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1961-05-30 第38回国会 参議院 内閣委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月三十日(火曜日)    午前十一時二分開会    ――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     吉江 勝保君    理 事            小幡 治和君            村山 道雄君            伊藤 顕道君            山本伊三郎君    委 員            石原幹市郎君            上原 正吉君            大谷藤之助君            木村篤太郎君            塩見 俊二君            下村  定君            中野 文門君            一松 定吉君            鶴園 哲夫君            松本治一郎君            大和 与一君            横川 正市君            田畑 金光君   委員外議員            松村 秀逸君   国務大臣    法 務 大 臣 植木庚子郎君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    国 務 大 臣 西村 直己君   政府委員    総理府総務長官 藤枝 泉介君    総理府恩給局長 八巻淳之輔君    防衛庁長官官房    長       加藤 陽三君    防衛庁防衛局長 海原  治君    防衛庁教育局長 小幡 久男君    防衛庁人事局長 小野  裕君    防衛庁経理局長 木村 秀弘君    防衛庁装備局長 塚本 敏夫君    調達庁長官   丸山  佶君    法務大臣官房司    法法制調査部長 津田  実君    大蔵省主計局給    与課長     船後 正道君    建設大臣官房長 鬼丸 勝之君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    法務省矯正局教    育課長     樋口 忠吉君    法務省入国管理    局次長     臼田彦太郎君    ――――――――――   本日の会議に付した案件 ○法務省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○建設省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○防衛庁設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○自衛隊法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○恩給法等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○昭和二十三年六月三十日以前に給付  事由の生じた国家公務員共済組合法  等の規定による年金の額の改定に関  する法律等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国家公務員共済組合法等の一部を改  正する法律案内閣提出、衆議院送  付)    ――――――――――
  2. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) これより内閣委員会を開会いたします。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  政府側出席の方は、植木法務大臣津田法務省司法法制調査部長羽山司法法制課長福井矯正局参事官天野法務総合研究所次長臼田入国管理局次長中田恩赦課長方々でございます。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案に関連して二、三お伺いしたいと思いますが、基本的な問題については大臣に伺って、また、数字等の問題については、他の政府委員からお答えいただきたいと思います。  まずお伺いいたしたいのは、法務省は、今回設けようとしておる犯罪防止に関する研修所は、五カ年たてば、もう一切これは廃止してしまうのか、五カ年の先はどのように考えておられるのか、この点をまず確認しておきたいと思います。
  4. 津田実

    政府委員津田実君) この協定は、一応第五年度の末日まで効力を有するということになっておるわけでございまして、一九六五年の末まで効力はあるわけでございます。しかしながら、この協定の第六条の第二項に、「機構又は政府は、おそくともこの協定効力を失う一年前に、その有効期間延長を提案することができる。」こういうことになっております。従いまして、国連との話し合いによりまして、この協定効力延長せしめることは当然できるわけでございますが、それはいかなる場合にそのようになるかということは、あらかじめ予想はできませんけれども、大体は、この条約に基づく研修所成果が上がりまして、さらにこの地域諸国が引き続き存続を希望する、そういうような場合には当然延長になるものというふうに考えておりますが、この協定自身延長にならなくても、その以後、日本政府においてこの研修所を維持して、関係地域研修者を研修するということも考えられるわけであります。
  5. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 申し上げるまでもなく、近年日本青少年犯罪が逐年増加一途をたどっておるわけです。特に憂慮にたえないのは、年少少年の間にいろいろ悪質な犯罪が特に増加一途をたどっておる、こういう事態はまことに憂慮にたえないと思うのです。そこで、御参考までにお聞きしたいのですが、三十三年度から三十五年度、この三カ年における犯罪件数とか、その他それに関係のある概数でけっこうですが、こういうものをまず伺っておきたいと思うのです。  それと、このような日本犯罪傾向は、だんだん増加一途をたどっておる。これは世界の先進国などに比較してどのような関係にあるのか、その他先進国とのいわゆる程度の問題について、ついでにお聞きをしたいと思うのであります。  さらに、またこういうふうな犯罪が逐年増加一途をたどっているということは、何かこれには原因があるのじゃなかろうかと思うのであります。いろいろ法務省でも検討されていると思いますが、いろいろ多角的な関係をもって犯罪がふえているということは間違いのない事実だと思うのであります。一体どのような理由に基づいて犯罪がこのように増加しているか、そのおもなものについて法務省が把握されている点について、概要を一つ承りたいと思う。以上お伺いいたします。
  6. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 数字のことは係の方からまた御説明申し上げますが、大体の大勢といたしましては、戦後の混乱期におきましては、言うまでもなく、犯罪は相当多かったのでございます。しかしながら、それがやや混乱期を脱する昭和二十四年、五年あたりから、一般の犯罪は若干増加趨勢がとまりまして、むしろ若干減少の傾向にありました。ところが、青少年犯罪については、それがまた趣きを異にいたしまして、そのじぶんから、また、ますます青少年犯罪がふえる傾向になりまして、三十年ごろだんだんとますますふえる傾向になり、三十二年、三十三年、三十四年と、三十四年のごときは、いまだかつてない多数の青少年犯罪が事件になってしまいまして、それが三十五年には、さらにまたその三十四年を上回るような趨勢になりまして、こうした青少年犯罪増加、しかも、今も御指摘になりました年令低下傾向がはっきりとうかがわれるのでございまして、非常にこの点遺憾にたえません。われわれといたしましても、部内におきまして、青少年犯罪のために、特にその係の検事会同等も催しまして、そうしてこれが対策について、鋭意研究をいたしております。予算の上でも若干の増額でございますが、こうした犯罪少年調査表を、従来は部分的に研究資料として調査をいたしておりましたが、今回は全国的にこの調査を広めまして、そうしてその原因のよって来たるところの研究資料にしようというので、その対策も立てております。そうしてその実行に移る段階に入っている次第でございます。  犯罪原因については、これは申すまでもなく、青少年犯罪は、ことに社会環境から影響を受ける場合が非常に多い。また、家庭の実情、家庭環境から、少年犯罪を犯す方面に進んでいく傾向も多分に多いのでありまして、こうした問題は、単に取り締まり当局の手だけではなしに、家庭の者はもちろんのこと、社会全体として、なるべくこうした犯罪を誘発するようなおそれのある傾向をなるたけ少なくするような協力を、各方面とも一致してやっていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 津田実

    政府委員津田実君) 少年犯罪につきまして、数字を簡単に申し上げますと、刑法犯につきましては、大体昭和二十二年が、検挙されました者、これは十四才から二十才まででありますが、九万二千五百五十一、昭和三十四年におきましては、十三万九千六百十八、終戦後の通常の年と考えられます昭和二十六年は、やはり十三万三千六百五十六ということでございまして、昭和二十六年ないし二十八年の平均指数を一〇〇といたしますると、大体昭和三十四年が一二一、三十三年が一〇八、それからそれより前の三十二年は九九、三十一年は八七、三十年は八四ということになっておりまして、要しまするに、昭和二十五、六年が一つの山であり、その後三十三年、三十四年と、その山を若干こえた数字になっているというような状況でございます。今後の推移は、必ずしもはっきりいたしませんわけです。  なお、外国との比較でございますが、ちょっと今手元に資料がございませんので、この点はここで御説明申し上げかねます。いずれ調査いたしまして、また資料として差し出したいと思います。
  8. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 外国との比較ですが、数をもって正確ということでなくして、それは後日また出していただくとして、大体傾向として、特に日本に多いのか、ほとんどあまり相違がないとか、そういう程度のお考えでけっこうです。なかなか今直ちにはちょっと出しにくいと思いますから、あとでけっこうです。  なお、お伺いいたしますが、いろいろな原因等については、今大臣指摘されたような点だと思うのですが、そういう理由に基づいて、法務省としてはいろいろな対策を講じておられると思うのです。大小取りまぜていろいろお考えがあろうと思いますが、一体どういう点に重点を置かれて対策を講じておられるのか、特に重点的に二、三お聞かせいただきたいと思う。
  9. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 先ほどもお答え申し上げたように、われわれ法務当局といたしましては、犯罪が起こってしまって、そうして警察当局から送致を受けた場合に、これに関与する場合が多いのでございます。ほとんど全部がそういう機会が多いのでございます。従って、われわれといたしましては、先ほど申しました非行青少年についての調査充実する、そうしてその原因探求に努めるということを一番重点考えております。全国各地検、高検とも通じまして、特別に少年係検事をなるべく増加いたしまして、そうしてその方面は、従来わが国刑事政策の上におきましても、必ずしも十分な調査ができておりませんので、それで、こういうまず原因探求ということが必要であるということから、そういう調査の方に最も力を入れる、こういうことで考えておるのであります。われわれが今当面の問題として、本年度特に力を尽くそうと考えておりますのは、この調査充実及び全国的な指向という点が一番大きな重点を置いておる問題でございます。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 少年少女施設として、少年院とか少女院があるわけですが、かつて私も少年院を視察したことがありましたが、どうもお見受けするところ、これはもちろん基本的には経費関係もあろうかと思うのですが、どうも明るい感じには受け取れなかったのですが、施設なども不十分だし、ああいう環境では、なかなか予期成果を期したがい、こういうような感じを受けたわけです。たとえば善導のために必要な図書等についても、質また量についても、きわめて貧弱であって、どうもこういうようなことでは成果を期しがたいのではないか。もちろん、これは基本的にはいわゆる経費関係出発点だろうと思うので、先ほど大臣指摘になったように、年少少年少女については、特に犯罪件数も逐次増加一途をたどっておる、こういうときに、やはり相当の経費をかけなければ予期成果は期しがたい、そういうふうに思うわけです。  そこで、お伺いいたしますが、現在ただいまで、こういう施設における一人当たり経費として、大体どのくらいが考えられておるのか、現在どのくらいなのかというようなこと、こういうことを御参考までに承っておきたいと思います。
  11. 樋口忠吉

    説明員樋口忠吉君) 私から便宜御説明申し上げたいと思います。  ただいま一人当たり少年院についての経費についてお尋ねでございます。一人当たりにいたしますると、これは昭和三十四年の計算でございますけれども、年間一人当り少年院では十三万四千六百十七円ということになっております。少年鑑別所では二十六万六千四百十五円ということになっております。三十五年度及び今年度は、若干ずつ単価の増等がございますので、これよりやや上回っておるのではなかろうかというふうに考えております。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、それに関連して、全国施設の全予算額は一体どのくらい考えておられるのか、それから、全国施設収容少年少女、これは性別に大体現在どのくらい収容されておるのか、こういうこともついでにお聞きしたいと思います。それと、男女別の比率は一体どの程度になっておるか、こういうことをあわせてお答えいただきたいと思います。
  13. 樋口忠吉

    説明員樋口忠吉君) 少年院経費でございますが、少年院経費は、昭和三十六年度予算額を申し上げますると、これは行政費収容費、それから営繕費工事費でございまするが、これを含めまして十八億四千七百三十万円ほどになっております。これは前年度比較いたしますると、約二億円ほど増になっております。  それから収容状況でございますが、これは四月末現在で申し上げますると、男女合わせまして九千六百一人という数字になっております。女子はそのうち九百四十五人でございますから、ざっと一〇%程度女子であるというふうになっております。  それから定員に対する収容状況でございますが、大体四月末を基準にいたしますると九六%、大体現在のところではとんとんということになっておりますが、ただ地区によりまして、ある地区では相当の収容過剰である、また、ある地区では若干定員を下回っておるというふうな事情はございますけれども、全国的に見ますると、大体とんとんくらいの見当になっております。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 施設に入れて矯正する期間があるわけですが、これはもちろん無制限ではなくて、制約があるわけですね。まだ十分成果が上がらないでも、一応規定があって、期間が過ぎると出さざるを得ないのか、そういうことについて明確にしていただきたい。
  15. 樋口忠吉

    説明員樋口忠吉君) 少年院は、御承知のように、家庭裁判所保護処分決定によって収容するのでございますが、収容いたします者は十四才以上二十才までとされております。従いまして、二十才までは収容できるというふうになっております。それから二十才になりますれば、一応原則的には退院せしめるのでございますけれども、状況によって、さらに教育の必要があるという場合には、家庭裁判所決定をもって、さらに若干期間延長する措置も講じ得ることになっております。従来の実績を申し上げますと、特別少年院初等少年院中等少年院、こういうふうに種類がございますけれども、その種類によって若干違います。特別少年院が一番現在のところでは長くて、約十五カ月から十六カ月くらいになっています。ですから一年と、三、四カ月という見当に相なっております。初等中等全部平均いたしますると、大体十四カ月ぐらいの見当になります。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 こういう施設にひとたび入った少年少女については、なかなか出ても就職しがたい、こういうふうに様子を聞いておるわけですが、これはそのままにしては大へんなことになるので、やはりこういう施設少年少女就職について十分善導し、就職あっせん、世話をする機関が当然必要と考えられるわけです。そういう機関が現在あるのかないのか。そうして、もしないとすれば、これは当然早急に考慮すべき問題だと思うのですが、そういう問題について一つ全貌を承りたい。
  17. 樋口忠吉

    説明員樋口忠吉君) われわれの仕事の総締めくくりと申しまして、一番大事な点でございまして、われわれも非常にその点は気を使っておる点の一つでございます。少年院収容いたしまして、成績がよくなりますと、更生保護委員会の方に申請いたしまして、それで仮退院の許可を得るわけでございますが、その前に、在院中からそれぞれの関係保護観察所とよく連絡いたしまして、その少年環境矯正をいたしまして、引き取り先の状態とか、それから就職決定とか、就職先の開拓とか、そういうことを保護観察所の方のごめんどうで、保護司その他の民間方々の御協力も得て一応準備をいたしまして、これならば出してよかろうということになりますると、委員会の方の決定で、仮退院という扱いをいたしまして、そうして出しております。その点は非常に民間保護司方々の御協力を得てようやくやっておる、ある程度やれるというふうになっております。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この少年少女犯罪等については、問題は実に多く山積しておるわけで、十分さらにお伺いしたいと思うのですが、時間の制約もございますから、問題を進展させて、今回東京入国管理事務所羽田出張所ですか、それを事務所に昇格させるという問題があろうと思うのですが、この問題に関連して二、三お伺いしたいと思いますが、現在の出張所をそのままにして、内容を整備充実することでは間に合わないのか、どうしても昇格させる必要があるのか、こういう点についてまずお伺いしたいと思います。
  19. 臼田彦太郎

    説明員臼田彦太郎君) お答え申し上げます。現在羽田出張所は、東京入国管理事務所の管下になっております。御承知通り羽田空港には、逐年出入いたしまする者が多くなって参りまして、非常に数が多くなるばかりでなくて、それに伴いましていろいろなケースが起こって参るわけでございます。事を直ちに即決しなければならない事態が間々起こるのでございますが、現在のところは東京事務所傘下でございまして、私たち本局におります者は、東京事務所を通じて指揮するというような形になっております。しかし、空港における事態というものに対しましては、できるだけ直接に処理しなければならないことも多いわけでございまして、外務省その他関係機関と本省が協議いたす点も多々あるわけでございます。そういうわけで、直接の傘下に入れて、そして空港における出入国事務を一そう円滑にいたしたいということを考えておる次第であります。なお、また従来ここにおりました定員も、出入国者増加に伴いまして、本三十六年度には七十三名の人員になったわけでございまして、そうした大勢職員管理いたします場合の事務所としての態容を整えて、適正な人事管理もいたしたいと思っております。なお、また御承知通り羽田空港は、外国の元首、また国賓の方々が非常にこのごろ多く出入されるわけでありまして、そうした場合の取り扱い等考えまして、単なる出張所でなくて、事務所として、責任のある態勢のもとに出入国管理をやっていきたいというところから今回昇格を御審議願っておる次第でございます。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、お伺いしますが、羽田空港から出入国した人員は、三十三年度から五年度まで、年度別にどのように上昇してきたか、もし概数がわかっておれば承りたい。概数でよいです。
  21. 臼田彦太郎

    説明員臼田彦太郎君) お答え申し上げます。三十三年度出入国者の合計は二十三万五千三百五十名でございまして、三十四年度には二十七万三千六百十六名となっております。さらに三十五年になりますと三十四万一千四百五十五名、このように毎年増加して参っておるわけでございます。なお、これらのうち外国人の数を申し上げますと、三十三年度には二十三万のうち、十七万二千百八十七名でございまして、三十四年二十七万のうち、十九万五千百八十二名でございます。三十五年の三十四万のうち、二十三万四千八百六十三名が外国人でございまして、このように外国人の数も全体の数に比例しまして、逐年増加しておるわけでございます。なお、三十五年の入国いたしました外国人の数は、その同期に全国わが国に入国いたしました外国人の総数の約七八%というものが東京国際空港より入国しておる次第であります。今後ジェット機その他の乗り入れがさらに増加するわけでございますので、この空港重要性というものがますます重要になると私どもは考えておる次第であります。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この出張所事務所に昇格させることについて、他から十二名配置がえが行なわれるということでありますが、これは一体どこから配置がえになるのか、そして減員された方の運営については何ら支障はないのか、そういう問題についてお伺いします。
  23. 臼田彦太郎

    説明員臼田彦太郎君) 羽田の十二名の増員につきましては、これは主として大村収容所におりました定員が、御承知通り大村収容所収容者が減じましたので、三十六年度予算で、それに伴いまして大村定員が削減されました。それらのうちから主として羽田の方に転任をさせまして増強いたしておる次第であります。もっとも、大村収容所警備官その他が、直ちに羽田において入管の仕事をいたしますのに適していないものもございますので、東京横浜等の周辺からも増強いたしておる次第でございます。
  24. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 羽田空港出張所事務所にするという点で若干お伺いをいたしたいわけでありますが、どうもこの入国管理事務所、特に羽田におきましては、大蔵省税関と比べまして、歴史的にも新しい点もあると思いますけれども、種々非常に見劣りがするのじゃないだろうかというふうに拝見をいたしておるわけであります。たとえば庁舎にしましても、相当窮屈になってきておるのじゃないだろうかというふうに思います。それは逐年人員がふえておりますが、非常なふえ方をしておるわけですけれども、庁舎はその割にふえないという傾向があるようでありますし、制服等においても、税関とどうかという懸念がしますし、それから勤務の諸条件についても、相当見劣りがするのじゃないかと、こう思っておりますが、どういうふうに見ておりますか、伺っておきたいと思います。
  25. 臼田彦太郎

    説明員臼田彦太郎君) ただいま御指摘の点でございますが、私たち、ここの出入国者が非常に多くなりましたので、それに伴いまして人員の強化を逐次はかって現在に至っておるわけでございます。幸い本年度におきまして十二名の増員がありましたので、一応七十三名の人員で本年度はできるだけの仕事をいたしたいと、こう念願しておる次第であります。ただ、あそこの場所につきましては、御承知通り空港ビルそのものが非常に狭隘でございまして、そのために、さしあたり事務所の設備その他に非常に不便になって参っております。しかし、一面、この空港のターミナル・ビルも、だんだんと建設される計画が出て参っておりますので、私たちといたしますれば、現在の施設で不自由でありますが、その施設の内でできるだけ事務の円滑を期したいと考えております。なお、服装その他でございますが、これも本年度予算におきまして、若干の、何と申しますか、改善を期したいと存じておりますし、なお、将来におきましても、日本の表玄関でありまする羽田職員につきましては、他と比べまして見劣りのしない服装を整えるように、予算等において要求いたしたいと存じております。そうした意味で御協力をお願いする次第であります。
  26. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 昨年十五名ふえて、ことしまた十二名ふえる、非常な充実をはかっていらっしゃるわけですけれども、事務所はなかなか手狭になっておると思いますので、ぜひそういう面の整備の問題も心がけていただきたいというように思っております。また、さらに今後ふえていくだろうと思いますがね。  それから超過勤務手当が、税関と比べますと、相当見劣りがするのじゃなかろうか、税関の場合は五十時間だというふうに思っておりますが、入国管理事務をとっておる方々はその半分にもはるかに及ばない、五分の一くらいのものじゃないかというふうに思っておりますけれども、なかなか大へんな仕事でありまして、さらにまたジェット機がだいぶ乗り込んでくるようになると、短時間の間に済ませなければならないというような、非常に多忙な仕事になっておるようでありますが、税関と比べまして、かりに超過勤務の問題をとりましても、相当な開きがあるように思っておりますが、そういう点はいかがでございますか。
  27. 臼田彦太郎

    説明員臼田彦太郎君) 御指摘通り、私たち出張所の方は非常に新しい官庁でありますので、毎年予算要求等に努力をいたしておるのでありますが、やはり前年の実績というものが考慮されまして、なかなかその伸びがないようでございますが、私たちできるだけ努力いたしまして、御指摘の点について、税関との間の不均衡がなくなるように努力いたしたいと思います。
  28. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、アジア及び極東研修所、これにつきまして若干お伺いいたしますが、それは伊藤さんのとあるいはダブるかもしれぬと気にしておるのですが、これは研修所を、言うならばアジアの奥座敷にある日本に置くわけですが、これはパキスタンとの問題は、前から日本の方も置きたいというふうに考えており、あるいはパキスタンも置きたいというふうに考えておられたのか、そこら辺のことをちょっとお伺いしたいと思います。
  29. 津田実

    政府委員津田実君) 一九五四年にラングーンで開催されました犯罪防止及び犯罪者の処遇に関する第一回国連アジア・極東地域セミナーというのがございました。そこでこれをアジア・極東地域に設置するという決議が採択されたわけです。で、その後第二回のこのセミナーが一九五七年に東京で開催されましたわけでございますが、そのときまでの間に国連側とパキスタン側といろいろ交渉があった模様のようでありまして、パキスタンのラホールにこれを設置するということに内定したということが報告されたわけでございます。で、その間の事情は若干は承知いたしておりますが、パキスタンの方で最初にこの研修所を設けたいという希望を申し入れて国連側の方と交渉して、パキスタンの方に置くということに内定する経過に至りますまでの間のことは、多少は日本側も承知しておったわけでありますけれども、せっかくパキスタンにおいてさような申し出をしておるわけでありますから、日本側として、別段何らの働きかけもいたさなかった。その後、パキスタンの国内事情によりまして、この招請を撤回するということになった趣きは、これは直接国連側から日本側が承知したわけでございます。それで、国連側から非公式に、日本側で設置をしないかという申し入れがありましたので、これに応じまして研究をいたしました結果、昨年の五月に、閣議におきまして、いよいよ国連側に設置をすることを希望するという申し出を正式にする、こういうことになったわけでございます。従いまして、日本側とパキスタン側と競争したというような事実は全然ございません。
  30. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 このアジアにおきまする犯罪防止、あるいは犯罪者の処遇、こういう問題につきまして、研修所をアジアの奥座敷にある日本に置くということについては、これはやはり種々考えなければならぬ点があるのじゃないだろうかと思うわけでございます。むしろ、やはり東南アジアの方に置いた方が適当じゃないか、これはまあ犯罪なり、そういう問題については、どうしてもやはり環境の問題が左右するわけでしょうからして、日本とパキスタンなりインド、そういうところと比べました場合に、これはむしろやはり東南アジアの方にあった方が、目的としては非常に相応しておるのじゃないかと思うのでありますけれども、そこら辺のことはどういうふうに考えておられるのか。まあ日本の方はむしろ先進国みたいな形で、イタリアなりフランスなりドイツというところと若干類似してきているというふうに思うわけですが、アジア・極東の研修所だということで日本に持ってこられた理由でございますね、趣旨からいえば、東南アジアの方が都合がいいんじゃないだろうかというふうに思うわけです。そこら辺のことについて伺っておきたい。
  31. 津田実

    政府委員津田実君) ただいま、確かにお尋ねのような問題点はあると思うのであります。地理的に申しましても、確かに日本はアジア・極東地域から申しますれば、やはり端になるわけであります。その意味におきましては、パキスタンもややそれに近いとも言えるのでございますが、そのほか犯罪事情等につきまして、あるいはこの犯罪防止犯罪者の処遇等について、日本が非常に欧米に近い、いわばアジア・極東地域については、先進国であるということは、確かに御指摘通りでありまして、もっとそのような先進的な国でないところに研修所を置くということも、考え方としては一つ考え方であると思われるのであります。しかしながら、いろいろこの間に犯罪防止会議等におきます意見等を聞いて参りますと、やはり研修生を大勢集めまして、実地についても研修をするわけでございます。そういたしますと、やはり相当の施設と申しますか、研修についての実地訓練をする施設等がなければならないわけでございます。そういう点につきましては、やはり日本によって実地訓練をして、なるべく日本の水準にまで各地の施設を引き上げるというような意味が大いにあるということが考えられますのと、もう一つは、やはり何と申しましても、文化的あるいは学問的に先進しておるわけでございますので、講師その他の点につきましても、相当便宜があるというような点もいろいろ考えられまして国連側が日本側に招請を勧奨してきたものと考えられまして、私ども意見を交換いたしましても、若干そういう点が出て参ったわけでございます。そういう意味におきまして、やはり日本が引き受けるのが相当であるということを考えられた次第でございます。
  32. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 法務総合研究所の中にできるわけでございますね、ということになりますね、法務総合研究所にこういう研修及び調査を行なわせるというのですか。この法務総合研究所というのは、年間の予算はどの程度ございますか。
  33. 津田実

    政府委員津田実君) これはただいまの点でございますが、法務総合研究所は、日本側がこの研修所の世話をする部局になるわけでございます。で、この研修所は、この協定にございまするように、国連と日本政府と両方で設立するわけでございまして、いわば国連と日本政府の共同事業体という格好になるわけでございます。そこで、今度この当法律案におきまして御審議をいただいております点は、日本側が国連と協力いたしまして研修所の運営をいたし、その中において国連と協力いたしまして研修、研究調査をするわけでございますが、その研修、研究調査を国連と協力してする事務は、すなわち日本国の事務でございまして、その事務日本国内のどこがつかさどるかという点につきまして、その事務法務省がつかさどるということに法務省設置法を改正いたしたいということになるわけでございます。従いまして、法務総合研究所は、さらに法務省の中にありましてこの事務を担当する部局ということになるわけでございます。法務省の中、あるいは総合研究所の中に設置するという意味ではないのでございます。  なお、年間の予算でございますが、この関係昭和三十六年度予算は、約九千万円というものが今年度予算に計上してあります。
  34. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは予算は本年度で終わりでございますか。明年もやはりこの施設費その他の経費が要るわけでございますか。
  35. 津田実

