○
衆議院議員(
門司亮君) ただいま
富田議員から
提案理由についての
説明がございましたので、以下、これに対しまする
補足説明を申し上げたいと思います。
補足説明は逐条的に申し上げて御了解を得たいと思います。
第一条は、本
条は本法の
目的を掲げたものでございます。
本法の
目的は、究極において、
わが国の
民主主義の擁護に資することにあるのでございます。そのためには、
政治上の
主義もしくは
施策または
思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する
目的をもってする
暴力行為を
防止するために必要な
規制措置を定めるとともに、これらの
行為に対する
刑罰規定を補整して対処することといたしたのであります。
政治上の
主義とは、
資本主義、
社会主義、
共産主義のごとく、
政治によって実現しようとする比較的に基本的、恒常的、一般的な原則を意味するものでございます。
また、
政治上の
施策とは、国民皆保険のごとく、
政治によって実現しようとする比較的に具体的、臨機的、特殊的な
現実的方策を意味するものでございます。
思想的信条と申しておりますのは、
思想上の信念のことでございまして、憲法第十四条、第四十四条
国家公務員法の第二十七条、
労働基準法第三条に
規定する「
信条」より宗教上の信仰を除いたものと解されるものと考えておるのでございます。
推進するとは、自己の抱懐する
主義もしくは
施策または
信条についてその実現をはかることでございます。
支持するとは、
他人の抱懐する
主義もしくは
施策または
信条についてその実現に協力することでございます。
反対すると申しておりまするのは、
他人の抱懐する
主義もしくは
施策または
信条について、その実現を拒むことでございます。
第二条は、本
条は本法の
解釈適用について
規定をいたしているのでございます。
本法は、国民の
基本的人権に重大な関係を有するものでございますから、
民主主義の擁護に資する
目的を達成するためにのみ適用すべきものであって、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない旨を
規定したものでございます。すなわち、
本法の
解釈適用にあたっては、健全な
社会通念に従って各条項を厳格に
解釈適用しなければならないことといたしているのでございます。
第三条は、
本法による
規制及び
規制のための調査の基準について
規定をいたしております。
すなわち、
規制及び
規制のための調査の基準を第一条の
目的達成のための必要の限度において行なうことといたしまして、正当な
団体活動及び適法な請願、陳情を
制限するようなことがあってはならないといたしたものでございます。
第四条は、第一項に
政治的暴力行為、第二項に
扇動、第三項に
団体、第四項に
団体の
活動の各定義を
規定したものでございまして、これらの定義は、
本法の
基礎観念でございます。
本法は、本条に定める
団体が本条に定める
政治的暴力行為を一定の条件において行なう場合に、その
団体に対し必要の
規制措置をなすとともに、かかる
政治的暴力行為に関する
現行刑罰法令を補整し、これを犯した個人もまた取り締まることとしたものでございます。「
政治的暴力行為」の観念は、行政上の観念で刑事上の観念ではございません。すなわち、それは
団体に対して行なう
規制という
行政処分の原因となる事実でございます。この観念で
現行破壊活動防止法及び
刑法その他の
刑罰法規の
規定する
行為を基礎としてのその
教唆、
扇動等、現下の情勢にかんがみ
本法の
目的達成上
必要最小限度の補整を新たに加えたものがございまして、本条の第一項に掲げられたものでございます。すなわち本条第一項の中で第一号より第六号まではいずれも
現行刑法その他
刑事法により
犯罪と定められている
行為であるが、第七号と第八号は、第一号、第二号及び第六号に関し新しい
取り締まり類型行為を定めたものでございます。この新しい
類型行為は、他面、
犯罪行為とも
規定し、これを犯した個人を処罰することといたしているのでございます。
第一号は
殺人第二号は
傷害第三号は逮捕、監禁、第四号は強要、第五号は
暴力行為等処罰に関する
法律に定める
行為で、特に
説明を必要としないと思います。
第六号ないし第八号については、新しい
規定でございますので
説明を加えることといたします。第四条第六号は、
内閣総理大臣官邸及び会期中の
国会議事常並びにそれらの構内に
