○
豊瀬禎一君 私は
日本社会党を代表いたしまして、
本法案に反対の
意見を申し上げたいと思います。
本法案の審議に入りまして、
大臣その他
政府委員等にたびたびただして参りました最も大きな問題点の
一つは、政府が強く主張し、国民もまた
要望しております
科学技術者の
養成という問題に対して、文部
当局が——ただいまの
大臣の
答弁によりますと、いささか準備不足といったような
程度に
考えておられるところに重大な問題があります。私はこの
法案を見ましても、また
大臣の
答弁を聞きましても、準備不足というよりも、
科学技術者の
養成に対する
長期計画に対して全く無為無策であると断じて差しつかえないと思います。このことは金曜日の
委員会でも
検討するよう
要望しておったにもかかわらず、数日を経た今日といえ
どもなお具体的な
計画がないということは
大臣の
答弁で、あまりにも明瞭なことであります。私は与野党を問わず、
日本の
科学振興のために、文部
当局が早急に
科学技術者等の
養成に対しまして
長期の
計画を立案し、もっと大胆率直にその施策を実現していく決意と
計画を持つべきであり、この
計画なくしてこの
法案を出したということはどんなに弁解しようとも、文部
当局に対する無能を指摘されても
答弁の余地はないと思うのであります。
第二に私が指摘したいのは、これは
工業教員養成等の問題とも関連して一貫した
文部省の行政施策の中に現われておる顕著な問題でありますが、
学校教育が全人
教育として進められなければならないことは
大臣といえ
ども十分御
承知のはずであります。ところが、まだ審議を終わっていないところの
学校教育法等の
法案を見ましても、工業
教員の
養成に関する
法律を見ましても、常に現われておる特徴は、人間として最も大切な基礎学力といいますか、基礎
教養といいますか、
一般教養を非常に軽減して安易な、かたわな技術者を
養成しようとするところであります。私
どもはたびたび
委員会において指摘しましたように、技術者といえ
ども将来その人が有能な技術者となるためには、基礎学力はもとよりのこと、深い
一般教養を十分
青少年時代に陶冶しておくことが将来有能な基礎技術者になるということだと、たびたび指摘しました。ところが、これらの数
法案はすべて何と申しますか、安易に当面の事態を糊塗しようという
計画のもとに、全体の
法案の関連性とか、
学校教育諸
制度との
関係とか、将来どの
程度養成すればいわゆる
科学技術者が不足しておるという事態に立って対応し得るかどうかという
計画もなく、重要な
教育の基礎諸問題を抜きにして
養成しようとしておることは、これは文部行政という
観点からだけでなくして、
教育全般の立場に立ってきわめて重大な問題であり、絶対に許容できないところであります。たとえば
矢嶋委員がただいま
質問しましたように、所管事項は
教育委員会、本省においては
大学局、しかも、中学卒業
程度の
生徒を収容するにかかわらず、その
資格等についても不明確であるし、人間としてきわめて重要な芸能方面、人文
科学等についてもこれを
欠除している。戦前、
学校教育において軍事教練が盛んになり、竹やりや銃剣術の練習が多くの
課題を占めて、音楽、図画とか工作等の人間形成のための深い
教養をおろそかにした結果がどうなったかは、
大臣その他の
関係者は十分御
承知であると思います。私は現実の事態に立って
中堅技術者を
養成しようとするこの
法案は、数年を出ずして
法案自体から内部矛盾を露呈し、
文部省が善意に
考えても、予期し、期待しておるところの充足はできないことはもちろん、全面的に
改正せざるを得ない窮地に陥ってくることは当然予測できる問題だと思います。さらに
学校制度の立場から
考えましても、これまた
大臣の
答弁では不明確でありますが、私
どもは戦後の単線型の
教育制度は諸外国のこれと比較していろいろの問題を含んでおっても現在の
日本の
教育体系としては一応望ましい形であると思います。もちろん私
どもは時代の進展に伴ってこれに固執するものではありませんけれ
ども、これを破壊するというか、この体系をくずして新たな
制度を設ける以上は、この
高専というものが
学校教育制度の中でいかなる
位置づけを持つかということについては十分の
検討と用意がなさるべきであります。きょうの
質問でも明らかになった点ですが、どこに作るかもまだ明確でない。私
どもは少なくとも行政府が
学校を作る、
学校制度を創設するという以上は、どの
程度の
生徒を収容し、どの地域に
日本の
科学の進展のために設定していくか、これらの
一つのプランを持ちながらこの
法案を立案し、それに基づいてその
計画のもとに
法律を
提出すべきであると思います。これらの
観点から
考えましても、研究不足というか、きわめてずさんな
法律であります。
また次に指摘したいのは、中教審等においても
賛成を得たと言われますけれ
ども、中教審へ
大学制度に対して諮問をしたのは実に数年前のことであります。そうしてこの中には明らかに
短大の強化を明記しておりますし、十分
検討することを
要望しているにもかかわらず、単にこの
法案は
賛成することを求めただけで——
高専を
設置するとすれば、ほかの諸
学校との
関係をどう持っていくか、また
高専のあり方としては将来どうあるべきかという問題等についても中教審等に対して十分の諮問も行なわず、短兵急に出してきた問題であります。
さらに指摘したいのは、たびたび
国会で反対にあい、つぶれました専科
大学法案の焼き直しであります。もちろん私は焼き直しであるという原則線に対してとかく言うものではありませんけれ
ども、この問題に対しましては、今日まで幾多の問題を含んでいるにもかかわらず、この
法案に対しましては、専科
大学制度で問題になりました諸点に対しても文部
当局は十分の解明も
答弁も行なえないというのが
現状であります。私
どもは
文部省がこの
法案を撤回し、十分金曜日にも指摘しましたように、
日本の
教育制度、
教育のあり方に対する基本的な問題に対して諸学者の
意見を十分聴取した後に、さらに
文部省が
科学技術者の
養成という大局に立って
長期計画を策定し、しかる後に
本法案に対しての審議を求むべきが当然であると思います。今
国会の最も大きな特徴は、きわめて当面を糊塗する
法案を続出され、しかも、会期の末になって
提案されてくるという、このことだけを指摘いたしましても、文部
当局が
教育行政に対して系統的な策を持たないというよりは、きわめて無責任な、
教育基本法十条に違反する疑いのあるような
教育行政を展開している点を私は強く指摘いたしまして、
本法案に対して反対の意思を表明するもの
であります。