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高田なほ子君 私は
日本社会党を代表して、頻発する
右翼テロ事件に関し、
政府当局の見解をたださんとするものであります。
質問に先立って、去る二月一日、おそるべき
右翼の
凶刃のもとで、けなげにも
最後まで御
主人をかばいながら、ついに母としての生涯を無惨に終わられた
丸山かねさんに対し、心からなる哀悼の意を表するとともに、同じ刃のもとに
重傷を負われた
中央公論社長夫人嶋中雅子さんの一日も早い御全快を、皆様とともにお祈り申し上げたいと存じます。(
拍手)
昨年六月、
右翼テロの
凶刃は、
日本社会党顧問河上丈太郎氏に対し、七月には岸前
首相、続いて三たび、ついに
浅沼委員、長は
池田首相の眼前で
右翼の
凶刃に倒れました。この
事態に対し
国民は憤激し、
国会は
暴力排除の
決議を行ない、
政府は再びかかる
事態の起こらないことを誓い、万全の
措置をとることを
国民の前に明らかにいたしました。しかるに、それからわずかに三カ月、
政治テロは
言論に対する
テロにまで発展し、問題の
中央公論の編集とは直接何らの
関係もない無防備の女性二人までもが、
山口少年と
年令も同じ
愛国党員の
少年の手で殺傷されるに至りました。この事実は、あげて
池田内閣の重大な
責任といわなければなりません。(
拍手)本
事件の真相については一応の御
報告をいただきましたが、しばしば私
どもがテレビやラジオを通じて聞かれる一人一殺
主義を奉じる
右翼団体の
存在というものが、はたして
民主主義社会に許されるべき
存在なのであろうか。御
調査中であるといわれる
右翼団体の
現状は一体どうなっているのか。本
事件に対しては、十分に危険が予知されたと想像できることに対して、こうした悲劇が起こったことに対しては、いかに弁解なさろうとも
警備上の手抜かりの
責任は免れないのではないかと存じます。
治安維持に対する当面の
責任を明らかにせられることを望むのであります。人を殺して問題の
解決をはかろうとするこの種の
暴力は、戦争という高価な犠牲の上に築かれた
民主主義への挑戦であって、私
ども断じて許すことのできない罪悪であると存じます。
法秩序の
維持を強調される
池田内閣は、この頻発する
右翼テロ行為の
発生原因をいかように分析されておられるのか、その
発生原因はどこにあるのか、またこの
解決のためにいかような決意をお持ちになるのか、まず
総理大臣に対して
責任ある御
答弁をわずらわしたいと思うのであります。
池田首相は、
浅沼刺殺事件に際して、世論騒然たる中で、
山崎国家公安委員長を辞任させ、
総理みずからは直接
政治責任はないと言明をされました。
法律的にはあるいはかような解釈も成り立つかもしれません。しかし、かかる頻発する
右翼テロ事件の
失態に対して、だれが
最高の
政治責任を持つのでありましょうか。今日なおもって
最高責任の所在さえ不明確な、あやふやな
政府の
態度こそ、
政治不信の要因であり、
右翼助長の温床をつちかっていることを、強く指摘しなければなりません。(
拍手)憲法の六十五条は、明らかに
行政権は
内閣に属することを明記し、同じく六十六条は、また
国会に対する
内閣の
連帯責任制を明記しております。
内閣の首長たる
総理大臣は、当然
行政権の
失態に対して最終の
政治的責任を負わなければならないはずであります。しかるにこれらの
責任を
国民の
良識に転嫁するがごときは、私
どもの納得のいかざる点であり、
政府の
責任回避が、どこまで本気であるのかということについて、非常な疑問を持たざるを得ないのであります。人命の危機、
社会の不安を一掃するために、本
事件の最終の
政治責任の所在をこの際明確にされることを要求をいたします。
次に指摘したい点は、理由の
いかんを問わず人命を殺傷する行為は徹底的に排除されなければなりません。
判断力に欠ける
少年に対して、
テロ行為を教唆、扇動、幇助した憎むべき
背後関係をうやむやにし、刑法上の共犯のあるなしをのみ重視し、
捜査途中に単独犯を認定したり、この認定の直後に
山口少年を自殺に追いやった
浅沼事件の終結のごときは、私は
当局の
態度としてはまことにふに落ちないものでございます。(
拍手)これらの
当局の
態度に対して、一番大いなる
拍手を送っておる者は一体何者でございましょうか。本
事件に関してもかかる
失態のないことが明言されるでありましょうか。
法務大臣の
責任ある御
答弁を望むものであります。一体このような複雑な
背後関係を抜きにしては、どのような
根本対策があると申しましても、何の
解決のわざにもならないと思います。
総理は全
責任をもってあらゆる
背後関係の究明に当たる用意があるかないか、この点をあらためてお尋ねをしたいと存じます。
さらに、この種
暴力を助長する要因は、
右翼と政界、経済界との結びつきであります。
昭和三十四年三月から六月まで、政治資金規正法に基づいて届け出た
右翼団体の資金中には、八幡製鉄、小野田セメントを初めとする大手筋二十五社、回しく七月から十二月までに、同様大手筋の寄付は五カ月間に百九十三万八千円に上っていると伝えられております。さらに三十五年上半期には一そう増加して、大手筋五十二社にも上っております。あまつさえ、一部経済界では
右翼ムードを賛美する声が聞かれておりますが、このおそるべきムードに対してどのような方策をおとりになるのか、
