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政府委員(
田中茂穂君) ただいま議題となりました会計法の一部を改正する法律案外八法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
まず、会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本法律案は、国の行なう売買、貸借、請負その他の契約の制度につきまして改正を行なおうとするものであります。
現在、国の
契約制度は、会計法及びこれに基づく
予算決算及び会計令で規律し、運用されておりますが、この制度は、大正十年制定にかかる旧会計法の内容を大体そのまま受け継いだものでありますので、その後の事情に照らし再検討する必要があったのであります。そこで、昨年以来
財政制度審議会において御討議を願って参ったのでありますが、このほど政府においても結論を得るに至りましたので、ここに会計法の一部を改正して国の行なう売買、貸借、請負その他の契約についての制度を整備し、その運営の円滑化をはかることにいたしたいと考え、この法律案を提出いたしました次第であります。
次に、本法律案の概要について御説明申し上げます。
まず第一に、現行の会計法は、
一般競争を原則とし、
指名競争及び
随意契約を例外としておりますが、
一般競争の行なわれているのはきわめて少ない実情にあります。しかし、
一般競争の方式は、国の
契約方式として確保すべき公正及び
機会均等の面からもすぐれた制度であり、各国もこれを
原則的方式と定めている例が多いという実情にあります。従いまして、本法律案におきましては、契約の性質または目的により
一般競争に付する必要がない場合及び
一般競争に付することが不利と認められる場合においては
指名競争に付し、契約の性質または目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合においては
随意契約によるものとし、それ以外の場合は
一般競争によることといたしておりますが、
予定価格が少額である場合等においては、
指名競争または
随意契約によることができることにいたしております。
第二に、
競争契約の場合における
落札方式は、
歳入原因契約にあっては最高の、
歳出原因契約にあっては最低の入札者を落札者とすることを原則といたしますが、
歳出原因契約のうち特別なものについては
入札価格が著しく低いことにより契約の適正な履行がされないおそれがあると認められるとき、またはその者と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあって著しく不適当であると認められるときは、所定の手続のもとに次順位の入札者を契約の相手方とすることができる道を開くことにいたしております。
第三に、契約の適正な履行を確保するため監督及び検査について必要な規定を設け、監督及び検査の
民間委託に関しても規定を明確にし、また契約の目的物について
相当期間の保証がある場合においては監督または検査を一部省略することができることにいたしております。なお、この改正に伴いまして、監督員、検査員の任命についての規定を整備するとともに、その責任の明確化をはかることにいたしております。
第四に、契約書の作成、
入札保証金、
契約保証金等の事項につきましては、従来学説、判例等において議論がありましたが、この機会に規定の明確化をはかることにいたしております。
第五に、電気、ガスもしくは水の供給または電話の
役務提供のごとき
長期継続契約につきましては、手続の簡素化をはかることにいたしております。
第六に、
契約事務を担当する者につきましての任命の規定を整備いたしますとともに、その責任の明確化をはかることといたしております。
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次に、
資金運用部資金法の一部を改正する法律案について申し上げます。
資金運用部資金は、
郵便貯金、
厚生年金積立金その他の政府の
特別会計の
積立金等の
政府資金を統合管理し、いわゆる
財政投融資として運用されていることは御承知の通りであります。
昭和三十六年度には、
拠出制国民年金が発足することに伴い、特にこれを契機といたしまして、
