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1961-10-04 第39回国会 衆議院 運輸委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月四日(水曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 簡牛 凡夫君    理事 關谷 勝利君 理事 高橋清一郎君    理事 塚原 俊郎君 理事 福家 俊一君    理事 井岡 大治君 理事 久保 三郎君    理事 山口丈太郎君       伊藤 郷一君    生田 宏一君       宇田國榮君    川野 芳滿君       木村 俊夫君    佐々木義武君       砂原  格君    高橋 英吉君       西村 英一君    細田 吉藏君       増田甲子七君    三池  信君       勝澤 芳雄君    西宮  弘君       内海  清君  出席政府委員         運輸政務次官  有馬 英治君         運輸事務官         (大臣官房長) 廣瀬 真一君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      岡本  悟君  委員外出席者         運輸事務官         (鉄道監督局民         営鉄道部監理課         長)      山口 真弘君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 本日の会議に付した案件  陸運に関する件      ————◇—————
  2. 簡牛凡夫

    ○簡牛委員長 これより会議を開きます。  陸運に関する件について調査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。勝澤芳雄君。
  3. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私は私鉄運賃値上げの問題についてお尋ねをいたすわけでありますが、この問題につきましては経済企画庁長官なりあるいは運輸大臣なりの立場からいろいろとお聞きしなければならぬ点がありますけれども、きょうはお見えになりませんので、その分につきましてはまたそのときにお尋ねをいたすことにいたしまして、せっかく政務次官もお見えになっておりますので、特に今問題になっております大手十四社の運賃値上げ申請が出ておりますが、この現況といいますか、あるいは見通しといいますか、それらの点についてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  4. 有馬英治

    有馬政府委員 仰せのようにただいま私鉄十四社の運賃値上げについての申請運輸省に出ておりまして、運輸省はこれを運審諮問いたしまして、運審の方では聴聞会を行なうものは行ない、ただいま検討中でございます。いずれ運輸省の方にもその結果が来ると思いますが、まだ参っておりません。目下検討中でございます。
  5. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 運審の結果が出ないとその模様についておわかりにならない、こういうことでございますので、これは運審を聞かないと見通しというものははっきりしないのでありますが、その分につきましてはまたあとで質問いたすといたしまして、それでは鉄監局長お尋ねいたしたいのですが、国鉄運賃がことしの四月に上がりましたが、四月以降今日まで、私鉄運賃値上げを許可したところはどこか、そしてその値上げの率なり値上げ理由、こういうものについてまずお尋ねをいたします。
  6. 岡本悟

    岡本政府委員 四月以降私鉄関係運賃改定につきまして認可いたしましたのは、函館市の市電、これがことしの七月十八日でございます。十三円均一のものを十五円均一に値上げを認めております。それから三重交通、同じく七月十八日でございまして、現在一キロ当たり賃率三円三十銭のものを三円八十五銭に値上げを認めております。それから青森県の弘南鉄道、これは九月の二日でございます。一キロ当たり賃率四円十銭のものを四円七十銭に上げることを認めております。それから新潟県の越後交通でございますが、これも九月二日でございます。その内容長岡線と申しますのは一キロ当たり四円のものを四円三十銭、それと栃尾線でございますが、これは三円五十銭のものを三円八十銭。それから福井県の福井鉄道でございますが、これも九月二日、内容はちょっと複雑でございますが、これは区間制でありまして、現在一区十円、二区以上十円プラスしていくというようになっておりますのを、一区十五円に値上げをいたしまして、二区以上十円をプラスしていく、こういうことで認可いたしました。それから奈良県の大和鉄道、これも同じく九月二日に認可いたしておりまして、キロ当たり五円の賃率であるものを区間制に直しまして、一区十五円、二区以上は十円をプラスしていく、こういうことでございます。  以上であります。
  7. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、今まで六社が認可になったということでありますが、現在申請している会社と、その申請をいつして、それがどんなものになっておるか、その経過をお聞きしたいと思います。
  8. 岡本悟

    岡本政府委員 九月二十一日現在で調べましたところでございますが、申請書が当省に出されておりますものは大手私鉄十四社、それから帝都高速度交通営団、それから東京都、大阪市、鹿児島市、それからそのほか中小私鉄は三十五社となっております。申請の概要につきましては各社それぞれ違いはございますが、一般的に申し上げますと、各社平均値上げ率は、大私鉄は一五%程度中小私鉄は一五%から二〇%程度、ただいま申し上げました東京都、大阪市、鹿児島市、こういった公営は一五%程度でございます。いずれも私の方でいろいろ審査いたしまして、運輸審議会諮問をいたしております。
  9. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうすると今御回答のあった分は全部運輸審議会にかかっている、こういうことなのですか。
  10. 岡本悟

    岡本政府委員 詳しく申し上げますと運輸審議会諮問中のものと、申請書を受理して私の方でまだ調査を進めておりますものと二つございます。
  11. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それはあと申請日付、それから運審に移った日付を教えて下さい。
  12. 岡本悟

    岡本政府委員 あと資料としてお出しいたしますが、現在運輸審議会諮問中のものは、大私鉄におきましては大手十四社、それから公営では東京都、中小私鉄加越能鉄道富山鉄道尾小屋鉄道井笠鉄道旭川電気鉄道京福電鉄大分交通筑豊電鉄能延鉄道、信貴・生駒鉄道長崎電気軌道岡山電気軌道島原鉄道の十三社、それから申請書を受理したものは、大私鉄におきましては帝都高速度交通営団公営におきましては大阪市、鹿児島市の二者でございます。それから中小私鉄は山陽電気鉄道静岡電鉄近江電鉄和歌山電気軌道下津井電鉄鹿島参宮鉄道松本電鉄長野電鉄江ノ島鎌倉観光株式会社茨城交通、相模鉄道、広島電鉄、奈良電鉄、遠州鉄道土佐交通山陽電気軌道銚子鉄道屋島登山鉄道熊本電気鉄道江若鉄道伊予鉄道、北海道の寿都鉄道。それから申請の年月日でございますが、大手は今年の八月五日でございます。それから運輸審議会への諮問は八月十五日にいたしております。中小私鉄各社まちまちでございまして、一々申し上げましょうか。
  13. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 けっこうです。そうしますと、今申請が出されて運輸審議会に出ている分というのは相当たくさんの社があるわけです。そこで申請が出てから運輸審議会まで回す間は、鉄監局としてはどのような作業をされているのですか、それから運輸審議会としてはどういう作業をされるのですか。
  14. 岡本悟

    岡本政府委員 運輸審議会諮問いたします前に、われわれの方で、提出されました申請書について、原価計算であるとか、そういった内容について審査いたすわけでございます。運輸審議会諮問いたしますと、まず申請内容についてわれわれの方から運輸審議会に説明をいたします。それから運輸審議会といたしましては、それに基づいて独自の審査を開始いたすわけでございますが、その審査の過程において、われわれ事務当局を呼びましていろいろ質問をされる場合が通例でございます。
  15. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、申請が出されて運審に回されるまでの間は、一応原価計算をされるというような御答弁ですけれども、実際には申請そのものについての書類審査をやって運審に回す、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。それとも申請内容について鉄監局としての相当掘り下げた調べ方をするのか、どちらでしょうか。
  16. 岡本悟

    岡本政府委員 通例の場合について申し上げますと、実は従来は運賃改定申請をしたいという場合には、原価計算やり方、そういったようなものについていろいろ下相談に参ります。そういうことがございますので、実際に出て参りました申請につきましては、ある程度われわれも知っておる、こういうことになるわけでございます。従いまして、申請されましてから審査ということは大部分の場合はほとんどやらなくて済むというのが実際の状態でございます。
  17. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 前回私鉄運賃値上げはいつ行なわれたのですか。前回申請内容、あるいは答申なり認可、実施、こういうものの関係について、そうこまかいことはあれでしょうけれども、大まかなところで御答弁願いたいと思うのです。
  18. 岡本悟

