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1961-03-20 第38回国会 参議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月二十日(月曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員野上進君、小林英三君、山本 杉君、小山邦太郎君、湯澤三千男君、 久保等君、椿繁夫君、田畑金光君及び 中尾辰義君辞任につき、その補欠とし て、井川伊平君、塩見俊二君、櫻井志 郎君、大谷贇雄君佐野廣君、森元治 郎君、北村暢君、田上松衞君及び辻武 壽君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事            梶原 茂嘉君            中野 文門君            平島 敏夫君            米田 正文君            占部 秀男君            松浦 清一君            千田  正君            杉山 昌作君    委員            井川 伊平君            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            上林 忠次君            小柳 牧衞君            後藤 義隆君            近藤 鶴代君            佐野  廣君            櫻井 志郎君            塩見 俊二君            手島  栄君            鍋島 直紹君            一松 定吉君            村松 久義君            村山 道雄君            横山 フク君            大矢  正君            木村禧八郎君            北村  暢君            久保  等君            田中  一君            高田なほ子君            羽生 三七君            森 元治郎君            森中 守義君            東   隆君            田上 松衞君            辻  武壽君            辻  政信君            岩間 正男君   国務大臣    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    厚 生 大 臣 古井 喜實君    農 林 大 臣 周東 英雄君    運 輸 大 臣 木暮武太夫君    郵 政 大 臣 小金 義照君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 池田正之輔君    国 務 大 臣 迫水 久常君    国 務 大 臣 西村 直己君   政府委員    総理府総務長官 藤枝 泉介君    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民捗君    防衛庁教育局長 小幡 久男君    調達庁長官   丸山  佶君    経済企画庁総合    計画局長    大來佐武郎君    科学技術庁長官    官房長     島村 武久君    科学技術庁計画    局長      久田 太郎君    科学技術庁振興    局長      原田  久君    科学技術庁原子    力局長     杠  文吉君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省条約局長 中川  融君    外務省移住局長 高木 廣一君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    文部政務次官  纐纈 彌三君    文部省大学学術    局長      小林 行雄君    文部省体育局長 杉江  清君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    農林省農地局長 伊東 正義君    農林省振興局長 齋藤  誠君    運輸省海運局長 朝田 靜夫君    郵政省電気通信    監理官     岩元  巖君    郵政省郵務局長 板野  學君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君  説明員    農林大臣官房審    議官      大沢  融君    林野庁林政部長 高尾 文知君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について報告いたします。  本日、野上進君及び中尾辰義君が辞任され、その補欠として井川伊平君及び辻武壽君が選任されました。   —————————————
  3. 館哲二

    委員長館哲二君) 昭和三十六年度一般会計予算昭和三十六年度特別会計予算昭和三十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続けます。森中守義君。
  4. 森中守義

    森中守義君 調達庁長官とそれに郵政大臣、来ておりませんか。ちょっとこの質問関連がありますから。
  5. 館哲二

    委員長館哲二君) 調達庁長官は来ております。それから郵政大臣はもう二分ほどで参ります。
  6. 森中守義

    森中守義君 合同委員会における日本側提案で、米国が同意しなかった件数、さらに米国側提案日本側が同意しなかった件数、これを最初に調達庁長官から承ります。
  7. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) 私は合同委員会のうちの施設特別委員会日本側議長をしておりますが、従いまして、私の取り扱います委員会事項は、施設の提供あるいは返還に関する関係のみでございます。そのうちで今お話のありました日本側提案向こう側が承知しない、あるいは向こう側提案してこちらが承知しないというものの現在までの統計的な数字を持っておりません。一回の委員会に十数件の議題もありまして、過去十年にもわたっておりますので、おのおののものにいたしまして数十件ずつあると存じますが、手元に今統計的なものを持っておりませんので……。
  8. 森中守義

    森中守義君 これは非常に大事な問題でありますから、この私の質問が終わるまでの間に資料提出できますか。
  9. 館哲二

    委員長館哲二君) よろしゅうございますか。資料提出できますね。
  10. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) 今役所の方に連絡しておりますから、この委員会の最中に提出できるようにいたします。
  11. 森中守義

    森中守義君 ちょっと今のはっきりわからない。どういうことですか。
  12. 館哲二

    委員長館哲二君) 調達庁長官、もう少し明瞭に。
  13. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) ただいま役所連絡をいたしまして、その関係のものを取りそろえておりますので、この委員会審議が終わるまでには提出できると存じます。
  14. 森中守義

    森中守義君 これは審議に重要なことであるから、私の持ち時間四十分です。かなり時間もありますから、その間に整理して、具体的にこれは同意が得られた、得られない、というそういうことまで含めて答えてもらいたい。役所のことだからできるでしょう。
  15. 丸山佶

    政府委員丸山佶君) 四十分の以内にはできると思います。
  16. 森中守義

    森中守義君 これは外務大臣がおられませんのでどうかと思いますが、合同委員会に対する日本側の今まで臨んできた基本的な態度といいますか、すなわち日本側の不利益になるようなことをどういうようなことで同意していくのか、こういうようなことを、今までの合同委員会に臨む態度として決定されておりますか。
  17. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) 合同委員会は、地位協定第二十五条で設置されておることは御存じの通りでございます。この地位協定の二十五条の一項にうたっておりますごとく、この地位協定実施に関して相互間の協議を必要とするすべての事項に関する日本国政府合衆国政府との間の協議機関として、合同委員会が設けられたわけでございます。合同委員会のやります仕事の範囲と申しますのは、この地位協定にきめられましたこと、すなわち協定に定められましたことの範囲内におけるその実施に関する協議機関でございます。で、われわれといたしましては、この地位協定実施につきましては、もちろん米軍日本に駐在する目的を達成するために、必要なその事項ということは十分尊重しなければなりません。と同時に、またその結果によりまして、日本の国民がいろいろと影響を受ける、その点も実際考慮しておるわけでございます。この二つの要素を十分勘案いたしまして、できる限り円滑に、しかも所期の目的を達成するように努力しているのが実情でございます。具体的には、各種の問題が含まれますので、私は合同委員会日本代表をしておりまするが、実際問題といたしましては、重要事項閣議決定をしたあとで合同委員会協議するというようなことになっております。また、たとえば施設の問題とか、通信の問題とか、労務の問題とか、あるいは裁判の問題とか、その他種々たくさんの事項に関しましては、それぞれ専門分科委員会を作りまして、各主管庁代表者日本政府代表となりまして、常時協議している次第でございます。
  18. 占部秀男

    占部秀男君 議事進行。今、森中君の質問なんですが、合同委員会の運営、その他非常に重大な問題に入っているわけですが、外務大臣出席を願って、やはりやってもらわぬと、責任のある答弁を承ったということにはどうもならないように感じられるわけです。そこで、すでに森中君の方からは、外務大臣出席をしてもらいたいということは、一週間も前にこれはもう届けてあるのであって、従って外務大臣を早急に呼んで、質問答弁に当たってもらいたい。かように考えます。
  19. 館哲二

    委員長館哲二君) 外務大臣は、十時四十五分までにはこちらに登院するということになっておるのでありますが、まだ見えないのでありますが、これは間もなくこちらに参ると思います。
  20. 占部秀男

    占部秀男君 じゃあ、十時四十五分といったら、もう四十五分ですから間もなく来ると思うので、三分や五分の問題じゃない、重大性のある問題ですから、それまで一つ待たしてもらいたいと思います。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)
  21. 館哲二

    委員長館哲二君) 森中君、御意見はおありですか。
  22. 森中守義

    森中守義君 やっぱり外務大臣がいしないとできないですよ。私はけさ、非公式に外国使臣が見えたから、それでちょっとかんべんをしてくれ、こういう話でしたから、進めていましたが、やはり今のような答弁ですとできません。——それでは、その次にお尋ねしますが、具体的な問題として、二十七年の講和条約発効から現在まで電電公社関係で五十億四千万円、もちろん三十五年のこの中にある五億というのは多少不確定のようでありますが、この金が米軍専用回線料未収金ということで合同委員会にかけられているようですが、その事実に相違ありませんか。
  23. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) ただいまの御質問日米合同委員会補助機関と申しますか、その下と言いますか、その合同委員会に付属した通信分科委員会、ここにおいて論議されたようでありますから、その委員会出席しました政府の者から一つ御説明させます。
  24. 岩元巖

    政府委員岩元巖君) ただいまの郵政大臣答弁を若干補足して申し上げます。  森中先生お話通りに、三十五年度末で五十億四千万、これは三十五年度の分がはっきりいたしませんので、はっきりした数字ではないと存じますけれども、そういった料金に関する日米間において紛争があるということは事実であります。ただし、これは日米間で料金問題につきまして見解の相違がございます。双方でまだ合意に達しておりませんが、日本側としては、電電公社といたしましては正式に請求はいたしておりません。従いまして、これは未収金というものではございません。ただそういった料金についての紛争があるということは事実でございます。
  25. 森中守義

    森中守義君 そうなりますと、この問題が通信分科委員会に出されたのは何年ですか。さらにまたこの問題を討議したのは回数においてどのくらいですか。
  26. 岩元巖

    政府委員岩元巖君) ただいまお話し申し上げました料金紛争は、講和発効後の料金についての紛争でございます。従いまして、この料金問題が日米間の協議として持ち出されましたのは、講和発効直後であったと記憶いたしております。  それから、何回ぐらい現在までに討議されたかというようなお話でございますが、これは通信分科委員会——これは合同委員会補助機関でございますが、通信分科委員会等での、あるいは合同委員会での協議と申しますか、そのほかに非公式会談を相当回数やられておると記憶いたしておりますが、大体数十回に及ぶものと想像いたしております。そういうはっきりした今数字を、ここに何回という記録を持ち合わせておりませんけれども、数十回にわたって討議されていることは事実でございます。
  27. 森中守義

    森中守義君 額ですね。私は五十億と言ったから、その額を一つ聞かせてもらわなければ困る。各年度ごとの額。
  28. 岩元巖

    政府委員岩元巖君) お答え申し上げます。二十七年度の分が八千万円程度でございます。これは大体千万円程度にお答えさしていただきたいと思います。二十八年度が三億一千万円、二十九年度が七億二千万円、三十年度が十三億四千万円、三十一年度が二十三億八千万円、三十二年度が三十——これは累計でございます。どうも申しわけございません。それで三十三年度末で四十億一千万円、それから三十四年度末で四十五億二千万円ということになっております。
  29. 森中守義

    森中守義君 三十五年度については……。
  30. 岩元巖

    政府委員岩元巖君) 三十五年度につきましては、まだはっきりした数字を聞いておりませんが、大体五十億ちょっとこすくらいの程度になるのじゃないかと聞いております。
  31. 森中守義

    森中守義君 回数において数十回ということですが、これは六条協定の三項によって当然通信分科委員会で片づかなければ、ほかの方法による道が講ぜられておりますが、もうそういう段階にきているのじゃないですか。
  32. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) ただいま政府委員から申し上げました数十回というのは、非公式な会合が多かったと私は承知いたしております。従いまして、正式に通信分科委員会としてここではもう手に負えないからほかの機関に持っていくというような決議をしたという私は報告は受けておりませんけれども、事が非常に並行線をたどっておりますので、日米合同委員会の方で取り上げてくれというような意思表示分科会の方ではしたようでございます。今合同委員会でどのようにこれを取り上げておるか、まだ私は承知いたしておりませんが、その機関またはその他の機関でこれは取り扱うべきものだというふうに私は考えております。
  33. 森中守義

    森中守義君 これは問題の解決をしないというのはどういうことですか。日本側では行政協定七条によって請求権があり、米軍側は二条によってこの物件は定着物であるから、それで払わないのだというふうに聞いております。おそらくその通りだと思うけれども、そんなにむずかしい問題ですか、十数回も討議しなければならない、あるいは数年かかっても片がつかない、こういう性質のものですか。
  34. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 行政協定または地位協定解釈上の問題もございますが、両方ともこちらは受け取るべき料金であると考えております。向こうはこれを払わない。今、森中先生のおっしゃった通り主張をいたしておりまして、両方とも意見がなかなか合いませんので、そこで、これは国際関係でありますから、いきなりこっちから債権なりとして持ち出していいか悪いかというような外交上の問題もありまして、まだそこまで決定いたしかねておるのであります。長い間の問題でありますから、何か日米合同委員会あたり結着点を見出していただきたいと私は希望いたしております。
  35. 森中守義

    森中守義君 それでは次に伺いますが、この問題は、最近私が聞くところによれば、どうも米軍は二条の解釈に多少不安を感じて、日本側が五十億の金をまけてくれるなら払おうというような話が出たように聞いております。そういう話は、大胆お聞きになっておりませんか。
  36. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 在留米軍通信料として一般に払っておるのが三十四年度末で四百何億かと承知いたしております。そういうようなものに準ずるようにしたならば、つまり特別の料金というか、一般料金一般料金で払って、これは定着物であるから払わぬでもよろしいという主張であるけれども、何かそこに安く、特別な料金協定できるなら払ってもいいという空気が出たやに、私も、これは正式な報告でありませんが、漏れ承っております。しかし、これは私の立場から安くしようとか、あるいはまた電電公社に対してここらで折り合えということを申し出る筋合いではないと思っておりますが、情報としては、今おっしゃったようなことは、私の耳にも入っております。
  37. 森中守義

    森中守義君 外務大臣が見えませんと、この根本的な問題に触れるわけには参りませんから、これは保留いたしますが、さっき政府委員答弁によると、正式の請求はしていない、こういうことですが、どういう形で先方に額は通知されておるのですか。
  38. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) これは通信分科委員会等においてこちらから発言しております。正式にこれこれのことで債権またはこれに準ずべきものとしてこちらから通告したのではないと思っておりますが、詳しいことは政府委員から答弁させます。
  39. 岩元巖

    政府委員岩元巖君) ただいま大臣から申し上げました通りでありますが、正式の請求はいたしておりませんけれども、大体日本側解釈による計算をいたしますればこれだけになりますという額は、先方には御通知いたしております。
  40. 森中守義

    森中守義君 公社会計規程の二十八条に私は該当すると思うのです。それで請求を出していないということは、紛争状態になるからしないというのか、あるいは公社自体として請求できるかどうかわからないという根拠に立っておるのですか。私は、やはり公社がこの問題を合同委員会に出してまでも問題の処理に当たろうとするならば、請求根拠が、七条において請求権を明らかに確認をされておる。そういうことで問題がここまできておる以上、未収金という扱いをしないというのはおかしいじゃないですか。
  41. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 今までの経過を私はたどってみた限りにおきましては、今の安全保障条約に基づく行政協定あるいはまた地位協定等解釈上、これはこちらは請求できるのだという立場をとり、向こう定着物に関するものだからというので、全然それを否定いたしておりますので、そこで、国際間の問題でありますから、日本国内法だけによって請求していいかどうかというようなことを検討中であり、またそこまで、請求するまでの決意が、要因が整っていないということで、まだしていない、また、あるいはしないで済むかどうかというようなことを今含めて検討中だと私は報告を受けております。
  42. 館哲二

    委員長館哲二君) 森中君に申し上げますが、外務大臣出席をされております。
  43. 森中守義

    森中守義君 それでは伺いますが、公社法あるいは公衆電気通信法のどこに、今言われたように外国問題についてはこうする、あるいは国内料金徴収についてはこうするという区別がありますか。といいますのは、国内の問題ではどういうような状態でもやはり請求を出されておる。外国の問題だけこういう特殊な扱いができるという公衆電気通信法公社法があるなら一つ示してもらいたい。
  44. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 公社法国内だけの問題でございまするので、国際関係のことは規定していないと私は思っております。そこでこういう問題がもつれてきたのだと思っております。
  45. 占部秀男

    占部秀男君 関連。今、大臣の御答弁の中で、公社側としてはこれは請求権があるという立場に立ってやっておる。そういうことになると、これはことし一年だけの問題でなくて、ずっと歴年の問題になってくる。公社会計規程に基づくところの各年度決算には、こういう点は未収なら未収というように、明らかに出ているのですか。それともそういう点は全然出ていないのでありますか、その点をお伺いいたしたい。
  46. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) これは債権債務関係が確定いたしておりませんので、日米合同委員会結論を待って請求するかどうかをきめるのだそうでありまして、従いまして、これは未収金の方には計上していないそうでございます。
  47. 占部秀男

    占部秀男君 それは私はどうも受け取れないと思うのであります。国内法なら国内関係だけと今大臣が言われましたけれども、少なくとも公社の方で請求権があるとするならば、その請求権があるということを明確に会計上にも表わして、その後に日米合同委員会なら合同委員会の中において話し合いをするというような手続を取られるのが私は至当だと思う。会計規程に基づく決算にも全然出ていないということが、向こう側に言わせれば放棄と同じような結果になるのではなかろうかと私は思うのでありますが、そういう点を明確に一点だけ……。
  48. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 公社側は、これが日米合同委員会結論を得たならば、これをはっきりさせるというので、これは未収金の中に計上していないということでありまして、公社側としては日米合同委員会決定待ちで、出方で決定するということで今日まできている経過であります。
  49. 森中守義

    森中守義君 さっき私がお願いしましたように、一つそういうようになっている根拠を示して下さい。米軍公衆電気通信との関係は、別に協約ができておる、その協約にもこういうものがない。ないということは、およそこの種料金問題については国内法一本でいくのだ、こういう解釈を私は取らざるを得ない。そこで、何回も申し上げるようだけれども、七条による請求権があるから問題を出したというならば、当然会計規程に準じてその取り扱いをすべきじゃないですか、その辺の根拠をもう少しはっきりして下さい。
  50. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) これは公社米軍との間の供給に関する私契約と一応見ておりますので、今、係官からそのいきさつを申し上げます。
  51. 岩元巖

    政府委員岩元巖君) ただいま大臣が御説明申し上げました通り公社米軍との間の私契約でございますので、この紛争料金につきましては、合同委員会決定によって請求をするという取りきめになっておるわけでございます。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 関連。今まで承ったところでは、了解に苦しむ点があるのです。日本としてはこういう主張を持っておると、そういう立場合同委員会に臨むべきで、その立場がはっきりしていないのです。ですから、合同委員会に臨んでいって何を日本は言おうとするのか、そこが問題だと思います。それから、この種の問題を、まあ半年とか一年というならとにかく、数年にわたって、今、政府委員お話のように、係官の人だけがやっておっていい性質のものかどうか。日本に確固たる根拠があるものなら、やはり国際上の問題ですから、責任ある地位の人がもっとしっかりした交渉をやるべきだ。その点をお伺いいたします。
  53. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 通信分科委員会補助機関でありますから、これを、日米合同委員会ですか、これに持ち出して当然交渉すべきものだと思っておりますし、私はそれを希望いたしております。
  54. 森中守義

    森中守義君 私は少しいろいろ読んでみましたけれども、これはやはり特別扱いされるべきものじゃない。公社法あるいは公衆電気通信法一本で処理すべきものなんです。それで、会計規程の二十八条が生きている。こういう措置をしなければいけない。であるのに、わざわざこういう措置をとられているというのは、郵政省あるいは電電公社が純粋にその道を踏まないで、合同委員会にかかっているという特別な配慮あるいは政治的な考慮、こういうものがこういうふうに問題を発展させてきていると思うのですが、どうですか、大臣
  55. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) これは、まず独立後の出発点からそういうふうな取り扱いをいたしたものでありまして、お説のような意見も私は立つと思いますけれども、今日までの経過では、このように長引いたのは私も遺憾に思っております。十分この点は私も研究いたして、なるべく早く決定いたしたいと思っております。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。新しい安保条約は、日本に不利になる点をこれを改善して有利にするとういうような建前であったはずであります、政府の言い方によれば。従いまして、新しい安保条約に基づく行政協定につきましては、今のような点があったならば、なぜ新しい行政協定においてこういうことも明確にしなかったか。そしてまた公社法国内料金だけについての適用であると言われますが、新しい行政協定に基づいて、そういう問題があったならば、公社法もやはりそう改正すべきだと思うのですよ。あるいは改正しなければ、特別立法をし、国内法において処理すべきはずであります。ほかの問題については皆そうなっておるでしょう。行政協定ができてきて、他の必要なる国内法というものがみんな制定されておるのですよ。そういう努力をなぜしなかったか。ですから、こういうようなあいまいな状態が出てくると思うのです。その点はどうなんですか。安保条約日本の不利な点を改善すると言いながら、ちっとも改善されていないじゃありませんか。
  57. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 私の承っておるところでは、行政協定地位協定にかえる際に、やはり努力はされたようでありますが、ただ、向こうは、これは日本側の不利な点だとか何とかでなしに、初めから、払わぬでもいい、さっき森中さんが御指摘になったように、定着物だ、こういう見解で、そのままきたので、それで今のような結果になっておると思っております。努力はしたということは私は聞いておりますが、不幸にして結論を得られなかったのだと承知いたしております。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連して。今、不利な点であるとかないとかいう問題じゃないのです。それはアメリカの方の主張なんです。日本の方の主張としては、それだけ請求権があるという主張に基づいて数十回やっておるのでしょう。それでなければ、そんなに協議する必要はないじゃありませんか。日本立場において折衝するのか、アメリカの立場において折衝するのか。そういう点は何もこの問題だけじゃないのですよ。全体的な行政協定なり、安保条約なり、いろいろな問題について、政府側の答弁を聞くと、まるでアメリカを代弁して答弁しているようです。日本立場答弁して下さい。
  59. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 従来の関係からいきまして、私どもも最大の努力はいたしておりますが、今のように、アメリカ側の立場ではなく、日本側立場主張させましても、両方意見が合わないというところが現状でございます。
  60. 森中守義

    森中守義君 もう一回念を押しておきますが、行政協定の七条によって明確にこれは請求権がある、徴収し得べき筋合いのものであるという確認は今でも変わっておりませんか。
  61. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 電電公社としてはそういう主張を持っております。
  62. 森中守義

    森中守義君 そういうようなことを大臣の方で言われるならば——合同委員会でどういう扱いをするかは、これは別問題です。郵政省あるいは公社としては、当然会計規程二十八条によって調定を終わるべきであるし、年間の歳入見積もりに入れ、あるいは決算に出すべきが私は至当である。——それをしていないということは、高度な政治的な配慮、特段の考慮がめぐらされて、故意に公社法公衆電気通信法を曲げておると私は思いますが、どうですか。
  63. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 先ほども申し上げましたように、アメリカ側としてはこれは定着物関係だから払わないでもよろしいという観点に立っておりますので、これを直ちにこちらの債権なりとして掲げることはどうかということで、今まで延びてきたのであって、急にこれをただいまから債権として計上させるということは、もう少し私は検討を要することだと思います。
  64. 森中守義

    森中守義君 それでは、国内の場合に、おれは払わないと言った場合には、そういう措置をしますか。相手が払わぬと言っておるから、もちろん払わないのは払わない理由がありましょうけれども、払わないという場合に、これと同じようなことをしますか。あなたは国内法一本でいくべきだということを、おおむね了知されたようです。アメリカだからといって、特別なそういう配慮は許されますか。
  65. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) 国内は厳密に公社法の適用がありますが、国際関係になっておりまして、特に行政協定という——地位に関する協定というような、安保条約から出てきたものの解釈関連いたしておりますから、にわかに私は決定しがたいのじゃないか、こう申し上げておるのであります。
  66. 占部秀男

    占部秀男君 関連。今、大臣は、行政協定解釈に関することだからと言われるのですが、問題は、もう五、六年も前からの、独立してからこっちの問題であって、しかも公社としては請求権があるということの建前に立ってやっておると大臣も言われておる。そうするならば、少なくとも決算上も明確にして、その立場というものを明確にした上に立って交渉するのが、当然独立国としてのあたりまえのやり方であると私は思う。特に公社会計規程でも行政協定の問題であるから、これを決算上出さなくてもいいんだと、あるいは明確にしなくてもいいんだと、こういうような規程は私はないと思うのですけれども、この点、大臣再度一つお伺いしたいと思います。
  67. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) これは独立以来の長い懸案でございまして、電電公社としても、郵政省としても会計検査院の同意を得まして、こういう国際間の条約に基づく不確定な問題でございますので、会計検査院もこれを未収金として掲げないことを了承していると私は承っておりますが、できるだけ早くこれを解決するように努力すべきでありますが、今直ちにこれを債権とすべきだということをここでお答えをするのは、少しまだ時期でないと思います。
  68. 森中守義

    森中守義君 今国内の問題については分科会あるいは決算等で再度審議することにしまして、外務大臣に伺いますが、先般の安保条約の改定の際に、行政協定はどういうように主張されましたか。私はしばしば日米合同委員会のあり方、権限、こういうものが少なくとも当を得ていない、ことにNATOと比べた場合にそのことが著しく言える、こういうことでいろいろ問題があったと思う。しかるに、実際改定された内容、すなわち行政協定から六条協定に変わった内容を見てみますと、ほとんど写しかえられているにすぎない。どういう点を主張されましたか。
  69. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申し上げますが、全般的には御承知のように行政協定というものは、安保条約の改定に伴いまして地位協定というものに変わったわけであります。この地位協定の持っております性格と申しますか、その内容は、NATOの諸協定にありまする地位協定と全く同じものになっておりますところが特徴でございます。一番私どもかねてから遺憾に思っておりまして今度これが解決された大きな点は、いわゆる直接雇用——日本人の労務者を米軍が直接に雇用する一という点を間接雇用に改めた点が大きいのでございますが、いろいろと問題点、こまごまあげますと長くなりますからやめますが、要するに、そういう点で日本立場というものが日米対等の立場に立って交渉する、こういう点に変えられたことが一番根本的な大きな問題だと思います。
  70. 森中守義

    森中守義君 今までの行政協定地位協定と比べてみますと、全く変わっていないのです。いわんや合同委員会の任務、権限、こういうものも今だいぶ変わったとおっしゃるけれども、どういう点が変わっているんですか。そのまま写しかえてあるんじゃありませんか。もう少し具体的に説明して下さい。
  71. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 合同委員会は、これは日米の間で諸問題を協議する機関でございまして、その内容はおっしゃる通り変わっておりません。しかし、相互に両方が問題を提起すればいつでもこれが議題になり、お互いが協議して決定するという性格は、全く対等のものであると考えております。
  72. 森中守義

    森中守義君 合同委員会の構成はどうなんですか。日本側はいわゆる文官、アメリカ側はすべて軍人、こういう関係で構成されておるようです。どうですか。
  73. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 合同委員会は、地位協定の運営上起きてきますところの問題を協議する機関でございまして、日本側外務省アメリカ局長日本政府の代表になっております。で、アメリカ側は在日米軍参謀次長が任命されております。なお御承知だと思いますが、補助機関として各種の委員会が設けられておりまして、それぞれの関係の、その事項に関する各省の代表が委員長に任命されておるのであります。さようなことでございまするが、現在原則として二週間に一度会議を開催するほか、必要に応じて両政府間の代表において日米両国事務局を通じまして、合同委員会補助機関として設けられておる分科委員会を通じて協議し、協定の円滑な実施を期しておる、こういう状況でございます。
  74. 森中守義

    森中守義君 多少意見になりますが、日本側は文官である、アメリカ側は武官である、こういうところに私は合同委員会の根本的な問題があると思うんです。私は先刻、アメリカ側が提案をして日本が同意をしなかったもの、日本提案してアメリカが同意しなかったもの、こういうことを資料として求めておりますが、少なくとも私が今まで聞いた限りにおいては、問題は日本側は文官、アメリカ側は武官、そこに問題の根本的な焦点がある、こういうように聞いておりますが、そういうことを感じませんか。
  75. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは主として日本国内に起きる事象でございますので、先方は駐留いたしておりまするアメリカ軍当局がこれに当たるということは当然であろうかと思います。しかしそのよって関係するところのものは、日本のいろいろな行政全般にわたる問題でございまするから、日本側としては外務省を窓口として各省が関係する事項を取りまとめる、かようなことになっておるわけでございます。
  76. 森中守義

    森中守義君 アメリカ側は駐留軍代表でなければならぬとする規定がどこにありますか。地位協定の二十五条の二項では別に代表の資格は言及しておりませんよ。日本側代表一名、アメリカ側代表一名、こういっております。どこにそういう根拠がありますか。
  77. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは事柄の性格によると思うのでありますが、アメリカの軍隊が日本におります、そのおりますることによって生ずるもろもろの事象について協議するわけでございます。そこでアメリカの方は、その軍のもろもろの行動について責任のある者が出るわけでございます。これによって関係を生じまするわが方の立場としましては、これは行政上のいろいろな点に問題が生ずるわけでございます。そこで農林の問題については農林省が関係をするし、あるいは法務上の問題については法務省、また文教に関係する点もありますから、文部省が関係する、かようなことになりますが、各省一々ではいかぬのでございますので、日本側は外務省がこれを担当する、こういうことになっておるのでありまして、これはアメリカ軍が日本に駐留するというその地位のよって生ずる結果でありまして、これは当然のことと考えます。
  78. 森中守義

    森中守義君 たとえば砂川の問題にしてもあるいは内灘の問題にしても、ほんとうにあなた方は心の底から、米軍主張合同委員会における米軍主張を当を得たものと思いましたか。こういうことが響いてある、これは読売新聞が出した「太平洋の鎖」という書物、この中に合同委員会のことに触れて、本来日本側は外務省、アメリカ側は国務省出先とで構成さるべきものであるということを担当官も言っておる、こう書いてある。事柄の性質と言われるけれども、やはり合同委員会ということは、先刻言われたように、対等な立場ということであるならば、やはり外務省の出先でやるということが正しいんじゃないですか。
  79. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いろいろと問題が起きまする場合、われわれはわれわれの立場から見て、先方の言うことが不当であれば、これに対してわれわれの立場を説得いたします。そうしてそのようになっておることもたくさんあるわけでございまするが、またいろいろ問題が起きたときに、この障害を除けばこれができるという場合については、われわれもその障害を除く立場について努力し、またそれによって生ずるいろいろな金銭的な負担等については、われわれが出すべきものとアメリカ当局が出すべきものと、それぞれきめて、これを交渉して問題を処理していく、こういう立場になっておるわけでございます。そのお読み上げになりました書物の中で、だれがどう言ったかは承知いたしませんけれども、私は、現在その地位協定の文字通り合同委員会がかかる構成で行なわれておるということに対して、これはけっこうだ、これで十分やっていける、かように思っておる次第でございます。NATO諸国の場合には私はよく存じませんけれども、おそらくさようになっておると思います。ということは、すべてその事柄が起きる場所における責任者が、その問題の当事者でございますから、その当事者同士が話をするという原則からいえば、これは当然の構成であると思うのであります。
  80. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連
  81. 館哲二

    委員長館哲二君) 森中君よろしいですか。——岩間君。
  82. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちょっと外務大臣にお伺いしておきますが、ただいまの問題は、昨年当予算委員会でも非常に問題になった日米合同委員会の合意書ですね、三十三項目であったと思うのでありますが、その中に通信関係の合意書があるはずであります。ところがこの合意書が、当委員会の希望にもかかわらず、明らかにされていない、その内容が私は今の質疑を先ほどから聞いておりまして、どうもその合意書による秘密協定があるんじゃないか。小金郵政大臣答弁は、先ほど問題になりましたように、どうも日本側を代表しておるとは考えられない。アメリカの代表機関のような発言をしておる、そのような発言をせざるを得ないその根拠の中に、はっきり日米合同委員会の合意書によって秘密協定がなされておる。それが国民の前に明らかにされていない。公社だけの範囲内でその問題を考えておる。政府がそれをほうっておる、そういう体制の中にあると思うのでありますが、まず私がお伺いしたいのは、かような秘密協定があるかどうか。さらに新しい安保条約によっては、地域協定との関連におきまして、これらの合意書は、これは全面的に改定さるべきはずだと思うのであります。その改定が今日なされておるかどうか、この点が非常に重大です。聞くところによると、合同委員会のやり方から、その内容がそのままほとんど継続されて旧安保体制におけるところの施行の状態になってきておるということを聞いておる。この点について外務省は明白にしてほしいと思います。
  83. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまの御質問の点に対しましては、先般の安保条約審議の際の当国会におきまして、合意書の要旨を提出申し上げたと伺っております。この内容については、今お話のような秘密のものは全くございません。  なお念のため申し上げますと地域協定ではございません、地位協定でございます。御承知を願いたい。
  84. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一つ。あなたは秘密協定がないとか何とか言っておりますけれども、ないと言って出してみたら、この前の基本労務協定のようなものが出てきたわけです。基本労務協定御存じでしょう。秘密がないと言ったところが、分科会でこれを徹底的に追及していくと、大へんなことになっているんです。スパイ協定やっておるわけです。ですから、ないと言っても、ただ三十三項目だけ出して、項目の課題だけ出しても、その内容にはこれは関係ありませんよ。それでないと言うなら、私は当然その内容を出してほしいと思う。通信関係の合意雷、この実体をやっぱり政府は出して、そうして明らかにしなければならぬ。それから新しい安保条約との関連で、それがそのまま継続されておるのかどうか、新しくこれが更新されておるのかどうか、この点について何ら御答弁がなかったじゃないですか。この点について重ねてお伺いしたいと思います。明確に答えて下さい、ポイントを。
  85. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 正確なお答えを申し上げますが、昨年の三月二十五日、この国会の委員会に対しまして要旨並びに内容を資料として御提出申し上げておる由でございます。
  86. 岩間正男

    ○岩間正男君 内容出しておりませんよ。
  87. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 内容を出しておると承知いたしております。
  88. 岩間正男

    ○岩間正男君 内容なんか出していませんよ。要旨だって全く上っつらなんですよ。政府委員、さっき言ったんですけれども、政府委員わかっているんですか、どうですか、内容を言って下さい。はっきりわかっているのでしょう。
  89. 館哲二

    ○委長員(館哲二君) 政府委員の方で答弁することはありませんか。
  90. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) お答え申し上げます。いわゆる合意書は合同委員会の場を借りて、協定運営上必要な両政府当局間の行政的取りきめや、準則をきめたものでございます。この日米協定のもとにおける合同委員会の合意書に関しましては、合意に関して実施されている主要事項の説明書というものは、第三十四国会におきまして、三月二十五日、衆参両院関係特別委員会に参考としてその要旨を提出しております。それ以外には秘密は一切ございません。
  91. 岩間正男

    ○岩間正男君 内容を出したから聞いているんです。あなたの出しているのを読んでごらんなさい。片々たるものだ、実に……。今私はここへ持ってきます。文章持ってきてみますが、こんなものでわかりっこない。内容じゃない。上っつらをなでたところの単なる説明にすぎない。内容を出したとあなたさっき言ったでしょう。外務大臣違いますよ、内容は出していませんよ。はっきり調べて言って下さい。調べて答弁して下さい。そんなごまかしじゃだめです、今資料を持ってくるから。
  92. 安藤吉光

    政府委員安藤吉光君) お答えいたします。当時提出いたしました合意議事録の要旨は、相当膨大なものでございまして、通信に関する要旨についても、数十ページだと記憶しております。
  93. 森中守義

    森中守義君 外務大臣、在来の合同委員会の運営の内容は、私たち聞いたことによりますと、要するに泣く子と地頭には勝てないという表現が使われたり、あるいは軍事的優先という言葉を使われてくれば、どうしても日本側主張が通らない、こういうことをよく聞くんです。だから調達庁長官、私は要するに資料を今求めておりますが、その資料が証明すると思う。日本側主張がどれだけ通り、アメリカ側の主張がどれだけ通ったか、これを比べてみれば一目瞭然であろうと思うのですが、私が調べた限りにおいては、日本主張は十分の一も通っていない。みんなアメリカの出された要求を日本側はいやおうなしに同意している。これが文官と武官との会議における重要な問題なんです。あなたでも出席をされて、米軍が軍事目的を遂行するために必要だ、こう言われた場合に、そのことが日本側にとって著しく不利であると思ったことでも、結果的には軍事目的を遂行するという、そういう主張のために——最後まであなたは主張を貫いていますか。
  94. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 念のためにこの合同委員会の構成を申し上げますが、アメリカ側は参謀次長、これが代表になっておりまして、陸海空の参謀各一名ずつが代表代理になっております。大使館の一等書記官、それからマーグ、すなわち在日米軍事顧問団代表、この二人がアドバイザーということで出ております。日本側はアメリカ局長が代表、調達庁長官、防衛庁の参事官、アメリカ局の参事官、大蔵省の財務参事官、法務省民事局長農林省農地局長、これらの方が出ているのであります。  今お話日本側が言うたことが、いわゆる泣き寝入りばかりになっている、こういうお話でございますが、私はさように聞いておりませんのでございます。これは交渉でございますから、いろいろあるわけでございますが、しかし、これは大所高所から見て、日本の防衛、日本の安全と平和に寄与するために在日米軍がいるのでございますから、われわれもそうした点から見て、日本の安全を確保するためにふさわしい措置という場合には協力していくというのが、これは決してアメリカのためではなくて、日本のためである、こういう見地から、同意すべきものには同意するという筋だと思うのであります。私が参謀次長とやり合う——ということじゃなかったかもしれませんが、やり合ったらどうかというふうにとれるのですが、そういうことは私は考えません。私はアメリカ本国の国務省の長官とやり合うのが日本外務大臣立場だと、かように思っております。
  95. 森中守義

