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1961-06-02 第38回国会 参議院 逓信委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年六月二日(金曜日)   午後一時十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     鈴木 恭一君    理事            新谷寅三郎君            手島  栄君            松平 勇雄君            野上  元君    委員            植竹 春彦君            柴田  栄君            寺尾  豊君            野田 俊作君            谷村 貞治君            久保  等君            鈴木  強君            光村 甚助君            森中 守義君            山田 節男君            奥 むめお君   政府委員    郵政大臣官房長 荒卷伊勢雄君    郵政省電気通信    監理官     松田 英一君    郵政省電気通信    監理官     岩元  巖君   事務局側    常任委員会専門    員       勝矢 和三君   参考人    全国電気通信労    働組合中央本部    調査部長    及川 一夫君    東京大学教授  阪本 捷房君    法政大学助教授 薄  信一君    高橋経済研究所    所長      高橋 亀吉君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○公衆電気通信法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) ただいまより開会いたします。  本日は、公衆電気通信法の一部を改正する法律案について、参考人方々からの御意見を聴取することになっております。  参考人方々には、御多忙の中にもかかわりませず、わざわざ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。この際、それぞれの立場で、忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存ずる次第でございますが、ただ時間の都合もございますので、各参考人の御意見の開陳は約二十分以内でということにしていただいて、後刻各委員からの質疑もあろうかと存じますので、またその際御発言願いたいと存じます。  それでは、はなはだ勝手ながら、御発言の順序を委員長に御一任願うことにいたしまして、まず及川参考人から御発言願いたいと存じます。お願いいたします。
  3. 及川一夫

    参考人及川一夫君) 公衆電気通信法の一部を改正する法律案の審議にあたりまして、特に重要な関心を持っております私ども意見を述べる機会を与えていただきましたことに対しまして、委員長初め、各逓信委員皆さんに心から御礼を申し上げたいと思います。私は、時間も限られておりますから、簡潔に申し述べたいと思います。  まず第一に、この法案に対する私たち立場を明かにしたいと思いますが、私はこの法案については、賛成できないという立場に立つものであります。その理由は、昭和二十八年度を初めといたしまして、第二次五カ年計画まで、電通労働者に加えられた合理化、さらに合理化が進められてきた経過、これが与える私ども労働者に対しての犠牲等を考えたときに、第三次五カ年計画、つまり全国即時網完成という課題と直接関係のありますこの法案に対しまして、基本的に反対立場に立たざるを得ないのであります。御承知通り全国即時化完成のためには、端局主体といたしました現行料金体系では、電話即時化完成することは、事由のよしあしは別にいたしましても、実現でき得ないのであります。全国即時化のためには、まず第一に現行端局を、ある一定の尺度をもって半円径を描くか、あるいはまた行政区を主体にして、その中にある数局を一つの局に集中をいたしまして、集中局を設けることによってグループ料金制を実施しないと全国即時化はでき得ないのであります。さらにまた、そのことをやらなければ、料金そのものが不合理になってしまう。こういう事実は私どもとしても理解をしているところでありますが、しかし、この計画というものを実施いたしますと、現在の郵政委託局を含めた六千八百もある端局、つまり有人局が五百三十九の局にしぼられ、約六千二百六十局は人のいない局となってしまうのであります。従いまして、そこで働いておる電話交換皆さんや、さらに機械関係皆さん、その他の皆さん、そういった方々配置転換なり職種転換なり、首切りといった形で現われることを私たちは見のがすことができないのであります。また、距離別時間差法設定におきましても、これが全国即時化前提であるという立場に立ちますと、先ほど申し上げましたものと同様私どもとしては見のがすことができない問題であります。結論的には、第三次五カ年計画と直接的に関連をした料金改正でありまするから、合理化そのものに対して公社当局がどのような政策を持ち、施策を持つか、このことが明らかにされなければ大へんな問題であるというふうに私どもは考えておるわけであります。  こういう立場から、この法案内容について、今公社において立案中である第三次五カ年計画に直接的な関係があるという立場から、われわれとしては見のがすことができない問題だというふうに理解しておるところであります。私どもは、労働組合本来の持つ任務といたしまして、労働者利益を守る立場から、合理化問題については特に公社当局団体交渉なり、あるいは話し合いの場を通じまして、いろいろと話し合いをして参りました。しかし、今なおこの合理化によって生ずる私たちに対する犠牲の問題、さらにはその犠牲を食いとめる、犠牲最小限度に食いとめるような施策、こういうような問題について明らかにされていないのが現状であります。たとえば、諸先生方の中にもあるいは四国の地方から御出身の方がおられると存じますが、具体的な例として丸亀琴平という合理化の問題一つとらえてみても、いかに労働者犠牲になっておるかということを指摘したいのであります。それは丸亀電話局は三十七年度に改式になります。琴平は三十八年度に無人局として改式になります。しかし、丸亀改式の際には要員が余るといった形において、数十人の人が配置転換され、さらに三十八年度に琴平無人局になりますと、加入者がふえるということによって、丸亀の局が増員をされるといった形をとります。昭和三十七年に改式にされたときには、そこの丸亀局労働者配置転換される。しかし、一年後になってみると、丸亀局琴平局の人が、あるいはその他の労働者の人があとから入ってきたという格好で、いわば居すわってしまうということが起こるわけであります。私はこれは端的な一つの例だと思いますが、公社合理化計画そのものが、こういった問題について、この辺の問題すらいわば解決がされない。だからいわば端的に言って、サービス年度を同じにする、こういうことであるならば総合的な要員措置計画の中でこういう問題が処理されるのではないかということであります。しかし、このことすら、ことしの団体交渉の、この春におけるいろいろの話し合いの中でも問題が解決されずに、現在公社側としては第三次五カ年計画の中で考慮する、こういう形になっておるのであります。しかし、私どもとしては、こういう問題が明確にならないうちに、その基礎となるこの法案が決定されるということについては、今まで繰り返えされた労働者犠牲合理化矛盾、こういうものを必ずや私たちに押しつけてくるのではなかろうか、こういうふうに理解するわけであります。こういう立場から私どもとしてはこの法案に対して賛成できないということが第一点であります。  もちろん、私たちといたしましては、合理化の問題について、すなわち自動化なり機械化という問題について反対をするという考え方は毛頭ございません。自動化機械化によって世の中が便利になったり、すべての人々が住みよくなるという、その事態について私ども反対いたしません。また、反対できるものではないと思うのであります。問題は自動化なり機械化なり、それを実施する目的、すなわち利用の仕方について私どもとしては反対意見を持っておるわけであります。つまり、自動化機械化を、公共性という美名にかくれて、国民のための電通事業であるものが、大都市中小都市格差あるいはまた金がなければ電話はつけられない、電話を持っている人たち階層の分布状況なり、電話のない農漁村というものが今なお存在しておるという事実から言って、現在の、あるいはまたこれから推し進められようとする合理化のねらいは、一部の階層の人のために電通事業というものが切り開かれ発展していくということになるのではないか。一部の人たち電通事業に化してしまうことについて反対をしたい、こういう立場であるということを十分御理解を願いたいと思うわけであります。  さらにまた、私どもとしては、合理化そのもの自動化機械化反対しないという立場でありながらも、労働者に対して実質的には首切りというものが生じたり、配置転換職種転換という形で、しかも二回も三回も住居の変更を伴った配置転換の強要、通勤時間の拡大等々が行なわれることは、一口に言って労働者犠牲前提とするような自動化機械化利用の仕方に反対しているということもあわせて皆さん方の御理解を得たいところであります。こういう立場でありますから、私どもとしては、決して世上言われるように、合理化そのもの自動化機械化そのものに、社会のいわば発展に逆行して反対しているなどという批判は当たらないと思いますし、また諸先生方もそのように御理解されると考えますので、このことを一つ十分御理解を願いたいというわけであります。  私たちはこのような立場から、労使間におきましても、合理化関連をする基本的な了解事項というものも結んでおります。その中では、特に強調されておりますのは、前の国会でもいろいろ御議論がありましたように、合理化の伸展に伴って労働条件というものを向上させるということを、こういうことを約束し合っております。しかるに公社側としては、後ほど御質問等があれば詳しく述べたいとは存じますが、これが実施を渋っているというのが現状ではないかというふうに考えております。もちろん、全く賃金が上がらない、あるいは職場の労働条件がよくならないということはないと思います。改善は、少なくとも昭和二十八年なりあるいは終戦時に比べるならば改善はされてきているというふうに理解するのでございます。しかし、そのことは電通企業体とその他の企業体、特に合理化というものが全職種にわたって、全事業体にわたっておおいかぶさっているという、こういう特殊な企業体というものをながめた場合に、これまで改善されたとされてきた労働条件内容というものが、はたして基本的了解事項に適合する内容であるかどうかということについては、私どもとしてはいささか疑問を持つものであります。  以上私は公衆電気通信法の一部改正に対しての基本的な反対理由を申し述べたわけでありますが、私たち自分たちだけの利益のみを主張しようとは思いません。公共性を有する電通事業国民のための事業になることを念頭に置きつつ、事業民主化なり大衆化については、事業研究会議等労働組合の手でもって開催し、年に数回も集まりまして、いろいろな討議を行なっておりますし、それなり努力を払っているつもりでおります。かなり私たちはこの中で検討し、また問題と思われる点については、この法案自体が持つ問題点を次のように指摘したいと思います。  問題点はいろいろありますけれども、集約をいたしまして五点にしぼりたいと思うわけであります。その第一点といたしましては、現行料金そのものの根本的な問題が解決をされていないということを指摘をしたいのであります。まず一つには、料金そのものが高いということであります。これは公社当局の幹部の方が書かれた本の中にも書いてあるわけでありますが、その本の名前は「日本資本主義発展電信電話産業」という本で、それに書いてある中によりましても、現行料金七円が高いということは政治的な料金である、この料金が二十八年にきめられる際に、提案として十円という案と五円という案が出て、そしてそれが最終的に七円にきまったといういきさつ、つまり私どもからいって、一口にいって政治的な料金ではないか、こういう立場、さらにまたその中で、五円の料金でもって十分電信電話事業は採算がとれるということも指摘をされている事業を見のがすわけにはいきません。さらにまた、実体的な問題といたしまして、私どもが私どもの持ち得る調査活動の中で、九州の小倉電話苦情内容というもの、国民皆さん苦情内容というものを分析しました中で、四四%もが料金が高いということを指摘されているのであります。私たちはこういう料金そのものが高いという事実について、もちろん、しからば何円がいいかということは持ち合わせはいたしておりませんが、私どものでき得る限りの努力の中で今後とも明らかにしていきたいとは存じますが、問題点としてこの点を指摘をしたい点であります。  それから第二点といたしましては、建設資金そのもの二重取りになっているのではないか、こういうことを指摘をしたいのであります。御存じのように昭和二十八年の料金改定の際には建設資金補修費の一部、減価償却費、こういったものを含めて料金の大幅な値上げをしなければならぬということで、そのことがきめられた経緯は御存じ通りだと思います。従って現在の料金そのものについては建設資金、つまり設備負担というものが含まれて料金というものが私はきめられているものであると、こういうふうに理解をするわけであります。従いまして、昨年きめられました設備負担法の中でいう設備負担金の問題について私どもがとらえた場合には、当然これは建設資金二重取り、いわば電電公社としてはこれでも建設資金が足りないから、設備負担法でいかに建設資金を取り立てようとする二重取り政策ではないか、こういうふうに私どもとしては考えるわけであります。  さらに第三点の問題といたしましては、今料金の問題について建設資金が含まれている云々ということがありますけれども、しからば電電公社が言っているように四十七年までに合理化が終わった場合に、電話料金というものはどのようになるかということが明らかにされていないわけであります。私どもは、おそらく国民皆さんもそれを知りたいところだろうと思います。四十七年以降も現行料金というものが持続をされるならば、現状明確になっている点だけでも三十六年度には五百七十億もの増収になる。こういうことが、四十七年以降は大へんな数字になるんではないか、むしろ公共性という使命からいうならば、国民に還元をされるべきだということが当然問題になるのではないか、このことが明らかにされないで、今の電通事業の実態から建設資金が必要だということなど、そういったことが必要だということだけで、この法案という問題について公社当局がこのままこのところで解決をされるということは、きわめて問題があるのではないか、このように考えるわけであります。  大きな二点といたしまして、内容的な問題として、単位料金区域設定の問題であります。これは、これを実施することによって当然グループ料金制というものがしかれるわけでありますから、無手動という問題が出て参ります。従いまして、先ほど申し上げましたような特に女子交換女子労働者に対しての配置転換職種転換という問題が起きます。配置転換職種転換というものに応じられなければ当然退職をしなければいけない、こういう内容になります。御存じのように日本女子労働者は、きわめて長い間の封建時代の歴史がありまして、なかなか土地から離れること自体がきわめて問題になります。しかも電通事業大半はこの電通女子労働者で占められる。しかも合理化の対象になるものが女子労働者であるということを考えてみた場合に、私どもとしてはまずこの辺の施策というものがいかにあるべきかということについての方策というものが明らかにされなければならぬのではないか、このように考えます。  さらに、単位料金区域内における料金格差の問題であります。端的に言うならば、大都市中小都市格差の問題であります。具体的な例といたしまして、東京都内二十三区内は現在一回七円になっております。しかし二十三区内ということでありますと、大へんな大きな広大な土地になります。御存じのように東北の仙台市は世田谷と同じ規模の都市であります。仙台市の中は七円でやっておりますけれども、それ以上は市外通話として十円、二十円と加算されていくのが現状であります。従いまして、単位料金区域というものを設定するならば、少なくとも大都市中小都市——非常に範囲の関係で、少なくともわれわれとしては単位料金区域内は一回七円という原則を打ち立てるべきである、このように私どもとしては考えておるわけであります。また、準市内通話制度が採用されることによって、特に隣接する局間の矛盾というものが若干なりとも解決し得たということは喜ばしいことだと思います。しかしながら、問題は単位料金区域内における局間では、従来十円で三分通話ができたものが、今度の一分七円というやり方でありますと三分で二十一円というふうになる結果が生じます。現在の通話内容を見ますと、三分、四分というのが大半を占めている、こういう現状からするならば、この点からいって料金値上げになるのではないかという私ども分析をするわけであります。  大きな三点といたしまして、ダイヤル即時通話と待時通話関係であります。公社はこの法案の中で、符時通話については、交換価値としてサービスの提供がダイヤル即時通話という回線価値との関係から非常に大きいということを指摘をいたしております。従って待時通話の場合には特急、至急、普通、こういう料金体系の中でそれなり料金を課しておりますけれども、私どもサービスがどれだけ国民に対して提供されるか、こういうことの関係では、通信事業である以上正確と敏速というものが前提になると思います。従って、一般常識としては、手動台によるより自動による回線やり方の方がきわめて正確であり、早いということは、私どもとしては一般常識として認めざるを得ないと思います。従いまして、そういう意味からいうならば、待時通話の方はダイヤル即時通話よりも料金が安く、ダイヤル即時通話の方が料金が高くなければならぬということが理屈の上で出てくると思うわけであります。もちろんダイヤル即時通話料金がいかにあるべきかということは問題になる点であります。この点は第一点との関係で私たちは考えていかなければならぬのではないか、このように考えているわけであります。  それから大きな第四点として問題としたいことは、基本料金の問題であります。基本料金については、現行でも級別区分をやっておりますが、今回の法案の中身の中では、この級別区分改定を実施いたしております。この中で特に東京はさっそくこれを実施することによって百円の値上がりになるということが一つと、さらに準市内通話制度の特例として、先ほども申し上げました隣接する局間の問題が解決をされましたが、そのことに関連をして、隣接した局の加入者数を十分の一自局の加入者数として行なうため、これが級別区分との関係では一級上位の級になったり、二級上位の級になったりするため、基本料金が上がるという問題があります。私どもは、このことについては、級別区分を全くなくすことがいいことかどうかということについては、全くなくすことはないにしても、少なくとも級別区分というものをもっと縮小すべきではないか、こういう考え方を持っているわけであります。そしてその級別における格差というものをできるだけ少なくすることによって、平等のサービスというものを国民に提供すべきではないか、こういう立場に立ちたいと思うわけであります。  それからまた第五点として、三十億の減収になるという問題を公社はとらえております。で、私どもとしては、少なくとも基本的な問題として、現行水準を維持するという公社の主張でありますから、さらにまた法案内容を見ますと、市外通話の場合も、自動通話あるいは手動通話という問題については二五%あるいは一一%金額において引き上げをいたしておる、こういう内容を見た場合に、まず観念的かは知りませんが、三十億の減収になるということは考えられないのであります。具体的に三分制ということを前提にして、現在公社が提案している秒数七円というものを二、三の区間に適用して計算をいたしてみますと、たとえば東京−大阪間においては、現行三分制二百九十円でありますけれども、秒を三分に引き直していきますと三百十八円という電話料金になる。さらに東京−静岡間においては現行百二十円が二百九十円になる。東京−金沢間が二百二十円が二百四十円になる。東京−広島間が三百八十円であるものが四百二十円になるという結果を招来するものであります。もちろん内容には一部料金そのものが値下げになった部分は確かにあると思います。しかし総体として私どもは考えた場合に、三十億の減収になるかどうかということについてはきわめて疑問とせざるを得ないし、さらにまた、私どもの三十四年度の決算というものを裏返しをしていろいろ計算をいたしてみますと、少なくとも三十五年度、三十六年度では一一・六%の増になるのではないか、こういうことを私ども分析をした内容として持っている点であります。  この法案の問題について、以上簡単に問題点指摘いたしましたけれども、私たち電通事業発展国民各位に対してのサービスの向上は、そのやり方において根本的に相違するものでありますけれども、心からこいねがっておるものであります。また、私たちもそのために懸命に努力いたす所存であります。諸先生方においても十分この点を御検討を願い、私たち考え方参考とされ、国民各位、さらに私たちも喜んで賛成し得る法案根本的検討をお願いし、求められた意見にかえる次第であります。以上であります。
  4. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) ありがとうございました。  次に、阪本参考人より御発言願います。
  5. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) 私は今まで技術畑を歩いてきたものでございますので、そういう観点から今度の法案につきまして、意見を申し述べたいと存じます。  今度の法案の骨になっております一つは、距離別時間差法の問題だと思うのであります。御承知のように電話はその加入者自身に与えられました設備のみならず、加入者共用に与えられております設備が多々あるのであります。それを支配いたしますのは、一つ距離の問題だと思います。もう一つの点は共用装置でございまするので、その共用装置をどれだけその人が専有しておるかという点で、その人に対する料金が考えられるのが至当と思うのでありまして、そのいずれを一定して問題を考えるかという点につきまして、今度は時間の方でこれを解決しようというのがその趣旨だというように了解しております。もともと時間の測定は、私ども物理的の量といたしまして大へん精密に、正確に測定できる一つのものでございますので、それを基準にものを考えるというのは、考え方の思想としては大へん正しいと思うのであります。にもかかわらず、従来そのような方法がなぜとられておらなかったかというのは、その交換方式に問題があったと思うのでありまして、このたび自動即時の問題が解決されます暁におきましては、その計算基準を時間にとるという姿は、もともとそうあるべき姿に戻ったものであるというように考えられます。従いまして、このたび法案に盛られました考え方につきましては、私といたしましては大へんいいやり方であると思われますので、距離別時間差法をここにお取り入れになります法案につきまして賛成の意を表したいと思うのであります。  次に、グループ制の問題がございますが、グループ制の問題につきましても、現在の電話の中継線は、個々別々に中継されているわけではなく、あるまとまった形で集中されているわけでありますから、集中された形によるグルーピングの間の距離をはかっていくということは、技術的に見ても合理的のことであり、その測定方法をグループによって解決なさろうという今度の御案は大へんけっこうなことだと思います。この点は、課金の問題につきましても、現在承りますと電電公社はその方式の御検討中のようでございますが、できるだけ課金の機器を簡単化し、そうしてそれの精度を上げ、かつそれを設置するに必要な工事を少なくする。このことは同時におそらく利益を上げることになると思いますので、こういうような観点からグループ制を御採用になることは大へんけっこうなことだと思うのであります。それは距離の測定をあらかじめいたしまして、それを基準にしてこのたびの案は時間をきめるわけでございますが、この距離の測定をこのたびは直線距離できめる、このようなことが法案の中にあるようであります。この点につきましても、私ども技術面から見ますと、ここ数年、十年足らずの間に、市外電話につきまして異常な発達をしておりますのは、いわゆるマイクロ波でございまして、これは道路に沿って伝播するものでもなく、二点間の直線距離によって伝わっていくものであります。従いまして、そのはかり方におきましても、現在の技術に適合した、近いようなものをとっていくという点は、考えの基準としてはけっこうな方法だと存ずるのでありまして、この点につきましても私は賛成の意を表したいと存じます。  なお、こまかい諸種の点、たとえば単位料金区域内の問題あるいは準市内の問題等があるようでありますが、それらが全部七円の基準になって物事が進められている。これが一つの重大なところだと思うのでありまして、このすべての課金制度を七円を基準にして全部行なわれることは、七円の倍数で物事が解決できるという点は、課金の機械から見ましても、この簡素化に対して大へんな貢献をするものだと思いますので、これを他の金額にすることにはかなり問題があるように存じます。従いまして、これを七円で割り切っておられるという点は、私としても大へんよろしいことであると思うのであります。なお、全国通りダイヤルになる前提といたしまして、この三分、三分及び三分、一分の問題があるようでございますが、これは現在の通話程度が将来も同じであったと仮定いたしますれば、現在三分以内でかけておる方は、今度は三分の料金を払わないわけでありますから、それを勘案いたしました結果として値下げになるという数字が出ておると思うのでありますが、それに対しましては、非常に計算的にも論議があると思いますけれども、その方面の専門家の計算によりますと、その結果は、従来のものの値上げになるのではないというようなことを出しておられるようであります。それは私が数字の末端まで計算したわけではございませんけれども、そのような結果が出てくるのは不思議ではないというような気がいたします。それにつきましても、特にお願いいたしたいと思いますことは、こういう制度ができますと、従来存在しておったものをある程度技術的に手を加えなければいけないという点がございますので、手を加える部分ができるだけ少ない時期においてこれを実行することが重要だと思うのであります。もし、できますならば、電話日本に発生したときに、すでにこういうことがもしされておったならば、その設置は非常に簡単にいくと思うのでありますけれども、そういうことが、それはただ仮定でございまして、そのようなことが実際にはないわけでございますから、できるだけ早くこれを御実現願って、将来のいい姿にできるだけ早く持っていくような準備をし、それに要するむだな費用ができるだけ少ないようにする、この点が今度の法案を御審議いただきます場合に一つの重要な点だと存じますので、その点の御配慮をいただきますと、ここに考えられております内容のことがいい姿で早く、そして私ども即時に日本全国に電話をかけられるようになるという日が、割合早くくるだろうという点を期待する次第でございます。  簡単でございますが、これで終わります。
  6. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) ありがとうございました。  次に、薄参考人に御発言願います。
  7. 薄信一

