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鈴木強君 私は、ただいま議題となりました
公衆電気通信法の一部を
改正する
法律案に対し、
日本社会党を代表して反対討論を行なわんとするものであります。
討論に入ります前に、一言私は触れておきたいと思いますが、今も私は
委員長に御
質問を申し上げましたように、本
改正案は今度の
電電公社の長期
合理化計画と非常に重大な関係がございます。従って、われわれは、この
委員会を通じて尽くすべき審議は十分尽くし、参議院としての良識を発揮して、この
法律案施行に際しても万遺憾なき措置をとって、ほんとうに電電事業が
国民にりっぱになったというようにほめられていただくようなものにしたいと思いまして、私は二十時間の討論の通告をいたしましたし、同僚議員も約四十時間
程度の質疑を
委員長に通告をしております。これは松平挑発提案
委員にも十分御連絡をとった上のことであります。にもかかわらず、かように非民主的な、われわれの質疑を残して議事を打ち切ったということは、まことに
委員会の運営上禍根を残すものでありますから、私はこの点については
委員長にも大きな反省を求めると同時に、自由民主党の諸君もあまり数の力でもってものを押し切るというようなことをやらないように私は願うものであります。
さて、本論に入りますが、御
承知のように昭和二十七年の八月、
電信電話事業の合理的かつ能率的な
経営形態を確立するとともに、設備の
拡充強化を促進し、
サービスの改善をはかるために、
公共企業体として
日本電信電話公社が発足したのでありますが、この間、第一次五カ年
計画、第二次五カ年
計画等を通じ
電信電話事業は目ざましい発展を遂げ、他の
企業体に比較しましても、きわめて優秀な
業績をおさめて参ったのであります。これは
電気通信事業における技術革新と、これに従事する全職員の涙ぐましい努力のたまものであると私は確信するものであります。しかしながら、このような
電信電話の発展の過程を見まするときに、
公共企業体の性格に対する理解がまだ十分ではないために、今日においてもなお官営
時代の制約にしばられまして、
経営の自主性の確保、職員に対する待遇改善等に幾多の問題を残しておるのであります。
これらの点に関しまして、さきに昭和二十九年一月、臨時
公共企業体審議会より、また昭和三十二年十二月、
公共企業体審議会からそれぞれ
答申がなされているのでありますが、いずれも
公社の組織運営を根本的に民間的センスに切りかえ、その企業性と自主性を強化して、もっぱら能率的、進歩的運営をはかる必要があると
指摘せられ、その具体的事項として、
公社の予算及び決算制度、監督、
料金の決定、給与等、勤務条件の
諸般にわたりましてその改善方策が示されたのでありますが、これらの
答申に応じた
政府の適切な措置が今日に至りましてもいまだ何ら講ぜられておらないことは、
政府の怠慢と言わなければならず、私のきわめて遺憾に存ずるところであります。わが党はつとにこの点を重要視いたしまして、その矛盾と不合理とを是正して、真に公企体としての運営にふさわしいものにしようという
見地から、今国会に、
日本電信電話公社法の一部を
改正する
法律案を提案したのであります。私はまずこの基本的問題の
改正を行ない、その前提のもとでなければ、いかなる
改正をいたしましても、真に効果的な成果をおさめ、
国民の期待に十分こたえることはできないと信ずるのであります。もとより私
どもといたしましても、
電気通信設備の
機械化、自動化等の
合理化施策については、何ら反対をするものではありません。ただ、われわれが最も重視するのは、
合理化の進展に伴って、そこに働く労働者の労働条件が向上しなければならないこと、設備の近代化に伴って生ずる余剰人員を、労働者の意向を尊重して最善の措置を講ずること、また
利用者に対してもその恩恵を最大
限度与えることであります。このことが
合理化の前提条件とならなければならないことであります。従って、その一環として、
電話料金も合理的妥当なものに
改正することは当然のことと思うのであります。このような
見地からいたしまして、わが党は、さきの
電信電話設備の
拡充のための暫定措置に関する
法律案の審議の際におきましても、同時に
料金問題にも触れるべきであることを強く主張したのであります。現行
