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1961-10-13 第39回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十三日(金曜日)    午後一時二十九分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君    理事 西村 英一君 理事 岡  良一君    理事 山口 鶴男君       安倍晋太郎君    秋田 大助君       稻葉  修君    菅野和太郎君       佐々木義武君    保科善四郎君       西村 関一君    松前 重義君       三木 喜夫君  出席政府委員         総理府事務官         (科学技術庁  島村 武久君         長官官房長)  委員外出席者         原子力委員会         委    員  石川 一郎君         原子力委員会         委    員  駒形 作次君         原子力委員会         委    員  西村 熊雄君         総理府事務官         (科学技術庁         原子力局長)  杠  文吉君         総理府事務官         (科学技術庁         原子力局次長) 森崎 久寿君         総理府技官         (科学技術庁         原子力局次長) 井上 啓郎君         総理府事務官         (科学技術庁         原子力局政策         課長)     藤田 正次君         参  考  人         (日本原子力         研究所理事長) 菊池 正士君         参  考  人         (原子燃料公         社理事長)   高橋幸三郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力行政一般  に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  原子力行政一般に関する問題について石川原子力委員説明を聴取し、菊池正士君より日本原子力研究所の、また、高橋幸三郎君より原子燃料公社現況等について、それぞれ参考意見を承った後、質疑に入りたいと存じます。  なお、説明並びに参考意見の御開陳は、おおむね十五分程度お願いいたしたいと存じます。  それでは、石川原子力委員より説明お願いいたします。石川原子力委員
  3. 石川一郎

    石川説明員 一般政策が大部分になりますので、ごく簡単に申し上げまして、なお、原子力研究所あるいは公社のことは、公社の方から御説明を願うことにいたします。  まず、われわれといたしましては、本年二月に作りました原子力長期計画がございますが、その計画にのっとりまして研究を進め、かつ実施もやって参りたい、こういうふうに考えております。  まず、原子炉建設に、つきましては、現在動いておるのは二基でございますが、もう四基動くことになり、十四基臨界実験装置を含めまして動くことになっております。そういうわけで、原子炉ができませんとこれ以上研究ができませんものですから、その方を極力充実するような方針で進んでおるわけであります。  なお、遮蔽研究炉の方は、ちょうど見積もりをとってきめようかというような段階まで参っております。  材料試験炉の方は、先般中間研究報告部会から出まして、まだ結論にはいっておりません。大体大きさ、それからループの穴のつけ方等つきましては意見が一致したものですから、これによってさらに研究を続けて参りたいと存じます。多分本年度末ぐらいにはこの方面答申も出て、われわれもそれによって方針をきめるチャンスがくるんじゃないか、こんなふうに考えております。これができますと、相当研究が飛躍的に進むのじゃないかというふうに考えております。  それからなお、今までやっておりました半均質炉増殖炉等つきましては、原研で引き続き研究をいたしております。  なお、放射線科学の問題につきましては、来年度におきまして予算をちょうだいするようにお願いいたしております。一応、中央放射線化学研究所を作ろうということで今進めて、どういう方にやっていただこうかということで――専門家が今ごく少ないのだそうでございますが、それを探して、大体今月一ぱいくらいには見当がつくのじゃないかと思っております。そうしますと、これも法律を改正していただきまして理事の人をふやしていただかなければならぬということもございますので、そういうこともこの次の通常国会あたりには通過していただきたいというふうに考えております。  それから再処理プルトニウムの問題でございますが、まだプルトニウムが実際にどういうふうに使えるかということが明確になっておりませんので、これはプロジェクト研究といたしまして、原研の方と公社の方と一緒になりまして、初期の間は研究していただくようにやっております。まだこの方も、本年度本式にやっておりませんので、研究は緒についたばかりでございますが、相当大きな規模でこれはやらなければならないのではないかというふうに考えております。  それから原子力船つきましては、今まで数年間にわたりまして研究をしておったのですが、どうもいい結論が出ませんので、新しく部会を作りまして、そして高所大所から、どういうふうに開発していくかという御研究を願っておる最中でございます。今のところでは一万トン以下、二万馬力以下ぐらいで、できるだけ商業船でいこうじゃないかというような案になっておるわけであります。まだ結論にはなっておりません。多分これも今年か来年春には答申がいただけることになっております。  それから公社の方では、探鉱をまず第一にやっておりますが、なお将来国の方で燃料検査をしなければならないようなことに相なっておりますので、検査技術研究に力を入れてやって、一通りの道具はそろったのでございます。それによって検査をする方法等に対して、研究をしておる最中でございます。  なおまた、今まで通りイエロー・ケーキからメタルを作るということは、引き続きやって参る考えでございます。また、探鉱の方につきましては、いろいろの方法をやって参りましたが、本年から力を入れまして水力採鉱法を使いましてやることがよさそうだというので、その方の研究に入るつもりでございます。これは約一年くらいあったならばめどがつくのではないかと存じております。  それから放医研の方は、ベータトロンがもう据えつくかもしれませんけれども、何しろまだ完成しておりません。物理的の機械が大へんむずかしいものですから、相当おくれております。化学の方はどんどん進んでおりますが、物理の方面研究は多少おくれております。まあしかし、それも本年度中には全部完成いたしまして、その方面研究が進んでいくことと存じております。  それから安全対策の問題ですが、安全対策つきましては、これは非常に重要なる問題でございますので、先国会におきまして原子炉安全専門審査会を設置いたしまして、比較的独立的に判断をしていただくような組織ができまして、今もう活発に動いておる次第でございます。  なお、一番心配しておりますのは人材の養成でございます。実は、たとえば原研におきましてJPDR発電試験炉試験をやることになりました。またCP5が連続的に動くということになりますと、相当従業員が要るということになります。JPDRの方は、三十七年度末にはできるだろうというような状況でございますし、CP5の方は来月あたりから三千キロぐらいに上がるだろうということになっております。そうすると、連続的に動かすということになりますと、三交代で、予備等がございますので、大てい六交代くらいの人間をそろえておかなければならぬというような話も伺っておりますので、そういう人員をどうして充実するかということが、一番大きな問題になっておるのでございまして、これは極力原研その他で充実してやっていただくようにお願いを申しておる次第でございます。  その次に、国際協力の問題でございますが、実はアイソトープの方の進歩、一昨日もちょっと大阪の方に参りまして、日本アイソトープの利用その他につきまして、学者の方々といろいろ話したのです。まあこの方は先進国に劣らないくらいな程度に発達しているのではないかというふうに考えておりますが、炉の万は非常におくれております。これは御承知通り一つの炉を完成するのにも一億ドルとかあるいは一億五千万ドルというふうに金が要りますので、やはりこれは国際協力によって、向こうが進歩しているものは、できるだけ取り入れる方が早く日本が進歩するのではないか。これも長期計画の方に書いてございますがそういうわけで、そういう方法でこれをやって参りたい、こんなふうに考えておる次第でございます。  なお、今回の国際原子力会議通常総会の席上におきまして、日本から、アイソトープのアジア・センターを作る提案をいたしました。これは、その提案をする前にアメリカ等とも相談をして、協力してもらうというような段取りでもって提案をしたのでございます。この問題が取り上げられるのではないかと存じます。もしそういうことになりますならば、向こうが十一月一ぱいまでに、どういう規模でどうしてやるかということを――一応国際原子力会議の方は、来年度予算はもうきまってしまっているのであります。あすこは暦年でありまして、一月から十二月であります。それで、どうしてもこれを織り込むということになりますと、十一月までに出して、再来年の初め、一月から十二月までの適当な時期にやる。そのときにこれを織り込むようにお願いをしなければならぬ。やはりこれは日本だけでやらないでIAEAと一緒になってやることがいいんじゃないかということで、そういう提案三木委員長がなすったのでございます。その準備を現在いたしておるのでございます。  それからなお、技術者養成の点でございますが、方々から、ただの留学生は困る、しかし、相当技術を持って一緒に働いてくれる人間を送ってくれるならば、非常に歓迎するというようなお話があるのでございますが、なかなかそういう人を送り出すだけの余裕もございませんし、そういう点においての国際技術交流ということが困難な事情にありますけれども、できるだけ早くそういうチャンスを作りたい。たとえばオークリッヂでモルトンメタルの新しい炉を試験してやっております。ぜひ日本で起こしたらどうかという話があるのですが、どうもそういうふうな十分な知識もない、あるものが送れないという状況で困っておるような状況でございます。  それからはまた、国際交流をよくするために、特にわれわれとして、昨年参りましたときに、ユーラトムなんかと結びつきができればしあわせだと存じまして、ぼつぼついろいろ交渉しておったのでございますが、先般三木さんがおいでになりまして、向こうのヒルシユとか五、六人の方々日本にお見え下さることになっておりますので、この際に何とか結びつきをつけたいというように考えております。これは十一月の二日に東京に着かれて、約一週間日本におられることになっております。そのほかに御承知通り、イギリスがおもになりまして、ドラゴン計画というものをウインフリースでやったわけであります。これはちょうど日本の半均質炉と同じようなアイデアでやっております。これは株式会社組織みたいになりますけれども、英国と欧州原子力機関一緒にやっておりますが、小さな国々が幾らかずつ金を出し合いまして、研究を開始しておるようなわけであります。そこへも入ることができればいいというので、連絡をつけて参って、今日本の方で半均質炉研究をどのくらいやっているかということを向こうに報告いたしまして、そうして向こうの方に来ていただいてまず被露していただく、そういうことからだんだん結びつきをやって参りたい。これはユーラトム計画でございますが、そういうふうな交渉を今開始中でございます。来年の三月ごろに来ていただければ非常にしあわせだこんなふうに考えております。  それからなお、核燃焼所有方式を、今度国有から、天然ウランに対しましては民有に変えることになるわけでありますが、もちろんこれは相当の条件かあって、それに適するものだけにそういうことを許していただくことになった。おかげさまで、いろいろ賠償の方の法律やあるいは規制というものの法律か完備いたしましたし、また、国際的の義務を負うようなことに対しまする手だて等も完備いたしましたので、強力に進めたい、こういうふうに思っております。これは、もう少しこまかいことにつきましては、業者の方と相談をしてきめることになっております。  それから放射能調査でございますが、これは全国十三、四カ所にお願い申し上げまして放射能をはかっております。それで、ただはかっておるだけで、これをどうしたらいいかということは非常にむずかしい問題がありますので、まだ決定はしておりませんが、また、民間の方でも、実は相当試験所でりっぱな放射能研究をなさっているところもありますので、場合によっては、仲間に入れてお願いしたらいいのじゃないかというような考えを持っております。  なお、アイソトープの方は、先ほど簡単に申し上げましたが、だいぶ進歩いたしまして、御承知通りに、輸入の金額か約二億円にも達するという状況であります。しかし、原研の方でだんだん各種の機械設備が完成いたしましたので、これで短寿命の方から作っていただきたい、こういうふうな方針で進んでおります。  大体荒っぽく原子炉の万からアイソトープの方まで申し上げた次第であります。また御質問でもございましたら、お答えいたします。
  4. 前田正男

    前田委員長 次に、菊池正士参考人よりお願いいたします。  菊池参考人
  5. 菊池正士

    菊池参考人 原子力研究所の近況につきまして、簡単に御報告いたします。  まず、原子炉建設の方から申しますと、一号炉は、御承知のようにだいぶ前からできて動いておりますが、二号炉が大へん問題になりまして、皆さんに御心配をかけましたか、これは去年の十月に臨界に達しまして、その後、ことしの初めに入りまして千キロワットまでパワーを上げました。それから三月ごろに臨界に達しまして、その後、これを運転する要員訓練相当いたしました。これは、運転はどうしても二十四時間連続運転になりますので、三交代制にしましても相当の人数が要りますが、まず職員の訓練をしないといけませんので、要員訓練をかなりの期間にわたっていたしました。そして七月、八月ごろからぼつぼつ炉を使う実験に着手いたしました。七月、八月はいろいろと実験をいたしました。それから九月に入りましてから、さらに今度は三千キロ目標パワー・アップを控えて、一度オーバーホールをいたしました。今オーバーホールがちょっと予定より長くかかっておりまして、現在まだオーバーホールをやっている段階でございます。これがすっかり済みますのはおそらく今月一ぱい、来月にちょっと入るのじゃないかとも思いますが、そこで新しい燃料を少し補給いたしまして、三千キロに上がるようにしております。そして、現在あります第一次装荷燃料を大体使い果たしますのが来年の三、四月ごろになりますから、そのときに第二次装荷燃料といたしましては九〇%の濃縮ウランを使いまして、それで最終的の、一万キロの目標に達する段階になるような順序にきております。この炉は、今までのところは、千キロワットの運転では非常に順調に進んでおります。現在までに大体四十万キロワット・アワーばかり出ておりますが、故障という故障はほとんど起こらず、心配いたしました燃料の被覆の破損も一つも起こらずに現在に至っております。  それから三号炉、いわゆる国産号炉の工事も進んでおりますが、これはやはりいよいよ据え付けて、いろいろ部分的なテストなどを始めておりますが、必ずしもすべての部品が順調にいくとは限りませんで、多少予定よりおくれております。二、三カ月前立てました工程によりますと、来年の四、五月には臨界に達し得る目標でございましたが、現在のところ、それよりなお多少おくれるかという段階でございます。  それからスイミング・プール型の四号炉、これは遮蔽研究用の炉でございますが、現在入札が終わろうとしておる段階でございます。それが終わると、来年初めから建設にかかるわけでございます。  それから動力試験炉の方は、順調に仕事が進んでおりまして、コンテイナーの下の方の部分はすでにできまして、現在、現場で鉄板の熔接をやってコンテイナーを作っている状態でございます。  それで、原研といたしましては、さしあたり号炉を使うことがわれわれの研究の非常に大事な部分でありまして、これを完成することが原研としての原子炉研究を順調に進めていく上の非常に大事なことになりますので、これがありませんと本格的な研究ができないと言っても言い過ぎではないと思います。外国研究所が発展してきた段階を見ますと、こういったような炉が一つ中心になりまして、その炉が完成すると、今度はその炉に付随した技術研究部門ができて、それが原子炉工学部門なり、あるいは基礎部門に発展していく、こういう段階をたどっておるのであります。われわれの場合はかなりあとから出発しましたから、外国の例にならった形をとった研究所組織を作ったわけでありまして、従って、基礎研究部門というものが、炉ができ上がる前からそこにあるわけであります。元来ならば、その炉を中心として、それからだんだんと発達してそういう部門ができてくるべきである。ところが、あらかじめそういう部門を作って、炉のできるのを待っていたような状態であります。それで、われわれとして今一番苦労しておる問題は、実際にできました原子炉と、それから現在外で、その周辺でやっております基礎研究とを完全に有機的に結びつけていくということが、非常にむずかしい問題になります。そこに研究管理と申しますか、一つ研究テーマの選び方その他によって、外の基礎的部門中心となる炉との間に、有機的な、密接な関連性を持たせていくということが非常に大事な問題になります。炉の完成などが少しおくれましたために、基礎研究部門の方での研究が、多少方向を見失うと言うと言い過ぎでありますが、多少しっかりした目標がないような格好になった面もございましたので、この炉ができました機会に、十分にそこに中心を集めて、研究を進めていきたいと思っております。そのほか、新しい炉の開発研究もいろいろございます。半均質炉とか、増殖炉とかございますが、結局その研究を進めますためには、二号炉あるいは三号炉みたいなものを使いまして、材料試験炉とまではいかなくとも、これを用いた、材料のいろいろなものに対する耐久試験その他をやっていかなければ、その炉の開発研究もできないわけであります。その面から見ましても、この炉を動かしていくということが非常に重大なことになります。  それから少し先の問題として、われわれとして望んでおりますのは、使用済み燃料の問題でございます。再処理と申しますとこれは一つの事業になりますが、そこまで考えませんでも、スペント・プユエル使用済み燃料をただ寝かしておくということは非常にもったいない話でありまして、これは今度のアイソトープ会議でもいろいろ出ておりますが、スペント・プユエルからとった非常に強いアイソトープを使ういろいろな部門があります。それからまた、その中には非常に貴重なプルトニウム、これは研究資料として非常に重要なものでありますが、このプルトニウムもそれからとればとれるということもございます。それから、この使用済み燃料のような放射性物質を取り扱っていくいろいろな技術というものは、今後の原子力に欠くことのできない問題でありますので、それで、われわれとしましては、国産号炉使用済み燃料目標といたしまして、それを経済性とかなんとかという問題でなしに、研究的な意味で使用して、プルトニウムをとる、アイソトープをとるという、そういう一連のプロセスの研究をぜひ進めていきたいということを考えておりまして、今年度すでにある程度それにも手がつけられております。ただ、それには相当の経費を必要としますので、どの程度規模でやるかという点でいろいろ問題がありますが、これらの点は、原子力委員会原子力局ともいろいろお話し合いをしておりますし、燃料公社とも非常に密接な関係がございますので、現在のところ、燃料公社とも密接にお話し合いをしながら、共同の研究としてやるように話を進めております。  それから、いろいろこれに伴って現在研究所で問題になっているのは、やはり放射線管理の問題が非常に重要な問題として取り上げられております。これは今までのラジオ・アイソトープの取り扱い、あるいは一号炉の出力で作ったRIあるいは一号炉を取り扱う程度放射能と、今度新しくできたTRR二炉を使う場合とで、放射能のレベルが違って参ります。従って、放射能管理の問題を非常に厳密にやらなければならなくなります。同時に、たとえば今回の炉のオーバーホールのような仕事をしても、今までのように全く放射能のない状態の作業とは違って、ある程度の被爆ということはやむを得ない問題となって参ります。そこで、原研でもそういう場合の予防、補償の問題とかいろいろ出て参りましたが、現在私の考えておりますところでは、いわゆる国際勧告による許容線量というものはあくまで守る、また、それよりできるだけ少なくするよう努力するけれども研究の必要上許容線量までのところは、これは被爆するのはいたし方がないというふうに決心をして、すべてのことをやっていく、従って、許容線量までの問題については、われわれとしては、補償とかなんとかいう対象にはしていないということでやっております。しかし、そういう面と関連していろいろと考えの違う人もありまして、中でいろいろ問題があり、それがまた新聞紙上などに出て、皆様方に御心配をかけているような面もあるかと思いますが、最近出ました例ではアルゴンの放出実験でお騒がせしまししたが、私どもとしては、非常に慎重にやったつもりでありまして、要するに、目的も原子炉事故解析の際の放射性物質のたくさんの問題を、今まで単なる計算式によってやっていたのでありますがあの東海村の気象、地形に合わせてそれがどうかということでやったのでありまして、その意味は非常に重要なものと考えてやった次第でございます。それが、外に出る放射能も一般人に許された放射線量の百分の一以下のところで押えております。それで、私どもとしては、問題はないと考えてやったことなのであります。現在でもそういうふうに考えております。実はあれも、一回で済ましたのでは資料は十分とれません。また次の機会に十分な御了解を得て、さらにああいった種類のものを進めなければ意味がないと考えております。  大体そういうことでございまして、原研のいろいろな意味の業績が、十分に外部に現われるような意味で上げられないことは非常に残念でございますが、今まででも基礎部面相当研究成果を上げております。これはお手元にお配りしたかと思いますが、三十五年度の年報に、三十五年度の間に行なわれた研究発表の表などがございますが、発表の数にすれば、数百件は方々の学会に発表されております。しかし、残念ながらこの炉が動きませんでしたために、原子炉固有の問題について、それから炉に直結した問題についての研究は、まだあまり成果を上げておりません。しかし、これはそう簡単に上げられるものではありませんので、今後この二号炉が動き始め、さらに三号炉も動き出す、続いてほかのものも動き出す機会に、ますますその方に力を入れていきたいと考えております。  大体以上のようなものでございます。
  6. 前田正男

