○原(茂)
委員 きょうは
地震予知の問題並びにガンの問題等をこの
委員会で審議を進めていくわけでございますが、非常に時間がございませんので、詳細にわたっていろんな面でお聞きしたい点もお聞きすることは不可能だと思いますが、しかし、骨子としては、特にきょうの
委員会を通じまして、現内閣、特にいわゆる実力者内閣中でも最も新しいセンスをお持ちの実力者であられる
三木長官に特に出席をいただきまして、今日国民的な
関心事であります
地震予知の問題並びにガンというものに、非常に大きなノイローゼにかかっておる国民の立場から、今まで当
委員会で、私ども与野党とも一緒になりまして国民の代表という立場でこの重要事に対しての審議を進めて参りました経過も、長官には議会側の私たちの方からする概略の
説明もお聞きとりいただきまして、
あと長官に、ぜひともこれに対する緊急善処をお願いしたいということを主たる目的にして、これからせっかくおいでいただきました
参考人その他の御
意見等もお伺いをいたしたいと思うわけでございます。特に長官には、その
趣旨で私は質問をこれからいたしたいと思いますので、十分に今までの経過等を、非常に退屈だと思いますが、がまんをして
一つ頭にお入れいただきたいと思うのであります。特に私ども、当
委員会としてもこの問題は重要だという認識を持ち、熱心に今日まで討議して参りましたので、
地震予知に関しましては、今までの経過を
会議録等でごらんになる時間がないと思いますので、この
委員会に出されて参りました陳情書が非常に簡潔に要を得ておりますから、一応これをお聞き取りいただきたいと思うのです。これは一番最初に当
委員会で取り上げる動機となりました陳情書の内容でございますが、簡潔にしぼってありますから、お聞き取りを願いたいと思います。
まず第一に、
昭和三十四年十月十五日、ラジオ
東京を通じて、今ここにおいでになっております
宮本先生が、今後二、三週間のうちに
東京から二百キロ以内でかなりの規模の
地震があるだろうと放送をしたのであります。
この予想は、三十四年十月二十六日十六時三十五分の福島県東方沖の顕著
地震として実現したわけであります。距離が予想よりやや遠いものでありましたが、その規模は大体三河
地震、
昭和二十年一月十三日、死者二千名を出し、負傷者二万二千を出し、全壊五千五百の大
地震程度のエネルギーのものであり、
宮本さんの予想は正しかったと思われているのであります。この
地震は、幸い福島県東方沖百七十キロの海上で起こったから被害はなくて済んだのでありますが、もしこの規模の
地震が陸地で起こったとしたら、相当の被害があったことは想像にかたくない。
世界中では、年に何回か多数の死傷者を出す大
地震が起こっている現状であるから、
地震予知に成功することが、いかに重要な意義を持つものであるかは論を待たない。従来、
地震学者は、
地震予知のため
伸縮計、
傾斜計、
検潮儀などによってその前兆らしい
変化を記録しているが、雨、気温、湿度など、他の原因による
変化量が大きく、区別の困難な場合が多いので、信頼性は乏しい。その点、現在
宮本さんが
観測している
地震予知器械高木式無
定位磁力計は、
地震前の異常をきわめて明瞭に記録し、かつ一台数十万円
程度のものであるから、各地に設置し、
観測することが容易である。以下、簡単に
器械の現在までの経緯及び性能について
説明するといって、この
器械の
説明があるわけです。
この
器械の性能については、三十四年五月十二日東大における
地震学会で発表して、その後も
器械のテスト及び最近の継続
観測の結果を気象庁に報告し、
器械に対する正当な評価を求めてきたのであります。特殊の性能を持っているこの
器械の
検討の必要性を
関係各機関に強く要望しましたが、各
研究機関は、本来の業務に追われ、予算面や人手等の点で制約を受け、全く
検討が不可能ということであります。
しかし、尾鷲測候所員で、かつての経験者が、維持費さえあれば継続
観測をしたいという希望があったことを
高木技官から聞いたので、その費用は当方で負担するから、継続
観測してはと
地震課に望んだところ、
観測する意思はないと拒否された事実があります。つまり、
地震予知の可能性あるこの
研究を、気象庁は行なう意思がないのではなかろうか。
地震予知を不可能視している学界から、気象庁が独走するという非難をのみおそれて、成功したときの社会的業績を黙視するのであろうか。もし現状のまま。すなわち、
宮本さんの一点
観測だけでは震源地の方向を予想することもできない。震源地の予想は組織的な
観測を行ない、各
観測点のデータを比較
検討することにより、正確に予想することが可能になる。一カ所だけの
観測では、今後何年たっても、
地震との明確な
関係は得られずに終わる可能性がある。気象庁は、学界の無意味なる攻撃をおそれて、このきわめて可能性のある
