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参考人(
高橋亀吉君) いろいろ他のお三人の
参考人の方から御
意見が出ましたが、
電話に対して私
ども国民が長い間願望していたことは、
電話が電気のように申し込めばすぐ引いてもらえるようになってほしいと、こういう点。それから、全国どこでも市内と同じようにすぐ
通話ができるようにしてもらいたい。われわれがテレビを見ておっても、外国はすぐサンフランシスコからシカゴ、ニューヨーク、すぐ
電話が通ずる、ああいうふうにしてもらいたい。それから、
国民のすべてが
電話を
利用し得るようにやってもらいたい、そういうことであったのであります。
これらの点は、最近かなり一時に比べると
改善されておるようでありますけれ
ども、ただいま薄さんのおっしゃるように、諸外国に比べるとずいぶんまだ水準が低いのであります。できるだけ早くこういう目的を達成してもらいたいと念願しているのであります。
その
立場から言いますと、今度の
公衆電気通信法の一部
改正の法律というものは、その目的を達成する第一の段階として、ぜひ必要なものを含んでおる、そういう性格のものだ、そういうふうに私は思うのであります。
私、経済評論家として、第一の根本の問題だと考えておりました点は、今申しましたような目的にわれわれの願望を達するとともに、同時に
サービスをよくしてもらう、それにはこういう改革が必要であるかないかという点が第一に私が考えた点であります。ところが、現在の
手動を中心とした
料金体系というものは、とてもその目的に沿わない。これでは非常なじゃまになる。ぜひ
自動通話を基礎にした
料金体系を作る必要がある、それは私
ども認めざるを得ないのであります。何しろ今の
手動では、即時
通話の地域は別でありますけれ
ども、それ以外の多くの地域において、
電話をかけようとすると、いつ
通話するかわからない。ずいぶん待たされて、当てにならない。いつごろまでに用が足せるか足せないかわからない。急を用するところは電報と一緒にやっておかなくちゃちょっと安心ができない。これをぜひ
手動を、
自動を基礎にした
料金にする必要がある、こういうところが第一の問題の点だと思うのでございます。
次には、今度の
改正につきまして考えねばならなかった点は、社会環境が非常に変化しまして、いわゆる
東京とか大阪とか、あるいはその他の地方を入れまして、つまり
都市生活というものが非常に大きくなった。この結果当然経済的にも社会的にも
一つの
都市圏内であるにもかかわらず、それが
市外通話という取り扱いで、
通話も不便だし
料金も高い、それを現在の状態に適した
料金体系に作り変える、そういうことが必要である、こういう二点から
料金体系を考える必要があるということを認めざるを得ないのであります。と申しますのは、今申しましたように、われわれ申し込めばすぐ
電話ができるだけ早い機会に引かれるようになってほしい。全国どこへでも
通話ができるようにしてもらいたい。それから
国民の大多数が
電話を持つようにしてもらいたい。それには現在の
手動を中心としたシステム、
電話では、とうていその目的は達せられないわけであります。ぜひとも
自動に改める必要がある、こういうことになるわけであります。ところで
手動のままで
加入者がだんだんうんとふえてきますれば、
通話が多くなり、その交流が非常に複雑になるために、非常な
設備と非常な人を要求する。これでは非常に高いものにつきますし、なかなか
電話の普及はできない。
国民が安く
電話を引けるようにはなかなかならない。そういう意味からぜひ
手動を
自動にしなければならない、こういうことになります。その上に、今申しましたように、
手動では交換台や交換
要員が非常に多くかかるばかりでなく、庁舎が非常に大きなものが要る。私専門家ではないのでわかりませんが、私
どもそれをなぜ必要かというので審議いたしました過程において、
公社から聞きましたところによりますと、
自動と
手動とでは庁舎のスペースが約十倍、十対一違うということなのであります。そういうことを考えると、どうしても
自動に進むほかないとすれば、従来の
料金体系が
手動を中心にしたものでありますが、これをどうしても
自動を基礎にした料率に変える必要がある、こういうことになるわけであります。まあそういう要求から、すでに今まで言われておりますように、
料金の
体系というものがいろいろの面において
改正される必要がある。これについては他の三
参考人いずれもほとんど異議はないように承りましたが、私も今そういう意味において
料金体系の改革はぜひ必要であり、やるべきであるという考えであります。
次の
問題点は、ただいま薄さんから御
指摘になりましたような
料金水準の問題なのであります。この問題にわれわれ案を
委員会で研究しましたときに、全く無視していたわけではないのでありまして、当然この問題は審議し、私
どもも考えたのであります。現在
公社の建設費が千七百億円、そのうち約五百億が
利益金からなっております。他の五百億円が減価償却から支出されておるのでありますから、この