暴力的手段により不法に
侵入する場合を
規定しているものでございます。すなわち、
不法侵入の形態として泰行もしくは
脅迫をして
侵入する場合、
建造物もしくは器物を損壊して
侵入する場合、さく、へいもしくは門を乗り越えて
侵入する場合に限定しております。しかも、このような
侵入は
現行法でも当然
犯罪となるものでございます。
従って、本
規定自体によっても平穏な請願、陳情その他適法の
団体活動がいささかも
制限を受けるものでないことは明らかにしたものでございます。
本号の「不法」にと申しておりますのは、
法律上正当な理由がないことを言うのであります。「
国会の会期中」とは、
国会の常会(憲法第、五十二条)、
臨時会(憲法第五十三条)、及び
特別会(憲法第五十四条第一項)の会期中並びに参議院の
緊急集会(憲法第五十四条第三項)中をいうのでございます。「
建造物」とは、家屋その他これに類似した
工作物で、土地に定着し、人の
起居出入に適する構造を有するものをいうのでございます。「器物」とは、
器具物件をいい、本号の場合、
建造物を除いたその他の物と解され門、へいのごときはそれに当たるかと存じます。「さく、へい」は、いづれも囲障であり、遮断の用に供せられるものでございまして、両者の相違をしいて求めれば、さくはもっぱら遮断の用に供せられるに対し、へいは遮蔽の用をも兼ねている点があげられるかとも存じます。
第四条第七号は、
特定の者が
政治上の
主義、
施策または
思想的信条を推進し、支持し、またこれに反対する
目的をもって人を殺すおそれのあることをあらかじめ知りながら、その
特定の者に継続または反復して、文書、図画または言動などの方法により、
特定の
他人を殺すことの正当なること、または必要なることを主張し、その
特定の者が、その主張の影響を受けて
特定の
他人を殺す
行為の実行をなした場合を
政治的暴力行為と
規定しているのでございます。
このように本号は、単に
殺人の、
正当性または
必要性を主張する
行為だけを取り上げたものではなく、その主張の影響を受けて
特定の
他人が
殺人の実行をするという結果の発生を見た場合に限定して取り上げたのでございますが、その発生した結果は、
殺人の既遂たると未遂たるとは問わないのでございます。「
特定の
他人を殺すことの
正当性又は
必要性の主張」とは、
特定の
他人を殺すことが正しいことまたは必要であることを主張することで、これは
現行刑法上
教唆にも当たらずまた
扇動でもなく、その
行為の本質は、
宣伝行為とのみ見るべきでございますが、
宣伝行為であるから、その解釈もおのずから一定の限界のあることは申すまでもございません。
また本号の「
特定の者」とは、もちろん一人のみならず二人以上の多数者を呑んでいるが、要するに、客観的にその他一般の人々と容易に区別され得る一人または人の集まり意味していると解するものでございます。これも無
制限でなく、人を殺す
行為を行なうおそれのあることを予見しながらという条件がございますので、その範囲は限定されていると解すべきであると思います。また「
特定の
他人」とは、一人のみならず二人以上の場合も含まれているが、これも客観的にその他の一般の人と区別が相当具体的に明確化されていなければならないと考えられ、その明確化は、
殺人という
行為の実行性との関連で定まってくるものと解するものでございます。
「主張する」とは自己の意見として表明することでございまして、主張する方法としては、文書、図画、言動をあげているが、
行為として文書の頒布、掲示、図書の回覧、講演などが考えられるのでございます。
第四条第八号は、
殺人等についての予備、陰謀、
教唆、
扇動を新たに
規定したものでございまして、「予備」とは、
特定の
犯罪の準備
行為を申すのでございます。
「陰謀」とは、二人以上の間においてなされる
特定の
犯罪を行なうことの謀議でございます。
「
教唆」とは、
他人をして一定の
犯罪を実行する決意を新たに生じさせるに足る
行為をなすことをいうのでございまして、本
法案は、
教唆を独立
行為として定めたものであるから、相手方が
犯罪実行の決意をなし、または
犯罪の実行に着手することは要しないのでございます。
第四条第二項には、
扇動の意義を
規定してあって、これは
破壊活動防止法と同様でございます。第四条第三項は、
団体の定義を
規定してたものでございまして、
破壊活動防止法と同様でございます。第四条第四項は、
団体の
活動の定義を定めたものでございまして、それは一つは、