    参考人(薄信一君) 法制大学の薄でございます。公衆電気通信法の一部を改正する法律案の御審議にあたりまして、御参考までに若干の意見と申しますか、感想を申し上げてみたいと存じます。  言うまでもないことでございますが、わが国の電信電話の普及と利用の程度は遺憾ながら、はなはだおくれた状態にございます。事、電信電話に関しては、中進国どころか後進国と申しても言い過ぎではないと思うのであります。こういうような後進国的な状況、電信電話の状態は、日本経済が今後高度の発展を遂げていくためには大きな障害となるものであります。幸い昭和二十七年にわが国における第三番目の公共企業体といたしまして日本電信電話公社が発足いたしました。翌二十八年から第一次五カ年計画、三十三年からは引き続き第二次五カ年計画が立てられまして、これも途中で拡大修正されるというような調子でございましたが、電信電話の復興拡充あるいは発展というものが着々と実施されて参ったのでございます。私は経済の神経ともいうべき、また生活の必需品ともいうべき電信なり電話が、いまだ不十分ではございますけれども、ここまで復興、拡充あるいは発展して参りましたことを心から喜び、電信電話の今後に大きな期待を抱くものでございます。ところで、ただいま御審議中の法案は、このような方向へさらに一そう電信電話を拡充、発展させるために、電信電話料金のうち、特に電話料金体系合理化いたしまして、今後の拡充発展に便利なように料金体系を是正しようとするところに重点があるかに存じられる次第であります。  確かに電話の理想といたします全国自動即時化、この問題をとってみましても、体系上のさまざまな不備というものが、料金負担の不均等となってくるようでありますし、また課金の手続、課金の装置というものの不経済も目立ってくるようであります。従いまして、この際、電信電話、特に利用度の高い電話の一そうの拡充発展の礎石といたしまして、料金体系合理化し、その矛盾を改め、除去しておくことは必要であろうかと存ずるのであります。ただ、それだけに料金体系合理化は慎重に行なわれる必要があります。もとより、法案は慎重な御調査の上、十分にその影響なり効果を検討されて提出されたものと信じているのでございますけれども、私は、この法案料金体系合理化前提となります料金水準あるいは料金そのもの、こういうものの検討に及んでいない、そういうことをはなはだ残念に思っております。体系と水準は一応別個の問題である。別々に議論すればいいではないか、いずれが先だということは別にないのだ、そういうお考えももちろんあり得るわけでありますし、そういうことも考えられるのでありますけれども利用者の側から申しまして最も問題となります、あるいは問題としなければならない料金水準の問題に触れることなく、もっぱら経営的な立場から料金問題を取り上げられますことは、年々日本電信電話公社が加速度的に多額の利益金を出している、こういう現状では、特に私は釈然としないものを感ずるのであります。適正な合理的な電話料金とは何であるか、現在の料金水準は一体合理的であるのか、あるいは合理的でないのか、こういうような根本的な問題を抜きにいたしまして料金体系だけを合理化いたしましても、それが公共企業としての本来の合理化であるのか、はなはだ問題があろうかと思います。体系合理化によりまして、加入者あるいは利用者相互の負担の不均等はある程度是正できるでありましょうし、また拡充発展のための障害も少なからず除去できるでありましょうが、加入者あるいは利用者全体の過重な負担と申しますか、そういうものは是正できない、こう思うのであります。  御存じのように現行電話料金には、今後の電話拡充に充てられる建設資金、そういうものも含まれております。これだけではなくて、電話架設にあたりましては設備料と過大な債券の負担が条件となっております。公共企業は、このような過度の受益者負担を国民に義務づけるものではありません。このような不合理こそ是正すべきものの第一に位するものであります。電話がほしい、そういう気持、電話は便利だという国民の声、こういうものに便乗いたしまして、適正を欠く料金あるいは受益者負担制度の是正合理化を優先的に考慮しないようでは、公共企業としての資格がないとさえ思うのであります。また私は、公共企業だからこのようなことが許される、そういうものでありますならば、いっそ電話を民営にした方が公共の福祉に役立つのではないかとさえ思っている次第であります。このような問題の再検討法案前提といたしましてぜひほしいところであります。  次に、今回の法案は、料金収入に変動を生じさせないことを建前といたしております。この点に関しましては、料金水準を根本的に再検討し、全体的に値下げになる、そういうことが望ましいのでありますけれども、全体として値下げになることもないが、値上げになることもない、このように説明されております。これは公共企業としての電気通信事業が、収入を第一義的に考えていることの一つの現われであると思いますが、ともかく、全体として値上げにはならないものでありますれば、それはそれとしてけっこうであります。私はこの点に関しましても、ただ若干の疑問を持たざるを得ない、そう思います。  第一に、広い意味での料金問題といたしまして、基本料が上がるのではないかということがあります。電話取り扱い局の種類、いわゆる級別区分改定によりまして、東京値上げになることははっきりといたしておりますが、準市内通話制度の開始に伴いまして、級別区分が変更されて、何ほどかの基本料金引き上げというものがそこから生じてくるのではないか、私はかように考えております。また、これと関連いたしまして、自動化による度数制の開始、新たな基本料の徴収が生じて参ります。もとより、度数制の適用にあたり、定額使用料と基本料との比率を勘案することになっておりますが、電話利用の趨勢から申しましても、加入者料金負担は決して軽減されるものではなく、むしろかなりの負担増となるものと思われるのであります。  第二に、市外通話におきまして、自動即時の場合、距離別時間差法で参りますと、三分通話で二五%、手動即時の場合、三分、一分制で参りますと、同じく三分通話で一一%の値上げとなっております。課金距離の算定方法が改定されますので、一がいにこうは申せないのでありますけれども、大体このような値上げとなるのではないかと思われます。つまり初めの三分は確実に値上げされるのであります。ついでに申し上げておきたいのでありますが、市外通話におきまして、自動即時では通話時分が三分以内で、短ければ短いほど安くなることになっております。ところが、手動即時では三分以下は安くなって参りません。これは待時通話でも同じであります。かけ方によっては安くなる、私の手元に送られて参りました文書でもこのようなPRが行なわれているような次第でありますけれども自動即時手動即時、それに待時では、かけ方を区別しておかなければ、かけ方によっては高くなる、そういう心配がございます。加入者なり利用者は、とうていこのような電話の使い分けをすることはできません。三分以上の通話につきましては、値上げになる場合もあり、値下げになる場合もございますが、基本料金値上げであることは明らかでありますから、おそらく全体としては値上げとひとしい結果が出てくるのではないか、私はこのように考えております。少なくとも減収を来たさない細心の配慮が先立っていることを明らかにしておきたいと思います。  第三に、単位料金区域の問題でございます。全国で約六百の予定とのことでございますけれども法案の四十五条の二によりまして、「単位料金区域を定める場合の基準その他必要な事項については、」、その決定は郵政省令によることになっております。手続的に、あるいは運用の必要からこうなったものと存じますが、料金の上からも、加入者負担の均衡からも、これは今後大きな問題となるのでありますから、できますならばそれを定める基準について、そのあらかたの内容だけでも示していただけたら幸いと思うのであります。また、単位料金区域設定の具体的作業にあたり、これを公示することになっております。公社設定の作業に、加入者あるいは利用者の代表の意見が反映するような制度的措置をとるべきであろうかと存じます。これも法律に示していただきたいものだと考えております。  私は今回の電話料金体系合理化前提といたしまして、料金水準の検討が必要である、こういうふうに申し上げ、また、今回の電話料金体系合理化が明示されてはおりませんが、料金の実質的な値上がりになるのではないか、少なくともそういう危惧を抱かざるを得ないということを申し上げました。電信電話は経済の発展に、また、国民生活の向上になくてはならないものであります。今後大いに拡充発展させていかなければならないものであります。日本電信電話公社は公共企業体といたしまして、事業運営にあたりまして、常にその公共性を第一義的に考え、上質低廉な電信電話サービスの提供に専念していただかねばなりません。そこに働く従業員が労働基本権を制限されている、こういうことも、その公共性のためとされておるわけであります。電話需要の逼迫に便乗した形で、これ以上に料金値上げするようなととがあってはなりませんし、採算を第一にいたしまして、大都市中心のあるいは大都市中小都市に優先させるようなことがあってはなりません。また、その拡充発展を急ぐあまり、わが国の経済の順当な発展国民生活の向上の水準と不均衡に陥ることがあってはならぬと存じます。すでに電話は大衆のものとなりつつあります。電信電話事業公共性は今後ますますはっきりとさせていく必要があります。  私はこの念願と期待から、ただいま御審議中の法律案につきまして、若干の意見と感想を述べさせていただいた次第でございます。
  8. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) ありがとうございました。  終わりに、高橋参考人にお願いいたします。
  9. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) いろいろ他のお三人の参考人の方から御意見が出ましたが、電話に対して私ども国民が長い間願望していたことは、電話が電気のように申し込めばすぐ引いてもらえるようになってほしいと、こういう点。それから、全国どこでも市内と同じようにすぐ通話ができるようにしてもらいたい。われわれがテレビを見ておっても、外国はすぐサンフランシスコからシカゴ、ニューヨーク、すぐ電話が通ずる、ああいうふうにしてもらいたい。それから、国民のすべてが電話利用し得るようにやってもらいたい、そういうことであったのであります。  これらの点は、最近かなり一時に比べると改善されておるようでありますけれども、ただいま薄さんのおっしゃるように、諸外国に比べるとずいぶんまだ水準が低いのであります。できるだけ早くこういう目的を達成してもらいたいと念願しているのであります。  その立場から言いますと、今度の公衆電気通信法の一部改正の法律というものは、その目的を達成する第一の段階として、ぜひ必要なものを含んでおる、そういう性格のものだ、そういうふうに私は思うのであります。  私、経済評論家として、第一の根本の問題だと考えておりました点は、今申しましたような目的にわれわれの願望を達するとともに、同時にサービスをよくしてもらう、それにはこういう改革が必要であるかないかという点が第一に私が考えた点であります。ところが、現在の手動を中心とした料金体系というものは、とてもその目的に沿わない。これでは非常なじゃまになる。ぜひ自動通話を基礎にした料金体系を作る必要がある、それは私ども認めざるを得ないのであります。何しろ今の手動では、即時通話の地域は別でありますけれども、それ以外の多くの地域において、電話をかけようとすると、いつ通話するかわからない。ずいぶん待たされて、当てにならない。いつごろまでに用が足せるか足せないかわからない。急を用するところは電報と一緒にやっておかなくちゃちょっと安心ができない。これをぜひ手動を、自動を基礎にした料金にする必要がある、こういうところが第一の問題の点だと思うのでございます。  次には、今度の改正につきまして考えねばならなかった点は、社会環境が非常に変化しまして、いわゆる東京とか大阪とか、あるいはその他の地方を入れまして、つまり都市生活というものが非常に大きくなった。この結果当然経済的にも社会的にも一つ都市圏内であるにもかかわらず、それが市外通話という取り扱いで、通話も不便だし料金も高い、それを現在の状態に適した料金体系に作り変える、そういうことが必要である、こういう二点から料金体系を考える必要があるということを認めざるを得ないのであります。と申しますのは、今申しましたように、われわれ申し込めばすぐ電話ができるだけ早い機会に引かれるようになってほしい。全国どこへでも通話ができるようにしてもらいたい。それから国民の大多数が電話を持つようにしてもらいたい。それには現在の手動を中心としたシステム、電話では、とうていその目的は達せられないわけであります。ぜひとも自動に改める必要がある、こういうことになるわけであります。ところで手動のままで加入者がだんだんうんとふえてきますれば、通話が多くなり、その交流が非常に複雑になるために、非常な設備と非常な人を要求する。これでは非常に高いものにつきますし、なかなか電話の普及はできない。国民が安く電話を引けるようにはなかなかならない。そういう意味からぜひ手動自動にしなければならない、こういうことになります。その上に、今申しましたように、手動では交換台や交換要員が非常に多くかかるばかりでなく、庁舎が非常に大きなものが要る。私専門家ではないのでわかりませんが、私どもそれをなぜ必要かというので審議いたしました過程において、公社から聞きましたところによりますと、自動手動とでは庁舎のスペースが約十倍、十対一違うということなのであります。そういうことを考えると、どうしても自動に進むほかないとすれば、従来の料金体系手動を中心にしたものでありますが、これをどうしても自動を基礎にした料率に変える必要がある、こういうことになるわけであります。まあそういう要求から、すでに今まで言われておりますように、料金体系というものがいろいろの面において改正される必要がある。これについては他の三参考人いずれもほとんど異議はないように承りましたが、私も今そういう意味において料金体系の改革はぜひ必要であり、やるべきであるという考えであります。  次の問題点は、ただいま薄さんから御指摘になりましたような料金水準の問題なのであります。この問題にわれわれ案を委員会で研究しましたときに、全く無視していたわけではないのでありまして、当然この問題は審議し、私どもも考えたのであります。現在公社の建設費が千七百億円、そのうち約五百億が利益金からなっております。他の五百億円が減価償却から支出されておるのでありますから、この現状を認めて、いわゆる料金体系改正をするかしないかということ、要するに現在の収入が減りもせねばふえもしないということを、きめる場合にはそれを認めるか認めないかということは、当然大きな問題なのでありますし、私自身考えたのであります。ここでの問題は、今までの御論議——反対の御論議を伺いますと、現在の加入者、加入している人の利益というものが非常に強く見られております。ある意味においては現に加入している人の利益を中心にして考えられているともあるいは言い得られないこともないと思うのでありますが、しかし問題はそれに劣らず、現に電話利用できない人が非常に多くあるということです。現在のシステムでも約八十万、八十数万の申し込みが達成できないでたまっておる、これはすでに申請している人たちであります。その他電話がほしいという人たちはずいぶんあると思うのであります。そういう人に電話の利便をできるだけ早く与える、これがもう一つの大きな公共体としての公社の大きな任務である。われわれが料率を考える場合にはこの点を十分考えるべきである、そういうふうに考えたことが第一点であります。  第二点は、同じく建設費が、今申しますように、年間五百億円の利益金が入っておるといいましても、その六割までは現加入者サービスの向上になる性格のものである、こういうことであります。それはできるだけ早く即時通話を普及する、あるいは通話自体の秩序をよくするということになりましょう。同時に、いま一つは、加入者現状よりふえれば、それだけ現在の加入者の効率を大きくすることなのであります。要するに問題は、表面の料率を下げるか下げないかということと、その質をよくするかよくしないかということと、二面あるわけでございます。これは物価の場合でも、賃金の場合でも同じだと思うのです。賃金がかりに上がりましても、内容が悪くなれば、上がったことにはならないでしょう。そういう意味において、質の問題と料金の問題、これを相互に考えるべきだ、こういうふうに考えるのであります。もっとも、未加入者をできるだけ早く加入さすというのには、もし他に安い利率で供給する資金源が、たとえば政府の財政投資でこれが行なわれるということであれば、これは何も今の利益から供給する必要はないという考え方が出るわけでありますが、実際問題として、現在、財政投資百七十億あるわけでありますけれども、ほかの方面の要求が大きいということを考えてみますと、財政投資によってこの問題がかわり得るというふうには、私どもその方面の専門の立場からいいますと非常にむずかしいと思うので、これはもう議員諸公の方がよく御承知だろうと思うのであります。  そういうふうに考えますと、問題は単に表面の料率を下げる、現在の加入者立場を中心にして考えるということではなしに、できるだけ現在電話の利便に浴していない人にこれを普及するようにするということが、国民の念願であるわけであります。同時に、その料率も表面の金額ばかりでなしに、実質がよくなる、そういうこともあわせて考えるべきだ、こういうことになると思うのであります。それにしても、電話料金が、他の物価なり、他の公共事業の料率に比べて高い、こういうことならば、これは問題として考えねばならないのでありますが、実際におきまして、昭和九年−十一年を平均したものを一〇〇にしますと、国鉄の旅客は一八五四七で、貨物は二九四五〇、地下鉄は二五〇〇〇であります。都電が三〇九四三、郵便、これは封書とはがきでありますが、今度値上がりしないで、それでも三三三三三、ガスが二七五〇〇なのです。ところが、東京電話は、基本料金が一八六六〇、度数制が二三三三〇、それから東京−大阪あるいは大阪−福岡は一九三三三、こういうわけであります。決して高いどころか、他に比べて相当割安である、こういうことであります。そうだといたしますれば、この金をできるだけ全国的な電話を普及する方向と、サービスの向上に使うということは、決して公共事業体の使命に反するものでない、そういうふうに考えた次第であります。  しかも、問題は、公共事業体というものをどう考えるかというところにもう一つ問題があると思うのであります。実は事業公共性というものは、単にこれまで政府が出資しておるとか何とかいう、政府が経営しておるものばかりではないのでありまして、私企業にゆだねられておる銀行も、すでにわれわれは電話や何かに劣らない公共性を持っておると見るべきだと思うのであります。私鉄がやはりそうであります。その他、規模が大きくなりますれば当然に——電力も今までそう考えられておりますけれども、その他のものも公共性をだんだん大きく持っておるのであります。問題は、公共性というものが、利益でこれを建設に使うということが公共性に反するかというと、問題は使い方なんです。利益のために使うのか、今のようにできるだけ電話を普及する、そういう建設が、実はそろばんに乗らないのだ、利益は何もないのだという面にも使う、単に利益があるところに集中して使うという、これは公共体の使い方ではありませんけれども、しかし、その方面にどんどんやるよりは、たとえば東京辺で伸ばす方が有利だと思っても、全国に普及さすという建前で投資する、こういうことであれば、これは利益から投資したのだからといって、決して公共体としての使命に反するものでない、そういうふうに考えて、大体現在の収入を動かさないという原則——しかしあとで述べますように、これを改正しますと、ある部門には、今までの事情のもとででき上がった賃金と新たなものとの間に、かなり高くつくという地域が出て参りますので、これは公社がある点の減収を考えても、当然その差を縮めるべきだという意味合いにおいて、われわれ公社に大体約三十億円の減収をしても、そういう面の差をできるだけ小さくする、そういう意味において現に提出されておりますような案を考えたのでありまして、その意味においては水準というものを全く考えていないというのではないのでありまして、一応今申しましたような考え方で、動かさないということが根拠がある、理由がある、公共体の使命に反しない、そういう意味合いにおいてこういう案に実は私ども賛成なのであります。  もっとも、今度の料金体系が真にその効果を発揮いたしますには、全国の自動化がほぼ一巡しないと、そのほんとうの真価は出ないわけなのであります。過渡期におきましては手動の部分が残って参ります。これやその他、たとえば準市内電話というようなものを認めるにしても、何にしても、過渡期におきましてはある種のでこぼこは避け得られないのであります。そこで、実は少なくとも私一個といたしましては、これはもう少し手動が普及した上でこの案を審議し考えた方がいいのではないかとさえ最初は思ったのであります。いろいろ指摘されておりますように、三分、一分というようなものを認める、これは全部自動になりますれば、短時間で済めば相当安く済むわけでありまして、大阪やなんかも、用件だけであれば、今までの料金の三分の一でも達せられるわけです、今の時間制になれば。また、そういうことばかりでなしに、実は私一個としては、東京市内にも時間を限った方がいいんではないかという意見であったのであります。今東京市内は、極端にいえば五時間話してもいいわけです。本人はそれでいいでしょうが、そのためにその線が一ぱいになって、ほかの使用者は話し中になる。その線が詰まってしまう。相手は話し中でなくても線が一ぱいになれば話し中になる。そういうような電話のエチケットというものが全くできていない。それには時間を限る方がいいとさえ思っておったのでありましたが、しかし現状では設備の都合その他でできない、こういうことであったのでありますが、でき上がってしまうと、いろいろ指摘されておる手動の区間のでこぼこというものはなくなるのでありますが、これはどんな改革におきましても、過渡期においてある種のそういう問題が起こるということは、これはやむを得ないのでありまして、できるだけその摩擦を小さくする、それに努力し、その範囲にとどめるほかはないのであります。が、そういう過渡期の一つのでこぼこをあえて冒して、早急にこういう料金体系をきめる必要があるかないかということが問題なのでありますが、これは今のなりで進めていくというと、現状のシステムのもとの設備その他がどんどんでき上がって参る。これは非常に金がかかるわけであります。その暁において、全国的に自動が今のシステムのままで相当でき上がった上で、今度は全国的に最も適した料金体系を作ろうとすると、その間に非常なむだが生ずるのであります。ということは、一つ電話の普及をおくらせます。一つ電話料金のコストをだんだん上げてくる、こういう形にもなる。従ってサービスが低下する、こういうことにもなるわけであります。一番大事なことは非常なむだが出るということであります。  そこで、今ようやく自動の準備が進み、ある点まで緒についた。この現在の時点において、早めに——といっても実はおくれていると思うのですが、ほんとうの意味においては、少なくともこの時点においては、これをおくらしてはならない。過渡期の各種の今言ったようなでこぼこがある。それよりも早くこのシステムを確立する必要がある。そのシステムの上で今後の拡張計画を進めなくちゃいかない、その要求が強いと私は見たのであります。そうすると、今申しましたような過渡期のある点までのでこぼこは極力それを少なくするという努力をしながら、ある点までは万やむを得ない、こういうふうに見るほかない、こういう考え方に落ちついた次第であります。  そういうわけで、現在のところ、提出されております料金体系というものは、私一個の考え方でいえば、これはまだ完全でないと思うのです。これは自動通話が、全国に一巡完成した上には、もう一応考え直すべき問題をかなり持っておる。しかし、それはでき上がってしまわないと実行できないのであります。それは今からそれが不完全だからといって今これを延ばすよりは、そういう問題は一巡してでき上がった上で、もう一応考える、それがいいのではないか、そういうふうに思う次第であります。  以上の意味におきまして、私はこの案に賛成するものなのであります。
  10. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) ありがとうございました。  以上で参考人方々より一応の御意見の御開陳をお願いいたしましたので、これより参考人方々に対する質疑に入ります。  御質疑のおありの方は、どうぞ順次御発言願います。
  11. 鈴木強