    前田委員長 次に、高橋幸三郎参考人よりお願いいたします。高橋参考人
  7. 高橋幸三郎

    高橋参考人 原子燃料公社現況について御説明申し上げます。  公社は、ことしの八月ちょうど満五年を経過いたしました。その間、主として国内の探鉱、それから技術的な金属ウランの製造方法について主として力を入れてやって参りました。その結果、探鉱方面は、最初予想された以上に結果がよろしゅうございます。北海道を除きます国内で、今日まで発見されておるウランの露頭といいますか、存在の位置が約百カ所くらい出ております。そのうち、現実に今大規模開発を行なっておりまするのは、御承知通り、人形峠とそれから東郷両鉱山でございます。  人形峠というのは岡山県側にありますが、東郷鉱山は鳥取県側になっておりまして、鳥取県側の方はやや時間的にはおくれております。しかし、最近になって非常に有望な、露頭が発見され、仕事が非常に活発になって参りました。今日まで探鉱に約十四億ぐらいの金を投じております。そうして、主として大半は人形峠、東郷両鉱山でありますが、最初のころは、やはり外国におけるような鉱脈型鉱床もかなりつついてみましたが、どうも思わしくなくて、これは失敗に終わりましたが、最近は、その苦い経験から堆積型鉱床に全力を注いでおりまして、その費用の大半はその方面に投じられております。  その結果として、私ともの仕事の結果の一番重要な問題ですが、埋蔵鉱量として今日までの調査の結果をことしの五月現在でやりましたが、約二百四十万トンをこしております。それからその品位は万分の七一、これは人形峠と東郷鉱山と両鉱山を合わせた数字でございますが、そのうち、何といっても人形峠の方が多いのでございます。そのうちで、百五十万トンは人形峠の方の埋蔵量でありまして、しかし、品位はどうもあまりよくない、万分の六二という数字が今一応出ております。東郷鉱山の方は新しいが、鉱量切にはまだ未開発部分が多いものですから、それほどまだ計上されませんけれれども、約九十万トンぐらいの鉱量が見られておるのでありますが、品位は人形峠よりもはるかにいいのです。万分の八というふうな数字を示しておりりますので、それを平均したものが、先ほど申した万分の七一、こういう数字になります。  しかし、こういう鉱量は、御承知通り三つの種類に分けられるのでありまして、予想鉱量と、それから推定鉱量と、それから確定鉱量と、こう三つある。これはわれわれ事業をやる場合の一つの定義のようになっておりまするが、確定鉱量というのは、要するに、企業の対象になる、すぐそれを目当てに仕事ができるという鉱石ですからこれは間違いのないものと一応見ていい数字でございまして、今のところ、約五十三万七千トンというふうな数字になっております。それは主として人形峠の鉱石であります。また、東郷鉱山の方は開発がおくれておりますので、まだそこまでいっておりません。従って、品位は万分の八程度のものであります。その次にやや確定に近くなってきた推定鉱量というのがございます。それが約百万トンあります。これは品位も万分の六八というふうな程度でありまするが、これはこれからの採鉱がどんどん進んでおりますから、毎月ふえつつあるわけです。これが確定鉱量にどんどん進んで参るわけであります。その他の部分は、今、予想鉱量というもので、これはボーリングに当たった、いいカウントが出たというときに、その予想を一応鉱量に換算したものがこの予想鉱量で、これが約八十二万トン、合計二百四十万トン、こういうふうになっております。  そこで、これをどういうふうに開発するかという問題が、今後のわれわれに課せられた大きな課題になって参りますが、何分にも、平均して品位は万分の七になりますから、以前の万分の六よりは幾らかよくなっておりますけれども、もちろんその中には非常に品位のいい千分台のものもございます。特に東郷鉱山になりますと、千分の二とかあるいは二五とか、非常に優秀な鉱石もございます。大体外国のウラン鉱の品位というものは、千分の一以上が普通のペイ・リミットとして取り上げられておるようでございまして、われわれの現在までのところは、どうも世界のそういう水準よりは少し落ちておるわけでございます。しかし、条件が外国とまた違いますので、これをどういうふうに経済的に処理していくかということが、今後のわれわれに課せられた問題点でございます。  大体鉱山関係はそういう状態でございまするが、一方、東海村の製錬所の方は、先ほど申しましたように、優良なウラン金属、つまり、アクターグレイドといいますか、原子炉に入れられるようないいウランを作る、そういう技術の面で今日まで非常に努力して参ったのでありますが、幸いにしてこれは非常に順調に参りまして、一昨々年ですかから、金属が出て参りました。今日まで約二十四トンくらいの金属が出ております。そのうち、国産号炉に約四万トンくらいの金属を提供しております。その他国内のいろいろ試験用の原料にわれわれが提供しております。しかし、これは、国産のウランで全部まかなっておるわけではありませんで大半海外から輸入したウラン精鉱イエロー・ケーキによってできたものでありますから、技術的には成功しておるけれども、しかし、本格的な国産ウラン的な国産ウランということには参りませんが、人形峠の鉱石から作ったウラン金属も、かなり、一トン近くまで出ておりまして、その品質も非常によろしい。海外よりもさらに優秀だということが、われわれ研究分析の結果出ております。今日の国産号炉にそれが採用されることになっておりますから、その結果をわれわれとしては非常に楽しみにしております。東海村の製錬所は、そういうわけで、基礎研究はもちろん、基礎研究という名前は当たらないかもしれませんけれども、つまりわれわれとしては、ほんとうの仕事をやるためのいろいろな実験が必要でございます。そういう面で、たとえばイオン交換等の研究とか、あるいは電解還元の操作とか、あるいは還元炉の操作とか、そういうのが本格的に十分使えるような技術をわれわれとしてはやはりあれしなければならぬので、今日までそういう面にわれわれの力を相当注いでおります。  一方、できたウランがはたしていいか悪いかの判定を下すための技術、これは分析技術はもちろんですが、化学的よりも、さらに物理的な問題点がたくさんございまして、それが先ほど石川委員のおっしゃったようなウランの検定の問題に関連して参ります。検定が将来非常に日本として重要な部門になりますことは当然でございますが、そのわれわれの技術、基礎実験を今盛んにやっておるところでございます。この方面も、幸い設備の面がかなり順調に整頓できましたので、りっぱなものが――りっぱなといっても、研究に必要な程度のもののができましたから、現在も相当進んでおりますが、三十七年度にはさらに一そう強化できると思っております。  最後に、金属ウランの価格の経済性の問題ですが、これがかなり今日までいろいろ混迷を――混迷といいますか外国の相場の変動が非常に激しいので実はその点においてわれわれはどうあるべきか、われわれのウラン鉱の開発を、どういう点に目標を置くかという問題になっております。今日まで海外から約九回イエロー・ケーキを輸入しました。最初に南アから輸入しました。その後カナダから五回、アメリカから三回、最近まで約九回輸入しておりますが、その輸入の価格が非常に変動が激しい。たとえて言えば、南アか、輸入した場合は、イエロー・ケーキ一キロ当たりの値段が、円で言いますと約八千四十三円になります。ところが最近アメリカから輸入した価格は三千二百五十二円、お話にならない。三分の一とまではいきませんけれども、ずいぶえ変動の激しい価格が今日われわれの現実に買った値段になっておりますので、一体これはどういうことをいろいろ研究しております。要するに、八千四十三円という値段は、アメリカの定価格といわれる八ドル・パーポンドという値段でできました価格であって現在の、今われわれが買うのはそれよりもはるかに安いということは要するに金属ウランは非常にオーバー・プロダクションである、つまり余っておるのだから乱売されておる。ですから少量を買うならば、そういう安いものが幾らでも入るというような現状であります。しかし、はたしてこれがいつまで続くのか、将来そういうものがあるのかないのか一向われわれには予想がつきませえ。しかしアメリカは、せえだって南米アルゼンチンで会議のあったときもはっきり言っておりました。八ドルの線は経済的なペイ・リミットだ、それ以下になるとウラン鉱の開発は困難だだからアメリカとしてはあくまでも八ドルの線を持っていかなければならぬと思って、国内の生産者はもちろん、海外から買う場合でも大体八ドルの線はくずさない、こういうことを言ってはおりましたから、われわれも一応それを頭に入れて、将来大量に国際商品として輸出する場合には八ドル・パーポンドの線、つまり、日本で言えば一キロ八千何がしという線が大体ノーマルなラインに落ちつくのじゃないかというふうに考えております。そういう見方から、今後人形峠の鉱石を開発するにはどういう技術をもって、どういう資本を投下して、そして、どれだけの鉱量、キヤパンティのものを採鉱できるかというようなことを具体的にこれら研究していかなければならぬ問題だと思います。三十七年度予算にはその準備として幾らか項目をあげております。採鉱費が生産費の大半を占めておりますがこれは半分が採鉱費ですから、採鉱技術研究が非常に重要だと思っております。先ほど石川委員の、おっしゃったように、水力採鉱という問題が、今ソ連を中心として――日本でも最近調査団が行っていろいろ研究しておるようですが、非常に有望だといわれております。われわれも三十七年度にはそういう資金を設けてやりたいと思っております。それと関連しまして、いろいろと問題が発展すると思いますから、どうか一つよろしくお願いいたします。     ―――――――――――――
  8. 前田正男

    前田委員長 それではこれより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。齋藤憲三君。
  9. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 原子力問題もだいぶ実質的に発展を見まして、専門的な分野が多くなったために、そういう点に関しましてしろうとの私は御質問申し上げる段階にないと思うのでありますが、いずれ、きょうお話願いました点に関しましては、会議録が手元に届きまして、これを一読いたしましてから了解に苦しむ点がございましたら、また御質問申し上げたい、そう思います。  ただ、この際、きょうの機会をとらえまして伺っておきたいことは、原子力問題が日本に発生いたしましてからもう五カ年以上を経過いたしておるわけでございますが、今、原子力委員会ではどこに焦点を一番大きくしぼって原子力日本におけるレベルを上げようとしておられるか。たとえて申しますれば、原子力発電、そういう点に関しましてはどういうお考えを持ってお進めになっておられるか。もっとこれを砕いて申しますと、現実の問題はコールダーホール十六万キロワット・アワーの建設中である、さらにアメリカからPW、BWを買わなければならない、それはそれでよろしい前期十カ年はそういう態勢でもって進んでいく、しかし、後期十カ年においては、この原子力開発長期計画にもある通り、現在の考え方ではいけないのではないのではないか、どういうところへ焦点を合わせて日本日本独自のエネルギー対策としての原子力発電を考えているか。そういう点におきましては、ただいま原子力研究所において半均質炉研究をやっているとか、あるいは核融合反応を考えているとかそういう点から推し進めていって、たとえて申しますと、日本の総合エネルギー対策という観点からいきますと、今日の石油あるいはその他の大きなエネルギー源というものと原子力発電というものとを比較して、最後に、一体原子力発電というものが、総合エネルギーの問題から割り出していっても一番有利に、安く使えるところの態勢というものは、どういう点に焦点を合わせていけばその実現を期せられるとか、何か、そういうふうな大局に立った日本原子力平和利用特に総合エネルギー対策の一環から、原子力委員会の中には論議が戦わされて、そして原子力研究所及び原子燃料公社、放射線医学総合研究所等に、そういう焦点に向かっての総合的な研究の、何といいますか、要請が原子力委員会からなされなければならない、私はしろうとながらそう考えるわけですが、そういう点に対して、何か現在御構想がおありであり、そして原子力委員会でそういう点について論議がかわされて、何か結論めいたものがございましたならば、この際伺っておきたいと思います。
  10. 石川一郎

    石川説明員 別に結論というようなものは出ておりませんが、実は今有沢先生が世界じゅうの石油政策を見に行っていらっしゃいますから、そういうものの御報告でもあれば、またそれについて考えてみたいと思うのでありますが、ただ、原子力がどんどん進みますものですから、どのタイプの炉に将来最も重きを置くかということが、もう少したたなければわからないのじゃないかと思います。世界的にいいましても、まずこの十年間は開発時代、あとの十年間がこれを実行に移す、実際に物を使う段階だ、こういうふうな観察をしておるようでございます。われわれも、そういうふうな考えで、できるだけのデータを集める。それには、先ほど申し上げた通り、国際的にいろいろなことを調べて、データが得られるようにして、そうしてきめていきたい、こう私は考えておるわけであります。  なおまた、原子力船の問題について、たとえばどういうものがいいかというようなことを、この間もちょっと試算をやったのですが、タンカーは、今のような石油の安さではとても引き合わない、もう一ぺん検討しますけれども、そういう報告が出ております。しかし、また、石油の方を使ってどういうふうに発電機が進むかというようなこともまだわかりません。どんどん進んでおります。やはりこれが一番いいというものは、そのときにならなければわからないのでありまして、それにおくれないようにやっていかなければならない。しかも、先ほど申し上げた通り日本でいろいろ研究費を使っていくわけにも参りませんものですから、できるだけ外国の知識を導入して、早く効果があるようにやって参りたい、こう思って、原子力の発電に対しましてはそういう考え方でおります。
  11. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私の申し上げておるのは、たとえて申しますと、今エネルギーの全分野から原子力発電というものを検討して参りますと、核分裂の世界においては、もう今のような石油あるいは天然ガス等のエネルギーに匹敵してはとうてい安くいかないのだという見込みがついておる。しかしながら核融合反応の世界にいくと、これはまた別個である。これはいかに石油が安いといっても、今の石油の値段の半分に下がっても、核融合反応の世界においては、エネルギー対策として原子力発電というものは十分に成り立つ、こういうような大局から見た根本の焦点をつかんで、それに即応するような研究体制を論議され、お立てになったことがありますか。たとえばウラニウム二三五というものを対象にして、いろいろ世界の情勢から世界の研究体制を突っ込んでいくと、原子力発電のキロワット・アワーのコストというものは大体算定できる。それから見ていくと、どうも石油の方が安い。しかし、それは現在の原子刀発電の形で考えられる面であって、もっと進んで核融合反応の世界にいけば、格段に原子力エネルギーの方が安くなる。だから日本は、長期対策としてはあくまでも核融合反応に全力を傾注していく。もし核分裂に焦点を合わせれば、日本では濃縮ウランはとてもできないんだから、これはアメリカに頼んで、世界の今の段階に追随して初期の十年間はやっていく、しかし、後期の十年間は、あくまでも日本の力でもって核融合反応の世界を切り開いて、ここでほんとうに日本が、いかなる世界にも劣らざるところの総合エネルギー対策を確立していく、そこに原子力の平和利用の本髄があるのだというふうな――これは私の大局論ですよ、あなたの大局論じゃないかもしれないけれども、そういう意味の、大局に立った日本の将来に対する原子力発電の問題等を原子力委員会で御評議なさいまして、何かの結論をつかんでおられるのですかという質問であります。
  12. 石川一郎