    森中守義君 私が言うのは、かりにあなたがそうなった場合にはどうかという意味なんで、その辺のことは私もよく知っておる。すなわち、外務大臣がかりにその会合に出て、軍事目的の遂行のために、と言われたときに、あとどうするかと、こう聞いておる。それが今まで日米間の合同委員会状態ではないかと、こう聞いておるのです。どう思われますか。
  96. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、ただいま前段にお答えしたことで尽きていると思いますが、われわれとして、国内的ないろいろな問題については、十分これは日本政府として処理すべき立場があるのであります。また、それについて、アメリカ側にこういう点ははなはだ困るという点があれば申しますし、また、あくまで主張すべき点であると考えれば、あくまでおりず主張するわけでございます。なお、全体の立場から見て、これは必要である、このことをすることが日本の安全と平和のために必要であるということであれば、その主張というものをいれることにやぶさかでなかろうかと思います。ただ、私がとおっしゃるのは、私が外務大臣として、そういう立場におるとおっしゃるのであれば、それは私は筋が違うと思います。私は、外務大臣というものはもっと大きな立場先方の最高首脳と話し合う立場であるということを申し上げたわけです。
  97. 森中守義

    森中守義君 ちょっと後段は意味の取り合いが違うようですが、それはあえて申しませんが、要するに、今まで世界の歴史が示めすように、文官と武官が何か争いをした場合に、必ずこれは武官の方が優先的に物事を扱われておるということは、事実であります。でありますから、合同委員会日米対等のものであるとするならば、国務省の出先が、しかもNATOにおいては、当事者間が外相級をもって理事会あるいは軍事委員会に出ておる、こういう記録がある。NATO諸国でそういうことが行なわれておるならば、日本の場合でも、武官をオブザーバーにしておいて、アメリカの正規の代表を大使館あるいは国務省の出先等にするのが、大体において筋じゃないかと思うのですが、そういうように変えていく御意思はありませんか。いわゆるこの地域協定の中に、そういうものは全然規定も何もされておりませんから、これは両者の話し合いによってできると思う。その方がより私は、合同委員会の任務からしても、また対等であるとする日本主張からも、しごく適当であろうと思うのですが、どうでしょう。
  98. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その点でございますると、合同委員会でどうしても話がつかぬ場合には、これは両国政府間の問題に上がるということになっておりますから、そういう問題では、たとえばこちらにおりまする大使との間に話をする、大使はもちろん国務省の訓令を仰いでやるわけでございますから、それがどうしても話がつかなければ、両国政府間の直接の話し合いになる場合も、道があるわけでございます。さような点で、これだけですべてだというのではないわけです。さらに、この安保条約の運営の方法といたしまして、安保協議委員会というものがあるわけです。これは、御承知の通り、わが方では防衛庁長官と私——外務大臣が出ております。それから先方では、在日のアメリカ大使、それから太平洋司令官——今、フェルト大将ですが、これがやっております。この安保条約の運営の上に必要なことを随時協議する、双方から申し出ればそれを開く、かような規定になっておることは、森中さん御承知の通りであります。
  99. 森中守義

    森中守義君 それでは、この問題の最後にもう一つ伺っておきますが、あなたがおいでにならないときに、合同委員会にかかっている電電公社の五十億の未収金——私はあえて未収金と申しますが、この問題御存じですか。
  100. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 承知いたしております。これは終戦処理費あるいは安保特別処理費というもので、日本で建設された先方施設に対しての運用料金の問題です。
  101. 森中守義

    森中守義君 その論拠は、行政協定の七条による請求権があるという確信を外務大臣はお持ちですか。
  102. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 七条は「合衆国軍隊は、日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件で、日本国政府が有し、管理し、又は規制するすべての公益事業及び公共の役務を利用することができ、並びにその利用における優先権を享有するものとする。」となっており、この条文によりますると、各機関に適用されている条件よりも不利でない条件、こういうことで考えることになっております。
  103. 森中守義

    森中守義君 外務大臣、もう少し正確にお答え下さい。要するに、簡潔に言って、請求権日本側にあると言っておるが、そのことはあなたも確信をお持ちであるかどうか、こう聞いておるのですよ。
  104. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この点に関しましては、長い交渉をやっておるわけであります。わが方の主張に対して、漸次先方も理解を深めつつある、かように認識いたしております。
  105. 森中守義

    森中守義君 そういうようなことであれば、もう約十年もかかっておりますね。この種の問題が十年かかっても片がつかないということは、結局、合同委員会の双方の立場というものが、日本政府は確信があると言い、それに対して相手の方は、むしろ、何といいますか、泣く子と地頭には勝てないというたぐいのいわゆるへ理屈をくっつけて、今の問題がおさまらないというのは、やはり対等の立場じゃない、こう私は思うのですが、どうですか。それと、この問題の解決の見通しはどういうようにお考えですか。
  106. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ありていに申しますと、先方は、自分の金で作ったものだから安くしてくれてもいいじゃないか、こう言うわけです。それから、日本の官公庁でいえば、警察は非常に安い電話を使っているじゃないか、あるいは新聞社の料金は非常に安いじゃないかと、こういうようなことを言うわけです。そうじゃありませんと、こう言っているのが私どもの立場で、お話のように、十年近くかかっているわけです。しかし、私がなりましてからも、この問題については、さらに、アメリカ局長合同委員会委員長をしておりまするが、非常にピッチを上げてきておるのであります。先ほど申し上げましたように、漸次わが方の主張について先方は認識を深めつつある、かような段階でございまして、行く先のことをこの席で申し上げるということは、これは交渉自体に対してもかえって好ましからざる影響がございますから、この程度に申し上げておきたいと思います。
  107. 森中守義

    森中守義君 総務長官にお尋ねいたしますが、あなたは昨年沖縄においでになりましたね。沖縄で何を見てこられましたか。具体的に習うならば、日本国民である沖縄の住民の状態をどのように見てこられましたか。
  108. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 昨年暮れ沖縄に参りまして、各方面の状況等を見ましたが、第一に感じますることは、沖縄の農村におきましては非常に生産力が悪くて、農村の状態はさらに向上をさせなければいけない状態であるということが一つ感ぜられました。なお、米軍施設等がございまして、それに関連する産業あるいは役務の提供をいたしておりまするものにつきましては、相当の生活の向上が見られて参りました。
  109. 森中守義

    森中守義君 総理府の設置法九条によれば、沖縄の全般のことについては、あなたは知っておらなければならない、こういう規定がある。そこで伺いますが、一九五一年から五九年までに、あるいは現在まで、沖縄で米兵によって日本国民がどういう被害を受けたか、あなた御存じですか。お調べになっておりますか。
  110. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 数字をただいま明らかにいたしておりませんけれども、演習場に入った沖縄住民が、米軍によって射殺された、あるいは演習場に近寄った者が流れだまに当たったというような事態が幾つか起こっておることは承知いたしております。
  111. 森中守義

    森中守義君 もう少し具体的に、今申し上げたような設置法九条で一全部お知りになっていなければならぬはずだから、人権が犯された資料を一つ出して下さい。そこにお持ちであれば全部発表して下さい。
  112. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 米軍等によりまして被害を受けましたものにつきまして、すべてを今承知いたしておりません。調べるだけは調べて資料として提出いたしますが、私の存じておりまするところでは、先ほど申し上げたような事件が幾つか起こっておることは事実でございます。
  113. 森中守義

    森中守義君 私は、琉球政府が発表した統計をここに持っておる。それをあなたに念のために申し上げておきましょう。沖縄における米軍の犯罪、こういうことで、琉球政府が発表したものです。それは、五一年から五九年の九月まで、殺人が九件、殺人未遂が四件、強盗が二百三件、強盗傷害が三十一件、強盗未遂が十五件、強姦が五十件、強姦未遂三十件、傷害五百三十九件、脅迫暴行が五百二十二件、窃盗が六百三十二件、その他が千三百七件、合計して三千三百四十二件という、いわゆる沖縄県人——日本国民が米兵によって人権を侵害された事実がある。これで沖縄における日本国民の人権が保障されるとお思いですか。外務大臣それから総務長官、お二人とも御所見を承っておきたいと思います。
  114. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) ただいまおあげになりました数字の相当部分は、いわゆる米兵の犯罪と申しますか、いわゆる人権じゅうりんと申しますか、特に米兵が沖縄県人目当ての人権をじゅうりんしたという事件ばかりでなくて、一般に起こり得る一般の犯罪も含まれておると思います。しかしながら、たとえどのような事件でありましょうとも、そうした幾つかの殺傷事件その他が起こりまするということは、はなはだ遺憾なことでございます。もちろん沖縄の統治を根本的にきめました大統領命令におきましては、十分に人権の尊重と、それから民主主義の基本に立った施政をすべきことを命じております。従いまして、それに従って沖縄を統治をいたしておりまする民政府は、その原則に従ってやるべきであると思いますが また、やっておられることと存じますけれども、なお、そうした問題につきましては、十分日本政府といたしましても、高い関心を持ちまして、そうしてアメリカ政府との間の話し合いを進めて参りたいと考えております。
  115. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そうした犯罪ないし人権じゅうりんが放置されているということでありますれば、重大な問題でありますが、これらに対しましては、刑罰あるいは補償ということが行なわれているのであります。なお、そうした犯罪ないし人権じゅうりんというものは、主として初期においてなされたものが多いわけでありますが、漸次米軍当局の沖縄の諸君に対する認識も深まり、また、沖縄在住の同胞の生、活感情になれるに従いまして、そういう犯罪というものは少なくなってくると思いまするし、また、そういうことが起きませんように、われわれとしても十分なる関心を持ちまして、アメリカ軍当局、アメリカ当局にこのことも強く要請いたしている次第でございます。
  116. 占部秀男

    占部秀男君 ちょっと関連して。今の総務長官の御答弁の中で、森中議員の質問に対して、沖縄の人の人権が犯されているのじゃないかということで数をあげたところが、その数について、一般犯罪と——人権ばかりではなく、一般犯罪的なものも含まれているとかなんとか、どうもちょっと私には解せないのです。生命財産その他の安全を保障されているのが人権なんだ。今出された森中君の質問は、全部が沖縄県人というか、沖縄の人の人権に関する問題じゃないかと私は考えるのですが、それはどういうことなんですか。
  117. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 私の言葉が足りなかったかとも存じまするけれども、もちろん生命、身体を侵害いたしますのは人権じゅうりんでございますが、沖縄の施政権を持ち、あそこにいる米軍の将兵が、特に沖縄県人であるという意味において、特殊な意識を持って犯した犯罪のほかに、一般的な、金がなくなって強盗に入ったとか、酔っぱらってけんかをして殺したとか、そういう犯罪も含まれているでありましょうということを申し上げた次第でございます。
  118. 占部秀男

    占部秀男君 重大な問題です。どうもあなたの答弁はおかしいのです。被害者は沖縄の人でしょう。被害者は沖縄の人であり、日本人でしょう。沖縄の人であり、日本人でない人の場合を言っているわけではないのです。そうするならば、特に沖縄県人を意識したとか、特に意識しないとかいったところで、被害者は沖縄県人じゃありませんか。沖縄県人の人権が侵害されたということじゃないですか。その点はっきりして下さい。
  119. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) もちろん沖縄県人の人権は侵害されているわけでございます。その点においては何ら私は異をはさむものではございません。
  120. 森中守義

    森中守義君 小坂さん、あなたは今の人権侵害の事実は年を追うて減少してきているというようなことを言われました。そうだとする資料がありますか。また、犯罪の内容を逐一理解されて、外交交渉にかかっておりますかどうか。私が今申し上げた琉球政府の発表では、被害はむしろ増高しておりますよ。年を追うて多くなっている。この事実をどう思いますか。その辺のことをもう少し、こういう群雲を把握をして、外交交渉にかけたとか、その結果どうであったか、そういうようなことを懇切に説明して下さい。
  121. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、一般的に申しまして、占領初期よりも、その後においてだんだんアメリカ軍当局が気持が変わってきた。これは、わが国においても、占領初期と講和発効前後に至るまでには、だいぶ変わったわけでございますが、そういう点がございました点を一般的に申しましたのであります。現在においては、ことにアメリカは日本人に対する非常な尊敬心を深めてきているのでありまして、これはやはり沖縄においてもそういう傾向があろうということを、一般的に申したのでございまして、特に数字を持っているわけではございません。しかし、そうしたことが少なくなろうと多くなろうと、多くなればもちろんいけません。少なくなろうとも、そういうことがあっては困ることでございまして、これはわれわれの立場に立ちまして、十分理解するように、アメリカ側に対して強く申し入れたいという、私の所信ないし希望を申し上げた次第でございます。
  122. 森中守義

    森中守義君 今までどうしたんですか、今までは。小坂さん、どうも、私はこういうふうに事実をあげまして、こういうことがあると、御存じなのかどうか、こう申したところが、漸次少なくなっておるということで、事実は、あなたは肯定されたわけですね。肯定したならば、それをどういうように外務大臣としては扱ってきたのか。今の話は、これから先はこうありたい、こうあるのが望ましいということで、そういうことで私は沖縄県人の人権の保障はできないと思う。その点をもう少し明らかにして下さい。
  123. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この関係は、森中さん御承知のように、施政権はアメリカにあるわけでございまして、一応こちらの立場に立って申しますることは、保護が特に与えられないというような点に対しては、抗議する方法もあるわけですけれども、われわれ、施政権者の立場にないものでありますから、それが言えない、こういうことであります。そこで、そういう問題に対して、一般的に認識を深めさせていくということが、私どもの立場からする最善の措置である、こう思ってやっておるわけであります。この点に対しては、私は十分理解を深めさせておると、確信を持っておる次第でございます。
  124. 森中守義

    森中守義君 それじゃ申し上げますが、大統領命令の十二節に、さっき総務長官が言われたようなことが明示されてある。これは、沖縄県人に対する外交権がアメリカにあるのか、日本にあるのか、この議論はいろいろ分かれておるようですが、私は、やはりこれは、沖縄県人は明らかに日本の外務省によって生命、財産が保障されるべきだ、その保障のために外交交渉があり得ると、こう思う。そこで、今まで発生したこの種問題に対してどういうように取り扱いをしてきたのか、もっと具体的におっしゃっていただきませんとね。これはもう人命に関することである。財産に関することですよ。もうちょっと具体的におっしゃって下さい。
  125. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今おあげになりました大統領命令の十二節は、いろいろございますが、一番終わりのところに、民主主義国の人民が享有する基本的自由を保護しなければならないということがございまして、沖縄同胞の基本的な自由というものは保護されることになっておるのであります。で、このことが保護されないということになりますれば、われわれの方からオファーすることができるわけであります。いわゆる外交保護権というものは現在ない立場にあります。そういう立場であります。要するに、基本的に日米双方が理解し合って、   〔委員長退席、理事梶原茂嘉君着席〕そして沖縄の特殊性またはそこにおる住民各位の生活並びに自由の保護ということについて、アメリカ側が一般的にそういうものを十分考えにゃいかぬ、またそれに保護されていないという事実があれば、われわれがそのことに対してアメリカの理解を深める、こういう立場におるわけであります。
  126. 森中守義

    森中守義君 もう一つ具体的な問題として、出版物等は、これは十二節によって適切な保障が与えられておりますか。
  127. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 沖縄に適用されまする刑法によりまして、琉球政府の許可制になっております。
  128. 森中守義

    森中守義君 そこで、こういう愛唱歌集というのがあるのです。これが今現地で大問題になっている。要するに、許可制というところに問題がある。まあ許可制というものは、広義に解釈すれば、検閲という意味であります。今日、国際連合の憲章の及ぶ範囲において、出版物等が検閲ができるということになっておりますか。近代国家でそういうことがとられておりますか。沖縄独特のケースですよ。しかも、大統領命令の十二節によって、そういうことが許されていない。許されていないことが行なわれておるという事実を日本が、あなた方はどういうふうにお考えになりますか。
  129. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 出版物の許可制ということは、御指摘のようなことでございまして、今、琉球立法院においては、それを登録制に変えるというようなことを計画しておられるように承っております。
  130. 森中守義

    森中守義君 次に問題になりますのは、生活の状態ですが、今日、沖縄県人の生活の状態をあなた方はどういうふうに見てこられましたか。私は具体的に申し上げるならば、二百五十ドル年に要る。それに対して二百ドル収入があるかないかという状態です。のみならず、基地経済といいますか、あるいは軍事経済といいますか、まことに不安定な状態でありますから、今まで基地建設をやっていた会社が、もう基地建設が終わったのでどうにもしょがない、都合によっては日本政府に機械を買ってもらおう、こういう話も出たように聞いております。これは、あとで問題にしますメースの問題にからんで、多少その問題は変わってくるかわかりませんが、少なくとも物価は昨年に比べて一・八%上がっておる。しかも、土地は相当軍用地に接収され、失業者は漸次拡大をする。これが沖縄の経済の状態ですが、生活権を保障されていると思いますか。
  131. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 沖縄の現在が、御指摘のように、従来基地の経済が非常な不安定な状態でありましたことは事実でございます。従いまして、先ほど申し上げましたように、農村地帯におきましては、土地の生産力も非常に少ないものですから、農民の生活状態などは相当な困窮にありますし、また、ただいま御指摘のような、いわゆる基地建設等が、あるいは米軍並びに米人の住宅の建設等もほとんど完了に近い状態でございますので、それらに依存をいたしておりました人々が相当に困窮状態になっておりますことも事実でございます。従いまして、琉球政府といたしましては、この基地経済から脱却するための、いわゆる土地の生産力の向上その他の経済の進展について非常な努力をいたしておりまするし、また、日本政府にもその援助方を申し入れて参りまして、今御審議をいただいておりまする予算におきましても、ある程度のこれらの沖縄の経済の発展のための日本の援助の費用を御審議を願っておるような次第でございます。今後も、こうした方針と並びにアメリカ政府の沖縄の経済発展のための各種の援助と相待ちまして、今の不安定な基地経済から脱却するように努めて参らなければならないと存じております。
  132. 森中守義

    森中守義君 渡航の状態はどうですか。
  133. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 沖縄に対する渡航につきましては、従来相当な制限がありましたが、最近は著しく増加をいたしまして、昭和三十五年中に総理府におきまして身分証を発行いたしましたのは、約一万四千五百件でございます。
  134. 森中守義

    森中守義君 二十七年の政令の手続によって、総理大臣の名前でいわゆる証明書が出る。それを向こうが断わるということがありますか。
  135. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 渡航の手続は、まず米国政府の入域許可書が得られましたものに対して、それに対して総理大臣の身分証明書、いわば旅券のようなものでございますが、これを発給するのでございまして、総理大臣の身分証明書は、その入域許可書があった後でございますから、こちらが発給してから断わるということではございません。
  136. 森中守義

    森中守義君 日本の主権があるということは、条約三条が認めておりますね、そういうような状態の中で、この種本土から沖縄へ、沖縄から本土へという渡航がこのように制限をされていいものですか。主権者として、それでいいと思いますか。
  137. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 日琉間の交流がさらに拡大されるということは非常に好ましいことで、また、そうしなければならないと存じております。従いまして、事あるごとに、その日琉間の交流の拡大については、米国政府とも交渉をいたしておるわけでございます。ただ主権は、残存主権はございまするけれども、沖縄は米国が施政権を持っておりますから、その施政権の観点からいたしまして、入域を許可しない場合もあることは、これは認めざるを得ないのではないかというふうに考えておりますが、そうしたものができるだけ少なくなるように、今後も努力をして参りたいと思います。
  138. 森中守義

    森中守義君 今後の努力ということでなくて、こういう事実に立って今までどういうことをしてこられましたか。
  139. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) この入域許可を申請された方で、それがなかなかおりない、許可が出ない、あるいは拒否されたというものについて、さらに、私の方のこの総理府に付属しております南方連絡事務所等を通じまして、米国政府の理解を深めるような努力をして参った次第でございます。
  140. 森中守義

    森中守義君 その次に、最近琉球政府の立法院で、国会にオブザーバーないしは表決権を持つ正規の代表を送りたい、こういう決議が行なわれたようです。その決議は受け取られましたか。あるいは、近いうちにそれが届くと思うんですが、それに対して政府はどうお考えですか。
  141. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 沖縄立法院の議員の方々の間で、日本の国会にオブザーバーないしそれに類する者を送りたいという御意見のありますことは、私、現地におきましても伺いました。立法院の決議になりましたかどうか、まだ確かめておりません。このことは、国会にも非常な関係のあることでございますので、そうした決議が到着した上は、十分国会側と御相談申し上げて、研究をして参りたいと考えております。
  142. 森中守義

    森中守義君 これこそこれからの重大な問題であり、御指摘のように、国会でもこれは相当重視しなければならぬ問題です。そこで、私が申し上げたいのは、終戦と同時に米海軍が占領し、引き続いて条約三条で縛られた。そういう経過の中に、一体日本は、今日九十万になっている沖縄の国民に対して、何かの方法でこういうことになったとか、あるいは、ことに具体的な問題は、平和条約が国会で批准されたときに、沖縄の代表をどうしようという、こういうことはお考えにならなかったのですか。そういう経過を考えると、当然沖縄の代表を日本の国会に入れるということは、憲法が観念的に施政権がアメリカにあっても及ぶという説でありますから、当然これは、沖縄の代表を日本の国会に正規にとるべきである、こう思うのです。政府はどうお考えになりますか。
  143. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まず、この平和条約第三条によるところの潜在主権ということでありますが、これによりまして、アメリカは沖縄において行政、立法、司法の三権の権限を行なうのでありますが、これによってアメリカが沖縄に対する領土主権を獲得したものではない。従って、アメリカが沖縄に対する三権の権限を行使することをやめる場合には、当然その施政権は日本に復帰すべきものであり、潜在主権というものはこういうふうに理解する、こういうふうにわれわれ解釈いたしておるのであります。潜在主権と申しますか、原語ではレジジュアル・ソヴァレンティ、——残存主権とでも申しますか、そういうようなことを、これは三条においてはそういうことを言っておりませんが、それに関連して、例のジョン・フォスター・ダレスと、それから、アメリカではダレスでありますが、イギリスではケンス・ヤンガーが演説をしました中に、そういうことを言っておるわけでございます。従って、今お話のような、そうした沖縄の住民の代表を日本の国会に議席を持たせるということは、当時はとても考えられなかったわけでございます。現在も、この潜在主権ということが非常に特殊の例でございまするので、それに対しての扱いをどうするべきかということは、これは慎重に考えなければなりません。現在、そういう問題があった場合に、また考慮するとしか申し上げられないと思います。
  144. 森中守義

    森中守義君 お答えがすべて、施政権の壁は破れない、どうにもならない、もっと極端に言うならば、日本大臣日本の閣僚としての所見の表明あるいは将来の予見をお述べになるのじゃなくて、すべてがアメリカの側に立っての御答弁でありますから、これ以上私は質問をしても、その価値がないようにも思います。しかし、どうしても聞いておかなければなりませんから、もう一つ伺いますが、国有財産は、今日、米軍が完全に没収しております。あえて私は没収と言うのであります。しかるに、沖縄の基地経済が危機に瀕して、しかも、自立経済が要請をされてきた。ところが、今日の沖縄における産業、経済の状態ではどうにもならないということで、国有財産を沖縄県民に解放してほしい、こういう動きがあります。御存じですか。また、おそらく大蔵省の所管であろうと思いますが、沖縄における動産、不動産等の台帳はありますか。あるならば、そのお答えできる範囲で答えて下さい。
  145. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 最初の御質問の、国有財産を沖縄の住民のために払い下げるといいますか、現在米軍は、まあ森中先生は没収とおっしゃっておりますが、管理をしておるわけでございますが、その管理を解いて、住民のために使わせるようにせよという強い要望がございます。私どもも、それはもっともなことでございますので、事業の点については十分考えて参りたいと思います。   〔理事梶原茂嘉君退席、委員長着席〕 たとえば、今度作られまする予算において御審議願っておりまするモデル農場というようなもの、あるいはさらに、今調査をいたしておりまする西表の開発等につきましては、十分そういう点を推進をして参りたいと考えております。
  146. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) もちろん私は台帳はあることと思っておりますが、ちょっとあとからお答えを申し上げます。
  147. 森中守義

    森中守義君 ここに私は、国有財産の問題は、これから先の日本政府としては、非常にお考えいただかねばならぬ問題だと思う。条約四条の(b)項で、要するに沖縄における財産権は放棄されている、そういうように条約四条はなっておりますが、その通りですか。
  148. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 条約四条には、合衆国軍政府によるところの取得されたものについての規定がございますが、これは韓国の場合はそうなっております。しかし、沖縄については、そういう規定があることは私承知しておりませんので、今藤枝総務長官からお答えいたしましたように、管理をしておる、こういう段階である、こう承知しております。
  149. 森中守義

    森中守義君 管理と没収と、そこの区別はなかなかむずかしいのですが、実際問題としては好き勝手なことをやっている。それも管理という範疇に入るというならばそれもそうでしょうが、これは事実上の没収じゃないのですか、どう思いますか。
  150. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようにはこの条約から読み取れないと思います。これは韓国の場合は、四条(b)項に、「合衆国軍政府により、又はその指令に従って行なわれた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する」、こうなっておりますが、これは韓国の場合は、御承知の軍令三十三号によって、韓国の軍政府日本人の財産を取得し所有するということになって、これが韓国に引き渡される、四条からはこういうふうに読み取れるわけでありますが、沖縄の場合にはそうではございませんで、これは管理しておるものは没収だろうと言いますが、管理はあくまで管理だ、かように承知しております。
  151. 森中守義

    森中守義君 「効力を承認する」というのですが、これは事実上の没収、また現在の実際問題としては没収状態になる、こういうことじゃないのですか。これは藤枝さん向こうへ行かれて実情をどういうふうに把握されておるか、あわせて一つ小坂さんと一緒に答えて下さい。
  152. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実情は藤枝総務長官からお答えいただきますが、さっき申し上げたように、韓国の場合は、その軍政府が軍令三十三号というものを出して、取得し所有するということをはっきり書いておるわけですね。従って、その処理の効力というものは承認される、講和条約によって承認されたわけですが、琉球の場合には、これは違います。そこで、私はそうでない、管理しておるものはあくまで管理しておる、管理権は持っておるけれども、財産の移転が行なわれたものとは理解していない、こういうことを申したのであります。
  153. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 事実だけを申し上げますが、たとえば国有財産の山林等は、琉球政府に管理をすでに移管をいたしております。それから、その他の国有財産につきましては、ちょうど日本政府日本内地にある国有財産を管理しておるような形、その所有をしているという観念を持っていないように、いろいろな国有財産の払い下げの場合などの実例を見ましてもそういうことでございますので、やはりあくまで管理という状態であると存じます。
  154. 森中守義

    森中守義君 そうすると、これは施政権の返還の際に、要するに、双方の話し合いによってこれは当然帰属するということはあり得ると思うのですが、いわゆるそれまでの間に、動産、不動産等がどういうような状態に置かれているのか、こういうことについては経過的な話し合いというものは当然行なわれてしかるべきじゃないですか。
  155. 中川融

    政府委員(中川融君) 国有財産につきましては、ただいま藤枝長官の言われました通り、あそこのアメリカ軍政府日本政府にかわって管理しておるということでございます。従って、将来施政権の返還がありますれば、当然その管理しておりました国有財産は日本に返ってくるということになると承知しております。もっとも、その間国有財産を管理いたしております関係上、何らかの形で国有財産について、ある措置をとる必要があるという場合が出てくることも考えられるのでございますが、そのような場合に、もしこれが将来日本に返ってくる場合に、もとの形のままで返せないような措置をとるというような必要が出ます場合には、当然アメリカ側は日本と相談いたしまして、将来の日本の権利なり地位というものをそこなわないような形においてのみそういう措置をとるというのがアメリカの基本的な考えのようでございます。現在西表島の国有財産を、どう処理するかという問題が起きておりますが、この問題につきましても、日本側と緊密な連絡協議をしてきております。将来の日本地位に損傷があるような措置は決してとられることはないと、かように確信いたしております。
  156. 千田正

    ○千田正君 関連して。ただいまの森中委員の御質問に対して、中川局長からお答えがあったようでありますが、現在アメリカが管理しておりまするところの日本の国有財産の管理のうちに、払い下げ、あるいはその使途を変更するというような場合において、日本側協議しておるというようなお話でありましたが、実際事前において協議されておるのか、あるいは事後において、その払い下げ等のことを実行したというようなことに対してのレポート等が日本側に送付されておって日本側がそれを承知しておる、こういうふうな場合は過去においてはあったかどうか、日本は単なる潜在主権だけを所有しておるだけであって、その管理権はアメリカに移譲しておるとしても、日本の領土権の主張は、あくまで日本側として主張しなければならぬはずである。その間の事情をはっきりしてもらいたい。
  157. 中川融

    政府委員(中川融君) 国有財産の措置につきましては、最終的な払い下げその他の措置はしていないと承知しております。すでに住民の人たちにある意味で手渡されたものもあるようでございますが、これらにつきましても、権利の最終的措置はまだしていないのでありまして、これらを全部含めまして、日本政府協議した上で、日本政府の了承する範囲内での措置をとる、かようなことになっております。西表島の件につきましても、目下日本政府協議中でございます。
  158. 森中守義

    森中守義君 そういうことになりますと、今管理ということを言われたわけですが、ヘーグ条約の五十三条、五十五条、これによってどういう解釈が出てきますか。ここでいっているのは、いわゆる敵産管理という、占領中に限ると、こういっている。日米間がそういう関係に今ありますか。少なくとも、沖縄は潜在主権がある、領土処分権があるということになると、私は、平和条約四条(b)項というものは、ヘーグ条約の五十三条、五十五条によって、いわゆる占領下にあると思いますか、どういうことですか。明らかに五十三条あるいは五十五条を侵すものであるというように考えるのですがどうです。
  159. 中川融

    政府委員(中川融君) 御指摘の通り、今沖縄は占領状態ではございません。平和条約三条によりまして、一種の潜在主権のもとに、アメリカが、立法、司法、行政の三権を行使しておるという意味で、特殊な地位にあるわけでございます。しかし、あくまでもこれは平和事態でございまして、陸戦法規の適用はないのでございます。従って、現在アメリカ側が沖縄で日本の国有財産を管理しておりますのは、陸戦法規に基づく措置ではないのでありまして、平和条約三条に基づいて、立法、司法、行政三権を持っておる。それの全部または一部を完全に行使し得る、そういう条約上の地位から、日本政府にかわりまして日本政府の国有財産を管理しているわけでございます。陸戦法規とは関係ないことは御指摘の通りでございます。
  160. 森中守義

    森中守義君 中川さん、そういう解釈がありますか。ヘーグ条約と平和条約はどちらが先にできたのですか。このヘーグ条約が示しておるのは、おそらく今日でも有効だ、日本が締約している以上。そうなると、明らかに四条(b)項のこの管理権というものは、ヘーグ条約に違反した行為だ。占領下にない、敵産管理はできない。そういう状態の中に、今のように他国の領土に入ってきて、他国の動産不動産を管理しているわけです。明らかにこれはヘーグ条約に違返しておる、こういうことになると私は思う。どうですか。
  161. 中川融

    政府委員(中川融君) ヘーグの陸戦法規は戦時中に適用になる規定でございます。平和条約が発効いたしましてからあとは戦時ではないのでありまして、平時に移り変わったのでございまして、従って、陸戦法規の適用はないわけで、平和条約によって沖縄の地位決定されているわけでございます。
  162. 森中守義

    森中守義君 どうも私はわからない。それならば、他国の領土に行って、他国の動産、不動産を管理できるという国際条約がどこにありますか。これ以外にないじゃないですか。これが私は唯一のものだと思う。だから、確かに占領状態にはない。占領状態にないところへもってきて、こういうような条約を侵犯するような平和条約に移っていったということは、明らかにヘーグ条約の違反ですよ。そうでないという解釈はどこにありますか。
  163. 中川融

    政府委員(中川融君) どういう法律上の規定に基づいて今沖縄でアメリカ軍が日本の国有財産を管理しておるかというお尋ねであると思うのでありますが、これは平和条約三条によってしておると言う以外に御説明のしようがないのでございまして、もしかりに沖縄が日本から完全に主権を分離されまして、アメリカに譲渡されたと仮定いたしますれば、当然日本の国有財産は、アメリカに所有権も全部移るわけでございます。しかしながら、平和条約三条はそこまでいわなかったのでありまして、日本の主権というものを日本に留保しているわけでございます。しかしながら、主権は留保しながら、立法、司法、行政の三権は全部アメリカに行使を認めておるのであります。従って、主権は日本にありながら、実際の行政は、領土が移ったと同じようにアメリカがするということがその内容になるわけでございます。従って、ほんとうならば、もし領土の割譲がありましたとするならば、国有財産は当然に所有権ごと先方に移るわけでございますが、領土の割譲がありません、主権の最終的な移転がございませんから、国有財産の所有権も日本政府には残りますが、これもしかし、アメリカが施政権者として、日本政府にかわってあそこで施政している間は、国有財産を管理するということは当然出てくるわけでございます。従って、平和条約三条に基づいてアメリカが現在国有財産を管理している、かようなことになると思うのであります。
  164. 森中守義

    森中守義君 これにあまり時間をとっておると時間が足りなくなってしまいますが、もうちょっと要領よく答えて下さい。私は、領土の割譲云々と、そういうことを聞いているのじゃないのですよ。他国の動産、不動産は、いわゆる陸戦のこの規定以外にはない。戦時中以外には管理できないんだ、だから条約四条(b)項というものは、これに違反をして作られたものである。だから、アメリカがあえて没収あるいは管理する、これは不当な行為だと私は言っておる。そうでないとする根拠をもう少し明確にお示し願いたい。
  165. 中川融

    政府委員(中川融君) 戦時中に敵国の財産を管理いたします、あるいは没収いたします規定の根拠は陸戦法規にあるわけでございますが、平時におきましてそういうことをする根拠は、これは条約によってできるわけでございます。従って、平和条約によってそういう根拠を得た、ほかにそういう例があるかというようなお尋ねでございましたが、たとえば、かつて日本が関東州の租借をしておりました日清講和条約によります関東州租借地、これはやはり日本がある意味で、立法、司法、行政三権を行ない、中華民国が潜在主権を維持しておった地域でございますが、ここらにおける日本の権限というものも、やはり条約に基づいたのでございまして、平時におけるそういう権限の根拠は条約にあり、条約できめますればどのようなことでもできるわけでございます。
  166. 森中守義

    森中守義君 それならば、今までできている条約は、他に条約を作れば何でもできる、こういうことですか。
  167. 中川融

    政府委員(中川融君) 条約にきめましても、たとえば国際連合憲章に違反するような不道徳なことでありますとか、条約できめても無効と解される事項もあるわけでございます。しかしながら、一国の立法、司法、行政の三権を、ほかの国に一時これを行使を認めるというような内容の条約は、これは可能であると存じます。
  168. 森中守義

    森中守義君 これはあなたは非常に簡単にお考えだけれども、すでに平和条約発効以前の条約に違反しておる。こういうことが許されますか、国際慣例として。そのことを聞いておるのです。
  169. 中川融

    政府委員(中川融君) 平和条約発効以前の条約に違反していると仰せられるのは、あるいは陸戦法規のことかと思いますが、陸戦法規におきましても、占領地における政府の公用財産、これは管理できるわけでございまして、別に違反はしていないと存じます。
  170. 森中守義