    岡本政府委員 大手について申し上げますと、南海前回は三十一年の十月二十五日に認可になっております。それから京阪電鉄であるとか阪神、それから西日本鉄道、そういったものは三十三年十二月二十六日に認可になっております。それから近鉄、小田急、東急、京浜、こういったものは三十四年の一月二十一日に認可になっております。そのほか中小私鉄につきましてはもうまちまちでございまして、ちょっと極端な表現かもしれませんが、全国的に見ますと年がら年じゅうどこかの社が値上げ申請をして認可を受けておる、こういうふうな状態でございます。
  19. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この私鉄運賃値上げというのは大体国鉄運賃値上げ一つの契機になって上がっていると思うのです。ですから前回運賃値上げというものは、やはり国鉄運賃値上げに刺激されたといいますか、それにつれて出ていると思うのですが、今回の値上げを見てみましても、やはりそれと同じような傾向になっていると思うのです。そこで、この値上げをする理由というものが、前回私鉄運賃値上げと今回の私鉄運賃値上げはどういう理由になっておりますか。
  20. 岡本悟

    岡本政府委員 前回も今回も各社とも値上げ理由は若干は違っておりますけれども大体同様でございまして、各社収入定期外旅客つまり普通旅客輸送量の伸びが非常に少ない。これに反しまして運賃割引率の非常に高い定期旅客が非常に増加している。このために全体としては収入増加率が小さい。これに対しまして支出面におきましては、御承知通りベースアップ等による人件費等の大幅な膨張、それから物件費の値上がりももちろんございますが、特に通勤定期客のための輸送力増強に投入する資金が相当かさみまして、大部分これを借入金に仰いでおりますので、その利子がどんどんふえて参ります。もちろんまた並行して減価償却費、こういったものもふえて参りまして、いわゆる資本費が非常に増大して参っております。それで経営が非常に苦しくなっておるというのが共通の申請理由でございます。
  21. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 国鉄運賃値上げというのは、前回の場合と今回の場合は違っているのですね。国鉄の場合は前回は、もう老朽施設で何とかしなければならぬ、これじゃ大へんなことになる、結局それが中心で前回運賃値上げになった。今回の運賃値上げは、輸送力増強のためだということで、これからの設備投資のための資金調達のための運賃値上げだ、こう言われているわけです。今の私鉄お話を聞いてみますと、前回も今回も変わりがない。こういう立場考えて、この私鉄運賃値上げをすべき原則といいますか、基準といいますか、こういうものは鉄監局としてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  22. 岡本悟

    岡本政府委員 私ども私鉄運賃改定を認めるかどうかということについて審査いたします場合には、輸送力増強のためには、もちろん市中銀行からの借り入れであるとか、あるいは増資であるとか、あるいは社債による資金調達であるとか、いろいろな方法を講じまして資金調達して輸送力増強、整備に充てるわけでございます。従いまして、現在の運賃が適正であって、それで収支がとれておりますれば、当然輸送力増強のために借入金をいたしましても、その利払いなりあるいは減価償却なりにつきましては能力があるわけでございます。ところが現在の運賃というものが必ずしも適正でなくて、収支バランスがそれでくずれておるということになりますと、そういう資本費増高に対しては、たとえば利息につきましてはどんどん払っていくだけの能力がなくなってくるわけでございます。そこで現在提供しておる輸送サービスに対する対価というものが、つまり運賃というものが適正であるかどうかということを見てやらなければいかぬと思います。適正であれば幾ら借入金をいたしましても支払いの能力は十分あるわけでございます。あるいは増資いたしましてもそれに対する配当原資は出てくる筋合いでございます。そういった点を見てやるべきだと考えております。  そこでどういうやり方をしておるかと申しますと、地方鉄道軌道運賃原価算定基準というものを私どもの方で作っておりまして、一応こういう方式原価計算をやってみて、それで赤字が出ればそれをカバーするだけの運賃値上げは認めざるを得ない、こういう考え方に立ってやっております。この原価計算方式というものは、電力事業原価計算と全く同一の方式をとっております。それで問題になりますのは、原価計算期間というものを事業年度を単位としまして、二カ年間について見る、こういう方式をとっておるのでございます。詳しく内容を申し上げましょうか。
  23. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 ではその電力と同じだという原価計算方式やり方につきましては、あと資料をいただくことにいたします。  そこで私鉄の場合には、一応競争路線もたくさんあると思うのですが、公共性とそれから独占度というのが高い会社もあるわけです。ですから競争サービス増強をし、それから施設増強しているところもあるわけですけれども独占度の高いところは結局そういうサービスをするよりも、十分お客があるという形であまりそちらの方の設備投資をしていない会社もあるわけです。こういう点についても十分個々的な調査をされ、個々的な値上げについて検討されているのですか、どうでしょうか。
  24. 岡本悟

    岡本政府委員 これは仰せ通りでございまして、たとえば資本費について見ます場合に、主として通勤客激増都市交通の大問題になっているわけですが、これに対しまして私鉄としては相当の投資を行なっておるわけでございまして、この投資による資本費増高経営圧迫材料になっておりますので、特にその公共的使命から申しまして、通勤客激増に対する対策をいかに的確に遂行しておるか、こういうことがやはり審査の基本的な命題になるわけであろうと思います。そこでいかなる工事というものを、通勤定期客輸送解決のために必要であると考えるか、これが審査主要目的でございまして、個々の具体的な工事計画につきまして、全部これを洗いまして、これは通勤輸送関係がある、これはない、それを全部一々区別しまして、そうして必要なものだけ、それに関連度の非常に強いものだけを集めまして、それを工事計画と査定したわけでございます。
  25. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私鉄経営が苦しくなっているという見方をされている。しかし、いろいろな資料を見ますと、別にそう苦しくなっていない。一割二分の高率配当をやっているところが多いわけですから、電力に比べても、電力の方は一割配当に今政策的に押えられているのでしょうけれども私鉄経営がよくないという点と高率配当をやっているという面はどういうふうに理解をしたらよろしいのでしょうか。
  26. 岡本悟

    岡本政府委員 これを大ざっぱに申し上げますと、配当をしているということが問題になっておりますが、すべての事業がそうでございますけれども設備拡張あるいは補修、そういうことのために必要な資金調達というものは、増資あるいは借入金ということになりますが、そのためにはやはりある程度配当を維持することが絶対に必要であろうかと思います。そうしなければ、増資もできなければ、借入金の思うような調達もできないというのが事業界の鉄則であろうかと思うのです。そこでわれわれといたしましては、従来は原価計算をいたします場合には一割の配当率というものは当然認めておったわけでございます。今回とりました原価計算方式によりますと、電力事業と同様な方法をとりまして、いわゆる正当なる資本に対する報酬の率は、投下せられました資本の八分に当たるものは当然正当な報酬として、資本に対しても考えなければならぬというのでございます。そこで、鉄道事業というものが非常に財政上窮屈でありながらなぜそれだけの配当ができるかということでございますが、三十五年度の実績によりますと、大部分がいわゆる兼業によってこの鉄道赤字をカバーし、なおかつ配当原資を生み出しているというのが現状でございます。つまり、たとえば東武の場合で申しますと、東武鉄道株式会社というものが松屋ビルを所有いたしておりまして、それを松屋という百貨店に貸し付けておりますが、その貸付料が相当入って参るわけでございます。あるいは南海電気鉄道の場合には、南海高島屋という百貨店が入っておりますビル、これは南海電気鉄道株式会社のものでございまして、それを貸し付けているわけでございます。そういう貸付料でかろうじて益を出し、また配当原資を生み出し、ひねり出しているというのが実情であろうかと思います。
  27. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 兼業でもうけているという話なんですけれども、これは兼業のものの考え方なんですけれども、結局鉄道があるから関連してそういう仕事ができるのであって、その見方が、鉄道だけを孤立さして計算をした場合は、いろいろ問題があるのは私は当然だと思うのです。だから私鉄経営というものはデパートもやっておりますし、土地造成から、あるいは観光娯楽までやっているのでありまして、その点は、御承知のように公聴会で特に競争路線の少ない西武鉄道につきましてはだいぶ指摘をされているわけで、その上で株価もほかの私鉄に比べて四、五倍にもなっているような状態で、ここが一般の民間企業というような形の中で運賃を上げるということはとうてい納得ができないことだ。むしろ兼業部門も総括的に考えて、そうして公共性というものと独占企業というもの、こういう立場からもっと強く内容について検討すべきだ。むしろ値上げをしなくてもやっていけるのじゃないだろうか。こういう極端な意見すら出ておるのですが、こういう点から考えますと、いわゆる原価計算やり方について、ほかのもうかるものははずして、もうからぬものだけで計算するというやり方自体が、私は問題じゃなかろうかと思うんです。ですから、そのことがやはり一割二分の配当もできるし、別にそう困っていない内容ではないか、こう思うのですが。
  28. 岡本悟