現状を認めて、いわゆる
料金の
体系の
改正をするかしないかということ、要するに現在の収入が減りもせねばふえもしないということを、きめる場合にはそれを認めるか認めないかということは、当然大きな問題なのでありますし、私自身考えたのであります。ここでの問題は、今までの御論議——
反対の御論議を伺いますと、現在の
加入者、加入している人の
利益というものが非常に強く見られております。ある意味においては現に加入している人の
利益を中心にして考えられているともあるいは言い得られないこともないと思うのでありますが、しかし問題はそれに劣らず、現に
電話が
利用できない人が非常に多くあるということです。現在のシステムでも約八十万、八十数万の申し込みが達成できないでたまっておる、これはすでに申請している
人たちであります。その他
電話がほしいという
人たちはずいぶんあると思うのであります。そういう人に
電話の利便をできるだけ早く与える、これがもう
一つの大きな公共体としての
公社の大きな任務である。われわれが料率を考える場合にはこの点を十分考えるべきである、そういうふうに考えたことが第一点であります。
第二点は、同じく建設費が、今申しますように、年間五百億円の
利益金が入っておるといいましても、その六割までは現
加入者の
サービスの向上になる性格のものである、こういうことであります。それはできるだけ早く即時
通話を普及する、あるいは
通話自体の秩序をよくするということになりましょう。同時に、いま
一つは、
加入者が
現状よりふえれば、それだけ現在の
加入者の効率を大きくすることなのであります。要するに問題は、表面の料率を下げるか下げないかということと、その質をよくするかよくしないかということと、二面あるわけでございます。これは物価の場合でも、賃金の場合でも同じだと思うのです。賃金がかりに上がりましても、
内容が悪くなれば、上がったことにはならないでしょう。そういう意味において、質の問題と
料金の問題、これを相互に考えるべきだ、こういうふうに考えるのであります。もっとも、未
加入者をできるだけ早く加入さすというのには、もし他に安い利率で供給する資金源が、たとえば政府の財政投資でこれが行なわれるということであれば、これは何も今の
利益から供給する必要はないという
考え方が出るわけでありますが、実際問題として、現在、財政投資百七十億あるわけでありますけれ
ども、ほかの方面の要求が大きいということを考えてみますと、財政投資によってこの問題がかわり得るというふうには、私
どもその方面の専門の
立場からいいますと非常にむずかしいと思うので、これはもう議員諸公の方がよく御
承知だろうと思うのであります。
そういうふうに考えますと、問題は単に表面の料率を下げる、現在の
加入者の
立場を中心にして考えるということではなしに、できるだけ現在
電話の利便に浴していない人にこれを普及するようにするということが、
国民の念願であるわけであります。同時に、その料率も表面の金額ばかりでなしに、実質がよくなる、そういうこともあわせて考えるべきだ、こういうことになると思うのであります。それにしても、
電話の
料金が、他の物価なり、他の公共
事業の料率に比べて高い、こういうことならば、これは問題として考えねばならないのでありますが、実際におきまして、
昭和九年−十一年を平均したものを一〇〇にしますと、国鉄の旅客は一八五四七で、貨物は二九四五〇、地下鉄は二五〇〇〇であります。都電が三〇九四三、郵便、これは封書とはがきでありますが、今度値上がりしないで、それでも三三三三三、ガスが二七五〇〇なのです。ところが、
東京の
電話は、
基本料金が一八六六〇、度数制が二三三三〇、それから
東京−大阪あるいは大阪−福岡は一九三三三、こういうわけであります。決して高いどころか、他に比べて相当割安である、こういうことであります。そうだといたしますれば、この金をできるだけ全国的な
電話を普及する方向と、
サービスの向上に使うということは、決して公共
事業体の使命に反するものでない、そういうふうに考えた次第であります。
しかも、問題は、公共
事業体というものをどう考えるかというところにもう
一つ問題があると思うのであります。実は
事業の
公共性というものは、単にこれまで政府が出資しておるとか何とかいう、政府が経営しておるものばかりではないのでありまして、私企業にゆだねられておる銀行も、すでにわれわれは
電話や何かに劣らない
公共性を持っておると見るべきだと思うのであります。私鉄がやはりそうであります。その他、規模が大きくなりますれば当然に——電力も今までそう考えられておりますけれ
ども、その他のものも
公共性をだんだん大きく持っておるのであります。問題は、
公共性というものが、
利益でこれを建設に使うということが
公共性に反するかというと、問題は使い方なんです。
利益のために使うのか、今のようにできるだけ
電話を普及する、そういう建設が、実はそろばんに乗らないのだ、
利益は何もないのだという面にも使う、単に
利益があるところに
集中して使うという、これは公共体の使い方ではありませんけれ