    政府委員津田実君) 本年度は初度設備、ことにこの研修所の建物を建設する費用が入っております。で、経常的には約二千万円程度になると思いますので、来年度以降は約二千万円程度経費が計上されることになろうと思われます。
  36. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 国連から所長、顧問、専門家三名見える予定だというふうにありますが、この方々と、それから日本側のこの十九名、これは身分は違うわけでございますね。日本の方は日本側の身分になるわけでございますね。
  37. 津田実

    政府委員津田実君) その通りでございます。
  38. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 アジアから研修生が四十名ほどことしは見えるというふうにありますが、アジアの諸国からの専門家、顧問という方々は見えるわけですか。
  39. 津田実

    政府委員津田実君) 本年度におきましては、アジア諸国からも、国連の奨学資金によって参ります者が五人ないし十人でございまして、その他各国政府から派遣される者が約二十人、合計三十人、それから、日本側からこの研修所に研修を行わしめる者が十人、それで合計四十人という考え方でございます。で、なお、この研修所の国連側職員として、所長、それから高級顧問及び専門家、これらはアジア地域から選び出されるか、あるいはその他の地域から選び出されるか、この点はいまだ確定いたしておりませんが、いずれにいたしましても、最適任者を国連側と協議いたしまして、そして国連側が任命する、すなわち、国連側と日本政府と協議いたしまして、そして国連が任命する、こういうことになっております。
  40. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 終わります。
  41. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 本案に直接関係ないのですが、法務大臣にちょっと聞いておきたいのです。最近よく脱獄といいますか、脱走する事件が起こるのですが、これはいわゆる拘置所なりそういう刑務所の設備に欠陥があるのか、また、いわゆる監視に手落ちがあるのか、この点ちょっと緊急な質問で聞いておきたい。
  42. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 最近、刑務所における脱獄についての原因探求の問題でございますが、これにつきましては、まことに遺憾な事態でございまして、そのつど省内におき、かつまた担当矯正管区におきまして、十二分にその原因についての調査をいたしております。必ずしもその原因は斉一ではないのであります。時には設備施設等が不十分なためにそういう問題が起こる場合もございますし、あるいは時には監視する上においての若干の手落ちということも、絶無とは言えないのであります。そのつどその原因探求に努めまして、信賞必罰を明らかにし、また、施設充実について努力をいたしております。施設そのものも、最近新しい施設では、容易にそうした事態が起きないような完全なものにだんだん直ってきておりますが、何しろまだ全国的に見ますというと、非常に古い施設がたくさんございます。こういう施設については、やはりなお今後とも財政当局と緊密な連絡をとりまして、そうして近代的な充実した、完備した刑務所の方にだんだん施設を直していこうという努力をいたしておる次第でございます。
  43. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体新聞の報ずるところだけ見ておるのですが、やはり施設の老朽化した不備という点が重要な主たる原因でなかろうかと思うのです。非常に一般住民に与えるいわゆる不安感と申しますか、社会不安をつのる一つの大きな原因でございますから、当委員会は、別に法務行政の実態について審議する委員会ではございませんが、特に大臣に、そういう恒久的な計画性を持った対策一つ講じてもらいたいと思うのです。もちろん予算に影響するところでありますが、今日のいわゆる刑務所にしても拘置所にしても、より近代的な、いわゆる人権を尊重してやられておるので、そういう点で費用はかさばると思いますが、その点十分一つ留意してもらいたい。この点について、もう一言。
  44. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) まことにありがたい御意見でございまして、われわれ当局といたしましても、本年度は従来の営繕費比較しまして、相当多額の増額をことしは実現をみました。しかし、まだわれわれ当局の希望とは、非常に相去ることが遠いのであります。これは今後もなお一そう努力いたしまして、御趣旨の点に沿って参りたい、かように考えております。
  45. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  46. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 速記つけて。  他に発言もなければ、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにお述ベを願います。――別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  法務省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  49. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。    ――――――――――
  51. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 次に、建設省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由の説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。なお、本案は、お手元に配付いたしましたように、衆議院において修正されております。  政府側出席の方は、中村建設大臣、鬼丸官房長、鶴海文書課長でございます。  御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  52. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 本法案に関連して二、三お伺いしたいと思いますが、まずお伺いしたいのは、緑地の管理とか監督並びに助成、こういうことについては、本法案による都市局でございますね、都市局に関連があろうと思います。そういう視野からこの問題について二、三お伺いしたいと思います。  いろいろ当たってみますと、特別都市計画法の第三条を見ますると、この緑地地域を設けることができることになっており、建設大臣がその地域を指定すると、こういう取りきめになっているわけです。特にこの緑地地域は、人口稠密で大都会、特に東京のような個所では、こういう緑地地域の必要が痛感されておろうと思う。これは保健衛生上からも必要でありましょうし、また、地震とか火災――天災、人災、こういうときの避難所という目的も持って、緑地地域の建設ということは、非常に大都市であればあるほど重要視されてこなければならない、そういうふうに考えられるわけです。ところが、最近この緑地地域の管理とか、あるいは監督助成、こういう点で、いろいろこういう面が非常に野放し状態になっているという地区が多いと思うのです。非常に憂うべき事態が見られるわけです。特に東京においては積極的な対策がほとんど講ぜられていない。もうやるにまかせているというような状況が見受けられるわけです。たとえば東京における緑地地帯には、住宅建築などの建設面積は、敷地の約一割、まあ一割地帯というような所があるわけですが、そういう地域にもかかわらず、たとえば建坪が敷地の五割、八割、こういうふうに、その規定を無視して建てられている面が相当ある。これは一割が一割五分とか、そういう程度でしたら、また問題は別ですが、五割、八割の建坪では、全然緑地地域の意味がなくなってしまうと思うのです。こういう問題が何によって起こっているかというと、いろいろ当たってみますと、やみ建築業者が、競ってその緑地地域に建築用の工場を設けて、そこへ動力を引いて、そういうような面で法律を無視してどんどん建設をやっている、こういう事態が見られるわけです。まあ大臣もなかなか御多忙で、そういうところまで目が届かぬと思いますが、そういうことを建設省としては察知しておられるのかどうか、まずこういう点からお伺いしたいと思います。
  53. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 建設省といたしましては、そういうような緑地の指定等の業務を担当しているわけでございますが、御指摘のように、東京初め、大都市近傍におきましては、せっかくこの指定がございましても、指定が守られていないという現実が相当にございます。従いまして、この状態を解決するために、現在ございます建設省の計画局、それから大都市、特に東京都等と連絡をいたしまして、これの処置について目下検討をいたしておる次第でございます。建設省の住宅局もこれに大いに関係がありますので、一緒になりまして検討いたしまして、何とかこの建築について指定基準が守られるように、今のところでは、どうも守ることが困難なような現状が、住宅難、宅地の必要等からもございますので、これを調整できるように、鋭意検討をいたしておる段階でございます。建築の方について十分の規制を今では行ないがたいような実情にありますから、十分に厳重に取り締まれるようにするためには、地区の指定等について考え直す必要があるということで、いろいろな角度から成案を今急いでおるような段階にあるわけでございます。
  54. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この緑地地域における、法を無視したやみ住宅の建設がここ二、三年来特にはなはだしい傾向を示しておるということ、こう言っている間にも、どんどんやみ住宅が建っておるわけですね。私もその現地に行って一度見たことがあるのですが、まことに言語道断なことが公々然として行なわれておる。これではせっかく緑地地域を設けて、あるいは都民の保健衛生上、あるいは天災、人災に対する避難所として、そういう親心から設けられたこの緑地地帯が、一部のいわゆる不当な業者によって次々にじゅうりんされてしまう、これはまことに憂うべき事態だと思うのですが、まことにその面の監督、監察、こういう面が不十分なために公々然として次々に行なわれる、これはまことに憂慮にたえないと思うのです。一部の業者は、それによって法律を無視して、許可なく工場を作り、あるいは製材所、あるいは動力線を無許可で引いて、そうしてあるいは製材をやる、あるいは鉄板に穴をあける工事をやるとか、近所の都民は非常に迷惑千万なんです。ところが、これが声なき声としてとどまっておって、なかなかこれが大きな問題にならぬわけです。というのは、結局先に立ってやるとにらまれてしまうから、どうも不満不平ではあるけれども、表面に立ってこの問題を問題としようとしない、こういう傾向が見受けられる。それをいいこととして業者は次々に不法なものを作って、無許可でそういう住宅をどんどん――しかも一割地域であるのに、五割、六割というような建坪の住宅を作って、それを直ちに登記して、まあ非常に早期な建築を進めておりますから、またたく間に住宅ができてしまう。これは実質を検討してみれば、われわれ専門家でないからわかりませんが、そうやって暴利をむさぼる営利のための建築だから、しさいに検討すれば、なかなか永久性のないものではなかろうかと一応も二応も考えられる。こういう不良住宅が次々に相建つということは、まことに忍びがたい問題だと思うわけです。従って、これはよほど抜本的な方法を講じない限り相次いでこういう不法不当な業者がますますもってのさばって参ると思うのですね。こういう点について大臣としてはよほど決意を持って当たられないと、これはなかなかこれを停止することはむずかしいと思うんですが、こういう点に関する大臣の御所見を一つ伺っておきたいと思います。
  55. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御指摘の問題については、大体二つの点があるわけでございます。一つは、当然にもう住宅地域になるべき区域で、なおかつ緑地地域のままに指定されておる所がありますので、一そうそういう所に不法建築が多いわけでございます。そこで今考えております考え方としましては、できるだけ区画整理をやらせるということが、今後の宅地として伸びていきます区域には必要でございますので、区画整理を慫慂し、かたがた区画整理をすることを条件として緑地を改善する、俗に選定地区といっておりますが、そういう方法をとって建蔽率を高めてあげるということが一つ。もう一つは、違法建築に対する取り締まりをやってはおりますが、違法建築をやろうとするくらいの人は、建築責任者も請負人も、現場におる大工には言わせぬようにして、監督者、建築課の者が参りまして注意をしましても、現場におる大工に言ったんでは何ら通じない、それから、それを処罰したいと思いましても、建て主も請負人もわからぬように強要されておる現況が相当ございます。従いまして、かような点を是正するために、今国会に建築基準法の改正案をお願いいたしました中に、さような場合の処置をすること等についても織り込んでいただきまして、従って、今度の建築基準法の改正の中に織り込まれた問題は、そういった指定地域の改善ということと並行させるつもりで、実はその方の準備はいたしたようなわけでございます。その地域を地域ごとに大都市近傍等については急速にどう処理すべきか、また、処理する地域をどうするかというようなことについては、所在の都道府県と十分緊密な連絡をとらないといけませんので、連絡をとりつつ、その扱い方について具体的な検討を進めておる次第でございます。
  56. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 緑地地域には、特別都市計画法施行令ですか、これによって、建設大臣の許可する建物以外は建てられぬことになっておるわけですね。そういう地域に、無許可でまず住宅を作るための工事場を建設する、これは大きな不法なんですが、そうして建築許可も受けずして、しかも、一割地域であるのにもかかわらず、五割、六割、七割というような、ほとんど敷地を埋めるような住宅を次々に作って、これはみんな法を無視してやっておるわけですね。そしてこれをさっそく登記して、登記したらすぐ売り飛ばす、買手は、住宅難で非常に難渋しておる時代ですから、それにつけ込んでこういう一部の悪徳業者が跳梁しておるわけですね。天下の法を無視し、政府をないがしろにして、こういうのが大臣のおられるまのあたりに公々然として行なわれておる。この事態は一刻も放置できないと思う。こう申し上げても、なかなか信頼性がないと思うので、特にその地域を御参考までに一つあげますと、下高井戸にもそういう地域がある、御存じでしょうが、これはさっそくお調べいただけばわかると思います。たとえば地域は、今私が申し上げたようなことが公々然として行なわれておる。これはまことに常識としては考えられない。こういう事態が現在ただいま進んでおるわけです。先ほど申し上げたように、付近の住民は、朝から晩まで動力ののこぎりのギィーッという歯音だとか、あるいは鉄板に穴をあける工事とか、住宅地に工場は絶対に建てられぬのに、公々然として工場を建て、そうしてそれによって材料を操作して住宅を作る、こういうことが繰り返されておるわけです。これは緊急を要すると思うのです。そうやっている間にも緑地地帯はそうやって埋め尽くされてしまうと思うのです。建ってしまうと、実際問題はいかに不法であっても、いかに無許可のものであっても、完全に建ってしまうと、なかなかこれを取りこわすという措置はむずかしいことになるでしょう。しかも、悪徳業者の手にある間はまだしも、これが暴利をむさぼってすぐ一般の人に売りつけられてしまう。買った人はそういう事態は知らないわけです。合法的にできたものと思ってそれを買い取ってしまう。ところが、それを何も知らないという理由で、取りこわされるということは実際問題としてはないわけです。実際建ってしまえば、むげにこれはこわすことはできない。みすみすこれは法を犯した住宅であっても、なかなかもってこれは容易でない。こういうことを考えると、一つこれは緊急に手を打っていただかないと、これは下高井戸のことを一つ具体的に申し上げたのですが、それと大同小異の所は都下周辺にひんぱんに横行しておるわけです。これはただ単に東京だけではないと思うのです。ほかの大都市にもそういう類似のことがあろうと思います。これは当面建設大臣の責任において、これは即刻抜本的な手を打ってしかるべきだと思うのですが、こういうことに対する大臣の御決意のほどを伺っておきたいと思います。
  57. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) ごもっともな御指摘でございまして、私どもといたしましては、努めて急速に全力を尽くして善処いたしたいと思います。
  58. 横川正市

    ○横川正市君 首都圏整備委員会委員長に建設大臣が就任されておるわけです。首都圏整備委員会の委員の任命は、これは建設大臣の選考にかかったのではないかと思うのですが、大体委員の選任については、おそらくいろいろ専門家やら、あるいは学識経験者やら、ないしはその他の条件を具備しておる方が選ばれていると思うのでありますが、選考について一つお聞きいたしたいと思います。
  59. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 首都圏整備委員会、これは行政委員会になっておりますが、この委員を任命いたしまするのは、建設大臣とは全然関係がございません。内閣総理大臣から首都圏整備法によって任命されておることと思います。現在は建設大臣が整備委員長を兼務いたしまして、そのほかに常勤の委員が二名、非常勤の委員が二名、四名おります。
  60. 横川正市

    ○横川正市君 その任命を聞いておるわけじゃないので、選考を聞いておるわけなんです。ですから、全然建設大臣は関知しない、選考されたのは他で、大臣もその一人であって委員長に就任した、こういうことですか。それとも、一応の案は建設省で立てて、そして任命事項としては総理大臣がする、こういうことに私はなるんじゃないかと思うのですが、その任命ではなくして、選考の問題でお聞きしておるわけです。
  61. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) これは内閣総理大臣の任命でございまして、建設大臣が、首都圏整備委員会が発足以来、委員長を兼務いたしておりますので、建設大臣としてではなしに、委員長として内閣総理大臣を補佐して、内閣の部局として首都圏整備委員会という行政委員会ができておりますから、委員長として補佐しておる形であると、こう思います。
  62. 横川正市

    ○横川正市君 そこで、あなたが委員長であるその整備委員会の運営についてなのでありますが、一つは、首都圏整備委員会それ自体の業績といいますか、あるいはその仕事をある程度遂行しても、マンモス的な首都圏の激増ぶりに対処できないというのですか。そういうことから最近改編の声も上がっているようでありますが、運営について、委員長を建設大臣兼任でありますから、この際どうされているか、今まで運営されてきた経過と、それから、これからの所信といいますか、そういう点をお聞きしたいと思うのです。
  63. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 首都圏整備法ができて、委員会が具体的に動き出しておりますのは、ここ三、四年でありますから、今までの段階は、いろいろ基礎的な調査を行ない、また、立案をする段階でございました。一方、ある程度衛星都市の建設等につきましては、実行段階に入っておるわけでございますが、現在のところ、首都圏整備委員会としましては、首都圏整備に関する諸般の問題を立案いたしまして、実行は、ものによりましては東京都、あるいは衛星都市の建設につきましては所在の市町村、あるいは道路につきましては建設省、それぞれの任務として持っておりまするところが実施機関として実施をいたしておるのでございます。そこで、最近問題といいますか、検討をいたしておりますのは、東京都の既成市街地とか、あるいは川崎市、横浜市等の既成市街地、こういう区域につきましては、首都圏整備委員会が高い角度から検討をいたしまして、それぞれの都市におろしますと、大体自分がやるようには参りませんにしても、大体協議をいたしまして立案をいたしますから、立案されたものが実行に移っていくわけでございますが、衛星都市の建設ということになりますと、これはどうしても首都圏整備委員会が衛星都市の建設を立案をして、その都市を仕立て、また、育て上げるまでの仕事がみずからできるようにしないことには、これはなかなか衛星都市が完成できないのではないか。ロンドン周辺のニュー・タウンにいたしましても、今日まで労働党内閣のときから着手をされて十五年経過をいたしております。私ども、最近首都圏整備委員会が指定をいたしました衛星都市の現況を一、二現地を視察いたしまして感じますことは、どんなに急いでも、これはやはり完成までに十年かかると思うのですが、ことに相模原等の、もうやや相当の程度まで――五十、六十の工場が誘致できまして建設をし、作業をしておる現状を見まして、これに関連をしまするところの衛星都市としての諸般の施設を整備いたしまするのに、相模原市なら相模原市という、力の弱い市にだけたよっていたのでは、とてもその関連施設というものの完備はなかなかできません。そこで、首都圏整備委員会がそういうものを育て上げる実力を持つ必要があるのではないか、どうしてもそういうふうに運ぶ必要があるというような角度で、どうすればそれはよろしいかというようなことを、私が就任以来、実は具体的な検討に入っている段階でございます。何とかできまするならば、この衛星都市の建設というものが、既成市街地にある工場なり人口なりがそちらに吸いついていくようにし、あるいは過度の集中をしてくるものをそこでせきとめるような効果を上げていこう、その効果をできるだけ早く上げようとするのには、今の仕組みでなしに、特に衛星都市建設についての実力を持った首都圏整備委員会になる必要がある、かような角度で実は具体案を練っておる段階でございます。
  64. 横川正市

    ○横川正市君 かりに、今、大臣の言われたような問題は、実は後刻質問いたしたいと思うわけです。きょうは一点だけお伺いしておきたいと思うのでありますが、この委員長委員会を主宰し運営している場合、この委員の中で、事実上その整備にかかる仕事関係をするとか、あるいはそのことによって便宜を与えるとか、ないしは地域その他で問題が起こったときにそれに利用されるとかというようなことが、かりに起こったといたしましたら、委員長としては、その委員については適格だと思いますか、不適格だと思いますか、この点だけ一つ聞いておきたいと思います。
  65. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 率直にお答えしますが、もし、かりにそういうような人があり、事実があったとすれば、それはまさに不適格であると思います。
  66. 横川正市

    ○横川正市君 自後の質問は次回にします。実は、きょうは今審議すると思わなかったので、準備しておりません。次回に質問いたしたいと思います。
  67. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  68. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 速記つけて。  他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめ、残余の質疑は次回に譲ります。  午後は二時再開することとし、これにて暫時休憩いたします。    午後零時二十二分休憩    ――――・――――    午後二時四十一分開会
  69. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) これより内閣委員会を再開いたします。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案、以上両案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  政府側出席の方は、西村防衛庁長官、加藤官房長、海原防衛局長、小幡教育局長、小野人事局長、木村経理局長、塚本装備局長並びに丸山調達庁長官でございます。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  70. 田畑金光

    ○田畑金光君 長官にお尋ねしますが、新聞で拝見しますと、政府の第二次防衛力整備計画はあすの国防会議懇談会に提案されるというように聞いておるわけでございます。また、内容についてもしばしば新聞等で報道されて、大よそそうであろうということは推測できるわけですが、けさの朝日新聞初め、各新聞を見ますと、自民党国防部会で、防衛体制確立についての基本方針をきめて、これがやがて党のそれぞれの機関を通じて政府に反映させる、こういうようになるようです。政府の案を見ますと、比較的低姿勢だという見方もないでもありませんが、与党の内容を見ますと、本格的に防衛体制を確立する、こういう思想的な、あるいは政治的なと申しますか、背景が貫かれておる、こう見るわけです。たとえば国民所得と防衛費用の問題を見ましても、今政府案として、あるいは防衛庁の案として議論されておる内容については、昭和四十一年に国民所得の一・六%、与党の案によりますれば二%前後を確保する、政府の案はなまぬるい、こういう立場に立って与党の案ができつつあるようです。これはある意味からいうと、防衛庁をうしろからあと押しする、また、別の角度から見れば、防衛体制そのものについて、非常にこれは与党側の積極的な立場というものが浮き彫りにされつつあるように見受けるわけです。そこで、私が長官にお尋ねしたいのは、今議論され、明日懇談会で議論されようとしておる第二次防衛計画というものは、今まで二年間にわたって作業されてきました政府案の方針でいかれるのか、それとも、与党の国防部会が中心に作業された与党の案を取り入れて計画の練り直しを進められるのかどうか、これを一つ承りたいと思います。
  71. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 御存じの通り、防衛庁といたしましては、ことしの一月にすみやかに防衛庁の案を決定して、国防会議で政府として統一的に慎重審議する。これは池田訪米に直接持っていくのかという御質問もあり、また、それに対しましては、われわれは率直に、これは何も総理がアメリカへかついで行ってどうということは考えておりません。ただ、おそらく総理大臣が一国を代表して、いろいろな広い立場から対米折衝をされますれば、私は、やはり一つ日本の防衛力は将来どうなるであろうかという、広い意味の国の安全の意味においての視野において、一つのベースにはなり得る、こういう点では多少の、あるいはその意味においての参考になる、こういう考え方で、私は、できるだけ将来に禍根を残さないような意味で部内でも検討をいたしておりますが、まだ防衛庁として、私は最終的にこれでいくのだという正式の決定はいたしておりませんけれども、防衛庁の試案程度というものを明日国防会議懇談会で御説明したい。これは率直に申しますが、二%から後退をいたしました二%から一・五%の間ぐらいの線という構想でございまして、この間来御説明申し上げましたように、陸において体質改善を中心にし、多少そこにミサイル装備等を投入して参る、あるいは海においても代艦建造をする、古船にかわる艦艇を建造するということに中心を置く、あるいは空におきましても、やはり出て参りますロッキードその他を整備しつつ、かつ、防空組織を整備して参る、こういうような案でございます。そこで、明日の国防会議懇談会におきまして私の方として御説明するのは、防衛庁が一応こういうふうな案を考えつつあるということでございます。なぜそれでは防衛庁で正式の決定として持ち込まぬかというと、私は、正式に決定をする前に、やはり関係の政治のレベルの段階のいろいろなお考えもあろうから、それを識り込んで、私は自分としての最終意思は決定したいと思うのであります。ただ、もちろん防衛庁がものを言います以上、ことに関係各省の閣僚、あるいは総理との意見交換をする場合におきまして、ただいいかげんなと申しては失礼でありますが、一つの私が構想だけを持っていくのでなくて、それにはやはり財政的に、あるいは全体の所得倍増というようなことを考えつついきますから、当然それは事務的にも、ある程度大蔵その他とも折衝をはかりつつあります。そういう意味で、比較的じみと申しますか、かたい案ではございます。しかし、また同時に、私も党に所属いたしております。総理大臣も党に所属をいたしておりまして、また、党は党で、現段階、あるいはこれから五カ年における防衛構想、また、それに必要なところの防衛的な基盤、防衛力の整備、こういうものを昨日党として、党の国防部会で御決定になった。それを私も拝見いたしており、また、本朝新聞でも出ているわけであります。これも一つの自民党を背景とした政府としての一つ参考案として、あるいは、ある場合には最終決定の段階においてその趣旨を織り込みつつ、こういうことになるのではないか。一にかかって、これは明日直ちにまだおそらく私は決定とか、方針がぴしゃっときまる段階まではいかないと思います。まだ幾らか検討を加えていかなければならぬ、いわゆる慎重審議をしなければならぬということでありますから、私どもの一つの大体考えつつあります試案と、それから党の方の意思と、各方面から織りまざらして最終の政治判断を下してもらいたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  72. 田畑金光

    ○田畑金光君 率直に御答弁を願うならば、明日の、防衛庁が作業をされて出される第二次整備計画というものは一応の案であって、今後の検討の過程においては、与党の国防部会で作りましたこの基本方針の内容等についても採用することはあり得る、こういう御答弁だと思いますが、その点明確に一つ
  73. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私は、国防の責任者といたしましては、国民所得倍増計画を阻害しない、あるいは国防会議等で決定いたしましたのが、国情に応じてという、民生安定等も大事にするという方針の中で、自民党内の国防部会等がいろいろな観点から取り上げている、特に防衛力整備の分でございますね、あれは取り入れられるものがあれば、それは取り入れられていいではないかと思いますが、しかし、これは単に防衛庁長官、あるいは防衛庁だけの問題ではありませんで、政府全体の問題でございますから、党の意見も参考にしんしゃくをしていきたい。その意味で、私の立場におきましては、防衛庁の試案として大体決定しつつある案を中心に私の方は御説明をしていく、こういう格好になろうと思います。  それから、なお、党の方の御発表になりましたものには、単に防衛力整備だけではございませんで、それ以外の防衛基盤全般の問題がございます。安全保障会議という構想、あるいは国防省昇格、あるいは民防衛、各般の問題がございまして、これらは直ちに明日の国防会議懇談会の議題というよりは、今後国防会議懇談会等において、これをどう扱うべきかの一つのアイテム、問題になっていくと、こういうふうに私は考えておるのであります。
  74. 田畑金光