    岡本政府委員 これは実は非常に問題のある点でございますが、地方鉄道を監督いたしまして、その公共的使命を十分に達成させなければならぬ立場にありますわれわれといたしましては、やはり鉄道企業というそのものが、それ自体において採算がとれる、いわゆる健全経営のできる線に持っていってやらなければ、十分監督使命を果たすわけにいかないという見解でございます。つまり、お前は兼業をやっておる、何かサイド・ワークをやって、それでもうかっているのだから、鉄道事業については損してもいいじゃないか。それでどんどん輸送力増強をやって、通勤輸送の問題を解決しろ、こう言っておれるかということでございます。しかも兼業につきましても、たとえば自動車事業につきましても、三十五年度あたりは各社とも多少の益は出しておりますが、しかし、これとても三十六年度以降になりますと、御承知のように大幅なベースアップがございましたので、これも急角度に収支バランスをくずしていくということははっきりいたしております。そういうわけで、やはり鉄道事業公共的使命、特に通勤輸送解決のために莫大な追加投資を余儀なくされる立場にある鉄道事業を監督するわれわれといたしましては、やはり適正な運賃というものを認めてやって、おのずからその公共的使命に徹することができるような、企業意欲がわくような状態に置いてやるのが、正しい監督官庁のあり方というふうに考えております。
  29. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 鉄道企業だけで採算がとれるように考えるということも一つ考え方だと思う。そこで、それでは鉄道企業だけで採算がとれるように考えるという点で、独占的なこういう企業公共性というものは、どこまでを限度として考えるのか。その点は、先ほど八分くらいの配当はできるようにしなければならぬ、こういうように考えられておるのですが、それでは現実に八分以上の配当をしているというのは、総括的なものの考え方でやられておるのですか、どうなのですか。
  30. 岡本悟

    岡本政府委員 先ほど申し上げました八分というのは、資本に対する報酬の率をそういうふうに原価計算上きめた、こういうことでございまして、現実にそれがどういう配当になって現われるかということについては、これは事業者経営努力あるいは経営やり方いかんによることでございます。前回運賃改定までは、配当率は先ほど申し上げましたように一割を限度といたしまして、原価計算に組み入れておりますが、しかし現実には一割にとどまらないで、一割二分のものもございますし、一割五分のものもございますが、これはその経営者経営方針にもよることでございますので、そこまでは干渉いたしておりません。原価計算上は一割しか見ない、こういうことであったのでございます。今回は電力企業と同じような原価計算方式をとりましたので、資本に対する正当報酬ということで考えたわけでございまして、これは八分に押えたのでございます。  それから、なお先ほどたとえば西武鉄道のごとき独占性の非常に高いものは云々というふうなお話がございましたが、これはやはり早い話が運賃にいたしましてもむやみ勝手に値上げができるものではございませんし、監督官庁認可がなければ上げられませんのでございますから、幾らかりに独占性を保持しているといたしましても、いわゆる独占企業としてむちゃくちゃな運賃値上げなり、従ってまた横暴な経営ができるものではございません。  株価の問題も御指摘がございましたが、御承知のように西武鉄道は他の会社に比較いたしますと資本金が異常に過小でございます。非常に資本金が少ないのでございます。その関係でそういうふうになっておるかと存じます。
  31. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで今度の運賃値上げ申請各社内容を見てみますと、これは具体的には実に重大な値上げなんです。たとえば東武鉄道を見てみましても、普通それから定期通勤、通学、普通定期、こういうように分けて見ましても、普通運賃では約二割、定期にしても二割五分から三割になっているわけです。多いところでは西武を見てみましても、普通運賃は今まで西武新宿から本川越まで百円のものが百四十円になる。国鉄の方は、国鉄東武計算して百十円という形で、関連との関係で一応国鉄競争路線との関係を見ながら上げてはいるわけですけれども部分的には相当大幅な運賃値上げになってくるということで、一五%と言っておっても実際にかかるのは四割が最高になっておる。あるいは定期の場合には一番多くて率の五%の改正だ、表面的にはこういわれておりますけれども、実際に適用されるものはどうかと言えば二割五分から三割、実に膨大な運賃値上げになっているのです。この運賃値上げ物価に及ぼすといいますか、通勤者に及ぼす影響は私は重大なものだと思う。乗らない人まで計算をして国民的平均にすれば大したことはない。しかし通勤されている人になってみたら生活費に二割五分、三割というように影響してくるわけですから、これは実に重大な点なんですが、運賃値上げが諸物価にどういうふうに影響されるとお考えになられておりますか。
  32. 岡本悟

    岡本政府委員 これは物価に及ぼす影響というよりか、むしろ家計に与える影響というふうにとらるべきが至当だと思いますが、ごく統計的に申し上げるとあるいは失礼になるかもしれませんが、総理府統計局調査によりますと、主要都市における生計費におきます交通費は二.一%を占めておりまして、この交通費のうちに私鉄運賃として私鉄に支払われるものは二一%でございます。従いまして主要都市における生計費のうちで私鉄運賃の占める割合はわずか〇・四%余りにすぎないという計算になるわけでございますが、しかし仰せのように確かに現実に月二百円なり二百五十円なり通勤定期運賃というものは上がるような申請内容になっておりますから、それはそのまま認可されれば月々それだけ支出がふえてくるわけでございまして、影響がないということは言えないわけであります。だから影響のあることはもちろん認めますけれども、しかし昨今の異常な生活水準の向上による消費の状況を見ますとどの程度の、どういうふうに認可いたしますか最終的なことはもちろんここで申し上げるわけには参りませんが、多少のことは利用者も負担してしかるべきじゃないか。つまりこの運賃値上げによる増収分は、一部分は人件費その他の増高に回されますが、大部分は利用者に還元される性質のものである、こういうふうにお考えいただければ、多少の生計費上の支出増というものは、がまんしてもらってしかるべきじゃないか、こういうふうに考えるのでございます。
  33. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 これは国鉄運賃のときにも問題になったのですけれども、新しい施設をするために運賃値上げをする、このことは特異な存在だと私は思うのです。商売をやっている人が、これから店をよくするために、六百円のワイシャツを七百円にするなんていうのは不可能なんですね。ですから、それは独占企業であるためにこそ、こういうことができるわけでありますから、その場合の値上げというものはよほど厳正でなければならないと思うのです。その値上げをされたものが一体どういうふうに使われるかということは重大な問題だと思うのです。そのことは国鉄運賃のときに十分申し上げましたからやめますけれども、そこで値上げした運賃がどういうふうに投資をされるのか、値上げをしたらどうなりますということについての保証というものはどういうことになっておるのですか。あるいはそれについて監督官庁としての責任といいますか、監督といいますか、こういう部分はどういうふうになっておりますか、御説明願いたい。
  34. 岡本悟

