論が出ておると私個人は考えております。従って、この場合、特に原子力委員会が正面に立ってどうとかいうふうにすることが、一番いい方法であるとは考えておりません。しかし、関心は常に持っております。なお、いろいろこちらから勧告をするとかいうようなことが、必要であると認めればすることもあると思いますけれども、現在は、私どもの気持に沿ったように動いておると思っております。
  20. 赤澤正道

    赤澤委員 やはり第五福竜丸の直後のように、こういう問題は、協議会を作っても、厚生省などが中心になって運営するべきものではないと思うのです。やはりこれは原子力委員会で、科学技術庁の責任においてリードさるべきものであると私は考えたわけなんですが、幸い長官が本部長ですから、その点は今度は安心ができると思います。  それから、八万二百カウントの直後に、私もよくわからないから、科学技術庁の担当の方に聞いてみたのです。これはあぶないのじゃないかと言ったら、いや、さにあらず、八万二百カウントというのは、降り始めの雨一ミリをとった定量測定のカウントだ、しかし、定時測定で計算すれば三千何がしカウントで、絶対心配ありません。絶対心配ないなら、こんな人をおどかすような発表をしなければいいのですね。しかし、やはりこの発表で一般留意事項を流されたということは、非常に頭にこびりついておるのは、これは当然だ。  そこで、放医研の所長さんの塚本先生にもお伺いしたいのですが、気象庁にも……。いろいろその後調べてみますと、やはりジェット気流に乗ってこれはずっと対流するわけですから、そうすると、月に一回ずっとアメリカの方まで回って、また日本に帰ってくる性質のものだと聞いたわけなんですが、これに乗って移動する限りは、今後何年かの間、ずっとわれわれの頭上を通るわけですね。ところが、比較的半減期の短いものはこれはいいけれども、しかし、さっき御説明のあったストロンチウムとかセシウム、こういったものは長らく残るわけでございますから、それは毎月々々頭の上にやってくる。雨が降らなければいいがというさっきのお話でしたけれども、何せ雨のけっこう降る国ですから、毎月々々その半減期の長いものが頭上に降ってくる、これは消えませんからね。そうすると、さっきの一般留意事項なるものは、年がら年じゅう守っていかなければならないことになるのだが、これもなかなか大問題だと思うのです。ですから、さっき長官が言われました、できるだけすみやかに対策本部で報告書も発表する、それで分析の評価は対策本部一本でやる、そして始終留意線量というもの、注意線量というものをきめて、そして時を移さずそれを発表するのだというお話でしたけれども、きのう総理官邸でしたか、第一回の会議をお開きになって、うまい結論が出ればいいがと思ってよそながらながめておったのだが、小田原評定みたいになってしまったという話も聞かぬでもないのですが、大体これは学者として自信があるのですか。自信がないのに、強がりばかり言っておってもこれはしようがないわけなんですが、早い機会にこの注意線量というものをおきめになることができる状態であるのか。それから気象庁でも、そういう半減期の長いものが始終われわれの頭の上を——雨が降らないことを祈っても、農家の方では、雨が降らなければお百姓ができぬ、別の放射線の方では雨の降らざることを祈っても、そういうわけにいくものではないのですが、そこらのところを一体どういうふうにお考えになっておるか、伺いたいと思います。これは参考人の方どなたでもけっこうですから、お考えを聞かしていただきたい。
  21. 田島英三

    田島参考人 大へんむずかしい御質問をいただいたのですが、確かに、一番初めに申しました通り、ストロンチウム九〇は平均として約二・五倍になった、そしてそのほかに、短いものが出てくるだろうということは確かであります。それで、八万二百カウントの場合に二十二万カウントという記事が出ましたが、あのときに新聞報道の中に、ちょうど、われわれカウントでは計算できないので、マイクロ・マイクロキューリー数字がありましたので、それをかりに仮定いたしまして計算いたしましたら、一年じゅう野外に、二十二万カウント無限に降った平面にすわっておった人の、空気中の線量が十九ミリ・レントゲンぐらい出るわけです。それはそのまま人間からだに受けるのではなくて、実際には人間には、ビルディングの中に入る時間があったりいたしますし、また、筋肉などによっても吸収されますので、その影響を考慮すると、無限大の時間立っている人が受ける線量は二、三ミリ・レントゲンくらいじゃないかと思います。先ほど申しましたように、いかに少量であろうともそれは害はあるのですが、それを一歩譲りまして、問題は、その一回というよりも今後どう降るか、要するに、一時的に見かけ上強く降ったという限りでは安心とは言えないと思うのですが、その点はあとで触れますけれども、要するに、今後そういうのが続くかどうかということの方が、実は重要な問題であるということが一つであります。それから先にいきますと、おそらくいわゆるカウントは減って参りますけれども、悪質なものが降ってくるのではないか、その点は確かに心配であります。  そこで、先ほどお話にありました注意線量なり警戒線量なりに対する考え方であります。これは私個人の考え方でありまして、どなたにも相談したわけではないのですが、この警戒線量なり注意線量なりは、現在の学問の知識から判断して、やむを得ずそのゼロまで伸びた直線的な線量降下の関係を仮定するといたしますと、そう仮定することが実は一番最悪の場合でありますから、われわれ大事をとって、ゼロまで伸びた直線関係を仮定せざるを得ないわけです。そういたしますと、たとい少量でも、それは計算になりますと、何がしかの犠牲者が出てくるということになりますので、そういう意味では犠牲者をゼロにするような警戒線量あるいは注意線量というものは出てこない、そう思います。しかし、こういう事態になりますと、単にそれだけの障害の、フォールアウトによる損害とは考えられませんで、そのほかいろいろな社会的な混乱その他の損害も一緒に考慮しない限りは、たといその放射線による損害がゼロになっても、社会的な混乱その他のことを考慮して、全体として損害をミニマムにするという考え方に立たない限り、警戒線量あるいは注意線量というのは出てこないと思います。すなわち、そういう線量をきめる場合には、もっと高い立場——単に科学的といいますか、医学的な立場からだけでは、おそらくその線量は出てこない。一体そういう線量をきめたところで、どう社会的混乱なり損害なりが出てくるか、その高い立場から、あるところに線を引かざるを得ない状態になるのではないか、そう考えております。
  22. 川畑幸夫

    川畑説明員 先ほど米子の八万カウントのお話が出ました。はっきりした日にちは忘れましたが、一九五七年のソ連実験においては、降り始め一ミリで二十二万カウントが観測されました。それの三分の一ぐらいであったわけでございますが、気象庁としましては、全国の各大学あるいは試験場、国立の分析を担当されているようなところ、そういうところでは、四六時中の雨を分析されることは非常に困難でございます、そういうような方々に、この雨は分析していただきたいというような意味でもって、降り始め一ミリの雨の放射能をお知らせしているわけでございます。事実それによって非常に有用な、また、むだのない国全体としての成果が出てきているように考えております。しかし、実際にいろいろな人体障害とかその他のいろいろな問題を考えますのは、定時観測と申しまして、全一日、二十四時間の雨をためておきまして、それを十分かき回して、その一日の平均を出しております。それはこういうような問題に最も適当した数値であると考えております。でございますから、八万何千カウントというようなものよりも、こういう問題をお考えになるときには定時観測の値、それから実際に分析とか、いろいろな研究から実際の有用なデータを出すという作業をなさるときには定量観測の値を使っていただくというふうな考え方で、ああいうような発表をいたしたわけです。
  23. 赤澤正道

