○
政府委員(
西村健次郎君)
魚価安定基金法案の
提案理由につきましては、過日御
説明申し上げた
通りでございますが、本
法律案の
趣旨及びその概要につきまして、私から補足的に御
説明申し上げます。
わが国の漁業は、最近における漁船の大型化、合成繊維漁網の普及、魚群探知能力の向上その他の技術的
発展等により、その漁獲量において、順調な増加を示しておりますが、この中で、サンマ、スルメイカ、アジ、サバ等のいわゆる多獲性の水産物の増加が顕著でございます。これらの多獲性の水産物につきましては、その漁獲が地域的にまたは時期的に、水揚げ港における輸送、冷蔵、冷凍、加工等の処理能力を越えて集中して水揚げされ、盛漁期にその魚価が暴落し、いわゆる大漁貧乏の現象を呈することがしばしばありまして、これに
関係いたします漁業者の経営を著しく不安定なものといたしておりますことは、
提案理由で御
説明申し上げた
通りでございます。今後における
国民経済の成長
発展に即応し、中小漁業者の
所得水準を高め、
国民経済において正当な
地位を確保し得るよう、これら漁業者の経営を不安定ならしめている要因を除去するために、総合的な
施策を樹立することが要請されています。
政府といたしましても、鋭意その
対策を検討した結果、一方におきまして、漁業者
団体における出荷調整の機能を考慮いたしまして、冷蔵庫、冷蔵自動車の設置及び主要
生産地市場における情報センターの設置につきまして、
所要の予算
措置を講ずる等、
流通改善のための
施策を推進することといたしておりますが、これらの
措置にあわせまして、漁業者が
生産面において自主的に適切な調整を行なう組織を設けるため、
漁業生産調整組合法案を提出いたすとともに、これと相待って
生産及び
流通の調整等の
事業につき助成をする組織を設けるため、この
法律案を提出した次第であります。
次に、この
法律案の
内容について概略御
説明申し上げます。
第一は、この基金の性格でありますが、魚価安定基金は、多獲性の水産物の価格の著しい低落がこれに
関係する中小漁業者の経営の安定を著しく阻害している事態にかんがみまして、漁業
生産調整
組合、水
産業協同
組合等が、多獲性の水産物の価格を安定させるために行なう調整等の
事業につき助成をすることによりまして、漁業経営の安定に資することを
目的として設立される法人であります。法人組織にいたしましたのは、
政府、都道府県及び民間
団体の協力により、本
事業を運営するという見地から、これらのものの出資により基金の造成を行なうこととした次第でありますが、そのためには、このような制度が最も適当であると
考えたためであります。
第二は、基金の資本金及び出資に関する
規定であります。基金の成立の当初における資本金は、一億六千万円を下るものであってはならないと法定しておりますが、このうち
政府は、八千万円を出資することといたしたのであります。その他の出資者といたしましては、都道府県のほか、この基金の業務に
関係する諸
団体に広く協力を願う
趣旨から、漁業
生産調整
組合、水
産業協同
組合及び水産加
工業を営む者が組織する中小企業等協同
組合を予定いたしておりますが、都道府県の出資につきましては、
地方財政の健全性を確保するため、自治大臣の承認を要することといたしたのであります。
第三は、この基金の管理に関する
規定でありますが、基金の管理につきましては、一般的な方針といたしまして極力事務の簡素化をはかり、その事務費の節減に
努力して参る所存でございますが、役員の定数についても、これを必要な最少限度のものとするため、総数を五人以内に限定した次第であります。また、基金の業務の能率的、かつ、適正な運営をはかるため、基金に理事長の諮問機関として評議員会を置き、基金の業務に関する重要事項を
調査審議することといたしたのであります。
第四は、基金の業務に関する
規定でありますが、基金は二つの業務を行なうものといたしました。
その第一点は、出資者たる漁業
生産調整
組合に対する資金の交付であります。漁業
生産調整
組合が行なう
事業につきましては、この
法律案とともに御
審議をお願いいたしております
漁業生産調整組合法案の御
説明で申し上げましたように、二種類ございます。
一つは、一般的な制限として、休漁日の設定、積載量の制限等を予定しておりますが、他の
一つは、一定の事態において、以上の制限を行なっても、なお調整
事業が十分な効果を上げ得ない場合に、一部の
組合員を対象としまして陸揚げの制限を行なおうというものでありまして、その一部の
組合員に対しては一種の犠牲をしいることにもなるわけでありまして、この場合に、漁業
生産調整
組合が、これらの