    森中守義君 それでは先に進みますが、藤枝さん、だいぶ三十六年度の予算で沖縄に援助が行なわれておりますね、その内容を一つ詳細に説明して下さい。
  171. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 昭和三十六年度の現在御審議を願っております予算は、沖縄関係は、第一に無医村の医療援助約九百万円、それからいわゆる模範農場に要する費用が千四百万円、それから一般的な技術援助二千万円、それからマイクロ回線を設定するための費用が約九千八百万円、育英事業の充実のために二千万円、それから終戦の際の沖縄住民で、戦闘協力者で援護法の適用にならない方に対する見舞金二億四千四百万円、同胞援護会を通じまして学生寮の建設とか、あるいは義肢補装用具の製作料、らい患者に対する医療費というようなものが約三千万円を計上いたしておる次第であります。
  172. 森中守義

    森中守義君 昨年四千万円であったか、出ました文教関係の予算が、ことしはどうして出ぬのですか。
  173. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 日本内地の指導主事を、実地に教育の実際を指導するために、昨年沖縄に派遣をいたしたのでございますが、本年度におきましては、米国政府の方で、この点は三十五年度で打ち切りたいという要請もございましたので、これを削除いたした次第でございます。しかし、すでに御案内と存じますけれども、琉球立法院におきましては、さらにこれが継続方を決議をいたしておりますので、この点はさらに今後の交渉に待ちたいと存じております。
  174. 森中守義

    森中守義君 三月十五日の現地の琉球新報で、出なかった理由をこんなふうに上原という沖縄の自民党の委員長が言っている。第一次派遣のとき、事後承諾という形をとったので、なぜもっと早く相談しなかったか、こういうことをやっているから今度は困るというようなことのようです。これは外交交渉の際にこういうことが明らかにされる、こう言っていますが、小坂さんどうです。
  175. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 別に聞いておりません。
  176. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、琉球懇話会の金が大体八十四万円くらい残っておるようです。もちろんこういう少額のものではどうにもならないでしょうが、今現地においては指導員を派遣してもらいたいという強い要請がある。これにどういうふうにこたえますか。補正予算でも組むお考えございませんか。
  177. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、米国政府の方から、この指導主事の派遣については三十五年度で打ち切りたいという要請がございましたので、それをいれて、来年度の御審議を願っている予算には計上をいたさなかったわけでございます。しかし、その後に立法院のただいま御指摘になりましたような決議も行なわれておることでございますから、今後も沖縄住民の要望にこたえるように、外交交渉に乗せて参りたいと考えておる次第でございます。
  178. 森中守義

    森中守義君 今までの援助の方式からいけば、その内容によってチェックされております。当然これは援助の方式といいますか、根本的に私はそういうことを容認するというわけじゃないけれども、こういうような状態で今後も継続しますか。何かもっとこう正確な援助の方式をきめるようなことは考えておりませんか。
  179. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 現在までは、各項目別による琉球政府の要望並びにそれに対する米国政府側の考え方等をいれまして、ただいま具体的におあげを申し上げたような項目別の援助の仕方をいたしております。これは今後も原則としては続くであろうと思いますが、しかし、その援助の項目の拡大につきましては、今後さらに交渉を重ねて参りたいというふうに考えております。
  180. 森中守義

    森中守義君 南連の組織の内容はどういうことになっておりますか。
  181. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 那覇日本政府南方連絡事務所は、沖縄現地におきまする米国政府等との事実上の連絡事務に携わっておるわけでございます。
  182. 森中守義

    森中守義君 設置法の九条四号には、解決を要する事項を処理すると、こうなっておる。この条項がある限り、もっとこれを強化して、八十五万の県人のために、もう少し具体的な活動を必要とするのじゃないですか。南連の強化をお考えございませんか。
  183. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 今後日本の沖縄に対する援助が拡大されればされるほど、南連の事務というものも増大をいたしまするし、現地において、ただいま御指摘のような条項に従って解決をしなければならない問題も出て参ります。従いまして、今後南方連絡事務所の機構の拡充については考慮をして参りたいと考えております。
  184. 森中守義

    森中守義君 琉球懇話会というものが先般話題になったようですが、この経緯を聞かして下さい。
  185. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 琉球政府の大田主席が提唱いたしまして、日米琉間でいろいろな諸懸案問題を懇談的に話し合うための日米琉懇話会というようなものを設立をいたしたいということでございます。これにつきまして、琉球政府米国政府との間で、いろいろ具体的にどのような方向で進むかということの相談をいたしておるようでございます。もう少し進めば、これはさらに日米間の外交ルートによりまして相談をいたしたいというふうに考えております。
  186. 森中守義

    森中守義君 この種のものがどういう権限があり、どういう処理をするかというのはまことにあやしいものであり、かつまた、高等弁務官の方ではこれを拒否しておる。そういうことになりますと、勢い沖縄の問題は、もっと政府として力点を置かなければなりません。そこで、総理府、外務省あるいは大蔵省、こういうように独特の対策機関等の設置はお考えになっておりませんか。
  187. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 特に独特の機関をさらに設置をするということは考えておりませんけれども、沖縄、日琉間の交流が盛んになり、日本の援助も相当拡大をしていくということになりますならば、それを処理するために現在の特連局、あるいは御指摘の南連等は、十分今後その機能を整備をいたさなければならないと考えております。
  188. 森中守義

    森中守義君 最後の答えが出ていない。対策機関を作らないかと聞いている。
  189. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) ただいまお答え申し上げましたように、特にこのための表立った対策機関というようなものを現在考えておりませんけれども、しかし、外務省、大蔵省その他関係各省とは十分緊密な連絡ができまするように、特連局等の整備を考えておる次第でございます。
  190. 森中守義

    森中守義君 もう一つの問題は、今まで数多く指摘してきたように、非常に問題がある。この種の問題は、やはり正規の外交交渉によるほかない。そこで、外務省と国務省との間にお話をされて、常設の沖縄問題の処理に当たる機関の設定等は外務省お考えになっておりませんか。
  191. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この日米琉の関係は、日本といたしまして、日本の安全を守り、そして日本国民が安心してその堵に安んずることができるようにする。また、そのために琉球に駐留する米軍においても、潜在主権を持っておる日本の考え方というものを十分尊重して、沖縄の同胞の福祉のためにいろいろなことをしてもらうということを考えるべきものでありまして、この点につきましては、十分連絡を密にいたしましてやっておるわけでございます。国内的には、藤枝総務長官がお答えになりましたように、南方連絡事務所におきまして、非常に精力的にこの問題に取り組んでもらっておる。そこで、いろいろな障害になるような問題については、私ども随時アメリカと連絡をいたしてその解決をはかっておる、こういう立場でやっておるわけであります。
  192. 森中守義

    森中守義君 最近の新聞報道によりまして、沖縄に核弾装を持つメース・Bが持ち込まれたという話です。ここにミサイル・アンド・ロケットというのがあるが、これにも確かに響いてある。この事実を御承知ですか。
  193. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私も、あるいは雑誌等においては存じております。ただし、政府として正式に何ら通告を受けたわけではありません。
  194. 森中守義

    森中守義君 メース・Bとはどういう性能のものか、詳しく説明して下さい。
  195. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 従来、沖縄におきまして一私どもが知っておる範囲では、ナイキ・アジャックス等のミサイルが置いてあり、また、マタドールというものが置いてございます。このマタドールの改良型が欧州のNATO関係、たとえばドイツあるいはその他の米軍関係におきまして切りかえられています。言いかえれば、マタドールの改良型というふうに報道されておるわけでございます。そこで、メース自体の能力でありますが、これはA、Bありますが、私も専門ではありませんが、一応御報告申し上げますと、射程がAの場合には千二百キロ、Bの場合には二千二百キロというものであります。速度はもちろんこれは音速をこえております。千キロ以上であります。それから全長十三メートル、これは御存じの通り、メースは無人機、言いかえればミサイルで無人機のような形で翼を持っておる、こういう形になっております。それから弾頭は普通高性能の爆薬、もちろんこれは核弾頭をつけようと思えばつけられる、こういうふうに私どもは了解しております。
  196. 森中守義

    森中守義君 おそらく両三日中に中国あたりもこの問題に対する見解を表明するでしょう。そういうことになると極東の緊張と脅威を排除するためにと、こう言いながら、かえって極東に緊張をもたらす結果になりはしませんか。しかも、とどまるところのない軍備の拡張競争になりはしませんか。ずいぶん条約三条の趣旨と反してくると思いますが、どうでしょうか。
  197. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御了解を得てちょっと退席させていただきますが、先ほどのお答えでございますが、沖縄における国有財産につきましては、さっき外務省から説明なさったような状態でございますが、財産の台帳は大蔵省で保有しております。
  198. 館哲二

    委員長館哲二君) 西村防衛庁長官。
  199. 森中守義

    森中守義君 いやいや、そのあれになれば外務大臣です。
  200. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) じゃ、外務大臣からお答えします。
  201. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この極東の平和と安全といいますか、国際的な平和と安全を確保するという目的のためにいろいろ配慮するわけでありますが、この点を真空的な状態にするということになりますとかえってその危険が強まる、こういう点も考えられるわけであります。問題は、そうしたものを除くためのいろいろな配慮がなされるだろうと考えておりますが、全般的に見て、この極東における国際平和というものがもたらされることは、われわれ言うまでもなくもとより希望するところであります。
  202. 森中守義

    森中守義君 それでもう一つ問題になりますのは、いわゆるこの種核兵器を沖縄に持ち込むことは、当然私は、新安保条約の交換公文にいう事前協議の主題になる、こう思いますが、どうでございましょうか。
  203. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この沖縄の地位は、御承知のように行政、司法、立法の三権がアメリカ側に現在あるのでございまして、これは事前協議の対象にはなりません次第であります。
  204. 森中守義

    森中守義君 五条では「日本国の施政の下にある領域」、こういう工合に規定しております。ところが、交換公文では「日本国への」とこうなっておる。ずいぶん違うじゃないですか。前段においては、施政権の及ぶところだと、こう規定して、後段では、何もそういうことをいっていない。当然これは事前協議の主題になるというのが適当な考えじゃないですか。
  205. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本国の施政の及ぶところへの持ち込みですね、日本国への。さような意味でやはりこれは事前協議の対象にならぬ。条約上ははっきりいたしておると思います。
  206. 森中守義

    森中守義君 五条はそうなんですよ。交換公文は違うと、こう言っておる。「日本国への」といっておるのだから、沖縄はそれじゃ領土の割譲が行なわれましたか。「日本国への」ということは、潜在主権がある限り日本の領土なんだから、沖縄も当然事前協議の対象になるということは当然じゃありませんか。
  207. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 安保条約が、すべて日本というものは日本の施政権の及ぶ範囲というものを前提にして出されておるわけであります。交換公文——安保条約に関する交換公文でありますから、その解釈は同一のものと理解するわけであります。
  208. 森中守義

    森中守義君 これは非常に重要な問題ですからまた機会をあらためていたしますが、もう少し外務大臣、この交換公文の「日本国へ」、さらに施政権という五条の問題は、もう少し真剣にお考えになる必要がありますよ。  それからもう一つ伺っておきますが、要するに米軍の指揮系統を規制する取りきめが必要である。府中の第五空軍が存在する限り、正確に規制する必要はありませんか。——お二人のうちどちらからでもいいです。
  209. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) もっと正確にお答えいたしますが、第五条はこれはまあ問題ないとして、交換公文の——第六条に関する交換公文でございますが、第六条は、御承知のように、日本国において施設及び区域を使用することを許される、そのことについてなされておるのでありますから、これはもう交換公文の点は問題ないと思うのであります。
  210. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 米軍の指揮系統の問題が出ましたが、米軍の指揮系統自体は米軍自体の問題でございまして、われわれが関与すべき問題ではないのであります。ただ、府中の空軍は沖縄に対して一応の管轄を持っておるのでありますが、直接のいろいろの行動につきましては、ハワイの極東司令部が直接指揮命令をするという形になっております。
  211. 森中守義

    森中守義君 今までそういうことを繰り返されてきましたがね。府中に第五空軍が装備に重要な変更があるかないかということが事前協議の対象になる。事実はどこでわかりますか。その規制が私は必要だと、こう言っているのです。
  212. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 直接のそういう関係は、安保の装備の重要なる変更というものにならぬ。私どももやはり外務大臣の見解と同じように、沖縄における施政権の範囲において行なっておる。従って、われわれとしては事前協議を受けない、こういうことに解釈をいたしております。
  213. 森中守義

    森中守義君 今の項は、沖縄の問題に関してじゃない、府中にある第五空軍を経由して出ていくと、あるいはまた第五空軍の装備の変更があるかないかということの規制が何も行なわれていない。だから、アメリカがやるのは勝手にやるのだから日本は知らぬということでは、この新安保の精神に照らして適当でないと、こう言っているのです。どうですか。
  214. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 沖縄につきましては、第五空車は一応の区処はいたしておりますけれども、直接の指揮その他につきましては、沖縄とハワイとが直結をいたしてやっておる、こういうふうに考えております。
  215. 森中守義

    森中守義君 それは物事によってそういうこともあり得るということが先般衆議院で答えられておる。しかし、事実がそうであったにしても、府中に第五空軍というのがある限り、第五空軍の所管に関する装備の変更等は当然これは日本側と米側との協議によって規制されてよかろう、こういうように私は思う。どうですか。
  216. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私どもは、これは外務大臣の所管でもありますが、事前協議の対象になるものは、日本にあるところの装備の重要なる変更と、こういうふうに解釈しております。事柄はこれは沖縄の問題であります。
  217. 森中守義

    森中守義君 時間がありませんので、それらの問題も私は納得いきませんけれども、その他の委員会に譲ることとします。  外務大臣に聞いておきますが、三条前段にいういわゆる目的ということはどういうことです。信託統治にするということだけが単一の目的のようですが、どういうようにお考えになっておりますか。
  218. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 三条と仰せられましたが、平和条約三条ですか。
  219. 森中守義

    森中守義君 その通り
  220. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは、この信託統治にしまする場合に、これはそのいかなる提案もできるのでありますから、その場合に日本は同意すると、こういうことがこの条約の内容であります。
  221. 森中守義

    森中守義君 答弁がはっきりしませんよ。目的は何だと聞いている。信託統治にすることが目的だろうと聞いている。私の時間がなくなってしまうと困る、そんな答弁では。三条前段の目的は、信託統治にすることじゃないかと、こう言っている。
  222. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 信託統治にすることが提案された場合に、日本は同意するということでありますが、これは必ずしもアメリカが信託統治にいつ幾日までにしなければならないという義務を負うという規定ではございません。
  223. 森中守義

    森中守義君 そうじゃないのです。三条の目的は、信託統治にするということであり、あと提案云々ということは別問題、目的は何かと、こう聞いているのですよ。
  224. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 目的とおっしゃいますが、この三条は、信託統治にした場合に、日本はこれに同意すると、こういうことになっているわけです。それに至るまでの間は、この「行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。」、そういう事実を目的としたものであろうと思います。
  225. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、この目的というものは、いわゆる極東の脅威、緊張ということでだいぶ変わってきています。信託統治にするということじゃなくて、沖縄に施政権を保有する目的というのは、今申し上げたようにだいぶ変わってきておる。その関係をどういうようにお考えになりますか。
  226. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この条約三条によって、信託統治にいつでもできるわけですね。しかし、いつ幾日までにしなければならないという義務を負うわけではない。その関係は、アメリカが三権の全部または一部を行使する、こういう関係になっております。その状態が今日まで続いておる、こういうのが現状であるわけです。これはもとよりアメリカ側の意思にもよります。その意思を裏づけるところのものは、国際情勢のいろいろな関係ということがいえると思います。
  227. 森中守義

    森中守義君 もう少し正確に言って下さい。三条の信託統治にするという、提案するという目的からはずれて、極東の緊張と脅威がある限り、保有するというのだから、信託統治とはだいぶ性質が違うということですよ。だから、おのずから三条前段というもの、変質をしてきたとは見ないのかと、こう聞いているのですよ。
  228. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 変質ではなくて、そうした信託統治というものが現実に実現されていないと、こういう事実だと思います。
  229. 森中守義

    森中守義君 どうもやっぱり故意に歪曲されて解釈されて、目的がだいぶはずれておる。その通りじゃないですか。それからまた、信託統治にするという問題になりますが、最近アメリカの方では、どういう意向を表明しておりますか。今まで何回も交渉をやったと言われたが、その交渉の経過からおおむねアメリカの意向も私はわかったと思う。それを一つ正式な交渉の中で、はっきりしているならば知らせておいていただきたい。
  230. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 沖縄を名実ともに日本の施政下に置きたいという日本の希望に対しては、アメリカは十分これを了承する。しかし、東西の緊張がこういう状態である以上、現状を続けるごともまたその限りにおいて必要である、こういうことであります。
  231. 館哲二

    委員長館哲二君) 森中君、時間が終了いたしましたから……。
  232. 森中守義

    森中守義君 もう一つお尋ねしておきますが、近いうちに池田さんがアメリカに行かれる。沖縄の問題は今までお尋ねし、かつ、お答えがありましたように、すこぶる重要な問題であります。しかも、岸さんが先般行かれたときにも、この問題についてはいろいろと外務省に検討を命じられたと私は聞いている。今回、池田総理の訪米に際して、沖縄の施設の返還の問題はどういうように取り扱われますか。その点一つ明確にしておいていただきたい。
  233. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この問題は、昨年も私が参りましたときも、ハ一ター国務長官との間に交渉いたしました。今回はどうなるかということでございますが、これは池田総理がおっしゃるべきことで、私からここで申し上げることは適当でないと存じます。
  234. 森中守義

    森中守義君 外務当局としてはどうなんですか。外務当局としてどういうようにお考えになりますか。
  235. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 従来の態度と変わることはもちろんないと存じます。私は私の考えを持っておりますが、あなたの御質問が、池田総理が行かれてこの問題をどう取り扱うかという御質問でございましたから、池田総理御自身がお答えになるべき問題で、私はここで何か言うのは越権のさただと思いまして、さようなお答えをしたわけであります。
  236. 森中守義

    森中守義君 あなたはどうだと聞き直した。
  237. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ですから、従来の考え方と私は変わっておらないと申し上げた次第でございます。
  238. 館哲二

    委員長館哲二君) 午後は二時より再開することとして、暫時休憩いたします。    午後一時五分休憩    ————————    午後二時二十二分開会
  239. 館哲二

    委員長館哲二君) これより予算委員会を再開いたします。委員の変更について報告いたします。  本日、田畑金光君、小林英三君、湯澤三千男君、山本杉君、小山邦太郎君、久保等君及び椿繁夫君が辞任されまして、その補欠として、田上松衞君、塩見俊二君、佐野廣君、櫻井志郎君、大谷贇雄君森元治郎君及び北村暢君が選任されました。  午前に引き続き質疑を行ないます。横山フク君。
  240. 横山フク

    ○横山フク君 まず、最初に科学技術庁の池田長官に伺いたいと思いますが、三月の十四日の衆議院の内閣委員会で、飛鳥田委員から原子力の長期計画についての御質問がありました際に、長官は、スロー・ダウンをするということを言われております。ところが、その一月ちょっと前の二月八日に長期計画を出されてある。たった一つしかない、長期計画というものは。これはそう具体的なことを書いていない。それなのに、それをわずか一月でもってスロー・ダウンするというようなことを衆議院の内閣委員会で御発言になるということは、少し軽率なように思うのですが、長官はいかがお考えなんでしょうか。
  241. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) お答えいたします。一月たってすぐ変わる、これはまことに軽率のように見えますけれども、私はそうは思わないので、なぜかというと、御承知のように長期計画というものはいわゆる計画でございまして、これを立てましたその当時におきましては、あらゆる学識経験あるいは専門家の方々の衆知を集めてできたものでございます。しかしながら、御承知のように原子力科学に関する問題は、申すまでもなく、その日その日、進歩といいますか、変化しておりますので、従って、そういうものに対応しなければならないというのが私の基本的な考え方でございます。従って、もしもそれが変わってくれば、一月であろうが、半月であろうが、計画を変えてもいいじゃないか、過去にとらわれる必要は毛頭ない。常にもっと前向きになって進むべきである。こういう考え方を私は申し上げておるのであります。
  242. 横山フク

    ○横山フク君 大へんけっこうな弾力性のある御答弁をいただいたのでございますけれども、私は原子力がそう毎日々々ネコの目のように変わるものだとは思わないのです。しかも長期計画なんです。その長期計画が、毎日々々ネコの目のように変わるならば、長期計画なんという、こんなものをまことしやかにお出しになるのは意味ないと思う。最初からこの長期計画というものは、原子力計画は立てられないのだ。だからそういうものは出さないのだという方が、かえっておよろしいじゃないか、私はそう考えるのだ。いかがでございましょうか。
  243. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) 横山さんの今のお話一つの御見識だと思います。もちろんこれはほんとうに変わっている、残念ながら一日々々というわけじゃございませんけれども、一月と言われないような変わり方で、今、具体的には、ここには申し上げませんけれども、実際には変わっているのでございまして、この長期計画を立てたときとはだいぶ違っている。しかも、御承知のように、あのときの長期計画には、二十年後には九百五十万キロという数字まで出ているのです。はたしてそれが現在の、御承知のように火力電力というものは非常に安くなってきつつあります。もっと下がるだろうというのが専門家の見方でございます。そうなってきますと、現在のコスト計算から参りますと、原子力による発電というものは相当高くつく、これを下げる方法があるかどうかということについても、これは大きな疑問になって、一部の人はそれを可能だというし、一部の人は不可能だという、そういうこともございますので、御承知のように一応の計画ということで立てたのでございますけれども、基本的な考え方としましては、これから進んでいくところの日進月歩のこの原子力科学というものにマッチさせて、いつでもこれに対応して変えてもよろしいという柔軟性ある態度をとるべきだろうと私は考えます。
  244. 横山フク

    ○横山フク君 ただいまのお話でございますが、なるほど火力発電がコストが安くなったのは私も知っております。でございますが、コストは安くなりますと言っても、この長期計画にはコストは二円四十銭程度ということを書いてあります。これですが、ここに中央火力発電所からのがございます。この重油専焼でもこれは三円三十五銭、原油専焼でも二円三十八銭でございます。現在の問題でございます。長期計画ですから、これが二十年先までそのまま持っていくとは思いません。思いませんけれども、原子力発電としても長期計画である限り、順々と、長官のお話通りネコの目の変わるように原子力はどんどん進歩研究されて参ります。でございますので、二十年後にはたしてどちらがよろしいかというのは疑問だろうと思っております。ことに飛鳥田さんは、決してコストが安いからとか、高いからとかということではございませんで、長期計画の二十年後のときに、今お話通りに六百五十万キロから八百五十万キロワットまで、そういうのが長期計画にあるけれども、これはどうだ、大体二十年のところを目標にしてお聞きになったのです。なるほど石油事情も変わって参っております。でございますが、私はスロー・ダウンをするということには根本的には反対じゃなしに賛成なんです。ですから、長官がお考えになったということに私はとやかく申し上げるものではございません。でございますけれども、原子力委員会は申し上げるまでもなく、長官が委員長でいらっしゃいますし、また経済学者としての有澤さんもおられるし、また石川一郎先生もおられる。そういう方々が二十年は当然お考えになって、そうして二十年後の見通しというものをお立てになって、原子力が順々に進歩発展していくことも御承知の上で、また石油の需給関係のことも御承知の上で、二月の八日にお出しになった。それを三月の十四日の国会の委員会では、それをスロー・ダウンするというお話は私は残念だ。非常に軽卒だったと思う。これは再検討するという形においては私も了承するのでございますけれども、今後もう少し原子力委員会の権威という形において、そういうふうにネコの目のように変わる長期計画をお出しにならぬこと、もしお出しになるなら、しっかりした根拠のもとにお出しになるように、一月後にすぐ変わるようなものでございましたら、これが計画と申しましても、どこに増殖炉を作り、どこに動力炉を作る、それが何万キロの出力だということを書いてございません。ただ、ばく然と六百万キロとか、八百五十万キロ、六百万キロないし八百五十万キロということを言っているだけなんでございます。それですらも一月後に変更するという形であったのでは、あまりに私は原子力委員会の権威というものがないと思う。また、こういう報告を私たちは見ながら、あるいは民間の企業家がこれを見ながら、自分たちがそれに歩調を合わしていこうと思っても、合わしていけないわけでございますから、それでは私はいけないと思う。もう少しこういう御発言は御慎重にお願いいたしたいと思うし、検討という形で私はやっていただきたかった、私はこう思うわけでございますが、長官いかがでございましよう。
  245. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) 私の発言が軽卒であったというふうにごらんになられたとすれば、あるいはそういうふうに受け取られる節があったかもしれない。私はあまりおしゃべりが下手なもんですから、説明が足りなかったのかもしれませんが、スロー・ダウンというお言葉を、今、横山さんはお使いになりましたけれども、私はスロー・ダウンという言葉を使ったのではなくて、つまりそういう時勢に対応して変えるべきものならば、何も過去にとらわれないで、つまり悪い言葉でございますけれども、官僚的なものの考え方で、もうきめたからだめなんだといったような態度は私はとりたくない。きのうきめようが、おとといきめようが、それが悪い、変えた方がいいということがはっきりした場合には、当然変更してもいいじゃないか。ものの考え方を私は申し上げたので、従って、この間出ました原子力委員会の答申書は、これが悪いということを言ったのでもなし、また、今直ちに変えなきゃならぬという意味では毛頭ございません。そういうときが来たならば、いつでもそれに対応する柔軟な態度をとるべきだ、こういうことを申し上げたのでありますから、御了解願いたいと思います。
  246. 横山フク

    ○横山フク君 あまりこの問題にこだわっていることもできないと思うのでございますが、問題は基本の問題でございますので、私は大体言葉が強くてまことに恐縮でございますけれども。それで今のお話でございますと、そのときに適応して変えた方がいいと思ったら変えるのがいいじゃないか、官僚の言うままにしないでというお話でございました。私はその言葉が悪いとは申し上げません。変えるべきときは変えるべきだと思います。しかし官僚の言うままという言葉でもなくて、これは原子力委員会という委員会が原子力基本法できまっておる。そこでもってお諮りになってから当然お変えになるなり、お変えにならないなり、そういう意味に解釈してこの問題はよろしゅうございますか。そうして、そのときに計画を変更するなり、しないなり、いずれはそういうときは原子力委員会におかけになるでしょうし、また、そういう時代がきたならば、そういうこともあるかもしれないという御発言だったと解釈してよろしいのでございますか。
  247. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) その通りであります。
  248. 横山フク

    ○横山フク君 それではもう一つ伺いますが、JPORはいつ完成するのでございましょうか。動力炉でございます。
  249. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) 間違えるといけませんから、技術的なことですから、局長から。
  250. 杠文吉

    政府委員(杠文吉君) お答えいたします。再来年でございます。
  251. 横山フク

    ○横山フク君 再来年というと……、もう少し数字的に言うと。
  252. 杠文吉

    政府委員(杠文吉君) 再来年と申しますと、本年は三十六年でございますから、三十八年の二月の末ということになっております。
  253. 横山フク

    ○横山フク君 そこにいらっしてけっこうですが、いつ始めたのでございますか、この計画を。
  254. 杠文吉

    政府委員(杠文吉君) お答え申し上げます。昨年、と申しますと、昭和三十五年の九月一日に契約をいたしました。まだ工事には入っておりません。
  255. 横山フク

    ○横山フク君 工事に入っている入っていないを私聞いておるのではございません。いつ完成するかと申し上げたのです。それは三十八年と解釈してよろしゅうございますね。——そうすると、これは三年間でもって完成するわけです。それで伺いますが、軽水型発電炉、軽水型の発電炉でございます。動力炉でございます、原電の。あれはいつからこれを……何かこの秋に調査団を派遣するというようなことを伺っておりますけれども、これは事実でございましょうか。
  256. 杠文吉

    政府委員(杠文吉君) お答え申し上げます。今の軽水型と申しますのは、原子力高発電会社がやりますところの二号炉の問題につきましては、今年の、三十六年の二月、原子力発電会社の重役会議におきまして設置するということを決定いたしました。軽水型のものを設置するということを決定いたしましたが、まだその設置場所も決定いたしておりません。従いまして、調査団を派遣するということは具体的にはきまっておりません。おそらくは調査団を今年の終わりか、あるいは来年の初めに派遣することになるであろうということでございます。
  257. 横山フク

    ○横山フク君 この原電の軽水型発電の二号炉は、これは関西の方が予定地になっておるように伺っておりますが、さようでございますか。
  258. 杠文吉

    政府委員(杠文吉君) お答え申し上げます。原子力発電会社におきましては関西方面を予定しておるということでございまして、まだ原子力委員会においてそういうことを決定したとかいうことはございません。
  259. 横山フク

    ○横山フク君 これはもう一つあとの問題とからむので、この予定地のことはあとにさせていただきますが、私が聞いたところでは、これは秋、今、局長は今年の暮れから、あるいは来年の春ということでございましたが、もう今年の秋あたりから調査団を出して、そうして建設は割合早くこれは始めるということを聞いておる。ところが今、局長が言われました三十五年に始めたあのJPDRは三十八年にできる。これから、軽水型の方に開発していく、JPDRでもって。私が聞いたところでは、これで建設の技術を訓練するとか、あるいはその研究要員の訓練をするとかいうようなことをここでするのだということを私は聞いておったのでございますが、そうでございますか。
  260. 杠文吉

    政府委員(杠文吉君) お答え申し上げます。JPDRでございますが、これは横山委員のおっしゃった通り目的をもって出発したのでございます。原子力発電の二号炉でございますが、二号炉はこれは売電がやはり目的としてつけ加わっておりまして、売電を目的とするものでございますから、ただいまのところ希望を申し上げるというまでには至っておりませんけれども、おそらく相当大規模な発電炉になるだろうと思います。JPDRはキロははっきりきまっております。一万二千五百キロワットでございます。
  261. 横山フク

    ○横山フク君 本来からいったならば、これからは長官に伺いたいところでございますが、JPDRでもって、私がもしスロー・ダウン——長期計画というものは、長官はスロー・ダウンするなんて私は言わないと言うけれども、言葉は同じことに落ちつくのではないかと思います。と申しますのは、火力発電は単価が安くなっておる。ところが原子力発電の方は単価が高い。だから、なかなかその点で計画を変更せざるを得ないということは、結局計画を延ばさざるを得ないということに落ちつくのだろうと思うのでございますけれども、もしそういう形であるならば、このJPDRができて、そうして三年後、三十八年にできるのですから、そこで十分に訓練されて、あるいは建設についても、そこでもって研究所の人なり、あるいは原電の人たちも当然そこの訓練の場に参画することができるわけですから、そういうところで訓練されてから後に、この建設に取りかかるという形が私は基本的にふさわしい形であると思うのです。これは専門の問題でなくて政治の問題であると思うので、長官に御答弁を願いたいと思うのです。
  262. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) お答えいたします。これは今、局長から三年ぐらいと言われましたけれども、かりに建設工事にかかりましても相当時間がかかるだろうと思います。  それから先ほど来問題になりましたスロー・ダウンということでございますが、これは世界の大勢からいって、現在、原子力科学というものは若干スロー・ダウンしておる。従って、日本もスロー・ダウンしておるということでは決してないのでございまして、日本はまだスロー・ダウンするまでもいってないで、ほんとうに序の口で、これから大いに研究を進めていく、やっていかなければいけない。そして、それが今申されましたようにできましたならば、日本の技術者、研究員というものは一緒になって研究するということになるだろうと思います。従って、それはやがて大きな飛躍への一つの基盤となっていかなければならぬということは申すまでもありません。そういう形で進めていきたいと思います。
  263. 横山フク

    ○横山フク君 どうも長官の御答弁と私のと、私の頭ではピントが合わないのです。で、私の頭が少し悪いんだろと思いますけれども、JPDRができて、そこで訓練されて、あるいは建設の訓練ができ、また運転の訓練ができて、それから後にこの原電の二号炉の形のものに、建設なりあるいは運転、建設の方に取りかかったらいいんじゃないか。実質的にそこにいくかどうか、これを私は伺っているわけでございます。
  264. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) これは当然に原子力委員会で慎重に検討いたしまして、その上にまた上へ、次の段階に入って行く、こういうことになると思います。
  265. 横山フク

    ○横山フク君 時間がないので……。今できております東海村の原子炉——研究炉です。研究炉のほかにまだ材料試験炉というのが建設予定されているわけでございます。これも東海村にお作りになる御予定でございますか。私は原爆と原子力の平和利用とはその概念は違うということはわかっております。おそらくすべての人がわかっているのでございますが、もし万々が一、事故があった場合には、原爆と原子力の平和利用との間において格別の差はないわけです。私はそう思う。万々が一でございますからこそ、政府でも原子力の損害に対する補償、賠償制度というものをお立てになっていらっしゃるわけでございます。また法律をお出しになっているわけでございます。また、そういう万々が一というときに備えたならば、あまり東海村に集中的にお作りになるということは好ましい形ではない。私はむしろ散在すべきだと思うのでございますが、長官においてはどうお考えになりますか。
  266. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) ただいまの問題は、これは慎重に慎重を期さなければならぬ問題でございまして、まだそこまではっきり東海村に置くという決定はいたしておりません。これからなお慎重に検討いたしまして決定したいと思います。
  267. 横山フク

    ○横山フク君 私は東海村にそう集中的に建設することでないことを希望して、質問を次の問題に移らせていただきます。  次に、科学技術会議で、十年を目途とするところの科学技術の総合的基本方策をお立てになったわけでございますけれども、これは政府においては当然尊重されることだと思いますが、いかがでございましょうか。
  268. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) これは申すまでもなく、あらゆる角度から可能な範囲において十分に尊重しなければならぬことは当然でございます。
  269. 横山フク

    ○横山フク君 ここで私が伺いたいのは、科学技術庁の設置法に「関係行政機関の科学技術に関する事務の総合調整を行う」ということが出ておるわけでございます、設置法に。総合調整をはかるということは、これは必要なことでございますけれども、現在この総合調整がなされておりますか、いかがでございますか、伺いたいと思うわけでございます。
  270. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) 御承知のように、科学技術庁が発足いたしまして、また発足するときの経緯もございますし、時間もたっておりません。従って不完全なものがだいぶあると思います。しかし、これはその人その人によって見方も違うと思いますけれども、そういう意味からして科学技術会議に私は研究していただいて、これからのそういう面を十分検討して、なるべくすみやかに調整しなければならぬ面も出てくるだろう。その場合は、当然に早くやるべきだと、こういうふうに考えております。
  271. 横山フク

    ○横山フク君 今の答弁ちょっとおかしいですよ。科学技術会議におかけにはるなんていっても、すでに科学技術会議のこの答申にちゃんと出ているのです。設置法にも総合調整するということを書いてあるし、同時にこの答申にも、「とくに、最近における科学技術は一つの産業部門に関するものであっても、広く他部門の科学技術と密接な関連があり、また基礎研究から実用化までの各段階が緊密な関連にあるので、これらを一貫して考慮しなければその発展を期し難い。このような関係を勘案すれば、研究予算の編成については、その全体を一貫する観点にたっておこなうべきである。」、こうはっきり書いてあるのですね。でございますから、これは私が総合調整というのも、このことを言っているし、また科学技術庁の答申にもそれが書いてある。でございますので、今度の予算についてもその総合調整はうまくなされているかどうか。と申しますのは、各役所で、あるいは各国立研究所でばらばらにやったならば、あるところはダブるだろうと思います。あるところは間があいていると思います。それであっては科学技術を基本において、そうして日本の産業の育成をはかり、繁栄をはかる、あるいは所得倍増をはかるというときに、基本になる科学技術、総理も施政方針の演説にも科学技術の向上ということを言っておられる、進歩発達を言っておられる。あるいは迫水長官も方針演説の中において言っておられる。でございますから、私はそこのところが基本になる調整ができているかどうかということを聞いている。ところが科学技術会議の方では答申が出ているのです。ですから、科学技術会議に諮って慎重にということの御答弁はちょっとおかしいのでございますけれどもね。
  272. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) 御承知のように、研究予算については見積り調整をやっております。現に大蔵当局も見えておられますが、各省の今の研究予算は、わが庁からも十分これに応援といいますか、発言いたしまして、調整いたしておる次第でございます。援助もいたしておる、こういうことでございます。
  273. 横山フク

