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1961-03-29 第38回国会 参議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月二十九日(水曜日)    午後一時三十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大竹平八郎君    理事            上林 忠次君            佐野  廣君            成瀬 幡治君            天田 勝正君            天坊 裕彦君    委員            青木 一男君            岡崎 真一君            梶原 茂嘉君            西川甚五郎君            林屋亀次郎君            堀  末治君            前田佳都男君            前田 久吉君            荒木正三郎君            野溝  勝君            須藤 五郎君   政府委員     大蔵政務次官 田中 茂穂君      大蔵省主税      局税関部長 稲益  繁君      通商産業省      通商局長  今井 善衛君   事務局側       常任委員       会専門員 木村常次郎君   説明員      農林省振興      局特産課長 西村 周一君      食糧庁業務      第二部長  村田 豊三君     通商産業省通商     局通商参事官 村上 公孝君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○関税定率法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○関税暫定措置法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○関税定率法の一部を改正する法律の  一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから委員会を開きます。  関税定率法の一部を改正する法律案関税暫定措置法の一部を改正する法律案関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案一括議題といたします。  質疑のある方は御発言を願います。  なお、政府側より田中政務次官稲益税関部長村上通商参事官村田食糧庁業務第二部長が見えております。
  3. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 初めに、緊急関税の問題について若干の質問をしたいと思いますが、この前の大蔵委員会木村委員から若干の質問がありましたが、さらに私も若干の質問をしたいと思います。  第一点は、憲法八十四条の租税法定主義との関係の問題でありますが、関税率審議会の中にも、緊急関税の問題については憲法に抵触する、こういう意見が述べられておるということは聞いていたのであります。早稲田大学時子教授はやはり憲法違反する、そういう意見を述べられておると聞いておるのですが、その違憲の、どういう点を、その御意見の大体の筋道、憲法違反しているという、その点を伺いたいと思います。
  4. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 関税率審議会におきまして、いろいろ御議論はあったわけでございますが、御指摘早稲田大学時子教授でありますか、御意見がありました点は、今回の私どもが御提案申し上げようといたしておりますような形での緊急関税違憲であるという御意見では私はなかったと承知しているわけであります。ただ、こういう措置をとるとするならば、事後において国会承諾を得るというような措置程度考えたらどうかという御意見があったと私は承知いたしております。正面からこれが憲法違反であるというふうな御議論ではなかったと承知いたしております。
  5. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私もその点に若干触れたいと思っておったのですが、この前の木村委員質問に対する答弁としては、外国でもこういう制度をやっておるということでありまして、しかし、私の調べたところでは、外国でもこういう制度をやっておるということは間違いないのですが、今お話しのように、やはり事後国会承認を経るというふうな規定をとっておる。あるいは、ある国においては事後において、国会においてこれを否認するというふうな措置もとっておる。いわゆるやはり租税法定主義というものを非常に尊重しておる。この緊急制をとっている国においても、やはり国会承認というふうな、あるいは国会の不承認、こういう規定を置いて非常に大事に扱っておるというふうに聞いておるわけです。ところが、今度は関税行政に一任される。もちろん、それが恒常化する場合は、法改正をするとかいろいろの措置はありますけれども、やはり立法府というものを軽視している。そうして行政官が勝手にというたら語弊がありますけれども、制限はあるが、徴税できる。こういうことはやはり憲法規定を軽視しているのじゃないか、こういうに考えられるのですが、なぜそういう国会承認の問題、そういう点を考慮されなかったかどうか、なぜ、そういうことをことさら避ける、そういう理由が私にはよくわからないのです。なぜそういう措置をしないのか、聞きたい。
  6. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) ただいま御指摘のありました点は、私どもとしましても、また関税率審議会におきましても、非常に問題になったわけなんであります。もちろん、憲法八十四条の租税法定主義の原則はどこまでも法律によるべきだという趣旨であります。ただ例外と申しますか、「法律又は法律の定める条件」という規定が八十四条にあるわけなんでありますが、この「法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」、この意味におきまして、私ども例外的な措置としては、条件をきびしく定めまして、その範囲内であれば行政府が授権されるということも憲法違反ではないという解釈、これは内閣法制局とも十分検討いたしました結論として出たわけであります。  問題は、その必要性がしからばどの程度のものかということにかかって参ろうかと思うのであります。御承知のように、関税と申しますと、一般の租税と若干性格が違いまして、国際的と申しますか、国際的な経済変動といったようなものをある程度これで遮断すると申しますか、防ぐといった機能を持っておるわけなんであります。もともと、国内産業を保護するという使命があるわけなんでありまして、そういった関税特殊性、非常に国際経済に密接な関連がある。従いまして、こちらで予期しないような国際経済の非常に変動ということが予想されるわけであります。そういたしますると、どうしても非常に緊急な措置が、暫定的ではありますが、必要になって参るわけであります。今回私ども考えました緊急関税制度におきましても、従いまして、非常に限定をいたしまして、発動する場合を極力狭く条件をきびしくいたしまして、海外における価格低落等によりまして輸入が急増するということがまず第一の要件であります。第二の要件といたしましては、同種のものを生産しております国内産業が重大な損害を受けるか、あるいは少なくもそのおそれが非常に強い、そういう事態においてでなければならない。それからなお、最終的には、国民経済全般をながめましてそれが緊急な必要性があるという判断が下せる場合に限る、というように非常に条件をしぼったわけであります。そういたしまして引き上げをいたします場合の引き上げ限度につきましても、内外の価格差限度とするということにこれまた限定をいたしておるわけであります。従いまして、そういった非常に限定された範囲内のものであるならば、先ほど申し上げましたような憲法八十四条には抵触することはない、例外として認められてもやむを得ないであろうという考えであります。  それから、諸外国の例でありますが、御指摘のように、国会の、事後でありますが、承諾を得るという形の立法をやっている国がございます。具体的にはイギリス、フランスがさようであります。それから西独の場合には若干形が変わっておりまして、非常に簡易な国会手続で、何と申しますか、法律ではありますが、政令に近いような形の法律、逆に国会におきます何と申しますか、審議期間その他につきまして制約があるという形のものであります。ところでアメリカ、それから豪州、それからカナダ等におきましては、ちょうど私どもが今回提案申し上げましたような、非常に限定された形で行政府が授権されておる。従いまして、この場合には国会承諾事後におきましても必要としないという形の立法をいたしておるわけであります。さきにも申し上げました英国なり、フランスなり、西独の場合というのは、非常に授権的な幅が広いわけなんであります。そういう場合に事後承諾を必要といたしておるわけであります。今回提案申し上げました私ども改正案におきましては、先ほど申し上げましたように、非常に限定をいたしておりまして、大体アメリカなり、カナダなり、豪州なりの方式にならった、かようにいえるかと思うのであります。
  7. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 きびしい条件をつけるからそれでいいんじゃないかというふうな御意見のようでありますが、しかし、問題は、きびしい条件といっても、これを判断するのは行政府ですね。緊急性があるかどうか、そういう判断をするのは行政府であります。で、結局行政府に一任される、こういうことになるわけです。そうすると、これは憲法八十四条の趣旨と、やはり違反であるか違反でないか、そういう点の法律的見解、これは私のようなしろうとにはよくわからないところであります。しかし、わかることは、その精神なり趣旨とするところとは若干離れてきている、こういうことはいえると思うのですねしですから、こういう措置をする場合には、やはり慎重に国会審議を、事後においても国会審議を得るというふうな措置をとっておく方がいいんじゃないか。緊急性に対処するために、何ら差しつかえが起こるわけではない。とすれば、やはり事後において国会審議を待つというふうなことをすることによって八十四条の精神を生かすことができると私は思います。  私が一番おそれておるのは、こういう行政府にそういう措置をゆだねるということは、悪い言葉ではありますが、官僚統制の復活というおそれがないとは私は言えないと思う。ですから、やはりそういう慎重な態度をとることについて何か悪いところがあるのですか。先ほどの説明では、事後国会審議を受けるということについて何か工合が悪いというふうな点があれば、おっしゃっていただきたいと思います。
  8. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 工合が悪い点という意味でありますと、私ども一番懸念いたしますのは、一応まあ事後承諾をするという点に限って申し上げたいと思うのでありますが、先ほど申し上げましたような緊急事態が起こりまして、緊急関税発動する必要があるという場合に、非常に急を要する場合が多いかと思うのであります。そういたしますると、事後承諾ということになりますると、一応政府の方で発動いたしますと、一番近い国会でその事後承諾をいただく。そういたしますると、その承諾が得られるまでの間、もし承諾が得られない場合に行政府の行ないました緊急関税発動が当初から無効になるということになりますか、あるいは規定の仕方によりましては、承諾が得られなかったときから効力を失うということになりますか、二つの道があると思うのでありますが、いずれの場合にいたしましても、緊急関税発動によりまして、一応これを前提として行なわれております取引関係が、国会承諾が得られて確定するまでの間非常に不安定の状態に置かれるという懸念が、これは審議会におきましてもいろいろそういう趣旨の御議論があったわけであります。従いまして、この際はやはり、先ほど申し上げましたような限定された条件のもとで授権をしていただくという関係から、事後承諾ということは今回はなしにやらしていただきたい、かような趣旨であります。
  9. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、事後において国会承認を求めた際にはたして承認が得られるかどうか、そういう点について疑問がある、そのためにいろいろ不安が起こってくる、こういうのですが、今の日本は政党政治ですよ。政党政治だから、事後国会承認を得るという形になっておれば、やはり政党との関係等事前に協議されて、そうして態度が慎重になると思うのです。これはあくまでも慎重にすべきです。元来、法律によって定むべきところを行政府に一任する、こういうことなんですから、やはり事前に十分に慎重にやるということは、これは事後国会承認を得るという形にしておく方が慎重にやられる。また、政党政治であって、これは事前に十分連絡できるのでそういう心配は私はないと、かように思うのです。そういう点から考えて、今の税関部長説明では、あとで不安が残るので困るという理由で、それがたった一つ理由であるならば、事後承認を求めるという方向の方が正しいのじゃないかと思うのですがね。
  10. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) この一番大きな理由という意味で申し上げたのでありますが、いろいろそのほかにも実は理由と申しますか、かようにしていただきたいと申し上げる根拠があるわけなんでありますが、いま一点申し上げたいと思いますのは、国会追認が、事後承諾が必要だということになりますと、実は緊急関税は非常に暫定的なものとして考えておるわけなんです、その改正法案にもございますように、「当該措置を相当な期間をこえて継続する必要が生じたときは、すみやかに別表改正をしなければならない。」、「別表改正をしなければならない。」と申しますことは、この関税定率法を変えなければならぬということであります。従いまして、私ども大体「相当な期間をこえて」という相当な期間を、一応はおおむね一年程度というように考えておるわけなんであります。従いまして、緊急関税発動いたします際には非常に暫定的なものである。もしもそれが一年をこえて継続する必要があるというような場合にはもちろん法律改正いたしまして、別表改正という姿で御審議をいただくわけなんです。さような考慮を加えておるという点が一点あるわけなんでありますが、そういたしますと、緊急の事態において発動されましたものが暫定的でありますがゆえに、また撤回する場合もかなり早く参ると思うわけなんであります。従いまして、その撤回についてまた国会承諾が要るというような形になって参る。両面から制約が出て参るという点が、私どもとしまして、事後承諾を必要とするということになりますると、どうしてもこの緊急関税の一番重要なポイントであります機動性を失わせるおそれがある。この危険がいま一つ理由であります。  それから、これは例がないからといって、別に決定的な理由にはならないわけでありますが、私ども調べました限りにおきましては、わが国の場合には委任制度についての国会追認を必要とするという例は従来立法例にもないようでありまして、従いまして、今回も以上申し上げましたような諸般の理由から、国会追認を必要としないことで措置をさしていただきたいと、かように考えておるわけなんであります。
  11. 須藤五郎

    須藤五郎君 関連。あなた、とんでもないことを僕は考えているように思うのですよ。とにかく緊急にやってしまって、そうしてあと国会承認を得られないおそれがあるということを前提にして、こういう緊急措置をやろうとするようでありますが、国会は何なんですか。国民代表ですよ。国民代表から賛成を得られないようなことをあえてやろうというこの僕は心がまえというものは、許すことができないことと思うのです。なぜそういうことを考えるんですか。あなたたちほんとうに正しいことをやり、それが妥当なことなら、国会承認するでしょう。しかし、国会承認を得られない場合があるからということで、事後承諾国会に求めないということは、これは国会を無視したことじゃないですか。国民代表を無視したことになりはしませんか。とんでもない考え方だと私は思うのです。
  12. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) あるいは私の言葉が足りませんで誤解を受けたかと思うのでありますが、さような趣旨では毛頭ございません。
  13. 須藤五郎

    須藤五郎君 趣旨でなければ何だ。
  14. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) そういう場合も全然ないということも言えないという意味において、私その可能性も全然否定するわけにはいきませんから、そういう趣旨で申し上げたわけであります。
  15. 須藤五郎

    須藤五郎君 全然ないといったって、やはり国会承認することは、これは国民承認することで、正しいことです。絶対必要なことでしょう。あなたの言葉の裏には、国民を否定しているじゃないですか、国民意思を。そういうものの考え方というものは許すことができませんよ。どう答弁するんですか。
  16. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) もちろん、国会で私ども承諾をいただけないというようなことを前提行政をやるわけでは全然ございません。おそらくはもう私どもがやりますことは承諾をいただけるという前提のもとにやるわけでありますが、ただいまここに法律論として、事後承諾制度を設けますと、そういうことも考えられるという意味におきまして、かたがた前例もなく非常に限定されたものであって、憲法八十四条の場合によっても「法律の定める条件による」ということで、憲法違反ということにもならないわけです。従いまして、最小限度のところで受権をしていただく、かような趣旨であります。
  17. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 須藤君に申し上げますが、発言中ですが、関連なら……。
  18. 須藤五郎