団体の意思を決定する
行為、二つは、
団体の意思に基づき、もしくは
団体の
主義、方針、主張に従ってする
団体の
役職員または
構成員の
行為をいうものでございます。この第四項の
団体の
役職員、
構成員という概念も、
破壊活動防止法のそれと同一でございます。
第五条は、
政治的暴力行為が
わが国の
民主主義の発展を阻害することにかんがみまして、主権者である国民各日が、その
行為の発生を進んで
防止するよう努めなければならない旨を
規定したものでございます。
第六条は、第五条の趣旨を受けたものでございまして、
政治的暴力行為が行なわれるおそれがあることを知った国民は、進んで
警察署に対し、これを通報する義務を課した
規定でございます。しかし、この通報義務は、もちろん主権者たる国民の自発的意思に待つべきものであって、罰則をもって強制すべきものとは考えられないから、違反に対しては罰則は考えていないのでございます。第七条は、
公安審査委員会の行なう
規制処分のうち、
政治的暴力行為を行なった
役職員または
構成員に、
団体のためにする
行為をさせることを禁止する処分の条件、内容及び効果について
規定しているのでございます。
すなわち、本条第一項は、
団体の
役職員または
構成員が、当該
団体の
活動に関し、または当該
団体の
目的の実現に資するため、
殺人、同未遂、その予備、陰謀、
教唆、
扇動のいずれかの
行為を行ない、または
特定の者が
殺人を行なうおそれがあることを予見しながら、その者に対し、継続または反復して、文書もしくは図画または言動により、
特定の
他人を殺すことの
正当性または
必要性の主張をして、その
特定の者がこの影響を受けて
殺人を実行するに至ったときは、
公安審査委員会は当該
団体に対し、六カ月をこえない期間を定めて、当該
役職員または
構成員に当該
団体のためにする
行為をさせることを禁止することができるとの
規定をいたしたのでございます。
第二項は、
団体の
役職員または
構成員が、当該
団体の
活動に関し、または当該
団体の
目的の実現に資するため、
傷害、その
教唆、
扇動、逮捕、監禁、強要、同未遂、
暴力行為等処罰に関する
法律第一条第一項の
集団的暴行脅迫、
器物損壊または
国会等への
暴力的
侵入、同未遂、その
教唆、
扇動のいずれかの
行為を行なったときは、
公安審査委員会は、当該
団体に対し、四カ月をこえない期間を定めて、当該
役職員または
構成員に当該
団体のためにする
行為をさせることを禁止することができる旨を
規定したものでございます。
第三項、第四項は、右二項の処分の履行を確保するため設けられました
規定でございまして、この処分が効力を生じた後は、当該
役職員または
構成員は、当該
団体のためにする
行為をしてならず、またそれ以外の
役職員または
構成員は、処分の趣旨に反する
行為をしてはならない旨
規定し、処分の履行を確保せんとするものでございます。ただし、当該処分の効力に関する訴訟に通常必要とされる
行為をすることは、例外としてなし得る旨の
規定をいたしてあるのでございます。
第五項は、右二項の脱法
行為を禁止したもので、当該
団体の
役職員または
構成員は、いかなる名義においても右二項の
規定による禁止を免れる
行為をしてはならない旨を
規定したものでございます。
本条第一項の「
団体の
活動に関し」とは、
団体の
活動に関連しての意でございをして、
団体の
活動に関連しての意でございまして、
団体の
活動としてなされる場合は、もとよりこれに包含されるものでございます。「当該
団体の
目的実現に資するため」とは、当該
団体の
目的の実現をはかりまたは実現を容易ならしめるための意でございます。また「
団体のためにする
行為」とは、
団体活動に参与する
行為、すなわち、
団体の意思決定に参与することはもちろん、
団体の意思決定に基づきなす
団体活動に参加する一切の
行為をいうのでございます。
第八条は、
団体に対する
活動制限の処分につきましてその要件、内容及び効果を
規定したものでございます。
団体に対する
活動制限の処分の要件と内容は、第一項と第二項の場合の二つに分けられておるのでございます。これは
殺人に関する
行為とその他の
行為とを区別して取り扱っているものでございます。
第一項の場合は、
殺人に関する
政治的暴力行為に関する場合で、
団体が第四条第一項に
規定する
政治的暴力行為のうち
殺人及びその予備、陰謀、
教唆、
扇動または
殺人の
正当性、