    鈴木強君 私は、高橋参考人阪本参考人及川参考人の三人の方に質問したいと思います。他の委員の方の御都合もあると思いますので、簡潔に伺います。  まず、高橋参考人にお尋ねしますが、あなたの言われているように、今提案をされておる料金改定については、完全なものではないと思う、やがてもう一ぺんやる必要がある、こういう御意見だと思います。そこで現実に、今回の料金体系の是正に際して、一番忘れられているのは、さっき薄参考人のおっしゃったような、加入区域の調整ですね、こういった点がなされておらないと私は思うのです。たとえば、いなかに行きましても、現行普通加入区域、特別加入区域、それから区域外と、こう三つに分かれております。それが非常に古いものですから、その後の社会の発展、経済の進展等によってだいぶ経済圏のあり方が町によっても変わっていると思うのです。人口分布その他につきましても。そういう点についての加入区域の整備というものがやられていないのですね。たとえば豊中あたりを例にとってみますと、これは大阪の市外局を中心にして、大体平均十キロですね、そこまでは大阪の大体電話局の加入区域になると思う。例外としては吹田、それから尼崎、守口、布施、こういう市まで入りますと、結局大体十五キロぐらいにいっているのですね。ところが、そこに豊中市というのが一つある。これが一つの具体的な例でございますが、豊中市は大阪を中心にして大体五キロ外に出るのです。一方は、十五キロないし十キロまでは大阪の区域である。ところが豊中に限っては五キロが大阪市外で、大阪市内並みになっておる一部は、もちろん地図から見まして八分の一くらいでございますが、これは大阪の加入区域に入って、そのほかは豊中の電話局で、要するに電話をかける場合に二十一円かかるわけです、市外ですから。現行でいきますとこういう矛盾がある。これらはやはり十分この際検討して、一応料金の面で準市内通話と申しますか、市外通話と申しますか、とにかく六十秒なら六十秒で七円、こういうことになって、その面だけを取り上げれば多少料金の調整はやられておると思いますが、さっきも及川参考人が言っておられるように、なかなか四十秒とか五十秒という通話は、非常に理論的にはあっても、実際には直ちに三分ないしそれをオーバーするという形になるわけです。そうしてみると、何のことはない、従来通りやってみれば二十一円、同じじゃないかという不満もあるわけです。現に私どもも大へん猛烈な市をあげての反対の請願も受けておりますが、こういう根本的な加入区域の調整をやらずにこの体系をこしらえたということについて、どうお考えでございましょうか。
  12. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) 私専門の方ではないのでありますが、今御質問の点については、考え方としては、区域をうんと広くして、準市内区域とありますのを一区にしてしまうという案も、そうしないと合理的でないという案でしたのです、おっしゃるように。しかし、そうすると、現在の全体の収支に影響を及ぼさないということになると、たとえば東京でありますと、東京の今七円を上げなくちゃいかぬ、そのかわりに今市外通話は二十何円取っているところは東京並みになる。豊中も同じになる。それはこの際としてはドラスティック過ぎる、というのは、片一方の大阪にしても東京にしても、全体の現在の料金を上げていくということは、この際としてはドラスティック過ぎるのですから、中間において準市内というものを作って一応進んでいく、そういうものが考えられた。そういう次第に私は記憶しております。それから、その問題を考えなかったわけじゃないのでありまして、おっしゃるような意味のことが、さっきも理由にあげたように問題になる。それをやるのには、やはりもう少し全面的に全国的に自動化さないと、どうもフリクションが大き過ぎる、こういうことで準市内という、どちらかというと妥協的な中間的なものができた。私はそういうふうに思うので、それが一応全部できてしまえば、もう一応考え直す必要があるという意味の中の一つに私は考えていたわけですが。
  13. 鈴木強