    須藤五郎君 関連です。もう一つ、あなたたち心配しているが、たとえば国会事後承諾を得られなかったとしても、その得られなかったことが正しいじゃないか。それが国民総意なら、その方が正しいんじゃないか。その正しいことを、国民総意を否定しようというのはどういうことですか。そういうものの考え方というのはおかしいじゃないですか。正しいことなら国民承認するのですよ。そうでしょう。それが承認を得られない場合を仮定してこういうことをやっているのが、そもそもおかしい。国民意思を否定していることじゃないですか。どうお考えですか。どうしても納得できないです。
  19. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) お答え申し上げておりますのは、国会承認が得られる得られないという点を主として問題にしたわけじゃなかったわけでありまして、その間一応法律効果と申しますか、行政効果と申しますか、緊急関税そのものが不安定な状態にあるということが主として問題になったわけでございます。それを避けるために、御提案申し上げておるような制度にしていただきたい、かような趣旨であります。
  20. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなた、今、国会承認を得られるかどうかはわからないということを前提として話していないと言っているけれども、さっきからそれを前提として話しているのですよ。こうこうやったと。あと事後承諾を求めるときに、国会承認を得られないような場合に混乱が生じるから、だから困るんだといって、国会承認を得られるか得られないかということを前提として話をするから、僕はこういう話をしたのですよ。それが前提でなければ何の意味もないじゃないですか。何のために事後承諾をそれでは求めないのですか。国会承認を求めるということを明らかにするなら、それならば事後承諾を求めたって差しつかえないものでしょう。ある場合に、承認を求める場合にこういう混乱が生じるから困るから、承認を求めなくてもできるようにするのだと、これがあなたのさっきからの論法ですよ。だから、僕は怒るのですよ。いわゆる国会承認を求められないようなこと、国民代表承認をしないようなことを、行政官がやっていいのかどうか。そういう抜け穴を作ろうというのがあなたたち考え方です。これはやはり国会としては許すことができないじゃないですか。私たち国民代表して意見を述べているのです。あなたは前提としないと言っているけれども、さっきからの速記録をずっと読んでごらんなさい、それを前提としてあなたは話している。どらですか。
  21. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 国会承認が、まあ私も言葉が足りなかったかと思いますが、承認が得られないというふうなことを前提として、私どもふだんの行政は全然やっておらないわけであります。当然御承認をいただけるものだという線でやっております。
  22. 須藤五郎

    須藤五郎君 それなら、事後承諾を求めたらいいじゃないですか。
  23. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) ただし、先ほど言葉が足らなかったかもしれませんが、要するに、私申し上げたいと思いますのは、輸入取引のある時期において不安定な状態を、つまり確定しないわけなんでありますから、国会承諾が必要だということになりますと、政府発動いたしました緊急関税が確定をしておらないわけです。そういう意味におきまして、まあ取引上に不安定なと申しますか、輸入取引のまあ安全と申しますか、そういうものを書するおそれがある、こういう意味におきまして、行政府で、つまり行政府限りできめました場合と、国会事後承諾が必要だときめました場合におきましては、やはりそこに法律効果としましては国会承諾があるまでは確定しないわけなんです。そういたしますと、やはりそこに輸入取引の安全と申しますか、そういうものに対して不安が残る、こういうことを申し上げたのであります。
  24. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでも私は納得できないです。それは行政府立法府に先行するということですよ、あなたの考え方は。とにかく立法府意見などは求めないで、自分たち先にやってしまおう、その方が自分たちに都合がいいと、そういうことに尽きるわけですよ。そういうことは非常に危険ですよ。そういうことはなすべきことじゃないです。あなたたちほんとう確信があって、これは立法府ほんとう承認が求められるものだという確信さえあるならば、そんな危惧の念を持つ必要がないのです。何も混乱を来たしませんよ、事後承諾ですから。前に承諾を求めなければできないというようなことなら、時期とかいろいろな問題が起こってくるかもわからぬ。しかし、事後承諾なら、そんな懸念も何もないわけですよ。それを事後承諾を求めるとどうのこうのとへ理屈をつけておるけれども、それは結局立法府を軽視して、国民を軽視していることです。そして自分らで勝手なことをやろうと、こういうことに尽きるのですよ。幾ら陳弁しても、その点納得できませんです。ごまかしの陳弁にすぎないです。
  25. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題は、私も税関部長説明では釈然としないわけですが、私の一番おそれるのは、やはりこういう関税を動かす場合に、行政府が独断でやるということは、やはり官僚統制に陥る危険があるというふうに考えておりますから、私の質問趣旨は十分慎重に考慮してもらいたいと思うのです。  それから、次の問題は、やはりこれも憲法との関係が問題になるのですが、輸入映画、それから書籍等の取り扱いについて、まあ従来よりも若干規定を強化することにはなっております。まあそういう意味では若干前進しているとも言い得るのですが、しかし、基本的にはやはり憲法の二十一条、いわゆる表現の自由の保障、この規定から見て相当問題があるんじゃないかというふうに私も考えておるわけです。この問題はこの前の委員会でも質問がありましたから、簡単にしておきたいと思うのですがね。関税率審議会の中に、これは参与という役職があるのですか。
  26. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) いや、ございません。
  27. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ない……。私も若干問題について事情を聞いたんですが、宮沢教授ですね、これは関税率審議会参与か何かしているんじゃないですか。
  28. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 法制局参与……。
  29. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 いや、それは私の思い違いでした。法制局参与ですか。私はこの宮沢教授意見をこの問題について読んだことがあるのですがね。宮沢教授意見はやはりこの規定憲法違反していると、こういう判断を下しておられるのですがね。このことについてまあ政府考えですね、こういう有力な方が憲法違反であるというふうに判断をしておられるのに、なぜ政府はこういう規定を作っておるかというところに私問題があると思うのですがね。説明をしてもらいたいと思います。
  30. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 定率法の二十一条そのものと申しますか、これが憲法違反ではないかという、いわゆる検閲の規定違反するという御趣旨だと思います。私ども宮沢教授のそういう所説は拝見いたしております。なお、宮沢先生以外にもそういう学説を発表しておられる先生方もあるわけですが、ただ、私どもこれはまあ法制局と十分打ち合わせ、検討した結論でありますが、結論だけを申し上げますと、輸入品だというところに私どもは論拠と申しますか、あの所説に対するまあ私どもとして納得しがたい、むしろ十分お考えいただきたいという点があるわけでございます。私どもの一応の解釈といたしましては、関税定率法二十一条の規定の——憲法二十一条の言論の自由ということに対して、十二条、十三条から来るおのずから公共の福祉を守るという制約があってしかるべきである。そういたしますると、定率法の二十一条も憲法の二十一条違反ということにはならないという考え方であります。  そういたしますると、これをしからば事前に、そういう貨物の検査というところで、事前に内容を見なくてもいいじゃないかという説があるわけでございます。これに対しましては、私どもとしましては、事前にやる道と、一応輸入を認めまして、通関を認めました上で、そういう該当のものは告発する、そうして司法手続に残すという道と、二つの道が考えられるわけであります。もし後者−後者と申しますか、一たん税関が、輸入は貨物として認めました上で、事後において、その内容が二十一条違反だということで告発をするというようなことになりますると、これは何と申しますか、政府の同じ機関であります税関が、一ぺんは貨物としての輸入を認めながらそのあとにおいてこれを告発するといったような非常におかしな、ちぐはぐな、不統一な意思の表現と申しますか、決定になるわけでございます。これは非常におかしいということと、まあ一面考えますると、そういう映画を輸入される方の方から見ましても、税関が一ぺん通したじゃないか、そうしておいてあとでこれを告発するとはあまりひどいじゃないかという意見が、非常に常識論でありますが、当然出て参るわけであります。従いまして、私どもとしましては、こういう輸入されるものという意味におきまして、そこに重点を置きまして、貨物の検査で二十一条該当であるかどうかということも審査しまして、輸入禁制品でないという確認のもとに通関を認めるという姿にした方が妥当である、かような考えに立っておるわけであります。
  31. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 長い説明でありましたが、中心になる点は、輸入品であるから差しつかえはないんだ、こういうふうに今の説明は要約できるのじゃないかと思う。しかし、宮沢教授はその点にも触れて、やはり輸入品であっても、表現の自由に抵触する、こういうふうに論及をしておるわけなんです。私はここで富沢教授意見を論拠にしてあなたとやるということはちょっとおかしい点があるかもしれませんが、この表現の自由を保障しておるということは、たとえ輸入のものであっても、その輸入されたのを見るのは日本の国民なんです。そういう意味からいって、やはり表現の自由という範疇の中に入るというふうに私は考えるわけなんです。だから、輸入であるかないかということによって差別をつけられる性質の問題でないというふうに私は考えるのですが、輸入であるから差しつかえない、そういうふうな差別はないし、それはあってはならないというふうに考えるのです。
  32. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 先ほど私輸入と申し上げましたが、この関税定率法でこういうことを規定いたしますのは、全然、何と申しますか、社会環境が違ったところで製作される、そういったものでありまして、これがまあわが国で国内で作られるという場合と、非常にその作られる際における環境がいろいろ違うわけなんです。従いまして、そういうものが輸入されるというときにおきましては、その税関、その関門でやはりそういう輸入されるものは検査をするというのが、これは関税の一般的な建前になっております。そこで、先生のお説のように、表現の自由ということは事前の検閲を許さないのだという説に立ちますると、これは根本的に割れるのでありますが、私どもとしましては、それにもおのずから限界がある。そうしますと、その意味で、関税定率法の二十一条が合憲であるということになりますると、あと輸入の際に内容を調べました方が、先ほど申し上げましたような理由で、一ぺん貨物として輸入を認めながら事後においてこれを訴追する、告発をするというようなことをするよりも、きわめて常識的でもありまするし、より妥当性が高い、かような観点から実は解釈をいたしておるわけであります。
  33. 青木一男

    ○青木一男君 ちょっと今のに関連質問。こういう点を研究されたかどうか伺いたいのですが、憲法というものは一体、人的関係で、どういう人に適用されるかという問題に関係あると思うのです。憲法というものは、この日本国民に対するこれは基本法規である。外国人には適用ないと思うのです。それで、憲法国民の自由を保障したという意味は、国民として、一方においては義務を果たしておる。国家に対してはいろいろの義務を果たしておる。そうして一方においては、そういう国民の権利を保護し、自由を保護する、こういう精神で自由権というものが広く認められておると思うのです。ところが、また輸入の映画については、それは多く外国人の作成でしょうが、これは日本の憲法に服従しておらない日本に対して何らの義務も負担しておらない。そういう人が一体無制限に日本の国内における表現の自由を獲得していいものかどうか、こういう点で一つ政府は研究されたかどうか、お伺いしたい。
  34. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 今青木先生の仰せになりましたような点、私どもも……。
  35. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 税関部長に申し上げますが、先に荒木君の質問がございますから、それに対する回答を……。
  36. 青木一男

