○田畑金光君 私は、民主社会党を代表し、昨九日正午、福岡県田川郡香春町の上田鉱業
上清炭鉱に起きました炭鉱災害に関し、若干
質問したいと思います。
質問に先立ち、七十一名の犠牲者に対し、つつしみて哀悼の意を表します。
ただいま
通産大臣から災害発生の原因について説明がございましたが、坑内コンプレッサーの事故に基づく火災によりまして、七十一名の犠牲者が出たわけでございます。昨年九月二十日、同じく福岡県川崎町における豊州炭鉱の水没事故に引き続く最大の悲惨事でございます。ことに、豊州炭鉱における犠牲者六十七名の遺体収容も終わらないうちにこの事故を見ましたことは、
政府の保安監督行政の不備欠陥、鉱業権者の保安に対する関心の欠除、怠慢に基づくものでありまして、心から憤りを禁ずることができません。
今回の事故発生の原因は、坑内コンプレッサーの発火から発生したものであり、この種の事故は従来少なかったといわれておりまするが、保安法、保安規則によりますると、巻上機、ポンプ、室等、電気使用の場所等は、防火
設備を実施することになっておりますが、中小炭鉱においてはほとんど実行されない。
上清炭鉱は、先ほど
お話がございましたように、三十三年六月にもガス爆発で十一名の重傷者を出しております。わずか三年の後にまた今回の大きな事故でございます。ことにわれわれが疑問を深くすることは、今回の事故発生炭鉱は、豊州炭鉱と同一
経営者であるということでございます。九州筑豊炭田における鉱山王といわれる一家の
経営する山であります。それだけの資力を持ちながら、こういうようにしばしば事故を起こしておるということは、このことは、われわれとしても納得がいかないわけでございます。このことは、保安という意識がきわめて低いか、これを実行する意思がないことを示すものであります。このように、違反を繰り返し、
改善の意思のないものは、この際、罰則の厳正な適用を行なうことはもちろん、鉱業権を取り消す等、強硬な措置を
考えることも必要であると思いまするが、この際、
政府の
所見を承ります。
同時に、注意することは、
政府の怠慢、鉱山保安担当の方々の
責任の所在をはっきりすることでございます。炭鉱災害について、多くの場合原因の究明が中途半端に終わり、
責任の所在もあいまいになってしまって、多数の犠牲者を出しても
責任をとる者がない。災害は忘れたころに再発し、また騒ぎますが、いつの間にか忘れてしまいます。豊州炭鉱についても、まだ原因が明確にされず、
責任の所在もはっきりされておりません。今回は、一週間前に保安監督官が現場を検査したあとに起きておるわけでございます。このことは、保安監督官と会社側がなれ合いでやっている、そういう面があることを如実に暴露しておると言わなければなりません。検査に来ますると、会社側が保安状況のよい所だけを適当に見せて、その場を糊塗する。出先の保安監督官と会社のこのようななれ合いが事故発生の大きな原因と私は見ておるわけです。保安監督官は、労働組合の代表とも接触して、その意見を聞くことが必要であるが、そういうことは何らなされていない。私は、こういうような今日までの災害発生の経緯にかんがみまして、綱紀の粛正という点からも、保安監督行政上の
責任を明確に
政府はなさるべきであると
考えまするが、御方針を承りたい。ことに筑豊炭田のような老朽炭田におきましては、保安監督員の充実あるいはこれに必要な予算の措置、こういうことが必要であると
考えまするが、
通産大臣の
所見を承りたい。
また同時に、鉱山保安法によりますならば、労働
大臣は勧告権を持っておられますが、従来この種の災害発生を通じて、労働
大臣はこの勧告権の行使をどのようになさってこられたか、このことを承ります。
先ほど阿具根議員からも
お話がありましたように、本日の朝日新聞に載っておりまする小岩井鉱山保安局長の談話は、私は、今日の石炭
政策の半面をうがっておる見解かと見ております。炭鉱災害は、戦後、
昭和二十五年を最高に漸減いたしておりまして、三十四年には五百七十四人に減少しました。鉱山保安確保上喜ばしい傾向を示したのでございまするが、昨三十五年には六百十七人に逆戻りしております。最近の災害発生の状況からしますならば、三十六年度はさらに上回るものと見ております。一
産業の労働災害からこういう多くの人命が失われておるということは、文化国家として最大の恥辱だと私は
考えます。人命を保護し、生命を尊重することが民主
政治の根本でございます。御
承知の
通り石炭
産業はエネルギー消費構造の変革下にあって重大な危機に立っております。鉱業
