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政府委員(
加藤陽三君) ちょっと私から、
自衛官の
政治的行為の点につきまして、大臣の御説明を補足して申し上げたいと思います。
これは先ほどから大臣もおっしゃっておりますが、今の
自衛官は昔と違いまして、昔は軍人は、軍紀軍令に抵触しない限り、
憲法を順行をするということになっておったのでありますが、今は
一般的に基本的な権利を持っている。ただ、公務員という
立場において、
法律で制限された
限度においてしか行なってはいけないということになっているわけであります。そうして
自衛隊法の六十一条に、「
政治的行為の制限」の
規定がございます。これは、「隊員は、政党又は政令で定める
政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもってするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の
行使を除く外、政令で定める
政治的行為をしてはならない。」そこで、この政令が
自衛隊法施行令の八十六条、八十七条に書いてあるわけでございます。八十六条におきまして
政治的目的の定義をきめておりまして、第一号から第八号まで書いてございます。そこで、この中で第一号、第二号、第三号、第四号、これは今の問題には
関係ないと思います。六号、七号、八号も
関係ないと思います。八十六条の五号が問題になるのじゃないかと思うわけです。第一号は、「選挙において、特定の候補者を支持し、又はこれに反対する」、これは
関係ない。第二号は「最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査において、特定の裁判官を支持し、又はこれに反対する」、第三号は「特定の政党その他の
政治的団体を支持し、又はこれに反対する、第四号が「特定の内閣を支持し、又はこれに反対する」、これは今の場合は問題にならないと思います。第五号が、「
政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対する」、まあこれが問題になるんじゃないかと思うわけでございます。第六号は、「国又は地方公共団体の
機関において決定した政策の実施を妨害すること。」、第七号は、「地方自治法に基く地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ、又は成立させない」、第八号が、「地方自治法に基く地方公共団体の議会の解散又は
法律に基く公務員の解職の請求に関する署名を成立させ、若しくは成立させず、又はこれらの請求に基く解散若しくは解職に賛成し、若しくは反対する」、これは
関係がない。結局その第五号が問題になってくるわけでございますが、この第五号の
解釈につきましては、人事院の方の
解釈を見ますと、ここで「
政治の方向に影響を与える意図」と申しまするのは、
日本国憲法に定められた民主主義
政治の根本原則を変更しようとする意思をいうというのが人事院の
解釈でございます。それから、ここに書いてありまする「特定の政策」というのは、
政治の方向に影響を与える程度のものであることを要するというのが人事院の
解釈であるようでございます。そういたしますと、今の紀元節の問題は、八十六条の第五号に該当するかどうかということでございますが、まだこれはもう少し私自身もよく研究してみなければいけないと思いまするが、今一応の
考え方といたしましては、もし人事院の
解釈の方をとるといたしますれば、これはここに該当しないんじゃないかというふうに思うわけでございます。
それから、今の勤務時間内外の問題は、これは
政治的行為の禁止の問題とは別でございまして、これは
自衛隊法施行令八十七条の第二項、これは百十五ページにございますが、これは勤務時間外において行なう場合でも、やはり
政治的行為についてはいけないということになっておるわけでございます。問題は、やはり今の運動自体が八十六条の五号に該当するかどうかということで判断すべき問題であろうというふうに
考えます。