必要性の主張をする
行為を行ない、または
殺人の未遂を行ない、これに継続または反復してさらに
団体の
活動として何らかの
政治的暴力行為を行なう明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときでございまして、この要件に該当するときは、
団体活動の
制限ができるものといたしたのでございます。処分の内容としては、すでに行なった
政治的暴力行為の
行為形式との関連において六カ月の範囲内で
集団示威運動等の集団行動や
機関紙誌の発行を禁止することができることといたしました。
第二項の場合は、
殺人に関する以外の
政治的暴力行為を原因として行なう場合について定めたもので、
団体が継続または反復して、
本法第四条に
規定する
政治的暴力行為のうち
傷害、同
教唆、
扇動、逮捕、監禁、強要、集団的
暴力、
脅迫、
器物損壊、
国会への
不法侵入、同
教唆、
扇動を行なうかまたは強要、
国会等への
不法侵入の未遂を行ない、これに継続または反復して将来さらに
団体の
活動として
政治的暴力行為を行なう明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときであって、この要件に該当するときに、
団体活動の
制限ができるものでございます。処分の内容は、第一項の場合と同様であるが、期間が四ヶ月以内に限定されている点において相違があろうかと存じます。
第九条は、第八条により
団体活動の
制限の処分を受けた
団体に対する
業務計画等一定の事項の届出義務の
規定でございます
届出義務者は、
活動制限団体の代表者もしくは主幹者または会計責任者でございまして、届出の内容は、
禁止期間中の収入、支出を含む
団体の
業務計画その他の事項でございますが、その詳細については政令の
規定するところに譲ったものでございます。届出先は、当該
団体の主たる事務所の所在地を管轄いたしまする公安調査局長または地方公安調査局長であるが、管轄区域については、
公安調査庁設置法に
規定されているところでございます。
第十条は、
規定処分の一である解散処分の要件を定めたものでございます。
解散の要件は、
団体が
団体の
活動として、
政治上または
思想上の
目的をもって
殺人を行なったかもしくはその未遂に終わった場合、または
政治上または
思想上の
目的をもって
殺人の
教唆、
扇動をして、現実に
殺人行為を行なわせた場合、将来もさらに継続または反復して
団体の
活動として
政治上の
目的で
殺人行為を行なうか、その予備または陰謀をなすかもしくは
教唆、
扇動をなす明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由のある場合でございます。解散の指定をなす機関は
公安審査委員会でございまして、その手続については、
破壊活動防止法の
規定を準用することといたしました。
第十一条、本条第一項は解散処分の効果を
規定したものでございます。
解散処分の効果が生ずると、本条によって、一定の
行為が禁止されます。
禁止される者は処分の原因となった
政治的暴力行為が行なわれた日以後処分を受けた
団体の
役職員または
構成員であった者で、禁止の
行為は、処分を受けた
団体のためにするいかなる
行為も含まれるのございますが、例外として、処分の効力に関する訴訟、または処分を受けた
団体の財産または事務の整理に通常必要とする
行為は除かれておるのでございます。「
団体のためにする
行為」とは、
団体の
役職員または
構成員が、直接
団体の存続、発展、再建のために行なう一切の
行為をいうものでございます。
第二項は、第一項の処分の効果の脱法
行為をあげたものでございます。いずれも罰則を伴うものでございます。
第十二条は、解散処分が訴訟手続によって取り消しまたは変更ができなくった場合の効果を
規定したものでございます。
第一項は、法人が訴訟手続によって取り消しまたは変更ができなくなった時に解散することを定めたものでございまして、解散処分は
公安審査委員会で決定され、官報に公示されると効力を生じるが、訴訟手続によって争う道が残されているのでございます。本項は訴訟手続によって争い得ないことが確定した場合でございます。
第二項では解散処分を受けた
団体の財助産整理義務を
規定し、第三項では財産整理終了時における
団体役職員のてん末届出義務を
規定したものでございます。
第十三条は、
本法では
破壊活動防止法の一部の
規定を準用することを