    ○青木一男君 いや、それは別の——私は関連質問だから、先に答弁していただいて差しつかえないと思うのですが……。
  37. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 青木先生のお説でありますが、私どもとしましては、法制局とその点十分検討いたしまして、いわゆる日本国内においていう意味の自由でございますね、そういうものは憲法でやはり保障されておるということは言えると思います。ただ、先ほどから申し上げましたように、全然社会環境の違いますところで製作されるもの、これに対しては、もう日本の憲法は全然及ばないわけなんです。日本の法令の外にある、そういうところから入って参りますものにつきましては、輸入の際に検討すべきであるということで、かような制度を私どもとしては合法的である、かように考えて参るわけであります。
  38. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題はなかなか法律的な問題になってくるわけですがね。結局、映画にしてもですよ、書籍にしても、どこの国で作られようと、だれに作られようと、それは問題にならないのじゃないでしょうか。ただ、日本に入ってくる場合、これがわいせつなものであるとして、日本の国民に非常な弊害を与えるというときに問題になるのじゃないですか、その内容によって。どの国で作ろうと、どの国で作られようと、そういうことは私は関係がないと思うのです。そういうことに制限とか、影響とか、そういうことは全然ない。おそらくこれらのわいせつなものは、入ってくる前にですよ、日本のこれを見る者、あるいは読む者、その日本国民に非常な悪影響を与えるという場合に、私は問題になってくると思うのであります。そこで、法律論よりも、実際論としてもう少し話をしたいと思うのですがね。  そういうものが入ってくると、そこで、税関ではそれを検閲する。これはわいせつである、だから没収すると、そういうことになってくるわけなんです。で、その判断をするのは、まあここでは審議会ですが、今度は審議会を、輸入映画審議会を設置すると明文化する、こういうことです。まあそれにかけてその判断によるが、しかし、これは全部行政的な措置ですよ。しかし、わいせつであるかどうかということは、行政的な措置によって決定はされない。これはまだわいせつであるかどうかということは、やはりこれは刑事上の手続を経なければ、その決定はなしがたいのじゃないですか。その点を私は特に言っているわけなんです。それは公共に弊害を与える、国民に非常な害毒を流す、これをいわゆる行政的な措置だけで、行政的じゃない、税関の審議会等にかけるとしても、そういうことで没収してしまう。しかし、問題はその内容のわいせつとかなんとかいうことは、これがわいせつとして正式に法的に成立するためには、刑事的な手続を経なければならない。その措置をとらないでやっているところに問題があると私は言っているのですよ。そういう判断を、これはわいせつである、これはわいせつでない、こう分かれてくるわけです。それは判断によって、それはわいせつでないと思われるものでも、わいせつであると判断した場合は、それは没収されるわけです。そういう結果になってくるわけです。だから、これはやはり憲法二十一条に抵触しないというふうに考えるためには、少なくとも税関において没収するということはこれは工合が悪いと思う。どうしてもこれは法的な手続を経て、いわゆるこれがわいせつ罪として成立するかどうか、そういう刑事上の手続を経なければこれはいけない、こういうことを言っているわけです。
  39. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 先ほどから没収というお言葉がございますが、今回私ども改正案では一方的な没収という規定は削除したわけでございます。今回提案いたしました改正案によりまして、手続と申しますか、これを簡単に申し上げますと、映画なら映画が輸入されまして、税関に申告があるわけです。そういたしますると、税関としましては、通常の商業映画でありますと、買い手を探すために試写をやる。私ども便宜そこで一緒に内容を見まして、この部分は二十一条該当だと思われる場面がありました場合は、その旨を輸入業者に通知するわけなんです。この部分は違反の疑いがあるということを申し上げまして、その結果輸入された方が自発的にそれを承知されて、その部分を削除するとか、あるいは全面的に困ることがある場合には積み戻すという措置を、自発的にとられる場合にはそれで済むわけです。もしそれに対して異議がある、どうしても承服できないとおっしゃる方は、今度は税関長に異議の申し立てをなさるわけです。異議の申し立てがありますると、今回の法律で新たに法定いたしました輸入映画審議会に税関長は諮問いたしまして、その御意見によって、再度この部分はやはり削除していただかないと困るという結論になりました場合は、その旨を通知するわけです。その結果は、結局輸入された方は自発的にその部分を削除されるなり、あるいは積み戻しをされるなり、そういうことになって参るわけなんでありまして、従来の現行法によりますると、実際はやっておらないのでありますが、法律上の建前は没収して廃棄する、あるいは積み戻す、こういう道になっておったわけであります。この点も改めまして、没収廃棄というものはやらない。しかる後に最後には、なおその決定に不服であると思われる輸入業者は、行政訴訟に訴えるという道があるわけです。その場合にも、どこまでも私ども没収廃棄はいたさないという建前で今回は法を改めております。その点は御了承いただきたい。
  40. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 没収廃棄の問題はわかりました。しかし、輸入した映画を、一部を削除するとか削除させる、あるいはこれを買い主に返すという措置をするわけですね。これは没収ではないですが、とにかく日本の国内に入らない。そういう措置を税関限りにおいてやる。もちろん審議会にかけますが、そういう措置憲法違反しているのじゃないか、こういうことであります。それは没収廃棄の点はわかりましたが、こういう措置もやはりその判断は税関がするわけなんですからね。税関がする。しかし、それが税関がするというところに私は問題がある。これがわいせつであるかどうか、これは税関限りでそういう措置をすることは憲法違反じゃないか、こういうことなんです。
  41. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 税関がそういう内容を検査することが憲法違反じゃないかという点は、先ほど申し上げましたように、これは定率法の二十一条がこういう輸入禁制品というものを定めておるわけなんであります。そういたしまして、法的に申し上げますると、関税法の六十七条で、貨物は、輸入された場合にはですね、税関がこれを検査する、そして輸入を許可する、こういう規定があるわけであります。その関税法六十七条の貨物の検査と申しますのは、関税法が税法でありますのと同時に、実は通関法としての建前を持っておるわけなんであります。税法であります限りにおきましては、税関におきましては課税物件を評価いたしまして、それで課税額を算定する、このための検査が一応必要なわけでありますと同時に、今度は税関の今一つの役目といたしましては、いろいろな国内の諸法令でもって許可を要するとか承認を要するとかというような規定がありますものにつきましては、そういうものが適法に、正当にやられでおるかどうか、こういうことも検査をするわけであります。その一部と申しますか、そういった観点から、別途輸入映画等につきましては、関税定率法の二十一条で輸入禁制品というものがあるわけなんでありますから、この禁制品には該当しないかどうかということを検査をする。関税法の六十七条によって検査をする、その際に定率法二十一条の輸入禁制品に該当しないかどうかという点も検査をするということでありまして、そういう意味で税関ではやっておるということであります。  それから、いま一点は、先ほどもちょっと触れたのでありますが、税関がそういうあれをやりますのがもう最終の決定だというわけではございませんで、どこまでも、次には行政訴訟を提起するという司法手続の問題は残されておるわけであります。
  42. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題については、私も憲法上の十分な知識があるわけではないです。あるいは宮沢教授等の意見を読んでみると、確かにこれは大きな疑問があるのじゃないかということを私は考えているわけなんです。特に宮沢教授はこういうふうに言っておるですね、わいせつであるかどうかの認定ですね、これを行政的に認定するということがやはり非常に問題であるということを言っておるわけですね。わいせつであるかどうかの判断が、やはり行政的に認定するべきじゃなしに、刑事的な手続によらなければならぬというのが宮沢教授意見ですね。私もやはり、憲法で保障されている表現の自由というものは重大な問題ですから、若干の疑義があっても、これは解明を十分にしておく必要があるというふうに考えて、私きょう質問しているわけです。ただいままでの答弁では、なお私としては釈然としがたいものがあるわけです。あるわけですが、これは水かけ論のような格好になって、前へ進まない。そこで、私は一応この問題はケリをいたしまして、なお疑問が残っておるということを申し上げまして、次の質問をしたいと思います。  これはきのうの委員会で相当質問があったようですが、私出席しておらなかったので悪いですけれども、一応前から私この問題については質問したい、特にこれは大臣に質問をしたいような問題で、事務当局に質問するのはどうかと思う点もあるのですが、政務次官からできるだけ答えてもらいたいと思います。私は、率直にいって、あれは去年でしたか、予算委員会で農産物の為替の自由化の問題について質問をしたのです。その際に農林大臣は、農産物についての自由化ということは当分やらないんだ、こういうことをはっきり言明しておられた。その中で問題になっておったのは大豆です。大豆の自由化の問題は、予算委員会でも非常に問題になっておった。これについては自由化は当分やらない、こういうはっきりした答弁があったわけです。ところが、今度はこの自由化の中に大豆が出てきているわけです。私としては非常に意外に感じておるわけなんです。どういう理由でそう短い期間政府態度が変わってきておるのか、その点が第一点です。  それから、反対に砂糖の問題ですが、砂糖の問題については、これは閣議決定ではなかったかと思うのですが、関係大臣の協議によりまして砂糖の自由化をやろうという決定は、新聞にも発表されておりました。ところが、今度のこの定率法改正審議されておるときに、砂糖の自由化はやらないんだ、こういうふうに決定、逆に変えてきておる、この理由も明確でないのですね。大豆は自由化をやらないといっていて、自由化をやる。この時期等についてはあと質問をしたいと思うのですが、砂糖は自由化をやるといってきめて、そしてまた自由化をやらない、こういうふうになってきておるその理由、大豆の場合から一つ答えてもらいたいと思うのです。  これは政務次官に答弁を求めることは気の毒なんですが、だから、事務当局でけっこうですが、政務次官からお答えいただいて、順次この問題は答弁をしていただきたいと思います。
  43. 田中茂穂

    政府委員田中茂穂君) ただいま大豆と粗糖の問題につきましてお尋ねがございましたが、今の荒木委員のお話では、大豆は最近までは自由化の対象に入れないというふうにきめておったじゃないかというお話でございましたが、私は閣議に出ておりませんのでその辺の詳細なことは知りませんけれども、大豆の問題は一昨年あたりから農林省あたりでも検討しておりまして、大豆は諸般の事情で自由化の対象にせざるを得ないというふうに農林省も考えて、また大蔵省、経済企画庁あたりでもそのように内々考えておったと私は聞いております。そういうことで大豆は今回自由化の対象にならざるを得なくなったわけでございまして、もう一つの粗糖の問題につきましては、ただいまの荒木委員の御指摘の通り、去年の暮れに三省の間で、農林、大蔵、経済企画庁の三大臣の間で一応自由化の対象にするというような申し合わせができておったことは事実のようでございます。しかしながら、この問題につきましては、政府といたしましても、また農林省といたしましても、事務当局並びに与党の中でも、粗糖を自由化の対象に入れるということにつきましては、国内甘味資源の育成の見地からあくまでも反対いたしておったのでございまして、農林大臣が事務当局並びに与党の考え方ということを御承知なくてと申すのもどうかと思いまするけれども、その辺のことはよく知りませんけれども、まあそういった三大臣の間だけで軽々におきめになったということから非常に反発が出て参りまして、ついに与党といたしましては政務調査会で反対の決議をいたしたのであります。さような事情から、砂糖を自由化の対象に入れることはこれは一応見送るということになったと私は承知いたしておるわけでございますが、なお具体的な点につきましては事務当局の方から御説明いたします。
  44. 村田豊三

    説明員村田豊三君) ただいまの政務次官のお答えで尽きておるのでございますが、事務的に若干補足させていただきますと、大豆につきましては、数年前にも自由化をするという計画があったのでございますが、国内対策その他の関係もございまして、そのときには見送りになりまして、今回は、すでに一昨年来この問題が取り上げられまして、特に昨年の初めに為替貿易自由化促進閣僚会議で大豆の自由化をできるだけ早くやる、またこれには国産大臣の育成に関しまする国内対策も十分予算上の措置等も講じた上でやるという方針が確立しておった次第であります。御承知のように、大豆は実は一部の国だけが自由化をやらないで外貨割当制度になっておりまして、他の大部分の国はすでにAA制になっておるのでございます。さような国と国との不均衡の問題もございまして、それらの調整をはかるということもございまするが、しかし、それよりなお一そう重要なことは、国産大豆がこのために打撃を受けてはならないということで、これにつきましてはただいま御審議いただいておりまする予算案の中に三十億円余りのものが国産大豆の対策として計上をされて、御審議いただいておるというような経過でございます。砂糖につきましては、ただいま政務次官からるる御説明がございまして、あえて、補足を要しないことかと存じますので、省略さしていただきます。
  45. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、今の説明は了解しにくいのですがね。大豆の自由化に踏み切ったのは諸般の情勢やむを得ずしてやったと、こういう説明をされたのですが、その諸般の事情ということを説明してもらわぬと、われわれは理解することがむずかしいのです。それから、砂糖についても、自民党の政調会で自由化は反対だという決定があった、それでやらなかったのだ。——それは自民党でそういうふうに決定されることは、何も私がとやかく言う問題ではないのですが、どういう理由で自由化すると言っておきながら自由化しないようにきまったか、その理由ですね、それをやっぱり事務当局からでもよろしいから、説明してもらわぬと、理解はしにくいわけなのです。大豆の場合ですね。砂糖の場合も大体事情がよく似ていると思うのですよ、国内の消費量全体からいうと、大豆にしても砂糖にしても国内の生産というものは少ないわけなんです。輸入の方がはるかに多いわけなんですよ、そういう意味では両者事情が似ていると私は思うのですがね。いずれもまた、国内の生産を保護する、育成するというふうな面は、若干の相違はあっても似ている点があると思います。それで自由化の方は、一昨年から大豆はやるやるといって、検討しておったというのですが、一体大豆はどこの国からどれくらいの数量を輸入しているか、ちょっと簡単でいいですけれども、おっしゃっていただきたいと思います。
  46. 田中茂穂

    政府委員田中茂穂君) 数量の問題につきましては、あとで事務当局からお答えをすることにいたしまして、大豆をなぜ自由化の対象にするということをきめたかという、諸般の事情ということを申し上げましたが、私の知る限りにおきましては、やはり価格の問題で、安い大豆を国内に入れるということによって油脂原料のコストを下げていく、こういうことと私は承知いたします。  なお、砂糖の問題でございますが、昨日も事務当局からお答えをいたしましたように、昭和三十三年度から政府といたしまして国内甘味資源十カ年計画を立てておるわけでございます。そういうふうに、現在のところ、相当、国内の需要の八割近くというものを輸入いたしておるのは荒木委員も御承知の通りであると思います。まあそういうことで、できるだけ粗糖の輸入を減らして、国内産の甘味資源を育成して、そして少しでも砂糖の輸入量を減らしていこう、こういう見地から、党といたしましても、農林当局といたしましても、そういうことで今日まで来ておったわけでございます。まあ、そういうことで、あくまで党といたしましては、砂糖を自由化の対象に入れるということは、農林大臣が、大蔵あるいは経済企画庁長官と話し合いをされたというものの、あくまでも党をあげて反対いたしたという裏面の実情があったわけでございます。
  47. 村田豊三

    説明員村田豊三君) 御指摘のございました大豆の国別の輸入実績でございますが、大体の大きな数量だけを申し述べさしていただきますが、三十四年度に大体百万トンの輸入をいたしておりますが、そのうち九十五万トンがアメリカでございます。その次に大きいのがブラジルが約三万トン、以下はケニヤが六千トン程度で、大部分がアメリカになっております。
  48. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ですから、私は率直に政務次官に要望するのは、大部分アメリカから買っているといっていいと思うのですね。そこで、アメリカとの関係について、相当アメリカからやかましく言ってきたということをわれわれは聞いているわけなんですね。そういう経緯を率直に話してもらえばよくわかるのですよ。そういうことは全然話をしないでやられるから、ちっともわからない。だから、まあ何ですが、一体近く自由化するというのですが、大体大豆の自由化の時期はいつですか。自由化すれば、関税を三%引き上げるということになっているでしょう。そういう意味からいって、いつ自由化をやるかですね。
  49. 村田豊三

    説明員村田豊三君) 大豆の自由化の時期でございまするが、先ほど申しましたように、手放しで自由化はできませんので、自由化にあたりましては、国産大豆の保護に関しまする特別の法案をただいま国会に提案をいたしております。この法案がもし成立をいたしまするならば、その成立後、実施のための準備期間もございますが、できるだけ早くというふうに考えておりますので、国会の御審議の結果を待ってから実施の日取りがきまる段取りでございます。
  50. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それはちょっとおかしいじゃないですか。おかしいと私は思うのですよ。国会に提案されておるということも知っておるし、それで三十一億ですか、予算を計上しておる。これだけできまりますか、自由化が。むしろ外国との関係が問題になるのじゃないでしょうか。そうすると、今の答弁では、国内法が成立をすれば、それで自由化という諸準備はできておる、ただ手続上の調整だけすればいいのだというふうに考えていいのですか。その点、答弁して下さい。
  51. 村田豊三