    鈴木強君 私は論議はしたくないのです。あなたの御意見だけ承りたいと思いますが、ただ問題は、豊中あたりは極端な例かもしれませんが、かりに同じ豊中市の中で、八分の一程度はすでに大阪の、五キロを越して六キロぐらいになりますが、大阪の加入区域になって、そこは同じ豊中でも七円で通話ができるわけですね。ところが八分の七は依然として二十一円の料金を取られている、これなんか私は典型的な矛盾だと思うのですね。ですからそういう点が、あなたのお話のように経済圏を拡大しているのだから、エリアをふやしていけば大阪の七円を十円にしなければならない。こういう御意見のようでございますが、問題は七円にあまりこだわり過ぎているのではないかと思うのですが、現在の公社経営というものを十分考えた場合に、先ほども組合側の意見で出ていたのでありますが、もう少し電話料金の七円の度数料というものがおかしいのではないか、要するに公社が考えているという、料金調査会あたりで、この議事録を拝見いたしますと、現行の水準を維持するということが基本になっておりますからね。そうであれば、今のお話はわかるのです。十円にすればこうしなければならない。しかしそれにこだわらずに、もう少し高い見地からこの料金制度を考えていったらよかろう、私はそういうふうに思うのですが、さらに第二段階として考えられるということは、大いにけっこうだと思いますが、こういう矛盾を現に基本的に持っているということが一つ明らかになると思うのですね。だから私はどうもそういう点をどう解決したらいいかということを、基本的にお尋ねしたかったのですが、けっこうです。大体お話を承りましたから。  それから、もう一つ伺いたいのは、今あなたのお述べになりました公共性ですね。公社経営というもののあり方なんですが、御指摘通り財政投融資はなかなか公社には入りにくい。私どもは第一次五カ年計画、第二次五カ年計画と、ずっと公社計画を見ておりますが、公社が最初から企図する財政投融資の資金というものをほとんど取れないのですね。本年もわずかに五十億、外債七十二億入りまして百二十二億程度のものしかないのです。千七百億からの建設資金の中でわずか五十億あるいは六十億というのは少な過ぎると思うのですね。御指摘通り七千五百億の財政投融資の配分についても、私はもう少し政府がこの事業を十分に考えて、あなたのおっしゃるように、申し込んだらすぐ電話がつく、金持でなくても電話がつく、どこにも電話が通じるようにしたい。これが産業、文化、経済の振興に役立つのであれば、この際、政府の事業に対してもっと積極的に協力をやるべきではないか、私たちはそういう主張を強くしてきているのです。やればできると思うのです。ところがそれがやれないために、勢い加入者負担、料金現状を維持しなければならない、こういう姿になっていると思いまして、非常に私は残念に思うのです。高橋先生は経済評論家でその面の権威者でありますが、私たちはこの委員会全体の空気として、財投というものの活用を党派をこえてもう少しやるべきだという意見を持っているのですが、その点に対して、少しやや先生の先ほどの御意見ですと消極的なように承れたのですが、先生のお気持をちょっと承りたいのですが。
  14. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) 私も財政投融資なんかをそういう方面にもう少し振り向けるべきだという考え方は持っているのです。しかし、同時にもう一つの問題は、電電公社にしても、国鉄にしても、その他にしても、いわゆる公社を独立会計にした意味をどういうふうに考えるかという点を考慮する必要があるのではないかと思うのです。独立採算にしたという、独立採算の企業としてやる場合には、ある点までは企業自体の収益でいろいろの建設をしていく、そういうことは否定すべきでないと私は思うのです。そういう意味において、問題は程度の問題になるわけですけれども、それから実際においては一体どのくらい今度は、財政投融資の方から言えばその振り分けをどういうふうな、電話の方から言えばそうですけれども、ほかの方面にもずいぶんあるわけですね。僕はずいぶんあると思うのだけれども、国鉄だって赤字線のような今の形のものがいいのか、政府投資でもう少しふやした方がいいじゃないかという問題もありましょう。それから放送料だってそうです。離島だとかその他、ずいぶんへんぴなところに設備をする。それが今まで料金の中で取られている。そういうのがいいのかどうなのか、政府が当然やって、料金を下げたらいいんじゃないか、そういうように個々の事業からいえば、当然財政投資でまかなうべきだという性格のものは、電話以外にもずいぶんあるわけなんです。その振り合いをどうするかということになると、結局は私どもが考えるにしても、独立採算で弱いところに少したくさんやらざるを得ない、強いところは減らそうじゃないか、そういう考え方がある点まで入るのはやむを得ないのじゃないか、こういうように思うのです。それから、電電公社という立場からいって、ほかの個々の事業、それぞれの角度からいえば、当然政府の財政投資でやるべきだという面は多々あるのであるが、問題は、今度は財政投融資が限られているものですから、これをどう振り分けるかということになりますと、今言ったような考慮はある点まで入ってくる、こういうことになるのじゃなかろうかというふうに私は思いますけれども、私はそういう趣旨において、もう少しふやすべきだという御議論には賛成なんですけれども、しかしそれが利益から建設費に回すのは、原則的にやめろという意味合いに通ずるのであるかというと、必ずしもそうでない。そういう考え方なのであります。
  15. 鈴木強

    鈴木強君 それから阪本先生にちょっとお尋ねしたいのですが、先生は技術関係のオーソリティでいらっしゃるので、今の提案されているこの料金改正について、やや技術の面だけをお考えになるのは、これは無理ないと思いますが、そういうふうに私はちょっとお話を承って感じたのですがね。ところが、一面技術革新はやらなければならぬ。これはお互いにだれも反対できないと思うのですが、その際に、これは労働組合というよりも、国の政策としても、要員措置というものを当然考えなければならないと私は思うのです。ですから、先ほど、最初に及川参考人から言われたような、六千局かある局が五百くらいに減り、しかもそれがほとんど無人化されていく、こういうときに要員措置をどういうふうにしたらいいかということが、やはり合理化を進める場合に大きなファクターになると思うのですが、そういう点は、技術畑で研究され、また教壇に立っておられる先生としてお考えがあると思うのですが、ありましたらちょっとお尋ねしたいと思います。
  16. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) 新しい技術が出ると、要員が要らなくなるということが起こるから、そういう場合には技術方面ではどう考えるかと、こういう意味でございますか。この問題は、電信電話の問題だけでなくて、すべてのもので起こっているように思うのでございますが、それで、それをどう解決するかということは、私どもは技術を担当いたしておりますので、技術の方としては、こういうふうにすれば革新ができるということは担当いたしますけれども、そのとき起こる労働問題がどうかという点は、その方の御専門の方がお考えになっておると解釈しておるのであります。
  17. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、技術革新に伴ってその国の社会情勢なり経済情勢がどう変わっていくかということは、技術屋は考えておらぬ、言うならば、それはそれで労働組合と経営者と話し合ってやったらいいと、こういうことでございますか。
  18. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) それが一番初めに、御専門の方でございますから、そういう方面でお考えいただいたことを私どもは拝聴いたしますけれども、労働問題があるから技術関係の開拓をしないでいいんだと、そういうふうには考えていないのでございます。
  19. 鈴木強

    鈴木強君 いや、そうじゃなくて、当然技術系の方の考えることは私たちと一緒なんですね。どうしたら現在の古びた機械が、新しいこの施設の中でやれるかということは、これはみな同じに考えております。ですから、そういう技術的な立場に立つ方に、これは私はこの料金体系を、参考人として来ていただいておりますからこういう質問をするのですが、そうでなかったらわかるのです。ただ、それは相互関連で車の両輪のごときものだと思うのですね。この料金改定は、さっき言われたように、今後の合理化のかなり急ピッチな進行をしていくのに役立つものであるということになりますからね。勢いそこに働く職員として、自分の生活権をどうするか、こういうことが起きてくると思いますが、そういうことは全然技術家は考えずにおるのかどうなのかということです。これはちょっと、配慮の点ですね、技術畑にいるあなたとしての……。
  20. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) 私ども技術家としては、全然そういうことを考えていないというわけではないのでございます。で、そういうものが技術的にできるかどうかという点に主点を置いて物事を考える。そうして技術的以外の面でそれが可能であるかどうかということを私どもは考える前に、それより前にそういう御専門の方がお考えになるのが至当であろう、こう考えるわけであります。
  21. 鈴木強

    鈴木強君 それからもう一つお話の中で、準市内のこの料金が七円でやれるようになった。七円で切ったことについては、技術との関係で非常にけっこうなことだとおっしゃったのですが、その意味がちょっとわからないのでございますが、料金と課金の方法との関連をお述べになったと思うのですが、ちょっと言われている趣旨がわかりませんのですが、それはどういう意味でございましょうか。
  22. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) ちょっと御質問の意味がよくわからないのでございますが……。
  23. 鈴木強

    鈴木強君 要するに、私はちょっとメモをしたのですが、準市内の料金は七円でやれるようになった。で、七円で割り切っているが、これは技術との関係で非常にいいことだとおっしゃったのでございますがね、そういうように私は受け取ったのです。
  24. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) それは七円でなくて、八円とか九円とかいうことになるよりも、七円の単位で物事を考える方がいいだろうという意味でございます。
  25. 鈴木強

    鈴木強君 それは、七円の単位で考えることがいいということは、どういうことですか。
  26. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) 課金単位の点でそういうことがあるのじゃございませんか。
  27. 鈴木強

    鈴木強君 それは違うのじゃないでしょうか。七円であろうが九円であろうが、何秒幾らという課金装置によって、かけた時数といいますか、課金される料金、秒数がはっきりキャッチできれはいいわけなんでしょう。七円であろうが、八円、九円であろうが、料金との関係はないのじゃないでしょうか、料金は全然関係ないのじゃないですか。
  28. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) そういう調整をしないでいいという程度のことに考えております。
  29. 鈴木強

    鈴木強君 すると、それは意味はないというふうに解釈しておいてよろしゅうございますか。その七円という現行料金でやったことがいいという意味ですか。技術的な関係との間には別に問題はないのでございましょうね。
  30. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) 調整との関係で単純にいくのじゃございませんでしょうか、そういう点だけでございます。
  31. 鈴木強

    鈴木強君 ですから調整との関係とおっしゃるのですが、技術的な面と、料金を七円にするか、八円にするかということは関係がないと思うのですが、これは要するに四秒間七円という自働即時になった場合、課金方法になりますね。そうすると四十秒間かけた、あるいは五十秒間かけた、その記録が明らかであれば、それによって、その課金は七円であろうが八円であろうが、九円、十円であろうが、その面との関係においては、私は全然問題はないと思うのですがね。
  32. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) 時間ばかりで物事をきめようというときには、七円で物事を考えた方が簡単であるということでございまして……。
  33. 鈴木強

    鈴木強君 八円で考えたらおかしいのですか。
  34. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) それはほかの料金が全部七円が基準になっておりますから……。
  35. 久保等

    ○久保等君 私特に高橋さんに二、三お伺いしたいと思うのです。特に高橋さんこの電信電話料金の調査会のメンバーで、答申を出された立場もございますので、簡単な二、三お尋ねしたいと思うのですが、昨年の六月ですか、六月に調査会が発足をして、非常に御努力をされて、昨年の十二月に答申をお出しになったのですが、その答申を出された前提になる料金合理化といいますか、そういうことについては、現行の総収入を下回らないという一つのワクがあった関係で、おのずから重点は料金体系というところに重点を置いた調査をなさったようなのでありますが、電信電話料金のそのものについて、適正料金が一体どの程度のものであるかといったようなことについては、もちろん調査の対象外であるということで、あまり御審議なり御討議はされなかったんでしょうね。
  36. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) いや、どういう基礎ででき上がっているかとか、コスト計算はどうであるとか、あるいはさっき申したようにほかのものとの比率はどうであるかとか、そういうふうにいろいろそういう問題を考える資料なんかは要求して、一応の説明は聞いたわけでございます。今申しましたようなほかの比率というふうな問題は、提出された参考資料を基礎にしております。
  37. 久保等