組合員に対して調整金を支給することといたしておりますが、基金は、この調整金の支給に要する経費の全部または一部に相当する金額を交付することにより、漁業
生産調整
組合の
事業の円滑な実施を確保しようというものであります。
その第二点は、出資者たる水
産業協同
組合または中小企業等協同
組合に対する資金の交付であります。これは、従来実施して参りました水産物
流通調整
事業に
所要の改称を加え、この基金の
事業として制度的に確立いたしたいというものであります。水産物
流通調整中業は、系統漁協が実施するサンマかす及びスルメイカの調整保管
事業につきまして、一定の条件により、保管期間中の金利相当分を助成することにより、その原料魚であるサンマ及びスルメイカの価格の著しい低落を防止しようとするものでありますが、魚価安定の実効を期するために、多獲性の水産物の
生産及び
流通の実態に即応した改善が強く要請されていたのであります。
このため、新たに基金の
事業といたしまして、出資者たる水
産業協同
組合または中小企業等協同
組合が一定の条件のもとに、多獲性の水産物を加工し、またはこれを原料として製造した製品を、その加工者または製造者の委託を受けて保管及び販売をした場合に、当該
組合に対し、その製品の保管に要する経費、すなわち金利及び保御料相当額を限度とする金額を交付することにより、魚価の安定をはかろうとするものであります。この場合、基金の業務の対象といたします製品は、政令で指定することとしておりますが、さしあたり
昭和三十六
年度におきましては、サンマかすを指定する予定にしておりまして、その他のものにつきましては、諸般の情勢が
整備されれば、漸次拡充をしたいと
考えております。
第五は、基金の財務及び会計に関する
規定であります。
基金は、毎
事業年度、収入及び支出の予算、
事業計画並びに資金
計画を作成した場合、また財務諸表及び決算報告書を作成した場合には、
農林大臣の承認を受けさせることとし、財務及び会計の健全化を期することとした次第であります。
また、基金は、その資産を金融機関への預金、国債その他の有価証券の取得等の方法によって
運用して得られる果実により、その業務を実施することを
原則としておりますが、多獲性の水産物の
生産、
流通及び価格変動の実態から見て、毎年の
事業量にかなりの変動が予想されますので、とくに必要があると認められる場合には、
農林大臣の承認を受けて一定の範囲内で基金の元本を取りくずことができることといたしてまして、基金の業務の運営に遺憾のないようにに
措置したいと
考えております。
その他、この基金の行ないます業務は、いずれもきわめて公益性の高いものでありますため、それが適正に行なわれるよう、この
法律案は、若干の監督
規定を設けるほか
所要の罰則
規定も設けてあります。また、この基金に対しては登録税法その他の税法上の特例を設けてあります。
以上で、本
法律案の
趣旨及び概要についての補足
説明を終わらせていただきます。
次に、
漁業生産調整組合法案の
趣旨及び概要の補足
説明をいたします。
漁業生産調整組合法案の
提案の
理由につきましては、さきに、御
説明申し上げた
通りでありますが、本
法案の概要及びその
趣旨につきまして、私より補足的に御
説明申し上げます。
わが国の漁業において重要な
地位を占める中小の漁船漁業は、一般にその経営が不振でありますが、なかんずくサンマ、イカ、アジ、サバ、イワシ等いわゆる多獲性の大衆魚の採捕を
目的とする漁業については、時期的な過度の漁獲により、陸揚地の輸送、保蔵、加工等の処理能力の限度をこえて陸揚げが集中するため、魚価が暴落し、いわゆる大漁貧乏の現象を生ずることがしばしばあり、その経営が著しく不安定となっておりますことは、すでに
提案理由で御
説明申し上げた
通りであります。このような中小漁業の経営の安定をはかるためには、一方において陸揚げ後における水産物の
流通を調整することが必要でありますが、他方この種の漁業の特質上、その前提として漁業
生産自体の調整を行なうことが必要となって参るのであります。かような見地に心づきまして、今般別途御
審議願うこととしております
魚価安定基金法案を提出いたし、中小漁業者等が自主的に
生産の調整を行なうための組織として漁業
生産調整
組合を設けることができるようにするとともに、必要な場合に国が直接漁業
生産活動の規制に関する命令を発することによってこれを補完する
措置を講ずることができるようにするため、
所要の立法
措置を講ずることとし、今回この
法案を提出した次第であります。
次に、本
法案の
内容について概略御
説明申し上げます。
この
法案の骨子の第一点は、この
法案の
