○大竹平八郎君 ただいま
議題となりました七
法律案につきまして、大蔵委員会における
審議の経過並びに結果を御
報告申し上げます。
まず、
所得税法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
本案は、税制
調査会の答申に基づき、
昭和三十六年度税制
改正の一環として、給与所得者、事業所得者等、各種の所得者を通じ、中小所得者を中心として約六百三十億円の減税を行なおうとするものであります。
以下その大要を申し上げますと、
第一は、諸控除及び税率の
改正であります。すなわち、新たに配偶者については基礎控除と同額の九万円の配偶者控除を設け、扶養控除については満十五才以上の控除額を三万円から五万円に引き上げることとし、給与所得控除は新たに一万円の定額控除を行ない、税率については課税所得七十万円以下の緩和をはかっております。この結果、夫婦及び子三人の標準家族の給与所得者については、所得税を課税されない限度額が、現在の三十三万円から約三十九万円に引き上げられております。そのほか、事業所得者については、家族専従者の
実情、法人の負担との均衡より、白色申告者には七万円の控除を新設、青色申告者の場合は控除額を引き上げ、二十五才以上十二万円、二十五才未満九万円としております。
第二に、その他の
改正として、退職所得控除の
改正、事業譲渡に類似する有価証券の譲渡所得を非課税の対象外とすること、配当所得、趣味もしくは娯楽に伴う所得の計算上生じた損失について他の所得との通算を認めない等、税制の
整備合理化をはかっております。
次に、
法人税法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
本案は、同族会社の留保所得に対する特別課税の軽減
合理化をはかろうとするものであります。すなわち、この
制度が中小法人の税負担を重くし、資本蓄積を妨げているとの観点より、毎期の留保所得から一定の控除を行なった後の金額に対し税率を課することとして、中小法人の負担を軽減する反面、個人事業者との負担のバランスから、高額の留保所得に対する税率を引き上げております。本
改正による減税額は、初年度約二十七億円と見込まれております。
次に、
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案(
閣法第二四号)について申し上げます。
本案は、三十六年度税制
改正の一環として、現在の経済情勢に応じ、租税特別
措置について整理
合理化を行なおうとするものであります。
以下その大要を申し上げますと、
第一は、企業の資本充実に資するための配当課税の特例
措置であります。すなわち、配当課税の
あり方を種々
検討の結果、当面の暫定
措置として、企業の支払い配当に対する法人税率を引き下げることにより、企業の配当コストの軽減をはかることとし、その反面、個人の配当控除割合、法
人間配当の益金不算入について、これに対応する調整を加えております。
第二に、
技術の
振興及び設備の近代化に資するための特別償却
制度の
改正であり、現行の
合理化用機械の初年度二分の一特別償却、重要機械類の三年間五割増特別償却等を、取得価額の三分の一を別ワクとする特別償却に改める等、耐用年数の一般的改訂とも関連し、明確化と簡素化をはかっております。
第三は、企業の利益留保の性格が強いといわれる価格変動準備金の
改正であり、国際商品等で価格変動の著しいものを除き、現行の積立率を二五%程度引き下げております。
第四に、その他の
改正として、輸出所得の割増控除を、国際
会議等における情勢をも考慮し、期限の到来とともに削除したものであり、交際費課税については、簡素化、公平化のため、損金不算入額の
改正を行ない、また居住用財産の譲渡所得の特例として特別な控除を設けております。
第五に、期限の到来した特別
措置で、諸般の情勢より、なおその延長を必要とする利子所得の分離課税と源泉徴収税率の軽減、配当所得の源泉徴収税率の軽減等について、期限の延長をいたしております。
なお、今回の税制
改正によるいわゆる特別
措置の増収額は、初年度約百十七億円と見込まれ、そのほか配当課税の
改正で約百二億円の減税を見込んでおります。
委員会の
審議におきましては、自然増収に比し、減税額が少な過ぎないか、課税最低限の算出根拠は合理的なものであるかどうか、所得税減税の恩典に浴さないような低所得者に対し間接税面での配慮をなすべきではないか、源泉徴収は、憲法、諸法令に違反しないか等について質疑がありましたが、詳細は
