○大和与一君 私は
日本社会党を代表いたしまして、当面、
国民の最大関心事の
一つである
日韓会談の経過、
内容、将来の具体的対策について御
質問申し上げ、あわせて
政府の
所信をたださんとするものであります。
本論に入る前に、本日の
外務大臣の顔色は、ここから拝見いたしますと、よくないようであります。
憲法違反の大失言をした
松平大使のことや、ラオスや
コンゴーなど、困難な懸案をお持ちでありますが、昨日の新聞を拝見しますと、
外務大臣は、私のようなしろうとが
法律解釈をするのは「がら」ではないとおっしゃっておられる。私は、はなはだ失礼な言い分で、まことに恐縮千万ではございますが、
外交問題についても、しろうとであると思うのであります。しろうとにもよいところもあるが、最近外務省の中で、なぜか大臣に対する評判が悪いのであります。
一体これは何が原因なのか、日韓問題なのか、省内行政なのか、その他なのか、私も心配しているのでありますが、
総理大臣が
御存じであればお答えいただきたいと思います。
昨年九月、小坂大臣は韓国に参られましたが、韓国の
国民は、謝罪使節として迎えたのに、いんぎんな態度はなかったではないかと、不満の意を表明いたしておるのであります。当時は、自民党の与党の中においても、小坂独走は横暴であると、こういう
外相の渡韓について反対の
意見のあったことを、私も承知いたしております。韓国
政府とは、
一体どんな打ち合わせのもとに、謝罪はどんなことをなさったのか、
外務大臣のお答えを願います。
また与党内では、最近、日韓問題はそう簡単にいかない。だから、在外公館設置くらいをやって、あとはぼつぼつ話をしていけばよいではないか。貿易の方はもうかるのだから、社会党も
賛成しなさい。そういうような放言が、これまたもっぱらであります。結論はもう山が見えておって、こんなことになるのか。与党の総裁としての
池田首相の御
答弁を求める次第であります。
さて、本論に入りますが、第一に、なぜ
日韓会談の妥結をこのように急がれるのでありますか。十年もかかって話をしてきたが、まとまらなかったこの問題を、早急に解決しなければならぬ
情勢の変化とは、
一体何でありますか。私は、結論を先に申し上げますと、南北鮮の統一は、思いのほか
国民感情を溶け込んでいて、数年ならずして統一ができる。それが困るのは
アメリカだ。だから
アメリカは早く
日本に
日韓会談をやってくれと矢の催促でありましょう。
日本があえて火中の栗を拾うとは、
一体何事か。根本的にその
考え方を改めて、
日韓会談を即時中止することが、
日本国民の喝采を博するゆえんだろうと思いますが、
総理大臣はいかようにお
考えになっているか。
現在の韓国の張勉
内閣は不定安であると私は思うのであります。今年一月二十八日、韓国国務院の
国民世論調査によりますと、全国から抽出した三千人に対して、三十七項目にわたって
質問をいたしております。回答者二千三百九十三人の中で、対日国交回復反対が一七・五%、「時期が早過ぎる」が四・六%もあります。生活状態については、「革命前より悪い」が一四・五%、「同じ」が七三・一%で、
国民生活も安定しておりません。電力にいたしましても、やっと十九万キロワットであって、朝鮮共和国の十分の一程度であります。終戦直後には、京城の町に電灯がつかなくて、八里離れている仁川という港に駆逐艦を三隻横づけにして、発動機を回わしっぱなしにして、やっと京城市の電灯がついておったのであります。在日朝鮮人商工連合会から出した「南朝鮮
経済の破局と人民生活の零落」という資料によりますと、李政権のときの公式発表によれば、失業、半失業者六百六十万人、お米の豊庫といわれる南鮮に、糧食のない、絶量農民が三百万人もいると聞かされては、私は生き地獄ではないかと同情を禁じ得ないのであります。昨年の秋に韓国から帰った伊関
アジア局長は、張勉
内閣は、
現状ではまだもろい、
経済発展はその緒についていない。多かれ少なかれ李政権につながっている実業家は、汚職に対する
国民からの追及が激しくて何もやっていないという、こういう
意味のことを言われた。朝鮮共和国からの統一への働きかけは、自信満々として、
経済交流を主眼にした連邦
政府の具体的提案までしております。これに対して、