    岡本政府委員 原価計算の対象になりました各社工事計画というものは、先ほども申し上げましたように、各社別に一々の工事につきまして詳細内容検討いたしまして査定をいたしております。しからば、たとえば東武鉄道輸送力増強計画に載せております地下鉄へ直通する車両を四十両作るとか、普通車両を三十両新造するとか、そうして混雑緩和をはかるといっておるが、これははたしてやるのだろうかということでありますが、これは監督官庁の監督能力というものを信頼していただくほかないと思います。必ずこういった工事計画はやらせるという建前で、われわれとしては考えておるわけでございます。また、私鉄にいたしましても、その公共的使命から申しまして、現在におきましても、過去におきましても、懸命に輸送力増強に邁進してきておる実績といいますか、努力というものは目の前に現われて参ります。これはある程度お認め下さることもできるのじゃないか、かように考えております。
  35. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、さっきの運賃計算基準資料と同じように、ここに出ております今後二年間に千百八億の投資計画を持っているということでありますので、一つその計画の資料をお出し願いたいと思うのです。それと、過去の計画と実績を出していただきたい。  そこで、締めくくりで、私が次にお尋ねしたいのは、特に今問題になっておる都市の大手十四社の運審の審議の状況と、その答申の見通しは、いつごろになるのかという点をお尋ねしたい。
  36. 有馬英治

    有馬政府委員 先ほど申し上げましたように、聴聞会をやるものは、やったばかりでございまして、今整理、検討を続けております。われわれの方といたしましては、現在それを積極的に急がせる理由もございませんし、検討の結果を待ってみなければなりませんので、今のところ何月ごろという見通しは、大体においてもつきません。
  37. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 もう一回前へ戻りまして、この前の大手十四社を中心とした運賃値上げ申請と、それの認可と、それの実施、この関係について御答弁願いたいのですが……。
  38. 岡本悟

    岡本政府委員 ただいまのお尋ねは、前回の場合に、申請値上げの率がどのくらいで、実際認可したのはどのくらいかということですか。
  39. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 時期です。
  40. 岡本悟

    岡本政府委員 時期は、ただいまその資料を持っておりませんので、後ほど届けさしていただいてよろしゅうございましょうか。
  41. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 大体のところをお話しになれませんか。
  42. 岡本悟

    岡本政府委員 申請の年月日ですか。
  43. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうです。
  44. 岡本悟

    岡本政府委員 私の記憶では、国鉄運賃改定が三十二年の四月からでございますから、三十二年の四月ごろには申請があったのではないかと思いますが……。
  45. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私が調べたところでは、三十二年の六月ごろから申請になりまして、それから答申が出まして、答申が出てから約半年から一年くらいほってあって、つまり参議院選挙が終わってから私鉄運賃が上がった。ですから申請してから一年半たっているわけです。申請をしてから実際に答申が出て認可になるまで一年半たっている。それは私鉄経営状態によってなったわけじゃない。政治情勢によってなったのです。当時の中村運輸大臣が、おれは運賃値上げに反対だということで、在任中は運賃値上げをしなかったわけです。その次に永野さんが運輸大臣になって、参議院選挙が終わったものですから、選挙でお世話になったかどうかわかりませんけれども認可になったわけです。今度の運賃値上げの問題も、やはり私はそこにかかっていると思うのです。別に私鉄会社内容については、あなたの計算の仕方、私の計算の仕方、あるいは私鉄会社計算の仕方、いろいろあると思うのです。人件費が上がっていることについても私は承知しております。しかし、表面的にはこの間の私鉄の労働者の賃上げについては運賃値上げとは関係ない、こういうことを経営者が言っております。真偽は別として、一応対外的にはそういう言い方をしている。そこで、今運輸政務次官は 運審状態についてはそれが出てこなければわからぬ、こう言われる。確かにその通りだと思うのですけれども、現に運輸審議会の答申がいつごろ出るかということは運輸大臣は知っている。知っているから、臨時国会が終わったら、運賃値上げの問題については、次の通常国会の間までに運賃値上げをせざるを得ないのじゃないだろうかというようなことを記者会見で言っておるわけなんです。この間の本会議の答弁でもそれと似たような答弁の仕方をしている。だから運輸審議会の答申がいつごろ出るかという見通しは大体立っていると思う。ですから、政務次官も、これは御答弁がなかなかむずかしいので、そういうふうに言われておると思うのですが、この運賃値上げという問題は重要な問題であるし、全体的に及ぼす影響というものは大したことはないでしょうけれども、これを現実に利用している利用者から見れば、家計に及ぼす影響というものは実に大へんなことだと思う。  そこで、これ以上、いつ答申が出て、いつから値上げをするのかというようなことを質問することも無理だと思いますので、これは経企長官なり運輸大臣の方にお聞きするといたしまして、運輸審議会というものが、きのうの武州鉄道と同じように、一つの隠れみのという形になって、現実申請を出すまでの間には、相当鉄監局事務当局会社とはもう十分な打ち合わせといいますか、あるいは検討が済んでいる。そのものがよしもう出していいだろうという形で出されてくる。そしてそれが事務的に運輸審議会に渡される。運輸審議会の審議というものは、今言いましたように、三十何社というのがたくさん出ておる。その一つ一つ会社について審査するというのは、実に相当な手数がかかるので、その事務能力があるかといえば、きのうの論議でおわかりになりますように、ない。そうすると、勢い鉄監局で出した意見というものが決定的に運輸審議会を左右して出てくる、こういうことにならざるを得ないと思うのです。ですから、これは武州鉄道と同じように、運輸審議会のあり方というものについても、これについては大臣は積極的に意見がまだないようでありますけれども、十分今検討すべきときにきていると思うわけでありまして、こういう点からも、一つこの際、運輸審議会とそれから運輸省のあり方、それから運賃値上げの及ぼす影響というような点は、今日の所得倍増計画というものが、実は所得よりも物価が上がって、全体的に生活が苦しくなっているというような状態等から考えて、相当慎重にすべきだ、こういうように思うのでありますが、いずれ大臣からも十分お伺いいたしますけれども一つ次官の方でも、この委員会で今審議した内容につきまして十分お伝え願って、次の機会にそれらを十分勘案をした御答弁を願うようにしていただきたいと思います。
  46. 簡牛凡夫

    ○簡牛委員長 久保三郎君。
  47. 久保三郎

    ○久保委員 大体私鉄運賃値上げは予定コースということできておるのじゃないかと世間一般では見ておるわけです。まず突破口として、国鉄運賃値上げをこの四月にやった。その当時は、池田総理も、運輸大臣も、公共料金の値上げについてはやらないのだ、こういうような言明をしていたわけです。ところが、国会が終わり、この国会が始まるまでの間にはだんだんこれが変わってきた。そしてこの間の池田総理の施政方針演説の中でも、サービス部門の料金というか、そういうものについては適正な運賃、料金は容認しなければならぬ、こういうふうに変わってきた。文章の上では、言葉の上では、なるほど適正な運賃、料金は容認しなければならぬ。しかし一部便乗的なものは強い規制措置をとるというのです。もちろん具体的なお話はございません。これから審議をやるわけでしょうが、いずれにしても、これは先ほど勝澤委員からお話があった通り、いつもこういう形でやってくる。しかも、今日経済成長計画というか、こういうものが大きな試練期に入ってきておる。そういうときに、単に運賃値上げが家計に占める比重がどうだとか、あるいは一般物価がどうだとかいうことだけで処理されていいはずのものでないと思うのであります。でありますから、方針の変更はいかなる理由でやってきたのか、これは政務次官にお答えを願いたい。どういう観点からそういうふうに変わってきたのか。当時は、国鉄運賃値上げの際には、そういうものはやらない、こう言明していながら、最近における変更はどうなのか。もちろんこれは総理の演説だから総理にお尋ねしなければなりませんけれども、今日おりませんから、政務次官に政府の一員として御見解をお聞きしたいと思う。
  48. 有馬英治

    有馬政府委員 先般の一番最初のときの方針が今日において本質的に変わったとは、私ども考えておりません。池田内閣の方針は依然として同じであると思っております。ただその間国鉄値上げ等もございまして、これを中軸といたしまして、手直し程度のものはしなければならないということは、前々から政府の方針であったようでございます。従いまして、根本的には運輸行政に対する運賃関係の方針は変わっていない、私どもはそういう前提のもとにものを処理しておるわけであります。
  49. 久保三郎