    説明員村田豊三君) 大体さようでございますが、説明が不十分だったかと存じます点が一つございます。それは、先ほど申しましたように、国内立法措置といたしましては、純粋に国内的に国産大豆の保護のための措置だけでございまして、一方、自由化に伴いまして、これも国産大豆の保護に関連をいたすのでございますが、関税引き上げを今回は予定をいたしております。その関税引き上げの相手国との最終的な妥結ができませんと、完全な実施ということにならないわけでございます。
  52. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 問題はそこにあるのじゃないでしょうか。大豆が一応一〇%の税率で据え置くということになっておりますがね。しかし、自由化すれば三%ふやして一三%、こういうことになっておるのでしょう。そうすると、アメリカからほとんど大豆を買っておるでしょう。当然アメリカと問題になりますよ。これは問題になっていくということは事実じゃないですか。ガットとの関係上、これはアメリカが三%簡単にのむというふうには考えられない。それについては、日本から見返りにどういう措置をするかということが問題に私はなってくると思うのです。こういうことはずっと前から答弁しておることですよ。そうしてそこの交渉がどういうふうに今進展しておるのか知りません。しかし、相当見返りにアメリカから他の輸入品について関税を下げろというふうな問題が起こってくれば、これは容易でないと思うのですがね。そういう点の見通し等をここで説明してもらわなければ、大豆の自由化というのはいつかということははっきりしてこない。国内法がいかに成立されたって、そんなことは……。国内法はそんなに日にちはかかりません。そういうことじゃないと思うのです。
  53. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) お説の通り、大豆につきましては、ガットの譲許税率がございます。現行の一〇%の特定税率をそのままガットが譲許いたしておるわけでございます。従いまして、今回御提案申し上げております特定税率におきましては、一三%相当の従量税といたしまして、キログラム当たり四円八十銭ということが特定税率の改正をお願いしておるわけでありますが、ガットの交渉が従いまして妥結いたしませんと、実効があがらないわけでございます。従いまして、昨年の九月以降、ジュネーブにおきまして、例のガットの再交渉をずっと継続して参っておるわけなんであります。今日現在の段階で申し上げますと、ほとんどまあ最終的な段階に参っておりまして、ほぼ妥結できるんではなかろうかという見通しがついております。仰せのように、ガットの関税交渉におきましては、いろいろこちらが引き上げますると相手から代償を要求されるわけです。私どもとしましても、もっとも、まあ何と申しますか、日本の経済全般から見まして提供できるというものを幾つか掲げまして、これでいろいろ交渉をやったわけです。交渉の過程におきましては、アメリカ側からもいろいろ要望が出まして、かなり長い期間交渉をしたわけでありますが、今日ではほぼ妥結の寸前まで参った、かように申し上げられると思います。
  54. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、国内から提供するものはどういうものですか。それは言えないんですか。
  55. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 実は、交渉が、御承知のように、ガットの関係は多角的になっておりまして、アメリカとの間で大体妥結の面前まで参っておるわけなんでありますが、ドイツその他との間でまだ交渉がほんとの中間の段階にあるわけです。従いまして、まあ日本がアメリカにこういう品目をこの程度で譲許したと、代償として渡したというふうなことがわかりますと、そちらの関係からまたいろいろひびが参るものですから、できましたらこの席では御勘弁をいただきたいと思います。
  56. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、農業政策についてはあまりよく知らないんです。ここに野溝委員がおられますから、何ですが、砂糖の問題についても、大豆の問題についても、私はしろうとなりに考えている。もちろん、国内産業を保護しなければならぬ。砂糖の場合は特に感ずるわけですが、外国から非常に安いものが入る。で、一方では、国内で生産すれば非常に高くつく。国内産業を育成し、発展せしめなければならぬということはよくわかりますよ。しかし、それも限度があるんじゃないかというふうな私は考えを持っているんです、これはあるいは違った意見が出るかもしれませんがね。そういう意味で、非常に高い関税をかけるとかいろいろの措置は、一般消費者にとってはこれは不利益です。そういう点の考え方というのは非常にむずかしいんじゃないかというふうに思うわけですね、まあ今回は価格差資金ですか、そういうものを出して、国内の生産者には不利益を与えないと、こういう措置をとって、そして自由化をはかろうという一応の準備ができているわけです。まあしろうとなりにこれで準備ができておるというふうに思うんですが、しかし、大豆関係国内関係においてはこういう方針がそれじゃあいつまで続けるのか、はたして大豆の日本の生産価格は国際価格に接近していくような見通しがあるのかどうかですね、そういう点、私は全然わからない。これは、ここでどなたにお聞きしていいのか、ちょっとわかりかねますが……。
  57. 村田豊三

    説明員村田豊三君) 担当の局長がただいま農林省から参っておりませんで、便宜私からお答えさしていただきますが、確かに御指摘の通り、現在の国内産の大豆と輸入大豆との間には相当の格差がございます。そこで、今回とります大豆の自由化に関連いたしまする国内措置につきましても、これが永久に続くということはわれわれも考えておらないのでございまして、できるだけ国産大豆も外国の大豆に対抗できまするように、国内の国産大豆の育成を奨励していく措置を別途とりまして、そうして国産大豆の育成措置の成果と見合いながら、先ほど申しました国内対策の臨時措置というものをやめていくというふうな考え方で、ただいまのところ出発をいたしておるような状況でございます。
  58. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 まあこういう措置をとることによって直接農民が利益をこうむるということであれば、私けっこうだと思うのですがね。しかし、そういうことになるのかどうかですね。まあ回り回ってそういうことになるのだろうと、農民は直接被害を受けないで済むということになるんだろうと思いますがね、中間でこういう金が消えていくということのないように、十分、これはできるだけ農民が直接被害をこうむらない、こういう措置は十分考えてもらわなければならないというふうに思うのです。
  59. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 関連。この前に資料要求もありますし、今のことに関連して、この前のときに十年計画を実は聞かしていただきましたし、それから資料として昭和三十六年度に甘味資源に投与する予算として約三十億五百万円、これはまあ貸金になりますが、大体約三十億投下されるのですが、まあそういうざっと見て、土地改良ですから、ある年限が来れば土地改良をやることは私ないと思いますが、大ざっぱにいって大体投下資本を、この計画で大体七十五万トンの甘味資源を確保するために、大体国費をどのくらいつぎ込まれるかということはお答えできませんか。
  60. 村田豊三

    説明員村田豊三君) 非常にむずかしい問題でございますが、ただいま振興局の特産課長が参っておりますので、特産課長からお答えいたします。
  61. 西村周一

    説明員(西村周一君) 私からお答え申しますが、甘味資源の方はブドウ糖なりカンショ糖その他を含んでおりますので、ただいまのところちょっと申し上げかねますが、北海道のビート糖の生産が将来三十万トンに持っていこうという計画になっておりますが、その計画に対しましては、大体投資総額が約二百七十億ということになっております。
  62. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はあなた方に、その数字がどうだといってあまり責めたくはないわけですけれども、今荒木君が質問しているように、やはり糖価の、いわゆる砂糖の値段というものが下がってこなくちゃならぬという反面があるわけです。片方では国内産業を育成しなくちゃならぬということ、それからもう一つ考えなくちゃならぬ点は、砂糖は、何にしましても、一斤買いますと、約半分は税を負担しておるわけです、消費税あるいは関税を寄せますと。こういう立場から考えてみても、納得のいかないものがあるわけです。これを何とか格子をつけるようにしていくところが非常にむずかしいところであり、皆さん方が努力されるところであります。従って、判断は、単に国内で甘味資源を確保する、それからもう一つは、農民の保護育成だというこのスローガンに対しては、方向に対してはわれわれ異論をはさむものじゃないのです。しかし、ところが、片一方では、今言ったようにそんな半分も生活必需品で税金を納めるようなことはおかしいじゃないか、もっと安くなめさせてもらいたい、こういうこととどうもマッチしないから、もう少しやはり、計画は計画として、もう少し私はお示しを願えたら非常にいいと思うのです。ただ単にビートの問題について二百七十億の資本投下、これは大した金ですよ。これはもうだれが出すかというと、国民が結局払うことになる。砂糖の価格の半分を税金で国へ取られて、またその上に二百七十億というようなお金をビートだけで税金を負担する。国民は大へんな負担だと思う。そういう点について、どういうふうにこれをやっていこうとするのか、そういう点について計画をお示し願いたいと思います。
  63. 村田豊三

    説明員村田豊三君) 御指摘の点まことにごもっともでございますが、長期の計画を立てますことが非常に事柄の性質上むずかしいのでございまして、たとえばお手元にございますこの第一ページの国内甘味資源の生産計画と申しますこの表も、昨日もお断わりをいたしましたように、昭和三十四年に十カ年の長期計画を立てまして、その長期計画についてのこの表は三十六年度分に該当するわけでございます。ところが、昨日もお断わりを申し上げましたように、この計画自身も二年前に作りました計画でございまして、実際に三十六年度、もう間もなく三十六年度でございますが、具体的な実行計画になって参りますと、ややここに掲げておりますことよりも内容に変化が起こりつつあるのでございます。せっかくでございますから、数字にわたりまして恐縮でございますけれども、たとえばテンサイ糖を三十六年度には十八万トンの計画を立てておりますが、これは長期計画の通りでございますが、大体来年度この計画でやって参る予定にいたしております。国内カンショ糖も大体この計画でございますが、その次の(3)にありますブドウ糖四万七千トンとなっております。これは砂糖換算四万七千トンでございまするが、これはまだ確定はいたしておりませんが、ただいま私どもが検討いたしております計画では、約これよりも九千トンばかり増加いたしまして、五万六千トンくらいの来年度の計画になる見込みでございます。これはまだ確定いたしておりません。確定いたしておりませんのでここに載せるのをはばかったのでございますが、大体そんな計画でおりまして、いろいろと内容の変化がありますことを御了承いただきたいのでございます。  それから、直接ただいま御指摘の点に入るわけでございまするが、確かに膨大な国家資金なりを投資、投下いたしまして、問題の甘味の保護有成をやる計画にいたしておりまするけれども、これがもう少し年次的に具体的に計画の上に出てこないかという御指摘でございまするが、これはまことにどうもごもっともな御意見なんでございまするが、ただいま申しましたように、生産計画すらいろいろな事情で変更がございまして、なかなか長期のさような価格面、コスト面の計画は立てにくいのでございますが、一例として申し上げまするならば、この資料の三ページに掲げてございまするブドウ糖工場の建設資金といたしまして、農林漁業金融公庫から三十六年度には五億円の融資を予定をいたしております。これなどはブドウ糖の製造設備の合理化をはかるために農林漁業金融公庫から長期低利の資金を融通いたしまして、工場設備の合理化にこれを充てていくということでございますので、こういう資金は端的にそれが直ちにブドウ糖の生産コストの引き下げに効果として出てくる筋合いのものでございます。こういうふうに具体的に見当のつきますものは比較的容易なのでございまするが、先ほど申しました、振興局特産課長から申し上げましたテンサイの育成のための生産基盤の整備でございまするとか、あるいは栽培改善のための経営合理化事業でございますとか、ここにあがっておりますような項目は、それが直ちにコストは何円はね返ってくるかということにつきましての計算が非常にむずかしいような次第でございます。その点御了承をいただきたいと存じます。
  64. 野溝勝

    ○野溝勝君 今、業務部長からの話では、甘味資源の生産計画の問額ですが、なかなか長期計画は立たないと、たびたび変わってくる場合があるので、そういうことを承知してもらいたいと。これは二年前の計画だと、こう言われるのですが、この際特産課長からお聞きするのでございますが、そんな計画でおるとするならば、ビートの割当計画を製糖会社に割り当てすること自体がおかしいと思うのでございます。こういう点は農林省と折衝されたのですか。たとえば北海道の日本甜菜会社は、私が初代農林委員長のときに、日本の甘味資源、特に砂糖資源を開発のため大いに培養助長しなきゃならぬということで、当時与野党一致の方針をきめ、会社も大きな犠牲を払われたわけです。そこで、鋭意努力をされまして逐次成果があがってきましたけれども、依然として国民生活の需要量にはてんで達しないわけです。しかるに、今話を聞くと、この甘味資源の培養、これはけっこうなんですが、特に代表的なものはテンサイだと思うのです。まだ生産計画も完全なものでない、たびたび変わるというお話です。ところが、北海道に行きましては、そういう当局が長期計画が立たないと言われておるにもかかわらず、各製糖会社がわれもわれもと乗り込んでいって、開拓者の日甜の意向を無視し作付地帯割当をやったわけです。御承知のように、内容的にはあまり詳しく言いませんが、長期計画が立たないものをなぜ無暴な割当を認めたのか。これは事業体の問題だけでなく、農民も先々不安なわけなんです。
  65. 西村周一

    説明員(西村周一君) 北海道のテンサイにつきましては、これは一応八カ年の計画を立てまして、三十五年度を起点にいたしまして計画を立てておりまして、三十五年度の面積が大体四万三千ヘクタールでございまして、それに対しまして三十六年度が四万七千五百ヘクタール、三十七年度が五万三千ヘクタール、三十八年度が五万八千ヘクタール、三十九年度が六万三千ヘクタール、四十年度が六万七千ヘクタール、四十一年度が六万九千八百ヘクタール、四十二年度七万二千八百ヘクタール、こういう生産計画を立てておりまして、三十五年度も、三十六年度の本年度の作付面積も大体こういう計画の線に沿って確保できるという予想が立っておるわけでございます。そういうことで、一方ヘクタール当たりの収量もだんだん上げて参りまして、四十二年度には、ただいまが大体ヘクタール当たり二十五トンくらいの収量でございますが、四十二年度には三十トン近いものに持っていく。そういうことで、先ほど申し上げました北海道におきましては、大体年間三十万トンの砂糖を作り上げたいという、北海道に関しましては計画を立てまして、この計画を目標に進んでいきたいと考えているわけでございます。
  66. 野溝勝

    ○野溝勝君 関連質問でございますから、私はこの問題で長く質問はいたしませんが、ビート割当は北海道だけだと言われたが、そうすると、各県でも作付計画を立てているのですが、それはどういうわけか。たとえば青森県にしても、長野県にしても、最近むちゃくちゃにビートの作付奨励の方針を立てているのでございます。政府はビート買い上げ量と見合いでの生産計画もないのにあまりにもでたらめではないか。農民に対しては裏づけのない方針は結果として損害を与えることになると思うが、そういう点はどうなんですか。
  67. 西村周一