資金運用部のあり方、
国民年金積立金の運用等につきまして、
資金運用部資金運用審議会を初め
国民年金審議会、
社会保障制度審議会からも、それぞれ建議や答申が行なわれております。これらの建議や答申におきましては、これら
政府資金を
国民生活に直結する部門に積極的に運用し、かつ、その使途を明確にするとともに、
他方資金運用部資金の源泉が
一般国民の
貯蓄的性格のものであることにかんがみ、その適正なコストをまかない、できるだけ有利に運用すること等が要望されております。また、
資金運用部資金の
運用計画等について審議を行なっております
資金運用部資金運用審議会の構成及び運営の改善をはかることも要望されております。
政府といたしましては、これらの要望を十分考慮し、その趣旨に沿って制度及び運営の改善を行ない、もって
資金運用部資金のより適正な運用をはかりますため、
資金運用部資金法の所要の改正を加えることとし、ここに本法律案を提案いたした次第であります。
次に、この法律案の概要を申し上げます。
第一に、
資金運用部資金運用審議会の名称を簡明な
資金運用審議会に改めますとともに、その組織を中立公正にしてしかも実質的な審議を行ない得るものとするため、従来
行政機関の職員が多数を占めていたのを改めて、
学識経験委員七人以内で組織することとし、会長は委員の互選によって定めることといたしますほか、専門の事項を
調査審議させるため審議会に
専門委員若干人を置くことができるものとし、
関係行政機関の職員を
専門的立場から
調査審議に参画させることといたしました。
第二に、
資金運用部資金の運用につきましては、前に申し述べました通り、昭和三十六年度には
拠出制国民年金の資金も加わりますので、これらの資金について特に
国民生活の
安定向上に直接役立つ部門に最重点を置いて運用いたしますとともに、その使途を明らかにする見地から、
資金運用部資金の
運用計画書及び
運用報告書を作成するにあたっては、
大蔵大臣が審議会の意見を聞いて定める分類及び区分に従って、使途別に分類し、これを
国民年金、
厚生年金等の
年金資金等と
郵便貯金資金等とに区分した表を添付しなければならないことといたしました。
第三に、現在
資金運用部預託金のうち
約定期間七年以上のものに対しましては、年六分の利子を付しておりますが、
郵便貯金の資金につきましては、この
預託利子収入によっては収支相償わず、その赤字は毎年
資金運用部特別会計からの
繰り入れによって補てんしているのでありまして、その
累積債務額も相当多額に上っている状況であります。しかしながら、
郵便貯金は国民の零細な貯蓄であり、適正なコストをまかない得るよう運用すべきものと考えられるのでありまして、
郵便貯金事業の経営の合理化にさらに努力いたしますとともに、
資金運用部におきましても
預託利回りの向上をはかる必要があるものと考えられます。
同時に、
厚生年金、
国民年金等他の
長期預託金につきましても、同様に国民の
貯蓄的性格の資金であり、ひとしく利回りの向上をはかるべきものと考えられるのであります。
これらの点を考慮いたしまして、
資金運用部におきまして、
約定期間七年以上の預託金に対し、年六分の通常の利子のほか、昭和三十六年度以後当分の間、
大蔵大臣が
資金運用審議会の意見を聞いて定めるところにより、特別の利子を付することといたしました。この
特別利子につきましては、
金利水準の推移並びに
資金運用部の収支の状況に則応しつつ、毎
年度資金運用審議会の意見を聞いてその年度に適用する利率を定めることを予定いたしております。
なお、
資金運用部預託金利率の特例に関する法律は、
郵便貯金の
約定期間五年以上七年未満の預託金に対し、
特別利率による利子を付することを定めたものでありますが、実体的にその必要がなくなりましたので、廃止することといたしました。
第四に、
簡保資金につきましては、積立金を分離運用しておりますため、
資金運用部に対する余裕金の預託は、これが翌
年度積立金となって払い戻されるまでの間の短期の預託となり、このため利回りが低くなっておりますが、毎年度新たな余裕金の預託が繰り返される点から見れば、その資金は実質的には安定的に滞留しているものと見ることもできますので、
簡保資金の特殊性やその
利回り向上の要請をも考慮いたしまして、昭和三十五年度以後に
簡保余裕金として預託された資金で、
