運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1961-05-26 第38回国会 参議院 農林水産委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月二十六日(金曜日)    午前十一時二十九分開会   —————————————   委員異動 本日委員木島義夫君辞任につき、その 補欠として岡村文四郎君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤野 繁雄君    理事            秋山俊一郎君            櫻井 志郎君            亀田 得治君            東   隆君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            石谷 憲男君            岡村文四郎君            河野 謙三君            重政 庸徳君            田中 啓一君            高橋  衛君            仲原 善一君            堀本 宜実君            阿部 竹松君            大河原一次君            北村  暢君            清澤 俊英君            小林 孝平君            安田 敏雄君            棚橋 小虎君            千田  正君            北條 雋八君   政府委員    農林政務次官  井原 岸高君    農林大臣官房審    議官      大澤  融君    水産庁長官   西村健次郎君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    通商産業省通商    局次長     山本 重信君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農業基本法案内閣提出、衆議院送  付) ○農業基本法案天田勝正君外二名発  議) ○農業基本法案衆議院送付予備審  査) ○派遣委員報告漁業権存続期間特例法案内閣提  出、衆議院送付) ○農林水産政策に関する調査(韓国の  り輸入に関する件)   —————————————
  2. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまから農林水産委員会開会いたします。  委員異動について報告いたします。本日木島義夫君が辞任され、その補欠として岡村文四郎君が選任されました。   —————————————
  3. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 農業基本法案閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)、以上三案を一括議題といたします。  この際、三案の調査に資するため、広島、福島富山、長野の各県に委員派遣を行ない、福現地において意見を聴取いたしましたが、その報告派遣委員から順次求めることにいたします。それでは第一班からお願いいたします。
  4. 堀本宜実

    堀本宜実君 第一班の調査報告を申し上げます。  御承知のように今回の委員派遣は、現在審議中の農業基本法三案の審査参考に資するため、現地において実際に農業に従事されている方々の中から率直な御意見を聞くために行なわれたのでありまして、第一班の派遣地福島市、派遣委員は私のほか、青田委員大河原委員東委員千田委員の五人でありました。  福島市における会議は、五月二十二日午前九時二十分より、福島県庁近くの蚕糸会館において行なわれ、私のあいさつ班員及び意見陳述者紹介、並びに議事運営についての説明を行ないました後、三浦一君、渡辺金吉君、郡亀清君、山浦実君、斎藤善弘君、吉田秋一君、塩長一君、橋本利正君、加藤弥彦君渡辺義美君、以上十名の意見陳述者から参考意見を聴取し、質疑を行なったのでありますが、以下各陳述者陳述及び質疑によって明らかにされた意見発言順に要約して御報告申し上げます。  まず三浦一君は、田畑三・五ヘクタールを耕作され、山林六ヘクタールを所有されております。その意見は、自分は須賀川市に住む一農民であり、一地方農業指導者であるが、農業基本法については、新聞、ラジオ、その他の資料によって絶えず関心を払ってきたが、非常に期待している。今国会に出ている三法案とも十分農民の幸福な生活と、国の中で占める農業の地位を確定することを目ざしていると思うので、十分審議して、できるだけ早く通してほしい。農業基本法成立する前にいろいろの単独立法があるが、その成果が全部に行きわたるようにされたい。たとえば農業災害補償法については強く抜本的改正を望むものであるが、特に取り扱う品目の種類を多くされたい。天災融資法も適用の範囲拡大されたい。福島県では農協の二分の一が不良であるか、これでは農業基本法成立しても、新しい事態に対処してうまく指導できるかどうか不安があるとの意見が述べられました。  次の渡辺金吉君は、三・九ヘクタールの田畑を耕作され、山林六・六ヘクタールを所有されております。その意見は、第一に農業基本法案中に農地集団化についての規定がある。これは非常に重要であって、これなしには基本法を作っても意味がないと考える。いかに優秀な機械を入れようと思っても、農道は細く、今のように自分土地を一回りするのに数量も要するほど、耕地が分散していたのでは何もできない。ただ、これは耕地整備をやらなくては、なかなか実現できず、多額の経費を必要とするので非常に困難である。国の一そうの手厚い助成を必要とする。  第二に、金融関係であるが、今度予定されている農業近代化資金の七分五厘の利子はあまりにも高過ぎる。五分以下で三十年から四十年で償還するのでなければ、農民として使用できないと思う。  第三に、農地信託についてであるが、自分のところでは離農者が相当ある。その際問題となるのは、農地の買手が容易に見つからないことだ。都市へ出る人は、現金を持っていかねばならぬので、金が入るまで動くことができず、困っている。その意味農地信託制度がどの程度利用されるか疑問である。どうしても国が時価で買い上げ、安く農民に売り渡すという二重価格制を採用されないとうまくいかないのではないか。  第四に、農業基本法成立したら、ぜひ農業団体の再編成を行なわれたい。現在では近代的農業経営に向かおうとする農家利益代表としてはたよりない。もっと強力なものにまとめられたい。  第五に、農家が一番困るのは、価格が不安定であるということだ。はっきりとした見通しがどうしても必要である。農業基本法については非常に期待しているので、一日も早く通してほしいとの意見が述べられました。  次の郡亀清君は、田畑一・九ヘクタールを所有し、主として畜産を行なっていられます。その意見は、今回農業基本法案国会審議されるのは、農民のため喜びにたえないのであるが、一農民として常識的な意見を述べたい。農民農業基本法案に大きな期待を寄せ、その制定への努力に感謝しているのであるが、しかし反面相当な心配もしている。特に農民間引き論には不安当惑している。三案とも前文の書き方は異なっているが、農業の現状に対する責任の大半は、やはり時の政府にあったと思う。  次に法案の内容について言うと、第一に農用地の拡大が必要である。相馬地方は歴史的な事情で、不当に多くの土地官有地になった。国有林が四四%も占めているような状態なので、国有林を大幅に払い下げてほしい。従来手続が非常に複雑なので、簡単に払い下げてほしい。さらに東北地方特殊性に応じて、恒久的特殊立法制定されるようお願いしたい。  第二に、自分地方は米の単作地帯であるが、現在畜産の導入に力を入れている。しかし、そのためにはどうしても長期で安い金利の多くの資金と、安い飼料が必要である。ところが、最近に飼料が高くなって非常に不安を感じている。農協加工業をやりたいが、どうしても国の十分な助成が必要である。  第三に、他のものが高くなっているのに、米価が一向に上がらぬのはおかしい。食糧の不足したときには十分協力したのに、今度農民が困ったときには米価を上げてくれない。法案には、食糧の自給と輸入農産物に高関税を課す規定を入れてほしい。  第四に、他産業農民が移りやすいのは、農業状態が悪ければ悪いほどいいのではないか。他産業従事者と均衡する生活ということとは矛盾するのではないか。自分の町ではみんな農外所得を求めているが、就職先臨時工的なもので、石にかじりついても土地を放したがらない。臨時工を全廃するような処置をとってほしい。五反未満を農家として扱うのはおかしいのではないか。  第五に、相続については、一子相続にするのはよいが、相続税が非常に高いので困っている。  第六に、農協育成強化は、農民みずからのものであるということを中心としてやってほしい。  第七に、農業近代化資金利子百分五厘は、ぜひ五分以下とされたい。  第八に、農民教育は重要であるが、現在農学校定員に満たない状態である。農業に夢を持ち得るような教育をやってほしい。  第九に、農政審議会には農民代表を入れてほしい。要するに信頼の置ける政策をやってもらわねば農民はついてゆけない。国の政策によって桑を抜けば、繭が上がったり、畜産を始めたら飼料が上がるのでは、とても信頼できない。三法案については、関連法案を見た上でないと、どちらがよいとは言えないが、農民のためになるものを、今われわれは力になれば何でもたよりたいと思っているので、一日も早く成立さしてほしいと述べられました。  次の山浦実君は、川畑一・五ヘクタールを耕作しておられます。その意見は、本県の農業会議は、四年前から農業基本法制定を要望してきたのであるが、今回国会における農業基本法三案の審議には期待と感謝の念を持っている。自分のところは、米の単作地帯であって、米価に重大な関心を持っている。米の不足したときにはきびしい強制供出をさせられ、気の毒な状態になった人が多かったのに、数年来米価が一万円程度にとどまっているのは遺憾である。米価は、生産費所得補償方式でやってもらわねばならぬが、近年の生産資材労賃高騰によって、米価を高くしてもらえねば農業近代化もできないと思われる。また米だけでなく、他のものに進出したいと思うが、蔬菜はすぐ生産過剰となり、畜産飼料高騰で悩んでいる。市場整備加工施設設置等について、国の大幅な援助を望む。農業災害補償制度については、支払い共済金を大幅に引き上げ、単位組合の自主的な運営にまかせられ、その運営費については、国で負担されたい。  兼業農家については、兼業就職先が不安定なため困っている例が多い。兼業している場合でも十分安定したものであれば、それは正常なものと考える。構造改善のためには、地方への工場分散が必要であるが、そのためには電力料金地域差等も考慮されたいし、またそれから生ずる各種農作物被害については、国で十分対策を立ててほしい。  現在、農業基本法は三案出ているが、農民は心から感謝している。しいて自分の考えを言うと、第一に開墾よりは既耕地整備が必要であり、第一に共同化より自立経営育成、第三に零細農を安定した他産業へ移す方がよいと思う。早急に法の成立を望むとの意見が述べられました。  次は斎藤善弘君でありますが、三ヘクタールの田畑を耕作していられます。その意見は、自分水田単作地帯における一農民として意見を述べる。第一に、農産物価格の問題であるが、水田単作地帯では、何といっても米作にたよらざるを得ない。しかるに、米価は上がらぬのに、生産資材労賃高騰に悩んでいる。急に他のものに転換することは困難であるので、米価生産費所得補償方式でやり、直接統制も継続してほしい。  第二に、農地集団化は、すべての施策の前提である。  第三に、農民教育の問題であるが、長男も農業高校へ行かず、学校定員に満たない。農家へは嫁も来たがらない。近代的な農業担当者を必要とするこのとき、人材の養成は非常に必要である。そのための育英制度を考慮してほしい。  第五に、農業近代化資金利子七分五厘はぜひ五分以下にされたい。  第六に、国有林を簡単な手続農地、牧野として払い下げられたい。  第七に、次三男対策であるが、その就職先中小企業臨時工であるので非常に不安定で、不況になると家に帰ってくる。安心して就職できるような施策を講じてほしい。  第八に、農業課税の問題であるが、農村固定資産税が年々高くなっているのはおかしい。土地収益性によって課税されたい。  第九に、農業災害の復旧については、国営土木工事でやってほしい。ダムの建設等に伴う水利権問題は、農民の権利を十分確保してほしい。  最後農業基本法案については、各党とも良識をもって早期成立さしてほしいと述べられました。  次の吉田秋一君は、〇・八ヘクタールの耕地果樹を植栽していられます。その意見は、自分は政治的に中立であるが、他のことはすでに陳述があったので、三党案の比較をやりたい。自分の従事している農業からの感想であるが、まず政府案は非常に幅が広く何でもでき、社会党案はやや具体的であって社会主義的な色彩があり、民社党案はその中間であると思われる。  次に、果樹栽培をやる際、種々の機械が必要であるが、その償却は非常に困難である。その意味社会党案には国営農業機械ステーション規定があるのでよい。政府案でも具体的規定はないが、必要な援助ができると思うので、その点、考慮されたい。  農地所有形態については、政府案民社党案も触れていないが、社会党案は原則として耕作者に所有させ、自主的共同保有に移行させるというが、農民感情としてなかなかそこまでゆけないと思う。流通機構については、市場国営とか国家管理の案があるが、資本主義経済のもとでは困難と思うので、政府案が一番実現性があると思う。農産物価格支持について社会党民社党両案に規定があるが、特に生鮮食料品などはよほど巨額予算と権力と決意がなければ実現困難と思う。その意味でできるだけ中間マージン整備をやってほしい。特に運賃等は安くする必要がある。  以上、三党の相違の気のついたものの一部を申し上げたのであるが、要するに三党案とも農民のために真剣に考えていただいたものであって、修正すべきところはして、一日も早く成立さしてほしいと述べられました。  次の塩長一君は、田畑二ヘクタールを耕作しておられます。その意見は、自分農村の一青年として意見を述べたい。まず、農業基本法案衆議院通過の際の混乱は、われわれの期待を裏切ったものである。あのようなことのないようにされたいと思う。  次に、この法案によって農業が広い国民経済の視野から見られることは非常にけっこうなことと思う。生産性向上、他産業との生活水準の均衡を目標とするのは非常によいが、実現性については不安を持っている。農産物価格については、重要なものだけでなく、果樹蔬菜畜産物等に対して価格支持を行なってほしい。一割増産すれば半分になり、二割増産すればただになるような状態では不安である。流通合理化に関し、農協は三段階になっており、そのおのおのでマージンを取るが、その点是正してほしい。  農産物輸入自由化については、日本だけいつまでも防止できるものが疑問である。  構造改善については、自立経営はいかにして作るのか。近郊農村では土地価格は十アール四十万から五十万円であるが、所要資金は相当巨額になると思われる。零細農はどうなるのか。地方工場は来るのだろうか。  教育問題については、農村青年の一番の悩みは農村に嫁が来ないことである。そのためにはどうしても教育を高めて、農村青少年育成に力を入れてほしい。農村各種研究団体は、資金の不足で十分活動できないので、その点十分考慮してほしい。協業化共同化を進める上で、どうしても土地基盤整備が必要であるが、そのためには大幅に予算の増額をやってほしい。  農政審議会には農民代表を加えてほしい。最後に、この法案はできるだけ早く成立さしてほしい旨述べられました。  次は、橋本利正君でありまして、一・五ヘクタールの田畑を耕作し、主として養蚕をやっておられます。その意見としては、第一に、農地集団化は、所得倍増を考える場合に一番必要である。  第二に、農業近代化資金金利が高過ぎる。どうしても五分以下にしてほしい。  第三に農業災害補償制度改正については抜本的にやってほしい。特に養蚕は晩霜によって被害を受けることが多いのであるが、共済金支払いが半年も過ぎねば手に入らないので、その点是正してほしい。  第四に、自分はいろいろの研究会に入っているが、農業近代化の意識が青年の間で盛り上がっているのを感じる。しかし予算がないので、十分な活動ができないのは残念であるので、その点考慮してほしい。  最後に、各党案共通点も多いので、修正するところは修正し、一日も早く成立させてほしいと述べられました。  次に加藤弥彦君は、開拓者として二ヘクタールの農地を耕作しておられますが、その意見は、まず自分の立場を明らかにすると、酪農主体とした開拓者であり、政治的には中立である。農業基本法案については十分審議を尽くしてほしい。早急にとは申し上げない。  次に、各党案に対する自分考え方を申し上げると、社会党案共同化を一つの柱としているが、自分の体験によると容易なことではない。各国の例を見ても、自由主義国共同経営をやっているものはない。やはり家族経営主体として共同できるものをするというのがよいと思う。民社党案については、生産、需要、供給の計画化は困難に思うし、われわれは国の期待したものを遂行する能力にも欠けている。やはり長期生産計画を示して、それに向かって努力する方がよいと思う。  自分としては、自由主義国基本法について要望する。その意味において政府提出のものを問題とするが、第一に総則において規定すべきは農民であると思う。農民育成こそ必要なのであって、スイス基本法もまず第一に農民についての規定がある。  第二に、自分も米の消費者であるが、東北では米を除いては農業は成り立たないので、二重価格制は今後も続けてほしい。麦については、適当な補助金を出して飼料化してほしい。スイスの例を見ても、このような補助金の一人当たりの負担額日本よりもはるかに大きいのであって、日本ではまだまだ十分補助できると思う。  第三に、政府案によると、農地拡大は必要ないように受け取れるのであるが、これは開拓者には受け取りがたい、もっと耕地拡大する必要がある。  第四に地域別営農類型が打ち出されていないのは何ゆえか、はっきりと打ち出してほしい。土地収益価格とか、あらゆる問題がそこから出発すると思う。民社党案には僻地対策があるが、当然必要であるし、現にスイスでは行なわれている。  第五に、農業金融金利は、ぜひ五分以下にしてほしい。  第六に、輸入制限を行なう場合の規定が抽象的でよくわからない。一定の線を作り、それをこえたものを輸入制限ができるようにされたい。われわれ開拓者にとって今もし農産物自由化されたら、農業をやめるより方法がないことは明らかである。全般的に法案に不明確な用語があってよくわからない。  第七に、相続について何ゆえ財産相続と言わないのか、家督相続は廃止されたのであるから、老人から壮年層経営を譲ることが必要である。さらに、なるべく一子相続にするというのでなく、一人に引き継がせることにしてほしい。それでなくても農業外に出たがっているのだから、農業に残るものが一人相続するのはよいことだと思う。  第八に、教育農業に残るものを中心とすべきであって、最後に出るものの規定を設けるべきである。出るものの教育中心になっているように思われる。  第九に、農地価格については収益価格をはっきりさせ、その差を国で補償すべきであるとの意見でありました。  次に、渡辺義美君は、田畑二・七ヘクタールを耕作され、山林五ヘクタールを所有され、タバコ中心農業を行なっていられます。まず、農業金融金利を五分以下にしてほしい。農協整備してほしい。農業災害補償法を抜本的に改正して、農民負担を軽くしてほしい。農業生産については、近来卵が下がり飼料が上がり困っている。これでは選択的拡大も困難ではないか等要望が述べられましたが、特にタバコについて非常に重要な産業だが、専売法によって農林省にたよれぬのは困る。われわれも農民だから、ぜひ農業基本法範囲で考えてほしい。価格については専売法審議会できめるが、労賃がきわめて安く算定されていて、外国の価格と比較して三分の一程度である。このことは自由化の脅威は受けないが、それだけ安く押えられていることを示すものだ。最後に、農業基本法早期成立を要望する意見があって発言を終えられました。  以上をもって各意見陳述者陳述を終わり、それより各委員から、主として農業基本法成立時期、農産物自由化とそれがわが国農業に与える影響農業団体あり方、大資本農業部門進出とその影響協業化共同化あり方農地価格相続に対する考え方兼業問題、農業生産基盤整備等の問題について熱心な質疑があり、それぞれの陳述者より答弁がありました。  以上により第一班の調査計画通りきわめて有意義に無事終了いたしまして、午後三時十分散会いたしましたが、その際福島農業会議所会長水野野友次郎君より、農業基本法農民にとり重要な法案である。幅が大きく不明確な点もあるが、関連法案によって性格も明かとなろうから成立を希望する。同時に、予算についても十分配慮されたい。次に、福島県経済連、同県養連合会長作田善枝君より農民は国からの援助を必要とする。本法案には不満の点が多いが、それは関連法案で処理されることと思うので成立を希望する。最後に、安達郡岩代町議会議長渡辺政市君より、農業近代化資金金利を五分以下にされたい旨のそれぞれ陳情を聞いたのであります。  終わりに、福島市における現地調査は、県当局の絶大なる御協力により、きわめて平穏かつ有意義に行なわれた次第でありまして、この機会に関係者各位に対しまして、あらためて深甚の謝意を表し、私の報告を終わる次第であります。
  5. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ありがとう。  ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  6. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記つけて。  暫時休憩いたします。午後は一時半から再開いたします。    午前十一時五十六分休憩    ————————    午後一時五十六分開会
  7. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続き農業基本法案閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)、以上三案を一括議題とし、派遣委員報告を引き続きお願いいたします。  第二班の報告を願います。
  8. 高橋衛