    ○久保等君 いろいろその点お調べにはなったんでしょうが、しかし料金そのものの適正料金といいますか、非常にむずかしい問題ですけれども、適正料金が一体幾らなのか、幾らが適正なのかということについては、もちろん結論をお出しになっているわけではないし、それがまた諮問事項の重要点でもなかったから、結論はお出しにならなかったということでしょうね。
  38. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) そうなんです。一応その辺でそれを突っ込んで議論をしなくても、さっき申しましたような趣旨において現状を認めて、収支合っていくという考え方で進めていくという考え方で、作業の大部分はそれにとられております。しかし、実際においてはもう少し公社利益を減らして、下げていいという議論も相当出ておるのです。しかし結局今言ったようなことです。
  39. 久保等

    ○久保等君 そこで、料金体系の問題ですが、料金体系の問題についても、具体的な点で相当やはり問題点が今日あると思うのですが、先ほど鈴木委員の質問せられておった、たとえば豊中市の大阪市内編入をしてもらいたいといったような問題、まあこういった問題はきわめて具体的で、かつ近隣のところとの比較論からいっても切実な問題として、強く公社当局に対しても、平生というよりも、すでに数年にわたって陳情しておるような経緯もあるようですが、こういったような幾つかの問題点が全国的にあると思うのです。もちろん、ワクを広げて考えれば、なかなか理論的にそれではどこへ線を置くかということで、確かになかなかすっきりした、だれしもが納得するような体系という問題になると、これは実際むずかしい問題だと思うのです。しかし少なくとも行政区画というようなものも一つ基準になると思うのですが、そういう問題をも含めて距離別時間差法という問題も考えていかなきゃならぬ問題があるが、当面の緊急問題といいますか、非常に何とか当面ある程度是正をしなければならぬという問題も幾つかあったと思うのですが、そういったことについては調査会で特別御調査になるのか、あるいはそういう問題についての若干の調整をはかるといったようなお調べ等はおやりになったんでしょうか、ならないのでしょうか。
  40. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) これは今おっしゃったような問題は、現に委員の中にもそういう方面に関係の深い委員がいられたわけですが、まあ相当議論は出たわけであります。そうしてそういう矛盾をなくしようということになると、今イギリスがやっているようにかなり広い地域を単位としたものにしよう、そうすると、かなり矛盾はそこでは避け得られるわけですけれども、それで料金を単一にしますと非常な減収になる、そうすると東京の七円は維持ができない、たとえば十円に上げねばならぬ、こういうことになる。そこは相当抵抗もありますし、というのは、どのぐらいの料金がいいかということは、一つは経済的なコスティングですけれども、いま一つの半分はやはり歴史的なものなんですね、これは。それからその歴史的な部分を全く無視するわけにいかないのだから、片一方からいいますと、一方は非常に有利の面が出るわけです。ところが、一方は今のような点がありますと、東京の市内でも大阪でもそうですね。その方だけが非常な犠牲を負って、片方は非常に有利になる。片一方は三分の一、四分の一になるが、片方は上がってくる。そういう歴史的な均衡というものを考えると、今おっしゃったような矛盾をなくするような区画あるいは料金改正というものは、あまりに一足飛びではないか、そういうので今のような線が引かれたわけなんですが、しかし、今申しますような、その結果豊中がどうなるとか何とかいうこまかいことになると、私は専門の方でありませんでしたから、そこまで詳しくは調べていないのですけれども、考えの中には当然入っていたわけです。それで現にまあそういう方面に非常な関心の深い委員の人が二、三いられたわけですが、相当強くそれは出ていたわけです。
  41. 久保等

    ○久保等君 まあ前後十六回にわたって非常に御熱心に調査会をお聞きになったようですが、まあ調査会をお開きになって御調査をされた結論を出されたということで、現地等に特別にお出かけになるような調査の仕方はなさらなかったのでしょうね。
  42. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) ええ、大体しなかったというふうに思うのです。しかし、小委員の人が行かれたかどうか私は存じません。小委員が作られましたから、小委員の人が行かれたかどうか、その辺は存じません。
  43. 久保等

    ○久保等君 もちろん、この料金体系の是正も、経済的な発展やら、あるいはまた交通の利便、程度、あるいはまた、特に最近行なわれておりまする町村合併等の行政区域の問題の推移、こういったようなことも全く無関係には考えられない問題ですから、そういう推移なり、経済あるいは文化、交通、まあそういったようなものの発展と見合いながらやっていかなければならない問題だと思うのですが、そこで今回お出しになられた答申も、従って将来もう少しすっきりしたような体系是正をやはりやらなければならないのじゃないかという気持は、おそらく調査をやられた過程の中でお感じになられたのじゃないかと思いますが……。だから、そういう点では、この答申をちょっと私は瞥見をした程度で、まだ実はよく承知いたしておりませんが、まあ一応公社の当面の答申に対する結論を出された。が、しかし将来もう少し根本的に考えなきゃならぬのじゃないかといったようなことの実は表現がどこにも見当たらないので、まあいわば非常に割り切ったような形で答申を出されておるのですが、ただしかし、料金体系の問題については、あるいは料金そのものの問題をも含めて、これはやはりもう少し根本的な改正なり是正をやらなければならないというようなお話はなかったのでしょうか。
  44. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) 今、このなりでなしに、もう一応次に自動化がほぼ完了した時期を待って考え直すことにして、当面はこれでいこうという最も典型的な部分は、さっきおっしゃったように大部市周辺ですね。地域の分け方、これはどんなにやってもかなりの矛盾が出てくる。けれどもそれを最も矛盾のないようにしようというのが、今言ったような歴史的な料金を変えなければ、一方だけが利益すると、そういう形になる。これはひとまずこれでいって、全体の自動化ができ上がった上で考え直そうじゃないか、この点だけはっきりしている点であります。  あとの点は、これは委員会としての意見というふうにまとまっていたかどうかは存じませんが、本来いいまして、さっき言いましたように全国に普及するということが大きな建前なんです。今の料金としては、減収もしない、増収もない、だから全国的に一応普及してしまった場合に、その必要があるかどうか、当然問題になってくると思います。それだけ余裕が出るはずです、そのときになれば。私自身としては、当然その点はそのときになると再検討の対象になると思うのです。これは私の意見です。私の考え方からいくと、もう一つでき上がった場合に考えなければならないという点はこの点です。
  45. 鈴木強

    鈴木強君 順序が逆転したのですが、及川さんに残っておりますが、高橋さんにお尋ねしたいのは、市外通話料金でございますが、さっき薄先生もちょっとお述べになったのですが、現行料金から見て、待時、要するに手動即時、この面の料金が非常に上がっておるというお話、これは審議会の方でいろいろ御検討いただきました答申案を見ましても、それはその通りだと私は思うのです。たとえば東京からの手動即時と自動即時料金の比較を見ますと、広島を例にとりますと、現行は一通話三分間、三百八十円、これが改定手動即時で続く場合においては四百二十円で、四十円の値上げになります。最低かけましても三分間が一通話になりますので、それ以降は一分間が一通話ですね、そういうシステムをとっておりますので、ここに改定した場合、三百八十円から四百二十円と、四十円の大幅な値上げになる改正になるわけですね。こういう点については何か論議なかったんですか。自動になった場合は、広島の場合ですと、三分まで三秒間七円、こういう計算になっていきますから、六十秒の場合は百四十円、それから百二十秒の場合は二百八十円、それで百八十秒になって、現行手動即時と同じような料金計算をしていきますと四百二十円で、ちょうどとんとんということになる。自動即時になった場合はわかるのですが、手動即時で、これが自動即時になるまでは四十円の値上げというのは、これはちょっとおかしいと思うのですが。
  46. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) これは、われわれはそれを大体収入が不変であるという建前で考えて、そこで実際においては、一体通話が普通何分間のものがどれくらいの比重を占めているかという資料の提出を求めて、大体それを基準にしてやった。従って四分かけると安くなる、三分ではそうなりますけれども、四分の場合は安くなるわけです。
  47. 鈴木強

    鈴木強君 安くならぬです。高いです。
  48. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) それで、三分だけであると相当高くなる。しかし四分の通話であれば、今までは倍のやつがそうでなくなっていますから、かえって安くなるのです。そういうものを全部平均すると、収支はとんとんだ、とんとんというよりは、むしろ距離の問題もありますし、距離のはかり方がかえって遠くなった、そのはかり方からいうと高くなったという面もありまして、その改定が、どうも高過ぎるという面は安くして、そこである点までの減収を予想しても、一定の線以上には上げない、こういう考慮が払われている、そういう意味できまったわけです。従って、三分だけをとれば全部高い、その点にも、私どもも過渡期においてでこぼこがあるということを認めるわけでありますが、しかし四分かける人は今までよりは相当安くなるわけです。
  49. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、極端にいえば安くなった分だけどこかへ高くして、そうして収支が合うようにした、こういうことですね。
  50. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) そういうことです。平均したのです。考え方は平均して、こういうわけです。だから、ほかの人と言っていいかどうか、それはわかりませんが、あるときは四分かける場合もあれば五分かける場合もある。それから本人自身は平均すると増収にならないかもしれない、他人にという現状では、少しそうきめてしまっていいかどうかということは問題だと思います。
  51. 鈴木強

    鈴木強君 それから及川参考人にちょっとお尋ねしたいのですが、労働組合立場からすれば、あなたのおっしゃる通り合理化には毛頭反対しない。しかし、問題は、そこに働く職員の労働条件、特に生活権の問題ですね。こういうことが保障されるか、されないかということにかかって、組合はその面に対する要求をしている、また闘争している。こういうことだと私は思うのですが、そこで、公社になったのは昭和二十七年、やがて十年になるのですが、この間、公企体というものが経営をしてきて、いろいろな長所あるいは大へんな短所もあると思いますが、そういう点で、今組合の立場から見た場合に、現行公社法というものはどういうふうにお考えでしょうか、基本的なことでけっこうです。
  52. 及川一夫

    参考人及川一夫君) 公社法に、私どもとしては、やはり労使間の問題を発展させると、基本的な問題があるということを私どもも考えているわけです。ですから、公社自体は制定されているのでありますから、これを守らないというわけにはいきませんが、しかし公社法の中身の問題として一番私どもが欠陥だというふうに考えているのは、給与総額制度の問題が大きな問題だと思うのです。給与総額制度そのものは、やはり電電公社の場合には大蔵省の監督を受ける、さらに郵政省の監督を受けるという関係もあって、そういうことから特に監督権を強化されているために、電電公社当局がいわば団体交渉というものを中心にして、特に賃金なり要員という問題について自主的に解決ができない。この点が一番大きな私どもとしては問題だろうと思う。もちろん、公社当局の中でいわば経営をされている理事者の人たち考え方、あるいはそういう法のワクの中にあっても最大限労働者労働条件というものを引き上げる、いわば根性があるのかないのか、こういったところにも大きな問題があろうかと思いますけれども公社法という問題をとらえると、私どもの方としては一番大きな問題は、給与総額制度をしいて、いわば企業の面と事業運営の中でやはり大きな要素である労務行政の面が欠けている、いわば片ちんばになっているということが大きな問題点ではないか、このように私ども立場としては考えております。
  53. 鈴木強

    鈴木強君 その監督権の強化ということも一つあるでしょう。しかし今あなたのお話ですと、むしろ給与総額が当然賃金問題とからんで出てくると思います。ですから、それは要するに根本的には現在の予算制度のあり方、こういうものになってくると私思うのですがね。ですから、公社法が制定されたときにも、定員法をはずして、給与法をはずして、財務会計法をはずすんだが、問題は公労法という、一方には労働組合を律し、まあ公社を律する法律があるわけですね。従って、そういうものとの関係で自主的に賃金要求なり、定員が足りるとか足りないとかいう問題が出た場合でも、いわば解決ができないという立場にあると思うのですがね。ですから、何とかして、一つには今あなたのおっしゃったような、経営者がそのワクの中でどれだけの意気を持ってやるかということが一つの要素になるでしょう。それからもっと大きな根本問題は、現在の予算制度自体の中の給与総額制度あるいは定員についてもがっちりと予算でしばるというような、そういうことが大きなガンになっていると思うのですがね。そういうところをやっぱり根本的に解決せぬというと、基本的な労働条件の向上ということが、合理化の進展に伴ってもなかなかうまくいかぬと、あなたの言うようにそういうことだと思うのですがね、その点はどうですかね。
  54. 及川一夫

    参考人及川一夫君) 鈴木先生が言われたように、私どもとしてはその通り考えているわけです。ですから結論的に言うならば、電信電話公社の運営もいわば決算制度的に企業が運営される、こういうことであるならば私は申し上げたと思う。さらに、鈴木先生が指摘をされている点は、制度上の問題として明確に解決ができるじゃないか、こう思うわけです。国会でもいろいろそういった御議論があるやに聞いております。できればその辺の問題が、労使間の問題としては関連をさして御討議、御審議を願ったらきわめて有効じゃないか、このように私は考えます。
  55. 鈴木強

    鈴木強君 合理化の進展に伴って労働条件の向上をやるという話が労使の中でやられているようですが、これは私はもっともだと思うのですよ。ところが、あなたの言うように、全然よくならないとは言わぬが、大部分は今の形では不満足だということなのですが、まあ大臣もこの前の委員会でおっしゃっておりましたが、合理化ということは、やはり基本的には、それを経営する経営者も働いている職員も、また、大きくその政策を決定し金を出している政府も、三者がひとしく、国民全般がよくなるというのが、これがまあ合理化の基本である、こういうことなんです。私もその通りだと思うのですよ。ところが公社の経営を見てみると、五百億程度の純利益がある。片や千十九億程度の自己資金というものはことしも出しておるわけですね。ですから、そういう利潤の分配について、まあ資料がなければけっこうですけれども、大よそ労働組合の方にどの程度還元しているのか、それから設備投資その他サービスの向上、そういう面にどの程度なっているのか、大よそつかんでいますか。
  56. 及川一夫