    ○横山フク君 完全に行なわれているでございましょうか。私の伺いますところでは、これは完全にできていない。各省で予算はお出しになる、科学技術関係のは。しかし、それは大蔵省に出すと同時にもちろん科学技術庁にお出しになる、それに対して、これはもっと足せとか、あるいは減らせということはできない、すでにもう大蔵省に出ているのでございますから。結局、査定はまた主計官も別々の主計官で、個々ばらばらに行なわれていることは現実の姿だと思う。おそらくこの答申では、主計官を一つにして、少なくとも科学技術に関する限り、各省あるいは各研究所は主計宮を一つにして、その一つの主計官が日本全体を見回しながら、それを検討するという形にあるのが、この筋をなしていると、私は思っているのです。私の言葉が足りないのかもしれませんが、いかがでございましょう。
  274. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) なるほど今のお話しで横山委員の御質問の趣旨がわかってきたような気がします。つまり科学技術の予算については大蔵省に主計官、主計官といいますか、担当官を一本にしたらよかろうという御意見でございますが、できればそれにこしたことはない。同時に各省にまたがっておる、設置されておるそれぞれの研究機関そのものも、私はもう少し統合する必要があるのじゃないか、そういうことを実は最初に述べたかったのです。言葉が足りなかったために誤解を受けたかもしれませんけれども、両方から相待って、科学技術というものは大体一本に、できるだけのことをしなければならぬ、していくのがこれは本筋である、こういうふうに私は考える。
  275. 横山フク

    ○横山フク君 もうこの質問やめます。また委員会で伺うことにさせていただきます。  人材の養成でございますが、私は文部政務次官に伺いたいと思います。私は長官から勧告が出たとか何とか、ああいうことは私は聞いているのじゃないのでございます。それを前提にして御答弁願いたいと思う。で、国立では、今のところ人材が足らない、不足しておる、それに対するところの長期計画では半数にも満たない、これは事実だと思います。でございますが、これに対しまして国立を見ますと、理科系が四四%に対して法文系が五六%になっておる。ところが、私立は理工系が二一%に対して法文系が七九%というふうに、法文系の方が非常にパーセントが多くて理工系が少ない。これは私学においては理工系を作ることができないいろいろの難点があるのだと思います。しかし、もし、もしでなくて、所得倍増によって科学技術を開発していくということでございますれば、どうしても人材を養成しなければならぬし、その不足にこたえなければならぬと私は思うのでございます。その場合に、国立の方ももちろん生徒の収容定員をふやさなければならぬけれども、私学のこのパーセンテージを変えるという形のところに私は問題点があると思うのです。これに対して文部政務次官はどうお考えになるのでございましょうか。
  276. 纐纈彌三

    政府委員(纐纈彌三君) お答えいたします。所得倍増計画に対処いたします関係上、科学技術陣営の人員の不足を来たしますことは、ただいま先生のお話通りでございまして、そこで、文部省といたしましても、科学技術陣営をできるだけ養成をいたしまして、この倍増の計画達成に努力をいたす心組みのもとに、三十六年度の予算も編成をいたしたのでございますが、ただいまの御質問の趣旨は、国立と私立との間において、いわゆる理工系の生徒の養成の率が非常に開きがある。もう少し私立の方において、この養成をさしたらどうかというような御質問の趣旨であろうと思うのでございます。従いまして、この問題につきましては相当検討もいたし、来年度の予算を編成いたします上につきましても、われわれの数字のもとにいろいろと検討いたし、ことに私立の方にいたしましても、それに対する受け入れ態勢等につきましても、いろいろ検討をいたしたのでございますが、御承知のように、理化学の問題につきましては、いわゆる施設設備というもの、ことに設備の問題に対しまして非常な費用も要するわけでございます。さような関係からいろいろ検討いたしまして、来年度は一応この所得倍増の計画に対しまして、私立には千名余のその養成をお願いをするような形で予算を求めておるような次第でございますが、ただいまのお話のような点でございまして、この文部省の作りました計画につきましても、必らずしも十七万の不足に対して、これを補充するだけの十分の人員を得られないというような関係からいたしまして、今後、三十七年以降におきましても、さらにその養成をいたして、その不足分を補うことに努力をいたすつもりでございまして、従いまして、国立はもとより私立の学校におきましても、さらにその当事者と十分の協議をいたしまして、そこで一つできるだけ不足分を国立並びに私立の大学において充足するような形に進んでいきたいという考えを持っておる次第であります。
  277. 横山フク

    ○横山フク君 今の点を具体的に伺いたかったのでございますけれども、国立大学の理工系の学生は、年間に政府から支出されるお金は三十七万円でございますね。一人当たり三十七万円でございますが、私立ですと一万七百八十円、これは確かな数字でございますので、その数字は間違いないと思いますが、これでは、もちろん国立大学と私立大学との性格の違いはよく知っております。知っておりますけれども、所縁倍増、国の繁栄のための働き手としては、国立であろうと私立であろうと同じ形でございます。でございます限りは、私立の方にあまりに、いわゆる格差がここにあり過ぎると私は思うわけです。もっと私立においてその格差を縮めていくといいますか、予算面においての御検討を願いたいと私は思うのでございます。で、もう一つ別の言い方をいたしますと、今年度の予算を見ましても、国立大学では要求されましたのが百三十六億円に対して査定で七十八億円、五七%でございました。ところが、私立では四十四億円に対して十五億円、三六%、もちろんこれは私立からたくさんの要請が出たと思います。文部省で査定いたしまして、さらに大蔵省で査定を加えられたのが四十四億円、十五億円という形になったわけでございます。これは三六%です。そうしますと、ここに国立と私立においても相当もう要求をされた、文部省そのものでお考えになった構想図から見て、さらに大蔵省から私立に対しての奔走が加えられた、力が加えられたということは、私言えると思うのでございます。でございますので、この点につきましては、文部政務次官と大蔵大臣とに御答弁をお願いいたしたいと思うわけでございます。
  278. 纐纈彌三

    政府委員(纐纈彌三君) ただいまの御質問数字の問題になりますので、私、大へん数字が弱いのでございますから、ほかの政府委員から答弁をさせたいと思います。
  279. 小林行雄

    政府委員小林行雄君) 横山先生のお尋ねでございますが、確かに私立大学におきましては文科系が圧倒的に多いわけでございまして、今後、科学技術者養成あるいは科学技術の振興という観点から申しますと、やはりあらゆる方策を考えて、私立大学におけるこの理科系の定員増を行なわなければならぬと思うわけでございます。従来もこの点につきまして、文部省としてもいろいろと対策を講じて参りましたが、三十六年度以降はさらにこの点につきまして考慮を払いまして、たとえば私立学校振興会に関する出資におきましても、約五億円を増額いたしました。私立大学の理科特別助成につきましても三億五千万を増額いたしております。また、研究設備の助成につきましても約二億円増額いたしております。もちろんこれで十分であるというまでには参りませんけれども、今後、先ほど申しました趣旨の点から考えまして、これらの国家的な私学に対する助成につきましては、格段の方策を講じて参らなければならぬと考えておる次第でございます。
  280. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年の二十六億の予算に対しまして、今度は四十四億の予算を計上いたしましたが、御承知のように、国もこの私学の方も同じでございまして、急に養成人員の目標を多くするというわけには参りません。まず先生の教育と施設の整備から始めていかなければなりませんので、十年計画全体から見ましたら、初年度の二万六千人というような目標は非常に低いとは思いますが、急にこれをふやせないという事情もございますので、今回は特に設備というようなもの、それから学生を教育する教員の養成というようなことに相当力を入れておりますので、順を追って養成目標を上げていくよりほか仕方がなかろうと思います。
  281. 横山フク

    ○横山フク君 御答弁が、どうも私の言い方が悪いのか、違っているのですね。私立と国立との間に差がつき過ぎている、これを伺っているのです。ところが、それに対して、どういうところから私立に対してこれほどの差がついているかということの御答弁が得られない。これはいずれ委員会なり、分科会で伺わせていただくことにいたします、時間がございませんので……。今、大蔵大臣は、教典を養成しなければならぬから、だからというお言葉なんです。今の段階で教員を養成して、その教員が学校におるでしょうか、伺いたいと思います。
  282. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) なるたけおってもらうために、たとえばITA資金の問題でも、もしその職にいてくれるなら免除するというようなことも今度は拡充しまして、極力養成した教員が、教員として尽くしてもらうような方法を講じておるわけでございます。
  283. 横山フク

    ○横山フク君 一週間くらい前の内閣委員会でしたか、教員養成所を出た先生がどこへ行くかという希望を聞いたところが、結局三人だけが教職に残って、あとは民間に行ったというようなことになっております。私ははっきりと速記録で見たいと思いましたが、時間がなくて、速記録もできていないで見ることができませんでしたが、せっかく教員を養成しても、その教員が民間の企業の方に行ってしまったら意味をなさないのです。そこのところは、結局待遇の問題にいくのだと思う。待遇は人事院の勧告に沿っていくということで、行政職が十二・四%ですか、研究公務員が一六%で大学の人が二二%、非常に上がったということでございます。でございますが、これは数学の魔術だと思う。二二%、一六%、一二%といいすまけれども、研究職の人たちは、最初から高等学校の人よりも大学が多い。初任給がすでに上がっているのです。初任給から見たらば、医官は大学が全部です。ですから、初任給から見たならば、そんなに変わりはないのです、大学教授なんかは。ですから、これをただそういう形でいったのでは、私は大学の先生は充足できない。充足できない種ジャガだというのです。これは、技術者、あなた買いますなんて新聞にも出ているくらいでありますし、きょうの新聞に出ているのはごらんの通りだと思いますが、もう少しこういう点に対しての御考慮を願いたいと思うのですが、いかがでございましょう、大蔵大臣に伺いたいと思います。
  284. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 技術者の待遇につきましては、いろいろな形でこれを考えておりまして、特に研究職員というものについては、一般の給与のほかに、いろいろな形をもって、研究ができるようなことを考えるというようなことをやっておりますが、これはまだ今のところでは、なかなかうまくいっておりません。ですから、技術者をかりに官庁にとるにしましても、特に初任給の問題で、ほとんど民間にとられてしまうというようなことでございますので、こういう点ともあわせて、今いろいろ工夫をしているところでございますので、今後一段とこれが待遇の点を強化するつもりでおります。
  285. 横山フク

    ○横山フク君 時間の都合で、そこらはみんな端折って、学童給食のことについて伺いたいと思います。  今度、学童給食では一円の補助金が出ているわけでございますが、これを今年度限りで打ち切るようなことを伺っておる。打ち切るとははっきりおっしゃられない。おっしゃったら委員会で詰められるからでしょうが、検討するというようなことを伺っておりますが、これはいかがでございましょうか。
  286. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは私の方に非常に責任がございますからお答えいたしますが、今年度ははっきり見合わせることにしました。そうして来年度において十分検討しようということになっております。と申しますのは、百グラムについて一円の補助を出すということは、総額でみますと相当大きい、十七億という金額になりますが、個々の父兄の負担をこれで幾ら軽減するかと申しますと、ほとんど二十円とか何とかという、きわめて零細な補助でございます。で、御承知のように、一つの県に十万円の補助を出すとか、一つの村に一万円の補助を出すとかいう程度のものは、実際に補助の目的を出していないということで、いろいろ予算編成のときに諸方面から批判され、問題になっていることは御承知の通りと思います。一つの村に一万円の補助をして部落にどういくかというと、大ていもち菓子を買って食べてしまうという程度になるというようなことでございますが、従って私どもは、昭和二十六年時代にはこの補助の必要があったと思いますが、今になってみますというと、こういう零細な補助をする、しかも金額が大きくなるのなら、これは要保護者の低所得者の補給の金に使うとか、あるいはこれをさらに普及させるために設備の補助に使うとか、あるいは僻地の問題の解決に充てるとかいうような考慮を払うときはないかということが、予算編成のときに問題になりまして、あまりにこれは零細な補助に失しておりますので、普及という意味からは別個の金の使い方があるだろうし、また、国民生活もある程度よくなったのですから、社会保障の意味を兼ねてこの金を使う方が有効じゃないかというようなことが問題になったために、検討するということになったわけでございますが、今年度は継続することにいたしました。
  287. 横山フク

    ○横山フク君 ただいまの、なるほど一円という零細なお金でございます。でございますが、国でもって学童給食に補助をするかしないかということは、府県あるいは市町村の心がまえからも違ってくる問題でございます。であるので、これはお考え願いたい、と同町に、食管会計でその小麦のために二十一億の食管会計、それに対して関税十七億が大蔵省から出ておるとすると、食管会計の方では差引四億の収入増という形になるわけです、小麦を安く買って高く売っておるのですから。そうすると、十七億出しても、なおかつ四億というものが、悪い言葉で言ったらピンはねというのでしょうか——ということになるのだと思うのです。でございますので、これはそういうようなことでなくて、補助はいただかないならいただかないで——いただくのが私はあたりまえだと思う、都道府県や市町村に対しても。と同時に、学童の給食用の小麦だけは、関税の方は内地の小麦を保護する、そういったような幅を持たせないで、輸入価格でお出しいただくのが私は妥当だと思う。  ここで時間がたちますので、一つ申し上げますならば、よくこのごろケネディの演説が引用されますけれども、ケネディが二月の二日に議会に送った経済教書の中に、こういうことを言っておる。私はまた、学童の家庭や学校地域の経済状態関係なく、金持ちであると貧乏人であるとに関係なく、すべての学童に対して有益な最上の栄養を与えるために、学校給食計画を改善、強化する勧告を作成するよう農務長官に指令したと言っておるのです。これは二月三日の新聞に出ておるわけです。でございますだけに、この点に関しては、先ほど文部省から御答弁がございませんでしたけれども、文部省のお考え方、大蔵省のお考え方、重ねてお伺いいたしたいわけでございます。
  288. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は金を惜しんでいるわけではございませんで、こういう学童食糧のために、今度の予算では全体で二十六億円以上を計上している次第でございまして、ただこの金額を惜しむという問題ではございませんで、この補助の仕方を広く、各府県、個人々々にどういうふうにやるか、そうでない、もっといいやり方がないかということを考えておるだけでございまして、金額を押えておるわけではございません。
  289. 纐纈彌三

    政府委員(纐纈彌三君) お答えいたします。予算折衝の過程におきましては、先ほど大蔵大臣からお話しになったようないきさつでございますが、文部省といたしましては、学童の給食は、食生活改善の問題、また児童の保健上非常な効果をあげておりまするので、あくまでもこの制度をさらに拡充いたして、この成果をあげたいという方針のもとに進んでおるわけでございます。従いまして、先ほど大蔵大臣からお話しになりましたような補助のいたし方につきましては、文部省としてもさらに検討いたしまして、もっとこの効果の上がるような制度に持っていくことができますれば、それによって文部省の目的を達成するために努力いたしたい、こういう考えでおる次第でございます。
  290. 横山フク

    ○横山フク君 迫水長官にお伺いいたしたいと思いますが、この所得倍増計画では、生産面のことに対しては非常に懇切丁寧に書かれてあるわけでございますけれども、国民生活のことにつきましては非常に簡単に書かれてあるわけでございますけれども、これは簡単過ぎるように思うのですが、いかがでございましょう。
  291. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 国民生活が十年先に目標年次において大体どういう形になるかということにつきましては、お話しの通り私もきわめて簡単過ぎると思います。そこで、今内々で、もう少しこれをわかりやすく具体的に研究してみたらどうかということを庁内では申しておりまして、若干そういう作業にも着手をいたしております。
  292. 横山フク

    ○横山フク君 そういう作業をするときの、あるいは希望になるかもしれません——として伺わせていただきたいのですが、ここに、乗用車何台、テレビが幾ら、電気洗たく機とか、電気冷蔵庫とか、それが目標年次にはどのくらいになるというようなことが書いてあるのです。もちろん文化生活の度合というのは、乗用車やテレビや電気洗たく機でもって一応のめどとはなりますけれども、私たちは、所得を倍増するということももちろん私たちの願いではございますが、十年後に私たちの生活がどんなによくなるのかということが私たちの願いなのです。所得の倍増よりも、私たちの願いは、もっと生活内容を充実するということが私たちの願いでございますので、こうしたいわゆる高級消費財というものでございますか、そういうものでなくて、もう少しこういう点に対してもお加え願いたいと思うのでございます。  なおあとで詳しくというお話でございますので、一応次に移らせていただきますが、非常に十年後において私はアンバランスができるんじゃないかと思う。というのは、乗用車は千人というようなものでございますが、それに二十一・九ということになっておる。これは二十人に一人という割合になるのでございますか。
  293. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 五十人。
  294. 横山フク

    ○横山フク君 そうすると、二十二ということですと、四十人ちょっとに一人という割合でございますね。しかし四十何人に一人ということになりますと、現在の道路でも非常に困却いたしておりますのに、さらにこれが非常に困却の度を加えて参るだろうと思う。たとえて言ったならば、現在は三十万台、それが乗船車が二百二十四万台というふうにふえて参るわけでございます。現在でも困却するのに、道路の計画がその線にはたして沿って参るでございましょうか、いかがでございましょうか。
  295. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 現在は自動車は大体三百人に一人なのが、五十人に一人くらいになると、この所得倍増計画では見通しをいたしておりまして、それは道路計画とは一応照応した形でできておるはずでございます。
  296. 横山フク

    ○横山フク君 道路の今の……私ちょっと気があせっているんですが、まあ五十人に一人という形、今三百人に一人。まあこれにいたしましても、現在、過去の例から言っても十年間に道路が都会地においてどのくらい進歩しておるか。これから加速度的にするとしても、私はおそらくそれは困難じゃないか。ここに一つの国民生活白書の中にございますあるいはテレビや電気洗たく機というものは、ほとんど外国と同じような形になっておりますが、住宅とか、あるいは下水道、道路においてはもう非常に隔たりがあり過ぎるようになっておりますけれども、これをはたして諸外国に近いというところまでは無理でございましょうか。どの程度まではいくのでございましょうか。私たちこれを見て、自動車ばかりできても、道がなかったならば自動車をかついでも歩けないし、どうするのかという気がするのでございますが、いかがでございましょうか。
  297. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) この所得倍増計画は一応総合的な見地から計算をいたしておりますので、私今具体的に道路はこういうふうになるということを、数字をもって、自動車との関係はこうなるということを申し上げるだけの材料を持っておりませんけれども、今度道路計画が二兆一千億の道路計画を立てておる。それは大体のところで、所得倍増計画における道路上の公共投資とほぼつき合っておるということにもなっておりますので、道路の公共投資がこの計画の通りいきますれば、自動車はかついで歩く必要はないのではないかと思っております。
  298. 横山フク

    ○横山フク君 最後に、国民生活審議会というのは百四十万円取れておるし、それから国民化活向上対策費というのは九百幾ら、一千万円近く取れておる。これは、これをどういうふうにお使いになるのか伺わせていただきたいと思います。
  299. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 国民生活向上対策審議会というのは、三十人くらいの委員で構成するわけでございますけれども、これには主として、主としてといいますか、相当大きな部分を消費者の代表によって占めたものを作り上げていきたいと思っております。そうしてその審議事項は、法律に出ておりますることは、国民生活の実情の調査に関する事項と、合理的な生活構造モデルの作成に関する事項、生活環境施設の総合的整備の推進に関する基本的事項、その他ということになっておりますが、しかし、また必要に応じて専門部会を設けたり、学識経験者を専門委員として任命することもできるようになっておりますが、私は予算が通りましたら、できるだけ早い機会にこれを作りまして、形成をいたしまして、国民生活向上全般に関する問題について機動的な御審議を願いたい。政府の原案を作ってそれを諮問するというのではなくて、もちろんそういう場合もあると思いますが、この方々に一ついろいろな知恵を懇談的に拝借しながら対策を講ずる資料にしていきたいと思っております。  なお調査委託費九百九十三万円というのは二部に分かれておりまして、そのうち約百三十万円は消費者生活の指針となると同時に、生活改善のための諸施策にも資することができるような将来の生活構造の標準的なモデルの作成のために使用する分としてこれは特定されておりまして、残りの約八百六十万円につきましては、これから具体的にその使用の方法を考えていくわけでありますが、さしあたり今私ども考えておりますのは、第一は消費者物価指数の検討でありまして、先般も当委員会においてお答えをいたしましたが、大体、内閣統計局の家計調査の五分位、つまり五つの階段に分けており、各五分位ごとにエンゲル係数も違いますし、消費の内容も違いますので、それに応じた消費者物価指数というようなものを研究いたしまして、消費者物価の動きが具体的に各階層別にどういう影響を与えるかと、今のような非常なマクロの見方でなしに、もっと具体的に把握する資料にしたいということが一つと、それからもう一つは、今日のところ消費者は当然もう少し監視的な能力を持たなければ私はならないと思います。従って、消費者の監視的な能力を発揮せしめるために、まあ泣き寝入りをしない、消費者が泣き寝入りをしてしまわないような仕組みをここで考えていく、そういうことにはどうすればいいか、どういう研究機関を対象にして持っていったらいいかというふうに考えておりますが、そういうことの費用にこれを使ってみたいと、こう考えております。
  300. 横山フク

    ○横山フク君 次に、大蔵大臣に伺いたいと思うのでございますけれども、ただいま妊娠中の母体を愛護する、大蔵省の方針が少しこの点に関しては違っておるのじゃないかと私は思う。というのは、未熟児対策あるいは精薄児対策、これは未熟児に対して八千五百五十九万六千円、あるいは精薄児に対しましては七億七千八百万円というふうに出ております。私は、生まれたかわいそうな子供たち、その人たちに一億、三億を使うのは、私たちは当然のことと思っております。私は、この額が多いとか少ないとか言うのではありません。こういう子供を作らないようにするということが、私は国の施策ではないかと思うのでありますが、妊娠中毒症は、大体これは小さな問題ですが、なかなか解決つかない。で、大蔵大臣の前で、予算委員会ではっきりといたしたいと思ってあえて出したのでございますが、妊婦の一二・四%は妊娠中毒症にかかっておる。そうして今諸外国に比べて日本の死亡率は高い。かつてアメリカが四四に対して日本ではわずかに二二と半分くらい。ところが、今日においてアメリカは五分の一、アメリカはもう九、五、三というふうに、アメリカその他は今はなっておりますのに、日本は相変わらず一七。戦後横ばいになっておるのであります。ところが、死亡率の大きな分野を占めるものは妊娠中毒症、妊産婦の死亡率の一二%が妊娠中毒症、精薄児の三八%は妊娠中毒症に関係している、未熟児の三〇%は妊娠中毒症に関係している、あるいは赤ちゃんの死んだそれの三〇%というものは妊娠中毒症に関係している。こういうふうにして未熟児の三割、精薄児の四割近くを占めております。こうした妊娠中毒症に対しての対策費がゼロ査定。これは私は大蔵省お考え違いではないか。精薄児や未熟児に二億、三億を使うのはけっこうでございます。しかし、妊娠中毒症は、早期の保健指導によって半数は助かるという妊娠中毒症に、わずか最後において三千万円のお金さえもお削りになったということは、私は非常に遺憾と思うのでございます。この点に対しまして大蔵大臣はどうお考えになるでしょうか。
  301. 館哲二

    委員長館哲二君) 横山君に御注意を申し上げます。時間ももう過ぎましたから。
  302. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 確かにそういう点があろうと思いますが、その問題は今後検討いたします。で、今までそういう問題のいろんな御要請がございましたが、私どももそういう意味をくんで、母子健康のためのセンターの設置とか、あるいは家族計画というところへは、相当予算の強化をしましたが、今後、今のような問題は私は必要と思いますので、検討いたします。
  303. 横山フク

    ○横山フク君 どうぞよろしくお願いいたします。もう時間がありませんので、あとは分科会に譲ります。   —————————————
  304. 館哲二

    委員長館哲二君) 東隆君。
  305. 東隆

    ○東隆君 私は、農業基本法を中心にして、経済企画庁長官、大蔵大臣、農林大臣質問をいたすわけであります。  最初に、所得倍増の問題をお伺いをいたしますが、私は、池田総理大臣を初め政府与党の人々は非常に自由主義経済に立っておられますので、率直に御意見を述べられておると思います。金をもうけることができる者がどんどんもうけて、その第一流の者が多くもうければ第二流に位する者もまたもうけることができるのだと、従って、下の方の者は潤いが来て十分に所得を増加することができると、こういうふうに池田さんは本会議で言われたのを私は承知をいたしておるわけであります。また、農業基本法関係においても、もうける農業、あるいは成り立つ農業、こういうような表現が使われまして、そうしてもうけることができる農業をぐいぐいと大きくしていって、そして所得を増加させると、こういうふうにおっしゃっておるわけであります。私は、これ間違いがないと思いますが、一応一つ経済企画庁長官並びに農林大臣からお答えを願いたいと思います。
  306. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私ども、今までの農業形態から新しい農業形態を考える上にいきますについては、どうしてももうかる農業、成り立つ農業ということが眼目でなければならぬと思います。従いまして、それをやるについて、一面には自立する農村というものを立てようと思いまするし、なかなかこれは一足飛びに早く全部がそうはなりますまい。そういう場合における零細農あるいは兼業農家等においては、希望により協業経営によって成り立つようにやっていきたいと考えております。
  307. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 御質問の要点というのは、自由主義経済では、上の方がよくなっていくというと下の方もだんだんと引っぱり上げられていくという前提で考えているかということでございますか。
  308. 東隆

    ○東隆君 そうです、そうです。
  309. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 私は、必ずしもそういうことではなしに、社会保障の徹底、あるいは低所得者層の解消というような、いわゆる所得較差の是正というのが所得倍増計画の非常に大きな眼目の一つでございますが、上の方の所得がふえていくことによって下が引っぱられていくというよりは、下からつき上げていく分の方が多いというふうに思っております。
  310. 東隆

    ○東隆君 経済企画庁長官は、池田首相が本会議で言われたのと、少し予防線を張られておる関係かお答えが違うのでありますが、私が聞いておるのは、もうけることができる者はぐんぐんもうけていくのだ、そうすると、そのトップ・クラスの人の次に位する者も十分にもうけていくことができるので、それゆえ下の方の人は潤いができて、そして十分に所得を増加することができるので所得の倍増ができるのだと、こういうふうにお話しになっているわけであります。私は、これは自由主義経済の立場に立っておる関係からいけば、これは正しい私は表現でないかと、こういうふうに感心をいたしておったわけでございますが、経済企画庁長官は少し予防線を張られておるようでありますが、私は、この考え方は、やはり弱肉強食のような姿が出てきて、そうしてかえって較差を大きくするのじゃないかと、農業と他の産業との間の較差も大きくするし、また私は、農業の中においても、実は大きく較差を作り上げる考え方でないかと、こういうふうに考えるのですが、この点はどういうふうにお考えですか。
  311. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 私は、まあ総理大臣とは始終接触しておりますが、今、東さんのおっしゃったようなふうに総理は言っているということは、ちょっと私記憶をいたしませんし、了解に苦しむのでありますが、要するに、所得倍増計画というものの一つの大きなねらいは所得の較差の是正にあるということを先ほど申し上げました通りでございまして、従って、所得較差が開かないように、むしろそれが縮小していくように、もろもろの政府としては必要な施策を講ずるし、また民間経済もそういうふうに誘導していこうというのが、所得倍増計画の精神だと思っております。
  312. 東隆

    ○東隆君 これは、私ども本会議で無知をしたように私は思っておるのですけれども、私の間違いかもしれませんけれども、自由主義経済の立場に立つ、私はそういう言葉が出てくると思うのです。だから、これはあとでまた調べて、一つ証拠をお示しすることができると思いますから、その機会に譲ります。  そこで、それならば、農業従事者と他の産業の従事者との均衡のとれる、こういう場合における、一体その農業の場合とそれから他の産業の場合を比較する相手方ですね。それから、農業においては、一体どういうものを基準にして相手方を求められるのか。この点も、私は実に理解しがたい表現を使われておるので、この点一つ解明をしていただきたいと思います。
  313. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) これは、一がいに農業を他の産業のどれとということは、これはなかなか困難だと思います。しかし、おのずからこの米の生産費及び所得補償方式の計算の中に現われる、生産費計算の中に出て参りまする農家の自家用労働というものを、他の産業のどの労働者の賃金と比べるかという問題のときに、よく議論になっております。一応私どもは、全国の都市における製造工業者の平均賃金ということを、一応の考え方に置いておるわけです。しかし、私は、具体的に今後問題をどのようなものと比べるかということは、よく農政審議会等においても十分御審議を願いたいと思うし、いろいろ地域的にもあるいは違ってくる場合があるのじゃなかろうかと思いますが、ただ一応、一つの参考に申し上げた次第でございます。
  314. 東隆

    ○東隆君 今、農林大臣は、農業従事者というのと比較をするのは、都市その他における工業の賃金労働者のしかるべきものと均衡をとるのだと、こういうお話でありますが、私は農業は中小企業者でないかと、こう一応考えておるわけです。それは資本と土地とを持ち、自分の労働を提供して農業経営をやっておるのでありますから、従って、比較をするのに、賃金労働者と比較をすべきでないのじゃないか。かえって、いわゆる中小企業者と比較をすべきじゃないか、こういうような考え方を一応持つのでありますが、この点はどういうふうにお考えですか。
  315. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私がただいま申し上げたのは、一がいに何と比較するということはなかなか困難な事情であります。もとより、御指摘のように、農業者を他の自営業者と比較するということも一つの行き方だと思います。しかし、私どもはその点は、大体妥当なものはどれを持ってくるかということは、地域的にもいろいろ違って参ります。そこで、この農業基本法通過の暁にできます審議会等に諮問して、どういうことに持っていくかということを考えたいと申し上げたのはそこであります。しかし、参考として申し上げると、よく、生産費及び所得補償方式というものを、米価決定について計算の中に出てくる、生産費の中に出てくる農家の自家用労賃というものを何に比較するか、これは一つの所得の一部をなすものです。そういうことも参考になるだろうということを申し上げた次第であります。
  316. 東隆

    ○東隆君 企画庁長官、今農林大臣は、まだこれから研究されて、そうしてやられるようでありますが、経済企画庁長官として、農業基本法の中に、目標の中にはっきり書いてある。他の産業に従事しているものと均衡をとれると、こういうふうに書いてあるので、私はある程度もう具体的なものができておらなければならぬと、こういう考え方で質問をいたしておりますけれども、これは今後両方で御研究になるのですか。
  317. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 所得倍増計画において、いわゆる均衡をとるという場合のその標準は、全都市勤労者世帯の家計調査における世帯の所得と、それから農家の家計調査における所得とのそれを、こうバランスをとって、国民所得倍増計画はそういう立場で立って研究をいたしております。農業基本法の場合においてどういうふうな基準をとるかということについては、私まだよく勉強しておりませんし、これから農林省とも研究したいと思っております。
  318. 東隆

    ○東隆君 この問題は、実は研究事項になってしまいましたが、その次に、私は農業の中で、農業と他産業との較差をなくすると、こういう問題に立ち至ったときに、私は他の産業との比較とか、そんな問題は、これはそう大した重要な問題でなくて、農業の中におけるところの較差縮小、たとえば零細農業あるいは兼業農家解消、あるいは僻地農業を非常に高度な農業に変えていく、こういうようなことが、これが一番大切なことじゃないか。ことに今回の関係からいくと、一番おそらく大きく響いてくるのは単作地帯の水田農家あるいは畑作農家、こういうものが、これは非常に大きな、もうかる農業と比較をすると較差ができる農家になるわけです。こういうようなものも較差を縮めると、もうかる農業と縮めると、こういうことをお考えになるのが、これが農業基本法の中心問題にならなければならぬと、一応そういうふうに考えるのですが、この点は企画庁長官はどういうふうにお考えですか。
  319. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御指摘の点は、もちろん私ども考えていかねばならぬ問題であると思います。農業間における較差を縮めていく、これは今お話しのように、農業だけでやっていける農家は比較的規模の大きいものでしょう。それらに対して、そこまで及ばぬ零細農家は一体どうするか、また兼業農家についてはどうするかという、その間に、でき得る限り所得あるいは生活水準の均衡を得さしめるということがまず第一番の問題であるということは、私も同感であります。その上、今度は農業者と他産業者の関係において均衡せしめるという形になるわけであります。
  320. 東隆

    ○東隆君 長官、一つ
  321. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) これはお答えにならないかもわかりませんけれども、所得倍増計画では、自立経営農家、つまり農業所得だけで立っていく農家と、そうでないのとの、その間のバランスをどうしてとるかということ。要するに、自立できない農家というものは兼業収入でそのバランスをとっていくんだという考え方で所得倍増計画は立っているのでありまして、今御質問に相なりました単作米作地帯とそれからそのほかの農業との間の所得の較差をどうするかということは、所得倍増というものはそこまでは実は入っておりません。従って、その問題はこれからまた農業基本法の問題とも関連いたしまして、農林省と勉強いたします。
  322. 東隆

    ○東隆君 お逃げになったのでありますけれども、私は実のところを見ますと、兼業農家のような農家は、これはやはり普通に飯米農家といわれている。これは技術の方面からいっても、実に水準が低いのです。だから、こういう農家こそ何らかの方法でもって解消をして、そうして技術的にも高度なものにこれを変えていかなければならぬ。だから、非常に農業基本法の中心になるのは、兼業農家をどういうふうに高度な生産を上げる方に持っていくかという、そういうことが考えられなければならぬのじゃないか。零細農家にしても、零細農家でも、やりようによったら十分に私は農業の一員としてりっぱな、それこそ選択的拡大生産というような方面は、私は有効に使えば資本家的な企業、たとえば園芸のようなものでも、あるいは養鶏のようなものでも、私は専門的な農業をやり得るんじゃないか、こんなふうに考えているわけであります。だから、そういうふうな点の考慮が、農業基本法の中では実はあまり考慮されておりません。そしてただ単に、他の産業に従事しておるものと均衡のとれるというような表現、あるいは総生産を増加するとかというような表現を使われているだけでありまして、私は農業基本法の中心が実は非常にぼけておって、そうして解消すべきものをどうやって解消するか、こういうような点について一つも示されておらないような気がいたしまして、非常に実は心配をいたしておるわけでありますが、こういうような点で、もし農林大臣の方で方図をお示し下さるならば、私は幸いだと思います。
  323. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) その点には、冒頭のお尋ねで一部お答えをしておるつもりでありますが、私どもは、今後における農業の方面から農家の所得を上げていく問題と、農家と申します場合における農家所得という場合には、これは兼業——農外所得と農業からあがる所得というものが集まって一つの所得の増大を考えていかなければならぬと思います。従って、先ほど簡単にお答えをいたしましたが、まず農業だけで自立し得る農家を作るということは一つの理想であって、その方向へ進めつつ、家族経営を中心とした自立農家の育成ということが中心でありますけれども、同時に、自立経営農家においても、またそこまで急速に進むことのできない零細農家、または兼業農家等におきましても、農業の部面におきましては、これを協議という形、すなわち作業の協同にまで徹底的に進むものもございましょうし、ものによりましては、一部協同ということで進むものもございましょうが、協業の形をとりつつ、農業としての生産性を高め、農業としての拡大、生産を拡大していくということについてまず考える。それについては、お示しのように、今後伸びいく生産物としての畜産とか果樹というものを、零細農家といえども指導によってよくなることはお話しの通りでありますので、その方の指導に持っていくことになっております。  しこうして、もう一つの点は、兼業農家等につきましての農外所得と合わせての農家所得というものの増加というものにつきましては、当然、基本法等の中に入っておりまするように、これが農業以外の各種の施策というものをあわせ考えていくという中には、近く、検討いたしておりまする後進地域開発促進に関する法律というようなものが考えられておりますが、これは農村等に対して工場の分散、都市の分散というものと考え合わせつつ、その方に雇用の機会を与えつつ、農外所得の増加をはかるというようなこと、これが同時に一緒になりまして、農家所得の増大ということを考えておるわけであります。
  324. 東隆