    高橋衛君 第二班の報告を申し上げます。  第二班の派遣地富山県でありまして、派遣委員は、私のほか藤野委員長小林孝平委員の三人で、班長藤野委員長にやっていただきました。しかしながら便宜上かわって私がその概要を御報告申し上げます。  富山県における会議は、五月二十二日午前十時より上富山県庁の近くの昭和会館において開かれ、班長あいさつと、派遣委員及び意見陳述者紹介、並びに議事運営についての説明を行ないましたのち、次の十一人の方々意見陳述を聴取いたしたのであります。すなわち富山県大沢野町で、三ヘクタールの専業農業を営み、かたわら町の農協組合長をやっておられる石黒武夫君、魚津市で水田二・一ヘクタールを経営し、乳牛四頭を飼養しながら酪農組合長を務めておられる長田日晴君、上市町で水田一・九ヘクタールを経営し、鶏五十羽を飼っているかたわら、農協組合長を務めている中川喜久夫君、同じく城端町で水田三ヘクタールを経営され、農協組合長をやっている上田忠正君、立山町で水田一・四ヘクタールを耕し、農協組合長をやっている藤城清一郎君、八尾町の山間部で〇・九ヘクタールを耕作し、開拓組合長をやっている小島甚勝君、大門町で水田一・八ヘクタールを耕し、鶏百羽を飼養している三川稔君、福野町で水田一ヘクタールを耕し、農協の婦人部長をやっている紅一点の木下緑君、石動町で田畑一・九ヘクタールを経営し、農業委員を務めている宮田喜作君、呉羽町で果樹園一ヘクタールを経営し、県果樹協会の副会長を務めている庄司宗典君の十一人のほか、富山県の特殊事情として、特に特産輸出チューリップ〇・五ヘクタール、水田三ヘクタールを耕作し、県花卉球根組合長を務めている礪波市の瀬尾正雄君の出席を求め、計十一人の陳述者意見を聞いたのであります。以下順にその陳述の内容を申し上げます。  まず、石黒武夫君は、参議院からこのような地力まで出向いて、なまの農民の声を聞いていただくことはかってないことで、大へんうれしいと前置きして、政府案基本法は格調の高い美文で、八頭身の美人のような法案であり、見た日はきれいであるが、近づきがたい感じがする。すなわち選択的拡大構造改善、近代化といった言葉が出てくるが、いずれも言葉のあやで、たとえば近代化資金でも、七分五厘の金利では手が出せない。富山県でも所得倍増が論ぜられるようになってから地価が上がり、都市近郊では天井知らずであり、山村では買い手がない。この状態では、協業も、農協への信託制も、空文になる危険がある。  特に申し上げたいことは、三法案とも後進地の地域的特殊性を考慮されていないことで、後進地では他産業へ転業といっても容易でない。民族の苗しろ論はけっこうであるが、貧農抹殺は許されない。また、これらの法案はあまりに政党的なにおいが強く、たとえば社会党案の内容などは、農民の考えていることがずばりと書いてあるところもあるが、もう少し将来の実現性について考えていただきたく、三百万ヘクタールの開拓論にもその点若干の不安がある。また政府案でも離農させ、人口を減らせば必然に経営規模が大きくなり、自立経営ができると考えるのは間違いであり、農村は今人手が足りず労賃が高くなって困っている。この法案で考えていることと農村の実情とはかなり違うので、この点十分に考えていただきたいと述べられました。  次の長田日晴君は、目下田植えの最も忙しいときで十分の考えもまとまっていないがと前提し、自分酪農の後進県といわれる富山県で酪農に力を入れてきたが、問題は資金で、長期低利の資金さえあれば酪農は必ず成功するが、基本法の近代化資金利子が高くとても借りられない。将来の農業は高度な技術を必要とするが、農村の技術者はみな出てしまうので、この対策がほしい。  また富山では特に土地等の基盤整備が先決問題で、土地改良、増産、所得増の線で農民の繁栄を築くように考えてもらいたい。農産物は豊作貧乏になりやすいから、自主的調整の機構を考えるとともに、それを裏づける政策が必要で、中間利潤を商人等に取られない歩どまりの高い販売流通機構を確立する要があり、この意味でも基本法を早く成立させてほしいと要望されました。  さらに、中川喜久夫君は、まず所得倍増より先に物価が四・七%上がり、逆に食料農産物は下落の傾向にある。このような傾向を改めないと、基本法は何にも役に立たない。これは理屈ではないので、農産物価格安定政策はよほど慎重に考えてやってもらいたいし、さしあたって本年度の米価は引き上げてほしい。たとい基本法案が通っても、また農林予算が大蔵省で毎年大幅に削減されるようでは何にもならないから、この点しっかりと固めておいていただきたい。  農村人口が他産業に流出するのは、農業所得が低いから自然に流れ出るのであって、この傾向は、農協農地信託の制度を設けても、現在の小作料ではだれも預けないであろう。県も工場誘致ばかりに一生懸命にならず、農工併振地区を設けて、農業と他産業の双方を振興しないと、所得の均衡は実現しない。選択的拡大も個人の自由意思にまかせておいては、実効を上げ得ないし、価格政策との関連が最も大切であるという意見を述べられました。  次いで上田忠正君は、きのう田植えを終わってきょう出席したとして、第一に農業基盤の整備の必要を力説し、国道や観光道路等はよくなっても、農道は耕転機も通れないから、耕地の区画整理に国の補助を増してほしい。  第二に、構造改善政策もよいが、農村の子弟が流出してしまい、農家には嫁も来ないし、むこも来ない。むこに来ても自分は勤めに出てしまい、親に農業をやらせるといった現状は放任できない。  社会党案共同化はよい考えだが、赤字を国が補償するくらいにしないと伸びないであろう。また政府価格安定政策長期見通しは、天気予報より当てになるまい。どうしても農家がそれによって損失を受けた場合、補償する規定が必要福である。  所得均衡の考え方には、社会党案の都市農村生活水準均衡の考え方を取り入れてほしい。政府案はその点ぼやけていて抜け道が多い感じがするから、国が責任を持って関係法令を早く通し、予算の裏づけを確保してほしい。政府基本法にはあまり期待が持てないが、ないよりましであるから早く通してほしいとの意見でありました。  続いて、藤城清一郎君は、新聞に私が意見陳述人として出席することが出たのを見て、友人が、農業基本法は「ありがたや節」のようなもので、実がないから、忙しいのに出るなと言われたが、それらの地元農民の気持を申し上げるために出席したと述べ、基本法と同時に、農業近代化十カ年計画でも出されるかと期待していたら、他産業所得倍増論が出てきたのは意外だった。確かに基本法案が出て農村は混乱している。養鶏と株を買った人とを比較してみると、鶏より株の方がもうかっている。この上選択的拡大でだれも彼も勝手に豚や鶏を飼ったら大へんなことになるので、基本法案が出されても、だれもその気にならない。基本法でもうけたものは、本屋と、種苗店と飼料会社で、いつでも農民が損をする。基本法案が出て飼料の値段が高くなったが、農林省は飼料会社の株でも持っているのでないかと疑いたくなる。基福本法が農業の憲法というなら、ほんとうに中身のある法律を作り、政府と政治家が責任をとってほしい。また、いわゆる共同化は、大衆が汽車の中を汚さぬようにならないとできないだろう。少なくとも農協整備強化してから共同化を考えてほしい。とくに農林予算をしっかり確保していただかないと、基本法案を通しても意味がないとの御意見陳述されました。  午後は一時から再開し、まず、小島甚勝君から、山間部農民意見を申し述べたいと前置きして、まず自分たちの息子がみな家を出てしまい。自分は祖先伝来の田畑を守るのが責務と考え、高い労賃で雇い入れつつ、まっくろになって働いているが、その収入はきわめて少ないと、六十六才の老農の心境を語り、続いて三案の批判に入り、政府案のあいまいな点、社会党案予算的裏打ちが心配な点、民社党案の折衷案的性格等を指摘し、開拓に対する政府案基本法が開拓を無視し、開拓者に不安を与えていること、経営規模を拡大し、所得を増すには、開拓より他にないから、山間部では林業経営と結びついた開拓をぜひ考えてほしいという意見を述べ、蚕、和紙生産、木炭生産等いずれも不振で、山村の経済沈滞のおりから、三党の基本法を一日も早くよりよい基本法にまとめ、成立させてほしい。しかし、継続審議等に持ち込まぬようにしてほしいと申されました。  また三川稔君は、社会党案に賛成するとし、一・三ヘクタールの耕作農民として、政府案基本法案に対する次の諸点を批判されました。第一は、自主経営についてでありまして、政府案では一戸当たり二・五ヘクタールの自主経営育成すると言っているが、零細農は大工場では臨時工中小企業で雇われているものは賃金が安く、他産業に雇われていても、土地を手放さない。それでどうして規模を拡大するのかわからない。この点で近代化を進めていく方法は共同化よりない。政府共同化のための資金融通の道を開く必要がある。  第二に、価格政策に問題があり、増産すれば価格が下がり、安定の保障がない。自分も一頭七千円の子豚を買い、一万言五千円で売ったが、肥育の利益は全部飼料代に払ってしまった。政府価格支持なしに増産はできないし、飼料等資材の価格統制も絶対必要である。農業基本法基本法であるから、早く通す必要はない。よりよい関連法案も準備して、政党の面子のための法案でなく、真に農民のための基本法を作ってほしいと要望されました。  次いで木下緑君は、昨日田植を済ませてやってきた。主婦の立場で申し上げたいことは、農村の主婦の座は従来の補助的労働から、漸次主体的立場に立つようになり、家事、育児労働とともに過重労働になっている。従って、農家の母としては息子の足どめと嫁探しに困っている。この原因は、農家が貧しく所得が低いからで、他の産業の従事者と均衡のある所得が保障されない限り、不安は除かれない。  農村の主婦を代表してお願いしたい点は、富山県は単作地帯で牛乳、卵、豚肉皆増産すると値段が下がって困るから、国の責任で価格支持をやっていただきたいこと、農村から過剰人口が流出するのはよいが、みな出てしまって婦人と子供と老人だけが農村に残るのでは困る。農業を引き合うようにし、兼業保証や他産業への吸収保障も考えてほしい。  三党歩み寄って慎重、審議し、農村が都市並みの生活を保障される真の意味基本法を作ってほしいと訴えられました。  さらに、宮田喜作君は、まだ植付が半分しか終わらないと前置きし、戦中と終戦直後血を流して供出させられ、ようやく米が余るようになると、自主的に発展を考えて選択的拡大でやれというのはひどい。最近の雑誌は、付録の方が大きい。基本法も付録の関連法案の方が重要だから、基本法は早く通し、関連法のよりよいものを、そして地方の実情に適するものを作ってほしい。富山県では水路、道路の整備が最も重要であり、区画整理等農業基盤の整備に力を入れ、米価労賃が高くなっているので当然引き上げ、農民が田植話しに、農業基本法ができれば百姓も五十五歳で退職し年金で余生を楽しめるだろうと語り合っているが、このような夢を実現するように努めてほしいと述べられました。  続けて庄司宗典君は次の一点について意見を述べたいとして、第一に選択的拡大はだれがやるか、勝手な選択をしないよう、また、安心して選択できるような条件を与え、政府が責任をもって最後までめんどうを見てもらいたい。自分果樹をやっているが少なくとも十五年、三十年の見通しがいる。ナシは反当たり二、三十万円の経費がかかり、植付後七年間は投資ばかりで収入がない。必要資金の八〇%しか融資しない。利子は七分五厘というのでは、自己資金のないものは選択できない。近代化資金利子は二、三分、少なくとも三分五厘以下にし、雪害対策等、地方の特質も考えてほしい。  基本法は三党超党派的に慎重審議され、むしろ関連法は先に提出され、臨時国会でも開いてよりよいものを作ってほしい。ただし流しては元も子もなくなるから流さないでほしいとのことでありました。  最後に、瀬尾正雄君は輸出チューリップ栽培者として、このような特産物が自立経営の確立にどのように役立つかについて述べられ、チューリップは水田裏作で栽培され、搬出に便利な二毛作可能水田ならどこでもできる。ただ花束にする必要上色の組み合わせが大切で、計画栽培と責任出荷が必要となり、そのため家族全員の結合による家族経営がよい。従って社会党共同経営には縁が遠いが、自由放任でなく品種研究、計画栽培、責任出荷のできる家族経営育成が望ましい。花を愛することは、世界平和のもとで外貨獲得のためにも高い収入をもたらす自立経営育成のためにも、基本法にこのような輸出農産物の振興策を大きく取り上げていただきたいとの希望を述べられました。  以上で全部の方の陳述を終わり、私と小林委員からあいさつを述べ、委員長の閉会のあいさつで午後四時会議を終わりました。  以上の会議を開くに当たり、富山県当局の一方ならぬ御準備と御協力を得ましたおかげで、きわめて静粛に、まじめに貴重な農業従事者各位の御意見を承ることができたのでありまして、これを機会に県当局に深甚の謝意を表して私の実報告を終わります。
  9. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ありがとうございました。  次に、第三班の報告を願います。
  10. 田中啓一