    参考人及川一夫君) ただいまの問題でありますが、若干私どもの方としては公社当局からいろいろの資料を求めつついろいろ検討しているのでありますが、数字的には若干算術計算にわたる一面があるかもしれませんけれども、賃金あるいはその要員、さらに賃金の中における一時金、こういった問題について、特に昭和二十八年度というものを電通五カ年計画の初めとして考えてみた場合に、要員数の問題では一一五%というのが三十四年度までの増加数、それから賃金の問題では一四一%の上昇率を示している、こういう内容になっております。また、一時金の問題につきましては、これは数字がちょっと明らかでありませんけれども、賃金にしても——要員の問題は、それぞれ企業別にいろいろな拡張なりという問題はありますから違ったにしても、賃金という問題をとらえていくならば、上昇はしているけれども、いわば電通事業だけが特に一四一%というふうに大きな数字を示しているということではなくて、国全体といいますか、特に公共企業体等の関係法を適用されている国鉄なり、あるいは専売等と比較をしてみても、基本的には何ら変わらないという賃金上昇率になっていることは、いろいろな資料でも明らかな通りであります。従いまして、私どもとしては、こういう面からいっても基本的な了解要項というものが、ほんとうの意味で運営をされ、実施をされているかということについてはきわめて大きな疑問を持つということと、原資的には、従来通り国会でいろいろ御審議をいただいております電通予算のいわば給与総額、一部こういったものを考えてみると、賃金上昇の問題については全体的に一率にいわば限られたものでやられておりますけれども、その他の問題についてはほとんどが電通事業合理化によって必要とする拡張分の賃金あるいは要員、こういったことが主体になっているわけであります。そういう建前からいって、いわば五百七十億という数字が今日利益金という形で出ておりますけれども、ことしの問題を考えてみても、補正予算の内容を見られてもおわかりのように五十億、六十億という数字になっているわけでありますけれども、従来はむしろこういう大きな数字が見られたということはないわけであります。従いまして、ことしの場合でも、御存じのようないろいろな経過があって賃金というものが認められ、それが補正予算で組まれたという経緯は、ひとり電通だけの問題ではないということからするならば、私どもの方としては、三十一年に約束をした基本的了解事項労働条件を向上させるという積極的な意味合いというものが全然労使間の中に表われてないと言っても過言ではないではないか、こういうふうに考えておりますが、若干資料不足でありますけれども、そのように考えております。
  57. 鈴木強

    鈴木強君 まあ、利潤の分配についてなかなか思うようにいかぬ、建設資金の方に今度取られて、職員の待遇改善には微々たるものしか回ってこない、こういうところに非常に不満があるようでございますが、これはまことに私はもっともだと思うのです。特に要員措置なんか見ましても、公社からいただいた昭和三十年以降の年度別の増員状況等を拝見しましても、やや三十年は公社がほしいという——設備拡充に伴って、サービス改善に伴ってほしい予算がかなり認められていると思います。たとえば、八千八百八十四名三十年度に公社が要求したものが、整理したのが結局六千二百四十九名、三十一年度は八千五百十八名、これが六百五名減ってきている。本年度は五十万架設という計画公社が一万四千三百七十六名要求したものが、八千七十一名に切られてしまった。こういうことで、年々公社のほしい要員が半数程度しか認められておらない、こういうことですね。で、計画はダウンしている。ところが弾力条項によって四十万架設が四十三万になり、かなり予定よりも設備はふえているにもかかわらず、定員はこういうような状態ですね。ですから、ここに増員要求というものがかなり熾烈に行なわれてくる要素が私はあると思うのですね。実際全国の職場の中で、設備はふえるが人はふえない、こういう不満が私はかなりあると思うのですが、電電公社の職員の中にですね。そういうものを組合が積極的にやっておられると思うのですが、現状はそういうことによってかなりの支障が起きていると思うのですが、具体的に何か例がありますか。
  58. 及川一夫

    参考人及川一夫君) 特に要員の問題については、私どもとして本年も私たちの要求の大きな課題として実は考えておるわけですが、御指摘通り要員の問題については公社当局の方から大蔵等に要求をして、それが状態として、半分に削られてきているというのが状態であります。その半分に削られた分を、どういう形で一体補われておるかということになるわけでありますけれども、これは私たちが職場の中で、いつでも要員不定ということに悩む、つまり諸休暇が取れないという問題やら、あるいは勤務している間に、実際に電話交換作業等を見ても、八時間もあの交換台についているということは不可能であります。そういったことから、二時間に何分、あるいは一時間半に何分というものを、実際には休息をとるという協定があるけれども、そういった休憩すらとれない。そういう形でもって要員不足の面を補っていかなければならぬ、こういうのが職場の現状だと思っておるわけであります。従って、こういう面から、いろいろの病気が起きたり、あるいはまた欠勤というものが多くなっていく、実際に休んでいるという人たちは、病気休暇などが多くなっていくという問題に現われてきていると思いますが、今までの労働条件改善というものは、要員が不足しておるために、そういう形でわれわれが補っていかなければならぬ、こういう現状であるわけです。従って、私どもの組合の方では、来年度の問題としては、すなおに一つ職場の足らない要員というものをお互いに出し合って、それを少なくとも中央交渉で公社当局と具体的にやはり団体交渉をしていって、そういう実態というものを公社側にも認めてもらわけなればいかぬ、こういう気持で、またそういう方針を持っておるわけであります。今年の春にも、私たちは無理難題を吹っかけようとは全然思っていないわけでありますが、従って要員の問題が、なぜ公社当局が二月、というものを考えたのが、五千に減らされ、六千に減らされるのか、その辺の事情なんかについても、私どもとしてはむしろ知りたいわけです、私どもも、少なくとも電通事業という事業人でありますから、そういう立場からすれば、むしろ難題を吹っかけて、いわばとらなければどうにもならぬというような考えばかり持っておりません。そういう事情なり理由なりわかるならば、そういう要員なんかについても、積極的にやはりどういうふうにして問題を処理していくかということを、建設的に提案する気持というものは常にあるわけなんです。そういうわけで、今年の場合、要員協定を結ぼうというので、いろいろ話をいたしましたけれども、最終的に結論を得るに至らず、そのままの状態になっておるわけでありますけれども、御指摘のように、要員の問題は、きわめて私どもにとっては大きな問題でありますので、ぜひこの辺の問題については重要視していかなければならぬ問題ではないかと、このように考えるわけです。
  59. 鈴木強

    鈴木強君 あなたに対する最後の質問ですが、電気通信事業が非常に急ピッチで合理化され、しかも大きな規模で拡充されておるという現実は、私はよく知っております。そこで、事業というのは、やはり人ですね。従って、これはもう労使が相協力して、ほんとうの姿の生産性向上になり、その事業発展に心を一つにしてもらわなければならぬと思うのですよ。そういう場合に、今電電公社には、多少第二組合もあるようですけれども、全電通労働組合が十七万以上の組織を持っているわけですね。その労働組合公社との間の労使の接触、労務政策のあり方、こういうものについては、私たちは非常に関心を持っております。先般、春闘で不幸な事態が起きまして、われわれも非常に残念に思っておりますが、再びこういうようなことを私は起こしてもらいたくないと思うのです。またあってはいかぬと思いますがね。それにはやはり、ほんとうに労使が積極的な腹を出し合って話し合いを進めて、この合理化をどうしたら従業員も——そう満足というところまでいくかどうかわかりませんけれども、まあまあという気持が持てるような態勢をしいていただかなければならぬので、ぜひ一つその目標に向かってやってもらいたいと思うのですがね。そういう意味で、ほんとうの意味の労使の健全なあり方をわれわれは希望するわけなんですよ。今度の委員会も、かなりの時間を先般の春闘処分の問題を中心にして論議をしております。そこで私はこの機会に承っておきたいのは、電電公社の労使のあり方、こういう問題について、全電通は全電通意見を持っていると思うのですよ。ですから、もしおありでしたら、もう結論だけでもけっこうですから、簡単に承りたいと思います。
  60. 及川一夫

    参考人及川一夫君) いろいろ労使間の問題が、国会で議論をされ、審議をされてお手をわずらわしていることについては、相済まないという気持と、それからまた、その中から少なくとも電電公社のそういった労務行政なり電気通信政策というものを一つ先生方に判断をしていただきたいという気持を持っているわけでありますが、ことしの春闘の際にもいろいろ問題が、起きまして、私どもとしては、できる限り、事態の紛争が目的でありませんから、物事を解決することが目的であるという立場に立ちまして、常に事態の解決の姿勢をとりながら今日まで進めてきたわけでありますが、三月の十六日の問題については、きわめて不幸の事態に陥ったわけでありますけれども、その後一応公社当局の反省もあって、まず春闘の問題、具体的な問題としては一応の了解点に達しましたけれども、今日処分という問題がなお残されておりまして、こういう問題がある限り、労使間でのいわば正常な話し合いというものは私はでき得ない、こういうふうに考えております。私どもは、少なくとも問題を解決する意思があるわけでありますから、紛争が目的でないということであれば、紛争の起きた原因というものが公社当局にあるとするならば、それなりの判断の中から私は事態収拾というものが考えられるべきだ。少なくとも処分という方針でもって労働者をたたくという姿勢であったのでは、根本的な労使間の正常な話し合いというものは私はできないのではないか、こういうふうに考えているわけであります。もちろん、いろいろ法律上の制約もあって、それはなかなかできない面もあるかもしれませんけれども、少なくとも労使間の問題は、いわば法律一本やり、いわば機械的なそういう適用ということでは動かない問題だろうと思うわけであります。お互いに生きものでありますから、ものの考え方もあるし、そういう中で具体的な話し合いというものを、腹を出し合っていくならば、それなり解決の方法がある、こういう姿勢をとるべきだということが一つと、それから具体的な問題については、公社としてもそれなり努力はしておるというふうに考えておられるかもしれませんが、私どもから言うと、基本的な了解事項を結んでもなおかつ、大体法律そのものが基本的了解事項を結んだ時点とは、今日においても何ら変わりがないわけでありますから、今さら基本的了解事項を結んで、労働条件向上としての、たとえば時間短縮の問題を要求しても、世間がどうの、あるいは国際的な事情がどうのということを理由にしてわれわれの要求を断わっていくということ自体が、基本的了解事項ということによってむしろわれわれをだましておるのではないかと、こういう気持がするのでありますけれども公社側が少なくともそういう労働条件向上の問題、合理化によって受ける労働者に対する犠牲をいかにして食いとめていくかということに対するほんとうの意味の姿勢というものを私は示すべきではないかと、こういうように考えておるわけです。  以上二点を大体要約的に考えておりますが、具体的な問題としてはいろいろありますけれども、その辺の関係をやはり明確にすべきではないかと、こういうふうに考えております。
  61. 鈴木強

    鈴木強君 もう一つ、どうも時間を私だけ取るようで、大へん他の委員に申しわけないのですが、高橋先生、ちょっと最後にあなたにお聞きしておきたいのは、審議会の中で例の電報料金の論議がおありになって、一応答申が出されたわけですが、その中でもおそらく論議になったと思いますが、現在百二十億ぐらいの赤字が電信にあるわけですね。従って、それを電話から補てんをして、先生のおっしゃる独立会計の採算性を一応維持しておるわけでなんですが、しかし、これを電報と電話と二つに分けてみますと、電報は一通六十円ですが、おそらく七十何円の赤字になっておるわけですが、それを電話利用者の金からちょうだいしてやっておるわけです。こういう一つ矛盾といいますか、会計内部における矛盾が出ておりますね。そこで、皆さんの方では、濁点とか半濁点とかいうのを少しおまけをして、料金を譲ろうと、こういうことで答申をなさったわけですが、それが取り入れられないわけですね。これについて、先生は電信というもののあり方、これを何とかしなければならぬとお考えでしょうが、一つ意見をこの際ぜひ大事な問題ですから、最後にこれを承って私は質問を終わりたいと思います。
  62. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) はっきりした、まとまった意見というわけではありませんが、これは実は放送料金で、だんだんテレビが普及してラジオが少なくなる。おそらく、だんだんいくと、テレビの料金でラジオの何の方をある点まで補充せにゃならぬという問題が起こるかもしれないと思うのですが、ほかにもいろいろある問題だと思うのです、そういう問題は。それをどうしてやっていくかということは、根本において電信電話だけではなしに、全面的に考えねばならぬ問題だと思うのです。一方が普及していくと一方が衰微する、それを同一な状態にやるときにどうするかという、これは一つ考え方は、やはり電信と電話というものをできるだけコンバインして利用できるような工夫をするということが第一段じゃないかというふうに思うのです。一番金がかかるのは配達料ですからね。それが電話が普及すれば、それでカバーできるのではないかという面もあるでしょう。そういうふうに、両方をどういうふうにコンバインするかという点が一つの問題ではないかと思うわけです。あとは、これはもう電話のない地域、地方というものは、ぜひ要るのですから、どこかが負担せにゃならぬという問題があるわけです。それが電話の方である点以上負担するのは、実際はおかしいと思うのですよ。そうすると政府が補助するという問題も、ある地域については、少なくともその方の配達料については補助するとか何とかということが当然考えられるべきじゃないかと思う。それは私は今の電報の方ばかりではない。国鉄の赤字線においても、放送の離島その他への設備にしても、その他そういう引き合わない、しかし必要だ、それを今それぞれの企業に全部負担させているが、それがいいのか、こういう問題だと思いますが、そこでぜひ私どもは議員の皆さんにお考え願いたいのは、大蔵省は、政府が出すと必ず干渉してくるということです。これは悪いくせだと思うのです。昔の考えで、公共のあれで政府が出しても、大蔵省がそこへ入らずにまかしたらいいのだと思うのです。そういうことがあるから、片一方もほしがらないのですね。これは全体だろうと思うのです。電電公社はどうかということは、聞かないからわかりませんが、ほかのはみんなそうです。干渉してくる。天下りの官僚をそこへ持ってくる。そうして内部へ干渉していく、わずかな金しかくれないで。そういう問題がほかにもずいぶんあるのではないかと思うのです。それならばできるだけ、公社を独占さしたからには、必要な金を援助する、援助したからには政府が干渉しなければいかぬとか何とかということは要らないだろうと思います。その点を改正すると、もう少しうまくいくのではないかと思います。そういうふうに、これはほんのまだ熟しておりませんけれども、考えるわけです。
  63. 鈴木強

    鈴木強君 わが意を得ました。どうもありがとうございました。
  64. 森中守義

    ○森中守義君 大へん時間が長くなって恐縮ですが、二、三問お尋ねしたいと思います。  先ほど薄、及川、御両者から御所見を述べられておりますが、電電公社の方では三十億の減収だといわれている。しかし、実際問題としては一一・六%程度の増収になるのではないか、こういうようなお話でありましたが、かなり大幅に食い違いがあるようですから、その辺の経緯をいま少し詳しくお述べいただきたいと思います。それから一一・六%が、及川さんでしたか、あるいは薄さんか、よく記憶していませんが、その試算をやられている内容等をもしお漏らしいただけるならば、お話しいただきたい。
  65. 及川一夫

    参考人及川一夫君) 私の方から申し上げましたので、御説明申し上げますが、実は私の方として、若干先ほど説明として不十分でありましたから、せっかく御質問いただきましたので、補足的に申し上げたいと思うわけでございます。  法案が出されましてから、いろいろ私ども検討して、長い時間をかけていろいろやりました。公社当局からのいろいろな資料もいただいておったわけでございます。私どものいわば事務能力として、全国のたとえば待時、手動即時あるいは自動即時というものが、今度の料金改正に伴なってどういうふうになっていくのかということについて、詳細にわたって結論を出すということは非常にむずかしい問題であります。しかし、私どもそれができる範囲内として、一番中心となる東京市外電話局、これを単位にして調査をしているわけです。内容は、改定される料金内容に基づきまして、特に距離改定の問題、それからそれに伴う改定料金、それから一秒七円、こういうふうになっておりますけれども、これを三分制に直した場合、こういうことで、待時、手動即時、自動即時というふうに、それぞれ収入——いわば三分通話制というものがどのくらい一年間にあるのかということも統計として出ておりましたので、それを一応見せてもらって、大体三分通話制は、市外電話の場合に、待時、手動即時、自動即時を見ますと、全体の六二%あるわけでございます。従って半分以上が三分の通話の実態、こういうことになりますし、そういう立場から、この面でどの程度収入が減るのかふえるのか、こういうことを調査をしたわけであります。調査内容は、先ほど申し上げたような内容でもって三十四年度決算、こういうものと比較をしてみますと、一一・六%という数字が出てきております。もちろん、これは端的にいって算術計算の面もありますから、正確だとはいえないにしても、そういう傾向にあるのではないかということが、この面から十分うかがうことができるのではないか、こういう立場で申し上げましたし、なお、この面については、いろいろ私どもも作業を進めて現在おる、こういう状況であります。
  66. 森中守義