    赤澤委員 今おっしゃったことは、新聞の解説に出ておりまして、ははあそういう意味かと思って、私も読んだわけです。しかし、われわれだって詳しいことはわからないのだから、一般の人にしてみれば、ああいう大きな活字で米子八万二百カウントなんて言われたら、これはびっくりぎょうてんしますよ。  そこで、私が心配しておりますのは、一九五八年でしたかの国連の科学委員会のレポートに、この五十メガトン前ですね。アメリカのビキニの実験以降においての空気の汚染度から、どういう計算をしたのか知りませんが、やはり空気が汚染されておる関係で、放射性降下物のために、大体地球上の二十億の人口のうち、約二千人くらいは突然変異を受ける可能性があるということを発表しておるわけです。それで私、事を明らかにしておきたいと思うのですけれども、私らが一番心配しますことは、現に放射能を浴びて、間もなくいろいろな障害を起こしてなくなった広島、長崎あたりの気の毒な人がおられます。これは人為のことですけれども、しかし、突然変異ということは遺伝ですからね、このくらい人間を不愉快にする現象はないと思うのです。放医研の所長さんにまず伺いたいのは、放射能を浴びることによって、国連の発表でも、毎年二十億の地球上の人類のうち、二千人からの突然変異を起こす可能性のある被害があるということです。突然変異の被害を受けるのは——その中から不世出の秀才や天才が出ればけっこうですけれども、しかし、そうでなくて、青い目の子供が急に生まれたとか、無脳児、脳みそのない子ができるとか、そんなものは生きては生まれぬでしょうけれども、いろいろそういう被害を受けるところに、陰惨なこういう被害が考えられるわけなんです。それで一体、そういう突然変異というのはどういうことが起こるのか。大体今まで放医研あたりでは調べてもらっておるでしょうし、それを御発表願いたいし、また、それが消えないで、さきに質問したように、こういうふうにきわめて有害なストロンチウム九〇、セシウム等が積もっていきますと、五十メガトン前に国連の特別委員会が発表した被害の推定を、はるかに上回る状態になるのではないか、そこらの関係は一体どういうふうになっていますか。
  24. 塚本憲甫

    塚本説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、突然変異が、今まで学問でわかっておりますように、線量に比例して直線的にふえるものだとして、それがまた、先ほど申し上げましたように、限界線量がないということの上に立って申し上げますれば、何がしかの放射線がふえれば、それに従ってそういうものがふえるだろうということは、まず学問的には承認しなければならぬ問題だと思います。ただ、ここで問題になりますのは、先ほど御指摘のように、二十億に対してこれだけのレベルで二千人ふえるだろうという推定をしたということは、結局これは統計的な問題である。そう考えますと、また一方において、人類に遺伝病と申しますか、遺伝的に何がしかの疾患、あるいはそれが知能的な場合もあり、肉体的な場合もあります。そういうものがどれだけ現在あるかというと、比較して考えないと非常にむずかしい問題だと思います。  そこで、国連のこの前の報告ですと、そういうものが人類の中に四%ございますという報告をしております。それからだんだん遺伝の方のいろいろなことがわかって参りまして、六%に、今度の六二年の報告はしようじゃないかということになっております。そういたしますと、従来百万人の人間の中に、六人くらい何らかのそういうものがある。それに対して、二十億に対してあのレベルで二千ふえるだろうということでありますから、確かにふえると申しましても、それが百万人に対してあと何人ふえるかという問題になりますと、統計的に申せば、何といいますか、誤差の範囲あるいはそれを少し上回る範囲、そういうような意味になってくるのだと思います。従いまして、個々の場合を考えますと、御指摘のように大へん気の毒なこともありますので、そういうことはやめてもらいたいという点は長官もおっしゃいましたが、そういう結論になりますけれども、現在までのレベルで、統計的な考えで参りますと、現に放射線と関係のないものが、それだけのパーセンテージで世の中にあるということと見比べてお考えいただくことがいいのではないかと思います。
  25. 赤澤正道

    赤澤委員 私が質問する意味は、非常に国民が不安感を持っておる。現地の人は、遺伝に大きな関係があるといわれれば、不安感を持つというのは当然のことですから、今のような状態、これはさっき田島先生もおっしゃったように二・五倍になったくらいのことで突然変異を起こす可能性があるものかどうか。ないということなら、それを発表していただきたい。あるという考え方を持っておるなら、住民は非常に不安なんですよ。そこのところはどうですか。
  26. 田島英三

    田島参考人 遺伝に関係はないということには申し上げられないと思います。というのは、どのくらい関係があるかという問題が出てくると思うのですが、非常に悪い仮定をいたしまして、非常に悲観的な仮定をいたして、三万ミリ・レムくらいふえますと、今申しました六%の遺伝的な疾患の新生児が大体倍になる。非常に悪い仮定でございますが、この仮定は実はもっと幅があるのですけれども、一番ひどい仮定をいたしますると、三万ミリ・レムを国民全部が受けるといたしますると、今の四%ないし六%の遺伝的疾患が倍になる。そういうふうな仮定が現在行なわれておる普通の議論であります。従って、フオール・アウトによって全国民がそれの何分の一かを受けると、その何分の一かに相当した遺伝的疾患がふえるだろうといわざるを得ない。しかし、個々の遺伝的不幸な方が、それがフオールアウトによるものかどうかということと結びつけることは、おそらく不可能である。要するに、そういうデータは、統計的な面によって初めて明らかになっていくということであって、個々のケースについて、これが放射性降下物による遺伝的な疾患であるということはだれも言えないし、現在それだけの資料は持っていない。ですから、結論としますと、ないとは言えないし、非常なきつい判断をすれば、非観的な判断をすれば、三十ミリ・レム以上を受ければその割合で倍になる、それより以下であればその割合は少なくなっていくといわざるを得ないのであります。
  27. 赤澤正道

    赤澤委員 結局、わからぬということですか。何となくそういう降下物がないことが望ましいことだけれども、結局わからないということなのか。それじゃ不安の解消にならないと思うのです。
  28. 田島英三

    田島参考人 わからないという意味でありますが、それは大きな線量に対して、人間でない動物あるいは霊長類、そういうものについてははっきりわかっております。そこから出た実験データであります。その限りにおいてはわかっておるといわざるを得ない。しかし、人間の大きな集団の実験についてはわかっていないので、今推量でやっておるわけです。けれども、学問というものは、何もそのものをやらないまでも、われわれは、いろいろな手だてから、ある程度推定をするというのが学問の常識でありますから、そういう結論を出さざるを得ないというわけです。
  29. 秋田大助

    ○秋田委員 ちょっと関連して。その点は大事だと思うのです。非常な不安をみんなが持っておる、私はこういうふうに常識的に考えておりますが、それでいいかどうか、学者の諸君の御意見を伺いたいのです。すなわち、こんな短期間にこれだけの大きな核爆発実験をした。その結果は、前の実験再開前の状態と比較して、非常に憂うべき状態であるということは、はっきりわれわれ認識すべきである。そうして学問上からいって、そういう突然変異なり、あるいは遺伝上の悪影響を及ぼす可能性が十分出てきた。これは心配ないのだ。わからないということはますます不安を大きくする可能性がある。しかし、これに対しては対策があるのだ。だから対策本部を設けられたのでしょう。的確な対策を立てなければならないのだ、これをすることによってわれわれがその害を防ぎ得るのだ、こう認識したときに、的確な対策を迅速に立てなければならないということと、この問題の国際的な処理について十分お互いがしっかり考えて、再びこういう実験を繰り返さないように、アメリカに対してもさせないようにしなければならないというふうに認識してどうでしょう。御意見を伺います。
  30. 三木武夫

    三木国務大臣 今、秋田委員の言われるような考え方で対策本部を設けたわけでございます。これは、放射性降下物が害があるのだという前提に立たなければならない。警戒もしなければならない。しかし、現に人類の頭上にそういうものが絶えず降ってきておるわけですから、いたずらに非常な不安感を与えるということは慎まなければならないわけです。それで対策としては、百パーセントこれならいいのだという対策があるとは言い切れぬ。しかし、各国ともいろいろなことをやって、その被害を最小限度に食いとめようという努力をいたしておるわけです。われわれとしてもやらなければいかぬ、そういう点で、対策本部が非常に大きな責任を持っておるということを自覚いたしておる次第でございます。
  31. 秋田大助

    ○秋田委員 今の三木長官の考え方に私も同感なのでございます。今米子に八万数百カウントが降ったと騒いでおられるけれども、これは三木長官、私と郷里を同じゅうする徳島に降ったかもしれぬ。また、岡君のところにはもっと降ったということであります。こことここに降ったということが全国的にわかれば、ここにはこういう対策——これは今長官のおっしゃったように、万全ではないかもしれぬけれども、今のわれわれの科学で知る範囲の、でき得る限りの万全の措置を講じていく。そういう対策を対策本部で今後行政的にとられることが必要だ。心配ないということは、この段階では言い切れない。だから心配がある。しかし、ただいたずらなパニック的な不安を全国的に及ぼすのじゃなくて、こことここにこの期間にこう降った、これはこういう性格のものであって、こうだ、それに対してはこういう措置をとるべきである、これをはっきりさせるという全国的に対策の組織や体制がとれておる、これが、いたずらなる不安を除去する道であると、私は考えております。
  32. 赤澤正道