    石川説明員 つかんでおりません。というのは、核融合反応の問題でございますが、この前の前の電力会議のときには、二十年後にはあれがものになるだろうというような議論も出たことがございましたが、一昨年あたりの話によりますと、とても今世紀中にはむずかしいんじゃないかというふうなお話でありまして、この方の御専門家がこちらにいらっしゃいますので、その方からお聞き願うといいですが、われわれは、今のところでは、核融合の方は、これをものにするには今世紀くらいはかかるんじゃないかというふうに考えております。だから、これを目当てにして十年先から二十年までの間にやるということは、困難じゃないかと思います。
  13. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 それでは専門家の方にお伺いしますが、今のような、お話で、とにかく核融合反応というようなものは遠い将来の問題である。現実にはどうしても核分裂の世界を追求していかなければならないということになりますと、今の日本研究体制というものは、その点においては欧米の――欧米のと言っては語弊があるかもしれませんが、アメリカその他の先進国から比較するとずっとおくれておって、幾ら追っかけていっても向こう研究のトレースを、やるような状態になって、新しい場面を切り開くというような問題が、そうざらにないのじゃないか。あれば、しろうとでよくわかりませんから間違っておるかもしれませんが、半均質炉というものが、日本独自の構想によって生まれてくるということを聞いておるわけですが、半均質炉日本の力ですばやく完成すれば、これによって世界の核融合反応、核分裂の原子力発電の世界には追っついていけるんだというような研究目標がおありになるならば、われわれは、わからぬなりにそういう点に予算の重点的な突っ込み方をして、政府に要求して必要な予算をとって半均質炉を早く完成する。あとの問題は、みな世界の先進国のトレースをやって、あそこでこういうことをやっておるからこのまねでやってみる、大体そういう形であろうと私は見ているのですが、そのような中から半均質炉というようなものが日本独自の構想によって生まれて、これが完成すれば非常に世界的に一歩を先んじたような形になるんだというのだったら、それに焦点を合わして、重点的な研究目標として早く完成させるということも考えられると私は思う。うそかほんとうか知らないけれども、半均質炉ができれば、丸の内に丸ビルのような発電所を一つ作っても安全じゃないかという。これはうそかほんとうか知らないが、われわれしろうとから見れば、丸の内に丸ビルと同じような安全な原子力発電所ができれば万々歳ですから、そういうものであるかどうか知りませんが、とにかく半均質炉というものが、今東海村の原子力研究所一つの大きな研究テーマになって、毎年わずかながら予算が盛られておるようであります。そういうものに対して重点的に予算をつけて研究を非常に盛んにやれば、早期にこれが完成を見て、日本は独自の立場において世界のレベルに追いつく、こういうことであったならば、私はそれに重点を置いた方がいいんじゃないかと考えるのですが、その点について一つ
  14. 菊池正士

    菊池参考人 私個人の考え方でございますけれども原子力と、いうものは、何も特別なものではなくて、日本の科学技術の政策の一環として考えるわけであります。原子力というのは何も特別なものであるとは思っておりません。それでは、ほかの科学技術の面で外国との比較ではどうなっておるかということでありますが、私の見ました感じでは、少なくとも、すべての点で日本が先んじているというものはほとんどない。何でもがほとんど外国技術導入でやっている。ただ、日本は、ある程度の基盤を持っておりますから、それをすみやかに消化して国産化するということは十分考えられる。しかし、日本がそれ自体をほんとうに内から推し進めていく力というものは、外国に比べたら、原子力に限らず、あらゆる面で非常に劣っておる。これは私は断言できると思います。原子力の場面でどうすればよいか。原子力の場面だけが、半均質の面で特別なことはできないと私は思う。原子力の場面で今われわれがなしていくべきことは、日本原子力技術の基盤をできるだけ高めていくことである。今、少なくともその面では、日本にはその基盤はほとんどございません。その基盤をしっかり作るということが、私は原子力研究の一番の目標であろうと思います。従って、今急にある種類のものを短期間に――半均質の議論も今出ましたが、半均質を完成しますためには、これから材料試験炉を使いこなすとか、あるいはCP5にループを作ってやるとか、まだまだわれわれも十分こなしていない技術がある、ですから、今原子力研究所としてやるべきことは、原子力工業といいますか、原子力に関する基盤をしっかり作ることである。それがこれから二十年、三十年先の日本の科学技術の発展に一番役に立つのではないか。十年先にどうするこうするというのではなくて、あわてて事をするということは、むしろ私ははなはだ短見だと思います。ですから、今原子力発電の面で申されましたが、原子力発電ということ自体、先行きまだ相当問題があります。今、この次の最初の十年、その次の十年後に何か特別に新しい発電の方式というものが出てくるとは思っておりませんで、現在相当程度進んでいるものが、やっとその時期にある程度実用になるかどうかという段階だろうと思っております。しかし、とにかく原子力といいますものは、今まで使われていた科学的、技術的な手段からみますとけたはずれな手段が発生したのでありますから、この手段を十分に使いこなすということが、今のところ何よりも大事だと思っております。そういう目で一つこの原子力を育てていただきたい、こういうふうに私は考えております。  核融合の問題になりますと、これもまた一つの可能性として、一つの芽として、われわれにも行く先非常に有望なものとして、何かその先にあるものとして考えられるのです。しかし、これを開発いたすにしましても、とにかく一億度というような温度を瞬間的にせよ作り出すということ、それだけの問題ではありませんが、それに関連したあらゆる技術が進歩してきて、結局そこへ行き得るのだろうと思います。ですから、今原子力と申しておりますが、原子力だけの問題ではなしに、日本のあらゆる面の技術とか、そうした特殊な温度に対する材料とか、いろいろなものが発達して核融合の問題も完成するのではないか。ただ原子力研究所だけでやっているような技術、あるいは原子力に限られた技術だけで決して完成されるものではない。ですから原子力というものは、どこまでも日本全般の技術の一環として考えられる、大体そんなふうに考えております。
  15. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 それは、原子力問題も日本の科学技術の一環であり、世界の科学技術の中の一つの問題であるということはもちろんわかります。それから、日本の科学技術全般が世界の科学技術からおくれておるので、日本状態というものを何とかしてレベル・アップをしたいと思うのが、われわれが特別委員会を作っておるゆえんなんです。ですから、日本の科学技術は世界からおくれているのだが、それはこのままでいいのだ、ということであったら、原子力研究所だってあるいは要らないかもしれない。みんな外国から技術を導入してきてやればいいかもしれません。私はそうじゃない。日本は全部が全部おくれておるのではないのだから、原子力研究所の中で、何か世界の水準に近づき得られるアイデアがもし生まれておるならば、これに総力を結集して、その実現をはかってこそ、初めて原子力における日本の低レベルをハイ・レベルに上げることができるのではないか。そういうのがあるのかないのか、と聞いておるのです。それを、全部ないのだ、みなアメリカや他国のまねをしておるのだ、それが日本の現状ではあたりまえだというようなことで、原子力研究所に大きな期待をかけられないということは、私ははなはだ不満なんです。私の聞いておるのはそうじゃないんだ。原子力問題にわれわれが手を染め、研究所ができてから五年たつ。その間、お互いに一生懸命になって予算の措置をやり、原子力研究の一日も強力に進まんことをこいねがって今日にきたのだ。そういう建前から考えてみて、核分裂という分野をのぞくと、これは石油と対比してどう考えられるか。それから、核融合の反応の世界をどう考えられるか。現実の問題において先進国に劣っておるけれども、半均質炉というような構想が生まれておる。この構想は、世界に比較してもちっとも劣らない構想だということを聞いておるのだが、もしそういうものがあったならば、これの重点的な研究をやって、そして早く日本の歩調を世界の水準に近づけたらどうかと思うのだが、それは一体どうなんだ。そのために、一体どういう研究体制が要るのかということを聞いておるのに、日本は科学技術的に世界に劣っているのだから、そんなことを考えたって、せいたってだめなんだ。それは研究所理事長として、国会の特別委員会に来ての答弁にはならぬと私は思う。もしそういうことを考えておられるのなら、われわれの方でも、それはほんとうに考え方を直さなければならぬと思っておるのですが、もう一ぺん御答弁願いたい。
  16. 菊池正士

    菊池参考人 私の今申し上げましたことに多少誤解があるかもしれませんが、それではこういうようにお答えすればいいかと思います。現在原研の中にあります、たとえば今の半均質でございますが、今、日本原子力を進めていくというような見方からいたしましても、あるいはそういう点からいたしましても、何かそういう一つのものだけに目標を置いて、そこに非常に力を入れさえすれば、何かが出てくるという状態ではないと思います。やはり全体のレベル・アップをどうしても必要とする。半均質なら半均質を推し進めるためにも、そのことだけに幾ら力を入れてもだめなんで、かなりの基盤というものを作っていかなければ、それもできないというふうに私は考えております。私はそういう考え方でもし今の日本原子力研究をやることが悪いなら、いつでもやめます。私はそう信じております。
  17. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私の言うのは、半均質炉という問題が、日本人のアイデアとして生まれてきた。そういうアイデアをどんどん生かしていくように取り計らっていくことこそが、国家の要請にかなうのではないか。やり方は幾らもあると思う。たとえば全部のレベル・アップをやっていって、そして半均質炉もその中に含されるのだということになりますと、われわれとしては、予算措置においても、半均質炉というものは非常に重大な研究テーマになってきたのだから、これに予算をつけてくれ、予算がたくさんあったら、半均質炉に要する材料であってもその他のいろいろな問題であっても、特に半均質炉を作るために必要な研究はやれる態勢になるだろうと私は思う。だから、一つのアイデアを生かすためには――一つのアイデアを生かす実際の方法というものは、研究室においてもたくさんあると思う。だから、そういうことをやった方が、もし半均質炉というものが世界のレベルに近づくアイデアであるならば、その半均質炉を一日も早く実物として使えるような態勢にまで研究を進めるために、予算措置を講じた方がいいのじゃないか、私はこう思うのだけれども、その半均質炉というものは、一体、世間でいうておるように、世界の水準に比較していいアイデアであるか、いいアイデアでないか、それをまず第一に聞いておるのですよもし世界のレベルに近づくところのいいアイデアであるならば、そういういいアイデアを完成するために予算を必要なだけ要求して、これをなるべく早く完成するような研究体制に持っていかれたらどうかということを私は言うておる。
  18. 菊池正士

    菊池参考人 半均質の今のお話については、そういうふうに考えていただけたら大へんありがたいと思います。ただ、半均質の進め方については、原研の中でもいろいろと研究いたしております。半均質のアイデアと申しますのは燃料のアイデアなんでありまして、この燃料のアイデアは、独立して日本でも考えましたが、各国でも今ほどんど同じような考え方に従ってやっております。今いろいろ中のこまかい問題について、外国ではこういっているし、日本ではこういってみたらどうだろうかということを考えております。今申し上げましたようなレベル・アップの一つ方法として、今言われましたようなそういうものを一つ取り出してきて育てるということを目標に、全体をレベル・アップするという方向も、私はもちろんけっこうであると思います。われわれとしても、ある程度そういう方向をやりつつあるのでございますけれども、しかし、それにいたしましても、私の申し上げたかったのは、それに付随するというもので考えてみますと、実に広範囲のものになって参ります。必ずしもそういうものに付随するしない――むしろ付随するということだけをやろうとしますと、かえって落ちが出るような部面もございます。そういう方法もぜひとりたいと思いますけれども、それだけでなしに、相当広い意味での基盤を持ち上げるということが、非常に大事だということを申し上げておるわけであります。
  19. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 その問題はそれでおきますが、私の考え方からすれば、半均質炉というものは非常にいいアイデアであって、これが実現すると日本原子力発電に一歩前進を見る、世界の水準に近づくのだ。そのアイデアを完成するには、一切の材料日本で作らなくても、いいものがあったら外国から買ってきてもよろしいし、それはいろいろの手があると思う。ただ、私らの考えておることは、日本は、いつでも、世界各国の後塵を拝してこれから永久にいかなければならないという態勢では、やはり大局的に見て、日本の繁栄というものを確実につかむことはできないのじゃないか。新時代を結成し、人類の一切を支配せんとする原子力の世界において、何とか世界におくれないような問題をつかんで、それに重点的な研究体制を確立して、早く世界に劣らないような態勢を作ってもらいたいというのが、私のみならず、国民全部の念願であります。国民の血税を研究費にささげ込んでおるところの本道だと私は考える。ですから、そういう意味で私は申し上げておるのであって、もしそういう道が、今まで五カ年間の研究所建設以来の研究の結果から生まれておると言われるなら、われわれはまた、政府に対する予算の要求というものも違った角度から行なえるのじゃないか。何にもそういう目標がないということであったら、それは予算を要求しようもないのだ、私はそう思って御質問申し上げたわけであります。  人材養成のことが石川先生のお話の中にございましたが、私は最初から、原子力学校を作った方がいいという持論であります。これはいろいろな大学に原子力に関する講座を付置いたしましても、原子力へ行って飯を食えると考えておる若い青年はごく少ない。自分の子供を説得してみてもそうです。原子力なんといったって、おれがおやじさんくらいになって初めて飯が食える、それよりも、現在の問題としておれたちが興味を持っておるところのたくさんの問題があるから、おれはそっちの方に行くという考え方が、今の若い人たちを支配しておるように私は考えるわけです。そこで、十年、二十年先を見越しての原子力に関する人材の養成ということになりますと、やはり原子力研究所の近くに学校でも作って――学校がいいか悪いかよくわかりませんが、俊優にして家貧しく、上の学校に行けないような中学校の卒業生を国費をもって養成していくとか、あるいはいろいろな方法をもって原子力勉強の施設に収容して、ここに将来に備えるところの人材の養成をはかるということも考えていかなければならない問題じゃないか。こういう点について、原子力委員会で何らかお話し合いがあったかどうか。  もう一点は、私この間、東南アジア諸国を回って参りました。ところが、日本原子力体制というものは、欧米間においても相当に高く今踏まれておるにかかわらず、東南アジア、諸国には、原子力平和利用に関しては、日本の力というものは一歩も伸びていないように私は見てきたのです。この際、東南アジア諸国と日本とが、ともに手を携えて将来の原子力世界にお互いの繁栄を企図するという建前から、東南アジア諸国と、原子力平和利用を中心としての懇談会でも、会議でも持とうじゃないかというようなお話し合いをなされたことがあるかどうか、それを一つ伺いたい。
  20. 石川一郎

