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国務大臣(池田勇人君) ガリオア・エロアの問題は、過去十年近くからいろいろ論議せられておるのであります。しこうして、これは
日本に対しての贈与であるから、払う必要ないという意見も、私はたびたび聞いております。しかし、これはもらったものではない、借りておるものなら、すべからく適当な金額で払うべしという議論もあります。私は、大体において、
事柄をはっきりするならば、了解をして下さる
国民が
相当多い。反対論より多いのではないか。新聞、雑誌等におきましても、私は、債務と心得て交渉を始め、はっきりした数字できめることが、国際信用の上からいっても適当であるという議論が多数説と思います。また、私自身といたしましても、あの終戦後飢餓に瀕し、また、産業は全然興らないという
状態のとき、食糧その他産業に関する原材料を
日本へ送ってきたことは事実でございます。ただ、そのお金の使い方が、
昭和二十四年の四月から対日援助見返り資金特別会計をこしらえるまでの贈与物資につきましては、これは御
承知の
通り、
貿易資金特別会計に入れ、その後また
貿易特別会計にその物資を入れ、そうしてその物資代金は、
国民がすでに有償でお金を払って消費しておるのであります。その金は
貿易資金特別会計あるいはその後の
貿易特別会計におきましては、輸出補助金あるいは輸入補給金として使用せられたのでございます。従いまして、
国民には、どれだけの品物が来て、そして
国民にそれを売って、売った代金がどれだけ輸入補給金、輸出補助金に使われたかということははっきりいたしておりません。だから、われわれはその数字をはっきりしょうとしていろいろな資料を取りまとめ、これを十分研究をして、大体の全体の数字はわかりかけておるのであります。ただ、
昭和二十四年四月一日以後の対日援助見返り資金特別会計ができましてからの数字ははっきりいたしておるのであります。
で、私は、過去十年来、この問題についていろいろ
考えて参りました。で、対日援助見返り資金特別会計ができましてからの
アメリカのガリオア、エロアのお金の行方ははっきりいたしております。これは、産業投資特別会計へ入れました金が二千二百億円ございます。六億数千万ドルになっております。そうしてまた、対日援助見返り資金から、今まで
日本の産業の復興に使いました、いわゆる復金債の償還が六百三十億円あったと思います。これは対日援助見返り資金
——アメリカのガリオア、エロアの金で復金債の償還をしたのであります。で、また、電電公社の方へ対日援助資金から出したのが百三十億になっております。国鉄にも四十億円、あるいは住宅資金にも百億円、あるいは林野特別会計にも三十億円、
アメリカの援助を
国民に売った金から出ておる。こういたしますると、私の計算でも大体三千億円に
相当するものが、ガリオア、エロアの品物を換価してわれわれの手に渡っている金でございます。これが対日援助見返り資金の使い方。
それ以前のお金はどうなったかというと、先ほど申し上げましたように、輸出補助金、輸入補給金でございます。たとえば向こうで買ってきたものを、国内の安定価格、新物価体系による安定価格、新々物価体系による安定価格という安い値段で外国のものを安く売ったその差額でございます。また、
日本のものを輸出する場合において、
日本のものが非常に高くて、
アメリカやイギリスに行きましても、複数レートで、ほんとうにこっちの値段だけドルやポンドをかせぎ得ないときの輸出資金に充てられたのがこのガリオア、エロアでございます。ガリオア、エロアばかりじゃございません。一般会計におきまして、ある程度の安定帯の費用として補給金を出しております。で、私の記憶にありますところは、
昭和二十四年のガリオア、エ口アを対日援助見返り資金特別会計として、
国民に売った
アメリカの援助物資の代金をためおく会計を設けましたときには、今の輸出補助金、輸入補給金のために、あるいは安定帯のために、当初に組んだ
昭和二十四年の予算は二千二十億円であったのであります。二千億円の
国民の税金で、今までガリオアやエロアでやっておったものを、
国民の税金二千億円を物価の安定帯と輸出入補助金をやっておったのです。それだけもし援助がなかりせば、われわれの税金は非常に高くなるというのがあのときの
実情であったのであります。しかし、
日本の経済の安定のために、私はあえてガリオア、エロアをはっきり
国民に示すように見返り資金特別会計を作りますと同時に、今までガリオア、エロアで泳いでおった金は