預託期間一年以上七年未満のもののうち、新たに預託された余裕金の額に応じて払い戻されるものに対しましては、昭和三十六年度以後当分の間、通常の利率による利子のほか、特別の利率による利子を付加し、原則として年六分まで
預託利回りの向上をはかることといたしました。
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次に、
郵便貯金特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。
資金運用部資金法の一部を改正する法律案によって、
資金運用部の
長期預託金について特別の利子を付することといたしておりますことは、ただいま御説明いたしました通りであります。これらの措置等によりまして、
郵便貯金特別会計においてもその経理内容の改善がはかられることとなりましたので、従来
暫定的措置としてとられて来た
一般会計及び
資金運用部特別会計からの
郵便貯金特別会計への
赤字繰り入れの措置を廃止するとともに、あわせて、過去の
赤字繰入金につきましては、今後の
郵便貯金事業の経営の健全性の維持に資するため、この際
一般会計への返済義務を免除することといたしております。
また、これに伴いまして、
郵便貯金特別会計の借入金の制度につきまして所要の整備をはかることといたしております。
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次に、
農業近代化助成資金の設置に関する法律案について申し上げます。
政府は、
農業協同組合等の
農業関係の
融資機関が行なう長期かつ低利の資金の融通を円滑にするため、
都道府県が行なう
利子補給について国が助成することとし、もって
農業経営の近代化に資するため、今国会に別途
農業近代化資金助成法案を提出して御審議をお願いいたしております。
農業近代化助成資金の設置に関する法律案は、この
農業近代化資金助成法の規定に基づき、
都道府県が
農業近代化資金の融通につき
利子補給を行なうのに要する経費を補助するために必要な財源を確保するため、政府の
一般会計に
農業近代化助成資金を設けようとするものであります。この資金は、
一般会計から資金に
繰り入れる金額及びこれを
資金運用部に預託した場合に生ずる利子をもってこれに充てることとし、前述の
都道府県に対する補助の財源に充てる場合に限り、予算の定めるところにより使用できることとしようとするものであります。なお、以上申し述べましたほか、資金の管理、受け払い、増減の
計算等所要の規定を設けることといたしております。
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次に、
租税特別措置法の一部を改正する法律案(第一次分)について申し上げます。
政府は、昭和三十六年度
税制改正に関して、すでに
所得税法の一部を改正する
法律案等所得税、法人税、
通行税等の減税をはかるための法律案を提出して御審議を願っている次第でありますが、今回の
税制改正の一環として、現在の
経済状勢に応じ、
租税特別措置について
整理合理化を行なうとともに新しい所要の措置を設ける等の目的で、
租税特別措置法の一部を改正する法律案を提出した次第であります。
次に、本法律案についてその大要を申し上げます。
第一は、企業の
資本充実に資するための
配当課税の
特別措置であります。
現在、企業の
資本構成是正のため、企業の
増資促進が重要な課題となっており、そのため配当に対する課税のあり方が問題となり、
税制調査会を中心として種々検討を行なって参りました。政府としましては、この問題についてはなお検討を続ける所存でありますが、企業の
増資促進に資するため、当面の
暫定措置といたしまして、企業の
支払い配当に対する
法人税率を引き下げることにより企業の
配当コストの軽減をはかることとしております。
すなわち、
法人利益のうち
支払い配当に対する法人税について現行の
基本税率三八%を二八%に引き下げるほか、所得年二百万円以下の部分に対する三三%の税率を二四%に、
農業協同組合等の
特別法人に対する二八%の税率を二〇%にそれぞれ引き下げることといたしております。
このように配当に対する
法人税率を引き下げる反面、現行の
法人税率を前提とする個人の
配当控除割合及び
法人間配当の益金不算入の