    説明員(西村周一君) 北海道を除きます府県のビートにつきましては、昭和三十一年から試験、試作の段階に入りまして、大体、北東北、それから長野県、それに瀬戸内に面しました府県及び北九州の一部と南九州につきましては、大体技術的に見通しがついて参りましたので、その時点におきまして、われわれとしては一応今後の生産の伸びというものについての見通しを持っているわけでございます。昨年は、府県全体の栽培面積が約二千三百町歩ほどございましたが、本年度は、府県から種子を申請して参っております面積を合計いたしますと、大体八千町歩くらいのものになっているわけでございますが、私の方では、八千町歩はちょっとなかなか無理じゃないかということで、一応六、七千町歩くらいを目標にして生産指導をやっていく、かように考えているわけでございまして、本年につきましては、何分新しい作物でございますので、試験研究、試作、それから普及奨励という、この三つの段階を経て、有畜農家を中心にビートの奨励をやっていきたい、かように考えております。
  68. 野溝勝

    ○野溝勝君 もう一つ聞いておきたいことは、将来二百七十億の資本投下をやる予算でいるらしいのですが、先ほど荒木委員からも質問されたように、実際生産農民のためになるならいいのですけれども、この甘味資源を作るために、かえって政府の意図するところとは違って、この予算目当に大きな砂糖精製資本家が、この展望に立って工場をどんどんと拡張していますね。買い上げ価格というものが保証されているのだから、こんなうまいことはないのですね。数量もちゃんとわかっておれば、買い上げ価格も最低価格というものができているでしょう。ですから、こういう一つのうま味のある仕事をだれもが飛びついてやるんだね。だから、北海道あたりについては、芝浦精糖であるとか、あるいは大日本製糖であるとか、そういう大きな会社が、せっかく努力された基礎といいますか、開発に努力されたところの日甜あたりの努力を無視して、上の方から勝手に割当をきめて、新しい製糖業者の主張をいれてやっているのだね。こういうような点について、私は、生産農民にもう少し生産費を保証するような価格を維持してやることにするために努力してもらうならよくわかるのですが、そういうような点について、農林省と通産省あるいは大蔵省あたりは、さようなことを検討されたことはあるのでございますか。計画を立てるにしても、生産農民が離脱するようになって、不安を持つようになったんじゃおもしろくないと思うのですがね。そういう点については、三省の間においてはしかるべく相談をされておるのですか。
  69. 西村周一

    説明員(西村周一君) 生産費につきましては、現在北海道では大体一反から二トン半とれるといたしますと、約一万三千円ぐらいの粗収入になるわけでございます。それに対しまして、農林省の統計調査部が行なっております調査結果によりますと、生産費として約一万一千円くらいの費用がかかっておるということになっている。従いまして、生産費的にはただいまの価格で一応ぺーしておると考えております。トン当たりの価格が五千二百五十円になっております。
  70. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 砂糖の問題は私はまだ聞いていないわけで、続いて聞きます。  砂糖の自由化を中止された理由は、先ほどの説明で明らかで、結局砂糖の国内生産を保護育成するというのは、これはほんとう理由じゃないと思う。むしろ、私の見るところでは、国内の製糖業者ですね、製糖業者を保護するために自由化を中止しておる、この一言に尽きるじゃないかと思うのですね。もし国内の砂糖の生産者を保護するならば、保護する必要があるというなら、大豆と同様に、これは育成政策を別に立てるべきです。現に大豆は立てているのですからね。立てているのだから、砂糖についても、国内のいわゆる農民生産者に対してはこれの育成政策を講ずべきですよ。大豆と同様にすべきです。そうしないでおいて、国内の生産を増強していくんだ、そのために中止するのだということは、私はこれは大豆の場合と考え合わせて納得できない。そういう意味・で、それじゃ何で製糖業者の代弁をなされておるかということは、私の単なる意見じゃないですよ。  だから、具体的に私は聞きたいと思うのですが、税制調査会の附帯決議で、これは木村委員も先般ちょっと触れましたが、附帯決議において、粗糖の輸入自由化は昭和三十六年中に実施すること、こういうふうに書いております。それから先般税制調査会の副会長がここへ見えたときに、私ども質問に対してこう答えておる。粗糖の輸入について、関税引き上げても砂糖の市場価格というものは下がる、自由化すれば、砂糖の関税引き上げても市場価格は下がるんだ。——これは何を物語っていますか。関税引き上げたら当然市場価格は土がってくるはずです。それでも下がる。そうすれば、自由化ということは、国民にとっては一大福音ではないでしょうか。現に砂糖は、関税として大体年に八百億円、その半ばを占める四百億円近くは砂糖の税金じゃないですか。砂糖は一般国民の消費物資です。それを自由化すれば値段が下がる、関税を上げても値段が下がる、こういっておる。それをしないということは、それではだれがその利潤を得るのかといえば製糖業者であります。これに弁明の余地があれば、これは十分してもらいたい。十分の弁明の余地がなければ、私の言っておるように、製糖業者の利益を守るために自由化を中止したと言われても仕方がない。もし国内の生産者の利益を守るというならば、大豆と同様にこの育成措置を講ずればよい。その必要を私は認めます。また、砂糖の自由化をすれば国内の生産者の立場を保護するための政策が必要である。これは大豆はとっておるのです。そうすればそこでそれに対しての答弁、これは政府の責任ある答弁を求めたいですね。税制審議会の答申に対して三十六年中にこれを実施する考えがあるかどうかということが第一点と、それから第二点はキログラム当たり百二十五円をこえる水準で維持されないような情勢の場合には関税を引き下げなければならないということを言っておる。そういう審議会の附帯決議というものを当然と考えておるかどうか、その二点について、その二点と、初めに言った、この中止した理由は製糖業者の利益をはかるためかどうか。これはもう率直に、政務次官はなかなか太っ腹ですから、これくらいのことは正直に言えるはずだと思うのです。これを質問して、納得すれば私は次の問題に移りたいと思います。私はきょう相当時間をとっているから、恐縮に感じているのです。しかし、どうしてももう一点やらなければならない問題があるので……。
  71. 田中茂穂

    政府委員田中茂穂君) 砂糖の自由化につきましていろいろと御意見を拝聴いたしたのでございますが、税制審議会の答申に対しまして、今のところ政府といたしましては砂糖の自由化を当分見送るということになっております。当分見送るということでございまするので、具体的にはいつから実施するかということは、まだ私は承知いたしておりません。  それと、先ほど御指摘のありました砂糖の自由化をやめたということは、国内の製糖業者の利益を守るためにやったのじゃないかという御指摘のようでございますが、私はいささか荒木委員の御見解と異なった気持を持っておるわけでございます。現に全国の農業従事者並びに農業団体はこぞって砂糖の輸入に対しまして、一時砂糖の自由化が言われましたときに、全国的に反対した事実がございます。といいますことは、カンショの原料を多量に生産する県並びに南九州のカンショ栽培にたよっておる農業地帯、あるいはまた最近北から南の果てまでビートの作付気運というものが非常に農家の間に浸透して参っおるというようなことで、この時期に砂糖の自由化を行なうといたしますれば、農業者にやはり生産の上からいいましても、また所得の上からいいましても、相当影響が大きいのでございまして、そういう意味で与党といたしましては三大臣の申し合わせに猛然と反対いたしましたし、また農林事務当局も反対をいたしたような事実があるわけでございます。あくまでも砂糖の自由化を反対いたしました理由は、私の知る限りにおきましては、農業従事者の保護のためにこの自由化を見送らしたという見解を持っております。
  72. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 さっきのことを繰り返し申し上げても仕方がないが、大豆と同様に国内の砂糖生産者に対する保護政策、これは別個に立てられるのですか。立ててやるべきである。一般国民の全体の消費者の立場というものを無視している。私が先ほど言った製糖業者の利潤というものはこれは非常に大きい。これは関税率審議会の副会長の言を借りてもそうだと思う。しかし、この自由化の問題については当分保留、こういうことで時期を明示されておらない、こういうことであります。  私は、昭和四十三年百五十万トンとすると、その七十五万トンは輸入、七十五万トンは国内で生産するという計画、こういう計画がいいか悪いかはうんと検討しなければならない。しかし、当委員会で論ずべき問題ではないと思うので、いずれにしても砂糖の問題については私は多くの疑惑を持っている。また国民も疑惑を持っている。これらは当委員会で私は解明したいと思って、全然解明することができなかったことははなはだ遺憾ですけれどもあとにまだ質問者もおられますので、私もできるだけきょう中に三法案を上げるという立場に協力したいと思うので、次に移ります。  私は税関部長にお伺いいたしますが、私の手元にある統計では、昭和二十五年以来のいわゆる輸入関税に関する業務というものは非常な勢いで増加しておる。私の手元にある統計では、昭和二十五年を一〇〇として、税関関係で取り扱った件数を一〇〇とする。そうすると、昭和三十四年、十年後にはこれが五六七%、大体仕事量は十年間に五・六七倍にふえてくる、仕事量は。それではこれに見合う仕事をしている税関の人員、定員、その定員の増加率を見ますと、昭和二十五年を一〇〇として、これは人数で三千七百二十四人ですね。これを一〇〇として、十年後の昭和三十四年には五千八百七十六、一五八%、大体一・五倍という、五割かた人員がふえるということになる。そうすると、仕事量の増加とこれに関係する税関の定員との関係は私は納得できない。仕事量は六倍近くになる、これに関係する人は一・五倍しかふえていない、これはちょっと考えても、これでは仕事の負担が過重にかかっていくのじゃないかということがこの数字から出てくる。税関部長は当面の責任者であると私は思う。これだけ仕事がふえてくるのに定員はあまりふえない、これではあまりにも気の毒だ。この仕事に従事しているものに対してどう考えているか、税関部長は。  さらに、最近は貿易の自由化で種目が、これはこの間も説明があったように、従来は九百何種目かに分類されておったのが、二千三百ですか、数字はちょっと覚えておりませんが、二千二、三百という種目に細別された。そうすると、これはまた仕事がふえてくるのではないか。そういうことを予想すれば、私は仕事量、従事する人の仕事の負担が過重になってくる、こういう見解を持っているわけです。それで、ことしの予算を見ると、四百人ほど増員するという、これはけっこうなことです。しかし、四百人ではこれはやはりバランスはとれていない、仕事と人数の関係上。私は、仕事が五倍、六倍になったから、人員を六倍にふやせ、こう言っているのではないのですよ。しかし、もう少しバランスがとれるように人員をふやしていくべきであると考えている。こういう点について、税関長は今までどういう努力をしてこられたか、またどういう見解を持っておられるか、この機会に聞きたい。
  73. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 私、ただいまここに数字——先生おっしゃいましたような比率になるかどうか、二十五年当時と比べますと、おおむねそんな比率になろうかと存じます。御説のように、年々貿易が非常に急激な増加を示しておるわけです。従いまして、どうしても現場の税関におきますいわゆる申告件数が急激に増加して参っておるわけであります。この関係から、税関の現場で働きます職員の業務量が増加して参っておる。これはまさに御指摘の通りでございます。私どもとしましても、扱いの件数に比例して人員の増加ということはいかがかと思うのであります。ただ、何と申しましても、御説のように、現在の人員と仕事の増加の程度というものは、正直に申し上げまして、私どももバランスがとれていない、何としてもやはり人員をさらに一そうふやす必要があるということは、私どもとしても痛切に感じております。例年定員の増加につきましては、もちろん予算措置を必要とするわけです。私どもとしましては、でき得る限りそういった実情を訴えまして、定員の増加に努めておるわけです。何と申しましても、いろいろな制約がありまして、私どもの希望しますような増加の割合というものは実現はいたしておりません。今後一そう私どもとしまして、よく実情を訴えまして努力すべきだ、かように考えております。  なお、一面業務のかような増加に対応いたしまして、これ人手をふやすということだけで解決するということも、非常に諸般の情勢から見まして困難が多いわけであります。従いまして、私どもとしましては、一方でいろいろ、何と申しますか、現場事務の機械化と申しますか、そういった面についても予算措置を講じて、人員の、人手の増加だけでなく、そういった面からできるだけ一つ合理化を進めて参ると申しますか、能率化を進めて参りたい、かように考えて、一面努力をいたしておるわけであります。  総合いたしまして、なお不十分であります点は、先生御指摘の通りでございます。いろいろな簡素化、できます限りの簡素化は、何と申しましても税関が大蔵省だけの仕事というような形ではございませんで、いろいろな関係各省の統制事務と申しますか、そういったものを現場で確認するといったような仕事を引き受けておるわけなんで、そういった特殊性につきましても、機会あるごとに私ども強調はいたしておるわけなんで、なお今後ともそういった面で、簡素化できます面は極力事務の簡素化をはかりまして、一面どうしても残ります仕事の増加、これに対しては人員の増加、なおまた機械化、そういった面で努力を重ねたいと思います。
  74. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これはもう少し具体的に説明を聞きたかったわけです。予算編成段階において、何人くらい要求して、どういうふうになっておるのか、将来これはどういう了解があるのですか。そういった点を私はもう少し具体的に聞きたかった。私はこの間、偶然の機会に税関の人に会って話を聞きますと、乗船監理というもの、船が港へ入ってくれば、税関の職員が船に乗り密輸等いろいろの監理をする、そのために乗船監理をする。ところが、最近は一人で三つくらい船を持たなければならない。これはせいぜい一人で一つ、一人一船でやっていくべき筋合いのものである。それを最近は人が足らないので、一人三つくらい船を持たなければならない。これでは密輸等の取り締まり、発見というようなことはほとんどできない、こういうことを歎いていましたがね。私は、もっともであると思う。これまでにして必要な人数を割る必要は私はないと思う。やはり税関部長、もうちょっと本腰を入れて定員増をはかるべきじゃないか。これは政務次官も協力して上げなければいけないと思います。そんなことでは、密輸の横行しておる日本は、それでは手がつけられない、そういう状態になっておる。一体何人くらい要求して、どういう結果になったのか。将来の約束というものはあるのかどうか、了解があるのかどうか、そういう点を聞いておきたい。
  75. 田中茂穂

