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1961-06-30 第38回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年六月三十日(金曜日)    午前十時三十六分開会    ——————————   委員異動 六月九日委員大野木秀次郎君及び赤松 常子君辞任につき、その補欠として佐 野廣君及び永末英一君を議長において 指名した。 六月十六日委員天坊裕彦辞任につ き、その補欠として市川房枝君を議長 において指名した。    ——————————  出席者は左の通り。    委員長     大竹平八郎君    理 事            上林 忠次君            佐野  廣君            成瀬 幡治君            天田 勝正君    委 員            大谷 贇雄君            梶原 茂嘉君            西川甚五郎君            林屋亀次郎君            堀  末治君            前田佳都男君            山本 米治君            木村禧八郎君            戸叶  武君            野溝  勝君            永末 英一君            市川 房枝君            原島 宏治君   国務大臣    大 蔵 大 臣 水田三喜男君   事務局側    管 理 部 長 佐藤 吉弘君    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    大蔵省管財局長 山下 武利君    大蔵省銀行局長 大月  高君    郵政省貯金局長 荒巻伊勢雄君    ——————————   本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査  (国有財産管理並びに閉鎖機関等  に関する件)  (最近における設備投資金融問題  及びガリオア、エロアに関する件)  (災害対策に関する件) ○理事の補欠互選の件    ——————————
  2. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員異動について御報告いたします。六月十六日付をもって委員天坊君が辞任され、その補欠として市川君が委員に選任せられました。    ——————————
  3. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 国有財産管理並びに閉鎖機関等に関する件を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 天田勝正

    天田勝正君 委員長に伺いますが、いずれを先になさいますか。
  5. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 政府側出席関係からいって、できれば国有財産管理からやっていただきたいと思います。
  6. 天田勝正

    天田勝正君 そういたしますと、国有財産関係政府側出席者をちょっと……。
  7. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) ただいま出席をいたしておりますのは、会計検査院の篠田参事官、秋山第一局長郵政省荒巻貯金局長、鞆田第二業務課長大蔵省山下管財局長、建設省の志村参事官国鉄山崎管財部長、同じく国鉄柴田施設局長、運輸省の広瀬国有鉄道部長、大体以上でございます。
  8. 天田勝正

    天田勝正君 それでは、さっそく伺いますが、かねがね私は委員長を通じまして国有財産不当占有等事柄につきまして資料提出を要求いたしておきました。しかし、これは全国的にはなかなか調査も容易でありませんので、とりあえず東京周辺だけ提出を求めておりましたところ、ここに提出されたいまだ未解決のものが十四あることが明らかになったのでございます。そのうち、驚くべきことは、この国会周辺に三件もあるということに至っては全くあきれるほかはないわけでございます。そこで、きょうこの十四の一々について質疑をする時間もないかと思いますので、とりあえずこの国会周辺事案を一つ質疑していきたいと存じます。  提出されました資料の第十四番目に、千代田区永田町土地三百坪、十七世帯国立国会図書館分館、これが旧来の陸軍参謀本部陸地測量部陸軍大臣官舎、こういうところに使われたもののうちであることであります。これがもうすでに終戦直後からだんだん不当占拠をされまして、その後坪数も人数もふえて今日に至っておるようであります。この財産はもちろん国有財産でありますけれども所管衆議院所管でありまして、そのうち九千坪を参議院議員会館速記者養成所衆議院承認を受けて使用しておる、この中の土地であるということでございます。そこに不法占拠しておる者は、旧陸軍関係職員、それから、それは大部分でありますけれども、その他の者もおる、こういうことであります。私の方からいうならば、かつて尽忠報国の念に燃えておるのはわれ一人のような顔をした軍の当時の職員が、十何年間もこうして居すわっておるというのは、道義的に一体問題にならないことかと思いますけれども、まずこれの経緯政府側のどなたでもよろしいからお述べ願いたいと存じます。
  9. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) なお、政府側の御出席の皆さんに申し上げますが、暑い折でありますから、自由に上着をお取り下さって御答弁願います。
  10. 山下武利