    ○田中啓一君 第三班の長野県における農業基本法案に関する調査の結果について申し上げます。  第三班は私のほか仲原委員、北村委員、棚橋委員及び森委員の計五名でありまして、会議は婦人会館で五月二十二日午前九時から行ないました。あらかじめ当委員会において御指名になっておりました十人の陳述人より意見を聴取し質疑を行なったのでありまして、以下これらの陳述人の陳述及び質疑によって明らかにされた意見を、発言順に概略申し上げます。  まず今井清君、これは農協の常務を勤める兼業農家でありますが、同君は、農業基本法各党がいずれも熱心であることに敬意を表するが、衆議院における審議あり方には煮え切らないものを感ずる。農民の三案に対する理解はいまだ不十分なことでもあり、農民のための法案制定していただきたいと述べられた後、内容的な事項に入り、土産については、政府案では選択的拡大、野党案では生産計画ということがうたわれ、農民も自己の立場から拡大に努めているが、価格面の十分な裏づけを用意すべきである。価格政策については、野党二案の方針は、生産費及び所得補償方式をとることを明らかにしているが、政府案も諸条件を勘案して定めるということでなく、もっと明確にする必要がある。  構造改善における社会党案考え方は、農民心理の上から問題があると思う。教育については、各案とも一応強調しているが、習得した技術等に対し資格を付与する等の措置を織り込まれたい。また、基本法の裏づけたる財政措置については、農村が望む予算を十分確保するとともに、村財政の現状からいって、地方交付税の算定基準に近代農業育成に伴う経費増を反映させるべきである。さらに関連法案あり方が重要であるが、農民農業団体の要望を十分取り入れていただきたいとの意見を述べられました。  次に、中沢善賢君、これは共同経営を推進している果樹の専業農家でありますが、まず、農業基本法案の提案により将来に希望を感じているが、何かもの足りなさを感ずると述べた後、主として政府案を問題として、第一に、農民の立場が今のままでよいのか悪いのか明らかでない。構造改善においても、自立家族経営を本旨とすることで他産業並みの所得を確保できるか疑問である。  次に、農業近代化の手段として協業が取り上げられており、この点はわれわれ農民としても関心が深いし、またそうあるべきだと考えている。しかし、協業の従事者は本質的にサラリーマンであり労働者であって、自立経営経営者とは異なるものであるから、自立経営を本旨としながら協業が成り立つものかどうか、もっと考え方をすっきりさせるべきである。  また、生産基盤の拡充が法案にうたわれているが、これは他産業従事者の所得と均衡させる目標からいって不可欠の問題であるから、ほんとうに思い切った財政投融資を行なうべきである。  価格問題は、法案にうたわれているけれども、従来の米価審議会あり方や生糸の経験から非常な不安があり、過去の轍を踏まぬよう措置されたい。また、西独流の思想が入っているようだが、予算の裏づけについても、西独が基本法制定後二倍以上の予算を計上しているといっても、彼我の間における農業の比重が違うから、十分な財政的裏づけが確保されるかという不安が残る。  結論的にいって、法人化や共同化の芽ばえが出ている現在、一刻も早く農業の憲法を制定することが「土の声」だと考える。しかし、以上に述べたようにいろいろ不安があるから善処されたい。  また、農政審議会委員にはぜひ農民代表を加えられたい。なお、農業団体の現状には問題があり、再編成せよとまで言わないけれども、互いの関係をすっきりさせるべきだと考えるとの意見が述べられました。  次に、坂下和三君、これは果樹主体自立経営農家でありますが、まず、昭和三十年に派米実習生として渡米して、アメリカの進んだ農業に驚嘆するとともに、わが国農業の地位が低く、その自然的社会的条件の劣悪さを痛感したと述べた後、農業は一国だけの範囲で考えるべきでなく、世界的な国際競争場裡に立たされているものである。しかも、日本農業は現状のままではやがて脱落するおそれがあり、このようなときに基本法案が立法されることは発展の糸口をつけるものとして意義があると考える。しかし、先進国より立法化がおくれたことは、農政軽視の証左であろう。基本法は国に義務を課するとともに農政の基調となるべき方針を宣明しようとするものであると考えるが、これをどう運営するか、また基本法に基づいて具体的な政策がどう整備されるかが大きな問題である、と述べ、続いて、政府案中心として、前文は農業の使命、近代化への契機及びその向かうべき道を示しており、三案は考え方はそれぞれ異なるけれども、趣旨は同じだと考えられるし、その趣旨に異存はない。しかし、農業の発展と農民の地位の向上が国の発展をはかる上に不可欠の条件であることを第一に掲げるべきだと思う。  次に、一番の問題は選択的拡大である。成長農産物たる果樹畜産に転換するという考え方はよいが、現状においても非常な勢いで転換されており、私の村でも十年後には果樹、リンゴが五−六倍、長野県全体でも五倍に達すると見込まれていて、価格暴落の不安が強い。成長部門を発展させるといっても流通及び価格面のしっかりした裏づけが望まれる。なお、果実の流通問題としては、中間マージンが大き過ぎること、バナナ等の輸入品との競合、園芸連と経済連との二本立の解消等の問題がある。次に、価格政策においては、野党案はその方針が明確であるが、政府案はあまりにばく然としているから、農民が自信をもって転換できるよう具体的な方針を明らかにすべきだ。  構造改善については、具体的な考え方を明らかにすべきである。自立経営育成は協業や集団化で簡単に解決できないと考えられるし、政府が重視する農業人口の流出も、経済好況が終わったときの対策が明らかでない。また、家族経営協業化の間には大きい矛盾が内在しており、協業は家族経営の特色を否定するものである。また、自立経営達成のためには長期低利の土地購入資金と施設資金を要し、諸外国の例から見ても、せいぜい三、四分のものが望ましい。しかも、融資を受ける農家は、これから自立しようとする不安定な者こそ必要なのであって、今までのありきたりのものでなく、思い切った投融資でなければならない。  また、相続の問題は、憲法の規定から見て重大な問題があるが、次、三男対策その他社会的にも問題だと考えられる。  次に、人口問題であるが、これは問題の核心であるにもかかわらず、法案に全然触れられていない。国は積極的に海外移住を推進すべきである。また、人材の問題であるが、私の村の一番の問題は優秀な青年が離村することである。法案には教育の充実がうたわれているが、思い切った人材養成のための具体的な財政措置を希望する。  最後に、基本法農民の利益のための法律であるから、農民の理解と信頼がなければならない。桑の例のように、今までの農改は農民にとって裏切られた感じがあるので、慎重に討議し、農民の納得の上で真によいものを立法化されたいとの意見が述べられました。  次に、大槻正芳君、これは町農業委員農協理事を兼ね、著書もあるインテリの兼業農家でありますが、同君からは、もしほんとうに立法するのであれば、難解な言葉が多く、農民に理解しがたいこと、価格政策における方針が不明確であること、自立家族経営という経済合理性だけを重視した目標に不安を感ずること、選択的拡大の方向たる果樹畜産家族経営で可能かという疑問があること等の問題が考えられるという意見が述べられました。  次は、山口文彦君、耕種の専業農家でありますが、まず最近の農村の実情として、青年が多く転出していて、村に残った青年の間には、農業に真剣に取り組む気力に乏しく、手っ取り早い日当かせぎに出ている。そうして農繁期には手不足に悩み、農業労賃は値上がり気味である。一方、農家は一種のブームにかられて、競争で機械を導入したため、負債が増大し、しかも農産物価格は値下がり気味であって、農家はかような現状に不安と悩みを抱いていると述べられた後、法案の内容の問題として、選択的拡大がうたわれているが、経営内容の転換は容易でない。たとえば、麦の転換でも反当二千五百円の補助金だけでは困難であって、適切な指導が必要である。また、構造改善のためには経営規模の拡大を要するけれども、農村においては日ごとに兼業が増加し、周囲の羨望すら浴びているほど恵まれているが、土地を手放そうとする傾向が見られず、加うるに地価は又当三十万円もしていてこれを買い入れても採算上も大きい問題である。  また、流通面では、牛乳の例が端的に示しているように、矛盾が大きいから、その合理化対策を進めるべきであり、価格対策の一つとして生産調整や貯蔵保管もあわせ考えられなければならない。また、農業機械等もメーカーにより価格の幅が大きいから、規格を統一してその価格の安定をはかるべきである。  次に、経営共同化は困難であっても、これを目標に置き、部分共同から全体共同にもっていくよう国と農民が協力し、個人主義を払拭することが必要である。そうして地域の条件や農家の特殊技術をも考慮した上で、計画的に林野を開発し、資金の手当を行ない、共同化のためのモデル施設を設けるべきである。生産及び需要の長期見通しは重要であるが、これに基づく価格安定対策及び資金等の措置が伴わなければならない。  次に、農業労働の面においては、特に婦女子に過酷であるから、他産業並みのゆとりのあるものとするよう農政全体からの配慮が必要である。価格安定については、主要農産物生産費及び所得補償方式とし、農民代表が参画して決定すべきである。農政審議会の設置は妥当であるが、その意見を尊重するとともに、農民代表を入れるべきである。  結論的にいって、問題は容易でなく、三案にも一長一短があるから、超党派的に十分な審議を尽くされることを希望する。なお、近代化資金の設定や農業法人の法制化などにとらわれて、早期成立を望むことには反対であって、真に農民のための基本法制定していただきたい、という旨の意見が述べられました。  次に小山主君、農協組合長であり、果樹の専業農家でありますが、同暦からは、農産物価格が頭打ちの傾向にあるに反し、資材その他の値上がりで支出が増加して、農業の将来に対し一般に非常な不安を感じている。これは主食の消費内容の変化を中心とする食糧の消費構造の変化という事態や貿易自由化の問題とも関連しているが、農産物については、国際競争力が十分になるまで自由化すべきでない。  市場及び流通については、たとえば、リンゴのごときは、生産価格一個十五円ないし二十円に対し、消費者価格は四十円ないし五十円に達しているし、ビール麦も価格が低過ぎる。またガソリン税のごときも、法案第一条の所得の均衡の趣旨に沿っていない。生産費を確保し、流通の合理化がはかられるべきである。  農業従事者についても、その老令化と減少が憂えられる。たとえば青年は村に残ることを欲せず、嫁に来ようという人は少ない。農村に残った人の多くは中年以上であり、これらの人は近代農業のにない手としての適格性に乏しい。  選択的拡大の問題については、百八十度の経営転換に賛成できないから、麦の買入れ制限の方針を撤回すべきであり、畜産物についても価格に問題が多い。  自立家族経営共同化については、具体策が明示されていないが、今後貿易自由化の進展に伴い、自立経営育成が不可能になるおそれがある。また、近代化資金利子が七分五厘では、農産物価格の保障がない限り借入れ困難であって、さらに長期低利の資金が望ましい。共同化には所得の配分方法、グループの長の決定方法、構成員の融和等種々の問題があるけれども、方向を示すことは必要であろう。共同化は一般に成長部門で進んできたが、後進部門にも最近及んできた。今年は私のところでは労力の関係で、農繁期の水田作業の共同を行なうことにしているが、水田共同化あり方としては、現在の耕転機では経済性も少なく、労力関係からも二十ヘクタールくらいの規模が必要であろう。いずれにしても、共同化は部門別に進める必要があり、二・五ヘクタールの自立経営は過小規模である。  法案第六条の国会に対する年次報告は一つの前進であるが、農政審議会の役割が大きいから、農民代表委員を構成すべきである。  また、第十条の信託においては、その価格農地を購入する農家にとって問題であり、貸付の場合は、その方式が問題であろう。さらに価格支持農業が曲がりかどを曲がりきるまで維持すべきである。  最後に、基本法案は早く成立させよということでなく、十分審議を尽くされることを希望する、との意見が述べられました。  次に、福沢一郎君は、果樹主体の専業農家でありますが、同君は政府案中心として、まず、前文には農業の立ちおくれの原因が指摘されているが、第二次、第三次産業の戦後の発展は、国の援助に由来するところが大きいのに対し、農政は零細経営の維持にその基調を置き、MSA協定による余剰農産物の受け入れがこれに拍車をかけ、貿易の自由化がこれに続くおそれがあるという事情が指摘されていない。  次に、農業人口については、青年が流出して手不足を来たしたため、機械化や共同化が進んでいるといっても、老人や子供の労働強化を招来しているが、その対策が明らかにされていない。  次に価格問題であるが、リンゴは現在年一人当たり十八キログラムの消費であるに対し、十年後は四十一キログラムの消費がなければ生産過剰に陥る計算である。しかし、この十年後の消費量は現在のアメリカと同じ水準であって、これが可能かどうか、また価格が保障されるかどうか問題である。また、果実の国際比価には非常に差がある。さらに、最近の実績では、生産の増加につれ、価格のジリ安という傾向が顕著であるが、現在果樹の栽培面積は飛躍的に増加しているから、今後もこの傾向が続くものと思われる。今後このような状況の中で生産政策がとられるわけであるが、はたして生産の倍増が所得の倍増をもたらすかどうか疑問であり、経営の不安定が予想される。畜産についても牛乳価格の下落や大資本の進出という不安がある。  また所得政策においては、所得均衡の相手方は、町村の勤労者と書かれており、これでは農業者の経営者としての側面を無視することになる。  さらに、構造政策においては一・五町未満の零細農の解消を予定しているが、勤労所得だけでは不十分ということで兼業している者が多いのであって、これから農地を吸収することはできないし、従って自立経営育成は困難である。また未解放部落は特に貧しく問題が多い。  結論的に言えば、九%の高度成長に依存する政府案は、この同慶成長が終われば根本的にくつがえされることになる。大産業の近代化、合理化農業版という感じが強いが、ムードだけの案には反対である。真に農民中心農業基本法制定していただきたい。なお、果樹の災害補償制度を確立されたい、農業災害補償制度において三反未満層を別扱いにすることは問題であり、やはり社会保障としての性格を強める方向に改善すべきである、という意見が述べられました。  次に、兼業農家農村婦人として市川しげき君は、私のところは長野市内の旧大豆島村であるが、八百戸の農家のうち専業はわずか五十戸であり、農民農業に安定感を持っていない。価格安定が必要であるが米や麦にしても所得格差を考慮した農民の納得できる価格にされたい、また酪農は不安定であり、桑を抜いたあとのリンゴも価格に問題がある、結局兼業が大部分を占めるに至り、主婦農業という形が免れてきたが、これは主婦の内職であり、勤労所得が低いことに由来する。  政府は大農経営を考え、信託制度を設けようとしているが、地価が高く採算上問題があるし、一方婦人の職場も確保されなくてはならない。その方法として、区画整理を実施し、婦人による共同経営を行なうことが考えられる。  農業基本法については、婦人は政治に無関心であるし、一般にも難解すぎて十分理解されていない、しかし他産業並みの所得が確保されればよいのであって、三案ということでなく、わかりやすいものを超党派的に一日も早く制定されたい、という意見が述べられました。  次に開拓組合長を兼ねる耕種専業の杉山雪雄君は、農業基本法案に対する国会の態度に賛意と敬意を払うが、農民は家庭における婦人のように従順であるから、超党派的に農村問題を審議し解決していただきたい。  法案の内容は全体としてわれわれの気持に合っているが、選択的拡大は計画的に行なうべきであり、また三百万ヘクタールの開発には何か不安を感ずる。  興業の近代化は、経営共同化中心であるべきだが、これには種々の困難があり、国は自立経営育成をはかりながら共同化を真剣に考え、計画的に実施すべきである、要は所得の均衡にあるのであるから、家族経営のまま向上し得るものはこれを伸ばし、共同化を要するものはこれを進めるということである。  価格については、国が全面的に補償することは困難であろうから、現状に適した最低補償価格を決定し、この価格に基づいてこれに適した経営規模や経営形態が定められてくると考えられる。イデオロギーを離れ、現状を中心として生産費の引き下げをはかることとし、国は土地その他の生産条件を整備し、農民経営に専心するという方向をとり、その上で農協市場価格の問題を処理できるよう、その充実をはかるべきである、人口削減問題は、所得の向上ということから起こったもので、三案ともその点は同様であるし、五割以上の流出がなければ、目標の達成は不可能だと考えられる。そこで、転職補填、社会保障及び最低賃金制を充実し、中年者を雇用する会社に補助金を交付し、工場の地方分散をはかるべきである。  なお、僻地農業は最も困っているから、その実態に即した特別措置が必要である、また、政府案土地と水の有効利用は重要であるが、開拓地の現況は容易でないから、開発は慎重にすべきである、とり意見を述べられたのであります。  最後に、酪農の共同経営を行なっている小林甲子男君は、生産拡大土地の開発は、交通条件や自然条件を勘案して行なうとともに、山間部における機械化や経営規模の拡大についてもその方法を検討されたい、私は開拓者の二代目であるが、私の代でようやく人並みになった、こういう点から戦後の開拓は誤りであり、今後の土地開発においても既往の轍を踏まないようよく考えて実施すべきである。  私は昨年六月酪農の共同経営を始めたけれども、また新農村建設事業として補助を受けたが、農業法人が認められないため融資を受けることができず、つなぎ融資に依存しているような状態であって、経営上の大問題である、従って農業基本法案及び関連法案が一日も早く成立することを希望している、との意見を述べられました。  以上が陳述人の意見の概要であります。会議はきわめて平穏に進められ、計画通り三時三十分に散会したのであります。この機会に、会議万端でお世話になりました県当局の御尽力に対し深甚の謝意を表しまして、第三班の報告を終わります。
  11. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 以上で各班の派遣委員報告は終わりました。   —————————————
  12. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 次に、漁業権存続期間特別法案閣法第一〇五号、衆議院送付)を議題といたします。  本案は、まず去る十九日衆議院より送付され、本委員会に付託されました。なお、本案は衆議院において修正議決されております。その修正部分はお手元に御配付いたしました通り昭和三十六年五月一日から施行する。」とあるを、「公布の日から施行する。」と改められたものであります。  それでは、本案について御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。  速記をとめて。   〔速記中止
  13. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記を始めて。  他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。それでは、これより採決に入ります。  漁業権存続期間特別法案を問題に供します。本案を衆議院送付通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  16. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 全会一致でございます。よって、本案は全会一致をもって衆議院送付通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成その他自後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。   —————————————
  18. 東隆