    ○田畑金光君 新聞で拝見しますと、池田総理も、与党の方の防衛基本方針に善処したい旨を約束された、こういうふうに書いてありますが、今の答弁をお聞きいたしましても、相当程度今後の防衛庁の第二次防衛計画の中に与党の方針が取り入れられるであろうということをわれわれは推察するわけです。政府の今日まで計画されて参りました内容と、今回の与党の出しております内容というものは、単に防衛力の量をより大きくするというだけでなく、防衛体制そのもの、すなわち、質的な面から見て、私は、この与党の方針というものは、相当新しい角度からの構想が入っておる、このように見えるわけですが、この点は長官としてどのようにお考えになられるか。
  75. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私の方は、さしあたりの問題は、御存じの通り、当面の国防会議懇談会、あるいはやがて国防会議等で決定ができればしてもらいたい問題は、防衛力の整備でございます。ただ、防衛力整備と申しましても、その基盤となるべき各種の問題はあることはあるのでございますが、それはやがて順次、順を追いましてやって参らなければなりません。言いかえれば、国防会議懇談会等で、しかし、それらにはまた立法事項等も当然加わってくるだろうと思います。これらはやはり今後に私どもは党の意思も尊重しつつ、同時に、政府全体として考えていかなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。
  76. 田畑金光

    ○田畑金光君 今後の立法措置その他各般の問題については、後ほど若干お尋ねしたいと思うのですが、今防衛庁で明日の懇談会に出される第二次計画の案、これと与党の国防部会で出されております内容、この二つを比べましたときに、その他の問題点についてはあとで触れることにして、防衛力そのものの増強という点においてどの程度、あるいはまた陸、海、空それぞれについて、どういう点に大きな差異があるのか、これを簡潔でけっこうですが、御説明を願いたいと思うわけです。
  77. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) ただいま私どもの方で試案程度に説明をいたそうというこれは、まだ防衛庁としては最終決定してございませんから、今後多少変わるかもしれませんが、一応試案程度考えておりますのは、陸上におきまして十八万の勢力を今後五年の間に充実して参りたい、その意味においての編成でございます。これは党の方の国防部会でお考えになったのと大差はないと思うのであります。問題は、そのうちに、たしか党で一応考えられておりますのは、兵力量ではなくて、兵力量以外の、さらに多少そこに誘導弾部隊でございますか、こういうようなものが少しわれわれの考えより数が多いと思います。それから海上におきましては、大体十四万トン前後というものを、われわれ財政当局とも、代艦建造その他も考えてきておりますが、それに対して十八万トンという、一応将来考えられる五年の姿ではないかと考えております。それから航空兵力等におきましても、私どもの方が千百機ぐらいでございますか、それに対して千二百機ぐらいの航空兵力の数をやっておられると思います。それから、これらを計算して参りますと、私らの方が一・五%から二%、時と場合によれば一・七%になり、あるいは一・六四%になる等の財政上のとり方がございます。あるいは財政当局としてはもっと低いところを一応主張されるかもしれませんが、この防衛体制の確立についての御意見によりますと、二%というものを一様に考えられているように、おおむね二%程度。そうしますと、十八兆の国民所得ということに四十一年度なるとすると、三千六百億円というのが最終年度の一応予算というわけになるのであります。私らの方で申しますと、三千億を切る予算、そういうものが防衛力整備構想についても出てくるわけであります。それから、これは私から御理解をいただく意味で率直に申し上げておきますが、防衛力整備計画は予算要求ではございません。予算要求ではございませんから、この防衛力の兵力量といいますかを五カ年後にどの辺に目標を置くかという計画でございます。予算要求は、その年度々々、その中で単年度要求をして査定を受けていく、こういう仕組みになるだろう、こういうふうに思います。
  78. 田畑金光

    ○田畑金光君 与党の案は、防衛庁長官、あるいは防衛庁の方で今日まで大体考えておったようなことを、与党の口を借りてこれは出たのだ、あるいはそれが適当でなければ、防衛庁としても、あるいは長官としても、この程度は適当である、いや、持ちたい、こういう考え方ではなかろうかと思うのですが、その点率直にどうでしょうか。
  79. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) この防衛力整備の目標でございますが、財政計画そのものを五年間にわたってぴしゃっときめるものではございませんから、防衛力の整備に対して目標を大体立てる。それには、前提として防衛構想と申しますか、どういう構想でこういうものが必要か、これにはいろいろな構想が出て参ると思うのでございます。日米安全保障体制のもとにおきましても、率直に申せば局地戦の姿、局地戦が何カ所で起こるとか、いろいろの形がありますから、どこまでやったらいいとか、どこまでは小さくてもいいとかという、絶対的な基本というものは私は立たんと思います。いわんや防衛というものは、単に防衛庁だけ、あるいは自衛隊だけがやるというのではございません。国を守るには、国民の全体の、あるいは相当数の意欲のもとに、自分たちの国土を守るのだという意欲が基本にならなければいかぬと思います。あるいは後方におけるいろいろな、法律上なくても、気持の上での自衛体制が確立しなければ国が守れぬことは、これは私から申すまでもなく田畑さん御存じの通りであります。そこで、前提になる構想をどういうふうな形でとらえるか、これはいろいろな議論があるし、また、意見も聞くのでありますが、一応常識的に考えてくるというと、一つのこういう考え方も出ます。ですから、率直に申しますと、何もこれは防衛庁からお願いしたものではございません。しかし、私としましては、私も党の人間でございますから、平素個人としてはいろいろお話し合いをする場合もあります。また、国会論議その他を通じても、国防部会担当の各位も御熱心に研究されておりまして、そこで、一つ国防部会の政治感触として、こういうような案をもって一つ政府に対して方向を与えてみようじゃないかというのが国防部会の御意思じゃないかと、こういうふうに思っております。また、かたわら、結果的には防衛庁の、こういうふうにあったらどうだろうかという、党としては政党政治の時代でございますから、当然そういう一つの意思を表明されることは、われわれ行政当局にある者といたしましては、その意思も十分尊重はしていかなければならぬと思うのであります。
  80. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど長官の御答弁の中で、この与党の基本方針の中には、今後の立法措置によってだんだん実行に移す問題があるというお話でございましたが、その中で防衛基盤の確立、これを取り上げておるわけです。そうして、その防衛基盤の確立の第一の問題として、国民の防衛意識の高揚ということを取り上げておるわけです。国民の防衛意識を高めることは、ある意味では防衛力の整備よりもさらに重要な問題であるにかかわらず、政策上は放置されたままになってきておる。私きのう初めてこの「国防」という雑誌をもらいまして、この四月号に、海原防衛局長が毎日新聞の田畑正美氏と対談しておりまして、その中で、防衛という観念について、意識についてお話になっておられますが、私これはただ防衛局長のお話としては非常に傾聴に価する内容だと、こう思って私はこれを読んだわけですが、そこで長官にお尋ねしたいことは、確かに今日防衛というと、何かしらぬタブーだ、治安というとタブーだ、こういう意識がないでもないと思うのです。従って、また、この防衛観念という問題になってきますと、これは国民の中には、憲法との関係で防衛という問題自体を考察し、あるいは研究するという点において消極的であったり、あるいは無関心であったり、確かにこれは海原防衛局長の指摘されておる通りであると考えておるわけです。そこで、私は、国民に防衛意識をどのような正常な姿において高揚し、あるいは持たせるかということが、非常にこれは重要な問題であろうと考えておるわけで、ただ、しかし、それは抽象的な言葉で、国民の防衛意識を高揚するのだということだけでは済まされない、こう思うのです。  そこで、私実は昭和二十九年のこれは十一月、当時の自由党の憲法調査会が発表されました日本国憲法改正要綱案、これを見ますと、国の安全と防衛、こういうことで、今後の憲法改正の重要な一つの指標として、国の安全と防衛という一章を憲法の中に挿入しなければならぬ、こういうことを言われておるわけです。私は、やはり祖国の防衛とか、あるいは国民の防衛義務、義務意識、こういう問題は憲法と離れては考えられないのではなかろうか、こういう感じを強く持つわけです。統帥権の問題とか、あるいは宣戦、講和の布告の問題であるとか、あるいは戒厳令のような非常事態の宣言の問題であるとか、こういう問題が、やはり私は与党のこの国防基本方針の構想の中には、当然そういう問題等も含めて考えなければならなくなってきやせぬだろうか、こういうような感じを持っておるわけです。  今さら申し上げるまでもなく、各国の憲法を見ましても、祖国防衛の義務というものを明確にうたっておる、あるいはまた志願兵、あるいは兵役の義務について規定しておる憲法もありましょうし、ソ連の憲法等を見ましても、祖国防衛の義務と兵役の義務とあわせて規定されていることは、これは周知の事実であるわけです。そこで、私お伺いしたいのは、国民の防衛意識の問題ということは、これはそのような基本的な問題にも触れてこなければ、正しいと申しますか、意識の高揚ということは、これはなかなか言うべくして実現は不可能だと、こういうことを見るわけで、そこで、長官といたしまして、私は、むしろこれは与党の国防基本方針は総理に質問したいのが本来でございますけれども、この際、長官として、この防衛意識の高揚ということについてどのようにお考えになっておられるか、私が今触れたような点等についてどのようにお考えになられるか、承りたいと思います。
  81. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 非常に大事な御意見を伺ったわけでありまして、私も基本において、御意見と申しますか、お考えに賛成しておるのでありまして、もちろんわが国の憲法は一つの特色を持っておることは十分存じております。ただ、世界一般といたしまして、祖国を守る観念、あるいはその守る軍に対する指揮権のはっきりした明確化、こういうようなものは、各国の普通の状態においてはあり得るが、日本の憲法は、それは表面的にはあまりはっきり出ておらない。といって、それでは憲法に書いてないからといって、私は、国を守るという法律上の義務は別といたしましても、道徳上の一つの信念と申しますか、考え方というものは、民族の中に当然あると私は考えておるのでありまして、ただ、その守り方の問題がいろいろ意見が出て参るだろう、自分の国を守らんでいいという国民はだれ一人ないのじゃないか、ただ、守り方の問題が一つあるかと思います。それから、かりに自衛力というものがありまして、これを軍と表現するか隊と表現するかにしましても、これはある程度守る以上は、それに対して抵抗力を持つ、この性格というものは万国共通のものだと私は考えております。ですから、自衛隊を軍と言えば軍と言えないことはない、軍隊的性格を持っているし、現実に軍隊的ないろいろな訓練をやっているわけです。ただ問題は、従って、過去の軍隊がよかった悪かったは、むしろ軍の本質よりも、軍の運用にあった、そこに一つの大きな問題がある。戦争に負けまして、軍の運用が、憲法上その他の関係もあり、その後における政治情勢もあって、運用が、国民に対して非常な絶望というか、悲惨というか、そういう状態へ陥れられた。そこで、国民全体が、国を守る防衛そのものも悪いのだというふうな、ちょっと間違いを起こしやすい状態に今日入ったのが、漸次世の中が落ちついてくると国の守りと、守りを運用する体制とは別個だということがわかっていただければ、だんだんに私は防衛意識は高揚して参ると思います。防衛することと、防衛する方法論と申しますか、運用と申しますか、そういうものに誤解があれば、あるいは過去の悪い印象が強く残っておるが、それを漸次時代がたつに従って、むしろ新しい一つの型でいこうじゃないか。現在の自衛隊の運用については、新しいシヴィリアン・コントロールの道を開いて、国家最高機関、つまり国会を通じて、国民によってコントロールする自衛力、言いかえれば、軍隊的機能を果たしていこう、こういう点から、私は、なるほど憲法上の非常事態における制約もございます。しかし、その前にも、われわれとしては今与えられたる状況の中において十分打開し得る道はあるのじゃないかと、こう思うのであります。もちろん憲法を改正するやいなやの問題は大きな政治論でございます。また、これは国論というもの、国民の考え方というものを十分土台にしなければならぬのでございまして、軽々に私どもがこれを直ちにどうするというふうに、この国会を通して割り切るべき問題ではないではないかと思うのであります。  それはさておきまして、その前提となっておる自分の国を守るという道義的な信念、あるいは道義的な考え方、それをどう運用するか、こういうようなことから考えてみますと、運用上においていろいろな要素を考えて、まあまあと国民が納得をして、漸次それを高めて参るようにわれわれも努力をいたします。従って、私としては、自衛隊はできるだけ国民にわかっていただく、また、同時に、親しんでいただく、同時に、技術訓練はしっかりやって、最後にシヴィリアン・コントロールはしっかり立てる、私はこの四つの基本方針で、今日自衛隊について微力ながら努力いたして参っておるのであります。
  82. 田畑金光

    ○田畑金光君 憲法に対する態度、あるいは第九条の解釈については、皆さんと私たちの立場というものは相当異なったものがあるわけで、私の先ほど質問として申し上げたことは、今政府として、防衛庁として立てられておる第二次整備計画の精神、あるいは基本的な精神、ことに自民党の、与党の立てられた国防基本方針、こういう思想を発展するならば、私は、防衛意識の問題は、憲法の問題に触れない限り、なかなかこれは困難ではなかろうかと私としては見るわけです。長官は、軍の運用いかんによってと、こうお話になるわけでございますが、それ以降の見解というものは抽象的な意見の表明にすぎないので、これ以上私は触れません。  安全保障体制の確立、こういうことを述べておりますが、現在国防会議というものがあるわけです。重要な国防の基本方針、防衛計画の大綱、あるいは防衛産業等についての問題等、重要な国防に関する基本的な問題は、国防会議において取り上げられておるわけでございますが、安全保障体制の確立ということになって参りますと、これは米国の国家安全保障会議等の構想を持ってきたのかどうか私は存じませんが、長官としても、こういうような構想にだんだん法律改正等を通じ、整備して参りたいという先ほどの御答弁でございましたが、これはどういうような機構を考えられ、国防会議とどのように、機構において、あるいは運営において、あるいは権限等において異なったものが予定されておるのか、こういう点について長官の御見解を承りたいと思います。
  83. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 実は、これは私からお答えするのが非常に困難な面もございます。本日、この理事をやっていらっしゃる小幡氏が国防部長でありまして、この方々を中心に党の方でいろいろ構想を練られ、きわめて抽象的に国家安全保障会議、必ずしもこれは日米安保体制だけはなく、そういうような意味にもとれないのでありまして、この内容については、私も十分に党から説明を聞いておるのではございません。ただ、国防会議との関係がどうなるか、どうも私どもはこれらが党の方で御研究になっておられるか、あるいはいかれる段階において十分連携はとって参りたい、こういうふうに考えております。
  84. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあそれは小幡理事にでも聞かなければわからぬとおっしゃればそれまでですから、時間の関係もあるので触れませんが、そこで、防牒法の制定についても先ほど長官は触れられておるわけです。現在軍機保護法というのはございませんが、ただMSA協定に伴なう秘密保護法、これが軍の秘密を保護する唯一の立法ではないかと、こう考えるわけです。この法律自体も、この防衛機密とは何かということになってきますと、MSA協定に基づくアメリカから供与された兵器等の秘密を保護する、こういうようなことでありまして、今後さらに新らしい兵器の開発、あるいはまたアメリカの方から高度のミサイル兵器等の導入、こういうことになってきますならば、われわれといたしましても、やがて軍機保護法、あるいは新しい防衛に関する秘密を保護する法律が登場してくるのではなかろうか、こういうような予測をしておりましたが、まあ政府与党の案の中には、すでにこれは出てきたわけです。この点について長官から、今のMSA協定に基づく秘密保護法では今後の防衛体制に対応することはできないかどうか、できないとすればどういう点に問題があるのか、これを一つ明確にお答え願いたいと思います。
  85. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) おそらく世界いかなる国でも、国家機密を保持する法律のない国はないと思うのであります。日本は今日それを持っておりません。わずかに対米から供与を受ける武器の技術的部分について、MSA協定に基づく秘密保護の法律を国会で御審議願い、成立をしている状況であります。この点は世界各国から比べますと、非常に異様な点ではございます。しかし、その一面、こういうようなかかる種類法律というものは戦前において多少乱用され、あるいは人によっては、ひどい乱用をされるということによって人権を侵害したという悪い面も残っております。また、今日の憲法は、できるだけ人権の尊重、個人の人格の尊重を中心に立てられたものでもあります。そこらも十分に尊重しながら、政府としてはこれらの問題を重要に扱っていかなければならぬ。いわんや、かりにこういうようなものの立法化をはかりますのでも、国民とともに、こういうものの必要性をよく御認識いただきつつやっていかなければ、いたずらに摩擦を起こす。ただ、防衛庁長官といたしましては、やはり世界共通の常識的な考え方から、何でもかんでも軍事に関しては全部あけっぱなしにしていくということは、これは国土の守りにやはり支障を来たすということは、これは常識的にだれしもが納得し得るのじゃないか、こういうふうには思うのでありまして、国土の守り、少なくとも自衛隊、あるいは自衛隊的な、軍隊的な運用をいたしますのに、その編成であろうが一切の装備であろうが、機密はないのだ、あけっぴろげ、こういうような形で、はたして防衛の基本というものは固まるかどうか、こういうところに私は多大な疑問を持っているのであります。ただ、こういうことを実行いたしますのには、ただ私は力を持ち、ただいたずらに多数だから国会にお願いしてやろうということではございません。十分に国民とともにこの趣旨を理解しつつ、必要あることを漸次御理解いただいた上でやっていかなければならぬ。私はこの意味で、この防諜法の制定という立場の党の御意見を承っておる次第であります。また、理解をしている次第でありまして、その取り扱いにつきましても、今私が申し上げましたような気持の上に今後考えて参りたい、こういうわけであります。
  86. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは、やがて防諜法というような法律案を出そうというお考えなのかどうか、率直にそこを聞かしてもらいたいと思うのです。
  87. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) ただいま総理大臣は、この国会を通じましても、秘密保護法を作るつもりはありませんという御答弁を申し上げておるわけであります。私も、この国会、あるいは直ちにこれを作るという意思はございません。しかしながら、漸次国民の御理解のもとに、やはり最小限度の国家機密なり軍事上の機密というものを保持するためには、法的な規制も必要でないかと私は考えておりますが、これは将来に向かって私どもとしては研究し、できればやはり将来は必要であると、こういうふうに御答弁申し上げたいと思います。   〔委員長退席、理事村山道雄君着   席〕
  88. 田畑金光

    ○田畑金光君 冒頭申し上げたように、今、日本の法体系の中には、MSA協定に基づく秘密保護法だけがあるわけですが、これによっては軍事上の機密は現在守られているのか守られていないのか。今、長官のお話のように、この国会では出さないかもしれぬが、行く行くはやはり国やあるいは防衛機密の保護については新しい法律考えなくちゃならぬ、こういうことなのかどうか。ただ、国民として心配することは、不安を持つことは、防衛という問題にすら、先ほど私が申しましたように、なかなかなじんでいない国民が相当あるわけです。ことに、また防諜などという言葉を聞きますと、まだまだあの戦争の暗い悲惨な経験というものが、国民の多くの人方の頭に刻みつけられておるわけです。戦争中あるいは戦争前、昭和十二年のあの軍機保護法が制定され、昭和十四年にはこれが軍用資源秘密保護法に発展し、昭和十六年には国防保安法、こういうことであの暗黒な世相というものを作った苦い経験を持つ国民の気持からすると、防諜法などという言葉自体に非常な恐怖をこれは感ずるわけで、この点についての長官のお話では、まあだんだん国民が理解し、納得しながらこういう問題については取り組んで参りたい、こういう御答弁でございますが、答弁自体としては理解できますけれども、じゃ、具体的に現在の軍事情勢のもとにおいては、今ただ一つあるMSA秘密保護法ではやっていけないんだ、こういう前提に立っておられるのかどうか、これを明確に承っておきたいと思うのです。
  89. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) もちろん、これは何を国家機密、何を軍事、そういう言葉がいいか悪いか知りませんが、防衛機密として考えるかという、考え方の問題でございます。なくても、一応現在国の防衛の努力はいたしております。しかし、あった方がベターだと個々に感ずる場合もあるのであります。しかし、私は根本において、さっき申し上げましたように、すべて自衛隊であろうが国の守りであろうが、やはり基本は国民とともにという基盤をくずすようなことをしてまで急いでやってもいけないんじゃないか、そこのところは将来の研究の課題にして参りたい、こういうように考えておる次第であります。現在それじゃ、なければないで済むのかと言い切るわけにも私はいかぬと思います。といって、それじゃなければできないのか、そうも私は言い切れぬと思います。やはり、かりに自衛隊そのものが理解されないような状態で、いかに防諜法を私どもが御承認をいただいても、国民から遊離した自衛隊であってはいけない。で、もちろんこれは安全保障体制のもとにおいても、共同動作をとるような場合において、できれば相手方は、もっと早く防諜法等を制定してもらえば、もっと機密にお互いが話し合いできるじゃないかという場合があり得るかもしれません。しかし、一方において、私は、国民とともに防衛はやっていくんだということからも、ある程度われわれは不自由と申しては言葉が悪いかもしれませんが、やはりその制約下に立って防衛努力はして参りたい、こういうこと以外に今のところ道はないと思うのであります。
  90. 田畑金光

    ○田畑金光君 この国会では出さないが、次の国会以降については、要するにまだわからぬ、あるいは次の国会に出すかもしれぬ、そういうような準備を、作業を、あるいは検討を進めておるんだと、こういうようなことで理解しておいてよろしいですか。
  91. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) まだ私どもの方は、次の国会に出すという意味においての検討はいたしておりません。ただし、こういった国家機密、あるいは軍事的な機密は、何か将来に向かってやらなきゃならぬといって、不断に研究はいたしておるのであります。次の国会に出すというようなことは、今のところ私どもは政治全般の問題として、もちろんこれには政府全体、あるいは政党全体と申しますか、政治全体の雰囲気の中で判断すべきことだと思うのであります。私自体は、まだその判断は下していないのであります。
  92. 田畑金光

    ○田畑金光君 防衛庁のどこでこういうような問題は検討され、研究されておられるんですか。
  93. 海原治

    政府委員(海原治君) 今、田畑先生のお尋ねの、秘密関係の法案というようなことに関しまする事務につきましては、防衛局に第二課というのがございます。この第二課が保安に関する事務を分担いたしておりますので、そこで取りまとめをすると、こういうことに相なろうかと思います。
  94. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、今度は少し角度を変えて、韓国のクーデターの問題について、特に私は軍事的な観点から伺ってみたいと思うのですが、とにかくああいう形でクーデター、軍事革命が起きたわけです。起きるには起きる諸条件があったこともわれわれは見ざるを得ないわけですが、ただ、言えますことは、あのクーデターが軍部を中心とする、しかも、佐官級を中心とする中堅クラスが蜂起した、こういう問題です。ことに、言うまでもなく、東南アジアの国々、新興独立諸国をながめて見ますと、まだ民主主義の未熟なというか、未成熟なと申しますか、十分に国民の中に根を張っていない諸国においては、ともすればああいう事例が起きるわけです。パキスタンのアユブ・カーンによるクーデターを見てもそうでありまするし、今日のタイ国の内閣を見てもそうでありまするし、ビルマも、つい一年前まではそうであったし、トルコがまたクーデターをやってもう一年になりまするが、まあいろいろこういう地域においては、軍部を中心とする革命と申しますか、が起きておるわけです。そこで、私は、先ほど長官の御答弁の中にも、シヴィリアン・コントロール、正しい軍の運営こそ正しい防衛意識を作るんだという、そのことには同感でございまするが、とにかく最近の傾向は、各地において軍部を中心とするクーデターが起きておる、この点でございます。これはまあ先般横川委員からも質問がございましたが、韓国の軍事組織というものは、あるいは政治と軍事との関係については長官からも説明ございましたが、私、もう一度韓国の軍事組織、政治と軍事とはどういう形になっておるのか、憲法あるいは法律関係がどう運営されておるのか、これをもう一度簡単に承っておきたいと思うのです。
  95. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私から足りない点、あるいは多少思い違いをしている点は、政府委員からさらに詳細に御説明申し上げていいのでありますが、韓国も一応現在までの――現在と申しますか、先般までには、国防部長でございますか、上に大統領がおりまして、それが指揮権をとっております。ただ、日本のように、国会を通してのコントロールという姿はあまり出ていないかと思います。もう一つは、日本の内局に当たるような系統が軍人で従来も占められている、単にごくトップのレベルだけがシヴィリアンであるという点が日本とはだいぶ違うのじゃないかと思います。いま一つは、韓国は日本と違いまして、国連軍の司令官というものがおりまして、第一軍は国連軍が直接司令官として握っておる。第二軍は、国連軍の作用の部分においては作戦指揮を受ける――オペレーティヴ・コントロールと申しますか、それ以外の第二軍のことについては国内のことであるから、自分たち自体でやっていく、こういうような日本と違った軍のあり方があると思います。日本には、そういう国連軍の司令官がオペレーティヴ・コントロールをやっておるという姿はございません。  それから第三番目には、御存じの通り、韓国の置かれたる国内、国際情勢が違っております。国が南北に二つに分かれておる。そうして激しい共産主義並びに反共の姿で政治がゆすぶられておる。その次に、国内事情としての経済的な面もありましょうし、それから直接戦争というものにぶつかっており、あるいは休戦状態であるだけに、国防費というものがかなりかさんでおる。一方、経済は、特殊な事情から、非常に困難をきわめておる。そうしてその間に、南北の統一のいろいろな動きもある。こういうようないろいろなことが重なってあそこにいったのじゃないかと思うのでありまして、韓国のとにかく民主主義的な方法によらないクーデター自体は、私ども、他国のことでございますから、批判は差し控えたいと思いますが、それ自体は私はいいものではないと思うのであります。どうぞ隣国のことでございますから、できるだけ一日も早く正常なる、また、平和な姿に戻ることを期待するわけであります。
  96. 田畑金光