取り扱いについてこれに対応する調整を加え、たとえば現在二〇%の
配当控除を一五%に引き下げ、また、法人の
受け取り配当がその
支払い配当をこえる場合には、そのこえる金額の二五%は益金に算入する等の措置を講ずることといたしております。
第二は、貯蓄の奨励のための
特別措置の改正であります。
現行法では、昭和三十六年三月三十一日までの間に支払いを受けるべき
預貯金等の
利子所得については、他の所得の税率により所得税を課税することとしているのでありますが、最近の金利、特に預金等の
金利引き下げの政策方向を考慮して、なお一年間その
適用期限を延長することとしております。また、昭和三十六年三月三十一日までの間に支払いを受けるべき
配当所得については、一〇%の
軽減税率による所得税の源泉徴収を行なっているのでありますが、この措置についても
利子所得に対する
取り扱いとの権衡等を考慮して、なお一年間その
適用期限を延長することとしております。
第三は、技術の振興及び設備の近代化に資するための
特別償却制度の改正であります。
現在、
特別償却制度としては、
合理化機械等の初年度二分の一
特別償却、
重要機械等の三年間五割
増特別償却等九項目に及ぶ制度があります。これらはいずれも
国民経済の再建に少なからぬ効果を上げて参ったのでありますが、この際、別途実施を予定しております
耐用年数の改訂との関連、
特別償却制度の明確化と簡素化、
中小企業の
機械設備の
近代化促進の
重要性等を考慮し、所要の改正を行なうこととしているのであります。
すなわち、現行の
合理化機械等の初年度二分の一
特別償却制度並びに
重要機械等及び
協同事業用機械等の三年間五割
増特別償却制度を廃止し、これらにかえて新たに
取得価額の三分の一を
初年度普通償却の別ワクとして認める
特別償却制度を設け、その
適用対象として従来の
合理化機械等のほか
耐用年数の改訂に単純に吸収することを適当としない
中小企業用機械を中心とした
重要機械等の一部及び
協同事業用機械等を加えることとし、さらに、この制度による各
事業年度の
特別償却額があまり過大とならないよう、その
特別償却範囲額が年一億円以上の法人につき
特別償却前利益の二分の一を
特別償却の限度とする制限を新たに設けることとしております。
また、わが国の立ちおくれている
試験研究を助長するため、
試験研究用機械設備等の
特別償却制度は特にその充実をはかることとし、現行の
個別承認による
特別償却の
償却方法を、
普通償却のほか初年度三分の一の別
ワク特別償却を認める制度に改め、
耐用年数の改訂と相待って
償却方法の改善をはかることとするほか、
個別承認の対象とならない
試験研究設備についても一定の条件のもとに広く
普通償却のほか初年度十分の一の別
ワク特別償却を認める制度を新設しているのであります。また、これら
試験研究の成果たる新
技術企業化用機械設備等の
特別償却制度も、その
償却方法を初年度三分の一の別
ワク特別償却制度に改め、
特別償却制度の態様の統一と合理化をはかることとしております。
さらに、
探鉱用機械設備等、
鉱業用坑道等及び造林費の
特別償却制度については、これらの産業等の性格等に顧み、その
適用期間を約三年間延長することといたしているのであります。
第四は、
価格変動準備金制度の改正であります。
法人税の
一般的軽減の反面、企業の
利益留保の性格が強いといわれている
価格変動準備金制度について、制度を合理化しつつ、若干積み立ての制限を行なうこととし、
国際商品等で
価格変動の著しいものを除き、現行の積立率を二五%程度引き下げることとしております。ただし、改正後の限度額をこえる既往の積立額は、たな卸資産の増加によって吸収されるまで取りくずさないよう
経過措置を講ずることとしております。
第五は、産業の助成を目的とした
各種特別措置の改正であります。
その一は、
輸出所得控除の制度の改正であります。この制度につきましては、最近の
国際会議等における情勢を考慮し、昭和三十二年の外貨危機の
緊急総合対策の一環として設けられた
割増控除制度は、
適用期限の延長を行なわないこととしておりますが、
輸出所得の
特別控除の制度は
輸出振興の重要性に顧み、なお三年間
適用期限を延長、存続することと致しております。
その二は、
重要外国技術使用料に対する
所得税課税の特例の改正であります。最近国際二重課税の排除のための