    石川説明員 実は教育問題というか、訓練問題につきましては、まだ私だけの意見で、ときどき座談的に話しておるだけでありますけれども、たとえば今原子力研修所ということになっております、あれをせめて大学校――大学というのは何か文部省の関係でできないのですが、大学校というものを作った方がいいのではないかという考えを持っております。これは、実は、今は原子力研究所理事の方や研究員がおもに教えていただいておるので、研究をやっておることだけを教えるならばよいが、教えるとなるといろいろなことを教えなければならぬ、それにだいぶ時間をつぶしてお気の毒ではないか。それで、これは私だけの考えでございますが、専門の教授でも置きまして、特別の講座というものは研究所研究者にやっていただく、こういうようなシステムを作ったらいいのじゃないかというふうに考えております。これは今お話がありましたけれども、十年先のことを考えているのじゃなく、もう焦眉の急になっておるのです。ですから、そういうことを、このごろ雑談的に一、二回、実はきのうも委員会で、委員長のお許しも得ないで、私はそういうふうな考えを持っておるのだがということを申し上げたのです。もっとも、これはよく研究してみなければいけないことでございましょうが、そういうことを考えておるので、至急やっていきたいと考えております。  それから、こういう意見も持っております。たとえば、教育訓練部ということになっておるのですが、いろいろ他の部門に対して訓練部でよいか、もう少ししっかりしたものを作らなければいけないのではないか。私もあすこに参りましたけれども、生徒の方も相当いらっしゃいますから、もう少し組織のしっかりしたものでなければいけないのではないかと考えております。教育の方はそういう問題でございます。  それからなお、日本中心となってアジアで会議を開く、これはけっこうなことだと思います。ただ、日本へ来ていただいて、教えることができるような問題は、幾らかこちらが上に立って、進歩しているものがなければならない。二、三日前にも京都でアイソトープ会議がございましたのですが、出席名簿の外国人が六十人、その中で朝鮮の人が十人くらいいましたでしょうか、しかし、だいぶ欠席もありましたので、実際出られたのは四十人くらいでしょう。これは今まで、アイソトープ研修所で、毎年十七、八名ですが、東南アジアの方面あるいはイタリアの方も見えておりましたけれども、そういう方を教育しております。先ほどもちょっと申し上げましたように、私の考えが間違っているか存じませんが、アイソトープの問題につきましては、工業用の利用の普及程度はあまり大きくございませんけれども、農学あるいは厚生方面について、日本相当進歩しておると思いますが、やはりそういう、こっちがひいでたところを持って会議を開いた方がいいのではないか、会議のやり方についてそういうふうに考えております。会議をやる場合には、そこに何か他の目があるというか、たとえばアジア・センターを作るというようなこと、あるいはまた、国産炉でも動きますとか、そういうことも、かねてやったらいいんじゃないかなというふうに考えております。ともかくも、そういうようなことはけっこなことだと思います。ただ、こちらが向こうから教わっていることばかりを教えるのではどうも少し工合が悪いから、何かこちらの方が幾らか自信を持ったものを、主としてやった方がいいんじゃないかなというふうに、やり方につきましては考えております。
  21. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私はある国に参りましたら、自国のウラニユウムあるいはトリウムを――ここではっきりその国の名前を言わない方がいいと思いますが、ある国に頼んで調査をしてもらうつもりであるという話を聞いたのです。これはその国の原子力担当の人から聞いたのです。そこで、私は、そえな遠い国からわざわざ飛行機を飛ばして、そういうものを調査してもらわなくったって、日本だって、十分にウラニユウム、トリウム等の調査をする技術と能力を持っている、だから日本にやらしたらどうですか、こういう話をしましたら、笑っておりましたが、もうすでに、世界の先進国は東南アジア諸国に向かって有形無形の手を差し伸べておる。それを、教えるものがないからというようなしり込みをしている間に、日本原子力ではAAグループに手を差し伸べられなくなってしまう。だから、そういうことでなく、もうAAグループの人たちを日本に呼んで日本はこういうふうにして研究をしているのだから、あなたの方だって利用できるものは利用してくれ、おれの方でも一生懸命になってウラニユウムを調査しているのだ、ちょっと飛行機で、飛べばあなたのところに行けるのだから、あなたのところも日本の力でもって調査をしたらどうかというような原子力外交をやらなければ、原子力委員会に閉じこもって国内でもって上へ下へしておっても、私はちっともありがたくないと思うのです。そういう点から、とにかく一年先に開こうという考え方を持てば、これから衆知を合わせれば幾らでもテーマは出てくると思いますから、そういう計画をなさった方が、私はいいんじゃないかと思います。そういう点について、何かお考え及んだことがございますかという御質問を申し上げたのであります。もし今までなかったら、どうか一つそういうふうに進めていただきたいと思います。  それから、もう一つ原子力発電会社が今コールダーホールを作っておるわけですね。なぜコールダーホール型を選んだかということにつきましては私は今日は言及をいたしませんし、また、御質問も申し上げません。しかしあの原子力発電会社を作りましたところの構想は、あの原子力発電会社で第二基目はアメリカから買うという構想なんですね。ですから、世間はどうか知らぬけれども、私なんかは、早く調査に行ったらよさそうなものだがなと思っているのです。それは今すぐ建てる金がなくても、調査は綿密にやった方がいいわけでありますから、早く調査に行った方がいいのになと思っておるのです。対象となっておりますものは、この本を見ましても、BWかPWか今現にアメリカで動いている原子力発電の方式が取り上げられるのだと私は思うのですが、日本にはコンサルティング・システムというものがない。この間イタリアに参りましたときにはイタリアでは、アメリカやフランスやそういう国のエキスパートを集めてコンサルティング・システムを作って、そうして世界から見積もりをとって、コンサルテイグ・システムで検討を加えてBWにきめた、こういうようなケースをとっているのでありますが、日本は、調査団は出して調査はしてくるだろうと思いますけれども、信頼の置けるコンサルティング・システムというものがない場合に、コールダーホールは別として、BWがいいかPWがいいかなんということは、どういうふうにして決定するお考えを持っておるか。これは原子力委員会で決定されるというなら別ですけれども原子力委員会の下に何か信憑性のあるところのそういうコンサルティング・システムでもお作りになっておやりになる、こういう考えですか。その点を一つ
  22. 石川一郎

    石川説明員 今のコンサルティング・システム、これはやろうと考えております。  それから視察団なら視察団で、いつごろ向こうに出したらいいかという問題ですが、それは私、昨年参りましてそれでまだヤンキーが十一万キロしか動いてなかったのです。今は十四万三千キロですか、もっと出るそうですが、そういう例がございますし、それからまた、御承知のように、ドレスデンがああいうふうな故障を起こしましたので、やはり一年間くらいずっと連続的に動いた成績を見たい、私は自分でやるならばそういう考えを持っておりました。それからインデアン・ポイントが、もうことしそろそろ動き始めるだろう。だから、日本相当の金をかけてやるのですから、できるだけ幾つものケースを徹底的に調べてきめた方がいいだろう、それには、初めは、ことしの冬ぐらいには出せるのじゃないかと思っておったのですが、少しデータが不足じゃないか、こう考えますので、昨年回りましたときには、来年の春かなと言って私は帰って参った。そのことは原電の方にも伝えておきましたし、原電の方も、来年は一つ調べを出そうというふうな気でいらっしゃると今でも思っております。要するにデータがそろいませんと、ああいう不時の故障でも起こったときに、日本は一日休んでも千万円も千五百万円も損するものですから、やはりそういう点も、安全ばかりでなく、連続運転ということについて、ベース・ロードということになりますから考えたらいいだろうということで、来年まず第一の視察団を出して、それから今度はどうするかというようなことをきめる場合には、今のコンサルティング・システムでもいいし、委員会も作ってやろうというような話をしております。これは民間の方できめますものですから、それがいいか悪いかという判断をする場所、委員会を作りまして、そこできめていきたい。その点はちょうどお話の通り考えております。ただ行く時期、今行ってもインデアン・ポイントはまだ動いておりませんし、せっかくあれだけりっぱなものを作って、しかも実を結ばないうちに行っても――ですから、都会に近くてもこれだけのことをやればいいのだということがわかれば、土地を選定するとかなんとかいうことに非常に便利じゃないか、それにはあれがもう少し動いてからの方がいいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  23. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 まだたくさん伺いたいことがあるのですが、原子燃料公社の問題で一、二伺っておきたいと思うのであります。  私、先ほど伺っておったのでありますが、確定鉱量五十六万トン、しかも平均品位が〇・〇〇七一、これで今までおやりになったイエロー・ケーキの採算をおとりになりますと、日本ではどうしても八千四百円から、八千六百円、これは一体原鉱石を何ぼに算定されると八千四百円になるのですか。その計算の基礎の原鉱石、すなわち〇・〇〇七一を一トン何ぼに踏んでおられますか。
  24. 高橋幸三郎

    高橋参考人 確定鉱量というのは、ただいまのところ、先ほども説明しましたが、人形峠の鉱石だけしかまだ見ておりません。推定鉱量が、だんだん採鉱の坑道が進んでいくと次々と確定鉱量に入っていく。それでただいまの品位が低いというのは、人形峠だから悪い。東郷鉱山の方のものがまだ入っていない、推定鉱量が確定鉱量に入っていくと、品位が上がっていくわけです。ですから、その品位の上がったものを対象にすれば有利になるわけですが、この採鉱費をどういうふうにして下げたらいいか。先ほど申し上げましたように、採鉱費は生産費の約半分です。だから、採鉱費を下げると、非常にきき目が結果に、おいていいわけです。製練費は大体同じような鉱石でしたらそう違わないんです。採鉱費だけは条件によって非常に違う。今までやっておった採鉱費は、トン二千二百六十二円に一応見ております。これは従来の採鉱方法です。というのは、たとえば石炭を掘るときの地掘りとか残柱式とか、従来われわれの経験のあるいろいろな採鉱法でやるとそういうことです。ところが、今考えております水力採鉱というのは、ずっと、安いのです。われわれとしては、こういう貧鉱処理には、やはり新しい採鉱法をやった方が、低品位であっても仕上がり原価が安くつくだろう、こういうねらいで、それを早くやっていこうというわけです。ですから、先ほど申し述べたよりな数字はきまったものではありません。これはどんどん、変わりつつある。推定鉱量がどんどん確定鉱量に上がっていく。しかも、品位のいいものがだんだんこれに入ってくるから、そうすると経済的な対象になってくる。だんだん坑内作業が進んでいくと、今までの予想が推定になり、推定が確定になる、そういうふうに時間がかかりますけれども、やはりそれだけの時間をかけなければ、ほんとうに経済的な採鉱にはならないわけです。そういうことを今一生懸命やって、おるわけです。
  25. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 われわれも原子燃料公社を設立する際に、廃棄物の処理をどうするかとか、あるいは日本にウラニウムが存在するか存在しないかということを早急に確かめたいとか、いろいろな目的を持って原子燃料公社というものができ上がったわけなんですが、先ほど、廃棄物処理の問題についても石川先生から言及があったように記憶いたしておりますけれども、それはそれとして、原子燃料公社というものの第一の目的は、何といっても日本にウラニウムあるいはその他の核燃料物質というものが存在するかしないかということを見きわめる、それが一体どのくらいあるか。それで、将来の日本原子力の発電なら発電を動かしていくだけの力が持てるのか持てないのか、そういうことがはっきりしないと、いわゆる日本独自の原子力平和利用態勢というものの確立はできないわけです。そこにわれわれは、われわれのみならず、国民というものは非常な期待をかけて、いつも原子燃料公社発表というものに注目を浴びせておるわけです。従来、新聞記事を見ると、ずいぶん世界的なもおが発見されたとか、埋蔵量は何百万トンだとかあるので、日本にも大したものが出てきたと言ってみんな非常に喜んだ。ところが、実際承ると、確定鉱量が五十六万トン、推定鉱量が百万トン、予定鉱量が八十万トン、それも品位を平均すると〇.〇〇七一というきわめて低い品位です、これを金属ウランに換算していくと、幾らにもならないのですね。私は、そういうことで何も原子燃料公社を責めるのではない。ないものは幾ら探してもないだろうと思うのだけれども、ここまで実態がわかってきたときに、一体どうすればもっと日本における可能性を見きわめることができるか。たとえば探鉱探鉱で、もっと急速度に角度を大きくして全国に進めていく。しかし、一方は採鉱を始めていく。実際あなたのおっしゃるように、採掘坑道を切ってみなければ、地下の鉱物の実在の姿というものは、私はわからぬと思う。幾らボーリングをやってみたって、探鉱坑道を切ってみたって、あの広範な地下に針を一本通してみたくらいの探鉱坑道では実際はわかるものでないから、片方から採掘を始めていく、採掘して、これは国家の金ですから、積んでおいたっていいわけでしょう。そういう日本の地下に埋もれているところの、核燃料物質の実態を、早くつかむというような方法が案出されて、それがもう実行に移されてもいい時代じゃないか。もう五年何ぼで探鉱費約十億円使ったというのですから、何かそういうところに、もう一歩前進する態勢というものができないのですか。
  26. 高橋幸三郎

    高橋参考人 大へん元気のいいお話ですけれども、やはり鉱山の採鉱というものは、時間が相当大きなファクターになるのです。五年前には、日本にはウラン鉱がないというような話だったと思います。これは相当の学者がそういうことを言ったときがある。ところが、現実に今、日本には百万トン・オーバーの鉱量が見つかっているということは、これは何も私、自分の自慢をするわけではないがやはり時間的な要素が非常に大きいと思います。五年やっておりますから、その間にここばかりやったわけではありません。全国に約百カ所ぐらい調査ができ、その幾つかが、また第二の人形峠東郷鉱山になるかもしれません。それにはやはり時間的要素というものが、私は相当重大なファクターになると思います。  それからやはり日本のジオロジストこれには限度があります。今民間にはたくさんおるようですけれども、われわれの自由になるジオロジストというのは限度があります。今日ではいろいろの方面から相当優秀な人も来ておりますが、これとてもやはり限度がありまして、何も金ばかりの問題ではないのです。ただ、しろうとが山回りしたって、なかなか効果が上がりません。やはり相当の経験のある、質のいいジオロジストが先頭に立ってやらなければ効果が上がらない、むしろ人材をむだにする場合が起こるかもしれない。今のところは、何といっても人形峠、東郷鉱山、これだけのものが見つかって、続々拡大しつつあるわけです。最近もいいものが見つかっております。ですけれども、それは新聞紙上に言うのとわれわれの言うのとはだいぶ意味が違う。ボーリングが当たればすぐ何十万トン、何百万トンと言うかもしれないが、われわれはそう言わない、ボーリングのあと、さらに進んで、抗道も堀らなければいかぬし、また、採掘しなければならぬし、いろいろな手段が要るわけですが、それをやるにはやはり人と時間を相当かけなければ、私はほんとうに成果は上がらぬのではないか、こういうふうに思います。
  27. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 地下資源の開発には相当時間をかけて、いろいろな方法によって、物理探鉱をやるとかあるいは探鉱坑道を切るとか、方法はたくさんあります。時間をかけて探せば探すほど、あれば出てくるのは当然だと思います。それに反対しておるわけではないのです。私は、毎年の予算において探鉱費というものを大蔵省が切るときに、今あなたが言われるようなことを言って探鉱費の削減を防御してきた一人なんですから、それはわかっておる。わかっておるけれども、もうこういうふうな数字が出ておるのでありますから、一つ採掘を始めてみる。実際採掘を始めてみると、一体どういう結果になるかということも、これはよくわからないわけです。確定鉱量だといったって、これはほんとうに確定鉱量であるかどうかということも、実際掘ってみなければわからないのが、いわゆる地下構造の現実なんですから、そういうふうに一方は採掘を始めていく、一方はその探鉱を伸ばしていく、そういうふうにしてやらないと、いざというときに間に合わなくなるような態勢に追い込まれはせぬかということを思っておる。なぜかというと、世界のイエロー・ケーキの市価は、八千円とか八千四百円とか、日本のもそのくらいだと言う。私はきのう、ずいぶんその商社に電話をかけて聞いてみた。とにかく四千円とは言えない、三千円台じゃないか、それが世界の現実じゃないか、こう言っている。一方では八千円だと言っているのに、一方では四千円台を切っているのが現在の世界の市価だ。だから僕は、いやそんなことはないだろう、この間アメリカか何かでもって声明書を出して、保証価格を出したじゃないか、六千四百円。それはアメリカの希望的保証価格であって、アメリカの政府は、米を買うようにイエロー・ケーキは買うだろうけれども、実際世界の市価は、あなたの考えているようなものではない、三千円台だと主張する商社もおるわけです。私たちはそういうことを考えておるので、実際日本のウラニウムは、幾ら探してみても数量というものはあまり伸びないし、それから実際採掘してみても、平均品位が一%にも及ばないのだということになる。一体これを製練してみて、イエロー・ケーキの段階においてすでに八千四百円、世界市価の倍以上にもなるということになると、これはやはり原子力平和利用の根本の問題でありますから、相当考え方をいろいろに変えて考えてみる必要もあるんじゃないか、そう私は思うのです。そういう意味で、どうせ時間をかければいいんだ、もう行き先十年も一つ探鉱しようじゃないかというようなことでなく、これはもっと日本の実態を見きわめる速度を早めていかないと、今御承知通り日本では総合エネルギー対策という声がやかましいのです。従って、国内石油、国内の天然ガスをどうするかという問題、あるいは貿易の自由化で押し寄せてくる石油の問題をどうする、石炭の問題をどうする。この中には総合エネルギー対策として原子力も入るのですから、われわれとしても、原子力問題は切り離して、とことこやっておればいいという態勢ではないと思う。やはり総合的に考えて、原子力一つの有力なエネルギーの一環の中で論議さるべきものだと思うのです。そういう意味で私は考えているから、せっかちに思われるところもあるかもしれませんが、いわゆる国家の施策の中の一つでありますから、時間をかければ結論が出るのだと言うけれども、世の中はスピード時代でありまして、飛行機でもジエツト機が飛ぶ時代でありますから、そういう何らかの措置を考えられないかという御質問を申し上げているのに、考えられない、時間をかけるより仕方がないのだということであれば、それはその通りのお答えとして私は承っておきます。
  28. 高橋幸三郎