    ○東隆君 この際、これに関連をいたしまして、韓国ノリのことをお聞きいたしたいと思うのでございますが、よろしゅうございますか。
  19. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 簡単に願います。
  20. 東隆

    ○東隆君 韓国ノリの問題については、最近一億枚の輸入が決定をされまして、そうしてこれを中心にして問題が起きておるようであります。昨年は約二十億枚程度の国内生産でございましたが、本年は聞くところによりますと、四十億枚、約二倍の生産を上げておる。そういうような情勢のもとにあるときに一億枚の輸入と、こういうことになったので、生産者の方面においてはこの一億枚の輸入に対して相当心配をいたしております。ところが、御承知のように日韓関係の問題、その他から考えて、そうして韓国の要望、あるいは日本国内における輸入業者の要望は二億五千枚ほどこの際輸入をしたい、こういうような要望もあるようであります。従ってこういうような政治的な情勢その他を中心にしてノリ生産業者等においては非常に心配をいたしておるようであります。  私はこういうような機会に、昭和二十九年以来問題になりましたこの韓国ノリの輸入について、両院でもって、決議をもって一億枚を限度にして輸入をする、こういうようなことを取りきめてございましたが、これを私はやはり国内生産を上げ、その他十分に生産業者を安心をさせるためにもこの形を継続していくべきでないかと、こういうふうに私は考えておるものであります。そういうふうな意味で、この関係は、水産庁、また通産省との関係においていろいろ問題があろうと思うのです。従ってこの際両者からその状態その他についてのお考えをお聞きして、そうしてできるだけ在来の方法を踏襲していくような形でもって取りきめておくことが必要でないかと、こういうふうに考えておるわけであります。そういう意味でどうぞ一つ水産庁の方面における考え方、それから通産省の考え方、これをお述べを願いたいと、こう思うわけであります。
  21. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 韓国ノリにつきましては、その輸入手続等につきましては、後ほど通産当局から御説明があるかと思いますが、御承知のように国内のノリの生産は浅海増殖で出産を奨励しているという関係もありまして、本年はただいまのところ、私どもに入った数字によりますと、少なくとも三十六億枚、昨年は二十三億枚でございます。相当の増産を期待されております。あるいはもっと伸びるかもしれません。ところで国内のノリの価格はそういった国内のノリの出離の増加に伴いまして、いわば価格も低落しておる。昨年一枚かりに八円としますと、それが本年は四円五十銭程度に低落しておる、生産価格は。こういう事態が生じております。これはあながち韓国ノリの輸入というものと関連した問題でなく、ノリの増産という問題から、事実から生じたものであろう、こういうことに考えております。  しかしながら、私どもとしまして、しからば増産を片一方に奨励してノリの価格の下落は放ったらかしでいいかということは私ども十分考え、反省し、それに対して今後対策を至急研究しなければならない。しかし一方、かように生産者の価格が下がっておりますにかかわらず、消費価格というものはほとんど下がっていないというのが現状でございます。そこでこの価格形成の過程についてメスを加え、もっと公正妥当な価格ができるようになれば消費者価格は下がって、しかも生産者の手取りがふえるというようなことが今後可能ではないか。ことにノリは生鮮水産物と違いまして、貯蔵保管がききますので、そういう点にかんがみまして、私どもとして今後ぜひこれらの点について至急具体的な案を作って対処して参りたい、こういうふうに考えております。  ところで、一方韓国ノリにつきましては、御承知のようにもうここ数年来国会でも問題になっておりまして、昭和三十一年でございますが、参議院の農林水産委員会で決議がありまして、政府に申し入れがございます。そのときは一億枚を限度とするということでございました。従いまして政府といたしましても、参議院の農林水産委員会の御意思に従いまして、従来もこの問題を処理して参ったわけでございます。しかも、その処理するに際しましては、内地産のノリの出盛り期と競合しないようにということで、四月から九月までの間に限る、こういうことで毎年取り扱っておるわけでございます。いろいろ日韓関係の問題等もありまして、韓ノリの輸入が必要としましても、私ども漁業生産、沿岸漁業をあずかるものとして、それが沿岸漁業に与える影響を最小限にとどめるという意味におきまして、従来そういう措置をとって参ったわけでございます。今後におきましても、この参議院の農林水産委員会の決議たり、あるいは衆議院においても表明された御意向というものも同様でございますので、この決議なりそういう御意向は十分尊重して参るということで、昨日農林大国もはっきり言明されております。
  22. 山本重信

    説明員(山本重信君) ノリの輸入問題につきましては、国内の需給関係につきましては、農林省の水産庁の方と十分に御連絡をいたしましてそちらの御意向をお聞きいたし、他方相手方の韓国との関係がございますので、その点につきましては外務省の方からいろいろまた御意見がございますので、そちらからの御意見も十分に徴しまして、通産省としてはこの関係三省協議の上で、毎年ノリの輸入総ワクを幾らにするかということをきめて参っておるわけでございまして、今後もそういう方針をとって参りたいと思うのであります。  なお、通産省といたしましては、最近これは世界的な一つの現象でございますが、後進国との貿易がとかく日本側の輸出超過になりまして、そのために相手の国から日本品のボイコットをするという傾向が実は方々に起こっておるのでございます。そうした場合に、日本としては、従来は輸出振興といいますと、売ることを考えればよかったのでありますが、どうしても今後輸出を伸ばしていくためには、同時に買うことを考えなければいけない。ことに、後進国は概して外貨準備等が少ないのでございますから、やはり日本もできるだけ貰う努力をするということが輸出振興上必要になって参っておるのでございまして、そういう観点から国内の需給状況が許す範囲において、なるべく後進国からのいわゆる一次産品の買付には日本側も努力をするということが必要になって参っておるわけでございます。  韓国につきましては、御存じのように両国間の決済はオープン・アカントで行なわれて参っておりますが、すでに現在でも四千五百万ドル日本側が輸出超過になっておりまして、それがオープン・アカントの貸し越し残として焦げつきになっておるわけでございます。昨年の貿易を例にとりましても、日本から韓国に対する輸出が六千八百万ドル程度でございまして、なおそのうちにはICAの資金による輸出が四千万ドルございますので、二千八百万ドルくらいが一般輸出でございますが、それに対する輸入千四百万ドル程度でございまして、やはり日本側の輸出超過ということになっておるわけでございます。できるだけ通産省といたしましては、両国間の貿易を拡大さしていきたいという気持でございますので、国内の需給状況その他が許す範囲において、なるべく拡大していきたいという気持を持っておるわけでございます。そうした基本的な方針がございますが、同時に国内の生産業者の立場等も推測をいたして、十分に御意見を聴取いたしまして、今後の方針を立てて参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  23. 千田正

    千田正君 関連もありますし、私も質問したいのですけれども、しかし時間の関係があるのですが、一体今の韓国ノリの問題については、時間をどれくらい取っておりますか。これを根本的に議論するというと、半日ぐらいやりますよ。
  24. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記とめて。   〔速記中止
  25. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記つけて。
  26. 清澤俊英

    清澤俊英君 今水産庁の、あなたの方の言われることはよくわかります。わかりますが、先の西村さんの報告にありますように漁民の手元から四円くらいだと、こう言う。それが三倍ぐらい市価で出ているのだから、この前のこの問題が問題になったことを僕は言うのですよ。大体今のノリなんというものは高等食ですよ。一般食ではないですよ。そういう点を直していけば、倍ぐらいまた入れられるかもわからない。そういう点を考えないで、何かあなたの御説明を聞いていれば、結局日本の漁民を擁護することも考えられるが、輸出対象としては、あと言わないだけの話です。これでは全く納得できませんですが、ほかに拡大して輸入する道も、価格のつけ方、指導の仕方によってはあるのじゃないかと思う。実際問題として、やみで大体一億ぐらい入っているのですか、そんなものはどこかへ隠れておってわからない、そういうことをいま少し考えられないのですか、どうですか。
  27. 山本重信

    説明員(山本重信君) 御質問の趣旨ちょっと私了解できないではなはだ申しわけないのでございますが、韓国からは実は韓国政府から日本に対しましては、前から片貿易になっているということで、できるだけ日本側でも韓国の産品を買ってくれという要望でもございました。ほかの物資でもノリ以外に無煙炭とか、魚とかいろいろあるのでございまして、それぞれの物資について、できるだけ国内の需給が許す限りたくさん入れようという努力をしておるわけでございまして、そちらの方の努力は努力で十分いたすわけでございまして、ノリにつきましても、同じ気持で国内の需給が許す範囲においてそうした線に沿って考えていくべきではないかというふうに考えておる次第でございます。今年は特に生産が非常に多うございましたので、水産庁の方でもその点については十分に考慮を払うべきであるという強い御主張がございましたので、われわれとしてもその点については十二分に考慮を払い示して、三省協議の上で、先般一億枚を入れるということを決定したような次第でございます。
  28. 森八三一

    ○森八三一君 議事進行。ただいまの韓国ノリの問題は、これは非常に重要な問題で、今審議しております農業基本法の関係からも、貿易自由化ということと関連してきわめて重要な内容を持ってくると思う。わずかに五分や六分ではこの問題はいかぬと思う。のみならず、ただいまの水産庁長官の御発言も私は納得できぬ点がありますし、ことに通商局の力の御説明は、全く生産者を無視する態度であろうと思います。これでは、そういう考えで、今後諸般の農林行政が進んで参るといたしますれば、農業基本法の点につきましても、重要な問題が起こると思います。でありますから、さらに詳細にやらなければならぬと思いますので、三十日に農業基本法の問題が予定されておりますが、それが済みましたあとで、時間がおそくなりましてもそのあとで御勉強願って、少なくとも二時間か三時間取りまして、他の法案審査に支障を来たさないように、時間を取りまして、夜になってからでもけっこうですから、もう少し煮詰めてこの問題を十分に討論をいたしたいと思いますので、そういうような取り扱いをされたいということを希艇いたしますので、お諮りを願いまして処置を願いたいと思います。
  29. 亀田得治

    ○亀田得治君 あらためてこれは一つ理事会で相談するということにいたします。
  30. 千田正

    千田正君 ちょっとつけ加えて水産庁長官に要望する点があります。ただいまの漁業権存続期間特例法が通過いたしましたが、私はこれに付随いたしまして要望を申し上げたいということは、一方においては、農業基本法案をただいまわれわれが審議中であります。真剣に審議しておるのですが、一方においては、これに見合うような漁業の問題、いわゆる漁業基本法とも申すべきところの沿岸漁業振興法案が、いまだ政府として提案されておらない。片一方においては漁業権法は審議して通過しているのだが、この原法になるところの沿岸漁業振興法というようなものは、いまだ爼上に上っておらないということは、非常にこれは感心できないのでありまして、この法案政府として考えておられるのか、どうか。ただいまほかの社会党あるいは民社党の方においては、その案は出されている、あるいは出そうとしておられるようでありますので、政府としての考えをこの際はっきりしていただきたい。
  31. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 沿岸漁業等振興法につきましては、目下政府部内におきまして、関係各省との折衝を進めております。しかし、ただいまの御指摘になりました漁業権存続期間の特例法との関連につきましては、実は沿岸漁業、あるいは漁業全体を通じて、その法的な基盤を与える基本的なものは漁業法である。組織の面につきましては水産業協同組合法であります。これらにつきましては、御承知のように、去る三月の末の漁業制度調査会からの答申がございました、この答申の線に沿いまして、一つ両法の改正案を準備いたす。これは両法、沿岸漁業等振興法と関連する部面も相当ございます。しかも、制度的な面につきましては、漁業法の問題として取り上げられるべき問題と思います。いずれにしましても、御指摘のような点につきまして、私どもとしては全力を尽くしてすみやかな機会に提案をしたいというふうに考えております。
  32. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 本案については本日はこの程度で、取り扱いについては理事会で決定することにいたします。
  33. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 次に、農業基本法案閣法第四四号、衆議院送付農業基本法案(参第一三号)農業基本法案(衆第二号、予備審査)。以上三案を一括して議題として質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いします。
  34. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 実は私は先日の質問は、その前に、委員会にいなかったために、第二章と第三章、第二章についておもに質問申し上げたわけなんでございますが、きょうは、構造改善の問題について質問する前に、その前提として、少しく聞いておきたいわけでございますが、第一条の、国の農業に関する政策の目標という項について、まず、構造改善に入る前にお伺いしたいと思います。この第一条の後半、後段の方に、「農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むことを期する」「ことを目途と」すると、こういうようにうたってあるわけでございますが、先ほどの長野県の聴聞会ですかにおける報告書の内容の御説明の中にもありましたように、やはり農村においては、所得均衡だということが、重要な要素となっているように報告されております。従って、この第一条に、所得均衡というこの言葉をうたってないわけなんでございますが、これをなぜうたわなかったか。こういう点の理由をもう少しく、前の説明ではちょっと納得がいかないところがありますから、まずお聞きしたい。こういうように思います。
  35. 大澤融

    政府委員(大澤融君) この点しばしば大臣等からも説明があったのでありますけれども、農業の問題を問題にいたします場合に、基本的にどいうことかということは、一つは農業生産性が、ほかの産業に比べて低いこと、それからもう一つは、それに関連することでございますけれども、農業従事者の生活が、ほかの産業の従事者に比べて見劣りがしているということだと思います。そこで、そうした問題を明らかにして、第一条に書いてございますように、生産性と生活とを問題にして、国の施策をやります場合には、そうしたはっきりした目標に二つの問題を掲げることの方が、視点がはっきりしていいわけです。所得ということで、あるいはくくりようがあるかと思いますけれども、所得という言葉の持つ意味は、今申し上げた能率の観点、つまり生産性の問題と、生活、いわば福祉の観点と、二つの点が総合された形になって表現されるかと思いますけれども、そういういわば問題を、所得ということにすると、あいまいにするのじゃないかということが一つ言えると思います。そこで、私どもは、生産性と生活という問題に分けて、国の施策をいたします場合の目標を明らかにした、こういうことでございます。
  36. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 ただいまの説明では、生産性が低い、それから生活が、他産業と非常に格差がある。所得ももちろん格差があるわけなんだ。しかし私どもは、ちょっと考えてみて、やはり所得が向上しなければ生活水準を他産業並みにすることはできない。こういうように考えておるわけなんです。で、まあただいま大澤さんの説明もわかるのでございますけれども、結局、正直に言ってもらって、実は農業基本法という法律で政府がそういうことをきめて、政府が、所得を均衡させるのだというような義務を法律で負っても、実際に将来所得を均衡させ得るという、はたして何といいますか、非常に困難性が多くて、そのことができないと、こういう一つの何か見通しが政府としてあるからこそ、所得均衡をあえてうたわなかったのじゃないかと、こういう疑点が残るわけなんです。この点はどうですか。
  37. 大澤融

