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1961-03-31 第38回国会 参議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月三十一日(金曜日)    午後六時三十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員東隆君及び辻政信君辞任につ き、その補欠として曾祢益君及び竹中 恒夫君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事            梶原 茂嘉君            中野 文門君            平島 敏夫君            米田 正文君            阿具根 登君            占部 秀男君            松浦 清一君            千田  正君    委員            小沢久太郎君            大泉 寛三君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            上林 忠次君            小柳 牧衞君            後藤 義隆君            塩見 俊二君            白井  勇君            手島  栄君            一松 定吉君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            山本  杉君            山本 利壽君            湯澤三千男君            横山 フク君            大矢  正君            木村禧八郎君            小酒井義男君            小柳  勇君            田中  一君            高田なほ子君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            森 元治郎君            森中 守義君            曾祢  益君            田畑 金光君            小平 芳平君            竹中 恒夫君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 古井 喜實君    農 林 大 臣 周東 英雄君    通商産業大臣  椎名悦三郎君    運 輸 大 臣 木暮武太夫君    郵 政 大 臣 小金 義照君    労 働 大 臣 石田 博英君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 小澤佐重喜君    国 務 大 臣 迫水 久常君    国 務 大 臣 西村 直己君   政府委員    法制局長官   林  修三君    調達庁長官   丸山  佶君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    外務政務次官  津島 文治君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際    連合局長    鶴岡 千仭君    大蔵大臣官房長 宮川新一郎君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    大蔵省理財局長 西原 直廉君    大蔵省為替局長 賀屋 正雄君    通商産業大臣官    房長      樋詰 誠明君    厚生大臣官房長 高田 浩運君    労働省労働基準    局長      大島  靖君    労働省職業安定    局長      堀  秀夫君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————  本日の会議に付した案件 ○昭和三十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより予算委員会開会いたします。  委員変更について報告いたします。  本日、東隆君が辞任され、その補欠として曾祢益君が選任されました。
  3. 館哲二

    委員長館哲二君) 去る二十四日の本委員会開会中に、運輸大臣が退場せられましたために、本委員会が停頓せざるを得なかったことは、まことに遺憾に存ずるところであります。翌二十五日の早朝、運輸大臣委員長のところまでおいでになりまして、陳謝の意を表されましたことは、理事諸君にお伝え申し上げたのであります。これにつきまして、この際、運輸大臣から発言を求められておりますので、許可したいと思います。木暮運輸大臣
  4. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) 先日、私は不用意にも、委員長の許可を受けずして退出をいたしましたために、本委員会の重大なる審議に支障を来たしましたことは、まことに遺憾に存ずる次第でございます。つつしんで陳謝の意を表する次第でございます。   —————————————
  5. 館哲二

    委員長館哲二君) 昭和三十六年度一般会計予算昭和三十六年度特別会計予算昭和三十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  一般質疑は、去る二十四日で終了する予定でありましたが、阿具根委員質疑が残りましたので、この際、これを行なうことにいたします。阿具根登君。
  6. 阿具根登

    ○阿具根登君 先日の私の質問に対しまして、水資源開発公団につきまして、政府閣僚の中に意見の相違がございました。総理がお見えになりましたので、総理の所信を承りたいと思います。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 水資源開発につきましては、これを総合的に行なう必要を従来から感じておるのであります。ことに経済の高度発展のためには欠くべからざる施策でございまして、私は今、水資源開発につきましてのあり方につきまして、慎重に検討いたしておる次第でございます。
  8. 阿具根登

    ○阿具根登君 趣旨はわかりますが、そういたしますと、本国会にこの法律案をお出しになるのかどうか、もしも、お出しになるとするならば、補正をお組みになるのかどうか、これをお聞きしたい。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まだ出すか出さないか結論が出ませんので、きめておりません。
  10. 阿具根登

    ○阿具根登君 私、時間が非常に少ないので先を急ぎますが、それでは、幸い総理も見えておりますし、分科会でも質問がありましたけれども、外相の答弁に対しまして釈然といたしませんので、総理の見解をただしたいと思います。  ニューヨークにおきまして、福島国連代表が、中国問題については、長い目で見る場合、結局は二つ中国を認めなければならないだろう、こういうことを発言されております。さらに、衆議院においては池田総理は、台湾は中国の一部である、こういう発言もされておるように新聞に出ておるわけです。ところが、それが質問になりますと、はっきりしない、こういうことで非常に不安がある。その点につきまして、もしも、福島発言政府考え方と違うならば、この際、総理大臣からはっきりと、中国一つであって、福島国連代表の言うのは間違いである、こういうことをはっきりしてもらいたいし、あるいは福島代表個人で言ったのだということになれば、国連代表ともいわれる人が、個人意見政府指令と全く違うような形で、この重大任務が勤まるかどうか、そういう点につきまして、総理の御答弁を求めます。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 福島君の話につきましては、私は新聞でちょっと見ただけでございます。しかも、昨日の新聞ときょうの新聞とは違っておるようであります。詳細は外務大臣からお答えさせることにいたしまするが、私といたしましては、政府考え二つ中国ということは今考えておりません。
  12. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 総理大臣お答え通りでございます。
  13. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういたしますと、松平大使の場合は、こちらで取り消しをされたわけなんです。あのときも、個人意見であるというのが問題になったと思うのです。たとい、個人意見であろうとも、こういう重大な問題を発言をする場合には、取り消しニューヨークに行かれたと私は記憶いたしております。今度の場合、自分個人意見だということははっきり言われておるようでございますが、今度の場合は、それに対する取り消しあるいは指令というものを出されておるかどうか、外務大臣にお尋ねいたします。
  14. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この問題につきまして、福島君は、二つ中国ということを言った覚えがないということを申しております。福島君の申しましたのは、この中国問題というのは非常に重要な問題であって、単にこの問題について、その国の国連における地位、そういう問題を論議するだけでなくて、広く世界また極東の平和と安全、また、日本立場における利益と安全というものを考慮しなければならない、こういうことを言ったのだと承知いたしております。
  15. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間がございませんので、労働大臣に御質問申し上げます。本会議でも御質問申し上げたのですが、今次の災害労災補償を受けた炭鉱人々は六十三万なり六十五万である、こういうことでございます。そういたしますと、労災ができましたのは、こういう今のような時期でなく、相当古い、期間がたっておりますが、今のままでいいのかどうか、労災補償は一体どうなっておるか、この点について、私はあまりしゃべる時間がございませんから、詳しく御答弁を願います。
  16. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 現在の労災補償制度は御承知のように、平均賃金の千日分であります。従って、今回の方々は六十四、五万と聞いております。これは遺族の今後の生活保障あるいは子女の育成等に決して十分と考えていないのでありますが、わが国制度は御承知のように、経営者個別責任という立場から出発いたしておりまして、諸外国のように、保険によってこれをまかなう制度はないわけでありまして、それは厚生年金等期待をしておるわけであります。従って、諸外国制度についての採用について検討をする必要は十分あると存じておりますが、これは社会保障制度全般調整を今行なっておりますので、その関連において処置したいと思っております。現在の方法につきましては、あとう限りの手段を講じまして万全を期したいと存じておる次第でございます。
  17. 阿具根登

    ○阿具根登君 こういう労災補償、あるいは退職金というのは諸外国には非常に珍しいのでありまして、たとえば、労災補償の場合に一時金をもらった、しかしそれはわずかの間に消えていくものであって、おそらく各国のものを調べてみましても、年金制で生涯を保障しておるものと私は存じております。そういたしますと、日本労災法も一時金で解決するのでなくて、残された家族を将来保障する年金制度に切りかえるべき時期がきておるんではないかと、かように思いますが、その点労働大臣いかがでしょうか。
  18. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 先ほどお答えを申し上げましたように、諸外国制度は御説の通りであります。従って、わが国におきましては、建前が業者個別責任で補償するということから出発しておりますので、現在のような制度でございまして、年金等厚生年金期待をしておるわけでありますが、しかし、厚生年金という制度がそう普及しておるわけでもございませんので、そういう観点から、ただいま御説のような問題を検討いたさなければならないと存じております。その検討は、今、社会保障全般検討政府として社会保障制度審議会にお願いをしておるときでありますから、その関連において調整をいたしまして決定をしたいと考えておる次第であります。
  19. 阿具根登

    ○阿具根登君 労災補償は、その立場から労災が起こらないようにするのが第一の目的だろうと思うんです。起こった場合のもちろん救済でもございますが、そういたしますと、現在の労災が持っておるいわゆる資金といいますか、残っておるこういうものを、そういう起こらないために利用するというようなお考えはあるかどうか。
  20. 石田博英

    国務大臣石田博英君) その点につきましては、私どももそういうふうな運営を希望いたしまして、前年から研究をしておったのでありますが、先般炭鉱災害が相次いで起こりましたのを契機といたしまして、政府部内におきましても検討を開始いたしております。関係各省間の意見調整がほぼでき上がりつつございますので、近く成案を得て皆さんの御批判に待つことができると存じておる次第であります。
  21. 阿具根登

    ○阿具根登君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今の問題について大蔵大臣はどうお考えになっておるか。もう少し私の意見を述べてみますと、たとえば炭鉱の整理がある場合に、政府施策として企画庁が計画し、通産省がそれを実施に移す。その場合には相当な援護をされるけれども、それが今度は失業者になって現われた場合には非常に大蔵省はおしぼりにたる、そうして三者の責任が一応労働省にくるようになり、労働大臣失業者はおれのところへ持ってこいというような考えでおるんじゃなかろうかと私は思う。そういう点につきまして、一体どうお考えになっておるか。それからもう一つ労働大臣にお尋ねいたしたいと思いますのは、失業保険の残額は今どのくらい——年々どのくらい黒字か出ておるか、これをお尋ねいたします。
  22. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 現在の失業保険会計は九百四十四億でございます。で、年々約百億強出ていると承っております。なお保険特別会計実施以来昭和二十八年に十数億の赤字が出ただけでありまして、あと黒字でございます。
  23. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ちょっと申しわけございませんが、もう一ぺん。
  24. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいままで質問しておりますように、失業保険等は今七百何十億と言われましたけれども、私が聞いておりますのは一千億近い金が残っているわけでございます。年々百数十億と言われましたけれども二百億近い金が残っているわけであります。そういたしますと、そういう金をもっと失業対策に使う考えはないか。いわゆる今日まで炭鉱を買いつぶすとかあるいは業者を支援をするという金は気前よくお出しになっている。でも、労働者に対してはあまり金出しておらないのではないか、こういうことでございます。
  25. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 積立金は現在九百四十億円になっております。しかし失業保険矩期保険でございますので、この給付保険料との均衡がとれてなるたけ積立金が多くならないようにするのがほんとうでございまして、積立金が多くなる、こういうときにはこの保険料を減らす、安くするというふうにすべき性質のものでございますので、この積立金を長期に運用するということは性質上適当ではないと思いますが、しかしいずれにしましても、現在こういう多い積立金がございますので、ただいまの問題につきましては、社会保障全体のこの総合調整の一環として今審議会にこれは諮問しているところでございますので、そこのいろいろな検討も待ちたいと考えております。
  26. 阿具根登

    ○阿具根登君 九百四十四億の黒字が出ている。だからこれは均衡をとるために保険料を下げたい、それならばそれでいいのです。いつお下げになるか。もしもそれができないとすれば、失業保険で食えない人がたくさんいるのでこれの率を上げる。期間を延長する。こういうことを考えなければならぬのではないかと私は思うのです。それからさらにたとえば厚生年金等厚生年金病院等を建ててやっているように、みんながかけた失業保険がこれだけあるとするならば、その保険によって失業者救済をする道を講ずる、こういうことが考えられるわけなんです。だからまず保険料を減らして均衡をとるなどとお考えになるならば、それでもけっこうだと思います。そうすればそれをいつごろからやられるのか。年々二百億からの黒字が出ております。現在九百四十四億ある。だから下げるならば幾ら、どのくらい、いつ下げる考えですか。
  27. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 本来ならば積立金を出さぬようにこの保険料調整ベきものでございますが、それをやっておりませんので、今、御承知のように積立金がふえております。今後これをどうするかということは今諮問しておりますが、外国にこの種のいろいろな参考になる事例もございますので、これも参考にして今後のやり方を考えたいと思います。
  28. 阿具根登

    ○阿具根登君 いやそういうふうに逃げられると困るので、大蔵大臣はどうお考えになっているか。現在これだけの黒字がある。そうしまして毎年々々二百億近い黒字が出てきている。そうして失業保険をもらっている人は非常にその日その日が食えないのではないか。その率を上げる、あるいは六カ月、九カ月の期間を延長するとか、こういうことをお考えになっているか。何かお考えがあるはずだと思うんです。  さらに、飛躍して御質問申し上げますが、かりにこれだけの金があって、一カ所に多くの失業者が出た、そしてそれが、極端なことを申し上げますと、家もあり労働力もあって、長年自分の住みなれた所を離れたくない。そこにたくさんの失業者が出たというならば、この保険金をもって、そこに企業を誘致するとか、あるいは工場を持って来て、こういう保険金かけておる失業者を優先的に雇用するとか、何かこういう新しいことを考えなければ——今のままで、こんなたくさんの金が余っておる、率もまだ下げられない、また期間も延長されない、支給率も上げられない、これでは、保険金をかけた失業者が浮かばれないと思うのです。だから大蔵大臣はどうあるのが一番正しいか、自分はこう思って諮問しておる、あるいは何にも考えずにただおきめ下さいと言って諮問されておるのかどうか、それをお伺いいたします。
  29. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 給付改善という点から見ますと、他の社会保険に比して相当これは高度のものでございますので、これはまだ慎重に検討すべきものと思いますし、保険料の引き下げというようなことについても今後考えたいと思います。そうして、なおかつこれだけに上る積立金がございますので、御意見のような運用をするのがしかるべきかどうかということについて、いろいろ諮問をしておるところでございますので、その検討を待ってから私ども善処したいと思います。
  30. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはいつごろ終わるのですか、いつごろその答申は出て参りますか、一応期間をきめて御諮問になっておると思うのですが……。
  31. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 期限は三十六年度末までにということを付して、検討になっております。
  32. 阿具根登

    ○阿具根登君 三十六年度末というと会計年度ですかそれとも暦年ですか。まあいずれにしましても一千億をこす金が眠っておるわけですね。そうすると、それはそのまま放って置いて三十年度末までに答申してくれと、そんなに時間がかかりますか。
  33. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いずれにしましても、本年度予算編成には間に合わなかった問題でございますので、いろんな改善策というようなものはやはり来年度予算編成のときから考えていくことに事実上はなろうかと思います。
  34. 阿具根登

    ○阿具根登君 最後に一つ労働大臣質問いたしますが、最近の労働大臣の発表を見ますと、非常に失業者が減ったというようなことを言っておられる。確かに青少年の就職は多くなったと思います。しかし労働大臣も非常に御心配願っております中年癖以降の失業者というものは減っておらない。非常にその谷間は深くなってきた。数は減ったけれども、今失業者の群の中に放り出されておる人たちは、家族を抱えて極端に生活に苦しんでおる。これを一体どうお考えになっておるか。たとえば訓練所技術を与えますと覆われても、中年過ぎた人が技術を手に持ってもその人はまだ新参です。家族を養うだけの給料はどこでもくれない。必然にその人たちはどん底に落ち込んでしまっておる。だから数の上ではなくて、その質というものは非常に深みに入っておる、こういうことを考えるわけなんです。これに対してどういう対策をお考えになっておるかお尋ねいたします。
  35. 石田博英

    国務大臣石田博英君) お説のように完全失業者の数は減っております。しかしながら非常に解決困難な中高年令層失業者群が特に石炭あるいは駐留軍関係に多いのであります。そこで政府といたしましては、まず第一に中高年令層適職の調査をいたしまして、その適職をほぼ見当をつけたわけであります。それに基づきまして、政府関係機関にでき得る限り中高年令層を雇用してもらうように協力を求めておることは御承知通りであります。さらに財政投融資等によって運営しておるところについてもこれを呼びかけるつもりでありますし、さらに広く一般民間企業にも要請をいたすつもりであります。しかし、それによってなお所期の目的を達成せられない場合におきましては、ただいま申しましたような中高年令層で間に合う職種につきましては、若年層の求人に対して中高年令層と抱き合わせてやるというような行政指導も必要かと思います。また、職業訓練はおっしゃるようになかなか中高年令層は参りません。参りませんけれども、おいでになった方は百パーセントの就職をいたしております。賃金も大体最高一万八千円から二万三千円ぐらいの間を上下いたしておりまして、五十五才の人が数名就職した実例がございまして、ですから、これもやはり普及していかなければならぬと思います。だがしかし、こういう年令になりますと、なりますだけ、地域的停滞性が強くありますから、従って、先ほどの御議論のように、やはりその人々が住んでいるところに産業の基盤を育成していくことが必要だろうと考えておる次第であります。
  36. 阿具根登

    ○阿具根登君 運輸大臣がおみえになりましたから、ちょっと運輸大臣いいですか、これは簡単な問題です。今、労働大臣と議論しておりました訓練所に通っている人々ですが、一年以上の方々には定期券通学割引があるわけなんですね。学割があるわけなんです。半年の人には学割がないわけなんですね。それはなぜできないのか。そういう人が一番苦しい生活をしておる。ただいま論議しておりました中年層以上の方、あるいはその他の方で失業しておる方がこの学校に通っておるわけなんです。そういう人にどうして学割がやれないのか。おそらく今度はまあ運輸大臣そういうことは、やるという御返事があると思うのですが、一つ答弁願います。
  37. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) お答えを申し上げます。国鉄の通学定期とか学生の割引というものは、御承知通り学校教育法にいうところの学校対象にしておるもの、あるいは、その法律によって設置が認められておりまする国立とか公立等職業訓練所について、これは実施をしておるわけでございます。その他一般にいろいろ事業内、紡織の会社であるとか何とかいうようなところの中の各種学校として認められておりまするものだけを、まあ現在は対象としておるのでございまするが、御要望の点はよく考えまして、関係者と緊密な連絡をとって慎重に検討をいたしたい、こういうふうに考える次第でございます。
  38. 阿具根登

    ○阿具根登君 今御説明の通りですけれども、慎重に検討するということを一体私はどう受け取ったらいいですか。同じ訓練所であって、同じように慰められておって、一年の人にはこれは通学券が、寮から通っておる人には通学券がある。最もみじめな人に通学券がないのです。学割がないのです。だから、どこから考えてもこれは当然許可さるべきである。だから許可するように努力するとおっしゃるのか、慎重に考慮するではわからない。それをはっきりして下さい。
  39. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) お答えを申し上げます。御要望の点はよくこれから関係者と慎重に討議いたしまして、御要望の点を実現するような方向に努力をいたすようにいたします。
  40. 阿具根登

    ○阿具根登君 終わります。
  41. 館哲二

    委員長館哲二君) 以上をもって一般質疑は終了いたしました。   —————————————
  42. 館哲二

    委員長館哲二君) この際、委員変更について報告いたします。  本日辻政信君が辞任されて、その補欠として竹中恒夫君が選任されました。   —————————————
  43. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はこの際炭鉱災害防止に関する決議についての緊急動議を提案いたします。
  44. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私はただいまの阿具根君の動議に賛成をいたします。
  45. 館哲二

    委員長館哲二君) それでは阿具根登君に決議案の趣旨について説明を求めます。
  46. 阿具根登

    ○阿具根登君 まず最初に、炭鉱災守防止に関する決議案を読ましていただきます。   本日参議院において炭鉱災害防止に関し別紙の通り決議が行なわれたのであるが、右決議に基く施策については十分なる予算上、資金上の配意を必要と認める。よって政府は出来得る限り今国会中に予算上資金上の措置につき万全を期すべきである。   右決議する。  趣旨を御説明申し上げます。本日の参議院の本会議、あるいは先日の衆議院の本会議等で決議されましたごとく、私どもが今この災害防止に関する決議案を上程して審議をしている今の時期にも、いつどの炭鉱災害が起こるかわからないのでございます。さらに災害については、人命の尊重からいうならば、おそらく金額の面において云々する猶予はないと思うのでございます。人命がこのために救われるとするならば、災害がこのために救われるとするならば、おそらく私はこういう大きな災害が引き続いて起こっている今日、予算の審議されている今日であるならば、政府自体が修正でも行なって、これに対する災害対策考えらるベきものであると私は思うのでございます。  そこで、私どもの考え方は、この災害は一カ所の問題でないのでございまして、数百の炭鉱がこの危険にさらされている。とするならば、私どもが計算いたしました考え方でいきますならば、約四十億の金が早急に必要になる。そしてたくさんの炭鉱がこの災害から守られなければならない。かような考え方からこの緊急動議を提案した次第でございます。どうぞ各議員の方方も、私どもがこの決議案を審議しておるさなかに、地下数千尺で炭塵の中で、あるいはガスの危険の中で作業をしておる。いつどの山から爆発するかわからない、この実情をお考え下さいまして、満場一致御賛成下さらんことを切にお願い申し上げまして、説明にかえる次第でございます。(拍手)
  47. 館哲二

    委員長館哲二君) ただいまの決議案について討論の通告がございましたので、順次これを行ないます。田畑金光君。
  48. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、ただいま上程されました炭鉱災害防止に関する決議案に対し、民主社会党を代表し賛成の意見を表明いたします。  昨年来の和次ぐ中小炭鉱における災害の頻発は、あらためて石炭帝業の置かれておる悲惨な現実、ことに中小炭鉱における保安問題の重要性を認識させるものであります。今日まで政府はともすれば生産よりも保安第一であることを述べ、保安優先主義を唱えて参りました。しかし現実の政府の政策の跡をふりかえってみますと、それは作往にして口頭禅に終わってきております。災害が起こり、世論の批判や非難をあびると、初めて当面の糊塗策に終始してきたのが今までの実情であったわけです。坑内保安の確保のために鉱業法、保安法、保安規則等法律制度の改正を要することも必要でありますが、それ以前に現行法規の完全な遵守をはかることが大事であります。同時にこれを確実に守らしめますためにも、保安監督行政に携わる監督賞の充実、機構の強化等、予算の措置を講ずることが大切であります。ことに中小炭鉱経営者にして、しばしば注意、警告を受けてもこれに従がわないようなものには、鉱業権の取り消し等、法は守るべきもの、人命は尊重すべきものであるという認識を深めることが一番大切だと考えております。同時にまた、今日の中小炭鉱は保安施設を完備したくても、経営上資金上不可能な下態にさらされておるのが実情でございます。斜陽廃業としての石炭、ことに合理化の絶対的課題の前に立たされておる炭鉱は結局保安に力を入れる余裕がなく、勢い保安よりも土産、コスト引き下げのためには一番大平な保安を無視あるいは怠慢に陥っている傾向が強いわけでございます。  そこで、わが党といたしましては、先般池田総理と西尾委員長との党首会談において、特に国内政治問題として当面炭鉱保安、中小炭鉱における災害対策を取り上げて、これが善処方を政府に強く訴えて参りました。これに対し池田総理としても、特に開銀の融資ワクの拡大、あるいは必要あれば予算措置等についてもできるだけ善処するということを約束されましたが、今回さらに衆参両院の本会議あるいは当予算委員会におきまして、このような確約の裏づけとなる決議案が上程されたことは、われわれとしても力強く考えております。  また、新聞の伝うるところによりますと、昨日来、自社両党の幹部会談におかれても、その一つの焦点が中小炭鉱災害対策であり、予算上資金上どうするかという問題であったことをわれわれは聞いております。ただ、今日まで委員会や本会議においていろいろな決議がなされましたが、いつも決議のしっぱなしに終わっております。しかし、今回の場合は、衆参両院の本会議で相前後して決議されたという事実、しかも、三十六年度予算案の採決前に開かれているこの予算委員会においてこういう決議をみたということは、私は非常に重要な意義があると考えております。今朝来、予算委員会はストップして、ここに夕刻から始まったわけでございますが、このように予算委員会がおくれたのも、おそらくは私の想像するところでは、政府与党において、本決議案の裏づけである予算措置等について、十分熟慮、検討のために時間をかけた結果がこうなったものと考えておりまするが、政府炭鉱に対する財政投融資額の本年度の実情を見ましても、炭鉱側は最小限百二十億は必要だと言っているにかかわらず、八十億のワクしか与えておりません。炭鉱合理化に必要な無利子の貸付金は、少なくとも五十憾は必要だという申し入れをかねがね政府にやっておりますが、二十億足らずであります。ことに中小炭鉱の合理化資金は二億四千万円、炭鉱保安等、技術振興に必要な金は五千八百万円にすぎないわけです。  この際政府は、保安優先という平素の主張を、できるだけ近い機会において、中小炭鉱の保安施設整備や保安行政の強化、保安確保の不可能な炭鉱で休廃山をやるような山については離職者対策等をやられて、万遺憾なきを期されるように、心からこのことを政府期待して、私は、ただいま上程されました炭鉱災害防止に関する決議案に賛成の意を表します。(拍手)
  49. 館哲二