    ○田畑金光君 今長官のお話にありましたように、国防長官、大統領の指揮下に軍隊はあるわけです。ただ、国会のコントロールという点において弱い面があるようだという御答弁ですが、しかも、韓国の軍隊は、一九五〇年七月十五日の李承晩とマッカーサー司令官の交換書簡によって、韓国軍の指揮権は国連軍司令官が握っておる。また、実際の韓国軍の運営されている予算措置は、ほとんど九割以上がアメリカの援助に仰いでおる。しかも、アメリカの軍事顧問団は、多数韓国の軍隊の各要所々々に配置されておる。こういうことを見ますと、それだけ国連軍司令官としてのアメリカの指揮のもとにあり、また、国内の法律上においても大統領の指揮下にある。言うなれば二重のコントロールのもとにある韓国の軍隊においてあのようなクーデターが起きたということは、われわれとしては解せない点が多々あるわけです。この点については、長官としてはいかように観察されておられるか。ことに私は、この国会において、師団の再編成とか、あるいは統幕会議の強化とか、いろいろな問題がございますが、そのたびごとにシヴィリアン・コントロールということで、自衛隊の運営、管理等については心配はないのだという御説明であって、われわれはそれ自体を信じておるわけでございまするが、しかし、朝鮮の例を見ても、その他の国々における例を見ましても、この軍の運営、管理というものについては、非常な時に不安なきにしもあらずでありますが、長官としては、この隣国のできごとからどのような教訓を受けておられ、また、どういう教訓を通じ、国内の防衛問題に対処されようとしておられるのか、承りたいと思います。
  97. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私は、常々着任いたしましてから深く考える最大の問題は、軍隊ないし軍隊的な、いわゆる率直に申しますれば刃物を持っておる集団であります。これに対してコントロールする、これが最大のいわゆる政治の仕事だと思います。従って、そのコントロールする前提といたしましては、まず政治の姿が不断に正しくあるように努力しなければならぬと思います。これは政治と申しますれば、単に防衛の仕事だけではございません。他の民生安定、あるいは経済発展等々がございます。と同時に、政治に関係する者自体が、民心を得ていかなければならぬわけでありまして、と同時に、それではコントロールだけわが自衛隊は考えておればよいかと申しますれば、逆に私は、われわれの自衛隊においては、育成されなければならぬ、整備されなければならぬ部分が多分に私はあると思うのであります。現実の私は防衛庁の責任者としまして、着任して以来検討いたしますと、現在の首脳部の人たちというものは、制服の諸君におきましても、きわめて戦争中の実戦経験のある人たちでありますけれども、採用されるときに非常に精選されたとみえまして、全体に旧軍から来た人たちは謙虚である、ある場合には遠慮がち過ぎるとも私は思うのであります。でありますから、今の自衛隊におきましては、私は育成いたしましても、別にシヴィリアン・コントロールが曲がるということもございません。ことに、政治が正常な姿であればあるだけ、そのコントロールはよくいけると思うのであります。韓国は、不幸にいたしましてこの中心部に当たられる幹部の方々も、韓国の場合におきましては、きわめて年齢の若い、経験がそう日本の自衛隊ほど長い方ではないように私は新聞報道等で聞いております。年齢層もお若い方が多いようでございます。そういう点から私どもの方の自衛隊と比べますというと、私どもの方の自衛隊は、この間も申し上げましたが、ああいうことがありましても、何ら影響はない、ただ自衛任務をまじめにやっておる、こう私は責任を持って答弁を申し上げているのであります。しかし、将来の問題を考えて参りました場合に、私は、日本の防衛という問題に対しては、国民がやはり正しい姿でこれを見守っていくという、あらゆる面からの努力が払われて参りませんというと、あるいは内部に小さなかたまりができたり、あるいは内部に政治批判の力が出てきたり、いずれの立場をとるにいたしましても、政治の批判というものが部隊内部に起こって参り、そこに政治の姿勢が正しくない、あるいは政治そのものが乱れているような場合におきましては、コントロールは乱れてくると思うのであります。私は、この自衛隊と申しますか、こういった軍隊的なコントロールは、制度上も大事でございますと同時に、その中に立つべき人間、あるいは政治全体の姿が、不断にこれに対して正しい姿で接していく、ことに、事、国防に関しましては、政治がえりを正すと言うと非常に激しい言葉でございますかもしれませんが、まじめな、真剣な気持でこれに接してコントロールをしていくべきじゃないかと思うのであります。そうして、要は、自衛隊をできるだけ国民的な基盤に置くように、われわれ責任ある者はもちろんでございますが、一般の方にもそういうふうに御理解を願うように努力すべきじゃないかと思うのであります。
  98. 田畑金光

    ○田畑金光君 このアメリカの国防予算特別教書は、しばしばこの委員会でも取り上げられて、引例として用いられておりますが、このケネディの教書の中にあるシヴィリアン・コントロールの問題でございます。これは防衛庁内局の文官対制服の関係を形式的に意味しているだけでなく、もっと高次のものである、こう言われているわけです。戦争の開始とか核兵器の使用、あるいは戦争の拡大と、政戦両略すべての問題について文民が権利を持ち、最終的には大統領が決定する。アメリカ軍は世界各国に駐留して、それだけに世界各地において戦争の可能性の地域において接触を保っておるわけです。最近言われておるポラリス潜水艦は常時戦略展開をして、いつでも実戦の配備についておる、あるいはまた戦略爆撃機が常に空中で警戒措置の強化をはかっておる、こういうようなことと、出先において、まかり間違えばいつ火を吹くかもしらぬ、こういうような高度な政戦両略にわたるコントロールだ、こういうようなことを言われておりまするが、   〔理事村山道雄君退席、委員長着   席〕 このことは日本の自衛隊にそのまま適用するといっても、これは適当でないかもしれませんが、そういうような面において、私は、やはり日本日本なりに、政治の軍事に対する優先、こういう点は慎重な上にも慎重を期してもらわねばならぬ、こういう考えを持っておるわけです。ことに、先ほど質問いたしました政府与党の国防基本方針等に基づいて、さらに一段と軍事力の整備がなされていくならば、これはどうしても自衛隊の存在というものが、社会的にも、国家的な栄誉の上においても、もっともっとこれは地位が高まっていく。そうなっていきますと、私は、やはり政治の軍事に対する優先というものが必要になってきよう、こう考えておるわけで、こういう点から私見ましたときに、後ほど触れますが、国民の代表である国会のコントロール、こういうことは一番大事な点であろうと見るわけで、そこで、たとえば自衛隊法の七十八条の治安出動の問題、これは衆議院の段階でもしばしば取り上げられておるようですが、この治安出動の問題等については、私は、やはり国会の規則ということ、国会の規制というよりも、治安出動については、まず国会に諮って総理大臣がきめるという七十六条と同じ取り扱いということが必要ではないだろうか、こういうように考えるわけですが、この点一つ長官の御意見を承りたいと思います。
  99. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 少し余談を申し上げて失礼かもしれませんが、シヴィリアン・コントロールの問題は、今後とも、私がこの任にあろうと、また、私が個人であろうと、事、国防に多少責任を持った人間としては、真剣・に今後も検討していかなければならぬと思うのであります。制度上の問題としても、今後もまだいろいろわれわれは検討をしなければならぬ問題があると思います。それから、制度だけではこれはどうにもならぬ。たとえば韓国の例が、政治が必ずしも人心を得ていない場合におきましては、制度を越えて、あるいは極端な場合には憲法を越えて武力が動き出すということも古今あるわけでありますから、問題は、あるいは制度以前の問題も多分にあろうと思います。それから、制度におきましても、たとえば私はかねてから、はたして今の防衛庁という形でいいのか、むしろ防衛省というようなものにして、そして内局に、ほんとうに防衛をしっかり長い間権威を持って、しかもお互いが畏敬し合うような間柄でもってシヴィリアンの補佐をでき得るような人材養成を将来に向かっては考えていくべき時期に来ているのではないか。単に防衛庁が、人間が大きくなった、予算が大きくなった、そういうような面ではございません。たとえば基地のような問題でも、はたして調達庁というようなところだけでいくのがいいのか、あるいは日米共同使用の問題がありまするが、こういうような問題も、防衛省というようなもので吸収して、ある程度の安定感を与え、そのかわりに、専心腰をおろしてシヴィリアンの立場から長官を補佐していくというようなことがいいのではないかという考え方のもとに、しばしば私は、国会を通して、防衛省ということを申し上げておったのであります。そういうような意味で、田畑先生がおっしゃいますようなシヴィリアン・コントロールというものは研究して参りたいと思います。ただ、ただいまお話のありました治安出動について、国会の承認を得てからというお話は、これは衆議院の段階でもしばしば委員の各位から御意見あるいは御質問がございましたが、私どもは今の段階において、防衛出動は当然これは七十六条で国会の承認を得る、七十八条の場合には、緊急事態に際して、一般の警察力をもってしては治安を維持できない一般の緊急事態というような場合でありますので、警察におきましても、非常事態宣言をするような場合に、国会の承認をいただいていないので、一応行政権の範囲内でやらしていただきたい。それとからみ合わせた場合におきまして、私は現状の法律でいいのじゃないかという所信をしばしば申し上げておるのでございます。
  100. 田畑金光

    ○田畑金光君 この自衛隊法の第三条によりますと、自衛隊の任務ということがうたってあるわけです。それによれば、直接侵略及び間接侵略に対してわが国を防衛することを主たる任務とする。これはあくまでも侵略に対して防衛するということが任務であるわけで、そういう点から見ますと、今あげられました第七十八条の治安出動の問題、この関係を見ますと、第七十八条は、治安を維持する、治安という点からこれは取り上げられておるわけですが、第三条の自衛隊の任務ということを、忠実に防衛するということが自衛隊の主たる任務であるとするなら、やはり侵略という問題については、この七十六条の防衛出動、当然に第三条の解釈としては、これを貫いていくならば、当然自衛隊の任務の一番大事な点はこの七十六条だ、こういうことになってきょうと思うわけです。そこで、私少しく具体的にお尋ねしたいわけですが、この第三条の直接侵略とか間接侵略、そしてまた国会における答弁等を聞いておりましても、非常にいともやさしく、簡単に直接侵略とか間接侵略とか、こう言われておりますが、直接侵略というのは何であり、間接侵略ということは何であるか、あるいは国際法上の定説と申しますか、そういうものがあるのかどうか、あるいは侵略に関する条約、侵略の定義に関する条約、こういうもの等があるのかどうか、この点について一つ具体的に御説明をお聞きしたいと思います。
  101. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 少しこまかいことでございますから、私から御説明申し上げたいと思います。  侵略に関する条約のございますることは御承知通りであります。侵略に関する条約につきましては、第二条に四項目か書いてございますが、これはいずれも侵略ということでありまして、直接侵略とか間接侵略というような使い分けはしておらないのでございます。その後第六回及び第七回の国連総会におきまして、この問題につきましてまた定義を検討されたのでありますが、いずれの場合におきましても、結局結論を得なかったというのが現状でございます。侵略の形が、いろいろと事態に応じて、予想しなかったと申しまするか、いろいろな形が現われて参るものでございますから、その実態に応じまして、定義についてもいろいろむずかしい問題が起こってくるわけでございます。普通の場合、直接侵略、間接侵略と申しますると、国際的に一定した定義は私は存じておりません。しかしながら、普通に直接侵略と申しました場合には、外部の勢力が武力をもって直接に攻撃をしてくるという場合を称しておるように了解をするのでございます。間接侵略と申しますると、これは外部の勢力の教唆、干渉、指導等によりまして内乱または騒擾が起こり、これが主として国内の勢力を主体として発生したものというふうなものを間接侵略と概称しておるように理解して間違いないように一般的に思われます。自衛隊法におきましては、そのような事態にかんがみまして、侵略を直接侵略及び間接侵略と、こう分けて書いております。この場合、間接侵略とは何かというお尋ねがございましたのに対しましては、いろいろむずかしい要件はございまするけれども、この場合において間接侵略と申しまするのは、旧安保条約の第一条に書いてございましたように、一または二以上の外部の国の教唆または干渉によって起こされるところの大規模な内乱または騒擾であるというふうな説明をして参っておるわけでございます。そこで、七十六条と七十八条との関係でございますが、七十六条の場合は、ここには直接侵略という字句は使わなかったのでございまして、「外部からの武力攻撃」というものをつかみまして、こういうふうな場合におきまして第七十六条が発動する。第七十八条の方は「間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては、」云々と、こういう書き方をしたのでございまして、第七十八条の方におきましては、間接侵略と申しまするのは一つの例示になっておるわけでございます。結局第七十八条の発動いたしますのにつきましては、緊急事態というものがございまして、それは、間接侵略の一つの場合でございますが、間接侵略その他の緊急事態がありまして、一般の警察力をもっては治安を維持することができないと認められる場合に、その「自衛隊の全部又は一部の出動を命ずる」、これはどういうふうに違うかと申しますと、これは田畑先生よく御承知と思いますが、七十六条といいますのは、「外部からの武力攻撃」ということを頭に置いて書いてございまするので、主として国際的な関係を想定しておるわけでございます。そこで第八十八条に、「第七十六条第一項の規定により出動を命ぜられた自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる。」「前項の武力行使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し、且つ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする。」というのが、第七十六条に相応する権限と申しまするか、武力の行使の規定でございます。第七十八条は、国内的な緊急事態ということを頭に置いておりまするので、その場合の権限は、第八十九条、第九十条に規定をしてございます。あくまでも国内的な事件として見て、これを処理するための必要な権限を規定しておるのでございます。そこで、扱いといたしましては、第七十六条の場合は、これは国際的な関係でありまするから、これはどうしても国会の御承認をあらかじめ得ることを原則としなければいけない。第七十八条は、一般の警察力をもっては治安が維持できない場合でありまして、警察法におきましては、緊急事態の布告という制度がございます。この緊急事態の布告も、布告をいたしましてからあと二十日以内に国会の御承認を受けるということになっておるわけでございます。その場合と同じようなと申しまするか、その場合に準じた考え方をいたしまして、第七十八条の場合は、出動を命じましてからあと二十日以内に国会の御承認を受けるという建前にこの法律規定されておるわけでございます。
  102. 田畑金光

    ○田畑金光君 私、伺いましたのは、侵略の定義に関する条約というものがあるのかないのかと承ったわけですが、いろいろ文献等を調べてみましても、なかなかこれは適当なやつが見当たらないのでございますけれども、一九三三年の七月のロンドンで署名されたソ連を中心とする東欧八カ国の、侵略の定義に関する条約というのがあるわけです。これによりますと、その前文で、「侵略の弁明のためのすべての口実を予防するため、できる限り正確な方法により侵略を定義することを一般的安全の利益上必要であると認め」云々。でありまするから、この条約の前文を見ましても、侵略の定義というものが非常にこれは重要になってこようと思うわけで、また、その第三条を見ますと、次のような場合は侵略国として認められ、そうして五つの例をあげておるわけです。この条約については、これは国際的にどういうふうにこれは評価されておるのか、この点ちょっと加藤さんから教えてもらいたいと思うんです。
  103. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 今御指摘になりました一九三三年の侵略の定義に関する条約は、これはアフガニスタン、エストニア、ラトヴィア、ペルシア、ポーランド、ルーマニア、トルコ及びソビエト連邦の間に調印されたものでございまして、主として西欧諸国はこれには加入をしておらないように思います。しかし、西欧諸国は加入をしておりませんけれども、これはやはり一つの事実といたしまして、こういう問題の扱いについては、私は参考とせられておることであろうと思うのであります。その後、先ほども申し上げました通り、第六回及び第七回の国連の総会におきまして、侵略の定義の問題があらためて取り上げられたのでございますが、その際に論議の結論を得ませんで、特別委員会を設けてさらに研究を続けようということで現在に至っておるように思うのでございます。
  104. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほどの加藤さんの答弁ですが、自衛隊法七十六条、この防衛出動における「外部からの武力攻撃」、この第七十六条は旧安保の第一条の中には、やはり同じように「外部からの武力攻撃」、こういう言葉でうたわれておるわけです。これは新安保の第五条の武力攻撃ということになるわけですか、これらは同じ内容であると見ておられるのかどうか、承りたいと思います。
  105. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 御指摘通り、旧安保条約の第一条には「外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与」するということが書いてございます。この「外部からの武力攻撃」とありまするのも、それはその前文にもありまする通り、国際連合憲章の目的及び原則に従って解釈をさるべきものであると思うのであります。国際連合憲章の第五十一条に書いてございまする武力攻撃という言葉と同様に解すべきものであると思います。自衛隊法七十六条の「外部からの武力攻撃」もまた同様でございまして、新しい安保条約の第五条はもとより、旧安保条約の第一条の「外部からの武力攻撃」ということともこれははずが合っておると思うのでございます。
  106. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほど私、自衛隊法第三条をあげたわけですが、そこで申し上げたように、自衛隊の任務というものは防衛が中心である、治安確保ではない。治安確保は、あくまでも国内の治安は第一義的には警察であり、それは補充的な意味において自衛隊が国内の治安に当たるものだと考えておるわけで、侵略に対る防衛というのがあくまでも第一の任務である。こういう点から見ました場合、七十六条の防衛出動、この中には間接侵略というものも入るのか入らぬのか、全然七十六条の直接侵略と七十八条の間接侵略という言葉を使いますと、それとは別のものであるのか、重複する面があるのかどうか、その点を一つ伺いたいと思うのです。
  107. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) お答えを申し上げます。第七十六条にいうところの「外部からの武力攻撃」とありまするのは、これは他国からのわが国に対する計画的、組織的な武力による攻撃ということを考えておるのでございます。第七十八条の「間接侵略」とありまするのは、先ほども申し上げましたが、旧安保条約第一条の規定にありまする一または二以上の外国の教唆または干渉による大規模な内乱または騒擾というふうに説明をいたして参っております。で、この意味の間接侵略というものは、原則的には、外部からの武力攻撃の形をとることはないでありましょう。しかしながら、この外国からの教唆または干渉の形が、いろいろと新しい形が出て参りまして、もしもこの外国からの干渉というのが、不正規軍の侵入のごとき形をとりまして、実質的に一国の他国に対する計画的、組織的な武力の攻撃に該当するという場合には、第七十六条の適用を受け得る状態と解釈をする次第でございます。
  108. 田畑金光

    ○田畑金光君 でありますから、第七十八条の間接侵略の範疇の中には、予想される事態によっては、七十六条の直接侵略、これの範疇に入るものが想定される、こういうことだと思いますが、イエスかノーかだけで一つ御答弁願いたいと思うのです。どうですか。
  109. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 第七十六条と第七十八条の関係につきましては、先ほどから申し上げておりまするが、第七十六条は、直接侵略という表現でなしに、「外部からの武力攻撃」という表現をとったわけでございます。第七十六条と第七十八条とは、その意味におきまして、田畑先生のおっしゃる通り、重複すると申しますか、間接侵略でありながら外部からの武力攻撃の形をとるものがありますれば、今申し上げました不正規軍の侵入ということになりますれば、実質的には武力攻撃である。形としては間接侵略であるかわからないけれども、実質的には武力攻撃でありまするから、第七十六条の適用があり得ると、こういうふうに解釈するわけでございます。
  110. 田畑金光

    ○田畑金光君 今、外部からの武力攻撃という言葉で加藤さん答えられましたが、これは私、外国からの武力攻撃が即直接侵略だと、こういう考え方で理解していたのですが、それはどうなのか。  それからもう一つ、自衛隊の任務の中心は、私は、外部からの武力攻撃、この直接侵略に対処する、国を防衛するのがあくまでも自衛隊の任務だ、本来の任務はそこにあるのだと、こう考えておりますが、その点はどうか。  それからもう一つ、今のような外部からの武力攻撃、あるいは直接侵略、これに対して自衛隊は防衛出動するのだ、それでも、なおかつ自衛隊で力が足りない、あるいは防ぎ切れない、そういう想定をして、新安保条約の第五条というものによって、日米共同防衛体制によって戦争の抑制力ということを想定しておるのだと、こういう工合に私は理解しておるわけです。従って、私は、米ソの国際的な、世界的な勢力の均衡を保っておる限りにおいては、この第七十六条に規定されているような外部からの武力攻撃、従って、私は直接侵略だと、こう思うのです。直接侵略、あるいはこれが大きくなれば全面戦争ということになると思いますが、私は、この米ソの勢力が均衡しておる限りにおいては、第七十六条に想定されるような事態というものの発生は阻止できる、こういう私は見方をとっておるわけです。従って、そういう面における自衛隊の役割というものは、私は、今後それほど考慮する必要はないのじゃないかというように考えておるのですが、この点はどうでしょうか。
  111. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 田畑先生の御質問点、大事な点でございますから、私から答えさしていただきます。なるほど、おっしゃいますように、今日全面戦争というものは、強力な核兵器その他の抑制力が働きまして、まず起こり得ないだろうというのが常識論でございます。しかし、同時に、局地戦というようなものから考えますと、一つの直接侵略というものを想定できますが、しかし、これも文明国同士の間では――文明国という言葉が非常に弊害がありますが、近代国家としてはなかなか起こりにくい面もあろうと思うのであります。そこで、次に考えられてくるのが間接侵略でありますが、間接侵略の部分でも、ただいま官房長から御説明申しましたように、七十六条による「武力攻撃」、言いかえれば不正規軍の投入、こういうようなものは、やはりわれわれとしては、できるだけこの想定はいたしたくないけれども、それに対する備え、言いかえれば、それに対する抑制力としては当然考えていかなきゃならぬ。そうなるというと、やはり七十六条というものは、十分私はこれ自体を発動する機会は少ないとは申しましても、やはり一つの条文として、こういう運用上の建前というものをはっきりさしておかなきゃいかぬ。ことに、アメリカのケネディの教書等においても、毎回やかましく言っているように、間接侵略からくる国際紛争、これはまた、間々世界の今日の現状において、各方面において問題になっておる点であります。国内的な問題であると同時に、一方において間接侵略という形をとって、場合によって熱戦になる。直接戦争と申しますか、そういうようなものに発展をしていく。そういう面から参りますと、私は、七十六条というものも十分その趣旨を生かして、国際間の紛争に巻き込まれぬためにも、国民の十分なる御判断を請う、そういう意味で、私は国会の事前御承認というものを想定しておると思うのであります。で、七十八条の方は、あくまでも武力攻撃によらないところの間接侵略、あるいは外部からの武力行動でない、しかも、それが国内的な治安撹乱と、こういうような面から、日本人同士のものではございます。従って、国際的な面が比較的薄くなっていく。そこに事後承認という体制をとっておる、こういう趣旨に私は理解して、また、これでやむを得ないのじゃないか、必要最小限度の方法ではないか、こういうふうに解釈をいたしておるのであります。
  112. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の御答弁は、要するに七十六条本来の、外部からの武力攻撃を中心とする侵略というものは、米ソの勢力均衡下における国際情勢を見通すと、発動する機会はまあほとんどなかろうが、七十八条に該当するような場合であって、間接侵略のうちであって、先ほどの大規模な不正規軍を、ある外国の教唆扇動によって、あるいはある外国から投入されるというようなことを考えた場合には七十六条で律しられる、こういうようなお話で、そうなってきますと、七十六条、七十八条というものは、非常に紙一重の関係というか、そういうような私は関係になろうと考えておるわけです。  そこで、先ほど加藤さんからも間接侵略についての定義がございましたが、一または二以上の外部の国による教唆、扇動、干渉による大規模の内乱及び騒擾、これは大体七十六条に全部入っていくんじゃないだろうか、こういうような見方があると私は観察するわけですが、その他の場合、そういう間接侵略という場合には、あるいは間接侵略を含む緊急事態と、こうなっておりますが、この緊急事態というものの中にはどういう態様が想定されるのか、発生する態様と申しますか、どんなことを予想されるのか、この点について伺いたいと思います。
  113. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) ただいまの田畑委員の質問でございますが、一または二以上の外国の教唆または干渉による大規模な内乱または騒擾というふうに間接侵略を申しておるわけであります。武力攻撃の関係において問題になりますのは干渉だろうと思います。干渉にもいろいろな形がございまして、不正規軍を投入して干渉するというふうなことがありますれば、これは武力攻撃に該当する場合も出てくるであろう。しかしながら、単なる教唆によって、干渉でも、今私が申し上げたような格好でない干渉で、内乱または騒擾を助ける、あるいは支援するというようなことになりますると、これは武力攻撃には該当しないであろうというふうに考えるわけでございます。
  114. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 定数を欠いておる。委員長、注意して下さい。
  115. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 注意しておきます。
  116. 田畑金光

    ○田畑金光君 私、わかりにくいので、事例を引いて、たとえばこの間のキューバの例を見ますと、アメリカにおいて訓練され、武器を供与され、反革命という名前で六千名でございますか、侵入して行ったわけです。これは当然まあキューバという国からいうなら内乱ということになるでしょう。組織的に、計画的に第三国の教唆、扇動、干渉によって引き起こされた、こう見られると思うのです。これはまた今の直接侵略か間接侵略かということになってきますと、間接侵略と見るべきであろうと思うのですが、しかし、またその規模からいって、その背後関係からいって、直接侵略と見られないでもない。こういう場合についてはどのように見られるわけですか。
  117. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) 今おっしゃる通り、そういう点で、非常にむずかしい問題があるわけでございます。キューバの例について考えてみますと、キューバ国民でございます自分の国の国民が、外国なら外国の支援を受けて自分の国へ入って武力を行使するということでございまするから、そういう国籍の問題等も、私はやはりあわせて考えなければいけない。どうしてもこれを直接侵略と申しまするか、と見ることはやはり困難じゃなかろうか。どっちかに区分けして言えということになれば、やはり間接侵略に近い形であるというふうに見ることが適当ではなかろうかと考えております。
  118. 田畑金光