祖税条約の締結は逐次進渉を見ているのでありますが、なおわが国と密接な
経済関係のある主要国で
租税条約の未締結の国もあり、
重要外国技術の導入の必要性に顧み、この制度につきましても一五%の
軽減税率により、なお二年間この措置を存置することとしております。
その他、
国内航空事業の助成のため航空機に対する通行税を一〇%に軽減する
特別措置、
開墾地所得及び
土地改良事業施行後の
裏作所得に対する所得税の免税の
特例措置並びに
農業委員会のあっせんにより行なう農地交換による
所有権移転登記等の
登録税軽減措置について、これらの措置の一部に制度の合理化のため若干の改正を行なった上、それぞれ三年間その
適用期限を延長することとしております。
第六は、その他各般の改正であります。
その一は、
譲渡所得関係の特例の改正であります。すなわち、収用等の場合の
譲渡所得課税の特例について、課税の繰り延べが認められる
代替資産の範囲の拡張、その
取得期限の延長等について所要の改正を行なうとともに、
居住用財産の
譲渡所得を計算する場合の控除額を現行の十五万円から原則として五十万円に引き上げることとしてその負担の軽減をはかっております。
その二は、
交際費課税の特例の改正であります。これまでの資本金一千万円以上の法人について、その
支出交際費のうち、その取引金額の
一定割合及び一定の
基準年度の
実績支出額を基礎として計算される限度額をこえる部分の金額の損金算入を認めないこととしている制度にかえて、制度の簡素化及び公平化をはかるとともに、これを若干強化するため、
支出交際費のうち一定の
基礎控除額をこえる金額の二〇%を損金に算入しない制度に改め、なおこの制度の
適用期限を三年間延長することとしております。
その三は、沖繩地域の居住者で、内地に一定期間滞在する者に対し、その所得の実情に顧み、居住者と同様、
扶養控除等を認め、その負担の軽減をはかることとしております。
その他
増資促進の重要性に顧み、
配当課税の
特例措置と対応して、
増資登録税の
軽減措置の三年間の
適用期限の延長、
地方公共団体が公用等に供するため取得する船舶に対する
取得登記の登録税の
免除等所要の改正を行なうこととしております。
—————————————
次に、
租税特別措置法の一部を改正する法律案(第二次分)について御説明申し上げます。
政府は、
租税特別措置法の改正につきましては、ただいま
提案理由を御説明した同法の一部を改正する法律案を第一次の改正案として立案し、すでに国会に提出していたのでありますが、その後
鉱工業技術研究組合法、低
開発地域工業開発促進法その他の法案が国会に提案されることとなったこと等に伴い、必要な税制上の
特別措置を講ずるため、重ねて
租税特別措置法の一部を改正する法律案を提出することといたした次第であります。
改正案の概要の第一は、
試験研究の助長をはかるための
特別措置であります。
科学技術振興の重要性に顧み、
試験研究の助長をはかるために、すでに税制上各種の措置が講ぜられているのでありますが、さらに、
鉱工業技術研究組合法案の提案に伴い、同法に基づいて設立される
鉱工業技術研究組合がその
試験研究用の
機械設備等の取得に充てるため組合員が組合に対して納付する費用については、最初の一年間でその七〇%、三年間でその全額を償却する
特別償却の方法を認めるとともに、
鉱工業技術研究組合が組合員から受け入れた賦課金で取得した
試験研究用固定資産については、その
取得価額を減額していわゆる圧縮記帳を行なうことによりその賦課金の受け入れにより利益を生じさせないことができるよう措置することとしております。
第二は、
産業助成のための
特別措置であります。この点については、まず
企業基盤を強化するため
特定産業の合併を促進する政策上の要請に従って合併が行なわれる場合等に課税の特例を認めることといたしております。すなわち、
機械工業振興臨時措置法に規定する特定の
機械工業を営む法人、
農業協同組合合併助成法もしくは
漁業協同組合整備促進法に基づき合併を行なう
農業協同組合もしくは
漁業協同組合または
中央卸売市場において卸売業を営む法人が一定の要件に従って合併を行なった場合には、その合併により生ずる
清算所得に対する法人税の課税を軽減し、
特定機械工業を営む法人が事業の共同化のために、
機械工業振興臨時措置法の要件に従って現物出資した場合には、その出資により取得する株式について圧縮記帳を認め、さらに
