○国務大臣(
池田正之輔君) これは勧告文にありますように、先ほど御指摘になりました科学技術
会議の
答申にもございますように、日本の科学技術者というものは、これからの十年の間に、約大学卒業者が十七万人必要とするということが要請されております。ところが、文部省の
計画によりますと、これが入学者が、短大を入れまして、十万とちょっとであります。今数字ははっきりしませんが、十万三千でございましたか五千でございましたか、ところが、これは入学者でございまして、文部省が世間に発表しておるのは、この入学者の数をいっておるのです。七万三千とか、これは短大を除いた大学だけの入学者の数です。そこで、これをさらにあらってみますと、短大をも含めて、この十年間に卒業する人が五万六千九百三十二人という数字でございます、全部卒業するとしましてですよ。その中からロスを引いていきます。途中で脱落する者も出てきます。それから、せっかく卒業しても親の職業を継いだり、そういう工場や研究所や何かの職場につかないで、新聞記者になるのもあるでしょうし、いろいろありまして、そういうロスを見ますと、どうしても二割ないし三割ロスが出てくる。そうなってくると、卒業して工場なりそういう実際に必要な職場につく人員というものは四万人内外しかない。十七万人の要請に対して四万人しかないということは、これは
政府が言っておる十カ年
計画というものに重大な支障を来たすわけです。これは明瞭な事実なんですね。そういうものを前にして文部省はどういう
措置をとったかといいますと、これは文部大臣おってくれれば一番いいのですが、きょうは残念ながらいませんが、大学というのは、御承知のように、国立の大学と、それから公立の大学があります。東京、大阪あるいは名古屋市とか大阪市といったような公立の大学があります。それから私立大学もあります。この三色あるのです。国立と公立と私立と三つあるのです。ところが、文部省のやっておる仕事を見ますと、国立だけ一生懸命やっておる。そして公立や私立に向かって
一つも呼びかけもしなければ、
協力も求めていない、この実態を私は怒るのです。なぜ一体文部省はこういうばかなことをしているのか、そこでこれをやれと、こう言っておるのです。ところが文部省は、予算がもうすでに通ったからやれないと、こう言うのです。予算が通ってもやれるじゃないか、予算がなくてもやれる面があるじゃないか、それは何だといいますと、公立だって、話の持って行き方では、これはやります。私は最近二、三地方を回りますと、各県の名前はいいませんけれども、工科大学を作りたいから
一つ骨折りを願いたいといって、私のところに二、三の県からきております。そういうところには全然呼びかけていないのです、文部省は。それから私立大学は、これはまた呼びかけていない。むしろこれは規制法を設けて抑制している、これがけしからんといって私は怒っている。そこで、しからば予算なしでいける
方法があるかというと、いける
方法があるのです。それは何だというと、今やもう四月の半ばになりましたから、もうすでに時期はおそくなりました。公立はもう大体だめでしょう。しかし、私立はこれからでもやって、五月中には開議できます。新しい大学をぽつんと建てるのは、これはむずかしいでしょうけれども、現在ある、あるいは早稲田なり慶応なり、あるいは日大なり、それらの大学の科目をふやす、電子工学をふやす、あるいは物理学をふやす、科目をふやすということは、これは自由にできます。教授陣もおります。それをふやさせない。なぜそれに対して
協力を求めてやらぬのか、それをやれば、
たちどころにことしだけでも何千人というのがふえるはずなんです。それを文部省はやっていない。
そこで、あなたが今御指摘になったように、第四項あるいは第五項を発動してやったらいいじゃないかというふうにお考えになるかもしれません。私は、そうじゃなしに、今実はこの残されたたった
一つの私立の大学、予算なしでふやせる面、ことしは金がないから自力でやってくれないかといえば、これは各大学で、私の手元にきているのは七つ、八つあります。これだけでもすでに五千人を突破しております。これも文部省が許可すればいけるようになっております。それを文部省がそんなことをいっておる。文部官僚というのはけしからんやつです。これは文部省の属僚
政治というものは、まことにわれわれは見るにたえない。何とかしてこの機会にこの文部省の属僚
政治の壁を突き破らなければ、日本の科学技術ということはできないのです。そこで、私は、そういう報告を求めるとか何とかという形式的なものよりも、ここで勝負しようというのが私の決意であります。