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1961-03-30 第38回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月三十日(木曜日)    午前十時四十九分開会    ――――――――――   委員の異動 本日委員大矢正君辞任につき、その補 欠として森元治郎君を予算委員長にお いて指名した。    ――――――――――  出席者は左の通り。    主査      塩見 俊二君    副主査     阿具根 登君    委員      大泉 寛三君            館  哲二君            手島  栄君            村松 久義君            木村禧八郎君            森 元治郎君            田畑 金光君            辻  政信君            岩間 正男君   担当委員外委員            羽生 三七君   国務大臣    外務大臣    小坂善太郎君   政府委員    外務政務次官  津島 文治君    外務大臣官房長 湯川 盛夫君    外務大臣官房会    計課長     吉田 健三君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省欧亜局長 法眼 晋作君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      鶴岡 千仭君    外務省移住局長 高木 広一君   説明員    外務省アジア局    外務参事官   宇山  厚君    外務省経済局政    策課長     鶴見 清彦君    ――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)    ――――――――――
  2. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和三十六年度総予算外務省所管を議題といたします。まず、政府説明を求めます。
  3. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 外務省所管昭和三十六年度予算について大要を御説明いたします。  予算総額は百五十二億三千二百五十五万二千円で、これを組織別に大別いたしますと、外務本省六十八億四千九百四万一千円、移住あっ旋所四千二百十一万一千円、在外公館八十三億四千一百四十万円であります。  ただいまその内容について御説明いたします。  第一、外務本省一般行政に必要な経費十三億五千二百八十三万六千円は、外務省設置法に定める本省内部部局及び附属機関一般事務を処理するため必要な職員一千五百十八名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費六億七千万円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また各種条約、協定を締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため本行に必要な工作費であります。  第三、アジア諸国に関する外交政策樹立及び賠償実施業務処理等に必要な経費千七百六十七万三千円は、アジア諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整並びに賠償の円滑かつ統一的な実施をはかるため必要な経費であります。  第四、欧米諸国等に関する外交政策樹立に必要な経費千五百八十四万八千円は、北米、中南米、西欧、ソ連東欧、中近東、アフリカ及び英連邦諸国に関する外交政策企画立案及びその実施に必要な経費であります。  第五、国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費千七百六十九万円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査、及び通商交渉を行なう際の準備等に必要な経費であります。  第六、海外経済技術協力に必要な経費八億七千二百八万二千円は、海外との経済協力に関する企画立案及びその実施総合調整を行なうとともに、コロンボ計画等に基づく技術者交換及び各種技術センター設立等経済技術協力実施するため必要な経費で、技術協力実施委託費四億七千五百八十四万八千円、海外技術センター事業委託費二億四千九百四十九万九千円、メコン河開発事業調査委託費、五千五百十七万九千円、国際技術調査委託費千五百八十二万三千円、社団法人アジア協会補助金二千七十三万四千円、財団法人国際学友会補助金三千六百七十九万七千円、社団法人ラテンアメリカ協会補助金千四百五十万六千円であります。前年度に比し六千八百八十七万四千円の増加技術協力実施委託費海外技術センター卒業委託費メコン河開発事業調査委託費、及び財団法人国際学友会補助金社団法人ラテンアメリカ協会補助金増加によるものであります。  第七、条約締結及び条約集編集等に必要な経費四千八灯五十四万六千円は、国際条約締結、加入及び条約集等編集条約典型作成条約国際法並びに内外法規調査研究のため必要な事務費であります。前年度に比し三千六百八十六万円の増加国際司法裁判所への応訴に必要な経費増加によるものであります。  第八、国際協力に必要な経費二億四千三百六十七万五千円は、国際連合等に対し協力するため国際連合機関との連絡、その活動調査研究等に必要な事務費及び諸種の国際会議わが国代表を派遣し、また本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会補助金千百二十四万二千円、財団法人日本エカフエ協会補助金六百八十五万円、財団法人日本ユニセフ協会補助金百七十七万円であります。  第九、情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費二億六千二百四十六万二千円は、国際情勢に関する資料の入手、海外に対する本邦事情啓発及び国内啓発並びに文化交流を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な啓発宣伝資料作成購入に必要な経費と、財団法人国際文化振興会補助金二千九百五十六万九千円、財団法人国際教育情報センター補助金四百八十八万円、及び啓発宣伝事業委託費四千万円であります。前年度に比し五千百三十八万三千円の増加宣伝啓発費及び終発宣伝事業委託費等増加によるものであります。  第十、海外渡航関係事務処理に必要な経費二千四百二万八千円は、旅券の発給等海外渡航事務経費と、その事務の一部を都道府県に委託するための委託費千二百四十八万八千円であります。  第十一、国際分担金等支払いに必要な経費十九億七千一百四十四万五千円は、わが国が加盟している国際機関各種分担金及び拠出金等を支払うため必要な経費であります。前年度に比し九億一百七十八万四千円の増加国際連合分担金後進国経済開発技術援助拡大計画及び国連特例基金拠出金ユネスコ分担金及びアジア生産性機構分担金等増加によるものであります。  第十二、旧外地関係事務処理に必要な経費百万五千円は、朝鮮、台湾、樺太、関東州等旧外地官署職員給与、恩給の支払いその他残務整理に必要な経費であります。  第十三、旧外地官署引揚職員等給与支給に必要な経費千四百万円は、三十六年度中の旧外地官署引揚見込職員五名と未引揚職員百七十九名の留守家族に支払う俸給その他諸給与等であります。  第十四、移住振興に必要な経費十三億三千七百七十五万一千円は、中南米等に移住する者一万一千人を送出するための旅費、事務費及び渡航費貸付金七億九千四百五十五万七千円、日本海外協会連合会補助金四億三千六百十八万三千円、移住者支度費補助金五千五百十九万五千円、農業労務者派米協議会補助金千九再九万七千円等移住事業振興をはかるため必要な経費であります。前年度に比し一億九千六百九十一万七千円の増加移住者渡航費貸付金及び日本海外協会連合会補助金等増加によるものであります。   組織移住あっ旋所。  第一移住あっ旋所業務処理に必要な経費四千二百十一万二千円は移住者選出の万全を期するため本邦出発前に健康診断、教養及び渡航あっせん等業務を行なうため必要な経費であります。前年度に比し一億二千九十八万円の減少横浜移住あっ旋所新営費の減少等によるものであります。   組織在外公館。  第一、在外公館事務運営等に必要な経費七十億一千九百六十九万五千円は、既設公館九十八館二代表部七百八十五名と三十六年度新設予定の在スーダン、布セネガル大使館、在レシフエ総領事館のために新たに必要となった職員十二名並びに在パラグァイ、在ウルグァイ、在ボリビア、在エクアドル各公使館、在カサブランカ、在プレトリア各総領事館、在レオポルトビル領事館大使館昇格ナイロビ領事館総領事館昇格及びこれ等を含め既設公館職員増加三十七名、計八百三十四名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費七億三千万円は、諸外国との外交交渉わが国に有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。  第三、対外宣伝及び国際文化事業等実施に必要な経費一億四千三百八十六万五千円は、わが国と諸外国との親善に寄与するため、わが国の政治、経済文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに国際文化交流を行なう等のため必要な経費であります。前年度に比し六千四百二十七万二千円の増加視聴覚啓発及び対外広報活動に必要な経費増加によるものであります。  第四、在外公館営繕に必要な経費四億四千七百八十四万円は、在トルコ大使公邸新営(第一年度)、在ブラジル大使館連絡事務所新営、在アメリカ大使館事務所増築(第二年度)、在タイ大使公邸土地建物購入、在ヴィエトナム大使館事務所土地建物購入及び在外職員宿舎の新営並びに在外公館事務所及び館長公邸建物補修費等であります。  以上がただいま上程されております外務省所管昭和三十六年度予算大要であります。詳細御審議のほどお願いいたします。    ――――――――――
  4. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) この際分科担当委員の変更について報告いたします。  大矢正君が辞任され、その補欠として森元治郎君が選任されました。    ――――――――――
  5. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) これより質疑に入ります。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  6. 岩間正男

    岩間正男君 私は、予定した質問をやるに先だちまして、緊急な質問一ついたしたいと思うのであります。  それはほかでもございませんが、きょうの新聞紙の報じるところによりますというと、国連福島代表AP電記者に語って、二つ中国を認める、こういうような談話を発表しておるようであります。このことは今まで池田内閣としては公式に声明された言葉でないように思うので、私は非常にこの発言は重大だと思うのでありますが、第一にまずこれは国連大使の単なる失言なのかどうか。松平代表に続いてこのたびのこういう発言があったのであります。それともまた政府方針なのか。この点を外務大臣にお伺いしたいと思います。
  7. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この新聞の報ずるところによりますというと、国連におきまして福島代表ホテルAP記者と会いまして言っていることがあるのでありますが、これはあくまで福島君が自分気持を言うたのでありまして、政府としてこういうことを訓令したとか、そういうようなことではないのであります。どういうことを言いましたかについて、これは新聞でございますので、至急その状況を取り寄せるようにいたしております。
  8. 岩間正男

    岩間正男君 先ほど申しましたように、政府出先のこのような機関代表が、政府の意向でもないことを自由に発表する。これは国際的に非常に大きな影響を持つと思うのであります。従いまして、このような発言そのものについて、この際私は政府態度をはっきりお聞きいたしたいと思うのでありますが、この国連福島代表発言である二つ中国を認める、こういう点については、政府はどういう見解を持ちますか。外務大臣見解をお伺いいたしたいと思います。
  9. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この新聞の報ずるところによりますと、福島代表は、中共と国府とのジレンマを最終的に解決する道は二つ中国の承認でなければならぬと信じると言いまして、そのあとで、この問題はしかし非常に重要な政策であるから、これは日本政府本国において解決すべきであるということを強調したと響いてあるわけです。従いまして、これはあくまで福島君も自分個人気持を言うたもので、これがかように報道されるというふうに予期せんで、自分気持というものを言ったんじゃないかと思いますが、これは今申し上げたように、こういうふうにすべきだじゃなくて、自分はこういう気持を持っておるが、本国政府が最終的には決定すべきだと、こういっておると思うのであります。二つ中国云々の問題については、私どもあらゆる機会に言うておりまするが、まあわれわれはサンフランシスコの平和条約の二条におきまして、台湾並び澎湖島に関する権利、権原並びに請求権を放棄しておる、こういう立場にあるので、この台湾帰属その他についてものを言う立場にないと、こういうことであるのであります。しかし一つの国に二つ政府があって、それがお互いに正当政府であるということを主張しておる現状におきまして、これを単にその点を内政の問題だとこう片づけてしまうには、現在の国際情勢はきわめて複雑であり、しかもそのことを最終的に解決するために、万一武力の行使というようなことが行なわれるにおいては、これは非常な深刻な国際問題になるのでありまするから、こういう点については、われわれは平和的にもちろん解決されることを望むわけですが、われわれとしてとやかく言うべき立場にない、こういうことを申しておるのであります。
  10. 岩間正男

    岩間正男君 私はまず第一に、これは福島代表は慎重を欠いているんじゃないかと思う。松平大使のああいう失言問題があって、大へん騒がれたあとであります。また同じようなことを、政府が決定していないのに、そういう問題を出先機関の公式な代表が発表して、そうしてしかも国際的な非常に大きなこれは影響がある問題です。この点についてははっきりまず第一にお認めになりますか。この点どうですか。簡単にお答え願います。この福島代表失言について。
  11. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) わかりました。これは発表したのじゃないと思います。先ほど申し上げておるように、個人気持というものをホテルで、訪ねて来た記者に語ったんだろうというふうに、この新聞からは読みとれるわけであります。最初に申し上げたように、われわれ何らこういうことを言うべき訓令も出していないし、かようなことを決定したことはないのであります。
  12. 岩間正男

    岩間正男君 これはあなた言われないかもしれませんが、これは明らかに不謹慎な態度といわざるをえないと思うのです。  その問題はそれとしまして、私お聞きしたいのは、池田内閣の今までとってきた態度とは明らかにこれは違うじゃないか。二つ中国を認めるというようなことは、公式な場合に一度も表明されていません。それだけではないのです。実はこの前の三月十九日に私は予算委員会一般質問の中であなたにお聞きをした。そういう事実の中で、すでにこれはもう明白になっておる問題だと思うのです。カイロ宣言に従って。ポツダム宣言を履行する日本は、公式の降服のはっきりしたこれは式もやっておる。そのあと台湾中国の一省に編入された。そうしてそこに陳儀氏が初代の省長として出かけておる。さらに一九五〇年にははっきりトルーマン大統領声明が出された、そうしてはっきり台湾帰属のことは、これは声明されておる。それを裏づけるように、またそのあとからアメリカ国務省声明が出されておるのです。この事実によりまして、私はこれはあなた方から読いでいただいて、そこの条文を明らかにしたのでありますが、問題は明白になっていると思う。今さらこの帰属の問題について、日本はとやかく言う立場にいないし、また言えないと思う。現にどうでしょう、昨日の衆議院外務委員会におきまして、これは黒田壽男氏の質問に対しまして、池田総理ははっきり答えているようですね。「台湾澎湖島中国領土ではないのか」こういう質問に対しまして、「台湾澎湖島日本は放棄した。日本が受諾した。ポツダム宣言、その前提となるカイロ宣言の沿革からみれば、台湾中国である」、明白に総理がこのような態度を表明しておられる。そういうことで、問題はすでに私は池田内閣としては落着しておると思う。そういう事態の中で出先のこれは官憲が、そのような私は失言をするということは、これは重大問題だと思うのであります。この点はっきり昨日の首相の声明と、それから福島代表の話というものは、あなたはこれは自分から談話として発表したんではないと言っておりますけれども、結果においては同じであります。このような不謹慎な発言というものと食い違いがある。これをどういうふうに一体お考えになりますか、はっきり小坂外相の御返答をいただきたいと思うのです。
  13. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 福島君が代表としての資格で公式に見解を述べた、方針を言ったということなら、あなたの言う通りでございましょうが、いろいろ個人には個人気持があるわけで、その気持ホテルでもって何となく言ってふっと出た、こういうことでございましょう。これは個人気持でございますから、私は別に非常に重大な食い違いというふうにまで持っていくのはいかがかと思います。公式にそういうことを言ったならば、まさにあなたの通りでありますが、そうでないと思います。
  14. 岩間正男

    岩間正男君 私はこういうことを福島代表アメリカで言った背景があると思うのです。私はこの前の委員会ではっきりあなたにこういうことを指摘したわけです。池田内閣に警告を促したわけです。「国連での中国代表権問題を中心とした中国問題の正しい解決国際世論化され、もはやそれに抗し切れなくなったアメリカの取りつつある窮余の一策です。それはせんじつめれば国際世論に迎合して、台湾中国から切り離す、そしてそれと引きかえに中国代表権を認めようとすることであります。しかしこれは従来にも増して悪らつな意図が隠されています。アメリカのねらっていることは、中華人民共和国政府が当然のこととしてこれに応じないだろうことを計算に入れ、あたかもこれに応じない中華人民共和国政府が好戦的であり、その平和政策が偽りであると世界の人々に思い込ませようとする意図を持っているのであります。池田内閣アメリカのこの新しい策謀に加担し、日本国民をこの落とし穴に落とし込もうとするのか。このような策謀は、中華人民共和国はもちろん日本国民世界平和愛好国民の力によって、私は粉砕されるだろう」、こういうことを申しておりますけれども、ケネディ政権の発足以来、今やどうにもならなくなった、そういう態勢の中から、日本を使い、日本を手先としてこの二つ中国問題を瀬踏みをやる。そうしてあわよくばそういう窮余態勢から逃げ出そうと考えているのがアメリカ外交政策であることは明白だと思うのです。こういう背景に、まさに呼応するように福島代表言葉が行なわれているのでありますが、この点について、あくまでも池田総理二つ中国は認めない、台湾は明らかに中国の所属であると、衆議院におきまして昨日言明された線を、小坂外相ははっきり貫かれるのであるかどうか。私は当然貫かれねばならないと思うのでありますが、この点明白にしていただきたいと思うのであります。
  15. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、今お読み上げになったような方針アメリカ外交政策があると、あなたはきめつけていられましたが、そうきめつけるものではなく、非常に複雑な現実の世界情勢に対して考えているのだと思います。そこで福島君の言ったと伝えられる話が、それに迎合し、あるいはこれの一環として、これを背景としてこういうことが言われたということを言っておられますけれども、そうではないと思います。福島君は福島個人考えでかようなことを言ったのだろうと思いますが、さっきも言っておりますように、どういうことなのか、詳報を待っているということを申し上げた通りであります。
  16. 岩間正男

    岩間正男君 それでは福島代表がこのような発言をされたという事態が明らかになった場合には、これに対して、この前松平大使に対しては、たしか訓告を発したと思っておりますけれども、私はこれは池田内閣綱紀紊じゃないかと思うのでありますが、非常に重大な関連を持ち、国際的な関心の中にあるこの問題です。私は当然そういう処置を、何らかの処置をとられるのだと思いますが、いかがですか。
  17. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 情勢を聞いてみないと何とも言えません。
  18. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連でちょっと質問いたしますが、外務大臣言葉を聞いておれば、個人発言したのであるから、公式の場合でないから云々と言われておりますが、それでは、こういう非常に大きな国際問題について、新聞に取り上げられるようなその場所発言したものは個人の問題であって、そうして正式な場所でやる場合は公人だ。全く相反したことが出先で行ない得るかどうかという問題が第一点なんです。  それからもう一点は、かりに個人であっても、新聞等で大きく報道されて、しかも日本国内事情をよく知らない諸外国では、おそらく日本態度はこうであろうということをはっきり認識する、そういうふうに考えるのだと思うのですが、そうならば、たとえそれが個人発言であろうと、あるいはプライベートな席でむぞうさに発言したものであろうと、日本政府はそういう考えを持たないということを何らかの形ではっきりしなければならないのじゃないか、こういうふうに私は思うわけなんですが、この二点についてどういうふうにお考えでしょうか。
  19. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 阿具根さんもよく御承知のように、外交の問題というのは非常に機微であるわけでございます。従って、事外交に関する問題を言います場合には、ことに政府立場にある者は非常に慎重でなければならん。まあむしろばかじゃないかと思われるようなことの態度もとらなければならぬ場合もあるわけです。あまり歯切れよくばかりいかぬわけです。そこで福島君はもちろん外交専門家でございますから、十分そういうことはよく承知いたしていると思いますが、ただ新聞記者個人と友人のようにして語った際に、これがそのまま出ると意識しない場合もあるわけです。しかしどうもその辺がよくわかりませんので、よく申し上げているように、状況を聞いてみる、こういうことでないと、実際のところ何とも言えぬわけであります。
  20. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこで私も福島慎太郎さんよく知っておりますが、それだけの専門家の方が、今言われるような、外交というのは非常に機微なものである。そういうときに、そういうことをされたということは、福島さん個人がそういう考えを持っておられるということははっきりしていると思うのです。しかし外交官立場として、日本政府出先代表としてそういうことを言われたということは、非常に私は重大だと思うのです。同じことをたとえば外交官でない人が言った場合には、私はそう新聞も取り上げないだろうし、世間もそう騒がないだろうと思うのです。そうすれば非常に重要な地位にある方が心やすさについ自分本心を言った、こういうことになってくれば、これはおかしい。そういう考え方を持っている人が、別な考え方で、別な政府の指令によって仕事をするということは、これは自分本心から仕事をしておるんじゃないということになってくれば、外交官として適切であるかどうかという問題が一つ。  それからもう一つは、そういう責任のある人が、松平さんの場合もそうですが、今度の場合も、一応そういうアドバルーンを上げて世間のまあ批判というのか、動きというのかを見てみるということも一つ考えられるものではないかと、こういうように考えてくる場合に、政府としてはそういう考えは絶対持っておらない、そうじゃないんだと、中国一つだと言うならば、いち早く小坂外務大臣としては、たとえそれがどういうものであったかしらないけれども、あるいは新聞の誤報であるかもしれないけれども、日本政府はそういうことは考えておらないんだということをいち早くやはり打ち消す必要があるんじゃないか。それを打ち消さないで、まあ詳細調べてみてから、そうしてそれがどうであるかということをきめなければならないということは、いたずらに社会に対して、世間に対して疑惑をまき散らしておいて、世論を待った上で何かを考えたい、こういうように考えられるわけなんです。それは一体どうお考えになるか。
  21. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほども申し上げたように、もちろんこれは政府の訓令に基づいたものではないことは明らかでございます。そこでこの新聞の見出しを見ますと、「二つ中国承認」と、こうございますが、記事を読んでみますると、「今の中共と国府とのジレンマを最終的に解決する道は、二つ中国の承認でなければならないと信ずる」と、最終的にそうするにはこういうことになるだろうと信ずると語ったというわけです。そしてしかも、これは、「この見解が長い目で見た場合のことであり、またもっと研究を必要とすること」と、さらに、「このような重要問題に対する日本政策は、本国政府の手で解決されること」、まあいろんな条件をつけて言っているわけでございます。で、私どもは先ほどから――まあ従来この国会始まってずっと申し上げているように、この問題については政府としては慎重に検討していると、まあこういうことを申し上げておるのでございまして、今そう簡単に割り切ってお話し申し上げることはできない、かようなことであるのであります。また繰り返すようになりますが、法律的に見ますと、台湾帰属というものは、これは日本としては放棄しているので、きまっていないのです。しかしカイロ宣言を受託した経緯、あるいはポツダム宣言カイロ宣言というものを受けてなされ、それを日本が受けて降伏文書に署名した経緯等もございまするので、われわれとしてはきのうの総理の御答弁にありましたようなふうに考えております。そこできのうの総理の御答弁でありまするが、ちょっと速記をとって読んでみますると、「そこで沿革的に申しますると、カイロ宣言あるいはポツダム宣言になりまして、われ受託した関係上、われわれは台湾中国である、こう見ておるのであります。」というふうに言っておられます。ですからこの点は、カイロ宣言というのは、まさに中国台湾は返還せらるべくということを書いております。その中国という言葉を受けて、こう総理は答弁された、かように了解しておるわけであります。
  22. 岩間正男

    岩間正男君 ただいまの御説明によりますと、矛盾を解決するには二つ中国しかないと、こういうことを……。
  23. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 最終的に、信ずる……。
  24. 岩間正男

    岩間正男君 最終的に。しかしどうだろうかね。私はそれは非常に重大だと思うんですよ。そういうことを信ずると、こう言っておる。これは中華人民共和国も言っておりません。それから中華民国も言ってないでしょう。日本政府はもう放棄したんだから発言権ないと言っている。そういう発言権のないといっているところの政府代表が、アメリカに行けばアメリカの風が吹くというような形で、こういうことを私は信ずるなどという形で言われていることは、非常にこれは重大だと思うんです。それから総理のただいまの速記録を読んでいただきましたが、ますますわれわれは確信を持つのであって、はっきりこれは確認されておる言葉と同じです。これはもう中国帰属問題については、もう一つ中国しか認めないという立場に立たなければ、そういうことは言えないわけですから。そういう中で今のような政治的な発言をして、そうして、私は非常に影響を持つということは、これはまずいんじゃないかと、ことにまあ問題が問題なだけに、内政に対して何かいろいろな発言のできない立場にあると表明している日本が、その国連代表がこのような発言をするようなことは、さらにこれは重大だといわなければならぬのでありまして、先ほど阿具根委員からも話がありましたように、私は事態を調べる調べないの前に、はっきり昨日総理ももう衆議院で言明されておることでありますから、その線に沿ってここで明確に日本政府態度をあらためて明らかにすべきだと思いますが、いかがでございますか。
  25. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まずその信ずるということは、この日本の夕刊にこう書いてあるわけですけれども、またそう書いてない新聞もあるわけです。これは最初の方を今私読んだのです。そこで問題がむずかしくなってしまったのです。外国通信を見ますと、信ずるという言葉は出てないのです。ウッド・ビー・セトルドと書いてある。どうもその辺がよくわからないから、ちゃんと問い合わせてみよう、こう申し上げておるわけです。何も一日、半日を争う問題じゃない。こういう問題は十分に検討しているのでありますから、この席で政府方針を、これがあったからすぐ出せといわれても、私はそういうふうには参りませんと思います。
  26. 森元治郎