規定するとともに、準用の場合の読みかえ
規定を定めたものでございます。
本法では
団体のためにする
行為の禁止(第七条)のほか、
破壊活動防止法と同様、
団体活動の
制限(第八条)、解散の指定(第十条)の
規定が置かれているので、これらの
規制の手続を
規定する必要があるが、
規制の手続は破防法と同様
公安調査庁長官の請求により公安、審査
委員会で行なうことになっているのでございますため、
本法で再び破防法と同様に
規定することを避け、すべての手続
規定を準用して読みかえることといたしました。そのため破防法第三章破壊的
団体の
規制の手続、第四章調査、第五章雑則(第十一条から第三十七条)の
規定をすべて
本法で準用することといたしたのでございます。破防法第三竜破壊的
団体の
規制の手続に関する
規定を準用することにより、
本法の
団体のためにする
行為の禁止(第七条)、
団体活動の
制限(第八条)及び解散の指定(第十条)の処分をなす場合の手続はすべてこれによることといたしました。
さらに第四章調査は、
規制のための公安調査官の調査権などについて
規定しておるのでございまして、第五章雑則では、公安、審査
委員会の決定に対する裁判の提訴により
委員会の決定が取り消されたとき
公安調査庁長官が、その裁判を官報に公示する義務や法務大臣の
国会に対する規則状況の報告などを
規定したものでございます。
第十四条から第三十一条までは、「
政治上の
主義若しくは
施策又は
思想的信条を推進し、支持し、又はこれに反対する
目的」をもってなされる「
殺人」、「
傷害」、「
国会等への
暴力的手段による
不法侵入」、「
逮捕監禁」、「強要」「
集団的暴行等」の六つの
犯罪類型について同種
行為についての現行
刑罰法規の
法定刑を引き上げた
規定でございます。
第十四条は、右のうち、
殺人に関する
規定で
刑法第百九十九条の
殺人罪の
規定と比較すれば、まず、禁固刑が選択刑として加えられたこと、刑の下限が三年から七年に引き上げられたことが相違点としてあげられるのでございます。第三項の予備、陰謀は、
破壊活動防止法から
殺人に関する
規定を削除して
本法にこれを
規定することとした関係で、同法第三十九条の
規定から
殺人についての予備、陰謀、
教唆、
扇動に関する部分も削除されるので、その予備、陰謀の部分をここに
規定したものでございます。なお、その
教唆、については第二十三条第一号を御参照願いたいと思います。第四項は、
本法に
規定する
目的をもってする尊属
殺人については本条を適用するのか、それとも
刑法第二百条(未遂については第二百三条)の適用を見るのか疑いを生ずる余地もあると考えられまするので、両
法案の関係を明確にしたものでございます。
第十五条は、
傷害に関する刑の加重
規定でございまして、
刑法第二百四条(
傷害)との相違点は、禁固刑が加えられ、罰金、科料の二つの刑がなくなったこと、及び刑の下限が一年となったことでございます。
第十六条は、
傷害致死に関する加重
規定でありまして、
刑法第二百、五条第一項(
傷害致死)との相違点は、禁固刑が加えられたこと、及び刑の下限が二年から三年に引き上げられたことであります。本条第二項は、第十四条第四一項と同様に、
刑法第二百五条第二項の
規定(尊属
傷害致死)と本条第一項の
規定との関係を明確にしたものであります。
第十七条は、
刑法第百三十条前段の住居
侵入罪の特別
規定でございまして、同条との相違点は、前記の特別のいわゆる
政治目的の存在を要件とするのみならず、対象を
国会議事堂もしくはその構内(
国会の会期中に限る)または
内閣総理大臣官邸もしくはその構内に限定いたしておるのでございます。さらに
侵入の態様も、
暴行もしくは
脅迫をしての
侵入、
建造物もしくは器物を損壊しての
侵入、さく、へいもしくは門を乗りこえての
侵入の三つに限定した上、
法定刑を六月以上七年以下の懲役または禁固(
刑法第百三十条は三年以下の懲役または五十円−罰金等臨時措置法により二千五百円以下の罰金)と
規定したことでございます。「不法に」、「会期中」、「
建造物」、「器物」、「さく、へい」の意義については第四条に
説明しましたので参照願いたいと思います。「
暴行もしくは
脅迫をして
侵入」、「損壊して
侵入」という場合の
暴行、
脅迫、損壊との関連については、
暴行、
脅迫損壊の
行為が
侵入の手段としてなされることを必要とするものと解せられるのでございます。