    委員長館哲二君) 梶原茂嘉君。
  50. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は、ただいま上程されておりまする炭鉱災害防止に関する決議案に、自由民主党を代表いたしまして、賛成の意を表するものであります。  終戦以来、石炭産業は、わが国経済の再建の上において、基幹的産業として、最も重要な役割を果たして今日に至っております。しかるに、この間、この国家的重要資源の開発にあたりまして、幾多不幸なる災害が続発し、ために貴重なる勤労者の生命が失われましたことは、まことに遺憾のきわみであります。  近時、石炭産業は、エネルギー事情の変化に伴いまして、きわめて困難なる情勢に直面しつつ、しかも、その合理化、生産性の高揚に懸命の努力を払いつつあるのであります。資源に恵まれないわが国といたしましては、石炭のエネルギー資源としての持ちまする価値は、これを過小評価することは許されないものと私は思います。かかる情勢のもとにおいて、最近いまだかつて見ない炭鉱災害が、現にわれわれの眼前に相次いで起こりつつありますることは、遺憾至極と言うほかはないのでありまして、われわれは、一日といえどもこれを黙過することはでき得ないことであると信じます。本日当院において、各党各派一致のもとに決議案が行なわれますことは当然のことであります。しかし、これらの施策実施するにあたりましては、何としても十分なる資金上、予算上の措置が伴わなければならないということは、これは申し上げるまでもありません。われわれ予算を審議する立場からいたしましても、これが財政上の十分なる措置が具体化せられ、一日も早くこれが具体的成果を期待し得るよう努力することは、これまた当然の任務と考えるのであります。しこうして、融資、予算等、財政上の措置は、貴重なる人命にかかわりまする本件の特別なる性格にかんがみまして、いやしくも一時を糊塗するものであっては、われわれはもとより、国民またこれを納得することはできないと思います。従って、その措置は可及的すみやかに、かつ、万全のものであるべきであると思うのであります。  従来、予算委員会におきまして、この種の決議の事例はないのでありますが、それだけに、この異例な本決議案が持っております特別の意味と性格を十分考えなければならないと存じます。政府は、とくとこの点に深甚の留意を払われまして、最善の努力を傾倒せられんことを期待し、私の賛成の意見を終わります。(拍手)
  51. 館哲二

    委員長館哲二君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認め、これより採決を行ないます。本案に賛成の方は御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  52. 館哲二

    委員長館哲二君) 総員起立。よって、本決議案は、全会一致をもって可決されました。
  53. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいまの御決議の趣旨に即しまして、政府は、できる限りすみやかに予算上資金上必要な措置を配慮することといたします。
  54. 館哲二

    委員長館哲二君) これより総括質疑に入ります。
  55. 占部秀男

    ○占部秀男君 議事進行。理事会のときにこの問題が問題となった経緯があります。従って、自民党さんだけでお話し合いを願って、その点を明確にしていただきたいと思います。
  56. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいま予算上質金上必要な措置を政府はとると申しましたが、内容を申しますと、現地をすみやかに調査して、その結果必要な経費はこれを支出するということ、通産省から三十四億という概算の要求が出ておりますから、熱意を持ってこれに当たることにいたします。   —————————————
  57. 館哲二

    委員長館哲二君) これより総括質疑に入ります。大矢正君。
  58. 大矢正

    ○大矢正君 私は、三十六年度の予算の締めくくりの質問にあたりまして、特に経済問題を中心として、総理以下、関係大臣にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、その前に、一、二外交上の問題について、総理及び外務大臣からお答えをいただきたいと存じます。  第一の問題は、六月ころを目途にして総理は渡米をされる、こういうことが世上伝えられておるのであります。そこで、アメリカのケネディ大統領が誕生をして、日本から装置が出かけられて、日本とアメリカとの間に話し合いをされることはまことにけっこうなこと、だと私は思いますけれども、ただ、総理は、一体どんなお考えを持ってアメリカに渡るつもりでおられるのか。もちろん内容的には外交上の問題、あるいは日米両国の経済的な関係の問題その他あるものと思われます。そこで、日本から積極的に意思表示をするものもあるでありましょうし、あるいはアメリカから、特にケネディ大統領から、わが国考えている考え方について質問をされる場合も私はあると思うのであります。そういう問題もあろうかと思うのでありますが、は、当面している訪米を控えてどんなお考えを持っておられるのか、一つお答えをいただきたいと思うのであります。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まだどういうことについて話し合いをするということの問題をきめておりませんが、私は、各般にわたりまして検討を続けておる次第でございます。
  60. 大矢正

    ○大矢正君 私は、質問の趣旨が、特に経済問題に中心を置いておりますから、当面するわが国の外交問題についてアメリカとどういう話し合いをするのかというような点については、私は触れる意思はありませんが、ただ、日本とアメリカとの間における経済的な関係というものが、総理も言われております通り、非常に強くなってきておりますので、やはり向こうへ参りますれば、当然まあ一例をあげますればIMFの八条国移行の問題や、あるいは貿易自由化の問題や、ドル防衛に対してどの程度わが国が協力するかという問題、あるいはまた今日のように経済的な関係が密接になって参りますれば、外債の発行や、あるいは株式の取得問題にからんで、わが国の為林管理法や外資法を一体どうするのかという問題等も、私はおそらく爼上に上るのではないかと考えるのでありますが、こういう経済的な関係に対して、総理は何か具体的なお考えをお持ちにならないのかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろの問題をお出しになりましたが、私は、その程度のものは外務大臣ぐらいが向こうに話をするのが適当じゃないかと思います。もちろんそういう問題についてケネディからの質問がありますればやりますけれども、今のお話の具体的な問題、為替管理とか、そういうような問題は、大統領と私との話のうちには出ないのじゃないかと思います。従いまして、お話の点もございますので、私は外務大臣を同行して、そういう問題は向こうの当局と話をさす考えでおります。私は、あえて自分から逃げるわけではございませんが、今のお話のような点は、やはり外務大臣が話をするぐらいの問題かと思います。
  62. 大矢正

    ○大矢正君 それは総理大臣、たとえば私は外資法の問題や為替管理の問題等を申し上げましたが、これを申し上げたのは、もちろん総理大臣が行ってお話をされるような問題ではないかもしれないけれども、総理大臣は、常にこの国会の中においても、経済問題については相当の見識を持っておられるし、おれにまかせておけ、こう言われておるのでありますから、おそらく総理考えて出かけられるのではないかという気もいたしましたものですから、私はそういう質問一つ加えたのでありますが、たとえば貿易の自由化の問題や、あるいはまたその他ドル防衛の問題等、非常に重要な問題でありますから、おそらく総理は行って話をされると思うのでありますが、何か今の答弁では積極性がないようでございますので、私は、先ほど来申し上げておりますように、国内の経済政策問題を重点にしておりますから、この辺で、答弁がないようでありますから、打ち切りたいと思います。  外務大臣に引き続いてお尋ねをいたしたいのは、先般分科会でも多少問題になりましたが、二十七日からロンドンにおきまして、開発援助グループの話し合いが持たれまして、終了したような報道を受けておるのでありますが、この開発援助グループの会議の開催に先立ちまして、アメリカはわが国に対して、国民生産もしくは国民所得の一%程度を、後進国といいますか、経済的に開発のおくれている国々に対する援助資金に充ててもらいたいという要望が各国になされておる。そのことを中心として議題の討議が行なわれるのではないかと当時は言われておりました。しかし、今日の結果としては、その具体的な国民総生産に対する一%云々の問題はなくなりましたけれども、しかし、大づかみに言って、経済的な後進国に対する援助の積極化という問題は結論的に出たようであります。  そこで、当初アメリカがわが国に要請して参りました当時は、具体的にどういう考え方であったのか、こういう提案をしたいという考え方を日本の国に持ち込んできたときはどういう内容のものであったのか、それから、さらにまた先般の会議以降において、わが国はどういう方針でこれに対処していこうという考え方を持っておられるか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  63. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今度の第四回のDAGの会議にアメリカがこういう提案をしてみたいという試案を受け取りました。これは日本に対してなされたものだけでなくて、その会議に出席する各国に対して、予見的にそういうものを考えてみてくれという、検討を依頼したものであると了承しております。  その内容を簡単に申しますと、各国のGNPを寄せてみまして、そうしてその一%くらいのものを目標にして出してみたらどうか、それが援助の積極化になるであろう、原則としてアンタイド・ローンをふやしていこう、こういう考え方であると承知しております。しかし、会議に臨みますと、わが国はもとよりそうでございますが、各国において、そういうふうにそういうことを急に言い出しても、なかなか結論が出ないということになりまして、御承知のような結果になっております。次回は七月の十一日から十三日まで東京において開催されることになっておりますが、わが国といたしましては、この全体の援助を——われわれ幸いにして工業的に高水準になった国から、いまだ開発の豊かならざる国に対して、できるだけの援助をいたしまして、その国の民生安定に寄与するということは、世界平和並びに世界国民の福祉のために必要なことであると思って、その考え方に対しては、これは一応は了承はいたしますが、さりとて、無理があってはならない、わが国の国情にふさわしいものが限度でなければならない、こういう考え方で考えているわけでございます。
  64. 大矢正

    ○大矢正君 ただいまの外務大臣答弁から参りますと、当初アメリカが提案したと思われる国民総生産に対して一%程度というものは、話が立ち消えになったというように解釈してよろしいのかどうか。それから、もしそうだといたしましても、当然これからの話し合いが続けられるでありましょうし、来たるべき七月のその再度の会議にも、当然また議題として討論されると思うのでありますが、わが国の場合は、外務大臣としてどの程度の内容を主張される考えなのか、具体的にはどの程度の援助ならばできるという提案とする考えなのか、その点お答えをいただきたい。
  65. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは今後十分検討して参りたいと思っておりますが、わが国の場合は、これは敗戦の痛手から立ち直ったとはいいましても、相当に多くの賠償も負担していかねばなりませんし、また、輸銀等を通じましていろいろな借款等も行なっておりまするし、そういうものも引き比べまして、わが国の国民経済に無理にならないという範囲を考えなければならないと思います。
  66. 大矢正

    ○大矢正君 また現在の段階では、具体的にどの程度の援助がわが国にとっては可能かという結論が出ておらないという話でございますから、いたし方ないと思います。  次に、私は先般の一般質問の際に、総理大臣おいでになりませんでしたが、大蔵大臣あるいは企画庁長官に質問をいたしました国際収支及びそれに関連する問題についてただいまから質問をいたしたいと存じます。  まず、私が第一にお伺いをいたしたいと思いますことは、二月の外貨準備と、それからユーザンスを初めとするユーロー・ダラー、あるいはその他短期債務というものは一体どの程度になっておるのか、先般一月の内容につきまして私はお伺いをいたしましたが、二月につきましてはまだ聞いておりませんので、大蔵大臣から一つお答えをいた、たきたい。
  67. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 二月の外貨準備高は十九億三千七百万ドル、その中に自由円二億一千六百万ドル、輸入ユーザンス八億五千万ドル、無担保借入一億三千七百万ドル、その他負債七千百万ドル、円借款三千九百万ドル、石油スタンドバイ三千三百万ドル、こういうことになっております。
  68. 大矢正

    ○大矢正君 私が調べている内容によりますと、一月末の外貨準備は十八億八千五百万ドルでありまして、その中でユーザンスを初めとする短期的な資金は大体十一億八千九百万ドル、合計まあ常に維持できると思われる金額は七億ドル、もちろんユーザンスも、ある程度そういうことは言えるかもしれませんが、大体においてユーザンスその他短期債務というものを引いた場合には、七億ドルという結論が出ております。ところが、これが二月になって参りますと、十九億三千七百万ドルと、最終的な外貨の準備高は増加をいたしましたけれども、ユーザンスが大幅に伸びた、その他短期債務等を差し引きますと、そこに五億ドルをわずかに上回る程度しか先ほどお話し申し上げました七億ドルに匹敵する外貨準備はない、こういう数字になってくるのでありますけれども、私のそういう数字は誤りですか。
  69. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは誤りではございませんで、短期十三億四千六百万ドルでございますが、しかし、これは民間の債務でありまして、この短期債務を差し引いて見るということは、この間もお答えいたしましたように、妥当ではございません。一方、為銀の持っている資産というようなものもございますので、そういうものを総体的に考えて判断していかなければならないのでございまして、これからこれを引いた残りがこれだけだから外貨準備がどうというべきものではないと思います。
  70. 大矢正

    ○大矢正君 私は、たとえばユーザンスの部分の金は、これは問題にならないとか何とかそういう意味で申し上げているのではなくて、ただ、政府としては、外貨がふえていると、こう言うから、ふえていっているけれども、事実内容的には、払うべきものを払わない、ユーザンスの延期とか、その他払うべきものを払わないでふえているのであって、本質的に日本の国の蓄積している外貨がふえているのではないのではないかという質問をしている。私は、そういう立場から先般の一般質問でもあなたに質問しているはずです。その点違いますか。
  71. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そのためには、一方のいわゆる資産がどうあるかということを見なければなりませんし、為銀の債権が六億五千万ドル以上もあるということを加えて考えなければならぬだろうと思います。
  72. 大矢正

    ○大矢正君 三十六年度に入りまして、この四月、三月の経常収支じりというのを一体政府はどう考えるのか、三十五年の四月から六月までのこの最初の出発点を見ますと、経常収支で四月がマイナスの九百万ドル、五月が八百万ドル、六月が千六百万ドル、その三十五年の四月五月、六月のこの三カ月間の推移はこういう経過をたどっているのでありますが、三十六年の四月から五月、六月の三カ月間はどういうように推定をされているのか、大蔵大臣からお答えをいただきたい。
  73. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 経常収支の点におきましては、私どもは若干赤字が続くものと思うのでございます。しかし、総合収支では大体黒字だと思っておりますが、この三月の輸出の信用状の工合を見ますというと、去年の三月も戦後最大の額でございましたが、今年の三月の信用状の額はさらに大きく、今までの戦後また最大というようなこともございますので、そういう点から判断いたしますと、これが二、三カ月先にいって輸出になって現われるというようなことを見ますと、今私どもは相当四月以後六月ごろまで赤字が続くというふうに予想もしておりますが、あるいはそういう事態にならぬかもしれぬというので、ほんとうの予想は今つきかねるところでございます。
  74. 大矢正

    ○大矢正君 大蔵大臣、あなた四月から六月までの想定はつかないと、こうおっしゃるけれども、大体各省では、これは企画庁もあるでしょうし、通産省もあるでしょうし、大蔵省もあるでしょうが、各省では具体的に四月−六月はどの程度になるかというのは、通関実績や、あるいは信用状の開設、あるいはそれの受け取り見込み、こういうものの差し引きの内容によって大体推定しているのです。大蔵大臣、あなたは具体的に答弁されませんが、じゃ四月、五月、六月の三カ月間は、三十五年度の四月、五月、六月の先ほどお話し申し上げた内容よりはよくなるのか悪くなるのか、悪くなるとするならば、大幅に悪くなるのか小幅に悪くなるのか、こういう点は見通しが立つはずでございます。こういう点の見通しが立たなければ、これは私は大蔵大臣日本の経済をまかしておけません、どうですか。
  75. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 上期全体を通じて、私どもの見方は九千万ドルの赤字と見ております。従来の傾向から見ましても、四月、五月は赤字がとり返せないだろう。貿易外において四千万ドル、貿易収支じりにおいて五千万ドル、合計九千万ドルの赤字というのが大体私どもの見込みでございます。
  76. 大矢正

    ○大矢正君 大蔵大臣答弁したがらぬから、私の持ち時間が減って困るのだよ。きょうの夕刊なんかでも、政府は、はっきりと三十六年度上期外貨予算編成にあたっては、上期の経常収支は九千万ドルの赤字だと、こう具体的に政府は表明されております。ここであなたに二回も三回も質問せなければ答弁されないのはけしからぬ。それから具体的に上期の赤字は大体九千万ドルだろうということになりますれば、この四月から六月と、七月から九月と二つに分類して、一体前と後はどういうふうに計算されておるのですか、具体的に前と後、四−六と七−九の具体的に内容をお答え願いたい。
  77. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 四月から六月までで、貿易収支じりで一億一千万ドルの赤字、七月から九月まででは六千万、ドルの黒字、大体そういうふうに見ております。
  78. 大矢正

    ○大矢正君 そうすると、これは経常収支では九千万ドルの赤である。しかし、貿易収支を見れば四−六では一億一千万ドルの赤で、逆に七−九では六千万ドルの黒字だ。こういうことになりますと、五千万ドルのここに赤ができるが、貿易外では、また同時に四千万ドルの赤字になる、こういう見通しですか、大蔵大臣は。
  79. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そうです。
  80. 大矢正

    ○大矢正君 そこで大蔵大臣、あなたさっき貿易に関係をして信用状の問題を具体的に説明しておられますけれども、昨年の十月までは、大体信用状の開設高と、それからまた受取収支の面では、かなり五、六千万ドルから七千万ドル、多い月は一億ドルぐらい黒字になっている。ところが、十一月になってがたっと落ちて、これが三千万ドルまで落ちておる。そして十二月は、わずか百万ドルしかこの面で黒字がない。一月はわずか四百万ドル、二月に入って百万ドル、具体的に内容としては切っているのです。これは信用状の面から見れば、これは大体通関実績も信用状も、三カ月くらいあとになって現われて参りますから、この数字から参りますれば、四−六の赤字というものは、あなたの言われておるような程度のものではなくて、もっとかなりきびしいものが出てくるのではないかと思うのですけれども、あなた自信を持ってこれ言えますか。と申しますことは、最初私が二月の中旬でありましたか、あなたにちょっとお尋ねしたところが、あなたの答弁では、二月のいわば経常収支というものは三千万ドルぐらい赤字ではないかという説明だった。ところが、実際ふたをあけてみたところが、九千三百万ドルの赤字になっている。あなたの見込みはしょっちゅう狂っている、直さなければならぬ。そういう心配がありますから、念を押して聞いている。三月に入って、また三月の経常収支の見込みが違っておれば大へんなことです。あなたはこの間の私の分科会における質問に対して、三月の見通しは、大体貿易外も含めて、経常収支で四、五千万ドルの赤ではないかと言われておるが、これがもっとふえる結果になって参れば、あなたの言われることはだれも信用できないということになる、どうですか大蔵大臣
  81. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今申しましたように、この上期の貿易収支じりでは五千万ドルの赤字と推定をいたしておりますが、さっき申しましたように、今まで輸入には特別心配する点はございませんが、ただ、輸出が割合に伸び悩んだというのが原因でございまして、輸出の伸び悩んでおる原因は、対米輸出が減っておるということでございましたが、二月の信用状で見ますというと、対米輸出が二月から今までずっと減ってきたものが、二月から再びふえてきたという傾向を示しておりますので、これが対米輸出にどういうふうにこれから響いていくかという問題、それから三月の信用状の見方から見ますというと、私どもが当初考えておった赤字よりも、あるいは赤字が少ない方向でいきはせぬかという望みまで持っておるようなわけでございまして、これが大きく狂って、これ以上の赤字になるというふうには今考えておりません。
  82. 大矢正

    ○大矢正君 大蔵大臣、今秋は信用状の問題であなたにお伺いをしたのですが、信用状のない部分から見れば、十一月は四千六百万ドルの赤字である、十二月は六千八百万ドルの赤字である。さらにまた一月も六千七百万ドル平均、これは信用状のない面では赤字が六千万ドル平均くらいにきていますね。これは大蔵省も認めておることでありますし、大臣も御存じのことでありますから、そういう面から見ましても、これは四月から六月の赤字というのは一億一千万ドルでとどめようたって、これは現実問題としては無理じゃないですか。そういう強気の見込みを立てようと思ったって、結果としてはまた狂ったということを大蔵大臣は表明せざるを得ない結果に私はなるのじゃないかと、こう思うのですが、ほんとうに自信をお持ちですか、四月、五月、六月における貿易収支の赤字は。
  83. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大体今までの資料その他に基づいた見方では、大きく狂わないと私は考えております。
  84. 大矢正

    ○大矢正君 経済企画庁の長官にお伺いをいたしますが、最近閣僚会議を開きまして、経済の当面する実態の分析と、それから、これからの見通し等についていろいろ何か議論をされたようですし、何か発表されておるようでございますが、その内容を一つこの際明らかにしてもらいたい。
  85. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 一昨日でしたか、月例の経済報告を出しますときに、関係の閣僚の会議を開きまして、国際収支の見通し等についての若干の話し合いをいたしました。その節は、新聞で発表いたしました通り、国際収支は赤字は出てきておるけれども、基調の変化はない。従って、この際、政府が政策を変えるような必要はごうまつもないという基本的な認識については一致をいたしました。  なお、そのときに話が少し触れましたことは、設備投資がややテンポが急なのではなかろうかという話が日本銀行の総裁から出ました。それに対しまして、設備投資をさらに進行せしめることは、自由化を控えておるこの際として、これをとめるわけにはいかないのではないかという意見も出ましたが、私の見解といたしましては、所得倍増計画というものを目安として、ラッシュの起こらないように、民間でもよく考えてもらいたいところだという希望を表明いたしました。大体そういうことが先だっての閣僚の会議の話であります。
  86. 大矢正