国民の中だけでなく、保守党の中からも、この提言に耳を傾けるべきである、資源の豊富な北と手を握らなくては朝鮮民族の真の幸福はないとの声が強く起こっております。僚原の火のように高まってきた
アジア、アフリカの自主独立ののろしは時代の大きな流れであって、このとき、この会談を、早急に無理じいに結論を出そうとすることは、全くの間違いであります。
池田首相は昨年十二月十五日、兪韓国首席代表と会われて、
日韓会談をこの際ぜひまとめたいという気持は同感であるが、両国間には過去長年にわたる複雑なこじれた問題があるので、急いでも無理であろうから、時間をかけてしっくり話し合いたいとおっしゃっておられます。それが真実であるならば、この際、大悟一番されまして、日朝両民族の永遠の平和の礎石を築くために、
日韓会談は一応白紙に返して、南北朝鮮の統一への激しい胎動を正しく見ながら、慎重に善処するお
考えはないか。明快な御
答弁をいただきたいのであります。(
拍手)
第二に、財産請求権についてお尋ねいたします。
一つには、
政府は、衆議院
外務委員会で細迫議員の
質問に答えて、
日本の対韓財産請求権の放棄は三十八度線以南の部分だと答えておられますが、朝鮮人民共和国には請求権があると
考えているのか、これが第一点。
二つには、放棄したのは南の部分だけである、韓国からの請求は全朝鮮だと認めておるのは全く矛盾であるが、法理論としての
所見をお聞きしたい。
三つには、
日本では対韓財産請求権を放棄したとしているが、
アメリカ占領軍が南朝鮮で
日本の私有財産まで没収したのは、へーグ陸戦法規第四十六条の「私有財産ハ、之ヲ没収スルコトヲ得ス。」に明らかに違反しておるが、
法律としての回答をしてほしい。
四つには、かりに米占領軍が旧敵国人の私有財産を処分できても、処分された財産の所有者は、処分の結果生じた収益については請求する権利があると思うが
一体どうか。
五つには、放棄したという対韓請求権はどれくらいに
一体見積もっておったのか。
六つには、韓国からどれくらいの財産権を請求してきているか。
以上六点の
質問には
小坂外務大臣にお答えをいただいた上で、それでは今日、朝鮮人民共和国から財産を請求してきたら
一体どうするのか。これまた明快な、
国民のだれもが納得する御
答弁を
総理並びに
外相にお願いしたいのであります。
第三には、
日本からの
経済使節団の韓国行きが羽田出発三十分前に中止になりました。前日には韓国
政府の大臣が歓迎の
言葉を発表したのに、これの真相は
一体どうなのでありますか。韓国の
国民は、
日本の独占資本の進出をおそれることも大きな要素ではありますが、それよりも、南北鮮統一への悲願は、おそくも数年を出ずして達成されるであろう、それを一番おそれているのは
アメリカであり、その
アメリカに追随しているのが
日本であるならば、要らぬおせっかいはやめてもらおうじゃないか、朝鮮は朝鮮人の朝鮮であるという
国民感情がほうはいとして起こりつつあると思うのでありますが、首相、
外相の明快な御
答弁をいただきたいのであります。
第四には、朝鮮民主
主義人民共和国
政府に対してどのようにお
考えになっておられるのでありますか。鶏三羽に三千万ドルの賠償をしたと、今でも
国民が満々たる不信の念を持っているベトナムヘの賠償、その後ベトナム国の民族の統一に何
一つもプラスにはなっていない実情ではありませんか。その反省は
政府になければならぬし、朝鮮は、首相のきまり文句じゃありませんが、一衣帯水のかなたであります。
日本とも歴史的に同種同文同俗であって、ベトナムとの比ではありません。一衣帯水は韓国だけではありません。人民共和国も同じであります。次官
会議で勝手に北朝鮮とは貿易をしないときめたのだけれども、
政府もその
内容的には取り扱いとしては弾力はあるのだと認めておられます。まことにいいかげんな取りきめによって、貿易は香港経由で一部なされております。去る一月十八日、
外務大臣は、わが党の成田政審会長と会われた際に、直接貿易がまだできぬということは非常に不利益だと、
日本の不利益を十分に御自身でお認めになっておられます。この際、次官
会議の申し合わせと今日の
情勢も大いに変わっているわけでありますから、次官
会議の
