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1961-08-31 第38回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年八月三十一日(木曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————   委員異動 八月九日委員羽生三七君、米田勲君及 び岡三郎辞任につき、その補欠とし て阿部竹松君、北村暢君及び小林孝平 君を議長において指名した。 本日委員小林孝平辞任につき、その 補欠として戸叶武君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤野 繁雄君    理事            櫻井 志郎君            亀田 得治君            東   隆君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            石谷 憲男君            岡村文四郎君            植垣弥一郎君            重政 庸徳君            仲原 善一君            阿部 竹松君            大河原一次君            清澤 俊英君            戸叶  武君            安田 敏雄君            北條 雋八君   国務大臣    農 林 大 臣 河野 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    外務省国際連合    局経済社会課長    補佐      中村 輝彦君    農林政務次官  中野 文門君    食糧庁長官   安田善一郎君    水産庁長官   伊東 正義君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告農林水産政策に関する調査  (農林水産基本政策に関する件)  (船舶の廃油による漁業被害に関す  る件)  (伊勢湾周辺水質汚濁による漁業  被害に関する件)  (油による海水汚濁防止国際条約  と漁業に関する件)  (なたね対策に関する件)   —————————————
  2. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。去る八月九日、羽生三七君、米田勲君及び岡三郎君が辞任、その補欠として阿部竹松君、北村暢君及び小林孝平君が選任されました。   —————————————
  3. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 次に、派遣委員報告を議題といたします。先般二班の委員派遣を行ないました。それぞれの班から順次御報告を願います。まず、第一班の報告を願います。
  4. 安田敏雄