    森元治郎君 これは大臣、福島個人も少し考えてみなければいかぬと、あなたは……民間人から起用した有能なる人、これは第一点、非常にできる人だ、福島君は……。英語は確実だ。われわれがちょろちょろしゃべるのと違って、これは相当わかる人だ。それかプレス関係を長くやっておられる方、外務省時代もやっておられるし、アドヴァタイザー、ジャパン・タイムスの社長でもある。こういう背景の上に、いいですか、最近のアメリカの傾向――世界の自由陣営で中共の加盟承認をきらいな方の人たちは、どうも大勢が、中共が正統政府として国連に入るという形勢はやむを得なくなってきた、そこで考えたのが二つ中国論なんであります。で、アメリカのえらい人のお話、世界アメリカ側の人も、何とか中共は一つ国連には入れよう、承認はしないが、国連には入れよう、しかしその際、台湾は保持していこうじゃないか、これが大きな予想であります。アメリカの空気であります。そういうことをもう百も承知で、英語ができて、プレス関係があって、あなたが特に選んだ人で、それがアメリカへ行ってこういう談話を発表すれば、大へん歓迎される。これはそういうことをのみ込んだ上の、そう深くは探りたくはないけれども、意図を持ってやった談話だと思う。これはその意味で非常に重大だと思うのです。中共の承認問題、中共の国連加盟問題と世界の大勢、それを踏んだ上での談話であると思うが、もしそうだとするならば、これは大臣は、国連というものはもうつかめない。私は国会で、最近の国連は関東軍みたいなものじゃないかと言ったが、関東軍になってきたよ、だんだん。内地にいるときはだまっていて、出ていけば本省といささかの関係もないことをぬけぬけと二人もそろって、わずか一カ月半ぐらいの間に言った。こういうことは、大胆がなめられたか、政府がなめられたか、この間を考えれば、私は相当責任ある処断をしない限り――本国政府は、台湾中国のもの、出先二つ中国と、こういうことになりますので、外務大臣、御就任以来最初の御決断が必要だと思うのです。
  27. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまのは御意見として承っておきます。
  28. 森元治郎

    森元治郎君 いやいや御意見じゃない。御意見とは一体どこを御意見というのか。私が申し上げたのは、重大なる大臣としての腹がまえをされる必要がある、人事の面で……。それが一点。
  29. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それが御意見でしょう。
  30. 森元治郎

    森元治郎君 御意見ではないのですよ。それは私は、あなたにほんとうに外交をやっていく上において、十分のそういう腹がまえをしなければならぬと、これは意見じゃない、十分お考えになって御答弁を願うことが一点と、最近アメリカ方面のラスク、チェスター・ボールズでも、あるいは出先とか、上院でのいろんな証言をごらんになっても、中国国連加盟はやむを得ないかも知れないけれども、そうなった場合にも台湾を保持していこうという空気がある。これはその空気に乗ったのが福島代表発言だと、そのアメリカの方の情勢、空気、そういう点について外務大臣の御所見を承りたい。
  31. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 福島君が公式の場で、証言というような形で、あるいは公式の場の演説という形で、そういうことを言いましたらまさに日本政府の訓令を待たずにそういうことを言ったということで、はなはだ問題になると思いますけれども、これはさっきから申し上げているように、ホテル自分の部屋で何か語ったというわけでありますから、その間の事情等を聞いてみないと何とも申し上げられないと言っておるのであります。  それから対中国の問題でありますけれども、さっき読み上げましたように、総理のお言葉というものは、そういうわれわれがカイロ宣言ポツダム宣言、それからサンフランシスコの講和条約と、こう経てきた道にかんがみて、われわれはこういうようにその間の事情を理解している。こういうことでございますので、しかも私はそれに補足いたしまして、そういうことであるから日華条約というものは、台湾中国の領土となるという前提で日華条約というものを結んだものだと、こういうふうに申し上げておるのであります。しかもなおその間において、台湾におりまする政権も一つ中国の政権であると言い、それから中国本土における政権も、内分らは一つ中国の政権であると、こう言ってる際に、もしこれを解決するために武力が行使されるということになっては非常な問題である。こういうことであるのであるし、法律的にはサンフランシスコ条約によって決定される問題であります。領土の帰属というものは、カイロ宣言でどうだからこうだというような法律的な効果は持たないのでありますから、サンフランシスコの平和条約においては、少なくとも法律的にはその所属は未決定である。こういうことをわれわれは言っておるし、しかも講和条約に調印させられたわが方としては、こちらから台湾帰属その他についてとかくものを言うべき立場にない。こういうことを申し上げているのでありまして、今ここで政府方針を宣明しろと言われましても、それは私は百害あって一利なきものと考えまするから、そのことを申し上げることを差し控えたいと思います。
  32. 岩間正男

    岩間正男君 そのあとの方の論議に入りますとまた時間がかかりますから、これをやる気はありません。そこで私は今の問題について、はっきりあなたたち調査すると言っているのだし、もう一つ池田総理ともよく相談して、至急これに対する対処を要望いたしまして私は次の問題に入りたいと思います。  そこで私は次にお伺いしたいのはラオスの問題であります。ラオス問題をめぐって極東に新しい軍事危機が切迫しており、これは直接日本の平和と安全に重大な脅威をもたらしていることは明らかです。今日本国民は深い関心を寄せています。ところが池田政府はこういう決定的な問題について、今に至るまで積極的な日本政府方針を国会を通じ国民にこれを明らかにしていないのです。野党側の質問で外相は、抽象的な逃げ口上でお茶をにごしているようですが、これは重大な怠慢と言わなければなりません。そこで私はケネディ大統領声明及びSEATO理事会の決議が発表されたこの際に、ラオス問題処理についての基本的態度をただし、具体的方針をお聞きしたいと思うのです。  まず最初に、ラオス問題の危機にどのように対処する考えを持っているか。政府の見通しはどうか。その見通しについてまたいろいろな見解をあらためてここで、はっきり示していただきたいと思います。
  33. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ラオスの情勢は今一月以降小康状態を続けておったのでありますが、最近になりまして、どうしてもこれを解決せねばならないという情勢で関係各国が非常に動き出した。ことに国際監視委員会の議長団でありまするイギリスが強く調停案を出し、またアメリカ見解を明らかにして、従来ソ連がこの提案に対する返答をずっと保留しておったわけでありますけれども、これも最近グロムイコ・ソ連外相とケネディ・アメリカ大統領との会談におきまして、相当友好的な雰囲気の中に話し合いが進められていると、こういう状況でございまして、私どもはこの話し合いが平和的にまとまることを望んでおるのであります。  いきさつを経過的に申し上げますと、この問題の収拾は二つ問題があるわけで、まず停戦の問題がある。しこうして停戦されたあとにラオスの国内に政情が安定して、そうして国民がその堵に安んずることができるようにするという問題、すなわち再建の問題。停戦、再建、二つの問題があるわけであります。そこでこの持っていき方に、国際監視委員会の方を通してまず停戦という考え方と、関係国が集まってそうして全体で会議して停戦という考え方二つあったのでありまして、私どもは当初から国際監視委員会による停戦、そうして関係国会議によるラオスの政治的な安定というふうな方向にこの問題を処理すべきであるという方針のもとに、関係各国と話し合って参りましたが、だんだんに状態がよくなりつつある情勢でございまして、非常にこの点欣幸に存じておる次第であります。
  34. 岩間正男

    岩間正男君 この前、私は二月十七日の予算委員会で、あの補正予算のときに今日の事態になることを非常に憂えたわけです。そこでラオス問題について質問したのですが、外相はあのときは楽観的な答弁で、あまり答弁らしい答弁をされなかった。今お聞きしておりますと、どうもやはり基本的にこれはまた同じようなことを繰り返していられるのじゃないかと思う。政府のいう一般的なばく然とした、そうしてまた楽観的な見通しや、相変わらずアメリカあとを追い回しているような態度では、私はラオス問題の正しい、しかも積極的な解決はできないと思う。これではアジアの一国としての日本の自主的な立場を示すことができないばかりでなくて、現に今アメリカの危険な軍事行動に引きずり込まれようとしつつあるところの日本日本国民の不安を解消することは、絶対にできないと思うのです。アメリカは今陸海空にわたる本格的な攻撃態勢を整え、ラオスを初めインドシナ半島を包囲しており、さらに、SEATO軍を大挙出動させようとしておどかしています。このため現に日本駐留のアメリカ第五空軍並びに第七艦隊が日本の基地と沖繩を使っていることは、これは明らかだと思うのです。いわば一触即発のもとに置かれているわけです。こうした現実の上に立って国民の不安をなくすため、政府は現在及び将来にわたってこうした日本の基地使用を何よりもまずやめさせるべきであろうと思います。それと同時にアメリカのラオスヘの軍事介入並びにSEATO軍の出動を中止させるべきだと思うのです。このことをアメリカ並びにSEATOの関係諸国に即時申し入れるべきだと思うのでありますが、政府はそういう考えがあるかどうか、この点をはっきりお伺いいたしたいと思います。
  35. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国際休戦監視委員会による事態の平静化という提案が行なわれましてから、ソ連がこれにすぐ同意してくれればもっと早く事態は今日のようないい方向になっておると思うのであります。それがなかなか返事がなされない。その間に私どもは見てきたわけではなし、われわれはその情報をとる直接の手だてはないわけですが、新聞その他によりますと、非常に共産党に近い分子が軍事行動を活発化して、そして膨大な共産側からの武器援助がある。それが例のジャール平原というあたりにどんどん繰り込まれて、そして事態をこのまま放置すると、結局そのラオスという国がどこの国の支配も受けないで、中立的な安定した政情を保つことができなくなるのじゃないか、こういうふうに見られるに至ったので、今回のある程度緊迫したような形を持ちながらも、またその雰囲気の中において停戦をする、しかもこれはあくまで休戦ということを目がけて話し合おうという情勢が出てきているのですが、そういう形になっておると思うのであります。ですからこれはただ岩間さんの言われるようにアメリカアメリカと、日本としてアメリカにこうしちゃいけない、こうしちゃいけないというだけでなくて、やはり東西双方に対して冷戦をラオスに持ち込まないということについて、日本は言うべきであると思うのであります。ただ、やるべき、言うべきと申しますけれども、これをただ、から声を上げて見たのでは何にもなりませんし、またそういうことを大きな声で言うことが、はたして今日の日本の国情からして適当であるかどうかということになりますと、私は相当に疑問を持つのであります。むしろそういうことよりも、静かな形でありますけれども、実際効力のある形において関係各国と外交ルートを通じて話し合っていく、こういうことが望ましいと思うのであります。  なおお話の中に、アメリカ日本基地使用禁止というお話がございましたが、ラオス問題に対して、日本の基地をアメリカが使うということは申しておりませんし、さような状況はございません。
  36. 岩間正男

    岩間正男君 まああなたの今のお話があったんですが、基地使用の問題についてある、ない、こういう問題は、これはもっとはっきりさせなくちゃならない問題ですが、きょうは時間の関係からやろうとは思いません。しかしこの前も私は神戸港におけるプロビデンス、ミサイル巡洋艦の問題をあげましたし、そのような軍事行動に関係のある、最近また富士演習場から米軍が帰っていった、三千人が移動した、こういうことはまぎれもない事実です。日本基地と関係がないということをあなたたちは言われても、これは国民は了承しないのです。安心もできないと思う。それから監視委員会の問題、あるいは十四九国会議の問題、二つの方式がある、この問題についても、ここで私はあなたと論争しても始まらないと思うのですから、このことは言いませんけれども、ただ私はラオスの問題というのは、同じアジアです、そうして近い、関係も深い、そういう中で、日本と、ことにも新しい安保条約との関係で非常にこれは関係をもってくることは、事実現に持ちつつあるし、さらにもっともっとのっぴきならないところに追い込まれることは事実だ、そういう中で日本は今何をするか、はっきりと基地を使わせない、将来ともに使わせない、これが一つ。これは当然新安保の極東の範囲の建前からいったって、あなたたちの理屈からいったってそういうはずだ。それははっきり言明しなくちゃならない。それともう一つは、これを日本がはっきり積極的に自分から進んで声明をする、そうして、この平和的な解決に対して、私は日本のはっきりした積極的な意思を表明すべきだと思うのです。しかしこの点について長い論議をやっておる時間がありませんから、私はそれではその次の問題に入りたいと思いますが。  それは、政府はケネディ大統領の声明及びSEATO理事会の決議の線で、ラオスの問題を正しい解決に導き得ることができると、こういうふうにお考えになっておりますか。この点まずお聞きしたい。
  37. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあいろいろの情報等総合いたしまするに、いい方に事態は進んでおる、こう思っております。
  38. 岩間正男

    岩間正男君 私はその基本について聞いているんですが、あの大統領声明並びにSEATOの理事会の決議、ああいうような声明の線でこの問題を解決する基本的な方法が可能かどうか。重ねてお伺いします。
  39. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 停戦をしてそうして非常に広い基盤に立つ政権を作ろう、こういうのでありますから、私は非常に妥当なことじゃないか、こう思います。で、われわれとしてはその東西の冷戦をラオスに持ち込まないということを心から希望し、またそのような角度で関係国にいろいろ話をいたしております。私はこの話はうまくいくと思います。ソ連のグロムイコ外相もケネディ・アメリカ大統領との会見において、非常に友好的だったと伝えられております。われわれがここでうまくいくだろうと思うことは、あなたは間違いだろうとおっしゃるかもしれませんけれども、間違いだろうということは一体どういう根拠でありますか。まあ政府委員質問をできませんから伺うわけに参りませんけれども、私はさように存じております。
  40. 岩間正男

    岩間正男君 私もむろん平和的解決を心から希望しておるものとして発言しておるわけだ。それでただばく然とうまくいくだろう。こういうことでは私はまずいと思うのであります。これはたとえば二月十七日に開かれた予算委員会補正二号のときの答弁とあなたはだいぶ変わってきました。情勢の変化、その情勢の変化の大きな根源の中には力関係の変化があったのでしょう。ブンウムが追い詰められてそうして民族解放国民軍が非常にだんだん広がってきた。そういう大勢の中で力関係の変化をなんとか変えようというような意図があって、そういう中でいろいろなものが出されていることも明らかだと思います。私はまずそれなら大統領声明について検討してみたい。まず第一に、私は、今のようなばく然とした楽観論では全くこれはかど違い、筋違いになっておると思う。大統領神明もSEATO理事会決議にしても、もっと基本的な線で事実をすり変え、ラオスにおける危機の真の原因をごまかしておると思う。そうして正しい問題の解決を阻害する内容に私は満ちておると思います。私はこの点を明らかにするために政府にお聞きしたいのです。  まず第一に、大統領声明並びにSEATOの決議は、ジュネーブ協定を無視したのは共産勢力であるということをともに言っております。これは外相認められておる。これこそ全くの事実無根です。協定をじゅうりんしたのはアメリカとそれに踊らされたラオスの反動勢力であることは、すべての歴史的事実でこれを証明しています。第一にアメリカは一九五四年七月二十一日のジュネーブ協定の最終宣言に署名をしなかった。そればかりかその二カ月後にはこの協定を押しつぶすために、SEATOを結成した。そうしてそのSEATOの議定書の中にSEATOの調印国でもないラオス、カンボジアをその適用範囲として一方的に編入しています。まず外相はこのような事実をお認めになりますか。
  41. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私はその前に、われわれのこの政府の基本的な態度として、まずラオスにおける東西の争いに、われわれはことさらに介入するという態度をやめなければいかぬ。今のお話のような筋に行きますと、われわれはそれに介入していけというようなことになっていくのでありまして、われわれはこの事態をできるだけ冷静に客観視して、そうしてこの状態がすみやかに終息することを望む、というのが私は日本のとるべき立場だと思います。
  42. 岩間正男

    岩間正男君 われわれは介入などということはなんら言いません。ただ筋をただしておるのです。歴史的事実の上に立って筋をただしているのです。そうしてケネディ声明とSEATO理事会の決議を検討しているんです。  それでその次に、私は今の事実はあなたもこれは認められなくてはならないと思うのですが、第二に、アメリカは、ジュネーブ会議の最終宣言並びにこれに基づくラオス王国声明を全くじゅうりんし続けてきています。右覚書並びに声明には、次の事柄がはっきり明記されているはずです。それを条文で読みますと長くなりますから、要点だけ申し上げますが、「ラオスは自国の領土を防衛するため以外には軍事物資、軍事要員または教官などの援助を外国から仰がないこと。」、これは四条の規定です。次には「いかなる軍事同盟にも参加しないし、また、領土内にはラオスの安全が脅かされているとき以外に外国の基地を置かない。」、こういうことをはっきりきめています。第三にはさらに「すべての国民が国の共同生活に平等に参加できる措置をとること。すなわち、国民の民主自由の権利を保証すること。」、こういうことが明記されています。これらが最終宣言並びに王国声明の非常に重要なところです。ところがこの宣言並びに声明を初めから終わりまで無視し続けて、じゅうりんし続けてきたのは、ほかならないアメリカであることは明白だと思います。アメリカは協定成立の直後から現在に至るまで、年々数千万ドルの軍事援助と軍事顧問をラオス王国に押し付けてきました。さらにアメリカは、ジュネーブ協定の精神に従ってパテト・ラオを初めとするすべての愛国的勢力と協力して平和、中立、民族融和の政策をとってきたプーマ内閣を、一九五四年の九月、一九五七年の五月、一九五八年の七月、さらに最近では一九六〇年の十二用と、四回にわたって圧迫干渉し、あらゆる陰険な迫害を加えてこれを倒し、これにかわる反動かいらい政権を押し付けてきたことは明白だと思います。これは世界周知のことです。これらの動かしがたい歴史的事実から顧みて、アメリカこそがジュネーブ協定に違反し、これをじゅうりんした張本人であることは明らかなんです。政府は、この事実を歴史的事実に照らして、はっきり私は認めなきゃならぬと思うのですが、いかがでございますか。
  43. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その問題について、ケネディ・アメリカ大統領のラオス問題に関しての記者会見の話を見てみますると、その中で一九五四年ジュネーブ会議においてラオスは中立であるべきことが認められたが、共産側は依然中立の侵害を中止せずして、一九六〇年にはその活動はとみに活発化し、現在の重要な情勢を招来するに至った、と言っております。そこで、平和的解決のためには、まずもって、外部共産側からの援助を得て行なわれておる現在の武力攻撃の停止が必要である、ということを申しております。また、関係諸国間及びラオスの指導者間で、独立かつ中立なラオスの確立のために、建設的な話し合いが行なわれることを強く要望して、とも言っておるのでありまして、ことさらに好戦的であり中立的ではない、とアメリカ側では言っておるようであります。しかも、お話の中にあったラオスの自由安全とアメリカとの関係についての記者団の質問に答えて、ラオスはアメリカの同盟国であるSEATO同盟国、すなわち、タイ並びに南ベトナム、カンボジアと境を接しておるのみならず、共産側がラオスを侵略することは、全東南アジアの平和に重大な脅威を及ぼし、そのことはアメリカの安全とも明らかに関係があると、まあこう言っておるのであります。従って、さような認識によって今回のケネディ大統領の声明がなされた、そのように思うのでありますが、まあ私どもは、先ほどから言うておりますように、この問題はまず停戦、そしてラオスの堅実な国としての建設、このことをするためにどうしたらいいかということを中心に考えておるのでありまして、どちらがどうだというような形でこの問題に日本として介入していくようなことは、全く百害あって一利なきものだと思うのであります。そういう線で私どもは考えておることを御承知願いたいと思います。
  44. 岩間正男

    岩間正男君 あなた、そういうふうに今ケネディの声明書を読まれて、そういう話をされたわけでありますけれども、私聞いておるのは、ジュネーブ精神を尊重するということを言っているし、中立ということを言っております。これは情勢の変化でこうも言わざるを得なかった。しかし、アメリカが今までどうだったかということを明らかにした上に立って現実を検討せなけりゃならない。そういう点で私が先ほど上げたのは、たとえば初めからもうジュネーブ協定には調印していない。二カ月後には敵対するSEATOをつくっている。そうしてそういう形で今までいろいろな圧迫干渉がなされてきた。そこから問題がこれは起こっているんですね。ジュネーブ協定というものの精神をほんとうに尊重していればそういうことはできるかできないか、これは明白だと思うんです。私は、そういう意味では、もっと最近の具体的な事実を上げてみましょう。昨年八月にクーデタが発生して、コン・レ大尉はクーデタ成功の日にコミュニケを発表して、愛国、正義、公正、中立をラオス国民に訴え、次いで革命委員会の推薦で国民議会の満場一致の支持を得て、並びにバッタナ国王の組閣要請を受けて第二次プーマ政府が合法的に誕生した。昨年一九六〇年の十月十六日にプーマ首相は、国民議会で次のような施政方針を明らかにしています。その施政方針の中で外交面では、まず第一に真の中立を実行する、第二にはジューネブ協定を含む諸条約を尊重する、第三にあらゆる国からひものつかぬ援助を受け入れる、第四に諸国との友好確立、これを外交方針としたのです。ところが第二次プーマ政権が成立するや、十月十四日アメリカは、パーソンズ国務次官補をラオスに派遣して、プーマ首相に対して次の三つの条項を突きつけています。第一はハテト・ラオとの交渉を打ち切れ、第二にはノサバン軍とその政権を承認せよ、第三にはラオス首都をビエンチャンからアンブラハンに移せ、この内政干渉の諸条項を突きつけて、これを援助再開の条件としたじゃないですか。もし聞かなければ援助しない、こういうことを言った。プーマ首相がおこってこれを拒絶するや、八月革命でタイ国に逃亡したノサバン軍を強化して、そうしてそれに航空機や百五ミリ砲その他をたくさん与えて、タイ及び南ベトナム軍の支援のもとに内戦を激化さして、これをあふったのはほかならないアメリカです。私は、こういう事実というものは明白な事実でありますから、この点を日本政府は、現実は現実、歴史的事実は歴史的事実、はっきりこの上に立って問題を解決しないというといかんと思うんです。私は、こういう点で、これはもっともっと外務省がこういう客観的事実を明白にされんことを切望したいと思うんです。  時間の関係から次に進みますが、私は、以上のような事実から、はっきりこういうことは言える。ジュネーブ精神と歴史的事実に照らしてみると、ラオスにおいて真の正統政府を主張し得るものは、その資格要件として、第一にジュネーブ協定及び宣言を忠実に実施する立場をとり、しかも憲法に従って樹立された政府のみであることは私は明らかだと思う。こういうふうに思いますが、これは外相はどうお考えになりますか。
  45. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今いろいろソビエトの声明をお読み上げになって、それだからアメリカが悪いというふうなことを言われましたけれども、私どもはそういう立場をとらないので、歴史的事実とおっしゃいまするが、そういうものはいきさつについての解釈もいろいろあるわけでございますから、それをこの場でとり上げてそうしてアメリカを非難するという考え方は私はやっておりません。両方でいろいろ東西の冷戦が激しくなっておるのでありますから、そういうものをラオスに持ち込まぬようにわれわれはしたいということで、先ほどもアメリカ考えはこうなんだ、従ってソ連の言うことばかり聞いてどうこうということは差し控えたい、ということを申し上げたわけでございます。  それから今ラオスの政権の性格についてのお話がございました。ジュネーブ協定の精神に沿ったものがいいだろうということでありますが、私はそれはその通りだと思います。
  46. 岩間正男

    岩間正男君 第一点ですが、ソビエトの声明なんというのは、私は一回も読んでおりませんよ、これは私たちいろいろな……。
  47. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今あなたのお読み上げになったのは、ソビエトがそういう解釈をしておる……。
  48. 岩間正男