    政府委員田中茂穂君) 税関関係の仕事に携っておりまする職員の数が少ないということは、十分、私も陳情も受けましたし、また実情等を調査いたしまして承知いたしております。そこで、今度の予算査定におきましては、一ぺんに相当ふやすということも、他の関係もございまして、できる範囲内で四百名増員いたしたわけでございます。それには三カ年で干名ということで、三十六年度は四百名、次年度二年間で六百名、こういうことで一応話をつけたわけでありまして、御了承賜わりたいと思います。
  76. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の政務次官の説明で、三カ年間に千人ふやす、こういう了解が、正式にですね、これはできておる。これは私相当前進だと思うのですね。実数はなかなかこれでは足らない。私もいろいろ説明を聞きましたが、事情も調べましたが、どうも三カ年間千人の増員ということでは、これはうまくいかない点もあるけれども、しかしこれだけをとにかくやるという言明をここでせられたということは、私は一つの前進だと思う。その意味で了とします。  これ、まだ質問ありますが、おいでおいで、私は一応質問を終わります。
  77. 野溝勝

    ○野溝勝君 なかなか荒木委員から微に入り細にわたり質問がありましたので、私の質問しようと思うことは大体尽きたのでございますが、簡単に一、二お伺いしたいと思います。  きょうは、委員長、通産省もお見えになっていますか。
  78. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 今井通商局長、それから村上通商参事官が見えています。
  79. 野溝勝

    ○野溝勝君 関税定率法改正の中で、特に沖繩に持ち込んだアメリカの物品に関税を免除しようというように受け取られるのですが、どうしてこんなに範囲を広めたか。この理由は、今までの説明を聞いておるとあまり明らかでないようでございますが、もう少しこの理由をお話し願いたいと思います。
  80. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) ちょっと、法律を提案いたしております関係で、私から先に……。  御指摘の点は、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案で提案申し上げておるわけなんでありますが、従来は琉球関係の、いわゆる琉球の土産品であります、土産品につきましては、まあ内地並みと申しますか、そういう待遇をいたしますために、特に免税の措置がとれるようにいたしておったわけなのであります。ところが、今回これを若干改正をいたしました理由は、最近琉球におきまして、外国から原料を輸入いたしまして、これを琉球で加工する、そうしましてこれを日本へ輸出するという形の貨物が出て参ったわけであります。で、そういたしますると、これを従来の法律でやりますと、土産品と認めて全部免税ということで扱いますか、あるいは加工品だから土産品ではないということになりますると、今度は外国並みに関税をかけるということになって参るわけであります。琉球の特殊な地位と申しますか、こういったものを考慮いたしますると、外国から原料を輸入しまして加工される、これが日本に輸出されるというような貨物につきましては、その原料相当分に関税をかけるというような措置をとりますると一番適切に事が運ぶわけなんです。従いまして、いわゆる原料課税という形の課税方式をここで道を開きまして、沖繩において加工されましたその加工部分は免税とする。総体としましては、貨物についても、従いまして減税という形になるわけです。そういう道を今回開きまして、将来もそういった事態に適切に対処して参りたい、かような趣旨でございます。
  81. 野溝勝

    ○野溝勝君 そうすると、沖繩には原料が大体ないわけなんです。大体加工の面だけ免税する。原料はよその国から持ってきて、大体アメリカですが、どんな原料でも持ってきたものに沖繩で加工する、それが日本に入ってくるというと、加工の面だけに免税すると、こういうわけですね。そうすると、その判定とか、種類の点検等はどうしてやるのか、またどういうところでやるのですか。
  82. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 大体の考え方として、先ほど申し上げたわけでありますが、具体的にはもちろん政令で定めます。その際にどの程度の加工の部分を加工品として免税するかという問題につきましては、この輸入によって受けます国内産業の影響の面もございまするし、それから琉球側としましての、いろいろな琉球での産業の発達という問題もございます。従いまして、そういうところとは十分打ち合わせいたしまして、適切な程度の減税をいたしたい、かように考えております。
  83. 野溝勝

    ○野溝勝君 私はこまかいことを掘り下げて質問はいたしませんが、この点が非常に重要な点だと思うのです。先ほど大豆の問題も出ましたが、大豆の従量税をきめる場合にもなかなか困難な問題があるので、私はこの関税定率法の一部改正は特に沖繩問題を取り上げたところにみそがあると思っておる。ここに疑問があるのです。そこで、そのことをこまかく聞くことはきょうはやめましよう。  私がこういうことを聞くのは、きょうの新聞にも出ております通り、アメリカのケネディ大統領が国防予算の特別教書というものを議会に送ったのですね。その中に、国防費の追加分として、一九六一会計年度に十億ドル、六二会計年度に八億九千万ドルの支出を要請しております。その約一割というものが日本、沖繩に充てられるということになっておるのですね。そうすると、沖繩へはアメリカの原料が相当入ってくる。で、これに加工をいたしまして、日本に送ってきて税金を取られると、米国は経済上不利なことになってしまう。そこで、両国の話し合いが政府の間であった。こういうことで一部改正の必要に迫まられてきた政策だと解釈しておるのですが、その点、私の考えは行き過ぎですかな。
  84. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 今回の改正はそういう考慮は実は全然いたしておりませんで、前々から免税か課税かという二つの道しかなかったものでありますので、いわゆる原料課税という思想でやります減税の措置を織り込みたいという気持で、かねて考えておったことなんであります。御指摘のような配慮は全然いたしておりません。
  85. 野溝勝

    ○野溝勝君 なければけっこうですが、その点はかすに時間を与えることにいたしましよう。  もう一つ、私お伺いしておきたいのは、これは通産省の方にお伺いをするのでございますが、これから沖繩では相当産業が活発になると思うのですが、その場合、日本の産業家とアメリカ業者との利害上の問題が起こるようなものもあると思うのでございますが、そうしたことについて、民族産業保護と日米間における調和等何か検討されたことがあるのでございますか。具体的にいえば、エンジンなどが例にあがっていますがね。ボート組立てのエンジンなども、これは一つの例でございましょう。たまたま例をあげたわけでしょう。その他ラジオ、農産物等で産業の衝突する面もできてくると思うのでございます。
  86. 村上公孝

    説明員村上公孝君) まだ具体的にそういう現象というか、つまり国内産業と沖繩の産業とで衝突しておるという事態は私ども見込んでありませんが、ただその可能性については十分考えられると思います。ただ、まあ沖繩の地位がまだ日本の潜在主権があるという意味で、たまたま行政権が及んでいないという特殊な情勢にありますので、その辺のところ大へんややこしい関係になるのでございますが、例を引きますと、これはまあ輸出の場合と輸入の場合と両方あり得るわけです。輸出でいいますと、トランジスター・ラジオの輸出は、御承知の通りアメリカも規制しております。この理由は、非常に大量のものが出まして値段が下がったりして、結局アメリカの方で免責条項に基づく提訴が行なわれるというようなことになるものですから、むしろそういう事態を、あるいは国防条項かと思いますが、そういういろいろガットの規定にも合ったアメリカ国内法によっていろいろ規制をされるよりは、日本側で規制を行なった方がむしろ市場の秩序を維持するためによかろうということでやっておるわけであります。これにつきまして、沖繩で一応組み立てまして向こうに出るということもあるわけで、これはまあ結果においてはアメリカの市場へ出ることでは同じことですが、そういう意味では衝突しているわけです。しかし、一方では原料、材料といいますか、それは日本から供給する、こういうこともありますので、沖繩の方とも相談しまして、その点のところは大きく調和をとろうじゃないか、こういうことをやっておるわけであります。  それから輸入につきましては、パイナップルが琉球で新しい産業として出てきております。それで台湾その他から、フィリピンあたりからも輸入しておりますけれども、やはり沖繩から入ってくるものにつきまして、ある程度の日本の国内のシェアを確保したい。といいますのは、まだ幼稚産業でございますから、コストの点等で、そういった古くからある南方の地域と対抗し得ないものもある。将来はまあだんだん競争し得るようになると思うのですが、その間はある程度の特恵的な地域として考えたいと、こういうような面もございまして、ただまあ利害が衝突するだけじゃなくて、あるいは相補うという面もあるわけでございますが、その点はまあ日本における一種の特恵的な地域といたしまして十分考えておるわけでございます。
  87. 野溝勝

    ○野溝勝君 私の心配するのは、先ほど緊急関税憲法上の疑義の問題もありますし、さらにはこの提案理由の中に私が心配しておるような点があるですね。たとえば、「本邦の産業に重大な影響を与えず、かつ、税負担の公平を失しない範囲内において」と、こういうことが言われておりますが、今お聞きをすると、不明確なんだな。関係各省間でまだ完全に打ち合わせができておらないですね。これから沖繩の方といろいろ折衝してみるというようなことなんですね。これじゃ実際、今後定率一部改正によって米の原料による加工品が免税されるということになりますると、日本の業界は不安です。影響を持ってくると思うんです。たとえば、かの地にはすでにパルプ業界などもそれぞれ施設しておるわけなんですね。これは一つの例ですが、国防予算がどんな形で行なわれるかしれませんが、エンジンなども例に出ておるが、この他電気製品等何かの形で産業上のトラブルが起こると予想しておるんですよ。どうかそういう点で各省が遺憾なく打ち合わせを期してもらいたいと思う。
  88. 村上公孝

    説明員村上公孝君) 御指摘産業等については、実はまだ具体的に現象が現われていないものでございますから、まだその点については対案を具体的に持っていないということで申し上げたのでございますが、将来のことにつきましては、そういう萠芽が認められるのでございますが、十分各省とも連絡いたしまして遺憾なきを期したいと思います。
  89. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 関連。この問題は私質問しようと思っていなかったわけですが、関連いたしまして、私の手元にある資料ですね、沖繩との貿易実績、それによると、昭和三十四年度において輸出が二百七十四億ですか、これに対して沖繩から買うのが七十億ですね。それから、昭和三十五年度において三百億の輸出に対して八十億、こういう勘定になっているんですね。これでは沖繩の経済というのは非常に不安であります。まあこの数字によらなくてもわかりますが、沖繩の経済というのは非常に不安定な状態にあるんじゃないかと思うんですね。で、先ほど野溝委員からいろいろ問題が提起されました。これらの問題は重要であり、十分考慮されなきやならぬ。私はやはりそれと同時に、沖繩の経済の実情に若干でも日本が若干というか相当力を入れてやっていく必要があると思う。私どもは沖繩を外国考えていない。そういう建前からいくというと、今政治的にこういう状態になっていますが、しかし、沖繩の貿易の実績はおそらく日本との貿易が大半を占めるんじゃないかと思うんですがね。そういう関係から見ると非常にアンバランスになっているんですね。そういう事情において、この法律によって沖繩に加工工業が興る、それによって経済的な立場というものが強化されていくのかどうかですね。そういう、どの程度に強化されていくか。もちろん国内産業との見合い、今野溝委員からお話がありました問題は注意しなきゃならぬ問題でしょうが、同町に、この問題ですね、沖繩の経済発展ということについてどの程度の見通しがあるのか、一つ説明願いたいと思います。
  90. 村上公孝

    説明員村上公孝君) 御指摘の通り、沖繩に対しては大幅の輸出超過になっております。私どもも純然たる外国と心得て見ているわけでございませんので、先ほどちょっと申しましたように、特恵的な地域であるというふうに考えておるわけで、沖繩が日本に輸出するものにつきましては免税ということに従来もなっていたようでございます。ただ、先ほど野溝委員から御指摘がありましたように、沖繩に工業が興りまして、原材料をそこへ持ち込んでそうして日本へ持ってくる。たとえば大豆を持っていって油をしぼって、油を持ってくるということになりますと、大豆の輸入については、従来も相当大豆は入れるけれども、大豆油の輸入については相当まだ競争力等に問題があるのですから、そういう点である程度しぼってあるわけです。こういう点と比べまして、もしそういうことが大量に出てきますれば、やはり問題が起こるものですから、新しく免税のほかに減税という考えをまあ入れましたわけで、これは先ほど申し上げました通り、加工に相当する部門は、やはり原材料等に相当する分は税を取るのがフェアな……。
  91. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私はそれを質問しているのじゃないのです。先ほどの質問でわかっているのですから。沖繩の経済の発展についてどういう影響があるか。
  92. 村上公孝

    説明員村上公孝君) ただ、私どもといたしましては、あくまで沖繩は広い意味の日本だということは根本的には認識しているわけでありまして、工業等が興るからすぐ日本の競争相手といって見るよりも、そういう競争の方はむしろ第二義的に起こってきたら考えるということで考えておりますので、私ども積極的に何をしてやるかということにつきましては、これまた具体的に民間のベースでいろいろな投資とかそういうことがありますれば、なるべく便宜をはかっていくということを考えているわけでございます。
  93. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これで質問やめますが、私の言っているのは、沖繩の経済事情をよくする必要がある、そういう立場で言っているんです。だから、今の沖繩は住民の生活事情というのが、私は詳細な資料は持っていませんけれども、おそらく非常に悪いのじゃないかと見ているわけですね。ああいう資源の乏しい島ですよ、それは無理もないと思うんです。従って、原料の生産だけでなしに、加工産業、そういうものを育成することに相当力を入れる必要がある、こういう立場で私は言っているんですよ。だから、この関税によって原料の輸入に対しては税をかけるけれども、加工に対しては税金をかけないという恩典を与えているんです。それによって相当稗益される。そのことによって、沖繩の加工産業は将来有望な展望があるのかどうか、そういうことを聞いているんですよ、私は。さっきそういうふうに聞きましたつもりですが。
  94. 村上公孝

