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政府委員(
大竹民陟君) ただいま総務長官から申し上げました通りでございますが、この
法律案の
趣旨及びその概要につきまして補足的に御
説明申し上げます。
歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島及びこれらの
北方地域には、もと約三千世帯の者が居住し、その大
部分はコンブ、サケ、マス等を目的とする漁業に従事しておりました。すなわち、これら大
部分の者は
北方地域において旧漁業法に基づいて免許された漁業権に基づいて漁業に従事いたしておったものでありますが、さらにこの地域の専用漁業権につきましては、本土側の漁業会により設定されました入漁権に基づいて入漁いたしておりました本土側の漁民も多数存在いたしておるのでございます。この
法律案では、以上の者を
北方地域旧
漁業権者等と称しておるのでございます。
本土におきましては、御承知のように、戦後、漁業
制度改革が行なわれまして、これに伴い旧漁業法に基づく漁業権及び入漁権に対しまして補償金の交付による消滅の
措置がとられたのでございますが、
北方地域の地先漁場における旧漁業権及び入漁権につきましては、
北方地域に
わが国の施政が及ばないことの帰結といたしまして、漁業
制度の改革が
実施できませんでございましたため、補償金の交付は行なわれておりません。
北方地域の旧
漁業権者等は、元
居住者という観点から申しますならば、
北方地域へ復帰することができないという状態にございます。旧漁業権者及び入漁権者という観点からいたしますれば、漁業権補償の対象にもなっておらないという状況でございます。さらにまた、
北方地域の地先の漁場はきわめて優良な漁場でございますが、今日安全に漁業を営むことができないという特殊な地位等に置かれております。
北方地域は
わが国固有の領土でございますが、
わが国の施政が及んでいない事情や、またこれに基因して
北方地域旧
漁業権者等がただいま申しましたような特殊な地位に置かれていること等にかんがみまして、これらの者の営む漁業その他の
事業及びその生活に必要な資金を低利で融通する
特別措置を講ずることとし、そのための機関といたしまして北方協会を設立し、これに対し国が所要の資金の交付を行なうことといたしたい、またあわせて
北方地域に関する諸問題の解決の促進に資して参りたい。これがこの
法律案の大略の
趣旨であります。
次に、この
法律案の内容について概略御
説明申し上げます。
まず第一に、この
法律による
特別措置の対象となります
北方地域旧
漁業権者等、これの範囲を具体的に申しますと、その一は、
北方地域の地先水面について旧漁業法に基づく専用漁業権またはこれを目的とする入漁権を有しておりました旧漁業会または旧漁業組合の会員または組合員として、これらの専用漁業権または入漁権に基づき
昭和二十年八月十五日において漁業を営む権利を持っておりました
個人でございます。その二は、
昭和二十年八月十五日において、
北方地域におきまして旧漁業法に基づく定置漁業権または
特別漁業権の免許または貸付を受けておりました
個人並びにこれらの漁業権の免許または貸付を受けておりました
法人の構成員または出資者である
個人でございます。その三は、
昭和二十年八月十五日まで引き続き六カ月以上
北方地域に生活の本拠を有しておりました一般元
居住者でございます。その四は、以上申し上げましたうち一及び二に該当する者が死亡いたしました場合には、その死亡の当時における配偶者、子供及び父母のうちに以上の場合に該当する者
がいない場合に限って、そのうち一人の者が対象となるという仕組みになっております。
第二に、との
法律による
特別措置の
実施の機関といたしまして北方協会を設けることにいたしております。これに対し、
政府はその業務の財源に充てるための基金といたしまして、十億円を、償還期限十年、利率年六分の国債をもって交付することといたしております。北方協会は、この基金によりまして
北方地域旧
漁業権者等に対する低利資金の融通並びに
北方地域に関する諸問題の解決の促進をはかるため必要な調査研究及び啓蒙宣伝の業務を行なう
法人であります。協会には、役員といたしまして会長、副会長、理事及び監事を置き、主務大臣がこれを任命することといたしております。協会の定款及び業務方法書並びに財務会計上の主要事項につきましては、主務大臣の認可または承認を要するものといたしてございます。なお、協会の会長の諮問機関といたしまして、協会の業務の運営に関する重要事項を調査審議いたしますために、協会に評議員会を設け、評議員は
北方地域の旧
漁業権者等及び協会の業務に関する学識経験を有する者のうちから主務大臣が任命するということにいたしております。
第三に、協会の業務について申し上げますと、まず低利資金の融通の業務でございます。その第一は、
北方地域旧
漁業権者等に対するその営む漁業その他の
事業またはその生活に必要な資金の貸付でございまして、これは協会が直接これらの者に対して貸付を行なう場合もございまして、またこれらの者が属しております漁業協同組合その他の団体を通じまして転貸という形をとる場合と、両方が予定してございます。第二は、
北方地域旧
漁業権者等がおもな構成員または出資者となっております
法人の営む漁業その他の
事業に必要な資金を貸し付けるということでございます。この
法人といたしましては、会社組織のものと協同組合組織のものと両方を考えております。第三は、市町村に対する貸付でございますが、市町村が
北方地域旧
漁業権者等の福祉の増進をおもな目的といたします
事業を施行するための資金が対象となっております。以上申しました資金融通の業務のうち、第一と第二につきましては、協会の事務の
軽減をはかる意味で、金融機関に対しまして協会の業務の一部を委託することができるという道を開いております。次に、調査研究及び啓蒙宣伝の業務についてでありますが、この点につきましては、
北方地域に関する諸問題の解決の促進をはかるため、必要な調査研究及び啓蒙宣伝を行なうことといたしております。
最後に、雑則的な
規定についてでございますが、まず協会の解散及び解散した場合における残余財産の処分につきましては、別に
法律で定めることといたしております。これは一般の特殊
法人の解散の場合と同様な
規定でございますが、将来
北方地域の施政が回復いたしました場合に、協会の存立目的が達成され、協会が解散をするという事態が生ずることがありますならば、その場合には
北方地域旧
漁業権者等の利害について十分な考慮を払いつつ、協会の残余財産の処分等につきまして定めるようにいたしたいという考えでございます。以上のほか、協会の設立手続に関する
規定、
法律施行当初の経過
規定等を設けております。
以上が本
法律案の
趣旨並びに概要でございます。
補足説明を終わります。