刑法第九十八条「加重的逃走」を御参照願いたいと思います。第二項の未遂罪の成立に必要な実行の着手については、
侵入行為自体について着手がなくとも手段である
暴行、
脅迫、損壊の各
行為について着手があれば足るものと解しておるのであります。
第十八条は、
逮捕監禁に関する
規定でございまして、
刑法第二百二十条第一項及び策二項に対応して、それぞれの
法定刑を引き上げました上、禁固刑を付加したものでございます。
第十九条は、
逮捕監禁致死傷に関する
規定で、
刑法第二百二十一条の趣旨にならない、
本法の
傷害(節十五条)及び
傷害致死(第十六条)の罪の刑と同一の刑を
規定したものであります。
第三項の
規定は、尊属
逮捕監禁致死についての
刑法の
規定と本条との関係を明確にしたものでございます。すなわち、
本法に
規定する
目的による尊属
逮捕監禁致死については本条第二項の
規定だけが適用されるのか、あるいは
刑法第二百二十一条(
逮捕監禁致死傷)の
規定によって第二百二十条第二項(尊属
逮捕監禁)の罪と第二百五条第二項(尊属
傷害致死)の罪とを比較した結果適用される第二百五条第二項の
規定の適用を見るのか疑いを生ずる余地があるので、この間の関係を明確にしたものであります。
第二十条は、強要に関する加里
規定で、
刑法第二百二十三条第一項、第二項との相違点は一年以上五年以下と
法定刑の上限並びに下限を引き上げたこと及び禁固刑が加えられたことでございます。
第二十一条は、
集団的暴行、
脅迫、
器物損壊等に関する
規定でございまして、単純な
暴行、
脅迫、
器物損壊については
刑法に
規定が存するのでございますが、これらの罪が
団体または多衆の威力を示し、
団体もしくは多衆を仮装して威力を示しまたは凶器を示しもしくは数人共同してなされる場合には、
暴力行為等処罰に関する
法律第一条第一項によって三年以下の懲役または五百円(罰金等臨時措置法によって二万五千円)以下の罰金に処せられるのであります。本条は
構成要件として右のような集団的ないし凶器を示してする方法による
暴行行為に特別の
政治目的を付加した上、刑の加重をした
規定でございまして、右の
暴力行為等処罰に関する
法律の刑から罰金刑を削り、禁固刑を加え、六カ月以上五カ年以下と
法定刑の上限並びに下限を引き上げたものでございます。
第二十二条は、
政治上または
思想上の
目的の
殺人または
傷害の罪を実行しようとする者に対し、凶器を提供し、または金銭、物品その他の財滝上の利益を供与してこれを幇助する
行為を、それだけで、処罰することといたしたものでございます。
刑法上の
幇助犯は、幇助された者が
犯罪を実行するに至ったときに初めて成立するのでございますが、本案の
幇助犯は、これと異なり、幇助された者が
犯罪を全く実行しなくとも成立する。すなわち、
独立犯としての
幇助犯を
規定したものであって、新しい
犯罪の
類型を
規定したものといえるかと思います。
本条は、背後にあって
政治テロを勧奨または支援しようとする
行為を
規制するものでございますが、「実行しようとする者に対し」「これを幇助する
行為」というのであるから、提供または供与を行なう者はその相手方が、
政治上または
思想上の
目的をもって
殺人または
傷害の実行を決意している者であることを認識し、かつ、その実行を容易ならしめる意志をもってすることを要することは申すまでもございません。
幇助された者が
犯罪を実行するに至ったときの本条と
刑法総則の従属犯としての幇助の
規定の適用の関係については、第二十五条に
規定しているのございます。
第二十三条は、
政治上または
思想上の
目的で
本法第十四条の
殺人及び
刑法上の
殺人、尊属殺、
本法第十五条の
傷害及び
刑法上の
傷害、
本法第十七条の
国会等への
不法侵入等の罪を
教唆し、または
扇動する
行為を、それだけで、処罰することとしたものでございます。
前条と同様、
独立犯としての
教唆犯または
扇動犯を
規定したものであって、
教唆または
扇動された者が
犯罪を実行しなくとも、本条の
犯罪が成立するものといたしました。
政治上または
思想上の
目的による
殺人についての
独立犯としての
教唆または
扇動犯の本条の
規定の新設によりまして破防法第三十九条の
規定から、関係
規定が削除されることになっているのでございます。附則の2を御参照願いたいと存じます。
本条第一号または第二号において、
本法の
規定と
刑法の
規定とが合わせて掲げられているのは、
教唆されまたは
扇動される相手方に
政治上または