    政府委員(大澤融君) もちろん私ども、目標でございますから、一つの理念的なものだと思いますけれども、特に生活の均衡ということで、所得の均衡と言わなかった点、いわば第二番目の目標についてのお話かとも思いますけれども、この点については、これもしばしばお話が出たのでありますけれども、第三の点は、今申し上げましたように、所得ということが示す中の福祉の観点を取り上げておるわけで、ただ福祉の観点から申しますと、所得ということだけではむしろ狭くなるわけです。つまり生活いたします場合に、もちろん所得あるいはその消費支出が中心的な問題になるということは、これは当然でございますけれども、たとえば生活様式の問題ですとか、あるいは最近よく言われます環境整備と申しますか、社会資本の充実というようなことも、生活のレベルの問題に関係してくることであります。あるいは、同じ消費支出額でありましても、生活消費の仕方が違えば、いわゆる生活改善というような問題もその中には入ってきましょうし、そういう意味で、単に所得の均衡ということよりは、福祉の観点から、もっと広い角度からながめるという意味で、生活の均衡ということを掲げたわけでございます。
  38. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 それから、この所得を増大するという問題と関連するわけですが、農民の所得と都市の勤労者の所得というものが、ある程度均衡してこないと、ただいまおっしゃるようなことが、私たちとしては、生活様式の改善というような問題も、見通しがきわめて不安定じゃないかというように感ずるわけなんです。そういう意味から言って、実際に政府が所得の均衡ということをうたい得なかった一つの理由としては、農民と都市の勤労者の所得を将来比較するという問題について非常に困難性があるではないか、無理ではないかというように感じられる。従ってそういう点からしても、ここに所得の均衡ということをうたわないで、あえてこの法案の中に生活の均衡というような問題を持ってきたように、どうしてもそこに疑点が残るわけなんです。もしそうだと、ただいまの御説明のようだとするならば、やはりその所得の均衡というのは、重要な要素ですから、やはりそういうような問題についての、将来都市の勤労者と農民との所得が均衡化していくのだ、もちろん、生活その他の問題はおっしゃる通りとするならば、所得も均衡していくんだという、何か説明等が、あるいは見通しというものが説明されないと、私が言うような疑点が残ってくるのではないか、こういうふうに思うのですが、この点一つ。
  39. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 国がいたします政策の最終目標といたしまして、今申し上げたように、また法案に書いてございますように、生産性と生活ということを取り上げましたのは、ことにその後段の生活の問題は、国が政策をやる場合の最終目標は、生活、福祉がどうなるかということになるわけです。その福祉を獲得に到達するための手段としては、ここにも書いてございますように、所得を増大するということは大きな一つの手段になるわけで、しかし、それのみに限らないのであります。先ほど申し上げたようなことがいろいろあるわけでございますから、生活の均衡というような場合に、最終的な目標は福祉でございますけれども、それを均衡しているかどうかというふうなことをはかる場合には、一つの試算として所得を比べてみるということも、これは当然あり得ることだと思っております。
  40. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 実は私どもは、この問題を非常に重視いたしまして、党で基本法案を出してあるわけなんです。この問題については、今大澤さんのおっしゃるような議論がありましたし、また私の言うような議論もあったわけです。しかし、問題は労働者ばかりでなくて、人たちはすべて所得から発して、自分の所得がふえることによってのみ、初めてそこに生活様式というものは変わってくるわけです。現実に農村へ行ってみても、その富農の家には、電気器具にいたしましても、三種の神器がそろっているわけなんですね。洗たく機からテレビからみんな、冷蔵庫からそろっているわけなんです。しかしながら、そうでない中農以下の家は、所得が実際少ない。兼業しておっても少ない状態なんです。従って、そういう観点からいくと、生活改善ということは、全然不可能な状態になっておるという現実、これを見ましたときには、やはりそれはたかなか将来他産業と所得を均衡さしていくということは、非常に今の政治経済の実態の中から、むずかしいことでございましょう。しかし基本法は、将来農業の飛躍的な発展を中心にして構想を考えておるというならば、当然その重要な要素である生産性が低いという問題と、生活の格差が多いという問題と、所得というものが絶対の必須条件であるならば、当然このことをうたうべきだ、こういうふうに思うわけです。そういう点で、私どもの第一案によっては、政府案と違いまして、生活という問題と所得という問題を、並行して、同一のものとして、これを掲げておるわけです。こういう点について、私はやはり政府としても、自分の案にあまり固執しないで、やはりこういう点については、もう一歩前進すべきではないか。こういうように考えるのですが。
  41. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 安田先生のせっかくの御意見でございますけれども、先ほども申し上げましたように、所得という言葉で、政策の目標とするところがあいまいになるということが一つと、それから特に農民の、農業従事者の福祉という観点からは、もちろん今おっしゃいますように、所得が増大しなければ、福祉ということはなかなかむずかしいことですけれども、究極の目標は所得というようなことだけじゃなくて、いろいろな生活改善ですとか、環境というようなものを合めた生活の問題になるわけでございますから、そこで生活と、こう言ったのでありまして、私ども、この法案の内容を、通して見ていただくと、おわかりになっていただけるのだと思いますけれども、所得を増大するということのためには、たとえば構造改善政策もそうでございますし、あるいはまた価格安定制度もそうでございますし、構造改善の中の協業というようなことについて、もちろんそういう感じがあるわけでございまして、所得を増大するということはもちろん必要ですけれども、国の政策の目標としては、それだけに尽きるのではなくで、究極のやはり福祉をねらうということでなければならない。こういう気持で、第一条のような表現を用いておるわけでございます。
  42. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 それでは、なおこの問題にいつまで固執しているというわけにもいきませんから、先へ進みますが、この第一条を見て参りますというと、他産業との間に生産性の格差があるから、その格差が是正されるように生産性を向上していくのたということが一つと、もう一つは、先ほど申し上げたように、農民の所得を増大して、他産業従事者と均衡する生活を営むのだと、こういうように、同時に生産性と所得という問題あるいは生活という問題とを、同時に目的として定めているわけなんです。これを考えまして、そうするというと、生産性が向上すれは、所得がそのままにふえていく、そうして同時に生活が均衡していくのだと、こういうようなことにはならないのじゃないかというようにも考えられるわけなんですよ。生産性が上がれば、生活がよくなっていくのだ。ところが第一条は、そういうように、一度に二つの目的を掲げているわけなんですね。で、特に私は、今までの農村における果樹の問題を見ても、確かに増反している。あるいはその近代的な病虫害の防除の方法であるとか、あるいは耕作法が出て参りまして、それであるいは共同化していろいろ作業やって、確かに生産性は上がって参ります。そうして単位労働時間内におけるところの収入というものはふえております。生産性が上がっている。しかし全体とすれば、生産過剰というような問題やあるいは市場の関係、経済的な諸観点によって、そのまま所得が増大して、生活が上がっているとは考えられぬという実態があるわけなんです。そういうことからして、ここにこういう二重目標を、一ぺんに解決するようにするというようなことには、やはり非常に疑問が残るわけなんですがね。この点はどういうようにお考えになりますか。
  43. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 生産性を上げますことが即所得の増大になり、生活の向上になるということにならないという、そういうことがありますからこそ、生産性の同上を一つの柱として掲げる。生活の向上をまた別の一つの柱として掲げるということでございます。
  44. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 それではこの一条にいうように、農民の立場になって心配するのは、生産性ということと生活という問題が、並行して矛盾なく同時に実現するという保障が将来はたしてあるかどうかということが、問題になるのではないかと思われます。これは非常にむずかしい問題なんです。だから、第一条に、こういうように二重的な目標で掲げて、これで、一項、二項というように分けているなら、そういうような考え方もあるわけなんですけれども、同時にそれが実現するという印象の書き方というものは、何かこれは少し疑点が残るわけなんですけれども、こういう点はどうですか。
  45. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 通常と申しますか、生産性が向上するならば、普通は所得も土がるということになりましょうし、所得を上げるためには、また生活を向上させるためには、農業生産性が上がらなければならない。また上がらないで所得を上げるというようなことでやっては、なかなか不経済的な政策になりましょうし、そこで二つの目的を掲げている場合に、普通の場合は、生産性の向上が所得の、あるいは生活の向上になるということでしょうし、そうでない場合が、今安田先生のおっしゃるようにあるわけであります。そこで、一つの各標を別に掲げる、たとえば生産性を向上したけれども、価格は下がるというようなことがあってはならないので、たとえば価格の安定制度というようなことが考えられるし、あるいはまた流通政策流通合理化するというようなことが考えられなければならないということになろうかと思います。
  46. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 それでは先へ進みますが、構造改善の問題でございますけれども、構造改善ということは、政府案から見ますというと、経営の規模を拡大していくのだということ、あるいは農地集団化を行なっていくのだということ、または機械化の促進を通じて将来自立経営育成していくのだ、こういうように考えられるわけなんです。その通りですね。
  47. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 構造改善という意味は、今先生おっしゃるように、第二条の一項の三号にも書いてございますが、そういう意味でございます。
  48. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうしますと、自立経営を育てていくと、将来その政府でいう二町五反なら二町五反という自立経営農家ということになってくると、将来農家戸数が大幅に減るという問題が出てくるわけです。そうするというと、大体その自立経営農家になった、そういう農家は今後農村人口の減り方から見て相当長期間かかると思うのですよ。十年なり二十年というような、そういうような長い間でないと構造改善政府の思うような方針が達成せられないと思いますが、こういう点はどうですか。
  49. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 構造改善が、この法律が通ったからといって、一挙に解決されるということではないと思います。もっと長期的に見て、いろいろの条件、変化に応じていろいろな手を打っていくということで自立経営も育てていく、構造改善もしていく、こういうことだと思います。
  50. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうしますと、この法案が通ってもまあそう一挙に解決していく問題ではないし、相当、十年二十年の長年月がかかる、こういうように理解するわけですが、そうするとやはり農村の問題として重要な問題としては、当面やはり価格問題が考えられてくるわけですね。結局その価格の、所得の格差、生活の格差、そういうようなものをなくさすためには、もちろん先ほど申すように、生産性の同上というようなものが必要でございましょうが、やはり所得の格差を直していかなければいかぬ、こういうように考えられてくるわけなんです。そうしますというと、構造改善という問題は、所得をふやす上においてのいわゆる間接的な政策である、直接的な政策ではない、こういうようになってくるわけなんです。そうするとそこへ当然出てくる問題は、価格政策というものが重要な当面は役割を占めてくるわけであります。そうすると、農産物価格の引き上げということが大きな要素になってくるのではないかと思うわけなんです。先ほどの三地方における公聴会を見ましても、今日の米価をもっと、つい数年前は強制供出にあってきた、しかし今日食糧事情が安定してくるというと、米価は、いろいろの農業用資材であるとか、あるいは生産費高騰によって引き合わない、こういうことがいろいろの公聴会に出ておるところであります。そうするというと、やはりそういう東北地方におけるならば、米価中心とした価格の引き上げという問題がやはり私は重要な問題になってくると思うわけです。こういう点について、価格政策については今後一体生産費所得補償方式というものを重要視していくのか、あるいは需給均衡価格、こういうようなものに対して重視していくのか、こういう問題が出てくるかと思うわけなんです。この点について一つ御説明願いたい。
  51. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 価格政策は所得の確保、あるいは生活の均衡というような面で果たす役割が非常に大きいと、また非常に重要視しなければいけない、このことは安田先生おっしゃる通りだと思います。しかし、生活の均衡なり所得というものを考えます場合に、すべてを価格政策に預けるということは、私どもこの基本法考え方ではとっておりません。非常に重要なものでありますけれども、ほかの構造政策なり、あるいは生産政策なり、あるいは流通対策なりというようなものの政策の進め方、またその効果の現われ方等をも見合って、価格政策も考えていかなければいけない、こういうふうに思っております。米についての問題は私からお答え申し上げるのは何ですが、生産費所得補償方式、いわゆるそういう方式がとられておるわけでありますが、これはしばしば農林大臣も言っておりますように、変更するということにはならないのじゃないかと思います。
  52. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 やはり構造改善長期の見通しに立って行なわれるとするならば、やはり農村生活水準を高めていって、他産業と均衡のとれる、こいねがわくは同一水準になることが理想ですが、そういういわゆる方向の問題を考えていくときには、やはり価格政策というものは根本的に私は重視しなければいかぬと思います。そうすると、そういう結論に大体同意のようでございますが、その際やはり米価であるとか、麦の価格であるとかいうものは、結論的において最近の経済情勢の中においては引き上げていかなければならぬという問題になってくるだろうと思うのです。おそらく来年の米価は、ことしの米価ではこれはとても解決でき得ない、むしろ引き上げられなければならぬという、いわゆる情勢の展望はあるわけです。そういう問題を展望の中から考えましたときに、かりに政府が今みたいな方式をとっていく場合においては、上げていくということになると、二重価格制をとっていかなければならぬ、これを消費者負担させていくということはできません。さらにまたそうなってくると、国の財政が非常に負担が大きくなっていくというような面も生じてくる、そうしますというと、そういうことをしていけば、価格政策を、かりに私の今言ったような趨勢で、米価やその他の問題に、麦の問題について考えていったときには、構造改善ということが現状にくぎづけされるということが出てくる、もっと極端に言えば、構造改善を妨げていくのではないか、こういうふうにも考えられてくるわけです。こういう点の見通しはどういうふうにお持ちでしょうか。
  53. 大澤融

    政府委員(大澤融君) ですから私申し上げておりますのは、価格政策だけですべてを解決するというようなことはなかなかむずかしい、価格政策をまた具体的に、各農産物についてどういう価格安定、あるいは価格支持の対策を講ずるかというようなことは、それぞれの作物事情によって異なるわけでございますが、そういうことをやります場合にも、基本法にも書いてございますようなことを考えながら、ほかの生産対策なり、あるいは構造対策なり、そういうもののあり方とも見合ってやっていかなければならないということで、価格政策が、十一条の第二項にも書いておりますように、選択的拡大の方向に相反するというようなことになってもいけませんし、流通合理化を阻害するとか、あるいは国民の消費生活の安定を乱すというようなことになってもいけないわけで、そういうことにならないように、ほかの対策とも見合ってやっていくということが必要だと、こう思います。
  54. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 まあよくその言うことはわかるのですが、実際問題として、そういう米価をとって見ましてもおわかりになりますように、所得の格差是正をはかりながら、構造改善をしていくんだということが非常にむずかしい問題なんです。ですから、そこの点を私はもう少しやはり明確にしてもらいたいと思うのです。それだから地方の公聴会の結果報告を見ましても、やはり現在のところ価格政策が一番大きく出ているわけです。農産物に対しての支持価格を要望する声が強いと思うのです。そういう点を特に今後十分検討してもらいたいというふうに要望だけつけておきます。  それから、もう一つの問題としては、この選択的拡大であるとか、あるいは構造改善をしていくとか、あるいは農業生産の問題から考えてみますと、どうも政府案のまま進行していきますというと、そうすると農業自体の内部の中における格差が増大するのではないか、こういうふうにも一応考えられる面がある。そこでお尋ねしたいわけでございますか、政府所得倍増計画は大体どういうようにお考えになっておるのですか。私の知っている限りでは、自立経営農家を将来十年間に百万戸くらい作るのだ、二町五反の自立経営農家を百万戸くらい十年間のうちに作るのだということでよろしいのでございますか。
  55. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 倍増計画では、この期間に育成されるであろう自立家族経営農家というのは二・五ヘクタールぐらいで、労働力三人ぐらいというのが百万戸ぐらいになるだろうという、よく申し上げることですが、非常に大胆に見通しを立てておりますけれども、これも一つの今後十年後の自立経営農家の姿ということについては一つの参考になると思いますけれども、この前も申し上げましたように、自立経営農家というのは単に面積だけから言えるものではないのですが、一体、自立経営農家が十年後にどのくらいのものがどのくらいになるだろうかというようなことは、いろいろの条件変化が今後どういうふうになるかということはなかなかむずかしい見通しなので、今からどのくらいのものが幾つぐらいできるであろうかというようなことは見通しとしてはできないのではないか、こう思います。
  56. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 大体その見通しでもけっこうなんですけれども、大体、自立経営農家を百万戸作る、そうして一戸当たりの収入あるいはその年間の家計消費というのはやっぱりおわかりなんですか。私の承知しているところでは、年間の収入が二町五反で年間収入が一戸当たり百万円、家計費の消費が六十万円か七十万円くらい、こういうふうになっておるわけです。それでよろしいのでございますか。
  57. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 倍増計画ではそういうようなことをいっております。
  58. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうしますと、その所得倍増計画の中では、十年間に農業生産額を現在の五四%ふやすということもうたっておりますが、その場合の十年後における総生産額は二兆二千億円くらいになるというふうに承っておりますけれども、その点はどうですか。
  59. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 三十五年の価格で十年後の四十五年度の生産額見通しをいたしますと、大体今おっしゃったような数字になるわけです。
  60. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうしますと二兆二千億で自立経営農家が百万円収入のものが百万戸といいますと、この人たちだけで一兆円という数字になるわけです。自立経営農家の分は十年後には総生産が一兆円になる。そうしますと、二兆二千億の中から一兆円引きますと残が一兆二千億円になる。そうすると、現在の、六百万農家といわれておりますけれども、百万戸自立経営農家を作ると、残りは、五百万戸、五百五十万農家とすると残りは四百五十万戸になる。そうすると四百五十万から五百万のものが、一兆二千億円の総生産額では、その一戸当たりのいわゆる年間の収入というものは、自立経営農家百万円に比べまして、年額二十五万くらいの程度しかならないわけです。そうすると、現在の経営事情の中から見ましても、年間二十四、五万の何は、現在でもあるわけなんですよ。そういうことを考えてみましたときに、少しもこれは小中農の、いわゆる協業する者やあるいは他産業に転出する者は別としましても、自立経営農家以外にはそういう所得倍増計画で政府のこの自立経営農家育成していくという方針から参りますと、少しもその他の四百五十万、五百万くらいの農家にはこの基本法は全然影響がない。かえってそれは何もならないというような数字的な結論が私は出てくるのではないか。そういう点からいきますというと、政府案を進めていくと、農業内部におけるところの自立経営農家と、そうでない者との間に非常に大きな格差が生じてくるおそれが非常に大きいわけだ、こういうように考えられるわけなんです。こういうようなところに、所得倍増計面を発表して、農業基本法自立経営農家育成していくのだ、こういうのは、農業の中から数字的に検討していけば、いわゆる貧農切り捨て論というものが出てくる、こういうように考えられるわけです。こういう点について、一つ具体的にそうでないというような御説明があったらお願いしたいと思うわけです。
  61. 大澤融