適用を受ける漁業は政令で指定することとしていることであります。この指定の対象となるのは、一定の海域においては多獲性の水産物の採捕を
目的とする漁業でありますが、その指定の要件は二つありまして、その第一は、その漁業を営む者の中で中小漁業者の占める
地位が高いこと、すなわちその漁業を営む者の総数の三分の二以上が中小漁業者であり、かつ、その漁業における
生産活動の相当部分が中小漁業者により行なわれていることを必要としております。その第二は、
生産の調整を必要とする事態であること、すなわち、時期的に過度の漁獲が行なわれることにより、しばしばその漁獲、物の価格が著しく低落し、その結果その漁業を営む中小漁業者等の経営の安定が阻害され、または阻害されるおそれがあるということであります。このような要件に合致する漁業を政令で指定するのでありますが、その指定の仕方は、一定の操業区域において一定の魚種を一定の漁法により採捕する漁業というように行なう予定で、具体的な対象としては、さしあたり、千葉県以北の太平洋におけるサンマ棒受網漁業、山陰
地方におけるアジ・サバ・イワシまき網漁業、東海黄海におけるアジ・サバまき網漁業、青森県沖合いの太平洋におけるイカ釣漁業等を
考えております。
第二点は
組合の設立の仕方であります。
組合は法人と、しておりますが、組織の
原則としましては、この種の
組合の例に準じ、営利を
目的としないこと、
組合員が任意に加入しまたは脱退することができること、
組合員の議決権及び選挙権が平等であることの
三つの要件を備えなければならないことといたしております。
組合は指定漁業ごとに設立するものとし、かつ、重複設立を避けるため、指定漁業ごとに一側としております。指定漁業は、さきに申し述べました
通り、一定の操業区域ごとに指定することになっておりますので、
組合は、陸揚げの地区によらず一定の操業区域を単位として設立されることになります。また一度設立された
組合は、この種漁業の性格にかんがみ、対象漁業が指定漁業としての要件を備えるものとして指定を受けている限り、一時的な事情に左右されず、常時存置し得るものといたしております。次に、
組合員たる資格につきましては、小規模の漁船を使用して営む者については、漁獲量の全体に占める割合もきわめて小さく、また経営の規模が
零細なために調整
事業に参加せしめることが必ずしも必要、かつ、適当とは
考えられない場合もありますので、
組合の定款で一定規模以上の漁船を使用する者に限定することができることとしております。
組合の設立の要件といたしましては、中小漁業者が主体となり、かつ、調整
事業の効果を十分に発揮し得る場合にのみ設立を認めるという見地から、
組合員たる資格者の三分の二以上が
組合員となるとともに、
組合員たる資格者の三分の二以上が中小漁業者であり、かつ、総
組合員の三分の二以上が中小漁業者であるものでなければ、設立することができないこととしており、さらに、設立については、
農林大臣の認可を受けることを必要とし、
農林大臣は認可の申請が一定の要件に適合する場合に認可を行なうことにいたしております。
第三点は、
組合の
事業に関してであります。漁業者の
協同組織による経済的
地位の向上につきましては、水
産業協同
組合系組織による経済
事業に期待することとして、漁業
生産調整
組合は経済
事業は行なわず、
生産調整
事業とこれに必要な最少限度の
事業に限定しております。すなわち水
産業協同
組合と漁業
生産調整
組合は、それぞれ
事業の分野を分かちつつ、相協力して漁業経営の安定に資することを期待している次第であります。
組合の必須
事業である調整
事業につきましては、二種類ありまして、
一つは、
組合員の行なう当該漁業の
目的とする水産物の採捕、運搬または陸揚げに関する一般的な制限であり、具体的には休漁日の設定、漁獲物積載数量の制限、運搬船の使用隻数の制限等を予定しております。
他の
一つは、
組合員の一部を、対象とする陸揚げの制限でありまして、一定の事態において一般的な制限を行なっても、なお調整
事業十分な効果を上げ得ないような場合、これを具体的に申しますと、サンマ漁業において一定の港に陸揚げをしようとする漁船の漁獲物がその港における輸送、保蔵、加工等の処理能力をこえ、かつ、価格が著しく低落するような場合におきまして、一部の
組合員の漁船に対して陸揚げの停止をさせることを予定しているのであります。この場合には、その対象となる
組合員に一種の犠牲をしいることにもなりますので、
組合がその
組合員に調整金を支払うこととするとともに、魚価安定基金からその
組合に対し、それに要する経費の全部または一部を交付することとしておるのであります。
組合が以上の調整