    ○東隆君 自立農業という言葉を使われておるのは、私は農業所得でまあ生活のできるような農業者を自立農業、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  325. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私は、農家としての自立経営農家というものは、農業によって、それだけでやっていけるというような農家をさして自立経営農家と言っております。
  326. 東隆

    ○東隆君 そうすると、私は実にいろいろな種類がかりにあると。政府が非常に奨励をされておる酪農を一つ取り上げてみましても、市乳販売を目的として経営をやっておる酪農家は、これは粗飼料も濃厚飼料も全部購入をして、そして土地を持たなくてもやっていける。こういう農業が、実は都会付近では成り立つと思う。ところが、少し離れた山奥の方でもって酪農をすれば、そういうようなことをやったのでは、これは問題にならない。これは工場に原料乳として出す、こういうような形になりますると、乳価は非常に安いものになる。こういうようなものを一律に選択的拡大生産と、こういうような対象でもって御奨励になるようでありますけれども、一体、重点をどういうところに置かれて奨励をされるのですか。
  327. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お尋ねでございますが、ちょっとその意を解しかねますが、お答えいたしますが、間違っておればもう一ぺんお聞きいただいてけっこうです。  私どもは、今場所ごとに、酪農経営をやってみずからえさを自給してやる地域と、今お話しのように、全部購買飼料によってやる農家と、いろいろあるのだが、どっちを中心にしてやるかというお尋ねのように聞きましたが、そうですが……。それなれば、私どもは、その形態は場所ごとに違うと思います。しかし、でき得べくんば、農家の酪農経営をいたします場合に、できるだけ自給飼料をみずから供給し得るような態勢を整えて酪農をしていくことが理想であります。しかし、地域によっては、そういうところが、自給し得るえさというものよりも、購買飼料の方が多いというような場合もありまして、しかし、いずれにしても、酪農の経営に向かって、やろうとする形態は違っても、それらのおのおのの場所によって私は指導していきたい。  ことに問題は、今後とも飼料の問題が中心になりますから、理想的にいえば、私どもは日本全国において今後伸びる酪農その他畜産に対して、品目刑の飼料の将来の必要需要数量というものはどうなるか、それに対して国内における自給をなし得る数量はどうなるか、そしてどうしてもそれが国内において不足する場合においては輸入飼料の計画を立てて、全体として畜産農家に対して迷惑の及ばぬように十分配慮していくことが必要であろう、かような考え方で、今後酪農と畜産等に対しましては飼料対策というものを根本に考えていきたいと、かように思っております。地域的には、お話のようないろいろな場所が出てくると思います。
  328. 東隆

    ○東隆君 私は、水田農家を考えたときに、おそらく将来、新潟県を含んだ東北あるいは北海道の方に水田のおそらく中心が移動していくんじゃないか、そうして南の方はこれはだんだん米を作らないようになるのじゃないか、こういう気持がするのです。というのは、多毛作ができるような地帯においては、米のようなものを作っても、一反から四万円あげれば、これはせいぜいでしょう。四石ですから。そういうふうに計算をいたしますと、もっと金のあがるものを作る、こういうような方向になるのじゃないか、こういうふうに考えますが、そうだとすると、水田で七けたの収入をあげる、総収入七けた、百万円の収入をあげる、そういうことになりますると、単作地帯では少なくとも二町五反作らなきゃならぬ。そういう計算をやりますると、私は耕地の造成ということをこれはもう少し馬力をかけなきゃならぬ、こういう計算をしておるのですが、この点どういうようにお考えですか。
  329. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) この点は、私どもも十分将来考えていきたいと思います。農業基本法の中にも書いておりますが、農業基盤の整備開発、水の開発と書いてあるのは、こう言うのは簡単でございますが、今後における、日本の将来における農産物需給の見通しを立てつつ、品目別に、そうしてそれに必要な土地面積というものを必要の見通しを立てて、漸次これが造成をはかっていくことが必要だと思います。ことに、その点に関しましては、私どもが特に数量を明示しておりませんのは、ただ単に増反する、土地をふやすということだけでは、これは裏づけがなければいけないのでありまして、ただいま申し上げましたように、畜産あるいは果樹に、あるいは将来のその他の畑作に関連いたしましても、どれだけの土地が要るか、地域別にどれだけのものが要るのかということが問題になってくる。ことに畜産、果樹等におきましては、どこもいいからといって、どこも簡単にふやすわけにいきますまい。しかし、よく御質問等で例を引かれますように、外国等における場合、牧草地、畑地等が日本に比べて多い。これは牧草地帯、こういう点は将来の畜産の問題を考えたときに相当、放牧地帯を持つということが比較的コストを安くしつつ太らせるということもできるわけです。こういう面においては、一体どれくらいにこれをふやしていくかということを考えて、これに必要な措置を講じ、必要な予算的措置を考えたいと思っております。
  330. 東隆

    ○東隆君 重要な主食について長期見通しを立てておやりのようでありますけれども、私は、これはもう少し進んで計画的な計画というような面を研究なすっておやりになった方がいいと思います。さらに、私は、長期の見通しの上にいろいろな撰択的作物の拡大生産をするというのが農業基本法の政府の中心的なものだ、こういうふうに考えておりますが、私は果樹のようなものですね、こういうようなものは私は今までほっちらかしておいても、実は相当伸びてきたのであります。従って、これが政府のかね太鼓というわけではありませんけれども、たたいてやります場合には、私は相当な伸びが行なわれると思う。しかも、桃栗三年柿八年ですか、そういうようなことになって、そうして今は問題でなくても、最盛期というようなときになってきたときに、私はただ長期の見通しという上に立って、そうしてその結果、しわ寄せは私は果樹を栽培した農家にしわ寄せになるのじゃないか、これを非常におそれているのでありますが、この間の調節を一体どういうふうにおやりになるか。もし過剰生産というような状態になって、需要供給の関係で価格がきまるのだ、こういうものは自由主義の立場でありますから、従って、そういうような状態に置かれることによって不測の損害をこうむったときに、政府は長期見通しというようなことでもって私は責任を回避されるのではないか、こういう心配をしているわけであります。私はそれにもやはり計画生産をするのだ、こういう建前に立って、政府が責任を持つか、また、もし膨大なものでありますから、そう政府としても責任が持てないとするならば、その中に何か合理的な調節をするものが必要ではないか。それを私は農業協同組合等の自主的な調整、そういうようなものが中に入らなければ、果樹その他の問題にしても私は相当困難な問題が起きてくるのじゃないか。これは果樹一つでありますけれども、それ以外の酪農にしても、その他の問題にしても、ことごとく私はそういうような問題が起きてくると思います。  それは計画生産ということで、政府が当然責めを負うと、こういう覚悟があるならば、これは問題ない。ところが、ただ単に長期見通しというような形でもって、価格の方面についても生産費所得補償の方式を主要農産物ぐらいについてお考えになるかもしれませんけれども、それ以外についてはあまり確固たる考え方がない。そういうような点についてどういうふうにして農家が心配をしておるのを防ぐお考えでありますか、これをお聞きしたい。
  331. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) いや、御心配の点がありますからこそ、私どもは今までの形のように、果樹がいいからといって自然にまかせるということをしないで、大体の今後における需要の見通しを立てて生産していこう。これは内需だけでなく、輸出の問題も含めて、過去における実績から従来の伸び、そういうものを考えて一つの見通しを——今後における指導上の政策的な見通し等にもよるかもしれませんが、見通しのもとに、そうしてあとは指導によって補われるわけであります。お話のように、これは桃栗三年柿八年とおっしゃいましたが、今実生からいかないから、かなり早くこれは結実してとれます。それであるだけに、私は今後における見通しの上に立って、地方別に適した適地に、同じ果樹でもどういうふうに伸ばすかということを、ただいま農業改良普及員等の特技といいますか、技術者を養成する、それから今後は果樹とか畜産について特殊な技能を持ち、技能の指導をなし得る者を年々に養成を始める。こういうようなものの指導によって、見通しに基づいた増産体制をとっていきたい。お話しの中にありましたように、そういう場合には、農業協同組合等を活用したらどうかというお話は、いつも私は申し上げているのですが、十分に活用しなければいかんので、政府の大きな長期見通しの上に立って、あとは誘導いたしまして、それらに対してやはり農業協同組合等がその線に沿いつつ、そうして自主的な生産調整をするということの大きな役割を果たされることになるのであって、これらは私どもは大いに賛成であります。
  332. 東隆

    ○東隆君 私は較差をなくするために重要なことは、生産の増大するばかりで較差を少なくするわけにはいかぬと思います。それで、私はやはり流通の面、ことに市場関係、これを確実に生産者が握らんければならぬ。そうでないとほんとうのものにならぬ、こういうふうに考えておるのでありますが、この点は所縁倍増の方からいいますと、今まで中小企業者等の所得になっておった分を、実のところを申しますと、農民の方に持ってくるのでありますから、これはだいぶ問題になろうと思うのです。経済企画庁長官はどうですか。生産者が防衛手段としてこしらえた農業協同組合が生産地の市場を専管をする。それから中小都市におけるところの卸し市場、そういうようなものには農業者の団体である協同組合等が経営に参加をする。また中央卸売市場というそういうようなものは、非常に公益性をもう少し強めていく、こういうような考え方あるいはまた都市の消費者の、消費都市の小売市場、そういうようなところは、生産者の団体と消費者の団体、これは生活協同組合のようなものを含むのでありますが、そういうようなものの連繋のもとに相談をする、生産者から消費者へというスーパー・マーケットのようなものを中心にした一つの小売市場を考える、こういうようなことは、これは価格を適正なものにするという方面から、消費者には非常に大きな利益になろう、こう考えるのですが、この点と、中小企業のその方面を担当しておる者の所得にだいぶ響くことでありますし、所得倍増からいうと、意外なところに大穴をあけるようなことにもなるんじゃないかと、こう考えますが、この考え方はどういうふうにお考えですか。経済企画庁長官どうですか。
  333. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お話しの点は、ごもっともでありますので、今後における果樹、畜産等、その他農産物におきましても、所得を確保していく上において御指摘のように、流通の面、価格の面、そういう面についてはもっとも考慮していかなければならぬ。これに対してまず畜産等につきましても、果樹等についても、生産地でまとまった生産をさせる。ことに畜産につきましては、零細農家が少ない飼料をやっている、多頭飼育という言葉が使われますが、まとまった形に商品が集まる。そこにいけば相当まとまった形に品物が集まるというような形、まとまっているということは、共同出荷をなすにも非常に便利であり、そのことは力強く消費者に対しても対決し得ることになりましょうし、そういう面は今度農業協同組合等についても、はっきりそれらに関する施設を考え、予算等についても考えている次第でありますから、これをもっと積極的に推進していくことが必要だと思います。  ただ、御指摘のように、市場支配を全部農業団体でやらしたらどうか。さらに多少譲っても、市場に対して農業協同組合が参加する方法を考えたらどうか。さらに一番徹底しているのは、生産者から消費者へという段階で行ったらどうかという御意見であります。これらは将来研究していくべき問題であろうと思いますが、最後の点は、いかにもこれはごもっともなお話しでございますが、今日における日本の人口の状態からいって、やはりある小売関係で生きておる人もおるわけであります。それは全部排除してほかに持っていくということを考えずして、直ちにこの職業を排除するということは困難と思います。要は、小売にあたって、小売から消費者に渡る場合における価格というものと生産者からその商人に渡される価格との間に、非常な開きが大き過ぎるという点は、私どもしっかり考えていかなければならぬ問題だと思うのです。その点については中央卸売市場法につきましてその改定を加え、生産者団体の相当まとまった荷物をぶつけることによって、大きく発言を持ち得るようにものを考えるということは、私ども検討して参りたいと思います。
  334. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 農産物の生産、加工、流通の上において、農業協同組合を一そう活用するということは、これはもちろん賛成でありますし、所得倍増計画にもそういうような趣旨のことは書いてございますが、今お話しのような、中間の商業部門というものを全部排除してしまうということは、これは行き過ぎで、私にわかに賛成できません。
  335. 東隆

    ○東隆君 私は中間の商業者を排除するという考え方ではなくて、生産地の市場はこれは農業者あるいは漁業者等の協同組合が専管をしたらいいのじゃないか、これは正しいことで農林大臣これはお認めになるのじゃないかと思う。中小都市における卸売の関係は、これは商人ばかりでやられたんじゃ問題にならぬから、そこに農業者の協同組合等が発言することができるような体制を作ったらどうか、こう言っておるわけです。これも私は賛成できる、そう無理でない話だとこう思っておるわけです。  それからもう一つは、中央卸売市場は、これは農林省が管轄をされておるので、これを公共性の強いものにしてもらわなければ、今のようなことでは非常に不合理なものがたくさんあるわけです。たとえば、大きな企業的な漁業をやっておるところは、自分の生産物をあそこへ持ってきて指し値でもってやっておるのですから、そうして沿岸の小さいものが、共同でもって出荷したものがあそこでもってせりにかけられて、そうして品物が多い少ない、そういうようなことで値段がきまっていくのですから、だから実にその中央卸売市場の中をしさいに検討を加えてくると、小さな農業者の利益を擁護するような方面がなかなか出てこないものですから、そこで、もう少し公共性を強くして強力なものにしたらどうか、これも私は無理のない話だと、こういうように思っておるわけで、中小、小売商人を排除するなんという、そういう考え方はないのです。都市にはもうすでに大きなデパートなんかでスーパー・マーケットのようなものをやっておるのですから、だからあの形を一つモデル的にでも一つこしらえて、物価を正しいものにする意思がないかと、こういうふうにお聞きをしたわけです。
  336. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 前段のお尋ねについては、ただいまお答えをした通りであります。中央卸売市場等につきましては検討をいたしております。こういうことであります。それから今スーパー・マーケットのようにせいということでありますが、その間におきましては、先ほど申しましたようにまあ直接生産者から消費者へというお話があったから、私も企画庁長官もそれはなかなかむずかしいということを申してありますが、そのスーパー・マーケット等に小売商が集まって、そこで出荷したものを売るというような格好のもので一つの場所を提供してやるというなら、一つの行き方であります。私は理想はお話のように生産者から直接消費者へというのが理想でありましょうけれども、それは全面的にそういうことは実際上無理であります。むしろ、私は先ほども繰り返して申しますように、消費者が受け取る、買い取る価格というものと、生産者が売りに出すときに渡す価格との間に、あまり差が開き過ぎる、こういう問題をいかにするかということが、流通における生産者の立場をいかに考え、いかに有利にするかということと一致すると思うのであります。その間において出荷なり、あるいは市場の問題なりということについて十分検討を加えていきたいと思います。
  337. 東隆

    ○東隆君 次は、貿易の問題なんですが、私は貿易業者は、輸出をする場合には、できるだけ生産者から安く買って、そうして海外へ出す、それによって利益を得るわけです。さらに資材その他は、これは海外からできるだけ安く買って、そして国内で高く売りつけて利益を得るわけです。貿易業者のやり方は私はそういうやり方でないかと思う。少なくとも株式会社やそういうような形式でもってやる場合には、利潤を上げるのが目的でありますから、そういう形になろうと思います。そこで貿易の関係を、協同組合による貿易、それは生活協同組合連合会でありますとか、あるいは農業協同組合連合会でありますとか、あるいは漁業協同組合の連合会でありますとか、こういうようなものが一緒になって、そして協同組合貿易というものを考うべきでないかと、これは私は農業者の所得の較差を縮めていく一番大切なやり方でないかと、こういうふうに考えるのですが、この点はどういうふうにお考えですか。
  338. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ただいまの点については、協同組合連合会等との合同による輸出の機関というものを作ることに目下研究中であります。
  339. 東隆

    ○東隆君 今までお話を申し上げたように、私は農業基本法を考えた場合に、較差の是正をする点においても、それからその他いろいろな問題、生産の方面についても、私は協同組合が中に入って強力なコントロールあるいは事業の推進、そういうようなことをやらなきゃならぬとこういう考え方なのでありますが、政府は実をいうと今度の農業基本法の中に「協業の助長」でありますか、そういうような項目を置かれて、そうして協同組合の事業、あるいは生産協同組合のことに言及をされておるのでありますが、実は協業という言葉が非常に私ども初めてのような気がして、少し調べてみましたところが、この言葉を最初に使ったのは、私は高畠素之訳すところのあの資本論の第一巻第四編にこの字が出てきておる、協業という字が……。これは単純なる協業、その次には分業の上に土台を置いた協業と、こういうような面で表現をしておりますが、この字が実は協業という字で、政府でもって今度は農業基本法の中にその字が用いられてあるわけです。協同組合関係の方は、農民の協同によってと書いてある。こういうような表現を使われて、私どもの方で考えておる協同組合の協同を使っておるわけです。社会党の方は御承知のように、共という字の共同を使っておる。この関係でだいぶいろいろな憶測が行なわれておるようでありますが、私は政府の協業という字をどういうふうにお考えになっておるのか、これ少しお説明を願いたいと思います。
  340. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ある一つのことを、二人以上の人が集まってともに行なうということの意味からいえば、共同も協業も最終には私は同じことだと思います。ただ、私はこまかいことになりますが、共同という形、すなわち共にという、これはどちらかと申しますと物的な方面から行為を中心として考えておると思います。しかも、その内容には常に多数の人が集まって行為を一緒にする、目的はどこにあるとを問わず、たとえば田植えの共同を全面的に一緒にして、合わせるというようなことでどうも共同を使う。しかし、協業の方は今後に対する農業なら農業、あるいは一つの仕事についてそれを発展させるために力を合わせるという意味においては、むしろ協業という方がいいじゃないか。しかもそのときは、必ずしも内容的には、まあ農業で例をとりますと、力を分けて、水田経営については一緒になって半分はそっちへいくが、一部畜産の方は他の担当というようなことであってもいいのじゃないか、問題は今後の農業経営の内容の推進にあたって、これをよりよくするために力を合わせるという一つの意思目的的なものがそこに加わって、そうして行為を共同すると、精神的なものが私は多分に協業という言葉に現わしておると思うのであります。その意味において協業という字を使ったわけであります。従来の共同という、共にというような方は、どっちかといえば常に一緒になって、田植えを一緒にするというのも共同ですし、また今のような目的的にものを考えて分担して仕事を共同するということも含まれると思いますが、むしろ私どもは精神的な目的というようなことをはっきりさせるというために、業を合わせるという協業という字を使ったわけであります。
  341. 東隆

    ○東隆君 政府の説明は、業を合わせるのを協業、こういうような意味で、それに精神的な意味を十分に持っているのだ、こういうお話しであります。それで実は協同組合法の一部改正のときに出てくる言葉は、「農民の協同」という言葉があるわけです。で、これは農業基本法において「協業の助長」ということもあるから、そこで「農民の協同を」云々、こういうような説明をされておるわけです。それで今御説明になった精神的な面だのなんだの、そういうようなものを含むと、今協同組合法の改正のところの協同という意味になる。で、この協業というのは、分業に対する協業ですね、そういうような意味になるのじゃないかと、こう考えるわけです。私が心配をいたしておるのは、農地法の一部改正ですが、今度は合名会社、合資会社あるいは有限会社、こういうようなものが農業法人として現われてくるようになっておるわけです。これは明らかに協業なんです。明らかに協業なんですが、これが農村の中に農業法人として出て参りますと、私は政府が言われておる協業の助長という中には、合名会社あるいは合資会社あるいは有限会社、こういうようなものを含んでおるのじゃないか、こういうように考えるのですが、この点はどういうようにお考えですか。
  342. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) その点は、ただいま申し上げましたように、形態は合名会社、合資会社、有限会社というものがありましても、そのことをやる目的、精神的な方面が、農業に対する今後のあり方をより高く、より発展せしめるために力を合わせるという目的的なことを入れているとこう考えて、これは同じく考えております。
  343. 東隆

    ○東隆君 私が実は非常に心配しておったことが、如実に今説明をされたわけです。というのは、農村に私は合名会社あるいは有限会社、こういうような形でもってもうかる農業が農村の中に出て参りますと、私は当然農業経営というものが、経営主と農業労働者と完全に分かれてくるような事態が発生すると思うのです。私はこれは政府が言う自立農業あるいは家族農業経営、こういうものを中心にお考えになっておるのと、これは非常に違った形態のものが現われてくると思うのですが、そういうふうにお考えになりませんか。
  344. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) さように考えません。ことに、私どもは注意深く株式会社を除いております。合名、有限というものは、大体定款によって票決権も平等にしてあるし、ことにこの法人を認めましても、農地というようなものの共同の仕方というものについては、やや制限を受けるわけであります。こういう点から御心配のように農村へ雇用労働を使って資本家が会社を建ててやるというようなことを、目的とはいたしておらぬのであります。ことに今日すでに現存しております果樹地帯における法人形態というものは、これは東さんも御承知のように、今の合名とか合資とかいう形のものができておって、しかもそれは農業者みずから持つものを出し合って、そしてこれはみずから、そこで耕し、みずからが法人の管理権を地元の農業者がかわり合ってやっていくという形態、そういう形を私どもは指導に置き、やっていくつもりであります。
  345. 東隆

    ○東隆君 農業協同組合法の改正でもって生産協同組合ですか、これができるのでありますが、これは協同組合の精神にのったものだと、こう考えておりますが、これはどういうふうにお考えですか。
  346. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) さようでございます。
  347. 東隆

    ○東隆君 私は、この生産協同組合を政府はかつての農事実行組合のように普遍的に作る御意思があるかどうか、私はこの際、現行の農業協同組合というものが、流通面だけに重点を置いておりまして、そうして生産の基盤の上に立っておらない。これが私は大きな欠陥でないか。だから、この際生産協同組合を、私は少なくとも農村の最下部の細胞のような形でもって作り上げていくことが、これが農業協同組合の正しい活動が促進されるのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、この点はどういうふうにお考えになりますか、個々別々にしてお作りなるのか、この点をお聞きします。
  348. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ただいま考えております生産組合といいますかの問題は、農業生産法人として認めるわけですが、これは大体農業の共同というものを中心に考えておりまして、かつての部落実行組合というものが、むしろこれは当時の産業組合という形の姿を取り得ないような格好の場所に、部落実行組合を認めたと私は思っております。今度は多少その点は違っておりまして、この生産法人というものは、農業の共同経営の部面について生産組合を認める。従って販売、購買、利用事業というようなものは総合農協に結びつけてこれを連絡するように考えております。このことが、先ほど会社について御指摘がありましたが、私は理想的には、やはり農業協同組合法の精神にのっとった生産協同組合を作るのが一つの理想体系でありますが、全国的に一律にそれをそれだけにしぼるのもどうかと思って、従来ある姿を受けて、希望によって合名、有限、そういう会社を認めておるのでありますが、そういう意味において農業生産協同組合というものについて、ただいまのような範疇において認めていくつもりであります。なお、もし従来のような部落実行組合的なもの、これがだんだんと町村合併等の関係によって農業協同組合の地域が拡大して参りますから、そういう場合において、あるいはかつての部落実行組合的なものが必要な個所が出てくるのじゃなかろうか、こういう問題について、最末端の一つの形として、農事実行組合についてただいま検討を加えておる最中であります。
  349. 東隆

    ○東隆君 私の理解しておるところとだいぶ違うのでありますが、部落実行組合というのじゃなくて、農事実行組合というのが、当時簡易法人として産業組合法の中で認められております。当時の産業組合の下部の組織として生産面をやることになっておったわけであります。これがこの生産協同組合と非常に似ておるのであります。しかしその当時は、部落に普遍的に作る、産業組合の区域内に普遍的に作って、そうしてその農事実行組合の上に農業協同組合がある、こういうような形になっておったわけであります。ところが、これは私は非常にいい組織だと考えておるのでありますが、農業協同組合法ができるときに、私は占領軍が非常にこの農事実行組合の組織をおそれたのであります。それは農業会というような全体主義的なもので、フューラー・システムでやられたのでは、これは大へんだと、こういうので、農事実行組合を農業協同組合の傘下に作ることができないように法律を作り上げたのだと、こういうように私は承知をしておるわけであります。もう十五年もたっておるのでありますし、私はこの際、部落民に生産の方面に十分に関与することができる組織を農村の中に作ることが、これが、私は農村の非常に組織的な活動を進めるのに大へんいいのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。この点はお考えになるということでありますけれども、少しお考えが違っておるということでありますから、この点は私が今言ったのが間違ってないと思いますが、どういうふうにお考えですか。
  350. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) その点はちょっと東さんの御記憶が違っておるのじゃないか、私も間違っていれば直しますが、前の産業組合における部落実行組合は、産業組合ができにくい部落に最下部でできておりますが、その際は、部落実行組合は、購買、販売事業までやっておる。で、そういうような形を、今度の生産組合の法人に持たせることは、あまりその農村にいろいろな団体ができ過ぎやしないか、むしろ生産法人として、農業協同でやる部面についてのみ、一つの特殊法人をこしらえて、きているだけこれは農業協同組合に加入させる方法を指導していく。他の販売、購買、利用については、農業者が直接に総合農協を使っていただく方が、農村をあまりばらばらに分けないで、統一ある形に農村を持っていけるのではなかろうか、こう考えております。しかし、ただいま私の申し上げたのは、とは申しましても、昔の産業組合の地域と違って、町村等の合同によって、非常に地域が大きくなっておりますから、別の意味において、部落実行組合的な協同組合の下部組織的なものが、そのほかにいるのかどうか。いるとしたら、どういう部面にどうしたらいいかということを、ただいま研究しているのであります。
  351. 東隆

    ○東隆君 少し私と考え方が違うのでありますけれども、その点は別にして、生産協同組合の農業協同組合の加入の問題ですね。それからさらに合資会社、合名会社、あるいは有限会社、これは協同組合の会員にならなければ、私は、たとえば生産物の自主共販、そういうようなこともできませんし、肥料の共同購入、こういうような問題も、私は非常に災いされてくるのじゃないか、こういうように考えます。従って、協同組合の区域内におけるところのいろいろな共同事業が、非常にじゃまをされるのではないか、こういう心配をいたしておりますが、この加入、脱退の自由を持っておる農業協同組合に、私は合資会社、あるいは合名会社、有限会社は、私は一応はこれは資格がないのじゃないか、こういうように考えておるのでありますけれども、これの便法がございますか。加入の。   〔委員長退席、理事梶原茂嘉君着席〕
  352. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) これはいずれも正会員たる資格を与えることにしております。
  353. 東隆

    ○東隆君 それでは私は一つ、もう一つ問題を提起しますが、それは大きな水産会社が陸上に上陸をして、そうしてカン詰工場などを始めておるわけでありますが、これを私はある程度排除をしなければならない。こういう考え方を持っておるわけです。できるだけそういうようなものは、農民の団体が一つやりたいものだなあ、こういう考え方を持っておりますが、それは営業の自由だの何だの、そういうような問題で、排除ができないと思うのでありますけれども、何とかいい方法はございませんか。
  354. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) この点はいろいろの場所でお尋ねを受けるのでありまして、農業、漁業、各方面においての零細な部面をこれから進展させる上において、あまりそういう面に資本家が出てきては困るという御心配は、ごもっともでありますが、これはどうも頭から禁止するというわけには、御承知のようにできません。問題は、これが全部今日非常にじゃまになっているかというと、あるいはこういうふうなものが、そういう大きく目をつけてやっていることが、ある意味においては農産物等の需要の拡大を刺激をしていくということにもなると思うのでありまして、弊害ばかりとは思いませんが、しかし今後の行き方として、できるだけそういう面におきまして、たとえば畜産の飼育は、農業者の団体でこれはしっかりやれるように、またそのでき上がったものに対する加工という面におきましても、農業者団体がみずからの力でやれるように指導していくことが、私は大事だと思う。さらに進んでは、農業者の団体だけでみずからやるについて、いろいろな面で困難だという場合においては、農業者の団体あるいは連合会が、他の会社と資本を出し合って会社を作っていく。そこでやって、発言権を持つというような方向に私は持っていくのがよろしいし、その方向で指導していっているわけであります。それらの関係する資金の面に関しましては、新しい農業近代化資金融通によっても、金を出すことにいたしておりますし、また、従来からある農林漁業金融公庫における資金ワクからも、そういう関連産業について出し得る道をとっているわけであります。この点について、さらに検討しつつ、必要な面にもっと拡大していきたいと思います。
  355. 東隆

    ○東隆君 私はその上陸する会社が、協同組合の資金を使って、そうしてこしらえた会社でありまするならば、問題でないと思う。ところが、大きな企業的な会社が、自分の資本を縦横に駆使してやるのでありますから、これは問題であろうと思います。そこでこれはどういうふうなことで始まるかと申しますと、落下傘部隊と私どもは言っておりますけれども、村長をまず口説いて、工場をこしらえるのだ、そうすると固定資産税がたくさん入るじゃないかと、こういうので、まず村長を説きつけるわけであります。それからその地域の、まあ言葉が悪いかもしれませんけれども、ボス連中を説いて、そうして生産物は少しいい値段で買うのだと、こういうようなことでもって説得をするわけであります。そうして一つの総合単協の区域だけじゃなくて、数個の総合単協の区域における特殊の単協を作り上げるわけです。特殊の単協を作り上げる。そうして生産物は全部その工場に持っていく。そうして代金をそこから受け取る。そうして必要な肥料であるとか、その他各般のものは、総合単協を利用する、こういうような形で進みますから、重要な中心的な作物が、あるいは畜産物でもいいのですけれども、そういうようなものが、ことごとく総合単協の手を経ないでやるということになりますると、非常にどちらかといと、富力のあるものが特殊単協を作る。そういうような形で、総合単協が非常に弱体なものになる。こういうことが、これがしばしば行なわれているわけで、政府は今回総合単協を合併して、そうして強力なものにするという法律を出された。私はこれは非常にいい法案だと、こう考えておりますが、こういうふうなことから考えて、何とかしてその特殊単協、特別の単協です。そういうようなものを作らない方法を、一つ講ずることができませんか。
  356. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) これは一律に、特殊単協を作らないで、総合単協で全部やれということをきめるわけにも、私はいかぬと思うのですよ。地域的に、またその仕事をやる内容によっても違うと思います。できれば二つも三つも、農村にいろいろなものができないで、総合的な単協でやることが望ましくはありましょう。しかし、一律にそれを禁止するというわけには私はいかない。それから、先ほどお話の点でありますが、現在におきましても農協関係一つの出資者になる、農業者関係の出資が半分以上出ているものについては、これは場合によっては農協に対する加入資格もできるわけであります。要は私どもはぜひとも、これは申し上げておりますけれども、政府も大いに助長指導いたしますけれども、そういう農協が力をもって、そうしてしっかりして共同体制をとり、共同飼育に関与し、共同加工に関与して、そうして力をつけることが外の者に対する私は発言権も強くなり、しっかりした交渉もできることになる。そういう点については、私はちっとも異議がないので、政府は指導していこうというのですから、これは農協関係の皆さんも力を合わせてその方向に持っていったらいい、私はさように思います。また一面におきましては、いかなる場合でも、資本家が入ってきてはならぬというのでなく、ある場合にはっきり線を引いて、たとえば畜産加工について豚の飼育は全部農協、農業者の団体でまとめてやっていく。農業者の飼育したものをまとめて出す。それから加工部面からは向こうへ出すという線も引けることがいい場所もあります。そういう形でやるについても常に私は農協の力ということが問題であります。その力を作り上げていくことに対しては、政府は十分に考慮を加えていきたいと思います。
  357. 東隆

    ○東隆君 私ははっきり申し上げた方がいいと思いますが、そういうような落下傘部隊のようなものが落ちるのを防ぐ方法は、私は、この前本会議で質問いたしました第十九条の全文を取ってもいいのじゃないかと思います。これは専属利用の項でありますが、総合単協でもって協同組合の最高意思機関である総会で決定して、そしてたとえば共同販売をする。ところが、共同販売には参加をしないというものに対して、たとえば肥料を貸してくれといったときに、お前は生産物を持ってこないから肥料は貸さないのだといってはならない、こういうふうに第十九条は規定をしております。私は少なくとも農業協同組合の最高の意思機関である総会で決定したことに反対をするような人は、加入脱退の自由が規定されてあるのでありますから、これは脱退をされた方がいいのじゃないか。このくらいの強い規定がなければ、私は協同組合を強力に運営することができないと思います。本会議では、大臣は私が何だか不思議な人間、奇異に感ずるというようなお答えでありましたけれども、私は今の少なくとも総合単協の浮沈にかかわるような場合を考えたときに、私はこれくらいのことが協同組合でできなければ、協同組合の共同一致の体制というものはできないと思います。だから私は、これはこの際協同組合法の一部改正をお出しになっているのですから、この機会に農業基本法の関係について強力に格差を是正して、りっぱな農業者を作り上げるのだ、こういう考えでありますから、この際これを改正をされた方が、削除をされた方がいいだろう、こういう考え方であります。私は、総合単協の方が大きいのでありまして、そして大きな方の意思をじゅうりんするような、ごく少数のものはこの際加入脱退の自由があるのだから、いやならばやめていく、こういうようなことをやってもいいのじゃないか。こういう考え方なんです。だからこれは一つ農業基本法を進める意味からも、私はこの前の本会議の大臣の私に対する答えは承服はできないわけなんです。不思議な人間にされたり、奇妙な人間にされるのはどうもはなはだ残念に思っているわけですから、一つお答え願いたい。
  358. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 重ねてのお尋ねでありまするが、これは、十九条の規定は組合員が同組合の施設の一部を利用するという契約を結んだ場合に、その契約に違反して利用しなかったら、もうその組合を利用ささぬということを、利用することをこばむことはできないという二項がある。その二項を削除せいということらしいのですが、まあいかにも私はごもっとものようでありますが、大体協同組合というものは加入も脱退も自由でありますし、それから地域団体でもありましょうし、こういう問題はやはり指導的に組合精神というものを植え付けるということがまず第一だろうと思うのです。専属利用いたしますと、契約しても時々利用しなかったらもう金も貸さぬぞというような形になることがいいか悪いかということについては、やはり今日の民主主義と申しますか、人権尊重の上からいって、直ちに私はすぐ賛成はできないと思います。しかし、これはあくまでも私は組合精神に生きるということでなくちゃならぬのであって、お互いに協同組合を作って組合員となり、そして相互扶助団体として出ていくならば、それらの精神的に組合員全体が指導していくということが私はまず第一の行き方であって、それをできないときに法律の力でもって、これをまあ村八分ということじゃないけれども、組合はこれから利用させませんぞというようなことにするのは、また少し考慮の余地がありはせぬかと、私はこう思って、直ちに今法律を改正する考えはございません。
  359. 東隆

    ○東隆君 私は、農林大臣は農業協同組合法ができたときの事情をお知りになっておらぬと思う。それで、農業協同組合法ができたときに、占領軍は実は非常に農村の団結をおそれていた。協同組合の、農業会の形によってまとまっておったあの団結を非常におそれておった。従って、協同組合の各種の事業を縦割りにしまして、信用、購買、販売というふうに縦割りにしてしまった。それから、先ほど問題になりました農事実行組合のような部落の法人、これを作ることを禁じてしまった。農業協同組合の傘下に入れることを禁じてしまった。その条文を削除してしまった。それからこの専属利用の規定をわざわざ入れたわけなんです。中に入れた。そしてこれは結局、日本の農村のものが農業協同組合によって団結をして、そしてやっていくのをできる限り私は弱体化するような、そういう意味を含んでおったのじゃないか。こういうふうに邪推をするわけであります。それは戦争中から産業組合が全体主義の思想のもとに農業会になって、そしてああいうようなヒュラー・システムのもとにでき上っておったのですから、それをいかに当時あしざまに言って、そして農業協同組合をこしらえたか。それをお考えになれば、これは私はよくわかるだろうと思う。そういうような意味で、私は先ほどから大きな大会社が上陸をして、そして一番中心にならなければならぬところの総合単協がみじめな目にあわされている。これを救うのにはどういう方法があるか。こういう問題を出しまして、そしてお答えをしてもらったのですけれども、しかし、私はそれでは満足できないのです。やはり総合単協を強力なものにするためには、この規定を削除してしまって、そして民主的にできた農業協同組合が、私は総会という最高の意思決定機関でもって決定していくことを強力に遂行ができるような体制を作ることが、私は国が農村に対するりっぱな措置でないかと、こういうふうに考えるわけです。だから、この点は一うもう一度お答えを願いたい。
  360. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私は、地域組合としての、しかも大体方向としては一つの組合しか認められないような格好に指導しておる今日、その組合だけを専属利用せよ、これをちょっとでも間違ったらほかの利用はさせぬというような行き方をとることが今日ただいまいいのか悪いのかということについて、まだ私は疑問を持ちます。これは一面においてはかなり組合運動として非常な重大な問題でありますので、これは東さんのお話のように、精神的には、そこまでやって、一つ組合にすべてをやらすというお考えもさることながら、やはり基本的ないろいろな人権の問題もありましょうし、もう少し私は考えてみたいと思います。直ちに改正をして第二項を削除するということは考えておりません。
  361. 東隆

