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政府委員(大沢一郎君) ただいま
高田先生から、
九州地方を御多用中御
視察賜わりまして、
立法問題あるいは行政方面の問題につきまして、適切な御指示を拝聴いたしまして、われわれといたしまして深く感謝申し上げますとともに、御趣旨に沿いまして、さらに検討を進めていきたい、かように存じておる次第でございます。
ただいま御質問のございました刑務所におきまする医療の問題でございますが、御説にもございましたように、従来医療という点につきましては、昔のことは、ただ生かしておくだけかどうか私存じませんが、現在の矯正行政の面につきましては、医療も
一つの矯正の重要な手段でございまして、職のない者には、手に職を覚えさせ、また健康上働くことのできない者は、将来健康を回復して社会に復帰させる、これが矯正の大きな効果を上げる手段と考えておりまして、医療、保健につきましては、数年来強くその行政を推進しているわけでございます。ただ、今
お話のございました胃かいよう等の手術も、刑務所といたしまして、できるだけの、力の及ぶ範囲の手続をして、手術をいたして社会に出すわけであります。で、各刑務所にそれぞれいろんな病人がおりまして、われわれといたしましては、八王子の医療刑務所でございますとか、あるいは
九州地区では城野の医療刑務所というような、特殊な医療専門の刑務所を置きまして、いろいろ、手術の非常に困難な、あるいはまた措置の非常に専門的な医師の診断を必要とする者をそれぞれ集めまして、そこで適切な治療あるいは手術というものを行なっているわけでございます。しかし、それ以外の刑務所におきましても、それぞれ医師を
配置いたしまして、手の及ぶ限りのことはいたしているわけであります。なおまた緊急を要しまして、たとえば
長崎で重要な手術が必要であるというような場合、
長崎刑務所では不十分であるというような場合は、一時市内の民間なり、公立の病院に移しまして、そこで手術を行なわすという
方法もとっておるのであります。胃かいようの手術について
長崎の刑務所で行なったということは、その医師が、そこの
施設で十分できるという確信のもとに行なったことと思うのでございます。なおまた手術台の
新設その他医療器具の拡充につきましては、それぞれ毎年各所
配置しておるわけでございます。私まだ
長崎の諫早刑務所を見ておりませんので、どのような状態になっておるか存じませんので、さっそく
調査いたしまして、必要な
施設は漸次
整備、拡充していきたい、かように存じておる次第であります。それから、なおまた薬餌費あるいはまた手術に必要な輸血の代金等、それぞれ一応の
予算は配賦してあるのでありまして、もしも諫早の刑務所でそれが足りないような場合は、管区で、ある程度の流用の
予算を持っております。その点、医師としてその手続を知らなかった点もあったのじゃないかと存じますので、その点、指導いたしまして、かような手落ちのないようにいたしていきたいと存ずる次第でございます。
なおまた、
少年係検事とか、あるいは検事の転任の問題、これは私から申し上げるのは適切ではないかと思いますが、私は長い間検事をいたしております。北は北海道から南は
九州まで御指摘のように転々いたしました。子供は小学校七回、戦時中でもございますので、小学校の六年の間に七回、中学校は五回、五つも変わっております。しかし検事として私が転任して参ります場合に、子供の
教育ということにつきましては十分もちろん考えなきゃならぬ問題でございまするが、その人の人生観によるものじゃないかと思います。私は私なりに、検事という仕事を持てば子供の生活もそれに順応さしていくという
方法で、幸い間違いなく、運がよかったのかもしりませんが、別に不自由なく子供の
教育は終わったわけでございますが、また
検察官は転任が二年ないし三年で行なわれるということは、これは検事の職務が、御承知のようにあくまでも公正でなければならない、かような意味で、いろいろな事情がわかって参りますと、いわゆるその人の主観なり、ものの
見方というものが、ある時期に現われてくる。そうすると、また一方の
見方から見れば、それが一方に片寄った、いわゆるへんぱな
検察というように見られるおそれもあるわけであります。やはり新しい人が新しい
観点でその地方の
事件を見ていくということも、
検察の公正を担保するという意味から必要ではないか、かように考えられるのであります。従いまして必要な人は東京等では十年でも長くそのままおる人もありますし、また東北地方でずっと東北地方ばかりの方もございますので、必ずしも一がいには申せませんが、やはりある程度の検事の転任ということは、さような意味合いから必要じゃないかと、かように考えておるわけであります。ただ、今非常にわれわれ困っておりますのは、現在高等学校等で転校ができない。これは従来われわれが子供を育てます場合は、中学校、高等学校におきまして、どこへ転任しましても教科書は同じでございました。大して経済的な負担はなかったのでありますが、今小学校は東京都内で変わりましても本が変わる。これはおやじとしましても非常につらいことで、特に高等学校は転校が許されない。この点でわれわれのように転任を——さような職分の公正を担保するために転任は必要であるという職責の者につきまして、かような公立学校等の転校ということについて、文部省その他の