    説明員村上公孝君) 私、最初に野溝委員の御質問に対して、最初の御質問にあげましたことはちょうどそのお答えになるかと思いますが、それはそういう弊害を先に心配するよりも、そういう特恵的な地域として特別に考えていきたいということでございます。具体的にどういうことをやっているかと申し上げる資料を持っておりませんが、民間等で相当投資するというようなことでございましたら、他の地域とは違った配慮をすべきだと思っております。  それから、為替が日本との取引が大部分であって、沖繩からいえば輸入超過に大きくなっているから、それは困りはしないかという点でございますが、現実問題は、米軍が駐在しておりまして、相当その方面から一種の特需的な資金を持っているものでございますから、支払い等について今直ちに困っているという状況にはないように了承しております。
  95. 野溝勝

    ○野溝勝君 これはさっきの質問関連をしているのですがね。私は日本産業がこれがために支障を来たさないように十分注意してくれということを申し上げたのですが、その中にやはり海運保険産業ども忘れないように考えてもらいたい。たとえば輸送上の保険問題ですね、日本の保険産業外国の保険事業の圧迫を受けるようなことがあっちゃ困りますので、この点を全産業の中に入れて十分検討しておいて下さい。
  96. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう同僚諸君がたくさんの質問をされたあとで、共産党に残されている点はごくわすかになっておりますが、私も二、三点質問したいと思います。さきの国会におきまして、社会党の木村禧八郎委員質問に答えて、税関部長関税率審議会の構成についてこういうふうに答えておると思うのですし消費者、労働界代表を加え、必ずしも産業代表のみでやらない、こういうふうに答えておったと思うのです。そこでこの構成は一体どういう構成でやられているか、まず聞きたい。
  97. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) ただいま御指摘のような私御答弁を申し上げたと思うのでありますが、具体的には、この関税率審議会の構成がちょっと一面特殊な関係もありまして、関係各省の次官と事務次官が入っているという点が非常に特色でございます。そのほかの民間の委員の方では、それぞれ関係の向きで、たとえば中立的と申しますか、消費者ないし労働界方面の方を委員に委嘱しておるというようなことを申し上げたのでありますが、たとえて申し上げますると、大学教授の方が三名でございましたか、四名でございますか、それから消費者代表としまして、まあ、おおむねこういう大学教授の方は私どもそういう目で見ているわけなんでありますが、そのほかに総評の事務局長でありますとか、あるいは全労の書記長でありますとか、そういう方々も委員に御委嘱申し上げておるわけであります。
  98. 須藤五郎

    須藤五郎君 この関税率審議会の構成は四十名で構成しているのでしょう。
  99. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 四十五名定員です。現在は四十四名です。
  100. 須藤五郎

    須藤五郎君 その四十五名の中で、大学教授が何名で、今あなた消費者の数を言いかけて言わなかったが、あと労働界から全労の和田君と総評の岩井君が入っている。二人労働者代表で入っているというのですが、その構成は、消費者代表を加えると、必ずしも産業界の代表のみではないというこの言葉には不適切な構成ではないでしょうか。いわゆる官僚と産業代表、独占の代表というもので構成したので、消費者並びに学識経験者、それから労働界の代表というのはごく少数しか入っていない。四十五名の委員の中で三分の二以上、これがそういう利益代表だ、こういうことになりやしませんか。
  101. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 比率の点で若干そういった感触があろうかと存じますが、私どもといたしましては、業界の代表という考えで御委嘱申し上げておるのではございませんで、ただ何分にも非常にまあ産業各般の物資に関係がある関税率でございます。従いまして、これを御審議いただきます際に、やはりそれぞれの何と申しますか、ある程度商品、そういうものにつきまして知識の広範な方というふうな意味で、どこまでも趣旨は学識経験者として御委嘱申し上げておるわけなんです。何だ会社の社長といりた資格で御委嘱申し上げておるわけではないのでありまして、従いまして、たとえば漁業協同組合連合会の会長でありますとか、そういった方々を御委嘱申し上げておるのです。消費者代表と、純粋に消費者代表とか、そういった形ではっきり現われますのは少ないかと思うのでありますが、そういった広い見地から御審議いただくという建前で御委嘱申し上げております。
  102. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは会社の社長であろうが独占の大将であろうが、消費者には違いないですよ。そんなあなたみたいな、そんなごまかし言っちゃいかぬですよ、明らかに消費者代表、それから労組代表というならば、明らかにその立場に立っただれが見ても消費者代表と思うような広い意味の……。会社の社長を入れておいて消費者代表なんという、あなたごまかし言っちゃいけませんよ、あなたの答弁にはごまかしが多いですよ。そんなことはないですよ。  それと、もう一つ私は言いたいのは、労働者代表として全労の和田君と岩井君を入れて、それで事足りるとあなたは思いますか。四十五名も委員を作りながら、今度の品目を見ると二千数百品目ですよ。(「二千人委員を置かなくちゃならない」と呼ぶ者あり)ばか言え、そんな冗談言うものじゃない。各産業別の代表ぐらいは入れるべきですよ、この中へ。それを、全労とそうして総評の代表を入れて、そうして足りると言っていることはおかしい。特にこの人たち審議会にほとんど出席していないのです。出席できない理由があるわけです。この人たちは非常に多忙な人たちです。委員に選ばれてもその任務を完全に果たすことができないのです。だから、むしろ産業別の代表を入れて、そうして審議に十分労働者の立場でこの審議に当たらすべきが私は筋道だと思います。それをやらないで、わずか二人だけ加えて、そうして言葉じり潤すというのでは、私は満足することはできないのです。結局、今度の関税定率というものがそういう立場で、独占の立場、官僚の立場でこれが作られた、こう言われてもあなたたち言いのがれることかできないじゃないですか、そういうやり方でやったら。
  103. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 個々の委員の方々をどう見るかという問題はあろうかと存じます。私どもとしましては、まあ、具体的にお名前をあげては恐縮なんでありますが、たとえば大学の教授、先ほど申し上げましたように、赤松先生でありますとか、氏家先生でありますとか、あるいは持子山先生でありますとか、豊崎先生でありますとか、そういった方々はそういうお立場であろうと思いまするし、またそのほかで見ましても、経済評論家の稲葉先生でありますとか、あるいは日本経済新聞の論説主幹であられる円城寺さんだとか、あるいは関税協会の副会長であります尾関さんでありますとか、日本銀行の理事であります坂田さん、農林水産技術会議の会長であります東畑精一さんでありますとか、東京銀行の頭取であります堀江さん、東京大学の教授であります脇村さん、それに先ほど申し上げましたような総評の事務局長、全労の書記長、こういった方々は消費者の直接の代表と、いろいろ見方はあると思うのでありますが、そういう方たちも十分になってやっていただいている。まあ、何と申しますか、一部中立的なと申しますか、そういった立場で御審議いただいておる、かように、承知しているわけであります。
  104. 須藤五郎

    須藤五郎君 日本の国民の大多数を代表する農民の代表は入っていますか。
  105. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 農民と申しますか、農業関係という意味におきまして、先ほど申し上げましたような農林水産技術会議の会長でありますとか、あるいは農林水産生産性向上会議の理事長でありますとか、あるいは全国漁業協同組合連合会の会長でありますとか、全国販売農業組合連合会の会長でありますとか、そういう方々を御委嘱申し上げております。
  106. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは農民代表と私たちは認めないのです。ほんとうの農民代表なら、日農の代表とか、農民組合の代表を入れなければだめだ。ここにいらっしゃる野溝さんは、もちろん日農代表です。こういう代表を入れていないじゃないですか。だから、それはおかしいんです。だから、私たちは、今度の関税定率法国民総意によって、国民代表すべての英知を集めてできたものと、こういうふうに理解することができないわけです。  次に移りましょう。貿易の自由化をやりながら、緊急関税というような措置をとっているわけですが、ここの間には私は矛盾があるように思うのですが、どうですか。
  107. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 緊急関税制度でありますが、私どもは、結論から申し上げますと、矛盾はないと思います。と申し上げますのは、為替なり貿易管理をやっておりますると、そういった直接的な統制手段で、外国から異常なものが異常な姿で入って参りますことを遮断できるわけなんです。これが輸入が自由化されて参りますると、そういった直接的なこれを遮断する道がない。従いまして、むしろ、私ども緊急関税制度考えましたのは、自由化を進め、またこれが円滑にいくためには、そういった緊急の場合に何らかの措置が必要である、かような考え緊急関税制度考えたわけであります。決して両方の間に矛盾はないと思います。
  108. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは、次に行きますが、この緊急関税とガットとの関係は、どういうふうにお考えですか。
  109. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 先ほど来申し上げましたように、緊急関税、これは諸外国でもこれを採用いたしております。なかんずく、ガットにおきましても、ガットの規定の十九条におきまして、こういった緊急関税措置を認めているわけであります、今回、私どもが採用したいと御提案申し上げております緊急関税制度も、大体このガットの十九条に準じまして、ほぼ十九条の場合と同様の姿で考えたわけであります。従いまして、ガットで認めております緊急関税に該当する、かように考えております。
  110. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちは、この緊急関税は、先ほどから申しましたように、これは違法だと、こういう考えはいまだ捨てることができない。三竹という評論家が書いている文章に、こういう論文を書いておりますが「ガット税率の撤回に伴う代償として新譲許を与える権限を行政府に委任することである。これは明らかに条約、国際的協定の内容変更を法律改正国会承認)なく行なうことである。」、こういうふうに指摘しておりますが、私たちもこの点は確かにそうだと思う。いわゆる緊急関税というものは、国会を無視した行政官の独善的なやり方である。こういう意味において、私は、違反であると同時に、このガット関係の点においても再び違法を犯すものである、こういうふうに考えますが、あなたはどういうふうにお考えになりますか。
  111. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) 私、その論文でございますか、拝見いたしておりませんが、ただいま伺いましたような点でございますると、私どもこういう解釈をいたしておるわけなんです。なるほどガットの譲許税率の変更でありますが、ガットで譲許いたしておりますものはもちろん国会の御承認をいただいておるわけであります。これの十九条の発動によります——ガットの十九条であります。ガットの十九条の発動によりまして、一たん譲許いたしました税率を変更するということは、いわゆる条約の運用ということであります。従いまして、新たな条約の締結あるいは条約の修正ということではないわけなんです。ただ、今回緊急関税の中にガットの譲許税率のものにつきましても政府に授権をしていただきたいという趣旨で、第九条の二の規定の中で、新たにガット関係の税率譲許の修正を緊急関税の一部として取り入れるということにいたしましたのは、もともと内容が、言ってみますれば、国内的には法律事項である。従いまして、国定税率を緊急の場合に政府だけで動かすということの授権をしていただきますにつきましては、ガットの譲許税率そのものの修正は、この十九条の場合には条約の運用であるわけなんでありますが、内容が法律事項であるということで、今回法律で授権をしていただきたい、かような考えで御提案をいたしたわけであります。
  112. 須藤五郎

    須藤五郎君 それはあなたの考えであって、ガットの新譲許、それを変えるときは、それはやっぱし法改正でしょう。国会承認を求めなければならぬ問題と違うのですか。
  113. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) ただいま申し上げましたように、ガットの一般的な譲許税率を修正するという場合は、ガットの規定によりますと、二十八条で再交渉という姿でガットの譲許税表そのものを修正するわけです。この場合にはもちろん国会の御承認を得るわけです。先ほど申しましたように、たとえば大豆でありますとか、そういうようなものは、今アメリカと交渉をやっております。これが妥結いたしますると、国会の御承認を要する問題なんです。ただ、私申し上げましたのは、十九条は緊急措置なんであります。そういう緊急措置の場合は、譲許税表そのものは修正にならないで、一時それと別個に緊急の措置としてそういう別の税率が動くということになるわけであります。従いまして、これはどこまでも条約の運用であるということでありまして、条約そのものの修正、あるいは新しい条約ということではないということであります。
  114. 須藤五郎