    赤澤委員 私の言わんとするところを秋田委員が述べたわけでありますが、行政面では本部長に一切の責任があると思うのです。ですから、降っている期間には、それについて警戒警報を行政措置としてお出しになることがあるかもしれませんけれども、そういうふうに新聞発表を見て不安になるのは当然ですから、できるだけ早い機会に明確にしていただきたい。  時間がないようですから、外務省の方にお伺いいたします。例のアメリカのビキニの実験で、第五福竜丸がああいう被害を受けて、当時いろんな外交折衝をして、二十億円か、見舞金その他海中の汚染されたものの投棄損害等を入れまして、アメリカが支払った記憶があるわけなんです。今とりあえず、そういう降下物によって被害を受けているという計算はできないかもしれぬけれども、大なり小なり不安を持たされる。また、農作物の値下がりがくるということがあり得るわけなんです。現にそういう現象が起こっているわけですから、そこで、一番もとになるそういう実験をやめてくれれば一番いい。ソ連がやるならアメリカもやるんだということでやると、先ほどの計算よりはるかに多い有害物が空気中に浮遊するに違いない。そこで、先般八カ国決議を国連総会で採択されまして、決議が行なわれているにかかわらず、ソ連はそんなものは全然無視している。この上われわれは国際的にどういう態度に出たらいいのか、これについては、外務省でも十分御検討になっておられると思うのです。聞くところによると、これは非難決議をするといっても、あのときの八カ国決議に賛成した国々でも、必ずしも非難決議に賛成するとは限らないとか、いろいろ国連においても、この問題の扱いについて何かびくびくした消極的な考え方を持っておられるとしか受け取れないのですが、こういう問題はしつこくやっていいと思うのです。その問題と、それから、アメリカが第五福竜丸のときに見舞金その他の補償等をやったようには、ソ連はいかないと思うのです。おそらくこういう問題をやろうとすれば、国連としては、これは日本ソ連の問題だ、直接交渉でやれ、こういう結論になるに違いない。こういったことをたびたび総会に持ち出せるかどうかということは、私は国連をよく知りませんからわからないのでありますが、そういうことになった場合に、ソ連に対してもしつこく抗議される意思があるのかないのか。これについても、同じことをやってもしようがないというようなことを考えておられるやに新聞では見受けるんですが、これは私は間違いではないかと思うのです。やはりこういう道義的に許されぬことは、他国がどう思おうと、しつこく抗議し、非難決議を提案していかなければならぬと私は思っているのですが、これに対して外務省の見解はどうですか。
  33. 高橋覺

    ○高橋説明員 お答えいたします。  ただいま国際連合の第一委員会核実験停止の問題が討議されております。先般、ソビエトの五十メガトンの実験停止の要請決議が出ておりますることは、御承知の通りでございます。そのほか、いまだ第一委員会で討議中の議題といたしまして、インドの提出しております核実験の停止、それから米英の核実験停止協定を締結しようという議題が現在討論中でございます。先ほど仰せのように、国連で五十メガトンの核実験停止要請決議が通ったにもかかわらず、ソビエトがこれを実験した。これに対して非難決議をなぜ出さないのか、こういうことでございますが、せんだってソビエトが五十メガトンの実験を実施した次の委員会会議の開催前に、関係各国と今後の対策を相談したのでありますが、御承知のように、ソビエトに対する五十メガトンの核実験停止要請の決議が、ソ連圏を除きまして、全会一致という多数の票を得ましたけれども、実はこの間にいろいろないきさつがございまして、人道的な問題として最終的には決議に賛成はしたけれども、手続的に、あるいはいろいろの考慮から、必ずしも積極的でなかった国の数も多かった。そこで、その非難決議を出して、これがまた前回と同じように多数で通過しますれば、非常に効果はあるわけでございますが、今度の非難決議というものは、そういう手続的その他の反対がございまして、それが所期のように多数を得られないということになりますと、かえって逆の意味で、これを肯定したというか、しないよりも悪い結果になるかもしれない、それが第一点でございます。それからもう一つは、今までは中止要請の決議というものが、ともかくやめてくれと頼むということで、積極的な意味があるというわけで、必ずしも気が進まなかった国々をささえていけたわけでございますが、単に非難するだけでは何ら積極的な効果はないのではないかというような声もございましたので、現在まで、非難決議を出すかどうかということは、まだおそらく政治委員会で討議中でございますから、関係各国と協議し、それから会議の空気というものを見ているところだと私は了解しております。いずれにせよ、三十一日の岡崎代表の演説で、この五十メガトンの核実験を、総会の多数の要請にもかかわらず、決議が通ったにもかかわらず、ソビエトが行なったということに対しまして、各国とも、いずれも討論の過程において、これを強く非難しているのが現状であります。
  34. 赤澤正道

    赤澤委員 時間もないようですから、これ以上質問いたしませんけれども、どうせ通らぬことがわかっておるのにと、この国会においても盛んに非難めいたことも、特に野党の方面でやられるわけです。効果がないからやらぬということは、これはむしろおかしいと思う。ですから、非難決議を持ち出しても、採択されなければ認めたことになるというお考えは、私は反対だと思うのです。やはり非難決議を持ち出す性質のものだと思いますし、あまり右顧左べんしないで、日本はこれだけ問題を起こしているわけだから、やはり思い切って、かりに採択されなくても、日本としては立場を主張した方がいいというふうに考える。国連の場というものはよく知りませんから、技術的な面もあって、あなた方としてはそうなったかもしれませんけれども、私たちはその点非常に不満なんです。非難決議を重ねていくことによって、それが採択されなくても、国際道義上認められてくると思うのです。ああいう事態が起こっても、非難決議さえようしないということであったら、今度は、安心してアメリカもやりますよ。アメリカがやったら、今度は非難決議を出すこともできないでしょう。ですから、私らは、もっと強い要請を世界各国に述べられて、そうしてたびたびでも出していくということが正しいのじゃないかと思うわけです。  まだたくさんお伺いしたいことがありますけれども、私の分は打ち切りにいたします。
  35. 前田正男

    前田委員長 岡良一君。
  36. 岡良一

    ○岡委員 対策本部を作られて、三木さんがその責任者になられる、そのことをわれわれは歓迎いたします。政府は、先般の梅雨前線豪雨あるいは第二室戸台風のときにも、対策本部を作られました。ただ、私どもは、今発足しようとしておる、この核実験再開に伴う放射能に対する対策というものは、このような一過的な災害に対する対策本部であってはならないと思う。この点について、まず三木本部長の御所見を伺いたい。
  37. 三木武夫

    三木国務大臣 その通りに考えております。
  38. 岡良一

    ○岡委員 先ほど来参考人の御所見を伺いましても、ストロンチウム降下は、来年春あるいは秋に、さらに高潮に達するであろう。また、数年にわたってストロンチウムが地球上の大地に蓄積をするであろうと申された。でありますから、長官が本部長としてこの対策本部の機能を十全に生かそうとされるならば、私はせめて総理府令なり、そうした法令に準拠した組織としてこれを確立される必要があるのではないか、このように思うのでございますが、御所見を伺いたい。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 最近核爆発実験がひんぱんに行なわれまして、至急に対策を講ずることが必要で対策本部を設けたのですが、相当長期にわたってこの影響があることが考えられますので、この機構については、やはり考えたいと思っております。将来、あるいはそういう恒久的な機構を作る方が適当かもしれませんので、これは検討を加えたいと思っております。
  40. 岡良一

    ○岡委員 放射能、特にストロンチウム蓄積は、将来数年にわたる事実でございますので、これに対応して遺憾なき組織を、政府としてぜひ確立を願いたいと思う。  第二に、この対策本部の目的でございます。臨時応急ということを、ともすれば政府側から申されるのでございますが、御存じのように、われわれは、無神論者に神の教えを説くということがいかにむだであるかということは、すでに思い知らされたわけでございます。自然界の法則は、人間がこれを発見しても、これは変更することはできない、ここまで徹底的に、自然科学の原則を信奉している人たちに対しては、われわれはやはり科学の高度な駆使によって、そしてこのストロンチウムその他の人類に与える影響というものを科学的に追求する、その客観的な事実というものをわれわれが訴えるということは、これはおそらく無神論者も否定し得ないと私は思う。従って、国連総会でわが方が、カナダ等と共同で、放射能影響調査の強化に関する決議案を提出して、これが採択されておる。そこで、わが国は率先して、このような科学的な真実を追求し、これを世界に明らかにする義務があると私は思うのでございます。そういう立場から、対策本部の機能、使命というものは非常に重大なものであります。単に臨時的なもの、また、単に国民の不安を解消するに足るもの以上の、大きな国際的使命があるということを自覚して、本部長としては運営に当られたい、私はこのように考えるのでございますが、決意を承りたいと思います。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 対策に至急を要しますために、多少臨時的なにおいのする対策本部を設けたのでありますが、しかし、先ほども申したように、この対策は相当長期にわたって考えざるを得ないし、また日本は、原爆実験禁止というものに対する国際世論を喚起する先頭に立っている関係もありますので、そういう意味で、国際的にも日本の資料が説得力を持つだけのものを持たなければならぬ。従って、対策本部は、将来にわたってこの機構も検討を加えたいと私がお答えした通り、また、今お話のあったような決意のもとで——ある期間は対策本部で参りますが、その対策本部で参ります期間においても、今岡委員の申されたような決意で、この対策本部を運営していきたいと考えております。
  42. 岡良一