    ○大矢正君 あなたが今言われました設備投資の問題は、私はあとから具体的に質問をいたしますが、たとえば三十五年の四月からことしの二月までの十一カ月間でございますか、これを見ますと、総合収支では五億八千九百万ドルの黒字になっております。しかし、その中で資本収支じりというものが六億ドルの黒字になっておるわけですね。しかもその中で、その資本収支じりが、しかも短期です、短期が六億九百万ドルもふえているのです。現実には経常取引では赤字になっておるけれども、資本取引のうちの、しかも短期の資金が六億ドル以上ふえることによって、かろうじて今日の日本のいわば外貨準備高というものが成り立っているのですね。その根本的な問題について、すでにもう事実そう楽観論は言えないような基調が現われているのじゃないかと私は思うのですけれども、外貨の準備高がふえているふえているとは言いながらも、ふえた部分は全部——まあ全部じゃない。全部以上に、これは一一〇%は短期資本ですよ、結論的にこの数字が示しているわけです。これじゃおかしいとは思わないですか。しかも、その短期資本の大億九百万ドルなんというのは、内容は、一月が一億六千七百万ドル、二月が一徳五千万ドル、すなわち、このうちの半分以上、六割近くが一月、二月に集中された短期資本ですよ。それによって外貨というものがふえているのでしょう。具体的には経常的な外資の積み上げではないのですよ。そういう点からいって、あなたはまだ強気で経済の見通しを立てていかれますか。
  87. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 保有外貨のうち、借金に相当する部分というものは、架空とはおっしゃいませんけれども、あまりたよりにならないものだから、それは別にして、純粋の金、何といいますか、財産だけでものを見なければならぬというお考えには、私は必ずしも承服できません。というのは、一つの会社にたとえて見ましても、借金がありますことは、その会社の資産全体から差し引くべき筋合いのものであって、その会社の預金から借金を引いて、この会社はこれだけ預金があるけれども、そのうち借金がこれだけあるのだから、ほんとうは財産がないのじゃないか、こういう議論が成り立たないと同じように、保有外貨におきましても、それが債務であっても、日本の国の経済全体の立場からそれを考えていけば、決して借金になっている部分は架空なものであってたのみにならないものだという議論は成り立たないと思います。
  88. 大矢正

    ○大矢正君 それは、あなたはそういう議論をされるかもしれないが、その逆を言うと、会社が利益をあげて、その利益を留保するなり、あるいは設備にかえていって、資産としてふえていったならばいざ知らず、そうではなくて、銀行から金を借りていって、その金を借りた部分だけ資産がふえたからといって、おれの資産がふえたのだと言うようなものじゃないですか。私の立場から言えばそういうことを言われますが、あなたの立場から言われるとそう言われるかもしれないが、私の立場から言うと、そういうことか言えると思うのです。  そこで、通関実績から見たところの最近の輸出入の動向を見ますと、特に輸入の面で見ますと、三十五年の一月、二月に比して、三十六年の一月、二月のいわばこの輸入の増加というものは、これをパーセンテージに表わすと二一%になります。ところで、これを三十四年と三十五年の一月、二月に比較いたしますと、三十四年、三十五年は大体三六%ふえているのです。この数字から見れば、この数字が正しければ、今ことしの一月、二月の輸入増というものは、決して前年と比較をして、べらぼうに輸入がふえたということではなくて、そういう基調を日本の経済が持っているというふうに解釈せざるを得ないのじゃないですか、どうですか。
  89. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 御質問の要点がちょっと私、把握いたしかねましたけれども、大体日本という国の経済というものは、一月、二月には、対前年非常によけいに輸入がふえる傾向を持っているのじゃないかということですか。
  90. 大矢正

    ○大矢正君 もう一回質問します。  私の質問は、まあ極端にまでは言わなくても、輸入が大幅にふえたために、一月、二月では経常収支で赤字が大幅に増大したのだ、こういう説明をあなた方されるから、私は数字で示せば、ことしの一月、二月のいわば輸入増というものは二一%しかありませんよ、いいですか、三十五年の一月、一月と比較して。ところが、三十四年と五年のやつを比較すれば、この年は三六%の増になっております。従って、一二%ふえたというこの一月、二月の輸入増というものはこれはもちろん思惑的なものもないでしょうし、必ずしもこれは極端にふえたというものではなくて、日本の経済というものがそういう形になっているのではないかということを言っているのです。
  91. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 私は、お説の通りだと思います。従って、今回赤字が非常に大きくなりました理由も、輸入が思惑によってふえたのではなくて、日本の経済の実勢に沿うた輸入、ただし、その中には、本来ならばそんなにはふえなかったのじゃなかろうかと思われることは、繊維原料というものが、やや固まってその期間に入っております。おそらく三月も繊維原材料というものはよけい入ってくるだろうと思いますが、それはケネディ大統領が綿花の支持価格を上げるとかいうことのうわさのために、やや買い急いだ傾向は確かにありますので、それは結局日本にとっては非常に得なことでありまして、現在綿花は上がっておりますが、そういうことで輸入も予想よりふえたのでありまするが、この前、去年三十五年におきましては、輸出が予想以上に上がっていると思います。しかし、本年においては、輸出がやや予想に追っつかないところに幅がよけい出てきたのだ、こういう結論じゃないかと思います。
  92. 大矢正

    ○大矢正君 私は、次に設備投資に関連をして、特に企画庁長官にお伺いをいたしたいのでありますが、三十五年度の設備投資の予想と申しますか、これは大体二兆八千五百億、こういうように踏んでおりますが、これはこの範囲内においてとどまるという見通しですか。
  93. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) まだはっきりしたことは申し上げかねますけれども、私の勘といいますか、いろいろ聞いたり感じたりするところでは、それではとまらないのじゃないかという印象を持っております。
  94. 大矢正

    ○大矢正君 あなた具体的にその印象を持っているなどと言って、絵や風景を見るような表現をされては困るのです。経済に印象だなんという言葉を持ち出されたのじゃ困るのですが、一体どう考えておりますか。具体的にあなた新聞でいろいろな談話を発表されているようですがね。
  95. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 私も、新聞記者には同じようなことを言いますというと、新聞記者の方から、それならそれは一体幾らかと、こういうことを聞きますので、黙して答えないでおりますというと、三兆ぐらいになりはしませんかと、こういう質問が出て参りますので、さあそのぐらいになるかもしらぬなという答弁をしたことはあります。
  96. 大矢正

    ○大矢正君 企画庁長官、それはなごやかな雰囲気で、笑いながら話しているからなんだけれども、本来あなたにそういう答弁をされて、それでよろしゅうございますと言って私下がられないのですよ。企画庁長官、経済企画庁というのは、一番むずかしい数字を動かしているのですよ。あなたのところの部下の人は、そろばん片手に、計算尺片手に全部はじき出しているのですよ。それを親分のあなたが、印象だとか、ものの感じだとか、そういう答弁をされたのでは困りますよ。  そこで、三十四年度の大体内容を見てみますと、三十四年度の設備投資というのは大体二兆一千六百億、それから三十五年度の見込みというのは、私が申し上げたように二兆八千五百億、この増加というものは大体三一%になるのですね。そこで、三十五年度の四月から九月までの上期の資本金一億円以上の法人の設備投資の動向が資料として出されております。これを見ますると、大体六〇%増になっているのです。設備投資は六〇%増。そうすると、今私が冒頭申し上げました二兆一千六百億と二兆八千五百億の三一%増という、倍に一億円以上の法人企業の設備投資というものは増加しているという結果が出ているのです。あなたこのことをどう思いますか。そういうことは十分検討されていると思うのですが、いかがですか。
  97. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 私の方の事務当局では、その三十五年度の二兆八千五百億という設備が大体どのくらいになるだろうかということについては、非常に神経をとがらして研究をしているのでありますが、何分にもデータがそろいませんので、いろいろ推計をいたしております。昭和三十五年度の第一・四半期は六千億、第二・四半期七千五百億、そういう一兆三千五百億で、その二兆八千五百億にしますと、あと下半期の第三、第四でもって一兆五千億になるのです。この一兆五千億という数字は、ちょうど七千五百億と七千五百億になって、まあちょうどいいんじゃないかという意見と、それから、ただいまおっしゃいました法人統計等を推定いたしてきますというと、多く見込んでいきますと、二兆九千億を若干こえる程度になるという数字は事務当局は持っております。
  98. 大矢正

    ○大矢正君 これは私は、企画庁も認められた資料の前提の上に立って話をしているのです。そこで、今あなたも言われた通り、三十五年の四月−六月で推計六千億、七月−九月推計の七千五百億、これはもちろん資本金一億円以下の部分も、個人企業の投資の部分も設備投資に入っております。そこで、企画庁の認めているこの四月−九月までの前年同期比でも四五%になっております。四五%。さすれば、根本的な三一%増で押えられているあなたの見込みは、見込みのときにおいてすでに低いのじゃないですか。
  99. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) これは第四・四半期において、見込みの増加の率というものは、よほど減少してくるんじゃないか、平均よりも下がってくるんじゃないかという一応の見通しをしておるものですから、全体で三五%ですか、そういうことになります。
  100. 大矢正

    ○大矢正君 あなた、下期は設備投資が下がってくると、こうおっしゃるけれども、三十四年の十月−十二月及び三十五年の一月−三月の動向を見ますと、これは逆になっているのですね、三十二年の動向を見ますと、上期は低いけれども、下期になってかなり大幅に増加をしているのです。これを私の計算でみますと、上期が三に対して下期は四という、大体こういう数字が出ているのです、あなたの方からいただいた資料を集約してみますと。そういたしますと、これは最終的に二兆八千五百億どころではなくて、かなり大幅に上回る、こういうことが言い得るのではないか。それからもう一つ言い得ることは、中小企業金融公庫等において、最近資料として出しておりますけれども、この資料の中には、最近特に中小企業等における設備投資というものが活発になって、資金需要が旺盛であるということが中小企業公庫の速報として出されております。こういう点から見ますと、下期になって、あなたの言われるように設備投資が下がってくるなどということは、とうてい考えられないことですよ。どうですか。
  101. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 私、下期に下がるとは言わなかったので、第四・四半期における対前年の伸び率というものは下がってくるであろう。つまり昭和三十四年度と三十五年度との対比におきましては、三十四年度、つまり昨年度昭和三十五年の一、二、三月というときは、経済が好調に向いてずうっといったときでありますから、そのまま伸びがずうっと続いたのでありますけれども、昭和三十六年の一、二、三、こういうことになってくると、その岡にはややその伸び率が衰えるというか、下がってくるんではなかろうかというのが、まあ事務当局もいろいろ研究して、私も話を聞いて、もっともそうなるかもしれないなあと思うという結果でございます。従って、下期に全部下がるわけではありませんから、第三・四半期までは相当高いでしょう。従って、先ほどから申し上げておりますように、二兆八千五百億ではとまらないのではないか。それで一体どうなるかということは、事務当局としては、二兆九千億ちょっとこえる数字は、一応データをいろいろ推計すると出てくるように今言っておりますので、はっきり幾らくらいになるだろうという予想は今日申し上げられる段階ではございません。
  102. 大矢正

    ○大矢正君 これは私は、大体三十四年度の実績等から換算して計算をしてみますと、これは大体最終的には、数字から当たってみますと、三千億くらい伸びが出てくる可能性がある、三千億くらい。これはどういう計算によるかと申しますと、三十四年の大体上期と下期の実績は三対四くらいの比率になって、やっぱり下期の方がふえているのですよ。上期の一兆三千五百億に、そのふえた部分を乗っけて下期を足しますと、これは大体三兆一千五行億くらいになる、約三千億くらいふえる格好になってくると思うのであります。よしんば、これを非常に小幅に見まして千五百億と見ましても、三兆一千五百億のやつは三兆円になるなんという計算は、どこから押しても出てくるのです、今日の設備投資の意欲的な内容から見ましてですね。その点は通産大臣だっていろいろ談話で発表されておるはずですよ。ですから、こういう点から見れば、二兆八千五百億は、あなたが新聞で漏らしたのか、新聞が勝手に書いたのかわかりませんけれども、三兆円は必ずこえる、悪くても。悪くてもと言っちゃおかしいのでありますが、少なくとも三兆円にはなる、大体それに近い数字になるというふうにあなたお認めにならないですか。
  103. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) また印象と言っちゃ悪いですけれども、三兆円くらいになりそうだという印象は持っております。
  104. 大矢正

    ○大矢正君 そこで企画庁長官、三十五年度の大体結論はそういうことでありますが、三十六年度は一体設備投資はどうなのですか。どのくらい伸びるようにお考えになっているのですか。
  105. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 発表いたしましたものは三兆一千四百億であります。
  106. 大矢正

    ○大矢正君 三十五年度の実績は具体的に勘案をされないのですね。あなたが言われた三兆一千四百億というものは、これはずいぶん以前の見通しによって出された結論でしょう。今日三兆円あるいは三兆円こえるのではないかとあなた自身も思われている段階において、明年度の設備投資は、なお三兆一千四百億でとどまるのですか。それじゃもう伸びというものはほとんどないですよ。
  107. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 当面のところにおきましては、特にいろいろもう一ぺん推計をし直しているわけではございませんので、現在のところは三兆一千四百億というのが予想であるということを申し上げる以外にはないのでありますけれども、それじゃそれでとどまる見込みかと言われれば、あるいはそれじゃとどまらない、少しは上にいくかもしれない。しかし、これから先の話ですから、今の趨勢がこのまま続くとも思いません。いろいろラッシュもあるようでありまするが、その間おのずから自主的に調整せられる部分もあるでしょうし、いろいろな系統もありますから、今にわかに三兆一千四百億という予想が、全然間違えておるだろうというふうには私は言えないと思っております。
  108. 大矢正

    ○大矢正君 それはあなた自身で出しておいて、自分出した数字は間違いですなんということは言えるはずはないですよ、ここで。ですから、それはまあそれとしても、かりに三兆円といたしましても、二〇%設備投資が前年よりふえる、三十五年よりふえる。こうなりますと、三兆六千億になる、結果的には。これは結論を先に言うてあなたに質問するのはおかしいかもしれないけれども、三兆六千億の設備投資というものは、三十六年の経済情勢から見て一もちろん輸出収支の内容を入れて、そういう経済情勢から見て、三十六年に万一それが二〇%ふえて、三兆六千億というような数字が出る危険性があるとすれば、あなたどうお考えになりますか。
  109. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 三十六年度の経済成長率は九・二%どころの騒ぎではなくなると、こう思います。
  110. 大矢正

    ○大矢正君 政府の所得倍増計画に基づく昭和四十五年度の設備投資の予想額というものは、あなたも御存じの通り、三兆六千億でしょう。そうすると、私が今計算した内容から見ますると、十年どころではない、計画の初年度で三兆六千億になる可能性というか、ある意味で覆えば危険性といいますか、こういうものが出てきていますね。せめて五年たった後において三兆六千億という設備投資の内容が出て参りますれば、それは別でありますけれども、そうじゃなくて、初年度において三兆六千億になるかもしれないという、そういう疑いを持たなければならないということは、とりもなおさず所得倍増計画設備投資というものの内容は、もう全然これは問題にならないものであるということが一つ言えますね。それからもう一つは、もし、ほんとうに設備投資が三兆六千億であれば、所得倍増計画の最終年度の消費と見合うのだというのであれば、これは大へんな生産過剰になりますね。そうでしょう、設備投資がそんなことになったら。これはどうですか。
  111. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) その設備投資がかりに三兆六千億になるという前提で議論をここで進めていくことになるわけでありますが、私は必ずしもそうは思っていないのですけれども、かりにあなたのおっしゃることを承知しまして、三兆六千億のような高い数字になるといった場合には、設備投資だけがそうなるのじゃないと思います。それだけ経済が成長いたしますのですから、個人消費もふえましょうし、非常な、何といいますか、十年間に達成されるものがもっと非常に早い時期に達成されてしまうということになるでしょう。しかし、かりにそういうような格好になりました場合には、あるいは輸出がそれに伴わないという問題が起こるのじゃないかということを次におっしゃるのだろうと思いますけれども、そういうことでもって、かなりそこには問題が起こってくることは事実でありますから、実際問題としては、自由主義経済におけるみんな良識ある連中のすることでありまするから、ここで昭和三十六年度において昭和四十年度の設備ができてしまうというような格好にはならない、こう私は思っております。
  112. 大矢正

    ○大矢正君 これは私だって小学生じゃないんだから、あなたのそういうおかしな答弁をされたって納得するわけにはいかぬのですよ。いいですか。あなたは設備投資がふえれば当然国民消費も伸びる、こうおっしゃる。おっしゃるけれども、そんな簡単なものじゃないですよ。内容的にいえばそんな簡単なものじゃないです。だから、私はその三兆六千億を——それじゃあなたの言っている三兆六千億には、来年は、三十六年度はならないとしたって、三十五年度の実績がすでに三兆円に到達するというのでありますから、三兆六千億まではいかなくても、三兆をかなりこえる金額に三十六年度はなることは必至でしょう。そうすれば、所得倍増計画も、設備投資の内容と非常に大きな違いがあるから、所得倍増計画の構想の、やはり設備投資は大幅にこれを変える意思があるのかどうか、これをお答え願いたい。もしあなたの言われる通り、生産過剰は起きない、過剰恐慌が起きないというあなたのはっきりした認識があるならば、所得倍増計画の構想は改められますか。
  113. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) その場合は、所得倍増計画に予定された十年倍増というのでなしに、あるいは八年になりますか、そういうことになりますから、そこのところはそういうような情勢がはっきり出てきました場合には、おのずからそれは所得倍増計画の再検討という問題になってくると思います。
  114. 大矢正

    ○大矢正君 どうもあなたの覆うことはわからないんだが、設備投資は十年先のやつが、ことしか、もしくは来年の年度末にはもうできてしまうんだ。あるいは三十七年度に入るか入らないかのうちに、もう三兆六千億は終わるのだ。ところが、国民所得はそれじゃ倍になりますか。ならないでしょう、三十六年度の国民所得は。倍になりますか。国民所得を倍にするという構想のもとに打ち出された設備投資が、初年度においてでき上がるというこのギャップを私は言っているのですよ。
  115. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私かわってお答え申し上げます。この設備投資の状況というものは、これは日本は他の国にない、格別な上昇でございます。大体アメリカ辺におきましては、国民総生産の四、五%ぐらいだと思います。それからイギリスにおきましても、ドイツにおきましても、大体国民総生産の一割程度だ。フランスにおきましては六%ぐらいでございましょう。しかるに、日本におきましては、国民総生産の二割あるいは二割二、三分をやっておる。これは日本のいわゆる経済の急激な伸びから来ることなんです。で、この国民総生産に対しまして二割とか、二割五分ということは、これは歴史にないことなんです。これは急速に伸びておる伸びかけ一ちょうど、年ごろで申しまするならば、十六、七から十七、八の程度であるのであります。こういうことから考えますと、この三兆円とか、三兆六千億とかいう、ずっとこの割合で続くべき筋合いのものじゃない。だから、相当生産力が、生産設備が伸びてくると、これは中だるみ、あるいは総生産の一〇%か、八%ぐらいになることがある。なることをわれわれは期待しておる。だから、十年計画で所得倍増の、大体昭和四十五年が三兆六千億と見込んでいるのはそれなんであります。今は急激な伸び方です。だから、そういうことをお考えになりますと、今のように累年に貿易面がふえていく筋合いのものじゃございませんから、いろいろ数字をもって非常に御勉強になっておるようでございますが、私の設備投資に対する考え方はそうなんであります。
  116. 大矢正