    安田敏雄君 それでは第一班の長野県、愛知県、静岡県の調査報告をいたします。派遣委員は、藤野委員長棚橋委員と私の三名で、八月二十一日から二十七日まで七日間、主として酪農事情果樹農業及び果実加工業事情愛知用水事業並びに豊川用水事業の実況及び農業基本法反響について、それぞれの関係当局から説明を聞くとともに、時間の許す限り現地を視察して参りました。  それではまず長野県について申し上げます。本県視察個所横町共同養豚組合大池畑作振興組合林業指導所長野トマト株式会社東洋食品株式会社及び上伊那下伊那地方災害視察松筑地方加工蔬菜栽培についてであります。松本市を中心とする畑作地帯における園芸作物栽培は、東洋食品株式会社等中央大企業の農村進出と、地元資本による長野トマト株式会社整備拡充により、いまやこの地方における農業生産選択部門の対象となり、一大産業として目ざましい発展をたどっております。農家園芸作物作付規模も逐次増大し、特にトマト栽培においては、当地方の気候、土壌、立地条件から、すでに品質改良が積極的に進み、日本有数トマト産地となりつつあります。従って、東洋食品株式会社及び長野トマト株式会社ともに、その加工品目の重点をトマトジュース及びケチャップに置き、これらの食品の飛躍的な消費増により、さらに進展することが期待されます。  今後の問題点としては、農業経営上における労働力不足に伴い、これら集約的作物選択拡大生産と、さらに季節的に生産調整の困難な作物原料とする農産加工工場年間平均操業を期するための原料作物作付調整をいかにしてはかるかであります。要するに、工場生産能力に合わせた計画的契約栽培による生産の安定と、反当収量の向上生産コスト低減のための栽培技術向上及び生産協業化対策が必要と考えられます。  次に、六月下旬の梅雨前線集中豪雨による被害が、本県は特に激甚地ということで、上伊那並び下伊那の両地方災害復旧状況視察して参りました。災害以来ようやくにして民生も安定し、目下第三次査定も終わりに近く、第五次査定も九月十日ごろを目標にしているという説明がありました。  気づいた点を申し上げます。まず被災者集団移住という特異な現象についてであります。移住地のあっせんと移住に要する諸経費等について、県は関係市町村協力し、これら移住希望者に対する適切な総合対策措置を講ずることが必要であるが、関係政府当局から、これに対する特別立法措置を願いたいとの強い要望がありました。また、農用地の復旧にあたっては、今後の農業動向を考慮し、形状、区画、協業化機械化等の構造改善的な要素を十分加味して指導することが必要と思われます。また、中小河川に対する改修並びに防災事業早期実施の強い要望もありました。また、飯田市の川路の泰阜ダムの補償問題の紛争については、地元民と中部電力との交渉に際し、地元長野県、愛知県知事を含めて、農林建設両省協力によって、早急な解決を望むことが必要であると存じます。最後に、私たちとしては、早く査定を終了せられ、臨時国会の審査に間に合うべく努力せられるよう激励して参ったのであります。  次に、愛知県について申し上げます。本県は主として愛知用水関係豊川用水関係であります。  まず、愛知用水事業の現況について申し上げます。六月の集中豪雨で最大の被害個所であった薄トンネル改良復旧も八月二十七日を目途に終了する見込みで、それが終われば、百十二キロの幹線水路もほとんど完成し、一応九月初旬に通水式の運びという当局説明でありました。私たち一行は、十月中に手直しも終わり、事務所を引き上げる予定という牧尾ダムを初め、兼山取り入れ口白山トンネル高蔵寺サイフォン改良復旧中の薄トンネル及び九五%の工事終了東郷調整池視察したのであります。要するに、公団側としては残る支線水路工事の推進を早められることであります。同時に、農業構造改善とからみ合わせて、農業基本計画実施策を積極的に推進指導されるよう、国及び県当局に対して善処を希望するものであります。  次に、豊川用水事業実施状況について申し上げます。この事業のねらいは、豊橋市を中心とする三河湾沿岸及び豊川下流沖積地一帯、渥美半島の全域及び静岡県湖西町を含むいわゆる東三河地方開発事業であります。これは農業用水のみならず上水道、工業用水を確保して、この地域の総合的な産業開発をしようとするものであります。この目的のため、豊川上流の宇連川をせきとめて、貯水量約二千八百四十万トンの貯水池を作り、この貯水池へは自己流域の水のみならず、天竜川水系の水をも流域変更して導入し、貯水利用をするのであり、また佐久間ダムからも導水路を作って、年間五百万トンの水を豊川上流及び三輪川に放流するものでありまして、これらの水は下流大野頭首工、牟呂、松原頭首工でそれぞれ取水をするのであります。総事業費は約三百五十七億であり、そのうち宇連ダム大野頭首工大野導水路東部幹線水路の一部などに要した約五十億円の工事はすでに終了し、残工事も九月十五日をもって豊川用水事業を引き継ぐ愛知用水公団が、今後約七カ年間で竣工する予定ということであります。  以上が本事業のあらましであります。  私たちは、田原町、浦笠山大野頭首工及び宇連ダム視察したのでありますが、要するに、豊川用水事業については、すでに完成している宇連ダム等工事費五十億円の意義を失わないように、実施計画を促進し、早期の完成を期待しているのであります。地方農業改善は、まず水を通すことにあるのでありますから、関係当局におかれても慎重な基本計画を立てられることを期待いたします。  次に、静岡県について申し上げます。視察個所は西遠柑橘開拓農協庵原山切農場福田丸豊温室組合、榛原町デーリー農場庵原農協及び平山放牧場であります。  以上気づいた点を申し上げます。まず農業近代化資金の問題であります。これにつきましては、温室メロンをおもに栽培している丸豊農協から要望がありました。それは植栽については果樹振興法の適用がないので、近代化資金の大幅の助成を願いたいという点でありました。これに関連して県当局からも同様趣旨要望がありました。それは第三十八回国会農業近代化資金助成法案は未成立となっており、根拠法規がないので、県当局行政措置として暫定的に実施計画を立てておるのであります。それによりますと、近代化資金静岡県の割当が大体六億円であるということでありますが、これを八億円に増額されたいとの要望がありました。現在四億円程度を県独自で融資しているという報告であります。要するに、近代化資金法案早期成立と、資金ワクの増額について善処されたいとの要望がありました。これらは本県のみならず長野県、愛知県においても同様の趣旨要望があったことを申し添えておきます。  次に、貿易自由化の問題でありますが、たとえば本県メロン栽培は、目下発展途上にあるのでありますが、ある県でカリフォルニアから輸入した新品種との対抗関係が、将来深刻な問題となるであろうということでありました。また、相前後いたしますが、長野トマト株式会社の例を見ましても、自由化による砂糖の価格の高騰という問題が、外国飲料水との間において問題になるのでありますが、こういう点についての貿易自由化の問題についても善処されたいという要望がございました。  最後に、三県下の農業基本法反響について簡単に申し上げます。  その問題点は、まず生産選択的拡大についてであります。畜産及び果樹等振興必要性は認められますが、需要の減っている作物転換については、今後検討を要するものと思われます。  次に、価格対策についてでありますが、経済の流通とからんで、園芸農産物価格対策が特に重要な点としてあげられます。  次に、農業改善についてであります。農地整備、すなわち交換分合等による生産基盤農地整備ができるかどうか、また整備に要する資金不足をいかにすべきかが問題点としてあげられるのであります。  次に、協業化についてであります。近年各地に農業法人的な経営並びに集団的栽培の傾向が多く、それを推進するためには農業改善がスムーズに行なわれなければならないのでありますが、この点についても問題点があります。  次に、離農問題についてであります。農家雇用条件が不安定なため、農村青年は他産業へ吸収されつつありますので、農村労働力不足が将来に向かって農業発展を阻害する大きな原因となるのではなかろうかという点が非常に懸念されております。  以上、概略の報告を終わります。以上でございます。
  5. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 以上で第一班の報告は終わりました。  なお、報告に対する御質疑等は、第二班の報告後、あわせて行ないたいと存じます。   —————————————
  6. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、小林孝平君が辞任され、その補欠として戸叶武君が選任されました。  速記をとめて。   〔速記中止
  7. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記をつけて。  河野農林大臣出席を得ましたので、農林水産基本政策に関して御所見を承りたいと存じます。
  8. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ちょっと時間をちょうだいいたしまして、ごあいさつを申し上げます。  私先般の内閣改造によりまして農林大臣になることになりました。また皆様に格別に御協力、御援助をちょうだいいたさなければならないことになりました。どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。  何分農林大臣は四、五年前に一ぺん経験いたしましたが、事情時代も非常に変わっております。従って、この前の経験がプラスになるかマイナスになるかわからぬような点も多かろうと思いますので、せっかく一生懸命勉強してやりたいと思いますから、その点、一つ特にお願い申し上げたいのであります。  ただいま委員長から農林水産行政について所見を述べろということでございますけれども、何分ただいま申し上げましたように、過去に経験がありますとはいいながら、いろいろ勉強もいたさなければならぬことでございますし、就任早々のことでもございますので、まだこれから自分はどうするんだということをとりまとめて申し上げるだけのものがございません。ただし、お尋ねがございましたならば、それに対して私の考えておることを申し上げて、もし御満足が得られればその方が適当ではないか、こう思いますので、御無礼でございますが、お尋ねによって申し上げることにお願いいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  9. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) この際、農林大臣に対し御質疑のおありの方は順次御発言をお願いいたします。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 河野大臣のお考えにつきましては、すでに新聞なりいろんなもので拝見をいたしております。で、本日は大して時間もありませんので、こまかいことはまた別な機会にお尋ねするといたしまして、当面問題になっております食管制度改正の問題、これにつきまして、一つこれの特に基本的な問題点、そういう点についてだけ若干お尋ねをしてみたいと思うのです。  第一の点は、今度の食管問題に対する河野構想、これは決して現在の食管制度根幹を変えるものではないと、こういう説明大臣初め関係者からなされておるわけなんです。しかしながら、言葉ではそういうふうに言われましても、ともかく今までの食管制度の柱といえば、国が一手に農民から米を買って、そうして消費者に一手に流している、どれが根幹なんでありますから、これに対する大きな例外を認めるわけなんですね。従って、言葉でどのように説明されましても、これはやはり現在の制度根幹に触れる問題なんです。こういうふうに理解せざるを得ないわけです。そういう点をはっきり一つしてもらいませんと、賛成するにしても反対するにしても、はなはだ議論がすっきりしないことになるわけです。で、実力者河野さんで、何事も率直に割り切っておっしゃる河野さんに似合わず、今回は、何かそこら辺が少しもやもやしておるような感じを私たち説明の中に受けるわけなんですが、これは一つ率直に、どういうお気持なのかお聞かせを願いたい。
  11. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 最初に御了解を得ておきたいと思いますことは、実は米の問題、食糧の問題は、申し上げるまでもなく、非常に影響するところが多うございます。私は農林大臣に就任いたしましてから、これまでの経緯にかんがみまして、米の問題を扱うとすれば、この制度はどうだろうかということを申し上げて、そうしてこれが生産者消費者方面の御納得を得るには相当の期間が要るということを考えまして、まず私の考えはこのくらいのことでございますということを申し上げたのでございます。従って、今ここで最初に申し上げた通りに、御了解を得ておきたいと思いますことは、ほかの行政と違いまして、何といいましても国民全体の御理解ある御協力がなければ、政治は実行できません。と同時に、私自身まだわが党の決定も得ていないわけでありますから、従って、党議の決定も願わなければなりませんし、また国民の大多数の諸君の御協力が得られなければならぬことでございますので、せっかくそれぞれの各方面の御意見を拝聴いたして、そうして私の考え通りにしていいか悪いか、各方面の御意見はどうかということを伺っておる最中でございます。しかし、今お尋ねの、お前の考えはどうかということでございますから、私の考えとして申し上げておきます。従って、結論としてこれが実際院議に正式に法律改正として出すものはどういうものになるかということと、今ここで申すことは変わる場合があるということを御承知の上でお聞き願いたいと思います。しかし、そんな未熟なものは聞く必要がないというなら別でございます。そういう点で言うてみいというなら申し上げます。  私の考えは、かつて社会党皆さんが、農民からこういう法律でせっかく農民の作ったものを強力にしぼり上げるということは適当じゃないということを強く御主張になった時代がございます。これは私だけ承知しておるのではなく、これはおよそ農政に関係した者は当時強く頭に響いたことであろうと思います。その当時は私たちは、こういう足りない食糧を公平に分けるためには、少々農民諸君にはつらく当たるかもしれぬが、この強権をもって当たらなければ集荷ができないということで、昭和の二十年台を過ぎてきた。ところが、私農林大臣になりました際に、なるほど社会党さんのおっしゃることもごもっともだ、できるならばこの法律の内容にあるところの、売らなければ罰するぞというようなことを、農民意思を十分反映し、御協力を願う形において予約集荷制度というものを実行いたしました。幸いにしてこれが豊作その他の恵まれた条件のもとに、この五年間無事に過ぎてきたわけです。ところが、この過去の五年間経緯考えてみますると、これも御承知通り今日では米麦その他の食糧資源は、決して代用食であるとか何とかという意味ではなしに、消費者の方々の十分なる御納得、御満足のもとに、大体食糧供給の面において需要に合うという数字になっておる。一方、政府においても積極的に無理をして、そうして割り当てて強力に集荷するということなくして、そうして予約をして農民諸君協力を得て、そうして政府農民諸君の御意思によって政府の倉に入ってくるのがおおむね四千万石である。それを基本にして、法律では全部買うことになっておりますけれども、御案内の通り、一千万石前後と申しましょうか、以上と申しましょうか、年によって多少の差はありましょうが、いずれにしろ一千万石前後のものが、この法律精神と別の意味において流通しておるということも現実の問題でございます。そういうようなことで、それも加え、さらに国民諸君の御要望されますところのパン、うどん、その他の粉食を、つまり外麦にして二千万トンと申しますか、米に換算して千二、三百万石になりますか、というようなものに内麦を加えて、そうしてごく少量の外米の輸入を加えて、まず食糧資源としては供給の面においてはこれで十分ということになっておるわけであります。配給を受けられる人も一応御納得がいっておる。従って、この法律基本になり、精神になっておりまするものそのものは、立法の当時もしくはこれまでの経緯から見て、やや違ったものができてきているということは、これはどなたも御納得いただけるのじゃないか。従って需要供給との関係において、この法律が強く主張いたしておりまする売らなければ罰するぞ、買わなければどうする、売る場合には、絶対に政府以外に売ってはいけない、買う場合には政政以外から買ってはいけないという場合に、一番強く主張いたしておるところのものは、今申し上げました通り需要供給関係、それは一応どなたも御納得がいくような数字になっておるのじゃないか。ただ残されておる問題は、この生産された米——需要に対して供給されるものが一つまり生産者から消費者の手に流れるその過程において、一体現実はどうなっておるか、これは一般国民諸君が御満足状態にいっておるのか、また今やっておるようなことをしなければいかぬのかという点に私は問題があると思うのであります。つまり生産者価格といい、消費者価格といい、これについてはいろいろ御意見等がありますが、一応今の生産者価格についてはわが党で決定いたしました価格、これは一応御了承を得ておる。消費者価格は、御承知通り据え置き、これが大衆要望であって、それにこたえておる。でございますから、この消費者価格は、大衆の御要望通りにしておくべきものだ、こういうふうにきめるべきものだ、これについて決して変革を加えたり、改正を加える必要はない。また需要数字供給数字というものは一応御納得がいっておる。それで、この点もよろしい。食管法それ自身の大本は、つまり、出発の当初においては、申し上げるまでもなく、くどいようですが、足らないものを公平に分配するというところにあったにいたしましても、今日では農家生産に支障のない価格米価を安定せしめる。それで、農村から米を買い、政府が収納するというところに一方あると同時に、消費者諸君に対して消費者価格現状で安定させる。そうして生活の基本安定感を与えるというところに目的がある、こう私は思うのであります。これがつまり食管法目的が変わったといえば変わったと言えるし、現に一般の大方の国民諸君食管法に期待するものは何だと申し上げれば、生産者米価消費者米価というものを通じて、そうしてそこに安定感——それぞれの目的の安定をせしめるというところにある。従って、この流れについては、生産から消費流れていく流れについては、これは全然別の問題というては少し言い過ぎかむしれませんが、そこに多少の変更があっても、そこにしいて申せば無理がある。無理があるものについて変更を加えるということは、私は国民の期待にこたえるものではなかろうか、こう思うのでございます。その意味において、私は今考えておりまする食管法の、食糧のこの管理のやり方について直したらどうだと思いますところのものは、かつて、そんなに無理して農村からしぼり取らぬでもいいじゃないかと、社会党さんのおっしゃったところのものを、確かにその通りだ、今日はもう生産消費がマッチしているのだ、合うんだから、そんなに無理してどうこうしなくてもよろしい、そこに私は、生産者諸君に対しても、価格について、いつでも政府は買いますという、現在食管法制度をそのまま継続し、それと同時に、現在やみ流通いたしておりまする米を、何もやみだといって取り締まる必要ないのじゃないか、これを自由に流せるようにしてやってもいいじゃないか。今これをやみといって取り締まらなければならぬ。現に取り締まりも御承知のような状態でございまして、しかもその数字は一千万石からのものがそこを流れておるという現実から見れば、無理にそういったような社会現実状態にあるものを、これをやみだ、やみだといって押えなければならぬ、また無理して非常に不自然な状態にあるものを現状で置くこともどうか。さらに積極的に申し上げますれば、国内全体のやみ価格等考えてみますれば、これを現状やみ制度として取り締まる格好に置いておきまするために、国内やみ価格が非常にへんぱである。これをもし、そういう取り締まりはやりません、自由に取引なすってもけっこうですということにすることによって、国内のいわゆるやみ値というものが、これが合理化された価格に変わるだろう。たとえば皆さんが御承知通り青森県のやみ値が、政府のきめておる価格よりも低く、しかも取引されておるというようなこの現実は、もしこれをそういう取引もけっこうでございますということにするならば、青森の米は当然私は他の全国の今のやみ値と、そこにある調整がはかられまして、そうしてこれが大量に東京に流れてくることによって、青森やみ値というものを全国の平均したやみ値に、これからは自由の相場といえば、自由の相場に変わるようになるだろうというふうに考えますると、この今の生産から消費流れ過程を、政府の必要の限度にとどめればいいじゃないか、無理に法律で縛って罰するとかどうするとかいう必要はなかろうじゃないかという気持がいたしますので、その辺に私は改変を加えたらどうか。今お話しの通り食管法基本精神は何だといえば、私の解釈は、間違っておるかもしれませんが、私は安定した価格によって無制限に幾らでも買うということによって、農民生産意欲を与え、それに安定感を与えること、消費者に対しては、幾らでも今の値段で差し上げますということを実行することによって、食管法精神は貫かれるじゃないか、目的は達成できるじゃないかという意味考えておるのでございます。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 御答弁いろいろ問題があると思いますが、できるだけ簡単に……。この今回の河野構想に反対されておる意見というものは、結局これが出発点になって、全面的に間接統制に移るのじゃないか、こういうことをやはり心配しているわけです。ところが、賛成しておる方も、河野式のこういうやり方で、結局間接統制に移っていくのだ、そういうことを賛成している向きが実際は多い。当面のやみの問題をどうするかということよりも、その背後の、もう一つ次の段階のことを考えて議論しているのが多いわけなんですね。だから、そういうことになりますと、賛成者も反対者もそうにらんでおるわけですからね。これは大きなやはり制度上の変更ということになるわけなんですが、私は、もしそういうことにつながっておるものとすれば、それは大きな変更とやはり農林大臣も認めざるを得ないと思うのですね。もしそうでないというなら、ほんとうにやみだけの処理の問題だ、先のことは考えていないのだというふうに、はっきり切り離して考えられるのかどうか、やみだけであってもこれは問題なんですが、自由米を認めることについては、しかしそれが間接統制とのつながりという点がより一そう大きな問題として、やはり議論される。そこを、農林大臣の見解は一体どういうことになるのか聞いておきたい。
  13. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お説の通り確かに反対される方にそういう御意見の人があり、それからまた、間接統制でいいじゃないかという意見のあることは私も承知しております。しかし、およそこの食糧の問題を取り扱いますには、考えはいかようであっても、決定大衆決定によらなければならぬ。いかに政府がどういう法律を出しましても、その法律が今のように、売れば罰するぞ、買えば罰するぞというような罰則規定を作って戦時中のように強引に押しまくるなら別でございます。そうでない限りは、私はこれをゆるめるという考え方は、大衆の全体の支持があり、大衆の全体の意欲がなければ、そういうことは政治上、制度上できないと思います。たといそういうことを考えておっても、これがいいのだということを考えておっても、いいとか悪いとかいう議論ではない。大衆諸君の御納得によって初めて買いだめとか売り惜しみということがなくなる。買いだめとか売り惜しみの危険がある以上は、この制度を変えることは非常に危険でございます。でございますから、一部にあります間接統制がいいとか悪いとかいうような議論をなさる人がありましても、そういうことは、大衆納得ができる、大衆が支持されるという時代がくれば別でございます。そうでない限りは、政治として絶対やっちゃいかぬと私は思います。ですから、そういうことを、消費生産、両方面大衆が、それはこんなめんどうなことをする必要はない、間接統制でいいのだ、よくわかる、それでわれわれも協力するからそれでやれということで、全体の国民諸君が御納得がいく時代がくれば別であります。そうでない限りは、たといそういうことは、どういう意欲があってもやるべきでない。私は大事の上にも大事をとって、いわゆる石橋をたたいてやるのでなければ、やっちゃいかぬというのが私の信念でございます。従って、今回のこの程度のといいましても、これをやるにしても十分な御納得のいくまでは私はやるべきじゃない。だから臨時議会に早急に出すとか出さぬとかいう人もありますけれども、私はそういうことを考えておりません。皆さんが急いでやれ、大へんけっこうだ、急いでやれということなら別でございますが、しからざれば、責任ある農林大臣としては軽々に制度の改革はやるべきものでない、これはやっていいかどうかということの努力はいたします。こうやってはどうですかという私は努力はいたしますが、その努力が完全に手ごたえがなければ、これならよかろうという安心感がつくまでは、私は法案の提出をしようと思っておりません。従って将来にわたって、今おっしゃるようにこれにつながるものじゃないか、あれにつながるものじゃないかとおっしゃるけれども、私はそういうことは全然現在考えていないのであります。これをやるということでも十二分に一つ消費者諸君にも御納得がいき、心配ございません、これでやります、幾らでも売って差しあげます、幾らでも買って差し上げますからといって、プラス・アルファになりますから、そのプラス・アルファの点を十分御理解願って、どうでございましょうかということを私は御相談申し上げる、よかろうということになればやります。いやしくも大衆の大方の諸君の中にどうも危険だ、あぶない、上がるかもしれない、足りなくなるかもしれないという疑問があるうちやったら、その疑問が事実に反しておっても、これが事実と違っておっても、その疑問が大ごとを起こす危険がありますから、やっちゃいかぬ、こう私は考えております。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 議論を先に進めますが、やみという問題は、このままではやはりいけないと思うのです。従って、河野構想を私たち批判するにしても、おそらく大臣の方からも、それじゃ一体君らはどう考えるかというふうにむしろ反問をされたいくらいの気持だろうと思うのです。そこで、私なりに若干この問題は考えておるわけですが、といいますのは、やみの問題を扱うのに、これを自由化する、自由米にする、こういう道しかないものではないと思うのですね。そういう立場からもう少し大臣の方で検討願いたいものだと考えている。その意味でちょっと申し上げてみるわけですが、一つは、生産者側の立場です。生産者やみに流す、これはいろいろ理由がある。一つはやはり値段の問題、あるいは税金の問題、あるいはそういうものと違った経済外の問題がある。おやじがどうも金締まりが強いので女房がちょいちょいそれを使うといったような別な意味がある。いろいろなものが重なってきているのですね。従って、そういう生産者側のいろいろな理由はありますが、一番大きな問題は、やはり値段の問題だろうと思うのです。これは良質の米であっても一、二、三、四といったような等級はありますが、さほどに違わない、もう少し高く買ってほしいといったような問題がこれは基本的にあろうと思うのですね。だから特別な、米について現在の生産費所得補償方式にプラス・アルファしていく、これが私ほんとうなんですね。そういう点をもう少し検討できないものか。いいものはいいなりの扱いをしていく、そうなれば悪い方はその分だけ減らすのかとお聞きになるかもしれませんが、まあそういう問題もいろいろあるでしょうが、とにかくそういう点についての検討をもっとすべきじゃないか。  それから消費者側の方には、だんだんいい米を食べたい、こういう意欲があることも私たちよく知っております。それに合うようなことをやはり考えなければいかぬわけですが、その際問題になるのは、やはり米作に対する農林省としての新しい嗜好に合うような指導、こういう面をもっと積極的にやっていく、それからもう一つ問題があるのは配給面ですね。農民は言われるほど悪い米を政府に出しているわけじゃない、これが末端の配給面の段階でほかの米と妙にからまされて相当私は質が違ってきていると思うのです。ところがそういう点を、行政上の押えというものはこれはなかなか技術的にむずかしい点があろうと思うのです。しかし、それを完全に押えていけば、消費者に配給米がまずいといったようなそんな声を聞かれなくても済むように私はなると思う。だから、ともかくこのやみという問題につきまして、生産者側並びに消費者側に問題のあることは事実なんでして、その事実をもう少しきめこまかく検討して、すぐ自由販売を認めるといったような制度根幹に触れる、従ってまた農民に非常な不安を与えるといったようなことをする前に、もう少しそういう点についての慎重な検討を願うべきものではないかというふうに思うわけなんですが、大臣のお気持はどうでしょう。
  15. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御意見ごもっともに私も考えます。しかし、何分にも御承知通りに米のことでございますから、たばこのようにA地区にはこういうたばこを配給してこういうたばこは配給しない、配給という言葉は当たりませんが、店に置かなくてもいいというようなことができますとけっこうなんですが、何分米のことでございますから、この米は六大都市には置くけれどもその他の地方にはこの米は置かぬというようなことになると思うのでございます。従って、全国をとにかく均一にして米を備えて置かなければならぬというようなこともございましょうし、いろいろな面から申しまして、今のお話し、むろん努力はしなければならぬ問題でございますけれども、非常に大量のものであり、非常に産地等もばらばらでございますししますので、それをそういうふうにまできめこまかくやることによって生ずる経費というものは非常に莫大にかかってくるというようなことで、今さえ経費が少しかかり過ぎるのじゃないかというように世間からいろいろ御非難もあるものが、今お示しのようなことにいたしますと、その経費の負担等も、それこそ国家に御迷惑を及ぼすところが非常に多いというような点も生じてくるだろうと思います。で、想像できます点においてもいろいろございますが、もちろんその点についても十分われわれも勉強いたしますが、まあ私はその辺まで踏み切ってやってもどうだろうかという考えを持っておりますので、ただいまの御意見は御意見として十分勉強さしていただきます。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、最後の質問にいたします。ちょっと時間が、大臣最初のお話しが長過ぎて時間が詰まりましたから、二、三ひっくるめて申し上げますから、一つ簡単にお答え願います。  第一は、今年の四月の中央公論の河野さんの論文を私拝見しておるわけですが、この論文の最後のところに、きわめて明確に農林大臣はお書きになっているわけです。それによりますと、米作りが主生産でなくなる日本農業、こういうものを作るべきだと、非常にこう積極的な意欲を持ってお書きになっておる。これの是非を私申し上げるのではないのです。そういう結論を出されるについての筋道というものが書かれておるわけですから、それなりに私はやっぱり一つ考え方であろうと思います。ただ、そこで疑問の起きますことは、ともかく今までは食糧は多少の不足はあっても、大体需給のバランスをとる、そういう考え方で進んできておるわけですが、これを見ますると、もうそういう考えは一擲していいのだと、食糧が足らない場合にはどんどん輸入でまかなえばいいのだということを言わぬばかりの書き方になっているわけですね。そこの点の気持一つ基本的な問題としてお聞きしておきたい。  それからもう一つは、もし河野構想のように、やみ米を自由化していくとした場合、政府米と自由米の比率ですね、どの程度になるという見込みをつけておられますか。  それから、並びにその自由米の値段ですね、値段がどういうふうになるか。私がこういうことをお聞きしますのは、河野さんの四月論文では、自由米が非常にふえ、そうして政府米は現在の五、六割程度——二千万石台に落ちるだろう、こういうふうにきわめて大胆にお書きになっておるわけです。そういうふうな推算を現在でもやはりおやりになっておるのかどうか。そこら辺の、これは値段との当然関連もありますから、値段の推定と一緒にその点を一つ明かにしてほしい。  それから生産費・所得補償方式というものを生産者米価の計算の際にこれを堅持していくということを最近言われておるわけですが、最初河野構想の中には出ていなかった。まあ三回目にやっとはっきり最近になって食糧庁長官からそういう説明が出ておるわけなんです。だから、そこら辺の経過等から見て、やはりこの政府買い上げ米の値段を、まあ最初からそんな手荒いことやっちゃそれは反対されて大へんですからやらぬでしょうが、最初はそこそこのなにでやっても、少し時期がたちますと、結局はそれを押えていく、そういうことによって自由米をふやしていくのじゃないか。それとの関連を非常に心配しているわけなんです。そういう考えは絶対にないということが言明できるのかどうか。まあいろいろありますが、以上三つだけ一つ結論的に簡単にお答え願っておきたいと思います。
  17. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ただいま御引用になりました私の四月の中央公論に書きましたものは、その巻頭にも書いておきます通りに、私は米に関する世間の注意を喚起したい。もう少し食糧問題について大方の御議論を一つ願いたい。現状のままで、ただこの現状に堕して進んでいくということでは困るのじゃなかろうかという意味で私の考えをそこに述べておるということをお断わりしてあるわけであります。従って、私はその当時、農林大臣になって自分が直接この責任者になろうということは夢にも考えていなかったことであります。だから、あとから農林大臣におなりになる人はこういう点を十分お考えになったらどうだというようなつもりで書いたのでございます。ところが、そこに一貫して流れる思想は、皆さん承知通り農業基本法精神を私は書いておるのであります。もちろん農業基本法ができる前に私はそれを書いたのでございますけれども……。答えがいろいろ一緒になって恐縮でございますが、今回の私の構想を発表いたします際にも、今後の米価のあり方はどうあるべきかということについてもどういう表現をしたらよろしいかということをいろいろ考えました。私はなまいきなことを申し上げるようでございますけれども、生産者に対して低米価を要求するというような考えは持っておりません、どこまでも。表現の仕方はいろいろあるでございましょうけれども、農家がそれで農家経済を維持できるということが基本の原則だ。ところが皆さんも御承知通りに、食管法に用いてありまする米価決定の表現と農業基本法に言うところのものとは違いがあるわけでございます。そこで一番近く院の意思が発表せられた農業基本法に言われるところの農産物の価格、ことに米の価格は、将来こうあるべきだという表現を私はしたらいいか、それとも現行食管法にあるところの表現をした方がよろしいか、どっちがよかろうか。いずれにしても政治上のこれは定められたる表現であるというようなことも考えましたが、まあ現行食管法の表現をいたしておくことがよかろうというので、その表現を実は用いておるわけであります。しかし、いずれにしても、今申し上げまするように、その中に流れるところの思想として、将来は下げてそうしてどうするつもりじゃないか、こうするつもりじゃないかということを御疑念のようでございましたが、そういう思想は私の気持には全然ありませんということを申し上げて御了承を得たいのでございます。なぜか。たとえば今の一万一千五十二円五十銭という値段がきめられました際に、わが国のある農政学者もしくはそういったような評論家の諸君等は、こういう高い値段をきめたならば農業基本法精神がくずれるじゃないか、他の方面に米作農家諸君が変われと言ったって変われないじゃないかというような議論もだいぶ強かったのであります。これは皆さん承知通り。しかし、私はそういうことはとらないのであります。この米価が将来の農家経営を再生産を維持していく上において高い値段じゃない。必要最小限度の値段である。従って、この米価をさらに上回って所得の増大するような新しい農業経営をここにわれわれが造成するようにすることが農業基本法精神なんであって、この米価農業基本法精神を踏みにじるとか、この実行に支障を与えるというような考え方は私はとらないということを申しておるのでございます。考えておるのでございます。そういう意味で御了承いただきたいと思うのでございます。  それからやみ値云々ということになりますが、やみ値は、これは御承知通り、最近は政府の扱います値段と、今ここに統計をちょっと持っておりませんが、非常にくっついてきております、だんだんに。これは生産米価を上げたからやみ値がついてきたのじゃないと私は思います。米の需給が順調になって参ってきておるということが、こういう状態になってきたと思うのでございまして、しいて申せばやみ取り締まりが非常に緩慢になってやみの米の流れが、非常に流通がよくなってきたので、そこで米質その他について、米屋さん、やみ屋さん等の努力もありましょうけれども、だんだんくっついてきておる。これが自由になったならば、今のやみ値の傾向をさらに円滑にいたしまして、そうして政府の扱う米価との間に離れるということはないだろう。離れていく傾向をとるべきものとは私は考えられませんと申し上げたのでございます。でございますから、特別の酒米が今よりも高く酒屋さんに買われるとか、すし屋さんが特別の米を集めて買ってくるとかいうような、一部の業種によってそういう特殊のものはあるかもしれませんが、一般の大量のやみ米の価格は、そういう傾向はとらないだろう。特に一部で議論されているように、自由米が非常に上がるだろう、そのときはどうするかというような御意見もございますが、私はやみ時代価格を参考にして勉強してみましても、そういうことはあり得ない。しいて申し上げれば、私は現在の日本の全体の消費者諸君の生活構造の中に、米価に対する、米に対するウエートはどういうことになっておるか。それが生活費の中に響く程度の人はあくまでもこの配給米に依存されるだろう。従って、配給米に依存される人がどのくらい数があるだろうということが配給米の必要度を決定するものであって、それを今でも、現に全国平均して三割ぐらいの配給辞退があります。この配給辞退をされておられる三割ぐらいの人は、配給米ということを頭の中にそんなに考えていない。生活費の中に米の占める大きさがそう大して大きく考えていらっしゃらない人じゃなかろうか。それによって私は違ってくるのじゃなかろうかという実は見方をしておるのでございます。だから自由米の価格が高ければ高いほどそういう人が減ってくる。減ってくれば自由米の価格は上に上がっていかれない。これはやみ米の当時とちっとも違ってないのであって、そんなに暴騰しないだろう、またそんなに下がるということもありません。  次に数量はどのくらい考えておるか。私はおおむね八千万石、今多うございますけれども、平均して八千万石とれるといたした場合に、四割が自家消費じゃなかろうか。これは過去の経緯等から大体専門家の意見を聞きましてもそういう数字がおぼろげながら出てくるわけであります。そこで三千万石ないし三千二百万石ぐらいのものが自家消費されているのじゃなかろうか。残る四千八百万石ないし五千万石ぐらいのものが農家の手を離れて、それが消費者の方向に流れていっておる米じゃなかろうかという、おぼろげながら私は計算をしております。その中で政府が扱っておりますものが半分の四千万石、そこでやみ米が一千万石前後のものという計算が出てくるのでございます。ところがこれが今言う通りに、私の考えておりますようなことにした場合にどうなるか。私の見当といたしましては、農家の手を離れたお米の中で、三分の二ぐらいが政府の扱う米になり、三分の一ぐらいが自由米となって流れるのじゃなかろうか。つまり四千万石の中で現に配給辞退をしていらっしゃる人たちは自由米の方にいくのではなかろうか、こういう気持がするのでございます。それこれいろいろ勘案いたしてみまして、まず三千万石から三千五百万石の間、こういう数字——三千五百万石を上回るかもしれない数字政府の管理する米になる、これはやる時期にもよりますけれども、おくれて通常国会でこの法案が通ることになれば、そういうことは完全絶無ということになるでございましょう。こういう考え方で実行した初年度において出てくるところの数字が私が今申し上げたように現にやみ米として流通をいたしております一千万石に加わるものが三百万石から五百万石加わる。そうして一千五百万石くらいが自由米として取引されるだろう。政府の扱うものが三千万石ないしはその前後だろう、こういう見当をつけておるわけでございます。それが実際の動きとして一般消費者諸君の中にも消費者価格を上げちゃいかぬ、ぜひ自分は配給に依存していきたいという意欲の国民諸君が、私は政府の三千万石くらいのものを対象にしておる者がいらっしゃるのではなかろうか。これらの人は、今私が申し上げますように自由米——やみ米を自由に切りかえたところで、やっぱりそれらの諸君政府の配給米によられる人である。従って配給米の価格の据え置き、配給米の数量はその程度にあるべきものだとこう考えて、同時にそれを強く依存しない諸君のものまで政府が扱う必要はないんじゃないか。それは非常に強い強権をもって自由な状態を取り締まっていくということは考えておらぬ。あまり長くなりますから……。  食料の需給につきましては、私は最初に申し上げましたように、現状の八千万石前後のものが国内生産され、そこに麦の二百万トン、千二百万石米に換算したものが輸入され、それに外米がごく一部輸入されることによって現在の状態が維持されております。これを意欲的に積極的に変えていくということは、これはだれがやったところで生産者方面から変え得べきものでもなければ消費者ばかりでいけるものでもない。おのずからそこに食生活改善の問題が御承知通りあるわけであります。また景気不景気によっても変わります。ことに私が考えますことは、戦前の食糧政策と違いまして、米というものは食糧の大本でない、そこには申し上げますように外麦の千二、三百万石というものが入っておるわけであります。これが相当に大きなウエートを占めております。つまり、くどくなりますが、政府が管理いたしております四千万石、一方において、もちろんこれは政府がやっておりますけれども、配給と別に麦で置きかえまして、外麦だけで千二百万石、内麦も入りますが、政府が管理いたしておる内麦を入れれば、おそらく一千五百万石ばかり食糧として自由に流れております。それに現にやみ米という一千万石というものが自由に流れておるということになりますと、現に今でも二千何百万石というものが自由ないしはやみの格好で食糧の大きな要因を占めておるということでございますから、簡単に米の消費がどう、米だけで需給換算をしてどうこうというわけにはいきにくい。とれらが麦が米になりかわることは——一ころは、どんどん麦がふえていってだんだん米の消費が減っていった。それが最近は今米の消費が幾らか持ち直してふえて参りました、そういうようなことでごさいますから——これもそう簡単に一つ計画だけでいくことは無理じゃないか。需要に合わすように国内で作っていくということは、これは必然的にやらなくちゃならぬことである。今御指摘になりましたように、中央公論にこう書いたじゃないか、そういう需要とは全然別個の観点から、その前にも書いてあります通りに、日本だけを考えてやるのでなしに、東南アジアくるめて経済上のアジア共栄圏というような——誤解があるといけませんから、戦争中の考えではございません——いわゆる欧州共同体というような意味においてアジア経済圏というようなものでも考える場合には、そういうような事態も考えなければならぬのじゃなかろうか、全然別の要因から一つの課題としてうたったのでございまして、今さしあたり現状の世界情勢におき、現状のわが国の政治情勢におきましては、これを今申し上げましたように需要供給関係、貿易の関係等を考えまして、国内で米の八千万石というものを基盤において考えなければならぬことは当然じゃないかと考えておるのであります。
  18. 清澤俊英

