○森中守義君 私は、
日本社会党を
代表いたしまして、ただいま
議題となりました
昭和三十五
年度予算補正第2号、同じく特第2号に対しまして、反対の
意思を表明したいと思います。反対である第一の理由は、今回の補正が財政法上幾つもの疑点を持っているからであります。問題とすべき第一の点は、財政法第六条と今次補正との
関係であります。すなわち第六条では、各会計
年度において、歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金のうち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた
年度の翌々
年度までに、公債または借入金の償還財源に充てねばならない、としております。これは健全財政を規定したものでありまして、もしかりに今回の
補正予算の成立を見るといたしますならば、三十七
年度における公債償還の減少となり、財政法の規定する健全財政は侵されるのであります。また
池田内閣が公約をいたしました長期健全財政は、
池田内閣みずからの手によって危機に瀕するからであります。問題とすべき第二の点は、財政法第四十四条と今次
補正予算との
関係であります。昨日、この
委員会で、財政法第二十九条違反ではないかとの追及を受けた
政府は、財政法四十四条の規定を用いまして、特別資金の保有でもある、こういう答えをされたのであります。この四十四条は、明らかに財政法十四条の例外規定であり、この種例外規定は、財政法の建前からいたしましても、みだりに乱用すべきものではありません。しかも、
補正予算の
内容から見てみますと、四十四条をたてにとること自体、財政法の解釈と運用にきわめて独善的な、しかも、危険な
傾向を持っていると思うのであります。加えて今回の
補正予算が、資金の保有のみをきめておりまして、歳出の方針、
計画が全く不明である限りにおきましては何をかいわんやであります。また、問題とすべき第三の点は、今次
補正予算と財政法二十九条との
関係であります。財政法二十九条は、内閣は、
予算作成後に生じた事由に基づき必要避けることのできない経費もしくは契約上国の義務に属する経費に不足を生じた場合に限り、こういうようにきわめてきびしい制限規定でありますが、補正の
内容は、税の
自然増収四百四十億の補正総額のうち、三百五十億を産業投資特別会計の資金に繰り入れ、百五十億を三十六
年度の財源に、残りの二百億を三十七
年度以降の財源に充てるとしておるのでありますが、この事実をもってしましても、財政法二十九条の制限する、緊急にして必要避けることのできない経費の不足でないものであることは、何人も疑いをいれないものでありまして、
政府がいかに強弁をされましても、財政法二十九条違反であると私は断定をいたします。ここにおいて、わが党は、以上申し述べました財政法上の疑点が解明されない限り、今次
補正予算にあくまでも反対をいたします。よってこの際、
政府は、率直にその非を認め、今次
補正予算の撤回を行なうべきであり、そのことが
国民の血税である国家
予算への厳粛にして、公正なる取り扱いであろうと私は思います。
反対である第二の理由は、今次
補正予算と三十六
年度予算との
関係が、あまりにも不明朗であるということであります。
大蔵大臣は、きのうこの
委員会で、三十六
年度予算編成の作業過程において、産業投資の財源
措置をとってきたが、後半において、他に優先する費目の設定があったのでこれを変更した、こういう趣旨の弁明がありました。これは、先般
衆議院においても、ほぼ同様の趣旨の釈明が行なわれたのでありまして、これはすこぶる重要であります。何となれば、第一次補正と三十六
年度予算編成は、あたかも同じ時期に行なわれたのでありますが、第一次補正の審議の中で、これ以上財源はない、第二次補正は行なわないことを言明されております。ところが、そのときすでに
政府におきましては、税金の
自然増収の見通しを持っていたのではないかと私は思います。第二次補正を予定しながら、三十六
年度の
予算編成にあたって、とりあえず産業投資に一般会計からの財源を一応振り向けておいて、寄ってたかってのむしり取り、ぶんどり競争に産業投資の原資を回し、当初の予定
通り、今次第二次補正を行なうに至ったと見るのでありまして、こういう見方からいたしますならば、醜態というよりも
計画的なことと言わなければなりません。また、そういう千日は、いま
一つの効果をねらったとも私は見るのであります。それは、三十六
年度予算の規模が、二兆円の大台を上回ることをおそれ、三十五
年度補正の形をとったのでありまして、実質において、この補正は、三十六
年度予算の分計されたものと私は
考えるのであります。従って、三十六
年度予算の規模は、まさに二兆円の大台を突破したものとなりまして、こういう謀略的、
計画的な
政府の
措置は、政治の折り目をそこなうものでありまして、わが党の断じて承服できないところであります。
反対である第三の理由は、さきの第一次
補正予算との関連においてであります。すなわち人事院勧告に対する
政府の
態度は、財源の不足を理由に、五月から実施すべきものを十月からに引き延ばしまして、また上厚下薄の是正を行なわないで、憲法が保障する国家公務員、地方公務員の労働基本権を奪った
一つの償いとしての人事院勧告すらも不完全に終わらせてしまったのであります。また社会保障を重点として公約したはすの
池田内閣が、第一次補正におきまして、これまた財源の不定を理由に、正月のもち代として、純増わずかに一億八千万
程度の補正でお茶をにごしたという事実は、ボーダー・ライン層に対する非道なる仕打でありまして、
池田内閣の看板には偽わりがあると私は思います。要するに、第一次補正の審議を通じまして、その増額が広く
国民の声として叫ばれておりましたのに、終始財源がないの一点張りで耳を傾けようとはしませんでした。しからば、はたしてその
通り財源が全くなかったのかどうか。昨日この
委員会で、水田蔵相は、当時税収の見通しは不確定な要素が多かった、こういうことで、暗に一応の
増収の見通しは持っていたということをほのめかし、加えて本
年度末までは、さらに最低三百億
程度の
増収の見通しがあることを明らかにしたのであります。
以上で明白でありますように、たとえ不確定な要素があったといたしましても、一次補正の場合、財源はさらに余裕があったにかかわらず、財源がないということを理由に、一次補正を著しく制限を加えたことは、今次第二次補正に至る経過、その
内容を比較いたしますときに、
池田内閣の性格を今さらのように私は知ることができるのであります。要するに、四百四十億の大半が廃業投資に振り向けられていることは、
国民生活の二重構造を深め、その格差を高め、ややもすれば不正なる融資となり、汚職の原因を作り、不潔なる政治献金となる可能性を持っておるものであります。
もとより四百四十億は
国民が納めた税金であります。当然
中小企業のために使わなければなりません。農民のために使わなければなりません。労働者のために使わなければなりません。社会保障のために、あるいは大衆
減税の財源に、さらにまた左官五十億の産業投資の財源、これに対する地方交付税の交付金九十億の再
検討を行ないまして、地方自治体のために、より高率な配分を行なうことがこの種財源
措置の当然な
方法であることを強く主張いたしまして、私は、この両案に対する反対の討論を終わりたいと思います。
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