器械の
観測を意識的に避けようとしている。
地震学者は
地震波の
研究に重点を置き、電磁気学的
現象には従来から冷淡で、かつこれを専門とする人はほとんどいない現状だと思う。東大
地震研究所の一員が、
地震学者は
磁力計に対し
知識を有しないから、われわれは、この
器械の採否を決定することは不能であるといっていることからも、この間の事情を察知できるのではないかと思う。
かかる悲しむべき現状を憂い、
宮本さんは、柿岡における誤った
検討の事実と、従来のデータ及び
宮本さんの最近の
観測結果をもって、気象庁に
器械の再
検討と、組織的な継続
観測の再開を要望してきたものであります。しかるに、気象庁は、学界の冷笑をおそれて、積極的な態度を示してはくれませんでした。ここにあえて実情を披瀝し、貴
委員会の格別の御配慮をお願いするという第一回の陳情が出されたわけであります。
そうして、三十六年の五月十二日に再度の陳情が当
委員会に出されまして、これを機会に当
委員会でまた審議を行なったのでございますが、その審議の内容というのは、一昨年十二月貴
委員会が本件を審議して以来一年六カ月、一般の理解と協力を得て、筆者の
研究は漸次進展しております。——筆者は
宮本氏であります。一昨年五月、筆者はこの
器械の性能を
地震学会で発表し、さらに、
和達気象庁長官に対してもこの
器械の
検討を陳情したのでありますが、
原理不明の理由で、気象庁としては
研究観測も不可能として、期待せる回答は得られなかったのであります。その後、
原理の大半は筆者の
研究で明らかとなり、次第に専門家の理解を得ている現在においても、なお気象庁、学会は、直ちに多数地点での
観測を行ない、急速に効果をあげようとする状態にありません。すなわち、前回の
委員会の数カ月後、気象庁は
東京で二台の
器械で
検討を開始しましたが、悪条件と性能の異なる
器械で
検討しているため、市内電車の
影響を著しく描き、
地震の前兆をほとんど記録せず、筆者の
観測と比較することができません。さらに、最も必要な組織
観測をする
計画もなく、このままでは、この
方法による
地震予知の
研究が、急速に進展することは全く望むべくものもありません。
しかし、
和達長官等の努力によりまして、
地震予知計画研究グループが四月に発足しましたが、
地殻変動及び
地震予知には直接的には効果のない
水準測量等に重点を置く従来の
考え方から脱却していない傾向のため、この
器械による
方法が軽視される状況にあることは、まことに残念なことであります。このことは、多くの
研究機関と豊富な陣容が、新しい電磁気部門の
研究に対しては、何ら積極的な理解と協力を示さなかったことを表明していると思います。さらに、
予知グループは
計画を一年以内に出すだけであり、実施はさらにおくれるはずであります。
しかしながら、前兆を記録し得る現在
活動中の
観測施設は一カ所だけで、一日といえども
観測を欠かすことはできません。筆者の希望する全国五十カ所の組織
観測が行なわれれば、一点
観測で不明の数多くの疑問が解決される可能性があり、その実施の一日も早からんことを切望しております。しかし、
宮本さんにはすでに経済的、時間的に余裕もなく、これ以上
観測を続けることは、個人の力ではできない状況にあるというのであります。ここに、あえてこの
委員会に陳情をされて、特別の配慮を切望してきたわけであります。
ここに
あと記録としてずっと実験をやって参りましたデータがあるわけでございますが、その
あとに、「現在までの経緯」として最後にこう述べています。
この
器械が、
地震の前に性能が
変化することに初めて着目したのは、電気試験所田無分室技手吉塚正志氏であります。同技手は、
昭和十七年ごろ、
器械に異常が現われると顕著な
地震が起こることをしばしば経験し、当時の中央気象台長藤原咲平博士に連絡しました。藤原博士は、
原理不明にもかかわらず、重大な
関心を寄せ、
地震課
高木技官に
検討を命じたのであります。
高木技官は、藤原博士の理解と協力のもとに記録方式を改良し、全国五カ所で、
昭和十九年より五年間
観測を行ないました。この間、世界的な南海道大
地震を初め、数多くの顕著
地震の前兆をとらえたのであります。さらに、
昭和二十一年桜島火山の
活動期に、藤原博士の指示で
器械を設置し、火山
活動の前兆を明確に記録しました。
この
器械に対しては、
昭和二十二年二月より四カ月間、茨城県柿岡
地磁気観測所において
検討が行なわれましたが、この
器械と性能の異なる
器械で
検討したため、
地震の前兆を記録せず、ために
高木技官の集めたデータが、あたかも
地震と無
関係なものの
ごとく解釈され、今日に至っております。もし柿岡
地磁気観測所での