    ○大矢正君 実は、時間がだいぶなくなってきて、これ以上この問題をやりますると、ほかの質問ができなくなるものですから、ちょっと今あれをしたのですけれども、そこで、まあ自由経済の原則のもとにおいて、たとえば設備投資というものは、なかなかこれはまあ型通りにいくことは困難だと思うのですね。従って、その設備投資が過大になってきたことのために、生産過剰を起こしたり、あるいはまた輸入の増大をもたらしたり、そのために外貨の蓄積が減少するというような結果が出たり、こういう段階においては、やはりある程度政府が行政的な指導を当然しなきゃいけない。それを全然野放しにしておくわけにはいかぬでしょう。企画庁長官、どうですか。
  117. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 行政的な指導という言葉が必ずしも適当では私はないと思うのですけれども、所得倍増計画を作りました経済審議会では、せっかく民間の経済の高度成長の目安として作ったこの所得倍増計画が、全然無視されるような格好になるということは、まことに嘆かわしいことであり、世の経済の成長において、いろいろな障害を来たすことでもあるから、一つその番人的な立場をみずから経済審議会がとって、民間の協力を求めながら、できるだけこの目安に沿う経済の成長を確保したいというところから、現在経済審議会においてそういうような——まあ私がアフター・ケアと言ったら、まだ所得倍増計画が始まらぬ前に、アフター・ケアと言うのはおかしいじゃないかと言われましたけれども、まあ所得倍増計画の番人を勤めてやるという経済審議会の方のお話でございますので、その方の今仕組みを研究して、できるだけなぞえに、今仰せられましたようなことが起こらないように、しかも、行政的指導というような立場にできるだけ立たないで、民間の自主的な調整によって事柄が進行する仕組みをやりたいと考えております。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連。ただいまの大矢委員質問に対しまする政府の御答弁を聞いていますと、何か非常にこれまでわれわれに答弁してきたこと、あるいはまた日銀総裁が分科会において、国際収支の見通しについて、また、その原因、対策等についてわれわれに公述されたことと関連しまして、どうも非常に矛盾しているように思うのです。矛盾をしているようにですね、政府の御答弁も。で、これは結局、まあこうやって質疑をやっておりますと、水掛論になると思うのです。これは三十六年度下期なり、三十七年度になれば事実がこれを証明してくると思うのです。その事実によってわれわれは判定するよりほかないのですが、ただ、大矢君が貴重な時間を使って質疑していても、これは水掛論になりますので、設備投資の問題について、これまでの御答弁についてわれわれ納得いかない点、また、われわれにこれまで御答弁してきたこととどうも食い違っている点を簡単に御質問しまして、答えていただきたいと思います。  それは、設備投資は、大矢君が質問したように三兆六千億円になるかもしれませんし、あるいはまた、調整によってならぬかもしれないと言いますけれども、基本的な傾向としては、じゃ、実際通産省あたり、鉄鋼なんかどんどん競争をやっているでしょう。あれは具体的にどうして調整できますか。高橋亀吉君が予算の公聴会においてやはり公述しましたが、どうしたって各社とも自分のシェアを増加するために早く設備投資した方が得なんですから、これまで過去の経験からいえば、どうしたってこれは競争的になり、それがなかなか押えることができないというのが実情だと思うのです、自由企業を原則とすれば。他方、先ほど迫水長官は設備投資がふえれば総生産もふえる、また有効需要の方も自然にふえると、こう言われましたが、それは非常に私は無責任だと思うのです。この前質問したときに、賃金は大体七%の増加しか見ていないのです。大体九%の成長率を前提とする場合に、有効需要、国民総支出の方は、これはやはり一〇%ぐらい——九%なり、一〇%なり見なければならぬ。そのときに賃金は七%の増加しか見込んでいない。そうすれば生産力とやはり有効需要とのアンバランスが出る可能性がそこにあるわけです。生産力がふえるとすれば、そうすれば総所得もふえる。そうしてバランスする。そういうふうにはいかぬと思います。この矛盾は、結局、三十六年度の下期から三十七年度に具体的に、事実として私は出てくると思うのでありますから、これは事実をもって争うより仕方がありませんが、この点について御答弁していただきまして、一応この設備投資の問題については、大矢君まだこれから重要な御質問あるようですから、その点について御答弁願いたいと思います。
  119. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 民間の企業設備がややスピード・アップしておりますことは、これは事実でありまして、これは日本企業家が日本の経済の成長というものに確信を非常に持っているために、非常に先を急いでいるから、こういう状況が出てくるのだと思うのでありますが、それは従って、ある意味において非常にけっこうなことだと思うのでありますが、しかし、お話のように設備投資があまりにラッシュしますことは、全体のバランスを失するゆえんであります。われわれは、昭和三十六年度の設備投資が、大矢さんのおっしゃったように、三兆六千億、三兆から出発して二割もふえるとはこれは決して思いません。そんなになることはないとは思いますけれども、三兆一千四百億という見通しよりやや上回わってくるんじゃなかろうかという心配は持っております。しかし、先ほどから申し上げましたように、民間における一つの仕組みもでき上がりますでしょうし、ですから、できるだけそこのところはバランスがとれる成長を確保するように努力をしまして、結局、所得倍増計画がややスピード・アップという形でバランスがこわれないように、一つリード、経済が伸展していくように努力をしたいと思っております。   〔委員長退席、理事梶原茂嘉君着席〕
  120. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連総理大臣に伺いますが、今の大矢、木村両委員質問関連する問題であります。三十六年度の下期から七年度にかけて日本の輸出について十分な確信があって、経済が上向きの態勢にあるという、そういう自信を持たれるならば、一時的な今日の赤字はわれわれ自身も大して問題にすることはないと思います。趨勢としては確かにこれは国際収支の赤字は問題でありますけれども、六年度下期並びに七年度にかけて世界情勢等の関係からいって、大した心配はない。むしろ回復して上向きの姿勢になるということなら、一時的な現在の趨勢は、これは基調的なものではないとしてわれわれも了解できますが、その点はどうか、これが第一点であります。  もう一つは、過剰設備投資の行政指導ということは、なかなかむずかしいと言われましたが、自主調整でできるのかどうか。かりにそういうことが不可能で経済の自然の姿として何らかの調整がおのずから出てくればこれは別でありますが、自主調整とか政府行政指導が不可能であって、今のような過剰設備投資の傾向が続く場合、輸出がしかも大いに伸びない、国内有効需要も必ずしもこれに相応しない、こういう状況が起こったときに、三十二年の秋と同じことが起こるわけです。あれほど深い——深さと幅があれほどのものであるかどうかは別として、趨勢としては同じことが起こると思います。そのときには、あれと同じような対策、三十二年からそれから三十三年にかけて起こったような、あれと同じような対策をとる以外に芸はないのかどうか。実はこの間、分科会で迫水さんにお伺いしたところが、あのときのようなドラスチックな対策をとる意思はない、こうお答えになりましたが、総理大臣としては、第一点の問題と第二点、かりに万一、第一点の点が確信があるからそんなことは問題にせぬとすれば、そんな第二点は問題はないのですが、かりに第一点に問題があって、第二点の私の質問が現実の問題となってきた場合には、三十二年から三十二年にかけての条件以外に、対策というものはないのかどうか、それを承りたい。総理大臣に承りたい。
  121. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 問題は、今、日本の経済、ことに外貨がどういう状態になっているかという問題から申し上げます。三十二年の話が出ましたから、三十二年と比較いたします。三十二年におきましては、今のような外貨の計算はいたしておりません。オープン・アカウントの分もあるいは為銀に預けた分も一緒にしておりましたが、今オープン・アカウントとこの為銀は除いております。従って、十九億三千九百万ドルであります。十九億三千九百万ドルに、私の計算では、もう一つ支払いは六億五千万ドルぐらいでございます。これは為銀に預けておる分と輸出ユーザンスの分でございます。われわれの持っておる外貨というものは二十五億ドルでございます。しかして、負債勘定になっておりますものは十三億ドルであります。十二億数千万ドルの黒字がある。しかも、負債勘定になっておる十三億ドルというものの中の輸入ユーザンスというものは八億五千万ドルぐらいでございます。この輸入ユーザンスというものは短期債権だと考えることは私は門違いだと思う。これは買掛金でございます。だから、今まで輸入ユーザンスが少なかったのでございまするが、二カ月、三カ月のユーザンス期間を四カ月にしたために、昨年の暮れごろからずっとユーザンスがふえております。これは買掛金でございまするから、これは輸入がどんどんふえれば当然ふえる。これはすぐ払う必要はない。四ヵ月ごとに払えばいい、買掛金でございますから。買掛金というものをすぐ現金で払わなければならぬと考えることは、私は、経済上の原則でない。たとえそういうようにすぐに払わなければならぬといたしましても、十二、三億ドルのものがある、私の計算では。すぐ払う必要はありません。どこの岡でもこういうものをすぐ払うと考えておる国は一つもございません。そうすると二十億ドルでございます。これがお話に出ました三十二年度のあのときの状態と比べてみまして、今の計算方法でやりますと、表面の外貨はあのとき四億五千万ドル、しかして、その四億五千万ドルのうちIMFから一億二千万ドルを借りてきております。その後払いましたが、そうすると、ネットの外貨というものが、今の私の計算の十二億ドルの計算でいきますと、二億二千万ドルしかなかった。一月から九月までずっと輸入超過で、十月から黒字になりました。四億八千万ドルの毎月々々の赤字を合計いたしますとそれだけなんです。そのときに比べますると、今の日本の資産二十五億ドル、負債十三億ドル——しかも八億五千万ドルの買掛金を負債の方に含めて。こういう状態は、私は三十二年のときと比べれば問題になりません。それは輸入額も相当ふえておりまするが、ネット二億しか持っていなかったのが十二、三億ドルになっておる。しかも買掛金というものは払う必要はない。ずっと動いてくる、四カ月で。これはもうユーローダラーとか、あるいは為銀の借りている分とか、無担保借入金、これを合わせ、まして四億ドルくらいでございます。綿花借款の分は、前よりか減って三千三百万ドル、それから石油のスタンドバイが三千百万ドル、これは問題にたりません。  こう考えて参りますと、私は決して楽観はしませんが、今の日本の為替というものにつきましては、だれも心配を外国の人はしていない。ユーローダラーというものも入ってくるわけであります。だから私は楽観をするのじゃございませんが、今後輸出に、もっともっと力を入れて、こうして行くならば、私は手放しの楽観はいたしませんが、輸出をどんどん強力にやっていけば、私はそう心配して、びくびくしなくてもいいと思っております。こういう数字の根拠である。  そして世界の情勢は、ヨーロッパの方が頭打ちしたといっております。しかし経済の頭打ちというものは、なかなか続くものじゃない。民主主義の国からいって、どうしても上向きの政策をとらなきゃなりません。それからまた、最近のアメリカの状況から見ますと、これは株高も、それを現わしておりまするが、この二月を底にして、だんだん上へ出てきておるようでございます。アメリカの景気がだんだん上向いておる、こういうことは、もう向こうの定説のようでございます。輸出努力をすれば、私はそう心配しない。とにかくこの際は、官民こぞって輸出振興をやる。で、安心してと申しましては、また楽観的過ぎると言われるかもしれませんが、これは、こういう事実に基づいて同じません。そして、なんでございます、三月の信用状も、今大矢さんの行われたように、今までは数千万ドルから一千万ドルはございました、去年の十一月ごろは。この三月は、たぶん四、五千万ドルの輸出信用状の黒字が出ると思います。で、信用状なしの輸入が四、五千万ドルから、多いときには五、六千万ドル、こういうことでございますから、大体六月から七月は赤字が出ても、そうはないし、われわれの努力によって、七、八月くらいから黒字がだんだん出てくる、そうして下期には相当の黒字と、こうなっていくのではないかという見通しであるわけであります。決して楽観はいたしておりませんが、設備投資につきまして、いろいろ議論があるようでございまするが、これは何でも行き過ぎはよくないので、大体三兆一千四百億円くらいでおさまってくれればいいと思っております。  また、この行政的措置と申しましても、たとえば鉄鋼の分もありましたが、お互いにやろうといったって、金融がつくという問題もあります。そして、またお互いにやろうといったってできないから、結局は、去年なんかも鉄鋼につきましては、通産省で一つ何とかいい考え出して下さい。こういって法律に基づかずに、行政的に想見を聞きにくるようなこともありますので、われわれが金融界の人、あるいは財界の人、あるいはまたわれわれの経済政策よろしきを得れば、そう心配はないのじゃないか。大船に乗ったとは言いませんが、とにかく日本の経済力というものは、相当のところまできておるということは、外国人ひとしく認めて、ユーローダラーもなっておるという状況だということをお考えいただきたいと思います。
  122. 羽生三七

    ○羽生三七君 第二点はないわけですね、従って……。
  123. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そこで、今いったように鉄鋼で申し上げましたように、あるいは化学繊維にいたしましても、あるいは石油の精製問題にしても、こういうのが主でございますが、こういう問題につきましても、従来もやはりある程度、業界の方から通産大臣に頼みに——あるいは大蔵省の金融政策等から、ある程度できることはできるのであります。私は先ほど申し上げましたように、三兆一千四百億円程度におさまることを期待しておるのであります。   〔理事梶原茂嘉君退席、委員長着席〕
  124. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと違うのです、第二点は。——総理の言うようになればいいのですが、絶対の確信を持っておられるならいいが、かりに万一、情勢が悪化したときには、そのときにとるベき調整策というのは、三十二年の幅と深さは違うけれども、ああいう形のこと以外にはないのかどうかということです。  そんな心配するような趨勢にはないということになれば、私の質問は意味のないことになります。
  125. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この三十二年のときは、御承知通り、三十一年の秋のスエズ運河に基づきまして、非常に思惑的な輸入があり、三十二年の一、二月ごろから、今度は外貨不足によるまた思惑があったのであります。  で、私はあの当時、これは預金が減って、在庫品がふえるけれども、心配は要らぬと、こう言っておりましたが、実は、今言ったように非常にIMFから借りなければならぬ、こういうような状況になって参りましたから、二十九年にとったような、それに近い措置をとったのであります。少しごたごたして措置がおくれたうらみがございますが、今申し上げたような状況でございまして、私は日本の設備というものも非常にできております。あのときの輸入は、原材料もさることながら、やはり機械類輸入が非常に多かった。鉄鉱石まで輸入したのであります、御承知通り。今は、そういうような状態でございませんから、ああいう措置をとる段階にはならないということは、識者が大体言っておることと思いますが、私は、そう確信しております。
  126. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの総理の御答弁に、矛盾があると思うのです。というのは、通産大臣でしたな。新聞によりますと、きのう、おとといの閣議の懇談会で、通産大臣はこの設備投資は、合理化投資ですね。むしろ押えるべきでないということを言っておるやに新聞で伝えられております。  そういたしますと、鉄鋼の、さっき総理からお話がありました。鉄鋼など四十五年の設備投資は大体四十年で今出て来ている計画は達成いたしますような状況でございましょう。その通産大臣は押える必要がない。むしろ合理化投資は、積極的にいいチャンスだから進めるべきだということになれば、自主調整といったって、鉄鋼は独走して行くと思うのです。鉄鋼が独走していけば、ほかもつれてやってくると思うのです。だから現実に自主調整できるのかできないのか、閣内不統一でしょう。通産大臣は積極的に進めろと言う、あるいは山際日銀総裁は、今度国際収支の最近の赤字の一つの原因は設備投資が予想外に大きいことは、やはり輸入を増加さしている一因になっておることを言われておるのです。それから迫水長官は行き過ぎてはいけないとして、アフター・ケアという言葉によって多少なしくずし的に、設備倍増計画を調整——直すと言うと権威に関するから言わぬでしょうけれども、なしくずし的に、これを何とか調整せざるを得ない。それで、アフター・ケアということは、そのことだと思うのです。そうすると、何か意見が、ばらばらなように思うのです。  それで自主調整、この設備投資の問題ですね、私はこの問題は、調整していけるのかどうか、これは三十六年の下期かあるいは七年になれば、はっきりして来ると思う。どうも今の総理大臣答弁には、何か矛盾があるように思うのです。その点。
  127. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 矛盾がないのであります。やはり合理化のための必要な資金は出さなければいかぬ、これは事実であります。また、あまり設備投資が行き過ぎて、正常化を阻害する、正常な発展を阻害するということにつきましては、押えなければならぬということも、これは真理でございます。その間を縫って行くのが、池田内閣の政策でございます。  従って鉄鋼につきましても、それはお話の通り、四十年で四千万トンの計画をやっております。各会社が自分で思い思いにやっておる。そんなことはとてもできません。各会社は、できないということをわかっておる。去年だって、私は通産省におりましたときに調整を業界から頼んで来たような状況であります。ですから、ああいうものは自分の思い思いで、一人勝手に作ったやつを集計して来るのでありますから、これによるわけのものじゃない。結果は、先ほど来申し上げましたように、成長段階において設備投資が、相当各国に例を見ないほどいっております。これはある程度いきますと、だんだん中だるみになってくると、解釈しております。やっぱり金融界、そして産業界、おのおのがやはり話し合っていけばいいところに落ち着くと私は考えております。
  128. 大矢正

    ○大矢正君 先ほど木村委員も申しておりました通りに、国際収支の問題や、設備投資の問題等は、これはなかなか数字の裏づけが時期的にずれまするから、そういう意味においては、ある程度数字の確固たる裏づけがない、将来の見通しがないという前提に立って話をするならば、やはりある程度、これは議論が分かれて参りまするし、意見も相違いたします。  私はもう一つ立場から、ほんとうはこの設備投資の問題について質問をいたしたかったのでありますが、時間がかなり経過いたしましたので、その部分は、一つ省略いたしまして、次に税の問題について、大蔵大臣を中心として質問をいたしたいと思います。特に時間がありませんから、はしょって一つ質問をいたしますが、大蔵省当局は、三十五年度の第二次補正の歳入見込み以降、自然増収として生まれてくるところの歳入は約七百三十億円であると、こういう答弁をされておりますが、今日においても、そのように確認してよろしゅうございますか。
  129. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大体、よろしゅうございます。
  130. 大矢正

    ○大矢正君 大蔵省が、三十五年度の第二次補正以降における歳入の見積りをしたときの根拠、この根拠は、私も先般一般質問のときに聞きましたが、大体、二月末の収入歩合が、例年より五%程度上回っている——初年より上回っている。こういうことから計算すれば約七百三十億円である、こういう答弁でございます。  そこで、もしそれを、それでは二月まで、すでに経過いたして二月の収入歩合、二月の収入金額も集計されたのでございますから、あと三月ひと月と、四月、五月に繰り越されるわずかの部分が残っているだけでございますから、ほぼ積み上げ計算ができるのではないかという立場から質問したのですが、三月は、大体千二百億くらい、四月、五月は百億くらい、こういうことで千三百億。二月の収入歩合にこれを加えて——大体七百億円くらいになる。こういうような説明でございます。  しかし私は、今日まで二月末の収入歩合と三十四年度の歳入結果というものとの比較、それからもう一つは積み上げ計算による比較をいたしてみましたけれども、大体この三月の収入見込みというものは、私は昨年の十二月、あるいは十一月、それから一月、そして二月も入れまして、こういう月の収入の比率を見ますと、かなりこれは三五%くらいまで収入が前年に比して上回っているという結果が出て参ります。従いまして昨年の三月は、千五十億ぐらいの——三月分の歳入は、そうでございましたので、私は少くともこれは千四百億から千五百億くらい三月分の歳入は見積もれるのではないか。あるいは四月、五月に回る分も、百億にとどまらず百五十億ぐらいにいくのではないか、こういうふうに分析されるのであります。  さらに、もう一つは収入歩合から、三十四年度の比較において検討いたしましても、大体七百億あるいは七百三十億というような大蔵省の推定というものは、かなり、これは過小ではないか。八百億からひょっとすると九百億ぐらいの自然増収のいわば最終的な剰余金というものが、三十五年度の歳入合計の中で生まれてくるのではないかと見ているのでございますが、大蔵大臣、どう思いますか。
  131. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この前お答えいたしましたときの推定で、お答えしたわけでございますが、きょうは月末でございますし、その後の情勢もわかっていると思いますので、主税局長からお答え申し上げます。
  132. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) お答え申し上げます。  先般、分科会で大矢先生にお答えしましたのは、たしか二月末の収入歩合九〇……。
  133. 大矢正

    ○大矢正君 九五・七。
  134. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 九五・七、それを調整いたしますと、大体減税前に比べますと九五・五%、前年が九〇・五%ですから約五%上回っている。従って第二次補正予算を元にしまして、現在までと同じ好調が年度末まで続くという仮定に立てば五%かければいいはずだ。そして、そういう前提のもとで、単純なる算術計算をいたしますと、七百三十億くらいになりますと、こう申し上げたわけです。  一方、積み上げ計算をやることも可能でございまして、この上からいきますと、先ほど申しましたように、やはり似たりよったりですが、それより若干上回るということを申し上げたわけでございます。ただそのとき先生が、それなら絶対にその線以上出ないか、こういう重ねてのお尋ねがございましたので、いや実は、これはこの三十五年分の申告所得税の第三期分が、どうなるか、この問題がございます。この集計が、まだついておりませんので、確実なことは申し上げられませんが、うすうす聞いたところによると、非常に好調であるので、あるいは八百億程度までいくかもしれませんということを申し上げたわけでございまして、今日においても、やはりそういう考えを持っているわけでございます。
  135. 大矢正

    ○大矢正君 大蔵大臣ね、あなたは、二月の月に私がこの第二次補正のときですか、質問したときに、大体この見積りはどうなるか。第二次補正後の歳入の増は、どのくらいあるかと聞いたら、あなたは三百億くらいじゃないかと言われた。こういう話でした。それから二月に入って総理大臣質問した。これは、私じゃなくて木村さんがやったのですが、そのときに総理大臣は、いやこれは五百億くらいじゃないかと、こう言われた。そして最近は、七百三十億から今主税局長は八百億というのですね。二月の中から、今日までに五百億くらいの差が出てくる、わずか一月か一月ちょっとの間に。ひどいのになると三月十日以降からこの半月か二十日間の間に、実に五百億から八百億、三百億ふえているのですよ。これは、とても物すごい違いがあるのですよ。それは、自信持てますか。七百一十億——私は八百億どころじゃない。九百億くらいになるのじゃないかと思うのですが、総理大臣答弁したそうにしているから、答弁してもいいのですが、どうですか。
  136. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) あのときは、一月末の収入歩合実績から見まして四・三%ということでございましたので、一応それを元にして推計を申し上げましたが、また二月は、今のような数字になりましたし、これは、この実績の歩合がふえてきましたので、最終的には、今のような見積りができると思います。
  137. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理大臣にちょっと質問しますが、私第一次補正が出たとき、大体二千九百億ぐらい自然増収があるのじゃないかと言ったときに、とんでもないと総理は言われた。ところがその八百億ないし九百億があるとすると、大体それに近くなるのですよ。二千九百億に近くなりますよ。ですからその点は、さすがの税の方に詳しい総理大臣も、その点はシャッポを脱がざるを得ないと思いますが、どうですか。非常な見込み違いじゃないですか。その点、総理いかがですか。
  138. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三十五年の経済の成長というものは、木村さんも予想外であったと思います。大へんな、鉱工業生産は二〇%こえる。ことに十二月決算の各ビール関係、電気関係、食品関係、これは非常な経営者自体もびっくりするほど出たわけであります。  そこで、だんだん積み思ってきまして、相当の自然増収が出るということはこれはうれしいような、どうも何と言いますか、なかなか経済の見通しというものが、むずかしいということを現わすことであると思います。これは、三十五年度のこの状況が予想外であったということを示すものでございます。
  139. 大矢正

    ○大矢正君 これは、総理大臣質問いたしますけれども、総理大臣ことしは——三五年度です、ことしというのは。一次と二次の補正で、租税と印紙収入が千八百七十九億補正で増加しておりますね——歳入見込みが当初よりは。それから、大蔵省の主税局長答弁を聞いて、そのまま、うのみにして八百億さらにあるわけですね。そうすると二千六百七十九億という、いわゆる自然増収、だからこれは、まあ総理大臣はすぐ逆手に利用して、それだけ経済も伸びたし、国民所得も多くなったからいいではないかといわれれば、それまでの話ですが、私は昨年の年度末にも、年度内に減税をすべきではないか、年度内減税をやるべきではないかということを、大蔵委員会でも強く主張したのだけれども、いやそんなに年度内減税をやるほど増収はない、こういうようなことで、け飛ばされちゃったんです。実際問題として、あなたの言う通り、所得が増加したり、法人の所得が増加したりすることはけっこうなことであるけれども、同時に、税金がとられると、税金を過大にとられるということは、これは企業も、個人の方も、大へんな話ですよ、総理大臣、私は二十九年から三十四年まで、ずっと拾ってみましたけれども、補正において千八百七十九億も歳入で多く組み、それから、しかも八百億も剰余金を出さなければならぬという年次は、今まで一つもないですよ、総理大臣、あまりにもひどい見込み違いだとお思いにならないですか。
  140. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所管大臣をもって答えさせた力がいいと思いますが、とにかく先ほど申し上げましたように、なかなか租税収入を見込むというのは、景気がいいときには、予想よりもうんと出る、景気が悪くなったら、予想よりもうんと減る、これが常況なんです。  で、いろいろ専門的な計算方法でやりまするが、たとえば三十四年、三十五年と好景気がずっと二年にわたって参りますると、今までの償却を、不足のやつを全部やってしまう、景気のいい初年度で、そうして、景気のいい次年度におきましては、償却も何もできなくて、利益がぱっと出るようになるものですから、平均的に償却すれば、そういうことがないわけでございます。なかなか景気がよくなって、しかも二年と続くというときには、これはなかなか見込み違いは多いのでございます。  ちょうど何と申しますか、輸出入におきましても、かなり一億ドルの黒字が五億五千万ドル、倍、三倍近くなることもあります。なかなか見通しというのはむずかしいのですが、長い目で見てやれば、私はそうひどいことはないのじゃないかと思います。
  141. 大矢正