    説明員山下武利君) ただいまお尋ね土地は、実は衆議院所管行政財産でございまして、管財局ないしは関東財務局が直接に監督をいたしておるところではございませんので、私からお答えするのもいかがかと思いますが、従来のいきさつを、御質問がありましたので、私の知っておる限りのことを簡単に申し上げます。  この財産は、資料にも書いてございますのでありますが、衆議院所管行政財産でありまして、全部の坪数が約二万三千坪、そのうちの九千坪を参議院議員会館及び速記者養成所として衆議院承認を受けて使用しておられるのであります。本地はその一部の三百坪が不法占拠対象、こういうことになっておるわけであります。その使用者は元の陸軍省関係職員が大部分でありまして、終戦直後から現在まで使用が継続されておる、こういうことでございます。  それで、私の方から参議院当局の方にもこれをどういうふうにしておられるかということを伺ったのでございますが、参議院では昭和二十三年の五月に文書をもってこれを不法占拠者に明け渡し方を通告されましたのであります。これに対しまして、同じ年に継続使用嘆願書使用者側から提出されております。その後も衆参両院から口頭をもって明け渡しを要求しておるのでありますが、やはり終戦直後の混乱状態のときにそこに住みつかれたというような、一部やむを得ない事情もあったと思うのでございます。何分にも生活に直接結びつく問題でございますからして、なかなか早急にこれを解決するということが困難な事情があるのではないかと私どもは推測しておるわけでございます。しかし、何分にもこういうようなことが、国会周辺で未解決事案があるということは、はなはだ遺憾に存ずるわけであります。私どもからも監督をされております衆参両院の御当局に対しまして、できるだけ早くこれを解決してほしいということを今申し入れておるというところでございます。
  11. 天田勝正

    天田勝正君 いつも、こういうときになりますると、大蔵省管財局と、それから所管になっておる省の中での責任があいまいになる、こういうことで、結果においては結末がつかない、こうなる。そこで、私は、今衆議院所管であるということからして、さればといって急に、他院職員を呼ぶということについては他院議長了承等も必要だと思いますので、今直接に使っておるのは本院でありますので、本院の管理部長を直ちにこの席に呼んでいただきたい。よろしゅうございますか。  そういたしまして、次に質問しますが、私の知るところでは、今お答えになるように、どこが責任かわからないようになっておるけれども、私の知る限りでは、すでに衆議院に移管されるときに不法占拠があった、その不法占拠あったものを解決せずしてそのまま移管したのだ、帳簿上、こう思いますけれども、移管したのはいつですか。
  12. 山下武利

    説明員山下武利君) 今ちょっと手元にその移管の時期の資料がございませんので、はっきりしたことを申し上げかねますが、二十三年にすでに参議院が明け渡し方の通告をしておられるわけでありますから、終戦直後から二十三年の間、つまり割合に終戦後日の浅い時分これが所管がえになったものと思われます。
  13. 天田勝正