    ○田畑金光君 国籍の点から、しいて言えば間接侵略だ、こういうことで、それ自体はそれでけっこうですが、それからよくまた例に引かれる朝鮮事変に見られるように、北鮮側に中共の義勇兵が参加した、こういうことを過去の例として見ました場合、将来他国の義勇兵が参加して、国内に騒擾、内乱が起きてくる、こういうような場合には、これは当然間接侵略の典型的な事例であって、また、こういう状態というものは、間接侵略ではあるが、第七十六条のこの防衛出動でやっていくのだ、これがこの七十六条と七十八条の関係においてはそのように読むべきだと、こう思うのですが、その点はどうでしょうか。
  119. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) やはり国の意思を背後に背負いまして不正規軍が組織的に侵入してくるとなりますと、これは私は武力攻撃と断定される場合の方が多いだろうと思います。ただその場合も、もう一つ考えられますることは、その規模ということも、武力攻撃という概念に入らない程度のものだったら、これはまた別の問題がございましょう。いやしくも組織的な、計画的な武力攻撃ということに値するほどの不正規軍の投入ということになりますれば、これは日本の場合について考えますれば、七十六条の点において考えるべきであるというふうに思います。
  120. 田畑金光

    ○田畑金光君 そういうふうに見てきました場合に、第七十八条を発動するというような場合は、どのような事態というものが予定されているのか、この点について少し御質問いたしたいと思いますが、たとえば先般参議院の予算委員会で問題になった、治安行動草案、これを見ますといろいろな場合を予定しているわけですが、間接侵略も緊急事態――この緊急事態というものの内容ですが、皆さんとして想定されている事態というものは、一体どんな場合をさしているのか、これをやはり明確にしてもらわぬと、自衛隊の出動ということですから、緊急事態というものはどのような場合を想定されておられるのか、この点を一つ具体的に教えてもらいたいと思うのです。
  121. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) これはやはり具体的な場合について考えられなければならない問題であることは御了解願えると思います。抽象的に申しますと、大規模な内乱、騒擾ということになるのでございましょう。この一般の警察力をもっては治安を維持することができないというのでありますから、警察力という考え方の中には、人数の問題で足りないという場合もありましょうし、あるいは持っている装備の関係で、警察の装備が役に立たないという場合もありましょう。いろいろな形がありまするので、具体的にここで申せとおっしゃいましても、なかなかむずかしいのでございますが、抽象的には、先ほど申し上げましたような大規模な内乱、騒擾というふうにお考えいただきたいと思います。
  122. 田畑金光

    ○田畑金光君 抽象的に議論しているとわかりにくくなるのですが、治安行動基準の中に、炭鉱地帯における制圧行動ということで、炭鉱や工場や電源地帯における暴動ですか、こういうような場合、制圧行動として自衛隊を治安出動させる、こういうことをあげているわけで、七十八条にいわれている治安出動の中では、これは一番低い段階の出動だと思うのですが、たとえば例を引いてはどうかと思いますけれども、昨年の三井三池の争議において、警察が万の単位で、あるいは組合員がやはり万の単位で相対峙した。これはああいう形で事なきを得たわけですけれども、治安出動の中では、そういう場合もこれは想定しているわけです。そこで、実はこういう場合の制圧行動ということについて、皆さんとしては、昨年の三池の争議のような、ああいう事態になればこの行動草案に該当するのか、まあデリケートな問題でございますけれども、お答え願いたいと思うのです。あるいは悪ければ、炭鉱とか工場、電源地帯における制圧行動というものが、どの程度の騒擾度を予定してこれを作り上げておられるのか、承りたいと思うのです。
  123. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 治安行動教範と称します問題が出ましたが、この事態はまだ私どもは研究の段階でございますが、従来、もちろん治安任務というものを持っております自衛隊でありますから、いろいろな教範を作りまして、あるいはまたその研究なり、多少の訓練はしている。時代によりましては、アメリカの翻訳でやった時代もあるというように私は聞いているのですが、問題は、こういった事態に対しましては、もちろんわれわれは当該者として、あるいは総理大臣は最高責任者として、また、各それぞれの単位の者は非常な責任を負わなければなりませんから、その勢力を動かすこと自体については、まず基本において慎重に考える、だから先般も、どちらかの国会で御質問がございまして、昨年の安保の状態でやるのか、私は、あの程度のものではそういうことはやる必要はない、やるべきではないと、こういうふうに申し上げておるのであります。従って、具体的に三池のあの状態のもとにおいて私どもは自衛隊を出動させるということは、あの状態をかりに仮想いたした場合には考えておりません。ただ、それの前提となるいろんな情勢がかりにあった場合でございます。そうして、そこで警察力の支援もなくなってきた、そうして善良なる国民、あるいは財産、生命というものがいろいろそうなれば守られません。そういうような段階において、いろいろな段階があると思うのでありますが、自衛隊というものが働かなければならない、その働き方につきましても、いろいろな働き方があると思うのでございます。武力的な制圧でなくて、ただ部隊が存在し、あるいはそこで動くことだけで、あるいは整理をすることだけでも一つのあれになりましょうし、それから、かりにそれが関連してきて、非常な武装化されてきた騒擾になれば、これはある程度の段階においては、やはりお互いの武器使用というものが起こってくる場合もあり得る、いろいろな段階でいかなければ――要は、私は、ですから指揮をとる、あるいはそれからさらにその上の命令を決心する、あるいは指導を決心する者の責任は重大であることは当然だろうと思うのであります。昨年の安保であるとか三池の段階におきましては、私どもはまだその警察力の支援、警察力をもっては治安を維持することができるとかできないとか、こういうふうに判定すべきではない、これは国会を通して申し上げておるのであります。
  124. 田畑金光

    ○田畑金光君 今長官の御答弁の中にありましたが、治安出動時における行動基準、これはなるほど予算委員会に提案された資料を見ましても、最後のところに、「以上の要領を骨子として、治安出動に際し、部隊運用の一般的基準となるべき(治安の草案)を検討しておる」、これはいつごろでき上がるのか、私は、おそらく岩間君が拾ったという内容とそう変わったものができるとは見ていないわけですが、まあそれはそれとして、いつごろでき上がるのか、これが一つです。それから、でき上がったものは一体公表されるのかどうか、これが一つです。それから、なぜこういうことを承るかというと、先ほど防諜法の問題で、軍の機密の保護という点で私お尋ねしましたが、具体的な事例として、たとえば治安行動草案等については、これは相当軍の運用、軍の行動についての機密に属する事項があろうと、こう思っておるので、こういう点について、こういう草案等については発表されるのかどうか、それとも、このような草案の内容は軍の行動の機密に属することであるから、これは発表できないのだと、こういうことなのかどうか、具体的な事例としてたまたま出ましたからお尋ねしますが、今の点について一つお答え願いたいと思います。
  125. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 大事な問題でございます。ことに、もちろん国民に影響力がある仕事でありますから、われわれは慎重にしなければなりません。従って、従来もいろいろな案を練って参りました。今回もまだ草案の段階において練っておる段階であります。今後これを多少部隊に適用してやってみて、そうしてそれに弊害があるか、むしろ弊害なくして治安維持と申しますか、そういう効果をつかみ得るか、そういうところの研究の段階において私どもは結論を得たい、こう思っております。そこで、できればこういうものはやはり早く結論を得るべきだと思っておるのであります。  いま一つは発表の問題でございます。これは私はもちろんいろんなやり方があると思うのでありますが、この中でもって、もちろん国民に知っていただいていいものもあろうと思います。また、部隊運用とさっきおっしゃいましたが、部隊運用などを、具体的にいろんな編成上のことを考えていきますというと、必ずしもそこまで国民に知っていただかぬでもいいものもあろうと思います。また、国民には、むしろ私は堂々と公開して知っていただいていいものも相当あろうと思います。そこいらは今後検討の段階において私はよく分けて、そして国民に、ことに善良な生活を送っておられる国民に対しては、むしろ安心感を与えるというような意味においての草案というものの結論を得てみたい、また、そういうような方向での発表をしてみたい、こういうのが私の考えでございます。
  126. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の御答弁によりますと、この草案については、発表して国民に理解せしめる内容と、あるいは発表しないで、まあ発表しないということは、軍の行動の秘密として確保する、二つの内容があるというお話であるわけです。私が先ほど申し上げたように、おそらくでき上がるであろう内容は、すでに暴露されたというか、公表せざるを得なくなった、前の草案とそう違ったものが出てこないだろう、こう見るわけです。しかも、私は、公表されたというよりも、公表せざるを得なくなった内容を見てみますと、この内容に予定されているような事態というものは一体どういう内容であるか、先ほど加藤官房長、あるいは長官の御答弁によりますと、昨年の安保のような騒動等は適用範囲外だ、三池争議のような場合も、これはもちろん適用外である、けっこうでございますが、そうしますと、一体緊急事態というものはどういう点を予想されておるのか、先ほど来質問をしてみますと、いつもきまって御答弁なさるのは、一または二以上の外部の国の教唆、扇動、あるいは干渉によって引き起こされた大規模な内乱及び騒擾、こういうことで逃げておられるわけです。暴動に対するしからば概念は何かということで、この資料を見ますと、これ自体はまた非常に大きな内容の問題です。私はこういうことをかれこれ見て参りますと、結局七十八条による命令による治安出動という場合は、結局七十六条の外部からの武力行動、これと全く紙一重の関係にある、いずれの場合も内閣総理大臣が判断して、このときは外部からの武力攻撃で防衛出動だ、この場合は七十八条による間接侵略も命令による治安出動だ、こういうことで、すべてが総理大臣の認定にかかっておるわけです。しかも、内容を見ますと、七十六条と七十八条との関係というものは非常に接触して、紙一重である、こういうことを私は考えてみますと、先ほど質問申し上げたように、やはり私は七十八条による治安出動というものは、国会のコントロールというものをまず第一義的に考えてもらわなければ、今後の防衛体制の強化という点から見たとき、しかも、今後の自衛隊の任務というものは、どうしても命令による治安出動、こういうようなところに多くの事例が予測されるわけで、そういうことを考えてみますと、どうしても私は七十八条の場合は、これは国会のコントロールを第一義的に考えるべきだ、こういう解釈を、あるいは意見を持たざるを得ないわけですが、この点あらためて長官の意見を承りたいと思うわけです。
  127. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  128. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 速記をつけて。
  129. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) もちろん一つの御意見だと私は思うのであります。ただ、御存じの通り、七十九条をごらんいただきますと、治安出動待機命令というのがございまして、これによりまして、予測される場合においては、これに対処するため防衛庁長官は出動待機命令を発する、このような場合においては国家公安委員会と緊密なる連絡をとる、先般もたしか山本さんでしたか吉田さんでしたか、御質問がありましたが、国家公安委員会と、現状におきましても、抽象的ではありますが、基本的な治安維持に関しての防衛庁側と警察側の協定もできております。それらの精神をくみまして国家公安委員会と緊密な連絡をとって、その上で今度は総理大臣が判断する。従って、おのずから事態に対しましては、一般の警察力をもってしては治安維持ができないという判断の問題は、国家公安委員長、国家公安委員会の判断というものも、相当私は総理大臣の判定の前提としてあり得る、こういうふうにお考えいただくというと、これは直接侵略、あるいは武力によるところの侵略による七十六条とは、国内的措置としては違っていいのではないか、それがすなわち七十八条の事後承認の規定になっておるのではないか、こう思うのであります。その点は御意見としては私も一つの御意見、考え方になるでありましょうが、われわれはそういう建前で、現状の法律でいいのではないか、こういう解釈、態度をとっておる次第でございます。
  130. 横川正市

    ○横川正市君 まず一番最初に、長官にちょっと情勢の判断でお伺いしておきたいと思うのでありますが、アメリカ大使館の交換局から最近参りました新方策のうちのホールズ国務次官の演説の中にこういう一節があるわけです。「現在の平和は、せいぜいよく見て相互の恐怖を土台にして危うく保たれた平和である。また、せいぜい悪く見れば、野心的な支配者側の悲劇的な誤算や、あるいはちょっとした技術上の錯誤によっても起こり得る核戦争の可能性に絶えずさらされつつ、とめどもない軍備競争という危険に直面しておる、」こういう判断があるわけでありますが、おそらくアメリカと日本との置かれておる今日の状態からすれば、この考え方は共通するものではないか、こういうふうに考えるわけでありますけれども、この点長官にまずお伺いいたしたいと思います。
  131. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私、新聞等でホールズ次官の発言等はたしか拝見いたしたように思いますが、それがいかなる場合に、いかなる立場で発言されたか私存じません。たとえば国会における証言であるか、あるいは何かの会合においての公式の演説であるかどうかでありますが、基本的なアメリカの考え方の一つであろうと思います。それが全部とも私は受け取れない。また、事柄はアメリカ自体が国防安全の立場から発言したのでありまして、必ずしもその事態をもってこれを日本の自衛隊の基本的な態度にとろうという考えはないのであります。やはり私は非常に今日の平和というものが、いいかげんな、ただもう綱渡りをしておるような平和だとは考えたくない。しかし、といって、それでは平和に対する抑制力として自衛隊というものが整備されなければいけないという点では、やはり平和に対して必ずしも抜本的な平和の状態に入っておるとは思っていないのであります。また、核兵器の問題になりますと、私ども自体が大規模の核兵器を持っているわけではありませんし、経験もないものでございますから、これはアメリカなりソ連なりのそれぞれの意見というものを参考にしながら、一つの政治的意見を持って自衛隊を運営して参る以外にない、こういうふうに思います。
  132. 横川正市

    ○横川正市君 私は、アメリカの戦略的な立場から発言される内容というのは、日本の防衛任務につかれておる皆さん方には、もっとぴんぴんとはね返ってくるべきであって、常識的な判断で理解することはされておらないのではないか、こういうように考えたので一節引用したわけであります。  そこで、三十五年の「防衛庁の現況」を見ますと、その中には、結局日本国憲法の中にのっとって、決意を、平和と防衛と自衛隊とこういうふうに関連をさせて説明をいたしておりますが、その中段からうしろの方に、大体自由国家群と共産圏との対立関係があって、その対立関係の中には、平和共存の方向ということがいつでも危険にさらされている。そういうところから防衛の任務というものが必要であって、ことに国際平和及び安全を維持するためには、われわれは力を合わせてその一つの理想の姿を作っていかなければならぬと、こういうふうに理解をいたしておるようであります。  そこで、国際的な一つの立場に立ちますと、今もって激化の方向をたどっている。平和共存への努力はされているけれども、大きな障害にぶつかって、その方向というのはまだ不安定であって、言いかえれば、その逆の激化の方向をたどっている、こういう判断をしているわけですが、長官としてはこれをもちろん「防衛庁の現況」をお認めになっていると、かように思いますが、その通りですか。
  133. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) お答えいたします。言葉の表現としては、あるいはいろいろな御議論が立つかもしれませんが、大きな方向としては、私は、世界各国が国連を中心に、あるいはその他において平和への努力を払っていると思います。しかしながら、現実の姿においては、なるほど世界的な全面戦争は、一応常識あるいは通説としてあり得ない、また、ないことを望んでおるようでありますけれども、局地紛争、これからくるところの諸般のいろいろなトラブルというものは、御承知通り、起こっておるのでありまして、それに対する抑制力、あるいは実際の行動力としてそれぞれの国が軍備を整備していく。また、私どもとしては、それの許されたる範囲、また、可能なる範囲において防衛努力をいたしておるのでございます。そういう趣旨の説明だと思うのでございます。
  134. 横川正市

    ○横川正市君 そこで、日本の防衛の必要性といいますか、国防の基本方針の中にこれは書かれておるわけでありますけれども、そのことの一環として、この「現況」の中の三ページに紛争発生の年表というのがありますが、これによりますと、①から=のコンゴの紛争まで、さらに=に南朝鮮のクーデターが今度入ることになるわけでありますが、その中にアジアの紛争状況は①のインドネシア、それから③のインドシナ、④のマラヤ、それから⑧の朝鮮戦争、⑰の金門島の砲撃、それから⑲のチベット、⑳のラオス、=の中印国境紛争、=のコンゴ紛争、そうして=の南鮮、こういうふうに、取り巻く情勢は、きわめて遺憾な状態が発生しておるわけでありますが、これは私は、一つは第二次欧州大戦後のいわゆる民族主義的な独立思想が非常に活発になって、低開発地域における経済的な悪条件、いわば反動的な、独裁的な政治の中で押さえつけられておったものが、第二次大戦後はね返してこういうような事態が起こったということで、いわば第二次大戦のあとの余じん、いわゆる平和を希求するすべての世界国民の願いというものが、なおかつ余じんとして、その願いを完全にしておらない、こういうふうに判断をするのか、それとも、この紛争は、やがて来たるべき非常に危険な第三次世界大戦というものを想定するような要因をこの中に含んでおる、こういうふうに判断するのか、これは私は非常に現状判断としてはむずかしい両方の意味が含まれておるんだと思うのでありますけれども、ただ、この防衛の基本の中に、少なくともアジアにおけるところの幾つかの紛争というものが影響されるということで基本構想が出ているという、こういう書きっぷりでありますので、その点から長官に判断をまずお聞きいたしたいと思うわけであります。
  135. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) なかなかこれは御意見がむずかしいと申しますか、意見としては、いろいろな見方は情勢判断として、ことに将来に向かっての世界史の変化でございますから、大いに意見があり、また、意見を交換すれば長時間にわたってしまう問題でもあろうと思うのでありますが、私は、わが国の国防としては、やはり平和を念願する。だから私どもは自衛隊というものは平和への部隊であって、戦争そのものは予定しないようにはしたいが、しかし、それだからといって、守るためには訓練し、規律し、規律も厳重にしていく、そうしていくこと自体が平和撹乱への抑制力にもなり、第二にしては、私は、事、外交とかその他の問題でもって処理をしてもらいたい、こう考えております。で、全面戦争は、世界的には抑制力によって起こり得ない可能性が多いが、しかし、局地戦争は現実に起こっておる。そういうものは、しかも比較的近い所に数多く発生している、その上に立ちまして、国際間の確かにそれぞれの立場というものがあるわけでありまして、大国間にも立場があります。ことに私が一番懸念する言葉は、国際共産主義の間におきまして、往々にさっきおっしゃいますように、民族の解放戦争は正義の戦いである、こういう言葉がしばしば使われるのであります。これは残念ながらお隣りの中共の正式の権威者によりましても是認されておる言葉であります。解放戦争は正義の戦いである。戦争を是認しておる。こういうようなところから、今後私は国会を通して、国際共産主義の脅威というものはあるんだ、このもとにおいてわが国の国情、国力に応じた自衛というものをこの基本に置いて考えつつ、足らざる部分は、国連の思想に基づく集団安全保障体制で補なっていかなきゃならぬ、これが私どもの自衛隊の運用と申しますか、基本の立て方になっておるわけであります。
  136. 横川正市

    ○横川正市君 私は、この前提の中に、防衛庁の防衛思想の根底に横たわっている厚い壁というようなものが、ひいては国内的に三十八度線が引かれるような結果になることを、私はいずれの立場にあっても、懸念を持って見ることは非常に危険だというふうに考えるわけであります。同時に、また先ほど田畑委員の質問の中で、国内の政治が姿勢が正しくなくて、そして経済的な疲弊がきて、そういった状態が起こったときに、現在の自衛隊の国内におけるところのいろいろな活動の中で、南朝鮮のような事態が起こらないとも限らないような、そういうとられ方のできる説明をされたこと、非常に私は遺憾だと思うのです。どういう場合であっても、私どもはやはり民主的に選ばれた代表者の手によって、国民の良識の上に乗っかった政治というものがあるのであって、それが武力によるところの力によって姿勢を正すような方向というものはとるべきでない、また、そういうことをすべきではない、これは絶対的な要件だと心得ておるわけでありますが、先ほど、まあ言葉じりのようでありますけれども、長官の説明の中に、何か政治の姿勢が正しくなくなると軍が蜂起してもこれは仕方がないというようにとれるような説明がありました。まあこの点は一つもう一度お伺いいたしたいと思います。それと同時に、私は、国防の根本的なあり方の中に、アジアにおけるところの紛争が非常に激化し、ひいてはこれは日本に影響することが大である、こういうふうに考えるのであれば、これは激化の原因というものをやはり事前に私どもは察知をして、一つ一つそれに対する対策を立てていく、そのことが非常に大切なのではないか、こういうふうに考えるわけです。  第二点としては、その激化の方向にどのように対処されているか。それからもう一つは、いずれの国も経済の自立、それが不安定のままこういう状態が起こっておるわけでありまして、日本の平和といいますか、経済の安定といいますか、そういったものも、これは貿易に非常に大きく依存するところがあるわけでありまして、そういう点から、私は、各国の経済の自立について相当程度深い考慮を払われてしかるべきじゃないか。第三の点としては、この点をどのようにされているか、これをお聞きしたいと思います。
  137. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 最初に、シヴィル・コントロールの問題でございまして、これを御理解をいただきたいのでございまして、私の真意は、シヴィル・コントロールは絶対に立っていかなければならない、この基本の意味で御説明申し上げたのであります。かりにシヴィル・コントロールがそれでは制度的にどうやったら立つか。現在もう御存じの通り、国会は憲法によって国家の最高機関である。それによってきめられたる防衛庁法あるいは自衛隊法によって自衛隊あるいは自衛隊の軍的能力をコントロールはいたしておるわけであります。ただ問題は、制度だけではいけないというのが私は基本観念であります。制度を幾ら立てましても、かりに――日本には現在ございません。民主主義がかなりよく理解されつつありますが、お隣りの韓国の例を引いて悪いのですが、そこに政治というものが混乱して、民主主義が破壊されますというと、制度をこえて今度は実力が動く、そこに私はやはりいかなる立場の者であっても、政治というものは真剣に取っ組んでいく姿を絶えず出すことが軍をコントロールする基本の態度ではないか、この気持で政治に対する  これは私だけではございません。全般の態度ともいうべきではないか、こういう趣旨でございます。従って、あくまでも民主主義の上に立っての政治、それについてのシヴィル・コントロール、これを確立していくべきじゃないか、こういう趣旨を申し上げたのであります。いわんや力によって政治を変えるなんということは絶対に避けるべきです。こう考えております。  それから、アジアにおきまして激化の方向をたどっておる、この判定もなかなかそれはそう簡単に一口に激化の方向をたどるのかたどらぬか、大国間におきましても平和への努力も相当やっておられる。たしか二、三日うちにウイーンにおいて両巨頭が会って平和への努力をされるのです。国連もありますから、簡単に激化の方向をたどると断定もしにくいかもしれませんが、しかし、現実はやはり絶えず局地混乱が続いている。これに対しましては、日本としては、防衛庁といたしましては国内の自衛でございますから、国内の自衛努力をいたして、それによって多少でも世界平和を撹乱することを抑制する力として備えて参りたい。同時に、あとは外交等の問題にお・いて、国連を通し、その他の外交活動でいろいろアジアに対しても手は打っていくべきじゃないか、国がまだ力が十分でないとしても、その努力は政府全体としてすべきじゃないか。たとえば各国の経済低開発国に対する各般の外交的施策というものも、当然その間において考究され、また、実行されていくべきじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。
  138. 横川正市

    ○横川正市君 最後に、今質問した三つ目の防衛の問題では、関連性のある問題として、経済の自立ができるかできないかが、これが非常に大切な問題だといわれておるわけです。もちろん私は、国内の防衛だけをしておれば事足りるという、そういう状態にはなくて、集団安全保障の方向に大体まあ進んでいるし、その方向をとって動いておるわけでありますが、そうなって参りますと、集団の中で、片一方は米国が介入した国とソ連が介入した国と、二つの集団に分かれておる。その二つの集団の中で、常に米国のいわゆる自由国家群といわれる西欧の陣営の中に今いったように紛争が次から次と起こってくる。こういう事情の中で、当然私は、経済的な問題もこの根底にはあるわけでありますから、これら等も考慮をして一つの計画というものを立てられていいのではないか。そういった点をどのように分析をされておるか、これは総理かだれかほかの人に聞けば、外務大臣に聞けばいいのかもわかりませんけれども、しかし、防衛庁の防衛の一つの根本的な方針の中には、こういったものが私はやはり判断としてはあると思うのです。そういう点から長官の所信をお聞きいたしたい、かように思っております。
  139. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私も、もちろん防衛庁長官でございます。特に防衛庁長官が、長官の立場におきまして、外交あるいは内政の他の分野に強い考え方を持つこと自体がシヴィル・コントロールを満たすゆえんでもあろうと思います。それはきわめて謙虚な態度でありますが、同時に、閣員の一人に列席をいたしております。また、先生のおっしゃるように、間接的には隣国あるいはアジアが、他の面で経済自立をしてくれること自体が、あるいはその民度が上がり、文化が開発されることが、また日本の安全にも寄与して参るわけであります。従って、たとえばOECDの問題であるとか、あるいはガリオア、エロアの返済等を通しても、何らかの形でそういったような国々に寄与できるとか、あるいは技術の交換であるとか、もう一つは、私は、やはり政府でも唱えております国連の強化と申しますか、国連外交の強化、これは集団安全保障をそれぞれの系統の国がやっておりましても、国連という話し合いの場をより私は充実することによって世界の危機感、あるいはアジアのいろいろな諸問題というものが少しでも解消していくのではないか、こんなような考え方で閣員の一人として政治に参加させてもらっておる次第であります。
  140. 横川正市