    ○久保委員 政務次官、手直しというのはいわゆる手直し程度でございます。運賃、料金の値上げを一斉に審議を始めるということとは違うと思うのです。手直しというのは一つの口実でありまして、たとえば東京−日光間の競合路線といえば、国鉄に見合うものは東武であります。この東武の料金と国鉄の料金は、従来一致しておりました。ところが、国鉄運賃値上げの結果、今度は国鉄が高くなった。だからこの調整をやるというのが一つの口実でしょう。当然今お話のある通りの調整だというならば、国鉄運賃値上げと同時に、そういう局部的なものの手直しは同時に審議し、あるいは決定すべき筋合いのものです。ところが今日お出しになってきているものはそうではない。先ほど論議があったように、全然違う。全般的なものです。ですから、これはお話通りには受け取れない。池田内閣の方針には変わりはないというが、もちろん本筋として変わりはないことはわかります。いわゆる国民大衆の生活には無関心であるという方針には変わりはないとわれわれは了解している。いずれにしましても、この運賃値上げするということは、単に一家庭の生活費の中に占める比重がさらに大きくなるというだけで問題をとらえることは今日間違いだと思います。運賃値上げがすべての料金、物価に対して連鎖反応的に値上げしてきた。これは今日そうです。それにさらに拍車をかけるということ自体に、われわれは大きな疑問と不満を持っている。  それからもう一つは、われわれは先般の国会にいわゆる公共負担法なるものを提案いたしております。その中には、いわゆる定期旅客運賃の問題について、これは私の提案説明にも申し上げた通り、その運賃が原価を割ろうが割るまいが、鉄道が赤であろうが黒であろうが、少なくとも国家的な政策でそういう運賃割引を大幅にしなければならぬということならば、この原価までの補償は少なくとも国家がやるべきだというのが公共負担法の提案の大きな筋です。ところがこれに対して私鉄経営者等は何ら今日まで関心を持っておらないのです。でありますから、今日までいわゆる私鉄経営が、特にその中でも定期旅客運賃、いわゆる通勤、通学に相当な赤字が出ているから運賃値上げをしなければならぬという理由には、今日われわれ自身は聞けない。というのは、公共負担法を出した当時に、彼らは公式にも非公式にもそういう声は出さないのでありますから、出さないとすれば、そのねらいは何かというと、これを口実にして一般的ないわゆる運賃値上げをやろう、こういうことにしかとれない。だからこれに対しても十分運輸省当局は検討すべきである、こういうように考えております。いずれにしてもこれは理屈であります。こういうことが、乗客というか、国民大衆が今度の運賃値上げには理解し得ない第一点だと思う。  さらにお尋ねしたいのは、先ほど鉄監局長が、鉄道鉄道一つ独立して企業が持っていけるように考えてやるのが監督官庁としての立場だ、こうおっしゃった。もちろんそういうものもございましょう。鉄道事業一本立の会社もございましょうが、そうでない。大手十四社の大半は兼業部門をかかえて、逆にいえば兼業をやるために鉄道を敷いた、こういうふうにもとれるものがあるわけです。たとえば不動産事業、観光事業あるいはデパート事業、こういうものをやるためには、どうしても足をつけなければならぬということでありますから、逆に考えていかざるを得ない。いわゆる兼業部門と称されるものの企業を有利にするために、鉄道を敷いて鉄道営業をやっている。鉄道兼業だ、こういうふうにも考えられるのです。その論法はいずれにしても、兼業を含めて一つ事業体をなしているのでありますから、企業全体としてこの企業がどうあるかという観点から問題を検討しなければ私は誤りだと思います。ところが、先ほど鉄監局長の言うのは、鉄道事業だけを考えている、これでは話が違う。  それからもう一つ申し上げたいのは、この兼業の黒字で鉄道赤字を埋めているのだ、こう言う。この兼業部門について、しさいな検討をなす権限その他が、はたして鉄監局長あるいは運輸省におありなんでありましょうか。いかがでしょうか。兼業部門についての検討はできますか。
  50. 岡本悟

    岡本政府委員 兼業の問題についてお尋ねでございますが、これは先ほど申し上げました通りでございまして、あくまで鉄道事業そのもの健全経営ができるということでなければ、通勤輸送打開のための積極的な企業意欲投資意欲というものは起こらないのが当然でございまして、この点は、監督官庁として十分配慮してやる必要があると考えるのでございます。と申しますのは、お前の方は兼業でしかるべくやって、そして鉄道赤字を埋めろ、朝晩の激増する通勤客に対応する施設増強せよ、こういうことになりますと、これは当然の結果として、いかに公共事業といいましても一つ事業でございます。企業でございますから、積極的な投資意欲というものは起こらないのが人情の自然であろうかと思うのでございます。御承知のように、一つの車両を作りましても二千五百万円から三千万円要ります。これが、しかも特に朝の通勤のピークに合わせるように輸送力を整備しなければならぬわけでございまして、これは昼間には完全に遊休化する、車庫で眠っておるわけでございます。まあそういう性質の追加投資でございますので、ある程度採算というものは考えてやりませんと、投資意欲が起こってこないのは、これはやむを得ないことじゃないかと思うのでございます。  兼業につきましては、われわれの見方によりますと、沿革的に申しますと、最初私設鉄道を建設いたしますが、これが当初は採算がとれないのが普通でございます。そこで、政府といたしましては、建設後十年間はその建設に対して利子を補給してやる、こういうことで私鉄の建設というものを育成保護して参ったわけでございます。ずいぶん長らくそういう方策が続けられたわけでございます。しかしながら、それにしてもなかなか追っつきませんので、むしろ行政指導といいますか、あるいはみずからの発意によりまして、沿線に住宅を開発するとか、あるいは遊園地を開発するとか、そういうふうなことで、なるべく政府の援助によらないで自立できるような方策を考えて参ったのが、この私鉄の沿線における兼業の歴史でございまして、これは当然のことであろうかと思うのでございます。政府としても、政府みずからの援助じゃなくて、早く自立できるような方策をとるべきだということは、指導してきて参っているのが実情であろうかと存じます。今日の状態はどうかと申しますと、ただいま申し上げましたように、追加投資の大部分通勤輸送のために必要な追加投資でございますので、当然これは昼間は遊んでおるわけでございます。そういたしますと、この資本の効率を高めるということになりますと、なおこの兼業を旺盛にして、できるだけマイナスをカバーしていく、こういうことにならざるを得ないかと思うのでございまして、建設当初の兼業の行き方と、最近における通勤輸送のために追加投資がふえて、それをなるべく遊ばさないようにフルに活用するために、兼業をもっと考えていくということに変わって参ったのでございますけれども、やはり監督官庁としてもある程度兼業をやっていくことはやむを得ないとわれわれは認めておるのでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、兼業鉄道事業本来の赤字をカバーしたらいいじゃないか、こういったことは、われわれ監督官庁といたしましては、私鉄の持つ公共的使命遂行のために、そういう方策はとるべきではない、かように考えているわけでございます。  それから、兼業につきましては、もちろん法律的には何らの監督権限も持っておりません。たとえば、公益事業令によりますと、ガス事業者兼業をやろうとする場合には、これは監督官庁認可が要るのでございますが、そういうことはございません。しかしながら、原価計算上どういうふうになっておるかということのためには、兼業についても当然検討をいたしてみなければならぬわけでございまして、それは今回もいたしたわけでございます。兼業自動車事業がどうなっておるか、あるいは不動産事業がどうなっておるか、そういうものを全部調べてみまして、鉄道プロパーの収支バランスがどうなっておるかということの分析をいたしたわけでございます。
  51. 久保三郎