    ○大矢正君 まあ総理大臣は、そういうことで答弁されるから何ですが、しかし八百億円の剰余金を残すという、そのこと自身は、非常に大きな問題だと私は思うのです。八百億円も剰余金を残すということは、これは非常な大へんな問題だと思うのです。  そのことはそのこととして、次に三十六年度の歳入の見込みについて、大蔵大臣質問します。三十六年度の歳入見込みについて、三十六年度の歳入の見込みは、三十五年度当初の見込みと、さらにまた合わせて二回の補正の千八百七十九億、それにさらに、大蔵省は八百億あると、こういうのでありますから、それを引いて参りますると、大体の金額としては六百億円しかならないのですね歳入見込みは、しかしまあ減税分が六百四十七億ありますから、これをプラスいたしましても大体三十六年度の自然増の見込みというものは千二百億、千二百億か千二百五十億くらいにしかならなくなってしまうのですね。千二百五十億にしかならなくなってしまうのですよ。三十六年度の経済の成長というものは、かなり大幅に見込まれておるのでありますから、わずか千二百五十億しか三十五年度に比して増収がないと見る大蔵省の歳入の見込み方というものは、これは間違いじゃないですか、大蔵大臣
  142. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 三十五年度の見込み違いは、御承知通り当初から経済の伸び率を非常に過小に見たということでございまして、三十六年度は、経済の伸び率を御承知のように九%と見ておりますし、それを土台にしたいろいろな積み上げ計算もやって推定した数字でございますので、三十五年度の見込み違いが大きかったからといって、三十六年度、の見込み違いも、そういうふうになろうとは思いません。過去の実績もありますし、これは積み上げ計算で出した数字でございますので、私は、大体これは妥当な見込みじゃないかと思います。
  143. 大矢正

    ○大矢正君 まあ大蔵大臣は、そういう答弁をされますけれども、それじゃ国民所得の面から、その面を検討してみますと、こういう数字が出ますよ。三十五年度の推計の国民所得、大体これは見込みですが、まあこれを増加率で見ますると、三十五年度の場合は一兆五千百十八億国民所得が増加しているですね、それに対して税金の自然増収は二千六百七十九億税金が増収をしております。  そこで三十六年度のやつを見ますると、三十六年度の予想では、国民所得が一兆二千二百八十億ですね、前年度に対して増加をすることになっておるのです。ここの開きというものは、二千九百億しかございません——もっと、二千八百何ぼにしかならないのです。二千八百何ぼにしかならないです——その国民所得の差は二千八百億にしかならないのですよ。それでいて、税収はどういう結果が出るかというと、三十五年度の二千六百七十九億に対して、三十六年度は千二百六十二億しか自然増収を見込めない、増収を見込めないという、こんなべらぼうな話というものはないじゃないですか、そうして結果としては、こういうようなことから、三十六年度の見込み、租税等及び印紙収入の見込みというものは、非常に少なくなるという結果が出て参りませんか、どうですか。
  144. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 課税と納期のズレがございますし、今年度と違って、来年度の減税の問題もございますので、私どもは妥当な見込みだと思っておりますが、もっと詳しい積算の推計の基礎が必要でございましたら、政府委員から説明させます。
  145. 大矢正

    ○大矢正君 具体的な積算の根拠というものは、私どもも、大体承知しているのですよ。しかしただ私は、国民所得の実態と、国民所得と、それから租税のこの自然増の三十五年の実績からいくと、あまりにも三十六年度の増収見込みが少ないのじゃないか。だれに聞かしたって、これでは、もう一千億以上の増収は、必ず出ますよ。国民所得が、大体この程度とすれば、これは必ず結果としては、そういうことが出て参ります。時間がありませんから、私は具体的に、それ以上追及はいたしませんけれども、まず、この点を指摘をしておきたいと思います。  それから次に、租税の負担が、国民所得にどういう割合を占めているかという問題について質問をいたしたいと思います。先般も私は、この点について質問をいたしましたが、私の推計をするところでは、国民所得の中に占める租税の負担割合というものが、三十五年度の場合、三十五年度の実績は、計算をしてみますと、大体二一・四、五%までなるというふうに私は計算をしますけれども、大蔵大臣は、それに対して反論いたしますか。
  146. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 三十五年度は二一%こすと思います。
  147. 大矢正

    ○大矢正君 前の補正予算のときにも、忍は大蔵大臣に申し上げた通り、税制調面会の答申は二〇%である、二〇%前後と、こういわれておる。だから、そういう立場からいくと、少なくとも一%なり一・五%というものは、三十五年度において、税を国民がよけい取られておるという格好になるのですよ。積極政策をやるのはけっこうだし、高度経済成長をやるのはけっこうだけれども、税金をよけい取られる者は、大へんな話なんです。大蔵大臣、三十五年度は、政府は、当初二〇・五%しかないと、こういっているのだ、あなたは、そう言っているのですよ、まあ二〇%に押えたいけれども、二〇・五%になるだろうとこういっている。ところが、どっこいそれから一%くらいふえて二一・四、五%にまで実際はなってしまうんです。一%伸びるということは、国民所得が、かりに十一兆ありますれば、千百億国民は税金をよけいとられる格好になるのです、あなたは、こういうことに対して矛盾だとは思わないのですか。
  148. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 当初予算で見ましたときは、二〇・五%という予想でございましたが、御承知のように税収が非常に多かったと、この税の全体からみますというと、二一%こす結果となったと、こういうことでございます。  従って、私どもは、今年度減税をやって、この二〇%を昨年の当初予算の見込み程度におさめたいと思いましたが、御承知のように、増税分も加わりましたために、二〇・七%前後になるんじゃないかと思っております。
  149. 大矢正

    ○大矢正君 総理大臣にお伺いします。  総理大臣も御存じだと思うんでありますが、昭和三十二年の十二月の閣議できめられたこれは、いま一つ前の経済計画でありますが、新長期経済計画というものがございます。  これは、今池田さんが覆われておる所得倍増計画の構想の以前の計画ですね。この内容に、大へん具体的に、国民所得の中に占める租税負担の割合というものについて、一つの構想を明らかにしているんです。考え方を明らかにしているんです。それによりますと、昭和三十七年度には、国民所得に占める租税の負担割合というものは、大体一八%程度にまで軽減ができる見込みであるということを明確にうたっておるんですよ、新長期経済計画では。ところが、今日の実態は、今私が申し上げた通り、二一・五%まではね上がっている。そういたしますと、三・五%あの当時の計画よりは税をよけい取られている結果になって参ります。三・五%といいますれば、十一兆の国民所得でありますれば、約五千億に近い金が、これは取られるような結果になって参りますよ。総理大臣、これは、あなたの所得倍増計画の構想もけっこうだけれども、税金を倍とられるんじゃ、これはかなわないですよ。総理大臣、どうお考えですか。
  150. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 税金を軽くしようというのが、私の所得倍増論のもとでございます。従いまして、三十二年のときにきめた経済五カ年計画というのは、今の時代に合わないようになりましたので、変えたのでございます。
  151. 大矢正

    ○大矢正君 そうすると、この新長期経済計画というものの一八%というものは、単なる希望であって、結果としては、今日の段階では、一八%などという国民所街の中に占める租税負担の割合というものは、これからは考えられないと、こういうように解釈してよろしいんですか。
  152. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そのときはそのときの情勢で、五年計画を立ったのでございますが、わが国の実情が変わって参りまして、私は将来の国民生活の向上と経済力の発展のために、十カ年計画を立ったのでございます。しこうして、これを実行して参りますると、私は二〇%程度、だんだん低くなってくることを期待いたしておるのであります。
  153. 大矢正

    ○大矢正君 これは国民の側からいけば、当時は、三十七年度には一八%に税金を減税してくれるのであろうという政府に対する期待を持っていたけれども、今日では、逆にそれが二一・五%まで三・五%も大幅にはね上がるという、こういう結果に対して、国民は、私は絶対歓迎しないと思うのであります。税金をよけい取って、所得倍増計画やあるいは高度経済成長というものをやるんなら、これは結果としては、なんにもならないのでありますから、そういう意味合いにおきましては、国民の中から多くの不満が出るものと考えております。しかし、この問題はこの問題として、次の問題に移らしていただきたいと思います。  三十六年度の減税は、六百四十七億であります。三十五年度の自然増に対してパーセンテージを出しますと、だいたい一五・六%しか減税をされていないという格好になっているわけですね。従来減税をやる場合には、自然増収部分に対して、だいたい平均をすると三八%減税をしている。ところが、三十六年度はわずかに一六%しか減税をしていないということは、これは一連の今私が申し上げた新長期経済計画とも関連して、政府は、税金をどんどん取る。高度経済成長はやるかもしれない。やるかもしれないが、税金は、どんどん取るという根本的な考え方を持っているのだというふうに解釈せざるを得ないと思うのですが、大蔵大臣、どう思いますか。
  154. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私どもは、減税の検討をやって減税案を出したのですが、それによって千百三十一億という平年度国税の減というものを今度やったわけでございますが、自然増が数字になって現われてきたのは、御承知のように最近になってでございまして、当時としては、相当妥当な減税であったと思っておりますが、今になってみると、減税の幅が少ないというような御意見が出ておりますが、しかし今、所得倍増計画のために備えるべき財政需要というものが非常に多いときでございますので、そういうことも勘案して、減税をこの程度にとどめたというわけでございます。  さらに、今の情勢に対処するために、来年度においても、次の減税を今しようということで検討しておるというわけでございますので、三十七年度においても、私ども引き続き妥当な、減税をやって参るつもりでございます。
  155. 大矢正

    ○大矢正君 減税の問題に対して、いろいろと意見がございますが、時間がありませんから、以上の程度で私は質問を終わりますが、最後に一つ総理大臣に、これは質問をしておきたいと思うのでありますが、これは今の経済問題とは全然かけ離れた問題で、特に人事の問題であります。  それは何かと申しますと、総理大臣も、まあかつては高級公務員でありますから、私は、こういうことは言いたくはございませんけれども、全体としては、私の申し上げることに賛意を表する人もかなりあるという立場から、総理大臣にお伺いをしたいと思うのであります。それは最近、政府が出資をしておりますところの法人の役員等の調査を私がいたしましたところ、たとえば住宅公団というところには、総裁以下理事その他役員が九人おります。ところが、その九人は全員かつての高級公務員です。九人全員、役員はかつての高級公務員であります。あるいはまた社会福祉事業振興会ですか、こういうところもそうであります。あるいは労働福祉事業団もそうであります。電源開発も、これまた七人のうち、かつての高級公務員は六人で、わずかに一人だけが自民党の政調会の委員とか、最終的な役職の人は、そういう人がおります。まだまだあげますれば、非常に多くのものが、そういう格好になっております。公営企業金融公庫その他一人、二人申しわけ的に民間から入れて運営しているという内容がございます。私は能力があるのだから、たとえばかつての公務員であっても、そういうところに行かれて、それは仕事をされることはけっこうだと思うけれども、一般の民間人が見た場合に、全員がかつての高級公務員であったり、八人のうち七人まで高級公務員、わずか一人だけしか申しわけ的に入っているとか、政府の出資のこういった団体の会社の役員構成のあり方というものに対して、私は国民がもしこの全容を知ったら、非常に不満を私は示されるものと思うのであります。総理大臣、一体どうお考えですか。  もっと具体的にいうと、全部ありますよ、道路公団は、十人おって八人までが高級公務員、ほかに二名民間から出ている、こういう内容ですよ。少なくとも、これは八人おったら、四人くらいは民間から入れて、そうして政府のほんとうに出先機関だということではなくて、国民に喜ばれるような運営方針というものを私は打ち出していくベきではないか、こう考えるのでありますが、最後に、総理大臣考え方を承っておきたいと思います。
  156. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の点は、私は日ごろから注意しておるのでございます。しかし政府出資の公団その他のものは、おおむね政府と特別の関係がございます。たとえば政府出資といたしましても、日本航空の方は、あまり行っておりません。それから道路公団をおっしゃいましたが、これは総裁、副総裁は民間人だと思います。で、下っぱの理事が役人、こういうことだと思います。それで先だって東南アジア開発の分も、私は民間の人から採るようにいたしましたが、もう一つは、民間の人はあまり来たがらないということも考えるわけです、来たがらないというのが一つのあれなんです。それは何かというと、役所関係で非常にうるさいというので、民間の人に合わないという気持もある。私は、何も役人で固めようという気持は持っておりません。ことに私は、できるだけ民間の人と——こういうふうに考えておるのでありますが、なかなか民間の方の人をとるということになりましても、たとえば電電公社あるいは国鉄と、こういうふうなものにつきましては、これは民間の人も、割合になりたがるといっちゃあれでございますけれども、そういう傾向がございますので、無理に役人を押しつけようという気持はありません。できるだけ民間の人をとっていきたいというのが、私の方針であります。
  157. 大矢正

    ○大矢正君 これは、最後に、要望としてお願いしておきますけれども、私は、たとえばこういうような道路公団にしても、あるいは中小企業金融公庫、国民金融公庫、あらゆるこういう団体の役員は、どの程度の——私はおかしな話ですが、生活、給与を保障されているか、こういう内容も、全部知っております。そういう点では、他の民間企業とのかね合いにおいても、そんなにべらぼうに給与が低く、それで民間の人は、そこに行きたがらないという内容のものではない、私は知っています、給与の問題でも何でも。もしありとすれば、それは高給公務員が、その団体の中におって、民間から来ても、なおかつ実際に仕事ができないように、はね返すような雰囲気、空気というものがあるから、民間からおそらく行きたがらないのではないかと、こう思うのです。  どうか一つ総理大臣も、十分そういう点について考えられまして、これから政府出資の法人等に対しても、極力民間人を起用することによって、民間と、こういった団体との間における接触を深めていただきたいことを最後にお願いいしまして、私の質問を終わります。(拍手)   —————————————
  158. 館哲二

    委員長館哲二君) 曾祢益君。
  159. 曾禰益

    曾祢益君 議事進行について。私が私の会派の理事から、先ほど理事会の決定として聞いたところによりますと、おおむね今晩九時ごろになったならば、模様を見て理事会を開いて、今晩あるいはあしたにかかるかどうかしりませんが、委員会の運営について相談するというふうに聞いておりますが、その通り理事会の話し合いがあったのですか。
  160. 館哲二

    委員長館哲二君) 私は、委員会を続行しながら、一方で議事の打ち合わせをやっていただくというふうに了解しております。今打ち合わせをしていただいておりますので。
  161. 曾禰益

    曾祢益君 私は、さように聞いておりません。理事会を開くというふうに聞いておりますので、大へん恐縮でありますが、委員長のおっしゃることを信用しないわけじゃありません。私は、自分の会派の理事から、はっきり聞いてからでないと、このまま進行することには賛成できません。(「委員長の入らない理事会はない」と呼ぶ者あり。)
  162. 館哲二

    委員長館哲二君) いや、打ち合わせ会ですから……。
  163. 曾禰益

    曾祢益君 正式に理事会を開いて下さい。
  164. 館哲二

    委員長館哲二君) 暫時休憩いたします。    午後九時十四分休憩    ————————    午後九時四十四分開会
  165. 館哲二

    委員長館哲二君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を続行いたします。曾祢益君。
  166. 曾禰益

    曾祢益君 最初に、先ほど当委員会で採決されました炭鉱の保安に関する決議について、これは先ほど討論の中でも田畑委員から触れられましたように、私どもといたしましても池田総理、西尾委員長会談でも議題になった問題でございますので、大蔵大臣から予算化あるいは資金の問題についての善処方のお話がございましたが、この点に関して池田総理から一つ所信の表明を願いたいと思います。
  167. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 最近、累次の炭鉱災害につきましては、これが根本的対策を早急に講ずるよう私ども考えておるわけであります。しかも、決議はしごくもっともでございます。あの線に沿っていきたいと思います。
  168. 曾禰益

    曾祢益君 予算について並びに資金についてもう少し大まかな点でけっこうですから、あるいは融資についてはこう、それから保安の要員等についての予算化についてはこう、これらについて総理の御所信をさらに伺いたいと思います。
  169. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 具体的な問題は大蔵大臣が答えたように、今現地を調査しなければならぬわけでございます。そうして中小炭鉱といたしましても、どの程度に保安設備がいっておるか、それを完全に直すにはどれだけの金が要るか、そうしてまた、鉱業権者がどれだけ負担し得るかという問題もございます。しこうしてその残りの分を低利の貸し付けにするか、あるいはある程度の補助を加えなければならないかといういろいろの問題があると思う。だから予算上、資金上考えなければなりません。また、そればかりでなしに、鉱山保安官の増員とか、あるいは旅費とか、あるいはまた鉱業権者と保安官との間の何と申しますか、なかなか指令が届かぬというような実情でございますから、法律の改正その他万般の措置が必要だと思っております。
  170. 曾禰益

    曾祢益君 もう一つ総理に伺います。公共企業体の労使に対する仲裁裁定が下りまして、政府は、もとより誠心誠意これを完全実施される覚悟と思いまするが、その予算化について総理の御所信を伺いたいと思います。
  171. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 公共企業関係各省が、今せっかく作業をいたしておるのでございます。それによりまして、予算の移流用をどれだけしなければならないか等検討中でございます。その結果を見まして考えたいと思います。
  172. 曾禰益

    曾祢益君 大蔵大臣労働大臣から伺います。
  173. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいま所要経費の財源措置について検討を加えておる最中でございますので、その結果を見て善処したいと考えております。
  174. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 政府の、提示された裁定に対する態度は決定したわけでありますから、この予算上のあるいは資金上の措置は、大蔵大臣の御答弁通りに行なわれるものと確信をいたしております。
  175. 曾禰益

    曾祢益君 右二件については、総理大臣の御所信表明のように、誠意をもって予算化、資金化について実現力を特に要望しておきます。  次に、アメリカの対外援助計画が転換されましたにあたって、これが世界並びにわが国に相当な大きな影響があろうかと思うのであります。特にアメリカのケネディ大統領の対外援助教書におきましては、従来と異って、重点を、軍事から非軍事へ、また非軍事の援助は、贈与から低開発地域に対する援助借款へ、また短期なそのつど計画から長期の援助計画に移行するということを示しておりますとともに、低開発国の経済的、社会的進歩ができるかできないかということは、アメリカの安全と繁栄に関係があるばかりでなく、これはアメリカの良心の問題であるとすら言っておるのであります。このケネディの新しい構想というものは、まあいわば、従来、力のバランスの上に打ち立てられたアメリカの対外政策のワクを完全に離れたものではないにしても、その改革の方向、その思想の深さにおいては、これは両期的だと思うのであります。ところが、残念なことには、わが国池田首相の施政方針演説においては、いわゆる南北の問題についてなるほど言及はされております。しかし、それじゃ何をするかという実体的な問題になると、ただ単に、「これら諸国に対しましては通商航海条約の締結を促進する等の措置を講じて、経済的、技術的協力を一段と推進する方針であります。」これだけなんです。まことに残念なことですが、ケネディ構想と比べて貧弱ではないか。首相はこのケネディ構想にいかなる所感をお持ちになり、またこれに関連してわが国の対外援助基本方針をどうお考えになるかを、この際明らかにされたい。
  176. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ケネディ大統領の構想は、お話しのように前よりも数歩前進しておると思います。私は東西並びに南北につきまして、外交関係をより一そう密接にして経済援助をする、こう言っておるのであります。しかし日本の力自体は、それはアメリカとは比較にならぬように、私としては精一ぱいのところでやっていく考えであります。
  177. 曾禰益

    曾祢益君 ケネディ教書の中でもう一つ注意すべきところは、自由な工業諸国の共通の努力を統合しなければならないということを言っておるわけですが、これをただ単に、アメリカのドル防衛の必要から、日本に肩がわりさせるのだというふうに、ものを見るのか、それとも日本がやはり工業先進国である以上は、応分の貢献をしてやるのが、ある意味で当然というふうに考えるのか、その受け取り方が非常に私は問題だと思う。この点について首相、外相はそれぞれどうお考えか、明らかにされたい。
  178. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) アメリカの援助を日本が肩がわりするという考えは私は持っておりません。日本ができるだけ日本立場におきまして、そうして自由国家群と協調して積極的にやるわけでございます。
  179. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本としてはやはり日本なりの工業の営みの方法を持っておるわけであります。ことに中小企業等に対しまして、アメリカの大きな援助にまたない味合いを持っておるわけであります。そういう面においても総理大臣の群われた通りでございますが、私どもも努力したいと思います。
  180. 曾禰益

    曾祢益君 先ほど大矢委員も触れられた点でありますが、要するに西欧陣営の経済協力機構、OEECから発展いたしまして、いわゆるDAGといいますか、開発援助のグループができて、それに日本が加わってここ数回の会が持たれたわけですが、この経緯ですね、日本はどういう気持で、このいわば西欧陣営の中にあるこの機構にどういう気持で日本が加わっておるか、ただ単にアメリカに振り回されて入ったのか、それともどういう政府は心がまえでこのグループに入ったか、その経緯を明らかにしていただきたい。
  181. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知のように、当初この開発援助グループの行き方というものは、いわばバードン・シェアリングというものを持たない、そうしてそれぞれが援助の方法なり、また実際やっておる方法を公開し合って、互いに工業国として未開発国の援助のやり方をより有効にしようと、こういうことでございましたので、われわれもそれに加わって参りました。しかし、これが進んで参りまするうちに、全体としていわゆるひもつきでない援助というものを考えまする場合に、その絶対額を多くして、そうしてより一そう有効に南北の問題に寄与したい、こういう考えがございまするので、私どもといたしましても、その方向でわれわれに応分な寄与、われわれにふさわしい規模の援助をしながらこの仲間に加わっていきたい、こう考えておる次第でございます。
  182. 曾禰益

    曾祢益君 最近のロンドン会議において、先ほども質疑応答がありましたように、必ずしもいわゆる一%という、これは国民総生産の一%だと思うのでございますが、それも明らかにして、国民所得の一%であるか、明らかにされたいんですが、それを今直ちに出す云々という問題は、多少先にやられたような感じがいたすのでありまするが、この問題の経緯並びにわが方の態度をもう少し、あまり逃げ腰でなく、積極的な態度で一つ政府の方針をむしろはっきりとこの際お示し願いたい。
  183. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これはGNP、国民総生産の一%でございます。しかもそれは一つ一つの国でなくて、全体を集めた上での一%をどう配分するか、こういう考えのようでございます。しかしその一%をきめるということについて、各国からそれぞれいろいろな意見が出まして、今お話のように先へ持ち越されたといいますか、再検討するというか、そういうふうになっておると承知いたしております。でわれわれとしましては、わが国の持つ特殊構造、いわゆる経済の二重構造、また農業従事者が全体の所得で三八%もあるというような、こういう日本経済の特殊な状況、また賠償を払っておる、また今後それを払っていかなければならない、こういうような状況もあわせてわれわれは積極的に寄与するが、しかしわれわれとしてできる範囲の寄与はこういう方針だという方針を打ち立てて、この会議に有効な寄与をいたしたいと考えておる次第でございます。
  184. 曾禰益

    曾祢益君 これはおそらく経済企画庁長官からお答え願うのが筋かと思うのですが、そこで三十五年の国民総生産それから国民所得、これは大体数字があると思うのですが、そこでもう一つは、わが方の対外援助というものをどれにとって見るかということは非常に問題だと思います。大体対外援助をどのくらいと見ているか、賠償は幾ら、借款その他、つまりどのくらいの割合になっているかということを見たいゆえに伺っているわけです。
  185. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) これは外務省からお答えした方があるいは適当じゃないかと思いますが、私も資料を持っておりますから申し上げます。一九五六年から五九年の四カ年間に約七億四百万ドルでございまして、邦貨にいたしますと約二千五百三十四億円、一年平均六百三十三億円でございます。内容は賠償、延べ払い輸出、民間投資でございまして、政府関係の贈与及び賠償支払いは三億七千九百万ドル、政府機関の貸付積権等が二億百万ドル、民間関係の延べ払い等が一億二千四百万ドル、合計七億四百万ドルということになっております。
  186. 曾禰益