    岩間正男君 そんなことありませんよ。われわれは客観的な資料からちゃんと何して構成したものです、ずいぶん苦労したんですよ。そうして煮詰めたものです、時間がないから。それをソビエトの声明だなんて、そんなこといけません。ソビエトの声明なんか一つも入っておりません。  それから第二の点については、あなたこれを認められたですね。それならばあくまでもジュネーブ協定及び宣言を忠実に履行する、これが第一の大原則だと思うのですね。この観点からいえば、私はプーマ政府ということが真の正統政府であって、アメリカは協定を無視し、アメリカの協定無視の直接干渉と、反乱によってでっち上げられたブンウム、ノサバン一派は私は何らこれに値しないということはあまりにも明らかだと思うのです。もう世界の見方もそうなってきておるんじゃないですか。アメリカさえそろそろそうなんじゃないですか。そういう点で政府はこれほど明らかな真理と事実、こういうものを無視し、しかもこれらのことを無視し続けているアメリカに追従してプーマ政府を否定し、反乱ブンウム派を正統政府と認めようとする今の態度情勢に合わないし、立ちおくれだし、第一にジュネーブ精神に違反という問題で、先ほどの外相の御答弁とも非常に私は食い違っている点だと思いますが、いかがでございましょうか。
  49. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ラオスが完全に独立国家として健全な発展をするために、どういう政府を作ったらいいかということは、これは今後の問題でございます。従ってそういう今申し上げた点を中心にして、ラオスが健全な歩みが続けられるような政府ができることを期待しておるわけであります。プーマでなければいかぬ、ブンウムでなければいかぬ、こういうことをソ連は言っておりますけれども、われわれが今直ちにそういうことを言うのはどうかと思うのであります。御承知のように、プーマ首相はカンボジアに亡命しておるので、そうして今の形はとにかくラノオスの国内法による正規の手続によって、ブンウムが政権についておるわけでございます。しかしこの混乱収拾のあとどういう政府ができたらいいかということになりますと、これは関係国が――分に協議してきめるべき問題だと思います。
  50. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) 時間がきましたので、結論を願います。
  51. 岩間正男

    岩間正男君 私はこの際、時間がございませんから、最後に明らかにしたいと思いますのは、ラオス問題を正しくかつ平和的に解決するためには、何よりもアメリカがみずからのジュネーブ協定のじゅうりんの事実、こういうやり方を他国に押しつけることをやめて、真に協定の内容と精神を尊重して、それを実現しようとする諸勢力と、ラオス人民の要求を正しく受け取ることにあると思います。基本的な立場に立たないで、この期に及んでみずからの過誤を合理化し、あまつさえどうかつと圧迫をかけるというようなやり方では、問題は絶対に解決しないと思います。これではアジア諸国民はもちろん、全世界の世論の支持を受けることも絶対不可能だと私は思うのです。こういう点についてまず政府の御意見を承りたい。  もう一つ指摘したい点は、SEATOの理事会の決議を見ますとあの中によけいなことが書いてある。南ベトナムの人民闘争のことにも言及して、南ベトナムを緊急かつ不断の監視下に置くんだということを強調しています。これは全く武力弾圧のそれをにおわせていることになるんじゃないか。これは全くジュネーブ協定への挑戦であり、他国への軍事的内政干渉の、これは明らかな態度表明だと言わざるを得ないと思う。これでは事態解決をするどころか、拡大の危険さえあると思います。さらにまたこれこそがアメリカのジュネーブ協定無視の新たなる実証と言わざるを得ないのでありまして、われわれはこういう点を非常に重大視しています。従って、こういう点を合わせ含めて、日本の平和と安全を守るというこの立場に立って、外相が明白な御答弁をされんことを私は切望いたします。
  52. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まず第一点でございますが、今度のイギリスの提案は、ジュネーブ会議における議長団の一国といたしまして、まさにジュネーブ精神にのっとった提案であると思います。従ってその提案の趣旨に沿って、ラオス問題が解決されることを望んでいるわけであります。  第二点でありまするが、南ベトナムは御承知のようにSEATOの条約地域に入っているわけでございますが、南ベトナム、カンボジアというものが入っているわけでございまするから、条約適用地域内におけるいろいろな問題について、条約加盟国が関心を持つことは、これは当然のことだと思います。
  53. 岩間正男

    岩間正男君 それは外務大臣ちょっと違いませんか。条約適用国に南ベトナムありますか。ラオスとカンボジア入っていることは議定書の中に入って、るが……。
  54. 中川融

    政府委員(中川融君) インドシナの三国が入っております。北ベトナムは入っておりませんが、南ベトナムはカンボジア、ラオスと条約適用地域に入っています。
  55. 岩間正男

    岩間正男君 SEATOにも入ってないところを、勝手に一方的に適用国ということにすることがおかしいのですがSEATO加盟国ですか、ベトナムは。
  56. 中川融

    政府委員(中川融君) ベトナムはSEATOの加盟国じゃございませんので、従ってベトナムから要請がない限りいかなる行動もとることはないというふうにはっきりなっております。
  57. 岩間正男

    岩間正男君 全くそういう点おかしいですよ。議定書のどこにあるんだか、これもまた時間があったら明らかにしたい。とにかく小坂外相の今の態度を私ははっきり日本国民は変えることを期待していると思う。明々白々たる日本外交の行くべき道を、もとをただして、歴史的事実の上に立って、はっきりと、これはアジアの諸国民と、世界の世論の大きな方向を見るべきだと思うのですけれども、私はこのことを希望して私の質問を終わります。
  58. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は日韓問題、請求権の問題、在外財産の問題について若干お尋ねしたいと思うんですが、三月九日の日に、野党側の強い要求で、例の日韓請求権問題に関する米国務省の口上書及びこれに関連する当時の日韓合意議事録が公表されたわけですが、その後、日韓予備会談の進行状況についてどうなっているか、お尋ねしたいと思います。
  59. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日韓予備会談は、その後、今まで触れておりませんでした請求権の問題、それから漁業の問題、この二つについても話し合いが始まりまして、それぞれの小委員会においていたしております。ただ、今お話のような請求権の問題に関しましては、まだ、もっとも始まったばかりでもあるわけでございますが、双方で主張を交換しているという状態でございます。
  60. 田畑金光

    ○田畑金光君 その後、李ラインの中で、この交渉が始まってから漁船の拿捕とか船員の抑留とか、こういうようなことはあるのかないのか教えてもらいたいと思います。
  61. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知のように昨年の十月、張勉政権は当時抑留しておりましたわれわれ同胞船員を釈放してくれたのでございます。その後しばらくございませんでしたが、一月十三日一度ございました。しかしこれはわが方から厳重に抗議いたしましてほどなく釈放されました。それから最近、三月の中旬、第二進栄丸が拿捕せられたのでありますが、これまたわが方から厳重に抗議いたしまして、先方から釈放を受けました。現在は秋田丸一隻が抑留せられておりまして、約十名の同胞が抑留されております。こう聞いております。
  62. 田畑金光

    ○田畑金光君 秋田丸が拿捕され、船員十名が抑留されているわけですが、これについては話し合いはどうなっておるのか、釈放される見通しはあるのかどうか、それを明確にしてもらいたいと思います。
  63. 宇山厚

    説明員(宇山厚君) 第二秋田丸の拿捕事件がございまして、さっそく外務省といたしましては韓国側に厳重な抗議をいたしまして、釈放を要求しておるのでございます。口頭で二回やりましたあとでまた正式に書面で要求をしておるのでございますが、韓国側はまだ回答をよこしておりません。最近の状況を見ますと、先ほど大臣から御説明がございましたように、入江丸の事件、それから第一進栄丸の事件、ともに釈放をいたすようになっておりますので、今度の場合にも何とかしてできるだけ早くその釈放が実現するように、今後とも努力いたしたいと、こう考えております。
  64. 田畑金光

    ○田畑金光君 この点は大臣どうですか。近く解決の見通し、また、韓国に話をして韓国が快く了解して、釈放されるという自信をお持ちですかどうか。
  65. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今、友好的に会談を進めておる際でございまするので、かようなことをされることははなはだ遺憾であるという点を強く申し入れておる次第でございます。ただいま参事官から御答弁申し上げましたように、前二回はわれわれの主張を入れてくれたわけでございます。今回もさようになりますように極力努力したいと考えております。
  66. 田畑金光

    ○田畑金光君 韓国の政情が非常に不安定である。ことに四月の革命すらも流されておるという微妙な情勢があるように聞いておりますが、これがやはり張晩内閣と今交渉を進めておられまするが、今後の日韓交渉影響等があるようにわれわれとしては見ておりますが、その点はどうお感じであるか承りたいと思います。
  67. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 韓国の政情につきましてはいろいろと言われておるのでありまするが、何としましても韓国の国内に、やはり三十六年間にわたる日本の圧制というものに対する非常な反発がございます。もちろんわれわれはそれと異なった見解を持っておるわけでありまするが、そういうことに対しての非常に強い反発もある。そこで親日というものを掲げている張勉政権に対しまして、これに反発する力も相当あるわけでございます。で、韓国の民議院におきましても、なぜ李承晩ラインを侵犯されることを黙認しているのかという強い突き上げもあるようでございます。そういうような点がときどきああいう拿捕事件になって現われるのだろうと思いますけれども、何としましても公海上にああした排他的な線を引くということは、これは国際法上から見ましても私どもは不当だと考えておるのであります。まあ、やっていいことをやめてくれというのではなくて、不当なことをやっているということについては、これはあくまでも先方の翻意を求めなければならぬというわけで、さような点でいっているわけでありますが、これは民主主義の国でございまするから、当然いろいろな意見が勝手に言われるわけであります。その勢いのおもむくところ、なかなか各種の困難な情勢も出ることは、現象といたしましては、ある程度そういう現象はあり得ることと考えます。
  68. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど冒頭に申し上げました日韓請求権問題に関する米国務省の口上書、これはどういう背景のもとに出されたのか、日本の要請によって出されたのか、それとも日韓両国の要請によってこの口上書というものが出されたのか、その点承りたいと思います。
  69. 中川融

    政府委員(中川融君) 米政府の解釈に関する覚書というのは、これは昭和三十二年の十二月三十一日に出されておるのでございますが、御承知の通り、同じ内容――その中核をなす内容は、それより先に、すでに一九五二年当時から、日韓双方に示されておるのでありまして、その間数年のあれがあったわけでありますが、日韓の交渉の進捗状況にかんがみまして、アメリカの解釈というものをさらに敷衍したものをこの際アメリカが出すということが、交渉の円満な進捗に適当であるということを日韓双方が認めまして、またアメリカもそれに同意いたしまして、それで昭和三十二年の末にああいう形のものが出されたわけでございます。
  70. 森元治郎

    森元治郎君 私今持ってないんだが、その口上書中に、対日平和条約の起草者は云々ということが書いてあるのですね。条約の起草者とは一体だれを言うのか、条約の起草者にアメリカ政府が委託されてしゃべっているのだということが、一体どこに書いてあるのか。ありますね、何とか、条約の起草者は云々という、その起草者ということは一体だれか、そうして、どことどこの国が起草者かしりませんが、一応アメリカ政府がこれらの国々を代表して対日口上書というものになってきた、この間のことがわからない。  もう一点は、条約の四条(b)項の解釈――日本は管理権だけをアメリカに譲り、アメリカがさらにこれを韓国に譲ったんだと、こういう主張であったのだけれども、いや、そうではなくて、日本の財産は取得し、没収されてしまったんだと、こういう解釈になっておるのだが、もしほんとうに日本の当初の主張が正しいと信ずるならば、アメリカのその解釈に飛びつかないで、平和条約の終わりの方にある、何項ですか、専門家の中川さん知っておるだろうが、国際司法裁判所にかけるというところを援用していくという措置をなぜとらなかったか、この二点です。
  71. 田畑金光

    ○田畑金光君 関連質問ですから、それにお答え願いたいと思います。そういうような点、私これから質問しようと思っていたところですが、そこで、実は今条約局長の御答弁を承りますと、この米口上書はすでに数年前米国から示されていた、昭和三十二年十二月三十一日で、それをさらに敷衍して確認したと、こういうお話ですね。一体数年前とはいつごろなのか、この点を明確にしてもらいたいと思うのです。
  72. 中川融

    政府委員(中川融君) 初めに森委員の御質疑の点からお答えいたしたいと思いますが、平和条約の起草者ということが米国の解釈に出ております。平和条約の起草に当たりましたのはアメリカ政府でございます。なお当初平和条約の準備にあたりましては、アメリカが起草いたしまして、起草した案をおもな連合国、生としてイギリス、フランス、あるいはソ連等に見せたのでありまして、それらの連合国の意見を聞きまして、さらに起草し直し、またその段階において日本にも見せまして日本の意見も取り入れまして、最終的な案をきめたということになっているのでありますから、起草者というのは、ここではやはりアメリカ政府を指すものであろうと考えるわけでございます。  なお、どうして平和条約自体の解釈の、紛争がある際には、国際司法裁判所に出すという規定があるにかかわらず、そういう方法をとらなかったかという点でございますが、これは一番初めの御説明で明らかになったと思うのでありますが、日本政府アメリカ政府の解釈とあくまで反対であるという場合であれば、これは国際司法裁判所まで提訴して解釈をきめるということも必要であったでありましょう。しかしながら、日本政府アメリカ政府の解釈の方がより適当であるという考え方に変わったのでありまして、従ってそういう手続はとる必要がなかったわけでございます。
  73. 森元治郎

    森元治郎君 その起草者にアメリカ大使がかわってしゃべるという、その起草者とアメリカ大使――米国との関係はどうですか。そういうことを起草者にかわってやれるのか。
  74. 中川融

    政府委員(中川融君) アメリカ政府の解釈というのは、要するにアメリカ大使館からよこしておるわけであります。従ってアメリカ政府の解釈でありますが、アメリカ政府平和条約を作ったとき――ときというのでは、権威があまり十分でないのであります。やはりそれはアメリカ政府でありましても、平和条約を起草しましたアメリカ政府という意味で、これに平和条約起草者ということを特に書いたのであろうと思うわけでございます。
  75. 田畑金光

    ○田畑金光君 あなたの、先ほど私の質問に対して、数年前に、すでに解釈については、アメリカの方から示されていたと――数年前というのはいつごろですか。
  76. 中川融

    政府委員(中川融君) 一九五二年四月二十九日に、韓国側に提示されまして、同じ年の五月十五日に日本側に提示されております。
  77. 田畑金光

    ○田畑金光君 その当時、すでにアメリカ側から解釈が示されておる。なるほどこの口上書によりましても、アメリカ合衆国国務省は、「千九百五十二年四月二十九日付の韓国大使あての書簡において、日本国との平和条約第四条を次の通り解釈した。」こういうようにすでに一九五二年の四月に韓国の大使あてに書簡で示されておる。そうして日本にも、五月にはこれが示されておる。ところがその当時の日韓交渉において、さらにその後の交渉においても、日本政府としては一貫して、特に第四条のこの問題等については、あくまでも請求権というものを日本は持っておるのだ、こういう立場交渉を進めてきておるわけです。その当時においては、明確にそんな立場をとってやっておられるわけです。ところが、それから昭和三十二年の十二月三十一日を契機にして百八十度転換したというのは、これはどういうことなんですか。
  78. 中川融

    政府委員(中川融君) 請求権問題についての平和条約四条の解釈について、日韓間の解釈が根本的に相違したという事実は、実は第一回の日韓会談ではっきりしてきたのでありまして、第一回の日韓会談というのは、五二年の二月に始まりまして四月にこれが決裂したわけであります。この四月に決裂しました大きな原因が、この日韓の請求権の解釈が違っておるという事実であったわけであります。これは一九五七年の末に日本が、この今のアメリカの解釈をとりまして、そうして従来の請求権の主張を撤回したときに公表されましたものがございますが、その公表いたしましたものの中でも、一九五二年三月六日に日本代表が行なった在韓財産に対する請求権の主張をここに撤回する、ということをいっておるのでありまして、日本代表の主張というものは、実は五二年の三月六日に正式に先方に提示されたわけであります。従ってそこで日韓の見解が非常に食い違って交渉が難航した、そういう事実にかんがみまして、アメリカがその後四月二十九日にその解釈というものを示したわけでございます。従ってその次に、一年後に第二回会談が行なわれたのでありますが、五三年春に行なわれました第二回会議におきましては、日本側は従来の請求権の主張は変えはしませんでした。法理論は変えはしませんでしたけれども、やはりアメリカの解釈等におきましても考慮いたしまして、法律問題を展開しないで、現実の事実問題から片づけようということで、各項目ごとにどういう事実はどうなっているかということから討議しようということで、あまり正面切っての議論はやらないようにということで始まったのであります。先方もそれに同意いたしまして、そういう形で実はこの法理的衝突を回避しながら問題の妥結をはかろうということで、第二回会談を始めたのであります。従って第二回会談におきましては、あまり法理的な見解は主張は表に出していなかったのでありますが、第三回会談、同じ年の秋でありますが、第三回会談で妙な行きがかりから、いわゆる久保田発言というものが表に出て参りまして、結局、これが決裂してしまった。従って法理的なこの日本見解というものは変えはしませんでしたけれども、事実上は表にして強く主張することは避けて、第二回、第三回を行なったと、その後相当長い間会議は中絶したのでありますが、その間にいろいろ考えました結果、今の解釈につきましてはアメリカの解釈をとるという立場に変わったわけでございます。
  79. 田畑金光

    ○田畑金光君 昭和二十八年ですね。その第二回の会談のあとと思いますが、外務省の情報文化局で発行しておられる「世界の動き」、これを見ますと、請求権問題等について明確に見解を述べておられるのです。その前に請求権請求権といっておりますが、これはその財産請求権は国有財産なのか、公有財産なのか、私有財産なのか、問題になっているのはどの財産のことを意味しているわけですか。
  80. 中川融

    政府委員(中川融君) これは平和条約四条に番いてあります通り、国有も公有も私有も全部含んでおるのでございます。従って問題になりました法律的解釈は、その全部にやはり適用される法律的解釈でございます。
  81. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど申し上げたこの「世界の動き」という外務省の発行されておる雑誌によりますと、こう書いておりますね。「わが国が韓国に請求しているのは、そのうち私有財産の返還である。それは私有財産尊重の原則が、歴史的にいつの時代にも認められてきた原則であるし、また朝鮮からの引揚者の利害がこの問題と、密接に結びついているからである。しかも、日本人が朝鮮に残してきた財産は、はるばるわが国から渡鮮して三十余年の長きにわたり粒々辛苦働いた汗の結晶にほかならない」。それから「平和条約日本が認めているように、韓国にあったアメリカの軍政府の手で処分されてしまったものについては、その対価の返還を求めることになるわけである。」非常にこの点については財産権の請求権、特に私有財産の請求については国際法あるいは先例慣行、これによってあくまでもこれを確保しなくちゃならぬ、こういうことは昭和二十八年の交渉のときに明確に出しているわけです。しかるにあなたのお話のように、すでにアメリカからは一九五二年、その前の年の五月に、日本に対して条約四条の解釈はこうであるべきだということが示されておる。政府としてはアメリカの解釈があったにかかわらずなおかつ主張を通してきておる。こういうことを見たと声、なぜ突如として一九五二年の十二月の末にそういう解釈に発展しなければならなかったのか、この点を明確にしてもらいたいと思うのです。
  82. 中川融

    政府委員(中川融君) 今御指摘になりました「世界の動き」でございますが、これは久保田発言を契機といたしまして、第三回会談が決裂いたしました直後に、日本立場はどういうものであったかということを国民に明らかにする意味で、実は解説的な意味で出したものであるのでございます。その中で私有財産だけを取り上げておりましたのは、結局財産問題の交渉におきまして、国有、公有につきましては国家相続の原則によって、結局これは新しくできた韓国政府に引き渡すのが自然であろうという日本側の考え方でありましたので、従って国有、公有については特に問題はないけれども、私有財産だけは日本としては基本的にいえば、やはり請求権があるのだ、という立場をとっておりました関係上、私有財産について強調しておるわけでございます。「世界の動き」の説明ぶりは、久保田発言に基づきまして決裂した直後でありますので、勢い日本立場というものを強調して出しておるわけでございます。しかしながらその後三年間日韓会談が一歩も進まない。これは結局請求権にについての日本の主張と韓国の主張が百八十度違っておるからということが大きな原因でありました。また平和条約の起草者であるアメリカの解釈もこうであるということはすでに明らかになっていたのでありますので、その点についていろいろ検討いたしました結果、日韓会談を円満に進めるという上には従来の解釈は解釈そのものがやはり少し適当でない、つまり法理論としてはいろいろな理屈をつけ得るのでありまして、その一つの理屈をつけて主張もしたのでありますが、その理屈を押し通すということは、やはり平和条約の素直な解釈として適当でない、むしろアメリカの解釈は韓国の主張しておったこととちょっと違うのであります。御承知のように、日本の財産がなくなったということは、韓国側の財産権を検討する際に考慮さるべしということが入っておるのでありまして、アメリカの解釈がやはり最も適当な解釈であるということを信じまして、その解釈にのっとって日韓間の話し合いを始めようということ、幸いに韓国側もそれに同意いたしましたので、そこで初めてその措置に踏み切ったわけでございます。
  83. 田畑金光

    ○田畑金光君 いや、アメリカの解釈解釈と言われておりますが、さっき森さんからも質問があったように、この条約の解釈について紛争が起きたとか、疑義が出たとかという場合については、これは当然アメリカだけの解釈に待つことでなくて、国際司法裁判所等の手続を経てもっと公正な機関においてこの解釈の問題を解決すべきだとこう思うのですが、どういうわけでアメリカの解釈をもって即わが国の解釈とすることになったわけですか。
  84. 中川融

    政府委員(中川融君) いろいろ研究いたしました結果、アメリカの解釈というものがより適当な解釈である。それは平和条約のいろいろの経緯から見まして、平和条約の素直な解釈としてはやはりアメリカの解釈のような解釈の方がより適当であると考えまして、日本政府はいわば積極的にその解釈をとったのでありまして、日米間に解釈が違うという問題ではありませんので、国際司法裁判所等の手続は取らなかったわけでございます。
  85. 田畑金光

    ○田畑金光君 少なくともあなたの先ほどの答弁にありましたように、一年以上の間……、これは昭和二十六年の末から韓国とは予備会談が行なわれて、昭和二十七年に、さらに昭和二十八年にと、こう会談が重なってきて、おるわけでありますが、その間においては、アメリカの解釈が示されたにかかわらず、なおかつ日本はあくまでも私有財産尊重の原則に立って日本立場を貫いてきたわけで、さらに一九四五年の十二月でしたか、アメリカの軍令によって韓国にある日本の財産の帰属の変更とか、あるいは管理とか、こういう点についてはどこまでもそれは財産のアメリカ軍の管理を日本としては認めたのだと、そういう立場に立って条約の第四条を解釈してこられたわけですが、なぜ一年以上も問題となって、日韓会談において日本政府方針として主張されてきたことを、アメリカだけの解釈によって曲げたのか。そうしますと、当時皆さん方が外務省の情報文化局で流されたこの解釈この態度というものは、これは間違いだったのですか。これをちょっと明確にしてもらいたい。
  86. 中川融

    政府委員(中川融君) 前の解釈が間違いであったかというお尋ねでございますが、先ほども申しました通り、法律的にはまあ二つの解釈をし得るわけでございまして、その一つの解釈を最初に主張したわけでございますが、やはり検討いたしました結果、この解釈よりはもう一つの解釈の方がより適当である、よりすなおであるというふうに考えましたので、それを採用いたしたのであります。どういうわけでそれじゃ第二回会談、第三回会談の際にそういう解釈を採用しなかったかというお尋ねもございましたが、これは、その当時は韓国側が、はたしてこのアメリカの解釈をそのまま受け入れるやいなやということがわからなかったわけでございます。その後もなお数年間は実はわからなかったのでありまして、その点がはっきりいたしましたのは五七年、三十二年の暮れでございます。暮れといいますか、三十二年になりまして、韓国側の態度アメリカの解釈を基礎としてよろしいというふうにだんだんはっきりしてきたのでありまして、従って、その際にこれに踏み切ったというわけでございます。これは一つ、日韓交渉、長い交渉でございますが、交渉の過程におきまして、やはりそういう時期が、一番適当な時期が五七年の暮れであったと、こういうことでございます。
  87. 田畑金光

