○東隆君 第四
分科会の
報告をいたします。
第四
分科会に付託されました
案件は、
昭和三十六
年度予算三案のうち、
大蔵省、文部省、自治省、厚生省及び労働省に関するものであります。
分科会では去る二十七日から本日までの四日間にわたり、各
所管の
予算につき、
関係大臣の
説明を聞き慎重に
審査を行ないました。
質疑は相当広範多岐にわたりますので、その詳細は
会議録によってごらん願いたいのであります。
まず第一日の
大蔵省所管では、
国際収支の
見通しにつき、本年三月の
経常収支の
赤字は大体四億五千万ドルというがその根拠はどうか、また現在の
貿易状況からすると、
国際収支の
赤字は四−六月になるとさらに
増大するのではないかとの
質疑がありました。これに対し水田
大蔵大臣及び
大蔵省政府委員から、
輸出入の従来の例ないし最近の傾向からみて、三月の
貿易じりは三、四千万ドル程度の
赤字となり、それに
貿易外取引で約一千万ドルの
赤字が見込まれるから、結局
経常収支で四、五千万ドルの
赤字となる。しかし、総合収支では五千万ドルをやや上回る黒字になる
見通しである。また四−六月の
赤字が大幅になるかどうかは、アメリカの景気、東南アジアの
情勢変化によって違うが、西欧向け
輸出が逆に伸びておるような事実もあるので、
赤字がそう大幅になるとは思わない旨の
答弁がありました。
また、最近の公社債に対する投資ブームに関連し、これが預貯金への
影響はどうか、またこの際、証券業者の届出制を認可制に改める意思はないかとの
質疑がありましたが、これに対しては、大蔵当局から、市中銀行の預貯金は、二月も順調に伸びている、ただ、郵便貯金の伸びが予想を下回っているが、これは必ずしも公社債投信の
影響とは言えない、証券業者の開業については、十分身元調査もし、
指導、取り締まりもやっているわけで、今直ちに、これを免許制にする
考えはないが、不健全な証券業者による
一般大衆の被害の点も
考えられるので、この点、ただいま証券取引
審議会に諮問しており、その答申を待って、あらためて結論を出したいと思うとの
答弁がございました。
このほか、
輸出入銀行の貸付に対する問題、専売益金、特にたばこの売り上げに関する専売公社の経営上の問題を初め、用地費をめぐる
予算計上の仕方の問題、
建設共済組合の掛金問題及び終戦時に樺太に在住した住民の
北海道拓殖銀行への預金の
問題等、
大蔵省所管の各般にわたって活発な
質疑がありましたが、その内容は省略をさせていただきます。
第二日は、文部省と自治省
所管を並行
審査いたしました。
文部省
所管では、
昭和三十七
年度以降、中学卒業生が激増するが、これに応ずるための高等学校の新設ないし学級増に対する
予算措置がほとんどとられていない。これでは、現在でも狭き門になっている高校進学が、いよいよ困難なことになる、足らないところは、地方自治団体の自主財源でやれといった
態度をやめて、もっと
一般高校に施設補助をする
考えはないか、また、この
予算案では、小・中学を通じ、一学級に五十一名以上の生徒を持つ、いわゆるすし詰め教室が、
全国に八万学級もあることを確認しながら、これが改善のための教員の充足がなされていない、五カ年
計画で、すし詰め教室を解消すると言いながら、三年目になって足踏みをする、そんな
計画があるかとの
質疑がありました。これに対し、荒木文部大臣並びに文部省
政府委員からは、三十五
年度は、高校入学
希望者百六万七千人に対し、百二万二千人、九六%が就学している、この進学率は、三十六
年度以降にも確保したい、施設
整備費を三十六
年度だけで見ると、幾分少ないかもしれぬが、今回は、工業高校に
重点を置いたわけで、
一般高校に同じ程度の助成金を計上できなかったことは遺憾であるが、起債財源をつけたこと自体、施設
整備の能力を地方に与えたという意味で、合格点はもらえると思っている、
政府としては、三十六
年度から三十七
年度と、引き続きあらゆる
努力をして、中卒急増
対策に遺憾なきを期するつもりである、また、すし詰め学級問題については、今年は、中学生が約百万人ふえた一方、小学生の数が減っているので、教員数の増を八千五百六十六名に押えた次第で、こうした差引計算は、今回に限らず、昨年もやったことである。要は、五カ
年間で、すし詰め学級をなくする
考えで、来たるべき三十六
年度には、小・中学とも、一学級五十名編成の実現を必ずやり遂げるつもりであるとの
答弁がありました。
さらに、学校給食について、最近、地方では給食普及率の後退が見られ、また、給食の内容が質的に低下するおそれがあるが、
政府はこの際、学校給食を、法律による義務制にする
考えはないかとの
質疑に対し、
政府側から、給食の普及率は、小学校六七%、中学校一一%、夜間定時制高校二二%で、年々漸増の傾向にあること、また給食の義務制については、文部大臣から、
気持としてはそうしたいが、法律によるには、まだ時期尚早だと思うので、さしあたり小学校での普及率六七%を一〇〇%にまで高めるよう、自治省とも連絡をとりながら、行政
指導によって実効を期したい旨の
答弁がありました。
このほか、国語
審議会のあり方と、国語、国字の改革問題などを初め、幼稚園と義務教育の
関係、戦災校、危険校舎の復旧並びに盲ろう校の施設改善、小・中学校教
職員への超過勤務手当支給、育英資金、教材費、研修旅費の増額及び僻地教育の振興等、教育現場から見た各般の切実な