    ○横川正市君 以上のような一つの周囲の判断を基準として国防計画がなされておるわけでありますから、そういう意味で質問をいたしたのでありますが、非常にもっと的確に、私は、軍事評論家から聞くようなものでない説明があっていいのではないかと、こう思っておったわけであります。  そこで、先般も質問をいたしたわけでありますが、それと関連をして、この防衛の一つの非常に大切な分野として情報の収集、これがあると思うのであります。その点で今自衛隊、防衛庁では、情報の収集を取り扱っているのは一体どこの課でこれを取り扱っているのか。それから国内情報とか国外情報、いずれもこれはいろいろあると思うのでありますけれども、これは一体、単に新聞とか通信とかということでやるのか、それとも何か特殊な方法か、あるいは機関を通じてやっておるのか、この点をまずお伺いします。
  141. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 日本の防衛、あるいは外交面におきましても、私はまだ情報機能というものが十分でないということは感じております。一番大事なことは、何と申しましても、誤りなき情勢を把握して誤りなき判断を下すことが、まず外交や防衛の先決問題ではないか、その意味で、防衛庁は徐々にその整備をはかっております。今回の二次防衛力整備計画におきましても、通信とか情報とかというものを多少はやはり整備していかなきゃならぬと思います。ただいま情報収集を取り扱っておるのはおもにどこでやっているんだと、これは内局とか、あるいは制服の方でもやっておりますので、これは防衛局長からさらに詳しく申し上げたいと思います。  それから、特殊な何かことをやっているか、これはまだわれわれの方としてはやっておりませんが、外国の通信、あるいは公開された通信を受けるとか、そういうようなことや、それから海外へ、御存じの通り、ある程度の駐在の自衛官と申しますか、一種のアタッシェという言葉が当たるかどうかでありますが、駐在の自衛官というものを欧州あるいはアメリカその他へ送っておるのでありまして、詳細につきまして防衛局長から御答弁申し上げます。
  142. 海原治

    政府委員(海原治君) ただいまの長官のお答えを補足いたします。  最初に、情報収集を取り扱っている局につきまして御説明いたしますと、いわゆる内部局におきましては、防衛局の第二課でございます。それから統合幕僚会議の事務局におきましては第二幕僚室、それから陸、海、空の三自衛隊の中央の機関でございますが、それぞれ幕僚監部におきましては、陸上幕僚監部は第二部、海上幕僚監部におきましては調査部、それから航空幕僚監部におきましては防衛部というものがこの関係事務を取り扱っております。それからそれぞれの部隊におきましては、各地方の総監部におきまして、それぞれ対応いたしますような組織がございまして、情報の収集であるとか調査ということを担当しております。  それから第二点の、現在の情報収集のソースと申しますか、ということについてのお尋ねでございますが、これは主としていわゆる文書情報というものでございます。すなわち、海外におきますいろいろな新聞、雑誌であるとかというものの調査研究を主といたしております。特に現在七カ国に九名の駐在官を出しております。これは外務事務官の身分を兼務いたしております。それぞれの任国におきまして、防衛関係、国防関係の諸事情の調査をいたしまして、これの報告はそれぞれの大公使の手から外務省へ一応参ります。外務省におきましてこれを整理いたしましたものを防衛庁は公式に受け取る、こういう関係で私どものところでは国防関係のいろいろな情報調査というものを入手しておるということでございます。
  143. 横川正市

    ○横川正市君 今言ったようなソースの取り扱いですが、これは文書ということですが、それ以外に暗号とか、あるいは電波の傍受とか、そういったことはあわせてやっておらないのですか。
  144. 海原治

    政府委員(海原治君) 最初のその暗号の点でございますが、これは、国内、国外いずれもやっておりません。ただ、自衛隊の部隊間の通信におきましては暗号を用いておりますので、その方面研究、実施ということはいたしております。さらにいわゆる電波の傍受ということは実施いたしておりません。ただ、軍事に関します海外の放送というものは、それぞれのところで聴取いたしております。
  145. 横川正市

    ○横川正市君 この駐在員は七カ国です。九名とありますが、そのほか内部の内局、それから統幕、陸、海、空と、このそれぞれの情報収集を担当している人数はどのくらいですか。
  146. 海原治

    政府委員(海原治君) 一応各国自衛隊を含めまして幹部クラス、いわゆる昔のまあ尉官以上でございます。これにつきましての総数を申しますと、大体定員が九百八十名程度でございます。現在員はその約九割という状況でございます。
  147. 横川正市

    ○横川正市君 このニュース・ソースがまあいろいろ入ってくるわけでありますが、判断をする、そのなまのままのものじゃおそらくこれは問題にならないわけで、それを総合して判断する何か特別な機関があるのか、それとも、この判断は一体だれがやることになっておるのですか。
  148. 海原治

    政府委員(海原治君) 先ほど申し上げました陸、海、空のそれぞれの幕僚監部の部の長でございますが、そこがそれぞれの判断の責任でございます。具体的に申しますと、さらにたとえば海上幕僚監部の調査部の中にはその関係の課がございます。一応その課長のところでそれぞれの情報の分析、検討、その価値判断等が行なわれますものを持ち寄りまして、毎週防衛局の第二課長が主宰いたします情報関係の分析検討の会がございます。そこにおきましていろいろの情報の判断、見積もり等をいたします。さらに先ほど申し上げました外務省を中心といたします関係部局の調査会議というものを持っております。そこにおきましても海外の情勢の判断をする、そういうものが全部一応整理されました形が、先般も申し上げましたように、週報なりあるいは月報なりという形で長官のところへ提出される、重要なものにつきましてはそのつど長官に報告する、こういう仕組みで運用いたしております。
  149. 横川正市

    ○横川正市君 私は、平時ですから、問題が、かりに日本以外の国で起こっても、まくらを高くしているという現状は、これは許されると思う。しかし、先ほど言ったように、紛争発生の状態をアジアに見ますと、ずいぶんたくさん起こっておりますし、これからもまたそういう要因がないというふうには考えられない。そういう紛争が、直接日本の防衛の任務についている人たちには非常に大きな影響力を持っている。そうなると、ことに一番近い問題としては南朝鮮の軍によるクーデターが、これは大平官房長官の新聞報道によれば、駐在のアメリカ軍さえ知らなかったのだから仕方がないというようなことで済まされておりますけれども、実際上の問題としては、そういうなまやさしいものではなくて、もっと事前にキャッチしなければならない問題なのではないか。ことにこの点では、たとえば南朝鮮の李承晩ラインをめぐって、私は今どうなっているか、これはわかりませんが、海上保安庁の巡視船は出動いたしておりますけれども、海上自衛隊は現地に出動をしておらない。これはまあ国際間のいろいろの関係があってやれないのだろうと思うわけでありますけれども、しかし、このことは非常に私どもは不思議に思うのは、もしアメリカが駐在するあの南朝鮮の状態の中で、アメリカ軍のいわゆる国連軍としての指揮下にある朝鮮の正規の軍隊が右翼的な行動を起こした。もし間違って、たとえばキューバにおけるところのカストロ政権のように、かつてはアメリカに行って大歓迎を受け、いわゆる米州機構の中のキューバの代表者としては歓迎される立場にあったものが、一朝にしてソ連圏と手を結んでアメリカとの間で紛争を起こす、こういう結果になってきた。また、中東、アジアその他においても、今までは自由国家群の一員として忠誠を誓っておるところが、日ならずしてその反対側の立場に立つ、あるいはエジプトにおけ場合も同じ経過をたどっている。そういうような状況下で、今私は南朝鮮の状態が判断ができかねるというのは、そういう要素もあるのではないかと判断をする直接的な問題と、もう一つは相当長い期間紛争が続いて、やがては南ベトナムあるいはラオス、インドネシアというような状態が、あの経済の悪さ、それからいろいろな外部からの働きかけ、人間の思想というものは一貫しておらないという信頼性に欠ける問題等から勘案してみて、相当危険な状態が起こり得る可能性があると見る向きもあっていいのじゃないか。そうなってくると、いろいろ重要な問題が南朝鮮のクーデターの中には要素としてはあると思う。今はそういう結果にはなっておらないので、判断をして時期を見て云々ということは言っておりますけれども、そういう要素があるものが、今のこの九百八十名、この九割程度といいますから、そういったことで軍事上の情勢としてどうして判断がつかなかったのか。これは私どもとしては非常に不思議に思う点なんでありますが、一つ説明をしていただきたいと思います。
  150. 海原治

    政府委員(海原治君) 今、先生がおっしゃいましたように、これだけの人間がおりながら、どうして判断がつかないかということになりますというと、私どもとしましては適当なお答えがないわけでありますが、まず第一には、私どもは朝鮮の内部に、具体的にいろいろな国内の状況を調べますようないわゆる公館と申しますか、駐在機関と申しますか、そういうものを持っておりません。従いまして、もちろん隣国のことでございますし、いろいろな問題もございますから、いろいろのソースとか、あるいは公開の文書、情報であるとか、あるいは向こうに行った人の話であるとかいうことで、いろいろの判断の可能性というものについては検討いたしております。しかし、先般長官なり、あるいはその他の方からお答えいたしましたように、ああいうふうなクーデターが成功したということ自体が、非常にそういうような事前情報の入手ということをきわめて困難ならしめる。ある意味におきましては、革命をした立場におきましては、きわめて厳格に秘匿された状況下に置かれたということでございますので、これは事実上私どもとして何ら情報が入手できなかったということにつきましては、まずまずやむを得なかったというふうに実は感じております。先ほど先生がおっしゃいましたように、米軍はあすこに相当数の顧問団をかかえております。現実に韓国の軍隊の指導に当たっておりますが、そういう関係にありながら、米軍自体、そのことについては何ら知らなかったということで、私どもの怠慢であるというようなおしかりは一つ御容赦願いたい、このように考えております。
  151. 横川正市

    ○横川正市君 私は怠慢だと言っているのじゃありません。なぜそういうことが事前にキャッチされなかったのかという理由をお聞きしているわけであります。ただ駐在官もいないし云々ということのようですが、私はある程度は、何といいますか、ソ連の内部事情等についてもずいぶん事情聴取をして、ある程度のものは持っておるのじゃないかと思いますが、あの中国の事情についても通じ、北鮮の事情についても通じているのじゃないか。それなのに、南朝鮮のことに関しては知らなかった。こういうことは一体原因はほかに何かあるのじゃないかと勘ぐられても仕方がないのじゃないか。ことに李承晩ラインに対しては、日本の一般住民でありますところの漁船が平和的に作業しておるものが拿捕されても、海上自衝隊は出動していかないで、海上保安庁の警備船だけが、これを何隻つかまったかというのを見ているだけである。こういう状態に置かれておるというところからも、この問題については問題が勘ぐられるのじゃないだろうか、こういうふうに思うわけです。  もう一つは、これは長官にお聞きしたいのでありますが、たとえば南朝鮮の軍の指揮系列下の中で、国連軍の指揮下にある部隊ないしは大統領の指揮下にある部隊で、中距離弾道弾のようなものを持っておって、何かの間違いで日本に一発ぶっ放してしまう。ところが、日本は、これは南鮮からきたのでなくて、北鮮からきたのだろうということで行動を開始するなんというようなことが一体起こった場合にどうするのか。そんなことは万々ないといえばないことなんでしょうが、しかし、危険な一人の非常に過激な者があってそういうことをやらかすようなことがあったら、これは私は大へんなことになるのじゃないか。幸い朝鮮の軍隊はミサイル兵器を持っておらなければ一番いいわけでありますけれども、そういう勘ぐりも受けるわけでありまして、私は責任を追及するのでなくて、なぜその情報がわからなかったのか、この点を一つ明らかにしてもらいたい。
  152. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) もちろん韓国の民情の分析ということは、これは平素も多少やらなければならぬ。私どもも当時、前にも四月革命ということ以前に、あるいは多少の軍のクーデターについて、何らかの異変があるのではないかという判断をしたこともあります。ただ問題は、今回の事態につきましては、全く私どもはキャッチができなかった。まあ一つは、これは非常におしかりを受けるかもしれませんが、冗談でありますが、ある国会議員の方がナセルに会って、なぜエジプトでクーデターが成功したのか、クーデターの成功は秘密保持が絶対だ、それで成功したのだということをナセルに会ってきたという人から間接に聞いた。そういう意味で、今回のクーデターというものは、かなりその秘密保持というものができておったのではないか、こう理解できるのであります。ただ私どもは、たしかあれは部隊が一部動き出したのは午前一時、そして午前三時ごろから京城で始まってきたのでありますが、私どもの手元に第一報が入って参りましたのが五時ごろですから、そう私は起こった事態に対してはおそい状態ではないと思います。ただ防衛庁としては、国民の防衛というものから、韓国その他のいろいろなあるいは隣国の状態、異変というもの、緊急状態というものに対しては、不断にやはり許された範囲内においての情報、あるいは情勢分析をしなければならぬと思います。今日も、従って必要な情報については、不断に国連軍の系統から出て参ります情報もありましょう、米軍の。また、われわれ自体も判断できるものは努力するように、土曜、日曜でありましても、関係者は不断に勤務をさしておるわけであります。  なお、それから韓国から直接中距離弾道弾というお言葉がありましたが、現在私どもが知っておる範囲内において、韓国軍が中距離弾道弾を備えておるというふうには聞いておりません。むしろ駐留米軍は多少のそういうミサイル装備を持っているというふうに私どもは理解いたしております。
  153. 横川正市

    ○横川正市君 今の問題は、防衛という観点からすれば非常に大切な問題だと思うのでありますが、これはいわば不満足な状態である、こういうふうに私どもは認識せざるを得ないわけなんです。  それからその次は、最近ライシャワー大使が演説をいたしまして、日本を大へんほめているわけです。そのほめた中に、日本は世界史を変える大きな力を持った国だ、こういうふうに言っておるわけです。これはどこをこういうふうに言ったのか、非常にとっぴな言葉なので、私どもは判断にちょっと苦しみましたが、そういうものが一体何なのか、私どもとしては非常にわかりかねる内容の演説だったと思うのであります。しかし、この日本の場合には、集団安全保障体制の中で、少なくとも大きな役割を果たし得る能力を持つ。そういうことになれば、この第二次防衛計画ですか、それ以前、今度のこの防衛二法が通ってその配備が完備いたしますと、大体アジアでは最強の軍備を持つことになる、そういうことが一つ。それからもう一つは、技術的に非常に進歩をしている。それから国民性その他がアジアにおける各国の国民と比べてみて優秀である、いろいろなものがあるのだと思うのでありますが、防衛庁長官としては、その一つの要素を、あなたの任務としておられる防衛についている力、こういう点でそういうふうに自負できるかどうか、一つお聞きしたいと思います。
  154. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) ライシャワー氏は、御存じの通り、歴史の研究家でございますから、日本に生まれ、育ち、そして日本人的な非常に感覚をお持ちになっておりますから、必ずしもその御発言が、単なる言葉の表現よりか、もう少し根深い、よく日本人を、あるいは日本の国情を知っての御発言ではないかというふうに理解いたしております。それは幅の広い意味で私は受け取っておるのでありまして、世界史を変えるだけの資格のある国であるという意味は、大きく言えば世界の平和努力にも寄与できる国である。その平和努力の一環としては、もちろん長い日本のよい意味の文化、伝統、歴史というものもございましょう。日本人の優秀な勤勉な資質とか、いろいろなものをライシャワー氏は礼讃してくれたのじゃないか。また、かたわらゼロになりました自衛力ではありますけれども、しかし、とにかく貧弱な国力あるいは財政力の中からも、一応どうやら自衛隊というものが形を作り、そうしてやっているということも、私はそれは計算の中に入っていると思います。じゃ、今の自衛隊でもって非常に満足できるか、自負できるかといいますと、私としてもまだまだこれは努力しなければならない。ただ根本には、私は、自衛隊の数をふやすとか、金さえ注ぎ込めばいいんだという趣旨ではございませんで、やはり基本はできるだけ国民的な基盤に立って自衛力というものが増強されなければならない、こういうふうにライシャワー氏の言葉を受け取っているのであります。
  155. 横川正市

    ○横川正市君 そこで一つ一つお聞きしていきたいと思うのでありますが、まず長官は、大体防衛任務についております実力といいますか、戦力とはなかなか言いかねるようでありますが、実力といいますか、それが非常に信頼するに足ると、こういうふうに言われているわけですね。その中には装備とか、それから兵員の充足とか、予備軍の編成とか、防衛産業とか、いろいろなものがあるが、その一つ一つをお伺いしていきたいと思うのであります。まず第一に、近代的な装備の中で兵員の中におけるところの質的な改善、こういう面では、まず第一に一般兵員といいますか、一般の普通の兵隊さんといいますか、それと、それから技術を持った職員、兵隊さんといいますか、そういったメンバーが、これが今までの状態の中では、非常に急速に変わるべくしてなかなか変わり得なかったという事情があるというふうに私は聞いているわけですが、他国の事情を見てみますと、第二次欧州大戦の終わりましたころには四人半ぐらいですね、そのうちに一人ぐらい、これが技術員として配備されておった。しかし、これがだんだん変わりまして、今は大体三・二、普通でもって二・六に対して一、ないしはその他の兵団で三・六に対して一というように、大体技術職の兵員の配分というものが変わってきた、こういうふうに言われているわけでありますが、日本の場合にはこの比率はどういうふうに変えつつ努力されているのか、この点をお伺いしたいと思います。
  156. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 細部のことにつきましては政府委員からお答え申し上げたいと思っております。ただ、はっきり申しますと、同じ軍隊的機能は戦前も営んでおったわけでありますが、機能の内容が違ってきております。一つの例を申し上げますと、防衛大学、昔の海兵あるいは陸士の前提になるような学校も、御承知通り、全部理工科教育をやっております。言いかえれば、理工学士の資格を持った者が、それから幹部候補生学校にそれぞれ陸、海、空、三方面に分かれて参る。従って、兵員につきましても、やはり基本はそこに置いてあるわけであります。ただ、いろいろこまかい点もありますから、今のパーセンテージ等を教育局長から御説明申し上げます。
  157. 小幡久男

    政府委員小幡久男君) 編成上の面から見まして、技術関係職員が何パーセントいるかという点につきまして現状をお答えいたしますと、幹部につきましては約二一%、五人弱に一人であります。それから曹士につきましては二六・七%、これは約四人強に一人でございます。これは純粋の技術系の職員でございますが、それ以外にも、先ほど長官からお話がありました通り、いわゆる兵科将校も、だんだん最近は理工学系統の知識が必須になって参りました。従いまして、新しく採用いたしますわれわれの年々の新任幹部は約一千名ございますが、そのうちで、もっぱら技術に属するものが百人、それから防衛大学の理工系の大学院のものが五百名、さらに残る四百名は一般の大学でございますが、この中で理工系の素養のある者が約百名、従いまして、千名採ります中で、約七百名は理工系大学の素養を持っております。残る三百名の文科系の大学につきましても、努めてこれに理工学的な知識を与えるために、幹部候補生学校、さらに理工系の補充教育をしまして、理工系に改造し得る道を開いております。従いまして、これらの幹部が成長いたしますと、自衛隊の幹部の過半数は理工系の素養のある者になる時代が遠からずくるのじゃないかと思います。
  158. 横川正市

    ○横川正市君 次に、先般私、科学技術庁長官と、米軍の基地関係の一端として、茨城の模擬爆弾の投下状況から、あの地区の安全の保持のための質問をいたしました。これは交渉としては調達庁長官関係になると思いますが、しいて、これは政治問題でありますから、防衛庁長官にも質問いたしたいと思います。  最近、この基地の返還で、オリンピアの宿舎等に充てる朝霞の返還問題が出ております。これは非常に何か実現を一つの目標にして活発な動きをされておるように新聞は報道しておるようでありますし、また私は、その点で米軍の協力が得られるかのごとくに新聞が報道しているのを見たわけであります。ところが、この茨城県の東海村の周辺は、御案内のように、これは原子力研究所、それから原子力発電所その他がずっと設置をされておりまして、地理的にはこの射撃場と道路一本も離れておらない境界線によって占められているわけであります。これに対して、池田科学技術庁長官が、先般当委員会での発言では、この人は独特の発言をいたしますから、そうだと思われたのではちょっと困るわけですが、これは丸山長官レベルでは話がつく問題ではございません、少なくとも私並びに総理が、いやしくも政治の責任においてこれはやるべき仕事だと私は確信しております、こういうことと同時に、総理の渡米される機会に、総理みずからこれを行なうということは困難であっても、これの返還を実現するように努力をしたい、こういう発言がされております。これはまあ一方、原子力関係の長官であるからこういう発言をされたと思うのでありますが、私どもは、少なくともあの地域は、世界のどこを訪ねても、片一方に放射能の危険を持つ研究所があって、片一方に危険な爆弾の投下演習をする飛行場がある、こういう国はどこを探してもないと思うわけなんです。そういう状態ですから、できればこれは操業を一時中止をするか、さもなくば、あそこを返還してもらうか、二つに一つの返事をもらわなければならない問題だと、こう考えているわけなんでありますが、まあ池田長官の答弁によりますと、なかなかそれが実現をしないようでありまして、ことに今のスタッフではどうもまかしておかれぬから、おれが出ていくという言い方でありますけれども、私は、これは池田長官にまかしておいてできるものとは、そう簡単には信じがたい。一つ、これについて長官としては現状をどう認識されておられるのか。それから、どういうふうにこれから解決をしようとされておるのか。まあ現状の認識が、現状でいいというのならば解決の方法が出てくると思うのでありますが、先々代からの防衛庁長官は、返還することについては賛成をされておるようでありますし、それから投下演習その他については、いろいろ注意をされておるようでありますので、その点から考えてみると、返還を要求される立場に立つと思う。その返還の要求の立場に立つとすれば、将来――将来というか、明日一体これをどうするか、こういう返事を私はぜひいただきたい問題だと、こう思うわけでありまして、お伺いいたしたいと思います。
  159. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 基地の問題は、各所でいろいろな問題を発生していることは御存じの通りでありまして、一方におきまして自衛隊の基地の問題もございますし、また、米軍の基地の問題もございます。で、日米安保体制を結んで、共同防衛という線から共同使用の面もあるのであります。それらが防衛庁であり、あるいは調達庁が窓口になって折衝する面があります。そこで、私どもは基地につきましてはいろいろ考えまして、私着任いたしましての意見は、まず基地の周辺については、基地がありましても、その基地の周辺の人が非常な特別な犠牲をこうむることはいかんじゃないか。言いかえれば環境改善をやれ、こういう意味から、本日の閣議におきましても、新聞でごらんの通り、各関係省の幹部で、行政面でできることは基地等の周辺の問題対策協議会というもので解決しようじゃないか、これは会長は総理府の長官が会長になるわけであります七そこで解決つかないような政治的な問題は、一人々々の閣僚が、ただいろいろなことを言っておってもいかんという意味から、やはり基地問題の関係閣僚懇談会を持つ、これも本日閣議決定を正式にいたしました。そして、基地に対する問題を、各省の力、また、各閣僚の力を総合性をもってやっていく、こういうことでございます。  そこで私は、じゃどういう気持で基地に対してはやるか、私は、ある程度の基地は、やはり安保体制あるいは国の防衛をやる以上は確保はしていかなきゃならんということは、やはり基本線を持たなきゃならん。ただ、その基本線を持たずして個々の折衝をやっていきますというと、返せ返せということだけやっていくならば、米軍も私は簡単には乗ってこないと思うのでありまして、ただ国会に対して簡易な御答弁を申し上げる意味で、いや、何とかしましょう、何とかしましょうと言っている間に、米軍の意見をよく聞いた上で手を打たなきゃいけない。この基地をどうしても必要だという場合には、判断をどう下すか、この場合には必要だというならば、どうしてもそこでやらせるか、あるいはそれにふさわしい代替地を求めて、代替地の人が納得してくれる条件下において米軍と折衝していかなきゃならない、こういうふうに基地については考えていかなければならんと思います。ことに、最近私が心配しておりますのは、国土の総合開発が進んでおります。ところが、一方においては自衛隊の基地、あるいは駐留軍の基地というものがあります。あとから国土の総合開発が追っかけて、追っかけ運動をやっている。その波だけでは、私は解決できない。やはり自衛の基地、あるいは共同防衛の基地というものを確立しながら、同時に、国土の総合開発という面も考えていかなきゃいけないのじゃないか。水戸の原子力の問題でも、実は歴史的に考えますと、従前からずっとあすこは射撃演習をやっておったところへ、あとから原子力が入ってきて、その当時においては別に支障のないような形で決定されたものでありますが、ところが、いざとなりますと誤投下もありますし、立退けということになりますと、歴史的に見ますと、相手方には一応の言い分はあろうかと思うのであります。しかし、現実の姿は、世界的に、あるいは国際的に見ても、あまりいいことではございません。原子力の近くにとかく射撃場がある。そこで、さしあたりはこの間の誤投下以来、調達庁長官から御報告を申し上げるようないろいろな措置をとったのでありますが、今後は私、防衛庁長官とか科学技術庁長官とかいう立場を離れて、関係国務大臣が集まって、やはりそれらを自衛の立場、あるいは防衛の立場と、今のような科学技術の国策としての立場との調整点を考えながら、まあ率直に申しますれば一つの方向をもって、そして相手方に対しても折衝すべきじゃないか、こういうふうに私は考えるのでありまして、個々に、ばらばらにただ意見を申し上げて、そのときそのときの国会の答弁をくぐるというだけでは、相手あっての仕事でございますから、ほんとうの意味での政府の一体の意見というものはぴたっと出てきていない。また、それに対する用意も、防衛庁だけで用意するのも無理なことがありましょう。必ず他の省が手伝っていかなければ代替交渉の問題も解決しないのではなかろうか。この意味で、本日発足いたしました基地問題の関係閣僚懇談会、これには関係大臣として、農林大臣、建設大臣、自治大臣、外務大臣、大蔵大臣等が入っております。そういう中でやって参りたい考えであります。  なお、現状の交渉経過等につきましては、調達庁長官から御説明いたします。
  160. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) この問題につきましては、すでに御承知通り、数年来、日米合同委員会の議題としまして討議を重ねておりますが、米側としては、あの演習場が最も重要な施設であることのために、返還ということが直ちにできない事情がございます。一方、隣接されました原子力研究所、あるいは燃料公社等の問題に関しまして、最も安全なる措置を講ずるというために、この一、二年来、射撃の目標物を移動させること、あるいは飛行機の飛行方法を変えること、それから使用する爆弾等の規制を行なうこと、これらのことをきめて参った次第でございますが、なお、御承知通り、本年に入りましても三月に事故がございました。そのようなことで、なおその検討を続けまして、その誤投下の原因になったような飛行機の飛行方法、演習方法を変えるという措置によってただいま進んで参っておるのであります。今、西村大臣の話がございましたように、この抜本的解決に関しましては、それではそれにかわるような演習場があるか、あるいはそういうものをどこにどういう工合に探したらいいのか、こういうようなところも十分に検討した上で折衝し、解決をはからぬと、最終的なものにはならないと考えられまして、その辺の検討をいたしておる次第であります。
  161. 横川正市