    ○田畑金光君 米口上書というのは、日韓両国の立場に立って見た場合、一体これはどちらの側に有利であり、どちらの側に不利であると皆さんは考えておられるか、これをちょっと外務大臣から承りたいと思うのです。
  88. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは、日本が韓国にありました財産を放棄する、その財産に対する請求権を放棄したという事実を頭に入れて、韓国の日本に対する財産請求権を考慮するということでございますから、この解釈そのものは、今、条約局長から申し上げましたように、非常にすなおな解釈であろうということで、われわれも同意したわけでありますが、問題は、それを適用するにあたってどの程度考慮するかということによって問題は違ってくると思うのであります。どちらに有利であり、どちらに不利だということは、特に言えないと思いまするが、この解釈通りするということが、最も日韓間の請求権の問題を解決するにふさわしいことであろうと思っておる次第であります。
  89. 田畑金光

    ○田畑金光君 この日韓合意議事録というものもあわせて発表されておりますが、合意議事録を簡単に説明すればどういう内容なんですか、簡単に一つ説明願いたいと思う。
  90. 中川融

    政府委員(中川融君) 合意議事録で公表された部分は、この財産請求権に関する点でございますが、それは、このアメリカの解釈を採用いたしましたことに関連いたしまして、韓国側は、韓国は、もし会談が再開された場合においては、従来韓国側が出した請求権についての案をやはり出したいということを言いまして、日本側は、その場合には韓国側のその請求について誠意をもって討議することに異存はないということを答えたのが第一点でございます。第二は、日本側から、韓国もこのアメリカの解釈について同意見であると考えるが、そうか、ということを言ったのに対して、韓国側が、同意見であると言いまして、なお、第三点といたしまして、形式的には日本側から言ったことになっておりますが、このアメリカの解釈というのは、財産請求権の相互放棄――レシプロカル・リナウンシエーションと英語では書いておりますが、相互放棄を意味するものではないと了解する、と言ったのに対して、韓国側が、その通りであるとうことを言っておる。こういうのが合意議事録の内容でございます。
  91. 田畑金光

    ○田畑金光君 今三つの点について御説明がありましたが、その第一の点において、韓国側は引き続き請求権日本に要求する、そしてまた日本側は今までの請求を引っ込める、こういうことを第一にはっきり認めているわけで、どこにも今伝えられているように、日本側が請求権を放棄したから韓国の日本に対する請求権については相殺の思想で軽減されるのだ、こういうようなことは合意議事録の中に全然出ておりませんが、その点はどうですか。
  92. 中川融

    政府委員(中川融君) その考慮するという点は合意議事録でなくて、アメリカの解釈そのものにはっきり出ているわけでございます。合意議事録はアメリカの解釈そのものに関連いたしましてのいろいろの問答をここに記録にとめたということでございます。従って、その考慮するという点についてはいささかも変化はないわけでございます。
  93. 田畑金光

    ○田畑金光君 口上書に基づいて合意議事録ができているのですから、少なくとも相殺の思想が当初においてあったとするならば、当然これは合意議事録の中において、韓国側も請求権については、日本の財産請求権を放棄したことを考慮する、こういうようなことが入れられてしかるべきであって、合意議事録に問題がない限りにおいては、あなた方のその御答弁というのは、解釈というのは、一方的な日本政府の解釈もっての当時から今日まで継続しているにすぎない、こう見られるわけですが、この点は外務大臣はどうお考えでしょうか。
  94. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この最後のところに、「アメリカ合衆国の見解の表明については、大韓民国政府もこの表明と同意見であると了解する。」、こう言っているのでございます。なお、われわれのそのことに対しまして、そういうことを申しましたのに対して、大韓民国代表部代表も「本代表の了解も、そのとおりである。」と、こう言っているわけであります。このアメリカの解釈についての見解というものに、そこで完全に同意されたものと考えているのであります。
  95. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは何ですか、合意議事録のあれですか。
  96. 中川融

    政府委員(中川融君) 発表されたものと同じものであります。つまりアメリカの解釈と同意見である……。
  97. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは合憲議事録の中に載っているのですか。
  98. 中川融

    政府委員(中川融君) 載っております。三月九日に発表したものに載っているのでございます。
  99. 田畑金光

    ○田畑金光君 あなた方の、政府の今日までこの問題に関していろいろ述べておられる解釈は、われわれ常識的に判断すれば、当然相殺的な思想によって考慮さるべきである。日本国民として、また日本国民の利益の上から当然そうでなければならぬ、こう考えておりますけれども、しかし、この口上書の文章を読みますと、政府の解釈のようにとれるところもあるし、ところが最後のところに参りますと、アメリカもこの厄介な問題について逃げている。たとえば、「合衆国が千九百五十二年四月二十九日付の韓国大使あての国務省の書簡に述べた解釈を示したことは、平和条約の規定に対する合衆国の責任からして、適当であった考えられる。しかしながら、平和条約に定められている特別取極の締結に当たって、韓国内の日本財産の処理が当事国によりまさしくいかに考慮されるべきかについて合衆国が意見を表明することは、適当とは思われない。」、こう書いてあります。また、「特別取極は、関係両政府間の問題であり、かかる決定は、当事国自身又はその決定を当事国が委任する機関のみが、当事国の提示することのある事実と適用される法理論とを十分に検討した後に行なうことができるものである。」、この点になっていきますと、政府の解釈とはどうも、相殺的な思想でこの口上書が書かれているとは読みにくいのです。その最後のところにいきますと、こういうようなところが、韓国との話し合いが、日本請求権を放棄したが、韓国はあくまでも当初の方針をくずしていない、こういうことであろうと考えますが、この点どうでしょうか。
  100. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本の財産請求権放棄の事実が、この特別取りきめにあたって考慮されるということは、双方で合意されているわけです。そこでアメリカの解釈でありますが、今お読みになりました通り、「韓国内の日本財産の処理が当事国によりまさしくいかに考慮されるべきかについて合衆国が意見を表明することは、適当とは思われない」云々と書いてあるのであります。そこで、との程度考慮されるか、これはその当事国が話し合ってきめることだというだけでありまして、考慮されるという事実はここに明々白々に書いてあると思います。
  101. 田畑金光

    ○田畑金光君 そこで、私はさらにお尋ねしたいわけですが、私有財産の尊重の問題について、当初申し上げたように、こんなに強く外務省はこの問題については明確な見解昭和二十八年の当初においてはとっておられるわけですね。このように、また、たとえば、読んでみますと、請求権の問題は非常に複雑であるが、日本側の主張の妥当性を考える場合、第三者の判断を求めていない現状では、先例をたぐってみることも便法であろう。この点、第二次世界大戦後のイタリア平和条約の場合は、割譲地域やトリエステ自由地域にあったものは、国有財産と準国有財産(例えば公有財産やファッシスト党の財産)は無償で譲受国や分離地域に譲渡されたが、私有財産については、これらの地域に居住していたイタリア人の財産は譲受国の国民の財産と同様に、またこれらの地域に居住していなかったイタリア人の財産については第三国の国民の財産と同様に、それぞれ尊重されている。またヴェルサイユ条約では、割譲地域にあるドイツ財産は、国有財産はイタリア条約の場合と同様に無償譲渡され、私有財産も留置、清算される建前であったが、実際には、原則として割譲地の住民であったドイツ人の財産は、国籍選択によってドイツ国籍を恢復した場合にも、留置、清算から除外されていたので、事実上私有財産尊重の原則は貫かれている。こういうことを明確に外務省は国際法の解釈あるいはヴェルサイユ条約、イタリヤの平和条約、こういう点々等から見て、私有財産をあくまでも尊重されねばならぬ、その原則は貫くのだ、こういう態度できているわけです。この点については政府見解は今日変わったのかどうか、この点を外務大臣から承りたい、こう思います。
  102. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど条約局長が御答弁いたしましたように、その解説者なるものは、当時決裂後の会談のあとを受けて、日本政府はかくいう態度をとったのであるという解説であるわけです。従って私有財産の没収というものに対してのわれわれの見解というものを非常に強く強調したものと考えております。しかし、累次における研究の結果、現在のような解釈になっておるわけでありまして、平和条約の全体の流れを見ましても、たとえば十四条において、あるいは十六条においては、中立国における財産までも国際赤十字に引き渡しておるのでありまして、全体としてこの第四条問題だけについて言うということも不適当であろうというふうに考えておるのが現在の解釈でございます。
  103. 田畑金光

    ○田畑金光君 韓国との話し合いが決裂した直後書いたものであるから、こういうことになったというお話ですが、そうしますと、外務省は、この国際法の解釈や条約の解釈等についても、そのときそのときの事情によって解釈を右にし左にするのですか。
  104. 中川融

    政府委員(中川融君) 国際法あるいは条約の解釈をそのときそのときによって左右する、そういうふうに曲げてやるということでは決してないのでありますが、たとえば二つの解釈があり得る際に、そのうちの日本国にとって、いわば有利である片方の解釈をとる、そのときの日本立場なり主張なりに有利なものを傍証として取り上げるということは、当然することでございまして、今の韓国側の主張に対抗する意味でのこの文書で、啓発文書でございますので、日本側は解釈に有利な面を取り上げて書いておるわけでございます。それ自体が間違いであるとは申せませんが、そのほかの面もあるということでございます。
  105. 田畑金光

    ○田畑金光君 この財産請求権の問題は、この条約四条の問題ということですが、この条約の四条というのは、これはどういうことですか。適用されるのは当然北鮮も含めて朝鮮全体をさしておると考えますが、この点はどういうことですか。
  106. 中川融

    政府委員(中川融君) 条約四条の(a)項(b)項とあるわけでございますが、(a)項は第二条地域、この全部にもちろん適用あるわけでございます。なお(b)項は第二条、第三条の地域にそれぞれ適用ある一わけでございます。
  107. 田畑金光

    ○田畑金光君 ですから、私のお尋ねしておるのは、北鮮も含めて、朝鮮全体について適用されると、こういう意味でしょう。
  108. 中川融

    政府委員(中川融君) 北鮮の問題でございますが、たとえばこの第四条の(a)項の取りきめを結ぶ際に、相手が必要なわけでございまして、日本は、ここには当局という言葉、その当局と、こういう取りきめを結ぶということになっておりますが、朝鮮半島におきまして、日本がこういう権限のある当局として承認しておりますのは、結局今の大韓民国政府でございます。従って、大韓民国政府とこの財産の取りきめは行なうといへうことになると思います。なお四条の(b)項でございますが、これは、ここに善いてあります通り、合衆国軍政府によって行なわれた措置を承認するということになっておるので、合衆国軍政府は、朝鮮におきましては、南鮮だけに存在したわけでございますから、(b)項が適用あるのも、これは南鮮だけでございます。
  109. 田畑金光

    ○田畑金光君 外務大臣にお尋ねしたいわけですが、この条約第十四条が賠償の問題と在外財産の問題を書いておるわけです。先ほど第十六条の中立国にある日本資産の問題について、何か述べておられたようですが、その前に、この第十四条の賠償と在外財産の点について、ことに第十四条の(a)の二項に掲載されておる内容です。すなわち日本国及び日本国民――ここでは国有財産、公有財産も含んでおりますが、特に私有財産について連合国の中にあった私有財産というものが、すべて差し押え、留置、清算する権利を認めておる。相手方の国が処分する権利を日本はこれを認めておる。この在外財産の没収というか、処理を認めておる。このことはどういう性格のものなのか、この点について外務大臣一つ見解を承りたいと思います。
  110. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 正確とおっしゃいますと、ここに書いてある通りでございますが、要するに日本が無条件降伏したということによって生じた結果だというふうに考えるのであります。
  111. 田畑金光

    ○田畑金光君 これは私有財産も没収されたわけですが、賠償の一部として引き当てられたものとして見るのですが、この点はどうでしょうか。
  112. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そういう点は解釈のしようだと思いますが、要するにここに書いてある文書から読むよりほかはありませんけれども、実質的にそれだけのものをとったから、それだけ賠償をやめたとも考えられないこともないかもしれませんけれども、要するに、それとそのままつながるというふうには読めないのであります。
  113. 田畑金光

    ○田畑金光君 これは第十四条を通して読めば、明確に(a)項の一においては賠償ということを規定しているわけです。生産賠償、沈船引き揚げによる賠償、役務提供による賠償、そうして、同じ賠償の(a)項の中の第二項ですよ、今私の問題にしておるのは。その中には国有財産、公有財産、その他いろいろのものがあるわけです。これらは含めて実質的な私は賠償として読むべきだ、賠償に充当されたものとして見るべきだ、こう思うのですが、この点は外務大臣としてはどうお考えになりますか。
  114. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 賠償にとるにはまだ十分でない状態に日本はある、日本の戦後の状態は賠償をとるということに適さない、そういう賠償をとるということが、その次に来たるべき世界平和の建設のためによくない、こういう思想から平和条約ができておると思いますのですけれども、しかし、そういう思想からいたしまして、とにかく日本に対し、この十四条の二項にある、ここに記載してあるようなものを没収する、かようなことになったと読むのが一番すなおだと思います。
  115. 田畑金光

    ○田畑金光君 没収したわけですが、その没収したものはただで、何らの根拠なしにやったわけではないので、戦勝国家が敗戦国家の財産を、戦争の損害や苦痛の一つの代償という立場から、賠償の一部に引き当てたのだ、こう見るのがこの条文のすなおな見方だと思うのですが、この点はどう解釈されるか。
  116. 中川融

    政府委員(中川融君) この十四条の(a)項の2の解釈につきましては、平和条約を御審議願っておりましたころから、いろいろの問題の議論が取りかわされた条項でございます。なるほどこの前文的なものとしては、賠償をとるのには日本の資源が十分でないということから、第一にある限定された範囲における役務賠償というものが一として掲げられ、2に、在外財産を勝手に処分することを連合国に認めるという規定があるのでございまして、賠償の問題と全然無関係ということはいえないと思いますが、しかし、これが賠償にかわるものだ、賠償にかわる意味でこれをとったのだというところまでも関連づけるそれだけの根拠もない。要するにここに書いてある通りのことを日本は受諾したのだという以外に、これの的確の解釈はないというのが、そのころからの政府説明だったと思います。現在でも大体そういうふうに考えております。
  117. 田畑金光

    ○田畑金光君 その当時の平和条約審議等の特別委員会等の際にも、政府はこの点については、非常に今あなたは不明確なお答えをなさっておりますが、賠償の全体に相当するものでなくても、賠償の一部にやはりこれは該当する、充当されたのだ、こう解釈されていたのが、その当時の政府態度であったと、われわれは見ておりますが、どうでしょうか。その点はっきりしてもらいたいと思うのです。
  118. 中川融

    政府委員(中川融君) これは平和条約を作る際の過程を考えてみますと、平和条約の第一草案では、役務賠償という問題もなかったのでありまして、連合国もきれいさっぱり賠償を放棄いたしました。そのかわりと申しますか、連合国にある日本財産は、そのかわり全部取ってしまうことができるという規定になっていたのでありますが、その後この役務賠償の規定が、アジア諸国の希望で入ったために、この十四条が非常に賠償関係の条項のようになってきたのでありますが、十四条はむしろその当初の意図したところは、在外財産を勝手に処分できるという意味の規定であったわけであります。従ってこれが賠償そのものである、賠償の一部であるというふうにまで解釈することは、必ずしも適当ではない。しかしながら、賠償権を放棄したことと実質的な関係はもちろんあるというところがすなおな解釈であろう、私はそのように、平和条約を御審議願ったころから、政府は大体そういうような答弁をしているように、私が読んだところでは、そういうふうに記憶いたしております。
  119. 田畑金光

    ○田畑金光君 時間もないので、この点は不明確なお答えのままでありますが、沿革から見ても、この条文の構成から見ても、これは賠償の全部ではないにしても、とにかく連合国家においては、その国にある日本の財産あるいは日本国民の財産を処分することによって、実質的には賠償の一部に、あるいは賠償の全部に充当しているわけで、事実関係から見ても、そういう結果になっているわけです。そうでしょう。また国際法学者の中でも、明確にこれは賠償だといっているわけです。すなおに読むなら、そう見るのがほんとうだと思うのです。そこで私は大臣にお尋ねしたいのですが、憲法二十九条との関係です。「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」、明確になっているわけです。しかも私有財産は、申し上げたように、公共のために用いる場合については、当然法律によってきめられた場合でなければ、個人の財産というものを使用することはできない、こういう建前になっているわけです。私有財産というものが、今申し上げたように賠償の一部に充てられた。賠償というのは、私は国民の債務だと思うのです。国民全体の債務だと思う。国民全体の債務であるなら、個人の財産が賠償に充当されたとするならば、その限りにおいて、当然国はこれに対して補償措置というものを考えなければならない、こう考えるわけですが、この点は外務大臣どうお考えでございましょうか。
  120. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 憲法二十九条に書いてあります通りわが国政府が、公共のために私有財産を使用するという場合には、これに正当な補償を支払わなければならぬということでございます。平和条約によりまして日本が放棄いたしましたる財産につきましては、これは敗戦の結果、日本がこれらの財産というものを外国の圧力によって放棄した、こういうことでございまして、これは今いろいろ申し上げました、ように、十四条二項の問題は、賠償とは読めないのでありまするし、また、そういう趣旨の違いがございまするので、私は今、田畑さんのおっしゃられたような解釈はとらない次第でございます。
  121. 田畑金光

    ○田畑金光君 それから二十九条ですね。正当な補償のもとに、公共のために用いることができる。ただそれを読み上げられただけにすぎませんが、これは公共のために用いる、使用すると、こういっておるわけで、収用するということじゃないのですね。もっと広いことをこれは意味していると、われわれは考えておるわけです。先ほど私があげましたこの資料を見ましても、外務省のこの雑誌を見ましても、私有財産の尊重というものは、長年の国際的な慣行である。それが第二次世界大戦以後いろいろ事情があって変わっておる点は、われわれも見ておりますが、イタリアの平和条約を見ましても、明確にこの点については国が補償するということを書いておるわけですね。イタリアの平和条約には書いております。その点はどうですか。
  122. 中川融

    政府委員(中川融君) イタリアの平和条約によりまして、在外財歴は、やはりおのおののその連合国がいわば自分の方の請求権の引き当てにこれを勝手に処分できる。その限度では勝手に処分できるという規定になっており、それを受けまして、そういう私有財産を奪われた個人に対しては、イタリア政府が適当な補償をするということが条約の中に書いてあるのでございます。
  123. 田畑金光

    ○田畑金光君 現にイタリアの平和条約においてはそのように書いてあるじゃありませんか。これをなぜ日本政府が落としたかということは、これは日本政府の責任です。先ほど外務大臣は、戦争の結果、日本はいくさに敗れてこの条約を無条件に認めて、そうして財産の処分権を相手方に渡したのだと、こう言っておりますが、大体戦争行為自体、これは国家の責任として起きたことじゃございませんか。そう見てくるならば、当然戦争の結果起きた事態であり、講和条約締結の結果財産権が放棄されたとするならば、われわれの見るところですよ、条約締結するのも、これは国家の行為です。国内において土地収用法によって、法律によって処分するのも、これは国家の行為です。条約締結と、すなわち条約と国内法というものとは別にそう違ったものじゃないと、こう思うのですが、その点どうでしょうか。
  124. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) イタリアの条約には、先ほど条約局長が申し上げたようにそうした規定が、補償のことが書いてあるのでありますけれども、これは実際問題として実行されておらないというように聞き及んでおります。そうした規定を入れることすでに無理があったという解釈のもとに、実行されておらないというように聞いておるのであります。私どもは、この条約に書いてある通りにすなおに読んで処分するのが適当と、処置するのが適当であると、かように思っておるのであります。
  125. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) 田畑君に申し上げますが、発言の時間が……。
  126. 田畑金光

    ○田畑金光君 わかりました。時間がきましたから、やむを得ませんけれども、イタリアの平和条約が実行されていないというのも。一つ資料提出願いたいと、こう思うのです。今の答弁は、外務大臣、私は答弁としてなっていないと思うのですがね。もっと法律的な根拠、条約上の解釈を明確にして説明願わぬと、私はやっぱり条約締結ということも国家の権力の一つの発動である、法律、国内法の制定もそうだと。国内法によって、土地収用法なら土地収用法によって、個人の財産を正当な対価を払うことによって使用することができる。同じように、戦争による敗戦の結果、国民全体の債務として支払うべき賠償が、一部国民の、たまたま外地に居住したその人の私有財産をもって充当する、こういうことになってきますならば、その限りにおいて、当然政府はこの私有財産の問題については考慮を払うべきである、こう考えておりまするが、この点もう一度大臣の見解を承りたいと、こう思うのです。  さらに私、時間がないので、この際あわせてお尋ねいたしますが、台湾の問題でも、日華平和条約によって、同国間の取りきめということになっておるわけですね。この点は一体その後話し合いをしたのかどうか。日華両国間によってこれが話し合いになってきたのかどうか。この点はどう解釈すべきであるか、その点を一つ伺いたいと、こう思うのです。
  127. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) このたびの戦争の結果、われわれは北方において、あるいは南方において、あるいは旧満州地帯において非常に多くの権益を放棄いたしておるのであります。で、また敵国にあった――その当時の旧敵国にあった財産、これも放棄いたしておる。それから中立国にあった財産も放棄しておる。こういう関係は田畑さん御承知の通りであります。で、そこで、こうしたものに対して、先ほどから御説明しておるように、この平和条約を結ぶ際に、今度の条約においては、賠償なき講和というものをやろうじゃないかというのが当時の原案でございましたが、それについて、日本がその放棄した地帯で持っておったものに対しては、その財産権を放棄するということになった。ところが、その賠償なき講和というものが、いろいろな関係国の言い分を入れまして、賠償という字も、役務賠償という形において入ってきておるのは、御承知の通りでありまして、先ほどから御説明しておるように、この賠償ということと、この日本の外地に持っておった財産権というものを放棄したこととの間には、直接の条約上の関連はないのであります。ただそうしたことが、同じ財産の放棄である、財産の失権であるという形においてのつながりが、全然ないとも言い切れぬところも、これは問題の解釈のしようによって多少あるかもしれませんが、すなおな解釈からすれば、これは関係ないということであります。  それから台湾の問題についてお話がございましたけれども、この点については、当方からいろいろ話をしようという申し入ればしておるようでございますけれども、しておったと聞き及んでおりまするけれども、この問題については、先方からまだそれについて応諾して、話し合いをしようということになっておらないというふうに了解いたしております。
  128. 田畑金光

    ○田畑金光君 最後に一つ。この台湾の問題ですね。私はこれもっと詳しく条約に基づいて、あるいは議定書に基づいて質問しようと思っていたんですが、時間の関係でやむを得ませんけれども、この問題については昭和三十一年の在外財産問題審議会の当時、中川さんが何か外務省を代表して出ておられて、その当時も、まだ話し合いをしていない、こういうようなことを言っておられるのですが、話し合いをしておらないのじゃない、話し合いができないのでしょう、事実上。
  129. 中川融

    政府委員(中川融君) 日華条約に基づきまして、相互の財産について交渉することになっておるのでありまして、これはその日華条約ができました直後から再三先方に交渉開始を申し入れておるのであります。三十一年当時にもそのようなお答えをしたと思いますが、申し入れ、また最近もこれを申し入れております。しかしながら、遺憾ながら、中華民国政府の方は、この問題について、まあいろいろな事情が、複雑な事情があるからということで、まだこれを応諾するに至っていない。従って、まだ交渉が始められていないのが現状であります。
  130. 田畑金光