    高橋参考人 そういう意味におとりになったかもしれませんけれども、私はまだそこまで――現状の報告は今まで申し上げたのですけれども、これから将来の計画はもちろん別になっております。これは一つの採鉱計画です。三十七年度予算に計上していると思いますが、まだ実行できるかできないかわからぬものですから、私はそこまでははっきり申し上げるわけにいかない。採鉱の準備計画一つとして、それに伴う粗製練の計画を三十七年度予算に計上しております。それによると一ぺんに大きなものはできませんから、現実として、一日百トンの処理能力のある工場を作る。従って、それに伴う採鉱を始める。これは大して大きなものではありませんけれども、しかし、段階としてそういうステップを踏むのもやむを得ないだろうと思って、その案を今度の国会に御審議してもらうようにしているようなわけです。ですから、決してあなたの御心配になるように、便々として成り行きにまかして時間がたつのを待っているのではないので、その点は一つ御了承願います。
  29. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 だいぶ時間がたちまして、私だけしゃべっておったのでは、他の先輩諸君に対してあれですからやめますが、要するに、私は、日本原子力平和利用態勢というものを、国会の声として誕生せしめた責任があるわけであります。しかも、ここに参考資料をいただきましたが、これには今までどれだけ予算がついてあったかという予算資料が落ちておりますから、あらためてこれをつけていただきたいと思うのでありますが、おそらく原子力全体の予算というものは、数百億を費やしたろうと思うのです。その金が大きいと言うのではないのです。よくそここまで原子力問題が日本において芽ばえたものだ。私たちは最初に国会において声を上げて、新聞、雑誌、学者連中からばか者扱いをされて、惨たんたる傷を負いながらきたが、しかも日本は、すくすくと原子力平和利用の面において伸びてきている。しかしながら世界の施策に比較いたしますと、まだまだ劣っている。劣っている劣っていると言ううちに、だんだんその格差が伸びてしまって、ついにいかんともしがたいような状態に落ち込んでしまうような場合を考えると、せっかくわれわれが今日まで努力してきたのだから、じだんだを踏んでもあきらめ切れない。何とかしてわれわれが及ぶだけの力をさらに国会においても注ぎ込んで、そして一体となって原子力平和利用の推進を早める、そういう点があったらもう余すところなくやっていきたいということで、この科学技術振興対策特別委員会というものを国会において特に毎回設けて、そして諸先生方に貴重な時間をさいて来ていただき、われわれも一生懸命になってこの問題に取り組んでいるわけなのです。しかも、今日の態勢というものは、私から申し上げるまでもなく、原子力基本法がきまり、原子力委員会ができ、原子力研究所ができ、原子力燃料公社ができ、そして放射線医学研究所ができ理化学研究所ができた。いわゆる国会の声を受け継いで、原子力平和利用の態勢を確立しようとして生まれてきた機関は、これが中心なんですよ。その中心考え方と国会考え方というものは、常に相マッチして、水も漏らさないような態勢でいかなければ、私は大きな発展はできないのではないかと思う。私は不幸にして落選をして、二カ年半この議席におらなかったのですが、その間も常に注意をしていると、えてして国会原子力に関する諸機関は意思の疎通を欠き、ばらばらになって、交通が途絶するような感がずいぶんあったわけです。それは事実そうだったろうと思う。どっちに罪があるのか、私は知りません。しかし、私が今御質問申し上げた考え方の一端は、もっと緊密な連携のもとに、常に原子力平和利用というものをお互いの力で推進していこう、こういうことを今回からもっと強くはかっていきたい、そういうことを考えてやっているのであります。私の性格上、気にいらないやつは気にいらないと言いますから、いつもけんか腰になってくるやつだという誤解があるかもしれませんが、たといけんか腰であっても、それは国を愛するところの考え方からそういう言葉が出るのであって、今後ももっと激烈な御質問を申し上げるかもしれませんが、悪く思わないで、大いに、皆さん方も遠慮なく御意見を吐いていただきたい、かようにお願いいたしまして質問を終わります。
  30. 石川一郎

    石川説明員 先ほど来熱心なるお話を伺いまして、まことにありがとう存じます。われわれも、実は今までは、すべて日本では国会と政府、それから民間、みんな一致してやっておって、今は都合よくいっていると称しているわけであります。あなたのごらんになったところでは、多少そういうふうな国会等の連携がうまくいかない点があるかも存じませんが、われわれ決してそう思っておりませんから、この上とも御声援を願いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  31. 前田正男

    前田委員長 次に、松前重義君。
  32. 松前重義

    ○松前委員 今の斎藤委員の質問と御演説は、私も同感です。原子力委員会国会との間は、初めのうちわれわれが非常に熱心に、何とか突破口を開いてやろうと思ってやった。そのあと、だんだん機関ができてくると、どうもその間の関係が少しルーズになりつつある、こういうような感じを私も持っております。同時に、原子力委員会として、もう少し国会を御利用になったらいかがかと思う。最近はもうほとんど御利用にならない。初め原子力予算をとるときなんか、われわれが総理官邸に立てこもって朝九時から晩まで努力して、そうしてわからぬ頭をひねっていいかげんな予算を組んで出し初めて、一握りの予算をとったわけです。その辺から出発して今日に至っております。荒っぽい国会ではあるかもしれません。齋藤さんは口がいいのか悪いのか知りませんが、口の悪い国会であるかもしれないけれども、これを利用してもう少し前進態勢をおとりにならんことを、私も斎藤さんの言葉にあわせて希望いたすわけであります。  そこで、これは概念的な私の感想でありますけれども原子力委員会に二、三の点について質問してみたいと思うのです。エレクトロニック協議会というのがあります。エレクトロニック協議会が、いわゆるエレクトロニックに関する諸問題と取り組んで、その振興をはかっております。これは非常に若いものでありますけれども、このエレクトロニック協議会はエレクトロニック・アジア会議というものを開くことになって、そうしてことし日本でこれを開催することになって、各国がこれに非常な共鳴をもって参集しております。あとからできたこちらの方が、しかも、政府機関でない民間機関のこれが、エレクトロニツクに関するアジア会議をやるというようなことであります。原子力委員会というりっぱな行政機構があり、予算もたんまりとではないでしょうけれども相当予算がとれておる。そういうときに、こちらこそやるべきじゃなかろうかと私は思っております。ただいまの斎藤委員の質問に対しては、私は満腔の賛意を表すると同時に、早急にやるべきものだと思う。とこうが、この問題に対してはある程度の障壁があります。ずっと前、私はネール首相に会って、いろいろ彼の質問に答えたり、こりらが質問したりした。その中にこういうことがあったのです。インドはパキスタンとビルマ、インドネシア、それからエジプト、コロンボ、それだけを集めてアジア原子力会議を開いておった。それで、私はネールさんに文句を言った。なせ日本は、ある程度進んでおるのに――まだ当時は原子力委員会もなければ、何もありません。ただ、学問は多少進んでおる。湯川さんもおれば、いろいろある。そういう国を、なぜあなたは案内しないでほっておくのか、こう聞いたことがあります。そのときにネールさんは横を向いて、妙な顔をしました。そうして私に言うのには、日本はどうもアジア・アフリカの方を向かぬで、アメリカの方へばかりお向きになっておるようだからと、皮肉な言葉を使った。日本は私の方で案内したら参加しますか、こう私に質問した。私も政府当局ではありませんから、それに必ずしも明確にイエスと答えることはできなかった。こういう事態もございまするから、原子力に関する問題のアジア会議の開催は、私は多少の問題があると思う。エレクトロニックの会議のようにはどうも参らぬのではないかとも私は思うのでありますけれども、しかし、齋藤委員の御意見のように、これはやってみなくちゃならぬことだと実は思うのです。この点、先ほど御答弁も承ったようであります。それももっともだけれども、いずれ考えましょうというような話のようでしたが、もう少し明確に、一体ほんとうにおやりになるかどうか。三十七年度予算に計上されるのかどうか、この点から具体的な御答弁を願いたいと思います。
  33. 杠文吉

    ○杠説明員 予算の問題のようでございますから、私がかわってお答え申し上げます。  予算つきましては、IAEAの主催いたしますところの会議経費といたしまして要求いたしておりましたが、IAEAの都合もございまして、それを切りかえまして、アジア会議予算にしてもらうべく目下外務省、大蔵省と交渉中でございます。これは三十七年度予算の要求でございますから、ぜひ獲得したいとは思っておりますが、まずその出し方でございます。予算の出し方を、アジア会議の方に振りかえてもらうように、今両方に運動を遂げつつあります。ほぼ了解してくれるというようなことに相なっておりますけれども、三十七年度予算のことでございますから、これだけのものがついてこうするということは、ただいまの時点においては、ちょっと申し上げられないわけでございます。
  34. 松前重義

    ○松前委員 要求している金額は幾らですか。
  35. 杠文吉

    ○杠説明員 金額についてはオーダーというようなことでお答えいたしたいと思います。と申しますのは、まだ閣議の決定も経ておらない状況でございますから、一千万円台、二千万円弱というふうにお考えいただきたいと思います。
  36. 松前重義

    ○松前委員 IAEAというのは何ですか。
  37. 杠文吉

    ○杠説明員 オーストリアのウイーンに事務局がございます国際原子力機関でございます。日本理事国として参加しております。長官がこの間第五回の総会へ御出席になりまして、そうしてアジアにおけるアイソトープ・トレーニング・センターを日本に置きたいという意思表示をなさってきておるわけであります。
  38. 松前重義

    ○松前委員 しかし、IAEAでは、アジア原子力会議というようには参りませんね。
  39. 杠文吉

    ○杠説明員 IAEAというものは地域会議というものを持っておりますから、アジア地域における会議としてIAEAの了解を得るわけです。
  40. 松前重義

    ○松前委員 それは金額はできるだけ多い方がいいけれども、それだけでも押し通すように、国会でだいぶ論議があったくらいのことで、われわれも応援しますからやって下さい。  それから、IAEAという略語は初めてわかりましたが、日本アイソトープ・トレーニング・センターを置くとか置かぬとかいう話、日本は、そういうアイソトープやその他放射能に関する学問は、進んでおるとお思いであるからそういうことを御提案になったのでしょうが、これは特に原子力委員会に私は申し上げることがございます。ことしの例のザルツブルグで行なわれておるIAEAの研究発表のブランチですが、そこへ日本から出している論文があるか。各国ともそれには争って論文を出した。ほとんど半分政治的な意味で、未開の分野へ先に行って旗を立てる、そして自分の領土にするというふうな意気込みで、各国ともこれらに関心を持って、一生懸命論文を提出して自分の国の実力を誇示しておるそういうような会議に、ことし一つも論文が日本から出ていないのです。一体、日本研究というものはそんなに貧弱でしょうか。あれに出席した人は非常に恥をかいて帰ってきた。そういうことはどういう現象であろうかと思って、私は不思議で仕方がありません。菊池きんのところだって、論文を出そうと思えば幾らでも出せると思う。まだ途中だとおっしゃるけれども、それはいろいろな問題をつかめばたくさんありますよ。私も大学をやっておりますが、そういう論文を出す機会があるというならば、幾らでも出しますよ。われわれのところには何も言うてこない。そして一つも出ていないというのだ。一つだけ表題だけ出ておったそうだが、その人は発表するために来ていない。一応発表のリストには入れたそうだけれども、だれもおらぬものだから、結局流れてしまった。論文の表題だけきておったそうです。だれだか私は知りませんけれども、どういうわけでしょうか、一つ説明を願いたいと思います。
  41. 杠文吉

    ○杠説明員 ただいまのお話は、ザルツブルグにおきまして九月四日から八日まで行なわれました核融合に関するシンポジウムの話ではございいませんでしょうか。
  42. 松前重義

    ○松前委員 そうです。
  43. 杠文吉

    ○杠説明員 そのシンポジウムには、日本からは七つの論文が提出されております。その論文のテーマも一々ここに持っております。七つ提出されておりまして、出席いたしました人は九名でございます。九名のほかに二名追加申込みがございましたけれども、その方たちは途中で行けなくなりましたので、参っておりません。  それから、表題だけの発表があったと申しますのは、たしか電気試験所の山田太三郎さんのことではないかと思いますが、山田さんが論文を出しておられましたけれども、行けなくなりましておやめになっております。実際に出席された方は九名であるということでございまして、また、その際御出席になりました名古屋大学のプラズマ研究所長をしていらっしゃる伏見康治先生は、アメリカを回ってお帰りになっておりまして、まだ今日こちらにお着きになっていないというような状況であります。そのように出席いたしておりましたけれども、当時の会議は、会議室が一つだけでございまして、その会議室ですべての論文の発表をやるというような方式をとったために、自分の専門外のときには、そこに、日本の方で御出席なさった方も御出席なさっていない、あるいは自分の該当するところには一名出てみたり、あるいは五名出席してみたりというような状況であったというのが、私たちの調べておる事実でございますけれども、論文をまずそこへ出しますにあたりましても、関係省庁の方に審査委員をお願いいたしまして、兼重原子力委員が審査長におなりになりまして、一たん内選考をした上で、七つの論文にしぼって提出しているというような状況でございます。
  44. 松前重義

    ○松前委員 私の聞くところによると一つの論文の発表もなかった。出席者は、今おっしゃった通り出席者であったと私は聞いておりますが、これはもう少し事実を私も調べます。しかし私は言いたいのです。方々から論文が出てきたと思うんだが、そういうものの論文の募集、これはどういうようにしてなさったのか。すべての大学その他に一応それらの趣旨を通知して、論文を慫慂されたのかどうなのか、たまたまそれを知っている人間が論文を出したのか、そこのところを一つ伺いたいと思う。
  45. 杠文吉

    ○杠説明員 私の方では、政府機関であります関係上、各省庁、国立研究機関等には直接私の方から推薦の依頼をいたしたのでございます。それからまた、各大学につきましては、私の方から直接というわけには参りませんから文部省を通じて推薦の依頼方をお願いしております。たとえば、ここに御出席なさった万でも、北海道大学あるいは教育大学、東大、山梨大学というような大学関係の方、それから先ほど申しました伏見先生が名古屋大学であります。そういうように入っていらっしゃいます。ですから、あるいは文部省から御通知漏れがあったのではなかろうかと考えますので、なお詳細につきましては、調べまして、後日お答え申し上げたいと思います。
  46. 松前重義

    ○松前委員 予算をとったり、研究所を作ったり、いろいろわれわれも努力をしてきたのでありますが、ああいうふうな国際的な場において、ある程度やはり日本のやっている実力だけは――それなりの実力、それは低いことは菊池さんがおっしゃる通りでありますけれども、とにもかくにも、日本人といえどもそんなに卑下したものではありませんから、それだけのことは当然やるべきものである。そのやるのについては、やはり事務的にこれらがある一点に集約されて、これが国際会議に出ていくというようにしなければならぬと思います。それが漏れがあってはいけない。だから、そういう点において、多少の欠陥があったのではないだろうかと私は実は想像して、質問しておるのですが、その点、科学技術庁のおやりになったことは、文部省に依頼されて、あとは文部省が適当にやったというならば、それは文部省に責任があるかもしれません。しかし、その間の事情は、単に責任の転嫁の問題でなくて、国の権威の問題として非常に重要な問題でありますから、これは一つ調査になって、将来こういうことのないようにしてもらいたい。そしてこれは御報告を願いたいと思います。  それから、原子炉取扱主任技術者検定試験というものがございますね。あの試験委員という方々をこの間御発表になった。発表を見てみますと、日本という国はやはり学閥の国だなと私は思った。全部官立大学ばかり。私立というやつはそんなに劣等なものでしょうか。そういう学閥の中においては、私は学問は伸びないと思うのです。私は新聞紙上で見たので、新聞がうそを書いておるかもしれませんから、このリストをお出し願いたいと思う。しかし、おそらく、あなたの方のものも新聞紙のものも同じだろうと思います。官立ばかりです。原子力研究やその他科学技術研究は、官立の大学でなければやっていないのでしょうか、この点答弁だけ一つ……。
  47. 杠文吉

    ○杠説明員 実は原子力委員にお諮りしないで原子力会議においてきめたのでございますけれども、ただいま御指摘の通りに、官界偏重であるというような結果に相なっておるといたしましたら、全く私の方は申しわけないようなことをしているわけでございまして、決して私立大学にそのような研究がなされていないのであるとか、あるいはそのような権威の方がいらっしゃらないとかいうようなことはないと考えております。私も、ただいま手元にそのリストを持っておりませんので、私立大学が一人もいらっしゃらないかどうかということについては、不注意で今覚えておりませんけれども、もしそのような結果であったとした場合には、まことに申しわけないというふうに考えます。
  48. 松前重義