決定をやめて、閣議で北朝鮮との貿易拡大の確認をやる御意思がないか。お答えを願います。あるいは一歩譲って、文化交流に、たとえば崔承喜舞踊団を呼ぶことや、あるいはメーデーに労働者代表が
参加することや、
経済交流のために
経済使節団をこちらに呼ぶとか、かねて連絡要請があったと思うのでありますが、今年は
一つ、首相の言う積み重ね方式、日中問題についてはそういうお
考えもあるように承っておりますが、この朝鮮人民共和国との交流についても
一つ一つ今年は実行する、したいという
考えがあるかどうか、お答にいただきたいと思うのであります。
共和国
政府が、電力、鉄、金等に豊富な資源を持っておりますが、これに反して韓国は米だけと言っても決して
過言でありません。北に工業が勃興し、水豊の発電、茂山の鉄、興南の窒素肥料、黄海の鉄など見るべきものがあります。そうして社会
主義体制の、大金持のいない国であります。この資源と工業力のもとでは、
国民生活は南と比べて一年ごとに発展をし、充実をすることは、火を見るよりも明らかであります。あなたの方の党の岩本信行氏の、率直な、驚いた
報告も含めて、北朝鮮の
国民生活の安定、政権の安定において大きな開きがあることを、常識的にも認めざるを得ないと思うのですが、首相、
外相の御
所見を伺いたいと思います。
これを認めた上に立てば、
日韓会談は急がずあせらず、当面の問題である李ライン、竹島、漁業等々の問題と真剣に取っ組んで話し合いをすることが、韓
国民のためであり、
日本のためであり、早急に解決をすることは、朝鮮民族の悲願である南北鮮の自主的な統一を妨害するものと断定せざるを得ないのでありますが、首相の明快な御
答弁を伺いたいと思うのであります。
第五に、新聞の報ずるところによりますと、
日本の約四千六百八十九万ドルの貿易じり未決済、いわゆる焦げつきを当分の間たな上げすることになったと書いてありますが、
ほんとうでありますか。どうしてこの債権を取り立てようと
考えているのか。具体的な方法を
外相から伺いたいと思うのであります。
第六に、一九五二年二月六日の
日韓会談において
日本側が請求した金額と
内容を詳細に御
報告願います。それを請求したとたんに決裂をした、そういう因縁つきの会談であったからであります。第七に、一九五八年に行なわれた
日韓会談において、韓国側は総額八千億円・米ドルにして二十二億二千二百万ドルを
日本側に要求したようでありますが、
ほんとうでありますか。違っておれば、その正確な金額及びその
内容を御
答弁いただきたいと思うのであります。その
内容として八項目の条件があったようであります。たとえば太平洋
戦争中の韓国人徴用労務者未払金及び弔慰金や旧朝鮮総督府鉄道局共済組合及び同在日財産返済についてなどのようでありますが、お示しいただきたいと思うのであります。
第八に、首相は六月ごろ
アメリカの新大統領ケネディ氏に会いに行くようであります。これに関連して、
一つには、それまでに日韓問題を調印をしておみやげとしなければならないのか。たとえば前例は、前岸
内閣がアイク訪日と安保条約の強行採決を合わせたように、偶然ではないのでありますから、そういう
考えを持っているのか承りたい。
二つには、
アメリカは、いつ終わるという見通しもないのに、毎年二億ドルもの
経済援助を韓国に続けるのは、もうとてもやっちゃおられない、たえがたいと
考えているようでありますが、これに伴って、ドル防衛
措置とからんで、その肩がわりを
日本にさせたいという
内容を私は
日韓会談は明確に持っていると思うのでありますが、ケネディ大統領と会って、この問題についてどういう態度であなたは話し合いをしようとしているのか、御
所見を承りたいと思います。
三つには、
アメリカは三十八度線の冷戦の壁を守り抜くために、初めは日韓
経済の取りきめをやってもらって、やがてはもう物理的に
軍事同盟的性格に切りかえていく野望を持っていると、私は断定したいのであります。
日本政府は、朝鮮の人民や
国民から恨まれて、
アメリカに何の義理立てをする必要があるのか。
日本の自主独立
外交とは
一体いかなるものなのか。ケネディに会う首相の
日本国
総理大臣としての信念と
日本の自主独立の
外交の大原則について、私は明快な御
答弁をいただきたいのであります。