    曾祢益君 大体そういうふうにいたしますると、かりに三十五年度の国民総生産を十四兆として見ると、この一%で千四百二十三億、ところがわが国の対外援助として今認められているようなところからいくと、七百億に足りない、二億ドルに足りない、だからその五割増し、あるいは倍というものを一応向こうが想定している、こういう格好になると思いますが、大体そんな割合であるかどうか、これは外務大臣からでも伺いたい。
  187. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 大体七、八百億円というものは、日本がすでに毎年支払っておるということは認識されておりまするし、かりにそういう問題考える場合、それを除いて払う、こういうことは各国に了解を得ております。
  188. 曾禰益

    曾祢益君 そこでこれも経済企画庁長官に伺いたいんですが、大体低開発地域開発といいますか、これとの協力において、一体どのくらいの外部からの援助というものがないと、後進国と先進国との間の生活水準の違いがますます広がっていく、あるいは後進国の開発幾らやっても、食糧の方が間に合わないか、こういうような状態を直すのにはどのくらい対外援助、ドルとして要するというふうにお考えであるか。
  189. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) これも外相の方が専門じゃないかと思うのでありますが、どのくらい低開発国の生活水準と、先進国の生活水準との較差を埋めるために、毎年どのくらいの資金が必要かということは、人によって意見が異なっているようでありますが、各国の援助関係専門家の人たちの一致した意見といいますか、大体一致したところによりますと、低開発国の一人当たりの所得水準を年に二%引き上げるためには、先進諸国及び国連等の国際機関が、現在行なっている援助を年約三十億ドル程度増加する必要があるというのが、一般意見のようでございます。
  190. 曾禰益

    曾祢益君 外務大臣に伺いますが、今、国連関係で開発援助をやっている機構がございますが、その問題について実情と、どういう機構とがあって、日本はどうそれに寄与しているかに対して御説明願います。
  191. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国連局長から御答弁申し上げます。
  192. 鶴岡千仭

    政府委員(鶴岡千仭君) お答え申し上げます。国連関係の技術援助には大体三つございます。一つはレギュラーの技術援助、それを拡大いたしました拡大技術援助計画、それからこれを若干趣を異にいたしますものに特別基金、スペシャル・ファンド、こう申すものがあります。この構想の差は、前二者は、たとえばフェロー、技術を修得させる人間を先進国へ派遣する、そうしてこれに必要な技術を与える、あるいはまた逆に先進国の方から適当な技術者を派遣して、後進国の方の実情に合った意見を与える、こういう、人間を主にいたしまして、しかも短期間に行なうものと、それから二年ばかり前から始まりましたのが特別基金でございまして、こちらの方は、むしろブリインベストメンティング・インベスティゲーション、つまり資本を投下する前にそれに必要ないろいろな調査を行なう、しかもその計画はかなり長い間かかって、お金もたくさんかかるものである、物に重きを置きましたものでございます。規模から申しますというと、特別基金の方は、大体年一億ドルぐらいのところという目標でございましたけれども、最初の二年間は、初めが五千万ドル程度、それから第二年目が七千万程度、今度は一億五千万を目標にしておりますが、これがどこまで参りますか、おそらくは一億ぐらいになればよろしいかという程度でございまして、前の二者は合わせましてこれよりも小さい、こういう実情でございます、両者を合わせて考えますれば、その計画は無数にあるわけであります。ことに前の二者は一々申し上げるわけに参りませんのですが、あとの方は、大体今までの計画では、四十ぐらいの計画がありまして、そのうちの非常に大きな部分がアジアに行なわれておるのでございます。
  193. 曾禰益

    曾祢益君 私の知っている限りにおきましては、国連でせっかく後進国に国連経済開発特別基金、サンフェドという計画があったけれども、米ソの冷戦の争いで、これが実行に移されない。一方においては、今御指摘のような、後進国の主として技術援助拡大計画、これに対する国連の特別資金がありまして、これは非常にいい仕事をしているけれども、それで足りない。そこで、国際開発のアソシエーションというようなものを作って、そこでやはり資金的の援助をやろうということをやっているのだけれども、いろいろな欠点があって、たとえばIDAというものにはソ連は入っていない。また、大体資本が最初の五年間が十億ドルにしかすぎない。それから投票の手続が、世界銀行と同じように、応募資本に比例した投票である。つまり、開発を受ける方には発言権がない等々、あるいは、これは譲渡は全然考えない、全部借款だけである、こういうような欠点があって、これでは足りない。そういうところに悩みがある。そこで、私は総理に伺いたいのは、一つは、この国民総生産の一%という数字は、これは決してアメリカだけが言いだした問題ではない。たとえば、一九五七年の社会主義インターナショナルの大会でも、先進国が後進国援助のために一%ぐらいは軍備を割いてでもやるべきだということを決議しておるわけです。ですから、必ずしもアメリカが言いだしたからいかぬというようなけちな考えではなくて、一%くらいは西欧先進国もあるいはソ連も当然出すべきだというくらいな積極的な気がまえを持つべきではないか、そういう点。しからば、日本の場合に、これが今の日本から見て、先ほど指摘したように、日本の現在の対外援助の負担と、それから他の国民に対する予算の分け前からいって、たとえばあのような低い日本社会保障の現状から見ると、日本がいきなりDAGの一%を出すということは、これは実際上無理がある、こういうことになってくる。従って、その一%を日本の場合にはどう考えるか。  第三は、援助の方法です。その西欧陣営の中に加わったDAGグループの中に日本が入ってやる方式、これで東西の冷戦の、いわゆる道具としての後進国援助という形で日本が加わるのは、少なくとも原則上おもしろくないのじゃないか。われわれ日本としては、援助の方式としては、今まだ国際連合にそういうあれはないけれども、たとえばサンフェドというような機関を作ることによって、ソ連もアメリカも自分の国の冷戦の道具として海外援助をやるのでなくって、国連にプールすることによって、真にこの後進国の生活水準の引き上げは、文明社会の良心の問題であるという実を示すべきである。その援助の方向について、どういうお考えになるか、国連を通ずる方式についてどう考えるか、総理からお答え願いたい。
  194. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) GNPの一%と申しますると、これはアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本、イタリアだけでも、私は年に八十億ドルになると思います。ケネディ大統領は、私の記憶に間違いがないとすれば、五年間に八十億ドルと言っております。一年間に八十億ドル、六、七カ国、これは大へんなことであると考えます。従いまして、日本は賠償その他のことがあるから一%はとてもいかぬという気持は持っている。経済援助は今までの延べ払い、あるいは賠償と民間の投資等を考えますと、これは一%で四億数千万ドル、日本の経済がうんと伸びていくならば、これは一%もふえて参りますけれども、私はあとう限りにおいて、日本の工業の発展のはけ場として十分考えていきたい。今金額どれだけということはなかなか申し上げかねます。全体の計画が年に八十億ドルというのはいかがなものかと私は考えているのであります。  それから第二段の問題は、今DAGの問題がございましたが、DAGというのは、当初は情報交換というぐらいのつもりで例のいわゆるOEEC、これがそういう援助を計画しておった。われわれが当初DAGに入るぐらいならOEECに入れたらどうかということを、私も要求したこともあるのであります。しかし、それは通らぬうちにOEECがOECDになり、つまりDAGという初めの計画とは違ってきて、今度はそれが積極的に海外援助、低開発国援助と、こういうふうになってきたのであります。余談になりましたが、日本としては、私は国際連合でそういうことをやることは最も望ましい、しかし、現状はそれではいかぬ、しからば、やはり自由国家群の一員として、私は積極的に入っていくのが当座の場合としては適当な方法と考えます。
  195. 曾禰益

    曾祢益君 この問題については、ただ、自由陣営の一員としてというのではなくて、もっと国連を通じて、これはソ連も入ってもらわなければいけませんから、ソ連が国連の機関に入るのを反対しておりますけれども、そういうものにも説得して、そうして米ソの争いでない形で国連を通じてやるということが原則である。しかし、そうでなくても、いきなりDAGでやると、西欧陣営だけでやるというのではなくて、国連を通ずる機構を改善するというような、たとえばさっき申しましたIDAというようなものを改組していく、サンフェドを作るというような方向に努力をしていただきたいと思うが、その点についてはさらにもう一ぺん伺いたいと思います。
  196. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお答えしたように、それが一番望ましいことでございます。現状はそうはいかない。で、国連でやるというので、それを待っておってもいたし方がないから、自由国家群として、まずできるところからやっていく。
  197. 曾禰益

    曾祢益君 次にやはりケネディ大統領の三月二十八日の国防予算特別教書において、アメリカの国防の新構想というものが現われたと思うわけでございます。一々内容を申し上げる必要ももちろんないんでありまするが、少なくとも核兵器のいわゆるギャップをうずめると申しますか、核兵器による攻撃に対しては、やはり十分の備えをするという点もございますけれども、主として非核兵器以外の通常兵力と申しますか、そういうもの、あるいは陸軍、そういうようなものに対して非常な重点を移している。もちろん、器でもいろいろ新しいミサイルに対する処置はございまするが、そういったような新戦略、この新戦略というものは、やはり世界の政治あるいはわが国に対する政治、軍事いろいろな点から非常に重大なる影響がある。従って、新しいアメリカの戦略構想を一体総理大臣はどう見るか。日本の見地からどう見るか。これは特に総理大臣は、かつての池田・ロバートソン会談以来、防衛問題については、これは特別に識見をお持ちだと思いますので、どういう所感をお持ちであるかを明らかにされたい。
  198. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はアメリカの国防軍事政策につきまして、日本総理大臣として意見を申し述べるだけの、まだ材料と勉強はいたしておりませんので、差し控えたいと思います。
  199. 曾禰益

    曾祢益君 そういうことを伺っているのじゃございません。アメリカの戦略が日本に与える影響について、日本総理ともあろう者が一つの大まかな考え方がおありでないはずはない。これは、そういうふうな逃げ口上じゃなくて、それではまず、せっかくお待ちですから、西村防衛長官に専門的な知識を伺いたい。
  200. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) お答えいたします。あまり専門でもありませんが、ただ最近出ましたケネディの教書あるいは就任以来の国防に関するケネディの態度等を通しまして、わが国の防衛あるいは極東の戦略に影響があるか、この点について簡単に申し上げます。それでケネディ大統領の最近出しました国防教書の中で、六億五千万ドルの追加要求を出しております。その中心は、一つはミサイルギャップを埋めると申しますか、ポラリス潜水艦移動基地によるミサイル、これにアメリカの局地戦、国内並びに海外基地を中心にした局地戦にかなり重点を置いている。これは御存じの通りであります。従いまして、私どもとしては、同盟諸国に対しましても非常に機動的な動きをしたいと、こういうふうに教書に言っております。その観点から申しますと、極東情勢を中心に考えて参りますというと、ケネディの国防に対する新しい態度というものは、わが日本に対する防衛寄与は、それほどの正大な、従来の方針と変化は私はないと、こういうふうに考えております。
  201. 曾禰益

    曾祢益君 私の考えでは、新国防政策の主眼とするものは、一つは軍縮に対する熱意、これは軍縮に持っていくということが目的であるということが一点、第二は大量報復方式、いわゆる瀬戸ぎわ方薬、同時にいわゆる制限核戦争論もこれで否定された、こう思う。第三は原水爆によらざる軍備による局地戦の可能性がある。これに備える。第四は、従って、かかる戦略、それからポラリス、ミニットマンに対する実質的な増加もいろいろな点で海外基地依存から漸次脱却していくということが一つの特徴になると思う。これは言うまでもなく、アメリカ国防長官の三十一日の発表によっても、アメリカの海外、主として空軍基地二十一を廃する一つのはしりだと思う。そういうふうに僕は把握しているのですが、一体、総理大臣はどうお考えでございますか。
  202. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお答えしたように、私はこの問題についてはあまり研究いたしておりませんので、西村長官からお答えいたします。
  203. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私どもに伝えられておりますところでは、基地の問題、これは一つのそういうお考え方が出るかと思いますが、しかし私どもはそう考えておらないのでありまして、現在六千七百のアメリカは内外に基地を持っております、国内、国外に。そして二千二百ぐらいが海外基地であります。その中にもちろん日本の基地も入っておる。その中で今般教職に表われておるのは、国内の約五千近くの基地の中で五十二を整理した、で、海外で二十一を整理したと発表いたしておりまするが、しかしその二十一につきましては、八カ国。しかしそれに対しましては、われわれの方に、駐留している米軍は何らまだ話が現在出ておらないのでございます。それから基本論といたしましては、基地がむしろ縮小して、海上のポラリス等へいくのではないか、こういうようにお考えのようでありますが、ポラリスの潜水艦の能力というものは、むしろ抑制力、言いかえれば、大きな抑制力の一翼として考えるのでありまして、局地戦に備うべきものは、やはり同盟与国に基地を持って、その基地を中心に、その国民と一緒になって防衛をするのだ、こういう考え方のもとに考えられております。従いまして、海外に対する基地は二千と、そういうように考えますと、それのわずか一割が今発表になったとしましても、日本にあります陸海空のアメリカ三軍の基地が直ちにこれによって影響をされるということは、私どもといたしましては、とうてい考えられないのであります。まあ私どもといたしましては、日本の国防を直接担当している者といたしましても、現在そういうような日米間の安全保障体制のもとに基地を縮小していくべきだと私は考えておらないのであります。他の事情による、国内的ないろいろの事情において、個々の基地の返還問題はございますけれども、基本的には日本の今の駐留軍に対する基地を縮小させる、また向こうもしてくるというふうには私どもは考えておりません。
  204. 曾禰益

    曾祢益君 防衛庁長官の今のお話にも異論があるのですが、その前に総理に、しからば、こういう形で伺ったらいいのじゃないかと思います。一体この新戦略の核兵器を日本に持ち込んだり、あるいは日本が核武装するというようなことは、もちろんすべきでもないのでありますが、そういう必要がなくなるという一つの方向を示しているのじゃないか。第二の点は、ただいまの防衛庁長官のお話ではありまするけれども、私はやはりそうではなくて、通常兵器にたよるということは、何も陸軍の基地なんかというものをふやすわけじゃないのですから、そのことはむしろアメリカがやはり日本の防衛に対して、日本のいわゆる通常兵力による防衛を期待するけれども、アメリカの空軍基地というものについては、長い目で見れば戦略、——ICBMやなんかのポラリスの関係で要らなくなるという方向が正しいのではないか、少なくとも日米間の防衛上の協力についても、アメリカの常時駐留、日本における、ことに極東に出撃するような常時駐留というものの方式はだんだん必要性を失っていくというふうに考えることが正しいのではないか、こう思うのですが、首相並びに防衛庁長官のこの二点についてのお答えを願いたい。
  205. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 核兵器の持ち込みにつきましては、われわれは従来からこれは行なわない、こういうことにはっきりいたしておるのであります。アメリカの防衛その他の政策によりまして、私はこう変わるのじゃないか、ああ変わるのじゃないかということは、先ほど来申し上げておるように、あまり知識もございませんし、また向こうの防衛計画がどう変わるか、日本に関する限りにおいては私は関心を持ちますけれども、そうして日本に関する限りは、今、四村長官が答えたと私は同じような気持を持っておるのであります。
  206. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) ただいまの基地の、先ほどの御説明の中で、海外は二千、それに対しまして二十一の基地の縮小、もちろん将来起こるかもしれない、これは一割と申しましたが、一%、こういう意味であります。それからもう一つは、常時駐留でなく有事駐留でいいのではないかというお話でありますが、私どもはやはり常時駐留は一つの抑制力として考えるべきものである、有事駐留は抑制力としては効力が薄い、こういう点からして、われわれは現在の一応必要なる基地というものを考えなければならぬ。と同時に、日本にあります在日米陸軍というものはわずかに五千名で、補給でありまして、主としてその基地は海空であります。
  207. 曾禰益

    曾祢益君 ですから、先ほど、在米通常兵器というようなものに重点が移っていけば、海外基地の方はウエートが薄くなるのは当然のことなんです。しかも二千なんかというと、大きな空軍基地が二千あるかのごとく、こけおどしの数字を出しておられるが、それは正しくないと思う。しかしこれは意見の相違ですから、そういうアメリカの新戦略に対する認識では、はなはだ私は困ると思いまするが、次に移ります。
  208. 森元治郎

    ○森元治郎君 関連。曾祢委員の御質問に対して総理と防衛庁長官から御答弁がありました。ことに防衛庁長官は、ポラリスは抑制力であるとか、大へん戦略戦術に通じておられるような御答弁でありますが、これに関連して、自衛隊法によれば、防衛庁長官は、防衛出動の場合、間接直接侵略の場合には指揮官になられるわけであります。最高指揮官は総理大臣であるようでありまするが、指揮官の心得、まあリーダーシップというのですか、指揮官の必得、どういうふうな心得を持っておられるか。生きている人間を使うのですから、これはよほどしっかりしたお考えがなければならぬと思うが、総理と防衛庁長官の指揮官としての心得を伺いたい。
  209. 館哲二

    委員長館哲二君) 防衛庁長官。
  210. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) これは大半な問題でございまして、自衛隊法に基づきまして私は自衛隊の統括者という表現になっております。それから有事の出動の場合における最高指導官はもちろん総理でございます。しかし、もちろんこの出動に対しましては、シビル・コントロールとしての国会の承認なり、牛後承認なりという問題があるわけであります。そのもとにおきまして、総理の指揮を受けまして私が動くわけであります。ただ、私といたしましては、自衛隊というものは、訓練規律は厳粛にいたすべきでありますけれども、動かないという情勢をできるだけ作り上げる、あらゆる政治の面から自衛隊が出動しないという情勢を作り上げる。ただ、最悪の場合におきましては、自衛隊法に命ぜられましたる任務をまっしぐらに遂行する以外にないのでございます。ただそういう事態を望まないわけであります。平素はしかし規律訓練だけはやっていくつもりであります。
  211. 森元治郎

    ○森元治郎君 まっしぐらに邁進するその心得は何かと聞いている。
  212. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) ちょっとその意味がわからないのでございますが。
  213. 森元治郎

    ○森元治郎君 要するに、防衛出動でも、あるいは治安出動でも、これは人の命にも万が一の場合にはかかるわけであります。人を死に飛び込ませる指揮官はあなたである。あなたが上手にやるか、下手にやるかによっては全滅を喫することもあるだろうし、みんな死んでしまうときもある。そのときに、あなたは指揮官として、さっきは統括者とかおっしゃいましたが、それは言葉の遊戯であって、それは指揮をせられるのはあなたであります。総理は最高指揮官とおっしゃったが。その人を死地に飛び込ませる、その指揮官の心得は何かと伺っているのであります。
  214. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) もちろん統括の意味は、そのもとにおきましては、統合幕僚会議議長なり、三幕僚長もおります。しかしながら、統括者としての責任、それは私にございます。従いまして、私どもとして、その際に心がまえとして、平素からそうした場合に対して、おのずから、すべての自衛隊というものをいたずらに出動させないような政治情勢を作りながらも、しかしながら、規律、訓練を厳重にやっていく、そうして、その最悪の場合におきましては、最も国民のお役に立つように、私どもが統括者としての心がまえを持っていくべきだ、こう考えております。
  215. 森元治郎

    ○森元治郎君 御答弁がないようでありますから、尽きませんが、どうか、これは大へんなことなんでありますから、ここで、最高指揮官の総理大臣から、ちょっと御心境のほどを承りたいのですが、その心がまえ、やはりしっかりしてもらわなければならないから、責任が重大だということを申し上げれば私は十分だと思います。
  216. 曾禰益

    曾祢益君 見解の相違ですが、安保条約や、沖繩に対する影響については、この後に、総理のアメリカ訪問に関連する質問の際に、さらに伺いたいと思います。  そこで、総理のアメリカ訪問に関連いたしまして伺うのですが、第一に、私は参議院の本会議におきまする代表質問の際にも申し上げたのですが、ことしは、やはり東西の話し合い再開の期待が持たれる年であるといわれているが、それはその通りだと思う。だが、同時にその話し合いがうまくいって、核爆発実験中止協定ができる、あるいはそれに端を発して、軍縮への少なくとも第一歩までこぎつけるかどうか、これがうまくいくかどうかという、ある意味ではせとぎわであります。つまり、一方における緊張緩和への期待があるとともに、この機をのがすと、あるいは非常に情勢が暗くなるという一つの緊迫感がそこにある。特に、その理由の一つの大きなものは、核兵器を持つ国、これがだんだんふえている。フランスから中国というふうに、ここ両三年中には、なる形勢がある。この意味では、東西緊張緩和の期待とともに、非常な緊迫感を持って、この機に乗じてうまくやらないと非常にえらいことになりはせぬかと思うのですが、どうも総理の演説は、非常に美辞麗句は並べてあるけれども、ただ緊張緩和の期待が述べられているだけで、ほんとうの緊迫感を持って、今申し上げたような認識と緊迫感を持って、積極的に外交を進めるところがないのではないか。特に今六月の渡米を前にして、この点の認識と、基本的な心がまえについて、どうも本会議の際には通り一ぺんの御返事で非常に残念です。この際、明らかにされたい。
  217. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 何人も東西の緊迫が緩和されることを望んで努力いたしておるのであります。私は、本年中にできなかったら、もうこれは大へんだとは考えておりません。やはり根気よく続けていかなければならぬと思っております。なお、最近の情勢では、この秋、軍縮会議等も行なわれるやに承っておるのでございます。われわれは微力ではございますが、国連の一員といたしまして、その方向に極力努力していきたいと考えております。
  218. 曾禰益

    曾祢益君 やや具体的になりますが、そういうことしの展望の中で、軍縮、核兵器の観点からいたしましても、どうしても中共問題というものが、ことしの一つの大きな課題になってくる。これはことしの第一級の国際問題だと思う。率直に言って、中国の核武装ということがもしあるならば、日米安保条約、その存在の価値がありとしても、非常な問題がそこに新たに起こってきて、その価値がくつがえされるというふうに見る人もある。こうなって参りますると、軍縮、あるいはこういう観点で、中共を国際社会に復帰させる——むしろ国際社会からシャット・アウトして、ボイコットしていることは間違いである、中共を国際社会に復帰させるということについて、もっと日本が積極的な関心を持つ、これは単なる抽象論や日中関係の打開、日中貿易という観点以外に、もっと切実な日本の平和、安全への問題でもあり、世界の緊張緩和への問題として積極的にとらえるべきではないか、この点の基本的な認識を総理に伺いたい。
  219. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中共の問題につきましては、私はいろいろ今考えておるのでございますが、何分にもこの問題、世界的な問題でございまして、日本の方が最も関係が深いといっても、日本だけでできることではない。だから、世界の情勢を見ながら、各国とともに、また、できるならば各国の意向を聞いて、日本が先走るということはございませんけれども、この問題につきましては、情勢の変化を見ながら私は善処していきたいと思っております。
  220. 曾禰益