    ○東隆君 大蔵大臣質問する時間がなくなったのでありまするが、私は、営利を目的としていない、民主主義のルールの働いておる協同組合に課税をするのは、法人税を課するのは、これは間違いだと、こういう考え方を持っておりますが、この点どういうふうにお考えですか。
  362. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) お答え申し上げます。今おっしゃる点は、営利を目的とせざる法人の所得にする課税をやめたらどうか……。
  363. 東隆

    ○東隆君 農業協同組合です。
  364. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) 農業協同組合についての課税の問題だと思いますが、現行の税法では、営利を目的とする法人につきましては御案内のように法人税三八%の税率をかけております。その他営利を目的としないが、しかし、経済事業から生ずる所得につきましては、これは農業協同組合もわれわれその一つだと思っておりますが、二八%の税率で課税をしております。で、御案内のように公益法人につきましても、これはもとより公益目的でございますが、しかし、公益目的でもやはり経済事業を営んでおりまして、それから生ずる所得がありますと、その部分に限ってはやはり二八%の税率で課税する。おっしゃる点は、事業税を課税するかどうかというようなところが問題の論点になると思いますが、所得税課税といたしましては、営利を目的としない普通の経済事業から生ずるものについて非課税にすべきだという議論は直ちに出てこないのであります。これは外国の例でもすべてそういうふうになっております。
  365. 東隆

    ○東隆君 協同組合に対する所得税の課税は、農業協同組合における余剰というのは、これは当然組合員に返さるべきものなんです。従って、よけい取り過ぎたからあるだけの話で、それを返すのですから、本来は余剰はないはずなんです。その余剰のないものに課税をするというのは、これは間違いなんです。そうして、もし余剰が残ったとしても、それは組合員が全体でもってそれを残すことをきめるのでありますから、従ってこれに対してかける必要はないので、組合員が十分にそのために利益を得て、そうして所得が増大するのでありますから、それに対しては所得税がかけられるから、だから法人に税金をかける根拠はないと思う。だから、その点は一つ——ほかの公益法人で経済事業をやっておるのに税金をかけておる例はどういうのがあるのですか。
  366. 村山達雄

    政府委員村山達雄君) お答え申し上げます。おっしゃるように協同組合につきましては、本来その組合員のある部分について共同に組合としてやっておる、販売であるとか、購買、利用、信用その他共同事業をやっておる。従いまして本来組合の性質から申しますと、剰余金を残す必要はないともいえるわけでございます。で、現行の協同組合につきましては、従いまして事業分量で配当すべき金額につきましては、特に損金に算入しておるわけでございます。しかしながら、その留保になる部分につきましては、これはやはり独立の人格たる協同組合に帰属するといわざるを得ませんので、その部分に限って課税をしておるような次第でございます。なお、事業分量に対する配当は、日本ではそのまま全部について損金に算入しておりますが、外国の事例はもう少し論理的に分けまして、その共同事業から生ずる事業分量に対する配当だけを損金に算入しております。たとえば資産の運用益から生ずる所得については、同じように事業分量で配当いたしましてもこれは損金に算入しておりません。その点はわが国の税法はかなり大らかでございまして、   〔理事梶原茂嘉君退席、委員長着席〕 その剰余の発生する原因が共同事業から生じようが、あるいは資産の運用益から生じようが、配当する限りにおいては全部損金に算入する。ただ、残るものについては、留保になったものとか、出資配当になるものについては、やはりその協同組合の独自の利益といわざるを得ない、その部分について課税しておると、こういう現状でございます。
  367. 東隆

    ○東隆君 委員長、時間がございませんから、この点は承服できませんからまた後日に。
  368. 館哲二

    委員長館哲二君) また次の機会に。   —————————————
  369. 館哲二

    委員長館哲二君) 辻政信君。
  370. 辻政信

    ○辻政信君 どうも二回も質問に立ちまして恐縮でございますが、日本とブラジル国間の移住協定が国会の同意を求めるために上程されておりますので、それに関連いたしましてきょうは移住問題に焦点を合わせて関係大臣の所信をお伺いしたいと思います。しろうとでありますから、ピントがはずれておりましたら、皆さんからお教えをいただきたいのであります。  まず最初に、迫水企画庁長官から。  あなたは池田内閣の経済を企画される長官であります。その立場から所得倍増計画、その構想に盛っておられる目的を実現するために、現在の日本の人口、特に労働力が余ると思われるか、足らぬと思われるか、あるいはつり合いがとれてあるとお考えになっておりますか。
  371. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 所得倍増計画の想定をいたしておりますところを概略に申し上げますというと、計画の初期におきましては労働力は比較的余まっている状態であるし、だんだんに完全雇用の状態に近づきまして、目標年次の昭和四十五年になると、やや労働力の不足の感じがするような状況になる、こういう想定でございます。
  372. 辻政信

    ○辻政信君 では目標に対して、昭和四十五年に労働力が不足するという御判断ならば、あなたの見地から日本の人口、特に技術移民はやる余地がないと、こう考えてよろしゅうございますか。それとも積極的にどしどし海外に向かって日本の労働力を移住させるという御見解でありますか。
  373. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 率直に申し上げますが、御質問の問題については私深刻に考えてみたことがまだございません。従いまして、技術移民というお言葉の内容でありますが、どのくらいの人間の数になるものか、そういうようなことも実はよく勉強をいたしておりませんので、概括的な感じからだけ申し上げますならば、少なくとも計画の当初においては相当のものは可能である、こういうふうに考えます。しかし、帰ってこなくなっちゃったらこれは困るなあともちょっと思うのでありますが、そこら辺正確なお答えができないのはまことに申しわけございません。
  374. 辻政信

    ○辻政信君 私は池田内閣の所得倍増計画にけちをつけるのではありません。あなたは名前の通り、経済企画の長官ですから、日本の全体の経済構造をどう持っていくか、この一つの理想を立てられて、その理想のもとに、何年までは農業労働は余る、何年以降は足らない、だからこれだけの者は移民をさせろということをあなたが御指示なさる立場にある。それを作らずに、所得倍増計画は、大きな面ではないかもしれませんが、完全とは言えないと思います。
  375. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 所得倍増計画のものの考え方では、移民を積極的に奨励するという立場をとっておりません。
  376. 辻政信

    ○辻政信君 小坂さん、よろしゅうございますか。経済企画庁長官は、移民は積極的にやらんと言われる。それじゃ、外務大臣に聞きますが、昨年の今ごろの委員会の席上で藤山前大臣は、三十五年度を第一年度として、五年間に十万移民の構想を述べておられるので、これを引き継がれた小坂外務大臣、この目標について、就任以来関係各省庁、特に迫水さん、あるいは周東さん、あるいは水田さんと連絡をとられ、この十万移民の目標をお立てになったのかどうか。
  377. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまお示しのように、そういうものを外務省限りにおいて立てているわけであります。従いまして、何とかその目標に参りたいものであると考えまして、各省庁にお話しているのでありますが、御承知のように、現在のところ、まあ七、八千名にとどまるという現状でございまするので、一つできるだけこのピッチを上げるべく努力はいたしておりまするが、二万という数を目標にしての予算というものは、なかなか組み込めないような次第でございます。
  378. 辻政信

    ○辻政信君 そうすると、外務大臣としては、移住を積極的に進めたい、経済企画庁長官としては手控えたい、こうなっているのですか。
  379. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 積極的という言葉の魔術に、そこにひっかかっているような感じがいたすのでありますけれども、所得倍増計画においては、日本の人口問題を移民によって解決をしなければならないというものの考え方ではございません。従いまして、これは当然移民も、出ていく者もあると思いますけれども、移民ということを日本の人口問題の解決の手段としては考えていないということを申し上げたわけであります。
  380. 辻政信

    ○辻政信君 それじゃ大蔵大臣にお伺いしますが、大蔵大臣はこの移民問題をどのくらいの熱意を持ってお考えになっているか。
  381. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 移民計画は早いときに立案されておりまするが、その計画に従って年々予算要求があり、今年はそういうものも勘案して一万一千人というようなことで予算を計上してございますが、経済情勢が変わって参りまして、今後移民の募集が、事実上当初の予定通りの募集はできるかどうかもわからないというような事情もございますし、また、今企画庁長官から言われますような、積極的にこれを推進しなければならぬという理由が、よく企画にはなっておると思います、しかし、政府は過去において一定の計画をもとにして、そして受入地における計画も進めておるときでございますから、移民の希望者がある限りは、なるだけ第一期計画程度の計画は、これはやりたいと考えます。
  382. 辻政信

    ○辻政信君 大体、刺身のつま程度のものと、移民についてはそう思ってよろしゅうございますか。
  383. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ日本の人口問題をなかなか移民によって解決するということはできませんし、従って今程度の計画というようなものは積極的に日本の経済を解決するための人口問題という問題ではなかろうと思います。しかし、日本の手によって外地の開拓ができることはけっこうでございますし、そういう目的で今まで計画は立てられておりますから、この計画ができる範囲内においては、私は進めるのがいいだろうと思います。
  384. 辻政信

    ○辻政信君 三十六年度の予算で移民関係に、外務省、農林省、通産省それから運輸省、どのように大体割り当てられておりますか、これは政府委員でよろしい。
  385. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) お答え申し上げます。外務省所管におきまして、移住者の渡航費貸付金七億九千四百万円、以下十三億七千九百万円、農林省の農業移住事業費補助金二億二千六百万円、以下三億九十八万一千円、運輸省所管におきまして、これは移住船の運航費補助金一億四百万円、総理府の海外移住審議会が二十八万円、合計いたしまして十七億八千五百万円であります。
  386. 辻政信

    ○辻政信君 十七億ちょっとであります。これは全体の予算から見ると〇・一%です。小坂外務大臣は、移住局を新設されて、有能な高木局長を簡抜をされて、そうして張り切って日本の移民をやろうとするし、大蔵大臣は〇・一%の予算をしぶしぶ出す、経済企画庁長官は出す必要はなさそうである、一体これでいいのですか、移民に対する池田内閣の根本方針は。
  387. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 移住政策でもってわが国の人口問題を解決したいと、こう考えましても、これはもう一日に四千人から生まれる日本でございますから、年間に七、八千出て参りましても、なかなかその目的は達しないわけでありまするが、しかし、移住ということは最近また新しい意義を持ってきたように思います。それは、その国の移住地の経済にその移住者が貢献することによって、その移住地とわが国との間の経済交流を深めていく。そしてその地における日本人の信用というものを国際的に深めていく、こういう新たなる効用が出てきたように思うのであります。ことに中南米諸国におきましては、非常に工業化を急いでおり、またその工業化の見地から見まして、わが国の技術者を受け入れるということに非常に興味を示しておりますので、従来の農業移住とあわせまして、今度は商工関係に協力する移住者ということも、新天地が開かれて参ったように思うのであります。むしろ数の問題もさることながら、質の問題が非常に重要になって参った、こういう認識に立ちまして、いろいろ大蔵大臣、企画庁長官とも話しておるわけでございます。現在の移住は、ただいまお示しのように、十三億程度のもの、それから移住会社の方で二十三億程度の資本金をもってやっておりますが、そのほかアメリカ三行から千五百万ドルも借りるワクを持っておるのであります。しかし現実には、これは三百万ドルしか借りておりませんので、いろいろ受入地の事情もございまして、移住政策はできるだけ力を入れなければならぬと思っておりますが、現実的にはただいまおしかりを受けましたように、どうもあまりはなばなしい成果が見られないというのが、実情でございまして、何とかこの十年間の間にはもっとピッチを上げて、この十年間に日本の移住政策というものをもっとはなばなしく推進しなければならぬと考えております。と申します意味は、おそらく中南米諸国におきましても今後十年ぐらいしか移住者を受け入れる余地はなかろうと思いまして、この期間が非常に大切であると考えておる次第であります。
  388. 辻政信

    ○辻政信君 今、非常に正しい御答弁でありましたが、過去におきましての移民政策は、人口問題の解決、これが着眼でありましたが、将来はそうじゃなしに、海外協力、日本との経済交流、国際友好の推進と、こういうところに主眼が置かれるわけであります。といたしましたならば、海外経済協力基金として予算に組まれておるものは、昨年度分を合わせまして、大体どのくらいのものを大蔵大臣は組まれておりますか。
  389. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 移民の問題じゃなくて、海外経済協力の問題でございますか。
  390. 辻政信

    ○辻政信君 そうです。
  391. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨年度五十億予算計上し、これはまだ使用してございません。本年度新たに五十億計上しましたので、合計百億円になります。
  392. 辻政信

    ○辻政信君 この百億の金を将来どのように使用しようとしておられますか。外務大臣、大蔵大臣、企画庁長官。
  393. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 海外経済協力基金は三月十六日に登記を了しまして、これからその使い道について具体的な検討に入るわけでございます。たびたび申し上げますように、主として東南アジアの地域になるんではなかろうかと思いますが、経済的なベースには乗るけれども通常の銀行金融のべースには乗らないというようなものに投資なり融資をいたしまして、現地の資源の開発に資したいと思っております。まだ具体的にどこということは、新しい総裁がこれから検討される段階でございます。
  394. 辻政信

    ○辻政信君 昨年五十億取って一銭も使っておらない。そこへまた五十億ふやして百億取った。しかし、その使い道はまだ検討されておらない。これからその主任者をきめてからその意見で百億を使おうとなさるのですか。そういう見通しで一体予算を組んでいいんですか。
  395. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 海外経済協力基金法というのは、昨年の国会に提案になりましたが、安保——たしか安保の関係だったと思いますが、ごたごたで流れてしまいまして、それが去る先般の特別国会で成立をいたしまして、やっと三月の十六日に設立登記をいたしたのでございます。現在資本金が五十四億で、今度予算が成立いたします——なんです、補正予算でやりましたから、現在百四億の予算で、三月の十六日に出発をいたしたわけであります。
  396. 辻政信

    ○辻政信君 外務大臣は、この使い方についてどう考えておりますか。
  397. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは、法の建前で経済企画庁長官が主務大臣としてこれを運営していかれる責任を持っておられるわけであります。われわれとしては、主として、実際これを運営しまする場合の外交的見地からいろいろ御相談に乗らしてもらうふうになっておるのでございますが、全体として百億といえばわずか三千万ドルくらいでございますので、なかなかまだこれだけできたからというほどの大きな働きをするとも今のところ考えられませんが、これは逐次国会の御協賛もいただきましてふやしていくことができる性質のものだと思っております。私はやはり海外経済協力をいたしまする場合に、やっぱりアジア人にはアジア人だけが理解し得る問題がございますし、また、中南米諸国において日本立場というものは非常によく理解され、日本工業というものが多く非常に知られたがっておりますので、そういう状況を十分に御紹介をいたしまして、この方面との経済協力に使うことができまするように、有効に働きまするようにお願いをして参る考えでおります。
  398. 辻政信

    ○辻政信君 迫水企画庁長官は、この百億は、大体東南アジアとお考えになっておる。移民の重点は中南米と、こうなっておるようで、私のしろうと考えでは、この金を使う場合には、移民計画と密接な連絡のもとに、せっかく投資する国々にその投資事業と関連をさした技術移民を出して、そうして移民と関連のもとにこの百億を使うべきじゃないかと。なけなしの金で日本の利益を無視して慈善事業をやるほど日本には余裕がないはずです。この百億を生かすために——移民との関係を無視して、迫水さんは東南アジア、移民は中南米、こういう一体チグハグな使い方でほんとうにやっていけると、それが有効だとお考えになるかどうか。迫水長官。
  399. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 東南アジアの方に主として行くと私は実は思っておるのでありまするが、その場合にもおのずから技術移民の問題は関連してくるのだろうと思います。しかし、現在ございまするところの移民計画は主として中南米に向けられている。その関連においてこの経済協力基金を使ったらどうかという御意見につきましては、もう一応少し勉強さしていただきたいと思います。
  400. 辻政信

    ○辻政信君 農林大臣に聞きます。過去の移民実績から見ますというと、農林移民が大体九割を占めております。ところで、農業基本法によりましても、また、現在の状況を見ましても、日本の農業労働力が毎年三十万内外が商工業方面にずっていっておる。農林大臣としては、有為な若い農村青年を海外に出すよりも、むしろ国内の農村振興のためにとどめておくと。そうしないというと、農村はじいさんばあさんだけの労働力、こうなるわけであります。農業基本法という農民にとっては憲法を今通そうとしておられるのですから、農村振興をいかにするかという見地から見ると、有為な農村青年の労働力は、海外に出すよりも、農業基本法に基づく農村建設のために留保すべきものと思う。その点どうですか。
  401. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お話通り農業基本法の目ざす新しい農村の建設からいえば農村に、有為なしっかりした青年を残すことももちろん必要であります。しかし、農業移民等に関しましては、先ほどお話にありましたように、日本のためになるだけでなしに、移住地の国のいろいろの受け入れ態勢との相関関係において、その方面における農業技術指導、及びそこに新しい農業を指導していくという立場もございます。そういう場合に、向こうへ出す者だけ悪い着を出して日本にだけというわけにはいかない。そこは実際における今後の移民政策の遂行の上において要求さるべき移民というものの質というものはやはり考えていかないと、日本の恥になる人間を出すことはいけないと思います。そういう面において、なお現在の農村人口等をどういうふうにあんばいしていくかということも、希望によって考えておるわけであります。
  402. 辻政信

    ○辻政信君 いや、私の聞きたいのは、農林大臣として、農村人口が余る、これを何とかして優秀な者でもとにかく海外に出さす、あるいは商工業方面に転換させるというお考えなのか、あるいは、ほっておいても農村を離れて青年は都会に流動いたしますから、とても海外まで十万というような農民を出す余力がないんだ、こういうふうにお考えになるのか、それを聞きたい。
  403. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私は、現在までの状況においてまだ余力はないとは考えておらないのです。それは、御承知の通り、最近三カ年における実際の問題としてはいろいろ受け入れ態勢等も考えて一万人くらいずつの計画が立てられておりますけれども、実際の問題としては応募されている者は一万人以下であります。その中で現実に実行に入った者は六〇%か七〇%になっておる。これらはその態勢において希望によってやっておるわけでありますが、これはその希望者がそのぐらいの数出たら直ちにこれはもう日本の農村がどうにもならんという数字では私はなかろうと思います。
  404. 辻政信

    ○辻政信君 アメリカの新しい政策として平和部隊がやられております。けさの新聞を見ましても、一日に千通以上の申し込みが殺到している。そして、それは十三歳から八十三歳までの各層を含んでおるのであります。これは決して出かせぎ根性ではない。アメリカの海外友好関係を促進するというところに重点があるのでありまして、日本の移民も貧農の出かせぎという観念から切りかえていかなければならぬ時期にきております。遺憾ながら移民に対する認識、国全体の熱意というものが非常に低調である。低調な原因は宣伝方法もまずいが、同時に教育において海外発展ということがほとんど行なわれておらない。ブラジルに五十年も苦労をしてそうして発展した先輩の仕事であるとか、それから将来の日本関係を義務教育に織り込む必要があると思うのです。また文部大臣がこの移民問題についてほとんど関連を持っておらない、閣議において。文部大臣をなぜこの移民関係の閣議その他の問題にタッチさせないのか。これは総理大臣に聞きたいところでありますが、おいでになりませんから、小坂外務大臣に主務大臣として、この移民の根本問題は教育から始めていくというふうに御配慮をお願いいたします。移民の歴史から見ましても、現在の受け入れ国への日本の移民は、どこを見ても今後十年以上たちますとそのとびらを締められる可能性があります。移民問題だけは今急速なテンポでやらなければチャンスがない、こういう時代になって参りますから、各閣僚ともにその点の認識を徹底されて、積極的に各省の協調を保ちながら、これをぜひともやり通していただきたいと思うのであります。受け入れ対象国としてブラジルが今重点になっておりますが、そのほかにどういう国をお考えになっておりますか、外務大臣
  405. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ブラジルはもう非常に長い歴史を持っておりますし、五十万に近い同胞が現地で活躍しておられますので、ことにサンパウロを中心に今後さらに進めて参りたいと思います。そのはかにチリとかアルゼンチン−アルゼンチンは非常に日本の工業力というものに対して理解を最近急速に深めて参ったようでございます。そのほかベネズエラあるいはウルグァイ、パラグァイ、そちらの地方もございますが、われわれとしましては、できるだけ中南米諸国に日本を理解して、もらうというふうに考えております。  ただいまお示しの質のいい移民を送る、しかも出かせぎでなくて開発部隊というような気持で先方へ行ってくれるような人を持っていかなければならないと思いますが、その面におきましては、ただいま御指摘のように文部関係、文部大臣がそうしたことを教育の中に盛って、よく理解させていくということも必要だと存じまして、御意見はよく承っておきたいと思います。
  406. 辻政信

    ○辻政信君 ブラジルと日本との移民協定に盛られております自由移民と計画移民とは、大体どのくらいに見当をつけておられますか。その数、見通しは。
  407. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) ブラジルの自由移民は、ブラジルの法律がございまして、移民制限法というのがございまして、過去五十年の送出実績の二%を入れるということになっておりまして、現在三千名まで入れることになっておるのであります。しかし受け入れはブラジルにおいては必ずしも三千名に限定しないで、それ以上の自由移民が入っております。この協定ができましても、これはそう変わりがないのだと思います。計画移民については、ブラジル政府日本政府の代表が混合委員会を構成いたしまして、ここでブラジル計画移民のために必要な日本の農業及び工業、あるいは技術移住者の必要性を検討いたし、また日本側といたしましては、これに日本がどの程度参画でき、また参画することによって日本の移住者が発展し得るかということを検討しました上で計画を立てるわけでございまして、これは今のところ幾らと予想を申すことができないわけでございます。ブラジルの希望が非常に大きくて、われわれもそれに協力できる限り、その数字が計画移民としてあげられるわけであります。
  408. 辻政信

    ○辻政信君 ブラジルの政府側が日本の移民を非常に大きく希望しておる、大体万をこしますか、見通しは。
  409. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 来年度——年度と申しますと三十六年度三十六年度は実はまだ一万をこさない計画にしております。しかし三十七年度はもう少なくとも一万をこすのではないかというふうに思っております。
  410. 辻政信

    ○辻政信君 三十五年度の移民計画と実績並びに三十六年度の目標はいかがでありますか。
  411. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 三十五年度の移住計画は、全体といたしましては一万名を計画したわけでありますが、実績はこの三月できまるわけでありますが、八千四百名余りということになっております。三十六年度の目標は一万一千名、内一千名が技術移住、一万名が農業移住ということで、これは今後われわれの努力によって達成できるのではないか、こういうふうに思っております。
  412. 辻政信

    ○辻政信君 運輸大臣に伺いますが、あなたの方は移民を輸送するために政府から補助金をとっておられますが、三十六年度の補助金はたしか一億四百五十一万、これは何名の補助金としてとられておられますか。
  413. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) 実績でございますか。
  414. 辻政信

    ○辻政信君 予算を要求された推算の基礎、何千名に対する予算を組まれておるか。
  415. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) 御承知の通り、運輸省の方は輸送の方を担当しておるのでございまして、輸送をいたします業者の欠損というものを補てんいたしますために、補助金を与える予算というものを得ておるのでございます。三十五年度におきましては、七千七百八十万円が移住船運航の補助でございます。それから来年度——三十六年度におきましては、これより増しまして一億四百五十一万円を運航する業者の欠損の補助金予算に計上いたしているわけでございます。
  416. 辻政信

    ○辻政信君 ちょっと大臣政府委員から……。これは一億四百五十一万円という要求をなさってとった、それがあるのですね、それは三十六年度においてどのくらい輸送するという見当でおとりになったか。
  417. 朝田靜夫

    政府委員(朝田靜夫君) お答え申し上げます。計画におきましては、七千三十五人を計画いたしております。
  418. 辻政信

    ○辻政信君 外務大臣は目標を一万一千名に置いておられる、そうして運輸省は七千三十五名ができるものと予想されておる。そうすると、この移民計画の目標というのは、運輸省と外務省ではちぐはぐで、一貫した目標になっておらぬという感じを受けます。これは小坂さん、どうですか。
  419. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 計画の中にオランダ船を使う計画がございまして、ローヤル・インターオーシャンというのでございますが、それを契約することにしておりますので、その点が運輸省の計画とわれわれの計画との間の差であると存じます。
  420. 辻政信

    ○辻政信君 そうすると外務省としてはそのオランダ船に対して払うのは、やはり四千名の金を払うわけですか、七千三十五名、一万一千から引いたその計画はできておりますか。
  421. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) オランダ船で参りますものについては、補助をしないという建前になっておるそうでございます。
  422. 辻政信

    ○辻政信君 これは非常にかわいそうだと思います。大体十万円以上の金が要る。船賃十万円じゃ足りません。それを政府が予算を取らずに一万一千という計画を立てながら、政府の補助は七千名に削って、四千名は切り捨てて勝手にオランダ船に乗っていけというのは、はなはだ受け取れませんが、いかがでございますか。
  423. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この点、私もあまりよく存じませんで申しわけない次第でございますが、ただいまのようなオランダ船を使うようになっておりまして、渡航費は貸付になっております。
  424. 辻政信

    ○辻政信君 次に今までの実績を見ますと、計画目標よりも実績がはるかに下回っております。この下回っている原因がどこにあるか。計画がずさんなのか、それとも実行上の手違いがあるのか、あったとすれば下回った原因が受け入れ態勢の不十分か、募集方法の不十分にあるか、輸送方法の隘路にあるのか、どうお考えになりますか。
  425. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) お答え申し上げます。そのすべてでございます。戦後の海外移住が始まりましたころ、新しい移住地につきましていろいろ困難な事情がございました。その点で受け入れ設備が十分でなかったという点がございます。これは最近になりましてほとんど完備いたしまして、むしろ移住地は軌道に乗りつつあります。しかしこれが十分国内に徹底しておりません。そうして最近では受け入れの数が非常にふえましたが、そういうふうに徹底しない関係、あるいは啓発の足りない点で、移住者を集めることが、なかなかむずかしい。それから三十五年度におきましては、この船のキャパシティがほとんどマキシマムに近づいてきました。そういう点で、毎船きちっと満船にすることはなかなかむずかしいのであります。移住者の都合、あるいは財産整理がなかなかできないでおくれるということで船の方は一万二千近いキャパシティがございますが、実際船が一ぱいで乗れぬというようなことも起こりまして、集まったけれども送れないということもございます。来年度あたりからは輸送の問題は相当頭をひねらなければいけない問題だと、こういうふうに考えております。
  426. 辻政信

    ○辻政信君 昭和二十九年七月二十日に、海外移住者に関する事務調整についての閣議決定がなされております。ここにありますが、これは農林大臣外務大臣も御存じであり、またその線に沿ってやっておられますか。まず周東農林大臣
  427. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) その通りであります。
  428. 辻政信

    ○辻政信君 それじゃこの閣議決定の結果でき上がりました海外移住連絡協議会、これがあります。これは一体、昭和三十一年の三月以降一回も開かれておらない。今、高木局長が答えたところによると計画よりも実績が下回っている。それについて受け入れ態勢が不十分である、また輸送に隘路がある、送り出し方法についてもずれがあるというならば、それを調整するために、閣議決定されているこの線に沿って作られた移住協議会が、三十一年以降ただの一回も行なわれておらないのはどういうわけだ。何のために作ったか。
  429. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 実は、昨年からまた、はなはだお恥ずかしい話でございますが、行政監察庁の報告もございまして、われわれといたしましても昨年一月からこの連絡協議会を開く、つい最近もまた開いた次第でございます。長い間開かれなかった理由は、十分よくわからないのでございますが、(「外務省と農林省と仲が悪いからだよ。」と呼ぶ者あり。)まあいろいろ事情があるわけでございます。
  430. 辻政信

    ○辻政信君 それじゃ改めて承りますが、移住審議会。移住審議会の会長沢田節三さん。その人が池田総理に宛てて、海外移住に関する当面の振興方策についての答申書をお出しになっております。これは昨年の八月十日です。この答申書の内容は農林大臣、お読みになりましたか。大臣でなかったら政府委員でいいです。
  431. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) 承知いたしております。
  432. 辻政信

    ○辻政信君 小坂さんもお読みになっただろうと思う。私が今ここに指摘したいのは、過去の農林省と外務省がけんかばかりしている。ことに岸内閣においては藤山さんと福田さんの仲が悪いのみならず、農林官僚と外務官僚が角突き合わしている。これが一番大きな隘路でした、残念ながら。今度幸いにして小坂さんと周東さんですが、これはきわめて仲のいいお二人ですから、前任者が岸内閣時代に犯された欠点をお二人の手で根本的に改めていただきたい。その気持についての農林大臣の所見を承りたい。
  433. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御指摘の点は十分考えさせられる点が多々あります。これは移住というものを進めていく上における機構の問題運用問題、あるいは内地における宣伝指導の問題、外地における受け入れ態勢の確立、営農指導、各般にわたって私は相当にこれは話し合って、国策としての移住を円滑にかつ促進していくような方向にあり方を再検討いたしたいと思っております。
  434. 辻政信

    ○辻政信君 閣議決定の方針によりますと、移住の主務官庁は外務省です。その移住先における土地あっせん、営農資金の融資等は海外移住振興株式会社。国内の募集、送り出し、定着等は海外協会連合会及び地方海外協会が一貫した主軸をなして、それに対して外務省関係は協力しなければならぬ、農林省関係どう考えておるのか。この根本方針について農林大臣、御異存でございませんか。あなたの下僚はこの方針に違反しておる、農林大臣
  435. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 辻さんのお話でありますが、その事柄自体について、実際上の送り出さるべき農業者というものを、いかなるところからどういうふうにとってどういうように訓練をしてどういうふうにやっていったらいいかということは非常に大事なことであります。そういう面におきましていろいろ内地におきましての機構が二つにあります。こういう点がどちらがいいかということからは検討してかかる必要があるということを私は先ほど申しあげたのであります。私は現在の機構、必ずしもいいとは思わない。私は公平な立場に立って、いずれにいたしましても機構は相当に簡素化しつつ、その機構の中にある、機構だけじゃなくて、動かしている人にあると私は思っております。こういう面についてよほど考えてみなければならない、これは内地のみならず、今御指摘の会社、あるいは現地の指導に当たる面、こういう機構及び運用の面について、虚心たんかいに関係省が話し合って適正な形に持っていくことが移住振興のために最も必要なことだと思っております。
  436. 辻政信

    ○辻政信君 先ほど申し上げましたように、閣議決定の趣旨は、外務省は主務官庁、そして海外における仕事は海外移住振興株式会社、日本におけるものは日本海外協会連合会、それが中央組織で、下部組織は地方海外協会、こうなっておるのですが、それならば予算は、金はそのルートに沿うて流さなければならぬ、常識上。ただ非常に解せない問題は、こういうルートを予算面において遮断をしておる、分断をしておる、大蔵大臣、あなたの方から、ことしの予算を見ると六千二百五十八万円という補助金が外務省を経由せずして、農林省の窓口から地方海外協会に配られておる、大蔵大臣は予算を編成するときに、閣議決定の趣旨を間違えて農林大臣に圧迫されてそこに持って行ったのですか。これは非常に大事な点です。どうです。
  437. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 予算の組み方の問題でございますので便宜私からお答え申し上げます。二十九年の閣議決定は辻委員の御指摘の通りであります。その後において、昭和三十四年度の予算を編成いたします際に、それまで海外移住、いわゆる海協連の連合会を通じまして地方の海外協会に金を流しております。外務省の所管に計上しております。三十四年度におきまして現実の地方の府県に対しまする指導、そういう点から考えまして金の行き先は地方海外協会でございますが、これを海協連を通じませんでまっすぐに農林省から流す、そこで閣議決定のワク内でございまするが、組み方といたしましては、農林省に地方海外協会の分を計上する、あわせまして農業団体関係につきましての事業の分は、これは農林省の所管に計上いたしまして、ただいま辻委員御指摘の分は、同じ海協連でございますが、農林省から参る、本来の四億何がしの金は外務省に組んでおる、こういうのが現在の状況でございます。
  438. 辻政信

    ○辻政信君 こういうむちゃくちゃな体系を乱したことについて、小坂外務大臣は満足をされますか。
  439. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 地方海外移住協会の予算の流し方は今石原主計局長から説明がありましたのですが、こういう流し方は、われわれの方としてはどうも感心しない。やはり海外協会と地方海外協会は一本の線になっておるべきものでありますから、こういったものは一つ改めてもらいたいということをいろいろ話したのでありますが、どうも閣議決定を最終的にやる時間も迫った関係もありまして、一つそういう問題だけにとどまらず、移住の問題をもっと広く大きな角度から取り上げて、今後の移住が円滑に持っていけますように相談をしようではないか、こういうことで、本年のところはさようになっておるのでありますが、私どもとしては、閣議決定の線の通りやってもらいたいと考えております。
  440. 辻政信

    ○辻政信君 これは歴史的に見ますというと、二十九年の閣議決定の線は、三十三年度の予算までは正しく守られてきた。三十四年度で突然乱れ初めた。この内容を検討してみると、これはちょっとまずいことがある。全拓連の副会長をしておる平川君、これは満州の官吏です。岸前総理と非常に親しい。それで福田さんが農林大臣になられた。そこで岸、福田、平川の線で強引に閣議決定の線を押し切って、そうして大蔵省に圧力をかけて、当然流すべき外務省経由のものを農林省に切りかえた。その証拠に、ことし一月七日の自民党の外交部会で決定しておるでしょう。一月七日、外交部会の決定事項は、少なくとも地方海外移住協会の基本人員の経費と移住に関する宣伝啓発費は外務得を通じて地方海外協会に交付することが妥当である。あなたの党の中でやっておるのですよ、外交部会が。その理由として、移住の促進のために、地方における移住業務担当組織たる各地方海外協会の組織の強化と地方海外協会と、それにつながる海協連の紐帯の緊密強化が必要である、こういうことを外交部会が決定事項として党できめておる。それをじゅうりんした、農林省は。外交部会は農林省関係の議員の方が数が多い。外務関係は数が少いから落選する。農林省関係の議員はめったに落選しない。そこに農林省の官僚がクモの巣のように網を張っている。それが岸、福田、平川の線で三十四年にこういう間違ったことを日本の予算の上においてやっておる。水田大蔵大臣閣議決定の趣旨をよく考えられて、外交支部会がこういう指示を出しているにかかわらず、それを無視して今もっぱら局長の話によると前例通りやったと言う。間違っておるなら、三十七年度においては修正なさるかどうか。
  441. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私もその問題は承知しております。現にこの問題のたびに、もう渡航の準備をして、財産を売ってしまった人がまだ渡航できずにいるというような問題も、今の問題の一つの産物でございますので、こういう問題を厳重に今度は解決すると、そうして将来この問題がそういうことにならないように、来年度の予算のとき、やり方については検討しようということを関係省にそういうお話をして、私どもは要望しまして、そうして今年度は従来通りの予算の編成の仕方をやったといういきさつでございます。
  442. 辻政信

    ○辻政信君 今年は誤ったが、取り返しができぬから、来年は筋を通そうという言明と承知してよろしゅうございますか。
  443. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私の方はそういうふうにしていただきたいということを申し上げたのであります。
  444. 辻政信

    ○辻政信君 周東農林大臣、これを認めますか。
  445. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) なかなか手きびしいお話ですが、私は先ほど申し上げたように、現状の通りがいいとも思っておりません。それは、私はほんとうによい移民となるべき人をどういうふうに送致したらよいか、それについてはどういう機構にしたらよいか、そういう面を考えて、国内が二つも三つも割れるといけないので、どういう形にするかという基本に入って外務省とも根本的に解決したい。先ほど申したのは、そういうことを含んであるわけです。とにかく、国内の方も、移住会社の問題も、それから現地における営農指導の問題も受け入れ態勢をどうするか、どこがどういうふうにやるかということも含めて考えないと、私はなかなかいろいろな点について問題がある、こう申しております。詳しいことはよく話し合ってやりますということ、それらを含んで考える。現状を前提として話をどうだときめるのはまだ早いと思います。
  446. 辻政信