国民の税金ではっきりしていこうというので組んだわけです。
しこうして、
貿易資金特別会計並びにその後における
貿易特別会計から一般会計とのやりくりを見ますと、これはなかなかいろいろ入り組んでおりますし、また
昭和二十四年の為替レートをきめる前でございますから、
日本の円表示で換算いたしましても、なかなか
実態に沿わぬかもしれません、この
貿易資金特別会計は、二十一年でございましたか、五千万円と九億五千万円で十億円入れました、一般会計から。そうしてその後におきまして四百億円入れました。そうしてその後、
貿易会計になりまして、八十五億円ほど入れたと思います。しかし、今度は、
貿易資金特別会計並びに
貿易特別会計から一般会計の方に入れた命も二百数十億
——三百億近くあります。だから、その点で申しますと、一般会計から
貿易特別会計に入れただけ多くなっておりますが、この最後の
貿易特別会計から外為資金特別会計に繰り入れた金額も七百七十三億あったと思います。七百七十三億あります。七百七十三億というのは、これは
日本の輸出入の計算と、カリオア、エロアの計算の残りものの数字でございます。どれだけが商売でもうけた金か、どれだけがガリオア、エロアの金か、これは計算できません。また七百七十三億というものは、三百六十円レートで換算いたしまして、
貿易会計から入れたのであります。こういうことを
考えますると、対日援助見返り資金特別会計としてためた金が三千億近くある。別に
貿易特別会計から七百七十三億、先般の
——先般と申しますか、二、三年前のボンド切り下げによりまして四十億円損をしておりますが、それにいたしましても、七百三十億円というものは、ガリオア、エロアから
相当来ておる資金で、外為特別会計に引き受けておるのであります。
こういう実際の状況を見まして、そうして
アメリカからの援助は
国民に売って、自分の
——政府が持っておる金が現に二千二百億円あります。復金債の償還その他を入れますと三千億円というものは、ガリオア、エロアの換価されたものであるのであります。決して
国民から、もう一ぺん小麦や衣料品の代を払ってもらう必要は私はないと思っております。その金は今言ったよらな方法で残っております。その他
相当の部分が、
貿易特別会計から外為資金への繰り入れも、ほかの原因もある程度ありますけれども、そうして換算率の点もありますけれども、七百三十億円というものは
相当部分がガリオア、エロアでいっておるのであります。私はこういう状況を見て、二重払いだとか、あるいはある人が言われるように、腐ったものばかりだというような議論は、国際信用を害する部面と、
日本の公正な政治的判断ということからいいますと、私は一応債務と心得まして交渉するのが適当だと
考えております。
日本ばかりでございません。大体、西ドイツにおいても、そういう
考え方でいきまして、そうして債務を十億ドルと確定し、今、未済の八億ドルは直ちに払うというようなことでいっておるようであります。また、ガリオア、エロアはイタリアももらいましたけれども、しかし、イタリアは御
承知の
通り、マドリッド
政権が寝返りを打ちまして、連合国軍となった
一つの事実は否定できないのであります。
私はいろいろな点を
考えまして、議論はございましょうが、何が
日本人としなすべきか、何が国際信用を高めて、
日本の将来をもっともっと伸ばしていき、世界に信用を得るゆえんはどこにあるかということを自分で過去十年
考えまして、そうして今この結末をつける
段階であると私は
考えまして、交渉を始めておるのであります。ただ、その途中におきまして、先ほど申し上げました、進駐軍が残していきました資料につきましては、十分われわれもできるだけの努力をして結果を見ておるのでありますが、これを今ここへ出すということは交渉の
関係上私はしばらく待っていただきまして、そうして大体妥結の見通しが確実になるかあるいは妥結いたしましたら、この間の
事情につきまして野党の党首の方々に、十分私の
考え方を御
説明申し上げたいと
考えておるのであります。
ただ、今申し上げました数字の対日援助見返り資金特別会計への繰入額、またそれから復金債償還、あるいは四会計への出資分ははっきりいたしております。この
貿易資金特例会計並びに貿特会計の分は、
昭和二十二年以来二十六年までの分につきましては、商業勘定も加わっておりまするし、そうした為替レートもはっきりしておりませんので、この点は数字は
相当動くとお
考え願ってけっこうだと思います。
以上のような状況であります。