    ○森中守義君 そうしますと、結論的には、一一・六%の試算の根拠はわかりましたが、要するに公社のいわれている三十億の減収でなくして、むしろ一一・六%の増収である、こういうことでございますね。
  67. 及川一夫

    参考人及川一夫君) 結論的にはそういうふうに私どもとしては考えているわけでございます。ただ三十億という減収という公社側の説明も、至急に検討してみなければならぬと思いますが、現状三十五年度の決算ができないという意味合いにおいて、三十四年度のいわば決算というものを土台にして、三十億、四十億の減収ということをいわれておりましたが、しからば、そのものずばりに、三十五年度なり三十六年度なりに減収になった場合に、全国即時網との関係合理化計画を四十七年度までにやろうとする関係からいったらどういう関係になるのか、観念的に考えて、それだけの減収になれば、それだけいわば四十七年度までの合理化計画が一年延びる、あるいは二年延びるという形で現われてこなければならぬはずだと思うわけです。ところが、それは四十七年までの合理化計画を変更しないで公社がいけるということは、三十億の減収は、三十四年度に見ればそういうことであるけれども、建設財源に必要な財源というものは、今度の改定料金においてまかなっておるという結論になるわけでありますから、その辺の点がいわば私どもからいうと若干まゆつばではないか、こういう気持もするわけであります。そういう立場で、むしろ私どもとしては、合理化に完全に影響させない、計画それ自体を変更しなくてもいけるという前提に立っていることということからすると、三十億の減収という問題についてはきわめて私どもとしては疑問の多いところである。一面、具体的な事業場、若干、一つでありますけれども、不十分でありながらも調査をしてみると、そういう減収というものは出てくる。そういった点で、実態といわば理論の組み合わせの関係でいくと、非常に矛盾があるのではないか、こういうふうに私どもとしては判断している、こういう立場なんであります。
  68. 森中守義

    ○森中守義君 これは議論じゃありませんが、三十四年度の決算の場合、五百数十億の益金があるのです。そういう状態の中で三十億、四十億損しようと、これは私は大した問題じゃない。それが、一応、議論でありませんから、私の意見として申し上げておきますが、どうでございましょう、薄先生、今の及川参考人の御意見によりますとお聞きの通りです。そこで、さっき御所見の中にもほぼ筋としては同様なお話があったように承ったのでありますが、今言われたこと、間違いなくそういう傾向にある、今回の法改正はそういうようにお思いでございましょうか。
  69. 薄信一

    参考人(薄信一君) 私、及川さん述べられましたけれども、私はそれ以上に実は述べる根拠がないわけで、具体的にこういう計数をはじくということはとてもできない、能力の上から申しましても、便宜の上から申しましてもできない、こういうことでございますけれども、私は意見を述べさしていただきましたときに、非常にそういう危険がある、そういう危惧を抱かざるを得ない、こういうことを申し上げたのですけれども、それはさまざまな説明がされております。けれども、これによって値上げにならない、値下げにならない。つまり、原則は収入水準を落とさないということは、はっきり明示されておりますから、そういう観点のもとで、しかもその観点が非常に私は強過ぎると思うので、何のためにそれを非常に強く主張されるのか、あまり私はわからないのですけれども、非常にその点が濃厚に出ておる。そしてそういう観点のもとに公社当局は計数をはじかれたと思うのです。そうしますと、これはこれ以上は推測にしかすぎませんので、私は危惧を抱かざるを得ないという言い方もいたさざるを得ないのです。そういう、とにかく収入の水準を落としたくない、そういうことで計数をはじかれましたならば、当然それは保守主義と申しますか、言葉はきたのうございますけれども、どうころんでも減収にはならないということで計算されているに違いない。これはたちの悪い推測かもわかりませんけれども、私はそういう推測のもとに——今後電話はどんどん伸びて参ります。それから自動即時が進んで参りますと、これは度数制が出て参りますし、同時に便利になりますから、これはまさに宣伝されている通りであります。これは電話利用度も高まってくる、そういう意味におきまして、収入というものはほっておいても伸びる。その上に、体系の上から見ましても、決して減収にはならないような考えのもとに進まれておる。従って、料金現行維持ということではなくして、非常に上回ってくる見通しというものが立てられるのではないか、こういう意味合いにおいて御意見を申し上げました、こういう次第でございます。
  70. 森中守義

    ○森中守義君 もう一つ伺いますが、先ほどの御所見の中に、いわゆる公共事業といいましょうか、企業体としての一応の概念的なことをお話しになりました。その中で、今私が申し上げましたように、三十四年度の決算の場合でも五百億以上のいわゆる損益勘定があって、この額がはたして当を得た額であるかどうかということを承りたいのですが、大体公共企業体というものは全体の資産の何割程度の利益をあぐべきものでしょうか。
  71. 薄信一

    参考人(薄信一君) 何割ぐらいのと言われますとはなはだ難渋いたすのでありますけれども、これはまた千差万別でありますけれども、学説といえるものがまだ十分には成熟しておりませんけれども、それにつきましても意見は区々でございます。私の申し上げましたのは、利益を出す、出さぬの問題にかかわるわけでありますけれども、やはり私は利益を出すことを目的にする。これは高橋先生がおっしゃいました、これは建設のために使うのだ、国民のために使うのだからそれはかまわないのだ、そこまでは申されませんでしたけれども、積極的に出したってかまわないのだというような印象を私受けたのでありますけれども、私はやはりそれは正しくないと考えております。それと関連いたしますけれども、公共企業体とは一体何かという場合に、これは、これもいろいろ意見がございますけれども、私企業にまかしておけないことをやる。また、そういうことができるから公共企業体のいいところがあるのだということ。それから今までの国家企業、行政企業のように、非常に言葉は悪うございますが、うるさい監督のもとで窮屈な経営をしなくちゃならない、これもいけない。国民のためにならないということで、中間と申しますか、そういう両者の長所だけを集めたものとして公共企業体というものが戦後発足したのだと考えるわけです。そういう長所が十分に生かされておりますならば、私は依然として反対ではありますけれども利益金を出す、これを建設に回すということもある程度納得できるのでございますけれども、現在のこの公共企業体、特に電信電話公社におきましては企業としての一体財産、企業形態あるいは公共企業体としての一体性質をはっきり持っておるかどうか、そういう本質をはっきり確立しているかどうか、これは先ほどもお話しがありましたように、まあ予算経営、予算主義というのがやはり厳として存在しております。それだけではございませんで、それに付随いたしましてさまざまな監督、さまざまな統制、ある場合にはこれは干渉とでも言えるのじゃないかと思いますが、そういうものがございます。私は、話が飛躍するようでありますけれども公社当局の、まあ経営者と申しますか、経営首脳陣と申しますか、非常に御苦労なさっておるのじゃないかと思うのです。やりたいこともできない、当然これだけの要員が要ると言って、これは非常にむずかしい計算をされておるように伺っておりますけれども、それが事実はもう認められない。そうなりますというと、結局これはもう無理と知りながら、無理な経営をやっていくということになっていくわけです。それで、一つの例でございますけれども、そういう事情がありまして、まあ理想的な意味で考えて、公共企業体の体をなしていない。先ほど公社法の改正の問題も少し論議の中に出たのでありますけれども、そういう公共企業体——私企業でもなければ、そうしてまた昔のような窮屈きわまる行政企業でもない、そういう両方の短所を捨てて長所をとった公共企業体というものでありますならば、私は先ほど問題になりました利益金の問題についても、別に考慮できるのじゃないかと少し考えは、私ならば私なりの考え方を改めていいのじゃないかという気持でおるわけであります。
  72. 森中守義

    ○森中守義君 実はこういう聞き方が適当だと思うのです。先般予算の審議をする際に、国鉄、それから、専売、それに電電公社のこの三公社を、大蔵省の主計官にお越しいただいて、比較をしたことがあるのです。その中で特に国鉄を例にとってみますと、要するに設備投資を区分をするならば、自己資本と借入金の比率はかなり借入金の方が国鉄の場合には多い。これと比べると電電公社の場合、五百億以上の利益金がある。しかも、これは下るということはない、むしろ電話の需要の増、これは先ほどから言われておりますように激増の傾向にあるわけですから、むしろ上回る。そうなると、一体公共企業体には自己資本が幾ら、借入金幾ら、これも説はいろいろありましょうけれども、少なくとも電電公社が今採用されているような自己資本の投入の率と借入金の率、この辺のことはどういうようにお考えでしょうか。
  73. 薄信一

    参考人(薄信一君) その点についても、私不十分でございますけれども、これ以上、これ以下という御意見をただいま申し上げるわけにはいかないのでありますけれども、はなはだ過大だと、こういうふうに考えております。
  74. 森中守義

    ○森中守義君 はなはだ過大であるということは、まあ結局その益金があるということは、料金が高いということ、従ってサービスの対価としての料金であるならば、これから設備投資をやる、サービスのことをやるということならば、今ほどの益金というものはもう少しダウンしてくる、こういうことになるのでしょう。
  75. 薄信一

    参考人(薄信一君) さようでございます。
  76. 森中守義

    ○森中守義君 そうしますと、高橋先生には、今のことと全然相反する御意見でございますね。どういうふうにお考えでございますか。
  77. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) これはつまり公共企業体というものを個々に離して考えるか、国全体として考えるかということによって違うと思うのです。というのは、電電公社が実際においては、国鉄の運賃率よりも実際は安いのですね。それでいて経理がいいというのは、企業の性質が、ことに私どもはその辺はしろうとなんですけれども、特に電話関係の技術が非常な進歩をして、それによって、本来であれば相当コストが上がるべきものが安くいった、こういうことだと思うのですよ。それでその設備がどんどんふえた、こういうことだと思うのです。片一方は、世界的にいうと、鉄道や何かというものは斜陽産業、そこへ持ってきて今まで相当安い運賃であった。そして電話ほど技術革命ができていない、そういう状態でありながら、なおやはり建設が行なわれる、そして今のような赤字線、その他そういうものを相当やはり引き受けさせられておる。そういうことをやはりやる必要がある、こういう場合に、ある企業は、そういう不利な位置に置かれた企業に対して自己資金をほかと一緒にまかない得るかどうかという問題です、国全体として考える場合に。というのは、資金の量には一定の限度があるということなんです。無限であれば、それはどっちもやっていいことだということになるでしょうが、おのずから限度がある。そういう場合には、片一方は与えられた限度において資金をまかなってやらなければならないので、だから借入金がどうしても多くなる、ますます不利になってしまう。金利負担があるからもちろん不利になってしまう。片一方は自己資金において相当まかない得るからいよいよ有利になってくる、こういうことになるわけですね。それをどちらが、この借入金が一方は多いし、片一方は借入金が非常に少ないから、それで下げ得られるかどうか、こういう問題と関連さして考えていいかというと、もう一段高い全面的な視野からそれは判断すべきだと、こういうことになると思うのです。そういうことになるのだと思う。とともに、もともと公共企業体として独立採算でやらしたという趣旨からいいますと、その業績がよくなるという面に対して、ほかのと同じにしろ、そういう考え方では独立採算の意味がないと思うのです。業績がいいから利益をとる、こういう考え方も必ずしも僕はそれはいいとは言えないのです。そういう意味においても、さっきこの従業員の立場からお話がありましたが、もうかったから従業員の給料をもう少し上げろ、こういう見解も、その限りでは僕はわかるのですけれども、しかし、そういう考え方に徹していいかどうか。社会党もそういう考え方に徹していいのかどうか、労働組合もそういう考え方に徹していいのかどうか、みんな同じでなければいけないという議論が一方にはあるわけです。それが実際にはできないのですよ。それは実際は僕は理想なんであって、ソ連すらも結局それは失敗したわけなんです。そうすると企業の経営が、技術が発達したといいましたけれども、それを勇敢に取り入れるか取り入れないかということは、やはりこれは企業首脳部の手腕なんですね。早く取り入れればいいじゃないか、それを有効に使ったか使わないか、そういうものに対して、その刺激になるものは、できるだけ全国の目標を達成しようという、それが便利になるということでなくちゃ、ほかのそうでないのと同じように、何もみな同じにしろというのはおかしいと思うのですね。そういう意味において、公共企業体が同じであるといわれたら賃金もみんな同じであるべきだ、給料もみんな同じにすべきだ、ほかのものとみんな同じにすべきだということまでくると思うのです。それでいいのかどうかということになるわけですね、一方から言うと。それと国全体の立場からいうと、資金量には限りがある。資金を運用するには限りがある。自分で都合できるものは、これはいい。都合できないものは借入金にたよる。それ以外に方法がない、こういうふうに思うのです。
  78. 森中守義

    ○森中守義君 大へん高橋先生造詣が深うございますので、少し私の質問以外のことをお聞きしたわけですが、私はあがった利益をそれを労働者に配分する、その配分をどうするかという、そこまで聞いていないのです。むしろ公共料金をどうするという問題をお尋ねしているわけなんです。つまり、先ほども申し上げましたように、必然公共料金というものは、何としても受益者負担なんだから、それには一定の限度がある。従って、設備投資、借入金にしても、これは私はいろいろ形はあると思う。今回の二千五百万ドル、約七十数億の外債をお出しになるのも一つの方法でしょうし、あるいは借入金、財政投融資あたりから持ってくることも一つの方法だし、要するに、公共事業であれば、低利、かつまた長期償還の借入金等が大いにこれは活用されて私はしかるべきだと思います。そこで公共料金、すなわち受益者負担というのは、適当に押えておかないと、建設勘定に金が要るから、それでどんどん公共料金を上げていくと、こういう仕組みはちょっとまずいのじゃなかろうかというようなことを実はまあお尋ねしたわけですけれどもね。
  79. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) その御意見にはさっきちょっと触れたとも思うのですけれども、問題は電電公社、ほかの事業でもそうですが、公共事業として現在の加入者利益というもの、それを中心にそこだけでいいのか。もう一つは、やはり未加入者が非常にあるのですね。これにできるだけ普及させる必要がある。そういう未加入者の要求、あるいは非常な不便と、それをできるだけやはり満たす必要がある、そういう面をあわせて考えるべきだという、そういう意味において使ったやつを利益でまかなうか、まかなわないかというときに、単にその問題ばかりじゃないのだ、未加入者全体に普及するということが一つだと。それからもう一つは、建設費といっても、実際は現存の加入者サービスの向上、施設の向上になるのですね、電話の。そういうものも大体建設費の約六割を占めている、そういうものは幾らやってもしかるべきじゃないか、こういう考え方ですね。それでそういうものが全部なくして借入金ができるかできないかが第一問題なんです。できれば私はあなたのおっしゃる通りなんですよ。それでいいと思うのですよ。実際上それはできるかという問題がある。そういう建設費が安い利子で長期の借入金が全体としてできるかできないかという問題なんですね。で、できるという前提であれば、おっしゃることに僕らはしいて反対しないが、実際は非常に困難です。というのは、限られておるということですね。それから、そういうことを考えると、ある点までの利益をその方に持っていく、それでも今の電話料が他に比して高過ぎるというのであれば、これは問題でありますが、実際は高くはないのだということであれば、ただ科学技術の発達で実際コストは安くなって下げ得られるが、利益、利潤をなくしてまでも下げ得られる余地があるかということなんです。そういうことを考えると、今料率を安くするというだけが公共事業の使命かどうか、必ずしもそうでないと、こういう考え方なんです。
  80. 森中守義