    ○松前委員 大体それは原子力委員会でおきめになるんでしょう。原子力局じゃないじゃないですか。原子力局ですか。
  49. 杠文吉

    ○杠説明員 やはりこれは法律で規定されておりまして、原子力委員会は行政執行の機関ではございませんので、その行政執行機関として、原子力局が当たったということでございます。
  50. 松前重義

    ○松前委員 原子力委員会は行政執行の場ですよ。そういうふうに作ってある。法律をお読みになったことがありますか。それであなた、原子力の局長ですか。今あなた、局長ですか。そんなことであなた、やれますか。そういうことを聞いて、実にわれわれ心外千万だ。
  51. 杠文吉

    ○杠説明員 原子力委員会は、行政の直接の執行機関の場ではございません。これは原子力委員会法に規定されております。政策を決定されるというようなことはございますが、たとえば、補助金の交付を決定するというようなことは、政策の決定に関連いたしますので、原子力委員会にお諮りするというようなことはございます。しかし、これはお諮りする場合には御了解を得るというような手続をとっておりまして、あくまでもその責任は、科学技術庁長官がとるというようなことに相なっております。
  52. 松前重義

    ○松前委員 その問題はだいぶ理解が違いますね。そうすると、原子力委員会というものは、単なる科学技術庁の諮問機関ですか。
  53. 杠文吉

    ○杠説明員 国家行政組織法上から申しますと、諮問機関ということに相なっております。しかしながら、国家行政組織法の解釈につきましてやはりいろいろな解釈がございまして、しからば諮問機関について委員会というような名称を冠しているものがあるかというと、御存じの通りに、すべて審議会であるとかその他の類似の名称をつけております。それからまた、政策を決定するというようなことが諮問機関にあり得るかというと、そのような規定はございません。従いまして、原子力委員会の成り立ちとかあるいは国家行政組織法の解釈ということに相なりますと、必ずしも諮問機関であると言い切ってしまえないものがあるということでございます。実は個人的なことを申し上げて恐れ入りますが、私行政管理庁の秘書課長をしておりまして、原子力委員会ができるときに、いろいろこちらの原子力の合同委員会とのあれとか、その他行政審議会でお聞きしております。お聞きしておりますが、やはり国家行政組織法というものをもとにして解釈いたしますと、諮問委員会であるといわざるを得ないようになっております。しかし、その解釈といいましょうか、その今までの取扱いと申しましょうか、その面において必ずしも普通一般の諮問機関であると言い切ってしまえないものがあるということでございます。
  54. 松前重義

    ○松前委員 どうもとんでもないところに答弁がいってしまったのですが、石川委員諮問機関でよろしゅうございますか。あなた方、諮問機関の委員ですか。
  55. 石川一郎

    石川説明員 私は、どうも法律のことはよくわかりませんので、そう感じておらなかったのですが、ある程度は政策の決定ができ、それを政府に申して、やっていただくというように考えているのですが……。
  56. 松前重義

    ○松前委員 だいぶ解釈の相違があるのであります。あなたはまだ局長だから、大臣の意見、場合によっては総理の意見も聞かなければなりませんから、これは後日に譲りましょう。今ここでいろいろやっても仕方がありません。  それから、たとえば原子炉設置委員会が設置する審査委員会ですか、というのがございますねあれはどうですか、原子力委員会の下部機関でございますか、どうですか。
  57. 杠文吉

    ○杠説明員 前国会におきまして原子力委員会設置法の改正をお諮りいたしまして、原子力委員会の下部機構という、その下部機構の意味でございますけれども、それは相当独立性を持ったところの下部機構であるというふうに申し上げた方がよいのではないかと思うわけでございます。と申しますのは、従来は原子炉安全審査部会といたしまして、法規上部会ということはどこにも出ておりません。法律上出ておりませんが、取り扱い上部会ということにして、従来の専門委員を一つ組織にして運営しておられた。この場合には、明らかに原子力委員会の下部機構であるということでございましたが、それではあの大事な安全性を審査するような機関としてはよろしくないじゃないか、やはり法規上も何らか性格を明らかにすべきであろうという国会における御議論から、前国会原子力委員会設置法の改正をいたしました。しかしながら、それでは原子力委員会と並立した機関であるかと申しますと、やはり原子力委員長の指示を受けてということに相なっておりますので、その間において、下部機構という言葉がそのままよいかどうかわかりませんが、やはり委員長の下にある機関であるというふうに規定されております。
  58. 松前重義

    ○松前委員 非常にあいまいもこたる姿になってしまっておるようですが、そういうふうに解釈してよいのでありますか、石川委員。
  59. 石川一郎

    石川説明員 どうもわれわれ法律のことはよくわかりませんが、今の専門部会を変えたのは、今局長が話されたふうにわれわれは解釈しております。
  60. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 ちょっと関連して。今の原子炉の設置、運転等に関する規制というところにある問題ですね、これは原子炉取扱資格者の第二十三条から第二十四条までの規定だと思うのですが、第二十四条第二項に「内閣総理大臣は、前条第一項の許可をする場合においては、前項各号に規定する基準の適用について、あらさじめ原子力委員会意見をきき、これを尊重しなければならない。」ですから、当然そういう許可をするときに原子力委員会意見を聞いているわけですね。そしてそれを尊重してその許可をやる、資格を与えるということになっているようです。
  61. 杠文吉

    ○杠説明員 その設置の許可をする場合には、確かにお説の通りでございますが、先ほど松前先生から御質問がありましたのは、原子炉の主任技術者というものを、国家試験をして置くということでございます。その問題の話でございまして、それは科学技術庁長官の権限であるというこうを申し上げたわけであります。
  62. 松前重義

    ○松前委員 今の杠君の御解釈によるならば、どうも非常に権限の分野が交錯して、なかなか複雑な情勢になっておるようです。しかし、これはもう少し大事な問題ですから、その解釈については、原子力委員会としてもうんと考えておいていただかなくてはいかぬ問題であります。将来どうするかということは別問題といたしまして、とにかく今の議論は後日に譲りましょう。何か去年改正したというお話を今聞いたんですが、去年私はちょうど怠慢しておって、ここに出てこなかったものですから知らなかった。こういうわけで、この問題は一つ後日に譲ることにいたしましょう。  そうすると、いろいろな専門部会がございますね、あれは一体どっちの所管でしょうか、責任はどっちにあるのでしょうか。何か中間に浮いておるような存在のように説明しておられるのだけれども
  63. 杠文吉

    ○杠説明員 各種専門部会は、すべて原子力委員会の下部機構でございまして、原子力委員会の責任事項でございます。
  64. 松前重義

    ○松前委員 そういう認可や許可等に関する専門部会、ことに原子炉設置何とか審査会ですか、安全何とか委員会というのが昔あった。今度はどういうふうになっておるか知りませんが、そういうのは、ただいま原子力委員会の下部とも考えられるし、科学技術庁の下部とも考えられるというふうにあなたは説明しておられたのだが、一体どっちがほんとうですか。
  65. 杠文吉

    ○杠説明員 私の説明があるいは誤解を生んでおるかと思いますが、科学技術庁の下部機構ではございません。原子炉安全専門審査会と申しますのは、原子力委員会の下部機構ということを申し上げたのでございます。ただ、下部機構ということにとらわれまして、私がちょっとくどく御説明を申し上げたのでおわかりにくかったかと思いますが、従来は、法の改正をいたしません前までは専門部会、これは法規上は何ら規定がない。この専門部会として取り扱われておりましたのが、専門審査会として原子力委員会設置法の中に格上げされた。これはあくまでも原子力委員長の指示を受けるのでありまして、科学技術庁長官の指示ではございませんので、原子力委員会の下部機構というふうにお答え申し上げたわけであります。
  66. 松前重義

    ○松前委員 それで明白になりました。この安全審査何とか部会と昔は言っておったのだが、昔は私生子であったが、今度は籍に入ったということになりましょう。こういう部会その他の運用について、私は少しばかり意見を申し上げたい。  文部省にはいろいろな審議会があります。学校教育法の中において、大学の設置に関しては大学設置審議会の議を経なくてはならぬということが書いてある。これはそれと大体似たようなものですね。ところが、その大学設置審議会というものは、形は民主的になっておりますけれども、その審議の過程においては、いろいろな要素がこの中に入ってくる。従って、一つのことを審議するときに、必ずしも公平にいかぬ場合が非常にあります。これに対してただいま相当に強い反撃の態勢が各方面に出ておりますが、それと同じように、今日までの経過をたどってみると、原子炉設置等に対しましても、どうもそういう傾向があると私は確信する。これは自分の大学だからあまりいいたくないのですが、原子炉設置はとうとう取りやめましたよ。それは原子力委員会が踏み切らぬからです。今の三木長官だってそうでしょう。先生は踏み切らぬ。それで、あんなちっぽけな、まるでマッチ箱みたいな原子炉でさえもこわがるような原子力委員会では、私は原子力は進まないと思う。これは、杠さんはいなかったら何も責任はない。とにかくそういうわけで、どういうわけか、ああいうのが、そういうような安全部会というようなところですべったのころんだの、あるいは発表した内容のごときは、まるで後世に恥を残すようなものですよ。あんなものは学者の集まった発表ではございませんよ。まるでちんぷんかんぷんで、話にならぬような発表をしておる。そういうふうなことで、ただそこに重点を置いて、そこの審議だけでもって決定される。そうして原子力委員会はのほほんとして、行政指導どころでなくて、ただ下部の万で、言う通りに、左向けといえば左を向き、右向けといえば右を向いておるということである。これでは、私は強力な行政指導なんて、原子力に関する限りではないと思う。この点についてどういうふうにお考えになるか。私は苦い経験を経ておりますから申し上げるのです。もう再び原子炉を作ろうとは思わないけれども、とにかく今後、こういうのが出てくる場合にはどう考えていかれるのか。もっと勇断をもってやらなければならぬと思うから、こう言うのです。
  67. 石川一郎

    石川説明員 実は専門審査会でおやりになったものを直ちにうのみにはしておりません。われわれ技術的なことはわからぬ点がありますから、そういうところはおまかせしておる点もございますが、たとえば経済上の問題とか原子炉を置いてもあとですっと運営できるだろうかどうかとか、あるいは技術者の層の厚さ、これは多少専門審査会の万でも調べますけれども、層の厚さとか、あるいは災害の補償に対する準備をどうしておるかとかいうようなこともわれわれ考えて、ただ原子炉の安全ということに対してはそれから答申を得ますけれども、それ以外の問題もございますので、それはわれわれの方で審議いたしまして、そうしてこれを取り上げてやる、こういうことになっております。
  68. 松前重義

    ○松前委員 建前はそうでしょうが、現実の問題として、これは自分の大学のことだから言いにくいのですけれども、それでは私のところは層が薄かったのですか、明確にして下さい。
  69. 石川一郎

    石川説明員 あなたのところとは別に言ったのです。
  70. 松前重義

    ○松前委員 私のところには、原子炉取扱主任技術者の検定試験に通ったのが教授の中に二人おりますよ。それが取扱責任者の資格があるとかないとか書いてある。そうして全然いないところに許可しておる。そんなことでいいでしょうか。何かその中に、へんちくりんな感情のごときものが入る可能性があるのか。そういうところに、私は、この審査会に対して原子力委員会が上部機関として相当にコントロールされる必要がある、決断される必要がある、こう思うのです。いかがです。
  71. 石川一郎

    石川説明員 どうもその時分のことを詳しくは覚えておりませんが、資格者の基準や何か、きちっと調べてあるはずです。たとえば外国へ行ったとか、その人が資格があるとかないとかいうようなことがあったように私は覚えておるのですが、やはりそういうような、日本の方で資格があるということを認めなければいけないようなことがあったのではなかったかと思います。層の厚さということもいろいろ考えております。そういう適格の方がどっさりおるかどうかという……。
  72. 松前重義

    ○松前委員 あまりそういうことは議論したくありませんけれども、もしそういう御議論で許可しなかったとおっしゃるのならば、もう一ぺん明確に、原子力委員会として責任のある私に対するあれを下さい。そしてそれを通じてやりましょう。変な空気の中にそれをコントロールし得ない原子力委員会では意味をなさぬと私は思う。よろしゅうございますか。
  73. 石川一郎

    石川説明員 ちょっと意味がわからない……。
  74. 松前重義

    ○松前委員 今あなたのおっしゃったようなことを、何ゆえに原子炉の設置を許さなかったかということについて、原子力委員会としての見解を具体的に明確にしていただきたいということです。これは私の大学の場合ですよ。
  75. 石川一郎

    石川説明員 あのとき、多分書面で差し上げたか、口頭で申し上げたか、係の者がしばしばお目にかかったはすでございますが、いろいろ申し上げたと思います。一つの問題は、ともかくも非常な反対があった。炉から何メートルしか離れていないところに人家があったとか何とかいうことで、非常に猛烈な反対があったということも一つの原因で、そういうところでないところに作っていただきたいということを申し上げたかと思います。
  76. 松前重義

    ○松前委員 それは聞きません。
  77. 石川一郎

    石川説明員 いずれにしても、相当の方が連署をもって、あそこへ作ってもらっては困るという陳情がありました。あったことは事実でございます。それがたしか炉から五十メートルくらいしか離れていない、もう少し離れたところへ作っていただきたいということは、申し上げたと思います。
  78. 松前重義

    ○松前委員 私が言わんとするところは、そういう民衆の反対のゆえに許可しなかったとおっしゃるならけっこうです。しかし、中身が悪いから許可しなかったというようなけちをつけて許可しないというのは、中にこれだけのことを充足するなら許可してやろうという条件を、なぜお出しにならないか、私はそう思うのです。それがほんとうに積極的な行政指導だと思う。それを言わぬで、けちをつけることばかりやるようなことではお話にならぬ。現にけちをつけている。これを私は言うのです。だから、私のところは、別に今後お願いしますと言いませんよ。もうやりませんよ。やりませんが、今後ほかの大学から出てきたら、そういうことがあっては困るというのです。それはどこだって初めですから、多少の欠点があることはわかっておる。大体審査する人間が知識がありはせぬ。原子炉を見ないやつが審査している。一ぺんリストをとりてみた。外国原子炉を見たことがあるか、見ない人があるかといったら、そのときは五、六人おった、最近は見てきたかもしれませんが……。そういう人が、原子炉の知識も何もなくて、ただすべったころんだと言うことを聞いて、そして勇敢にも批判をするがごときは、私はもってのほかだと思う。日本という国はまだ未完成ですから、それは民間でそういうことをやろうとするときには、相当に欠陥がありますよ。欠陥があるならば、これだけのことを充足してくれ、それなら許可する、具体的にこれだけ持ってきてくれ、こう言えばいい。たとえば民衆が反対した、反対せぬようにしてくれというのならば、それでもわかります。何かこうすれば許可できるのだという積極的な方向でもって行政を進めてもらいたい、これが私の希望です、あとから来る人たちのために。私のところはもうやりませんよ。あとから来る人には、一つそういう親切な指導をしてもらいたい。欠陥があったら、欠陥がこれだけあるからこれを充足させてくれば許可しますと言って、充足して持ってきたら許可したらいいじゃないか。許可せぬようにばかりするということは、これは原子力の進歩を妨げるものだと私は思う。そういうふうに私はみずから痛切に感じておるから、あとから来る人のために一言申し上げておきます。
  79. 石川一郎

    石川説明員 今のお話のことはごもっともでございます。
  80. 松前重義

    ○松前委員 それからもう一つ、先ほど申し上げましたように、この委員会というものが、なかなかりっぱな人の集まりであるかもしれぬが、いろいろな要素が入ってきて、あるいは先ほど申し上げたように、学閥の巣であるとかいうような傾向も見えるし、あらゆる点において、この問題は重要は問題だと私は思う。そうしてそれらの論議を通じて、あまりにもそれを強く尊重し過ぎる。それにコントロールされることによって行政を施行していかれるときには、これは場合によると行政の方向を誤るときがあると思う。やはりそこは練達の皆さんでありますから、それを適当にかじをとって行政を前進させていく必要があると私は思うのです。その点において、特にこの委員会というようなものの構成については深甚なる注意を払ってもらいたい。ことに原子炉設置何とか委員会か、あの技術のあれがあるとかないとか試験をする、そういうふうな委員会のごときは、学閥的な傾向を持っているような人選だけはやめてもらいたい。やはりあまねく適当なる人は入れて、私学であるからというのでそう軽視するようなことのないように、これをある程度尊重しながらやってもらわなくちゃいかぬと思うのです。アメリカのごときは、ブルックヘヴンの研究所は、私学のために原子力委員会が作ってやった研究所なんです。いわゆる官学のために作ってやったのではない、私学のために作ってやった。それほど、いわゆる私学を総動員して、科学技術を伸ばそうとしているのです。それを私学の人は一人も入れないで、シャット・アウトしている。おそらくこれは意識的だろうと思うのです。私は官学の出身ですよ。けれども、私学を入れないであなたどうしますか。私学の方が、今、日本は、多いのです。学生の数でも多い。そういう官尊民卑の思想だけは、少なくとも科学技術庁だけはやめてもらいたい、こう思うのですがいかがですか。
  81. 杠文吉