    清澤俊英君 大体理事会できめられた時間がありますから、余分な時間はとりませんが、河野さんにお伺いしておきたいことは、大体あなたの構想は食糧庁長官がよく受け継いでいると思いますので、ごくこまかいことは食糧庁長官に聞いて、その答弁はすべて河野さんの考え方であると解釈してよろしいですか、その点を明らかにしておきたい。それでなければなかなかお忙しい中で……。
  19. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) もちろん食糧庁長官の答弁だけでなく、私の監督しております農林省の役人の答弁いたしましたこと全部、私、責任を負います。
  20. 清澤俊英

    清澤俊英君 それではこまかいいろいろなことはそちらにお伺いします。  その第一次構想の中に「食糧管理特別会計の実態にかんがみ、この際新たに適切と認められ、かつ実際に即して必要な弾力的措置を加える。」といって、その構想は約十一項目ばかり出ておりますが、この食糧管理特別会計の実態にかんがみということは、私の解釈では赤字を指していると思う。いろいろの意味、構想は、赤字をどうするということは構想の中には出ておりませんが、ここに非常に含んだものをあとに残されておる、こう考えておる。これが第一。  それから第二にちょっとお伺いしておきたいのは、「農業政策の動向に照らして必要な施策は具体的に必要に合わして強力に実施するものとする。」これはこの構想とは別だと思います。別になっていると思います。そこで、農業政策の動向は、基本法に示された生産のところにある拡大選択の方向に見られるから、そうすると大体米穀生産はこれから縮小生産だ、こういう形になるのでありますが、これらはこの構想に出ておりません。当然出ておりません。こういう点に対して河野さんの意見——意見というではない、この文字に対してどう基本的にお考えになっているのか、ちょっとこの点は亀田君の質問と触れるところもございますが……。
  21. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。  亀田さんの御質問にもお答えいたしたのでございますが、この食管会計の現状にかんがみといたしておりますものは、国民諸君の中で、七百億からの赤字が出ておる、それを一般の租税負担からされることは困るという非難がだいぶ強いのでございます。私は先ほど申し上げましたように、必然的に出てくるもの、合理的に出てくるものなら仕方がない。それをあえて私はこの必要な生産者の再生産の維持、消費者価格必要性ということから出てくるものはよろしゅうございますけれども、今申し上げますように、配給辞退をなさる国民諸君がおられる、つまり必要の最小限度の配給、買い上げの責任を持てばそれで足りるじゃないか、そういうことによって今も数字をお示しいたしましたが、たとえば現に四千万石政府は買い上げております。それがこういうことにいたしますると、それがこの程度に数字が減るのじゃなかろうかと私は申し上げました。減らないかもしれません。しかし、たぶん減るだろうと私は想像しております。その扱い数量が減ることによって赤字の量も減って参るということでございまして、決して赤字を減そうということが実行の動機でないということについては、一つ御了承いただきたいと、こう思うのでございます。  第二に、米の生産農業基本法を推進することによって減っていいのかというお尋ねと思います。よろしゅうございますか……。ところが私は、農業経営を合理化して参り、農家所得を増大して参るということが主眼でございまして、米の生産地、たとえば新潟方面の米の生産地、米を作ることが一番よろしいという所を減すというような、減さなければならぬというようなことは、農業基本法精神ではないと考えます。これまでのように、食糧が国際的、世界的に不足であった、何としても国内で無理してでも米でも麦でも食糧を作らなければいかぬというようなそのときの精神とは別に、農家経済をどうすれば一番いいかということを主眼に置いてやっていくということが主でございます。しかもとれるところではもっと稲作の改良、現にこれまで増産が御努力によってできておるわけでございますから、さらにこの増産の傾向は続くだろう、もっと進歩するだろう、その進歩に期待いたしますことによって、国内でとれる量は、量が減るとは私は考えません。減していかなければならないと考えておりません。おりませんが、それを無理して作っておる、無理してやっておるところのものを、非常に生産費が高くついておるところのものも、これを維持しなければならぬということも考えものじゃなかろうかという考えでございまして、先ほどお答えいたしたように、無理をして維持しなければならぬというような考えはございませんが、さればといって、無理してこれを減していくという考えはない。需要供給関係も考慮しつつ、国際情勢も考慮しつつやっていくつもりであるということに御了承いただきたいと思います。
  22. 清澤俊英

    清澤俊英君 もう一つ、大体承っておきます。いろいろ議論はありますけれども、あとで機会を得て、一つ意見をなおお伺いしたいと思います。  次の問題ですが、亀田君の答弁で、いろいろ数量についてお話しがありましたが、自由米が出るとしますと、相当私は良質米の買いだめということが行なわれるのじゃないか。これは一人の買いだめは非常に数は少なくありますが、これだけの日本人全体の中で、買いだめをかりに一石ずつ一軒の家でやったとする、そんな数量になるかならないか別としまして、相当量の良質米が買いだめせられる、こういうものが出て参りましたならば、当然それを集めますには少しくらい高いものでも買うだろうと思う、必ず買うと思います。そうなりますと、先ほど亀田君が指摘したように、そこに販売業者の操作が、当然配給米の中からの良質米をその方へ回していくのだ、従いまして、配給米はどうもまずいのだという、現在でもそういう傾向があるのでありまして、こういう点に対して、絶対そういうことはないと大臣は言い切れるのか、そういう点にどれくらいまでの御考慮を払っておられるのか。いろいろ構想の中でお伺いしますと、それらのことも考えていろいろ処置をとる、こう言われますが、なかなかこれはとれるものじゃありませんと思うのです。ちょうどこれは一つの例でありますが、最近私は新聞を見ておりますと、養蚕の問題です。群馬の前橋の乾繭は、何か投機的に急に上がっている、同日の新聞で、大阪の北浜の生糸相場は下がっている、これがいわゆる自由価格の中におきますところの一つの商品の動きです。こういうものがどうして押えられるのか、私はそういう点に対しては、一番危険性を感ずると同時に、河野構想を聞いて双手をあげてわが時期来たれり、こう言って一番喜んでおりまするのは、米穀商連合会、糧連です。この二つのものが喜んでおる。何かかれらが含むところがなければ、喜ばぬと思うのです。何か同じことならしちめんどうのことはやめてくれと言うに違いないけれども、非常に喜んでおる。ここに私はわれわれがうかがい知ることのできない何らか大きなものが伏在する、こう考えておる。それが私は非常に心配になる。こういう議論は想定ですから、あまり深くは私は議論したくないですけど、そういうものに対して大臣はどう考えておられるか。
  23. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。先ほど来申し上げました通りに、そういう疑問があって買だめをする人がある、疑いがある、心配のあるうちは変えてはいけませんと、私は考えております。そういう疑いが全然ないということにならなければ、やっちゃいかぬ、こう考えておりますと私は申し上げておるのでございます。今お話しでございますが、ただ、御承知通り、米は持っておれば質が悪くなりまして、だんだん値段が下がります。これで勝負をしなくても、思惑もしくは投資をしよう、投機をしようというなら、もっとほかに投機の対象になるものはたくさんあるのであって、米のようにやっかいのもので、量があって、しかもそれを持っておれば、月にとは申しませんが、だんだん古くなって新しいものが出てくれば、一ぺんに下がることは御承知通りであります。古くなって値がよくなれば、買ってしまっておくということがありますけど、持っておれば、金利、倉敷がかかり、質が下がるというものでございますから、これは投機の対象にはなりにくい、こう実は思うのでございます。しかし、そういう疑いがあって、そこで一般の御家庭がそういうことがあって、なくなったら困るといって買いだめするというようなことでありますれば、これはやっちゃいかぬ。買いだめをされたら、どう政府が幾らやったってやれるものじゃございませんから、そこでそういう買いだめをしなければいかぬ、心配だという不安感が消費大衆の中にあるうちは、絶対にやれるわけではございませんと申し上げておるのでございまして……。ただし、そういう心配はない、皆さんの御努力を願うということで御了解願いたい。
  24. 清澤俊英

    清澤俊英君 これでやめます。米は投機がないと言われますけど、河野さん一番よく御存じだと思うのです。大阪でアズキの問題が起きたでしょう、非常に御苦心なさった。その翌年は東京の市場にアズキ問題が起こって、ストック割れで騒ぎが起きて、暴力団までしまいに出た。あのときの山種証券社長の考え方としましては、いずれ米も統制が撤廃になりますから、今穀物で許されている生産市場はアズキや豆だけなんだ。従いまして米がなった場合に、ここで地歩を定めるのが今の目的だ、こういうことを当時われわれは聞いております。そういうことを聞きますと、自由米がそこに出てきて、投機が全然ないということは考えることがおかしいと思うのです。必ず投機はそれにつきものだと思います。今の乾繭の話しですが、これはやはり全部場違いがやっています。場違いだと思うのです。場違いは何ものか知りませんが、正当の利用者でなく、投機だけをねらったものをおそらく場違いというのじゃないかと、私は解釈しております。そういうものが出ないと河野さんは保証できるのですか。
  25. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 今いろいろの例を示してお話しでございますが、私は米は違うと思うのであります。なぜ違うかと申しますと、先ほど来申し上げました通りに、流通いたしまする米の中で、少なくとも三分の二に該当するものは、政府がこれを一定の示した値段で買い上げる、またそれ以上政府に売るという人があれば幾らでも買う、全量でも買うという品物でございます。しかも消費の面におきましても、御要望があれば、御要望があれば幾らでも売ります。その値段が、これだけ大きなかんぬきが入っているわけであります。これだけ大きなかんぬきの入っているものに、今お話しの通りアズキの例をお出しになってお考えになることは少し違うのじゃないか。アズキのように、だれも下値が幾ら、上値が幾らでこれだけあったら売るぞ、たたくぞというものではありません。そういうものと違うんじゃなかろうか。これも御存じと思いますが、たとえば最近は需要供給関係で、生糸もだいぶ上向いて参りました。私はけっこうだと思っております。しかし、あの生糸が十八万円という政府が底値を入れている。しかも力のある米の場合とは違いまして、無制限に買うといっても、力が、予算の面からいってもありません。それでも十八万円という政府が支えをしているために、生糸の相場が大してもうからぬで、そうして生糸の取引所でも、神戸でも、横浜でも非常にふるわなかったというとともあるわけでございまして、政府が絶対に無制限に買い上げ、無制限に売り渡すということをお約束申し上げ、しかもそういう大きな体制が今日までできておりますというものにつきましては、この支えを破って、それが投機の対象になるというようなことは、これは私はないんじゃないかという考えで申し上げたのでございます。
  26. 清澤俊英