    ○森中守義君 この問題は多少議論になるおそれがありますから……。  次に、直接この法案関係ありませんけれども、これから先の公社とあるいは相手方である組合との関係で、非常に大事なことであると思うことですから、一つ高橋先生と薄先生の御両氏からそれぞれ伺いたいと思うのであります。  現在、具体的に申し上げると、第一次計画、第二次計画、さらに第三次計画がおそらく予定をされておると思います。こういうそれぞれの事業計画を推進をしていく過程において、公社当局計画するその計画を実行に移すものはやはり職員であります。その職員である固まりの労働組合に事前に計画内容を提示して、それで双方が了承し合うという協議態勢を私は必要とすると、まあ意見としては思っております。で、これはまた、現在まで両者の間で行なわれてきたようですが、ただ問題の内容に入っていけば、この限界までは管理運営に所属する、従って、事前協議の対象になる、ならないという議論も絶えず展開されておるようであります。もとより、それらの根拠を問いただして参りますと、現行法上における制約等もありますから、これは現行法を基礎にして考える場合には、両方にいろいろ言い分があると思います。しかしお尋ねしたいのは、現行法を一応考えないで、純粋に事業計画、そうして促進、こういうものの見方からする場合に、高橋先生、薄先生、おのおの、完全なる事前協議を必要とするのかしないのか、この辺一つ御所見を求めておきたいと思います。
  81. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) これは私、必ずしも考え方がそういうふうに熟しているとは考えないのでありますが、これは一般論から言いましても、労働組合の態度、性格と非常に関連する問題だと、こういうことだと思うのです。だから、その事業を盛り立てていくということを中心にして考える、それを通じて従業員の位置の向上をはかっていく、そういう態度であれば、これは当然事前に十分の協議もし、また、やった方が経営者に対しても有利ですからやると思いますが、そうでなしに違う立場でやる、それとは違った立場でやるのだと、こういうことになると、ある点それでやっていくのが当然だときめてしまったときにノーと言ったら動きが取れない。そういう不安があればなかなかそこまでいけないと、こういうことだと思うのです。今度の場合でも、私は交換手というふうな単純な機械的な仕事はできるだけ尊い人間の力から解放していくと、こういうのが当然人間としての希望だと思うのです。しかしその過程においておっしゃるような問題が起こってくる、これは前向きに解決すべきなんであって、それが解決ができなければ、断固として合理化させないという、こういう態度ではおかしいと思うのです。それはおかしいと思う。しかしながら、十分それを考えるべきであると同時に、労働の内容が今後だんだん向上してくるということはおっしゃる通りだと思うのです。それに応じた賃金体系ができるべきだと、そういうふうに思うのですよ。そういう場合にも実際の問題としては、そういう形の場合に合理的にいけるのかいけないのか、実際においてはあちらが上げたからこちらも上げろ、そういうことが実際に行なわれていやしないか、そうすると均衡の問題が起こってくる。そうすると大蔵省その他が問題にしているというふうにおっしゃったように、僕らまた不都合だと思うのですけれども、とにかく一方が均衡論を出せば、それに備えざるを得ない、そういう問題が起こってくる。というわけで、問題はやるべきか、やるべきだということは、態度によると思うのですね。両者、ことに労働組合事業の発達を中心にして、それを通じて自己の位置を向上させていこうという建前なのか、ほかの政治的意図において組合運動をやっているのか、こういうことになると、そこまでいっていいかどうか、うっかり経営権なんかというものを非常に問題にせざるを得なくなる。そういう問題にいくのではないかと、そういうふうに思うのですよ。
  82. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと薄先生お答えの前に、今高橋先生のお話を承っておりますと、たぶんに労働組合に対する一つの定見といいましょうか、そういうものが、大へん言葉を返すようで悪いのですが、遺憾な角度でものを見ておられるのではないか、そういう気持も私はあります。  そこで私がお尋ねしているのは、これはもう現行法の制約のない労働組合、ほんとうに労働組合法に定めてあるような、あるいは労働組合の本旨に沿ったというようなそういうものの角度から事前協議はどうかと、こういうことですね。それで好ましい組合、好ましくない組合、すなわち、これならば相手にしようとか、しまいとかという、そういう既成観念の上に立たない純粋な考えとしてどうかというのです。
  83. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) これは賛成です。私どもは戦後のドイツのように、両者経営をやるべきだと主張をしてきたのですけれども、実際はかなりそこまで、運動もした方なんですが、なかなかできなかったのです。それでそのできなかった理由は以上申したような情勢だったのであります。それでできなかったわけです。
  84. 薄信一

    参考人(薄信一君) 大へんな勢いで電信電話合理化が進められておるわけです。これは私申し上げましたように、電信電話が発達してくれなければ困ると思うのですが、それにしても相当やみくもに暴走しているというふうな気が一方ではいたします。この点についても少し考えなくちゃならない問題があるかと思うのですが、こういう合理化は、一応全体の立場から申しまして、四十七年には計画にありますような電信電話合理化と申しますか、設備の拡充と申しますか、そういうものができ上がる。これについてとかくの批判を一応差し控えましても、こういうような合理化が進められていきます場合に、一体そこにおります労働者と申しますか、従業員は、これはもう至上命令である、もうどうすることもできない問題だと、どういうことが起こっても、これは全体のため、あるいは国民のため、あるいは日本経済のためにと申しますか、どういうことが起こっても、そうひどいことがない限り、黙っていなくちゃならないというものではないと思います。私は労働者もこういう計画の、これは直接影響を受ける人たちでありますからして、当然発言権はあってしかるべきだ、こういうふうに考えます。そのために、あるいは現在計画されておりますような合理化計画がスピード・ダウンをいたしても、ある場合にはやむを得ないのじゃないか。労働者も発言する権利があるのだというふうに私は考えております。で、こういう合理化を一応全体としての展望で見てみますというと、先ほど及川さんの方から出ました労働条件の問題がございますけれども、これは実は相当深刻な問題があるのじゃないか。これは何も電信電話公社だけのことではないという説もあったようでありますけれども、これは電話自動化自動即時化の問題をとってみましても、そういうことはないという説明はございますが、人がもうとにかくドラスティックに要らなくなる、こういう特徴を持っております。一方これはもう電信も同じだと思いますが、一方保守労働者と申しますか、メインテナンス・ワーカー、この問題につきまして、設備がどんどん改良されていきます。非常に昔とは違いまして、つらい立場になってくるわけです。具体的なこまかいことは省略いたしますけれども、これはもう相当大きな影響を与えるものだと考えます。これについては要員数が減ることはないのだという御説明はありますけれども、やはりこういう現実を目の前にしております労働者が不安に陥るのは当然のことでありまして、これは知らぬということではとても済まされない問題であると私は考えております。まして、電話の交換手の場合には、自動改式になっております。そうしますと、その周辺から通っておりました交換要員というのは遠い所へ行かなくちゃならぬ。解雇されるとか、あるいは退職をしなくちゃならぬとかいうことでなくても、場所を変えなければならない。一時間半、二時間という所に通っていかなくちゃならない、こういうことは当然考えられることなんでありまして、必ず出て参ります。出ないという保証は全然ないわけでありまして、必ずそういうようになってくる。これは単に賃金の問題あるいは事業所内の労働時間の問題——これは若干の向上あるいは低下もしないということでありましても、これは大きなやはり労働問題である。労働条件にかかわる大きな問題であるというふうにこれは考えざるを得ないのであります。そういうことを考えてみますというと、私は合理化というものが非常にスピードを上げて進んで参ります場合に、労働者もやはり発言の機会が与えられなくてはならないし、また、発言する権利があるのだと、こういうふうに考えるものであります。  そこで、事前協議の問題でありますけれども、そういう観点から申しまして、事前協議という体制は、日本側の労働組合の中では全電通労働組合という組合が最も模範的だ、いろいろな意味で模範的だという言葉が使われるのですけれども、一応安定した運営の経験を持っておりますということでございますので、こういう制度は今後ますます重要視されまして、拡充、発展、それこそ拡充、発展さしていくべき問題だと考えております。ただ、先ほど御質問にございましたように、何を一体協議するのか、これはやはり当面は、さしあたっての問題としましては、設備計画、建設計画の問題にやはりしぼられてくるかと思いますけれども、やはりそれ以上に広げていろいろな問題があると思います。労働条件にやはり将来はもう関係してくる問題であると思いますから、そういう問題も含めてやはり討議されるべきじゃないか。  管理運営権の問題、これは現行法を一応離れてというお話でございましたけれども、管理運営権——労働者に基本的にはひっかかってくるような問題の一番大事なところでこの管理運営権という問題が出て参りますと、これはもう協議をしようにも仕方がないということになって参ります。現行法にやはり問題があるのじゃないか。一方、経営の政策は、これは経営権の内容であるからして、それは労働組合が口を出すのはおかしいという考え方がございますけれども、これは他の諸外国の労働組合も経営の政策を変えるために労働組合は運動をいたしておるわけであります。そういうことをやるわけであります。しかし、それは現行法上、電信電話公社労働組合はこれは争議ができない。できなければ、その他の組合でありますならば、これは高橋先生からお話がありました、非常に公共性を持っている銀行の労働組合にいたしましても、私鉄の労働組合にいたしましても、これは一定の制限はございます。ございますけれども、ほんとうの最後の手段といたしまして争議権を持っておるわけでありますが、これは公共企業体である、公共性を持っているからということで、これは禁止されております。争議権は持たないわけであります。そうしますと、ますます労働者の問題というものが非常にむずかしい。下手をすると、現在そういうことはございませんけれども、陰にこもったような労働問題になってくる。いずれは大きく爆発してしまうというようなことすら考えられておるわけであります。  少し長くなりましたけれども、私はやはり労働条件、これはもう目に見えている、この問題がもう当面やらなければならぬこととして目に見えているわけでありますから、これに関して労働者は発言する機会が与えられなければならないし、発言する権利もあるのだということであります。そういう点から申しまして、この事前協議なら事前協議は大いに今後活用されてしかるべきであるし、そういうことがほんとうに労使で腹を割って話し合える、そういう機会が作られるためには、現行法にやはり問題が出て参ると思います。
  85. 森中守義

    ○森中守義君 最後に、法案の最終的な御意見をお尋ねしておきたいと思いますが、それぞれ四名の皆さんから冒頭に御意見が述べられまして、あらかた理解をいたしました。しかし、私どもこれからいよいよ審議に入っていくわけでございまして、はたして、今回の改正案が世論の絶対的な必要性を求めているかどうか。それと、もう一つは、公社の運営上どうしてもこういう措置が絶対に必要なものであるかどうか、もとより法案内容からいたしますと、来年の四月一日からの実施になっているわけであります。従っていろいろ準備等の関係もあるという公社当局の御説明でございますが、今国会でどうしても成立をさせなければならない内容法案であるかどうか、このことを一つそれぞれのお立場から、もう一度大へんだめを押すようで恐縮でございますが、お聞かせを願いたい。
  86. 高橋亀吉

    参考人高橋亀吉君) 私は私の口述の中にも申しましたように、全体の電話の普及をできるだけ早くやる、そうしてサービスを上げていく、そういうことのためには、この料金体系のもとで計画を進めるか、依然として従来の体系のもとで計画を進めるか、そのいかんということが将来に重大な影響を及ぼすというふうに思っております。そうして実際においてはすでにおそ過ぎるくらいだと思うのです、体系を変えるということは。従って、できるだけ早く、今までの方針ではなしに、違った新たな、自動化を中心とした料金体系、従ってそれに即した方針というものは、いろいろやり方やなんかみんな違ってくる、その新しい方針のもとにどんどん工事を進めていかないと大へんなむだが起こってくる。そういうふうに思いますので、速急にきめるべき問題だと、そういうふうに思います。
  87. 薄信一

    参考人(薄信一君) 私は、いろいろな問題がございますけれども、特に料金水準の問題、そういう基本的な問題を一応差しおいた形でこういう体系の問題、特に電信電話の拡充を——特に電話でございますが、拡充を進める立場の、いわゆる経営的な立場があまりにも先走り過ぎているのじゃないかという感想を持っているわけであります。もう少し時間をかけて慎重に審議していただきたい、こう思うわけであります。
  88. 阪本捷房

    参考人阪本捷房君) 私は、現存の時期におきましては、その改革を実行されませんと、先に行けば行くほど困難になる。実行するのであれば、一日も早く実行されることが必要だと思います。そういう意味で、できるだけ早く本案の検討にかかられることが、いろいろな面から考えて必要だと思います。
  89. 及川一夫

    参考人及川一夫君) 私の立場からは、一点として、やはり労働条件の問題に関連をする大きな問題でありますから、労使双方で相当いわば団体交渉なりで、その辺の問題点が明らかにされなければならぬ問題があるということをまず前提にして、法案の中身の問題については、実は私どもある意味では責任があろうかと思いますけれども、電信電話事業そのものが、必ずしも国民一般大衆の中にほんとうの意味での大衆化をされていない。むしろ現状電話がつけられない、つけようにもつけられないということに一つの大きなベールがあって、その中で電信電話事業問題点というものが明らかにされないのが今日の状況ではないか、こういうふうに考えますと、問題を隠したまま強行をするということは、きわめて問題があるというふうに考えます。従って、内容的には、料金水準の問題やら、あるいはまた自動化をすることによって、度数料でもって従来の料金よりもいわば高くなるという問題、そのことを中心にして、地域的には相当の問題が起きているという現状を考えてみた場合に、私ども立場としては、ここで強行するということは、きわめて問題があるのではないか。従って時間を置いてさらに国会で審議をさるべきではないかという意見であります。
  90. 森中守義

    ○森中守義君 どうもありがとうございました。
  91. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) ほかに御発言もなければ、以上をもって参考人に対する質疑を終わります。  本日は、参考人方々におかれましては、御多忙のところ、御遠路わざわざ御足労をわずらわした上に、非常に長時間にわたって委員会のために貴重な御意見を御開陳いたされましたことを厚く御礼を申し上げます。本委員会といたしましても、本案の審議の上に非常に参考になったことと存じおります。委員一同を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十三分散会