    ○岡委員 特に、この対策本部と原子力委員会の関係でございます。原子力委員会設置法には、原子力の利用に伴う放射能の防御に関する事項、これは原子力委員会の責任になっている。そこでこの問題は、当然、原子力委員会の法律上の責任であると私は思う。ところが、これに対する原子力委員会の態度というものは、きわめて消極的——消極的というよりも、むしろ、明らかに規定された法律上の責任を回避している。このようなことであってはならないと、私は存ずるのでございます。私は、そういう意味三木長官は、科学技術庁長官としてではなく、原子力委員会委員長としてこの本部長に御就任になる、これが筋の通った人事でなければならないと私は存ずるのでございますが、委員長の御所見はいかがでございましょうか。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 本部長に就任をいたしましたのは、私はそう分析をしてなったわけではないのであります。科学技術庁長官と原子力委員長を兼務いたしておりますので、従来の経緯から考えてみましても、科学技術庁が中心になって各省の連絡会議をやっておりましたので、それを画然と分けて考えたわけではないのでありますが、科学技術庁も関係がございますし、原子力委員会の積極的な協力も必要といたしますので、両方合わせて一本という見解でございます。
  44. 岡良一

    ○岡委員 柔道勝負じゃないので、やはり筋を通していただきたいと思う。そういうまあまあ主義が、たとえば対策本部の人事構成の中にも出ているんじゃないか。あるいは厚生省が出てくる、あるいは防衛庁も出てくる、あるいは農林省も出てくる。もちろんこれらの各省庁が、それぞれの立場において調査をするということはけっこうでございます。しかし、これは日本の各官庁のいわゆる割拠主義といいますか、なわ張り的な機構の中に、せっかくの対策本部というものの機能が薄れ、あるいは埋没をするというふうな例が、これまで実はあったかと思うのです。そういうことを考えますと、やはりぜひ、原子力委員会がすっくと立ち上がって、その責任を尽くして、その指揮のもとに責任ある総合的な態勢を作る、こういう方向へ進んでいかなければならないと私は思っております。  私は、特にこの際、具体的にお尋ねをいたしたいのでございますが、どうも実際の原子力委員会の現状を見ておりましても、なかなかこのことが困難な現実も若干感ぜられます。やはり本部長は、特に調査、分析等については、専門的な権威をあなたのアドヴァイザー、あるいは、あなたの直属のスタッフとして持つ必要がある。そして、あなたが本部長としての責任を全うせられるように持っていく必要があろうと思うのでございますが、この点いかがお考えでございましょうか。
  45. 三木武夫

    三木国務大臣 機構としては対策本部はそういうことを考えておりませんが、これはなかなか専門的なことが多いわけでございますために、私は、個人としては、常時いろいろ相談をして本部長の職責を完全に果たせるような相談相手を持ちたい、かように考えております。
  46. 岡良一

    ○岡委員 先般のウィンズケールの事故の場合、あるいはまた、ことしの春のアメリカにおけるSLIの事故の場合、それぞれ三人委員会とか五人委員会とか、その国の権威者を少数簡抜した委員会を任命して、これが調査に当たり、また、事後の対策についての大きな助言をいたしております。専門家でもない、そう申し上げては失礼ですが、本部長、あるいはまた各省の局長では、この問題のほんとうに適切な処理は、私はなかなか困難ではないかと思います。そういう意味で、個人的なアドヴァイザーではなく、ぜひそういう権威者を、各国の例にあるような形で、あなたが御委嘱になって、そして遺憾なきを期せられることが、対策本部の活動を一段と強化することかと私は思いますので、善処を願いたいと思います。  その次には、人体に対する影響の問題でございます。たとえば、ストロンチウムが、今度のソ連の再開を通じて、約二倍半成層圏等に停留するであろう。従って、現在残っておるもの、さらに将来にわたって降下するものを含めて、何倍かになる。あるいはまた、外国の資料に基づくと、大体一ストロンチウム・ユニット程度平均して人体にあるのではない。従って、類推をすれば、算術的にはそれが二倍半程度、あるいは三倍程度になるというようなことでございます。しかしこれは、科学的なデータとしては、私は信憑性が十分にないと思う。従って、問題は、やはり海洋も汚染されるのであり、しかも、日本人はどんどん魚を食べておる。あるいは稲と麦の違い、あるいは牛乳とお野菜、その他日本人の副食物の違い、いろいろな条件の中で、食生活、住の生活も含めて、日本には日本の特殊な事情がございます。その中でいかに日本人の体内にストロンチウム蓄積するのかということの追求は、やはり当面一番大事な問題だと思う。あるいは、注意線量、警告線量と申しましても、このような日本の特殊な事情というものを前提として分析されねばなるまいと存じます。私はこういう人体における蓄積についての具体的な追求については、日本の現在の機構はまだ非常に弱体ではないかということを実は心配しておるのでございますが、この点は塚本さんなり、あるいはまた、保健物理部があります原子力研究所なり、あるいはまた田島先生なりからも、あわせて、弱体をどうして強化できるかという点についての御所見を承りたい。
  47. 塚本憲甫

    塚本説明員 お答え申し上げます。  われわれの研究所におきましても、最終的には人類に対する影響という意味におきまして、ストロンチウムに対する日本人の食生活というようなものに対して、口から入ってくる部分についての研究もやっておりますし、さらに、人骨にたまったものが外国の場合とどういうふうであるかというようなこともやっておりますが、御指摘のように、非常に大きな組織を持って、全国的に、十分科学的にものが言えるだけの数を、私たちのところだけでやれるというわけではございません。そういうデータがだんだん集まることが、御指摘のように大へん必要なことだと思いますので、ぜひ本部長にそういうことも御配慮いただいて、全国的に日本人のレベルでそういうことが考えられるような研究機関がふえることを、ぜひ私どももお願いしたいと思います。
  48. 岡良一

    ○岡委員 いつかの新聞で、ある大学の解剖死体の骨を分析したところが、ストロンチウムが発見されたというようなことがありました。御存じのように、全国の医科大学では、初年級に対して何千体の新しい死体が供給されている。おそらくこの骨のストロンチウムの測定ということは、不可能ではないと思います。少なくとも、資料を集めることにおいて不可能ではないと思います。あるいはまた、逆算をすれば、血球計算からもある程度の示唆も得ることができようと思いますし、最近は診断上からも、治療上からも、骨髄のせんさくをやっているようでございます。でございますから、これは私の思いつきでございますが、やはり一つこの際、現に資料を提供し得る可能性の場所があるわけでございますから、そういうところをも広く御検討いただいて、できるだけ広範な組織の中で、できるだけ正しい科学的なデータを積み上げられるように希望いたしたいと思います。  それから最後に、警告線量あるいは注意線量の問題でございます。もちろん私は、行政の立場においては、このことの必要性を否定しようとは思いません。ただ、しかしながら、現在原爆の実験をやっており、あるいは核兵器を持っており、そうしてそれが国の守りのために必要であるという建前に立っておる国の警告線量というものを、否定しておる日本が直ちにこれを援用する、このような追随的な態度は、私は許されないと思うのでございます。でありますから、そういう立場からいたしまして、よほど慎重にやっていただきたい。現にICRPの放射線の許容量に関する勧告は、これは放射線審議会を通して、筋を通して政府の決定にすべきだと私は思う。権威者の意見を濾過して、自主的な警告線量あるいは注意線量というものは出すべきだ。この点をぜひ一つ、これは私の要望として強く申し上げておきたい。  最後に、三木長官にお尋ねをいたします。また、ぜひこれはやっていただきたい。それは、この間国連総会で、放射能影響調査に関する決議案が採択された。従って国連としては、何らかのこれに応ずる組織を持たなければならないかと思います。私は、この組織はぜひ日本に置くべきだと思うのです。現に農業機構の本部はローマにある。ユネスコの本部はパリにあります。あるいは国際保健機構の本部はジュネーブにございます。でありますから、この機構は——日本がこの決議案の提唱者である。また、日本は、日本の特殊な事情において、このことについては、国民、政府の大きな責任にもかかる事項である。ぜひこれは東京に置く、こういう方向に政府として格段な御努力を願いたいと思うのでございますが、委員長の御所信を承っておきたいと思います。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 岡委員の前段で、注意線量をきめるにしても専門家の意見を徴するようにというお話がありましたが、総理府の放射線審議会、原子力委員会放射線調査専門部会、これには至急に諮問を出そうと考えております。しかし、これは非常に長期にわたるという場合においては、行政の責任において考えたいと思っておりますが、とにかく諮問をして、至急にそういう審議会等においても検討をし、結論が出るならば非常に好ましい形だと考えております。  それから、国連の放射能調査についてでありますが、まだ、恒久的な一つの機関を、永続的なものを置くというところまで話がいっていない。現在のいろいろの機構を通じて調査しようということでありますので、もし恒久的な一つ放射能調査をするセンターを置くとするならば、お話しのように、これはもう日本が一番適当であることは申すまでもないわけでございます。そういう国連の動き等ともにらみ合わして、そういう場合においては、これは当然、そういう客観的な条件を日本が持っておるわけでございますので、努力をいたしたいと考えております。
  50. 前田正男

