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国務大臣(迫水久常君)
経済企画庁設置法の一部を改正する
法律案の
提案理由を御
説明申し上げます。
現在、
経済企画庁は、
経済に関する総合企画調整官庁として、
経済企画庁設置法に基づき、総合的な立場から
経済政策の
運営に当たってきているのでありますが、今後
経済の健全なる発展を一層促進するための
施策の
充実ということを考えますときは、
経済企画庁設置法に所要の改正を加え、その任務の
遂行に遺憾なきを期する必要があるのであります。これが今回この
法律案を
提案するに至った根本的な
理由でありますが、改正の第一点は、
経済企画庁に、
附属機関として、地域
経済問題
調査会を
設置いたしたいということであります。
わが国の
経済が最近目ざましい発展を遂げつつあることは、御
承知の
通りでありますが、これを今後も維持し、さらに一層の発展をはかるためには、解決すべき幾多の問題のあることも事実であります。そのうちの重要な問題の
一つは、
経済の地域的な発展に関連する問題であります。
御
承知のように、近年におけるわが国の
経済の
高度成長は、主として、京浜、名古屋、大阪、北九州の四大工業地帯を中心とする第二次産業の著しい発展によってもたらされたものでありますが、これらの地帯におきましては、これがため産業及び人口の過度の集中、過大都市の問題が生じてきているのであります。すなわち、
昭和三十四年の工業生産額の半ば以上が四大工され、また、最近数年における全人口の増加数の大部分に相当する数の人口がこの地帯の都市に新たに集中するという状況であります。このような状態の当然の帰結として、工場新設に要する
用地、用水の取得難が近時特に深刻な問題となっているほか、たとえば
東京の通勤輸送に見られるごとく、輸送上も種々問題が生じてきており、さらに、上水の
不足、住宅難等、生活環境の面においても看過し得ない状態が現われつつあるのであります。
しかるに、一方、工業等に比べて生産性の低い第一次産業が主産業となっているいわゆる後進地域におきましては、その住民の所得の伸びが、他の地域における住民の所得の伸びに比べて相対的におくれており、その結果、いわゆる地域間の所得格差の問題が提起されてきているのであります。このような状態のまま
推移いたしますと、これまで順調に発展を続けて参りましたわが国の
経済は、各部門における隘路の発生によって、その
高度成長を維持することが困難となるおそれがあるばかりでなく、地域的に不
均衡な
経済の発展は、長期的に見れば、結局、資源の有効な利用とならないのみならず、社会的緊張を強める結果にもなると思うのであります。このため、
経済企画庁としては、国土総合開発法に基づく全国総合開発計画を策定すべく、目下検討を進めているのでありますが、この計画を右のような問題の解決に資し得るりっぱなものとするためには、
経済の
高度成長の維持と、地域的に
均衡のとれた
経済の発展をはかるという観点から、産業及び人口の適正配置に関する考えを明らかにした政策の基本的
方向を確立するとともに、さらに、計画の
実施を実効あらしめるための方策についても
調査研究する必要があるのであります。このような趣旨から、
経済企画庁に新たに
調査会を設け、内閣総理大臣の諮問に応じて、地域
経済問題に関する総合的かつ重要な問題を根本的に
調査研究することにいたしたいのであります。
改正の第二点は、
経済企画庁に、
附属機関として、
国民生活
向上対策
審議会を
設置することにいたしたいことであります。最近の目ざましい
経済の発展に伴い、
国民生活の
向上には相当見るべきものがあります。しかし、先進諸国に比べますと、
国民所得の水準から見て、衣生活や耐久消費財の保有の面では比較的進んでいるにもかかわらず、食生活の面では質的に劣っており、また、一般に個人生活の
内容の
充実の程度に比べて、住宅、上下水道その他の生活環境施設の
整備の面が立ちおくれている等、
国民生活の各部面において不
均衡が見られるのが
現状であると思うのであります。
政府といたしましては、従来より
国民生活の安定
向上に意を用いてきたことは言うまでもありませんが、従来、どちらかといえば、
経済政策としては、財貨の生産面に重点の指向された期間が戦後相当長く続いたということは、いなみ得ない事実であります。しかし、生産の増強といっても、その究極の目的は
国民生活の
向上にあるのでありまして、右のような
現状を考えますときは、
国民生活の
向上のためには、一そう総合的な対策の推進が痛感せられますとともに、将来の
経済の
高度成長をささえる需要要因としては、消費需要、特に個人消費支出の増加に期待するところが大きい事情を考えますと、その感をさらに深くするのであります。従って、この点についても
経済企画庁に
国民生活
向上対策
審議会を設け、
国民生活に関する総合的な
向上対策を
調査審議し、
国民生活の
向上に資したいと思うのであります。
改正の第三点は、
経済企画庁に置かれる参与の定数の増加であります。
経済企画庁には、重要な庁務について
長官に
意見を申し述べる非常勤の参与が三人置かれているのでありますが、さきに申し述べましたように、
経済の地域的発展に関する問題並びに
国民生活の総合的
向上対策に関する問題等の
重要性にかんがみ、これらの事項について識見の深い者を参与に加えることが必要であると考えまして、現在三人以内となっております参与の定数を増加して、これを五人以内に改めたいのであります。
以上が、この
法律案の
提案理由及び
内容の
概略であります。何とぞ、慎重御
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。