    ○田畑金光君 これで私は終わりますけれども、きょうの質問は、外務大臣の御答弁も、局長の御答弁も、非常に不満足でして、特に外務大臣の答弁は、条約上の根拠とか法律上の根拠というものを確信のできるような御答弁になっていないことを非常に残念に思っているのです。まあたとえば、「昭和二十七年(ワ)第三千六百五十号」、これは東京地裁の判決でしたが、「在外公館等借入金返還請求訴訟事件」、これを見ますと、この判決の理由書の中にこういうことを書いてあるのです。被告、これは国ですが、国は、「本件借入金を支払うことは在外財産を持ち帰ったと等しく、他の戦争犠牲者との負担の公平を失すると云うが、平和条約第十四条によって、日本国民が喪失した在外財産についても、被告が」――すなわち国が、「之を補償することは望ましいことであるのみならず」、云々と、こう書いてあるわけで、この判例の一つをやはり見ましても、裁判において明確にこういう解釈を十四条について下しておるんです。また国際法学者の、あるいは憲法学者等の意見を聞いてみましても、第十四条の解釈については、やはりこの在外財産の処分というものが賠償に振り充てられておるんだと、従って国は憲法二十九条に基づいて、これについての補償措置を講ずべきだ、こういう意見が私は多いように見受けられるわけです。政府のとっておられる解釈というものは、憲法学者の一部の人は、確かにそういう解釈をとっておりますが、しかし、この条約をすなおに読む限り、政府の解釈には非常に無理がある。それを私は率直に認めていただきたいと思うんです。しからば、そのあとの処理はどうするかという問題は、私はそこまで今触れているわけじゃないのです。もっとこの問題については、政府としてもすなおに条約を読んで、またこの条約を結んだ前後の事情、連合国と日本国との関係、あるいはまた国際法の建前等々から十分この問題については掘り下げて検討願いたい。このことを要望して、いずれまた別の機会にさらに質問を続けたいと思っております。
  131. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) 午後は二時から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後一時二十一分休憩    ――――・――――    午後二時四十二分開会
  132. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) ただいま第二分科会を再会いたします。  午前に引き続き質疑を続行いたします。
  133. 森元治郎

    森元治郎君 外務大臣に、ちょっと外務大臣の御答弁に関連して、大へんこう間違いがあるんじゃないか。それは二十八日かと思うのですが、あのときに大臣は、いわゆる事前協議の対象についてお尋ねしたとき、地上部隊ならば――従来藤山さん、前の内閣のときからの御説明では、まあ一個師団くらいのものだというのが御答弁であった。で、大臣いかがかと聞きますと、これと同じような趣旨の御答弁があったが、しからば海軍部隊などいかがでしょうと聞いたところが、それは人数だと、やはり同じくらいの人に重点を置いた御答弁があったように思う。そこで私は、この交換公文にもあるように、合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、合衆国軍隊、USアームド・フォーセスでありますから、人数で計算するような御答弁は少し違うのじゃなかろうかと思ったのですが、大臣は大体そんなようなものだと、こうお答えになった。そこで私はあの日の午後、西村防衛庁長官にお伺いをいたしました。これはきわめて明快に、それは海軍の場合はタスク・フォース、機動部隊だ、こういう御答弁があったわけであります。そこで一体いずれがほんとうなのか。これはいやしくも外務大臣として、アメリカと重大な問題について事前協議をされる場合に、少しくどころか、大へんあやふやな理解というか、そういうことでは大へんなことになると思うのです。その違いを間違いだったら御訂正をなさったらよかろうと、こう私は思うのです。
  134. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) あのとき、今おっしゃるように、たしか二十八日だったと思いますが、あの際の森さんの御質問は、海兵隊の訓練に関連して御質問があって、そして陸軍の場合は一個師と、これはわかるが、海の場合はどうだというお話ですから、海兵隊として考える場合も、大体人数とすればそんなくらいじゃないか、こう申し上げたように私は思っておるのです。そこで今の御質問は、海軍といいますか、艦隊の場合ですね。
  135. 森元治郎

    森元治郎君 海上部隊です。
  136. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 海上部隊というのが明確でないのですが……。
  137. 森元治郎

    森元治郎君 海軍でけっこうです。
  138. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 海上部隊というと、陸戦隊という場合も入ると思うので、海軍として考えてみますると、これは艦隊ということになると思います。で、海軍部隊として、日本を基地として装備される場合は、それが何人かと、こう言われましても、ちょっと先般の御質問と違うように思うので、私はあの際は、海兵隊のことについて人数を基礎にして申し上げたわけでございますが、そういうことでございますると、日本をそうした海軍作戦部隊の基地として考える場合ということになろうかと思います。その場合でございますと、基地として日本にそういう海軍部隊が置かれるということは現在想像されない。従ってここに特記されておるものの中にはそういう観念はない、かようにお答えせざるを得ないと思うのであります。
  139. 森元治郎

    森元治郎君 あのときの話は、大臣は少しくお若いせいか、あまり好ましからざる質問があった場合にちょっと怒られる傾向があるので、間違ったと思うのですが、海の方はどうだと伺ったつもりであります。ところが、あの日の話題が、沖繩の海兵隊の問題であったために、あなたは人数に重点を置かれたと思う。私は海というのは、われわれその道の専門家ではないので、海というのは海軍と思って、マリンという特殊な部隊を頭に入れておらないので、伺ったつもりであります。そこで大臣は、中川条約局長の入れ知恵かもしれないが、艦隊が配置されることはないとか云々と言われましたが、そうでなくて、海軍の場合においては、一体何か――あまり手間をかけないで下さい。事前協議の後段の方に「基地としての日本国内の施設及び区域の使用は」というところにかかるかと思うのですが、私は常識的に伺っておるので、その点を、御答弁されるときにあまり字句にとらわれないで、政治家の答弁を求めておるわけです。艦隊がちょっと寄港するときは入らないというようなことでございますから、そうじゃなくて、一応しばらくあすこを基地として、日本を基地として何らかの動きをされることもあり得るわけですから、そのときには、海軍は一体どういうものを単位として事前協議の対象になるか、こういうことを伺っておるわけであります。
  140. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど申し上げましたように、あの場合、海兵隊の訓練で、富士演習場へ沖繩から来たものが帰った、これが三千人である。そこでその人数に関連して、こういうことは事前協議の対象になるのではないか、こういうお話でございましたから、人数の話を申し上げたのでございます。従って、あれは当然入らないのであります。今おっしゃった海軍として考える場合、海軍の基地として日本を使用する場合ということで御質問になったわけですが、これはまあ実際問題として、今申し上げたように、日本を第七艦隊というものの基地にするということは、実際問題として考えられないと思うのであります。しかし、観念的にはそういう御質問もなし得るわけでございまして、海の場合は、結局一つの機動部隊、一機動部隊程度というものが対象になるということを西村防衛庁長官は答えたようですが、そういうことになろうかと思います。これも非常に観念的な仮定といいますか、そういう設問をした際の考え方であると、こう思います。
  141. 森元治郎

    森元治郎君 観念的ではないので、何となれば、機動部隊というのは、大臣、どういうものか、機動部隊というものは、ずばりと簡単に表現する言葉があるのですが、機動部隊とはどういうものと考えられますか、安保小委員会委員ですから、そのくらい覚えておいてもらいたい。
  142. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 機動力を持った部隊というものを機動部隊と称するのであります。
  143. 森元治郎

    森元治郎君 機動部隊というのは、これは航空母艦が入っていないと機動部隊という言葉は使わないのであります。巡洋艦、戦艦だけが何十隻集まっても、機動部隊とは言わぬ。機動部隊――タスク・フォースというものには航空母艦が入っている。第七艦隊なら空母四、巡洋艦三というような編成になるわけであります。飛行機はどんどん飛んでいきますから、日本の基地にかりに配置されたと仮定しても、あるいは基地として使用する場合でも、母艦は横須賀なり、あるいは君国なり瀬戸内海なり、九州に置いておっても、飛行機はどんどん飛び出せますから、当然事前協議の対象になるわけです。そこで、海軍の場合は、それでは人数ではなくて一つの機動部隊、こういうふうに御答弁があったようでございますが、それでよろしゅうございますか。
  144. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それでよろしゅうございます。一機動部隊以上というふうに考えて一おります。
  145. 森元治郎

    森元治郎君 だいぶ御用心で、以上という言葉が出ましたが、それでは一体機動部隊というのは、どれぐらいの兵力を持っているという御了解になっておられますか。
  146. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 一般に機動部隊というふうに言っておりますが、軍事専門家からこういう正確な答弁は申し上げた方がよろしいかと思います。
  147. 中川融

    政府委員(中川融君) 遺憾ながら軍事専門家政府側におりませんので、次の機会に答えさせていただきたいと思います。
  148. 森元治郎

    森元治郎君 もう一ぺんお尋ねしますが、「合衆国軍隊の」という場合には、人数単位ではなくて、やはり軍隊というのは戦闘力、戦力でありますから、一つの組織の単位というふうに考えていくべきものと思いますが、それでよろしゅうございましょうか。
  149. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さように心得ます。
  150. 森元治郎

    森元治郎君 空軍の場合は、一体どういうのが事前協議の対象になると思われますか。
  151. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 空軍として一個師以上というふうに考えております。
  152. 森元治郎

    森元治郎君 空軍にも一個師団くらいが事前協議の対象になる――一個師というのは、簡単な言葉ですが、大臣はどういうふうに御了解になっておりますか。
  153. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これも軍事専門家からお答え申し上げる方が適当かと思いますが、この席におりませんので、他日適当な機会に申し上げるようにしたいと思います。
  154. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、従来は事前協議の対象になる合衆国軍隊は、陸上部隊では一個師くらい、あるいは以上とか、空軍では航空師団、それから海軍ではタスク・フォースだ、機動部隊――空母を含む機動部隊、人数では計算しない、こういうことがはっきりしております。そこで大臣の答弁を伺っていて感ずることは、これらの問題を事前協議の主題とする、この主題とする主題については、何と何が主題になるのだろうかということを、昨年初夏に安保条約ができたときに了解があるのかどうか、これは当然あるべきであると思うのですが、どうですか。
  155. 中川融

    政府委員(中川融君) 安保交渉の過程におきまして、先方との間に大体の了解ができておるのでございます。
  156. 森元治郎

    森元治郎君 それほど了解ができているというのならば、大臣としては国会に臨めば、安保で食いつかれるということぐらいは百も承知だし、条約局長もそのくらいのことは、補助する立場で当然そんなことはここに書いてあると、とんとんと御答弁ができるはずですが、右し左ししているところを見ると、過程において、了解という言葉は少し言葉が強いと思うのですが、了解ができたというのはのみ込めないのですが、どんなものですか。
  157. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは一般的な、政策的な協議をするということで、主題に何をするかということは、大体の了解はできておるわけでございます。
  158. 森元治郎

    森元治郎君 私もたまに政府側に立って突っぱねてみたいと思います、どこでできているといったって、返事しなければわからないのですから。そういうのでなくて、私はどうも腹づもりではなかろうか。日本での配置における重要な変更をやった場合に、あるいは施設、区域の使用をやった場合に、このくらいのものがこられた場合には、どういう兵舎を使って、食糧はどうでしょうか、あるいは作戦的にどうとかという問題があるので、このくらいのときは相談しなければならぬのかという、こちら側だけの腹づもりのように考える。どうも了解という点、あるいは取りきめという点、がっちりしたものは、先ほど条約局長がお答えになったように、過程においてお話しになったという言葉から見て、ないのじゃないか。
  159. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 話し合っておりますわけであります。今、主題とは何かといいますと、重要な変更についてどう認識するかということとも関連があると思いますから申し上げますが、今申し上げたような重要なことで変更というのは、陸海空について、それぞれ今申し上げたように、海軍は一機動部隊以上、陸、空軍は、それぞれ一個師以上、こういうことになっておるというふうに了解しております。
  160. 森元治郎

    森元治郎君 もう一ぺんしつっこくお尋ねいたしますが、了解という言葉が適当でありますか……。そのくらいのものは事前協議になるのだという了解があるとしてよろしいのかどうか。
  161. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。
  162. 森元治郎

    森元治郎君 どうも古い安保条約のころの質問、応答をずっと見て、ムード的な感じでいきますと、はっきりしたそういうものが――はっきりというか、お互いに腹のうちを確かめ合ったということがないような感じがするので、これをお伺いしたわけであります。  核兵器について、これは対象とするということは、何回も政府ではお話しになったようですから触れませんが、私この間外務委員会で御質問申し上げたことをもう一回一つ繰り返したいのは、単に軍隊編成の範囲だけを見るだけではなくして、それの持っておる戦力によって考えるというのが、新しい時代における事前協議の対象の主題ではなかろうか。持っている力、その理由は核兵器はいけない、それは憲法上の問題はもちろんありまするが、何といってもおそるべき兵器だ、たった一発でも水爆などであれば大へんなことになるという威力からきていると思う。憲法上の問題と同時に威力――ですから、部隊が一機動部隊あるいは一航空師団というのではなくても、小さい編成だって、持っている威力がすばらしいある秘密兵器もありましょうし、いろいろあって、すばらしい場合には、しかもおそるべき戦争の惨禍が予想されるような限定戦争を遂行するに足るものを持っているような場合には、やはり事前協議の対象になるのではないか。これは新しい科学兵器の発達に伴ってこれも考えるべきではないかと思うが、いかがでございましょうか。
  163. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知のように、軍隊の装備における重要な変更というものの中には、核兵器というものが限定されております。また核兵器という意味は、核弾頭、それからICBM、IRBMというものの持ち込み、中小距離のミサイルの持ち込み、それからこれの基地の建設ということに限定いたしております。お言葉のように、科学の進歩によって兵器の威力も変わってくるんじゃないかということですが、現在のところはこうしたもの以外には考えられない。いわゆる想像を絶する兵器というものは、今のところは現実の日程に載っていない。従ってこれについて今考える必要がない、こう思っております。
  164. 森元治郎

    森元治郎君 言葉が少し足りないかもしれぬけれども、これから、部隊というものは、ラオスにおけるアメリカの軍事政策を見ても大へん大きな人数、大きな部隊あるいは艦隊で動くとは考えられないので、たとえば第七艦隊というものは大へん大きな艦隊でありますが、朝から晩まで空母四、巡洋艦三がそろって金魚のように歩いているのではなくて、ある空母は日本、ある空母はフィリピン、あるものは本国というふうに分かれておって、作戦要求に従ってそれぞれ出ていく。いわゆる、昔日露戦争や太平洋戦争で日本が失敗した艦隊決戦というように、集合して艦隊と艦隊でやるのはなくなってきたので、単に一個師団だという考え方、あるいは一航空師団だという考え方ではとても割り切れない。あるいは日本が戦争に引き込まれるおそれがあるんじゃないかというような戦力を持ったものもあるので、今後そういう種類のものが明らかになった場合は、十分事前協議の対象になるべきだと思うので、もう一回お尋ねをいたします。
  165. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今その大きな変更、重要な変更という場合の規定を例示的に申し上げたわけであります。また装備の変更についても同様でございますが、それ以外のものについてここへ新たに持ち来たす必要はないというふうに思っております。
  166. 森元治郎

    森元治郎君 外務大臣は何といっても、これはこういうことを御相談なさる法律的な立場と責任を持っておられる方でありますから、もう少し明快に、待ってましたというくらいに御答弁がなければ、国民は非常に不安だと思います。  そこでもう一つお尋ねするのは、合衆国軍隊の日本への配置における重要な変更及び装備における重要な変更ということがあります。そこで、変更というのですから、何かもとがあって、それが数の上で、あるいはポテンシャルの上で大きな変化があるというのですから、そのもとの基準ですね、基準は一体何を基準とせられるのか。その基準があって、初めてこれからどういうものを入れる場合には、日本への配置があった場合には、変更しなければならぬということがわかるわけですが、もとは一体何をもとにして変更ということを言うのか。
  167. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この条約の発効した日ですね、その日以前における状態が基準になると思います。それに対して変更が加えられるかどうかということであります。
  168. 森元治郎

    森元治郎君 それでは、その条約発効した当時の合衆国軍隊の日本における配置されている軍隊の状況、そういうものを一つ資料で出していただきたいと思うのだが、その前にわかっていれば――そうしますと、それからどのくらいふえたか、重要な変更か、小さい、マイナー・チェンジかどうかわかるわけです。
  169. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは、日本が従前の安保条約下において、日本として国家活動を営んでおり、ました際に、特別の状況はなかったわけです。どこからかその状態に対して非常な異議があったということはなかったと思います。従って、その状況のもとにおいて今後どうするかということをきめたのが、このいわゆる新条約、安保改定であるわけであります。従って、そのときにおいていかなる状態に軍隊があったのか、また、その後においていかなる変更があったのか、これはそのこと自身、ここに書いてございまする重要な変更というものは、事前協議を要すべき重要な変更はなかったわけでありますから、それはそれでお認め願ったらよろしいのじゃないかと思います。と申しますことは、安保条約というものは、これはやはり日本の安全のために必要と、われわれは考えて結んでおる条約でございます。その必要がないということでありますれば別でございますが、私どもはその必要に基づいて安保条約を結んでいる、こういう立場であるわけであります。
  170. 森元治郎

    森元治郎君 その条約発効時における駐留軍の、合衆国軍隊の日本における状況資料として一つちょうだいいたしたいと思います。
  171. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 後刻資料を差し上げたいと思います。
  172. 森元治郎

    森元治郎君 それでは、数にあらず、兵隊の組織で判定するのだという率前協議の問題がわかりましたから、次に進みまして、先ほど午前中にありました福島代表発言の問題ですが、これは大へん、先ほど午前中申し上げた通りの理由で、ちょっと思いつきや間違いで言ったのではないじゃないかという感じが深いのであります。私たちが、新聞やあるいはいろいろな消息通、自民党の方々に伺っても、この福島発言というものは、今政府自民党がやっている前向きの姿勢、日中国交回復に対する前向きの姿勢で行くんだと、具体的にどうするかということは目下検討中である、こういう根本方針に対しておもしろからざる勢力がこの発言を起こさせた土台であるというふうに私は考えるのです。これは意地悪ではなくて、けさの何か新聞にも出ておりましたが、非常に反共の勢力もありますし、いろいろ派閥の関係もあるんでしょう。それがこういう形に出てきたんじゃないか。これは反池田勢力の尖兵が福島さんの口に結晶されて出てきたような感じがする。大臣はそういう感じがされるかどうか。
  173. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そういう気持がいたしません。
  174. 森元治郎

    森元治郎君 まあ大臣として、したなんて言ったら大へんなことになりましょうが、どうもそういう、ぶちこわしでなければ、あれだけ勇敢には私はできないと思う。十分お気をつけになった方がいいんじゃないか。  そこで次に、国連代表といって、大臣が人間的にも信頼されて、民間から起用をして、純民間ではありませんが、途中外交官経歴を中絶した民間代表が起用されている。そしてまだ向こうへ十分おつきにならぬくらいにこういう発言があった。これは大臣としても、これから外交をやっていく上において、こうちょくちょくと大臣のあれと違う発言が、その真意は一応ともかくとして、これは十分に戒心をしなけりゃならぬ。しかし、ただ個人的に、君どうして言ったのというだけではだめで、事態は大へん不必要な混乱を起こすと思うので、あらためて福島さんに対しても十分な措置をとると同時に、一般的に大臣の掌握されている出先に対して明確な訓令を出す、そういうお気持がないかどうか。これは出さないというのであればお芝居だと見られることもこれからあり得るわけであります。日本外交として、われわれ野党から見ても、この点はやっぱり明確にしなければいけない思う。
  175. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これはけさほどこの問題でいろいろ申し上げたことでございますが、個人として記者と会った、そのことが大きな波紋を呼んでおるというお話でございますが、とにかく、どういう状況でどういうことを言ったのか、これは一対一の会見なので、やはり真意というのを十分確かめないといけませんので、すべてはそのあとにいたしたいと思います。
  176. 森元治郎

    森元治郎君 すべてはの中に、今後の出先に対する訓令というようなものが含まれるのかどうか、私はそれにはとらわれず、この際出先に、十分しっかりしてやれということを、統制ある外交をやるためには訓令を出すべきだと思うのだが、その点はいかがですか。
  177. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 訓令を出す場合には、やはり先方へ、実情はどうであったのか、確かめてから出したいと思っているわけであります。
  178. 森元治郎

    森元治郎君 時間があまりないので困りますが、一つ中国の問題について一、二点伺ってみようと思います。  大臣のきのう衆議院における御答弁の中にもあったのですが、つまりなぜその二つ中国論というのが出てくるかということを、私もいろいろ突き詰めて見ていますと、こういうところに落ちつくんじゃないかと思うのです。これは自由主義陣営から見た場合の、どうも中国態度が少しきつ過ぎはしないか、極東の安全保障が、台湾を向こうにやった場合に、あとがどうもこわいのじゃないかというようなことも向こうの言説に流れておる。これをうっちゃっておかないで、この問題を何とか前向きに解決をしていく。そんなに不安ならば、中国とじっくり話し合ってみる、接触をするとかということによって、こういう危惧をもし打ち消す方向にいけるならば、アメリカを初めとする国々が台湾はあくまでも守って、二つ中国というようなことをがんばらなくなるのじゃないか、こういうことも考えられるのです。ただ武力行使、武力行使というようなことを既定の事実として押しつけて議論をするのでは、これは始まらないので、極東における平和と安定の道をどうしたら見つけられるかということに積極的に進まれることが、私は一つ中国を円満に作るゆえんであり、極東から平和をこわす要素も取り除くということになるのじゃないかと、私は積極的な方策ですが、そういうことについて大臣はどういうふうにお考えになられますか。
  179. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 平和の問題を考えまする場合に、やはり関係各国が真に平和の意図を持つということが大切だと思うのであります。極東の平和を考えまする場合に、やはり中国問題というのは非常に大きな問題でございまするが、この問題に関してやはり関係国が平和的な意図を持って接触するということは、当然に必要なことだと思うのであります。しかし、現状はきわめて台湾の問題、中国本土の問題、ともに非常に複雑な要素を経過的にも持っておりますし、現状においても非常に複雑であります。そうした関係を十分頭に入れて、この問題については、いわゆる前向きで慎重という態度で臨んでいきたいと思っておるのであります。単に中国側の意図がわかりさえすれば、それで平和の問題が解決できるという問題でもないと思いまして、もちろん、その意図をつかむことは大切でありますが、それにしても、それと同時に真に中国側が平和的な意図を持って、日本に対しても十分に日中親善の関係を持つことができるような情勢を作っていくということは、もとより必要だと思います。しかし、これは、中国というのは大陸における政権、台湾における政権、ともにさようへはことが必要だという意味であります。
  180. 森元治郎

    森元治郎君 これまで、池田内閣ができてからの対中共政府発言集をすくってみれば、きのうの池田総理の、台湾中国に属するのだという含みのある発言、それから外務大臣衆議院でなされた三原則というものを認める、ただし三原則の数字の三というのは否定されたようですが、向こう側が言っている三原則というものに反することは一つもやっていないというお答えであった。これも今までの台湾一辺倒から進む姿勢と、われわれは積極的発言と解釈をしたのでありますが、もし小坂大臣が言うように、日中の国交正常化を妨げたこともないし、二つ中国の陰謀にも加担したことがないのだというようなことであるならば、日中間に問題はないのじゃないか。この態度をもって中国に働きかければ、原則的に日中国交回復の打開もできる。従って具体的なものはこの線で解決の糸口ができるのじゃないか。中国側は中国側で、具体論はあとだ、やっぱり根本原則が国交には大事なんだ、こういうことを言っておるのですから、話し合いの糸口ができると思う。そこでもう一歩進められて、質問されたから、三原則の趣旨には反していないということじゃなくて、進んで池田内閣は日中国交回復に進むと、あるいは両国関係をじゃまするようなことはしないということをここではっきりされたならば問題は大いに前進すると思うのですが。思わせぶりでなく、そこまで前進した御答弁がいただけるかどうか、一つ伺いたい。
  181. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 対中共問題を論ずる場合に、非常に問題を簡単に論ぜられる方もございますけれども、私はさように思わないのであります。やはり何といっても国と国との関係というものは、われわれが申しておりますように、相手の立場を尊重しなければうまくいかないし、相互に内政に干渉するというような態度ではうまくいかないと思うのであります。で、この今いわゆる三原則のお話が出ましたですけれども、やはりその前にバンドン精神と申しますか、相互不可侵、互恵平等、そして内政不干渉、相手の立場尊重というような、そうした国と国との関係において最も基本的なことを双方に、口先だけでなくて、十分に理解する態度というものが必要であろうと思うのでございます。で、そういう立場からいたしまして、何しろ日本の方は、中共問題というのは、あっさり中共を認めさえすればそれで全部解消するのだ、この関係はもう解決するのだというふうな簡単な御議論が割合に多いのでございまするが、何回も申し上げておる通り、この問題は非常に国際的にも複雑な背景を持っている問題でございまするから、十分その間に際して慎重な態度で臨みたい、こう申しておるのでございます。
  182. 森元治郎