思想上の
目的があるかどうかを問わず、そのいずれの場合にも、これを
教唆しまたは
扇動する
行為を処罰する趣旨を明らかにしたものでございます。
教唆された者が
犯罪を実行したときの本条と
刑法の
規定の適用の関係については、第二十五条を御参照願いたいと存じます。
第二十四条は、
政治上または
思想上の
目的で、
特定の者が
政治上または
思想上の
目的の
殺人を行なうおそれがあることを予見しながらその者に対し、継続または反復して文書もしくは図画または言動によって、
特定の
他人を殺すことの
正当性または
必要性の主張をする
行為を、その
特定の者がその影響を受けて
政治上または
思想上の
目的の
殺人を実行するに至った場合に限って、これを処罰することといたしたものでございます。
政治上または
思想上の
殺人を
教唆し、または
扇動する
行為は、前条によって
独立犯として処罰されるのでございますが、本条は、
教唆または
扇動に至らない場合でも、これを処罰しようとするものでございまして、新しい
犯罪類型を
規定したものと言えるかと思います。本条の要件は複雑でございますので、これを分解して
説明いたしますならば、第一に、
政治上または
思想上の
目的をもってすること、第三に
特定の者が
本法の
殺人を行なうおそれがあることを予見しながら、その者に対し、
特定の
他人を殺すことの
正当性または
必要性を主張すること、第三に、継続または反復して、文書もしくは図画または言動により主張すること、第四に、右の主張だけでは足らず、主張の影響を受けてその
特定の者がいわゆる
政治殺人を実行するに至ったときに処罰されることになること、この四点に集約されるであろうかと存じます。
予見しながら
殺人の
正当性または
必要性を主張することで足り、
殺人を実行させる
目的を必要としない点で
教唆や
扇動より広くなっているが、
特定の者に対し
特定の
他人を殺すことの
正当性等を主張すること、主張を受けた
特定の者がその影響によって
殺人の実行をするに至ったとき初めて処罰の対象となること、等の点において
独立犯としての
教唆や
扇動より狭くなっているものと言えようかと存じます。
第二十五条は、
本法に定める
独立犯としての
教唆犯または
幇助犯の
規定と、
刑法上の
教唆犯または
幇助犯の
規定の適用関係を
規定したものでございます。
本法第二十三条に
規定する
教唆犯及び第三十二条に
規定する
幇助犯は、前述いたしましたように、
独立犯であって、
教唆されまたは幇助された者が
犯罪の実行に至らない場合でも成立するのでございますが、
刑法上の
教唆または
幇助犯は、これと異なり、
教唆されまたは幇助された者が
犯罪の実行に出た場合に限って成立する。そこで、
教唆されまたは幇助された者が
犯罪の実行に至らない場合には、
刑法上の
教唆犯または
幇助犯の成立の有無を論ずる余地はないが、
教唆されまたは幇助された者が
犯罪の実行に至った場合は、
刑法上の
教唆犯または
幇助犯に関する
規定が適用されるのか
本法が適用されるのかという疑問が生じてくるのでございます。本条は、かかる場合において、「
刑法総則に定める
教唆又は幇助の
規定の適用を排除するものではない」と
規定し、
刑法上の
教唆犯または
幇助犯に関する
規定の適用があることを明らかにしたものでございます。
第二十六条は、
政治上または
思想上の
目的の
殺人の予備または陰謀をした者が、その罪の実行に至らない前に自首したときは、その刑を減軽し、または免除することを
規定したものでございます。
破防法第三十八条第三項、
刑法第八十条等と同趣旨の
規定でございまして、
政治上または
思想上の
目的の
殺人の実行を未然に防ごうとする政策的考慮に出た
規定でございます。「罪の実行に至らない前」と申しておりますのは、罪の実行
行為に着手する前をいうものであって、
殺人罪の実行に着手した後に自首したときには、
刑法第四十三条第一項の一般の自首の
規定が適用されるものと解しているのでございます。
第二十七条は、解散の指定を受けた
団体の
役職員または
構成員であった者が、当該
団体のためにするいかなる
行為をなすことも禁止し、かつ、いかなる名義においても、この禁止を免れる
行為、脱法
行為をなすことを禁止する第十一条の
規定に違反したとき、この者を三年以下の懲役または五万円以下の罰金に処することを
規定したものであります。第十条及び第十一条で
説明を申し上げました通りでございます。第二十八条は、
団体活動の