    ○久保委員 あなたも認めておりますように、私鉄経営が単純なる鉄道経営だけではなくて、それに付帯するというか、兼業を含めての総合企業ということに考えておられるようであります。私もそうだと思うのです。そうだとすれば、その企業全体として経営状態はどうなのか、その中で鉄道事業はどうなのか、あるいは兼業部門といわれるものはどうなのか、このしさいな検討がなされるのが当然である。なるほどあなたは鉄監局長だから鉄道事業に対してだけの検討が重点になると思うのでありますが、現在の都市近郊における私鉄経営は大体総合経営になってきた。また、実際そうすべきなんです。そういうことになれば、運賃値上げの問題も当然総合的な事業体の中身の検討から入らなければいかぬであろうからして、兼業部門から鉄道赤字を埋めることは間違いである、こういうことは決して言い得ないと私は思うのです。総合的な経営がそれでプラスになっていれば、それはそれでいいんじゃないかとわれわれは考えるのです。もちろん、そういう経営形態ばかりではございませんから、それについてはなるほど鉄監局長独自の立場でこれはやるべきがよいと思うのです。ところが、そういう格好ではないのであります。これが問題の一点だと思います。しかも、これからいろいろなレジャー・ブームとか、あるいは消費経済が相当伸びてくるということになりますれば、都市近郊の鉄道は総合的な経営形態に置きかえていくのが当然であろうし、またそうあるべきであると思う。きのうも質問の対象になった、西武事業計画は不動産事業と観光事業——貨物事業などはどうでもよいという格好である。実際これ一つ見てもそうである。だから、運賃値上げが単に通勤輸送がどうのこうのという問題ではないとわれわれは考えている。これが私のあなたに対する反論であります。  もう一つは、ラッシュ時にたくさんな車両を使って、あと昼間は寝せておくということでありますが、そういう見方一つあります。ありますが、それじゃまず第一に、運賃物価の指数といいますか、比較、これはあなたの方でお出しになったものもあるし、大体私鉄経営者が出したものを鉄監で焼き直したので、中身は同じであります。この中にもありますが、これは国鉄運賃のときにも話が出ましたが、この中でほかの物価に比較して——いろいろあります。たとえば電話料金とかあるいはガス料金、新聞料金、この比較が書いてありますが、この比較は、結論から言えば当たらぬということです。なぜ当たらぬかといえば、運賃収入そのものの比較になっておらぬ。たとえば西武なら西武一つをとりましても、なるほど運賃の比較からいえば、これはほかの物価に比べれば非常に低い、こういうことをよく言うのです。ところが運賃収入はどうかというと、これら三千倍にもなっている。極端なことをいえば、今まではちゃんとすわって通勤、通学ができた。今日は足がどこへいっているかわからぬほどの混雑だということになりますれば、これは三倍にもなったわけですね。一つの車両で三倍運ぶ。これが昼間寝ていても、ものの計算からいえば何ら不思議はないわけです。なるほど鉄道経営者のいわゆる回転効率を考えれば、昼間の遊休車両は何とかしてこれをかせがせねばならぬことは当然ですが、これは別個の話です。物価との比較ではそういう比較は当たらぬというのです。その当該する線路のいわゆる運輸収入が過去と現在ではどの程度ふえておるか、それが物価との比較ならわかりますよ。ところが運賃単位の比較ではこれはわからぬ。一区間今まで二十円、これは戦前に比べてまだ百倍にしかなっておりません、こういう比較はありません。ここに問題のいわゆる数字のマジックがある。これに対して鉄監局長はいかが思いますか。
  52. 岡本悟

    岡本政府委員 通勤客のために追加投資を行なう、特に車両については、朝のピーク時に使うだけであとは遊んでおるのが実情だということを申し上げましたところ、しかし、昼間は遊んでいるけれども、ピーク時には戦前に見られないような高い乗車効率で、つまり定員の二倍も二倍半も乗っけて、ぎゅうぎゅうすし詰めにして輸送しているから、ちゃんと元は取っておるじゃないか、こういう御質問のようでございます。従いまして、それから推していくと、諸物価との比較というものは数字の魔術だ、こういうふうに御指摘に相なったのでございますが、しかし静かに考えてみますと、通勤定期の割引率というものは御承知のように非常に高いのでございます。つまり普通の旅客が一〇〇払っておるところをその二割なりあるいは三割なりで、百円のところを二十円か三十円払えば乗れるのであります。それを二倍乗せましても、普通客の払う運賃額は収受できない、こういう計算に相なるわけでございまして、おそらく、これを詳細に計算してみますと、かりに一車両二千五百万円で調達するといたしましても、その車両から上がる金額では利息も払えないという状態になるんじゃないかという計算になろうかと思います。これはまた詳細数字が必要でございましたら差し上げることにいたしたいと考えます。
  53. 久保三郎

    ○久保委員 それでも赤字になるという御説でありますが、赤字になるところもあるでしょう。私もそうだと思う。しかし、国鉄の中央線は、原価計算からいって黒字なんです。ほとんど通勤者なんです。昼間遊んでいる車両もありましょう。これは一つの例でありますが、お約束いただけましたから、みんな赤字なのかどうか原価計算を出してほしい。  それからもう一つ運審諮問をする際にはどういう形をとっているのでしょうか。不敏にしてよく知りませんからお教えをいただきたいのでありますが、いわゆる運賃申請があったから、審査してこれに対しての意見を求めるということでございますか。それとも、かくかくの事情がある、いわゆる運輸大臣としての意見をある程度つけて出すのですか、なまのまま出すのですか、どっちですか。
  54. 岡本悟

    岡本政府委員 申請書そのもの運輸審議会諮問いたしまして、同時に申請書内容につきまして詳細説明いたすのが例でございます。
  55. 久保三郎

    ○久保委員 説明の場合は、運輸省としての見解をはさんでやるわけなんですね。
  56. 岡本悟

    岡本政府委員 そうではございません。申請そのものについて説明いたしまして、それから運輸審議会の独自の審査が始まります。その過程において先ほども申し上げましたように、いろいろ疑問になる点が出て参りますと、われわれ事務当局を呼びまして質問をいたします。審議が大体終末に近づきまして、運輸省はどういう見解を持っておるのだというふうなことを運輸審議会側が聞くのが例でございまして、そのときになって運輸省としてはこういう程度に査定をしたらどうだということは申し上げる場合があるのでございます。
  57. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、この「大手私鉄経営の実情と問題点」ですか、これはいつ出しましたか。八月ですね。運輸審議会公聴会は先般行なわれておるわけです。これには改定の必要性が書いてある。改定の必要性のないことととか私鉄の言い分だけを書いておるのではなくて、改定の必要性を書いておる。鉄監局長の言うことと違う。すでに運輸省の見解は表明されておる。どの程度にするかは別にして、運賃改定の必要性は、今の答弁からも、これからも出ている。これで運輸審議会が公正な判断ができると思いますか。あなたの方の意見をあとから聞く必要はない。あらかじめ事前に運輸省の見解を述べておる。  それではお尋ねしますが、運輸審議会には当初運輸省の見解は申し上げないで事情を説明するということでありましたが、事情説明とはこの私鉄から上がってきた申請書そのものについてのいわゆる代弁をなさることでありますか。
  58. 岡本悟

    岡本政府委員 八月に出した「大手私鉄経営の実情と問題点」という資料が出ておって、それでは運賃改定の必要性というものを肯定しておるではないか。こういうものを運輸審議会に出して、あらかじめその審議を拘束するようなやり方は、お前がさっき言った申請そのもの内容を説明するということと矛盾しておるではないかというお話でございますけれども、私はそうは思いません。やはり運輸審議会が審議されるにつきましては、なるべく親切に詳細に私鉄の現在の問題点というものを分析し、またまとめまして、審議の有力な参考にするということは事務当局としても当然必要であろうかと存じております。ただ申請だけを出して、それでお前の方で全部やってくれというよりか、問題点はこういうところにあるのです。経営の実情というものはこういうものでございます、こういうことを分析しあるいはまとめて出すということは、私は、何ら拘束するものではなくて、むしろ非常に審議を助けるといいますか、促進すると申しますか、いずれこういった資料要求が出てくることは、従来の例からもはっきりいたしておるのでございますから、そういうはっきりしたものはあらかじめ用意いたしまして、手間を省くということもあろうかと存じます。そういった意味でございます。
  59. 久保三郎