    清澤俊英君 私は意見はあとで……。
  27. 東隆

    ○東隆君 私は予約制度は非常に善政であったと思います。これからも続けていただきたいと思うんですが、これはどういうふうにお考えになりますか。
  28. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ある会合で、昔のように青田取引というようなものが心配されぬかという御意見もございました。私は予約制度はもちろんのこと、現に食管において操作いたしておりまするものは、ぜひこれは変えた方がよろしいというものは別でございますが、現行の制度はそのまま継続する、特別に配給の上において登録制をこの程度緩和したらどうだろうかというようなことでもって、先ほどお示しになりましたように、もうちょっとこういうふうに配給量に良質米を売ってみたらどうだろうか、買い上げの場合にこういうふうにしてみたらどうだろうかというようなことを研究いたしまして、どなたがお考えになっても改善だというようなことについては、変える用意はむろん考えておりますけれども、今のように、予約制度を続けて参る、予約いたしたものを政府が買うというような現行の制度は、変えようとは考えておりません。
  29. 東隆

    ○東隆君 それで私は安心をしているんでありますが、ぜひこれは変えないでいただきたいと思うんです。それから私は、さきに農林大臣に御就任のときに、実はやみ米は高い方がいいのか、安いのがいいのか、こういう質問を大蔵大臣農林大臣、お二人にいたしましたところが、生活安定のためにやみ米は安い方がよろしいのだ、こういうお答えでありました。これは今どういうふうにお考えですか。
  30. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) これはやみ米でございますから、別にこちらの方が希望としては、今現に食糧の足りなかった当時に高かったやみ米が今日安定いたして参りましたにつれて、だんだん下がっております。下がって、現に、先ほど来、亀田さんのお話しがありましたが、いろいろな要因でやみ米というものは出ておりますから、それが安いとか高いということでなく出て参っておりますから、これについては、こちらが今現に操作することはできぬ。しかし、現在の状態では、だんだん下がって好ましいことだとは考えております。
  31. 東隆

    ○東隆君 これは実は統制が強化されればされるほど、実はやみ米の値段というものは高くなる。それで、その当時統制を強化をしないという考え方でなければやみ米は安くするわけにいかなかったわけです。そこで、私は依然この問題はからんでくる。それでお伺いをしたいおけでありますが、この問題は統制の強化その他に関連する問題ですから、またあとでお伺いをいたします。  そこで、もう一つ問題になるのは、農家はまずい米を売って、そうしておいしい米を自分の家に置いておる、こういうことをよく言うのであります。それから大ていの人もそんなものだろうと、こういうふうに考えておりますが、私はこれは間違いだろうと思うのですが、農林大臣どういうふうにお考えですか。
  32. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 検査の十分徹底いたさなかった時代においてはそういう傾向もあったかもしれないと思います。しかし、今日では、多少買います場合にも検査をしております。十分な検査じゃございませんが、とにかく差をつけて買っております。従って、何も無理にまずい米を売った方が得なわけじゃないのでございますから、決してまずい米だけ売って上等のものは自分が食べているというようなことがあるとは私も考えません。
  33. 東隆

    ○東隆君 実は私は農家は決してまずい米を売っておるのじゃない。農家が手持ちをしておるものは、これは実のところをいうと保管もよろしいし、それから出すときには今ずり米でもって出してそれをすぐ白米にするのですからおいしいのはあたりまえです。古米と新米とできたときに比べて食べてみれば新米がどれだけおいしいかということがわかる。それから硬質米と軟質米を比べますと、軟質米の方がおいしい。そういうことを考えてくると、農家は決してまずい米を売っておると考えないのです。そこで問題になるのは、私は農家が手持ちをしておる米は非常においしい米を手持ちにしておるという事実ですね、これを考えなければならぬ。この農家が手持ちをしておる米が非常においしい米なんです。だからそいつに対しては標準価格よりも先ほど計われたようにプラス・アルファをつけた価格でもって政府が買い上げるという措置を講ずることがこれが正しいやり方じゃないかと、こういう考え方を持つのですが、これはどういうふうにお考えですか。
  34. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) そういう点もあるかもしれませんが、先ほど亀田さんにお答えいたしましたように、そういうふうにして高くうまい米を買ってくる、買って参った米が配給の場合にとういうふうにそれがなっていくかという終わりまで徹底しなければなりません。せっかく上等のものを買ってきて今の配給のように出しておりましたのでは、なかなか目的は達せられませんことになりますので、全体の集荷、配給を通じて考えなければならぬことでございますから、先ほどお答えしたように検討はいたしておりますが、そういうことにおいて非常に経費もかさむだろう。一体そういうことが、これ以上経費がかさむことによって、一体国民諸君はその利害についてどういう御判断があるかということも考えなければならぬと思いますから、一つよく研究はいたします。
  35. 東隆

    ○東隆君 やみ米を自由化することによって農家が罪の意識を感じないようにするのだと、そういう考え方のようでございますが、私はそれよりも、それだけお考えならば、もう当然農家やみに今流れておる米はこれは当然農家は保有しなければならぬものでないかと思うのです。政府予約米の場合にお考えになっておる以外のこれはどうしても農家が持っておらなければならぬ米じゃないか。たとえば篤農家であればあるほどその年の翌年の種だけでなくて、その次の年の種くらいは保有をする農家があるわけです。それから自分のうちのいろいろな事情でもってやはり一年間食糧以外に米を四俵や五俵くらいは必ずこれは農家なら持つでしょう。それから子供が都会に出ておったら、そこに送る米くらいのものは持つのであります。そういうようなものは、これは農家が当然保有をしておるのでありまして、それをある一定の期間を切ってそして出すというようなことになりますると、それは当然出ないのでありますから、その米を時期がきてそうしてもう必要がなくなったから出すのだとこういうふうに考えたときにそれを自由化するという形じゃなくて、その米は金利、倉敷をかけておらない米なのだから、政府は当然金利、倉敷分をそいつに加えた金でもって買い上げる、そうしてこれを配給する、そして今おそらく米屋さんでもってやみ米を扱わない米屋さんはほとんどなくなっているのじゃないですか。町でほんとうに正当のルートでもってやっておる米屋さんが、やみ米をやはり持って、そうしてお扱いになっておるんですから、そういうふうに考えてきたときに、その線にそれを乗せるようにすれば、私はあまりむずかしい操作をされなくてもこれはできるのじゃないか。まあこういうようなことを考えますが、この点ですね、私は農家やみにどうしても流さなければならぬところのものを、保有米として残しておるんですから、この事実は見ようによっては醇風美俗なんですよ農家の。(笑声)いやほんとうなんだ。だからこいつを単に自由化するというようなことでもってやるよりも——かえって農林省でもって農業倉庫の中に保管をしておる間に品物が悪くなって、そうしてまずい米を配給しておるのだ。ところが農家はそれを自分のところに保有をしておるから、従ってりっぱな管理をして、そうしてやっておるんだ。しかも金利をもらえるものを金利をもらわないで保管をしておるんだから、その分は一つプラス・アルファの形でもって加えて、そうしてそれを正当のルートに乗せて配給をするのだ。しかしその場合にはこれは米屋さんの方で、これは農家から出てきた米でそうして今ずりの米なんだからおいしい米なんだからといって、そう言って正当な値段をつけてお売りになったらいい。私はそういうような体制を確立するのがほんとうの善政だと考えますが、この点はどういうように考えますか。
  36. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) いろいろ御意見がございましたが、実は金利、倉敷をかけてということですが、一方においては早場米奨励金が出ております。農家の方からいたしますれば、早く売った方が奨励されるのか、おそく売る方を奨励するのか、行政指導といたしましてもそこになかなかめんどうな問題が出てくるだろう。確かにお話しの通り自身考えとしては、早場米奨励というものは一体どの程度のものでいいのか。さらにまた実際言えば、政府は早く買って金利、倉敷をかけて、政府が保管するよりも、あとからおそく買うものに対して金利、倉敷をかけてその保管を十分にしてもらった方がいいんじゃないかということは、確かにそういうふうに思います。しかし、これは過去の経緯から考えましても、現在の実情から考えましても、急にそういうふうに変えるのはなかなか困難があると思われます。しかし、よく勉強はしておきます。何分にもお話しの点でございますが、全国農村事情農家事情によって、今、東さんのお話しのようなのは比較的精農家、篤農家もしくは米作りの本場のいわゆる大農と言っていいか悪いか知りませんが、大きな百姓をしておられる人にそういう例はあり得ることと思います。しかし、いつも御指摘になりますように、大農を守るよりもそうでない、もっと、まあたとえば今の集荷したものに対して税金を考えるよりも、米価そのものに加えるべきじゃないかという議論がありますように、いろいろな今までやってきました経緯から考えて、こちらをこうするとあちらに響く。あちらをこうするとこちらに響くというようなことがありまして、だんだん時世が変って参りますので、それらを公正に改善して参らなければならない点はあると思います。しかし、何と申しましてもなかなかやってきました経緯等にかんがみまして、急に改良はなかなかむずかしいという事情も御了承賜わりまして、もちろん勉強はしてみるつもりでございますから、御了承いただきたいと思います。
  37. 東隆

    ○東隆君 もう一つ。私は時間がありませんから、なんですが、私は、農林省の今の倉庫の保管その他を、やはりこれは米は生き物ですから、それをもみがらをはいで、そうして半殺しにして、そうして土用を越させる。越させたらこれはもううまくなくなるのがあたりまえの話しです。だから、そういうことを考えて、そうしてもう少し貯蔵倉庫だの低温倉庫だの何だの、そういうようなものを作って、そうしてうまい米を国が配給するのだ、こういう態勢を作ることが私は大切だとこういうように考えますが、そういうような点も一つ考え合わせて、そうして、私は、賛成する点は賛成をしますけれども、反対をしなければならぬ点はたくさんありますから、まあいろいろ今後の問題として残しておきます。
  38. 森八三一

    ○森八三一君 時間がありませんから簡単にお伺いしますが、先刻来のお話しを聞いておりまするというと、今度の考えは、食管会計の赤字が云々ではなくて、法治国としてやみ米が存在しておるのは適当でないから、そのやみ米を解消するということが大体お考えの骨子になっておると思うのです。そういたしますれば、亀田委員からも指摘されましたけれども、一体、大臣は、なぜやみ米が存在しておるかという根源を明らかになさらなければいかぬと思うのです。その根源をきわめずして、それに対する対案というものは出てこないと思うのです。どう一体お考えになっておるのか。やみ米というものはなぜ存在しておるかということをきわめなければ、それを解消する対案は出てこないと思うのです。どう考えておりますか。
  39. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 先ほど亀田さんのお話しにもありました通り、現に流れておりますやみ米にはいろいろな理由がございましょう。ただ簡単にこれだあれだと言うわけにはいかぬと思います。しかし、私が申し上げますのは、やみ米が出るという、そのやみ米というものを作っておる法律というものが、一体必要なのかどうか。たとえば、政府に売らなければならない、売らない者は罰するぞというそういう制度が今日必要な時世であるかどうかという点を私は考えたいのであります。また、政府以外から買っちゃいけないという、そういうふうにして、処罰するぞという、そういう権利義務の関係を温存しておかなければならないそのものが、一体必要な時世であろうかどうだろうかというところに、私は疑問を持つのです。農民が作ったものを政府に売らなければならぬ。売らなければ罰するぞという戦時立法、非常時立法が、そのまま今日生きていなければならぬ事情が一体どこにあるのだ、そうせぬでもいいじゃないか。政府の方がむしろ買わなければならないという、政府が義務者に立つべきであって、生産農民政府をして買わしめる権利があるという、権利義務の主体を変えたい。そうして農民諸君生産されたものを、なるべく有利に売る道務があるならば売ってもけっこうじゃないか。しかし最低の線は政府は保障いたしますという考えでいいじゃないか。これを基盤にして農業政策はいけるじゃないかという私は気持なんでございます。また消費者諸君に対しても、どうしても政府で配給する価格、その価格が絶対今日の生活の安定に必要だという諸君に対しては、あくまでもわれわれはその義務を負うべきだ。ところが、そうでなしに、お米屋さんお米届けてちょうだいといって電話一本でやっていらっしゃるような御家庭に対してまでわれわれは責任を持つ必要がないではないか。また、そういう諸君は、買わなければならない、買わなければ罰するぞという義務を負っておる姿は、今日の社会情勢と違うじゃないか。こういうことにそもそもの議論が私は出発しておるのであります。そこに、私は、そういう拘束がやみというものを生んでおるという気持がいたすのでございます。従って、そういう拘束をしていなければならぬのじゃなかろう。目的は、生産農民に対しては、政府はこの値で幾らでも買いますということを申し上げて、しかもどんどん買い上げるといって政府は買う、買う分だけは。また一方において、必要な消費大衆に対して、責任を持って配給するということになるべきである。これを私は貫くということで、農家経済の安定の要因もできれば、消費大衆の生活の安定の要因もできる、その線でいいのじゃないかということが私の根本の思想でございます。
  40. 森八三一

    ○森八三一君 それではお伺いいたしますが、先刻、政府は無制限に買う場合の生産者価格については、食糧管理法の規定をそのまま移しかえて表現をしておる、こう言明されました。それは、生産、需給その他の経済事情を参酌して、再生産確保を旨としてきめるという意味だと思うのです。しかし、そういう抽象的な文句から価格は出てきません。  そこで、この統制が行なわれた最初には、昭和九−十一年の自由取引時代の米の相場を基礎として、それに価格パリティという一つの算式を当てはめる。それがインフレの高進で適当ではないということになりまして、昭和二十七年産米をきめるときに、二十五、六年の政府買い入れ価格の平均をベースにして、このときに所得パリティ計算方式に変わったんです。それがずっと三十四年産米までその形式で来ましたが、その間に政府の御都合で二十五、六年の平均というものを、三十、三十一、三十二年の平均に置きかえてみたり、いろいろな操作がそこで行なわれております。その後、米審等その他の要請がありまして、三十五年産米から、いわゆる生産費所得補償方式に移り変わってきておる。そこで、今後もこの生産費及び所得補償方式を堅持するということを確約が持てますか。抽象的な文句では、これは変わってくる。過去の経過を見てもそういうことです。今の時点に立って、計算方式は現行の所得補償方式を採用する、こういうことを確約いただけますか。
  41. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) それは私は当然そうだと考えております。
  42. 森八三一

    ○森八三一君 そういたしますると、生産費所得補償方式のやり方についてはいろいろ意見があります。これは八〇%所得補償方式をとるか、あるいは標準計算方式をとるかというやり方にはいろいろ問題がございまするが、私は、生産費所程補償方式の理念そのものは、生産費を完全に補償し、農家の自家労働賃金を都市均衡労賃で評価がえをするということがその根幹、骨子であると思う。といたしますると、そういう方式で政府が最低価格を保障しておいて、その上に高く売れる場合には自由であるということを法律上認めるということは、経済政策としてはいかがなものであるか。完全に所得が補償せられ、生産費が補償せられて、それ以上高く売る場合に、お前たち自由だ、こういう表現というものは、私は国の行なう価格政策としてはいかがかと思いますが、大臣どう思いますか。
  43. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ただいま御指摘の、生産費の補償方式は、確かに八〇%とるか、全部とるかということは議論があります。私は現に戦時中からとられて参りました、先ほど申しました通りに、どういう条件の不利なところにも米作を実行すべきだ、食糧生産を増産していくべきだという政策が、今日このような、生産費をある地方においては非常に高くしておる。そこで、私農林大臣の当時には八〇%というものをやった経験がございます。ございますが、これらは、先ほど来申し上げます通りに、農業基本法精神にのっとって、なるべく米の異常な生産費の高いところのものは他の方面生産の切りかえをしていただく必要があるだろう。なるべくそういう方法をとってもらうことが適当であろうという農業基本法の線等々も考えまして、いつまでも全部の、一番生産条件の悪いところのものも補償しなければならぬというような議論は、これはちょっと世間が受け取りにくいのじゃなかろうか。おのずから生産費所得補償方式と申しましても、おおよそ一般の、失礼な申し分ですが、経験者、学者、その他世論の決定の線に従っていくべきものであって、全部のものを全部補償しなければならぬということには、おそらく結論は達しなかろうと私は思います。そういうことから考えますと、今のことでいいのじゃなかろうかと私は思うのであります。で、ほかの業界、何の業界を見ましても、生産費を補償されておればそれでいいじゃないか。再生産が補償されておればいいじゃないかというような、今日産業界は私はどうかという気がいたしますので、われわれは所得倍増を念願いたしておりまする関係からいたしまして、当然農村におきましても、今申し上げますように、生産者の補償方式の程度をさらに上昇していく線をわれわれが期待いたしますることは当然じゃなかろうか、こう思って、そういう意欲のもとに行政を進めて参りたい、こう考えております。
  44. 森八三一