料金引き下げは、むしろわが党が率先提唱したところであります。
ところが、今回の
政府提出の
改正案を見まするに、
料金改定にあたりまして当然まっ先に
考えなければならない現行の
料金水準が、はたして適正であるかどうか、また、
料金と
一体不可分である現行
電話加入制度の欠陥の是正等の最も重要な諸点には何ら触れるところがないのであります。この不合理と欠陥とをそのままにしておいて、
料金だけを改定しようというのであります。
政府並びに
公社当局は、今回の
料金改正は
値上げをねらったものでもなく、値下げをねらったものでもない、現在の
料金収入に変動を来たさないことを前提として、現行の
料金水準を維持することを基本方針とした。しかし、結果的には三十億円
程度の減収を生ずるであろうというのでありますが、私
どもから見まするならば、それは単に計数の上で数字のつじつまを合わせただけで、はたして実際に
値上げなのか値下げなのか、どこにその保証があるか、まことに独善的な知能犯的な
料金引き上げを内容とした
改正案であると断ぜざるを得ないのであります。
以下私は本
法律案の内容につきまして、おもなる矛盾点と不合理を
指摘してみたいと思います。その第一は、この
改正案では、現行の
料金水準に対する
検討が十分に行なわれていないのであります。現行の
料金水準は、昭和二十八年に減価償却費の不足を補い、また
拡充資金の一部に充てるための理由で、従来の
料金ベースに対し二割
程度の
値上げを見込んで改定され今日に至ったものでありますが、
電電公社は
一般私企業にも例を見ないほどの
利益を生み出し、昭和三十四年度には実に五百十四億円の巨額に達し、しかもその額は年々増加の一途をたどるものと思われます。現在最も有力な建設資金源となっております。そして、この
利益の増加の最大
原因は、従業員諸君が、第一次五カ年
計画以来今日まで飛躍的に増大する設備の
拡充維持を行なってきた血みどろの労働の結晶であります。また目ざましい技術革新の成果であることは疑いを入れないところであります。しかるに、
公社当局は、このような膨大な
利益を、
一つには
加入者の
利益のために、
一つには従業員の待遇改善のために、
一つには将来の建設のために充てると言ってはおられるのでありますが、
加入者に対する還元、それは
料金の引き下げであろうと思うのでありますが、これは
一体いつ行なわれるのでありましょうか。また、従業員に対する待遇改善に充てるといいますが、
公社従業員の待遇は、最も新しいこのたびの仲裁裁定実施後における平均ベースを見ましても、鉄等の従業員よりむしろ低い状況であります。私
どもは、何としても納得ができないところであります。
しかるに、一方において、将来の建設に充てるといわれる建設勘定への繰り入れは、本年度予算において約五百億に達し、これに減価償却引当金を合計いたしますと、実に一千十九億円となっているのが
実情であります。私は、国営事業である
電気通信、
電信電話のごときものの建設を、元来、財政投融資等の国家資金でまかなうべきものであると思うのでありますが、実際問題としてこれが困難な場合には、事業上の
利益の若干を将来の
加入者の増加のために充てることは、それによって同時に既存の
加入者の
利益にもつながるものでありますので、あながちこれに反対するものではありません。しかし、問題は、その
程度、方法いかんであろうと思うのであります。
公社の現在の事業成績から見まするならば、率直に言って、もっと
加入者と職員への還元を真剣に考慮すべきであろうと思うのであります。特に今回のごとき
料金改正にあたりましては、どの面から見ても、また、どのような
電話のかけ方をいたしましても、いやしくも、もとより
料金の
値上げになることのないような
料金改定でなければならないと信ずるのであります。しかるに今回の
料金改定について見ますと、なるほど値下げになる部分も若干はありますが、逆に
値上げの部分も
相当にあるのでありまして、たとえば東京−大阪間の場合、即時化にならない前の当分の間は、三分の場合二百九十円が三百十八円に、六分の場合五百八十円が六百三十六円になるわけでありまして、このような事例は他にも
相当にあるのであります。また、自動化された場合に適用されんとする距離別時間差法の適用区域における
料金制度も、
加入者の
電話の話し方によっては