合理化臨時措置法は過ぐる三十四国会において
改正され、
合理化事業団が発足し、炭鉱の
合理化、体質
改善に拍車をかけております。今日、石炭
産業の絶対的課題は、
昭和三十三年を基準として、三十八年度には販売炭価をトン当り千二百円引き下げることでございますが、これがこのまま中小炭鉱にはね返り、最近の事故発生の大きな原因をなしております。大手にあってもそうでありますが、ことに中小においては、
コスト引き下げ、
合理化の犠牲が、そのまま保安の軽視、人員整理、賃金引き下げに反映しております。池田総理は多年
通産大臣として、この辺の事情はよく御存じのはずでございます。災害防止、保安確保の観点からも、
政府の石炭
政策には大きな反省が必要になっておると
考えまするが、この際、総理のお
考え方を承ります。
石炭鉱業
合理化臨時措置法によりますと、
通産大臣は、毎年、石炭鉱業審議会の意見を聞いて、石炭鉱業
合理化基本
計画の実施をはかるために必要な
合理化実施
計画を定めることになっておりまするが、三十五年度の実施
計画がきまったのは昨年の十二月の末でございます。こういうようなことで
計画の遂行ができるでございましょうか。また三十五、三十六年度の予算措置、
財政投融資
計画でもって、千二百円
コスト引き下げという五カ年
計画の課題が実行できるかどうかを、この際、
通産大臣から承りたい。私たちの見るところでは、石炭業界の自主的
努力によって可能な
コスト引き下げの
限界は、せいぜい八百円前後であると見ております。従って、
コスト引き下げの目標達成のためには、
政府の積極的な石炭
政策が並行しなければ不可能でございます。
金利の引き下げ措置、開銀
資金の融資ワクの拡大、昨年度から実施しております
合理化のための無
利子貸付の
政府資金をもっと大幅に
増大すること、地方税について再検討を行なうことが必要であると思います。こういう総合的な施策の裏づけがなければ、石炭
産業の安定は不可能だと
考えまするが、
政府の
所見を承ります。
千二百円
コスト引き下げは、
政府の公約した重要な
産業政策でございます。貿易の
自由化に伴い最大の
影響を受けますものは、通産物資としては、石炭、非鉄金属でございます。ことに五年後、重油等競争エネルギーに競合する炭鉱の体質
改善のために、今申し上げたように、千二百円
コスト引き下げは絶対の課題でございまするが、この目標を達成しますためにも、
国鉄運賃、電力料金を初め、
物価の横ばいということが前提になっておるのでございます。しかるに、先ほど本議場で
質問がございましたように、
国鉄貨物運賃の一五%
引き上げはもう既定の事実になっておりまするが、
国鉄の
貨物運賃引き上げが
コスト引き下げにどういう
影響をもたらすか、この点を承ります。われわれの算定によりますると、
国鉄運賃の値上げは、貨車積みトン当たり七十一円に
負担増を加えるのでございます。これを全部炭鉱に負わせようとするのか。料金値上がりを生産
増大によって吸収させ得るお
考えでございましょうか。御
承知のように、石炭の生産数量は自主的に調整し制限しなければ、かえって市場を混乱し、石炭の自滅を早めるだけでございます。他の
産業に見られますように、生産性
増大によって
コスト高を吸収することはできないのでございます。
政府は、農産物等については、貿易
自由化に伴い慎重に対処することを考慮しております。また、農産物、工業原材料等に関しまして
政策料金を実施しております。少なくとも石炭
産業についても、当面、
政策料金を採用する必要があると私は
考えまするが、この際、総理の見解を承りたい。
国鉄運賃、電力料金等、
公共料金の値上げを全く炭鉱のみに負わしめようとなされるのでございましょうか。もしそうだとすれば、炭鉱の
合理化は不可能に陥り、その保安確保の面に中小炭鉱あげての閉山倒壊を招く結果になると
考えまするが、この際、総理の所信を承りたいと
考えております。
石炭
産業が国の基幹
産業として、将来ともその正当な地位を保つことが必要であるといたしますならば、
政府はこれに即応する具体的な裏づけの施策を講じてもらいたい。このことが頻発する炭鉱災害を未然に防止することであり、石炭
産業の安定をもたらし、よって民主的な労使
関係を確立するゆえんであると私は
考えますが、このことを
政府に強く訴えまして、私の
質問を終わることにいたします。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