    森元治郎君 この前も予算委員会で一方的にお話ししたのですが、やはりこの外交問題、私も若いときからこういう関係、成功、失敗の外交交渉を見ておりますが、一番大事なことは、原則ということが大事なんであります。仲よくするなら仲よくするという原則、しないのならしないという原則、これがあって初めて今度は工作ができるので、日本の場合はどうもこまかい方から原則の方に入っていくようなことをやるために、問題を見失う傾きがあるのです。きょうは時間がありませんから、大臣は、こまかい御答弁は事務当局でけっこうですから、一つ大きな御方針を立てて堂々と、次の機会に御所見を伺えたら幸いだと思います。  賠償及び戦争終結条項などは中国全体に及ぶが、請求権の処理など地域的な問題は、これは地域に限定されるというようなことが大臣の御答弁にあったと思うのです。これはあまり大問題で、残り十分だなんて言われたのじゃちょっと整理できないので、そのうちの一つだけ伺いたいのは、賠償、戦争終結条項などは中国全体に及ぶ、もう済んじゃったのだ、こういう意味だろうと思うのです。そうすれば、もし中国と北京政府と国交が回復したときには、これは新しい中国政府――全然日本なんか戦争も何にもやったことのない新しい国との国交ということに法律上はなるのかどうか、この点を伺います。
  183. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 法律問題ですから、条約局長からお答えいたします。
  184. 中川融

    政府委員(中川融君) 日華条約は、日本と中華民国との間の条約でございますが、この第一条あるいは第四条あるいは第五条等、要するに国家を代表しての中華民国と平和条約を結んだと考えざるを得ない条項があるわけでございまして、こういうものはいずれも国家を代表する中華民国と結んだわけでございます。つまり、相手は国家でございます。この国家というのは、要するに中国国家でございます。従って、もし中華人民共和国日本が将来何らかの条約を結ぶという場合に、その相手方、中華人民共和国が何であるかということによっていろいろ議論は変わると思いますが、おそらくそれは中国代表する国家としての、中華人民共和国代表する政府としての中華人民共和国条約を結ぶということでございましょうから、そうすれば同じ国家と二回平和条約を結ぶと、あるいは戦争状態の終結を同じ国家と二回条約を結ぶということはあり得ないと、従って、そのような平和条約というようなことは再び起こることは理論的にはあり得ない、かように思います。
  185. 森元治郎

    森元治郎君 法律というのはうまいもんでね。これは三百代言という言葉があるくらいで、何とでも言える。戦争も何にもない新しい国となるわけだというのは、それは法律の、日本の法律の解釈です。現実はさようなことは絶対できないことは、これは条約局長も御存じの通りだと思います。これ、私やりたいのだけれども、次に進みます。  茨城県の例の那珂湊の射爆場の問題、これは四月の半ばに茨城県の知事がアメリカに参ります。ところが、この三月の二十四日に、水戸射爆場隊長エバンス少佐から、茨城県の県警本部に対して、在日米軍第五空軍司令官から「別命があるまで当分の間訓練は中止する」との指令が出されたということであります。その直接の原因は、この二十四日の前二十二日、続いて二十四日も、原研から近いところに二十五ポンドの模擬爆弾が誤投下される事故が起こった。これに関連してエバンス少佐からこういう指令が出されたのであります。これに対して岩上茨城県知事は、厚木の司令官に文書で抗議するとともに、外務省、調達庁長官あて射爆場返還に協力してほしいとの要請書を出したようであります。  そこでお伺いしたいのは、第一点は、新しい行政協定でも、第二条に、いつでも返還を目的として、必要性がなかったら返還を目的として絶えず検討しろということもありますし、要請があったら取りきめを再検討しようというふうな親切な文章はありますが、この那珂湊だけはかえ地がないという理由で今日まで延び延びできておるのであります。茨城県全体の、党派を問わず、全体の希望なのでありますが、一体政府は、合同委員会で議論ができなければ、普通の外交ルートによる協議もありますし、安全保障協議会という協議機関もあるし、いろいろな機関があります。高い線で一体この問題についてアメリカ側と熱心な折衝をしたことがあるかどうか、高い地位です。合同委員会じゃもちろんおやりになったと思う。ですから、合同委員会で何回くらいやったのか。最近われわれが陳情してからこの陳情を取り上げてやったのか。高い地位で外務大臣が――われわれ予算委員会でこの間もやったんですが、一体高い地位で交渉されたことがあるかどうか、その結果はどうか、それを伺いたい。
  186. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) お答え申し上げます。御指摘の通りこの那珂湊飛行場、水戸飛行場の件につきましては、政府といたしましては、地元の強い返還要望を考慮いたしまして、ここ数年来施設分科委員会等を通じまして、米軍にこの演習場の必要性をただすとともに、あわせて返還の可能性についての検討を要求してきたわけでございます。しかし、この演習場が米軍の駐留任務遂行のため、きわめて必要度の高いものであるということもありまして、近い将来これを返還させるということは、なかなか困難な実情でございます。しかし従来、また今後も茨城県民の要望を十分考慮して、米軍との折衝を続けていきたい所存でございます。
  187. 森元治郎

    森元治郎君 私の質問の要点には全然触れないのですが、合同委員会で最近、あるいは最近というのが悪ければ本年になってから、あるいは予算委員会で私もやったし、同じ選出議員である武藤さんも同じ問題について御質問をしたのですから、合同委員会で最近、今年になってから取り上げたかどうか。そこで話がつかない、なかなか困難だからより高い水準においてお話をしたかどうかということを伺っておるのです。
  188. 安藤吉光

    政府委員(安藤吉光君) 御存じの通り水戸の飛行場につきましては従来、最近もいろいろ誤投下の事件が起こりました。そのつど合同委員会で米側の善処あるいは今後の措置について要望をずっと重ねてきております。その機会に、一体この飛行場が何とか返還できないものかということもあわせて向こうの検討を要望して参りました。ただ、先ほども申しました通り、これにつきましては分科委員会でも相当従来からも協議、検討している段階でございますので、そしてまた、事実米軍といたしましても、これは相当重要性を認めているという実情もございまして、直ちにこれを返還できるかどうかというようなハイ・レベルの交渉に持っていく段階でなく、現在においてはそういった委員会等のチャンネルを通じまして、鋭意努力している次第でございます。
  189. 森元治郎

    森元治郎君 もうこの話は四、五年来の話ですから、困難だという事情もよく伺っているので、ほんとうに外務大臣が向こうの大使なり何なりと、当然もうすでにお話しになってしかるべきであろうと思う。われわれが質問したり陳情しますと、善処する善処するとおっしゃっているのですから、一体大臣はどうしてこの問題を、これだけの国民の要望をアメリカ側に伝えて折衝をされていないのかどうか。もししているならしているでけっとうですから、重ねて大臣の御答弁を承ります。
  190. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この問題は、最近も誤投下の問題が今お話にありまして、これについてはアメリカ局長からも、先方に特に言うてもらいました。で、お話のように、また御存じのように、現在この演習場の方は一時中止をしているようなわけです。その前にも飛行機が入ってきまする方向を変えたり、あるいは海上の目標、ターゲットの位置を変えたり、いろいろなことをして、先方はできるだけこちらの意向に沿うように努力はしているわけであります。しかし、まああの演習場自体として非常に重要であると、もしかえ地でもあればということもいっておるようでありますが、なかなかそのかえ地がないと、この段階において私が出ますよりも、むしろ正規の機関でさらに十分話し合って、解決の方向に努力するということが適当であろうと思っているわけであります。
  191. 森元治郎

    森元治郎君 もう正規の機関では口すっぱく、すっぱくか甘くかわかりませんが、相当長い間やっておられるので、しかも年限がもう五、六年もたっているのですから、大臣が一度ぐらい、少なくも高いレベルで、一体どうなんだというお話をしてくれてもよろしいじゃないかと、そこを伺っておるので、もう一回大臣からハイ・レベルでやっていただきたいということについて御答弁をいただきます。
  192. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今この主管の部門におきまして熱心にやっておるのであります。また、さっき申し上げたように、先方でもこちらの意向を体して、できるだけ何らかの被害ができないようにということで、いろいろな配慮はしておるのでありますが、何せ今のところ、かえ地の問題等でも解決できれば何ですが、それ以外は、はなはだ困るといっておるその段階において、私が出て無理やりにそういうことを要請しても、かえって事態解決に資するゆえんでないと思いまするから、現在は私は出る気持を持っておりません。
  193. 森元治郎

    森元治郎君 こういうふうにこじれてきますと、やはり高い立場の人が腹と腹と、ほんとうに旧式な言葉でありますが、腹芸でやるべき段階だと思うので、ぜひやってもらいたいと思います。出るべき段階ではなくて、今こそ出て一つやって、誠意のあるところを見せなければ、向こうでも大臣が取り上げないのだから、まだ本物じゃないのだろうと思っておるかもしれないので、ぜひ出てもらいたいと思うが、もう一回お願いします。
  194. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私が出ないからどうというふうには実は思っておらぬと思います。正規の機関を通じて、日本政府として非常に交渉しておるのでございます。なお、高い立場か何か知りませんが、そういうのが一体出た方がいい場合と、出ない方がいい場合と、いろいろあるのでございまして、いろんな判断をして、まあ、もちろん、あまり高姿勢でやっても、すぐ解決できるという問題でない場合もあるわけでありますし、さりとて、何もせぬのはもちろんよくないと思いますから、それこれ勘案して、現在はあなたの御認識と私の認識は違うようでありますから、私は今出る段階ではない、こう思います。
  195. 森元治郎

    森元治郎君 わかりました。わかりましたが、どうも大臣の、国民代表である大臣としては、熱意が足りないということをわれわれは認めざるを得ないのは、はなはだ残念であります。国に帰って、私はここのところは自分の選挙区ですから、よく回って知っておりますが、これでは帰っても、私はとても自民党は問題にならぬというふうに一般の市民は受け取るでしょう。どうかがんばらないで、そうびくびくしないで、なるべく早く向こうと大臣がお会いになってくれることを私は重ねて要望をいたします。  せっかく分科会へ来ましたのですから、外務省の問題もう一点お許しを願って、予算関係のことを聞いてみたいと思います。  それは海外旅行から帰ってみますと、つくずく感ずることは、このソビエトの出先機関というものは、なかなか人数も多いし、言葉の点でも大へん現地の言葉に練達している人が来て、地元民の人気をさらっているようなところも二、三カ所あったようでありました。そこで、私が具体的に、外務省のお歴々はみんな外交官の試験を通ってこられるが、このよりにアジア、アフリカ諸国も多くなってきますと、英語、フランス語あるいはドイツ語だけでは間に合わないので、徹底的に一つでき上がった外交官の語学の再教育、研修所でやりますか、どこがやりますか知りませんが、十分に第二外国語としての言葉を徹底的にたたき込むということもやっていただきたい。  それから若く、外交官の試験を受けられる方あるいは下級外交官の試験を受けられる方にも、ぜひ普通やっておらない外国言葉一つくらいは十分にやらせるということが大事ではなかろうかと、そういうことを、私東南アジアと中近東を回っただけでありますが、感ずるのです。これは予算面には特には出ておらないようでありますが、積極的な地元民、ちょうどコンゴなんかのまた聞きをしますと、ソビエトの方は、現地のコンゴの言葉を自由に駆使する者をたくさん投入して、地元民の人気を博しているという話もありますが、語学をできた者には再教育、新しく入る者には、特に予算をさいて勉強さしていくということも一つの大事なことではないかと思うので、大胆にお尋ねをいたします。
  196. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) ただいまの御質問は大へんごもっとものお話でありまして、私どもとしては、すでに外務省のサービスに入っておる者の語学の再教育、それから特殊語学の研究の奨励というものに、できるだけ努力をいたしております。再教育の方は研修所という制度がありますので、そこでもって、いろいろ勉強をさせる。特殊語学の方はそれぞれ関係の地域に留学をさせて勉強させる。また、そういう特殊語学で、留学生のようにして勉強するのもありますし、あるいは勤務のかたわら、一種の語学手当というものを出してレッスンをとらせたりして勉強させる、こういう方法を講じております。  しかしまだ現在必ずしも十分とは思いませんので、さらに、そういう点に努力したいと思っております。
  197. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私、主としてDAGの問題、後進国援助グループというのですか、今ロンドンで、たしか第四回会議が開かれていると思いますが、実は、この問題について昨年第三回のDAGの会議が開かれたとき、私は大蔵委員会等で、いろいろ質問したのですが、ほとんどあまり関心を持っていないのですね。ところが今回第四回のロンドンの会議で、国民総生産か、総所得かわかりませんが、参加十カ国の総生産ないしは国民総所得の一%の援助をすべきであるということをアメリカが提案をされて、だいぶ関心を持つようになったのでありますが、私は、今後また日本でも開かれるように聞いているのですが、これは、いつごろ日本で開くようになりますか。
  198. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 次回は七月ということになっておりまして……。
  199. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ことしですか。
  200. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 本年の七月でございます。参加国の間で非常に東京で開きたいという希望があるようでございますから、それなら、こちらはお受けするというような訓令を出しております。  なお、今のお話の中で、私どもも、最初アメリカの提案は、国民総所得というふうに聞いておったのですが、実際はGNP、総生産の方であります。
  201. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、総所得の場合より多くなるわけですね。そこで、このDAGというものの性格ですね。そういうもの、今後これから御質問して参りたいと思うのですが、私の見るところによると、かなりこれは、制度的には、これは強制力はないわけですけれども、実質的に制約されてくるんじゃないか、日本立場も。そういう意味もあるので、この際、このDAGの性格というものについて、はっきり認識しておきたいのです。  外務省では、日本はいつ参加されたのか、それからDAGの性格というものは、どういうものであるか、まず、この点について伺いたいのです。
  202. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 第一回の会議は、昨年の三月でございましたわけでございますが、日本はオリジナル・メンバーとして最初から参加しております。この性格は、名の示すように後進国開発援助グループということで、後進国の開発をお互いに相談し合ってやっていこうじゃないかということでございますが、当初はバードン・シェアリングというものは置かないで、ほんとうに任意にお互いに相談し合っていくということだったのですが、今回のアメリカの提案によりますと、どうもそんなことばかり言っておっても、なかなからちがあかぬからということで、一つ国民総生産の一%という目標を置いて、お互いに話し合おうじゃないかということが提案されて参りました。ただ、この場合その国の、たとえば日本なら日本のGNPをとって十四兆なら十四兆の一%ということではありませんようで、その十カ国を寄せて、その総生産というものの一%を目途としまして、そこにあります人口とか、それから生産設備の状況とか、あるいはまた、その国の特殊な支払いの強制されておるものがございますれば、そういうものも考慮してお互いに無理のないところで話合っていこうじゃないか、こういう提案のようでございます。
  203. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日本は第一回からオリジナル・メンバーとして参加しておるそうですが、そのときは、このDAGの性格というものは、各国の別個の援助について情報を交換する、あるいは協議をして、それを調整する、そういうことがDAGの目的であったやに聞いておるわけです。その効果は、あくまで間接的なもので、そういうような申し合せであったように私は聞いておるわけです。  ですから、従って非常に義務的なものはない。またあまり制約されるものではないというので、最初は軽い気持で参加されたのじゃないですか。
  204. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 大体、お話のようなことでございます。もちろん軽い気持ちといいますか、いいかげんなことではなくて、後進国の開発援助は重大である、そういう気持ちで入ったわけでございますが、任意な話し合いのグループという気持であったわけでございます。しかしながら、やはりいやしくも後進国を開発援助しようという場合には、やっぱり大体の考え方というものをきめてかかる必要がある。任意なクラブのようなものよりも、やはりお互いの協力目標というものをきめるということはいいことじゃないかというふうに思います。本来の性格的なもののようにも思うのであります。
  205. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の聞いたところでは、DAGに入ることによってOECD、経済協力開発機構に何か足がかりを得たい、そういう気持からDAGに入った。しかしDAGに入っても、それはDAGの目的が、情報交換とか、協議とか、調整することであって、各国の個々の援助について、そういう情報交換、協議、調整するということであったから、要は、後進国援助について強制力がないのでありますから、それならというので、参加した、そうしてそれを足がかりにしてOECDに何らか足がかりを得たい、こういう気持ちで参加したように聞いておるのですが、そういうこともあるのでしょうか。
  206. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お話のようにOECDというものに対しては、日本は入りたいという希望を持って、アメリカはそれを援助してくれる気持のようですが、まだもちろん入っていないわけであります。そこで、DAGというものは、最初から呼びかけがございますので、それに加入したわけでありますが、日本は幸いにして先進国といいますか、工業的には、相当に高い水準になってきたわけです。現在後進国援助を行なっておる欧米のいわゆる先進国と比べて、日本が全くそれに比肩し狩る立場にあるかというと、相当問題があると思うのであります。そこで、またそういうものに入って、OECDに入って、各国の情報をつかみ、どの程度のことをしているのか、これは非常に話し合ってやって参りますことは意味もある、こういうことで加入したというのが一番大きな加入の動機だと申し上げてよいと思います。
  207. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今、小坂大臣が言われたように、日本は、欧米先進国と比肩してコマーシャル・ベース以外の形において後進国の援助を、たとえばアメリカのように援助し得る立場にないことは、もう言うまでもないことですね。  ところがDAGの性格が、だんだん後進国援助に対して、たとえば個々の国の総生産の一%ではございませんけれども、一応総生産の一%というふうにワクがはまってくると、最初に入ったときの性格とかなり違ってくるのじゃないか、小坂大臣は、後進国援助という場合に、やはりある程度何か目標、基準をきめてやらなけりゃならぬと言いましたけれども、最初DAGに入ったときは、そういう気持じゃなかったと思うんですよ。今、DAGの性格が変わってきている。特にアメリカの、ドル危機、ドル防衛とも関連して、多少変わってきているんじゃないかと思うんですね。具体的にこれから御質問しますが、これは、かなり大きい影響日本経済に、あるいは国際収支の上に及んでくるんじゃないかと思うんですよ。ですから、かなりそれは最初入ったときと、最近のDAGの性格が実質的に変わってきているんじゃないか。それは機構制度そのもの自体は、やはりそんなに変わらないだろうけれども、実質的に変わってきているんじゃないか。今度の第四回ロンドン会議で、その点がはっきりしてきたんじゃないかと思うんです。  そうなると、日本がDAGに入った方がよかったのか、あるいは入らない方がよかったのかという問題が、また起こってくると思うんですがね。
  208. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) DAGが、将来OECDができましたときに、DAGになっていく、こういう予見のもとに、みなで寄り合ったわけでございますけれども、DAGになります場合には、大体そうしたみなで、一応の協力態勢考えながら行こうじゃないかということになろうかというふうには思っておったわけです。  ただ、今木村さんのお話のように、日本経済構造というものが先進国並みになっているかどうかというと、これは、まさに非常に問題があるわけで、最近の農業人口問題等一つとってみましても、こうした経済構造というものは、いわゆる欧米にはないわけでございますから、そこに非常に問題がございます。それから、国民総生産といいましても、国民の総人口、それで割ってみまする場合の一人当たりの生産、これもずいぶん違ってくると思うんでございます。そういうような点を、いろいろ無理のないところで負担額をきめてやっていけるということならば、これもいいのではないかというふうに思います。  ただ、その場合は、日本がバイラテラルに、いろいろ協力しておるわけです。そういうものを、どういうふうに扱うか。それを全部差っ引いていくのかどうか、あるいは賠償というようなものは――これは賠償は、従来DAGの場合、日本賠償も含めて、これも一種のそういう国としての出費でございますから、そういう支出をしている中へ認めてもらっておるわけでございます。認めさせておるわけです。そういうものと同様に考えられるかどうか、その点は、いろいろ話し合ってみなければいかぬと思っておりますが、そういう気持で、これに入ったために非常に負担に無理がかかるということではならないわけでございますから、その点は、十分注意していきたいと思っております。
  209. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうつもりでお入りになったわけなんですから、その後第一回会議、第二回、第三回開いてみると、今、小坂大臣が言われた、何を援助というものに含めるかということですね、いわゆる援助の範囲、援助の定義というものが問題になってきているわけなんです。そのことが、今度のロンドン会議で非常にはっきり出てきたのですね。援助の定義というものが非常に問題になってきているでしょう。  最初は、そういうようなことが問題にならぬと思っておったところが、援助の範囲、規定というものが、だんだん論議されてきて、それで、今まで日本は、たとえば輸銀の延べ払い方式ですな、いわゆるサープライヤーズ・クレージットというのですか、信用供与、これなんかは援助と、おそらく日本考えておったと思うんです。また、考えていると思うんですよ、現に。そうだと思うんですね。そう考えているでしょう、外務大臣
  210. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今、木村さんおっしゃいました輸銀の延べ払いのものでございますね、これは、やはり従来は、日本の場合認めさしておるわけでございます。輸銀の長期的な信用供与、それから賠償というようなものは、従来認めておりますから、今度も、かりにそういうことになりました場合には、おそらく認められるのじゃなかろうかと思っております。なお、今度の会議では、やはりそういう議論を私どもも実は展開するように考えておった。また、したのだろうと思いまするけれども、そういうような方針で、われわれ考えておったわけでございますが、各国からも、いろいろ異議が出まして、この点は、ロンドンでは結論が得られなかったようでございますから、また今後の問題かと思っておりますが、まあ、われわれはこちらとして、無理な点は十分主張していかなければならんと思っておるわけでございます。
  211. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もちろんそうでなきゃならんですがね。しかし、ボンで開かれた第二回会議が終わるときに出されたコミュニケですね。アン・タイドローンが望ましいという、そういう表現で決議が行なわれているわけですね。それから第三回の、これはワシントン会議ですかでも、その点が再確認されているんですね。輸出入銀行の延べ払いというのは、タイド・ローンですね。輸出に結びつく信用供与ですから、タイド・ローンでしょう。ところが、アン・タイド・ローンが望ましいというふうにボン会議でも決議された。それから第三回のワシントンの会議でも再確認された。そうなると、援助の範囲というものが、日本にとってかなり不利になってくるわけですね。そうして、これはロンドン会議の情報あるいは新聞に伝えられたところでは、たとえば輸銀の五年程度の延べ払いというのは援助の範疇に入らんとか、あるいは十年程度なら援助の範疇に入るとか、そういうことが伝えられてきているわけですよ。  ですから、こちらの希望的観測は、まあ希望的観測じゃないかもしれません。あるいはこちらで主張すれば通るかもしませんが、しかし、最初のDAGの性格、目的というものと、かなり変化して参りまして、第一回以来、だんだん情報を交換して参りますと、援助の範囲というものが、だんだん限定されてきている。さっき小坂大臣は、賠償もそれから輸銀の五年程度の延べ払いのあれも、援助の中に入っているというんですね。そういうものも認められていると言われていましたけれども、このDAGの第二回のボン会議のアン・タイド・ローンが望ましいということは、そういうものは賠償とか――賠償は、やっぱり一種のタイド・ローンみたいなものですわね。ローンじゃありませんけれども、やっぱり日本のものが向こうへ行くわけですね、物資が。輸出というようなことになる。それから輸銀の場合も、タイド・ローンですから、輸出に貢献するわけですね。アン・タイド・ローンになった場合、インドの――インドのは援助みたいなものでして、こっちが信用供与した場合、インドは、それをもとに、どこから買ってもいい。必ずしも日本から買わなきゃならんという、ひもつきではないわけですね。どうしてそういうことになってきたかというと、これは憶測ですが、アメリカのドル防衛の関係で、たとえばアン・タイド・ローンで援助した場合には、ひもはつきませんから、アメリカから多く物を買うようになるのじゃないか、そういうことでアン・タイド・ローンが望ましいというふうに決議したのかどうか。  これは、私の憶測ですが、そうなっていきますと、日本の後進国開発というものは、一応日本の輸出振興に役立つ建前でやっておったのでしょう。それで非常に性格が変わってくるですね。その点、今後やはり、ことし七月開かれる日本におけるDAGの会議においても、これは大きな問題になるのじゃないかと思いますが、この点、いかがですか。
  212. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) こういう会議に、日本が出るということは、やはり日本経済状態は、相当特殊性があるわけですが、それを関係各国に十分知らせる、そういうことで、非常にまず意味があると思うのであります。  たとえば今の輸銀の延べ払いとか、あるいは賠償というようなものは、これはもちろん援助――賠償は、援助ではもちろんないわけですが、しかし統計上は、そういう経済的な動きを日本がしているということを十分知らせる上には意味がある、こう思っております。  従って、かりに各国の拠出すべき金額をきめるような場合にも、決して無理なことにはならぬのじゃないか、これが重要なる参考になるのじゃないかと思っております。  それからボンの会議のときのアン・タイド・ローンというものを非常に強く主張してきた――この考え方でございますけれども、われわれの方は、なかなかそう言われたのでは困るという事情を十分に説明をしておりますし、タイド・ローンであっても、国際入札に付すればよろしいというように認める解釈も、だんだんとできつつあるようでございますし、われわれとしては、経済協力というものは、輸出振興の一助としてやることは間違いございませんけれども、それはやはり、われわれは国際社会において、そうした後進国の開発援助に協力をするという、その気持を表わすことでもあろうと思うのです。そういう意味で、こういう経済協力機構に入っておって、日本の事情を知らしめる、また日本自身として、いろいろの資料も得るし、また一般に、南北問題というものがいろいろ言われております際に、その中に、日本も一翼をになって入っていくということに、非常に意味があるように考えておるのであります。
  213. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いずれにしましても、今まで日本が、大体後進国援助としては、輸銀による信用供与がほとんど中心だったと思います、実質的には、賠償を除きますと。そういう方式以外に、今度新しい直接借款に踏み切らざるを得なくなるのではないでしょうかね。今までの、かりに輸銀中心としましても、五年程度の信用供与では足りなくなって、やはり十年くらいの延べ払いにならざるを得ないのじゃないか。そうなってくると、今度は輸銀も、今の資金では足りなくなるという問題も起こってくるのですが、これはこまかくなって参りますが、そういう性格の変化が出てくるのじゃないかと思いますが……。
  214. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) やはりこれは、DAGに入っていたことによって、そうなる、そういう面も多少あるということは、私は否定いたしませんけれども、全体の傾向として、国対田の借款の関係というものは非常に長期のものを要求してくるという傾向になっておるということは間違いないと思います。  でございますから、どういうふうに御説明したらよろしいでしょうか。やはり日本として、いやしくも経済協力ということをやろうという看板を出しております以上、輸出の側においても、できるだけ頭金は少ない方がいいとか、できるだけ、長期で低利のものがいいという――その傾向を否定することは、協力という以上はいけない。DAGというものは、全体の機構に入って、その傾向を見ながらやっていくということも、これまた意味があるというふうに思っておるわけであります。  この機構に入ったために、特に日本の供与すべき借款が長期低利のものにならざるを得ない、その辺の因果関係は、さように見られると思うわけでございます。
  215. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこをもう少し、DAGというものが制度的には、はっきりと変わってはおらないけれども、実質的に第一回会議以来、ずっと変わってきておる。ことにロンドン会議で、はっきり性格の変わったものになってきておるのですから、ただDAGに入ったから、その責任上、DAGに入ったことを合理化するためにのみ御説明されるのでは、非常な私は不本意なんですよ。もっと実際の変化があったならあったように、今度七月に日本で開かれるのですから、そのときの用意のためにも、腹がまえのためにも、日本の主張なら主張というものを、はっきりさすべきですよ。  私は、DAGに入ったこと、最初に入ったことは、第一回会議の程度なら、これはいいですよ。日本は入っても先進国並みにすぐ扱われるわけじゃありませんからね。しかし、だんだん性格が変わってきまして、制約が出てくるということになりますと、さきに小坂大臣がやっぱり言われたように、日本は先進国とは違うのですから、いわゆる中進国と言われておるんですけれども、それが適切かどうかわかりませんが、身分不相応な後進国開発援助ということになると、これは好ましくない。どうも小坂大臣は、そんなことにはならぬだろう、日本の主張をよくすればならぬだろうと、非常に安易に考えておられるようですが、私は、そういう安易には考えていない。考えられないと思うのです。そこのところの認識が違うわけですね。
  216. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本の地位というものを、できるだけ認識させるということは必要で、その意味では、そうした国際機構に入っていくということはいいことだと思うのでありまして、私は、決して入ったことに対して、いろいろと強弁しているつもりではないのでありまして、ありのままの、われわれの感想を木村さんに申し上げておるつもりであります。  やはり、そういう機関に入っておりますと、輸出市場というものに対する、いろいろな輸出市場を発見する上に利点もあるわけでございまして、日本だけが国際会議機構に入らずに、ひとりよがりで見ている場合と、そういう機構に入って、全体の情報を的確につかまえる。そして新たなる市場を定見するということもできるわけです。それから今度、将来の問題としては、組んで経済協力をやっていくということも考えられるというふうに思うのでございます。そういう意味で、私は、この機構に入っているということはよかったと思いますし、また今後も、それをさらに日本に有利に持って参りますように努力したいと思います。日本経済状況というものが、先進と後進の間といいますか、そういうことかもしれないと思うのでありますが、そういうところは、やはりそういう機構に入っていて、常時説明しておれば、だんだん認識を深めることができるわけなんでございまして、決して入っておったら、今度どうにもならなくなるところまで追い詰められるというふうには私は思いません。むしろそういうことが必要であれば、そのときそのときに、とる措置がむろんあるわけでございます。  十分そういう機構に入って日本経済国際的な展開というものの一助にしたいというふうに思っておるわけです。
  217. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはね、非常にまあ理屈としては、観念的には、まあ間違ってないと思います。しかし実質的には、DAGは援助というものの内容をだんだん規制してきた以上、それが実質的に日本に援助というものを強制してくることになるのですよ。そういう僕は軽いものではないと思うのですよ。  もう現に、これはどこまでコンクリートになるかわりませんが、参加十カ国の総生産の一%という線が出てきているでしょう。それは、今まではそんな線はなかったのですよ。ただ、情報の交換協議、調整でしょう、それが、参加十カ国の総生産一%と出てきた。そして援助というものはアン・タイド・ローンが望ましい、こういうことになってくれば、実質的には援助の強制になってくるのですよ、実質的に。その点をもう少ししょっぱく、やはり僕は考えておく必要があるのじゃないか。それを大臣は、そういう国際会議に入っていけば、いろいろな話し合いをする機会もある、日本の実情を訴えるチャンスがある。こういうふうに言われております。  その間の事情は、第一回会議に、それから第三回は、ワシントンですね。日本側から参加された方は、だれかおりますか。ここには来ておられませんか。――それじゃ、せっかく当事者がおられるのですから、別に大臣の御答弁を軽く見るということではないのですよ。参加されておれば、一番よくその空気も御存じでございましょうから、もう少し具体的に……。
  218. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それでは、ちょうど当事者がおりますから、鶴見課長から説明してもらいますが、ちょっとその前に、援助が長期的なものになるから、アン・タイド・ローンにしなければいかぬということは、これはDAGとしては言っておることでございますけれども、これはやはり、DAGだから言うのではなく、世界的な傾向なんですね。援助を受ける方も、ひもつきをきらうということは、これは世界的な傾向なのでありまして、私は、DAGに入ったから、そういうふうになってしまうというのではなくて、世界的な傾向を反映いたしまして、DAGの方でも、そういう気持を映しているということではないかと思いますが、なお、実情を鶴見課長から申し上げます。
  219. 鶴見清彦