    ○久保委員 大へん高い姿勢でお話がありますが、大体運輸審議会は独自の立場で判断するということでありますが、運輸省の言い分はわかった、私鉄の言い分はわかったということでありましょうが、運輸省監督官庁として、しかも最終決定の権限はあなたの方でお持ちになっている。お持ちになっているものが、先にこういう見解を表明すること自体、これは拘束しないというのはおかしいじゃないですか。詭弁じゃないですか。なるほどこの中には問題点は書いてあるが、問題点というのは全部これは値上げをしなければならない理由なんです。これは私鉄経営者連盟と同じですよ。私鉄経営者連盟の窓口ですよ、これは。そういうことが監督官庁としてあり得べきはずはない、そこを申し上げておる。手間を省くとかなんとか言っておるが、すでに運輸省の意見はこれできまったということじゃないですか。あとはサル芝居の舞台として運輸審議会を開いて、そして公聴会を開いてやっておる。だから先ほど勝澤委員お話も、運審の答申はすでに早いところ出そうと思ったが、国会がまぎわになって、武州鉄道の問題も出ておるから、これはあまり出さぬ方がいいだろうということで、運審の答申はもう少し待ってくれないかということでしょう。そうでしょう。だからこの国会が終わればそろそろ出してよろしい、こういうことに話がいくのじゃないのですか。そういうことからいけば運輸審議会などは存在価値はない。しかしこの問題点を出して因縁をつけるわけではありません。これはけっこうです。問題点はわかる。しかし、これは少なくともあなたの方で言うように公正な立場から判断したものとは私は思えない。なぜかといえば、これはほとんどが私鉄経営者連盟の資料と同じですよ。符節を合わせたのです。どこか監督官庁としてニュアンスが違うとか、数字が違うところが少しありそうなものだがそうじゃない。手数を省いてある。これは運輸大臣が来てから、もう一ぺん最高責任者だから聞きますが、少なくともそういうところに国民大衆は不信の念を持っておる。鉄監局長というのは私鉄経営者なり国鉄経営者のめんどうを見ることが職責の全部であるのでありましょうか、お答え願います。
  60. 岡本悟

    岡本政府委員 私は鉄道の監督行政をやるにつきましてかねがね心がけておりますことは、われわれ監督官庁というものはあくまで利用する大衆をいかにして保護するか、あるいは反面大衆の要望にこたえていかに私鉄公共的使命を遂行させるかということに主眼を置いてやらなければならぬ、かように考えておりますが、運賃の問題になりますと、利用大衆の保護という観点からいいますと、なるべく上げないのが利用大衆の利益には合致するわけでございまして、これは当然なことでございますが、しかしさればといって究極的に考えてみますと、健全経営ができなくて、従って健全なるサービスの提供ができないということになりますと、これはまた結局は利用大衆に迷惑がかかってくることに相なりますので、やはりある程度利用者のそういう要求と——個々の利用者ではなくて大局的な、客観的につかんだ利用者の真の要求というものとをうまく調和させまして、その公共使命を遂行させていくというところに苦心の存するところがあるのじゃないかと考えております。でございますから感情的にいえばもちろんなるべく上げたくないというのがわれわれの心情でございますし、また反面そうかといって、これだけの定期客が激増して参っております今日でございますので、通勤輸送のための輸送力増強ということが大問題でございます。これはあえて御指摘申し上げるまでもございません。そこでこの二つの要請というものをうまくさばいていくというのが、監督官庁の責務であろうかと考えておるのでございます。
  61. 久保三郎

    ○久保委員 国民大衆というか、利用者の立場考え、さらに企業経営者立場考えて、そこで調和点を見つけていくと言うのですが、今のお話の末尾には通勤輸送は大問題であると言うが、きょう起きた問題でありますか、今年起きた問題でありますか、お尋ねしたい。きょうこのごろ起きた問題ではなくて、従来からあったわけですね。この前の運賃値上げは三十二年ですか、何年か知りませんが、少なくともそのころからずっとあるわけです。三十二年かそこらの前回運賃値上げは、やはり輸送力増強というのが一項目大きくあげられてある。ところが先ほどの御答弁ではそれも着実に誠意を持ってやっておりますと言われる。ほんとにやっておるかどうかはあと資料をもらいますけれども、実際にはそうじゃない部面が相当ある。これは公聴会においてもそれぞれ利用者大衆から意見が出たと思う。それからもう一つは、たとえばその後急にきたというなら、そのきた時点において運賃並びに経営全体を検討しなければならぬ。それが監督官庁のあり方だ。ところが今日一斉に値上げというか、申請を出すことについて、まず第一にわれわれは疑問がある。経営は個々体において違うし、地域においても違うのでありますから、全体としてももちろん先ほどからお話通り物価の問題があり、あるいは人件費の問題もあろう、しかしながら個々に違ったいろいろの経営形態があるわけです。通勤輸送一つとっても、都市近郊の問題はきょうこのごろ起きた問題ではない。そのときどうしても解決するというならばどうしたらよい、そのためには当然運賃値上げをしなければならぬというなら、あるいはある特別の一社だけ許可すればよい。今日までほとんどやっておらなくて、今日一斉に値上げすることは便乗値上げだと思う。それでなければ今までの監督官庁としてのあり方は怠慢だ、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  62. 岡本悟

    岡本政府委員 もう御承知のように大都市近郊におきます通勤輸送の問題が、非常に大きな問題として取り上げられましたのは、御指摘のように今に始まったことではございません。すでに昭和二十七、八年ごろから相当大きな問題になっておりまして、運輸省としましても都市交通審議会を設置いたしまして、都市交通解決のための方策をいろいろ審議して参っており、またきまったものはどしどし実施に移しておるのでございます。これはもう御承知通りでございます。先般の運賃改定におきましてもやはり私鉄大手につきましては、第一次五カ年計画というものを策定させまして、輸送力増強の具体的方策を立てさせたのでございます。そしてこれを必ず実施することを確約させております。それが運賃改定の大きな裏づけになっておるわけでございまして、すでに数字でももちろん申し上げますが、日々御利用になっておる方は、ホームの長さがより長くなり、あるいは連結車両が四両のものが五両になり、あるいは六両になる、あるいは運転間隔が今まで三分のものが二分三十秒になるとか、そういう輸送力の改善が着々行なわれておるということは、もう実際利用者の目に見えることでございますので、この点は監督官庁として怠慢だとかなんとかいう御指摘がございましたが、われわれとしては懸命の努力を払いまして、輸送力増強には十分の督励をしておるつもりでございます。今回の運賃改定はやはり輸送力増強の過程から見まして、資本費増高、あるいは人件費の増加ということなどから、一つの前提的な判断として、その公共的使命を十分に遂行させるためにはある程度値上げはやむを得ない、こういうふうな判断があるわけでございます。
  63. 久保三郎