    ○森八三一君 私の申し上げておることを十分御理解にならなかったのではないかと思うのです。私は限界生産費補償方式をとれということを主張しておるのではございません。現在のやり方といろものを大臣は踏襲すると、こうおっしゃっておる。そのことは理念として、私は生産費が完全に償うまで自家労働賃金が都市均衡労賃で評価がえされておる、こう私は理解しておる。そのやり方の内容にいろいろ議論がありますことは、これはあります。理念として、私は生産費と所得が完全に補償されておるという姿のものであろうと思います。そういうような姿の上に、さらにそれ以上のものの取引が自由に行なわれるという、そういうことを法定することが経済政策としてほんとうに正しい行き方であるかどうか。
  45. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知通り米価と申しましても、今の限界生産費という議論もありますし、また米にいろいろ格づけ、格差がございます。自由販売ということになりますれば、そこで需要者の要求によってそこに自由になった米については新しいものが出てくるということ、当然新しい米価が生まれてくるということは、それが需要者の意欲によって、たとえば先ほど申し上げましたように、酒米幾ら、今の決定がいいか悪いか、さらにまた特殊の業界については、今の値段よりももっと高く買ってもいいんじゃないかというものも出てくるでありましょう。決して私はあえて特殊なものだけ申し上げるのではないのでございまして、今日政府が配給いたしておりまする配給を絶対に必要とされまする、現状維持を絶対に必要とされまする諸君に対しては、絶対配給を維持してこの価格でいくべきである。しかし、それ以上の価格でも自分の必要とする米が得られるならばそれを買おうという意欲のある人に、それを農民の方が売るということも差しつかえないじゃないかという気が私はいたすのでございます。でございますから、これを詰めて一つの型に入れてこれでいいかということになりますと、そこにはいろいろ議論もございましょうが、むろん五千万石からの米の中でございますから、その中には例外のものもあります。たとえて申し上げますれば、くだけ米等も市場に私は出てくるだろうと思います。これらはむしろ自由米として配給価格よりもときに安い工業用米であるとか、もしくは特殊のものができる場合もあると思います。いろいろでございます。しかし中には良質米、そういう上値のものも出てくると思います。しかし、その上値も一方の需要者によって供給する価格が生まれてくるということじゃなかろうかと思います。しかし、大半は今申し上げますように、根本は政府はその方式で、あるべき米価の姿はこうでございますということを政府行政としてはやるということでいいのじゃないかと思います。
  46. 森八三一

    ○森八三一君 まあこのことは私非常に不満を持っております。一つの国の政策、経済政策としてそういうことが農民に利益だとか不利益だとか、そういう問題を考えて、政策としてそういう言葉は通用する考え方であるかどうかという点については疑問を持っておりますが、このことは他日に譲りまして、そこでそういうような建前のもとに自由米というものが自由に取引してよろしいということになりますことは、私は経済的な感覚から申しますれば、政府のてこ入れ価格以上に売り得る場合にのみ自由米というものは取引される。実態はそうでない場合もありましょうけれども、議論として私はそうなると思う。その場合には、結論として良質米だけがそっちの方へ流れていくという傾向を持つと思うのです。現在やみですから、ごく少量なものが処分されておるという姿ですが、今後は自由に取引をしてよろしいということになりますれば、良質米のものは政府の基準価格よりも上を求めつつそっちの方へ流れていく、それは当然経済上、そういううまいものを食いたい人は食ったらいいじゃないかということは、これは自由経済の思想に通ずるわけでありますが、私は少なくとも主食、米に関する限りは、乏しいということを憂えるよりも等しくないということを憂える方が、国の政策としては基点にならなきゃならぬと思う。もし、そういう構想で進んでいくといたしますれば、経済的に優位な者はうまいものを食う、そうでない者は自然政府に頼って、政府の手に集まってくる下級米を食わされるという結果に私はなるのじゃないか、これは理屈かもしれませんが、私は経済的な通念から考えていけば当然そうなると思う。そういうことでよろしいのかどうか。現在は五千万石のうち四千万石はとにかく政府に集まるのですから、そういう不公平というものは非常に矯正されておる。これが自由になれば、その速度というものはぐっと高まってくる、それが正しい姿かどうかということについて大臣はどうお考えになりますか。
  47. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 今の御指摘の点でございますが、私は十分配意しなければならぬということは深く考えております。ところが、数字について考えてみますると、現にやみ取引として流れておるものは、先ほど来申し上げます通りに、大体常識として一千万石程度のものが想定されております。一千万石。それが自由に取引してといってみましたところが、どのくらいふえるかというと、大体今はあまり取り締まりはしていないのでございますから、ある程度の限界に近いところまでいっておるのじゃないか、そこでまた一方において配給の価格でぜひ米を入手したいと考えておられる消費者層が、大体私は三分の一程度のものがあるのじゃないか、これらの諸君は、今お話しの通り高いものを欲しないで、今の政府の配給米に依存されるという方になるわけでございます。その数字を詰めて参りますると、こういうふうに政策をかえましたところが、その差額というものは、私はおおむね五百万石をこえないだろう、それ以上の数字にはならぬだろうということがおぼろげながら出るような気持がするのでございます。もう一ぺん申し上げます。現に配給辞退というようなケースにあるものは三分の一あるわけであります。こういうもの等々も勘案いたしますると、どうしても政府の配給によっていかれる、ぜひそれを要求される人が三分の二程度あるということになりますと、今の四千万石に対して三千万石程度のものは配給に依存される人があるということが想像できるわけでございます。そういたしますと、そこに三千万石というものが出て参りますると、流通しておりまする米、現在のやみ米から逆算して参りますると、そこに出てくるものは五、六百万石というものが出てくるというふうな数字に私はなるように思うのであります。でございますから、現に流れておるやみ米以上のものが、さらに自由にしたならばもっとどっといくようになるだろうということには、遺憾ながら現在の社会情勢におきましては、安い米に依存される人が多いのでございますから、だからそういうことにはならぬだろう、こう私は思うのでございます。そこで、それだけのものが今の状態から一割五分程度のものがこれから抜けたところが、それがすべてそれによってうまいもの、まずいものというようなことに一体なるのかどうかということになりますれば、すぐそれだけでもって結論になることはなかろう、もちろん米のことでございますから、いろいろ硬質米をすでに召し上がっておる人が、軟質米はべたべたしておってだめだということもありますし、こんなばさばさした米はだめだということもありましょうし、それは総じてありまするけれども、いろいろ好みもございます、習慣もございます。でございますから、一がいにうまい米だ、まずい米だといいましても、そう結論は出るものじゃなかろう、こういう気持がするのでございます。あまり話しを長くいたしますとどうかと思いますが、私はそういうふうに考えております。
  48. 森八三一