会議録によって御
承知を願いたいと存じます。
かくて質疑を終了し、三案一括して
討論に入りましたところ、荒木委員より、「
池田内閣は一千二百億円の大幅減税を約束したが、今回の減税法案は三十六年度約六百二十二億円に過ぎず、公約を履行していない。その
内容については、第一は、生計費に課税しないという原則に対し、
政府案の課税最低限はそれに遠く及ばない。第二は、租税特別
措置で、大資本、高額所得者を不当に擁護するものであり、この減税優遇
措置に対し整理が過少である。第三は、所得税を課されない低所得階層に対しては、酒、たばこ、砂糖の間接税の引き下げをはかるべきであるが、今回は全く配慮されていない。以上の理由により、三案に
賛成することができない。今後間接税の早急な
改善を要望する」との反対意見が述べられ、次いで須藤委員より、「今回の減税は独占資本への
措置で、中小企業者、農民、勤労者を冷遇している。
租税特別措置法では大企業を優遇し、農民の米穀課税の特例、社会診療報酬を廃止しようとしており、
法人税法では中小企業の要求とはきわめて大きな隔たりがあり、
所得税法では中小企業のささやかな要求の一つも入れられず、また、
労働者の必要経費を認めず、憲法、諸法令に違反する源泉徴収を廃止する意思がない。並びに減税の恩典に浴さない低所得者に重課される間接税は改廃すべきである。」との三案に対する反対意見が述べられました。
三案について、それぞれ採決の結果、いずれも多数をもって原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
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次に、
物品税法等の一部を
改正する
法律案につきまして申し上げます。
本案は、乗用自動車及び映画用カラー・フィルムの最近における
生産及び取引の
状況等にかんがみ、これらの
物品について所要の
改正措置を講じ、本年四月一日から施行しようとするものであります。
改正の第一点は、乗用自動車の税率区分を改めることとし、小型車について、その輪距、気筒容積を拡張するとともに、新たに幅の制限を設けるほか、高級車の気筒容積を引き下げて、その適用範囲を拡張することとしております。従って、この
改正措置によって、現在
生産されている国産乗用車は、全部一割五分の税率適用を受ける小型車の範囲に入ることとなり、また、現在三割の税率適用を受けていた一部の輸入車は五割の税率適用を受ける高級車の範囲に入ることになります。
改正の第二点は、
昭和三十四年以降本年三月末日まで基本税率三割が暫定的に一割に軽減されていた映画用カラー・フィルムについて、その軽減
措置を来年三月末日まで、さらに一年間延長することといたしております。
なお、
本案については、
衆議院において修正議決せられたものでありまして、その修正点は、昨年末外貨割当の
承認を受けた自動車のうち、その一部が四月及び五月に輸入される予定になっておりますので、今回の
改正措置によって高い税率の適用を受けることとなるものについて、需要者に不利を招来することを避けるため、その施行期日を延長して、六月一日から適用することとしているのであります。
委員会におきましては、自動車について規格を設けて課税標準としていることは機械産業の発展を障害することにならないか。また、来年度の税制
改正においては、大衆日常品に対する
物品税を廃止する考えはないか。また、来年度の税制
改正を待たず、政令の段階で減税を行ない得るものについては直ちに
検討実施すべきではないか等について
審議がなされたのでありますが、その詳細は
会議録によって御
承知願いたいと存じます。
かくて質疑を終了し、
討論、採決の結果、多数をもって原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
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次に、
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案(
閣法第一三八号)について申し上げます。
今
国会において、別途、鉱工業
技術研究組合法、低開発地域工業促進法その他の法案が
提出せられておりますが、
本案は、それに伴い必要な税制上の特別
措置を講ずるため、重ねて
租税特別措置法の一部を
改正しようとするものであります。
本案のおもなる
改正点を申し上げますと、