    ○杠説明員 さきにも御答弁しましたときに、まことに遺憾でございましたと申し上げたのでございます。私の方は、何も他意があってそういう選定になったと思いませんが、私自身がそういうことは考えておりませんけれども、結果的に、そのように相なったという、そのことがすでに非常に遺憾なことであると思っておりますので、御説の通りに、今後は十分に注意していきたいと思います。やはり私学の方でも、権威のある方であればすべて原子力行政に御協力いただくようにいたしたいというふうに考えます。
  82. 松前重義

    ○松前委員 こういうものは、国家全体の総力をあげてやるようにしなければならない問題ですから、ことに今みたいな人選をするような場合には、あなた方は直接タッチされていないということはわかりますけれども、タッチした人はそういう気持があるということで、行政的にこれを考えるときにはそれをうのみにすることなく、ちゃんとその辺のことはわきまえてやってもらわないと全体を誤るおそれがあると思うものだから、実は私はこう申し上げておるわけです。  まだ多少あるけれども、この辺でとどめます。
  83. 石川一郎

    石川説明員 ちょっと一言。今の問題は、資格検査の問題と存じます。原子炉安全専門審査会の万は、全部われわれ責任を持って、人選をやっております。こういうようなほかの部会におきましても、われわれの下部機構は、全部われわれが責任を持ってやっております。
  84. 前田正男

    前田委員長 関連して岡良一君。
  85. 岡良一

    ○岡委員 その点は、実は若干関係の法令を調べてみますと、原子力委員会は、原子炉の設置などについては大きな責任を持つことになっておる。そこで、規制法を見ますと、総理大臣が原子炉の設置を許可するときは、原子力委員会意見を聞かなければならぬことになっている。さらに、その原子炉の設置については、原子炉主任技術者というもうを置かなければならぬことになっている。そして原子炉の主任技術者の資格授与は、これは科学技術庁長官に与えられておる。しかし、問題は、せっかくコールダーホールの炉をめぐって、学界でも国会でもその安全性を中心に非常に議論が沸騰した。そこで、原子力委員会法を改正して、安全審査会というものを特に法律で作ったわけです。ところが、一方、原子炉の安全については、保安の最高責任者は主任技術者なんです。だから、その主任技術者としてその人が適格であるかどうかということを選ぶ機関というものは、これは法律上は科学技術庁長官に委任されておっても、原子力委員会の大きな関心事でなければならぬわけです。原子力は民主的に進めるというのだから、ただお役所は法律上委任されているから、おれの方できめればいい――しかし、そのきめ方において松前さんが指摘されたような問題がある。だから、こういう問題は、運営上やはり原子力委員会と局とがもっと相談をして、納得のいくような結論を出すように運営をしていく、こういう点に今後気をつけてもらいたい。
  86. 杠文吉

    ○杠説明員 これは原子力委員会の事務局長といたしまして、まことに申しわけないことだと思います。先ほどお答え申し上げましたのは、法律上どういう仕組みかということをお答え申し上げたのでございますが、やはり岡先生のおっしゃるように、運用ということにおきましては、当然に原子力委員会に御相談申し上げてきめるべき事柄だと考えております。今後十分に注意したいと思います。
  87. 松前重義

    ○松前委員 私自身、科学技術庁設置法、原子力委員会設置法、原子力基本法、原子燃料公社法、あるいはまた放射線医学総合研究所令、こういうふうな一連の体制を作るときの一人であったのでありますが、その後に、おいて、大体の姿ができたから安心したというようなことで、多少怠慢に過ぎておったことを、私はみずからおわびしなくちゃならぬと実は思っております。けれども、それはたくさんの有能な方々がおそろいになったのでありますから、おぜん立てができたから、もうこれで十分やっていけるのだというふうに考えて、しばらく怠慢に過ごしたというふうに私自身はみずからなぐさめております。  ところが、最近の様子を見てみますと、どうも総合体制というものに欠けておるような感じがします。そう強く意識的に皆さん方のおやりになっていることに注目しておるわけではなかったのでありますけれども、ちょっと目に映るところでは、何だか非常にまずい現象が現われてきた。たとえば、先ほど来申し上げたような、結果において官立と私立との差をあまりにもつけ過ぎたとか…。それは一体どこに原因があるかということをいつも私は考えておった。やはりこういう大きな政治の場において決定されて、一つの船が進みつつあるときに、その船の中にいろいろな人が入り込んできて、船長さんと船員との間にいろんないさかいが起こってみたり、別な考え方を持っている人があったりして複雑な現象を呈していることもわかります。歴史の過渡期においてはそういうものだと思うのですがなるべくそういうことのないように、われわれが最初に皆さん方の御協力によってこの原子力関係並びに科学技術関係を開発しようと願ったような方向に向かってみんなが一致していくならば、そんな変な混濁は起こらぬと思う。起こらぬと思うけれども、現実にどうも少し起こりかかっておるのじゃなかろうかという感じがする。こう言ってはお怒りになるかもしれませんが、少し何だか沈滞ぎみのような気がして仕方がない。これは私は齋藤さんと同じような気持を持つのでありますもう少したくましくやらなくちゃいかぬのじゃないか。何だかスランプのような感じがします。これは私だけではないのじゃないかと実は思っております。現に大学の入学希望者あたりを見ていますと、私のところに最初に原子力科を作ってみた。まだほんとうに専門の先生もそういないけれども、やらなければならぬというので無理やりやってみました。だんだん先生もそろってきました。そろってみて、大体卒業生が出る状況を見てみると、初めは非常にたくさん原子力科に希望してきました。ところが、最近は希望者がだんだん減ってきた。それは私のところだけではなさそうです。原子力はどうも世間の空気が初めほどでない、先々のことだから、こんな学科をやったのでは就職口もないというので、実はだんだん減ってきたのだろうと私は思う。これは非常に憂うべき現象だと実は思うのであります。いろいろ学術論文が出ていますが、私が聞いたところでは一つだけ表題を打ったのがあるのみでほかに一つも実のある論文は出ていなかったと聞いておる。しかし、これはあとで調査をします。こういうことやらいろいろ彼此相対してみますると、全体として何だか非常に低調のような感じがします。新聞紙が書かないせいであるのか、実際動いていないせいであるのか私にはわかりませんが低調のような感じがする。どうか、こういうときでありますので、先ほど来申し上げておるように、やはりこれらに関心を持ったところのあらゆる学校なり研究所なりのすべてを網羅して、みんなが同じ方向に向くように、少なくともそこに派閥のようなしこりがないように、全体を一つ組織化していってもらいたい。これは原子力研究ばかりでなく、科学技術研究にあたっては研究動員態勢の方向を一つにすることが必要だ。その動員態勢というものは、すなわち、派閥的なものであっては断じてならない、こう私は思うのであります。とかく学者は非常に実力のある方ばかりでありますから、自己自身に自信を持ってござる。共同ということよりも、むしろ自己自身というものに非常に大きな重点を置いてござる人が多い。そういう傾向があるということは、学界の大体の通弊であるということを知っております。その通弊があればこそ、行政官庁というものができ上がったのであります。これがかじのとり手として船を前進させるのでありますから、どうか一つその辺しこりのないように総動員態勢を整えて、外国に劣らないような方向に進めていだきたいという念願を持らながら、私は今まで質問をしたのです。別ににくまれ口とか、いじめてやろうという気持ではございません。しかし、少なくとも、もう少したくましい牽引力があってもいいんじゃないだろうか。アイソトープ何とかセンターを作るといったって論文があまり出ないようでは、三木武夫先生が幾ら御努力になっても、工合が悪いんじゃないかと思っております。言うだけの話で、できたら、なおけっこうでありますけれども……。  こういうわけで、とにもかくにも、一つ総動員態勢を整えていただきたい。私どもも、できるだけ国会で、微力ではありますが、一生懸命皆さん方のしり押しをします。引っぱり役はわれわれできませんから、しり押しだけはします。引っぱり役は皆さんが引っぱっていただかなくてはいかぬ。こういうわけで、一つお互いに一生懸命になってやりたいと思っての私の質問であるということを御了承願って、一つうんとがんばっていただきます。
  88. 前田正男

    前田委員長 それでは、次に、山口鶴男君。
  89. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 すでに先輩のお二人の方々から原子力行政全般の基本的な問題につきまして広範な御指摘がございましたが、菊池原研理事長さんがお見えでございますので、具体的な問題に対しまして簡単にお尋ねいたしたいと思います。  先ほど菊池先生の放射線禍に対する御見解の表明がございましたが、一号炉から二号炉と、次第に放射線のレベルも高まっておるので、ある程度の放射線というものについてはやむを得ない。従って、現在国際的な水準においてきめられておるいわゆる許容量までは、予防補償というものについては一切考えないというようなお話がございました。そこで、私しろうとでありますのでよくわかりませんが。許容量というもの、これはどういうものでありますか。そこまでは絶対に安全だと言い切れるものなのか、そうではなくて、許容量というものは、それによってもたらされる利益というものを考えた場合に、まあまあ、ここまではぎりぎり許容しようじゃないかといった政治的な、あるいは経済的な配慮というもので引いた一定の水準が、いわゆるこの許容量というものだというふうに考えてよろしいのか、この点をお答えいただきたいと思います。
  90. 菊池正士

    菊池参考人 今おっしゃいましたそのあとの方の通りでございます。つまり、それによって得られる利益とバランスしてきめられている。と同時に、その量というのは、たとえそれによって害があるとしましても、それによって生ずる害というのは、それなしによって同じようなことが起こる害に比較して非常に低いものであるというような考え方が、別にもう一つございます。しかし、幾ら低いものにしろ、そこからそこまでは絶対に害がないということではございません。
  91. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そういう観点から、ICRPにおきましても、次第に許容量というものを下げていったということは私も聞いておるわけでございますが、お答えで了解いたしました。普通いわゆる放射線を出す、たとえば原子炉に従事しておる従業員、こういった方々に対する許容量というものと、それから、いわゆる一般人、こういう人たちの許容量というものは、大体十分の一程度というようなことがいわれているそうでありますが、しかし、これも私はきわめてあいまいな水準だろう、線だろうと思うのです。聞くところによりますと、原研におきましては、八月十日、十五日の二回にわたりましてアルゴン四一の拡散の試験をされたそうですね。このときに、当然許容量というものの考え方からいきまするならば、若干のものでありましても全然害がないとは言えないわけです。そういたしますと、そういった試験をされるということになれば、所内の人たちに対して十分趣旨を徹底するなり、あるいはこういうことを行なうということをPRするということも必要でありましょうし、同時に、東海村付近の一般住民の方々に対しても、そういう問題については当然あらかじめ知らしておくことが必要だろうと思います。ところが、実際どうであったかといいますと、所内には一片の通知を出してお知らせになった。それから付近の住民には、役場に簡単に説明をされた。ほとんど大部分の住民の人たちは知らなかった。なおかつ、私も一度あの原研に行ってみたことがあるのでありますが、大ぜいの方々原研にお見えになっておられます。そういう人たちも平生と変わらず見学をされておったということをお伺いしておるのでありますが、そういう点は、許容量というものの、ただいまお伺いいたしました理事長さんのお話からいたしますると、特に一般住民、見学の方々、こういうものに対する取わ扱いにやや手落ちがあったのではないか、かように考えるのでありまするが、この点に対する御見解はいかがでございましょうか。
  92. 菊池正士

    菊池参考人 その点は、所内に安全審査委員会というのがございまして、それにかけまして十分検討いたしまして、被爆量が普通の人に許された被爆量の三百分の一程度、許容量の三百分の一程度のものしか出ないということがわかりました。それはどのくらいのものかと申しますと、大体、ふだんこうやっておりますときにかぶっております宇宙線の量とほとんど同じくらい。たとえば、ここから四百メートル、五百メートル山に上がれば明らかにそのくらいはかぶってしまう、そのくらいの量であります。私どもとしましては非常に少ない許容線量であるということでありまして、しかも、職業人じゃなしに、一般人の許容線量の三百分の一ということは非常に少ない。私は、害という点から申しますとほとんど問題にならないと考えております。それから、それが構外へ出る点はそれよりさらに少ないというようなことから、その必要がない。しかし、今おっしゃいましたけれども、やはり十分連絡をとろうということで、所内にも連絡がなかったわけではなく、連絡いたしました。それから所外は、村役場の方と県庁へ事前に連絡しました。ただ、特に村民全体にそういうことを前もって言うとか、あるいは所内全体にそれを諮っていい悪いを討論するという方法は用いませんでした。それだけの低線量の場合に、そこまですべきかどうかということは、私現在でも、なお必ずしもそうすべきであるということは言いきれないと思っております。
  93. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 お話のような、きわめて低線量だったということを聞いております。ただ、原子力災害補償の議論の際におきましても、先国会におきまして原子力災害補償の問題に関しまして、特に付近の住民に与える精神的な問題等、いろいろな問題に対しましても国会におきましていろいろと議論がございました。現在日本におきましては、世界でただ一つのいわゆる原爆の被害国民であり、そしてまた、相次ぐ原子爆弾の実験等におきましても、いろいろな意味で死の灰と申しますか、あるいは放射線といいますか、そういうものに対していろいろの議論がある国であります。もちろん、そういうものに対して無知なために日本原子力産業が発達していかない、原子力研究が発達していかないというふうなことは、われわれとしては厳に戒めなければならないと思います。しかし、それはあくまでも知らせないでやっていくということでなくて、問題は、単に知らぬで反対するというようなことではなくて、住民の人たちにも、やはりこの程度実験をするのだとか、あるいはこういう程度の線量であって、一般の雨と一緒に降っておる、あるいは現在日本の国土に充満しておる線量と変わらぬとか、いろいろな角度から要するに、正確な知識を与えることによって、無知ないわば反対なり、そういうものを押えて、正しい意味での原子力研究の発達、そしてまた、正しい意味原子力産業の発達をはかっていくことが、私は現在の日本において当然とるべき手だてだと思うのであります。そういうような点からいいますと、いろいろ研究も必要だろうが一般の住民の方や入場の方々に対しまして――特に入場の方にも何のお話もなく、住民の方々に対しても、役場や県庁だけにお話をされた、こういうことでは、やはりかえって理事長さんの心配されているような意味で、悪い結果が出ることをおそれることを私は申し上げた次第であります。  こういう点についてお考えをお示しをいただきたいと思うのでありますが、同時に、つけ加えてお尋ねいたしたのは、同じ八月の十六日でございますか、特に今申し上げましたような許容量、いわゆる放射線が人体にどれくらいの被害があり、また、従業員の保健を一体どうやって守るべきかというようなことに対する最高責任者であられる原研の保健物理部長さんでございます青木先生という方だと思いますが、この方が、わざわざコーヒーの中にストロンチューム八五、五マイクロ・マイクロキューリー程度のものを入れてお飲みになったという話を聞いたのでありますが、こういうことが今申し上げた前段の御質問に関連をして、しかも、そういった方面における原研の最高責任者であられる方が、わざわざこういう手段をおとりになるということに対して、理事長さん、どうお考えでありますか、お聞かせをいただきたい。
  94. 菊池正士