質疑のほか、教育
基本法に対する理解の問題、文化財保護に関する問題など、文部行政の全般にわたる
質疑があったのであります。
次に、自治省
関係の
質疑といたしましては、最近地方議員の間で、退職金制度を作る動きがあるが、自治省において、この際これを立法化する
考えはないか、またこの問題は、地方
財政に
影響があると思うので、
国会議員の場合のように、互助年金制がよいと
考えるがどうかとの
質疑がありましたが、これに対し安井自治大臣から、
国会議員に互助年金があり、地方公務員に退職年金制がある以上、地方議員にも、この種の年金があっていいと思う。自治省としては、自治体に迷惑のかからない互助年金の形がよいと
考えるが、立法化の点では、地方
財政を将来も圧迫しないよう、なお検討したい旨の
答弁がございました。
第三日目は、厚生省
所管であります。まず医療内容の改善に関する問題でありますが、健康保険、
国民健康保険等、各種医療保険の
現状から見て、医薬分業制度は、いろいろな点で矛盾をはらんでいる。すなわち現行制度によれば、重症患者や重大処置を要する症状に活用されることが比較的少い反面、売薬で事足りるような小額の支払い方面に使われる向きが多く、医療が低い面に食われる形になっている。これでは医薬分業の意味がないから、売薬で済むような病気を保険からはずす等、根本的に再検討する
考えはないか。また患者としては、最高の治療を受けたいのが念願と思うが、厚生大臣の所信はどうかとの
質疑がございました。これに対し古井厚生大臣は、医療保険が十分に活用されていないのは、健保や国保の患者負担率が半額負担になっているため、容易に利用できないからだと思う。この点、保険
財政への
影響も
考えた上で、給付率の
引き上げなど、医療内容の改善につき研究しているが、まだ結論を申す段階にはなっていない、また、病気は何としてもなおさなければならぬわけで、これが医療の根本だと思う。従って、このことと保険
財政の限度をにらみ合わせて、いかにすれば
国民の医療を質的に
向上できるかを検討したい旨の
答弁がありました。
また、助産婦の不足
対策をめぐって、現在
全国に保健所が八百カ所あり、そこに百七十人からの助産婦が働いているが、最近は助産婦の志望者が減少し、死亡したりすると、その補充がつかない、助産婦養成所も、この一
年間に十八カ所から二十三カ所にふえているが、卒業生が逆に減っているありさまである。さらに開業助産婦の場合は、平均年令が五十六才で、若い婦人には助産婦になりてがない。それは、助産婦の
待遇が悪く、生活の
見通しがつかないからだと思うが、緊急に
対策を講ずべきではないかとの
質疑がございました。これに対し厚生大臣は、
わが国の新生児、妊産婦の死亡率が欧米諸国に比べて高いこと、また、助産婦の養成がきわめて必要な点をあげて、その
待遇改善並びに
人員の補充策を真剣に検討中である旨の
答弁がありました。その他小児麻痺及び結核、精神病の予防
対策、病院の統廃合問題、
国民皆保険体制の今後の
見通し及び公衆衛生、環境衛生の
問題等、厚生行政の全般にわたり
質疑が行なわれたのであります。
第四日目、すなわち本日は、労働省
所管についてであります。現行の業者間協定による最低賃金制を
改定する
考えはないかという
質疑であります。
質疑の趣旨は、
政府のいう最低賃金二百円は一カ月二十五日稼動と見て五千円であるが、これは生活保護法による生活扶助費にも満たない少額であり、しかも二百円以下のものが、現に最賃法の名のもとに、地方の労働基準局で認められている事実すらある。さらにまた、業者間協定で、最低賃金を二百円で押える結果、親会社と下請業者、あるいは下請業者同士の間で、二百円以上には協定できないという事態が起こっており、そのため中小業者にあっては、求人に悩み、倒産する者も出る状況であるから、この際、最低賃金をせめて一律八千円程度に
引き上げる必要があるというのであります。これに対し、石田労働大臣並びに労働省当局は、現行の最賃法は、最低を二百円と定めているが、
政府としては、これを二百五十円に
引き上げるために、また、現在の適用
人員五十二万人を、今後三カ年のうちに二百五十万人に拡大するために
努力している。二百円は、あくまで最低であって最高ではない。それゆえ親会社と下請業者の双方で、二百円を基に不当な拘束をし合っておるとすれば、他の
措置で処理せねばならぬと思う。また現行法は、十五才で二百円を最低賃金としているが、十五才から十八才までの間の昇給率は、二九・五%が普通であるから、十八才で大体八千円に達するわけで、社会党の最賃法にいうところと、実質的に同じレベルになる。
政府としては、以上の点を
目標に、最賃制そのものの理解を
一般国民に深める
努力を進めるとともに、その過程において、現行法が
改定されることを期待しており、その
達成時期は、おおむね
昭和三十八
年度を目途に
考えている旨の
答弁がありました。
そのほか職業訓練と就職の問題、失業
対策と失対賃金の問題並びにそれとPW及び生活保護との
関係、その他労災保険における給付問題、雇用促進事業団、ILO条約、労災病院ストなどなど、幾多の
質疑がございましたが、その内容は、
会議録に譲りたいと存じます。
以上をもちまして、第四
分科会に付託されました
案件全部の
審査を終了した次第であります。
右、御
報告申し上げます。(
拍手)