    天田勝正君 これは当時本院議員になった人ならば何人だって知っているのであって、今現在は当時よりも目見当で倍くらいにはふえておりますけれども、少なくともここに十七世帯と書いてありますが、十世帯ぐらいはもうすでに終戦直後にあったのですよ。だから、大蔵省所管の当時においてすでに不法占拠があったのです。それで、そのままにして、そうして地所面積だけを帳簿衆議院に移管して、それがまた本院の使用のものになった、こういうことなんです。  確かに、そのお答えの中にもあるように、生活に結びつくとかなんとかいう言葉を言われますと、私自身もほろっとするのです。これからも他の問題で質疑いたしますけれども、この不法占拠の中には生活保護対象者になっておる者も確かにある。しかし、そういうことを言っておったら、国有財産不法占拠の問題などはとうてい解決はできません。そういうふうにほんとう善意国民であれば、生活に困窮しようとも、他人のじゃまにならないように橋の下とかなんとかに住まうのが善意市民なんですよ。むしろそういう場合には生活に困っているのだというのは言いのがれなんであって、そういうのが善意市民なんということではないのですよ。国のものや公共のものを、平気で来てそうして建物を建ててしまって、これからずっと質疑していきますけれども、その建てる途中に注意しても強引に建ててしまうというような善意市民なんというのは、あろうはずはない。だから、むしろ自分たち管理の行き届かざることを、あとになれば今度は何か大へん生活困窮者に同情したようなことを答弁されるのだけれども、それはそういうことでやるならば、みんなそれはもう、公有の墓地であろうとすべてがスラム街になってしまう。あるいはスラム街どころか、堂々たる邸宅を建てている連中さえあるのであって、そういう管理の行き方というところに問題がある。だから、私は、本院が使用してここに建築を始めたのは二十三年なんですから、これが三年間もすでに不法占拠をしておった。どんな人でも、十年間も十五年間も不法占拠すれば、今度は別にりっぱな土地も買えるしりっぱな家も建てられる、こういうことになる。  それで、それでは相手に対してどういう措置をとったかということについては、これは大蔵省側でやったのではなくして、これは参議院側でここに書いてある事柄、つまり明け渡し通告したりなにかしたのはやっていると、こういうことですか。
  14. 山下武利

    説明員山下武利君) その通りでございます。
  15. 天田勝正

    天田勝正君 それでは、管理部長が参りますまで、次の質問をいたします。  次は、資料十一に書いてあります旧陸軍高級副官官舎の跡であります。すぐそこに見える三角地帯であります。これは現に、相手終戦前に高級副官としてあそこへ入居した人であります。そうして陸軍がなくなってもそのまま居すわりで、今日に至っておる。これは実に、国会のすぐ目の前にあって、不思議というほかはない。かつて高級副官をしておって、今日私どもからいうならばあの不当な恩給制度、大将の腕一本と兵の腕一本に大へんに値段の開きがあるなぞというおかしな計算による恩給によって、生活になんか何ら困らない人です。こういう人はずるい人です。こういう人がその後引き続いて不法占拠をしておって、そして現実にこれは国の公務員でしょう、今現在も。しかも、人のお世話をする引揚援護庁にずっと勤めておった国の公務員が、こういう不法占拠のお手本を示すと。これは国会のすぐ目の前なんですから、大蔵省もお知りにならないという理屈はないのであって、こういうのをそのまま放置しているというのは一体どういうことなんですか。これは役所同士責任なすり合いにはできませんよ。
  16. 山下武利

    説明員山下武利君) ただいま御指摘の問題は、永田町にあります旧陸軍省高級副官官舎に、その当時から住んでおられる人に関する問題でございます。この方は、終戦の前から高級副官として居住を命ぜられて入居しておったのでございます。大蔵省といたしましても、これを普通財産処分対象として適当でないということから、できるだけ早く立ちのいてほしいということを再三申し上げておったのでございます。しかし、何分にも終戦の直前にそこに居住を命ぜられて入ったというふうな関係もございまして、そういう過去の事情もしんしゃくをいたしまして、昭和二十五年にはその普通財産を一時使用許可すると、しかし三十年の三月末までには出てほしいということで、期限付貸付契約を結んでおったのでございます。その後も退去をされませんので、関東財務局といたしましては再三、相手方に対して、内容証明によりまして立ちのきを要求しておるのでございます。いまだに解決していないということをはなはだ遺憾に存ずるわけでございます。これもやはり、天田委員のおっしゃいますようなことで、普通財産管理といたしましてははなはだ適当でない事例でございます。何分にも相手のあることでございますからして、できるだけ早急に円満に解決をいたしたいということで苦慮しておるところでございます。
  17. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 天田君に申し上げます。本院佐藤管理部長出席いたしました。
  18. 天田勝正