    前田委員長 次に、秋田大助君。
  51. 秋田大助

    ○秋田委員 時間があまりないそうでございますので、私もなるべく簡単に質問をいたします。しかし、大事なことでございますので、必要な点だけは、かなり詳細に質問さしていただきたい、こう思うのであります。  さっき米子の放射能、いわゆる死の灰の話が出ましたが、これはどこからきたのか。今回のソ連のノーバヤゼムリヤにおける実験からきたもの、一連の再開後のソ連核爆発実験からきたもの、こう承知してよろしゅうございますか。
  52. 川畑幸夫

    川畑説明員 米子にきました死の天気図は、少し北の方が主流になっておりましたが、はっきりわかりませんが、おそらく途中から一つジェット気流の枝が出てきて、それがきたものと考えております。
  53. 秋田大助

    ○秋田委員 私がお尋ねしたのは、アメリカにおける地中の爆発実験、これがまさか回り回ってきたのではなかろう、こういうことでございます。そこで、今後起こるであろう放射能障害に対する対策を立てるにあたりましては、この放射能がどういう工合日本を襲ってくるのか、その工合をやはり研究して、それに対応する施策を講ずる、また、そのことは、今日いたずらな不安を起こさないために、国民が大体を承知しておる必要があるし、政府としてはこういうことを、簡単な点においてはPRをしておく必要があろうと思いまして、その点を至らぬ科学知識で研究調査いたしてみた、その私の結果がこうなんですが、それで間違いがないかどうか、これは気象庁の方からお答え願いたい。それはノーバヤゼムリヤ、その付近の実験場で、これは先ほども御説明がありましたが、相当の高空で爆発実験をした。従って、死の灰は成層圏に高く舞い上がったものである。しかし、そのうちの一部分は、先ほどからお話しのジェット気流に乗っておる。そこで、一部分がすなわち米子に訪れた、その他は今日日本に降ってきているのである。そこで、先ほども絵で御説明がありましたが、ジェット気流から一両日おくれて、もう一つあとからくるやつがある、それは偏西風に乗ってくるものである、こういうふうに理解をしている。これは死の灰の尖兵である、第一陳である。第一陳がもうきておる、こういうふうに見てよろしいかどうかお尋ねいたします。
  54. 川畑幸夫

    川畑説明員 ただいま先生のおっしゃる通りの考え方で、私たちもそのように考えております。
  55. 秋田大助

    ○秋田委員 これがきますと——それからさっきのジェット気流あるいは偏西風に乗っておる死の灰、これがぐるぐる回っている。これから寒くなりますと、北方に発達する高気圧のために、これが押されまして少し南におりてくるのだというふうに理解をしている。すなわち、年末から正月あたりにかけると、これがずうっと日本の南に移動して、北緯四十五度くらいから三十五度くらいに下がってくる。すなわち、日本列島の中で、九州の南あるいは四国の南を除いては、大部分危険状態にまでこの死の灰の第二陳がやってくる勘定になる、こういうように理解しておりますが、どうでしょう。
  56. 川畑幸夫

    川畑説明員 ただいまの第一回のものは、現在日本の北を通っております。しかし、偏西風帯の中の一番上空にあります強いジェット気流は、一年間に南北に往復しております。そうして、夏は大体北寄り、冬は南寄りということになりますので、秋の終わりごろから冬の初めごろにかけましては、日本が中心になる。しかし、第二陣がくるというのは、これが地球をもう一ぺん回りました場合でございますので、一ぺん回りますと、灰はずうっと広がりますので、全体としての濃度は薄くなると思います。
  57. 秋田大助

    ○秋田委員 薄くなるでありましょうが、私はそれを第二陣というふうに理解をしている。しかし、それでは成層圏に上がっている死の灰はどうなるのか。これが大部分である。これが何月ごろから日本を襲ってくるのであるかということ、及びそれがどのくらい続くか。もちろん、数年間続くのでしょうけれども、半減期、いろいろの関係で、九月一日から十月の末日まで行なわれました一連のソ連の最も超大型爆発実験を含めました、この実験によるところの死の灰の一番大きな障害が、何月ごろから来年の何月ごろまでくる、それがやはり農業との関係、食糧等の関係をも考慮して対策を立てられるについて、非常に大事なことじゃないか、その点を、また国民が常識として、大体の知識を持っておられることが必要ではないかと思う。そういう点については、やはり多少国民に知らせる義務と責任が政府におありになると思う。その点に対する気象庁の御見解をお伺いします。
  58. 川畑幸夫

    川畑説明員 昨日対策本部で三木長官にも御報告いたしておきましたが、大体従来の経験によりますと、成層圏から落下いたしますものは、来年の春を中心として一番多いであろうと考えております。
  59. 秋田大助

    ○秋田委員 私も大体そういうふうに理解をいたしております。従って、来年の田植等々の時期にちょうどそれが合うということを、お互いによく認識しておく必要があろうと思うのであります。そこで、そういうふうにしてやってくるが、その害毒の状況はまたどういうふうになってくるのであろうか。これは、私もここになりますと、学者先生がさっきもはっきりしないくらいでありますから、警告線量の問題とかいろいろの問題で私もわからないのですが、常識的に私はこういうふうな計算をやってみたのであります。その計算のやり方等が科学的にどうかということは、あまり厳重に考えられずに、そういう一連の類推から出した私の常識的な結論という点を一つ御批判願いたい。それは、こうなんです。五八年の十一月で、自発的に米英ソ仏が実験の停止をやった。これまでに、一九四五年の七月にアメリカが始めたときから約十三、四年の間に、どれくらいの爆発、どれくらいのエネルギーに相当する何メガトンの放射能の放出があったか、それと比較して、九月一日から十月末日までわずか二カ月間に、何発の、そして何メガトンのエネルギーに相当する放射能の集中放出があったか、この数値を国民において持っておく必要があるとわれわれは思う。そのわずかのうちに、前と比較してこれだけになっておるということ、そして前のシリーズにおけるところの放射能影響というものがどれくらい、一〇〇%のうち何%くらいは今残っておるのであろうかというような見当を私たちは比較して、今後起こるべき放射能障害について、ごく常識的な結論を出してみることも必要ではなかろうか、それによりまして今度の一連のソ連によって行なわれました核爆発実験の意義、それが人類に及ぼす影響性というものを、ある程度数字をもって科学的に確認できる、私はこういうふうに考える。前の核爆発実験を自発的にやめるまでの間に、私の調査によりますと二百五十一発実験をしておる。そのエネルギーの全放出量は、これはいろいろ計算がありましょうから、先ほどもどなたからかお話があったようでございますが、百七十メガトン、今回は、わずか二カ月で、新聞によりますと二十七回とか二十八回とかいっているのですが、これが百二、三十メガトン、あるいは百五十メガトンになりますか、その辺の見当であろうと思います。これの数字を比較することによりまして、いわゆる死の放射能の害の強いものが、いかにエンリッチされておるかということが、十分私どもは認識ができると思う。そこで、どれくらいの被害を受けるであろうかという考えで、私がいろいろ調べたり、人に聞いたりしたので、こういう数字を常識的に持っておる。それは、この前の一連の実験のシリーズのうちで、日本に降ったと伝えられておる一番強い放射線量のものは幾らであったか。もちろん放射線量ではきめられないのでしょうが、しかし、これの多寡はおよそ比例するのだろうと思うので、その中に含む毒物の数量をある程度示すものであろうと私たちは常識的に考える。そうすると、一九五七年の四月六日に福岡で三四・九万カウント降ったという記録がある。あの十三、四年の間に、小型、中型もあったかもしれないが、少しずつやって、そして九州に三十五万カウント降った。そのときも、やはりソ連の主として五六年、五七年ごろやった、その影響だろうと私は思う。そのときにどれくらいソ連はやったかというと、私の調査したところによると、福岡に降ったときの一年前に十八メガトンの爆発実験をやっておる。そこで、十八メガトンで三十四、五万カウント降ったのに、わずか二カ月で、その数倍に当たるところの百四、五十メガトンのエネルギーを放射したのであるから、今度日本を訪れるかもしれないところの可能性を持つ死の灰のカウント数は、二百数十万カウントになるもの、ごく幼稚な計算でございますけれども、算術平均をしてみて、そういうことが考えられます。こういう数値の高いカウントを持った死の灰がきた場合の被害は相当なものであると、はっきり常識的に認識をしてどうでしょう、これらの感じをお伺いしたい。
  60. 川畑幸夫