    説明員(鶴見清彦君) 私は、第三回のワシントンの会議には出席いたしましたが、第一回、第二回には出席しておりません。今回も出ておりませんわけでございますが、DAGの会議におきましては、従来もそうでございましたし、今度のロンドンの会議も、そうだと存じますが、本来インフォーマルなフランク・エクスチェンジ・オブビュー――率直な意見の交換をするという場として、発足しておりまして、今度の場合も、さっき木村先生からお話のありましたように、加盟各国の総生産の一%の総合計というものを援助共同の目標にしたいというアメリカの提案のございましたことは事実でございまして、これに対しまして、結局いろいろと率直な意見が交換されたように聞いております。  その結果、最終的な結論が実は公電では入っておりませんけれども、プレスの関係で入ってきたところによりますと、毎回最終日にプレス・コミュニケを出すことになっておりますが、ミーティング自身は、閉鎖されたクローズド・コミティでございますが、最後のところは、結局この総生産の一%ということがドロップになったようでございまして、その検討の過程におきまして、各国が――先ほど大臣からも御説明がございましたが、率直に意見を交換いたしますので、それぞれの立場からの意見が出て、今度の場合も、アメリカとしては、最初に総生産の一%の総合計というものを共通の目標にして努力したいということで、意見の交換を行なったわけでございますが、結局、いろいろな各国の意見もあって、その結果、こういうことに落ち着いたのではないかと思います。第三回の会議に出席した経験でも、ただいま申し上げましたごとく、プリペアード・ステートメントを読み上げるというものではございませんで、いろいろな提案が自発的に――スポンテニアスになされまして、率直に意見の交換をする、その結果、何らか非常に拘束的な結論を出そうということでは必ずしもないわけでございます。  第三回会議の際の最後に、一つのリゾリューションというものが出て参りましたが、このリゾリューションの場合でも、各国が、結局全部一致しない限り、そのリゾリューションというものは成立しないという状態になっております。第三回の最後のリゾリューションといたしましては、第四回会議の際に、先ほど木村先生の御指摘がありましたように、各種の援助の効果について話をしようということがリゾリューションになったわけでございますが、それにつきましても、先ほど大臣から御説明がありましたように、今度の会議でも、結局結論を得なかったというような実情であるように伺っております。
  220. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、第一回と、その後の変化というものはおわかりだろうと思うのですが、大体、それで空気はわかりましたが、アメリカが、かなりそういう点を強く出してきておるわけですね。これはまあ、最近のアメリカのドル防衛という問題とも関連がありますし、さらにこれは、ソ連、中国の後進国援助、これが非常に活発になってきておりますね。そういうものに対して対抗する意味で、アメリカがかなりあせっている。そういう点は、あせっているという表現が当たるかどうかわかりませんが、対抗する意味もあって、そうしてアメリカが、ドルの危機もあるものですから、アメリカだけでなく、アメリカ以外の参加十カ国ですね、この総生産の一%という形で、アメリカの負担ばかりでなく、よその国も後進国援助を分担させるという意味も、そこに若干あるのではないか、そういうふうに感ぜられるのです。アメリカが、いつもそういう点を非常に強く主張するのは、そういう点にあるのではないですか。
  221. 鶴見清彦

    説明員(鶴見清彦君) 私からお答え申し上げますが、このたびDAG加盟国の十カ国の総生産の一%の総合計を一つの目標にして努力したいと言って参りましたのは、今度のケネディ政権になってからだと存じます。従来第三回の会議まではアイゼンハワー政権であったわけでございますが、今度の場合、とれがアメリカのドル防衛に直接結びついておるかどうか、私は必ずしもそうでないと思っており、むしろケネディ政権、あるいはケネディ大統領自身の高遠な、後進国に対する援助の必要性と、長期的に後進国の経済が安定することが、結局アメリカの利益にもなるし、アメリカばかりでなしに、先進国全体の利益にもなる、また後進国の利益にもなるという思想に基づいているかと存じますので、先生のおっしゃるごとく、必ずしもドル防衛それ自身に、直接に結びついているとは判断できないかと存じます。  確かに、ケネディ政権になりましてから、DAGに対する腰の入れ方と申しますか、DAGに対するアメリカ態度がはっきりしてきたということは申せるかと思いますし、今後のアメリカ態度は、そういうことで出てくると思います。  しかしながら、今度の第四回会議状況を、全部は明らかでございませんが、見ますると、そのアメリカ態度に、必ずしもすべての国がついていっていない――日本を含めてでございますが――という感じがいたしておりますので、まだまだ、アメリカ態度で、DAGが今後動くにつきましても、相当な紆余曲折があるのではないだろうかと、こういうふうに存じております。
  222. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今度、ロンドン会議日本も出席されたのでしょうね。日本はやはり、そのときに主張されたわけでしょう。アメリカの提案に対して、日本立場を明らかにされたのでしょう。そういう訓令を大臣出されておるわけでしょう。
  223. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その通りでございまして、日本立場というものを、はっきり言うように申しております。
  224. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは、どういうように主張するように出されたのですか。
  225. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 訓令の内容でございますから、あまりこまかいことは、慣例になっておるようでありますから、申し上げませんが……。
  226. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 内容さえわかればいいのです。
  227. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 要するに、一%という点を、各国の国民の、実際の支出し得る金額というものは、その総生産だけでなくて、人口で割って一人当たりの生産額によるものである、そこで、一律に、そういうことを言われても、にわかに賛同しがたい、それから、日本賠償支払いもあり、長期信用供与にあたっても、なかなか国内資金の蓄積がいまだしの段階であるので、おつき合いはしかねるという趣旨でございます。
  228. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今までの御答弁で、やや日本立場も明らかになってきたようですが、しかし、私は、ほんとうの日本としての後進国援助に対する心がまえというものは、まだはっきりしていないのじゃないか。たとえば欧米各国に比べて、日本の後進国援助がどのような地位にあるべきか、そういう点ですね。そういう点は、もっと明確にしていかなければならぬのではないか。  さっきお話の中で、一番最初、小坂大臣が言われた、日本は先進国じゃないという点で、先進国のおつき合いをされたのでは、これは日本としては問題がある。  この点については、あとでもう少し具体的に質問したいと思うのですが、その前に、いわゆるDAGが強制力がないといいましても、アメリカが、ことにケネディ政権になって、DAGに積極的に腰を入れるようになってきたということになりますと、やはりそこに実質的な強制というものが、だんだん出てくるのじゃないか。ことに日本は、アメリカに弱いですからね、そういう点では。それで、いつもそういう場合には、自発的という言葉を使うのです。自発的に協力するという形で、実質的にはアメリカに強制されたということになる場合が多いのであります。  そこで、これは私の思い過ぎかもしれませんが、国連の特別基金ですね、それから国連の拡大技術援助計画資金というのがありますね。これについても、今まで日本は、この出資が非常に少なかったわけですね。それでこれを増額するという問題が起こったようですが、これも、このDAG会議に、かなり影響されたのではないかというふうに私には感ぜられるのです。たとえば国連で開かれている資金拠出制約委員会ですか――というのが国連にありますね。そこで、日本代表の柿坪さんは、日本は拠出を国連分担金並みの二・一九%に引き上げると演説をした。これは今まで日本の出資金があまり少ないので――今まで六十一万五千ドルですか、少ないので、どうも肩身が狭い、それで積極的に発言できなかった、こういうので、そこで思い切って、柿坪代表は、拠出比率を国連分担金比率並みの二・一九%に引き上げる、こういうふうにいわれた。この踏み切りも、DAG会議の圧力があったから、そうなったのじゃないか、こういうふうにいわれておるのですが、これは私の思い過ごしかもしれませんが、やはりそういう圧力が、そういう面にもかかっているのじゃないかというふうにも見られるのですが、この点はどうですか。
  229. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まず、日本アメリカに弱いというお話ですが、私は弱くないと思っております。占領時代は、占領されておる際でありますから、やむを得ないと思います。私どもは、一度でも泣き寝入りをした覚えはないのであります。全部こちらのいう通り、聞かすべきものは聞かしております。(木村禧八郎君「自発的でない」と述ぶ)そうではありません。先方が、むしろ自発的に同意をしているくらいのことが多いわけであります。  そこで、日本外国に対する、いわゆる資金援助というようなものは、これは日本の国情に相応したものを考えなければならないと思いますけれども、さりとて、あまり日本国内にため込むことばかり考えて、全然外に向けないということになりますと、気がついたときには、どうもならなくなりますので、やはり、その辺のほど合いがむずかしいと思いますけれども、どうも相当、東南アジア諸国に対しては政治的な配慮から、ある程度思い切ってやっていかなければならぬと思っておるのであります。しかし、なかなか大蔵省の財布が固くて、実際の援助も思うにまかせないことばかりでございます。むしろこんなことで、どうなるかというようなことがあるのでありまするけれども、そのような状態で、むしろ私は、大いにこの点は、もっと金を出せぐらいに激励をしていただきたいとすら思うのでございます。  それから、国連の特別基金あるいは拡大技術援助基金、これについて二・一九%という日本の負担額は、これは前からきまっておるものでございます。これは、従来のこうした海外のことには、なるたけ金を出すな、ほおかぶりして、工合の悪いときには下を向いて黙っていろという方針でございますと、どうも日本の地位がまずいというので、実はこちらできめまして、大蔵省と折衝いたしまして、それだけの金額を出してもらうことに実はなりましたので、それで柿坪君に訓令を出して、そういう演説をせよということになったわけでありまして、これは順序が逆でありまして、これは、柿坪君がDAGの情勢にかんがみて、そういうことをいったということではございません。  そこで私どもは、そういう基金は、出すべきもの、きまっておるものはきちんと出そう、こういう方針でおりまするけれども、その反面国連によるいろいろな施設があるわけでございます。これはやはり、金は出しておいて東京に一つ持ってくるというふうなことを考えて、鶴岡局長もいろいろ努力しておるのですが、幸いにいたしまして先般の犯罪予防の研究所、こういうものは、こちらに持ってくることができるようになりました。今あてにしておりますのは、地震に関する観測研究、これをやはり国連の機構としてこちらへ持ってくるというようなことも、大体見通しが明るくなってきております。  出すものは出して、いただくものもいただくという方針でいったらどうかというふうに思っておる次第でございます。
  230. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですか。自発的にふやしたと言われますが、それは私は、すなおにそういうふうに認めます。  しかし、自発的という言葉は、これは非常に日本においては独得なニュアンスを持っているので、占領中の惰性もございますから、占領政策は、なるべく押しつけたという形をとらずに、日本が自発的に承認した、自発的に発意したというふうにし向けていって、実際は裏で強制してきて、受け入れざるを得ない。それはアメリカが、日本に駐留軍がでんとしておるんですからね。日本よりも何倍の、何十倍の戦力を持っているものががんといる、存在しておって話し合いをするのですから、自発的に見えながら、実際には、間接的強制に思われる点がずいぶんあるのです。その点は、まあ一般的にそういう感じがされるのですが、今の拠出については、一応今お話のように出すものは出し、持ってくるものは持ってくる、こう割り切ってふやしたという御説明ですが、その点に関しては、私も了承しておきます。  次にお伺いしたいことは、なぜ私が、こういう質問をしたかというと、後進国援助について、DAGの考え方と、それから日本考え方の裏に、基本的な違いがあるのではないか、思想的に基本的な違いがあるのじゃないか、そういう点なんですよ。  それはDAGの思想は、非常に政治的な側面が強いのではないか、東西両陣営の援助競争で、これまでアメリカなんか、金額は非常に大きいのですが、その後ソ連、中国の援助は、かなり積極的になってきておりますね。そこで西側は、援助競争に負けないために、コマーシャル・ベースというものを超越して援助をやらなければならぬという、そういう考え方があるのじゃないかと思うのです。  それで先進国、アメリカなんか相当力もありますから、そういうことは、これまでかなりコマーシャル・ベースを無視してもやってきたと思うのですよ。そこで先進国におつき合いしたのでは、たまらぬというのは、そういうところにあると思う。コマーシャル・ベースを無視してまでも援助しなければならぬという点は、西側のソ連、中国との援助競争に巻き込まれるということになるのではないかという点を懸念するわけなんですね、その点、どうなんですか。
  231. 鶴見清彦

    説明員(鶴見清彦君) むしろ大臣の方が、そういう点はいいかと存じますが……。私どもの判断では、また、先ほど木村先生が申されました通り、DAGとしての一つ考え方というのは、まだDAGの会議も、四回しかやっておりませんし、必ずしもはっきりした考え方が出て参ってはおりませんし、DAG構成メンバーでは、アメリカが確かに一番有力な構成メンバーではございますが、イギリスその他、特にドイツ、フランス、イタリアと、それぞれの違った考え方を持っておりますから、DAGとして、まとまった西側の後進国援助に対する考え方というものは必ずしもまだ出てきていないと私どもは判断いたしております。ただいま先生がおっしゃいました、あるいはむしろアメリカ考え方というものかとも存じますが、DAG、それに、アメリカ代表されているような考え方として、政治的な考え方が強いのではないかという御指摘がございましたけれども、必ずしもそれも、そうじゃないのではないかと思いますし、先ほど大臣から御説明がありましたごとく、最近の後進国諸国の外貨返済能力というものが非常に限定されて参っておりますので、そういう観点からいたしますと、普通のコマーシャル・ベースのローンとか、クレジットということでは、もう五年、十年のものを出しましても、すぐそれの返済のために、また借りなければならないということが、世界的に、世銀筋におきましても認識されております。  でございますの、で、普通のコマーシャル・ベースのやつは、最近の後進国側の事情よりしまして、何も政治的な考え方でございませんで、援助としては、やはりもっと長いものを出す。従って普通のコマーシャル・ベースのものよりも、より以上のものでやっていかなければならないという認識が、だんだん、世界的に広まって参った、またそういう認識が広まって参っております関係上、日本といたしましても、それにある程度ついて参りませんと、先ほど大臣からお話ございましたが、日本の輸出市場の確保という面からも非常に厄介な問題になってきはせぬかということかと存じております。
  232. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に、問題はデリケートだと思うのですが、また私は、DAGの会議だけでなく、IMFなり、それから世銀ですね、第二世銀ですか、そういうものもできてきておる。これなとは、かなりソ連、中国――東側の援助の積極化に対する対抗策という面も、かなり強く出ていると思うのです。  それから先ほどケネディ政権になってから、DAGに対するアメリカの腰の入れ方が非常に積極的になったということも、やはりそういう東西両陣営の援助競争に、西側は負けまい、こういう考え方がDAGにも影響してきて、いるのじゃないか、第一回からその後ずっと、変化してきておりますからね。それで今度ロンドン会議において参加十カ国の構成国の総生産の一%の案が出てきたのも、やはりそういう線ではないかと思うのですよ。  そうしてかりにアメリカ立場に立ってみれば、日本は非常にちゃっかりしている。そうしてコマーシャル・ベース、コマーシャル・ベースといって、そうして今、アメリカがソ連、中国との援助競争で一生懸命になっているのに、日本だけがコマーシャル・ベースでやっているというのに対して、あまり感じはよく思っていないのじゃないか。アメリカからすれば、そういう西側の陣営とすれば、そういう感じがあるのじゃないか。そういうことから、日本に対して援助を、しかも今までの援助と違ったアンタイド・ローンというのを要求してくるのじゃないか。そうなると、日本は先進国でないのに先進国の、つまり私の言うのは経済的、商業的な借款以外に、非常に西側の東に対抗するための、かなり政治的な意味を持った、その借款に巻き込まれる、そういう可能性が出てくるのじゃないか、そういうことを私は懸念するわけなんですね。  そこでそういう意味で、DAGの成り行きを非常に重視しているわけです。そういう立場から今質問してきたわけですが、その点が、私は一番重要じゃないかと思うのですよ。ですから、それは後進国援助に対する日本立場日本の占める位置、そういうものをはっきりさせるべきだ、それで、これまでは非常にちゃっかりしてきたのですから、ちゃっかりという言葉は変ですが、あくまでも経済ベース、コマーシャル・ベースでやってきたのですが、その点が、いたずらに先進国の政治的な援助競争に日本が巻き込まれるということになると、日本がまた政治的にも非常に困ることになる、そういう紛争に、日本は中立的な立場に立っていかなければならぬ、そういう立場にあるのに、経済のそういう面から、どんどん深入りしてしまって抜き差しならぬようになるということではいけないのではないかと思うので、今のような質問をしたのです。  ですから、その点をどういうふうに考えていくか、これは、かなりデリケートですけれども、しかしやはり、そういう点をはっきりさしておかなければ、今度の七月の会議においても、これはまた、問題になると思いますので、外務大臣の御意見を最後に承っておきたい。
  233. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) アンタイト・ローン――ひもつきでない借款を、できるだけやっていこうというDAGの考え方は、先ほど申し上げたように、やはり貸す方の考え方というより、むしろ借りる方のものの立場に立って必要な問題だと思うのであります。むしろ国と国とのヒューマニズムといいますか、借りる方の立場に立って、やはり長期低利の、しかもひものつかない金を皆で拠出していくべきではないか。むしろ借款によって東西両陣営が争うということよりも、金を貸したことによって、ひものつかない世界的な開発を考えていくべきだという一つの理想として、私どもは、これをすなおに認めて賛意を表したいと思うのであります。従来日本が、ちゃっかりした考え方をとって、何でもコマーシャル・ベーシィスでやってしまう、こういうことを考えておるという非難があるかというお話もございましたが、それは、多少あると思いますが、ただ現実の問題としまして、コマーシャル・ベーシスによる借款というものは、もう動かなくなってしまっておるのです。ことに南方諸地域における一次産品の不況というようなことからいたしまして、どうもよほど長期低利の、商業採算を無視した借款でございませんと、現に日本が、いろいろ約束しております賠償付属の経済協力というものは、ほとんどといっていいくらい動いておりません。  そこでインド等に対しては長期の借款、五千万ドルという借款を出したり、またパラグァイ等に対しても、最近四百万ドルの借款というようなものが出ておりますけれども、全体に貸す方の意図というより、借りる方の意図によるという世界的傾向が醸成されつつあるように思うのでございます。ひもつき借款というものは、西も東もそういうことにこだわらずに、力のあるものはその力を出して、世界全体の開発をしていこうという一つの理想をもって進むべきではないかと思うので、DAGよ。そういう意味からいたしまして、その意図するところは、はなはだよしとわれわれ考えておるのでありますが、ただ、協力するといっても、協力するものの可能な限界がございますから、その限界をこえてまでいくということは、現実の問題として不可能だと思います。そういう態度でいきたいと思います。DAGに深入りして、何か非常に冷戦の激化の中に入っていくのではないかという御心配もあるようでございますけれども、私は、それはちょっと思い過ごしであると、こう思っております。  日本としては、先ほど申し上げたように、世界の市場の状況と、各国の援助に対する、低開発国援助に対する実況というものを知りながら、やはり世界の大勢というものを横に見つつ、われわれの世界経済の寄与というものをきめて参りたい、こういう気持だけでございます。
  234. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の持ち時間終わりましたから、もう終わりますが、やはりアンタイド・ローンというものが出てきたのは、ソ連、中国の援助が、ひもつきでないというところから、やはりそれに対抗するという意味もあったと思うのです。まだいろいろ問題があると思いますが、私の持ち時間がなくなりましたから、その点最後に簡単でいいんですが、そういう発想じゃないですか、ソビエトや中国のひものつかない援助に対して、今までの世銀のああいう借款ではまかなえなくなって、そうして第二世銀というものができて、それでアンタイド・ローンという考え方も、そこから出てきた、こういう経過になっているんじゃないでしょうか。ちょっとその点一つ
  235. 鶴見清彦