    ○辻政信君 これは、農林大臣日本海外協会連合会というものの成り立ちを御存じないから、そういう農林官僚に誤解が出てくる。これは何も外務省の外郭団体じゃないのです。戦前から各地に移民関係の連合会、組合ができておった。それを戦後復活して統一されたのが日本海外協会連合会、これは非常な歴史を持っております、過去において、実績を持って。この移民事業というものは、公務員の片手間でできる仕事じゃない。財産の整理から、応募から、そうして向うへ行って定着するまで十年かかる。その十年間かかる移民のむずかしい仕事を、公務員で一年、二年でいすをかえる連中にはまかせられない。民間で経験と情熱を持った者が、あたたかい気持で長く世話しなければならぬ。そういう意味におきまして、これは農林省の窓口じゃなしに、私は、せっかくできておる、実績を持った日本海外協会、地方海外協会、こういうものを主軸にしてやらぬというと、移民政策はつまずくと思うのです。もう一度考え直して下さい。
  447. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私はもっと深く考えているつもりです。私は海外移住協会の成り立ちも調べております。その当時における問題じゃなくて、御指摘になったように、もっと大きな面でこれから考えなくちゃならぬ。農林省の役人がやっていいとは私は思いません。しかし私は、機構の問題を考えると同時に、その中にいかなる形の人がほんとうに移民を考えてやっておるかという問題もあわせて考えないといけない問題がたくさんある。私はちっともとらわれておりません。もっと公平にすべてを見きわめて、日本内地における問題、また移住送出の問題、向こうへ行っての指導の問題、向こうにおける諸般の問題等をあわせ、並びにそれに関する人間の問題も考えていく必要があろう、こういうことを深く考えて申し上げておるのです。
  448. 辻政信

    ○辻政信君 では農林大臣にお伺いいたしますが、全国拓殖農業協同組合連合会、これはどういう目的で、いつごろ作られて、その中心人物はだれですか。
  449. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) お答えいたします。今お話になりました全国拓植農業協同組合は、三十一年に設立されております。この下部団体は各県に県拓植農業協同組合連合会がございます。これの全国的な組織団体になっております。その事業の主たるものは、国内におきます農業移民の啓発、宣伝、援護に必要な事業を主たる内容にいたしております。会長は長野県の米倉龍也会長でございます。それから副会長は、先ほどお話になりました平川守でございます。
  450. 辻政信

    ○辻政信君 農林省の予算からこの民間団体に三十六年度どのくらい補助されましたか、政府委員から……。
  451. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) 全拓連に三十六年度一千九十三万四千円、三十五年度も同額でございます。
  452. 辻政信

    ○辻政信君 今政府委員から説明されたように、全拓連というのは、国内における農民の世話、移民の世話なんです。それが国の外まで手を伸ばしておる、国の外まで。これは行き過ぎだと思います。農林大臣、いかがでありますか。
  453. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) そういう点も私は考えております。が、しかし、そのときの成り立ちは、今日、過去のことは、あれが悪い、ここが悪いという問題じゃなくて、かくのごとき行き過ぎのことが起こったのは、全体の移民が進んでいないのです。土地の選定ということはちっとも動いていないという状況で、今少し走り過ぎておる、これは私はいいと思わない。しかし、そういう問題を考えて、現地における受け入れ態勢等、農地造成はどうするか、それは外務省関係を通じて、どの場所にきめてもらって、その場所をどういうふうな計画で営農さしていくかというふうな問題まで考えてみますと、みんな相互各自がばらばらに、そうして問題から言えば、その機関についてそれぞれの人的構成がはたされていない、そういうことにも誤りがあると思う。私は深く考えて、外務大臣とも話して、そうしてもっと大きな立場から物事を考えて確立したいと思っております。
  454. 辻政信

    ○辻政信君 では具体的にお伺いしますが、ブラジルのグァタパラ農地取得、グァタパラの植民地は大問題起こしておりますが、これの経緯、現状、対策を一つ農林省の政府委員から……。
  455. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) お答えいたします。農業移住につきましては、国内の募集、あるいは啓発宣伝を農業団体等でいたしておるわけでございますが、海外移住につきましては、現地におけるどのような条件、どのような営農状態かというようなことが、移住者にとって重大な関心であることは申すまでもないところでございます。そのような観点から、全拓連におきましては、積極的に現地におきまするコチア産業組合がございますが、これと協力いたしまして、現地における適地の推薦を依頼いたしたわけでございます。その結果グァタパラ地区をコチア産業組合から推薦を受けまして、三十三年五月でございますか、全拓連がこれを購入するという段取りをつけたわけでございます。この土地につきましては、関係県が五県ございますが、この五県の農協の融資によりまして、県はこれに対しまする利子補給、損失補償というような措置をとりまして融資を行ない、そうして全拓連がこれを取得するという計画が参ったわけでございます。グァタパラ地区自身は、これはサンパウロから約三百マイル離れておりまして、舗装された州道に面して、立地条件としては、トラック等で五時間くらいの地点に立地いたしておりまして、比較的交通上は便利なところになっているわけでございます。現在までのところは、これの入植についての具体的な事業計画、それからさらにそれに必要な資金計画並びに入植についてのブラジル政府との許可の問題、これらが主要な問題点であったわけでございます。  その前に一言申し上げておきたい点は、このグァタパラ地区につきましては、実は従来すでに移従者が入っておりました、かつての入植地であったわけでございますが、その後これらの地区につきましては、移民は、入植者は他の地区に移転する。つまり当初の入植の一般的な形態といたしましては、御承知のように略奪的に入植しますと、他の土地に移る、こういう形態であったわけでございます。そこでグァタパラ地区の問題でございますが、これは約七千三百ヘクタールの面積を持っておりまして、そのうち四千百五十ヘクタールが任地、残りの三千百五十ヘクタールが低湿地であるというようなことで、これに入植いたします場合におきましては、相当集約的な農法をやって参る必要がある。さらにまたその地帯は、たまたま低湿地につきましては、今後入植するといたしました場合に、相当土地改良工事をやる必要があろう、こういうことになっておりまして、グァタパラ地区用身の今後の事業計画を進めていきます場合におきましては、いわばサンパウロ近くで、かつて入植した地帯が放擲されたような地域に対しまして、日本の集約的な農法を導入する。さらにまた集約的農法と相関連いたしまして、土地改良事業というものをそこで現地で現実に見せてやる。つまり日本の農業土木技術をそこで、現地で実験してみる、こういう内容を持っておりまして、一つは、技術協力と、それから内地の集約的農法をそこで実験的にやってみる、こういう内容を持った計画でございます。そこで、ちょっと前に返りますけれども、当初申し上げたように、全拓連とコチア産業組合が協力してこれを実施するという計画であったのでございますが、その後若干向こう国内法におきまして一取り扱い手続が変わりまして、これらの移民事業を行うものにつきましては、現地法人で、かつ登録をすることが必要であるというような状況になりましたので、当初産業組合の主体のもとにこの事業を実施するということであったのでございますが、今申し上げたような事情から、今は外務省と農林省で一般的な処理方針をきめまして、日本海外移住振興株式会社の現地法人であります——ジャミックと称しておりますが、これが一応土地の購入主体になっておる、こういう状況になっております。  そこで、現段階におきまする問題といたしましては、先ほど申し上げましたような、現地に入植する場合の許可を要するということ、これは先ほど移住局長からも御説明があった点でございますが、一般的に計画移住する場合には、入植率というものがございまして、その入植率に伴う必要な移民の許可を要するわけです。それから第二には、これを実施する場合におきましては、やはり現地のコチア産業組合との協力が非常に必要である。それに基づきまして、現地の入植者のあっせんであるとか、あるいは組合員としての営農指導を受けるとかといったような面が生ずるわけでございます。それから第三には、事業計画の確定を必要とするわけでございます。これらの問題につきまして、現在移住振興会社の社長が現地に参って、そして現地の在外公館あるいはコチア産業組合といろいろ折衝しておられる段階でございます。われわれとしては、その折衝の経過を待ちまして、さらに外務省あるいは関係局と相談いたしまして処理を進めて参りたい、かように考えておるわけでございます。
  456. 辻政信

    ○辻政信君 これは容易ならぬ問題です。外務大臣もよく聞いておって下さい。一体ガタパラの植民地というものの歴史をお考えになったらいい。これは一九〇八年、日本の最初の移民七百八十一名が笠戸丸に乗って初めてブラジルに行ったときに、その一部がガタパラに入った。そして、さんざん失敗をしたのです。立地条件が悪い。そして、洪水にやられる、マラリアで死ぬ、とうとう移民が成功せずして逃げ出して捨てた土地ですよ。歴史的に見て失敗した土地なんですよ。そこに全拓連の平川君が行って、現地の事情を知らずに、コチア産業組合と一緒になって、そして一億四千万円という手付を払っておる。この農地七千五百町歩を、洪水に対して防ぐための堤防を作るにも、今後少なくとも四、五億の金が要る。これほど一体高い農地がどこにある。ブラジル人がたまげております。日本人は気前がよい。移民の失敗したところを最高の値段につり上げて買って、一体どうするのだろうということで見ておる。こういうものに対して、外務省当局は認めたのですか、今まで相談があったのですか。
  457. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) ただいまのガタパラの地区がどういう地区であるかという点につきまして御説明を申し上げたいと思いますが、先ほども申し上げたところでございますが、ガタパラ地区自身は、かつて初めて入植した土地でもあり、またその後におきまする経営を見ますると、やはりコーヒーの栽培地としては非常に有数な有望の土地であったようでございます。記録的にもそのようになっておるわけでございます。しかし、先ほども申し上げましたように、一般的な今の移住の形態は、そこでコーヒーの無肥料栽培をやりまして、一定年間をそこで働きますと、さらにその奥地に転入すると、こういう形態をとっているわけでございます。従って、その土地自身を他の土地と比べますならば、今の段階におきましては、非常によい土地であるということは申し上げられないかと存ずるのでございます。しかし、日本の集約的な農法をもって、つまり無肥料じゃなしに、集約的農法をもってやれば、十分採算の成り立つ土地である。しかも土地そのものについて比較いたしますると、御承知のように、テーラ・ロシアという土壌は、日本の農学者から見れば、垂涎おくあたわざる、つまり無肥料栽培のできる優良な農地でございます。そのような土地も、その農場の中に散在いたしておるのでございますが、何をおきましても、今お話になりました低湿地における経営自身を、現状のままにおいて考えるならば、どうかという点が、一つの問題になろうかと思うのであります。  この点につきましては、今度の工事の主要な内容になっておりまして、その堤防に沿っておる川をモジグワス川と申しておりますが、今回の工事の計画といたしましては、それに九キロの堤防を設けるということにいたしております。さらに、それに必要な用水あるいは排水路を、約四十三キロ程度の用水路、排水路を設けるということにいたしまして、そこで水田経営をいたしますならば、十分成り立つ。乾季におきましては蔬菜を栽培するということになりますれば、今の計画の実現のもとにおきましては、日本の集約農法をもってすれば、十分経営的に成り立ち得ると、こういうことでございます。  ただ、一般的に、今までの略奪的な農法で考えてみた場合、それから従来の栽培方式で考えてみた場合につきましては、同じようなことが言えると思いますが、今申し上げたような計画で、われわれの方としては、集約的な農法の実験あるいは日本の土木技術をそこで行なうということに非常な意味があるのじゃなかろうかと思っております。現在までのこれに関する工事費は約三億でございます。
  458. 辻政信

    ○辻政信君 ちょっとおかしいことです。これはブラジル人も、こんなところはだめだ、住めないといって捨てている。日本移民も住んでみたが、洪水とマラリアで参った。そんなところを金を四、五億もかけて土地改良してやらけなればならぬ、そんなところへ行って農事試験場作るつもりですか、移民政策は。そうではなくて、そういうところにむだな金使わなくても、まだ未開発の有望な土地があり余っているからブラジルヘやるんでしょう。日本国内における土地なら仕方がないから、土地改良に金を出す。土地改良に金を四、五億使わなければならぬところで、過去において失敗したところに、日本の技術を誇るために技術試験場でも作ろうというのですか、無責任きわまる。  現に、私の手元にある資料を御参考に申し上げますと、それはガタパラで失敗した現在ブラジルにいる人の資料です。それには、こう書いてある。ガタパラ移住地の土地は、一大農場の荒蕪地として放棄されていたもので、初めより農場の一部分としての役割しかない。これらの点に対する検討も考慮もなく、あたかも飢えた魚がえさに飛びつくように買収したものだ、ただに移住者に対する公平な画割困難なるのみならず、購買した五、六県の間に、分割する上においても、紛擾を免かれないであろう。買った後に荒蕪地をこうもしよう、ああもしたらよかろうというがごときは、とうていよき結果を生むことは不可能で、ガタパラ移住地を購買した当時の全拓連の明白な責任問題である。ガタパラで一体さんざん苦労して失敗した邦人が、この無責任な農地買付に対して全拓連のことを責めている。そうして全拓連は一億四千万の金がないものですから、どこから集めてきたかというと、先ほどもちょっとおっしゃったように、五県から集めている。血の出るような、農協をだまくらかして、そうして農協の金を五県からかき集めた。山形、茨城、長野、岡山、佐賀です。この農民の金をだまくらかして持っていって、全拓連の平川君が、国内問題でやろうというのを、出しゃばって、わけのわからぬ失敗した土地に金を突っ込んで、農林官僚は、またそれを守るために結託して、そうして現地の事情を無視して、いいところだ、いいところだと言っておる。現にはなはだけしからぬことは、あなたの方の全拓連の技師ですよ、全拓連の技師で、それが、ここら一つ、だまっておってくれ、大使館から見に来ても、悪いと言ってくれるな、と口どめして歩いている、柿崎という全拓連の技師が。わかり切っておる、間違っておることは、そういうことを一体国策としてやっていいのか。外務省に人はおらぬのですか。移住局長は、農林省のこの案に対して同意するのか、せんのか。
  459. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) これはガタパラは、先もお話がありましたように、全拓連とコチアがタイアップしてやる、日本の府県も関係しております。そういう関係で一たんやり出したものですから、できるだけ……、そしてこれが失敗に終わるということは日本の将来における移住振興にも大きな影響がありますから、なるべく合理的な解決方法をはかりたいと思って、農林省と協議の上で、本件解決を推進しております。
  460. 辻政信

    ○辻政信君 周東さん、よく聞いて下さい。これは、私は過去の失敗を責めようとするのじゃない。とんでもないところへ金をつっ込んでしまった。それを償うために、先ほど言ったように九キロの堤防を作る、四億かかるでしょう。そうしてマラリアがある土地、悪い土地へ持っていって、日本の農業技術の試験場を作るならともかく、もっといい土地がたくさんあるのに、一つの失敗をカバーしようとして、第三、第四の失敗を繰り返していくというようなことは、これはやるべきではない。悪いなら悪いで、はっきり手を切らして、一億四千万捨てて、そうして残りの堤防を作る金で、より以上の土地を買えるのですよ。平川君のやった失敗を国家がしょわなきゃならぬ必要はない。大臣として、どう思いますか。
  461. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御指摘の通りであるとすれば、よく再検討すべきだと思います。  ただし従来からも、ずっと進んでおりまして、大体その計画に基づいて、私は今度の予算について努力したのですが、ただいま移住会社の二宮社長も行って調査しております。帰ってきたら、私も十分話を聞きたい。ただ私は、詳しいことはしりませんけれども、思うに従来の失敗していたといういろいろな話は、御承知の通り大体畑地経営ですが、そうして略奪的に、日本人が行きまして、大体植えつけがだめなら、どんどん変わっていくという格好であったようにも聞いております。今度は、そこに水田の計画をしておるのが新しい試みである。水田とすれば、今御指摘の畑地では、マラリア等いろいろなものがありますが、イタリアがかつて、マラリアの多い所を克服したように、この湿地帯を掘り下げて水を、取水の関係を考え、いろいろなことを考え、水田経営の改良ということをやれば、そこに一つの計画が立つと見たのではないかと思います。私は、想像で恐縮でありますが、おそらくそうでなければ、だれも、あなたのお話のように、従来失敗して捨てたところを、そこに同じような畑地を作り、やろうというわけではなかろう、こう思う。コーヒー栽培ではなく、畑地栽培ではなくて、新しい灌漑用水をして水田経営をしていこうというところに計画の新しい点があるのではないかと想像いたします。  しかし、すべては、二宮社長が帰って参りましてから、私はよくその報告を聞いて普処いたしたいと思います。
  462. 辻政信

    ○辻政信君 私はあなたが農林大臣として日本の土地に、国内において干拓したり土地改良をしたりということに金を使うことには文句は言わない。しかし、ブラジルへ移民するときに、いろいろ手を加えなければならぬ土地を探して、そうして泥沼に金を捨てるよりも、手を加えないで済む土地がたくさんあまっているから移民しようというのでしょう。だから、一億四千万円・やった失敗をしりぬぐいしようとして三回、四回の失敗を繰り返さないように、大体、観念が間違っている。そこに行って水田を作って、三百戸の日本の農家の集団部落を作って、これを平川君が、満州時代やった、満拓でやった満州移民と同じイデオロギーでやっている。満州移民のイデオロギーで、一体ブラジルの抵抗を受けぬと思うか。これはいけないでしょう。諸外国日本の移民を歓迎するのは、日本の集団部落が来て米を作ることじゃないでしょう。個々のすぐれた日本人が、ブラジルの国民の中に飛び込んでいって、そうして、それがすべての人と仲よくすることでしょう。だから、平川君のやったことは、満州の満拓の移民政策そのものを、ブラジルで強行しようとして失敗したんです。それをいつまでしりぬぐいをしなければならぬかということは、失敗の前に私は警告しておきます。これを面子にこだわってやるというと、取り返しのつかぬことが出てくる、あと二、三年で。今から警告しておきますから、慎重に考えて下さい。  次に移ります。国内における募集、送り出し、この実情についてお伺いいたしますが、今から私が質問するのは、各省庁に対する行政監察結果に基く勧告というのが最近出ておりますから、行政管理庁から。これは外務省の役人も、農林省の役人も、よく読んでおられると思いますから、詳しいことは言いません。その中に書かれてあることを二、三拾い上げて御質問いたします。  地方における宣伝、募集業務の責任ある窓口、これは一体、自治体にやらすのか、あるいは地方海外協会がやるのか、その窓口は、どこですか、農林省。
  463. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) お答えいたします。  従来の移住は、九割以上が農業移民でございましたので、農林省が募集、訓練、選考については担当するということに、二十九年の閣議決定でも相なっておるわけでございます。で、現状におきましては、このような募集なり選考いたしました場合におきまして、農林省といたしましては、やはり地方庁の組織を通じてやることが、地方の農林行政と結びつけて実施することが、最も円滑にいくゆえんではないかと、かように考えておりまして、募集、計画の機関は都道府県がやり、そしてそれの実務機関として地方海外協会がこれを担当すると、こういう考え方になっておるわけでございます。  で、立ちましたついででございますが、府県のこれに関連する職員が百八十七名おりまして、地方海外協会の職員が百三十八名、結局現在におきましては、海外協会と府県が一体になって実は運営されておる、こういうのが実情でございます。
  464. 辻政信

    ○辻政信君 そこで、これは両大臣、よく聞いていただきます。今局長の話によりますと、大体仕事の主体は自治体にやらそうと言いますね、県庁の役人に。ところが、県庁の役人は、こんなことに本気になっておりませんよ。一体移住なんというのは、全体の県の仕事から見れば非常に小さなものです。これを幾ら成績を上げても、なかなか進級しない。だから、能力の悪いやつにやらせて、国庫補助金をもらって、役人も兼任させて形だけを整えている。一年たってかわる、二年たってかわる、涼しい顔をしている。移住というものは、そんなものじゃないのです。選考から、訓練から、送り出しから、全部一貫して肉親の気持でやらなければならぬのに、このふらふらした公務員が腰かけの気持でやる仕事じゃない。そのために海外協会があり、地方海外協会がある。これは何十年もやった人たちです。体験のある人たちです。これを中心にして、足りないところを自治体が補うというならわかるけれども、自治体が出しゃばって、形ばかりの募集をやり、自治体としての補助金をまる取りするようなことは、至るところに現われている。ここを読んでごらんなさい。いかにこの制度の欠陥が、行政監察によって指摘されておるか。時間がないから、一々申し上げることはできぬが、局長はお読みになったでしょう、農林省の局長、どうです。
  465. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) 行政管理庁の移住についての監察の報告は、逐一詳しく読みまして、なおかつ、それについての検討を今進めておる段階でございます。  今お話になりましたけれども、現状におきましては、やはり先ほど申し上げましたように、農業移住が大部分でありますので、その監察報告にも、やはり地方庁あるいは市町村というものが相当大きな役割を果たすべきであるというようなことが指摘されておるわけでございます。お話のように、人間につきましては、役人でありますから、かわるということもございますけれども、やはり現状においては、実際の活動といたしましては、都道府県のやっぱり組織力というものが、行政上大きな意味を持っておるのじゃないかと、こういうふうな考え方で、われわれは府県なり、市町村なりのやはり移住についての、いわば旗振り役と言いますか、計一画の推進力というものには、今後ともなってもらう必要があるのではなかろうか、かように考えております。
  466. 辻政信

    ○辻政信君 二、三点指摘してみましょう、まだ反省の気持がないようですから……。都道府県の農林省に、毎月提出する移住者選出実行計画の提出状況、これを調べてみますと、期限内に行なわれたものが四六%ですよ。期限が過ぎてから出されたものが四二%、全然報告のないのが一二%です。それから移住植民課、農地振興課、農業改良課、自作農創設資金課、こういうものとの左右の連絡がよくとられていない、第二点。第三点は、都道府県が、募集要領を受領してから締め切りまでが移民の三十日以内、これが三三%、十日以内が五〇%ですよ。募集要領を配ってから志願者が手配するのは十日ですよ。家をたたんで外国に行こうとするものが十日で決心できますか。この原因は、すべて事務当局の怠慢だ。移住者の財産処理期間、これを調べてみますと、決定から乗船まで一カ月しかない、多くて二カ月。この一カ月か二カ月の短期間で全財産を金にかえて出発準備ができると思うか。それをやらせておる。  今度は、あらためて聞きますが、それでは自営開拓移住をやるために、個人として金はどのくらいあったらいいんですか。
  467. 齋藤誠

    政府委員(齋藤誠君) お答えいたします。  大体自営開拓で参ります場合におきましては、三十五万から五十五万ぐらいが必要であろうというのがわれわれの計算でございます。  ただ、今お話になりました募集から選考、さらに財産処理に至るまでの期間、きわめて短いではないかという点でございますが、これはまことに、実情その通りでございまして、農業移住の性格上、農閑期にできるだけ募集宣伝をするとか、あるいは財産処理の関係上、一年ぐらいの猶予期間をもってやるということが一番望ましいわけでございますが、現在の実際のやり方につきましては、当初の募集計画をつけまして、さらに四半期ごとに現在の受け入れ計画に基づいて、各県から必要な募集人員を集めてくると、こういう仕組みになっておりますので、従って現在におきましては、二カ月あるいはそれをちょっと上回るくらいの期間で募集するというふうな実態にあるわけでございます。  これをもう少し早い期間に募集を開始して、その間の余裕を得て送り出すというようなことにつきまして、今後十分努力をしなければならない点だと考えております。
  468. 辻政信

    ○辻政信君 この監察行政の報告では、少なくとも一人百万円と書いてある。時間がないから省略しますよ。  それから財産の整理をするときに、それを村の軒が買おうとすれば、自作農創設資金というものを借りなければ買えないでしょう。その手続にまた半年かかるのです。だから、移住者が出るまでに、このことができないからたたき売っていく。全財産すり減らして泣いてやめた人がおる。これを考えてもらいたい。  それからもう一つは、この移住あっせん業務をやる業者、業者に対する法規というものが、はなはだ適当じゃない。小坂さん、どういう法規によって移住業務をやっておりますか、取り扱い業者。
  469. 高木廣一

    政府委員(高木廣一君) 移住あっせんは、海外協会連合会がやっております。それで一般旅行業者と申しますか、これが、渡航手続その他を協力するのですが、実際、いろいろあっせんする場合もございますので、これについては、海外協会連合会で監督をしておるわけであります。法律といたしましては、明治二十九年に移民保護法がございまして、これをそのまま今適用できないものですから、われわれといたしましては、できるだけ早い機会に、移住基本法のようなものができまして、それで取り締まるように、これを規制する必要があるじゃないか、こ  ういうふうに思っております。
  470. 辻政信

    ○辻政信君 今、高木局長が述べたように、移住業務に携わる法規というのは、移民保護法がある。これは、いつごろ作ったか。明治二十九年四月八日、日清戦争のあとですよ。大臣、みんな生まれていない。木暮さんは生まれておったか。その移民保護法の第一章です。第一章移民の定義、第一条「本法二於テ移民ト称スルハ労働二従事スルノ目的ヲ以チ清韓両国」、清国と韓国ですよ。「清韓両国以外ノ外国二渡航スル者及其ノ家族ニシテ之ト同行シ又ハ其ノ所在地二渡航スル者ヲ謂フ」。明治二十九年に作った法律で、清韓という言葉を使っておる。この法律が、まだ生きておるのですよ、この法律が。こんなことで、一体日本の移民業務ができるか。なぜ、一体清国時代の法律をたてにとらずに、終戦後の新しいセンスで移住基本法を作らぬか。少なくとも、ことし一年準備して、来年国会に出しますか。その準備と決意がありますか、外務大臣
  471. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 移住基本法につきましては、省内限りでいろいろ検討いたしておりまするが、まだ成案を得る段階になっておりませんが、極力努力いたしまして、ただいま仰せのように、非常に移住という問題は新しい角度から非常に強く推進しなければならぬ必要がございまするので、そういう点で、一つ大いにやってみたいと思います。来年一つ、なろうことなら辻さんのおっしゃるように、そうした基本法を作りたいと考えておる次第でございます。  なお、移住に関しまして、私はいろいろ国内的な官庁のなわ張り争いみたいなものがございますけれども、そういうものを越えて、国策として大いに閣僚レベルで話し合わなければならぬと、こう思っておりますが、従来の移住というものは、とかく安い土地を買ってそこへ人を出そうというのが、移住の観念でございました。ところが安い土地というのは、やはりそれだけ収益の少ない土地なんです。従って高い土地を買って、そこへ行った人が、短時日のうちに相当もうかったと、非常に繁栄したというような報告があるということが、これまた移住に対して非常な刺激になろうかと思うのであります。かたがた工業移住というような新しい方面も開かれておるのでありますから、それぞれ勘案いたしまして、大きく移住政策の目を広く見て展開しなければならぬと考えておる次第であります。
  472. 辻政信

    ○辻政信君 木暮運輸大臣、あなたの方は、この移民を日本からブラジルに持っていくための輸送を担任されておるが、船会社が赤字を出すために、三十六年度一億四百五十万を補助しなければならない理由はどこにあるか、採算がとれない理由は。
  473. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) 私の方は、国策で決定した計画移住民を送りますことが、大体実績が計画から下回っておりますものですから、輸送当事者の欠損を補てんしてやらないとこれが続かぬ、こういうことで、大体計画と実績とが、従来相当に開きがありますものですから、その開きの補てんを、予算をもってやってあげるということが、私どもの方の仕事になっておるわけでございます。
  474. 辻政信

    ○辻政信君 いつまでも、こういうそろばんのとれぬことをやってはしようがない。そろばんのとれる輸送を講じたらどうだ。運輸大臣は、それがあるのかあるじゃないか。たとえば鉱石船を利用する。中南米から鉱石を輸入するでしょう。その鉱石船を移民船に改造して、出るときには、移民を乗せていく。から船には、鉱石を載せてくれば、政府が補助せぬでも、そろばんがとれる。そういうことをなぜ運輸大臣として、根本的にお考えになりませんか。
  475. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) ただいまのところは、移住民を輸送いたします邦船としては、大阪商船の所有にかかるものが五隻と、それから外国の、オランダ系のローヤル・インターオーシャンに所属するものが五隻あります。それからまた、これはわずかですけれども、航空機で行くものもある。また昭和三十八年ぐらいになりますと、御承知の通り三十七年から通産省で作りまする巡航の見本一の船がございまして、これでも二回ぐらいやりますれば千五百人ぐらい送れますもんですから、私どもの考えておるところでは、一万何千人という計画ならば、今も申し上げたようなことで、輸送力には差しつかえないと、こう考えておりますもんですから、ほかのことを、工夫はいたさぬでもよろしいんだというふうに、今のところは考えておるわけであります。
  476. 辻政信

    ○辻政信君 みすみす損をする補助をしておるでしょう。損をしない方法として、今私は一つの案を出した。鉱石船は行くときはからである。帰りは鉱石を積んで来る。これを移民船にちょっと改造すれば、行きに移民を乗せて、帰りは鉱石を乗せて来れるじゃないか。こういうことを、一体、政府で考えていいじゃないかというのです。研究する余地はないですか。
  477. 朝田靜夫

    政府委員(朝田靜夫君) お答えを申し上げます。  ただいま鉱石車用船あるいは鉱石船の帰り船をとれば、採算がよくなるじゃないか、こういうアイデアを私いたただいたのでありまするが、現在の移民船の復航におきましても、鉱石あるいは羊毛、綿花等を積み込んでおるのでありまして、なぜ赤字になるかと申しますと、移民船の運賃は十万二千円でございまして、コスト計算をいたしますと十一万四百円であります。従って、運賃を上げればいいじゃないか、こういうことになるのでありますが、移住政策なり営農資金の関係で、十万二千円という運賃を据え置いておるから赤字になるのであります。
  478. 辻政信

    ○辻政信君 海外におる日本人の数は、大体、今ブラジルを入れまして八十万。この八十万の日本人が、三十一年中に日本にみついだ金——持ってきた金、送った金は、少なく見積って百八十億円です。これに対して政府の出した予算が、ことし最高で十七億円。十七億円の移民予算を組んで、百八十億円以上というものが、海外から日本の国の富になっておるのです。  そうして、しかもその移民の仕事というものは、今後十年以内だ。十年たったら、移民したくてもできない情勢が出てくる、国際的に。そうなると、政府は真剣に、この十年のチャンスに、池田内閣としては、よく統一した方針に基づいて、企画庁長官は、全般の経済企画の上から、農民はこのくらい、技術者はこのぐらいという目標を外務大臣に示す、農林大臣としては、農林省と外務省のこのなわ張り争い、官僚のセクショナリズムをあなたの手で、あなたのときに改める、大蔵大臣としては、筋の違った予算のやり方はしないで、三十七年度には筋を通して、外務省経由全国海外連合協会から、その下部機構であるところの地方海外協会に正しい道で金を流して、そうして全拓連が出しゃばって、ガタパルの二の舞をまたやらないように、国内の仕事をみっちりかためる、そういうようなことを、この審議を通じて私は了解したのです。  国会の審議というものは、その場限りで、済んだら忘れてしまう、これではいけない。私が、どんな議論をしても、ただいまの予算を修正しようとしても、だめです。無所属の私が、そのことを百も承知で、こういう議論をしているのは、三十六年度の予算にけちをつけるのじゃない、この議論を正しく理解されたならば、一年間のゆとりをもって、三十七年度には、予算計画というものを——移民計画をはっきり立てて、各省のなわ張り争いをやめて、その金の流し方を改めて、そうして輸送の隘路も研究し是正するということを心からお願いいたしまして、時間も参りましたから、質問を打ち切ります。
  479. 羽生三七

    羽生三七君 関連。辻委員から、詳細な移民問題に関する御質問がありましたが、やや原則的になって恐縮ですけれども、政府には、人口問題調査会もあり、民間でも、この問題は戦後非常な大きな関心をもって取り組まれてきたことは御存じの通りであります。ところが池田内閣は、政府並びに池田総理、下村さんも、日本の現在の経済の歴史的復興期にあるその第一の条件が設備投資、それからもう一つは労働人口です。これが日本のこの経済の成長に非常に大きな原因であると言われております。そこでこの今後人口、今、辻さんの言われたように、今後ある一定期間にはむしろある部門においては就業人口が不足をする、そういうような状態になってくることも予想される。その場合に政府にある人口問題調査会は従来と同じような考え方で進むのか、何らかこの新しい角度から再検討される時期にきておるのか、これは基本的な問題だと思います。これは終戦後考えられてきた人口問題調査会の考え方と民間、政府同じことであります。それと今の高度成長に見合う、この高度成長の理論的裏づけとなっておる人口問題、これとのかね合いから見て、私は基本的にこれは調整を要する時期にきておるのではないか、こう思いますが、これは総理に対して伺うべき性質のものかと思いますが、企画庁長官から、従来と同じような形で人口問題というものを、従来のあれでは人口問題はむしろ減らすとか、徹底的な移住に重点を置いてきたと思います。そういうことであったと思いますが、今の、問題とも関連があるので、この基本的な問題について何らかの検討をされるのか、このままでいかれるのか、この問題をお伺いしておきます。
  480. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 人口問題研究会のあり方につきましては、これからもう一度私は勉強さしていただきますが、移住の問題については既定計画でいく方針だと思っております。   —————————————
  481. 館哲二

    委員長館哲二君) 北村暢君。
  482. 北村暢

    北村暢君 私は主として農業問題並びに今問題になっております国鉄運賃の値上げの問題が、農産物に及ぼす影響、こういう問題について各関係大臣に御質問をいたします。  まず第一番目にお伺いしたいのは、昨日水戸市におきまして、池田総理一家が参りまして、農業基本法の推進のための演説会が開催されたようでございますが、その演説会において、社会党の言う共同化はソ連のコルホーズ、中国の人民公社に通ずる共産党の赤の思想だと、こういうふうにこきおろしたと伝えられております。わが党の基本法並びに生産協同組合法のすでに要綱が発表されておりますが、この点について一体いかなる根拠に基づいてこのようなことを言われるのか。まず農林大臣もこの会合に、出席されておったようでありますから、一つ根拠を示していただきたい。
  483. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私も出席いたしましたが、全部私は聞いておらないで、自分の出る番に出たのですが、しかし思うに、党でいろいろ話が出たときに、今お話のように社会党の案がコルホーズだとかソホーズだという断定は私はしていないと思います。かなりコルホーズ、ソホーズのにおいがするじゃないかというような話があったように聞いております。私は、この点は別に、単に共同化をやるということだけからは、コルホーズだとか何とかいうにおいが出てくるというわけでもないでしょうが、私どもの方の政府の案というものはまず原則的にいいまして、家族経営の自立経営を育成していく、これと並行して相補なって農業者の希望に従って協業化を助長していくということを言っておるのでありまして、これはなかなか社会党案の方ではこんなことではだめだと、これは不徹底な案だと、いろいろ御批判もあるようであります。しかし、私どもはそういうことを考えておりませんが、しかし、御批判はやっぱりそういう自由な立場でおやりになっております。われわれ党の諸君は、われわれは家族経営というものを中心に考えておるけれども、社会党さんの案の方では家族経営ということは字句にも法律にも出て参りません。そうして共同化をやらなければ近代化も何もできないというような御主張でおありなさるのですが、なかなか共同化の方も全部一律にやるということも困難かと思いますけれども、大体のお考えは全部共同法人に関する単位に仕上げてしまうようなお考えでありますから、そういう面からそれは多分にわれわれと違って全部の農地を共同法人化していくというようなことから見て、コルホーズのにおいがすると、こう申したのだろうと私は思っております。
  484. 北村暢