農業協同組合及び
漁業協同組合が一定の要件に従って合併を行なうときは、被合併法人の欠損金を引き継ぐことを認めることとしております。
次に、
特定産業の合理化と工場の地方分散等のために、工場用地の買いかえを行なう場合に課税の特例を認めることといたしております。すなわち、
特定機械工業を営む個人または法人が、その生産方式の改善等のため、一定の要件に従って工場を移転する場合及び
中小企業者が事業場の集団化のため一定の要件に従って一団地の工場用地に工場を移転する場合に生ずる
譲渡所得について、一定の要件のもとで、その買いかえた工場用地の
取得価額を圧縮記帳する等の方法で課税の特例を認める措置を講ずることとしております。
さらに、硫安工業の合理化に資するため硫安製造業者の繰越欠損の処理について特例を認めることといたしております。すなわち、硫安工業の合理化対策の一環として硫安製造業者が日本硫安輸出株式会社に対して有する売掛金で本年七月三十一日までに生じたもののうち日本硫安輸出株式会社の欠損に見合うものを法人の所得の計算上損金に算入するとともに、これに伴う損失については十年間の欠損金の繰越控除ができる等の特例を設けることとしております。
第三は、低開発地域等の工業開発等の促進をはかるための
特例措置であります。わが国経済の急速な発展に伴い、地域別の所得格差を是正するため地方における工業開発等を促進することが重要な課題となっておりますが、そのため税制上所要の
特別措置を講ずることといたしております。この点については、まず低
開発地域工業開発促進法案の国会提出に伴い、同法に基づき低開発地域工業開発地区として指定される地域内で製造業の用に供する設備を新設または増設する場合には、一定の要件のもとで、初年度において
機械設備については
取得価額の三分の一、工場建物については五分の一相当額を
普通償却の別ワクとして償却することを認める
特別償却の制度を設けることとしております。
また、地方において工業開発等に資するため、
地方公共団体もしくは日本住宅公団の行なう工場用団地等の造成のため土地が買収されたことに伴って代替地等を買いかえた場合または首都圏整備に関する法令によって東京都の区部等の既成市街地内において作業場の新増築等が制限されているため土地等を譲渡し、他の市街地開発区域、低開発地域、工業開発地区等の地区において土地等を取得する場合には、圧縮記帳の方法により
譲渡所得の課税の特例を設けることとしております。
第四は、海外移住者に対する
譲渡所得等の課税の特例であります。わが国から海外に移住する者の実情を考慮するとともに、移住振興の見地から、国の
行政機関が作成した計画に基づいて海外に移住する者が移住に際して資産を処分した場合の
譲渡所得等の課税についての特例を設けることとし、その
譲渡所得の金額から百万円の
特別控除を行なった後の金額の二分の一相当額を
譲渡所得の金額と見ること等の措置を講ずることといたしております。この結果、一般の
譲渡所得の課税の例により、その金額からさらに十五万円を控除した後の金額の二分の一が課税の対象となることとなるのであります。
—————————————
次に、
関税定率法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、関税率表の全面改正及び関税制度についての一部改正等を内容とするものであります。
まず、本文関係としましては、第一に、緊急関税についての制度を新たに設けたことであります。後ほど説明いたします関税率改正におきましては、通常の状態を前提として国内産業の保護等をはかっておりますが、海外価格が急落する等の異常の事態は考慮してはございません。特に輸入が自由化されて参りますと、このような事態のもとに輸入が増加しまして、それがわが国の産業に重大な損害を与える場合も十分考えられますので、このような緊急事態に対処して早急に関税率を引き上げ国内産業を保護する必要がございます。この制度は、このような場合に緊急関税の賦課、ガット譲許の撤回または譲許撤回の補償としての新たな譲許等を一定の要件のもとに政府限りで行なうことができることとするものであります。