教育行政の面でぜひお考え願いたい。これはわれわれ上司にずいぶん申し上げておるのですが、役人だけがそういう特典を持つということもこれまた問題であろう。大銀行、大会社それぞれ転任がある。さような面で、
教育の面につきまして非常に今は苦心が多かろうと存ずるのであります。そのために高等学校以上の子弟を持った方は、奥さんをもとへ残して、あるいは子供だけを友人に託するというようなことをやっておるわけであります。この点、法務省だけでは解決がつきにくい問題でございまして、何とか御配慮をお願いいたしたいと思っておる次第であります。
なお、次の
少年係の検事の問題でありますが、私、今
資料を持ち合わせませんので、検事の一年当たりの担当件数というものが今わかりませんが、
検察庁全体といたしまして非常な負担がかかっておるわけであります。特にこれは刑事訴訟法が
改正になりました際に、もと御承知のように検事に
警察から
事件が送られて参ります場合は、いわゆる昔の検束といいますか、あるいは勾留ということで、約一カ月間の
警察の捜査を経ました
事件が
検察官に送られてきたわけであります。従いまして、
事件捜査も十分できているし、またその間、
警察に勾留中にいろいろ検事に相談がございまして、必要な証拠も奥まっている。従いまして、
検察庁に送られました後の検事の捜査期間は非常に短くて済んだわけであります。ところが刑事訴訟法が
改正になりまして、逮捕後四十八時間、直ちに
検察官に送らなければならない。そこで検事が必要な場合は十日間の勾留、延長して二十日間、そうして処分を
決定して、公訴を提起するか、あるいは釈放するかというふうに、非常に短くなりました。従いまして、検事の手元に参ります際までの
事件のこなれ方と申しますか、証拠の収集というものが、非常に昔から比べまして、紙切れ一枚で検事のところに来るような状態でありまして、その間、検事が公訴を提起するかどうかを調べます場合に非常に捜査を必要とするわけであります。従いまして、今まで以上に検事の捜査という面で大きな手が取られるわけであります。それからまた当事者訴訟主義がとられまして、検事がいわゆる原告官として立証
責任を負わされているのであります。いわゆる公判活動が拡充されたのであります。従来は一件記録が全部
裁判官の手元にありまして、
裁判官がそれを全部見てから被告を調べたのであります。ところが現在は、
裁判官は起訴状一本主義で、起訴状だけを提起されまして、検事、弁護人それぞれの立証なり証拠調べによって審理が進められているわけであります。公判審理の間におきまする
検察官の活動分野は非常に広がったわけであります。さようなふうに刑事訴訟法の建前が変わりました際に、検事の
増員の手が打たれなければならなかったのでございますが、当時事務次官がやはり一線におられまして、その点は当時アメリカの総司令部の命令でかようなことが行なわれた次第であります。これがなければできませんということが強く法務省側から
要望があったわけでありますが、しかし当時いかんともなしあたわず、その
現状の
検察官のままで今の制度が押しつけられた
状況であります。それが現在まで尾を引いておりまして、その間ほとんど検事の
増員はございません。特に特殊のかような制度改革の際ですと大
増員できるわけでありますが、一応それでスタートいたしました
関係上、特殊な
状況のもとにおいて
少年係検事をふやす、あるいは麻薬
関係が非常に多いから麻薬
関係の検事をふやすというようなことで、少しずつふえては参りましたが、根本的な解決がはかられておりませんので、検事の負担というものは、
事件数は非常にふえている、また
事件数のみならず、その処理をいたします捜査と訴訟維持の両面におきまする事務量が莫大な童に上っているにもかかわらず、
増員というのが今までのような
状況で、十分できないというので、
少年係検事の
必要性も認めながら、各庁で一人しか専任に充てられないというのが
現状ではないかと思うのであります。
なお本年度は、ちょっと今数字は忘れましたが、検事が十五名、
検察事務官五十名の
予算要求をいたしましたが、大蔵省の承認を見ましたので、目下御審議をお願いしているわけであります。これでは十分ではございませんが、法務省といたしまして、ただいま政務次官の御説明にもございましたように、保護観察官、保護観察所がきわめて弱体でございますので、その方に百人の
増員をしなければならない。また先ほどの御
報告の中にもございましたように、
少年院の教官というものが宿直した翌日もまた日勤の勤務につかなければならないというような非常な激務に当たっておりますので、それらの手当も、たとい幾らかでもしなければならない。いわゆる本年度の
予算におきまして
少年院の教官十四名と、
少年鑑別所技官が十名、というふうに二十四名の
予算要求をいたしておるわけでございます。かように方々の
組織でも……