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占部秀男君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております
昭和三十六年度
特別会計予算補正及び
昭和三十六年度
政府関係機関予算補正、この二つに対しまして賛成の意を表します。同時に、この際、以下述べます三つの疑問点を指摘して、
政府の反省を求めんとするものであります。
言うまでもなく今回の
予算補正は、いわゆる三
公社五現業の職員に対する給与改善に関して去る三月二十七日に提示されました
公共企業体等労働
委員会の
仲裁裁定を実施するために、
関係の七特別会計並びに三
政府関係機関の各
予算における給与費等を追加しようとするものでございます。
政府の
提案理由によりますと、「
公共企業体等労働関係法の
精神を尊重し、
公共企業体等における健全な
労働慣行を確立する趣旨において、非組合員も含めて、これを完全に実施することといたした」云々とございますが、
公労法第三十五条には、
仲裁裁定が出された場合、当事者は双方とも最終的決定として服従しなければならないこと、また
政府はその
裁定が実施されることにできる限りの努力をしなければならないことが明らかに
規定されておるのでありまして、今回の
予算補正によって
裁定の実施に踏み切ったことは、
公労法によって義務づけられておりますところを履行したいということであり、当然やるべきことをやったというにすぎないのでございます。従って、この補正それ自体につきましては、わが党として何ら反対する理由はございません。
ただ問題として指摘しなければならないことは、第一に、
裁定実施に伴う所要額の財源措置がどのような形で行なわれているかという点でございます。たとえば郵便事業においては、債務償還の繰り延べ、印刷事業においては、日本銀行参の売り払い価格の引き上げ、国鉄においては、三十五年度の剰余金見込みの充当及び大幅な物件費の削減等々、相当無理な財源の捻出が行なわれております。特に国鉄の場合には、退官退職手当等で三十四億、物件費等の節約で二十五億、資産充当で五十八億、予備費で五十五億及び借入金の増で二十億の合計百十二億円となっておりますけれども、つい二カ月ほど前に本
委員会で、国鉄運賃値上げ問題を
審議いたしました際の
政府の答弁では、国鉄は三十五年度十一億の赤字で、何らの余裕財源がない、こういうことが値上げの理由づけになっておった問題でございます。しかるに、今度
仲裁裁定を実施しなければならないということになると、突如としてここに五十八億の剰余金があるとして
出して参りました。剰余金の五十八億円、こういうような金のあるぐらいのことは、運賃値上げ
審議の際に、当然わかっていたとわれわれは思うのであります。わかっていながら、そのときは知らない顔をしておいて、運賃値上げが決定したあとで公表する、これでは国民が納得しないと思いますし、また
国会を愚弄したことにもなると私どもは考えるのであります。こうした例は一々ここに申し上げませんが、たとえばいま
一つの例を郵政
予算について申し上げますと、他会計より五十九億円の繰り入れを行なっております。このうちの郵貯特別会計は四百億以上の累積赤字を帳消しにしてもらったばかりの赤字会計でございますが、今回はこれに借り入れを行なわせ、その十五億を郵政に繰り入れるというのであります。これなども大いに疑点のある点だと思います。要するに今回の
予算補正については、その財源措置のやり方において、少なくとも明朗を欠く点が多々見られますことは、まことに遺憾でございます。これ、わが党が本
補正予算案に賛成を表しながらも、なお
政府の措置は妥当でないことを指摘せざるを得ない重大な理由でございます。
第二の問題点は、この際何ゆえに一般会計
予算の補正をあわせて
提案しなかったかという点でございます。特に財源がないというなら、これはやむを得ないのでございますが、財源は十分にある。これは本
委員会の席上、わが党議員の追及によって明らかになっているところでございます。
昭和三十五年度一般会計の租税収入は、一次、二次の補正後に生じた自然増収だけでも約九百四十億円ある。当初
予算に比べまして実に二千九百億円に上る税の増収となっております。しかも、この自然増収二千九百億につきましては、昨年十二月の本
委員会で、わが党の木村議員がそのままぴったりの予測数字をあげて