ども、しかし、その方面にどんどんやるよりは、たとえば
東京辺で伸ばす方が有利だと思っても、全国に普及さすという建前で投資する、こういうことであれば、これは
利益から投資したのだからといって、決して公共体としての使命に反するものでない、そういうふうに考えて、大体現在の収入を動かさないという原則——しかしあとで述べますように、これを
改正しますと、ある部門には、今までの事情のもとででき上がった賃金と新たなものとの間に、かなり高くつくという地域が出て参りますので、これは
公社がある点の
減収を考えても、当然その差を縮めるべきだという意味合いにおいて、われわれ
公社に大体約三十億円の
減収をしても、そういう面の差をできるだけ小さくする、そういう意味において現に提出されておりますような案を考えたのでありまして、その意味においては水準というものを全く考えていないというのではないのでありまして、一応今申しましたような
考え方で、動かさないということが根拠がある、
理由がある、公共体の使命に反しない、そういう意味合いにおいてこういう案に実は私
ども賛成なのであります。
もっとも、今度の
料金体系が真にその効果を発揮いたしますには、全国の
自動化がほぼ一巡しないと、そのほんとうの真価は出ないわけなのであります。過渡期におきましては
手動の部分が残って参ります。これやその他、たとえば準市内
電話というようなものを認めるにしても、何にしても、過渡期におきましてはある種のでこぼこは避け得られないのであります。そこで、実は少なくとも私一個といたしましては、これはもう少し
手動が普及した上でこの案を審議し考えた方がいいのではないかとさえ最初は思ったのであります。いろいろ
指摘されておりますように、三分、一分というようなものを認める、これは全部
自動になりますれば、短時間で済めば相当安く済むわけでありまして、大阪やなんかも、用件だけであれば、今までの
料金の三分の一でも達せられるわけです、今の時間制になれば。また、そういうことばかりでなしに、実は私一個としては、
東京市内にも時間を限った方がいいんではないかという
意見であったのであります。今
東京市内は、極端にいえば五時間話してもいいわけです。本人はそれでいいでしょうが、そのためにその線が一ぱいになって、ほかの使用者は話し中になる。その線が詰まってしまう。相手は話し中でなくても線が一ぱいになれば話し中になる。そういうような
電話のエチケットというものが全くできていない。それには時間を限る方がいいとさえ思っておったのでありましたが、しかし
現状では
設備の都合その他でできない、こういうことであったのでありますが、でき上がってしまうと、いろいろ
指摘されておる
手動の区間のでこぼこというものはなくなるのでありますが、これはどんな改革におきましても、過渡期においてある種のそういう問題が起こるということは、これはやむを得ないのでありまして、できるだけその摩擦を小さくする、それに
努力し、その範囲にとどめるほかはないのであります。が、そういう過渡期の
一つのでこぼこをあえて冒して、早急にこういう
料金体系をきめる必要があるかないかということが問題なのでありますが、これは今のなりで進めていくというと、
現状のシステムのもとの
設備その他がどんどんでき上がって参る。これは非常に金がかかるわけであります。その暁において、全国的に
自動が今のシステムのままで相当でき上がった上で、今度は全国的に最も適した
料金体系を作ろうとすると、その間に非常なむだが生ずるのであります。ということは、
一つは
電話の普及をおくらせます。
一つは
電話の
料金のコストをだんだん上げてくる、こういう形にもなる。従って
サービスが低下する、こういうことにもなるわけであります。一番大事なことは非常なむだが出るということであります。
そこで、今ようやく
自動の準備が進み、ある点まで緒についた。この現在の時点において、早めに——といっても実はおくれていると思うのですが、ほんとうの意味においては、少なくともこの時点においては、これをおくらしてはならない。過渡期の各種の今言ったようなでこぼこがある。それよりも早くこのシステムを確立する必要がある。そのシステムの上で今後の拡張
計画を進めなくちゃいかない、その要求が強いと私は見たのであります。そうすると、今申しましたような過渡期のある点までのでこぼこは極力それを少なくするという
努力をしながら、ある点までは万やむを得ない、こういうふうに見るほかない、こういう
考え方に落ちついた次第であります。
そういうわけで、現在のところ、提出されております
料金体系というものは、私一個の
考え方でいえば、これはまだ完全でないと思うのです。これは
自動通話が、全国に一巡
完成した上には、もう一応考え直すべき問題をかなり持っておる。しかし、それはでき上がってしまわないと実行できないのであります。それは今からそれが不完全だからといって今これを延ばすよりは、そういう問題は一巡してでき上がった上で、もう一応考える、それがいいのではないか、そういうふうに思う次第であります。
以上の意味におきまして、私はこの案に賛成するものなのであります。