事業を実施しようとする場合には、制限の種類、方法、実施の期間等を調整規程で定め、
農林大臣の認可を受けなければならないこととしております。
農林大臣は、調整
規定の認可を行なうにあたっては、その調整
事業が指定漁業の経営の安定をはかるために必要な最少限度をこえないこと、不当に差別的でないこと、一般
消費者及び関連
事業者の利益を不当に害するおそれがないことの
三つの要件に適合しなければしてはならないものとしております。
組合の
事業としては、調整
事業のほか、任意
事業として
組合員に対する情報提供手業と
組合員のためにする
組合協力の締結があります。
組合協約は、
組合員の経営の不安定な事態を克服するために締結するもので、調整
事業に関しては陸揚地
市場の卸売業者、漁獲物運搬業者、
組合員資格を有する員外者と締結することができ、その相手方は正当な
理由がない限り、その交渉に応じなければならないこととするとともに、必要がある場合には、
農林大臣が交渉の当事者に対し勧告を行なうことができるものとしております。また調整
事業に関する
組合協約のうち、とくに
組合員資格を有する員外者と締結するものについては、調整規程と同様の
趣旨から
農林大臣の認可を必要とすることにいたしております。
そのほか、
組合協約は、
組合員と取引
関係がある
事業者との同においても締結することができることにしております。この場合、相手方は誠意をもってその交渉に応じなければならないものといたしております。
第四点は漁業
生産活動の規制に関する命令であります。すなわち、
組合の自主的な
生産調整
事業では十分な効果を上げ得ないような場合には、一定の要件のもとに
農林大臣が直接に
組合の調整
事業と同様の制限を定めて
組合員たる資格者全員に対しこれに従うべきことを命ずることができることとしております。そしてその
発動は、
組合員たる資格を有する員外者の漁業生
生産活動が調整
事業の前提となっている経営不安定の事態の克服を阻害しており、または
組合の統制力が十分でないため、自主的な
生産調整ではかかる事態の克服ができず、もしくはその方法が適当でないと認められる場合において、このような
状態の継続することが、当該漁業の経営の安定に重大な悪
影響を及ぼし、
国民経済の健全な
発展に著しい支障を生ずるおそれがあると認められるときに限って行なわれるものとしているのであります。この命令の
内容は、当該
組合の
組合員たる資格者が行なう当該漁業の
目的とする水産物の採捕、運搬または陸揚げに関する一般的な制限について、当該
組合が総会の議決を経て
農林大臣に申し出た場合に限り、当該
組合の調整規程の
内容を参酌して定め、
農林省令をもってすることとしております。
第五点は、いわゆる独禁法の
適用除外についての定めであります。すなわち、
農林大臣の認可をうけた調整
規定または
組合協約及びこれらに基づいてする行為には、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する
法律の
規定は、不公正な取引方法を用いるとき等を除いては
適用しないこととし、他面、
農林大臣は調整規程もしくは
組合協約の認可をしようとするとき、または漁業
生産活動の規制に関する命令をしようとするときは、公正取引
委員会に協議しなければならないものとしております。
第六点は、
農林大臣は漁業の指定についての政令の制定、改廃の立案をしようとするとき、または漁業
生産活動の規制に関する命令をしようとするときは、中央漁業調整
審議会に諮問しなければならないものとするとともに、この
法律の施行に関する重要事項についても同
審議会の意見を聞くことができるものとしております。このため中央漁業調整
審議会の増員をはかり、新たに一般
消費者及び関連
事業者をも
委員に加え、さらに部会の設置もできるようにして、この
法律の適正な
運用に資したいと
考えております。また、調整規程もしくは
組合協約または漁業
生産活動の規制に関する命令の実施が
関係都道府県における水
産業に著しい
影響を及ぼすと認めるときは、調整規程もしくは
組合協約の認可をし、または規制命令を発する前に、あらかじめその都道府県知事の意見をきかなければならないものといたしております。
以上のほか、
組合の管理、解散等につきましては、この種の
組合の例に準じ
所要の
規定を設けますとともに、
組合の
事業に対しましては、
農林大臣が十分な監督を行なうこととし、一定の場合には
組合に対し必要な
措置をとるべきことを命じ、あるいは
組合の解散を命ずることができるものとしており、さらにこの
法律の違反に対しては罰則を設けて、実効の確保をはかっております。また、