値上げとなることは必至であります。おそらく、この
改正案が通った場合には、
利用者と世論のごうごうたる反撃を受けることは今から明らかであると思います。
その第二は、現行の加入区域制度の欠陥に対し、何らの考慮が払われていないことであります。現在の加入区域制度のもとにおきましては、東京、大阪のような大都市と中小都市との間、あるいは地方農漁村との間に著しい格差が生じておりまして、
サービスの便益及び
料金の負担の均衡がとれておらないのであります。一例をあげて、大阪周辺の
電話加入区域の矛盾、不均衡を申し上げますと、先ほ
ども質問を申し上げましたように、たとえば大阪と豊中、吹田、尼崎との間のごとき、全く不合理不均衡の典型的なものであると思いますが、このような傾向は、最近の社会生活圏の
拡充傾向とからみまして、現行の加入区域との間に著しいギャップが生じてきておるのであります。しかもこのギャップを生じているままの現状に対し、何ら手を加えずして、
料金だけを改定いたしましても、これが合理的に均衡のとれた
料金となるはずのないことは火を見るよりも明らかであると思います。
次に、反対理由の第三は、この
料金改正案には、この実施
計画の裏づけが全くなされていないことであります。御
承知のように、この
料金改正案は、市外
電話の即時化と表裏
一体の関係にあるものでありますが、それにもかかわらず、今後の市外通話の自動即時化
計画は、この
法案審議の過程において全く示されておらないのであります。さらにその上に、昭和三十八年度より始まる第三次五カ年
計画の概要すら明らかにされず、ただ黙って
公社当局を信頼しろというのであります。しかも、このような独善的傾向は、最も重要な今後の
電信電話事業
拡充計画遂行の根幹となるべき要員
対策に関しても全く同様であります。前にも申し上げましたように、第一次五カ年
計画発足以来、
拡充に次ぐ
拡充をもってし、諸外国にもその例を見ないような設備の
拡充を行ない、しかもこれをよく保守運用しまして、今日の輝かしき
電信電話事業を築き上げ、また今後も一そうこれを発展さしていくべき
使命をになうものは、言うまでもなくここに挺身する従業員全員であります。試みに、最近の要員の充足状況について見ましても、昭和三十五年度新規要求人員一万四百五十八人に対し、予算で認められました要員数は五千三百十六人であります。また本年度に至りましては、一万四千三百七十六人の要求に対し、認められたものは八千七十一名でありまして、実にこの二カ年間で六千名の削減となっております。従いまして、この削減によりますところの差、すなわち実際に必要な人員と実際に働いている人員との差は、従業員のいわゆる労働強化、言うならばその
犠牲によって償われていると言っても過言ではありません。また、第三次五カ年
計画を遂行しようといたしますと、市内
電話のこうした増加と全国市外即時綱の確立ということはどうしても避けられないところでありますが、現在郵政省の特定局に委託しております交換局を含め約六千八百の
電話局のうち、おそらく六千二、三百の局は無人局となり、ここに従事する交換要員は要らなくなる勘定になります。その大部分を占める女子職員は、どうしてもどこかへ配置転換されるか、または職種転換を余儀なくされる運命にあるのであります。
公社当局は首切りはしないと言っておりますが、これらの従業員の労働不安に対し、これを解消するような何らの具体的
計画は示されていないのであります。
公社当局の、従業員の給与、要員配置転換等に対する態度は、以上申し上げたようなものでありまして、これら従業員の涙ぐましい努力に対し、何らあたたかい手を差し伸べず、妥当な要求に対しても誠意をもってこれが解決のための努力をはからず、かえって、時には重圧を加えて、この重圧に対して組合員が行動すれば、直ちに厳罰をもって臨むという、最近の
政府並びに
公社当局の労働政策は、明らかに前
時代的なものであり、誤りであると言わなければなりません。事業は人にありとは古代からいわれてきております。いかにりっぱな
計画を立てても、労働者の協力なくしてはその
計画は画餅に帰するでありましょう。私は、この際、
公社が今日までとりつつある、誤れる愚劣な労働政策を率直に改められて、真によき健全な労使関係を樹立され、労使
一体となって、
国民の期待する事業の発展を期せられる態勢をすみやかに確立されるよう強く要求して、私の反対討論を終わります。