    ○横川正市君 ここで質問をして、善処しているという答弁をもらって引き下がればそれで事が済む、こういう問題ではないと私は思います。ことに、あなたの方からもらった地図では、これは原子力研究所があって、射撃場があって、しかも、被弾地というのは、もうそんな近いなんていうどころじゃないんですよ。この地方全体に事故が出ているわけです。それからもう一つは、落ちている個数についても、たまにじゃないわけです。これは一カ月に必ず一つか二つずつどこかここかに落ちている。それで、どうしてそんなに誤って落ちるのかと言って聞いてみますと、あすこは原爆投下の練習をする射撃場である。そうすると飛行機が原爆を投下して、自分の落としたたまによって被害を受けないように、何かとんでもない宙返り方式でもって落とすから、だから目標というものがあってなきがごとき状態で、こういうふうに誤ってたまが落ちるのだ、こういうふうに言っております。これは気狂いに刃物を持たしたよりもっとあぶないやつを私どもは日常認めているということになるのじゃないか。先般どのくらいのものが落とされているのかという問題についても、丸山長官は、衆議院での飛鳥田代議士との一問一答で、何か文書交換の中でははっきりしなかったようですが、あとから飛鳥田代議士から指摘されて、非常に大きなものまでも落とされているという事実が明らかになった。こういうことが言われているのであって、私は、これは折衝されているのか、あるいは舌だけで愚弄されているのか、現状認識から言えば、もう日本の国民というのはモルモットみたいなものであって、試験のためには生命の安全なんていうものは保障されなくてもいいのだというような格好で公認されているのだと極言していいのだと思います。タローとかジローとかが南極で死んだら、とたんに全国から非難ごうごうの声が上がった。ところが、そんなどころじゃなくて、人間がモルモットがわりにされるかもわからぬようなことが日常茶飯事で放任をされている。こういうことで一体返還交渉というものがいいのかどうか。先ほど長官がちょっと触れましたように、まあ最初から爆撃場はあったんだ、あとから原子力研究所がいったんだ、こういう関係はあるでしょう。しかし、それには僕は保守政治の最も悪質な一つの現われがあると思うのですよ。ああいうことがあることを事前に知っておって、なぜあすこに研究所を誘致したのか、あすこだけでなければどうにもならなかったのかという問題があると思うんですよ。あれを誘致していった、そしてそれを認可した政治的ないろいろな問題というものを、これを言ったら、やはりこれはあなたたちの方がその責任と、それからそしりを免かれないという結果になると思うのですよ。だから、そういう政治上の欠陥やら現状やらを見ておって、もしも被害が現実の問題になったときに、地域の住民がどれだけ大きな損害を受けるか、この点を認識したら、私は、責任を持ってこれは解決すべきだと思うのですね。オリンピアの朝霞も大切でしょうが、それよりも数倍この問題は大切だ。私は、朝霞が実現するなら、これが実現しなかったなら国内にごうごうとして政治的な非難が起こると思うのですよ。これを一体どうするのか。私は、これは単にゼスチュアだけでなしに、真剣な返事をいただきたいと思います。
  162. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私も、基本的には原子力のそばに、過去はどうあれ、そういう事態がまた繰り返されることは避けるべきだということは御同感でございます。問題は、ただこれをどう持っていって相手方に対して納得をさせるか、また、あるいは納得をしない場合に、その期間を一時中止させるか。ただ同時に、日米間には、御存じのように、日米安全保障体制というものを持っております。また、他の基地で、私どものところに訴えてくるのは、全部返還要求だけであります。ただいたずらに防衛庁長官、あるいは政府全体が、返還だけを日米で迫っていれば、これは手がつかないことは火を見るより明らかであると思います。私は、こういうことに対しては、政府一体となって代替地の問題を考える。それから、従来なるほど軍港においても同じ問題があるのであります。片や軍港は、旧軍港市転換法で平和目的に使うのだということを言っていながら、一方においては軍港というものがあると思うのです。あるいは自衛隊の基地があるわけであります。これらもやはり今後はある程度はっきり調整をしていかなければならぬ段階になったと思うのでありまして、そこに何と申しますか、従来の歴史から言いますと、自衛隊もなかった、あるいは日米安保体制がなかった時代に起こった事態とか、あるいは日米安保体制がありましても、自衛隊が警察予備隊であったような、いろいろの歴史のものが今日ここで解決を迫られている私は段階ではないか。その意味で、私は、今回起こしました閣僚懇談会とも、こういう高度の立場から考えると同時に、今のような現実的に迫っている問題、これに対してはやはり真剣に取っ組んで参らなければならぬ。これは私ははなはだ微力でありますが、科学技術庁長官も相当真剣な態度でおられますので、またわれわれも、この問題は単に防衛庁長官の立場だけではなくて、国務大臣としても他の閣僚とも十分相談し、総理も十分な御判断ができるように進めて参りたいと、こう思っておるのであります。
  163. 横川正市

    ○横川正市君 まあアメリカは相当気を使って、核を装備した軍艦が横須賀、佐世保に入ってくるときにはおろして入ってくるというようなことを私も聞いているわけですが、そうなれば、この茨城の東海村におけるところの現状というものは、私はもっと真剣に考えてしかるべきではないか。片一方は注意をしたけれども、片一方は注意しないでは、せっかくのそういうことも、私は、やはり反米的な思想につながって、マイナスにこそなれ、プラスにならぬと思う。ですから、今長官の言われたような趣旨で私も今回は了承いたしますが、ただオリンピアのための朝霞が返ってきて――あそこが返らなかったというときには、これは私どもはここであなたたちは答弁しても、私はどうすることもできませんが、しかし、これに対する批判というものは相当覚悟してもらわなければならぬと思うのです。それで、この問題についてはその折衝の推移を見ることにいたしたいと思います。  それから、次は自衛隊の量より質に改善をしていくという問題でありますが、量より質に改善するということでは、いわば私はいろいろな問題があるのではないかと思いますが、その第一に、防衛任務についている人たちが、防衛任務についていることに対していろいろと批判を受けるということが、これはまあ一つの問題としては非常に大きな影響力を持つ、こういうふうに思うわけでありますが、たとえば先般あなたの方の代議士さんであります中曾根さんが発行したものの中で、今の自衛隊は、喜んでその命令に服するであろうかどうかわからないと、そういうような書き出して批判をされております。もちろん三百人近く、それから百三十何人のあなたの方の人たちがおるわけですから、防衛というその問題についても、いろいろと考え方の相違があることは、これは当然だと思う。しかし、その考え方の相違は、防衛庁長官によって集約されて、防衛法によってこれが代表されて、そうしてその過程のことはいざ知らず、強化の方向に向かっている。そういうことでは私はちょっと内容としては十分じゃないと思うのです。やはり一般としては、今の自衛隊は喜んでその命令に服してというのは、いわゆる特別公務員ですから、いつ何どき命をささげなければならない、そういう大切な任務についている。その任務についている者に、喜んで命令に服するかどうかわからぬ、こういうことでは、これは現状として非常に問題があるんじゃないかと思うのです。  それからもう一つは、国民経済と関連して防衛力の漸増計画を立てているのでありますけれども、まあある幹部はその必要を認めないということが公々然と発表されて、そういうことで、いわゆる今の方向に向かって、きわめて違った形の方針やら、あるいは批判やら、こういったことがあることは、質的な変換をしなければならないという、その根底に大きな障害になっているんじゃないか。まずこの点で、長官としては、どのように対処されておられるか、これをお聞きしたい。
  164. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私、なかなか防衛というものは長い目で見ていかなければならぬと思います。単に、簡単に結果を出すわけにはいきません。御存じの通り、それじゃほんとうに強いのかと申しましても、現実にやってみなければほんとうの強さはわからぬわけです。しかし、私は、中曾根君の意見は個人の意見ではありましょうけれども、そうは信じておりません。と申しますのは、率直に申しますが、今の自衛隊員は志願兵であります。志願制であります。従って、ああいうことのきらいな者は全然入ってきておりません。いやな者は入るわけはないのであります。まずその前提が一つはっきり立っておると思います。じゃ、外から見た姿はどうなのか、これはドイツあたりの駐在武官でございますか、報告書を出しおりますが、日本の自衛隊の兵の質はいいと、こういうようにほめております。私はこれらの点から、もちろん足らぬ点は今後努力していかなければなりませんけれども、中曾根君の言われるように、何か非常事態が起こったときに、自衛隊員が命令に喜んで服さないということはあり得ないと思います。現実に、御承知通り、静岡の島田で集中豪雨がありましたときに、非常な濁流の中を泳いでいって兵員が一人死んで、あそこに今その記念碑が立っております。また、この間の青森県のヘリコプターの墜落事件は、下北半島の方でお婆さんが盲腸炎になって、その救助に吹雪をついて飛び立って、自衛隊員が三名殉職いたしております。私は、やはり人の危難に先んじていこうという、そこに信頼感を持ちながら、足りない点は十分に補って参る、こう考えておりまして、自衛隊をもっと同じ保守党の諸君にも理解をいただき、同時に、また国民にも御理解願うように努めたい。今日の岩手県の災害にも、約千名近くの自衛隊が各地に出動をして、現実にお役に立つように若い青年たちが努力いたしているのが現状でございます。
  165. 横川正市

    ○横川正市君 これは認識の相違で、意見ですから平行線かもわかりませんが、災害とか、一般の天変地変によるところの出動という場合と、それから戦時の出動と、心がまえがまず違います。私どもも、一尺四方の爆薬を背負ってキャタピラの下に入る演習をたくさんやりましたが、演練のときは非常にうまくできますよ。しかし、いざ向こうから戦車が出てくる、こっちから爆薬をかかえて行くというときには、これはそのときは気が狂っているような心理状態でなければ入っていけないものです。そこで、そういう精神を持つには、今の状態であなたが信頼するような形になり得るのかどうか。これは私は非常に大事な問題だと思うのです。私たちは、自衛隊は憲法上の論議として持てないという点が一点と、それからもう一つは、今これを持つことよりか、もっと民生安定に努力すべきではないかという経済上の理由、そうして最後に、守るに足るものが出て、国民一人々々が全部が一致したときに私はほんとうの防衛という力が出てくるのであって、今のままでは、それは望むべくして望めない状態ではないか、こういう判断の上に立っていろいろ質問しているわけですから、これは私は何でもかんでも否定論だということで聞かれては非常に誤解を生むと思うのです。そこで、今の問題、一番大きな問題は、やはり今の自衛隊の隊員さんたちの非常に勇敢な事例もあるでありましょうし、また、災害や何かに出動された場合には、部落こぞって感謝を決議するという事態もあるでありましょう。しかしそのことをもって事足れりということは、これは私は論議としては当たらないと思うのです。実際には、やはり災害や何かで命を落とすなんていうことは消防夫でもやるのですからね。ですから、そうではなしに、ほんとうに強くするということには、もっと根底から私は考え方をまとめていく必要があるのではないか。それには、まず賛成をされているあなたの党の中においてすらこういう不信行為があるのでありますから、その不信については、これはやはりこの点を明らかにして、どうされるのかを方針として持たなければいかんと思う。  それからもう一つは、これはドイツの再軍備の進んできた経過を大体ずっと見ますと、西独では片やブラッセル条約があり、片やNATOの加盟という条件があって、そうして志願制度がとられ、やがてこれは軍備に関する基本法が改正されて、一九五六年の三月十九日に徴兵制が布かれているのであります。それであっても、この中に防衛義務法というのが制定されて、その中には、良心的戦争義務の拒否者の代替役務については、第四条第三項と第七十二条の第一項にそれぞれ設けられているということが書かれてあるわけです。これは私は日本の何といいますか、指導精神といいますか、あるいは自衛隊の精神教育といいますか、いわゆるみずから命をなげうって国防の任務につくという精神の中からは、いささか不思議にとられる条項ではないかと思うのでありますけれども、長官としてはこういう条項、今の自衛隊法の義務にも全然ありません。これはもっとも特別公務員という官吏の役目でありますから、そういうものはありませんけれども、こういう西独の徴兵義務制の中においてもこういう制度があるという事実については、長官としてどのようにお考えになっておられますか。
  166. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 徴兵制を布いているアメリカあるいは西独等においては、宗教その他の立場から兵役を拒否する多少権利は法律的に認めているんじゃないかと思います。ただ日本のは、御存じの通り、志願制度でございますから、そういう問題は全然起こらぬのであります。自衛隊、いわゆる国防というものは、自分が進まない者は一人として志願してこないと私は思うのであります。それからお言葉を返すようでありますが、災害は消防団と同じじゃないかとおっしゃいますけれども、私は質が違うと思うのであります。要するに、平素日夜非常な規律訓練を与えている結果が、災害においてあれだけの力が出て参るのでありまして、単にそのとき半鐘が鳴ったからかけつけて多少の消火活動をやっている消防団とは、私は、今日の自衛隊は質が違っておるということだけは御認識をいただきたい。ただ私どもの努力と、また御理解をいただく点が足りない点において、一部外からの空気だけを見て、自衛隊員というものは役に立たぬじゃないかとか、あるいは自衛隊は喜んでやるか、こういう議論が出て参ると思うのでありますが、少なくとも自衛隊の相当数のものは、私は信頼に足り得るというふうに思っておるのでございまして、その点御了解をいただきたいと思います。
  167. 横川正市

    ○横川正市君 まあその点はそういう試験をするあれがないわけですからね、実際上どういうあれなのかは非常に問題だと思うのでありますけれども、この「よい中隊育成のために」という中には、長官の言うのとはだいぶ違った内容が非常にたくさんあって、それでいろいろとあなたの言うように、強くするためにどうするかということを書かれているわけなんですから、一つ信頼をされている長官の気持は了といたしますけれども、問題はあるというふうに私は考えます。そこで、志願制度の形でこのままいくといたしまして、その中で今私が言いましたような、良心的な戦争義務の拒否者という形のものが起きてこない、こういうふうに長官は確信をされておるようであります。しかし、事実は二年ないしは再義務について四年、そういうことで実際上一般に地方へ出てくるわけですね。そうして予備制度というものがなく、こういう制度の中で機構としては動いているわけですが、あなたは、この機構をこのままにしておいてあなたの信頼する隊員というものが育つと、こういうふうに考えているのか、それとも、これは自衛隊の「旬刊広報」の中にもありましたが、ある陸佐の人が、自衛隊の募集に応ずると、そうすると自動車の運転も習える、それからいろいろな技術も覚える、除隊すれば民間に出てすぐ就職ができる、こういうことで募集をしておるということで、大へん腹を立てている記事がありました。事実上志願をする気持というのは、命を的にして有事の際には働くということが先になるのか、それとも、募集をされている方法によるところの技術を覚え、就職に不安がない、こういうところにあるのかという点については、これは私は長官として真剣に考えておくべき問題だと思うのでありますが、この点どうですか。
  168. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 先ほどの、かりに出動時における拒否等については、法律等ではっきり規定がございます。出動時において職務を離脱をした者は、もちろん防衛庁長官以下服役しなければならぬような刑法上の罰があるわけであります。自衛隊としてあるわけです、特殊の規定が。それから同時に、自衛隊員は全部、非自衛官まで宣誓をして防衛庁に奉職いたしておりますので、シヴィリアンでさえも宣誓をいたしておりますから、シヴィリアンの中からでも、そういう拒否は宣誓に対しては困難であると思っております。しかし、お説のように、隊員がそれでは全部人のために先に死んでいくために入って来るのか、そう私は簡単には割り切っておりません。おっしゃる通り、人間でございますから、そこは人間性というものは十分考えなければいかぬ、言いかえれば家庭の平和、将来への人生の希望という、若い青年を十分に考えながら、同時に、また現在ついている任務の正しさ、尊さ、これをやはりよくかみ分けて理解をしてもらうように、これは強制力できておりませんから、その意味では私どもは、隊員が、率直に申し上げますが、昔のような員数をそろえて点検をごまかすとか、あるいはびんたを張ってやるとか、ですから一面から申しますと、自衛隊の隊員が、ちょっとごらんになりますと直立不動でないだけに、形が悪いように見えますが、私はむしろ徴兵制をとっていない、また一面において自分の仕事として理解した上で命令をやっていこうという意欲は、前の徴兵制よりは盛んであるのじゃないか、この点は私はやはり不断に研究しながらその面をやっていかなければならぬと思うのであります。なかなかおっしゃる通り、私は簡単な問題ではないことは十分存じておりますが、ただ長官として、自衛隊員を私はやはりそういう気持で信頼をしながら、より以上いいものに、お役に立つようにやっていかなければならぬ、このような気持を申し上げた次第であります。
  169. 横川正市

    ○横川正市君 自衛隊法によれば九十日間の防衛任務があるわけです。そこで、予備役の定員の充足を今度五万にするそうでありますが、かりにこれが五万であっても十万であっても、一体一朝有事のときの態勢としてはこれでいいとお考えになっておりますか、それとも充足率はこれは何日ぐらいしかもたない、こういうふうな九十日間の任務にはとうていたえられないというようにお考えになっておりますか。
  170. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) これは国の政治の大きな問題でございまして、われわれは外交の面から、できるだけ有事というものを避けたい、その努力をして参らなければならぬと思いますが、万一有事の場合におきまして、予備兵力が、あるいは予備の戦力が足りないという点は、直接の戦闘力としては足りない、こういう点は率直に認めます。ただ問題は、国土の防衛をやるに単に兵隊とか、軍人とか、そういう者だけがふえればいいのじゃなくて、さらにこの後方の全般の国民の気持でございますから、それがやはり支援をしてくれるということが何といっても根本問題だと思うのであります。直ちに私はそれじゃ憲法を改正して、法律を改正して、形の上の予備兵力さえ作れば大丈夫だ、こういうふうには私は割り切っていないのであります。私はやはり基本は、国民の国を守るという雰囲気を作って参る、その上においての今後は制度的なものを順次よく工夫して検討して参りたい、こう考えております。
  171. 横川正市

    ○横川正市君 百歩譲って、防衛力というものの力としては現状として大体満足すべきだと考えて、それで兵員の募集とか、これからまた増加していくわけです。それだけではなしに、私は今度は相当優秀な精神、それから体格、そういうものの持ち主でなければ訓練には耐えられないと思われる航空乗員の確保、それからもう一つは、かりに波聴器とかあるいはミサイルの兵器が入って参りましても、普通より以上の能力を持たなければ完全な操作が困難だと思われるような分野に合わせて兵員を充足していくとして、長官の考え方をお聞きしたいと思います。
  172. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 先ほどもちょっと触れられましたが、技術の面に対しては、若い青年は将来の一つの人生の就職の問題もあるでありましょう。技術要員につきましては、かなり複雑な面でも志願者が多いのでございます。むしろ私は、一般兵員について質のいいものを採ることにやはり苦労する。技術要員の方は比較的志願者は殺到して参る。今後もまた学校の教育も、かなり科学技術奨励と申しますか、尊重という時代でございますから、その面は比較的私は心配しない。むしろ景気が上昇しますと、技術の優秀な者を民間が抜くという、一番いい例が、航空パイロットのごときは、非常に苦労して養成する。それを抜いていきたいというような面があるくらいでございます。
  173. 横川正市

    ○横川正市君 私は、その充足をするのに一番問題なのは、やはりあなたが今言われたように、民間で欲しい人間が、はたして防衛庁の任について入ってくるかどうか、この点を長官として、せっかく優秀な飛行機や機械を装備したけれども、これを操作する人がいない、こういうことになりかねない状態というものが、これが国の景気の上向に従って出てくるのじゃないか。それをどういうふうに充足するつもりか、これが私の聞きたいところなんであります。  それからもう一つは、先般、週刊誌に報道された上野の山にジープでもって浮浪者を探しに行ったということ、最初はうそだと言っておったけれども、あとで大体ほんとうだと、報道の意味もあったということで、ここで明らかにされたわけなんでありますけれども、今はある程度充足率は、先般私が視察したときは、将校は大体満足すべき状態である。しかし、下士官、兵については相当不足を来たしている。ある所では七二、三%の充足率である。こういうことで、実際上の兵員の充足というのは、最近の経済の進捗とあわせて、困難なようになっていると思うのでありますが、そういう現状を、先ほど言ったように、将来はどうあっても、これを満足すべき状態だと判断をして、なおかつ、こういう状態にあるのだけれども、これをどのように充足をしていかれるか、この点が聞きたい、こう思うわけです。
  174. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 技術者は、確かに、優秀な技術者が集まらぬじゃないかということでございますが、私は十分これは詳しくは把握していないのでありますが、医官であるとか、あるいは技研の職員、いわゆるシヴィリアンでございますね、こういう面におきましては、民間待遇がいいと、なかなかいい人がたくさんは来ないじゃないか、ただ海空の方になりますと、募集において優秀な資質の兵員、それを技術というものを持った下士官といいますか、そういう訓練養成は必ずしも困難ではない。むしろ陸の方でございますが、陸でもいろいろな技術面もございますが、一般の陸の募集については、御承知通り、必ずしも楽でないということは率直に申し上げておるのであります。ただ、これに対しましては、われわれはできるだけやはり国の守りというようなものも御理解いただくと同時に、先ほどお触れになりましたように、隊をやめた後の青年が、やはり明るい自衛隊に自信を持ちながら、しかも社会に、よい意味で、何といいますか、買われていくという、言葉は悪いのですが、迎えられていく。こういう状態に行かせたいためには、私は、いろいろな雇用の方面、言いかえれば、自衛隊へ入ることによって、さらに集団的にいい方面でこれを採用して下さる。しかも、その間において、それにふさわしいような、雇用関係の方でも、より以上歓迎するような雰囲気に人間を教育していく、こういうようなことは、部内でも方策を検討し、単に防衛庁だけの問題じゃございませんで、通産省、労働省、その他産業界とも近く雇用の協議会等も作ってやろうじゃないか、こういうふうに努力はいたしておるのであります。
  175. 横川正市

    ○横川正市君 私は、この面でも非常に不満足な状態だと、こういうふうに判断していいのではないか。あわせて、先般来から、伊藤委員、山本委員から指摘をされましたように、装備上の問題等につきましても、きわめて不満足な状態にある。私は、少なくともこれは満足すべき状態というのは、第二次防衛計画の中で明らかにされておるような、いわゆる四十一年までの計画が、これが完遂されて、それで満足になるとか、あるいはさらにその次に年次計画が作られて、さらに努力をして、それで満足になるとか、そういうものではなしに、相当問題が将来残されていくのではないか、こういう点で兵員とか装備とかいう問題について考えているわけです。ですから、この点についてはおざなりにならないように、各般の一つ賢明な指導といいますか、対策といいますか、そういったものがあってしかるべきではないかと思うのです。  そこで、もう一つ問題になりますのは、これは防衛産業の問題です。太平洋戦争までの日本の防衛産業を一〇〇といたしますと、大体今の日本の防衛産業は何%になりますか。
  176. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) ちょっと政府委員の方も、急なあれでございますから、御答弁いたしかねますが、ただ、こういうことは御説明でやって参りましたし、また事実でございますが、総鉱工業生産の中で一%というのが防衛産業に現在当たっております。きわめて戦前の状態から見ますというと低いものでございます。ただ、私どもは、防衛産業というと、一部で死の商人でも養うのじゃないかという誤解も起こりやすいので、むしろ私どもは防衛装備の国産化、こういう言葉で今日リードしていきますれば、防衛産業――言いかえれば、アメリカから一切兵器を輸入されるだけで一時を糊塗していくのではなくて、いかなる装備をしてもパーツその他は国民の手によって作られていく。また、それが国民の収入に戻り、国民の技術になるという方向に引っ張って参りたい、こういう考え方も第二次防衛整備計画の中に織り込んであるつもりであります。
  177. 横川正市