制限の処分を受けた
団体の
役職員または
構成員が、その処分の趣旨に反する
行為をなすことを禁止し、かつ、いかなる名義においても、この禁止を免れる
行為脱法
行為をなすことを禁止する第八条第三項及び第四項の
規定に違反したとき、この者を二年以下の懲役または三万円以下の罰金に処することを
規定したものでございます。
第二十九条は、
団体の
役職員または
構成員、当該
団体の
活動に関し、または当該
団体の
目的の実現に資するため、一定の
政治的暴力行為を行なった結果として、当該
団体が当該
役職員に、
一定期間当該団体のためにする
行為をさせることを禁止する処分を受けた場合に、当該
団体の
役職員または
構成員が当該
団体のためにする
行為をなすことを禁止し、かつ、いかなる名義においても、この禁止を免かれる
行為脱法
行為をなすことを禁止する
規定に違反したとき、この者を一年以下の懲役または三万円以下の罰金に処することを
規定したものでございます。
第三十条は、退去命令違反の罪を定めたものでございまして、すなわち
公安調査庁長官が
本法による
団体の
規制の請求をなさんとするにあたり、
団体の
役職員、構成及び
団体の代理人は指定の期日に出頭して
公安調査庁長官の指定する職員、受命職員に対しまして、事実及び証拠につき意見を述べ、並びに有利な証拠を提出することができる旨定められているのでございます。
破壊活動防止法第十四条以下、これらの
規定が
本法第十三条によって
本法による
規制に関し準用されているのでございますが、この期日において、
団体の選任する立会人及び新聞、通信または放送の事業の取材業務に従事する者が手続を傍聴するにあたり、弁明の聴取を妨げる
行為をしたときは、受命職員はその者に退去を命ずることができ、この命令に違反した者を三万円以下の罰金に処することを
規定したものでございます。
第三十一条は、
団体活動の
制限の処分を受けた
団体の代表者もしくは主幹者または会計責任者が、当該
団体の
活動制限期間中の
業務計画その他の事項の届出義務に違反して、全く届出をしなかったかまたは虚偽の届出をしたとき、この者を一万円以下の罰金に処するこりを
規定したものでございます。
次に附則でございますが、附則の第一項は、
本法を公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行することをした
規定でございます。第二項においては、
破壊活動防止法第四条に掲げる「
暴力主義的破壊
活動」より
殺人、その予備、陰謀、
教唆、
扇動の各
行為を削除し、さらに第三十九条中
刑法第百九十九条を削り、
破壊活動防止法て
刑罰の補整がなされた
政治上の
主義もしくは
施策を推進し、支持し、またはこれに反対する
目的をもってする
殺人の予備、陰謀、
教唆、
扇動の罪を一応廃止することといたしたのでございます。
これは
本法第四条第一項第一号及び第八号により
殺人、その予備、陰謀、
教唆、
扇動が新たに「
政治的暴力行為」として
規定され、第十四条第三項及び第二十三条第一号により
殺人の予備、陰謀、
教唆、
扇動の罪について
刑罰の補整がなされたので、これと重複する
破壊活動防止法の
規定を削除することといたしたのであります。
第三項は、
本法の施行前にした
破壊活動防止法第三十九条に
規定する
殺人の予備、陰謀、
教唆、
扇動の
行為に関しては、なお従前の通り
規制、処罰し得る趣旨を定めた経過
規定でございます。
節四項は、
本法の施行に伴い、法務省の担当職務権限中に
本法による
団体の
規制に関する事項を加えることを
規定し、第五項は、
公安調査庁の任務、権限中
本法の
規定による
団体規制に関する調査及び処分の請求等に関する国の行政事務を加え、総務部の事務に
本法の
規定による弁明の聴取及び処分の請求に関することを加え、調査第一部の事務に
本法第四条第一項第五号及び第六号に
規定する
政治的暴力行為を行なった
団体に関する調査事務、調査第二部の事務にその余の
政治的暴力行為を行なった
団体に関する調査事務をそれぞれ加えまして、さらに公安調査官の職務に
本法の
規定による
団体調査事務を加えたものでございます。第六項は、
公安審査委員会の事務に
本法の
規定による
規制に関する審査及び決定の事務を加え、さらにその権限事項に
本法による
団体のためにする
行為の禁止処分、
活動制限及び解散の指定の
規制処分を加えたものでございます。
以上が本案各条に対しましての一応の御
説明でございます。