    川畑説明員 ただいまの御質問は田島先生の方から……。
  61. 田島英三

    田島参考人 一言にお答え申しますと、なかなかそう簡単にいかないというのが私のお答えなのですが、もちろん、ある程度比例するだろうということはわかりますけれども、非常に複雑でありまして、カウントが高いからそれに比例するということにはならないだろう、カウントが高くても低くても、危険なものは危険であるということを考慮しなければいけないんじゃないか。そこで、一番初めに私が述べましたように、被害を推定するのにいろいろなやり方がありまして、いろいろな核種について被害を推定するということは実際は不可能なわけですから、重要な核種について被害を推定すべきだ。その一つストロンチウム九〇であるということは、先ほど申し上げた通りでございますが、そのストロンチウム九〇だけに限って申し上げますと、それは影響が非常に長いものですから、落ちてきたときのカウントがどうこうということよりも、あるいは一年の平均をとるとかいうような格好でやる方が、むしろ正確な値が出てくるんじゃないかと思います。
  62. 秋田大助

    ○秋田委員 私も、ただカウント数値が高いだけでどうこうと言えないということは、常識的に理解しておるのです。しかし、今度のソ連の一連の実験によるところの影響は、先ほど関連質問で私の所見を申し述べた通り、やはり相当なものであるということを十分認識して、国民にある程度知らす必要があると思う。しかし、いたずらな不安を起こさせないようにすることが必要だ。やはりガイガー・カウンターで調べるだけではなくて、分析等で調べることが一番大事なことであると思う。それを組織的に、全国的にある程度やることが必要だと思うが、気象台ではそういう分析をする装置をお持ちなんですか。
  63. 川畑幸夫

    川畑説明員 気象台は、気象研究所に科学技術庁のお世話で設備していただきまして、これは正式な分析でございますので、非常に手間がかかるもので、短時間にはなかなか結果が出ないということであります。
  64. 秋田大助

    ○秋田委員 正式なというのは、どういう意味ですか。
  65. 川畑幸夫

    川畑説明員 正式と申しましてはまずいかもしれませんが、非常にオーソドックスの研究ということであります。
  66. 秋田大助

    ○秋田委員 非常にけっこうだと思うのですが、そういう実験をする装置は、日本の主要な機関に現在相当ございますか。これは原子力局長お願いいたします。
  67. 杠文吉

    ○杠説明員 全国に分析する能力のある施設ないしは人を配置するということは、できておりません。これは全国からサンプルをとりまして、集めまして、そうして中央へ持ってくるというシステムをとっておりまして、その一つとして、ただいま川畑部長からも言われたように、気象庁におきましては気象研究所に器械を備えつけております。それからまた、放射線医学総合研究所においても分析の能力を持っております。その他農業技術研究所、そこにおいても農林省関係の分析の能力を持っている、こういうシステムになっております。
  68. 秋田大助

    ○秋田委員 三木長官、ただいまお聞きのように、主要なところには中央で持っておるのですが、全国ある程度うまく配置をされて持っておるという実情ではないようであります。中央へ持ってきて、サンプルをとって、そこで分析をする、時間もそれだけかかるだろう、ここいらは、対策本部の施策として、今後施策を進められるについてお考えを願いたいと思うのであります。こういうことがいたずらな不安を呼んでおるのである、私はこう考える。  いろいろお尋ねしたいことがありますが、時間の関係があるようでございますから、主要な点だけをぽつぽつ二、三お尋ねして、やめようと思います。  防衛庁の方を要求しておらなかったのですが、御承知なら、どなたかお答えを願いたい。また、これは対策本部でおわかりだと思います。簡単なことです。今自衛隊でエア・サンプリングをとっておられるということを聞きました。どんな状態で調べられておるか。私のこの点に関する意見は、もっと組織的に、もっと大々的に、これは一種の放射能に対する戦いですから、自衛隊のジェット機を活用されまして、日本上空をくまなく、そして相当の時間にわたってエア・サンプリングをとっておかれるということが、私は必要だと思う。この点はどうなっておりますか。
  69. 杠文吉

    ○杠説明員 私からお答え申し上げます。  昨日の対策本部におきましても、防衛庁の装備局長から御報告がありましたので、それをお伝えいたします。防衛庁におきましては、昭和三十三年の五月から、四万フィートの成層圏、三万三千フィート及び二万六千フィートの高空におけるところの放射能調査を行なっております。ところが、この回数が非常に少ないものでございますから、今回は、十月の二十六日から十一月十日まで毎日午前中に、飛行する個所といたしまして北海道地区、中部地区、九州地区というふうに分けております。そしてその高度は四万フィート、三万三千フィート、二万六千フィートというふうにしてやっております。
  70. 秋田大助

    ○秋田委員 ぜひ日本上空をブロックに分けて、くまなく、かつ各高度において、死の灰の散布状況を、雨が降ってきたときの対策じゃなく、降らないときも、日本上空気流その他の中にどういうふうに死の灰がきているかということを、われわれは調査しておく必要があると思うのであります。アメリカでは、核戦争の場合の処置を、今日非常に、ある意味においてはヒステリックに対策を講じておるのでありますが、この実験による死の灰に対する対策というものも、ある程度徹底的にやるべきである。いたずらに安心しておれない。十分徹底的にやる、そのことがソ連の反省を促すゆえんにもなろうと思います。われわれは、決していたずらに恐怖におびえて、恐喝外交に屈するものでないのですけれども、そこは十分自覚しながら、対策は徹底的に、迅速に立つべきであると思うのであります。  万年筆型になったガイガー計数管というのですか、そういうものがあるようなことを三、四日前に読売新聞で見ましたが、こういうものの普及をはかることが人心を不安ならしめる原因をなすか、そうじゃないか、この際、私は一考を要すると思う。ある程度持たしていいじゃないか。そうすると、なるほど心配ないのだということをはっきりさせると思う。しかし、これもまた悪用されるおそれもあろうと思うので、これはむずかしい問題ですが、考えておいていただきたいと思うのであります。  要するに、新聞によると、ポーリング博士は、アメリカで四万人の骨ガンの患者が出て、四万人の奇形児が生まれるプロバビリティがあるのだと言っております。そして北半球に五十万人の骨ガン患者と数十万の奇形児が生まれるプロバビリティがあると言っておるのであります。しかし、われわれが対策を誤りなくいたすならば、このプロバビリティをゼロにできないまでも、非常に少なくすることが可能だ。それが政府のやるべき責務であり、その対策に遺憾なきを期するのがこの科学技術特別委員会の責任だと思うのでありまして、何代かのあとに、三木長官が本部長になられて十分施策が講ぜられたがために、骨ガン患者も出なかった、奇形児もふえなかったと言われるように、あのときぼんやりしておったからこういうことになったということを、数世代後のわれわれの子孫から言われないように、的確な施策を講ぜられんことを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  71. 前田正男