    政府委員(大澤融君) こういうことを申し上げてははなはだ失礼なんですけれども、今の二町五反、百万戸ができる、それから倍増計画の農業生産額見込みがこれだけということも、今のような計算をなさるとちょっと乱暴じゃないかと私は思います。けれども、今後の見通しとしては、確かにまた政府の案でもいっておりますように、できるだけ多くの自立経営農家育成していくのだということでございまして、六百万戸の農家全部が自立経営にそれぞれなり得るということにはならないだろうと思います。また全部の農家がそういうふうにいこうということも、そう考えてはいないだろうと思います。そこで、農家の中の自立経営になり得る者、なろうと思う者が自立経営にいくというわけでございますが、そのほかの者はそれでいいのか、ほったらかしていいのだ、ほったらかしておくのだというようには私ども考えていないわけで、協業のところでしばしば申し上げましたように、一人立ちはできないけれども、協業をやるならば自立経営と同じような所得、生活も得られるというものは協業していくように助長いたしますし、またそれだけで自立経営と同じような生活ができないというときには、協業によって浮いた労力をさらにほかの産業に向けて、前業所得を増大していくということと相待って、すべての人が自立経営と同じような生活ができるようにということを望み、またそういうような方向で施策をしていくということでございます。
  62. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 私の計算が非常に乱暴だ、こういうようなことを言っておるわけなんですけれども、実際のことを言うと、私は政府の倍増計画の方が乱暴なんです。農業基本法を作るにあたってそういう見通し、政府の発表したことは国民が信じるわけなんですよ。倍増計画を発表しておきながら、数字的にそういう結論が出ると、私の方が乱暴だと、こういう考え方はこれはおかしいと思う。その見通しの前に、その実現の可能性のないような倍増計画を発表しておって、自立経営農家は将来こういうような状態になるんだと言いながら、その自立経営農家にのみ視点を向けて重点を置き、目を向けておいて、そういう倍増計画を発表して、一般の農民はあたかもそれが実現されられるような錯覚に陥ってしまうわけなんです。これはまあ政治の一つのテクニックかどうかしりませんけれども、そういう乱暴ないわゆる数字を上げてしたところに私は問題があると思うわけなんです。決して私どもは貧農切り捨てだというようなことはあえて言うわけじゃない。しかし、政府がそういう百万戸と限度を押えて、そしてこれに百万円の収入を持たせていくんだと、こういうことを言って、しかも片一方に総生産額というものを公表しておれば、この見通しを信用しないというわけには国民の立場としていかないわけなんです。むしろそういう計画は誤りであって、これはむしろ御破算だと、こういうようなことが正直に私は政府の問題としては言われるべきだ。これはあなたに聞いてもやむを得ないことなんですけれども、倍増計画が誤りであったなら誤りであったという、乱暴であったならば乱暴であったということを率直に言わないと、特にこの農業問題なんか所得倍増計画の一環として基本問題をいつもわれわれが農民のために、日本経済のために考えようとするならば、当然そういう乱暴な数字というものはみずから撤回するというのが私は当然ではないか、こういうように考えるわけです。で、倍増計画というものを発表して、そのまんまにおけば、これは計算していけば、結局四百五十万くらいの人たちが一兆二千億のお金を、総生産額一兆二千億のお金を分ければ、一戸当たりが二十四万から二十六万くらいにしかならぬ、それでは何も農業基本法が出たって現在の姿と同じじゃないかと、こういう結論が出てくるわけでしょう。これは否定できないと思うんですよ。
  63. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 私乱暴という言葉を使ったの少し乱暴すぎたと思うのですが、二町五反が百万戸くらいになるだろうという倍増計画の中でも言っておりますことは非常に大胆な表現の仕方だと、見通しだと思いますが、そういう非常に大胆な見通しをお使いになって今のような計算をされるということは少し大胆過ぎるんじゃないかということを申し上げたかったのでございます。
  64. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 しかし、私どもは農業の将来の実態というものは、協業という問題と自立経営農家というものと、社会党がいっておるように共同化という問題がありますが、これは今度の農業基本法をめぐる中心的な一つの課題なんですよ。で、そういう課題が将来農業の形態としては一体どういう形態がいいんだと、われわれにしても、他産業へ、日本の経済の高度成長の中で、年間二十万の人たちが、農民が他産業へ流れていくということはこれは認めております。しかし、その将来の農業形態を共同経営でいくか、家族経営中心としたところの自立経営でいくかという場合に、所得倍増計画がうたっておるような数字全般についての数字を一応検討しなきゃならない、その数字を検討したときに、必然的に出てくるものは中農以下の自立経営になれない人たちの問題が残るわけなんです。その場合に、政府では協業という問題をあげてます。もう一つの問題は他産業へ移動していくんだという問題をあげているわけなんですが、その残る人たちの協業の形態にしても、大きな将来影響が出てくるわけなんですよ。倍増計画の通りだとするならば、協業に対するところの問題は、単に一片の協業を奨励し指導していくんだということでなくて、そういう二十四万か二十五万の収入の人たちに、将来どういう法律によって、あるいは政府長期の低利融資によっててこ入れしていくのであると、あるいはそういう人たちのために農業地を拡大していくんだとか、こういう問題が出てくるわけなんです。そういう重大な問題が生じてくるわけでございますから、私は先ほどそういう点についてそういう重大な問題が考えられるから、一体、倍増計画を撤回するならば撤回する、修正するならば修正するということでなければ、これだって問題が残る、こういう観点からお伺いを申し上げていたわけです。
  65. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 先ほど申し上げましたように、将来の自立経営がどういう形のものが幾らくらいできるであろうかというようなことは、なかなか見通しがむずかしいのでありますけれども、一体自立経営というものは抽象的に書いてはございますけれども、具体的にはどういう形のものだとかいうような営農類型的なものを今後研究して作っていきたいと思っておりますが、また倍増計画でいっております生産長期見通しでございますけれども、これはもちろん今後参考になるわけですが、基本法通りましたならば、第八条でそれとは一応別個に見通しもやるということになろうかと思います。ただ、倍増計画をやめたらいいじゃないかというようなお話ですけれども、この倍増計画のこれも大臣からいろいろちょくちょくお話があったと思うのでありますけれども、この計画は今後の経済運営にあたって、内外経済の実勢に応じて弾力的に措置をしていくのだということで倍増計画を扱っておるのでありますから、この数字このままがもう政府の今後の見通しなんだということにもなりませんし、あるいはまた、二・五町が百万戸というのが自立経営の将来の政府の目標としておるところ、あるいは描いておるところだということにもならないと思います。倍増計画はそういうふうにお考えいただきたいと思います。
  66. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 単なる見通しということだろうと思うのですけれども、現実には家族経営としての自立経営を将来育成していくのだということが法案にもうたっておる。この農基法以外の関連法案といたしましても、農地法の一部改正法案が出てきておる。特にことしあたりも自作農維持創設資金あたりの貸す対象が農地の取得というような方向へ性格が変わったようにも見受けられるわけです。そういう関連法案の問題を考えますと、政府が将来、家族経営としての自立経営農家育成していくということからいくと、ばく然としてやっていくことではないと思うのですよ。やはり三十七年度はどれくらいの自立経営農家を作っていくか、あるいは三十八年度以降はどうしていこうかというような一つの、幾ら見通しであっても、数字的な計画がなければ私はならぬと思うわけです。そういうような想定を考えましたときに、あながち倍増計画は単なる見通しじゃないのだ、だから、たまたま過去の非常な経済の高度成長がそういう甘い見通しをさせたかもしらぬけれども、少なくとも根拠のないことではない、こういう点はどうですか。
  67. 大澤融

    政府委員(大澤融君) もちろん倍増計画でいっております年産見通しというようなものが、根拠がないというようなことではないと思います。
  68. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 どうも納得がいかぬわけですが、いずれまたその問題については大臣が出席したときに聞きたいと思いますけれども、次に伺いたいと思いますのは、第十五条ですが、第四章の農業構造改善の問題でございますけれども、この第十五条に、やはり第一条と同じように、家族経営の発展を期するためには二つの目標が掲げられておるわけです。それは自立経営とはどういうものかというと、「正常な構成の家族のうちの農業従事者が正常な能率を発揮しながらほぼ完全に就業することができる規模の家族農業経営」であるという問題が一つ。それからもう一つの問題としては、「当該農業従事者が他産業従事者と均衡する生活を営むことができるような所得を確保することが可能なもの」というのが一つ、こういうように二つの目標を掲げておるわけなんです。このことが今度のいわゆる政府農業基本法の根本的ないわゆる方針である、こういうように考えてよろしゅうございますか。
  69. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 自立経営の中に、今お読みいただいたカッコした中は、自立経営考え方を示しておるわけでございますけれども、十五条にございますように、構造改善考え方としては、家族農業経営を近代化してその健全な発展をはかるとともに、できるだけ多くの自立経営育成をはかるということは、おっしゃる通り政府の根本的な考え方でございます。
  70. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そういうようなことをお認めになるとするならば、生産性を向上させていきたいということと、それから所得であるとか、あるいはまた生活の向上という問題が、家族経営によって達成されるといういわゆるその保障ですね。保障をどこに求めていくかという問題が出てくるだろうと思うのであります。こういう点について、もう一度説明願いたいと思います。
  71. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 家族農業経営の中で、できるだけ多くの自立経営育成するという場合に、自立経営というものはここに書いてございますように、「他産業従事者と均衡する生活を営む」ような所得が得られるものです。このことは、第一条に第二の福祉の問題として、目標として掲げてある理念と一致するものであります。自立経営によって、そういうことが達成可能というふうに考えます。また第一の生産性の向上の問題でありますが、家族経営であっては生産性は向上しないではないかという御議論かと思いますけれども、そうではないので、家族経営のワクの中でも生産性は今後大いに伸ばし得るというふうに考えております。
  72. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 申し上げたいのは、家族経営という二町五反にしても、そういうワクの中で非常に他産業が大きく生産が上がっているわけです。そういうような一般的な経済と比較対象してみて、それを他産業と見合うような格差を是正していくのだという方向において、はたして私はその生産性の格差の是正ができるかどうかということが非常に困難ではないかというように展望できるわけなんです。そういう点がどうもこの政府案では考えられない。ただ将来百万戸の農家を目標として作っていくのだ、それだけは確かに農業に従事していける、林業を含めてやっていけるだろう。しかし、それ以外の農民というものは一体どうなっていくだろう。むしろ他産業の発展にそのまま依存してそっちの方へ流れていくのだというだけにしか受け取れないのですよ。農業のたとえば今日の状態においても、外国農業とは相当生産性の問題においても開きがあるわけなんです。これは小麦の問題をとりましても、大体、生産性の向上とは労働時間一時間単位時間内におけるところの所得を上げるわけなんです。そういうことを考えたときに、現在小麦百キロの年産の状態を新聞かなんかで見たのですけれども、それを見ましても日本は大体百キロ当たりの生産が五十四時間かかるわけです。アメリカでは一時間、英国では二時間ちょっと、三時間弱なんです。そういうような、現在でさえも非常に大きな開きがある。それを二町五反くらいの家族営農にして生産性の格差を是正していこうという問題を考えましたときに、特に国内において他産業との間においてのあまりにも激しい開きのある問題でありますことを考えて、しかも、他産業がさらに飛躍的に高度成長していくのだという前提を考えましたときに、単なる家族経営育成しておっても、その生産性の格差を是正する、むしろ他産業に近づけていくのだというその考え方は少しく甘いではないか。確かに農業生産性を向上していくという考え方は受け取られます。しかし、他産業と比較してこれを是正していくのだという、そういう大きな飛躍をするということは少しく甘いのではないかと、こういうように考えられてくるわけなんです。こういう点についてもう一度詳しく一つ説明をお願いしたい。
  73. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 今申し上げましたように、家族農業経営の中で生産性が伸びないということはなかろうと思いますし、また自立農家でありましても、さらに生産性を上げるということのためには協業ということの助長もして参りたいと思います。そういう意味で第一条に掲げておりますような「他産業との生産性の格差が是正されるように」ということが私どもはでき得ると思うのでありますけれども、これができないと、こういうお話だと思いますけれども、ここで申します「生産性の格差が是正されるように」ということは、たとえば今生産性の格差と言われておりますようなものが、大体他産業農業と比べたならば三割だというようなことが言われておるわけです。これが是正されるということは、生産性の伸び率が少なくとも他面業よりは大きくなるということが必要なわけでございます。そういう意味で、たとえば倍増計画で見ておりますのも、農業は他産業よりも伸び率が大きくなって、徐々に生産性の格差が是正されるという形が現われておりますけれども、そういうことで、政府で考えておりますような構造改善政策ということも一つの手段となって生産性の格差の是正がされていくということは可能だと、こういうふうに考えております。
  74. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 私はその生産性が家族経営ではできないとは言っておらぬ。ただ他産業の今後における見通し、現在までの歩みの中から見てきた他産業の発展ぶり、あるいはそういうような問題から見て非常に農業自体の生産性は高めることができるだろうが、その格差を縮小させていくのだというような問題については、少しく政府案の見方は甘いのではないかというふうに考える。それじゃ逆に、かりに生産性があなたのおっしゃるように、他産業に劣らないような農業になれば、私は何も家族経営である必要はないと思うのですよ。そういうように考えられてくるわけです。家族経営のワクではかえって前段申し上げたような経済上の趨勢からいって、なかなかその格差を近づけることはできない。もし、あなたのおっしゃるように他産業と非常に格差が近づいていくというなら、むしろ家族経営でない方がいい、こういうように考えられる節が出てくるわけなんです。何も家族経営するぐらいで格差が是正されていくというならば、あえて家族経営の人でなくても、もっとそのほかの方法があるのではないか、こういうように逆に考えられる面が出てくるわけです。こういう点はどうですか。
  75. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 私ども今後の農業のにない手が家族経営でなければならないというふうには一つも考えておらないのであります。ただ見通しといたしましては、今後農業経営のにない手、支配的なにない手は、外国の例なんかを見ましても、家族農業経営が支配的な形になるであろうということを言っておるのでありまして、それだからこそ家族農業経営育成もはかるしということになるわけですけれども、将来のにない手が家族農業経営でなければならないという気持は持っておるわけじゃないのです。もっと発展した、たとえば共同経営、協業組織、協業経営というようなことが、より生産性を上げ、また農家の所得を上げるということの道として開きまして、そういうものになろうという人には、道を開いてやるということはしておるわけでありまして、決して家族農業経営のワクの中へ閉じ込めようとしておるということではないのです。
  76. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 それじゃおかしいじゃないですか。政府基本法は、一番重要な構造改善のところで、家族経営を第一に取り上げているわけなんですよ。家族経営を片一方においては他産業との生産性の格差の是正ということを目標にしておるわけなんです。他産業との生産性の格差を是正していくのだというその目標が、これを遂行していこうというならば、何も家族経営士義のワクの中でものを考えなくてもいい、もっと構造改善の方向へ向かうべきだ、こういうように考えられてくるわけなんです。そうでしょう。
  77. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 第四章でいっておりますことは、家族農業経営でなければならない、あるいは自立経営でなければならない、あるいは協業組織あるいは協業経営でなければならないということはいっていないので、家族経営がさらに生産性を上げ、あるいは所得を上げるということのためには、家族経営をやめて協業経営という形ももちろんございましょうが、それに至るまでもなく、たとえばよくお話が出ますように、また実例があったように果樹をやります場合に大きなスピード・スプレアを金を出し合って買って共同利用をする、あるいは大きなトラクターを買って土地を共同耕作をするというような、いわゆる協業組織というような形もあるわけです。そういう意味で、協業化あるいは自立経営という、いわば二者択一的な考えをとっておるわけではないのであります。
  78. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 しかし、公聴会の記録を見ましても、あるいはまた一般の国民が受けている感情を見ましても、社会党の案は、将来社会主義に通ずる、自民党の与党側の方から——極論すれば与党側では、ソ連や中国のコルホーズだというような指摘までも受けて、社会党の、農民の自主的な意向による共同経営というものは否定して、やはり農業の将来については、中家族経営でいくべきだということを主張しておるわけなんです。それがこの農業基本法社会党案政府案の大いに違うところなんです。その政府案を一番推進しているのは与党側の官民党なんです。それをあなたの答弁は、何も家族経営ではないのだ、協業でも共同経営でもいいというような、いわゆる表現を用いているわけです。一体どこに、農業基本法における構造改善の一体重点を、置くのかということが今の答弁では非常に私は理解がいかないと思う。
  79. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 私どもは現実の動きに基礎を置いて、いろいろものを進めていかなければならないと思います。そういう意味で、今直ちに、一足飛びに農家経営をやめるというような、共同経営というような形にまでいくということにはいろいろ問題があり、また農民の感情にも合わんところもありましょう。そこで見通しとしては、現実の問題としては今後も家族農業経営というものが、農業のにない手としては支配的な形になるであろう。だからこそ、家族農業経営についての育成の方策を考えなければならないのじゃないか。しかしながら、一方今言ったような協業という場合には、非常に幅の広い概念で一緒になって田植をするというようなことから、先ほど申し上げたように、もう全部自分土地も、自分資本も出し合って、農家は単なるもう消費の場になって、農業経営はそっちの協同組織の方に全部移してしまうというような、極端な協同組織、協業経営ということも考えられましょうけれども、事実またそういう芽ばえもあるわけです。そうしてまたそういうことによって生産性を上げ、所得を向上させるということができるわけです。従いまして、何もそういう道をまた閉ざしておくということであってはならない。さればこそ、十七条にいっておりますように、またこれに関連して、農地法、協同組合法を改正しているわけなんです。そういうこともできるように、法人が土地を持って農業ができるようにという道も開いているわけです。そういう現実の動きの上で、こういう考え方をしているのでありまして、どっちでなければならないというようなことは、この法律ではうたっておりません。
  80. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 大澤さんの答弁は私としては理解できるんですよ。日本農業を当面する重要な課題として、他産業との開きがあるから一応こういうような案でいくのだ、今の説明では。しかし、将来は家族経営をあえて固執しないのだ、こういうように受け取れてしようがないんですよ。協業があるのだ、あるいは農地法を改正して、いわゆる法人にも土地を持たしていくのだ、一体それはどういう——そのことはよくわかるのです。しかし、政府と与党が中心になって、日本農業家族経営でなければいかんのだ、こういうことを現実の地方における宣伝においてもいっておって、社会党共同化案というものについては否定的態度をとっているわけなんです。だから、そういうような空気が国民の中に流れている以上は、もう少し家族経営なら家族経営でいくのだ、こういう明確な答弁がないと納得ができないと思うわけなんです。
  81. 清澤俊英