    北村暢君 私はまず、この共同化の考え方がどのような考え方から出てきているか。今日政府も考えております農業の生産財としての畜産、これに対して特に豚、鶏等の増産について今後方針をとろうとしておるけれども、今日これを目当てに大資本の進出、漁業資本並びに商事会社等の目ざましい進出が出されております。しかもその規模たるや非常な膨大なものでありまして、鶏等においても一万羽養鶏はおろか十万羽養鶏が単位となってきておる、こういう状態。豚にいたしましても三千頭、五千頭という多頭飼育、超多頭飼育が畜産に向かって今伸びようとしている。畜産に進出をしてきている。これに対して一体農林省はいかなる処置をとられておるのか。方針をとろうとしておるのか。このことについてまずお伺いしたい。
  485. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) たびたびお聞きをすることでありますが、大資本が農村に進出する、畜産経営をやって脅かすというようなお話であります。これは私どもある意味においては、それによって需要を喚起し刺激するということであって、必ずしも悪い面ばかりでないと思いますが、しかし、私ども、農林大臣といたしましては、農業者によるむしろ畜産経営を大きくやらし、それをもって所得の増加を考えておるわけでありますから、私どもは当然それをただ軽々に看取しておるわけではございません。ただしかしそれに対してわれわれはあくまでも御指摘のように乳牛とか和牛とか、豚、鶏というものの飼育に関しましては、従来のような地方的にばらばらに少数飼育というものをやれば、集荷にも経費がかかる。またそれを必要な場合に加工によってこれをやるにしても、数が集まらなければだめですし、また外に向かって強く対抗する場合にも相当な量をまとめて、外に対抗するという流通経済における強さをまず作ることが必要だと思っております。従って、今度の予算等においても現われておりますのは、畜産に関してはやはり多頭飼育の地域というものを考えて、またそれができるように、地域的には鶏とかあるいは豚、飼育地域の主産地形成とむずかしい言葉を使っておりますが、まとまった地域にまとまった飼育をさせて、それに必要なる今度は牧野の改良等に関して積極的に計画をする。しこうしてこれからできたものは農業協同組合等の共同施設によって貯蔵し、保管しまた加工し、さらにそれを販売において畜産事業団等においてこれが買い上げ、売り渡しの調整をするということを考えておるわけであります。従って、私はあえて資本家の出てくることをおそれるよりも、まず農村における農業者団体の力を強くして、むしろどんどん仕事をやっていくように政府といたしましては指導し、農業協同組合もそういう目ざめた方向で協力をして対抗していくことが必要だと、かように考えております。
  486. 北村暢

    北村暢君 現在の豚の飼育している戸数、これは七十九万九千戸、それに対して三十五年度の豚の頭数が百九十一万八千頭です。一戸当たり平均では二・五頭くらいにしかならない。鶏にしてこれは一戸当たり、これは非常に戸数も多いのでありますけれども、平均すれば十二、三羽、こういう状態なんです。こういう状態の中に、これから伸びる畜産において資本に対抗するためには、どうしても主産地形成とか多頭飼育というけれども、一体一戸の農民がこのような零細な飼育しかやっていない現状から、大資本の進出に、何千頭、何十万羽の大資本に対抗するためには、これは共同化以外にはないのじゃないですか。これは私は主産地形成もよかろうし多頭飼育もよかろうけれども、これは思い切って共同化に踏み切って大資本に対抗する以外に手はない。このように考えますし、また今申したような零細性を克服する上においても、共同化というものは絶対に必要である。従って昨日の演説会において、コルホーズの何だのという非難をしたあとの懇談会において、農民からもっとまじめに政府は共同化ということを考えるべきじゃないか。農民の自主的な意思によって、今共同化というものは芽ばえてきているのですよ。これに対して、この共同化に対して、あなた方は一体協業化とか何かと、先ほどいろいろと字句上の業をあわせるとかなんとか言ったけれども、今度の三十六年度予算で、一体協業化の予算をどれだけとってあるのですか、示していただきたい。
  487. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お言葉でありますけれども、私ども共同化を否定もしていなければ協業化を否定もしていないのですよ。私どもはあくまで、御指摘のように、農家の自発的意思によってやっていく。お話のように、農業者がある地域において、豚の飼育等についてはこれを一緒にやりたい。主産地形成をやるにしても、牧野改良等、またそこに多頭飼育について共同にやる、その意識の盛り上がり、考え方を政府は助長していくということをたびたびの機会で、この席からも申し上げておる。あたかも私どもが家族経営だけを中心にして、ほかは一切許さぬという考えであるかのごとき御質問でありますが、それはもうはっきり……ただ原則、置き方が違う。あなたの方で家族経営ではだめだ、だから共同経営をやる。私どもは、家族経営というものは日本の実態に合っている。その上で、個人的にも基盤を大きくしてやれるものはやっていったらいい。しこうして、ものによって、業態によって、地域的に共同、全部共同もありましょう、一部共同もありましょう。一概に申されないのです。これはあなた、この間、二、三日前に私どもは全国から集まっている農村における青少年クラブの報告を聞いておる。これらについても、共同化というものについてある程度時期なり何が要ると、だんだんその方に持っていくということは必要だが、初めから無理な点もあるし、初めからやれる点もある。これは私どもの考え方と一致しておるわけです。これもまじめな青年の声でありまして、決して政府はそういうものに対して、共同のことを見失ってはいないのです。それは必要によって、要求によって助長していく。こういうことであります。
  488. 北村暢

    北村暢君 農林大臣、よけいなことを答えないで聞いたことについて答えて下さいよ。三十六年度に幾ら予算を組みましたかと聞いているのです、この助長のための。
  489. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私はその基本を流れる根本について御理解を得たいと思って申し上げておるわけです。予算の問題については、協業化促進に関しては、資金に関して融資をするという考えを持っておる。農業近代化融資制度というものを確立していく。また協業に、もし必要な場合における耕地の集団化というようなものについての助成を考える。それらの数字については事務からお答えさせますが、同時に主産地形成及び協業化を必要とする場面において、牧野等の、かりにまとめていくという場合においての牧野協業資金というものを、相当多額に計上しております。
  490. 北村暢

    北村暢君 今予算の問題で幾らというと、農業近代化資金の三百億だけ言われましたけれども、農業近代化資金の、これは有畜農家の切りかわったものも入ってきているのです。これは増額にはなっています、確かに。その点について私はとやかく言いませんが、政府の考えているこの農業協業化促進費という中で、農業法人による協業化促進指導費、これは五百万円組んであるのです。前年度はゼロです。わずかに五百万円、それも地方自治体に対する指導のための補助金なんです。実際に農民がこの大資本に競争するために、やむにやまれない欲求から共同化しようというか、共同化に対しては何らの助成もないんですね。従来と何も変わってないんですよ。その点を言っている。私ども社会党はこの点が違うのです。私ども社会党は自立経営農家というものを全然否定している。個人経営の農家というものを否定している。こんなばかげたことを言ってみたってそんなことではないんです。そういう零細農業を克服するためには今後共同化というものが出てくる。しかもその共同化というものも、実際は今後発展をするであろう果樹であるとかあるいは畜産であるとか、こういうところから部分的にできるものから共同化をしていく。そうして合理化をはかっていこう、こういう考え方に立っておるんです。従って、農民の要求に基づいて自主的にできるものからやっていくので、共同化をやるために強制をして土地を共同化してしまうのだ、取り上げてしまうのだ、こういうような土地の集団化をやるのだ、共同化をやってしまうだ、こういうような考え方も出ているようでありますけれども、これは全くの誤りでありまして、そういう考え方は全然持っていないということを一つ明確にしておきたい。ただそこで、政府の共同化と違うのは、今申したように政府は共同化をやりなさい、農地法の改正によって、農業協同組合あるいは生産協同組合あるいは協業化のための有限会社、合名会社、こういうものはできますよというだけの話なんだ、できますよという法律を改正しただけで、資本に対抗する農民の自主的な生産協同組合に対して、具体的にどういうふうに助成をするかということについては一つもないんです、今言った通り。府県に対する指導費を五百万円組んだだけだ。だから私は社会党はそうではなしに、この協業化するものに対しては思い切ったやはり助成をしていく。今日、農家において共同化にしても、多頭飼育にしても、主産地にしても、一番困るのはこれは資金ですよ、そういう点からいって。私はその点を資金面においても、それから直接助成の面についても、積極的にこの共同化というものを促進していこうというのが、あなた方は、勝手にやりたいものはやりなさい、やるのだったらじゃ助成もいたしましょうと、こういうのと、その根本の精神が違うのです。そういう点からいって、私どもの考える共同化というもの、生産協同組合を積極的にやっていこうという考え方、これはやはりそういう点からいって、政府の考え方を改められるのだったら一つ改めていただきたいと思いますが、考え方が違うのです。
  491. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 今、北村さんがお話になっているように、あなたの方も、強制はしないで、農家の自発的意思に基づいてやろうとするのは大いに促進していく。私どもの方も、農業者がやろうとする意識に基づいて助長していこう、そういうことになれば同じことになりますな、私はそう思います。  それから今お話のように、私どもは、その協業化をやった人間に対してと書いてないですけれども、私どもは、もうこれからの畜産というものは、主産地形成をやるし、多頭飼育をやろう、これらに対しては、それが個人であろうと共同化をやりたいというのに対して、先ほど一例を申し上げた資金の面についても、また草地、牧野の改良についても、また必要な豚の飼育に関して、ある場合においては買い上げに関する資金の助成、融通、また和牛等に関しては、これをふやすために一部は補助でいき、一部は借り入れによって生まれさして、その子供をかえしてもらって、親を渡すという、これらはみんなその一連の助成施設でありまして、これは共同化のものには出さない、個人だけに出すとはちっとも言っておらないのです。むしろ共同化である場合においては、供給される単位が限度がありましょうけれども、合計した形においてよけい資金も出ましょうし、助成関係も多くなってくる、これらのことは総合的に私どもは見ておるわけでして、それらおのおのはその計画に従って金融、財政上の助成を考えております。
  492. 北村暢

    北村暢君 企画庁長官にお尋ねしますが、あなた方の考える協業化というものについて一体どの程度の協業化というものを、規模のものを考え、しかも、それをどのように実施されようと計画されておるのか、これについてお答え願いたい。
  493. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 所得倍増計画の五十五ページに書いてございまするが、これはちょっと読んでみますと、「計画期間において自立家族経営百万戸程度が育成されることとなろう。この経営は平均して耕地面積二・五ヘクタール、労働力三人からなり、正常な技術的水準および経営能率を有し年間百万円以上の粗収益をあげうるものである。」、それからそのあとの方は、「協業は生産行程ならびに経営の部分的共同から全面的共同まで多くの段階があるが、将来の技術的可能性を考慮すれば、十年後はつぎのような姿を想定できよう。水田協農においては経営面積二十−四十ヘクタール程度、畑協業においては四十−六十ヘクタール程度になり、いずれも二十−四十馬力の大型トラクターが導入されるであろう。また畜産経営は最低乳牛で三十−五十頭程度、肉豚で百五十−二百五十頭程度、果樹経営は十−十五ヘクタール程度の近代的農業が行なわれうる経営単位となろう。」、こういうふうに書いてあります。
  494. 北村暢

    北村暢君 書いてあるのを読んでくれと言ったのではないのです。大体企画庁は、今言ったような構想のもとに考えておる。考えておるのだから、十年後にはそういうものが要るのだということになれば、農業の形というものが変わるのですよ。耕作の方法から、大型機械に合わされた土地の集団化から、みな変わってこなくちゃならないんですよ。だから私は、そういう積極的な協業化なり何なりをやろうというのだったら、来年度からそういう積極的な政策的な意欲というものが予算の中に出てこなければだめじゃないですか。それは今農林大臣が言っているように、資金は協業化の方はふやせばふやせるでしょう。こういうことでは、この協業化なんていうことは簡単にいくものじゃないのです。私ども協業化なんと言ったって非常にむずかしいと考えている。しかしながら、この零細性を克服して、国際農業に立ち向って、そうして合理化し、生産性を上げていくためには、農民の自主的なやはり共同化しかない。こういう意欲のもとに立ち上がっているこの共同化なんです。それをあなた方は、やはり基本問題の根本は自立経営農家だ、従って協業化はつけたりだ、こういう感じになっている。予算面においてもそういうような形が出てきている。だから私は今お尋ねしているのですが、従って、今十年後にそういうような協業化という形のものに移行するとするなら、一体今後農業の形というものは、あなた方は協業化のためにどういうような形で持っていこうとされるのか、その十年間の計画を聞いているわけです。腹がまえを聞いているわけです。
  495. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 所得倍増計画で一応のこういう道しるべを示しましたので、これを具体的に実行していきますのは、これは農林省の仕事でございまして、私どもの方の所得倍増計画では、十年後の姿を想定したもので、あとこれを年次的にどういうふうにやっていくかということは、これは農林省で計画し、考えてもらう立場でございます。
  496. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ただいま企画庁長官が申しましたように、所得培増計画に現われているのは、一つの類型として、構想というものを見ているわけです。しかし、あれは具体的にこれから地域的にどういう形のものがいいかということはおのおの違って参ります。私はただいま、恐縮でございますけれども、地方の農業青年の実際に行なっている場所の報告をなまなましくこの間聞いております。北海道等においても、必ずしも二十町歩とか三十町歩でなくて、八町歩で、しかもそれは二人で百五十万円の粗収入があがっているところもあるわけです。これは地方によって、様態によっておのおの違って参ると思います。それは、これからそれぞれの農業者の希望に従って、もし協業というものが、どの範囲でどういう形がよろしいのかということがきまって参る。それらに対してきまって、やるについて必要な財政的、助成的な措置が必要であれば、政府はそれに対して当然積極的に助成の道を考えていくつもりであります。
  497. 北村暢

    北村暢君 それでは、家畜の畜産三倍の計画を持っておるようでございますが、それの増加の計画の概要を御説明願いたい。
  498. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 詳しい品目別の十年後における目安、これは事務の方からお答えをさせます。
  499. 大沢融

    説明員(大沢融君) 畜産の今後の見通しにつきましては、基本法が通りましてから詳細なお検討するのでございますが、今までのところでは、所得倍増計画の中にあります数字といたしまして、需要につきましては、肉類が基準年次におきまして三十四万三千トン、それが十年後には百二十九万五千トン、卵が三十九万七千トンが百十四万二千トン、牛乳及び乳製品が百五十七万一千トンが九百六十三万五千トンというふうになる見通しを立てております。なお、生産の見通しにつきましては、肉は基準年次に三十三万一千トンが百四万八千トン、鶏卵は四十万七千トンが九十六万七千トン、牛乳は百三十一万三千トンが七百四十五万四千トン、羊毛が三千トンが一万一千トン——羊毛は別です。そういうふうに見ております。
  500. 北村暢

    北村暢君 ちょっと審議官、そこにいて下さい。  この畜産の家畜別増加の数を知りたい。
  501. 大沢融

    説明員(大沢融君) 家畜別の畜産物の生産見通し、飼養頭羽数見通しは、乳牛が六十万九千頭が二百六十五万二千頭、和牛が二百四十一万二千頭が三百二十二万七千頭、馬が七十九万一千頭が五十万頭、豚が百五十四万頭が六百八十万三千頭、綿羊が八十六万一千頭が二百二十八万三千頭、ヤギが五十九万三千頭が百十九万二千頭、鶏が四千七百七十四万九千羽が一億四百三十九万二千羽でございます。
  502. 北村暢

    北村暢君 そこでお伺いいたしますのは、飼料でございますが、こういうふうに膨大な家畜の伸び率、企画庁の数字によるというと九%以上成長する、こういうことになっているのでありますが、これに対する飼料の計画というものが、企画庁の所得倍増計画の中に、農業の近代化というところに食糧の作付反別、そういうものは出ているんですけれども、飼料については一切出ておらない。従って、この畜産の振興に伴う飼料の需給計画というものをお持ちになるのかどうなのか、これを一つ
  503. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) お話通り、所得倍増計画におきましては飼料の需給計画というものは触れておりません。しかし、この倍増計画に従って、まあ飼料の需給計画というのは、具体的には今後農林省が立てるわけでありますが、もし御必要があれば、所得倍増計画を立てる過程において、裏の方で積み上げた試算のようなものはございますが、もし、それが御必要ならば、これは農林省と打ち合わせをしっかりいたしたのかということは、ちょっとわかりませんが、うちの計画局長から御説明をいたします。
  504. 北村暢

    北村暢君 今申したように家畜の伸び率というものは発表している。ところが、これを、家畜を飼うからにはえさが問題だ。それを検討しないでやっているというのが、今までの畜産行政の最大の欠点なんです。最大の欠点なんです。それがはからずしも、この所得倍増計画の中に現われてきている。今三十四年度の輸入飼料については約九十八万トンですか、近くのふすま、トウモロコシ等を輸入しておるのでありますが、しかも、これが二百九億円輸入しているわけです。これは三十四年度の統計でこういうふうになっております。これに対して、今後この十カ年間に家畜の伸び率に対して一体輸入飼料はどうなるのか、自給飼料はどうなるのか、この点について農林大臣、計画を発表されておるのですから、出していただきたい。
  505. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御指摘の点はごもっともであります。私どもは、十八日の飼料需給安定審議会に大体の構想を述べて、それでこれは、具体的に輸入飼料はどうなるかということは、大体事務の者に立てさせますが、考え方といたしましては、御指摘のように、今後の畜産に対して飼料は一番重要な問題になります。そこで私ども政府といたしましては、各品目別に、動物別に必要な濃厚飼料あるいは草飼料というようなものは、でき得る限り国内における自給というものをはかり、また魚粕等の動物蛋白質を与えるものについても計画を立て、国内の自給はどこまでやれるかということを、濃厚飼料及び各般にわたり、また草飼料についても考える。どうしてもいかぬ部分が輸入の数量になると思います。これらについて、飼料についての品目別な総数及びその自給度及び必要輸入量というものをきめて、これを決定いたしたい。同時に飼料の需給安定の対策を考えているわけであります。
  506. 北村暢

    北村暢君 一体現在の自給飼料と輸入飼料とパーセントはどのくらいになっておりますか。それから現在の濃厚飼料の作付反別は、一体総計どのくらいになっているのか。これは魚粉等もございますから、そういうものでなしに、トウモロコシ、燕麦、いろいろな飼料がございます。これを作付反別に一体どの程度になっているか。そして今後一体十年計画でどのようにこれを変えていこうとしているのか、自給度をどのくらいに持っていこうとしておるのか、もう少し明瞭に話してもらわなければ……。十年計画を立てているのですから一つ説明していただきたい。
  507. 大來佐武郎

    政府委員(大來佐武郎君) ただいま企画庁長官からお答えいたしましたように、倍増計画の中には飼料についてこの数字が出ておりませんのでございますが、ごく内部的な作業といたしまして、一応試算したものといたしましては、実績はよろしゅうございますが、飼料全体で昭和三十一、二、三年の基準年次で、約六百万トンの消費量のうち、輸入が約八十万トン、これは先ほどお話がございました三十四年度でございませんで、輸入が約八十万トンになっておるわけでございます。比率にいたしますと、約六百万トンのうちの八十万トンでございますから十数パーセントになるかと思います。四十五年度につきましては、実はいろいろとまだ検討の余地が残されておりますので、非常に仮の数字とお聞き願いたいのでございますが、一応消費量として約千三百五十万トン、そのうち国内生産が千六十万トン、輸入約二百九十万トン、これは試算でございます。
  508. 北村暢

    北村暢君 そうしますと、私は、この企画庁のとって参りました資料によりますと、今後作付面積というものは減って、反収を増加していく。従って耕種部門では八四%から六九%に下げていく、こういうことになっているんですよ。  そうしますと、現在の耕地よりも、生産面において下げていこうという考え方に立っておる。私は、この飼料の問題を考える場合に、絶対にこれは耕種部門といえども、今後輸入があるんですから、相当輸入に仰がなければならないんですから、自給度を高めるべきであると、こういうふうに考えるのです。  従って、この点については農林大臣は、どのように考えておられるか。
  509. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) その点は、ただいまお話を申し上げましたのは、一つの目標でございます。さらに検討を加えまして、必要な耕地というものの造成はもとよりのこと、いわゆる畑と田の輪換というような問題が、それらに考えあわされて、飼料の自給計画については、さらに必要に応じて増加して、可能の限度において増加いたしたいと思います。
  510. 北村暢

    北村暢君 農林大臣、勝手なことを答弁されては困るんです。あなたのところで、この企画庁の所得倍増計画では、耕地面積は六百万ヘクタールで、これはふえないことになっているんですよ、造成するのじゃなくて。造成していくなどということを勝手に言ってもらっちゃ困るんです。それでいいんですか。ふやすんですか。
  511. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 造成する部分も、もちろんつぶれ地が出てきますから、造成する部分ももちろん出てくるわけでございます。行政投資の中には、一応そういうものも、ちゃんと見積りが出ているようです。たとえば草地なんかも造成する計画の中に入っております。全体の問題としまして、これは所得倍増計画と一緒に、閣議決定にありました所得倍増計画の構想というのがございまして、これで農業の部門は、農業基本法の制定に伴って、修正と言うと、またそれは非常に言葉じりをつかまえられていやなんですけれども、とにかくもうちょっと精密にやろうという気がまえが、所得倍増計画の構想という中に載っておりまして、従って、土地の造成等の問題につきましては、所得倍増計画の原案よりも、やや幅が広く考えられることになると思っております。
  512. 北村暢

    北村暢君 ただいま申しましたように、耕種部門においては減らしていくというもう、減らしていくのとふやすのじゃ全く逆なんです。農林大臣は、ふやしていくような答弁をされるから、私は聞いている。実はこの所得倍増計画によるというと、耕種部門は減らしていくことになっているのですよ。だから修正するならば、減らすことでなしにふやすということを言ってもらわないと困る。  それから、その点は、今あやふやな答弁であったけれども、それじゃ草地の造成は、どのように考えているか。この草地造成計画を一つ承りたい。
  513. 大沢融

    説明員(大沢融君) 倍増計画を作ります過程で作業をいたしました数字では、ただいま農林大臣から、耕地はそう変わらないというお話がございましたが、その耕地のほかに、大規模草地造成ですとか、あるいは集約牧野、あるいは改良牧野というようなものを三十数万町歩作っていくというような内容を考えております。
  514. 北村暢

    北村暢君 草地の造成の目標というものを持っておると思うのです。そういう漠とした話でなく、四十五年度を目標にしたところの乳牛並びに和牛の増加に伴う粗飼料としての草地造成、これについての需給度を高めていくという考え方をとっているのですから、これに対して、一体草地造成は、どのくらいやるのかということを聞いているのです。
  515. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 大体四十五年度を目標にしまして、三十五万町歩前後と思っております。
  516. 北村暢

    北村暢君 あなたの省の畜産局で試算をしている数字を、ここにあるのですよ。それによるというと、集約牧野が五十万町歩です。それから改良牧野が五十八万町歩で、四十五年度までに百八万町歩のこの牧野を作る、こういう目標でいかないというと、今の粗飼料を十分に、七〇%、八〇%まで草で飼う酪農なり和牛というものはできないという計算になっておる、そういう試算がなされて目標を立てておる。それから優良な粗飼料を作るために、大体現在の四十万町歩ですか、これを八十一万町歩くらいに、倍くらいに持っていこう、こういう計画を立てておるのじゃないですか、それはあなた、今の私の言ったことは違うのですか。
  517. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) その点は、私は先ほど申し上げておる検討してきまったらお知らせすることにします。ただいま私の申し上げたのは、一応所得倍増計画に載っておる草地の四十五年の目標であります。しかし私どもは四十五年の目標は、所得倍増計画に現わされておる耕地面積なり、あるいは草地面積というものは、さらに再検討せらるべきものである。  ここで、先ほど私が一番冒頭に申し上げましたように、全体の種類別飼料に関しまして、需給度をいかに向上させるか、その種類別の関係によって必要とする中での草の問題を中心として、牧野はどうなるかということは、ただいま検討中の数字であります。ただいまあなたのお示しになった……。
  518. 北村暢

    北村暢君 検討中の数字でも、とにかく牛は——大資本の飼育では、また品質では、豚と鶏ですから、これはやはり牛は、農民が飼うのです。農業的に。従って、この飼料の問題は非常に重要なんです。濃厚飼料の問題には、私は今触れてない、濃厚飼料の問題もやりたいと思いますけれども、時間がございませんからやらない。草の資源の問題について、今お尋ねしているのですけれども、大体和牛、乳牛の五十何パーセントというものは、一頭飼育でしょう、これを多頭飼育に持っていくという形、集団化していくという形になると、どうしてもこれは、粗飼料に持っていかなければならない、今日乳牛酪農というものは、草で養っている部分は四割ぐらいでしょう。六割は濃厚飼料でやっているのですよ。これは逆転して、なおかつ、スイスではこれは七〇%まで草でやっておる。それ以上濃厚飼料をやっちゃいかぬという原則すらあるのですよ。それぐらいまで草という資源に対して考えないで牛ばっかりふやしてもどうにもならないのです。農民を苦しめるだけです。今までのやってきた酪農政策というものは、農民に牛を飼わして赤字を出すようなことをしいている、強制したようなものなんです。だから、私はやかましく言っておる。目標の数字じゃないのですよ、これは。こういうふうにやらなければ、計画を持っていかなければ畜産、酪農振興だなんといっても、そろばんに合わないですよ。そういう意味において検討中でなくて、あなたは一体今後どうやっていくのか、そういう政策的な腹がまえを聞いているのです。
  519. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私は、はっきりと計画が立って、妥当と認めるまでは外に発表しないつもりであります。お話の点はよく承知をいたしております。いかにして濃厚飼料を草の飼料に変えることによって、飼料費として出す生産費が節約されるかということもよく存じておるわけです。それがゆえに乳牛、和牛等に関する草飼料というものを要求するものについての牧野改良に関し、また草地造成に関しては積極的にものを考えたいと思いますけれども、ただ未確定、検討のままで発表いたしますと、またどこからかいろいろ間違いが出ると困ります。そこで、これは今そういう点において検討中の数字でございます。
  520. 北村暢

    北村暢君 堂々とこの所得倍増計画というものを発表して、乳牛はこれだけになりますと言いながら、しかも、このえさの問題については検討中でございまして発表できません、こういう方向だから、私どもは今までの畜産行政というものは心配なんだ。従って、今すべて酪農というものは停滞ぎみでしょう。伸ばそうといってもなかなか伸びない状態、それは農民が不安だからできないのですよ。早くそういうことを計画を立てて発表しなければ、農民はやれやれといっても不安で変えようがない、そういう状態です。よく事情がわかっておられるというわけですから、もっとも非常に練達たんのうな農林大臣ですから、早くこれを出していただきたい、こういうようにお願いいたしたいと思います。  それから次にお伺いいたしたいのは、昭和二十八年の調査に基づく農業地の拡大について、開拓可能な、着手可能な面積は百万町歩あるということが発表せられているわけでございます。これは当時の技術からして、そのままの技術で百五万町歩ある、こういうふうな発表になっておるのでありますが、その後の経過が一体どうなっておるか。
  521. 伊東正義

    政府委員(伊東正義君) お答えいたします。今の御質問の百五万町歩でございますが、これは農林省が戦後緊急開拓をやりましたときに、大ざっぱではございましたが、五万分の一の地図を使いまして調査いたしました当時は、五百五十万町歩という数字が出ていたのでございますが、これをその後、今、先生がおっしゃいました二十八年に、県等に依頼いたしまして再調査をしたわけでございますが、そのときに出ました数字が、今後の開拓可能地として百五万町歩と出たわけでございます。これはその後開拓に手をつけましたのは、実は新規はかなり減っておりまして、既入植者の安定対策をやっておりますので、大体当時調べましたものを根拠に考えますと、今後の開拓可能地は大体百万町歩だろうというふうにわれわれは考えております。
  522. 北村暢

    北村暢君 今、農地局長の言われた数字は大体合っているのです。それで二十八年当時二百十一万町歩、そうして三十四年度までに未墾地として取得したものが大体百五十万町歩、売り渡した面積が、実績が百六万町歩。従ってこれは、二百十一万町歩あったんで、売り渡したものが百万町歩なんですから、大体百万町歩はある。従って、私ども社会党が今、耕地として百万町歩の可能だと、こういうことを言っているんですが、これはもううそでなしに、政府自身の資料に基づいて可能なんです。しかも、これは草地じゃなくして、農耕地として可能だ、こういうことになっているのです。従って、私はここでお伺いいたしたいのは、この百五万町歩と、先ほど私が見込みの数字だと言った草地造成の約百万町歩、これについて一体、耕地の百万町歩のほかに、この草地造成というものが百万町歩可能である、技術的にいって可能である、このように考えます。また、この林野関係の統計によりましても、現在、山林原野のうち、原野が百四十万町歩ある、こういうことになっておるわけなんです。従って、この間の点からいって私は今後、放牧採草地というものが、これを獲得する意欲があれば私は十分、百万町歩や二百万町歩の放牧採草地は出てくる、こういうふうに思いますが、これに対する考え方をお伺いいたしたい。
  523. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御指摘の草地と、田畑としての可耕地というものに多少ダブっている点があると思いますが、いずれにいたしましても、開墾可能地、これを利用し得る可能地ということと、これを具体的に草地とし、畑とするということに関しましては、あくまでも今後における、そこで行なわれる農作物の将来の需要の見通しに立って、それと総合した形において草地の造成並びに畑の造成をふやしていくつもりであります。草地については、まあどういうふうな形で、うちに入りましていろいろ一緒に研究していただくことはけっこうです。私は、必要があれば相当に草地は十年間に伸ばしていく必要があると、かように考えております。
  524. 北村暢

    北村暢君 耕地造成の未墾地取得の十年後の計画、見積もり数量を一つ聞かせていただきたい。
  525. 伊東正義

    政府委員(伊東正義君) お答えいたします。耕地造成に関連して、未墾地取得はどのくらいやるかという御質問でございますが、十年計画、所得倍増計画で作りました耕地造成面積の中で、開拓は二十一万七千町歩を予定いたしております。しかし、この二十一万七千町歩のうちの約半分以上は継続地区を、現在もうすでに未墾地買収が終わった所、手をつけている所でございます。新規が約十万町歩でございますが、実は私どもが今未墾地として持っております、国が持って、管理しております面積が約五十万町歩くらいございます。でありますので、この中からどのくらい使うか、あるいは新規にどのくらい買うかというようなことにつきましては、所得倍増計画の中でもきっちりした数字は実は作っておりません。将来の開拓としまして、新規には十万五千町歩手をつけますが、この中には今申し上げましたように、国が五十万町歩くらい持っておりますので、その中のものも当然使うというふうに考えております。
  526. 北村暢

    北村暢君 ここで出ているように、私はここで申し上げたいのは、今、農地局長が申されたように、農地局は未墾地取得というものについて、今後考える場合に、耕地しか考えていない。十万町歩か二十万町歩程後ですか、考えておらない。しかし、農地法によっては牧野、採草地も未墾地として買収できることになっているから、これに対しては農地局はまずその意欲というものは持っておらない。ところが、一方、畜産関係からすれば、絶対に今後の乳牛、和牛を入れていく計画からいえば、百万町歩の草地というものが必要である、こういうことになっておる。これが対象地が、入会権その他でもって山林原野の土地制度の問題と関連して、なかなかあなたが今発表できないと言われるのはそこにあるんですよ。この問題を調整しない限り、実はこのせっかくある土地が、権利関係が、あるいは土地の所有関係が明確でないために利用できないでそこに放置されている、これが実態です。従って私は、やはり農地局の言うこの考え方に立って、農地局がもっと積極的に草地までやはり未墾地として取得する、こういう考え方に立つべきである、その場合、どうしても山林の問題とぶつかってくる問題があるわけでございます。でありますから、この点で私最後にお伺いいたしたいのは、山林の問題について、公有林、官行造林の廃止の問題をめぐって自治省と農林省の間に了解事項が、文書交換が行なわれたんだが、これがあるということを聞いておるが、この発表を願いたい。
  527. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私のところまできておらないことでございますので、どういう内容かちょっと私は知りません。あとで林野庁長官でも呼びまして御答弁いたさせます。
  528. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) この山林の経営に関しまして特別の協約を結んだという事項につきまして、ちょっとまだよく聞いておりませんが、ただ今後のいろいろな山林経営のための起債等の割当、あるいは融資等の問題につきましては、農林省といろいろ折衝中でございます。
  529. 高尾文知

    説明員(高尾文知君) ただいま御指摘のありました自治省と林野庁の取りきめの問題でございますが、これは官行造林と公有林野と、官行造林法の廃止に関連いたしまして、事務的折衝の段階におきまして、お互いに考え方の相違から議論があったことでございますが、要約いたしますると、まとまりました結果は、林野庁長官と自治省の行政局長との事務的な了解事項ということに相なっております。内容は、市町村有の公有林野の直営主義というものを従来通り尊重してやっていく、そういう建前になっておるわけであります。細部的につきましては、なお、書面その他にしてお示ししてよろしいかと思います。
  530. 北村暢

    北村暢君 これは私、文書を持っておるのですけれども、大事なことが書いてある。そんな簡単なことじゃない。基本問題調査会の答申案に違反をすることが二点くらい載っておる。これについて承知しておるかどうか、お尋ねします。
  531. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ただいまお答えをいたしましたように、私まだ承知いたしておらぬのであります。
  532. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 今事務当局からお話しありましたように、事務的な問題として若干の折衝はあったようでございますが、私まだ伺っておりません。もし何でしたら、あとで資料でもそろえて御報告いたします。
  533. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 林野庁長官を呼んでおりますが、もしおらぬようでしたら、あとで調査をしてお答えします。
  534. 北村暢

    北村暢君 その二項の中に、「公有林野の縮少を促進するような政策は原則としてとらない」ということを、はっきりここで了解事項でとっておるんす。このことは、林業基本問題調査会の答申案の公有林政策の問題と重大な違反をする問題なんだ。そういうことを知らないで林野庁長官と行政局長との間に文書交換が行なわれておる。大臣知らないというのは、これは重大問題、責任問題ですよ、これは。
  535. 高尾文知

    説明員(高尾文知君) ただいま御指摘がありましたのでございますが、林業基本問題と、それの対策というものにつきましての内容は、必ずしも市町村の造林能力というものを過小評価しておるとか、あるいは不当に評価しておるとかいうことでありませんので、できるところはそういうふうにやっていこうということの文書交換をしておるわけでございます。
  536. 北村暢

    北村暢君 そんなことじゃ承知しませんよ。そこにある文書ですから、白紙撤回をするかどうか、協議して答弁してもらいたい。
  537. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ちょっとここで拝見をいたしましたけれども、この意味が那辺にあるやを、長官、局長を呼びまして、よく聞いた上で御返事をいたしたいと思います。
  538. 占部秀男

    占部秀男君 今、北村君の質問に対して、やはりこの取りかわした文書の内容が、相当答申等と相反する点があると思います。それを明確にするためには、やはり林野庁長官を呼んでもらわなくっちゃならぬ、これが北村君の主張になるわけです。で、至急に一つさがしてもらいたいと思うのですが、その点連絡をお願いしたいと思います。
  539. 館哲二

    委員長館哲二君) 農林省の方どうですか。  速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  540. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記を起こして。
  541. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私は直接まだ聞いておらぬ。今の書面を拝見いたしましたけれども、両局長のことは那辺にあるかは、よく確かめてみなければ、私は直ちに御返答をできません。ことに林業基本問題調査会の答申案と違うということでありまするが、これは答申案は答申案として、そのまま私どもすぐにその内容を全部どうということはございません。政策に現わす場合に十分に検討して参ります。ことに国有林野等についても、今後におけるお話しの点も考慮し、次に国有林野の払い下げ等に関する法制をどういうふうに立てるかというこを考えて、国有林野につきましては、これはまあ私ども直接——関係は自治体のものであります。それをどういう意味でこれはできているのか、調査の上御返事をいたしたいと思います。
  542. 北村暢

    北村暢君 これは議事進行です。  ただいまの農林大臣の、わからなくて協議して答弁するということですから、そうですというと、これは答弁にならないわけです。従って、次回の劈頭に協議した結果をここへ報告してもらう。それについて、まあ三十秒か一分間ぐらいしか時間ございませんから、その余裕だけ残していただきたい、このように思います。
  543. 館哲二

    委員長館哲二君) どうですか。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  544. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記を起こして。  今農林省の方で調査にだいぶ手間取るようでありますから、本日はこの程度北村君の質疑をやめまして、次の委員会の劈頭に農林省から調査した結果について答弁がありまして、それに対して北村君から持ち時間の範囲内において質疑をやっていただくということで御了承いただきたいと思います。  それでは、次回は明後日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時四十六分散会