検討が正しく行なわれ、その価値を認め、全国的組織で継続
観測がされていたなら、その後に起こった、五千人の人命を奪った福井
地震、その他多数の人命財産を奪った多くの
地震も必ずや
予知できたと
考えております。今後再び同じあやまちを繰り返さないよう、
関係方面の善処を強く要望いたしますというのであります。
これが二回にわたり陳情がなされ、当
委員会でも一国民的な
関心事でありますし、今日天気予報が非常に発達いたしましたと同じように、
地震に関しては、少なくともある
程度緩漫でもけっこうですから、相当の
予知をしてもらいたいという国民の大きな気持が盛り上がっているわけであります。そこで私どもも
関心を持っておりましたところ、また三十六年十月十七日に新たに三回目の陳情書が出されまして、今長官の手元でも、この陳情書はごらんいただいていると思うのであります。
そういう経過で今日までやって参りましたが、問題は
一つであります。今日
地震予知というものは必要だ、必要ではあるけれども、この
高木式の
器械というものが、学理的に、理論的にその基礎が証明されていない、分明していない、
現象としては何かをとらえている、その
現象が
地震予知に
関係があるのではないかということは、学界の多くの人がこれを認めています。だがしかし、何かこう学理的に、学問的に基礎的な
研究がまだ十分でない、学理的にこれが十分に解明され、証明されていない、だからこれに対して五十カ所なり百カ所なりに
器械を置き、組織
観測を行なう決意がつかない、こういうことに尽きているようでございます。
今日まで何年という間、
和達長官にも私どもから、少なくとも、個人
宮本先生が一台や二台の
器械をお持ちになって、個人的に
観測をしているだけでは、この
研究がはたして正しいものであるのか、ほんとうに
地震の
予知に
関係のあるものであるのかということすらはっきりしない、個人的な経済能力からいっても、もうすでにお手上げの状態にあるのだ、一台がもし一カ所に設置されるにいたしましても数十万円で足りるわけですから、十カ所あるいは百カ所にいたしましても、とにかく一億かからないということで、組織的な全国的な
観測ができるとするならば——今日の
わが国の
地震学界の学者が、少なくともこれに
関心を持って、このことが
地震予知に
関係ありと
考えている人が現にいるわけですから、そういうときに、気象庁の
考えやあるいは学界の一部の
考えにこれが押し切られて、いまだに冷遇視されているような感じを大衆に与える態度というものは、これは国家的に許されてはいけない、許さるべきではないという観点から、きょうもここに
参考人においでいただいたわけでございます。ぜひ
一つ、この種のものが
地震予知に多少でも
関係があると
考えられる場合には、大した費用ではございませんから、五十カ所ないし百カ所、一億以内の予算で済むことですし、
和達長官にもぜひ予算を要求するようにお願いしておきましたが、この追加補正にも出ておりません。また、通常国会がすぐ開かれますが、三十七年度の予算の中に、はたして組織
観測用にどの
程度の予算が要求されてくるのか、組まれてくるのかを、これから私も
関心を持って見守って参りますが、とにかく長官に、きょうこれから
参考人等の御
意見も聞いていただき、
参考人に対する私たちの質問等もお聞き願いまして、最後に長官に、締めくくりとして、これをどうお
考えになるのか、どのように予算化をやっていただけるかも、あわせてお
考えをお聞きしたいと思っております。
ここでおいでいただきました
参考人に、これから私のお伺いする問題点について、きょうは時間がございませんので、できるだけ簡単に御答弁をお願いしたいと思いますが、まず、おいでいただきました
宮本先生には、四つの点をお伺いしたいのであります。
一つは、北美濃
地震について神戸で明白に
予知されたという点ですが、他の地点にこの
観測点をもし多数設けてあったら、なお一そう明白になったのかどうか。一カ所であの北美濃
地震の
予知に
関係のある
現象をおとらえいただいたわけでございますが、はたしてこれが、組織的に多数の地点で
観測をしていたら、もっと一そう明白にいわゆる
地震予知という成果を上げ得たものかどうかという点が
一つ。
二つ目には、今の
高木式の
磁力計でございますが、これはすでに
宮本さんは実験で、
高木さんは計算で、
原理は明白だとお
考えになっているらしい。二点
観測に拘泥しないで、多数
観測に踏み切るべきだと、私はもう今の時点でやるべきだと
考えますが、はたして
宮本先生や、計算をされた
高木先生は、今までの経験から、やはり私と同じように、もう多数
観測で絶対やってよろしい、やって間違いない、やってもらいたい、やるべきだというふうにお
考えになっているかどうかをお聞きしたい。
第三点は、
地磁気の専門家としての、