第二に、関税割当制度でございますが、ニッケル及び高速度鋼につきましては、別表の税率が低税率と高税率とに分けられております。これは一定数量以内のものは低税率として国内需要者側の要請を満たすとともに、その数量をこえる数量の輸入については高税率としてそれと競合する国内産業の保護をはかろうとするものであります。第九条の三の規定は、別表によって定められておりますその低税率を適用する基準及び方法を定めたものであります。
第三に、再輸出減税の規定でございますが、機械の組み立てのため一時的に輸入され再び輸出される工具等につきまして全額課税するのは酷な場合がございますので、減税することができる規定を設けたものであります。
第四に、輸入禁制品の関係でございますが、これは一昨年の衆議院大蔵委員会での決議の御趣旨に従いまして、その
取り扱いを一そう慎重に行なうため輸入映画等審議会を設置する等の改正をしようとするものであります。本文関係といたしましては、その他若干の規定の整備があります。
次に、別表関係につきましては、まず、税表分類につきまして改正案ではブラッセル関税表の分類方式を採用いたしましたが、これは現行の分類体系が最近の新しい輸入商品の実態に沿わないこと及びブラッセル関税表の分類が国際的に最も広く認められていること等を考慮したものでございます。
次に、関税率の改正について申し上げます。現行関税率体系は、昭和二十六年の全面改正後若干の小規模な改正はありましたが、ほとんどそのままこれを踏襲して現在に至っているわけでありますが、この間においてわが国経済は目ざましい発展を遂げ、当時に比べ、量的にも構造的にも大きく変革してきております。このような産業貿易の変化に対応し、また今後の産業構造の高度化に順応するためにも現行税率は全面的に再検討を行なう必要があったわけであります。特に最近における貿易自由化の進展により、関税の機能がその重要性を増して参りますので、この再検討が一そう緊急に要請されるのであります。
このような状況から、政府は関税率審議会に諮りまして、関税率改正の作業を進めたのでありまして、検討品目は二千余にわたっております。
税率検討に際しましては、基本的には貿易自由化を前提といたしましたが、主食関係や非鉄金属の一部または石炭等のように、現在のところ基本的政策に未確定の要素が多いものについては、検討時期を後日に延ばす意味で現行税率据え置きといたしたものでございます。検討の結果、関税率の引き上げられた品目は二百五十一品目でございますが、これらは、わが国において今後積極的に助長育成するためには現行税率では不十分と考えられる産業、たとえば酪農製品や工作機械の一部等、及び自由化の際の衝撃が大きいと思われる産業、たとえば大豆、非鉄金属の一部等々の生産物でありまして、適当の保護を必要と考えたものであります。ただし、この場合においても、単に内外の価格差を埋めるということでなく、将来における合理化の見込み等を勘案して税率を定めております。
次に、関税率の引き下げられた品目は三百八十六品目であります。
この引き下げ品目には、すでに対外競争力を備えるまでに成長した産業を対象としたもののほか、従来の奢侈関税としての高税率を若干引き下げたものも含まれております。これらは保護関税の立場からは従来の税率を維持する必要が認められないので、需要者の利益を考慮して引き下げを行なったものであります。たとえば塩化ビニール、貴金属製品等であります。
なお、税率の据え置かれたものの多くは、現行税率が今後も適当とされたものでありますが、現状では積極的結論を得ることが困難のため、一応現状維持とされたものもあることは前にも述べた通りであります。
また、今回の改正案におきましては、従量税を採用したものがかなり増加いたしております。その形態も単純な従量税ではなく、従価従量のいずれか高い方の選択課税や、従価従量の併課税率等、税率に弾力性を持たせることを考慮しております。
最後に、以上のような改正案を作成するにあたりましては、産業保護の面を考えるとともに、国内一般需要者の立場に立って考慮を加えたことは言うまでもございません。また、関税の国際性、特にガット関係等についても十分に考慮いたしております。
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次に、
関税暫定措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
この法律案は、従来から関税の暫定的減免措置を行なっていた物品のうち所要のものについてその