    ○森八三一君 私は今統制が行なわれておるから、いわゆるやみ米という数量が相当規制されておると思うのです。これが自由になるということになりますれば、必ずしも大臣のお考えになっておりますような状態ではなくて、大臣もおっしゃっておるように、四千万石のうち二千万石が自由米になるであろう、その自由米というものは、上質米は高きを求めてそっちの方に流れていくという経済現象は当然の結果として出て参ると思います。そうなりますとこれは非常に経済的地位のいかんによって、うまいものとまずいものという結果が出てくることを心配いたします。これは時間がございませんから、他日また十分に私の考えを申し上げてお聞きしたいと思います。  そこで、かりにそういうことにならないといたしましても、時期的、時間的には政府集荷する数量というものが、現在でございますれば予約ということで一応予定がついております。今度はその予約を行なうといたしましても、そんなに義務づけるわけではございませんから、必ずしも政府の手もとに要求される時期には集まってこない。配給を受ける方からはどんどん要求が出るという、これは実態が違うかもしれませんが、理論的には政府集荷した数量と需要者が要求する数量とマッチしないときが出てくると思います、理論的には。そういうときにはどう処分なさいますか。そのときには外米を輸入するのか。あるいは売り渡し命令を本則によってお出しになるのか。今度の構想によりますと、農協等をして時期、銘柄を指定して買わせるという手段もあるようでございますが、そういうような第三の手段をおとりなさろうとする場合には、当然政府の買入れ価格よりも高く出さなければ売ってこない。こういう状況になると思います。そういう場合に、一体価格はどうおきめになるのか。外米を輸入するのか。本則による売り渡し命令を出すのか。今度の構想によって買いつけをさせるというのなら、その買いつけ価格を一体どうきめるのか。これはどうなりましょうか。
  49. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 森さんの御指摘のようなことにならないと私は思うのです。なぜかと申しますと一ぺんに消費者が一年分売ってくれ、金さえ持っていれば一年分売るということは許されません。おのずから配給は時々配給するのでございまして、消費者に対する配給は決してまとめて大口に配給いたしません。それから政府の方は早場奨励その他の方法で現に相当の数量が十月、十一月になれば政府の倉庫に入ります。それがその通りいかぬだろうとおっしゃいますが、まあその通りいかぬだろうとは思いますが、相当のものは早く売った方が、利益のいい地方は早く売ってくると思うのでございます。でございますから従来の観念のような端境期という観念は変わってくるということを申しておるのでございますが、そういうことで、一方の供給する方は今申しましたように、いわば早場奨励等において政府の倉庫に相当早く入って参りますし、それから需要者の、消費者の側から申しますれば、月々配給するのでございますから、一ぺんにそれがなくなるというようなことに相ならぬ。こういうふうに考えておるわけでございます。  まことに申しわけございませんが、私は奥むめおさん初め消費団体の方々と一時から会う約束をしておりますので、まことに申しわけありませんが、この程度で一つ、また参ることにして失礼させていただきます。
  50. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 本日の農林大臣に対する質疑はこの程度にいたします。  午後は二時再開いたします。暫次休憩いたします。    午後零時四十五分休憩    ————————    午後二時二十分開会
  51. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまから委員会を再開いたします。  派遣委員報告を議題といたします。  午前に引き続き、第二班の報告を願います。
  52. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 第二班の報告を申し上げます。  第二班の派遣地は、熊本、宮崎の両県で、派遣委員亀田委員、北條委員及び私の三人でございます。  八月十六日、東京を出発して、八月二十二日に帰って参りました。この間、両県の各地において、農林漁業諸君の種々の意見要望に接したのでありますが、第三十八回国会における農業基本法の審議を通じて、農林漁業者の農林漁業政策に対する関心が非常に高まったと県及び市町村の当局農業団体関係者から説明がありました。われわれも今回の視察を通じて強くそれを感じたのであります。  そこで、まず初めに、各地において農林漁業諸君が異口同音に述べられた最もわれわれの関心を引いた問題について申し上げます。  その第一は、金融についてでありますが、現在、農村において、農業の近代化のため、いわゆる選択的拡大が真剣に取り上げられ、努力が続けられております。しかしながら、資金不足し、金利が高過ぎ、償還期間は短く、特に農業近代化資金の利率年七分五厘ではとても近代化はできませんので、低利長期の資金を多額に融通してほしいとの要望でございました。これは農業基本法案審議の際、当農林水産委員会で行なわれました地方聴聞会においても意見の陳述があったので、意見は同じようでございました。  第二は、米作に対する関心が非常に強いことでありました。そして最近発表せられたいわゆる河野構想に対しては、食管制度が根本的に改められるのではないかというので、大きな不安が表明され、現行の食管制度を維持してほしいという強い要望がございました。  第三は、青年層、特に新規学卒者のほとんどが第一次産業から離脱していく問題であります。熊本、宮崎両県ともその例外ではなかったのであります。人手が少なく、労賃が高騰し、深刻になってきているようでございます。そして生産基盤生産設備の近代化、合理化が今後一そう緊急な課題になってくるように思われました。  以上申し述べましたのが報告についての大筋でございます。あと申し上げますと四十五分もかかるようで、はなはだ御迷惑でございますから、これを後日会議録に記載していただきまして、ごらん願うことが一番いいと思いますので、御賛成を願います。
  53. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 以上で第二班の報告は終わりました。なお、岡村君要望の、一般報告は会議録に掲載することに取り計らって御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは午前報告のありました第一班のもあわせて、これらの報告について御質疑等がございましたらば順次御発言をお願いいたします。——別に御発言もなければ、本件についてはこの程度にいたします。   —————————————
  55. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 次に、船舶の廃油による漁業被害に関する件、伊勢湾周辺水質汚濁による漁業被害に関する件及び油による海水汚濁防止国際条約漁業に関する件を一括議題といたします。これらの件について御質疑の要求がございます。御発言を願います。
  56. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま議題になりました三件の問題でありますが、その中の最初委員長から議題に供されました伊勢湾周辺水質汚濁に関する問題並びに名古屋港における廃油による漁業被害に関する件、この二件に関しましては、この委員会ですでに再三再四問題に取り上げまして、当局の善処を求めて参ったわけであります。  そこで、伊勢湾周辺水質汚濁に関する問題につきましては、主として四日市港等を中心にいたしまする石油化学工業の進展に伴いまして、水質が極端に汚染をいたしており、その海域で漁獲されまする魚類等は、石油のにおい等が魚肉に完全に染まっておるというようなことで、商品としての価値を持たないといったような事態にまで発展をしてきておるということにつきましては、水産当局におきましても十分御認識になっておることでありまするし、そういうようなことが契機となりまして、三重県当局にもこれが対策についていろいろ指示をされ、善後措置が取り進められておるというわけでありますが、さらにそのことにつきまして、その経過等を委員会に報告されたいというような趣旨の質問もしばしば他の委員諸君からも繰り返されておりますることは御案内の通りであります。その後、前の水産庁次長から、三重県当局関係者等と協議の結果、将来にわたっての損失補償と申しまするか、対策については、何か一応の案がきまったようでありますが、そのことは基本的な方向だけを示したのであって、具体的にその措置をいたしまするためには、さらに今後十分督励をしていかなければならぬというような意味の御発言、御報告があったように記憶をいたしております。そのことについて、その後どうなったかということを承りたいことが第一点。  第二点は、今後発生するのであろう水質の汚濁に伴いまする対策については、今お尋ねをいたしました問題が、私どもの納得のできるような具体性を持って参りますれば、それで一応の解決が取り進められていこうとは存じます。がしかし、そういうような将来の問題ではなくて、既往における被害の問題をどう処理するかということが、また零細漁民にとりましてはきわめて重要な問題であることは申すまでもございません。それについてもどういうように対処をせられるかということについて、水産当局の善処を求めて参ったのが経過でございますが、その二点につきまして現段階における状況をまずお尋ねいたしたい。  それから、その次に提案されておりまする名古屋港湾における廃油等による漁業被害の問題は、水産庁の方から印刷配付されております「最近における油による漁業被害の事例」という冊子の中にも相当詳細に報告をされております。この報告の中には加害者が何者であるかということの判明がいたしかねるというものも記録されておりますが、中にはその加害者がだれであるかということが明確であるというものもあるのであり、私がこの問題を委員会で取り上げましたからには、そういうような加害者が明確になっておりますものについてどういうような措置をとるか。とのことは外国船舶等による場合におきましては国際的な関係も生ずるわけでありますので、ひとり水産庁だけでは問題の処理は不可能と思う。これは外務当局との連絡もとりましてこれが対策を取り進めていかなければならぬように思うが、そういうようなことについてどういうような手はずになっておるかというようなこともお尋ねしましたが、ただそういうことについては、非常に事が国際的な問題にもなるので非常にむずかしい問題であるので、関係当局との間に協議を取り進めておるというような程度の抽象的な回答はちょうだいいたしておりまするが、そういうような程度の抽象的な回答ではこれは問題になりませんので、その後明確になっておる加害者に対する措置等につきましてどういうような取り運びが進んでおりまするのか、これも相当の時間が経過しておりまするわけでございますので、その点もこの際お伺いをいたしまして、その上でさらに具体的な問題についてお尋ねを申し上げたいと思いますので、議題の一と二についてはそのことを一つ報告を、その後の経過を承りたいと思うわけであります。  第三に議題となっておりまする国際条約の問題でありまするが、このことは私が今さら申すまでもなく、ただいま申し上げました「最近における油による漁業被害の事例」というのが水産増殖資料第三十六号ということで振興課の方から出ております。その出ております書物の最初のはしがきのところにも詳細に記録されておるわけでありますので、このことは水産庁当局も十分御了承になっておるはずでありまするが、すでに昭和二十九年にロンドンにおいてこの問題が国際的に取り上げられまして、条約に日本も署名をいたしておる。その後十二カ国の批准が行なわれまして、三十三年七月にこの発効を見ておるように私は承っておるのでありまするが、日本といたしましては非常にむずかしい——関係する部面が多いということは十分了承いたしまするが、二十九年にこの問題に関与をいたしまして、相当の日時が経過し、関係国におきましては、申し上げまするように、十数カ国がすでに批准を完了しておるという状態でありまするにかかわらず、わが国といたしましては今もってその手続が完了しておらぬということは、まことに奇異の感に打たれるわけでありまして、問題が複雑でありますことはよく承知いたしまするけれども、すみやかにこの批准が行なわれ、そうして国際的なこの問題に対処する日本の態度というものも明確にとるべきであると思いまするし、今年でありますか、明年でありますか、さらにこの問題を中心としての国際会議が開催せられるということも承っておりますし、その間に日本の方にもすみやかに批准すべき旨の催促のような手紙も参っておるやに承っているわけでございますが、この条約の批准が取り進められておりません理由なり、あるいは今後この批准の問題をどういうように取り扱っていかれますのか、会議に参加し署名しただけで具体的な発効の手順が進められないということは、どうしてもこれは納得できない問題であります。その辺の事情を詳細に承りたいと思います。  とりあえず以上三件の問題につきまして、その後の経過なり現状をまずもってお尋ね申し上げます。
  57. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 私御質問のありました二点につきましてお答えを申し上げます。条約の方はあるいは別に御出席の方が適当と思いますので、最初の二点につきましてお答え申し上げます。  第一番目の四日市の問題、二番目の名古屋の問題でございますが、これは七月の上旬でございましたか、当委員会でいろいろ先生から御質問があり、いろいろお答えしたのでございますが、その後私どもといたしましては、四日市でございますれば三重県、名古屋は愛知県と連絡をし、また関係各省とも実は連絡をして参ったわけでございます。  四日市の問題につきましては、これは三重県当局も三十五年、六年両年度調査費も組みまして、いろいろ原因の調査なり、被害調査をしておりますし、また県自体としましても、この問題を重視いたしまして対策協議会を作っておりますことは御案内の通りであります。それで三十五年度に中間報告といいますか、そういうものがございまして、これはおそらく被害は、石油関連産業からの廃液とか、そういうものによるのではなかろうかということの意味の中間報告があるわけでございます。そうしてこの対策でございますが、先生もおっしゃいましたように、前向きの、将来どうするかという問題と、過去において起きた問題をどうするかという問題の二つがございますが、過去のものにつきましては、対策協議会なり県なりの考え方といたしましては、はっきり原因がこうだということがわかったものにつきましては補償をいたしますという考え方の対策を私の方へ県当局として説明に参っております。でありますので、原因が因果関係がはっきりしてこうだというふうにわかれば、今申し上げましたように、過去のものについても補償は考えますということを県当局はわれわれに説明しております。  それから前向きの問題といたしましては、今後あの地域につきましては、石油関連産業の方でも極力そういう被害が出ないようなことを考えてもらいますが、そのほかに県当局としましては、あの四日市のあの方面に禁漁区を作りまして、あるいはあの辺の漁業者をもう少し別なところへ持っていってほかの漁業をやらせる、あるいは魚礁を作りますとか、漁業の内部で救えるものは救っていく、そのほかにほかの産業に転業対策という意味で職業訓練をいたしますとか、あるいは漁業者に全然新しい職業を与える、たとえばいろいろな、あの辺は工場地帯で貨物の運搬が多くありますので、輸送の会社を作らせるとかというようないろいろな前向きの対策を持ってきております。これの財源といたしましては、県なりあるいは関係業者の方あるいは水産業界でも持ち寄りまして、県の意向では約十二億三千万円くらいの基金をもちましてそれを運用いたしまして、その金で今申し上げました対策を立てていきたいというような考え方の案を持ちましてつい最近われわれの方へ県当局説明に参っているようなわけでありますので、四日市の問題につきましては比較的具体的にいろいろな計画が立てられているような次第でございます。農林省といたしましては、県が今申し上げましたような、考えております対策の中で、いろいろ魚礁を作りますとか、ほかの漁業をやりますとかいうような場合に、水産の中でも基本問題調査会の答申にございましたような構造改善の問題等ございますので、いろいろ事業を計画いたしておりますそろいうものの一環としまして、できるだけ県が立てました対策の中で、応援できるものは国として応援しましょうというようなことをいっておるような次第でございます。  もう一つの名古屋の問題でございますが、これはその後、県からいろいろわれわれも話を聞いておるのでございますが、あの外国船が流したのではないかと思われる油によるノリの被害につきましては、県の調査としましては、これについてはっきりした因果関係がこうだということはむずかしい、それで訴訟とかそういう問題については、まだ県としても積極的な相談はなかなかこれはむずかしいので、県の対策としましてはいろいろあの地帯、横須賀の前面でございますが、東海製鉄等で埋め立てがございましたりいたしますので、前向きの対策として、いろいろな転業の問題とか、ほかの業に移るとかそういうことを考えていきたいということを県当局は今いっておるような次第であります。保安庁がきょうおいでになっておりますれば、その後あの船につきまして書類送検をされたということも聞いておるのでございますが、われわれとしましては過去の被害につきまして、港湾管理者の方で何か一つできんかという御質問がありましたので、いろいろ関係省とも相談いたしたのでございますが、今のところはまだこれに対しまして、それはできるというような結論をいただいておりませんで、まだ過去の被害につきましては実は十分な対策はとられていない。それは水産の共済制度にも一部入っていたのでございますが、金額がそれに達しなくてそのめんどうも見れぬというようなこともございまして、まだこの分につきましては過去の対策としてぴしっとしてこうだということまで県とわれわれで打ち合わせた結果が出ておりませんのははなはだ遺憾でございます。  最後の条約の問題は、水産庁は終始一貫、これは署名をいたしたのでございますので、なるべく早い機会に批准をしてもらいたいという態度でいる次第であります。
  58. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまの長官のお話によりまして、一応状況だけは了解いたしたのでありますが、伊勢湾周辺の、特に四日市を中心といたしまする石油化学工業の関連から生ずる漁業被害の問題、これについては十二億三千万円の基金を作って、その基金を運用する益で前向きの対策と過去における被害の補償、両面に対処をしようというような趣旨の御報告であったと思うのでありますが、その十二億三千万円でどういうような組織を作ってやっていきますのか、またいつごろそういうものができますのか、また水産庁としてそういう程度の資金の運用益というもので、あの地域に発生いたしておりまする被害に対処し得るというようにお見込みになっておるのかどうか、その全額が年々の予算になりますれば、これは相当大きい額ですから、問題の解決としては十分かと思いますが、その運用益で対処していくという程度では、私は今までに起きた損害の補償にも相当の長年月がかかるということになるのではないかというような心配をいたしまするし、その余力で前向きの姿勢をやると申しましても、その回ってくる部分というものは、運用益では出てくる計算が持てないじゃないかという感じがするのですが、その辺の、何かこの程度でやむを得ないというようなお見込みでございますれば、そういうような計算が出てくるのかどうか、これは漁民諸君としては、多いほどいいのですから、ある程度わがまま言うと思いますが、わがまま言わしておいてはいかんので、理論的に正しい方向というものを説明をして納得をさせるということでなければならぬと思うのですが、その辺の計算がどうなるか、そんなことを一つお尋ねいたしたいと思います。
  59. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 御質問の点でございます十二億三千万円で過去の補償まで全部これでいけるかどうかということにつきましては、私どももこれは将来の見通しもございますので、十分かどうかということについては判断いたしかねる点が実はございます。それで十二億三千万円についてはこれは大部分前向きのものに運用されるのが多いと思います。過去の補償につきましては、先ほど申し上げましたように、これは原因がこういうことだ、この因果関係がどうだという調査がまだはっきりいたしておりません。それによる被害がどうだということがまだはっきりいたしておりませんので、そういうことがわかりました場合には、今申し上げました基金だけで十分なのか、あるいはまた別途になるかということにつきましては、もう少し具体化してから考えるべき問題じゃないか、今のところは大部分前向きのものに使っていくという説明をわれわれ聞いております。
  60. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、今の十二億何がしの金は前向きのいろいろな諸施設をやる、それに対する対策の費用としてということになろうかと私も思います。ということになりますと、すでに過去に発生した現実被害対策というものは、これから加害者がだれであるか、どういう原因でそういう結果が起きたのかということを取り調べなければ、対策を立てて具体的な予算等というものも策定ができないということでじんぜん日が送られちまうと実情の解決にならぬと思います。今まで多くの場合そういうことなんです。だれがやったのかわからぬ、この書類にも出ておりますように、そういう広い公の海のことでありますから、そこへ流れ込んできている河川等も相当ある、あるいは船も航行する等ということで、だれがどれだけの被害を与えたかということを数字的に理論的にきわめるということはこれはおそらく不可能だろうと思います。不可能なことを考えましょう考えましょうと言っているうちにおくれてしまう。現に今までそういうことで、十数年私もこの問題を扱うようになってからも済まされている、その間に零細な漁民諸君としては参っちゃう、こういうことであります。それでは問題の解決になりません。そこは一体水産庁としてはどういうふうに切り開いていくかというところに問題があろうと思います。おそらくこれはあの辺における——これは必ずしも伊勢湾だけを考える必要はない、あるいは東京港湾にいたしましても同様の問題があろうと思いますが、そういうような被害がどういうような原因によって発生しているか、その原因を形作ったのは一体だれだということを抑えるということはこれは容易ならぬことだと思います、実際問題として。それが何か科学的に実証できるという目当てがありますればけっこうでございますが、おそらくないということのために、今日までずっと日が経過してしまったという事実だと思うのであります。とするというと、今後も、こういう委員会の質疑応答としては、こういうことを研究し、それがはっきりいたしますればおのずから対策がきまってきますといっても、これはただ気安めを言っているだけで、その辺は水産庁としてはどうお考えになるか、零細な漁民の立場を守っていらっしゃる水産庁はどういうふうに考えているか、その辺はどうですか。
  61. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 四日市の問題で申しますと、先ほど申しましたように、三十五年、三十六年で県が調査費を組みまして、この調査をしているわけであります。また試験場その他で応援いたしておりますが、それで結論を三十六年でこれは出してもらうというつもりで県当局にも話しておりますので、先生のおっしゃいましたように、いつまでもじんぜんとして日を送るということではなくて、過去のものがはっきりしたものがあれば補償いたしますということを作文にも書いて説明をいたしておりますので、私は三十六年度の調査を待ちまして、なるべく早い機会にそういうことを考えたらどうだろうというふうに現在考えておりますので、時期の問題については私はそういう大体タイミングを考えまして、県当局といろいろ連絡したいと思っております。
  62. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、水産庁発行の書類にもあるように、「都市下水も加わり総合汚水となっている関係上」云々、まさにそうだと思うのです。そこで今の対策協議会ですか、伊勢湾汚水対策協議会というものを設置して鋭意取り組んでおる。その誠意に私も感謝を申し上げます。申し上げますが、その次のずっと出ているのを見ると、非常な広範囲なあれがあるから、なかなかどういうような加害者がどの部分を負担すべきかということを数字的に取りきめるということは非常にむずかしい問題だと思うのです。それを三十六年度中には、この対策協議会が十分でなくともある程度のお見通しを立てて、そうして補償の約束を果たします、そういうところへ水産庁としては指導をしていってじんぜんと日を延ばさないというところの決意といいますか、考えで今進んでおるのだというように了解してよろしゅうございましょうか。
  63. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 先生おっしゃいますように、魚が売れないとか、値引きの問題、現実の問題でございますので、先生のおっしゃいましたような趣旨で私も行政をやっていきたい、かように考えております。
  64. 森八三一

    ○森八三一君 第二の航行船舶による廃液といいますか、油を捨てた被害というやつは、国際関係があるからなかなか簡単には解決できない。これ私よくわかります。わかりますが、それだから被害をこうむった漁民は泣き寝入りをしなければならぬということもあってはならないと思う。その辺を何か始末をする方法はないものか。そして港湾管理者という機関があるのだから、港湾管理者が善意の管理をやっておれば、そういうような管理下における水域を航行する船舶が非違の行為をやった場合には当然その責に任ずべきものじゃないかという感じを持つのです。またそういうところを使わせてもらうために一定の使用料を負担しているということになれば、当然そういうことになるのではないか、私よくこういうような法律関係わかりませんから、しろうと的のことを申し上げますけれども、何かそういうところに解決の道を考えていただかないと、加害者と港湾管理との間の関係、港湾管理者と被害をこうむった漁民との関係、こういうクッションを入れて考えてやりませんと、問題の解決にならぬという感じを持つわけなのですが、そういうような解決の方というものはないものか、どうか。
  65. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 現在の仕組みで先生おっしゃいましたように加害者と被害者が直接でなくて、その間にクッションを入れて考えられぬかということでございますが、これは私の方も運輸省の方にお話しまして、そういうことはどうだろうかというお話をしたのでございますが、今までの仕組みでは実はそういうふうにはなっておらぬわけでございます。また港湾管理組合もそういう積立金等は今までもやっておりませんので、今すぐにそういう解決ができますということは、これは申し上げかねる問題でございます。  もう一つ、特にこの問題は被害者と加害者との直接の問題として考えてみました場合に、県がいって参ってきておりますように、はたしてその油かどうかという因果関係についてどうもわからぬという報告をもらっておるのであります。でありますので、加害者がわからぬので、現実被害があるのだからそれをどうしたらよいかということで、問題を別な問題として、これをどうするかということで、実は県等とも相談し、運輸省の方にもいろいろ御相談しておるのでございますが、実は四日市の場合と違いまして、若干船舶の問題がございましてむずかしい問題がありまして、まだ過去の問題についてどうするかという結論が出ておりませんのははなはだ申しわけないのでございますが、これはもう少しどうしたらいいかということを検討さしていただきたいと思います。
  66. 森八三一

    ○森八三一君 長官お話のように、非常にむずかしいと思うのですが、そこで、そういうような加害者がだれであるかわからぬという場合は多かろうと思うのです、多数の船舶が航行するのですから。農業にこれをなぞらえて考えますと、漁民から見れば一種の天災のようなものだ、これは、だとすれば、何かそういう趣旨において霜害だとか、ひょう害という場合には、これは不可抗力なものとして、政府が零細農民のために対策をおとりになっておるという事実はあるわけですね。ですから、そういうような天災的な漁民の被害というものに対しては、国がその中へ関与してそれを解決してやるというふうな道というものを考えてやったらどうか。もちろんその間に加害者が判明して参りますれば、そのクッションを国と加害者の間に結んでいくということも私は法的にやり得るのではないかというように考えます。ですから、ほとんど不明なものが多いとしますれば、漁民から見れば天災のようなものだ、天災のようなものであるとすれば、国がその救済の方途を積極的に考えるという道を開くべきではないかというように考える。特に工業の進展に伴いまして、港湾所在地というものは航行のひんぱん度が加わってくるのですから、いよいよその被害は激甚の度を加えてくると思うのですね。そのことごとくはだれがやったかわからぬということで、漁業権というものは存在しておっても、その漁業権を経済的に行使することができないというみじめな姿を放置しておくべきではないと思う。その辺の名案というものはございませんでしょうか。
  67. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) この前の委員会でもたしか、国が補償したらどうかという御質問がありまして、前大臣から、なかなかこの問題はそういうふうには考えることは困難でございますという御答弁をされていたと思いますが、先生おっしゃいますように、何かこういう場合に国が関与をして金を補償するということの案を考えておられますが、私まだどうも経験が浅いので、今ここですぐ名案がございませんが、漁業の共済等も私は一つのこれは行き方ではなかろうか、またあるいは三重県等が考えております、関係者で基金を積み立てるというようなことも、これもまた一つ考え方でなかろうかというふうに思っておりますが、愛知県の問題につきましては、実はちょっとまだ県当局ともそこまで話が進んでおりませんので、いろいろ固まっておりませんが、これはどうしたらいいかということにつきましては一つもう少し検討させていただきたいと思います。
  68. 森八三一

    ○森八三一君 まあ、今の問題は十分誠意をもって御返事をいただきまして、私も確信をもって申し上げておるわけではございませんが、どうしても加害者というものが明確にならない、なってみてもそれは国際的にそうスピーディに解決するわけにいかない、ただ被害をこうむった漁民は難儀をしておるということは、どうもこれは常識的に納得ができない。ですから、その対策というものをどう考えてやったらいいのかということは、水産庁としても非常にむずかしいことだと思いますけれども、取り組んでいただきたいと思います。  それから最後の条約の問題は、水産庁としてはすみやかに批准されることを希望し、絶えずそういうような方途をとっておるということであったと思いますが、どこがネックになってそれが進まぬのか。批准されることを希望し期待しておるというなら、そういう働きをなさっておると思います。それがどこでつかえてしまって進行しないのか、その辺の事情をお話し願えれば、そういう隘路になっておるところは漸次打開をしていくという行動をとらなければならぬと思うのですが、どの辺がつかえてしまっておるのか、農林省は一生懸命やっておるといっても、どこでつかえておるのか、その病根をはっきりせぬというと治療の方法はないと思う。
  69. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 御質問でございますが、これは関係省たくさんございますので、一つ運輸省とか企画庁とか、そういう方からも一つ御答弁をしていただいた方がいいのじゃないかと思います。私どもの態度はさっき申し上げましたようなことで、なるべく早く関係省全部として御質問のようなことはないように、早く条約の批准はするというようなことで、今後も関係省と十分打ち合わせていきたいと思います。
  70. 森八三一