先ほどからしばしば高橋先生からもお名前が出ました、今柿岡の所長をされております吉松先生もおいでいただいているようでございますが、
地磁気の専門家もこれを認めているのかどうか。吉松先生ばかりでなく、他にもし
地磁気の専門家としての先生方のこれに対する御
意見等をお聞きになっていることがあったら、その点を
一つお聞かせいただきたい。
四つ目には、もし国として全国組織の上に立った
観測が不可能だとするならば、個人的な、また別個な組織でやる以外に
方法はないと思うのですが、
宮本先生は今後もずっと個人的に、あるいはまた、個別的な別個の
方法で何かおやりになるお
考えがあるかどうか。国がやらないとすれば、どうするのかということを四つ目にお伺いしたいのであります。
それから、
高木先生には一点だけでございますが、この
器械について、もう一度どういう
器械であるか、どういうものを
観測するものか、どういうものをとらえるのか、その
現象はどういうものと
関係があるのか、この
器械の性能について
高木技官の御
説明をお願いしたいと思います。
それから神戸からわざわざおいでいただきまして感謝にたえませんが、きょう初めてお目にかかります白庄司さんには、北美濃の神戸の
予知に関しまして、明確に、詳細にこの機会に
一つ御
説明をお願いしたいのであります。
最後に、高橋先生でございますが、
先ほどお述べになりました中で、ちょっと気がついたことを二点だけお伺いしたいのであります。今の
地震予知研究グループがやっている仕事の順序等がずっと
説明されました後に、この中で最も有望だと思われるものから順次やっていくのだ、こういう御
説明がございました。そういう数多くの
予知のための
研究をやっておいでになるようですが、その中でこれが最も有望だと思われるその判断は、どういうものをもとにして、だれが、これが最も有望だという判断をなさるのかということをお伺いしたい。
二つ目には、
先ほど御
発言がありましたように、少なくとも
二つの
器械が、ある同じような場所に設置をされた場合には、その出てくる値というものは同一でなければならないというようなお話が強くなされたわけでございますが、私はこれに反対の
意見を持っているのであります。で、私の納得できるように御
説明をいただきたい。と申しますのは、少なくとも
地磁気とか
地電流というこのデリカシーな
現象をとらえようとするときに、たとえば
高木式の
磁力計でも何でもけっこうですが、この
器械が一メートルなり二メートル離れて、あるいは高さにおいて一インチでも二インチでも違うというようなときに、同一
器械であれば同一
現象が出るんだという前提は一体どこから出てくるのか。私は、出てこないのが当然だと思うのであります。少なくとも、この地を通して電磁気なり電流というものが流れてくるときには、そこに異質の、全然違った量、違った質の抵抗があるわけであります。その抵抗がある限りは、少なくとも一インチ離れたって、同じ
器械でその
地電流、
地磁気というものが全く同じ値を出してくるということは、私しろうとの
考えではむずかしいんじゃないか、出ないのがあたりまえなんじゃないかというふうに私は
考えます。もう
一つは、その
器械そのものも、最も精巧に作っても、全く同じ
二つの
器械ということがあり得るのかどうか。私は、やはりそこにアローアンスがあって、多少の誤差というものが認められている。どんな
器械が一万台、一百台作られようが、これが完全に
一つのものだ、
一つ性能ということはあり得ない。必ずそこには誤差というものが認められて、そのアローアンスの範囲において、やはり測定なりいろいろやるんではないだろうかというふうに
考えます。
器械の性能は、そう全部が完全に一致した性能でできるということは不可能だ、そのことと、
先ほど言った場所がちょっとでも違う、高さがちょっとでも違っているときには、
地磁気、
地電流を受けようとするときに、その間にある抵抗が異質ですから
変化しているのに、当然、二台の
器械が同じものを現わさないから、これは信用できないというそのお
考え方は誤っているんじゃないか。誤っていないんだとおっしゃるのなら、そのこともついでに御教示願いたい。その二点を高橋先生にお伺いしたい。
きょう、
先ほどもちょちょい話の出ました吉松所長がおいでになっておりますので、この点を
一つお伺いしたいと思うのでございますが、今の
地電流であります。
地電流をとらえる、その場合に、
地磁気観測の立場からいって、この
器械が、はたして
地震予知との
関係で、
地電流というものが何かの
現象を現わしてきているのかどうか、そういうこともまた可能なものかどうかという点を、できるだけしろうとの私どもにわかりやすく、吉松さんから、今までの経験を通じて御
意見を伺わしていただきたい、こう思います。