適用期間を延長するとともに、今国会に別途提案されている
関税定率法の一部を改正する法律案が施行された場合の
基本税率とわが国産業の実情等を勘案して、若干の物品について暫定的関税率を定め、あわせて必要な事項について規定の整備を行なおうとするものであります。
以下、その内容につきまして簡単に御説明申し上げます。
第一に、現在暫定的に関税の免除または軽減を行なっている物品のうち、重要機械類、給食用脱脂粉乳、農林漁業用重油、肥料製造用原油、製油用原油等の物品につきましては、本年三月三十一日でその適用の期限が到来するのでありますが、最近におけるわが国産業の実情等にかんがみ、その
適用期間をさらに一年間延長することとしております。
第二に、従来から免税措置をとっております給食用脱脂粉乳につきまして、児童の体位の向上等の必要性を考慮して、その適用範囲を拡大し、幼稚園及び児童福祉施設の幼児または児童の給食の用に供されるものについても免税することとしております。
第三に、ガス事業の公共性にかんがみ、ガス原価の引き下げに資するため、その原料として使用する原油の関税を免除することとしております。
第四に、さきに申し上げました
関税定率法の一部を改正する法律案において新たに緊急関税制度及び関税割当制度を導入することになっておりますが、これらの制度を暫定税率を定めている物品について適用する場合に必要な規定の整備を行なうこととしております。
第五に、現在減免税を行なっている物品のうち国産が可能となったもの、または
関税定率法の一部を改正する法律案において従来の暫定税率を
基本税率としているものについては、
暫定措置を廃止するとともに、新たに必要となった若干の物品について暫定税率を定めることとしております。
また、
関税定率法の一部を改正する法律案において、税率を引き上げることとしている酪農製品、機械類の一部等について、国内消費者または需要産業に対する負担の増大を避けるため、これら物品の輸入を自由化するまでの間、暫定的に現行税率を据え置くこととしております。
その他、貿易の自由化に伴う一時的輸入の増大により国内産業が打撃を受けるおそれのある物品については、国内産業が合理化されて国際競争力を備えるまでの間暫定的増税を行ない、あるいは国内生産業と当該物品の需要産業の両者の保護調整をはかるため、特定物品について関税割当制度を適用することとする等の措置をとることといたしました。
このほか必要な規定の整備をはかることとしております。
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最後に、
関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
この法律案は、最近における沖繩との貿易の実情に顧み、沖繩等の生産品に対して従来行なっていた関税免除の制度に加えて新たに関税軽減の制度を設けようとするものであります。
沖繩等から輸入される生産品に対して関税を免除する現行の制度は、当初その土産品を対象と考えておりまして、それ以外の物品、すなわち外国産物品を原材料として同地域で生産された物品をわが国に輸入する場合には、政令でこれらの品目を指定し、これについては全額課税する建前でございました。
しかしながら、従来は、この種の問題となる物品の輸入はほとんどなく、従って、政令による品目指定も必要としなかったわけでしたが、最近、たとえばエンジンを外国から沖繩へ入れて、そこでボートを組み立てわが国に輸入する等、沖繩を中間生産地とする物品の輸入が増加する傾向が出て参りました。
これらについて従来のものと同様に関税の全額免除を行なうことは、
関税定率法の一部を改正する法律附則第四項の本来の趣旨ではございませんので、政令でこれらの品目を指定することも考えられますが、全額課税を行なうことは、結果的には同地域における加工産業の存立を困難といたすことになります。
本法案は、このような場合に、本邦の産業に重大な影響を与えず、かつ、税負担の公平を失しない範囲内において、政令をもちまして、沖繩において付加された価値の部分については関税を課さないこととしようとするものであります。
以上が会計法の一部を改正する法律案外八法律案についての提案の理由及びその概要でございます。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願いいたします。