第一は、試験研究の助長であり、科学
技術振興の重要性に顧み、鉱工業
技術研究組合法案による組合が取得した研究用固定資産について圧縮記帳を認め、また、その支出した組合員については費用の特別償却を
規定し、課税の特例をはかっております。
第二は、低開発地域等の工業開発の促進であり、低開発地域工業開発促進法案による低開発地区に新設増設した機械
設備等の特別償却を認め、また、地方の工業開発等に資するため、買いかえによる譲渡課税の特例を設けております。
第三は、産業の助成であり、特定産業の合併促進のため、その合併による清算所得の法人税、それに伴う登記の登録税を軽減し、また、硫安製造業者の
日本硫安輸出株式会社に対し有する売掛金を損金に算入するとともに、これに伴う損失については十年間の欠損金の繰り越し控除を認めるものであります。
委員会における
審議の詳細につきましては、
会議録によって御
承知を願いたいと存じます。
質疑を終了し、
討論に入りましたところ、上林委員より、「施行期日について、
昭和三十六年四月一日となっておりますのを、未成立三
法律案関係の条文の施行期日は、それぞれの
法律施行の日から施行すること」とする修正案が
提出され、次いで採決の結果、上林委員
提出の修正案は、多数をもって可決され、修正部分を除く原案については、多数をもって可決され、
本案を修正議決すべきものと決定いたした次第であります。
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次に、
郵便貯金特別会計法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
本案は、さきに成立した
資金運用部
資金法の一部を
改正する
法律によって、
資金運用部の郵便貯金
長期預託金について特別の利子を付する
措置をとり、また、
郵便貯金法の一部を
改正する
法律において郵便貯金の金利の引き下げをはかる
措置をなし、これらの
措置等により郵便貯金特別会計の経理
内容の
改善がはかられることになったので、従来暫定的
措置としてとられてきた一般会計及び
資金運用部特別会計からの郵便貯金特別会計へ赤字繰り入れの
措置を廃止するとともに、過去の赤字繰入金につきましては、今後の郵便貯金事業の経営の健全性の維持に資するため、この際、これらの会計への返済義務を免除しようというのであります。また、これに伴い、郵便貯金特別会計の借入金
制度につきまして所要の
整備をはかろうというのであります。
委員会の
審議におきましては、郵便貯金特別会計の赤字の要因とその
措置、郵便貯金の金利の引き下げによる貯金の今後の見通し、及び、これに関連して財政投融資の原資としての
資金運用部
資金に及ぼす影響について質疑がありましたが、詳細は
会議録によって御
承知願いたいと存じます。
かくて質疑を終了し、
討論に入り、須藤委員より、「郵便貯金は大衆の零細な貯金であるから、その利子の引き下げをなすべきではない。また、この
措置によって郵便局員の労働力の
強化がなされる。」旨の反対意見が述べられ、採決の結果、多数をもって原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
最後に、
沖繩における
模範農場に必要な
物品及び本邦と
沖繩との間の
電気通信に必要な
電気通信設備の譲与に関する
法律案について申し上げます。
本案は、
沖繩の農業
技術の改良を
援助するため、
政府が、琉球
政府の
模範農場に対し、農業
技術の改良及び普及をはかるために必要な
物品を譲与できることとするとともに、本部と
沖繩との間の
電気通信に必要な
沖繩の
電気通信設備の
改善を
援助するため、
政府及び
日本電信電話公社が、
沖繩において公衆
電気通信業務を行なう機関に対し、必要な
電気通信設備を譲与できることにしようとするものであります。
委員会の
審議におきましては、
沖繩の農業事情はどうか、今回の
援助が将来戦争に利用される危険はないか等の質疑がなされましたが、詳細は
会議録によって御
承知願います。
かくて質疑を終わり、
討論に入りましたところ、須藤委員より、「
本案は、われわれや
沖繩住民を欺瞞する小手先の
措置であり、
日本への復帰こそ取り上げるべきである。」との反対意見が述べられ、採決の結果、多数をもって原案
通り可決すべきものと決定いたしました。
以上御
報告申し上げます。(
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