    ○森八三一君 水産庁の話はわかりました。わかりましたが、関係省が来ていらっしゃったら、水産庁の方からそういう協議があって、それぞれの省々の立場でその分野における取り運びはしていらっしゃると思うのですね。みんながやっておればこれは解決していなければならない。どこかでパイプが詰まっていると思うから、どこで詰まっているか。運輸省か、外務省か。きょうお見えになっておれば、どの辺が詰まっているのか。どういうわけでいかぬのか。農林省はすみやかに批准することを期待し、そういう努力を払っております、これは農林省はそれでいいですわ。どこで詰まっているのか。運輸省で詰まっているのか、外務省で詰まっているか。関係各省というのですから、関係各省はどうなんですか。
  71. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 外務省国際連合経済社会課の中村事務官から説明をお願いします。
  72. 中村輝彦

    説明員(中村輝彦君) 御説明申し上げます。  先ほどお話のございましたように、油による海水汚濁防止のための国際条約というものがございまして、すでに昭和三十三年の七月二十六日から効力を発生しております。加入しております国は、これも御説明がございましたが、十二カ国、ちょっと御参考までに内訳を申しますと、イギリス、メキシコ、スエーデン、西独、デンマーク、カナダ、ノルウエー、アイルランド、ベルギー、フランス、オランダ、フインランド、これだけでございますが、これだけの加入を得て効力を生じております。わが国はこれもお話ございましたように署名はいたしたわけでございますが、との署名をいたします際に、将来受諾するということを条件にして署名をしたわけであります。従って、日本については効力が発生していないという状況にあるわけでございます。  それで外務省といたしましては、もちろん国際的な協力、協調を促進するという立場から、可能な状態になりますれば、できるだけ早く批准をしたいという希望を持っておりますが、その前提といたしまして、この条約がいろいろな義務を課することになっておりますので、その義務が十分に履行できるような国内態勢が整備されていなければならない。従ってその国内態勢が早く整備されれば整備され次第すみやかに批准手続をしたいという考えでおりますが、現在のところ国内態勢はまだ整備されてないと判断されますので、批准の手続をとっていないわけでございます。
  73. 森八三一

    ○森八三一君 その国内態勢が整備されて、条約に署名をしたことの受諾をする批准行為が行なわれるときを待っているということなんですけれども、どういう点を整備すればいいかということは、外務省の方で判断なさるということのようにも聞こえるのですね。整備ができたら批准の手続を取り進めたいと思っております、といたしますると、どういう点が整備されれば批准の手続を取り運ぶという段取りになるということになりましょうか。言葉をかえて申しますれば、どういうことがまだ整備されておらぬから外務省としては外交的な手続を取り運ぶ段階でないという判断に立っている、こういうことですね。どこなんですか、それは。
  74. 中村輝彦

    説明員(中村輝彦君) もう一度御説明申し上げます。  国内態勢が整備され次第批准したいというのが外務省の希望でございますが、整備されているか整備されていないかの判断は、もちろん外務省単独で勝手にいたすわけではございませんので、関係の各省庁と協議の上、日本政府としての態度をきめるわけでございます。従来関係各省の御意見も承ったわけでございます。水産庁の御意見としては先ほど御説明がございましたが、すみやかに批准手続をとってほしいという御意見がございましたけれども、ほかの官庁では必ずしも条約で要求しております義務を履行するための十分な法的並びに実際的な措置というものがすみやかにまだ完了できる時期でないという御意向でありますので、従って国内態勢がまだ十分整備されていないというふうな判断をしたわけでございます。
  75. 森八三一

    ○森八三一君 これはまあ非常に貴重な時間ですから、こんなことをやりとりしておってはいけませんから、ただいま外務省の方から御回答がありましたように、水産庁では国際会議で署名をしたことでもあるから、すみやかにその批准手続を完了して、日本もその条約加盟国として効力を発生するというように持っていきたいということを希望されておるし、希望されておるとすれば、私は常識的な判断でありまするけれども、国内態勢の整備をなされなければならぬことについての農林省の分担すべき部分は完了しておるから、そういう請求が出ると思うのです。これはそう理解するのが当然と思うのですね。ところが、まだ国内態勢整備について関係各省の間は、やってみると、こういう点こういう点について条約から生ずる義務を履行するためには十分な整備がなされておらぬという点があると承りますので、これは一つ外務省がそういうような判断をなさっておるとすれば、どういう点どういう点が整備されれば外務省は外交手続を取り進めるということの踏み切りがつきますか、どうか。これは文書でいいですから、こういう点がまだ完備しておらぬということを御報告願うということで、この問題は私はここでやっておりましても、一々運輸省その他聞きましても、どうも判断しまするのに、あまり熱心にこの問題に取り組んでいらっしゃるという感じを受けないのです。受けないから、そういうことで聞いておりましても、またちぐはぐになってしまいますので、水産庁のお話はよくわかりました。外務省のお話もよくわかります。わかりますが、どういうところがその整備されなければならぬか、それは担当者はどういう省がそれを担当しておるのかということを一つ文書で御報告願って、それに基づいて関係省はどうなりますかということにだんだんお尋ねをしていけば、問題の解明になると思うのです。そういう取り扱いを委員長の方で一つやっていただきたいという希望を申し上げまして、私は、他の委員の方は別でございますが、私は一応ここでこの質疑を打ち切っておきます。扱いを委員長にやってもらいたいと思う。
  76. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 外務省、いつごろまでに出されるか、今、森委員の。
  77. 中村輝彦

    説明員(中村輝彦君) 今の御注文でございますが、私どもの方は、実は関係各省の御意見をお伺いしまして御意向をある程度承って、まあまだ批准の段階ではないという判断をしているわけでございますけれども、関係省の御意向として承っておるその御意向の出方は、まだ自分のところの関係の省としては遺憾ながら批准要求事項を完全に履行できるという態勢に整備されていないという御意向の表明の仕方を承っておるわけでございまして、どの点がということは、私の方でははっきりはわからないわけでございます。
  78. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) どことどこ、関係省は。
  79. 中村輝彦

    説明員(中村輝彦君) 通産省、運輸省などでございます。
  80. 清澤俊英

    清澤俊英君 外務省ね、あなたの方でこれが整備せぬければ、外交の協約か何かできないということは、あなたの方が中心にならなければならぬでしょう。そうじゃないですか。何かこれをこういう条約を取り結ぶから、お前整備しろといったって、これはわかるわけがない。これはあなたの方からどういう点の整備がまだ足らないかということを出してもらいたいと思う。それじゃ、なぜに通産省この点をどうしてやってくれないのだ、運輸省なぜやってくれないのかということは、われわれが督励したい。お聞きしたいのですけれども、外交の当局はあなたなんだ、整備ができているか、できていないかの判断はあなたの方にあるんだ。
  81. 中村輝彦

    説明員(中村輝彦君) ですから、私の方からどういう点が整備できていないか、あらためて関係省の方にお確かめいたしまして、それを取りまとめて、こういう状態であるというふうにまとめて御報告いたすことはできると思います。
  82. 清澤俊英

    清澤俊英君 先ほど聞いていますと、伊東さん、油の性質がまた云々と、こういうお話があった、さっき。それもようはっきりしない。これは実に、そこに入ったらほとんど解決つかないと思うのですよ。われわれは二、三べんその経験があるんです。過ぎた油を、この船が出した油か油でないかということは、これは容易に解決しないですよ。この前亀田君が質問したときは、そういうものを吟味しないでも大体どの船が出したということはわかった、こういう話になっておったと思う。どうしてそういうものが今になって出てきたんだろう。どういう経路でそういうものが出てきたのか。
  83. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) さっき御説明した中で、海上保安庁で書類送検されたということを私聞いておりますということをお答えしたのでありますが、その船が油を出したということは事実だとして書類送検を海上保安庁でされたと思います。ただノリの被害が、その油によって被害があったのか、どうかということの証明が、これはその直接の因果関係があるか、どうかということについてはどうもはっきりいたしませんというのが県なり、これに加わった試験場なりの報告なのでございます。それでこの問題の解決の一つの方法として、はっきりすれば損害賠償の訴訟を起こすということが方法としてあるのですが、そういう因果関係がどうもはっきりいたしませんという報告を実は私どももらっておるのでございます。先生おっしゃいましたように、油を捨てたという事実はだれも否定しない、それと被害がすぐに因果関係があるか、どうかということがはっきりしないということだけ申し上げたので、捨てたのではないという意味のことを言ったわけではありません。
  84. 清澤俊英

    清澤俊英君 これは、私は、あなた、ときによると、この前の東京湾における自衛隊の油を捨てたのと同じことで、みんなぐるになってそういうところに持ち込んだのではないか、外国の問題だから、めんどうだから。そんなばかな話は、私はいろいろな点から調べてないだろうと思う。そんな油であるか、油でないか、どうもそういういろいろ外交上の問題や軍隊の問題になったりして内方の問題になると一番ばかを見るのは農民だということになる。過ぎたあとで油を検査したところが、海の波間にもまれたもので同一成分が残るかどうか、そういう化学的な問題はなかなか見当つかないと思う。この油がそうじゃないとか、そうだとか、当時の状況を十分調べていけば、これらの油がどういう形でもってそこに回ってくるかというくらいはわかると思う、常識上。そんな油の内容検査までいったら問題だと思う。捨てた所によって、上層の油と下層の油とはいろいろ性質の変わったものがわれわれとしては出てくるんじゃないかと思う。そういうことを考えてみますと、実際そこまで持っていくことは、これはあやふやにする、こういう議論になるんじゃないかと思う。化学的にどうしても証明ができるのでしょうか、そしてそれがこの油でないというなら一つ化学者から……私、石油関係いろいろありますから、何日々々のこういう質の油をこう投げた場合、これが日光にさらされた場合、これが海水に浮遊して何日間いった場合、塩分何度、こういうもので天候等をあわせて一つの詳細なデータをもらいたいです。われわれの友だちだってそんなことをやっている者は幾らもいるのだから。この前のときだって全くわけがわかるものじゃないですよ。こっちの方ではこの油だと言う、当の試験場ではこれじゃないと言う、これじゃ片のつくものじゃない。もうちょっと片のつくような方法をやはり出してもらわなければいけないと思う。これはやはりうやむやです。
  85. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 先生が先ほどおっしゃいましたように、外国関係だからとか、あるいは自衛隊関係だからということで、私どもこの問題をどうということは全然考えておりません、これは。それからもう一つあとの点でございますが、調査をしました方法、そのときのデータ等は取り寄せまして先生のお手元に差し上げます。
  86. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 他に御発言もなければ、これらの点についてはこの程度にいたします。  なお、要求の資料は先刻外務省から答弁の通り、外務省において取りまとめの上、すみやかに御提出を願います。
  87. 清澤俊英

    清澤俊英君 養鰻事業は、これは内水面の事業考えていいでしょうね。
  88. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 当然そうだと思っておりますが……。
  89. 清澤俊英

    清澤俊英君 それで伊勢湾台風のときは養鰻事業のその養魚池あるいはウナギの種等の流出に対しては何らかの手当があったと思うのですが、それはどうなっていたでしょう。
  90. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) 私まだ過去のことをよく——不勉強でございますが、あのときには天災融資法をたしか発動いたしまして、養鰻の施設とか、その他につきまして融資をしたはずでございます。今年度もたしか何月の災害でございましたか、養鰻の被害がありましたところには天災融資法を発動しまして、融資をいたすことに今年度の災害についてもたしかしたはずでございます。
  91. 清澤俊英

    清澤俊英君 そうしますと、養鰻でなくとも、内水面養魚の災害に対しては、大体天災法が出ますればごめんどう見ていただける、こう解釈しているのですが、そこでこれは非常にめんどうな問題なんですが、農業基本法によりまして、選択的拡大の立場からわれわれの地方には、非常にこまかい、段々畑だけのところでたくさんの池を掘りまして、ため池を作って、そして今まで耕作をやっておりましたが、これじゃどうも時代に即応しないということで、   〔委員長退席、理事櫻井志郎君着席〕 まあ養魚といいましても色コイ、いいますれば鑑賞用色コイ、これは日本で、他にまねのできない色コイを作っている。それがこの水害でほとんど全滅してしまった、種コイ約八千万円流してしまった。昨年からその切りかえをやって、小さいたんぼを、耕地を全部ため池にして千幾つかにふやしたのです。そういう切りかえをやっておるのが全部流れたのだが、こういうものについては一つ水産庁長官——今度新しくできた水産庁長官に特別に一つ考慮してもらわなければならぬ。不幸にして、衆議院の災害対策委員会の草案がきのう大体まとまりましたが、これに間に合わなかったと思いますが、これに対しては何ら発言もなかったそうです。だから、こういう特殊のものは一つ考えしていただいて、参議院として一つ徹底的に皆さんの御協力を得てやっていきたいと思います。これは農業基本法精神にもかなうものであり、同時にそういう新しい一つの切りかえに対して困る、こういう問題が出ましたら、それは今までの天災法だけでなく、非常に貧農な、それこそ貧農ですよ、そういう貧農がそれまでの努力を一朝にして流すというようなことでなく、希望のつながりますような方法をできまするならば政府考えてもらいたい。いずれ新聞の切り抜きは差し上げます。
  92. 伊東正義

    説明員(伊東正義君) わかりました。   —————————————
  93. 櫻井志郎

    ○理事(櫻井志郎君) 次に、菜種対策に関する件を議題といたします。  本件について質疑の要求がございます。御質疑を願います。
  94. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま議題になりました菜種の対策の問題ですが、このことは、前国会から引き続いての問題でございまして、農林省御当局は十分御承知でいろいろ御苦心を願っておると思うのです。基本的には、貿易の自由化のために国内の重要農産物に経済的な損害が発生するというような場合には、その被害というものを排除するように考えましょうということが、これが一貫してずっと今まで歴代の大臣から御答弁を願っておる精神であります。このことを私どもその通りでなければならぬということで了承いたしております。ところが、本年の七月一日に大豆の自由化が断行せられまして、そのために、油脂原料として競合の立場に立っておりまする菜種の取引の上に、非常な支障が巻き起こっておりますることも、これは今の現実の問題でありまして、御当局では十分御了承を願っておると思うのです。こういうような事態が当然起きるであろうことをかねがね考慮せられまして、前国会には貿易自由化を想定して、菜種、大豆でありましたかの、交付金法という法律を御提出になりまして、その善後対策を御考慮になったわけでありますが、遺憾ながら、前国会が衆議院の方で懲罰問題等が暗礁に乗り上げまして、この法律が不成立のまま過ぎ去ったという経過がある。そこで、まあ考えますれば、農産物価格安定法という法律が現存しておるわけですから、本来でありますれば、現存しておる法律に基づいて措置をされるべきであろうというようにも思われまするけれども、貿易自由化という現実の問題に取り組んで参りまするのには、また一面には、農業基本法の問題もございますので、あれこれ考えますると、前国会で不成立に終わっておりまする交付金法の趣旨に準拠してやることがよかろうというような趣旨で、その後御苦労を願っておると思う。そこで、法律は制定されなかったんですから、行政措置でこれを解決しようということでまあ努力をされておると思うのです。ところが、菜種は御承知通り、収穫時期を終わって、もう取引の最盛期もずんずん進んでおるという状況下に、今もってその対策が講ぜられませんことと、それから現存しておる安定法の発動ということもなされておらないというようなことのために、最初に申し上げました貿易自由化に伴う国内生産者経済的な悪影響を与えないという歴代農林大臣の言明がここで裏切られておるという感じを農民諸君としては持っておる。このことは、御努力を願っておるにもかかわらず、そういう感じを与えておるということは非常に遺憾なことでございまして、残念ですから、早くこの問題を処理していかなければならぬわけですが、その経過は一体どうなっておりますのか、最初にその一点をお伺いいたします。
  95. 安田善一郎