    説明員(鶴見清彦君) その点は木村先生、先ほど大臣も申されましたが、思い過ごしじゃないか思います。経過的に見ましても、ソ連のやつは、大体最近のものが十二年くらいのローンでソ連の物資を買わせておるのでございます。買わせる場合、あるいはソ連のものでなくても、共産圏の物資を買わせるわけでありまして、返済は、援助を受けた力の国の物品で返済させるということでございますから、これは、アンタイドではないと思いますが、アンタイドの思想は、世銀の場合は、国際入札でやっておりますから、ほんとうのアンタイドでございます。国際的入札の結果落ちたところから買うわけでございますから、このアンタイドの思想は、ソ連が援助を最近いろいろやってきたことの結果として、DAGの中で出てきたというよりも、むしろ後進国の側の立場――先ほど大臣のお話がございましたが――立場に立ちまして、アンタイドになっていれば、後進国側は、どこからでも好きなものを買える。またいろいろ安いものを買える、国際入札によりまして。そういう思想に立ってるものと、私ども了解しておりますが、現実に、そうなっております。
  236. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) この際、お諮りいたします。羽生三七君から、分科担当委員外委員としての発言を求められております。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) 御異議ないと認め、発言を許します。
  238. 羽生三七

    担当委員外委員(羽生三七君) 皆さんの御都合もあると思いますので、きわめて簡潔に二、三の点だけお伺いいたします。  非常に常識的なお尋ねをするのでありますが、分科会でありますから、肩のこらない席と考えて、そういうつもりで質問いたしますので……。  この総括質問の際に、私、、ガリオア、エロアの問題をお尋ねしましたが、これは、それが債務であるとかないとか、総額は幾らだとか、返済方法はどうとか、それから国内的には二重払いであるとかないとか、そういうことは、一切お尋ねいたしません。ただ、これを取扱われる外務省当局のスケジュールとして、総理が渡米される際に、こういう問題に触れられるということは、総理も非常にいやなことだろうと思いますし、それが過ぎると、ずっと先の話になるだろうと思う。それで外務大臣としては、その前にも、何らかのある程度のめどをつけて、それで総理も外相も渡米されるのか。この日々の新聞に、その総額が幾らとか、最近どんどん出てくるわけです。僕らの方は国会で審議しておって、ほとんどつんぼさじきに、おるというような形でありますので、実は、他の委員から、外務委員は何をしているかというおしかりもあって、一体具体的には、どういうスケジュールをもってお進めになっておるのか。今国会中に、ある程度のめどをおつけになって、それから総理が渡米されるのかどうか。内容は一切タッチしませんから、スケージュルだけお差しつかえない範囲で一つ
  239. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は、新聞にぼつぼつ出ますので恐縮しておるのでございますが、これはいわゆる漏れると言いますか、あるいは推察でやられると言いますか、そういう点が多いのでございます。われわれの方は率直に申しまして、まだ何もきまってないのが実情でございます。  ただ、スケジュールといたしますと、これは、できればこの国会が終って総理が渡米されますので、その前に、何らか話をいたしたい。こう思っております。ただこれは、交渉のことでございますから、すぐにきまる場合もありましょうし、なかなかきまらぬ場合もございまして、総理が渡米される時期までに交渉が妥結するということは、ちょっと言い切れない点もございますが、いずれにしましても、長い間の問題でございますし、そろそろこの辺で、けりをつけなければならぬ。かように思うのであります。外交交渉のことでございますから、そのいきさつを全部申し上げることができない点もあるわけなんですが、実は非常に長い間にわたりまして、しばしばこの問題はどうなっているかということになっておる問題でございまして、この辺で何とかという段階かと心得ております。
  240. 羽生三七

    担当委員外委員(羽生三七君) この問題を具体的に、政府アメリカと折衝される場合は、ある程度事がきまってくると思うのですが、折衝された場合は、時期がおくれても事がきまってきて、国会で、この問題でお尋ねをしても、あまり意味のないようなことになってしまうので、今国会中に、そういう機会があるかどうかということを私は考えて、お尋ねしたのですが、これは、この辺でよろしゅうございます。  次の問題に移ります。これも非常に常識的なお尋ねをするわけですが、やはり総括質問の際に私が触れた対中国問題です。しかし私、お断りしておきますが、私どもとしては、どこかの国が、こう言っておるからと、右から左にお取り次ぎするような発言をする意思は毛頭ないのであります。日本日本として、与党、野党と立場の違いはあっても、何らかの形で、それぞれ良識ある妥結の方法を指向しておるんですから、そういう立場で、これも取り扱い上の問題になるんですが、お尋ねをいたしますけれども、政府が弾力的に対処するというこの日中問題に対して、これは貿易の政府間協定のことを言っているのか、あるいは国連加盟のことを言っているのか、その両方なのか、実は、そこのところが、この問題を詳細に、なぜこういうことをお尋ねするかということを申し上げると、なかなか時間がかかりますので、こういう簡単なお尋ねの仕方をするわけですが、どれを言っておるんでしょうか。  それからこの政府間協定という場合には、承認につながるとか、つながらぬとかいう問題があるんだが、そういう問題も含まれる形のものか。これはあまり深くいろいろ、こういうことをお尋ねするのは、どうかと思いますが、その辺の弾力性ということは、どういうことを言っておられるのか。どうにも、ちょっとわからぬところがあるんですが。
  241. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 非常に弾力性というか、文字通り弾力的でございまして、これだと言って申し上げることはむずかしいのですが、結局別の言葉で言いますと、日本考え方のみを固定的にきめて押しつけずに、関係するものの考え方を引きつつ態度をきめていくということと申し上げてよろしいかと思います。  その対象になるものは、やはり国連におきまする中共問題の扱い方の問題もございましょう。それから日本と中共間の貿易につきましての、いろいろの考慮もあると思うわけでございますから、まあそういう問題を、いろいろ含めまして、その問題を、これでなければ一歩も引かずというような、弾力的でない、拘束した形でなく、弾力的なものの考え方をしていきたいと、こういうことでございます。
  242. 羽生三七

    担当委員外委員(羽生三七君) これも、質問の際にも申し上げましたように、アメリカの対中国政策は、スチーブンソン、ラスク、ボールズ氏等、米国の外交首脳の発言を見ておると、特にボールズ氏の場合がそうですが、思いのほかにきびしいものではないかと思うのです。従って、早急なアメリカ外交政策の転換が中国問題にあるとは予想できないわけです。その点は、先ほど森委員松平発言関連して、ちょっと触れられましたけれども、私は、そういうアメリカの空気を反映して、この自民党の与党の中に、池田総理なり、あるいは外務大臣はどうか知りませんが、そういう前向きの姿勢の足を引っぱろうというような動きが起こっていることは、これは確実だと思うのです。  そこで、しかもまた、今度総理が渡米される場合に、アメリカの意見を聞きにいくということじゃないと私は思うのです。察するに、むしろアメリカに意見を求められると思うのです。これは確実だと思います。そういう場合に、今度アメリカに行かれる場合には、そういう意味で総理や外相の渡米ということが、日本外交の将来の進路の上に重要な意味を持つと思うのです。決定的ということになるかどうか知りませんが、重大なる意味を持つと思うのです。私は前にも申し上げましたように、どんなことを議題にするか、その内容は何かという、やぼなことは申し上げませんが、しかしこの種の重要な問題を協議する場合に、総理なり、特に今日の場合は外務大臣におかれては、自民党の外交部会等で、この問題を調整されていくのか、あるいは総理なり外相なりの自身のお考えで、もちろんこれが中心ですが、それでいくのか。あるいはこの前私が申し上げたように、社会党側の意見も聞いていくのか。特に社会党と、この責任者と会われるというような場合に、私は単に形式的にちょっと、新しい最近のムードで両党首会談をやったということは大して意味がないと思うのです。ですから、ほんとうに社会党の責任者の意見も聞いて、そうしてこの新しい国際情勢に対処する基本的の腹固めをしていくというような、そういう意味の何らかの処置、手続き的のこと、そういうことをおやりになるかどうか。私は、やっぱりこれは間違いのない判断だと思いますが、アメリカに意見を聞かれる、こう、私は推察いたしております。そういう意味で、非常に問題が重要だと思いますので、どういうふうにお考えになっているのか。ただ簡単に、すっといかれるとは思いませんが、そういう渡米される前の一連の動きについて、お考えがあれば、お差しつかえない範囲で、これも承りたい。
  243. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) もちろんアメリカへ参りまする場合に、やはり相互の意見が交換されなければ意味ないことでございます。私の従来の気持といたしまして、そういうふうにしているつもりでございますが、自分の意見を十分固めて持っていくということは、何に対しても、さようにしているつもりでございます。今回は総理大臣がいかれるのが主でございまして、私は随伴者として参るわけでございますので、もちろん総理も、さようなお考えであろうと思いますけれども、その前の国内におけるもろもろの手続きと申しますか、手続きより、さらに重要な問題ですが、今お話がございました、どういうふうにしていくかということについては、私自身参ります場合でしたら、あるいはここで申し上げることもできますけれども、総理大臣の随伴者として、そこまで申し上げることは、ちょっと立場をこえると思いますから、御了承願いたいと思います。
  244. 羽生三七

    担当委員外委員(羽生三七君) もう一つは、その問題に関連して、私はこの数年間、外務委員会その他の委員会で、日本外交国際情勢待ちだ、自主性がないということを盛んに言ってきたのです。ところが、今日の段階になると、むしろ国際情勢に、どう対処するかということだと思うのです。これは非常な、何か私の発言が微妙のようになっておりますが、アメリカ方針世界の全体の方向が相当食い違った場合、この前もお尋ねいたした通り、この食い違った場合に、日本の自主性ということは、もちろん当然でありますけれども、国際情勢を、大方の国の動きというものを中心にして考えられていくのか、あるいは長い間の関係のあった日米間ということで、その方に重点を置かれるのか、その弾力性ということも、いろいろにとられる。  そこで、よく前向きという言葉が言われますけれども、前向きでないことを考えている方が、自民党の中に一ぱいいるのです、実際に。そういう場合に、ほんとうに世界のおおよその大勢も推察できる段階にきておるのですから、こういう場合には、そういう方向に向かって順応するような形で問題を処理されようとしておるのかどうかということであります。これは池田総理が中心で、渡米されるには違いないし、外務大臣は、その二員であるには違いないけれども、外交を担当される最高責任者としての外務大臣から、この辺のところは、もうざっくばらんにお話いただいても差しつかえないのではないか、こう思いますので、あえてお尋ねをいたしたいわけであります。
  245. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私ども、外交をいたしまする外交の担当者といたしまして考えまする場合、どうしても以前の日本外交のやり方というものに対して、いろいろ研究いたしまして、その長所はとり、短所を捨てるということをせざるを得ないと思うのでありますが、どうも、従前、とかく日本外交というものは、非常に弾力性がないと申しますか、一途に自分の意見をきめる、そうして、それでただつっ走るという傾向があったように思うのです。それも一つの方向をきめてひたすらにいくのならいいのですが、ときどき鋭角的にそれが違っていくというような点が見られたように思うのでございます。  私は、そういう点は避けて、一度した失敗は、ふたたび繰り返さないようにもっていかなければならぬということを基本的な方針にいたしたいと思っております。国際情勢というものは非常に変化いたして参りますけれども、その中にあって、この情勢全体の中においての日本の利益、日本立場というものを守っていくというには、どうしたらいいかということは、常に現実の情勢に対して誤りない判断が基礎にならなければならないと思うのであります。誤りない判断をいたします場合に、それらの国の一つ一つが、どう考えているかということを現実に把握し得る国と、何を考えているかよくわからない国があるわけであります。そこで、私どもは、やはり一番よくわかっている国の判断というものを基礎にして、そうしてその国の判断と、われわれの判断が違わなければ、それらの国の方向で、われわれとしてはものを考えていったらいいんじゃないかというふうに思います。決して、一人で国際情勢の中に立つことはできません。友を求めなければならぬ。その友もすべてを友としたいわけですが、しかしその判断をいたしまする場合、その友は何を考えているか、最もよくわかる友と話し合わざるを得ないということは必然のことかと思うんです。少しどうも何か味のないお話を申し上げて失礼でありまするが、私どもは率直に言いまして、自由主義陣営としての日本立場というものをやはり中心にしまして、そうしてしかも世界情勢が平和に推移いたしますには、どうしたらいいかということを考えていくよりほかないかと思っております。
  246. 羽生三七

    担当委員外委員(羽生三七君) 自由陣営の一員として政府外交を進めているということは、それはわれわれ知っているのですが、今後、その自由陣営の一員である場合でもアメリカだけはちょっと違う、そういうときを言っているんです、私のは。自由陣営全体が異なる立場をとる場合に、日本政府がこれと全く違った方向をとるなんというようなことは、われわれ想像できないことだけれども、世界のおおむねの大勢が、自由陣営を含めて事がきまった場合、しかしアメリカだけは異なっているという事態が起こったときに、そのときに日本はどうするか、あまり端的な質問で、これもどうかと思うが、しかし、どうも外務大臣、いつもね、日本の利益を中心にしてという、これはだれだって、日本の利益を中心にしていくのだから、その辺はもう少し、はっきりしていただいていい思う。
  247. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、日本は自由主義陣営の国であるというように思います。それと同時にアジアの国であるというふうに思います。この二つを中心に、日本はどうしたらいいか、最も日本の利益に合致するには、どうしたらいいかという判断をいたすべきだと思います。  今の御質問で、自由主義陣営の中でアメリカだけが違う態度をとった場合どうかということでございます。こういうことは、結局仮定の問題ということになるわけですけれども、物事を判断いたします場合に、リーズナブルであるということを判断の基準にいたしたいと考えております。
  248. 羽生三七

    担当委員外委員(羽生三七君) 実際問題として、前にも申し上げましたように、中国国連加盟を議題にする場合、あるいは承認の場合だとか、あるいは台湾問題をどうするかとか、いろいろ問題がありますが、きょうは一切、そういうことは省略いたします。  それで、もう一つお尋ねしたいことは、マクミランイギリス首相なんかとの会見は、これは総理の方ですが、何か考慮されているでしょうか。外相、その辺はどういうふうにお考えになっておりますか。
  249. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は別に聞いておりませんが、イギリスと日本が話し合うということは非常に必要なことだと思いまして、私は機会があれば、そんなことも考えていいと思っておりまして、そのような呼びかけがあるようでもございます。今後のことでございますが、考慮したいと思います。
  250. 羽生三七

    担当委員外委員(羽生三七君) 私、他の委員会からきておりますので、皆さんに御迷惑になっちゃいかぬからやめます。やめますが、これは外務大臣に、こういうことを申し上げるのはどうかと思うけれども、最近例の医療問題にしても、それからILO条約の批准問題にしても、それから日中問題にしても、どうもこの行政部に対して、党側の介入が月にあまるものがあるような気がする。これは外相としても、非常にお困りの問題だと思うが、こういうことの答弁は、あえて求めるほどのことでもありませんが、しかし私は、目に余るものがあると思う。特に日中問題なんかは、私は池田さんや外務大臣が、どういうふうにお考えになっておるか、その辺は、そんたくしかねますけれども、その背後のいろいろな動きを見ておると、弾力性が前向きならいいけれどもうしろ向きの弾力性になりかねない危険性すらあると思いますので、この点は外務大臣としても、十分なる決意や勇気を持ってお進めをいただきたいと思います。諸般の情勢を見て痛切にわれわれはそれを感じるわけであります。特に最近、それがだんだん深刻になってきたような気もいたしますので、この点は、私の質問の最後として要望として申し上げますが、もしお考えがあれば承っておきたいと思います。
  251. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政党政治でございますから、党内の意向、特に自分の所属する政党の意見というものは、十分体して政治をしなければならぬ、行政の事には当たらなければならぬ、こう考えておりますが、自分がいいと思ったことは、やはり与党の方には、まずもって十分連絡して、その同意を得るように努めることが閣僚の務めの一つかとも思っております。問題は、その努力と説得力のいかんだと考えておりますので、私に関する限りは、できるだけそういうふうに努力したいと思います。
  252. 森元治郎

    森元治郎君 大臣、今与党の話が出たので。大臣の数をふやすという中で、どうですかね、海外担当国務相というものを、これは考えるべきだと思います。あなたが浮き上がっちゃうという心配があっちゃいかぬけれども、あなたが国務大臣としていて、そしていわゆる内閣法ですか、ああいうのがむずかしいならば、そうじゃなくて閣議にも出る、政府の意向もよく知っている者が国連代表などになれば、あるいはいろんな対外的な行政事務外交事務を取り扱う者がおったら非常に便利ではないか。それを二人の外務大臣ができたようにしてしまったんでは、二元外交になるという心配もありますが、こんな国連というときに、なかなか訓令やあるいは野におった者を急に引っ張ってきても、やはり政党ですから、政党の体臭といいますか、にわかに頭だけでは理解できない。そういう人を政党の中にでもおられれば海外担当国務相と、名前はこの間ちょっと在外公館のときに伺ったように、ほんとうの認証の公使ではないが、お前は公使という名前を使ってよろしいというような意味の国務相を、適当な人が見つかれば、国連外交なんかに使った場合、あるいはマクミランあるいはケネディ、アイゼンハワーが来たようなとき、いろんなDAGの会議であろうと国連のいろんな会議であろうと、大へん便利だと思うんだが、大臣はどうか。  これは同じ階級では大へんむずかしいでしょう、実際問題としては。大臣が自由に駆使できる、そういうものを一つ国務大臣待遇として、お考えはどうですか。
  253. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまのお話は、イギリスで海外担当の閣外相ですか、というのを赴いたように思っております。これは非常にいい構想で、私も、その点は非常にそういうことができればけっこうだと思うんですが、ただ日本の場合、それじゃそいつを作ってみて、これはどういう働きができるかというと、どうもまず大蔵省から、相当そういう大きな金の融通を受ける見通しがございませんと、担当相を作ったのに、さっぱり何もしないじゃないかということになると、どっちが卵か鶏かということになりますけれども、現状では、輸銀の金は、ほとんどあるかなきかの状態でございます。こんなことをやっていると、ほんとうに私は、海外協力で日本はおくれをとると思うのです。何とか一つ、それをぶち破っていかなければならぬと思いますので、それをやる担当の人を置いた方がいいのか、あるいは今の体制でできるだけ努力してみて、国会の皆さん方の御理解を得て、もっとやってみる方がいいのかというふうな点は、まだ結論を得ませんけれども、考え方としては非常にけっこうだというふうに思っておる次第でございます。
  254. 森元治郎

    森元治郎君 それは、同じく国務大臣十八名の中へ入れるということは、なかなか完成するのは、むずかしいでしょうが、人を得ればできるんじゃないか。小坂さんの言うことを聞いて、帯に短したすきに長しというんではなく、過不足なく、よくあなたの気持通り動く人、動かなかったら首だという誓約を一本とってこき使っていく。そうしてやれば、私は松平みたいにいやみをぶちまけることもない。向こうにいるからわからないんだから、政党の体臭というものが。これは外務省に、そこにもだいぶえらい人がおられるけれども、頭ではわからない、からだで理解しなければ。政党からそういうものを見つけて早く使われることが非常にプラスになるんじゃないか。試金石として、小坂大臣何を残されるか知りませんが、日中国交回復やってくれればりっぱなものですけれども、できなければその一つでも残せば、ちょっとしたものですよ、これは。十分まじめに検討されたらどうかと思うんです。みんなと相談して、御自分の御意見じゃなくて、十分、国連総会を前に控えてやられることが大事だと思う。そうでないと第二、第三の福島さん、松平さんと、何ぼでも出てきて収拾つかなくなると思うんだね、これを十分お考えになられることを希望します。  それから、さっきのDAGの話に関連するのですが、輸出市場の獲得はコマーシァル・ベースじゃうまくいかないという話、それはわかりますが、援助した金がどうなるかということが大問題ですね。援助した金が生きて使われるのか、あるいはむしろ私は後進国になってみたいと思うんですよ。インドなんかでは、また債権国会議が始まるから、債権取り立て会議かと思うと、何ぼ貸すかなんていう相談を最近世界がやっておる、パリなんかでやっておる。こういうわけで、むしろ私は後進国になってみたいくらいだ。日本みたいに金を持ってこないで、けちなことを言っているやつはだめだと、長期低利で、できれば三十年ぐらいと言いたい連中だ。だからラオスにもアメリカが四、五千万ドルを注ぎ込んだが、どうもさっぱり効果があがっていない。アメリカのPEOが、あれだけ金と努力をしても、王様の金になったり、兵隊さんなどの給料になったんでは、何にもならない。日本は所得倍増でなかなか景気がよいからといって、その金を注ぎ込んではもったいない話。どうやって生かして使うかということを大臣考えなければならぬと思う。私は、自民党あたりでは、海外経済協力基金を十倍ぐらいふやせと、勇ましいことを言っておるが、それはけっこうですが、生かすという方も、大臣十分お考えを願いたいと思う。
  255. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) 暫時休憩いたします。    午後五時八分休憩    ――――・――――    午後七時三十八分開会
  256. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) 開会いたします。  ほかに御質疑もないようでございますので、外務省所管に関する質疑は、これをもって終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  以上をもちまして、本分科会の担当事項であります昭和三十六年度総予算中、総理府のうち防衝庁、調達庁、経済企画庁及び科学技術庁並びに外務省及び通商産業省所管の予算の審査は全部終了いたしました。  予算委員会における報告の内容及び審査報告書の作成につきましては、主査に御一任願いたいと存じますが、御異議こざいませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 塩見俊二

    主査塩見俊二君) 御異議ないと認めます。  それでは本分科会は、これをもって散会いたします。    午後七時三十九分散会