    曾祢益君 そういう通り一ぺんなあれでなくて、これは私が本会議でもはっきり申し上げ、ここでも申し上げますが、何も中国問題全体を日本だけで解決しろ、そんなことを言っているのではない。そういう問題ではない。国際問題の第一級の国際問題、国際的な解決を要求するのが中国問題だと思う。しかし、そうだからといって、日本中国問題についてもっと積極的な関心を払い、その打開について日本がもっとイニシアをとるべきだということは完全に両立をすることなんである。その点を言っているのですが、進みます。  そこで、この中国国連加盟問題も、そういう背景のもとに、いよいよ九月の総会ではどうしても問題になると思うのですが、これに開運して特に技術的の問題もありますから、外務大臣からお答え願いたいのですが、今までアメリカがしばしば出して、そうして通ってきたような動議、つまり中国問題、中共の資格の問題、台湾の資格の問題をたな上げにするという動議がことし出るのか出ないのか、それが通るのか通らないのか、この点はどういうふうに手続上考えられるか。また、中共加盟問題という実体的な問題の採決は動議の場合と意味が違ってくると思いますが、どういう手続が予想せられるか。従って、中国加盟問題等についてどういう国連総会を予想されておるかについて、一つ手続論からも解明ありたい。
  221. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この秋の総会におけるいわゆる中共問題について、現在から、いろいろ今この場で憶測いたしますことは差し控えたいと存じますが、従来出ておりますモラトリアムというものは、結局、単純多数でこれが可決されるというところに一つの意味があったのだろうと思います。しかし、そういう点については、従来からのだんだんの年ごとの変化というようなものも頭に入れながら、これをどう扱うかということは非常に大きな国際的な背景を持った考慮がなされなければならぬと思うのであります。これを実質的な論議に持って参りますれば、これは単純多数ではいかなくなるわけでございますが、そういう問題を含めて十分に検討して参りたいと思います。
  222. 曾禰益

    曾祢益君 外務大臣並びに総理は、ことしの秋の総会において、中国問題をたな上げにするということが可能なのか、そうお考えなのか、それとも議題になることはもう大体必至と見ておられるか、この点を総理並びに外相から伺いたいと思います。
  223. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この問題については、これは九月には、たな上げ案は一年の効力でございまするから、この秋の総会において再びこのたな上げ案を出すことにするのか、あるいはそれが出た場合どうなるのか、あるいはそれが出ない場合にはどういう案を出していくように各国が考えているか。これは東西両方の考え方を十分に考慮して、その間に処して誤りない日本の進み方というものをきめたいと思います。
  224. 曾禰益

    曾祢益君 そういうことでは困るのでありまして、大体の見通しをお持ちになっておると思う。すなわち、ことしはもはやアメリカの今までのようなたな上げ動議は、かりに出しても敗れるおそれが非常に多い。おそらく常識的に言って、敗れることを承知で出すことはない。従って何らかの形で他の中共問題を取り上げるべしという動議が成立する可能性がある。その場合に、単に棄権すればいいだろうというような、いわゆるあなたまかせの態度ではこれは非常に残念なことになると思う。ですから私は、むしろ日本政府としては、中国問題は先ほど申し上げたような観点からいっても、国連総会において中国代表権問題を取り上げるベしという積極的な態度をとるべきだ、取り上げるべしという態度をとる以上は、それに対して日本の方針がなければならぬ、当然のことです。従って、それについてはわれわれの考えからいうならば、中国代表権は、やはり長い目で見てこれは北京政府の方に代表権があるべきではないか。こういう基本的な構想のもとに大陸中国代表者としてはもちろんである、しかし、そういう構想を持って、しからば台湾の問題をどうするかという、こういう二段がまえ、基本的方向としては中共を中国という一つの民族国家の代表として認める。ただし、しからば台湾問題をどうするかということについて、これは国連の中で平和的な解決をする、そういったような態度をもって積極的に日本が態度をきめておかないと、またたな上げ案が出たら今度は工合が悪い、賛成投票もできないから、棄権しようか何かということでは、みごとに私は恥をかくのではないか、かように考えますが、もう少し外務大臣のそれらに対する見通しをお述べ願いたい。
  225. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私どもは決して大勢順応とか、案がないということを申し上げておるつもりはない。私どもは私どもとして十分に案を持って臨みたいと思っております。ただ、その案が何であるかということを現在申し上げる段階にない、こう申し上げておるのであります。この中国の問題、いわゆる中共問題は代表権の問題として扱う方がいいか、他の別の問題として扱う方がいいかということも含めて考えております。要するに、要は中共を国連に入れることがどういう形においてそれを考えるのがふさわしいかという問題でありますが、根本的な問題として、ただ国連に入ればいいのだということではないと思うのです。そのことによって世界の平和が確保され、しかも日本の安全に寄与する、日本の国民の利益と安全に合致するということを考えるためにはどうすればいいか、この複雑な背景を持った問題について、これは軽々に単純に、ただ中共問題、それは国連に入れることだ、これだけにとどまらず、その入れたことによって生ずる効果、そういうことを世界の全体の利益と安全のため、日本の利益と安全のためということを十分考慮して結論を出したいと思っておるのであります。
  226. 曾禰益

    曾祢益君 私は見通しから伺ったのですが、非常に実質的な議論に入って私はけっこうだと思います。今直ちにここに全貌を示すことは無理な点もあると思いますが、非常に含蓄があって、単に代表権の問題でない、それはどういう意味ですか、いずれにしてもこの問題について非常に深遠なる考慮をめぐらされたように思うので、しからば単なる代表権の問題ではないというのはどういう意味なんですか、これを明らかにしていただきたい。
  227. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ここで実質論に入ることは私は避けた方が賢明かと思いますが、賢明なる曾祢さんには何の意味かおわかりと思います。
  228. 曾禰益

    曾祢益君 これはほんとうに言葉のあやじゃなくて、私わからないのですが、代表権以外の問題としてというのはどういう意味なんですか、ほんとうにわからないんですがね。
  229. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 代表権の問題として考える場合もございますし、加盟の問題として考える場合もございます。
  230. 曾禰益

    曾祢益君 どうも伺っていると、きわめてデリケートなことはわかりまするけれども、見通しにおいてもきわめて不明確であるし、あいまいだ、甘いのではないかと思うのです。内容についてはおっしゃらない。しかし、総理国連総会を迎える前に、ケネディとの会談の際に、少なくとも向こうが、日本総理は一体中国問題をどう考えているか、決してアメリカのオウム返しを向こうは要求していない、期待していない、むしろりっぱな一つ日本国民の見解、見識を求めておると思う。従って、そういう場合の基本的な中国問題に対する考え方、認識について、はたして池田総理は、もちろん党内の実力者との会談もございましょう。いろいろの段階はあると思いますが、確固たる一つの見識と方針を持って臨まれるお考えであるかどうか、それともアメリカの意見を聞いてから、一つおもむろにきめようというようなことであるのか。そうでないと思うのですが、そこら辺の心がまえを明らかにされたいと思います。
  231. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は自主的に外交をやっていくつもりでございまするから、自分考えは持ってケネディとも会いますし、また、秋にイギリス首相がくれば、それにも私の所信で話をいたします。ただ、今お話のありましたように、中共をどうするかという問題で起こり得るいろんなことにつきまして十分検討を加えておかぬと、ただ単に中共を入れてしまえばいいのではないか、こういう議論ではなかなか私はむずかしいと思う。そこで、いろんな場合を考えまして今検討を加えておるのであります。また、これが結論が出ましても、私はこれを発表するということはなかなかむずかしいのじゃないかと思っております。
  232. 曾禰益

    曾祢益君 だれもただ中共を国連に入れてしまえばいい、それ自身が目的であるなんて言っていない。それは私が申し上げてるいように、中共をシャットアウトしていることは世界平和のためにプラスでない、建設的な方法でない、だからこれを国連に入れる方向へやるべきだ、その場合には台湾はどうする小、こういう問題を考えていくのは、これは当然であるけれども、そういうことを申し上げたわけであります。  そこで、総理が二十九日、衆議院外務委員会における黒田氏に対する答弁で、この中国の問題についてカイロ宣言の解釈についておっしゃいましたことをもう一ぺんここでリピートしたいのですが、これはどういう意味でございますか、台湾は中国の一部である、こういうふうに言われたのですか、その点をもう一度はっきりしていただきたい。
  233. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御承知通り日本はサンフランシスコ講和条約によりまして、台湾、澎湖島を放棄いたしました。だから、どこに帰属するということを日本がとやこう言うべきじゃございません。しかし、一方におきまして中華民国と戦い、そうしてカイロ宣言には、中華民国に台湾、澎湖島を返すとなっております。そうして、その中華民国に台湾を返すというカイロ宣言はポツダム宣言で受け継いでおるのであります。われわれはこれを無条件で受諾いたしましたから、一方においては放棄いたしましたが、他方においては中華民国に帰属するというカイロ宣言を受け継ぐと、台湾というものは中国の一部と心得ることに相なるのであります。
  234. 曾禰益

    曾祢益君 最後のところが少しあやしくなった。日本は台湾、澎湖島を平和条約で放棄した。これはもう明白ですね。しかしその裏として、裏といいますか、条約にはなっていないが、カイロ宣言で台湾及び澎湖島は中華民国に返還帰属するべしと、こうなっておる。従って、これは日本のものではない。それは中華民国のものである。中華民国を通称中国といった。一つの民族国家として中国という名前でいった。政府という形でなくてですね。こういう意味なんですか。
  235. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その通りでございます。
  236. 館哲二

    委員長館哲二君) 曾祢君、持ち時間がきておりますから。
  237. 曾禰益

    曾祢益君 なるべく早くします。  この国連福島代表発言についても、私は外務大臣からはっきり一つ伺いたいのですが、今度の発言は、この間の松平代表の失言と違って、いささかまあ外務省的な考えを、観測気球として意識的に——これは福島代表みずからの責任ではあろうと思いますけれども、まさか私は外務省となれ合いだというような変なことは申しません。意識的に観測気球で出したのではないですか、これは。
  238. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そうじゃありません。
  239. 曾禰益

    曾祢益君 松平代表のときにはびっくりせられたけれども、福島代表のときには存外わが意を得たりじゃないですか。
  240. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 福島君は二つ中国ということを言わないと申しておりました。調べてみた結果、さようでございます。福島君の言うたのは、やはりこの問題は非常に国際的に複雑な背景を持っておる問題だから、世界全体の平和の問題として非常に慎重に考えなければならぬ、こういうことを言ったのが趣旨であるということでございます。
  241. 曾禰益

    曾祢益君 福島君はそういう点は非常にエキスパートですから、新聞をして書かしたのでしょうから、これ以上私は追及しませんが、政府発言としては、私は非常にああいうことをめったに言うべきじゃない、腹は何を考えておるかは別として、非常に慎重なる私は発言を要求します。  さて、私の申し上げたいのは……。
  242. 館哲二

    委員長館哲二君) 時間がきておりますから……。
  243. 曾禰益

    曾祢益君 集約いたします。私は中国問題について、総理がケネディに会われるときには、先ほどの一般的な心がまえは言われましたが、私の方から、国民の立場から要求するならば、アメリカの中国政策の転換のきっかけを作るような一つの進言をしていただきたい。これは決してアメリカの方にペースを合わせるのじゃなくして、アメリカも中国問題の今までの行き方ではいけない、今すぐにはなかなかカーブが切れない。そこには一つ中国一つの台湾というような考えはあるでしょうが、そこにすらまだ踏み切れない、こういう状態だと思うので、ぜひこのケネディ会談においては、総理みずからが、日本立場からアメリカが政策転換ができやすいように積極的に遠慮なしにどんどん一つ言ってもらいたい、かように思います。  そこで最後に、日米関係について二点だけ伺います。
  244. 館哲二

    委員長館哲二君) なるべく簡単に願います。三分超過しております。
  245. 曾禰益

    曾祢益君 これで終わります。(「三分超過」と呼ぶ者あり)あと二問だけやりますから静かにして下さい。  そこで、日米関係について、やはりどうしてもこれはケネディとの会談において触れられると思うのです。私は先ほどアメリカの新しい戦略方式の転換ということを申し上げました。そこで私は基本的な考えとしては、日本とアメリカとの関係は軍半関係が中心であってはいけないのじゃないか。軍事関係は、国際情勢の転換もございましょうし、緩和もございましょうし、逐次これは薄めて、そうしてこれが政治経済という関係になり、またそれが単に政府だけが仲よしというのではなくて、ほんとうに国民的な広い基盤に立った関係に移っていく、こういうことがやはり永続的な日米関係の基礎だ、そういう意味で安保条約というものを、新しい安保条約でございますが、これを確定不動のものというふうな考え方でいくのは、これは私は間違っている。もとより自民党の立場から言えば、アメリカとのいわゆる防衛協力というのは必要なんである、こういう考えでありましょうが、少なくともあのでき上がった、しかもああいう状況においてでき上がった条約が、期限内確定不動のものだというような考え方は、すでに先ほど申し上げたアメリカの新大統領の対外経済政策、あるいは防衛政策の変換だけから見ても、これはことしに予想される国際情勢の緩和ということを大きくまだ考慮に入れなくても、もう変換の要素というものは、条件というものはできているのじゃないか。かように考える。特に一例でありまするが、たとえば岸・アイク共同コミュニケにおいて、新条約第六条のいわゆる付属交換公文の海外出動の際に、日本政府の、結局、意向を尊重するという趣旨の共同コミュニケは、これは単なる形式論から言えば、これはもちろん条約ではない。しかもどちらも当事者が責任者じゃない。そういうことから言えば、この一つのいわゆる事前協議における日本政府の意向を尊重するということ、それだけすらこれは今何もないというような状態になっておる。こういうものを一つ考えてみても、たとえばこの条約の期限の問題、期限内のいわゆる改定ということ、期限内の改定というような問題についても、これは私は国民的な立場からケネディ大統領と隔意なく一つ話をしていただきたいと思うのですが、この点を伺い、第二に沖繩の問題についても、平和条約の規定した、予定した事項はできないのですから、施政権返還を当然に直ちにやるべきであるけれども、しかし、それについても国際情勢待ちというような事情もあろうが、それならば日本の潜在主権を明らかにするような意味において、たとえば沖繩におけるこの公共の建物の上に日本の国旗を立てる。こういう自由を与える。あるいは日本の国会において、これは西ドイツにも例がございますが、いまだ返らざる沖繩の議席を衆議院にも、参議院にも置いて、その潜在主権のシンボルとして置いておく。こういうような潜在主権のあることを明確にする方法、さらには軍政下において植民地的な制度のもとに置かれておる沖繩の問題を一つ一つ解決する意味において、たとえば労働組合を、これは許可制になっているのを届出制にするとか、あるいは沖繩の主席を民選制にして差しつかえないのじゃないか。直接民選制にするということぐらいは、ぜひこのケネディ会談の際にでも、そういうことを十分に一つやっていただく。最後に、それらの中共問題、沖繩問題、いろいろ日米安保条約等もございましょうが、これは当委員会の席上、羽生委員質問にも答えられておりまするが、先般の池田・西尾会談のときにも話になっておりまするように、われわれのこの公開席上以外のやはり野党の党首と総理とのひざを突き交えたような、そういう形における野党党首会談というようなことを一つぜひ続けていかれる必要があろうと思いまするが、以上三点、安保条約の問題、沖繩の問題、党首会談の問題についての御所信を表明してもらいたいと思います。  これをもって私の質問を終わります。
  246. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 事前協議につきましては、交換公文がございますので、私はこれでやっていけると思います。  沖繩の問題につきましては、御意見の点を十分考えて、今までも処置いたしておるのであります。今後新しい今の議席の問題等につきましては検討いたしたいと思います。  第三番目の党首との会談につきましては、十分今後考慮してみたいと思います。   —————————————
  247. 館哲二