    ○横川正市君 どうも防衛力という力、戦力と一声えないから、実力といいますが、実力というのは、私が今一つ一つやって参ったものがみんな防衛の実力だと思うのです。ところが、その実力が不明確で防衛力があるあると言われても、論議としてはあると思うのですけれども、ほんとうの実力というものは、どうもないのじゃないか、こういうふうに考えざるを得ない。もしあるなら、これはやはりはっきり資料上も統計上もしておかなければならぬのですがね。私は、日本が独力で太平洋戦争をあそこまで戦い抜いた、こういう力を一〇〇とすれば、一体今の防衛産業の持っておる力というものはどのくらいですか。自衛隊発足後十年でありますから、まだまだ大へんでしょうが、それにしても、日清戦争から日露戦争まで十年、あの間につちかわれたものというものは相当なものです。八八艦隊でもできておれば、もっと大へんなものになったと思う。今の防衛というものは、思想ではあるけれども、影ではないかと思われるような説明の仕方なんで、きわめて不満足ですがね。もう一度一つ……。
  178. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 非常にむずかしいのでございまして、防衛の実力はどうか、一番早いのは、戦争でもあって戦ってみれば実力の結果が出るのでございます、産業面であろうが、兵員の力でありましょうが。しかし、災害のときは、単に労働力だけじゃございません。いろいろ活動をやっておりまして、通信もやっております。災害の際にヘリコプターも飛んでおりまして、これらがやはり災害に対してある程度の寄与をしておるということは、もうすでに御不満、あるいは御満足ではないにしても、一万人動けばやはりいろいろ能率が上がっておるというような面から見て、実力というものは災害を通しても出ておるのじゃないかと私は思うのです。  それから防衛産業は、なるほど生産という結果から見れば百分の一ということでございます。しかし、その力というものは、たとえば船舶の工業にしましても、今日では造船能力においては、時期によっては世界一の造船をやっております。こういう面は、やはりかつての旧軍の時代に軍需産業として栄えました力、技術といいますか、力というものが出ております。あるいはかつての航空機工業のなごりが、それぞれオートバイになり、自動車工業になっていくとか電子産業になっていくとか、そういう面はやはり直接の平和目的ではございますが、残っております。これらと防衛産業と申しますか、直接の防衛装備とをかね合わしていけば、私は十分に力が出てくると思います。ただ戦争中の力を幾らと計算して幾らとやるには、ちょっと私計算の方法がむずかしいと思うのでございます。どこで一〇〇というふうに計算するか、ことに防衛というものには精神力が入って参ります。それからもう一つは、精神力に続く練度の問題、練習度といいますか、熟練度といいますか、これらは飛行機の操縦でも、米国へ参りまして、率直に申し上げますというと、優等賞状をもらっておる。それから海軍と申しますか、海軍というとおしかりを受けますが、共同訓練をいたします。その場合において、ある場合にはよその国よりもはるかに練度がいいというふうな米国側の一つの批判も私は聞いておるのでありまして、未熟な点はございますが、実力としてある程度のものは漸次高まって参っておるということは言えるのじゃないかと思います。
  179. 横川正市

    ○横川正市君 私は十分全体を知っておって質問をすればいいんですが、私もしろうとですから知らないのであります。しかし、新聞の報ずるところによれば、F86Dのその部分品は、もうすでにアメリカでは生産をやめてしまった。だからそれが間に合わないので、実際上は将来不安だという記事も見られる。それからまた一般の防衛産業といわれるようなところを見ますと、防衛産業でなくて修理ですね、実際の力というものは。もっともトラクターを作っているから戦車にすぐかえろといったら切りかわるのかもしれませんけれども、しかし、修理程度のものはあちこちで見ますものの、生産としては私はできておらないんじゃないか。そういう点から防衛産業というものを将来どうするお考えか、それを聞きたい。そういう点では、私は、やはり防衛産業が、あなたの言うように、すぐ平和産業に寄与されたり、あるいは国民の経済活動に、技術進歩に大きく現われてくるというような簡単な考え方をしていないのです。やはりこれはある時期というものはロスがあって、そのロスは、いわゆる防衛費というものが生産を伴わないということだから、相当大きなロスがある。それが成長率にどう影響力があるかということになれば、問題が相当あると思うんですよ。ことに先般も下村委員がきわめて不満のようであったんですが、今度の施政演説にも、総理は防衛問題には一言も触れておらない。それも経済成長計画の中で防衛費というのが一体どういう役割をするかということについても一言も触れていない。分配その他の問題については触れていない。これは触れなくていいんだという説明だけでは納得しない問題があるわけです。しかし、防衛産業がすべての計画にのっとってどういうふうに進捗するかは、私は少なくともこれはこの倍増計画というものに相当影響力を持つだろうと思うのですよ。そういう点で防衛産業をどう育成されていくのか、これをお聞きしたかったわけですが、残念ながらお聞きできないわけでありまして、またこれはあらためて私はお聞きいたしたいと思います。  そこで、これは全体的に見て、これは集団安全保障条約に基づいて、集団のこの力でもって防衛するという考え方が非常に濃厚だ、それにたよるという形のものが非常に強い。こういうふうに考えるわけでありますが、その点について一、二お聞きをいたしたいと思うのでありますが、まず、この安全保障条約等にのっとって日米が作戦行動に移すときには、これは協定等の結ばれた内容によって行動をするのが私はこれは順当だと思うのでありますが、突発のことで、そういったことが起こらないとか何とかという問題はあるでありましょうが、全体としては、やはり日米のいわゆる集団安全保障条約によって安全を保障するという立場に立って両者が行動をする、そういうことになれば、勝手気ままにやるわけじゃないのでありまして、おそらくこれは日米の作戦分担のための協定が私はあるのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、この点について一つ説明いただきたいと思うのであります。
  180. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) われわれは特にそのための協定というものは作ってはいないのでございます。ただ御承知通り、われわれは国の自衛隊法に定められたる自衛の任務、しかも、その自衛の任務を果たすのに、相手方の出方、言いかえれば侵略の態様によって非常に自衛の任務が基本的に、あるいは力の面から千差万別があるのであります。態業は侵略といいますか、相手方の出方によって変化があるのであります。そこで、その出方いかんによっては千差万別の態様によって、日米間の共同防衛と申しますか、わが国が侵略を受けたるときは米軍が出動する、武力攻撃という条文があるわけであります。ただいろんな態様は、われわれの方の戦略、あるいは戦術と申しますか、それを専門的に研究している幕僚間におきましては、不断にいろいろ連絡をとらしたり、研究をさしたり、こういうふうにさしているわけでありまして、ある一定の事態があったらこうなるんだという協定を結んでいる段階でもない。また、それは今必要ではないんじゃないか、こういうふうに考えているわけであります。
  181. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、この現状、たとえば日米合同演習などが行なわれる場合、これは何も演習のための協定も何もなくて、お互いにその場その場で話し合って演習計画を立てて実施をする、こういうことになるわけですか。
  182. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) アメリカと比べますと、日本の自衛力というものはきわめて小さなものであることは、これは御運解いただけると思うのでございます。アメリカのは何といいますか、強力でございます。そこで、われわれの方は、演習しますにも、国土の防衛でございますから、きわめて領空あるいは領海的なものの回りを守るわけであります。ただ、われわれの方には船も足りませんし、それから、ある場合には標的艦も足りない。言いかえれば潜水艦が出没するという想定をもちましても、潜水艦は現在二はいしかございません。そういう場合に米軍側の共同によるという演習が多いのでございます。従って、それは何も平素からちゃんとこまかな規定を設けないで、大体作業計画等、各幕僚監部で毎年作りまして、その場合に、こういう演習をやるについては、それじゃあ一つ協力をしてもらいたい、こういうような格好でやっているのが現在でございます。
  183. 横川正市

    ○横川正市君 小さい力と大きな力とか、だから協定が結ばれないとか何とかという問題じゃないと思うんですよ。こういう極東地域におけるという構想でなくても、日本の安全を保障するための考え方からいっても、大と小と合わせたら、どれだけどういう形の演習ができるかぐらいなことは、おのずと私は計画書としてできるんじゃないか。そうなると、これはまあ最近副大統領が東南アジア諸国を回りまして、かつて統合防衛司令部構想というのが出たわけですが、おそらくこれに日本が参加するということは考えられない。そうすると、これは日米連合司令部というようなものを設置するような構想があるのかどうか。それがなくして、漫然とその場その場に当たっているということになると、まことにたよりない話だと思うのでありまするが、この点について一つ説明して下さい。
  184. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 今のところ、われわれは日米統合という考えはございません。われわれの任務は国土のいわゆる自衛でございます。その範囲内においての任務を尽くし、そうしてその範囲内においての必要な限度においての有事の場合においては連絡協調、従って、統合幕僚、統合司令部をこしらえ、どっちかが一方において安保体制のもとにおいて指揮権を持つ、こういう考え方はないのであります。
  185. 横川正市

    ○横川正市君 そうすると、先ほどちょっと私がずっと実力をお聞きしていきましたが、答弁から受けた私の感じとしてかもわかりませんが、ほかの委員はどうかわかりませんが、この実力ではやはり独力では守れないから集団安全保障にたよるという、集団防衛にたよるということが非常に強く期待をされているのじゃないか。そういう状態下にあって、日米の――これはだれにたよるかといったら、アメリカにたよることになるわけですから、日米間の何らかの作戦分担協定も、演習のときでさえそういうものがないのだ、その場その場で相手がどういうふうに攻めてくるかどうかはわからないから、攻めてくるあれに従って即刻対処するということでは、答弁としては不満足だと思います。しかし、実際の対処としては不満足な態度だと思いますが、それでわれわれが満足しろと言っても無理だと思います。もう少し事情を  何かこれは秘密の関係で言われないというのならしようがないのですが。
  186. 加藤陽三

    政府委員(加藤陽三君) ただいまお尋ねになりました点でございますが、日米共同防衛体制をとっているわけなんでございます。大きな見地から申しますると、われわれは日米共同安全保障体制というものも、米国の持っておりますところの大きな戦略的な打撃力と申しますか、これと相待って日本を侵略から抑制をする。もしも攻撃があれば、大きなアメリカの力というものを背景にして報復される、そういうことによって侵略の企図というものを防ぎまして、侵略の起こらぬようにする、こういうのが一番大きなねらいでございます。その意味におきまして私は日米間の分担というものがあると思うのです。日本側で戦略的な打撃力を持とうというようなことは考えておらないのであります。その面は、これは米軍の力に依存する、それ以下の事態に対しましてどうするかということが問題になるわけでありまして、私どもは侵略のないことを期待しておりまするけれども、もしありました場合におきましては、それはまあ局地戦――世界戦争ということになれば、これは問題は別でございますが、局地戦以下の侵略に対しましては、できる限り相当範囲のものは日本が独力で対処し得るような力を持ちたい。それ以上になると、これはもう米軍の応援を得まして、共同で当たるということを考えているわけでございます。個々の演習とかその他につきましてどうかというお尋ねでございますが、根本の方針といたしましては、日本の防衛につきましては、米軍と日本とは同一司令部を設けない。日米それぞれ司令部を別にして、相互に緊密な連絡を取りながらやっていこうということを根本に考えているわけでございます。それならば作戦の区域なり何なりの協定があるのかということでございますが、これはやはりなかなか現実の問題となって考えなければならないのでありまして、第一どういう侵略があるかということを一面において想定をしなければなりません。これが予想の通りでありますれば、これはもう勝つことは間違いないのでありますが、なかなか現実はそうはいかない。と同時に、日本にそういう事態が起こった場合におきましての極東の情勢というものがどうかということもまた考えなければいけないわけであります。アメリカは太平洋に太平洋軍というものを持っております。太平洋空軍、太平洋陸軍、太平洋海軍、それぞれの部隊を持っておりまするけれども、これの担当している区域というのは、御承知通りと思いますが、非常に広いわけであります。第七艦隊について申しましても、これはアリューシャンからインド洋までの警備を担当しております。太平洋空軍には二個軍ございますが、これもやはり一つ日本に司令部があり、一つはフィリピンにある。そして相当の担当区域を持っております。陸軍については、これは朝鮮に二個師団、それからハワイに一個師団、それから沖繩には海兵師団、空挺部隊というようなものを配置しておりまして、日本に侵略があった場合にどの地域がどうするということもあわせて考えなければいかぬわけです。日本だけで単純に事態が起こるならば、アメリカとしても相当これくらいのことは協力できるということは言えましょうけれども、なかなかそこの想定というものがむずかしい。で、根本的にいろいろな場合を想定いたしまして、幕僚間におきまして意思の疎通をはかりまして、どういう事態につきましても、一応何とかやっていけるというふうなことは考えておりまするけれども、具体的にそれではどこにどれだけの兵力を集中していくかというところまでは、実際問題としてはできないのであります。演習につきましては、長官がおっしゃいましたが、われわれが米軍との合同の演習をやっておりますのは、これは二つの目的でやっておるのであります。一つは、先ほど長官がおっしゃいました通り、飛行機にいたしましても、まだわが航空自衛隊で持っております飛行機は一マッハ以下で、早いスピードの飛行機は持っておらないのであります。早いスピードの飛行機をいかにしてレーダーでとらえ、いかにして早く要撃するかということになりますと、米軍の持っております飛行機を借りなければならない、こういう関係もあります。潜水艦につきましても、長官のおっしゃいました通りであります。そのほか掃海等の訓練等も一緒にやっておりますが、これはアメリカのすぐれた掃海技術というものをわれわれが習うという意味で演習をやっておるわけでございます。演習そのものが、大きくは作戦の計画に結びつくわけでございますが、それぞれそれがすぐに作戦計画に具体的に結びつくということにはなっておらないわけでございます。
  187. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  188. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 速記をつけて。
  189. 横川正市

    ○横川正市君 いろいろありますが、大体二時間ということですからやめますが、しかし、私が今ずっと明らかにしていったことが、実は防衛任務というものを持たなければいけないと主張する側に立って、少なくとも答弁その他で準備されておかなければならない問題ばかりで、私どもは反対の立場に立っているわけでございますから、その点からすれば、これはもうきわめて不満足だったということになると思います。  しかし、なお細部にわたって質問をする準備をいたしておりますが、時間がきましたので、私はきわめて紳士的にここで終了いたしますが、将来はこの点に十分注意されるようにお願いしたいと思います。
  190. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  191. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 速記を始めて。  次に、恩給法等の一部を改正する法律案、  昭和二十三年六月三十日以前に給付事由の生じた国家公務員共済組合法等規定による年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案、  国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案、  以上三案を一括して議題といたします。三案につきましては、すでに提案理由の説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  政府側出席の方は、藤枝総務長官、八巻恩給局長、船後主計局給与課長でございます。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  192. 下村定

    ○下村定君 私は、恩給法等の一部を改正する法律案について、総務長官の御意見を伺います。  今度出されました修正案は、長年の懸案でございますところの、いわゆる赤紙応召者を主体とする七十五万の人に対する恩給法の不合理を是正すること、このほか傷痍軍人、遺族その他につきましても相当の考慮が加えられておりまして、私どもは、この法案がすみやかに成立し、実現されることを希望しているのでありますが、この際、私のお伺いしたいことは、今度の修正によりましても、恩給問題は実はまだ解決しておらない点がある。時間の関係上、その点を私は申し上げまして、それに対する長官の御意見を伺います。  その第一点は、現在の恩給法のワク内におきましても、まだ十分に解決されておらない問題があると思います。  一例をあげますと、去る二十八通常国会におきまして、当時の総理府総務長官の今松氏から御答弁のありました九項目があります。それは、政府として十分検討の上で善処するというお答えでありました。その中でまだ解決をされてないものが相当残っております七これらは引き続いてぜひ解決をお願いしたい。  またもう一つは、大東亜戦争というものが、従来の戦争と、その規模におきまして、また様相におきまして、非常に変わっておりますために、従来の恩給の観念では、恩給法の対象にならないものが相当残っておると存じます。たとえて申しますと、命令によって軍人、軍属と同じように戦地で働いた赤十字の看護婦でありますとか、あるいはこれまた命令によって軍人、軍属と同じように働き、あるいは名称だけ軍属の地位をもらった国策会社の社員でありますとか、そのほか軍人でないために、いわゆる戦犯として抑留されましても、何らの手当を受けてないというような、つまり恩給法の従来の恩給観念からはずれて、恩給法の対象にならない人が相当残っております。特に私が気の毒に思いますのは、これらのワク外の人は人数が少ない、それから団結もできない、また、支援してくれる人もないというので泣き寝入りをしている。これは私はどうしても国家として救ってあげなければならないと思う。それを恩給のワク内に入れるかどうかということは別問題として、これを捨て置くことができないという感じがいたします。  いま一つは、いわゆる国民の所得倍増だとか、あるいは民生の向上ということが強く叫ばれておりますが、国民の中には、恩給だけにたよって、働くこともできないで生活しておる人が相当あると思う。これは今すぐでなくても、将来はこれはやはり国としてみてあげなければならぬものだと思います。そういうような三点につきまして総理府総務長官のお考えを伺いたいと存ずるのであります。
  193. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) ただいまお話の通り、実は今回の改正によりまして、昭和三十二年の臨時恩給等調査会において取り上げられた問題の大部分のものは解決をいたして参ったと存じております。しかしながら、御指摘にもありましたように、この前の改正の際における衆議院内閣委員会においての当時の総務長官の答弁の中で、なお解決をしていないものも御指摘のようにございます。さらに、おあげになりました、少なくとも現在の恩給制度では取り上げられないが、しかし、何らかの処置をしてあげなければならないのではないかと思われるようなものがございます。  第三には、今後恩給の額をどうするかという問題もございます。それらの点につきまして、第一の、当時の衆議院内閣委員会における総務長官の答えの中の問題につきましては、さらに今後検討をしていかなければならないが、しかし、何とかそれは解決をして参りたいと存じております。それから、少なくとも現在の恩給制度では取り上げられない問題ではあります。援護法あるいは新たな制度を必要とするものもあろうかと存じますが、これらについても十分実態を調査し、さらに研究を重ねて参りたいと思います。  それからベース・アップの問題につきましては、これは当時の臨時恩給等調査会におきましての御意見もございます。それで、この恩給制度そのものは、当時、退職当時あるいは死亡当時の給与額並びにそれまでの勤務年限、こういうものが中心になって行なわれておるのではございますが、しかしながら、だんだん社会情勢、経済情勢が変わって参りまして、たとえば公務員についてもベース・アップが行なわれ、公務員のベース・アップが行なわれたから、当然にそれにスライドして上げていくということはいかがと存じますけれども、公務員制度自身のべースが上げられるということは、いろいろな生活の状態、経済の状態、社会状態が変わって参ったゆえんでございますので、そういう点も考えまして、将来この恩給そのもののベース・アップという問題についても十分に考慮を払わなければならない問題であると信じておる次第でございます。
  194. 下村定

    ○下村定君 ただいまの御答弁を了承いたしまして、今後ぜひともこれらの点について御検討の上、善処せられんことを重ねて強く要望いたします。  なお、今回上程せられております修正案については、これを実施するについて相当むずかしい点があると思います。と申しますのは、もうすでに戦後十五年もたっております。これを調査しますにつきましても、また、裁定をするについても、従来とはよほど困難性があると思います。この点につきまして、総理府は関係当局と協力をせられまして、その促進に御尽力あらんことをお願いします。  私の質問を終わります。
  195. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) この際、お諮りいたします。  松村秀逸君から委員外議員発言の要求がございますが、これを許すことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  196. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 御異議ないと認め、さよういたします。
  197. 松村秀逸

    委員外議員(松村秀逸君) 今度の恩給法改正は、多年の懸案でありました加算問題など、不均衡の是正に重点を置かれておりまして、私は賛意を表するものでございます。以下二、三点恩給問題について簡単に御質問いたしたいと思います。  恩給の受給額が勤務年限によって差異があることは当然でございます。普通恩給年限に達したものは勤務年限が一年増すごとに百五十分の一ずつ増加することになっておりますが、加算がついて恩給をもらうものは、実役年が恩給年限に足りません。その不足分に対しましては、一年について百五十分の四・五ずつ減額されることになります。つまり恩給は、グラフで書いてみますと、実役年限に従って百五十分の一ずつだんだん減ってきますが、加算がついてもらう人のところになりますと、百五十分の四・五ずつ減るわけでございまして、がた落ちになります。この減額率は三十三年の改正までは百五十分の三・五でございましたが、このときの改正で百五十分の四・五に変わったわけでございます。当時は加算がついて恩給をもらうべき人との間でも、既得権者と失権者がありましたので、その両者の不均衡を緩和するという意味が四・五にしたのにあったと思いますが、今度の改正で失権者はなくなったのでございます。この減額率は多きに失するきらいがあると思うのでございますが、今後検討の要があると思いますが、御当局の意見を承りたいと思います。恩給局長からでもけっこうです。
  198. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 松村先生からの御質問の点は、この加算によって権利を取得する人たちの年金額の計算におきまして、その実在職年範囲で計算する、つまり加算年というものは、資格の取得には役に立つけれども、年金額の上では反映しない、従って、加算がついて十年以上になりましても、それは百五十分の一ふえない。逆に、三年しか実在職年がなくて十二年、プラス・アルファの九年がついて、そうして十二年になって普通恩給がつくということになりまするというと、年金はもらえますけれども、その際の年金額の計算におきましては、逆に足らない分について、一年についての百五十分の四・五ずつ減額していく、つまり百五十分の五十というのが十二年まるまる勤めたときの年金額でございますけれども、それから実在職年が六年しかない、そういたしまするというと、六年分だけ百五十分の四・五ずつ一年について引いていく、こういう計算をいたしております。と申しますことは、これは十二年でもって俸給の三分の一、つまりいわば百二十日分を支給すると、こういう計算になるわけでございまして、従いまして、十二年間勤めあげて百二十日分でございますから、一年につきましては大体十日分というのが当たるわけでございます。従いまして、その年数が足りないものについては、その分だけ引いていくというような考え方でございまして、大体一年については百五十分の四・五というものを引くという制度が今とられているわけです。そこで、松村先生の御指摘の点は、これはこの前の昭和三十三年法律第百二十四号という増額案を出す前には百五十分の三・五だったじゃないか、これを三百億増額案の法律百二十四号でもって百五十分の四・五にふやしたというのは、これはいきさつがあって、臨時恩給等調査会の答申では、加算をやるかやらないか決定を下さないで、将来の問題に残そうというので答申が出ておりましたが、その際、既裁定者については、全体の問題については一万二千円ベースから一万五千円ベースにアップすべきであるけれども、既裁定者の加算で恩給がついている場合には、結果的には一万五千円ベースによるところの利益を均霑させないでおこうじゃないかというふうな意見がついておったのでございます。従いまして、そういう意見をも尊重いたしまして、しからばといって、この全体のグループの中で、加算実施によって恩給を受けておる既裁定者約五十万だけをベース・アップしないということも、全体の体系からいかがかと、こう考えましたので、一万二千円ベースから一万五千円ベースにベース・アップします。しかしながら、その減算率においては、今まで百五十分の三・五という減算率が若干甘かったことを考えて、それを精密に検討いたしまして百五十分の四・五という数字を出したわけでございます。その結果、その百五十分の四・五という控除率を当てはめますと、大体今までもらっていた手取り額がベース・アップによっても動かないというような結果になったわけでございまして、答申のねらっておるところの要求に合致するような事態になったわけでございます。そういう意味で、ベース・アップはいたしましたけれども、実質的には上がらないというねらいがそこにあったのだから、今度既裁定者と夫裁定者との不均衡が是正されたら、それは回復してよいのではないかというのが御所論だと思います。しかしながら、そういうことも一つのねらいでございましたけれども、一方におきまして恩給法の上で減算率というものを、その一年についての価値というものをもっと厳格に見直して百五十分の四・五ということにしたわけでございまして、たての両面のうち、一つの面においては意味があるわけで、必ずしもこの不均衡是正完了前の時代にとられた特別な措置であるというふうにばかりは了解しないのであります。しかし、なかなかこの問題はむずかしい問題だと思うのでありまして、いろいろ御所論のあるところは十分承って参りたいと存じます。
  199. 松村秀逸

    委員外議員(松村秀逸君) さっき下村委員から改定恩給の問題について触れられましたが、私もちょっと二、三触れたいと思います。恩給は公務員給与の引き上げに伴いまして、軍人恩給復活以来、一万円、一万二千円ベースと上がって参りました。三十三年の改正では一万五千円ベースになりましたが、それはその実施はほとんど下級者に対してでございました、大部分が。しかも、それは老齢者に限られているのでございます。現在公務員のベースは二万三千円近くになっていると思います。また、さいぜん総務長官からもお話のありました臨時恩給等調査会の答申案の中にも次のようなものがあります。「恩給は老後の適当な生活をささえるための補償である。公務員の給与水準の引き上げが、その生活水準を基礎に行われている限度において、使用者としての国は恩給についても考慮すべきである」という文句でございます。これは恩給調査会の答申案の中の文句でございますが、政府としては当然尊重せられるものと思いますが、いかがでございましょうか、総務長官。
  200. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 先ほど下村委員にもお答えを申し上げましたが、そういう御意見もございまして、この公務員のベース・アップが行なわれるという事態は、やはり経済状態、あるいは生活費の上昇、こういう問題が起こったがゆえに公務員のベース・アップも行なわれるわけでございますので、当然にリンクするとか、あるいはスライドするということはなかなかむずかしいかと思いますが、そういう経済状態、生活費の状態等を勘案して、やはり恩給の額につきましても十分考慮していかなければならない問題であるというふうに考えて、研究を進めておる次第でございます。
  201. 松村秀逸

    委員外議員(松村秀逸君) つまり生活費が上がる、公務員の給与が上がる、恩給の方もみてやるべきであるというのが今の御意見だと拝聴いたしましたが、また政府は十年後の所得倍増を約束されておりますが、恩給は、御存じのように、れっきとした給与所得の一種でございます。そういうわけでございまして、ことに今度の恩給法の改正は、不均衡の是正ということに重点が置かれたのでございますが、これから増額ということについても考慮していただかなければならないと思うのでございます。総務長官の御所見をお伺いいたします。
  202. 藤枝泉介

    政府委員(藤枝泉介君) 今回の改正で、先ほど下村委員の御指摘になりましたような、恩給制度の外にあるものについての問題は別といたしまして、現在の恩給制度という建前をとりますれば、大体この範囲においては解決をいたしたものと存じます。今後考えられて参りますのは、ただいま御指摘になりましたように、社会状態、経済状態、あるいは生活費の上昇、こういうものを勘案して恩給の額というものがいかにあるべきかということであろうかと存じます。従いまして、そういう観点から今後問題になりまするのは、恩給の額が今後の社会状態に対していかにあるべきかということに重点を置いて考慮を進めて参りたいというふうに考えている次第でございます。
  203. 松村秀逸

    委員外議員(松村秀逸君) 私の質疑はこれで終わります。
  204. 吉江勝保

    委員長吉江勝保君) 他に御発言もなければ、三案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめ、残余の質疑は次回に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十八分散会