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政府委員(江藤智君) 経済企画庁といたしましても、そういう面は非常に検討いたしました
立場上、補足いたしたいと思いますが、ただいま森先生の御議論もまことにご
もっともだと思います。投資をする以上は、その建設
計画あるいはその収支を十分勘案いたしまして、そうして事業として成り立つものに投資すべきである。損益勘定の方は、これは日常の経費でございますが、投資をする以上は、その事業
計画でペイをするものに投資をするのだからして、三十四年度には収支バランスをしておるからして、今運賃を改正しなくても、そういうものにしか投資をしないのだから、改正をする必要はない、こういう御議論のように思うのであります。しかし、投資をした場合に、その事業
計画がペイする、成り立つものだけ投資をして済むものならばそれでいいわけでございますけれ
ども、国有鉄道という特殊の
立場にございまするために、また、国有鉄道という
立場におきまして、運賃が必ずしも適当に設定せられておりませんからして、そういう投資とその投資効果というものがうまくバランスをしておらないのが現状でございまして、この点が非常に問題になるわけであります。たとえて申しますというと、ただいま国鉄に三百何十線区か大きい線区がございますけれ
ども、そのうちで相当主要な線区でございましても、現在すでに償却が終おりまして、そうしてその上を走っている、車も走らせているのでございますからして、当然森先生のお説に従いますというと、そういう線はペイしておらなければいかぬはずである。しかも、その運賃というものは、その線区が一ぱいになりました場合には、複線にしてでもまた輸送力をつけていってもいいような、いわゆる
販売価格と申しますか、運賃になっておれば、これは問題にならないのでございますけれ
ども、
現実はもう償却の済んだ単線の上を腹一ぱいに車を走らせましても赤になっている。しかも、
所得倍増
計画によりまして、そういう線区を複線化しなければとうてい鉄道の任が果たせない。しかし、それではこれ以上に複線の投資をするというと赤字が、かえるからして、たとえば東北線の線路増設はやらぬでいいかというと、これはどうしてもやらなければいけない、こういう状態になっているわけであります。従いまして、先ほど二千百億円の投資をやるという説明がございました。この二千百億のうちで七十五億でございますが、これがいわゆる新線建設に充てられる金でございまして、これはもう新聞その他によりましても、そういう赤字線を国鉄にしょわせるのはけしからぬじゃないか、われわれもさように
考えるのでございまして、こういうものにつきましては、全額
政府が出資するか、あるいはせめて利子だけでも
政府が補給してやるべきである、こういうわけで、来年度からは利子補給というものが初めて、これは非常におくればせでございますし、不十分ではございまするが、われわれの主張が入れられまして、建設線につきましては、これは一応私たちは別にしていいと思うのであります。そういたしますというと、残りが約二千億でございます。たとえば東海道線の新幹線でございます。これが四百四十四億入っておりますけれ
ども、これは事業として、ただいまの運賃でさえこれは採算が立つわけでございますから、これは世界銀行から借り入れをしたわけでございます。それから、先ほど少し説明がどうかと思いましたけれ
ども、企画庁といたしましては、電化はやはりこれはペイする事業であると査定をいたしたわけでございます。ということは、電化をいたしますというと、一時に投資はしなければいけませんけれ
ども、石炭の節約になりますとか、あるいは経営費その他が相当に節約になりますから、これも事業として成り立つものである、従いまして、これは借入金でやるべきである、あるいはディーゼル・カーの増備でございますとか、車両増備の大部分は、これは借入金に回したわけでございます。ということは、車がそれだけふえるということは、それだけ貨物がふえるわけでございますから、収入が上がるわけでございます。従いまして、そういうものを大体計算いたしますというと、千億というものは、森先生のおっしゃるような大体カテゴリーに入るわけでございますから、これは当然借入金によって行なうべきである。ところが、残りの千億を詳細に検討いたしますというと、先ほど申し上げましたように、現在でも赤字線であるけれ
ども、国のとにかく要請と申しますか、経済上の要請によりまして、複線にしなければいけない。しかし、その線は現在すでに償却の済んだ線路を使ってさえとにかく赤字が出るようなところに、さらに膨大な金を入れまして、複線増設をするわけでございますから、ここ当分はその投資に対しまするいわゆる収入というものがこれは見合わないわけでございます。あるいは通勤輸送につきましても、御
承知のようにただいまは非常に高いものでございます。特に東京付近におきましては、地下鉄のごときは一キロ三十二億、あるいはそれ以上の金をかけないというと建設できないような状態になっております。しかも、一方におきましては、非常に高率な割引もしなければいけない。従いまして、現在の山手、京浜というような線路につきましては、これはすでに古い線路で償却もほとんど終わっておりまするし、また、非常な社会的な御批判も受けるようなすし詰めをやっておりますので、ただいまの状態におきましては、確かに黒字でございますけれ
ども、これからこれを温雅を解消いたしますために、別の線路をいよいよ敷かなければいけないという
段階になりますというと、とうていただいまの料金におきまして採算がとれるものでもございません。従いまして、こういうような約千億というものにつきましては、これは利子のかからない金でまかなわなければいけない。ところが、この千億のうち六百億というものは、これは減価償却というような格好におきまして、現在の運賃におきましても繰り込むことができる。残りの約四、五百億と申しますか、数字は私宙で覚えておりませんが、約五百億程度というものが利子のつかない金としてどこからか持ってこなければいけない、しかし、この五百億というような金を
一般税金で持ってくるかどうかということになりますというと、その大部分というものが、先ほど申しましたように、ペイをしない増設の線路の金である、あるいはペイをしない通勤旅客の建設費であるとかいうものでございますから、やはりこれは鉄道を御利用願うところの、いわゆる料金というものでまかなうことが、国鉄の経営の上におきまして至当ではなかろうか、こういうような観点に立ちまして、約五百億、少し足りませんけれ
ども、四百八十億というものを、この際運賃改正やむを得ない、これが先ほど申し上げましたように、大体一二%の値上げ、こういうような結論を出しまして、経済企画庁も了解をいたした次第でございます。簡単でございますが、経過をお話いたしました。