    委員長館哲二君) 竹中恒夫君。
  248. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 最初に総理にお伺いいたしたいと思います。  東海村における米空軍の爆弾誤投事件につきまして、所信をお伺い申し上げたいと思います。四月の二十三日のことでございまするが、米空軍の演習の最中にジェット機から鉄製の模擬爆弾が東海村の人馬の在米の非常に激しい国道から五十メートル程度の所に落下いたした。しかして農耕中の婦人の距離からはわずか十五メートルぐらいであったということでございました。相当大きなセンセーションを起こして、おるわけでございます。過去におきましてこうした誤投事件が二百件からあった。そしてその間に五人以上の死者があったということを聞いて、おるわけでございます。その当時から引き続き政府としては厳重に抗議をなさったということも聞いておりまするが、その結果として、飛行の禁止地域を定めたということであったようでございまするか、天候その他の関係で引き続き誤投がありますように、なかなかこれは明確には安全性を保つような処置はできにくいと、かように考えられるわけでございます。特に、御承知通り、東海村は原子力研究所のある所でございまして、非常な危険を感じるわけなんでございまするが、その問題に関連いたしまして、新聞の報ずるところによりますというと、茨城県の岩上知事が四月に渡米いたしまして、ケネディ大統領にこの間の事情を陳情して、そして返還を求める、こういうようなことが新聞の記事に出ておるわけなんです。これはあたかも昔のいわゆる封建時代の代官の悪政に対して耐えられないということで直訴をすると同じような結果になるわけでございますが、こういうことは一国の政治機構を無視したやり方であり、あたかもわが国の機関が非常に無秩序であるような感じを持つのでありますが、こういう点に対しまして、過去二百件からのそういう事故があったということに対し、あるいは死者が五名も出たということに対する、その死者に対する弔意の方法あるいは賠償等につきまして、私、寡聞で承知いたしておりませんが、そういうことに対する処理はどうであったかということと、並びに今申し上げましたように、国内の政治機構を乗り越えて直訴するというような形が、はなはだおもしろくないということについての御所見を承りたいと思うわけでございます。
  249. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 茨城県におきまするお話のような事件が過去においてたびたび起こったことは承知いたしております。従いまして、ただいま関係当局から向うに申し入れまして、今演習を中止していると私は聞いておるのであります。  それから、先般、茨城県水戸に参りましたときに今の知事の直訴の問題を聞きました。しかし、こういうことは私は普通の道でないと、こう考えておるのであります。詳しいことは事務当局から御報告させます。
  250. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) お話しの通り、水戸の演習場に関する事故に関しましては、今、総理大臣の御答弁通り、現在演習を中止して、その原因を究明して、その上で対策日本側に知らせるという状況にあります。なお、知事の関係は、知事が参りますのは、私の聞くところによりますと、これが主目的というわけではなくて、ほかの、別途の目的がございまして、向こうに参り、その際にあるいはこの実情も向こうの関係筋に話が出るかもしれないということで、あらかじめわれわれ調達庁並びに在日米軍にも話しておるということで、実は今日私のところに参りましたし、また、在日米軍の方にも知事は伺いました。
  251. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 この東海村の安全性ということを考えますというと、ただ演習を中止したとかということでもって、あるいはまた飛行の範囲をきめるということでなくして、やはり東海村にあります原子炉の関係からいたしまして、安全性を考えた場合には当然これは返還していただいて、演習地の移転というようなところまで話を持っていかなければ私は安全性が確保できない、かように思うわけですが、そういう手続なり交渉は困難でありましょうか、そういう点についての御所見を承りたいと思います。
  252. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 本件は従来、日米合同委員会でしばしば議題になっております。この地元民の諸君の要望というものは、先方にはしばしば伝えておりまするが、先方もかえ地の問題があればということをいっておりますし、また、現在この種の演習はきわめて利用度の高いことであるからということを申しておりまして、なかなかこの点は早急の解決は困難かと思います。しかし十分に交渉いたしておる次第でございます。
  253. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 次に、ILOの条約批准についてお聞きしたいのですが、私のお聞きするのはILO百二号の問題でございます。すなわち社会保障の最低基準に関する百二号の条約批准に関しましてお聞きいたしたいと思うわけでございます。  社会保障の発達いたしました国に対しましては、このILOの百二号の批准はいわゆる順法基準でございまするし、未開発の国に対しましては、指導の基準ということになっておるわけです。どちらにいたしましても、いわゆる社会保障制度における最低基準が百二号であるわけでございます。池田内閣の三大政策としての社会保障制度の確立という見地からいたしましても、当然、総理の任期中に国内の法律を整備されまして、批准なさるということが私は正しいのであろうと、かように考えるわけであります。先般、厚生大臣は、ILOの批准は今日の日本の実情にはそぐわない面があるが、しかし同条約に合致するように態勢を整えて、できるだけ早い機会に批准するようにしたい。たとえば医療の予防給付とか、分娩等を行なえば、当然批准をし得る態勢になるのであるからして、できるだけ早い機会に批准したいというふうなことを、厚生大臣は新聞談で発表しておられるわけでございまするが、また社労委員会等でもその御意向を述べておられまするが、池田総理といたしましては、今申し上げましたように、三大政策の一つであり、世界水準の最低基準の批准をするということについての御努力をわずらわしたいと思うわけでございまするが、その点に対しまする御所信を承りたいと思います。
  254. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ILOの百二号の批准も、これは研究いたしてみました。ただ、何分にもわが国社会保障制度は、日本の状態から必然的に発達したのでありまして、あれとぴしゃっと合うところもありますし、またあれ以上のところもあります。またあれ以下のところもあるわけであります。だから、私はあの百二号の規定に準ずるように、また国内の現状にも合わしていかなければなりませんから、厚生大臣が発表しておりますように、できるだけ早い機会に国力を増進させまして、社会保障制度の急激な発展、しかもILO百二号に沿うような方法で努力していきたいと考えております。
  255. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 どうか、そのような御努力を引き続きしていただきたいと思いまするが、そこで、いよいよ明日から国民皆保険になり、国民皆年金になるわけでございますが、非常に意義のある日でございまするが、三十六年度の予算を通覧いたしまして、社会保障制度関係の予算が二千二百六十七億円、一一・七%でございます。六百二十九億とかあるいは六百三十六億というような非常に大幅の増額をなさって、全く画期的なことでありまして、私五カ年間社会労働委員いたしておりまするが、こうした画期的な予算の増ということは経験したことはないわけであります。その意味におきまして、私非常にけっこうであり、喜ぶことであると存ずるわけでありまするが、先ほど申し上げましたように、それほどの大きな予算を社会保障に傾注されましても、列国の水準のILO百二号に到達しにくいというようなまだ貧弱なわが国社会保障制度でありますので、なお一そうの努力を賜わりたい、かように考えるわけでございます。  そこで、その社会保障制度の中で、特に私は今回取り上げてお聞きしたいことは、社会保険関係の予算でございます。社会保険関係の予算が五百二十一億ということでございます。なるほど戦前に比べましては百億円以上の増額になっておりまするが、この社会保険関係の五百二十一億円の予算の配分に、実は私意見があり問題があろうと思うわけでございます。すなわち、五百二十一億円の中の四百十六億円というものは、国民保険の助成に出しておられるわけであります。従いまして、健保あるいは日雇、船員というような他の保険に対しましては、きわめて少額の援助しか、あるいは助成の費用しか出ておらない。ここに私は問題があろうと思うわけでございます。具体的に申し上げますならば、いわゆる健康保険勘定、政府所管の健康保険でございまするが、この政府所管の健康保険勘定は、千百十三億円という予算の範囲内で保険給付をしておるわけでございまするが、その中で国が出すのはわずかに八億円である。社会保険関係では、今申し上げましたように、五百二十一億円もありながら、政府所管の健康保険にはわずかに八億円の金しか出ておらない。しかも、そのうちの三億円は今回の医療費引き上げの引当金でございまして、前年度同様に五億円しか出ておらないというようなことに、計算の上はなるわけでございます。きわめて政府所管の国民健康保険に対しまする当局の考えが冷淡であり、むしろ私は虐待いたしている、かように考えるわけでございます。  この問題につきまして私は想起するわけでございますが、実は三十二年の三月の二十八回の国会におきまして、健康保険勘定は、あの当時年々、三十一年、三十二年は、国からは政府所管の健康保険には三十億円ずつの金が出ておったわけでございます。ところが、三十二年の三月に、これを一挙に十億円に減額なさろうといたされまして、当時の一萬田蔵相と私は討論をしたわけでございまするが、その討論をいたしましたときに引例いたしましたのが、実は三十一年の九月の衆議における池田大蔵大臣としての御答弁を私は引用いたしたわけでございます。そのときの議事録がここにございまするが、当時の蔵相としての池田さんの言われたのには、その当時三十億円を出したときに、将来政府所管の健康保険黒字になっても引き続いて三十億を出すのかという質問に対しまして、蔵相としてあなたは、もとより今日の国の政治のあり方としては、当然社会保険、特に政府所管の健康保険に対しましては、三十億円の金を、黒字になったから、赤字になったからといってどうこうするというような性質のものではない。政治のあり方としては、当然もし黒字になれば保険料を安くするとか、あるいはまた給付内容をよくするとかというようにして、どんどん政府所管の健康保険の発展を期するのだ、こういうような答弁を三十一年の九月にしておられるわけであります。ところが、今申し上げましたように、政府所管の補助ではわずか八億円であるということになりますと、非常に、当時三十億円が当然出すべきであるというお考えとの間に大きな相違が出てくるわけでございます。私はこの点は、非常に御熱心に社会保険考えておられる蔵相として敬意を表しておったわけでございまするが、この点につきましての明年度八億円になったという理由を一つ承りたいと思います。
  256. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 三十一年の九月には、私は大蔵大臣ではなかったんでございます。三十一年の十二月二十三日に大蔵大臣になりまして、今お話しの四年間で国民皆保険ということを打ち出したのでございます。その質疑応答は、多分三十二年の二月ぐらいであったと思います。大蔵大臣時代であったと思います。あのときは、御承知通り、二十億程度の赤字があったのであります。で、いろいろ問題がありましたが、今お話のようになりました。それから私は大蔵大臣をやめまして、その後公務員の給与の引き上げ等がありまして、一時二百億円程度の黒字が出てきたやに聞いております。そういうように黒字が出ますので、当時の大蔵大臣がそういう措置を、黒字があるので一般会計からの補給をやめるということに相なったと思います。
  257. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 二十九年に四十億円、三十年に三十億円前後の赤字が出るということを予測されまして、あの当時に資金運用部資金から七十億円という別の融資をしてもらって、それ以外に政府所管の健康保険には三十億円お出しになられた。それが非常に後退してきたので、私は当時一萬田さんに、あなたは、池田蔵相はそういう時代逆行の考えは持っておりませんと言われたことをなさるということは、今の総理は同じ内閣でありながら時代逆行のことをなされるのかと、相当突っ込んだわけでございます。従いまして、あなたが総理になられたならば、再びそういうように復原されるということを実は期待しておったわけでございますが、なかなかそうはいかなかったのでございます。特に私はなぜこのことを申しますかというと、政府所管の健康保険は、御承知のように、中小企業の団体の従業員を対象にいたしております。大企業でございませんので、賃金ベースも低い。従いまして、これの千分の六十五の保険料も低いわけでございまするので、保険財政が非常に逼迫いたしております。組合専掌には十億円からの補助をしておられるのにかかわりませず、中小企業だけの対象としては被保険者を包含しておる政府所管の健康保険に対しまする助成というものは、高級な給付をしておりまする保険組合よりもより一そうの私は助成が必要であろうと思う。その点がございまするので、特にこのことを申し上げるわけでございます。  なお、ただいまの答弁で一応了承いたしたということにいたしておきまするが、次に私はお聞きいたしたいことは、医療費の一〇%引き上げの問題でございます。今年度の重大な、あるいはある意味におきましては一番大きな国民にセンセーションを起こしましたのは医療費の問題でございまして、両医師会と政府当局その間の確執あるいはまた感情のそご等があって大きな問題になったわけでございます。そこで、私はお聞きするわけでございまするが、これは大蔵大臣にお聞きしたいと思うんですが、医療費の一〇%引き上げによる予算措置が七十四億円出ておるわけでございます。ところが、この七十四億円をしさいに分析してみますというと、医療保険にお出しになろうとする金はわずかに二十億五千万円、一〇%引き上げに対しまする引き当ての予算額が。国保が九十五億円の増額に対しまして十五億円出しておられる。政府所管が六十九億、七十億円近い医療費の引き上げがあるにかかわりませず、国がお持ちになるのは、先ほど申しました八億円のうちの三億円しか持っておらない。中小企業の非常に低い被保険者の一〇%の引き上げに対して、国の援助が、七十億円から増額するのにわずか三億円しか持っておられぬということを御承知であられるのかどうか。大臣としてはやはり大づかみなことをしておられますので、こうしたこまかい点はお聞きになっておられぬと思いますが、組合が一億五千万円、日雇が五千万円、船員が五千万円というように、総計いたしまして医療保険出します金は二億五千万円。他は生活保護法、結核、精神衛生施設というような方面の支出でありまして、非常に私は政府所管に対します援助なり配慮が薄いと思うのです。この点は御認識の上で三億円をお出しになられたのでしょうか、そういう点についてお考えを承りたいと思います。
  258. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一応認識してはおりました。今お話がございました問題でございますが、赤字のときは政府から支出をいたしましたが、三十四年以後財政が立て直って、相当の積立金を持っておりますので、去年は五億円でしたが、今年は八億円と、もしかりにやっていけない事態があって、積立金の若干の取りくずしをするという事態になっても、保険財政は順調にやっていけるという見通しで、こういう予算計上をした次第でございます。
  259. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 その御答弁が実はこっちは不満足なのでございます。と申し上げますことは、大臣のおっしゃることは黒字になっておる、そのうちから三十五億円という保険勘定で金を出しておる、従って政府は八億円しか出さなかったのだ。なお、これから三十六年度赤字になるようであれば、積み立てを取りくずす、こういうお気持のように承知いたしたのでございますが、私はその積立金の性格を御検討願いたいと思う。やはり医療保険というものに、国民皆保険法律で強制加入する限りは、国がもっと力を入れなければならないと思うのです。この積立金というものは保険料の剰余金でございます。決して国が以前のように三十億円、五十億円ずつお出しになっての剰余金ではございません。国民の金でございます。しかも、医療給付に対しましては、御承知のように、制限診療というようなきわめて不自然なことがございまして、その結果によって余った金でございました。決して自然な医療を行なったことによって余った金ではない。結局、医療費の引き上げは国民にしわ寄せしてはならないのだという世論があるにかかりませず、その積立金を使うということは、結局国民の拠出金でございますから、国民に対するしわ寄せがここに出てきたわけです。八億円だけ、あるいは引き上げに対しては三億円しか援助しておられぬということになるのでありまして、今の御答弁のような考え方は、医療保険の発展を期する意味におきましても、私は非常に後退した考えと思うのです。その点につきましてはどういうようにお考えでしょうか、一応承りたい。
  260. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 保険料をなるたけ上げなくて今回の場合は済ませるというお話でございましたので、従ってこの負担の問題についても、国保そのほかの財政的な事情を考えて、保険料を上げなくて済ませるための最低限度の金額を計上して、そうしてこれを割り振ったという事情でございます。
  261. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 保険料を上げなければ国がもっと金をたくさん出すべきであって、国民の拠出金の積立金を出すということは、少しく私は理解ができないわけでございまするが、時間の関係もございますしいたしますので、次に質問を進めたいと思います。  次は、医療制度全般についての問題でございます。これも総理にお聞きしたいわけでございますが、厚生大臣は社会保障制度の長期計画の樹立を考えておられるわけです。これはやはり委員会等においての御意見によってよく承知いたしておりまするが、すなわち、年金あるいは医療保険、その他福祉事業、生活保護の問題等含めまして、これは長期的に計画をしなければ、従来のようなまあ行き当たりと申しますか、そのときどきの内閣の政策なり、所管大臣の考え方なり、あるいは財政の関係等からいたしまして、きわめてそのときそのときの行き方をしておったのでは、とうてい完全な社会保障制度の確立は見ないということで、長期計画をお考えになっておられるということを承知いたしております。また、社会保障制度の中で特に社会保険に対しましては、先ほどの御答弁もございました通り、三十年の間に、それぞれの時期に必要に応じて制度ができたわけでございまするので、その目的なり、保険対象なり、あるいは給付条件なりが、みんな非常に雑多で複雑多岐であるわけでございます。また、条件も、国の負担の条件もそれぞれ違っておりまするし、あるいは個人の負担の条件も違えば給付条件も違っておるというわけで、非常に社会保険そのものが複雑であり、当然総合調整を必要とする時期に来ておると思う。今回の医療費問題に端を発しまして、両医師会が抜本的な医療保険制度改善を強く要求いたしておりますことも、こうした歴史的あるいは経過的なことが原因になっておるように考えられるわけです。  こうした点につきましても厚相は抜本的な考え方を持っておられるわけでございます。私はこの厚相の抱いておられる青写真をぜひ実行に移していただきたい、かように先般も要望いたしたわけでございますが、御承知のように、わが国の政治の形態から申しまして、主管大臣が長くその席におるというようなことは今まであまりない。半年ないし長くても一年ということでございまして、こうした社会保障制度のような長期計画を樹立して、実施するのには、血管大臣というものはどっしりと腰をすえてやらなければいかぬと思う。党の事情いろいろな関係もあろうと存じますが、少なくとも私はこういう問題につきましてはもっと真剣に取り組み得るような条件下において、社会保障の確立を期したいと思うわけでございますが、その点につきましての総理考え方を拝聴いたしたいと思う。
  262. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 医療問題につきましても、また年金の問題につきましても、私は総合的に、また将来を見通して、そうして総合的な計画を立てていくベきだと考えております。ことに医療の問題につきましては、その発足の過程におきまして、継ぎ足し継ぎ足しできている関係上、いろいろその間に根本的に改正をしなければならぬと思われる問題が相当あるのでございます。私は、社会保障制度審議会等に諮問いたしまして、十分将来検討いたしたいと思います。
  263. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 今御答弁の中にございました社会保障制度審議会、あるいは過去においても七人委員会とか、社会保険審議会、医療制度調査会というようないろいろな審議会等がございました。それぞれに適当な勧告なり答申が過去においてもなされているわけでございまするが、これが一向に実現しないといううらみが、実は過去においてはあったわけでございます。せっかく今総理は、そうした制度を活用して今後十二分にやりたいということでございますから、どうか今後できまする各種の審議会、調査会等もあるようでございますが、ぜひそのように御配慮願いたいと思うわけでございます。  そこで、次に厚生大臣にお聞きしたいのでございますが、すでにこの質問は今日の夕刊に出ているわけです。いささか質問の蛇足のような感でございますが、夕刊の内容ではいま一つはっきりせぬところがございます。もう少し具体的にお差しつかえのない範囲においての御答弁を賜りたいと思うのでありまするが、それは医療保障調査委員会の問題でございます。  これは私賢明に入ります前に、池田総理にお礼と申しましょうか、お約束の御実行いただいたことを感謝するわけでございまするが、私は、医療報酬金というものが池田内閣の所得倍増に合致するようなきめようを過去においてなされておらない。二十六年以来の医療報酬費の上昇率が非常にテンポがおそく、他の給与べースとかあるいは物価指数に比べて非常に低い、従って何とか医療報酬金自体を科学的なものさしをおいて、ここで第三者によって公正な判定を下してもらいたいということをお願いしたことがございまするが、その表われがこういう医療報酬調査委員会の誕生になったのであろうと、かように私信じております。  そこで、厚生大臣にお伺いしたいのですが、長年据え置きされておったこの医療報酬金を、今回選ばれようとする委員によって相当に科学的に検討されることを期待いたしておりまするが、そこで、私はこの医療報酬委員会の構成のメンバー並びに員数及び選出方法、かつその方々の社会的な立場と申しまするか、政治的な比重と申しまするか、そういう点について少しく詳しく具体的な構想を承りたいと思うわけでございます。
  264. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) お答え申し上げます。二つ委員会を予定しておりますが、総理府の方に作る予定の医療報酬調査委員会というものと、もう一つは従来の医療協議会を改組するものと二つのものがありますが、初めの方は比較的少ない委員の数で作りたい。まあ確定的には申せませんけれども、五人前後程度の委員で構成したい。で、これは純中立的な委員八会として作りまして、そしてこの医療報酬を算定する基準になりますようなルールを確立する任務をその調査委員会に持ってもらいたい。片一方の医療協議会の方は、大体今までの四者構成を三者構成に改める。委員の数は、これも確定的ではありませんけれども、大体総数を今までの数の辺を目安に置いて三者構成に改めたいという、こういう考え方でそれぞれの医療担当者の方の側、それからもう一つ保険者、それから事業主、被保険者側とつり合いをとって構成する。もう一つは、公益委員とつり合いをとって作りたいという考えで、具体案を今練っておる途中であります。
  265. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 今の医療報酬調査委員会の問題でお答えいただけなかったのですが、少人数で五人程度で中立的な立場の人を選ぶということはわかりましたが、これの選任方法はどういう方法をおとりになるか。同時に、中医協は質問しないうちにお答えになったので、中医協の問題をお聞きいたしますが、中医協における委員の選任方法についてあわせてお答え願いたい。
  266. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) 初めの方の内閣側に置きます委員会は、受益代表的なものでない方でありますので、総理大臣が選任するというような方式にならざるを得ないかと思っております。それから、片方の医療協の方は、それぞれの立場代表する委員を持たなければなりませんので、そういう辺を考慮して選任の方法は考えなければならぬというふうに考えております。
  267. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 なお、中医協につきましてお尋ねいたしますが、今回の医療費のもつれによりまして、相当対社会的な批判の声を聞きますと、両医師会は中央社会保険医療協議会という土俵に上らないのははなはだけしからぬという非難があるわけです。これは当然そういう非難があってしかるべきだろうと思いますが、これをなお内容を分析いたしますると、その土俵には上れないような条件があったわけでございます。今回中医協を改組なさるということでございまするが、どうか両医師会がふだんから申しておりますような中医協の土俵に上れないといういろんな障害をこの際お除きにならなければ、せっかく改組されても、やはり中医協には上れないというようなことになりまして、不測の事態、この先月以上の最悪の事態がこの秋に私は起きやしないかという懸念を持つわけであります。どうか中医協に対しましては、両医師会が上れるような、今おっしゃった三者構成、はなはだけっこうでございます。  また、その考え方に基づきましてお尋ねしたいのですが、その三者構成の中で、従来厚生省が保険者側と申しまするか、支払い側として入っておられました。こういうことも厚生省は現業官庁の立場からそういう建前をおとりになったのですが、やはり厚生省は監督の立場にあられるわけでございまするので、中医協の委員にお入りになる、こういうことにつきましては相当問題があろうと思います。そういった点についてのお考え方を承りたいと思うわけでございます。なお、先般の衆議院の社労委員会で、総理も厚生大臣のあなたも、滝井さんの質問に御答弁になっておられる中に、医療費の問題は中医協を通すのだという筋を通しておられます。これは当然そうあるべきであろうと存じます。従って、中医協の改組のあり方いかんが今後のわが国の医療保険の運命を左右するとさえ実は極端にいえば表現ができるわけです。非常に中医協の改組のあり方というものが重大でありまするので、特に私は今申し上げましたような質問点について御回答願いたいと思います。
  268. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) 医療費問題が混乱いたしますのも、中央医療協議会がうまくいかないというところに大きな原因があったのでありますから、ここを直すことが非常に大事な問題になるわけであります。医師会、歯科医師会が参加できなかったいろいろ見方もありますけれども、これが気持よく参加できるような場にぜひしたい、こういう考え方でおるのであります。  それから、政府管掌の健康保険保険代表として厚生省の者が委員に出ておりましたのですが、これは理屈としては確かに一つの現出があると思いますけれども、しかし、今回は改組にあたっては、今お話しのような点もありますので、参加しないことにしたいという考えでおるわけでありまして、要するに今まで議論のあった点を十分考えて、そうしてよい構成にしたいというつもりで案を練っておるところであります。
  269. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 次は病院ストについてお尋ねしたい。三月の二十八日に日本医労協が統一ストの第六波を敢行いたしました。全国三百六十一の病院が参加し、四万人の従業員がこれに加わったということでございます。これは人命尊重の見地から考えますというと、非常に大きな社会不安でございまして、ある意味におきましては公労協のスト以上の私は大きな問題であろう、かように考えて、非常に心痛いたしておるわけでございます。ところが、この病院ストの内容を検討いたしますというと、いわゆる給与ベースの引き上げという経済闘争と、それから病院の管理運営等に関連いたしまするいわゆる封建的な病院経営に対する人権ストと申しまするか、この両者がからみ合ってこの病院ストというものが解決が困難であるように実は見ておるわけでございます。従いまして、ストそのものの解決はあるいは所管が労働大臣にあろうと存じまするが、やはりストの一つの大きな原因である経済ストというものは、医療費の問題に関係があるわけでございまするので、従いまして、厚生大臣としても当然病院ストに対しましてはしかるべき対策を樹立され、実施されておらなければならぬと、かように考えるわけでございます。先般大臣は、病院の経営管理改善懇談会というものをせっかくお作りになられまして、この病院ストの永久的な禍根を除くという考え方についての諮問と申しまするかをしておられるわけでございまするが、昨日あたりにそれの答申が出たようでございます。しかし、この答申の内容を検討いたしまするというと、やはり抽象的な表現ばかりでございまして、人事あるいは財務の管理及び近代化ということを強く言われておるわけでございまするが、その書いた抽象的な文句では決してストは解決しない。やはり与えるべきものは与えなきゃならぬというわけでございます。そこで私は、この病院ストに対しまして、具体的に今日、厚生大臣は何を明日からなさんとするかということにつきまして、もしお考えがありまするならばお聞かせ願いたいと思うわけであります。
  270. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) ストそのものの解決は、労使の問題として、その筋に沿うて解決をしていくほかはありませんし、ある段階では仲裁裁定のような方向で解決をするほかはないかと思いますが、これはまあ労働省の御所管といたしまして、ただいまのお話しの病院の管理経営が時代おくれであるという点につきましては、昨日もお話のこの懇談会から、新聞に出ておりますのは簡単でありますけれども、実はきわめて詳細な意見が出ております。まことに有益な意見と思います。これを実行しなきゃなりしませんので、各系統の病院の代表の方に集まっていただいて、それからあの懇談会の人をまじえて、早くこれを実行に移すように今考えておるところでありますから、相当改善の効果が上がるものだと考えております。  もう一つの、経済の苦しいという点は、医療費にもつながる問題であります。それでありますから、この医療費の引き上げをこの病院というものに対してどう考えたらよいかという問題が実は出てくるわけであります。これが実はわれわれの頭にもまことに離れない問題の一つになってくるわけであります。医療費の問題は、これをきめますときに善処したいと思っております。
  271. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 大蔵大臣にお伺いしたいのですが、補正予算に関係するのでありますが、先ほど来、仲裁裁定の完全実施あるいは炭鉱災害防止対策についていろいろと各政党の間で議論になり、あるいは妥協案が出ているようでございまするが、ここで私がお聞きいたしますのは、中央社会保険医療協議会で医療費の問題はこれを通して、その答申によって医療費をきめる、点数でいくか、あるいは単価でいくか、あるいは幅でいくかをきめる、こういうふうに厚生大臣は言うておられるわけであります。また、さきに申しましたように、総理も先般衆議院で、やはり筋としては中医協の答申を待つというようにおっしゃっておられます。ここでかりに中医協の答申が、党の三役と両医師会の話し合いのように、地域差の撤廃あるいは制限診療の撤廃というようなことが、すみやかにあるいはなるべく早い機会にという表現でございますので、本年度とは限らないと考えられまするが、一応医療費の引き上げの幅等について答申がなされた場合には、七十四億円では足りないというようなことがあった場合には、補正予算をお組みになられるつもりでしょうか、あるいは予備費、その他の運用によってまかなわれるのでしょうか、そうした中央医療協議会の答申いかんにかかっている問題ではございまするが、一応この予算措置についての心がまえをお聞きしたい。
  272. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一応国会の承認を願う予算額がきまったといたしますれば、具体的なやり方も大体この予算でまかなえるようなことになるんだろうと私どもは期待しておるわけであります。
  273. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 当然大蔵当局としては、そういう見通しで予算をお立てになったのでなきゃならぬわけでありまするが、筋としては一応中医協がこういう答申をするだろうということを予測なさって、予算の組み合わせができたと思うのですが、ところが、その考えた以上の答申が出た場合のことを聞いておるわけです。その場合に、どういうような処置をなさるのですか。
  274. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予算の使用でございますから、国会の御承認のない限りどうしてもやる方法はないと思います。
  275. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 もちろんそうでございまするが、それについて国会の承認を得るような方法をおとりになるのかならぬのか、その点をお聞きするわけです。
  276. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 協議会の結果を見なければ、今のところは何とも申し上げられません。
  277. 館哲二

    委員長館哲二君) 竹中君、時間が来ておりますから。
  278. 竹中恒夫

    竹中恒夫君 一点だけ、もう一度お許しを願いたいと思います。それは資金運用部資金の問題でございまするが、年金の積立金というものが三十六年で四百億円、相当やはり十年、十五年たちましたならば膨大な金額になるわけでございます。今回の年金の積立金に対しまする大蔵大臣と厚生大臣の話し合いの内容は、一応承知いたしておりますが、今のようなわずかな金の間は、現在のようなお考え方でけっこうと思いますが、相当大きな額に上って参りました場合には、やはり今国会に提出されまする年金福祉事業団というようなもの、あるいは年金福祉公団というようなものに、独立した一つの基金的なものを作って、やはり還元融資をし、同時に有利な方法も考えるというような、いわゆる国民年金審議会の答申が私一番妥当であろうと思うわけでありまするが、そういう点につきましての将来のお考えは、大蔵大臣としてどういうお考えであられるかということをお聞きしたい。
  279. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 有利な運用をするということになりますと、独立運用をやる方が実際は不利でございまして、今のようなやり方が有利だということで、いろいろ今、国会に御審議願っておるような形で運用をしていきたいということになったのでございますが、たとえば昭和五十年ということになりますと、この資金が一兆億円にもなる。そういう膨大な額になるというときには、これは今後運用方法についてはまた別個の考え方もしなければならぬのじゃないか、かように考えております。
  280. 館哲二

    委員長館哲二君) 本日の議事は時間の関係上この程度にとどめ、明一日午前零時五分より委員会を開き、本日の議事を継続することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後十一時四十九分散会