関係大臣にお尋ねをいたします。
なかんずく、
首相にお尋ねをしたいことは、まことに申し上げにくいことでありますが、政界との
関係についてであります。政治資金規正法に基づいて届け出たといわれる、一部に発表された資料によれば、
昭和三十四年五月二十一日、自由民主党は護国団に一万円の寄付をしています。三十四年七月四日、自由民主党は
治安確立同志会に十万円、同じく十一月五日、天皇中心会に一万円、同じく三十四年一月十二日、
池田首相の後援会である宏池会が、大
日本菊水会に五千円、四月十一日には頭山勢に五千円、四月二十八日には護国団広島本部、五月七日には大
日本国民党、六月四日には綜合文化協会等、一連の
右翼団体と目されるところに寄付をせられております。政界との暗い結びつきの一端をうかがうことができて、まことに暗然たる気持がいたします。何らかの事情はあったにしても、今日、結果として
右翼横行の一翼をになったという
総理の道義的
責任は、きわめて重大であると言わなければなりません。(
拍手)この際、はなはだ申し上げにくいことを私が申し上げましたのは、特に公党の名誉のために、この真相の釈明を求めるとともに、との根源を断ち切るために重大なる決意を求めるものでございます。公安
調査庁の見解によれば、
破防法に基づいて
調査をしている
右翼団体があるというが、いずれもその資金は篤志家のカンパで運営していると述べています。このカンパの出所及び渡し先をこの際明らかにせられたいのであります。昨年十二月、参議院法務委員会において、わが党の亀田委員の資金源追及に対して、
内容は、
関係者のうち選挙に立候補しておる者もあるので公表できないと、ついにこの点を明らかにしませんでした。また、
法務大臣は、刑法上の罪を伴うような性質の金がむしろ大きな資金源になっておるのではないかと、はなはなだ示唆に富む
答弁がありました。この
答弁こそ問題ではないでしょうか。一体、刑法上疑問のあるような手段で金を集めるような行為そのものが白昼許されてよいものであろうか。
当局がこれを放置してよいものであろうか。私はこの点について、特に政治資金規正法との関連において、
法務大臣から十分なる理由をお尋ねするとともに、本問題に対する抜本的な
対策をお尋ねするものでございます。
次に、警察と
右翼の結びつきについて、
首相は、新たなる決意をもって臨むことを表明されておりますが、あらためて御
所見をお伺いしたいのであります。昨年十二月十五日、殺人現行犯
山口少年の
国民葬に際し、警視庁の竹川、東海林の両警部は、香典を持って参列をしたと伝えられていますが、その真相はどうでありましょうか。かりに私上の交際だとしても、
暴力の根絶を期さなければならない警察のあり方として許されてよいものでありましょうか。
国家公安委員長はこの
事態を何と解釈せられるのか。民主警察のあり方についての明快なる御
答弁をわずらわしたいものであります。
また、昨年の六月十五日、参議院通用門付近でデモ行進中のキリスト者、新劇人、一般人の静かな列の中に、こん棒をふるってなぐり込みをかけ、八十余名に重軽傷を負わせた維新行動隊と称する
右翼暴力団は、その隊長石井一昌ら二十名が起訴され、現在公判が行なわれておりますが、その第八回公判廷での石井発言中に、「私は警察の手先をしたのだ」。中略、「われわれがこういうことをやるについては慎重に警察に連絡をした。
事件の前日に警官を護国塾に呼んでビールを飲ませた。そのとき
社会党の田中稔男代議士をやっつける了解ができたはずだ」、と発言して、世間をあっと言わせています。もちろん、これは審理中の問題でありますから、事の真意をこの場で追及しようとは思いませんが、もし、これが真実であるとするならば、まさに無警察、暗黒政治そのものではないでしょうか。警察の厳正中立、憲法を中核とした
責任政治の確立こそ、
治安維持の要諦でなければならないと存じます。この実現のための決意を
首相にただすとともに、これの具体的方策について詳細なる御
答弁を
法務大臣及び
国家公安委員長にお尋ねをしたいと存じます。
最後に申し上げなければならないことは、もともと、性善なる
少年が、愛情に恵まれない
家庭のゆえに、あるいは絶望し、
社会の冷酷さに抵抗して、あるいは苦悶し、反転し、こうした純真な
少年たちが、これらの環境ゆえに、オオカミの手先になって
凶刃をふるうおそれのある危険な環境に置かれている、いわゆる
右翼暴力団の直接行動隊と目される十七才から二十五才までの
青少年は、今日全国に千五百名を数えておりまして、今まさに罪の淵に立たされようとする、これらの
社会の被害者である
少年に対して、今直ちに政治は愛の手を伸べなければなりません。寸刻も許さず、これらの
少年に対する具体的な補導の手が伸びなければなりません。私は、悪の
背後の糾明とともに、現下のこの
急務を忘れたのでは、決して
池田内閣の愛情ある政治はないと
考えるわけであります。本
事件を前に心痛む全国の母親のために、将来のわが子の仕合わせを願う母親たちのために、
政府はもっともっと
青少年対策、なかんずく、
青少年犯罪対策に対して、文部省における
青少年犯罪対策費三十一万円というような、でたらめなやり方ではなく、本質的な取り組みを強く要望し、その具体策を詳細に御説明いただくことを要求いたしまして、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