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岡本政府委員 兼業の問題について
お尋ねでございますが、これは先ほど申し上げました
通りでございまして、あくまで
鉄道事業そのもので
健全経営ができるということでなければ、
通勤輸送打開のための積極的な
企業意欲、
投資意欲というものは起こらないのが当然でございまして、この点は、
監督官庁として十分配慮してやる必要があると
考えるのでございます。と申しますのは、お前の方は
兼業でしかるべくやって、そして
鉄道の
赤字を埋めろ、朝晩の
激増する
通勤客に対応する
施設を
増強せよ、こういうことになりますと、これは当然の結果として、いかに公共
事業といいましても
一つの
事業でございます。
企業でございますから、積極的な
投資意欲というものは起こらないのが人情の自然であろうかと思うのでございます。御
承知のように、
一つの車両を作りましても二千五百万円から三千万円要ります。これが、しかも特に朝の
通勤のピークに合わせるように
輸送力を整備しなければならぬわけでございまして、これは昼間には完全に遊休化する、車庫で眠っておるわけでございます。まあそういう性質の
追加投資でございますので、ある
程度の
採算というものは
考えてやりませんと、
投資意欲が起こってこないのは、これはやむを得ないことじゃないかと思うのでございます。
兼業につきましては、われわれの
見方によりますと、沿革的に申しますと、最初私設
鉄道を建設いたしますが、これが当初は
採算がとれないのが普通でございます。そこで、政府といたしましては、建設後十年間はその建設に対して利子を補給してやる、こういうことで
私鉄の建設というものを育成保護して参ったわけでございます。ずいぶん長らくそういう方策が続けられたわけでございます。しかしながら、それにしてもなかなか追っつきませんので、むしろ行政指導といいますか、あるいはみずからの発意によりまして、沿線に住宅を開発するとか、あるいは遊園地を開発するとか、そういうふうなことで、なるべく政府の援助によらないで自立できるような方策を
考えて参ったのが、この
私鉄の沿線における
兼業の歴史でございまして、これは当然のことであろうかと思うのでございます。政府としても、政府みずからの援助じゃなくて、早く自立できるような方策をとるべきだということは、指導してきて参っているのが実情であろうかと存じます。今日の
状態はどうかと申しますと、ただいま申し上げましたように、
追加投資の大
部分は
通勤輸送のために必要な
追加投資でございますので、当然これは昼間は遊んでおるわけでございます。そういたしますと、この
資本の効率を高めるということになりますと、なおこの
兼業を旺盛にして、できるだけマイナスをカバーしていく、こういうことにならざるを得ないかと思うのでございまして、建設当初の
兼業の行き方と、最近における
通勤輸送のために
追加投資がふえて、それをなるべく遊ばさないようにフルに活用するために、
兼業をもっと
考えていくということに変わって参ったのでございますけれ
ども、やはり
監督官庁としてもある
程度兼業をやっていくことはやむを得ないとわれわれは認めておるのでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、
兼業で
鉄道事業本来の
赤字をカバーしたらいいじゃないか、こういったことは、われわれ
監督官庁といたしましては、
私鉄の持つ
公共的使命遂行のために、そういう方策はとるべきではない、かように
考えているわけでございます。
それから、
兼業につきましては、もちろん法律的には何らの監督権限も持っておりません。たとえば、公益
事業令によりますと、ガス
事業者が
兼業をやろうとする場合には、これは
監督官庁の
認可が要るのでございますが、そういうことはございません。しかしながら、
原価計算上どういうふうになっておるかということのためには、
兼業についても当然
検討をいたしてみなければならぬわけでございまして、それは今回もいたしたわけでございます。
兼業の
自動車事業がどうなっておるか、あるいは不動産
事業がどうなっておるか、そういうものを全部調べてみまして、
鉄道プロパーの
収支の
バランスがどうなっておるかということの分析をいたしたわけでございます。