    清澤俊英君 議事進行。これは安田君の言うのはもっともだと思うのです。僕らが聞きましても、もう新聞や雑誌にも書かれて、それで綱島君や前の農林大臣の福田さんなどが水戸だの九州で言っておられるのは、僕はできまするならば、福田さんまで出てもらわんでもいいが、綱島君が一番激しいらしいですからね。ここに出てもらって、どういう意味合いで言うたのか釈明してもらわなければ、これはおさまりがつかないと思うんです。しかも、言うていることが何かソ連でやっておるコルホーズとかソホーズですか、どっちを言っておられるか知りませんが、これは非常に失敗をしておるがごときことも言うておられるようで、ものの誤解をよほど深くしておるのでありますから、私はやはり自分の言ったことは間違っておったらおったと、これは自民党のためにも私は言うべきだと思う。できましたら、一つ理事会で取り上げ方を御相談願いたいと思うのです。
  82. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  83. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記を始めて。
  84. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 政府側の案を見て参りますると、生産性を向上さして他産業との間における格差を是正していくのだということなんです。そういうことが目標にうたってある以上は私はあえて家族経営の方法でなくてもいいのじゃないかということを聞いておるわけなんです。そうでしょう。でもし家族経営をうたうならば、生産性の向上といういわゆる他産業との格差を是正していくのだということは第二義的にならなければならぬし、そうでないと法文の構成がおかしいのです。そうでしょう。あなたたちは所得の均衡ということについては、必要だけれども、重要な要素だけれども、それをうたうわけにいかない。生産性が低いからこれを向上さして他産業につけていくのだということははっきり表面に出しておるわけです。生産性を向上さしていくならば、経済のいろいろな諸関係からいって、あえて家族経営だけでは私はそれは達成できない。そうするならば、ほかのいわゆる形態が必要ではないだろうか、こういうように聞いているわけです。
  85. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 先ほどから私申し上げておりますことで尽きているんですが、自立経営家族経営農家ということ、これがこれからの支配的な日本農業のにない手であろうという現実の上に立ってそれの育成をはからなければいけないじゃないかということが一つあるわけです。それをやる場合に、自立経営農家ということでこういうことをやれば生産性が上がり、生活の均衡というようなことも考えられるということを先ほどから申し上げておるわけですが、さらにそれのみでなくて、すでに協業ということ、これは先ほど申し上げた協業経営というようなこともあると申しましたが、協業経営という形は比較的少ないわけです。むしろ協業組織ということで自立経営の発展のためにも、あるいはまた自立経営になり得たいもののためにも現にいろいろ行なわれておることですし、そういうことを道を開き助長する。さらに極端な場合、これは例は少ないけれども、協業経営ということの道も開き助長もするという形をとって農業生産性も上げ、所得の均衡、生活の均衡もはかっていくという目的を達しようということでございます。
  86. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうすると、こういうように承っていいんですか。その基本法案は家族農業経営を主眼点に置いて、それから協業も同時に主眼点に置いていくのだ、こういうことでいいですか。
  87. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 主眼点に置いてという意味が私にははっきりいたしませんけれども、現実の上に立って家族農業経営というものはこれからも続くので、そういうものは積極的に育てて、育成するということをとらなければならないし、現に協業組織というようなことは普遍的に行なわれておるので、そういうものも助長するし、さらに協業経営、これは非常に例は少ないけれども芽ばえはあるので、そういうものを道も開き助長もするのだ、こういうふうに御理解を願いたいと思います。
  88. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 それでは、今の点は、きょう一日じゃないのですから農林大臣にまた聞きますが、協業という言葉が盛んに今使われ出してきたのです。私は今までのこの農業基本法審議の中で、協業がきょうぐらい多く取り上げられたことはないと思うのです。私は質問しなかったけれども、政府は、協業をあらゆる方面から助長していくのだということを言っているわけですが、先ほどの御答弁の中にも、大へん協業化という言葉が出ている、社会党でいう共同化ということが……。その協業と共同化という問題でありますけれども、私は政府が協業という言葉で踏み切る以上は、なぜ一般的にわかりやすい共同化という表現を使わなかったかということについて少し納得がいかないわけなんです。新しい言葉の協業なんということよりも、共同化の方が一般的にわかりやすい。特にこれはもう果樹地帯でわかりますけれども、ほとんど消毒作業をするとか、いろいろの機械によって作業するときには、みんな農村自体から、社会党のいう、われわれの考えているような共同化という、こういう言葉をみんな使っているわけなんです。そういうふうに、農民が非常に生産性をみずから努力して上げていく中にそういう言葉を一般的に理解しているのにかかわらず、何か協業化ということになると、共同化をうたわなければならぬ実際の現実の中から、なぜ政府がこういうことをうたわなければならぬのだろうというふうに、何かむずかしく考えるわけです。そこで協業化ということと共同という問題をどういうふうに——私たちはよく理解できないわけなんですが、御説明願いたい。
  89. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 社会党の案でお使いになっております共産主義の共同……(「共産主義を引き合いに出すことはないだろう」「何を言うか、取り消せよ」と呼ぶ者あり)共産主義の共というのは取り消します。共の同です。共の同という意味は、同じ作業を一緒にやるということで、協業の協という字を書く方は、力をあわせてともにするという意味が入っております。そこで今までの協同組合の協同、これはむしろみんなが力を合わせて一緒になるという意味があって、共同——共に作業を力を合わせてやるという意味がむしろ薄いということで、まあ力を合わせて作業をする、しかもその場合に、今までのように単なる分業じゃなくて、むしろ高度の技術を持った分業をするというようなニュアンスを表わしたいということで、協業という言葉を使ったわけであります。
  90. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連。あまり押しつけたようなことはおかしいと思うのですがね。いずれ、この問題は別の機会に一応お伺いしょうと思ったけれども、実際出てきたから言いますがね。基本法のあの答申ですか、問題点の答申の中にも、会社、法人などは考えるべきである、こういわれている。それ自身が大体どこにあるかというと、農林省にもあるのです。農林省が初め法人化に反対せられたことは、結局そういうやり方をしておったら地主制度ができやせんかという心配があって長い間反対しておられたと思います。それが今これには取り上げられて、一歩後退して取り上げられている。そこで実際、協業をやっていく上に、あなたが言うような協業をやっていく上に、あなたの言うりっしんべんを書いた協業、われわれの言う共同をやっていく上にどれが一番いいかというと、法人化ではいかぬという点です。土地の観念を離れていなくてはほんとうの協業にはならぬ。これはもう一般の議論なんです。だから、あれの答中にもはっきりと法人ではいかぬじゃないかということが出ている。それを曲げてそんなことを言わぬでも、どっちも同じことなんですと言えば、それで事は済むのです。曲げて言うから私は問題がめんどうになると思うのです。言わぬでもいいのです。言うから三時間でも五時間でも、三日でも四日でもこれで議論しなければならぬ。そういうことを言うていられる限り、私は解決するまで議論をしなければならぬと思います。これだけのものがそろっているじゃないか。何であっさりして、これはどちらも意味合いが同じです。一生懸命で共同でやることなんです、(「それも押しつけじゃないか」と呼ぶ者あり)そう言ったらいいじゃないですか。取り消しなさい。
  91. 大澤融

    政府委員(大澤融君) なぜ協業という言葉を使ったかということを私先ほどから申し上げているのでありまして、ああいう言葉のニュアンスがありますけれども、大きな観点から見れば、そう大きな違いはないと思います。(笑声)
  92. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 私はきょうは協業の問題は出さないつもりでおった。ところが、さっき家族経営の問題から発展して、大澤さんの方から協業化の問題を出してきた。そうなると聞かなければならぬということになる。そこで大きく大別すれば大して変わりはないというだけでは、私は言葉はそれだけでは解決できないと思うのです。それなら、大したことがないというなら、社会党共同化といういわゆる今度の構造改革の問題について中心的な課題であるものを否定する必要はないと思うのです。で、先ほどこちらの方でも大澤さんの答弁が、河野さんの方から自民党の考え方、相違はないのだというならば、地方へ行って、農林大臣やあるいは総理大臣が行って、社会党共同化を否定する必要はないと思うのです、ただいまの答弁では、そうでしょう。  そこでお聞きしたいのは、一体、農業というものは実際の問題なんです。実際の問題なんだから、一体農業のいわゆる過程の中で、行程の中で生産からいわゆる販売に至る流通過程の行程の中で、どこから、どこまでがいわゆる政府の協業で、そうして、どこからどこまでが共同化か、あるいはまたその形態はどういうようにするかということを聞かなければならぬと思うのです、そういう点について。
  93. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 協業という観念は、先ほどから申し上げましたように、非常に幅の広い観念で、たとえば田植えを隣同士で一緒にするというのも一つの共同でございます。あるいは果樹園をやる場合に、スピード・スプレアを金を出し合って買って、それを一緒に使うというのが協業であります。それからそういう生産行程のあるいは一部、たとえば農家経営の中の畜産の部門だけを取り出して何人かでやるという経営も、独立さしてやるというのも協業の一種だと思います。それからさらに、農業経営たることを全部やめてしまって、協業でやることも、そういうふうに、非常に協業という中には幅の広いいろいろなことを含んでおるわけです。そこで、社会党の案にございますように、農業経営共同化、こういうことをいっておられますか、政府の案でいっておりますのは経営共同化ということじゃなくて、その前の田植えから一緒にあるいは機械を持つとかいうようなことまで、もっと幅広く含んで協業、こういうことをいっております。従いまして、どこからどこまでがその政府のいう協業だということじゃなくて、すっかりもう農業経営をやめてしまって、共同経営に移す、ここで社会党の案にいっておられるような共同経営に移すということもそうですし、そうでない、極端な場合には、田植えを一緒にするというのもそういうことになるわけでございます。そういうふうに御理解願いたいと思います。
  94. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 どうもわからないのですがね。経営を一緒にするのが社会党共同化だと言いますけれども、そうすると出資の場合はどうなるのですか。甲と乙が二人出資して耕耘機を買って、田植えまで共同にしてやったというのは、具体的にそういう例はあるわけです。それはやっぱり協業というのですか。
  95. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 協業でございます。
  96. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうすると、今まで、去年までは政府地方庁に対しても共同化といういわゆる政策について、いろいろ援助あるいは補助の措置をしてきた面もあるわけです。地方庁の予算書を見ますと、協業化ということは書いてないのですよ。みんな去年までは共同化なんだ。ところがことしから、農業基本法が出ると同時に、その共同化はどこかへ行っちゃって、協業化ということが出てきたわけなんだけれども、従来までいっておった、政府のいう共同化というものは、今の協業に通じるものですか。
  97. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 協業の一種だと思います。
  98. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 あなたさっき経営を一緒にしていくということが共同化だ、共の同じくするところだとあなたは答弁したですね。社会党のいうように経営を一緒にしていくことが共同だ。そうなると協業ということは逆に共同化の一種じゃないですか。
  99. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 経営を一緒にするということが、私ども協業経営と、こう言っておりますが、そういうことが社会党の十条にあります共同経営であるならば全く同じものだ、こういうことになると思いますけれども、それのみでなくて、さらにもっと広く、ただいま例をあげられたようなことも協業の中に入るわけで、そういうものは私どもは協業組織と呼んでおります。だから、協業組織とか協業経営とかいうことで、むしろ共同経営社会党の十条でいっておられる共同経営ということは、農家経営をやめて独立経営主体になってやるということを意味するならば、協業という観念はもっと広い観念になると思います。
  100. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 何か共同化という字句を使えば、農民が非常に目ざめて、将来その農業の矛盾の中から、特に他産業との間におけるいろいろの矛盾の中から、やはり社会主義的な方向を指向していくのではないかというようないわゆるおそれを、自由主義経済を支持する人たちはおそれて、何かしらそこに協業というわずらわしい信号を使ったのではないかというように一面とられる面があるわけなんですよ。だから、そういう点を考えたときには、これはもう少し、今みたいなあいまいなことではなくて、一体、協同組織と協業組織はどう違うのか、あるいは資本投入がどう違うのか、経営の実態はどう違うのか、そういうものが画然として要するに説明されないと、私どもとしては納得できない。たとえば田植えを一緒にするということはむしろ協業の問題ではないのですよ。共同化ですよ。共同作業だ、共同作業なんです。そういう面からいくと、むしろ共同化ということの方がおそらく従来より存する日本語としては正しいのではないか、こういうように考えるわけです。やっぱりこの問題はあとにしますけれども……。
  101. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。同じことなんですけれども、これは政府の方があまりにもこだわり過ぎていると思うんです。政府の協業というものも、何べんもあなたから御説明があったように、二つあるわけでしょう。協業だけでは説明が尽くさないわけでしょう。協業経営と協業組織と二つを含んで協業と言うてるわけでしょう。ところが、共同の場合にも、つまりわれわれの共同の場合にも二つあるわけです。共同経営と——この法案の第十条で書いてあるのが「農業経営共同化を促進する」、これは、つまり共同経営です。しかし、何もこれしかないと言ってるわけじゃない、社会党は。それは作業の共同化を促進する。共同作業ですからね、従来から言ってるように。これはまさしくあなたの言ってるように協業組織に当たるわけでしょう。だから、それはどちらの言葉にしたって幅が広いんです。あなたの方だけが幅が広いようにおっしゃるけれども、そんなことはない。それは両方とも広いんで、大体範囲は同じことなんですよ。どういうふうに考えますか。私は、そういうふうにちゃんと両方とも大体これは同じもんだ、分析してみると。
  102. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 今亀田先生言われた経営共同化あるいは作業の共同化、こう言われるわけですが、そういうものをひっくるめて協業と呼んでいるわけです。
  103. 亀田得治