    ○久保委員 運審の答申も出ないうちから、今の結論はある程度運賃値上げはやむを得ないということなので、もう運賃値上げはきまったようなものですね。あと運審の答申があろうが、それは数字の点で幾らかはありましょうが、いずれにしてもそれは別にして、怠慢ではないと言われるが、私が言いたいのはなるほど一生懸命やられたでありましょう。やられたでありましょうが、運賃値上げというものは何も一斉にやらぬでも、必要があればそれを個別に検討させる必要がありはしないか。それをやらぬできて、一斉に値上げというのは少し怠慢ではなかったかと私としては言いたい。そうでないと言うのなら仕方がない。ところが先ほど勝澤委員に対して、独占の企業であっても私がおる限りはそうはさせておりません、こういうような答弁がありましたね。それじゃ、西武に例をとりましょう。御承知通り西武サービスが一番よくない。この近辺では評判が一番悪い。それで、しかも先ほど言ったように、資本構成は自己資金というか、資本金は非常に少ない。それで株価が六百円にもなっている。資本調達のことは監督官庁としてもサゼスチョンをするのが当然だと思うのですが、こういうことはいまだにやっておらぬ。そうだとすれば、これはちょっと怠慢ではなかろうか。怠慢だときめつけては、またあなたに高い姿勢になられるから、なかろうかと言うのです。こういうことで、今日大手十四社全部くつわを並べてきておる。あるいは中小三十五社がきた。一々チェックしなければならぬ。ところが大手十四社を先にやっていく。ほんとうに私鉄経営一本で、いわゆる兼業関連事業が何もないところには、だれから見ても赤字で困っている面がある。そういうものをあとから審議することにして、大手十四社が今日審議にかかっておる。公聴会もあったようですが、こういう順序はちょっと違いやしないかと私は思う。中小企業の中で一番ひどいやつから審議するのが当然じゃないですか。こういうふうな疑問が一つあります。これを一つお答え願いたい。  もう一つは、都市近郊における総合的な交通体系を、今日まだ政府は確立しておらぬ。その中で、いろいろな口実をつけてと言っては語弊がありますが、運賃体系だけをどんどん変えていこうとする。こういうことでは交通の秩序がさらに混乱することになると思う。今度も申請通り上げるかどうかは別にして、いろいろな問題が出てくると思う。こういう総合的な体系をなおざりにしておきながら、運賃だけは多少の値上がりはやむを得ないと思っているというふうな結論を監督官庁として出されることは、少しどうかと思う。だから、総合的な交通体系についてどういうふうに考えているか。それと今度の運賃値上げとをどういうふうに関連して考えたらいいのか、これを一つ御説明いただきたい。
  64. 岡本悟

    岡本政府委員 前段の、西武鉄道サービス云々の問題が出ましたが、私個人のことを申し上げて大へん恐縮でございますが、かつて西武線の沿線に私、居住しておったことがございますが、ほかと比較いたしまして必ずしもサービスが悪いということはないと考えます。車両もどんどん新造しておりますし、それから駅の改築もどんどんやっております。たとえばアイランドホームであったものを両側のホームにするとか、そういうふうな施設の改善はどしどしやっておるのでございます。それからまた車内放送施設あたりは西武が一番初めに取り上げたのじゃないかと思っておりますが、国鉄がまだやらないうちからやっております。そういうわけで私は必ずしもサービスの改善を怠っておるというふうには考えておりません。  それから第二のお尋ねの点でありますが、運輸省は総合的な都市の交通対策というものを考えていない、ただ運賃値上げして、そうして輸送力増強の力をつけてやればそれで能事終われり、こういうふうに考えておるがこれはどうも解せない、こういうお尋ねでございますが、これも先ほど申し上げましたように、運輸省といたしましては都市交通審議会も設けまして、すでに昭和二十九年ごろから都市交通問題には積極的に取り組んでおるのでございます。そのためにわざわざ都市交通課というものも設置いたしまして積極的な意欲をもって取り組んで参ったつもりでございます。ただ御指摘の点が正しいとすればわれわれの努力が足りなかったのでございまして、この点はあやまらざるを得ませんが、しかし少なくとも、客観的な評価は別としまして主観的な面におきましては一生懸命にやっておるつもりでございますし、総合的な対策も講じておるつもりでございます。たとえば、しばしば都市交通についていわれますことは、特に東京あたりについては、国鉄に対しまして都市交通の負担があまりに不均衡にかかり過ぎる、こういうことが指摘されて参りましたが、そのためには私は地下鉄の新しい建設のものにつきましては、郊外私鉄と直通運転をはかるというふうなことによりましていわば国鉄のバイパス的な役割を持たせる、こういう方法を講じて参りまして、できるだけ国鉄の負担を少なくするということを考えて参ったつもりでございます。ただこれ以上のことを申しますと、運賃の、特に定期運賃の問題について、国鉄私鉄を通じまして同じ運賃額で大体同じ距離を通勤できるという状態になりますと、もっと理想的な姿が出て参ると思いますけれども、これはいずれ近い将来のうちにそういう方策をとる必要があると考えまして、いろいろ研究をいたしておる段階でございます。今お答え申し上げましたのは、総合的な対策が足りないというのは、そういう点について足りないということを御指摘に相なったのではないかと、私、勝手に御推察申し上げましてお答え申し上げましたので、もし的がはずれておりましたら、どういう点が具体的に足りないのか御指摘願えれば、またお答えできるかと存じます。  それから、中小私鉄あとにして大私鉄運賃改定ばかり審査しておるじゃないかというお話でございます。これは全くそうではございません。すでに先ほど申し上げましたように、最近も六社運賃値上げを認めておりますし、次の十三社につきましてもすでに運輸省としては審査を終わりまして、運輸審議会の答申も出るばかりになっておりますし、経済企画庁とも連絡をとっておるような次第でございまして、大私鉄のみやって中小私鉄を置き去りにしておるというのは、何かのお考え間違いではないかと思います。
  65. 久保三郎

    ○久保委員 考え間違いがあれば、今のは訂正なり取り消しもいたしましょう。しかし、一番先に申された通勤運賃の問題でありますが、通勤運賃の問題にしても、今お話しの通り何らお見通しは今日ないというのでありますから、運賃値上げが、さらにこれを混乱させるということも考えられる。そういう意味で総合的な体系は立っておらないのじゃないか。なるほど努力はしていますよ。努力はしていますが、都市交通全体に対しての体系も、あるいは首都圏自体というか、東京自体の問題も解決しておらない。なるほどやってはおるのです。地下鉄も延ばす、何号線を建設させる、しかし遅々としてはかどらない。そういう問題は運輸省自体、政府自体の責任でありますから、これを忘れて、監督官庁運賃値上げだけを検討して、私鉄経営者に多少は値上げをしてやらなければならぬということは筋が違うのじゃないか。こういうことを言いたいのです。それから中小私鉄の問題ですが、運賃値上げを前提に物事を判断しろとは言わないのです。経営自体が苦しいものが相当ある。苦しいから直ちに運賃値上げということではございませんぞ、誤解のないように申し上げておきます。これはいわゆる国策としてやる必要があるなら、それに見合ったものも考えなければいかぬ。こういうのが全然今までは考えておらない。しかも運賃申請があって、運賃値上げをしてはどうかというふうに言われれば、値上げをしても仕方がないのじゃないか、こういう前提に立って審議をすること自体、国民大衆はどうも解せない。こういうことであります。いずれにしても、この池田内閣というのはうそを申しませんというのでありますが、どうもたびたび時期をはずれるというと、うそを申し述べるようであります。この運賃値上げも、先ほど申し上げたように、前には公共料金の値上げはやらない、こういうことを言いながら、今度は適正なものはやるほかないじゃないか、こういうふうに変わってきた。これはうそというか、一つ公約違反ということでありますが、いずれにしてもその問題と関連して、今日の経済成長というものには大へんなゆがみがきている。これを直すにはどうしたらいい、特に物価問題はどうしたらいいか。ところが規制するどころでなくて、これを全部野放しにしよう、政府が権限を持っているものをまず第一にやって、あとはついてこい、こういう態度でおられるように考えるのであります。われわれも含めて一般大衆というものはそういうふうに考えている。この解明がなければ、私鉄運賃値上げというか——値上げですね、あなたの考えているのは値上げですから、値上げについてはこれはやるべきではない、こういうようにも考えます。いずれにしても、きょうは政務次官だけでありまして、まあ政務次官からいろいろお話もございましたが、なお重要な問題でありますから運輸大臣にもお尋ねする事項がありますけれども、きょうはこの辺でやめておきますが、監督官庁である監督局長は十分いろいろな点から国民大衆の誤解があれば誤解を解く、あるいは思い違いがあれば思い違いを解いてやる、こういう工夫をなさるのが当然だと思うので、われわれの言ったこともやはりある程度考えて、次の機会にでもよく要望に沿うようにしていただきたいと思うのであります。以上。
  66. 簡牛凡夫

    ○簡牛委員長 次会は来たる十日火曜日午前十時より開会することにいたします。  なお理事会は来たる九日月曜日午前十時半より開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三分散会