    菊池参考人 そのコーヒーの中にストロンチウムを入れて飲んだ実験意味は、こういうわけなんです。保健物理部では、何かありますと、たとえば放射性アイソトープが体内に入ったという疑いがある場合には、排泄物を調べて、それからどのくらい入ったろうかという量を推定をして、それによってその受けた内部照射の量をすぐにはかる、それも尿や便でやるのであります。それから最近は、全身カウターというのでありますが、それではかる。三つの方法を併用しておりますが、実はそれで十分かどうかということになると、まだ問題があります。それで、そういうことをして実際に全身カウンターと排泄物を全部はかりまして、それによって間違いなしに全部を押えているかどうかということで試験を守るのが、今の目的だと思います。しかし、私は事前にそのことは知っておりませんでした。飲んでやってみるという話は知っておりませんでした。しかし、どうしようかという相談をされれば、そんなことをしなくてもよかろうと言うかもしれませんが、そういう部長さん方には、それぞれの立場で、御自分方の持ち場持ち場の責任は持っていただいておりますから、そうこまかくなさることについて、一々事前に相談を受けるという習慣はないわけでございます。それでやられたわけでございます。私は別に、青木さんが何かそういうことをしても精神的な面では平気なんだとか、あるいはそういったような精神的な、教育的な面を兼ねてやられたのなら、実際私はいかぬと思うのです。しかし、純粋に、ただ全身カウンター、それから排泄物の調査試験とのちゃんとバランスのとれた測定をしようということでやられたとしますならば、これは私はいたし方ないと考えております。それによって飲まれた量も非常にごくわずかだ、できればああいうことは外に出さずに、内々で済ませれば済ませたかったのでありますが、それが出ましたために、ああいうふうになったのであります。私はそのこと自体に対してはむしろ――あれほど問題になったためにいろいろ非難を受けましたけれども、非常に遺憾なことであるというふうには考えておりませんでした。
  95. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 前段のお答えがなかったのでありますが、もう一度聞きましょう。今お答えになりましたが、今の科学の進め方というものは、やはり一つ研究グループならグループがお互いに集団的に討議をして、そしてあらゆる角度からの意見を出し合い、周到な用意をして、そういう中でいろいろ実験を進めて、そうして一つ成果というものを上げていく、いわゆる昔の個人プレーというような形でありますか、先生はおいでになりませんでしたが、先日の科学基本法の審議の際にも、昔のいわば技術開発研究開発のあり方というものと、最近の科学研究の仕方というものが違うのだというような議論がいろいろなされたのであります。少なくとも私は、現在の科学技術研究なり、あるいは科学の研究というものが、先ほど申しましたような集団の形で、周到な用意のもとにいろいろな角度からの検討をして、みんなで一つ目標に向かって進んでいく、こういうことだろうと思うのです。今のお話を聞きますと、事前に理事長さんお知りにならなかったというお話であります。もちろん、研究一つ一つについて、みんな理事長さんが承知しておるということはないだろうと思うのです。しかし、いろいろ、聞きますと、それじゃ保健物理部長をやっております青木先生が、それらの研究をやっておる方々といろいろ事前に相談しておやりになったかというと、そうでもないようであります。青木先生が一人お飲みになることは、それが一つ試験かもしれませんが、同時に、いきなり人間が飲むということよりは、たくさんの動物実験をおやりになる、そういうものを積み重ねていく中で一つ結論を見出していく、いろいろな角度からの研究を積み重ねて、人体に対する影響を研究していく、こういうことが、原研として理事長さんも考えておられる研究態勢ではないですか。そうではなくて、もう意気壮な方がお飲みになる、そういうような形の研究開発の方向が、原研として好ましいとお考えになっておられるのですか、そういう点をお聞かせいただきたいと思うのです。しかも、お飲みになった方が保健物理部の部長さんだ。先ほど私が申しましたように、前段の質問に関連するのでありますが、今のアルゴン四一の試験研究をせられる、同じ方の責任のもとにおやりになったわけでありましょう。その場合、所内、それから所外の方々に対して、先ほど私が指摘いたしましたような配慮が欠けておったという点は、何か許容量をここまでは安全なんだというふうに強調していく、そういったような考え方が底流にあるような気が、あるいは私の勝手な推測かもしれませんが、するからお尋ねをしておる。そういう意味で、先ほどのいま一つの質問にもお答えをいただきたい。
  96. 菊池正士

    菊池参考人 今の青木さんの実験の方のことでありますけれども、これは保健物理部内での相談は、私は十分あったと思うのです。つまり、そういう測定をやっておりますグループ、これの相談は十分あったと思うのです。その結果やったろうと思います。当然いろいろな測定器を使いますから、やったと思います。今後ああいう実験をやる方針かどうかということでありますれば、私は、そういう相談を、受ければ、もちろんそういう場合はよくよくの場合ではないか、それ以外に方法がないというような場合にはやってもいいと言うかもしれない。必要がなければ、やらぬ方がいいと思います。  それから今の許容量の非常に低い場合のこと、これは実は多少考え方に違いがあるかと思いますが、今申しましたように、普通の宇宙線その他のバック、ラウンド程度の量が実際に起こす害の大きさの問題だと思うのですが、それは単に大きさの問題でなしに、それを人為的に出すというところに問題があるのだろうと思うのです。この点は、今後できるだけ、今おっしゃったような面に対しても、注意は十分払ってやっていきたいと思います。事前に了解を得るという形で、十分な措置をとりたいと思っております。今のもう一つの御質問は、そういうことでございますか。
  97. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 しろうとでありますので、こまかい点はよくわかりませんが、とにかく、日本原子力研究を正常に進めていく意味では、一応線量が少ないから、十分周知徹底させる必要はないだろうというような形で処置していくということは、私は、あくまでも誤りだということだけは、はっきり申し上げておきたいと思います。それからストロンチウム八五をお飲みになった問題に対しては、今後そういうようなことをしようという場合には、これはやはり好ましくないので、そういうことはない方がいいんだ、こういう理事長さんの明確なお話でございますので、ぜひとも研究の進め方――現在における研究の進め方としては何か特攻隊的な、おれが一つ危険を冒してもやってみようというような、早まった英雄主義的な方向というものは、決して科学を進めるゆえんではない、科学的なあり方ではない、こういうことだけは一つ明確にしておいていただきたいと思います。理事長さんの御見解もそうであろうと推察いたしましたので、この点は了解いたしました。  ただ問題は、アルゴン四一の試験をやっております際に、私はしろうとですからよくわかりませんが、原研所内で非常に多量のガンマー線を放出している場所があったそうですね。これは相当な量であったというふうに聞いておるのでありますが、やはり私は、ああいうものを扱う以上、注意に注意をいたしましても、どうしてもおのずから手落ちというものが出て参るだろうと思います。私はそれを責めるつもりはございません。十分体制を整備していただくことが必要であるという希望だけを申し上げます。ただ、そういたしますと、いろいろ注意をいたしておりましてもそういう場合があります。それからまた、許容量というものは、一度当たったのが許容量が少ないから云々というものではなくて、蓄積をされていくものだというふうに聞いておるのであります。そうすると、冒頭理事長が申されたように、許容量といいますか、レムという単位で年間の五レムというような許容量があるそうでありますが、そういうものに達しなければ一切の予防的な補償というものは必要ないというようなお考えは、やはり私は少し極端ではないだろうかと思うのであります。公務員の給与、体系にも、たとえばらい患者の療養所がありますが、そこに勤務をいたしておる職員の人たちには、危険手当というような意味で、特殊勤務手当というようなものもございます。やはり放射線というものは、人によって耐久力が強い人もあるでしょう。許容量にまでいっても丈夫な人もあるかもしれないが、許容量に達しなくても、あるいは影響を受ける人もあるでありましょう。人によっていろいろあります。そういたしました場合に、当然日ごろから栄養をつけ、そうしてまた、できる限り放射線の影響というものを少なくするような日ごろの健康管理を維持するという意味において、当然所内において所側の方と労働組合の代表の方とがいろいろ御相談をされた予防補償考え方というものに対しては、私はやはりこれを進めていくということが必要ではないかと思います。その点についてお答えをいただきたいのと、関連して局長さんにお尋ねをいたします。  聞くところによりますと、そういう予防補償を行なうことについては、原子力局としてはあまり御賛成ではないというようなことを聞いておるのですがそうですか。だとすれば、私は問題だと思います。原子力災害補償法律を審議いたしまする際に、わが党の石川委員から、特に第三者災害の問題についてはいろいろと御指摘がございました。これに対する御答弁もございました。そういうことを総合いたしまして特別委員会としては、あの法律を通すときに附帯決議をつけたはずであります。その附帯決議によりまするならば原子力損害の特殊性にかんがみ、いわゆる原子力事業に携わっておる人たちの被害の保護に遺憾なきを期するよう立法その他の措置を講ずるべきであるということをつけておることを、私どもは記憶いたしておるのでありますがそういう観点からすれば、むしろ原子力局は、積極的にそういった予防補償に対して進めるという立場をとるべきじゃないか、かように考えるのでありますが、この点はどうでございますか。
  98. 菊池正士

    菊池参考人 ただいま、らい患者の例がございましたが、われわれといたしましても、放射線を取り扱う者に対する特別な手当はいただきたいということを申しております。それは、被害を受けたからそれに対する補償という考え方でなしに、何か間違えば非常に困るものを取り扱う一種の危険手当と申せるかもしれませんが、そういう意味の手当という形であるならば、これを出すのは、理屈に合わないとは決して言っておりません。それだけの害を受けたら、それに対する補償という意味の形で出すことはおかしいのじゃないかということを言っておるのであります。
  99. 杠文吉

    ○杠説明員 ただいま御指摘になりました第三者に対する損害賠償におきまして、その措置を講ずる法律の御審議の際に、確かに附帯決議を承っております。その附帯決議の線に忠実に沿うべく、原子力委員会の下部機構として原子力災害補償専門部会というものがありまして、目下そこに代託いたしまして御審議を願っておるわけでございます。それと同時に、われわれは、労働省との間にも、行政当局といたしましまして話を進めつつございます。研究はしております。しかしながら、ただいま例としておあげになりました予防補償の件でありますが、予防補償という概念がまことに新しい概念でありまして、どういうようなことであるかということがまだはっきりとつかめない。と申しますのは、正式に原子力研究所から予防補償についての御説明を承ったわけでは、現在の段階ではございませんが、いろいろ内部の連絡はしておりますから、あるいはその限りにおいて、私の方で予防補償に対して取り上げないとか、反対であるとか言っているというようなことが、お耳に達しておるかとも思うのでありますが、決して頭からそれはだめであるとかいうようなことを言っておるわけではございません。何度も申し上げておるように、予防補償という新しい概念はいかなる事柄であろうかというようなことも検討しております。と申しますのは原子力研究所の方で御研究なさっておるところによると、その被害が身体的、遺伝的等に現われないといたしましても、何レム以上の放射線を受けた場合には補償するというようなことのように伺っておるわけでございます。しかし、そのような概念は、諸外国の例も目下調査しておりますけれども、私たちが調べた範囲におきましては、残念ながらございません。ついこの間も、京都におけるアイソトープ会議に、アメリカのAECからアイソトープ開発部長のエバソウルドという人が見えておりますが、この方をとらえまして、そのようなことを承知しておるかどうか、アメリカの諸会社等においてもそのような概念が、用いられ、それに対する何らかの措置が行なわれておるかということを聞いたわけであります。しかしながら、そのような例は知らないということでございまして、まず、その予防補償なるものの概念、そのとらえ方等を真剣に検討しているというのが現段階でございます。
  100. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 予防補償という概念がどうであるかということは、私どもしろうとだから、詰めた議論は差し控えたいと思います。またあらためてする機会があろうと思います。ただ、問題は、菊池先生も言われましたが、災害を受けた場合の補償は労災である。ところが、労災の適用が、赤血球が幾らとか白血球が幾らとか、あるいはこういうところにガンができたとか、いろいろな厳格な規定です。しかも、これが放射線の影響によるものと判定をして、初めてその適用を受けられるというような、きわめて厳格な規定です。しかも、それが昭和二十六年でありますか七年でありますか、非常に古い時代の規則によってきまっておるというようなことも聞いております。こういうことを直していくことも一つ方法でありましょう。しかし、現在のところは、そういう厳格な規定です。そうなれば、やはりいろいろ注意をしてもそういう被害が出たら大へんなんですから、まだそこまで至らぬけれども、やはり相当な放射線を受けておるという場合においては、菊池先生も言われましたが予防補償であるかどうかはいずれ議論するといたしましても、とにかく、危際な状態において働いておる人々の手当なりという形のものは当然お考えになるというお話を聞きまして、非常にけっこうだと思いましたが、そういうことをやっていくことが、他の公務員の給与体系等からいっても当然ではないか、かように考えるものです。そういう角度からは、局長さん、お考え方がありますか。これは附帯決議にも、いろいろな措置をとれということなんですから、当然お考えになっていることだろうと思いますからお尋ねします。
  101. 杠文吉

    ○杠説明員 ただいま菊池理事長から、放射線手当というようなものは要求したい、予算要求をしたいというような意味だろうと思いますが、そういうようなお考えを承ったわけでございます。それはかねてわれわれも承知しておりますが、放射線手当というようなことにいたしましても、ものそれ自体が危際であるということをやはり関連して参りまして、一方では原子炉の安全を確保する意味におきまして危際を除こうということに努力しておるということでございまして、その辺のところをどの辺に合わせたらバランスがとれるかということは十分に検討しております。ですから、ただいま直ちに放射線手当を予算要求いたしますというようなことは申し上げにくい段階にある、目下検討しておりますということでございます。
  102. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 今の局長さんのお話を聞いて、私、労働関係の問題はどうなっておるかということについて非常に疑問に思ったのです。この原研というのは、確かに政府が出資していることは事実です。しかし、あれは国家公務員法に基づくところの国家公務員でありませんね。当然それは労働組合法の適用を受ける、団体交渉権、争議権を持つ労働者の諸君だろうと思います。そうすれば理事者側である理事長さんと組合の人たちとが交渉してきめたこは、当然やるのがあたりまえなんでしょう。そういうことに対して原子力局は、そういった労働組合法に基づく労使関係が交渉した結果についてまで、一々とやかくうるさいことを言われるのですか。そういうことは、私は非常に遺憾だと思いますよ。
  103. 杠文吉

    ○杠説明員 その点、誤解があっては困りますから、少しくどいようでございますが、詳しく申し上げたいと思います。  実は、政府関係職員につきまして、これは原子力研究所に限りませんで、たとえば特殊法人等につきましては、御存じのように、国家資本がだいぶ投下されております。従いまして、たとばえここにおいでになります原子燃料公社などのごときにおいては、法律の上から明らかに、給与等をきめる場合には内閣総理大臣に協議しなければならぬというふうになっております。ただし、原子力研究所つきましては、そのような法律上の規定はございませんが、他の政府機関に準じまして、やはり政府の方へ事前に協議をするということに相なっております。ですから、ただいまの菊池理事長のお話は、団体協約をなさる前のお話だと思います。団体協約でもってそのようなことをおきめになったというふうには承知いたしておりません。ですから、団体協約でおきめになるにあたりまして、やはり給与の問題でございますから政府側に御相談に相なる。  そうすると私たちも私たち独自ではきめかねます。卒直に申しまして、予算の問題でありますから、国家財政の支出でございますから、従いまして、大蔵省に協議しなければならぬということに相なっております。これはひとり原子力研究所だけではございません。政府側が出資しておる特殊会社法人等について全部共通した行き方でございます。そのようなことがございますので、われわれは、今の労働協約を尊重しないとか、それに干渉するとかいうような気持で運用しておるのではございませんが、やはり給与については、できるだけ統一を保ちたいという政府の方針に沿ってただいま申し上げたような措置をとっておる。十分に理事者側と御相談申し上げた上――その御相談申し上げるについても、われわれはまた大蔵省の予算支出について御相談して、その上できまっておるというようなことでございますから、決して労組を無視するとかいうような態度でない。やはり原子力研究仕事者につきましては、われわれはその立場に立って伸ばしていく。従って、給与も他よりもよくなるように努力いたしますということは申し上げておきます。
  104. 岡良一

    ○岡委員 実は原子力の行政全般についていろいろ私どもの所見も申し上げたかったし、また、皆さんの御意見も聞きたかったのですが、時間もだいぶおくれました。そこでこの次の機会委員長から、特に先ほど来の御答弁で私もだいぶ納得できない点がたくさんありますので、原子力委員長、それから菊池理事長に御出席願って、あらためてまたお尋ねする機会を作っていただきたいと思います。きょうは、私は、そういうことで次の機会をいただきたいと思います。
  105. 前田正男

    前田委員長 できるだけ御希望に沿うように取り計らいたいと思います。
  106. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 今の岡委員と同じなんですが、私ももう少し勉強してから原子力体制に対する質問をしたいと思います。  きょうちょうだいいたしました資料によりますと、予算の数字が入っていない。どれだけどういうところに予算をつぎ込んでおるかというような資料を提出していただきたいと思います。  それから、先ほど来問題になりました原子力基本法、これは御承知通り議員立法であります。議員立法の第四条と第五条に「原子力行政の民主的な運営を図るため、総理府に原子力委員会を置く。」とある。そして、これは当時の私の記憶では、単なる諮問機関ではない、決定機関であるその決定は行政を大きく拘束するという立法の建前のようであります。それの詳細は、原子力委員会設置法の、第一条と第二条、特に第二条にその決定すべき範囲がきめてある。原子力局長はよく当時の会議録を読んで間違いのない、確固たる政府の見解を次の委員会において示していただかないと、今になってから基本法の解釈及び原子力委員会設置法の解釈に疑義の差しはさまれるようなことがもし起きたとすれば根本から問題をやり直さなければならないことになるから、そこはよく研究して、長官から一つ動かない意思の発表をしていただきたい。これだけを特に委員長を通してお願い申し上げます。
  107. 前田正男

    前田委員長 できるだけ御希望に沿ように取り計らいます。  本日はこの程度とし、次会は、来たる十八日午前十時より科学技術基本法に関する問題について参考人より意見を聴取することになっております。  これにて散会いたします。    午後五時散会