    ○亀田得治君 だから、われわれの方も、そういうものをひっくるめて共同と言うのです。同じじゃないですか。
  104. 大澤融

    政府委員(大澤融君) そういう意味なら同じでございます。
  105. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはそういう意味ですよ。社会党の解説書にもみんな書いてありますしね。ただ、十条は「経営共同化」と、そういうふうに限定しているんですね。そういうわけなんですから、まるで何か違ったような印象を与えるようなことをおっしゃるのは、はなはだ遺憾です。そうして、そういうふうに何も違わぬということになれば、やはりこう使いなれた言葉をわれわれとしては使ってもらいたいと、ここがねらいなんです。(「さっきの報告書の中には簡単な言葉を使っている」と呼ぶ者あり)そういうふうに使いなれているのがいいでしょう。長野の報告でしたかね、農民にわかりやすいようにしてくれと。それなんかはこれをさしているかどうかわかりませんがね。
  106. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 今までも、たとえば協同組合法ですと、力を使った協同、これは力を合わせて組織をするんだという意味で協同という言葉を使っております。それから共の方も、協同組合法の十条でしたか使っております。また、この法律でも使っております。それは、ある一緒に物を使う、そういう物というような物理的な観点から言うときには共というような言葉を今までも使っているようです。(「大学の国語の先生を呼んでこなきゃだめですよ」と呼ぶ者あり)
  107. 清澤俊英

    清澤俊英君 これはね、大澤さん、この間も農家へ行きましたら、この問題が出て、そうしたらちょうどそこに学校の先生がおって、多分こうなんだろうと、こういう説明をしてくれた。この政府のいわれる協同というのは、精神的にまああなたの言うように協同していくということが主になるんだろうし、社会党のいう共同というのは、行動的に手足から一緒にしてやるということが共同の意味合いなんだろう、区別すればそんなことでありましょうと言ったら、それならわかったと言いました。心だけを一緒にするといっても行動が伴わぬときは始終あるんだから、まず社会党がいうようなことの前提として政府は出しているんだろうと、こう農民は解釈しておりますがね。だから、わしらはどっちでもいいようなものだが、そんなむちゃくちゃな解釈が要るようなめんどうなものはやめたがいいじゃないかというのがわれわれの提案なんです。こんなばかげたことを聞いて講釈し合っているような時間がないような重要な問題だと思う。これは一つ御相談してはっきりさして下さい。こんなことで時間かけてごたごたやっていたって損がいきます。農民は迷っているんだ。
  108. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 先ほど私申し上げたような意味で協業という言葉を使うのが一番いいのじゃないか、こう思っております。
  109. 森八三一

    ○森八三一君 議事進行について。この問題は果樹振興法案のときに政務次官に私お伺いしまして、そこで振興局長の御答弁もあったわけですが、納得ができなかったので、政府の見解をはっきりしていただきたいということで政務次官から実は文書で御説明をちょうだいいたしました。何べん読んでみてもこれはまた私わからないんです。それですから、具体的に論議をしておりますと時間が長くなりまするし、十七条にも「農作業の共同化の事業の発達」という字が入ってきておるわけで、その方は(協業の助長)という見出しのところへ入っておるということで、私は、最後に大澤さんがおっしゃいましたように、まあ新しい言葉を使っただけで大体内容的には同じだということですから、抽象的には了解いたしておりますが、これを追い詰めて議論をいたしまするというと簡単には解決ができんと思いますので、なお、地方へ行ったときに協業と共同とはどう違いますかという説明を聞かれますると、それは同じなんだよということだけでは向こうも納得をしないということもしばしばありますので、もう一ぺん御迷惑でも——私は政務次官からちょうだいいたしておりますが、その後政府の御解釈も違ってきておりはせんかという感じもいたしますので、もう一ぺん文書で、共同とはこういうことだ、協同とはこういうことだという御説明をちょうだいして、そいつを見てもう一ぺん読んで最後に統一した方がいいと思います。何べんやったってきりがつかんと思います。これで時間を空費するのはつまらんことだと思いますので、そういうようなお取り扱いを願いたいと思います。   〔「賛成」「委員長、今の御発案の通り理事会で相談しましょう」と呼ぶ者あり〕
  110. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまの森君の動議は、理事会で協議いたします。
  111. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そこで、協業の問題については、一応そういうことできょうのところは協業という問題で私はあなたに質問を続けますけれども、そういう共同化に通ずる協業を言っている第十七条は、その終末のところへいって「農業従事者の協同組織の整備、」ということがあるわけでありますが、これはこれだけじゃ抽象的でわからないわけなんですけれども、具体的にこの「農業従事者の協同組織の整備、」というような問題についての説明をお伺いしたいと思います。
  112. 大澤融

    政府委員(大澤融君) これは、一つは農業協同組合法の改正の問題でございますけれども、現在の農業協同組合がみずから土地を持って農業をするということはできないわけです。そこで、先ほど申し上げましたように、経営も協業、私どもが言っている協同経営の形も芽ばえがあるので、そういうことをとり得るために協同組合法を改正いたしまして生産協同組合の制度を新設する。そして、その生産協同組合が農業ができるという道を開くのが一つと、それからもう一つは、従来からあります有限会社あるいは合資会社、合名会社というようなものと今度新たに農業協同組合法を改正して作ります生産協同組合、これが一定条件のもとに土地を取得できる道を開くということで農地法の改正をいたします。主としてここに言っておりますのは、その農地法の改正と協同組合法の改正、これを言っております。
  113. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 私は、第十八条には農地の信託だとか、農地に関係する問題については、農業協同組合がやる役割がはっきり位置づけてあるわけなんですよ。ところが第十七条には、ただいま説明を聞いたから農業協同組合法の改正をやるんだということがわかったわけなんですけれども、これはやはりこの行為は当然、協業ということを家族経営のほかに助長するとするならば、これは重大な問題としては、農民自体がみずから行なうものである。ですから、やはりこのところで、農協であるとか、あるいは農協に加入している組合員のいわゆる協同組織によってこの協業というものは担当すべきである、こういうことを明確にうたったことの方が、はるかに政府がいうより、協業を極力考えておるんだという先ほどの説明の建前からいけばもっと明確になっていいと思う。そういうことでないと、何かこれだけでは協業というものがつけたりというように、家族経営に対するつけたりのように考えられるわけなんです。こういう点についての見解をお伺いしたいと思うわけです。
  114. 大澤融

    政府委員(大澤融君) この表現で決して協業の助長がつけたりというようなことにはならないと思います。この国会に今申し上げました点についての農地法と農業協同組合法の改正案を提案いたしまして御審議を願っておるわけでございます。
  115. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そういうことではなくて、そのこと自体はわかりますが、第十八条には、農地の信託あるいは農地の権利移動については農業協同組合の役割がはっきりうたわれておるわけなんです。ですから、協業という問題が今後のいわゆる日本農業にとって重要だとするならば、やはり協業ということは、そういう農協組合員の協同組織によって担当していかなきゃこれはできないわけなんです。政府がやれやれといっても、あるいは地方庁が指導しても、それだけではできないわけです。問題はやはりそういう農民の組織の中から初めて出るわけなんです。そういう農民の協同組織を認めていくということでなければならぬと思うわけなんですよ。そういう点についてうたうべきではなかったかということを聞いているわけなんです。
  116. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 今度創設いたします生産協同組合、これは従来の農業協同組合というわけではございません。そこで、そういうものも含めて言うために、ここでは協同組合というようなことは言わずに、農業従事者の協同組織の整備という表現を使っておるわけです。
  117. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 これはまあ重要な問題ですが、私は憲法の二十八条には、すべての勤労者は——勤労者といえば労働者ばかりじゃない、広い意味でいえば農民も入っている、中小企業者も入っていると思います。従って、従来憲法の二十八条によって、労働者には団結権であるとか、団体交渉権であるとかいうものが付与されておって、それが中心になって今日までいわゆる民主的な労働組合の姿まで発展してきて、これが日本産業界に大きく貢献してきた、このこと自体が中心になって今日、経済が発展したことと思うわけなんです。別に日本の国が、資本が外国に対してすぐれているわけでないし、あるいはまた技術がすぐれているわけでもない、あるいは資源がすぐれているわけでもない。そういう中でもって経済が高度に発展してきたということは、こういう団結権に保障された労働組合の大きな役割があったからこそ、所得受け取り配分が少なくても、非常に経済が発展してきた要因があると思うわけです。そういう点からいくと、今後の農村の、いわゆる政府のいう協業化という問題は、非常に重要な要素を帯びてくるわけなんです。そういう意味において、農民に対する権利の一端としてやはり団結権であるとか交渉権というものは付与させなきゃいかぬ。それにはやはり農民自体が作る協同組織でないと、これはどうしても完全な遂行はできないと思うわけです。そういう観点から聞いているわけです。現にビール麦に対する会社との交渉、さらに将来農地法が改正されて、有限会社であるとかあるいはまた合名会社とか、そういうようなものが土地を取得して農村に入って来て、いわゆる資本主義経済の中で企業的に農産加工の面まで全部やるようになると、生産農民というものは、いわゆる協同の組織体としての法に裏づけされた権利というものを持たないというと、協業というものは成功し得ないという場面が大いに出てくるのではないかということを憂うるわけです。そういう意味合いにおいてここにおける協業の助長という問題の中における農民自体に作らせる組織というものは、これは単に生産協同組合というものでなく、やはり農民に自主的の権利を付与するような方向において協同組織をむしろ政府が助長すべきである、こういうふうに考えているわけですけれども、こういう点について御説明を願いたいと思います。
  118. 大澤融

    政府委員(大澤融君) そうした農民の自主的の組織としてそういうものが生まれるということは、別にこの法律で取り扱っておりませんけれども、たとえばビール会社でありますとか、そういうものとビール麦の価格の交渉をするというようなことは、経済行為として協同組合がやり得ることですし、特にそういうことのために新しい組織を作るというようなことは必要ない、こういうふうに思います。
  119. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連して。この十七条の、これもまた言葉のことになるのですが、この十三ページの二行目の終わりの方です。「農業従事者の協同組織の整備」こうなっているのですが、御説明の内容から言いますと、お得意の協業経営整備、こういうふうに言うた方が、いろいろ法案説明等からいっても、すっきりするのではないですか。結局協業を二つに分けて、前段では例の協業組織のことを言うており、あとの方は経営共同化ですね、その点に触れているわけでしょう。ことさらにもう一つ、またこういう字を書いて、協同組合の協同組織というようなことを言うと、非常に不明確になってくるのですね。やはりここでは、十七条の前段はいわゆる一般的な協業組織、後段はやはり経営自体のことを言っているわけですから、農業従事者の協業経営、こうやった方がはっきりしていいじゃないですか。
  120. 大澤融

    政府委員(大澤融君) ここでは組織のことを言っておるわけです。農業従事者の協業経営整備ということでなく、やはり組織を言っているのです。協同組織を整備しようと言っているのです。なお経営の協業組織という言葉を私ここで使いましたが、法律の中では使っておりません。
  121. 亀田得治

    ○亀田得治君 法律の中で使ってくれということを言っているわけです。使っていないからはっきりしない。つまり「農業従事者が農地についての権利又は労力を提供し合い、協同して農業を営むことができるように」ということは、結局協業経営の組織を整備することになるでしょう。
  122. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 「協同して農業を営む」これは私が先ほど申し上げているような協業経営ができるようにということだと思います。協業経営ができるようにするために組織を整備するというのですから、協同組織の整備というのが正確な使い方と思います。
  123. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 それではこの第十七条にうたわれてあるところの「農業従事者の協同組織」というものは現存するものはどういうものがあるのですか。
  124. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 農業従事者の協同組織として現存するものは協同組合、代表的なものとしては協同組合。
  125. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 どういうものですか、ないんでしょう。この第十七条の「協同組織の整備」という問題がありますがね、これは協同組織という今あるのはどういうようなものがあるんですか、御説明願いたいと思います。
  126. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 制度的には農業協同組合がございます。しかし、その上からつながって協同して農業を営むことができるような協同組織というものは今ないんです。
  127. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうしますと、第五章の第二十四条に、ここにも(農業団体整備)ということがあるわけですけれども、あなたの説明では何かこれは重複しているように考えられるわけです。前にこういうことをうたえばあとうたう必要もないだろうし、もし違うもんだったら、これはうたってもいいと思いますが、そうすると農業団体というのが今も言うように、農業協同組合もありますし、ほかにもたくさんあります。ありますけれども、前に言うような協業の問題に通ずるいわゆる協同組織ということになりますと、おのずから今現存する農業協同組合と趣が変わってゆくんではないか、こういうようにも受け取れるわけなんです。これは重複しているのか、別のものかお聞きしたいと思います。
  128. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 十七条でいっておりますのは、協同して農業を営むことができるような農業従事者の協同組織というのは今ないわけです。そういうものを整備しよう、こういうことを言っているわけです。それから二十四条の方の(農業団体整備)、この中の農業団体には協同組合も入りますし、あるいはその他の団体も入る、こういうことでございます。
  129. 東隆

    ○東隆君 関連。今大澤さんからのお答えですと、ここの第十七条は「国は、家族農業経営の発展、農業生産性の向上、農業所得の確保等に資するため、生産行程についての協業を助長する」というのでなくて、共同化を助長する方策として農業協同組合云々と、こういうように直す方が意味が通ずるわけですね、それでこの協業というやつを前の方へ持ってくるというと、協業政策の一部としてこういうことをやるんだと、こう書いてこなければいかぬことになるわけですね。協業の方が広いというんですから、あとの方が限定されたことになるんですから、だから協業方策としてでなくて、方策の一部として農業協同組合、こうなるんだから、前の方を、協業というやつを、協業というのでなくて、ここは共同化の助長の方策としてと、こういうようにするとはっきり意味が出てくるんじゃないですか。
  130. 大澤融

    政府委員(大澤融君) ここで協業といっておりますのは、あとにあります農業を営むために組織としてやるという私が先ほどから言っている共同経営ということだけを言っているわけではないわけです。そこで「協業を助長する方策として、」ということで、その次に「農業協同組合が行なう共同利用施設の設置及び農作業の共同化の事業」というようなことは従来も農業協同組合がやっておりまして、私がここでいう協業組織でございます。ですから協業組織も共同経営も助長するという意味で「協業を助長する方策として、」ということでいいと思います。
  131. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 第二十四条にいう「農業団体」と第十七条にいう「協同組織」というものは、今大澤さんの答弁では別個のものだと、こういう今答弁があったわけですね。そうしますというと、ここでは「整備、」という言葉が書いてある、ちゃんと。従って従来こういう形態があったんだという前提がないと整備ということにはならぬですな。そうしますというと、もしそういうような、あんたのおっしゃるような違うもので、いわゆる協業のための協業組織を作るんだということになれば、私がさっき申し上げたように、いわゆる憲法二十八条の精神に従って農民の権利を助長するようないわゆるいい方向へ民主的な組合として、協同組織として真に協業へ関与できるような、従事できるような姿においての、いわゆる国の援助方法を何かの法案ではっきり規定しなければならぬと思うんですよ。でないと、具体化にならぬと思うわけです。だから協業を推進すると言いながら、ただそういう抽象的なことでは納得できない、こういうことになるわけなんですけれどもね、いかがです。
  132. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 整備ということは、ないものを作るというのと、あるものを整備するというのと両方整備という言葉の中に入ると思います。
  133. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 不十分ですけれども、今の質問はこれで取りやめておきます。
  134. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 本日はこの程度にいたします。  それでは、散会いたします。    午後四時五十六分散会