質問をいたしましたのに対して、池田総理は、それは間違いである、私ははっきり申し上げておきます、かように答弁をいたしておるのであります。さらにまた、去る三月三十一日の本
委員会では、わが党の大矢議員が、三十五年度の自然増を九百五十億円ないし千億円とみて
質問をいたしましたのに対して、
政府当局は、七百四、五十億だとはっきり答えているのでございます。私は何もここでわが党の宣伝をしようという考えは毛頭ございません。ただ租税の見積もりいかんが、
予算は申すに及ばずあらゆる政策の面に影響するだけに特にこのことを強調し、
政府のこれまでの見通しがいかに間違っていたか、また、いかに無
責任であったかということを明らかにして、この機会にその反省を求めたいと思うのでございます。というのは、わが党は、本
補正予算の衆議院の
審議段階におきまして、社会保障
関係費について二百億円、石炭保安対策費として十五億五千万円、計二百十五億五千万円の追加支出を内容とする
昭和三十六年度一般会計
予算の追加を求める動議を提出いたしたのでありますが、これは多数をもって葬られました。しかし、医療費の一〇%引き上げ、これは直ちに保険料の引き上げとなって、患者負担分の増額を来たすことは必至であります。また
政府の一枚看板でございます
経済成長の高度化と所得倍増計画、これらの政策を強行した結果が、
先ほどの税収の見込み違いあるいは成長率の予想の狂い等、いろいろの理由はございましょうが、とにもかくにも国際収支の悪化、
経済格差の拡大、物価の値上がり、家計支出の増大、生活保護家庭の増加等々、一連の悪作用をもたらしておりまして、国民生活を脅かしつつあることは、否定できない事実でございます。少なくとも国民が今一番
政府に求めておりますことは、社会保障
関係費の増額でございましょう。この切実な国民の要求にこたえたのが、わが党の
予算追加動議の主たる内容であったわけでございますが、
政府はこの
予算補正の動議を一蹴いたしております。さらにまた、先般両院の決議となり、特に本
委員会では今
国会中に
予算措置をなすべきであるとされて、大蔵
大臣もこの席上で、すみやかに
予算的、
資金的措置を講ずる旨の公約をされました石炭保安
関係の対策費、この問題につきましてもわずかに予備費三億七千万円の支出をもって事足れりとされておるような現状でございます。繰り返して申し上げますが、財源がないというならば、それもいたし方ないとわれわれは考えます。しかし、財源はあるのであります。九百四十億円もの金を国民から吸い上げておいて、なぜそれを国民の切なる要望に振り向けようとしないのでございますか。一般会計の
予算補正は十分できたはずであります。にもかかわらず、なぜそれをやらないのでありましょうか。国民にかわって
政府の怠慢とその無
責任を追及するゆえんでございます。
第三に最後に私はガリオア、エロア問題に対する
政府の態度についても警告を発しておきたいと考えております。ガリオア、エロアの問題は、国の
予算に直接大きなつながりを持つだけに、本
委員会におきましても終始熱心な論議が繰り返されたわけでございます。私はここで再びそれを蒸し返そうとは思いません。ただ指摘しなければならない点は、ガリオア、エロアは確定債務ではないと
政府もはっきり答弁されております。にもかかわらず、少なくとも債務性の不明確なものを、はっきりしないままに事を急ごうとするところに問題があるということでございます。結局、この小坂を信用して下さいなどと言われるのでありますが、しかしながら、調印してからではもうおそいのでございます。日米間の大事な借用上の問題であるならば、なおのことはっきりと返済の義務のある援助金額をこの
国会で確認をした上で事を進めるべきでありましょうし、また、そうすることが民主
政治の本筋であろうとわれわれは確信をいたしておるのであります。ガリオア・エロアの
審議を通じて示されましたこの非民主的な態度と、九百四十億からの余裕財源をかかえながら、国民の切なる希望である一般会計
予算補正をあえて提
出しようとしなかった無
責任な態度、これが一貫した現内閣の性格ではなかろうかと私どもは考えております。池田総理は低姿勢は正姿勢だと言われておりますが、それならばなおのこと、以上のごときわが党の事実に基づく指摘と適切な要請に対して、謙虚に耳を傾けられて、本年度
予算の重大な欠陥を是正する
補正予算をすみやかに提出されるよう、
政府の猛反省を望みつつ私のこの一案に対する賛成討論を終わりたいと思います。(拍手)