    説明員安田善一郎君) お答えを申し上げますが、その前にこの席で、食糧庁長官に新任いたしました、仰せつかりましたので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  菜種の農安法に基づく価格、または前国会で交付金交付法を提案をいたしましたが、各種の事情でこの法案が成立しませんでしたという事情、貿易の自由化が進んでくるが、大豆等、行なわれましたが、このために、日本の農業、特に主要農産物に対する国内保護の措置は十分講ずる、国内消費に対する供給国内生産を第一主義にして、油糧は輸入が多いのですけれども、極力増産をはかる対象物資である、こういうこと、その他、選択生産等がありまして、農業基本法もできた際、こういう際に、菜種の価格がまだきまらなくて、政府できめるべき価格がきまらなくて、生産は今、作況指数一〇五を示しておりますが、平年より五%増ぐらいを示しておりますが、前の大臣の方針的言明もあり、その他もありまして、なぜ早くきめないかとか、その間の事情はどうかという、こういう御質問かと了解いたします。結論を先に申し上げますと、数日中にきめたいと思います。また、きまると思います。大蔵省と特に折衝事項がございますので、関係の主計官が出張すると言うのですが、申し込みまして、きのうから出張をとめさせまして、きまるまで出張しては困るというので、きょうじゅうでも大蔵省の上の方に通すように、大蔵省自身も努力して検討中でございます。大蔵省と農林省とは見解が違います。しかし、私どもは、あとで申し上げますようなふうで極力努力をいたしまして、大ていのところ、相手もあることですけれども、私、新米でもございますが、そのようにきめたい、また、きまるのではないか、こういうふうに思うのであります。内容は、その予算では、農安法をやめて、ほかの法律によろうとして、この措置とともに交付金を菜種分約七億、大豆等を加えて三十億、予算が組んであるわけであります。新しい方の法案は成立しなかったから農安法が生きておるというわけでございます。そこで、大蔵省の方は農安法によるべしということで、私も、その議論は少し森先生と意見が違うかもしれませんが、法律論としてはそうだと思うのでありますが、しかし、その法律の内容も、農業パリティ等を中心に、経済事情その他の事情や、農業政策の、政府の主要農産物、油糧、菜種に対する方針を入れて一定の算式でぴしっときめるものでないので、そういう趣旨によってきめるべきものというふうに思っておるのであります。また、農林省はそういうふうに扱うつもりでございます。そこで新しい法律を出し、交付金を予算に計上し御審議をいただいて、三十億の中に菜種分も入ってきまりました趣旨は、法律関係が、申し上げました御承知のような事情でありましても、農業基本法成立した事情でございますとか、自由化に対する大豆でとりました措置に対する態度でありますとか、その価格をきめるきめ方でありますとか、こういうものを輸入を相当に自由化すれば需給事情が緩和して——生産費も勘案する、農業パリティ等も勘案する。その場合に貿易自由化によって需給事情を勘案して安めにきめるという方針をとることは絶対にしたくないのであります。またしないように交渉中でございます。従いまして、そういうふうに申し上げますと、法律が、農安法が生きておる限り、また、前国会に提出した法律成立しなかったという事実はどうしても事実でございますから、行政法律に従わなくちゃいけませんから、農安法によるのがいいという点について、行政措置でやるべしという点について形式論的に森先生の御意見と違うかもしれませんが、その運用は、先生がおっしゃいました行政措置と同様に扱うべきものである。そしてその値段を出すべきものであると、こういう考えでございまして、交付金算出基準価格の一俵六十キロ三千二十円の価格を上回る案を提出をいたしておるのであります。ただいまもう出回り期に入り、生産も一〇五の作況指数を呈しておりまして、予算基準価格、そういうものによってもらいたいという大蔵省の考えを私どもはのむ気はございません。その関係で一、二若干の時日をおくれておるところがございますが、冒頭申し上げましたように、数日をいでずしてきめ得る見込みでございます。法律には、農安法によれば菜種は六月末までに値段をきめなくちゃいかぬということになっておりまして、私実は就任当時知りませんでしたが、七月二十一日に実は就任しましたので、もうきまっておったと思って、菜種のその問題はないと思っておりましたら、きまっておりません。前年を調べましたら九月にきまっておったと。そのところは一つ、そういう事情もございます。森先生のような御主張のように結果が合うように私ども努力中でございますから、まことに恐縮でございますが、御了承を願いたいと思っておるのであります。ただいま全販連は私どもが考えておる値段よりは安くすでに市場に売っておるのであります。農安法で計算して交付金をきめる、あるいは交付金を使うような趣旨で農安法の値段をきめる。言いかえれば交付金を農安法の価格以上できめる。   〔理事櫻井志郎君退席、委員長着席〕 もう一つ申し上げますと、大豆の自由化に伴って、大豆保護を考えて、大豆の値段を農安法で従来きまっておったより違ってきめた。高めにきめた。それと同じように菜種の値段をきめようと思いますが、きまりました値段は、さかのぼりまして、すでに安く売っておるような事情は、今後全販連等ももうちょっと上手に保管して、安く売らぬようにしていただきたいと思うので、その旨は全販連に農林省から、私から申し入れることにきめておるのでありますが、しかし、まあ農家としては早く売ってしまいたい。そうすると概算払いということが出るわけであります。概算払いの余地がないようにまず価格をきめることが第一ですが、万一の場合は概算払いしてもらう。そのためには、交付金の交付要領か、何円ぐらいまでは仮払いしても政府は責任を持ちますというようなものを、実はあしたないしは二、三日中に、できればあした出せるように準備をいたしておるわけでございまして、ここへ参ります前、まあ新米でございますから、農林大臣意見が私の申し上げるようなことでいいかということを特に念を押して参りましたら、それでよろしいということでございますから、農林省全体の意向として以上お答え申し上げます。
  96. 森八三一

    ○森八三一君 この経過は事務当局からお聞きになっていると思いますけれども、お話のように交付金法という法律流れた。そこで流れたとすれば、法的根拠は農安法以外にないのでありますからそれでやらざるを得ない。それだったら六月末までに政府の買い入れ価格をきめなければならぬ。それをどうするのだということについてだんだん質疑を繰り返しているうちに、六月二十日の日に、閣議で、農安法によりませんで、法律流れたけれども交付金の趣旨に準拠いたしまして措置をするということがきまったのですね。そこで当委員会が六月三十日と七月一日の両日にわたって開かれましたので、そこで私ほか他の委員諸君からもいろいろ御質問がありまして、そこで新しくきまった閣議の決定方針に基づいて措置をするというような趣旨の御説明があったのです。そこでそういうことであるとすれば、その取り扱いについてはかくするべきであるということを当委員会の総意をもって決議をいたしまして、委員会の決議として政府の方に申し入れをしてあるのです。その後ももうすでに二カ月もたってきまっておらないということですから遺憾の意を表せざるを得ませんが、その間に局長の更迭等もございましたから、そういう私どもはよく事情はわかります。そこで今お話のように農安法によって措置をするのじゃなくて、交付金法の趣旨に基づいて措置をしようということで大体話し合いが進んで、大蔵財務当局対だいぶ農林省御苦労の結果話がきまって明なり明後日なりそれが発表できるという段階に相なっているということですから、そのことは了承いたします。いたしますが、その具体的なその中身です、問題は。お経じゃなしに中身が問題なんで、その中身についてはこの要綱なり何か出ますですね。その措置要綱というものが出た場合は、今お話のようにすでに取引は進んでいるのですね、現実に進展しているんです。そういたしますと、要綱なりそういうものが出たときから適用されるということになりますと、これは三十六年産の菜種というものの全部の措置にはならない。そこにいろいろな問題また起きるということなんですから、この一両日中に確定するであろう、そうしてまた公表されまするその要綱なり措置対策というものは、三十六年産の菜種の措置について全部に適用するという趣旨で御確定を願えるものと私は了解をいたしますが、そう了解してよろしゅうございますか。
  97. 安田善一郎

    説明員安田善一郎君) 非常に御懇切な御注意だと存じますが、結論をお答え申し上げますと、先生の御意見の御趣旨に沿いましてやるつもりでございます。それが一つ法律が通らなくて、農安法も生きている。変えようとしたけれども、とにかく国会で審議決定されて世の中に公布施行されているのは農安法だ。しかし、農安法があったって交付金は出していい。そこでおくれている事情もありますし、全販が安く売らなくちゃならぬ。農家は早く売りたいという希望がありましても、まあたとえば約一俵三千百八円とか、三千百七、八十円とかいうところできまると仮定いたしますと、それは農安法によれば、六月三十日か、それ以前にきめたであろうというときにさかのぼっていずれも適用をする、あるいはどうせまあ大差はないからもっと大きい精神からいたしまして先生の御意見のように何年産、三十六年産の菜種は全部適用する、その少なくともいずれかをこれは実現をする覚悟でございます。
  98. 森八三一

    ○森八三一君 その点、私はよく了解いたしましたし、ぜひとも政府の御趣旨が、六月二十日に法措置要綱というものを決定になった、その趣旨考えますれば、そうすればこれはまあ三十六年産で全部適用するという精神でそういう決議が行なわれたという理解をすべきだと思いますので、今方針としてお話ございましたように、三十六年産に全部新しく出ます措置が適用されるように御配慮願いたい。  第二点は、その場合に具体的な新措置要綱に基づきまする基準価格と申しますか、指定価格ですか、表現はどういう字句が使われるかわかりません。わかりませんが、まあ常識で申しますれば一種の基準の価格だと思います。その基準の価格が具体的に問題になる。そこで今最初の長官のお話では大蔵財務当局が現在農安法が生きておるのだから形の上で、形式的に生きておる。だから農安法の運用の際に、かねて約束されておる算出基準というものがありますので、それではじき出した金額を新しく別の措置要綱に当てはめようというような気持が大蔵当局にあるやに伺いますが、これは非常に私としてはふに落ちないことなんです。というのは、最初に申し上げましたように、貿易自由化が行なわれません場合と行なわれる場合とは違うのです。そこで福田農林大臣あるいはその前の農林大臣からですか、貿易自由化というのがしばしば問題になりまして、あらゆる角度からそのことがきわめられた。その際に歴代大臣が口をそろえて申しましたことは、重要な農産物については、貿易の自由化の結果が国内生産にしわ寄せを及ぼしませんということをほんとうに明確に言い切っていらっしゃるのですね。といたしますると、今回新しい措置要綱によって取り結ばれるでありましょう基準価格というものは、農安法のときの算式によってはじかれるべきものではなくて、新しい角度において算出が行なわれなければならぬ、こう思うのです。でありませんと、これは首尾一貫しないのですね、理屈が。ですから、そういう趣旨をくみ取っていただきますると、七月一日でありましたか、六月三十日でありましたか、当委員会全会一致の議決をいたしました、これに対する要望、その要望には、原案には相当詳しい三つの基準まで実は書いた。しかし、そこで政府の方にワクをはめるのは立法府の少し行き過ぎであろう。ある程度行政府の裁量を考えなければならぬということで、少し抽象的な文字にだんだん変わっております、議決の文は。がしかし、その趣旨はそういう趣旨ではなかったはずでありますので、そういう趣旨を取り入れた、当時は安田長官でないときですから、今ここで安田長官に文句を言っても始まりませんけれども、これを前長官から当然その当時の決議に至るいきさつというものはお聞き及びと思います。御報告があったろうと思いますので、その趣旨を取り入れての基準価格決定が行なわれませんと、これはずっと一貫して述べられておる貿易自由化に伴う行政上の価格措置というものが、何といいますか、食言とまでは申しませんけれども、食い違ってしまう。こうなってくると思いますが、その点はどうでしょうか。そういう趣旨において大蔵財務当局にのみ込ませるのだという御決意が安田長官にはあると思いますが、大臣もおそらくそういうお答えをしていいということは、そこまでの決意があってのお指図であったと私は了解いたしますが、そういうように納得いたしましてよろしゅうございましょうか。
  99. 安田善一郎

    説明員安田善一郎君) くどく申し上げます必要もございません。前大臣その他の大臣の当時からのことと現在の河野農林大臣に至ります間にわたりました森先生の御意見はその通りにいたします。また、私は長官として、前任は事務当局でございまして、非力であるかもしれませんが、極力努力いたしまして、横においでになります中野政務次官の御尽力も願い、必要な場合は河野農林大臣みずからが骨を折られるべきものと、また、そう私どももしていただくことを申し添えまして、そういうふうにいたします。
  100. 森八三一

    ○森八三一君 長官の非常に力強い御回答をちょうだいいたしまして、私もこれ以上質疑をいたすことはございません。どうか一つ至急今明日に新措置要綱というものが広く農民諸君にも示されまするように取り運んでいただきたい。その措置要綱は当然三十六年産に及ぶ措置要綱決定後の適用ではなくて、その前にさかのぼって三十六年産には及ぼすということを覚悟していただきたい。そして、その中に盛り込まれます一番大切な基準価格決定につきましては、貿易自由化の関連においてはずっと今まで一貫して変わりなく述べられている趣旨が具体的な数字の上に現われて参ますこと、そのことは農安法の算式、方式ではなくて、現実に即する計算がなさるべきである。私はここにそういう趣旨で申しますると、私なりに計算した数字はございますけれども、これは申し上げませんが、長官の非常に力強い言明をいただいたので安心をしておりますので、どうぞ一つこれが夢になりませんように実現をしていただきますことを期待して質問を終わります。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 大体本件についての御意見は、今、森さんからいろいろ言われましたので尽きているようでありますが、前国会で私たちもいろいろ要請をした関係もありますので、簡単に一つ一、二点触れておきたいと思うのです。  この前の国会で七月一日に農林水産委員会としてはこの基準価格に関する決議をしているわけです。これはすでにごらん願っていると思います。この決議は生産者団体の意見を徴し、菜種の生産農家に不利を来たさない適正な基準価格決定すべきである。これに対して政府は尊重して善処されることをお約束されているはずです。  それからなお、大豆なたね交付金暫定措置法案、これが衆議院において、まあ、最終的には政防法のあおりで不成立になっているわけですが、衆議院におきまして各会派の一致の意見で原案が修正されまして、その修正された中に、これもすでに御存じだと思いますが、基準価格を定める際には政令で定める農業団体に諮ってその意見を尊重してしなければならない、これは非常に強い表現を用いた修正案がまとまっているわけでございますね。普通ならば関係の団体の意見を聞く、その程度だと思うのです。それを特にその意見を尊重するといったような言葉まで入れているのは、やはり自由化に伴ってあおりを農民に与えてはいけない。やはりこの精神から出ておるわけですから、ぜひ一つこの考え方をしっかりふまえた上でこの大蔵省との話し合いをしてもらいたい。大蔵大臣がもしあまりわからないことを言うようだったら、私は決定が一日、二日延びてもいいと思うのです。中身が非常に大事だと思うのです。ともかく農産物の自由化の先端を切った問題なんですから、多少そこで変な筋の通らないことをやられますと、やはりこれは前例になりますから十分一つこれは押してもらいたい。幸い押しの強い農林大臣ができましたのでわれわれも安心しておるわけだが、そこで一つその関係はぜひ当時のことをもう少し思い出してもらって、そういう条文があるのですから、それはやはり大蔵大臣に示せばいきさつはやはりだんだん具体的に思い出してもらえると思う。そこで、農林省の方でいろいろ案を考えておられるでしょうが、ここでお示し願えるかどうかわかりませんが、はたして生産者団体の意見を正式に徴しておられるのかどうか、その徴し方もいろいろあるでしょうが、やはりこれは非公式に耳打ちしてみるといったような程度のことじゃなしに、きちっとやはり意見を聞き、それを尊重していくといったような立場で数字を検討されておるのか、そこら辺のところを差しつかえなければちょっと実情を知りたいわけです。
  102. 安田善一郎

    説明員安田善一郎君) 亀田先生の森先生の後に続いた御意見と御質問に対しましては、全般的に森先生にお答え申し上げましたことで尽きると思いますが、交付金暫定措置法の衆議院農林委員会修正案が委員会は通って本会議は通らなかった。そのときの関係先生の与野党のお話し合いなどのときに私畜産局長で、畜産の関係の法案のことを同じ部屋でやっておりまして、多少耳にも入っておるわけです。それが実情であります。また字で書いたものもあるわけです。その趣旨を極力尊重いたしまして、貿易の自由化というようなことは国際関係的なことで、農安法というのは、その中に国際的なことも当然考えて、成立して施行されておりましょうけれども、国内法である農安法制定、あるいは予算制定の時期というものは、貿易自由化の程度の勢いというのも違う。いろんな社会経済、国際関係条件のことが違う点もありますが、これに対応する農業保護政策、こういうものはそれに応じてあるというわけで、保護の度をかえって強くするような時期かもしれません。まあ、こまかくちょっと申し上げかねる点がございますが、十分に御趣旨の意を体しまして善処をするように、また上局の方に向かいまして、私どもといたしまして間違いがないように努めたいと思います。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 少し漏れ聞く情報によりますと、現在案が三つくらいあるようであるというふうなことをまあ聞くわけですけれども、今までの経過からいきますと、やはりわれわれが漏れ聞く農林省案というものでは、前回の国会で扱われた趣旨に沿わんのではないかという感じがしているのです。そこら辺はどうですか。
  104. 安田善一郎

    説明員安田善一郎君) お答えは先ほどの通りでありますが、そのお答え申しました範囲内におきましての限りのことでございますけれども、政府は、決定する価格農業団体の意見を尊重してきめても、尊重はもちろんいたし、意見を聞くことは聞く。きめるのはしかし政府である。そういうわけでございます。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、大蔵省の案よりも農業団体の意見に重きを置くことは事実ですね、農林省としては。
  106. 安田善一郎

    説明員安田善一郎君) 大蔵省の案が、交付金の予算ですね、その算出基礎くらいの方が需給事情を勘案してきめた場合にいいじゃないかということを、そればかり言っているわけではありませんが、中心に申しておりますから、それを前提といたしますれば、先生の意見と私は、またただいまやっておりますことは差はございません。額が一円違うか、十円違うか、それはちょっとただいま申し上げかねる次第であります。
  107. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 他に御発言もなければ、本件については、この程度にいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後三時五十六分散会