組合の中業については一定の場合に非課税の特典を認める等のため、附則で
関係法律の
改正をすることといたしております。
以上で本
法案の概要と
趣旨についての補足
説明を終わります。
—————————————
次に、
漁業権存続期間特例法案の
提案理由につきましては、さきに御
説明申し上げた
通りでありますが、本
法案の概要及び
趣旨につきまして、私より補足的に
説明申し上げます。
沿岸漁業は、いわば低
所得、不安定を特質とする
産業として停滞的でありますので、その振興をはかるため、
政府におきましては各種の
施策を講じておりますが、これらの
施策と相待ってそのよって立つ漁場の利用及び漁業者の
協同組織のあり方自体について根本的な検討を加える必要があるのではないかと
考えられます。そこで、
昭和三十三年六月
農林省に漁業制度
調査会を設け、漁業に関する基本的制度の改善をはかるための方策を
調査審議していただくことといたしましたことは、
提案理由の
説明の際に御
説明申し上げた
通りであります。
漁業制度
調査会の最終的な答申は、本年三月末に行なわれましたので、
政府においては、この答申に基づきまして、漁業法、水
産業協同
組合法等の
改正案を取りまとめ、次の通常国会に
提案いたしたいと
考えております。ところで、現行漁業法に基づいて免許されております漁業権は、おおむね本年八月三十一日及び十二月三十一日に満了することになっておりますが、漁業権の切りかえは
改正後の漁業法によって行なうことが妥当と
考えられるのでございます。なお、漁業権の切りかえ免許には、漁場の測量、
調査、漁場
計画の海区漁業調整
委員会への諮問、公聴会の開催、漁場
計画の公示等、その準備に約一カ年の期間を必要としますので、これらの期間をも
見込みまして、ほぼ二カ年間漁業権の存続期間を延長することができるようにいたしますため、この
法律案を提出した次第であります。
次に、本
法律案の
内容につきまして概略御
説明申し上げます。
第一点といたしまして、本年八月一日現在存在する漁業権で、
昭和三十八年八月三十日までにその存続期間が満了するものにつきましては、漁業法に定めております存続期間の
特別措置として、後に御
説明申し上げます特定の漁業権を除き、
昭和三十八年八月三十一日、同年十二月三十一日または
昭和三十九年三月三十一日のうち都道府県知事が漁業権ごとに指定する期日まで、ほぼ二カ年間延長することにいたしております。
三つの期日を選びました
理由は、漁場の総合利用という見地からすれば、できるだけ一斉に切りかえを行なうことが望ましいのでありますが、他面、地域により、または漁業の種類によりまして、漁業の時期も異なっておりますので、これらの点も考慮し、実情に即し円滑に実施されるよう、漁業制度改革の際の例に準じ
三つの期日とした次第でございます。
存続期間の延長
措置をすべての漁業権について一律に
適用することは妥当でないと
考えられますので、次の二の場合には
適用しないことといたしております。その一は、漁業調整その他公益上の必要により漁業権の取り消しの事由があるか、またはその取り消しの事由が
昭和三十八年八月三十一日までに発生することが確実なものであります。この事由に該当するかどうかは、現地における具体的な事情を十分
調査し、海区漁業調整
委員会に諮問した上で、都道府県知事が認定することといたしております。他の
一つは、漁場の敷地が他人の所有に属するか、またはその漁場の水面が他人の占有にかかる漁業権で、その所有者または占有者から存続期間の延長につき同意が得られないものであります。海面下の敷地や河川法の
適用を受ける河川の敷地は私的所有の対象となりませんので、漁場の敷地が他人の所有に属する場合に該当する場合は、準用河川、ため池、沼等敷地の場合であります。また、漁場の水面が他人の占有にかかるものは、公有水面埋立の免許にかかる水
面等の場合であります。これらの二つの漁業権につきましては、公益上の必要性または他の私権との調和をはかる観点から、特例
措置により延長することは妥当でないと
考えまして除外することにいたした次第であります。
第二点といたしまして、この
法律の施行の日から
昭和三十八年八月三十一日までの間に新たに免許される漁業権につきましては、さきに申し述べました特例
措置と同様の
趣旨によりまして、その存続期間を
昭和三十九年三月三十一日をこえない範囲内において都道府県知事が漁業権ごとに定める期間までとすることにいたしております。
その他権利
関係の安定をはかるため、延長
措置の
適用を受ける漁業権と
適用を受けない漁業権をできるだけ早く区別し、それぞれ公示等の
規定を設けております。
以上で、本
法案の概要と
趣旨についての補足
説明を終わります。