    前田委員長 次に、原茂君。
  72. 原茂

    ○原(茂)委員 時間がないそうですから、長官に一点だけ御所見をお伺いしたい。それから菊池さんに一つだけお伺いしたい。  まず、長官にお伺いいたしますけれども、今内閣に対策本部ができたわけですが、私どもの立場から考えますと、おそきに失している、まことに遺憾千万だ、こう思うわけです。今日まですでに放射性降下物というものの非常に大量な滞留が行なわれているし、これが徐々に私たち国民を侵しているという説明もお伺いしたのですが、時あたかもソ連実験再開を期して対策本部なるものができる。国民はすでに放射能のノイローゼになっておる。この時期にこうした本格的な腰の入れ方をすることは、何か反共思想に通じていくという、反ソ思想に通じていくという、そういう感じをつい国民の中にも抱かせる危険がある。私はやはり、この本部の本腰を入れた対策を考えることは、ずっと前からできてなければいけなかったと思う。長官が、今日本部長に就任される意図も、やはりこの際、ソ連実験再開というものを期して、いわゆる反共といった感じ、反ソ的な立場からこれに力を入れ始めたんだということは絶対ないというふうに私は考えるわけですが、この点は、一つ長官からはっきりと御所見を伺っておきたいのであります。たとえばソ連実験再開に関しては、日本共産党が、あの無謀な再開に際して、おそるべき実験をたび重ねてやっておりましても、これに対して反対どころか、反省を促すどころか、賛意を表するという共産党の態度、これに類似したような形で、この本部が今対策を立てるというようなことであってはいけないと思うのであります。従来すでに対策本部は設置さるべきであり、当然設けられなければいけなかった。当然今後も、ソ連のものと同時に、アメリカ、フランス、イギリスその他のこの種の実験に関しては、思い切ったメスを入れながら対策を立てていくのだということをも、あわせて長官の所見をお伺いしたいのが一点。  それから菊池さんにお伺いいたしたいのは、今まで各先生から説明のありました人体に及ぼす影響でございますが、原研も保健物理を担当されてこの種の研究をされていると思うのですが、今までの説明の以外に何か御所見がおありならば、私たちにこの機会にお教えをいただきたい。同時に、きょうも放射線医学総合研究所長さんも来ておられますが、ここでも人体に及ぼす影響調査しておる。原研でも保健物理の立場でこの調査をされている、研究をされている。この二点が、やはりどこかでクロスしながら総合的な対策といいますか、そういうものを生み出すための連絡なり研究なりがなさるべきではないか。そういう緊急なときにきているのじゃないだろうかというふうに考えますので、この点に対する菊池さんの御所見もあわせてお伺いしたい。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 原委員のお尋ねでございますが、少し疑い深過ぎると思うのでございます。これだけの放射能降下物があるとき、親ソも反ソもあるわけはないので、人類を守り、日本人を守りたいということでございます。対策本部は、そういう思想的な何ものもないことは当然のことでございます。  それからおそ過ぎたというお話でございますが、従来も各省の連絡会議というものをひんぱんに開きまして、やっておったのでございます。しかし、こういうふうにひんぱんな大型核爆発実験が行なわれると、もう少し強化する必要があるということでこれを強化し、さらに、この機構をもっと強化する方法を、岡委員にもお答えいたしましたように考えておるわけで、今回の場合は、割合、いろいろとそう手おくれだという御非難を受けないようにわれわれとしては考えてきたつもりでございます。従って、この対策本部を——なかなか役所のセクショナリズムというものはあるものです。これを今後、この問題に関しては断ち切りたいと私は決意をいたしておるわけでございます。
  74. 菊池正士

    ○菊池参考人 原子力研究所では、元来は、放射性爆弾の影響による降下物の検出、その測定その他はしない方針になっております。しかし、研究所といたしましては、あの周囲に、研究所にもし何か事態が起こった場合に、その放射能がどう影響していくかということを見るために監視所がございます。その監視所がやっております測定は、とりもなおさず放射性降下物の測定をするということになりますので、そのデータを分析いたしますと、おのずからそこに問題が出て参ります。そういう意味でいろいろやっておりまして、特に原研には、特殊な、非常に大量の空気を吸い込んで、それによって内容を分析する装置などがございますので、対策本部の方からの御要請があれば、そういう意味データはわれわれとしては十分に出したいと思います。  それから、そのほか体内に入ったときに及ぼす影響でございますけれども、これも人体的、生理学的の問題は、すべて放射線医学研究所の方におまかせしております。私の方でやっておりますのは、所内で事故が起きましたときに、何か放射性物質を吸入したときにその被爆量を推定する必要が起こって参ります。体内にどのくらい入ったかということを測定するために、体内に入った放射性物質を測定する器械を持っております。これは大へん便利なものでございまして、現在でも、私自身も入っていまして、明らかに放射性降下物によるセシウムその他を、これはだれでも持っておりますけれども、現在持っております。もちろん非常にわずかなものでございます。これも、われわれとしては、所内に事故が起こった場合の吸入量を至急に判定したいというつもりでやっております。生理学的な研究は、すべて放射線医学研究所の方におまかせしておる建前でやっております。しかし、そこには多少、何といいましても、測定方法その他についてオーバーラップする点がございまして、それはそのつど塚本さんと十分協議の上連絡もとり、また、むらなくやるように参っております。将来もそういうことでやっていきたいと思います。
  75. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 国会も終了いたしまして、これから長官に委員会でお目にかかる機会も当分ないと思うのであります。きょうは、私は委員各位並びに参考人各位の質疑応答を承っておって、特にこの通常国会開催までに長官にぜひとも努力をしていただきたい、そう思う点を感じましたので、一つお願いを申し上げておきたいと思うのであります。  それは、この五十メガトンの核爆発実験に伴いまして、ただいまここで展開されましたような質疑応答、並びに世間では大騒ぎをしておるわけですが、私の考え方からいたしますと、国会もこれは責任があるし、また、政府も責任がある、特に原子力委員会も責任がある、こう思うのであります。というのは、この原子力そのものの実体について、大所高所より深く掘り下げるということが日本全体として足りないのじゃないかと私は思っております。一体原子力というものが、将来の人類社会にいかなる影響を及ぼすものであるかということを、利用の方からも、それから損害を及ぼす方からも、一切の面から深く掘り下げておくということが足りないために、何か火事場どろぼう式な形が生まれてくるのじゃないか。原子力というものはそうじゃない、これはもっと大きな変革を人類社会に及ぼすものであって、これに対しては、政治的にも、また、学問的にも、あるいはいろいろな立場から深く取り組んでいかないと、結局国家的におくれをとるのじゃないか。要するに、人類社会に大きな根本的な変革をもたらす原子力に対して努力が一般的に足りないのじゃないか、そう私は思うのであります。これは将来の政治のあり方についても大きな一つの示唆を持つ力だ、そう考えておりますので、これは長官、科学技術庁長官におなりになり、原子力委員長になっておられるのでありますから、総理大臣以下閣僚諸公に原子力の実態というものをよく説明して、もっと真剣に国家がこれに取り組むべきであるということを、一つ御努力を願いたいと思うのです。今のような体制では、学者をいじめてみても、それから原子力委員会の責任を問うてみても、世界的にこの原子力に取り組んでおる日本の姿というものを見ますと、実にチャチなものだと私は思うのです。私はオークリッジなりブルックヘヴンとかいろいろなところに行ってみましたが、一つ動物実験に対する放射能の試験をやっておる形態を見ましても、何万という動物を相手にして長い間研究を重ねて、そして許容量の算出をやろうといっておる。日本なんか、実験しているか実験していないか、ちょっとわからぬような感じを受ける。こんなチャチな力をもって原子力一切を割り切っていって、結論を出そうというようなことは、それ自体間違っておるので、原子力の実体というものを知らないから、こういうチャチな、あさはかな体制が確立されるのではないか、こう思うのです。ですから、原子力というものはそんなものじゃない、もっと深刻な、大きな変革を人類社会にもたらすのだ、それに取り組む政治百年の大計というものはいかにあるべきかということが、われわれが三木長官に大きな期待をかけておるところの原因であって、そのほかは何も期待をかけておらない。それだけの実力者なら、やれるかやれないかという期待だけであります。だから、どうか通常国会まで、三十七年度の予算編成までに、もっと原子力に重点を置いた政治体制の確立ができるように、一つ閣僚諸公を説かれて、何とか一日も早く世界の大勢におくれないように、そういう政治をしくように努力していただきたいと思うのでありますが、一つこれに対してもし御所見がございましたら、この際承っておきたいと思います。
  76. 三木武夫