    須藤五郎君 どうもふに落ちぬ点がありますが、私は、自由化をやりながらこの緊急関税を作らなければならぬというような矛盾、ガットとの矛盾、こういうことは、やっぱりずっと将来いろいろな問題として起こってくる問題だと思うのです。これはどういうところにあるかというと、政府の貿易政策の根本に私は間違いがあると思う、経済政策に。その間違いをどうにかこうにかつじつまを合わしていかなければならないというところに、こういう問題が起こってくると思うのです。これはやっぱしあなたたちが今やっておる、いわゆる社会主義諸国との貿易に対して特別扱いをして、特に中国との間にいろいろな障壁を設けて、その他の国とは自由貿易だといいながら、いわゆる中国などに対しては障壁を作っておるという、そこに私は根本的な間違いがあって、その結果、いろいろなこういう憲法まで犯して、法まで犯しておる。そうしてこういうことをやらなければならぬという原因があると思うのです。どうしても私はほんとうに根本的な貿易政策を立てる必要があると思う。そのためには、平和五原則のもとに早くいわゆる東西貿易をどんどんと発展させるような方向に政府の方針がいかない限り、常に矛盾を繰り返すというようなことになるだろう、こう私は考えます。  それから、もう一つ私が言いたいのは、先ほどの関税定率法の第二十一条の合憲性の問額でありますが、先ほど青木委員は、外国から入ってくるものは日本の憲法において守られる必要はないじゃないか、こういうような御意見を述べられたと思うのです。これは私ははなはだおかしいと思うのです。私たちが言っておるのは、外国人の権利を守れということを今日言っておるわけじゃないのです。私たちは日本人の利益を守れということ、日本人の自由——見ること、読むこと、聞くことの自由を私たちは問題にして先ほどからやっておる、こういうふうに思っておるわけです。その点から、私は税関の検閲制度というものが憲法違反しておる、われわれの自由を踏みにじるものである、こういう意見を持っておるのです。こう言ったからといって、私は、別に共産党は、エロ映画を見たいわけではなく、残忍きわまる映画を見たいわけではありません。私たち自身もそういうものが日本のいわゆる社会教育上大きな弊害を流しておるという事実は認めておるわけです。何とかしてそういうものが日本からなくなることを私も希望します。しかし、それを検閲制度という制度によってやることに対して私たちは反対をしておるわけです。なぜなら、検閲制度をやるということが、今の権力者に握られておるならば、ろくなことをしない。それがゆがめられて悪い方向に、いわゆる民主主義と自由をそこねるような方向にその検閲制度が利用されるという危険が十分あるから、今日私たちは検閲制度に反対をしておるのです。それをあなたたちはやろうとするから、あなた自身、個人はどう考えておろうと、それがゆがめられる危険が十分あるという立場に立って、私たちはこの検閲制度に反対しておるわけです。  そこで、私はどうしたらいいかということについて意見を申し述べたいと思うのですが、またあなたたち意見も求めたいと思うのですが、あなたたちは先ほどいわゆる禁制品と同じようにこの問題を扱っておると思うのです、ピストルを持ち込んだり、爆弾を持ち込んだりという問題と。これは禁制品でしょう。これと映画を持ち込むという問題とは違うのです。映画はこれは思想です。こういうような危険物とは違うのです。それを禁制品扱いにするというところに、やはり私はあなたたちの頭におかしい点があると思うのです。あなたたちは同じようにこれを考えておるのですか。禁制品扱いにして、映画の輸入や音楽や書籍や文学の輸入を禁止し得る、こういうように考えておるのですか、どうですか。
  115. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) お説のように、二十一条は輸入禁制品ということでありまして、「公安又は風俗を害すべき」云々ということは、一応やはり禁制品というものには該当するわけです。ただ、先ほども申し上げましたように、この禁制品の中にはアヘンでありますとか、麻薬でありますとか、あるいは偽造貨幣、紙幣といったようなものが同じように並んでおるわけであります。一項の一号、二号、あるいは四号に参りますと、特許権等を侵害する物品というようなものが同じように並んでおるわけです。今回この二十一条の第一項の第三号にあります問題の「公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」、これだけを特に扱いを変えまして、いわゆる二十一条の二項から除外したわけであります。先ほど申し上げたのでありますが、ただいま申し上げましたようなアヘンとか模造、偽造の紙幣でありますとか、貨幣でありますとか、こういったもの、そういうものを発見いたしますと、没収して廃棄するという対象に依然として残って参るわけであります。  今回私どもが提案いたしましたのは、お説のように、思想の表現物である第一項の第三号は、そういった観点からやはりこれを同列に並べて同じような扱いをするのは妥当性を欠くのじゃないか、そういう配慮から、特に三号の物品につきましては任意にこれを廃棄していただくとか、あるいは積み戻しをしていただくとかといったような措置をとりまして、異議の申し立ての道を開きまして、なお御不満の方は行政訴訟を起こしていただく道を残しておく、そういった形で、取り扱い上の問題ではございますが、ほかのものとは若干異なるという、それは思想の表現物であるという点を尊重いたしまして、そういった取り扱い上の区別をいたしたような次第でございます。
  116. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは、何も税関の中だけで検閲制度をしいてそういうことを決定するのではなくて、もっと広い世論に訴えてやるべきだと私は思うのです。  今日、日本国内においては検閲制度はない。税関だけにそれがあるということはおかしい。それではどうしたらいいか、これは私は日本の世論に訴えて判断を求める、それが一番正しいやり方だと私は思う。ところが、そういうことは一向しようとしない、そういう世論の喚起を一つもやろうとしないで、税関だけでシャットアウトしてしまう。あるいはあなたたち考えと日本国民考えとは違うかもしれない。それなのに、そういう手段を尽くさずしてやろうとする。だから、税関がいわゆる一方的なごくわずかなきめられた人、しかもあなたたちがこの審議会に選ぶ人といったら大体見当がつきます。思想的には右翼的な人が多い。私たちの希望するような進歩的な民主主義者は一切入っておらない。これまでやっておった中でもそうです。私が見たら、右翼的の思想の持主が多い。そういう人たち、ごくわずかな偏向者によってそれがなされる。これは私は日本の国民的立場からいったら大きな損害だと思う。だから、そういうことをしないで、一般世論に訴えて、世の中の良識によって、そういうことをやめる、入ったものでも見ないような運動を世論に訴えて起こしていくということ、これが必要だと私は思う。今日アメリカから二百数十本の映画が入っております。これは日本の輸入映画の大部分です。八割くらいがアメリカ映画だと思う。そのアメリカ映画の中にもいいものもありますけれども、ほとんどギャング映画じゃないか。そのギャング映画が日本の青少年たちにどのような弊害を与えているかということはこれは明らかです。ところが、あなたたちは、これは税関の責任ではないが、日本の政府の責任ですが、アメリカのギャング映画などを見ないでいこうという運動を起こしましたか。一つもやっていない。そういう運動を起こさない。それは日本の世論に訴えて、日本の母親たちに訴え、そうして子供に害毒を流すような映画はできるだけ見ないようにしようという運動を積極的にやるべきである。しかるに、そういうことをやらないで、今日の自民党政府アメリカのギャング映画を際限なく入れる。そうして社会主義諸国の健康な健全な映画は、本数の制限やらいろいろなことを理由に、あまり日本に入れたがらない。そういうやり方をしておって、日本の健全な思想というものが養われると思うか、どうですか。あなたたちがそればかりのことをやって、それで済むと思うか。それはあなたたちのやろうとする検閲制度は、マイナスの面が多くてプラスの面が一つもないということを言いたい。どうですか。
  117. 稲益繁

    政府委員稲益繁君) どういう映画が入って参りましても、悪い映画であれば見ないようになるということは全く理想でありまして、私どもそれが一番望ましいと思います。ただ、世論に訴えてというお説でありますが、あるいは私どもと理解が違うのかもわかりませんが、私どもとしましては、そののいわゆる世論に訴えるというものをある集約された形で実現したいというのが、つまり私ども公務員だけで、税関の職員だけで判断しては非常に狭い視野からものを見るおそれがある、これを補います意味において、審議会を設けまして、その審議会に諮って公正な判断をしていただきたい。審議会委員の委嘱につきましては、構成その他につきましては、十分そういう公正な判断が出ますように配慮して参りたい、かように考えております。
  118. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、先ほど審議会の構成にも少し触れたと思うのですが、私はあなたたちがこれから作ろうという審議会の構成メンバーを実は知りたいわけです。どういう人たちを予定して委嘱しようとしておるのか、私たちそれに対する意見を申し述べる機会を与えられたい、こういうふうに希望いたしまして私の質問を終わります。
  119. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 他に御発言もなければ、これにて三法律案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないものと認めます。  これより三法律案の討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  121. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 関税定率法の一部を改正する法律案関税暫定措置法の一部を改正する法律案、この二法案に対しましては反対をいたします。関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、この法律案に対しては賛成をいたします。  それぞれ反対、賛成の理由を簡単に申し上げておきますが、社会党では、かねがね明らかにいたしておりまするように、今日の経済事情のもとにおいて貿易・為替の自由化にには強い反対をして参りました。そのことは、貿易の自由化は、これはアメリカの強い要請に基づいて発足をした、こういう経緯から考えましても、私どもは納得のいかない点があるのであります。さらに、日本の今後の経済の発展等を考える場合、今日為替の自由化、貿易の自由化ということは、日本にとって少なからざる障害をもたらすものであるという考えを持っておるわけであります。そういう貿易・為替の自由化の上に立って、今回関税定率法の一部を改正する法律案、こういう格好になって出てきたわけであります。これらの二法案は、繰り返して申しますが、貿易・為替の自由化ということを基礎にして行なわれたものでありますので、これが反対する第一点であります。それから、次に申し上げたい点は、質問の段階でも触れましたが、おもな点は緊急関税制度であります。これは憲法第八十四条の租税法定主義規定している趣旨に反する、かように私ども考えるのであります。こういう制度を認めるということは、官僚統制を助長する、そしてその結果は独占資本に奉仕する、こういう結果が現われてくることを私どもは危倶しておるのであります。それから、輸入映画書籍等の取り扱い手続の改善、これについても私ども憲法違反の疑いがあるということで、だんだん質疑をいたしましたが、解明するには至らなかった、かように考えておるのであります。  その他いろいろ理由はありますが、以上二点をおもなる理由として申し上げておきたいと思います。  それから、関税暫定措置法の一部改正についても、大豆あるいは砂糖、この大豆の自由化、これはやはり日本の大豆生産の現状から見て非常に無理がある、またこれを実施する場合には他の産業において相当犠牲を払わなければならない、いわゆる三%の税率引き上げ等によるガット条項との関係から、他の産業に相当犠牲をしいるということにもなり、なお今日国内産業の見地から見て、もっと積極的に国内産業の育成助長をはかって、そうしてその後に日本の大豆生産が国際水準に近寄る、そういう状態においてこれを考えるならば別ですが、現状においては、そういう対策も十分過去において施されていない実情から見て、私ども非常に不満とするところでございます。  それから、砂糖の関税見送り、この問題は非常に不明朗な私どもは感じを持っております。一応貿易の自由化をやろう、為替の自由化をやろうと決定し、日ならずしてこの態度を変えた。これは明らかに製糖業者に奉仕するといいますか、製糖業者の利潤を保護する、こういう私は暗い事情がひそんでいるのじゃないかという疑惑を持っているのであります。そういう点で納得しがたい。  そういう点をあげて、この二法案に反対いたします。  それから、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、これは質問の際にも述べましたように、沖繩の産業というのは非常に困難な事情にある。日本としては沖繩産業の発展のために相当努力をすべき責務があると私ども考えます。そういう意味において、沖繩の加工生業に課税しない、こういうことは、沖繩の加工産業を育成する上に稗益するところがある、ひいては沖繩の経済事情をよくするという点において資するところがある、かように考えますから、この法案には賛成いたします。  以上、簡単でありますが、前の二法案には反対し、あとの一法案には賛成するという意見を述べます。
  122. 天田勝正

    ○天田勝正君 民主社会党は、関税定率法の一部を改正する法律案に反対し、関税暫定措置法の一部を改正する法律案並びに関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案には賛成いたします。  もともと、今回関税定率法の一部を改正する法律案政府が出しましたのは、為替自由化に即応いたしますために、一部改正とは申しましても全面改正の案を出してきたわけであります。しかし、これは急遽行なわれまして、こうした関税定率のごときは、いわゆるきめのこまかい配慮を各産業に向かっていたさなければならないのに、私はこの法案全部を通じてまことにそうした検討配慮というものがなく、粗雑であると存じます。従いまして、これには反対をいたします。  関税暫定措置法につきましては、いうなれば、これはかってあと関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に含まれておりましたものを、昨年いわゆる独立せしめたものでありして、もしこれが関税定率法のごとくもう固定したものということになりまするならば、多大の疑問点があるのでありまするけれども、しかし、この法律の名の示す通り信ずるならば、あくまでも暫定的であり、一時的である、こういう点から若干の幅を持ってもよいのではないか、こう判断をいたしましてこの法案には賛成をいたすわけであります。  関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案でありますが、これにつきましては、私が質疑を通じまして、かかる名称からして繁雑なる法律案というものは、まことにけしからぬということを指摘いたしました。他に類例もなければ、何を一体言っているのか、税というものはなるべくならば国民全部に名称からしても内容のわかるという筋のものでなければ私はならないと思っておるのに、これが政府の答弁を聞きましても、一向にそういう点について明らかにされない。今後はこういう繁雑なる法律は整理すべきである。いうなれば、特例に関する法律でもなんでも、いかようにもできるはずであることを指摘いたします。しかしながら、内容とするところは、一地域の琉球に関することを規定いたしておるので、琉球との間に特恵的な関税を設けるということは、極言いたしますると、現在統治しているのはアメリカでありますから、その観点からするならば、アメリカの統治をやさしくするという面も確かに疑問点としてはございます。しかし、各党あるいは政府を通じまして、あくまで沖繩はわが国の潜在主権が存在するのである、こういう立場からいたしますれば、同胞が幾らかでもこの特恵関税によりまして恵まれるということは、まことに望ましいことでありまして、この観点から、私は、この法律についての形というものはかなり批判を持ちながら、賛成をいたすものでございます。
  123. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、日本共産党を代表しまして、ただいま提案されております三法案に反対をするものであります。  この関税定率法は、そもそも貿易の自由化に対処するために作られたものでありますが、私たちも社会党と同じく貿易の自由化には反対をしております。その立場からも反対をするのは理の当然であると私は考えますし、この関税定率法ができますいきさから見ましても、先ほど質問の中で申し述べましたように、ほんとうの日本国民代表がこの関税定率法を作る審議会に入っいない。ある官僚と独占代表、それだけの手によって作られたものであるということで、私は人民の利益の立場にこの関税定率法は立っていないと思うのです。その立場からも反対をいたしますし、なお、先ほども申しましたように、この法案の中には幾多の違憲性を含んでおると思うのです。  すなわち、緊急関税の問題、それから関税定率法の第二十一条の違憲性の問題、こういう問題を含んでおると思うのです。やはり憲法によって自由を保障されたわれわれ国民は、またその国の政府も、たとえ外国人のものといえども外国人の思想もわれわれの思想と同じように私は尊ばなければうそだと思うのです。これこそ自由を保障された憲法を持っておる日本国民の私は義務だと考えております。そういう立場からも、私は関税定率法第二十一条に大きな反対の意思を持っております。  また、特に関税暫定措置法などは、全く露骨に日本の独占の利益擁護のために作られたものだと私は言わざるを得ないと思います。  最後の、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、これも幾多の私は禍根を含んでおると思うのです。将来これがアメリカの手によってアメリカの利益に奉仕するように私は利用されるときがありはしないか、そういう問題もこの中にはたくさん含まれておると思いますので、そういう立場から、私はこの三法案に反対をいたすものであります。
  124. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 他に御発言もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、関税定率法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  126. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 多数でございます。よって、本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、関税暫定措置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  127. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 多数でございます。よって、本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  128. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 多数でございます。よって、本案は多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。   午後四時四十八分散会    ————・————