    三木国務大臣 なかなか高遠なお話、原子力にふさわしい政治あるいは国内体制、こういうものが必要であるというお話でございます。なかなか微力で御期待に沿うような働きが短期間にできるかどうかは疑問でございますが、斎藤委員の言われる精神に対しては同感でございます。微力ではございますが、できるだけそういう努力をいたしたいと考えております。
  77. 前田正男

    前田委員長 他に質疑の通告がありませんので、本問題に関する質疑は、この程度といたします。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して、私から厚く御礼を申し上げます。      ————◇—————
  78. 前田正男

    前田委員長 この際、核実験に伴う放射能等科学的調査及び対策樹立に関し、赤澤正道君、岡良一君及び内海清君より、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三派共同提案にかかる決議案が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。赤澤正道君。
  79. 赤澤正道

    赤澤委員 核爆発実験は、大、中、小にかかわらず、断じて許すべきものでないということは言うまでもないことであって、政府もその決意で国際的に主張を進めておりますが、しかし、降りかかる火の粉はわれわれでまず払わなければなりませんので、自民党、社会党、民社党で諮りまして、次の決議を提案するものであります。   核実験に伴う放射能等科学的調査及び対策樹立に関する件(案)   ソ連が国連の決議を無視して超大型核爆発実験を強行し、また米国も大気圏内実験にふみきらんとしている。まことに遺憾である。我々はかかる暴挙の即時且つ永久的禁絶を要求する。   政府はさきに、国連において放射能影響調査の強化を提唱し、また、内閣に放射能対策本部の設置を決定したが、その実施にあたっては、世界の各国に率先してその目的を全うし得るよう、特に左記事項の実現を期すべきである。   即ち   一、放射性降下物降下は今後数年に亘ることにかんがみ、恒久的に調査及び防御に関する総合的な責任体制は原子力委員会を中心として確立し、全国的な施設及び要員の配備に万全を期し、国民に不安なからしめること。   二、特に放射性降下物人体に与える影響調査及び分析に重点を置き、常時その成果を公表し、必要ある時は速やかに報道機関、地方庁等の協力により国民に適切な指導を行なうこと。   なお、所謂警告線量については、可及的速やかに、国情にそうよう決定すること。   三、政府は、国連が国際的放射能調査機関を設けんとすることにあたっては、その本部を我が国に設置するよう、格段の努力をする   こと。   四、右各項の実施に要する予算の確保につき万全を期すること。右決議する。  以上、お諮りを願います。
  80. 前田正男

    前田委員長 討論の通告がございますので、これを許します。松前重義君。
  81. 松前重義

    ○松前委員 この決議に対して、もちろん賛成をいたします。  放射性降下物降下の問題は、かつて第五福竜丸が被害を受けて、焼津の港に帰ってきたときに、そこに始まっております。特に実験放射性降下物の問題であります。このときにおいては、ちょうど私はその調査のために第五福竜丸の係留してある焼津の港に行き、また、なくなった久保山君やその他の被害者を見舞って、その実情をつぶさに調査いたしたのであります。そのとき、すでに私どもには、ソビエトでもこのような小さな実験をやっていることがわかっておりました。アメリカのビキニ環礁における水爆実験の灰が、近く日本にも飛んでくるということを私は発表いたしたのであります。松前報告として、毎日新聞が大きく報道したようであります。それで、とにかく水爆実験の灰が飛んでくるということに対しては、その当時においては信ぜられないようなことであったらしいのでありまして、某大新聞のごときは、私の名前を出して、社説において、そういう荒唐無稽のことを、科学者たる代議士がやるのはけしからぬといって攻撃したことを私はいまだに覚えております。非常にこのことは残念であると実は考えております。また、政党内におきましても、当時、われわれ右派社会党でありましたが、その中にも、アメリカの死の灰が日本に飛んでくるなんと言ったことに対して非常に反対を唱えた人たちが、今は内海さんもおられますが、民社党に行っておられる方々でありますけれども、おられました。このようなことで、この死の灰の問題は、すでにその当時から、われわれはほんとうに重大な関心を寄せておかなければならない問題であったのであります。しかし、その途上において、最近に至る間におきましては、核爆発実験の停止の問題がやかましくなって、しばらく核爆発実験はされていなかったのであります。それで、実は私が想像しますのには、アメリカもソ連も、その後水爆、原爆等を製造いたしまして、工場は休むわけにはいかないし、私は相当な数の原水爆ができておると思います。といって、工場を休んで、もうよろしいというところには至らないというような、核武装を背景にした、いわゆる力の均衡というような意味における国際情勢の中におきましては、やはり核物質の爆発力を持ったものを作っていく、すなわち、原子爆弾や水爆を作っていく、その工場は休みなく動いておると実は思うのです。従って、ソ連もアメリカも、もう相当数保有しておると同時に、場合によっては、私は、だんだんやっていく上においては、置き場所に困っておるのじゃなかろうかとも思うのです。こういうことから、この爆発実験というようなものが、置き場所に困るから行なわれるとばかりは考えられませんけれども、いろいろな国際的な情勢も背景として、核爆発はどうもまだ行なわれる可能性があるんじゃないかという感じを持ちます。ただ声を高らかに日本が犬の遠ぼえをやってみても、なかなかこれを聞かないというようなことも一応考えられると思うのであります。  そういう点から見て、やはり東西両陣営の間に地理的にはさまれておるところの日本、しかも、いろいろな意味において、どちらかと申しますと気象的にも不利な条件にある日本、ここでこのような体制を整えて、本格的にこの問題に取り組むということ——まあ今日までやるべきでありましたけれども、すでにもうビキニ環礁のときにこの問題を取り上げるべきであったのが、政府も、また場合によっては国会も、私はこれに対する認識が足りなかったと実は思っております。また、報道機関も足りなかったと思う。こういう意味におきまして、今日これを取り上げて強力に推進することによって、国民が安心できるようにしてやる。最近、時に放射能ノイローゼというような傾向が見えるのでありまして、特に青年なんかの間にも、どうせもう生きておってもおれは長くはないというような気持を、どこともなく呼び起こしておる傾向は、これは無視できないと私どもは見ておりますので、すみやかにこの放射性物質降下に対する具体的な許容度その他の発表と同時に、また、国民の信頼し得るデータを発表するということは、非常に重大なことであると思うのであります。  同時にまた、この放射線を防止するための研究というものが今行なわれておりまして、私の口からあんまり言いにくい話でありますけれども、それぞれ、われわれの研究室でも行なわれております。これらは、科学技術庁においてわかっておられます。こういうようなものを早く政府は取り上げて——これは私は世界に誇るべきものであると信じております。世界にありません。そういうふうなものも早く取り上げて、やはり国民にもある程度安心させるようなことも、今度のこのような本部において取り扱われる仕事の一つではないかと思う。そうして、このような研究というものが、どんどん従来の研究に対して方向をつけてやるならば、ある程度のものは日本でもできるのです。だから、これを一つ促進するようにあってほしい、こういうような希望条項を、まだほかにもありますけれども、つけ加えまして、ここに満腔の賛意を表する次第であります。
  82. 前田正男

    前田委員長 これにて討論は終了いたしました。  これより採決いたします。  赤澤正道君外二名提出の三派共同提案にかかる、核実験に伴う放射能等科学的調査及び対策樹立に関する件を、本委員会の決議とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ただいまの決議に関し、三木国務大臣より発言を求められております。三木国務大臣。
  84. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま御決議賜わりました決議の要旨は、きわめて重要な問題を含んでおります。われわれも、この御決議の趣旨に沿うて、そういうことが実現いたしますように努力をいたしたいと思います。
  85. 前田正男

    前田委員長 なお、本決議につきましては関係当局へ参考送付することとし、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  87. 前田正男

    前田委員長 なお、この際、委員長代理の指名について申し上げます。  不肖私が、欧米諸国における科学技術振興政策並びに原子力、宇宙及びその他の研究開発状況視察のため、来たる十一日より海外出張いたしますので、その間、理事齋藤憲三君を委員長代理に指名いたします。御了承をお願いいたします。  本日はこの程度とし、委員会散会後直ちに科学技術の基本問題に関する小委員会を開会いたします。  これにて散会いたします。    午後一時四分散会