    天田勝正君 次に移ったのでありますから、一応この問題を片づけたいと思います。  私は、今の私の質問管財局長の答弁をお聞きになって、同僚諸君もまことに不思議なことだと私はお思いになると思います。この事例は、かつても国家の中枢におられて、普通の人よりもはるかにまさった生活が確保された人、そして今日もさようである、今日も国家公務員であります。少なくとも、その不法占拠の当初においても国家公務員。その後、つじつまを合わせて、そして契約をしたというけれども、このときも国家公務員。その一応つじつまを合わせた、一時使用を許して、その期限が切れた後においても国家公務員であります。一向、生活に苦しまない国家公務員が、国有財産自分の勝手に使って、そしてそれを管理すべき役所側においては、何分にも相手があるのでございましてなどということで、一体国有財産が不当に占拠されてよろしいものかどうか。そういうものがそういう人に使用されるならば、真に苦しんでおります国民が多数あるのでありますから、そういう人に解放してしかるべきことなんです。しかも、不法占拠をしたのでありますから、これとその後つじつまを合わせるために契約するなどということ自体が、私は国有財産管理としてはまことに当を得ないと、こう考えるんです。私のみならず、これは国民として怒りを感ずべきことなのです。国有財産というのは、役所の中の参議院管理するとか、大蔵省管理するとかという問題ではなくして、管理に当たるその衝のあなた方は何としたところで、これは国民財産だ、国民税金から成り立っている財産であって、その国民財産を守るのだという気持になってもらわなければ、とてもこういうことは解決するものじゃありません。こんなことを国民が知ったならば、税金なんか納めるばか者はなくなりますよ。これは一体どうしたのですか。どうしてその人は出ないのですか。もし出ないとすれば、それは国の官吏なのですから、昔でいえば文官分限令もございましょうし、懲戒免職だって幾らでもできるはずです。それも、復員局ですから、これは厚生省所管でございますと、あるいはおっしゃるかもしれないけれども、それは国民から見た場合には、同じ政府で、ただお役所間のなすり合いだけにすぎないのであって、大蔵省でその処分ができないとすれば、直ちに厚生省に通告すればできるはずです。そういう手続をなぜしないのですか。
  19. 山下武利

    説明員山下武利君) 本件につきましては、先ほどからも繰り返し申しますように、はなはだ遺憾なことと存じまして、関東財務局といたしましては、再三手を尽くしてあっせん交渉をいたしているわけでございます。ほぼ解決のめどがついたということを聞いているわけでございます。
  20. 天田勝正

    天田勝正君 私は、この例にもありますように、不法占拠をした者に対して、とかく国会なんかで文句を言われますために、あと契約するのですね。そして契約をしたのだから、今度は不法占拠でなくて正当使用だ、こういうことにつじつまを合わせる。そのこと自体、私からすれば、まことに知能犯的の所業だと思う。旧高級副官不法占拠して、昭和二十五年五月十五日に一時使用許可をしている。これは一体だれが許可したのですか。大臣のところへ持っていけば、めくら判くらい押すかもしれない。実際その衝に当たる人はどういう係りの人が当たるのですか。結局その人は、前からの役人同士で、まあいいだろうくらいで、ちょっと書類を作って、他の書類と一かたまりにして上司の方に持っていって、めくら判を押したのではないですか。どうもおかしいですよ。むしろ不法占拠をした者から賠償金を取るという話ならわかるけれども不法占拠すると、大ていあと正規契約をするのです。そういうことを東京都民が知ったならば、日比谷公園だって皆が入って不法占拠をしますよ。だれがこれは一体許可したのですか。
  21. 山下武利

    説明員山下武利君) 許可関東財務局所管でございます。今お尋ねのありました不法占拠をした者に対して、あとから追っかけて契約をして、不法占拠があたかも適法であったような形をとるのではないかというような御質疑でございますが、私どもはそれを非常に警戒しておるわけでございます。本件何分にも、正当な居住者としてかつて居住を命ぜられた方が、終戦後に住んでおられたという、ややほんとうの意味の不法占拠ということとは多少事情が違うという点もありまして、期限付でもって、一時普通財産があいておるんだからお使い下さいということで、期限付許可をいたしたという点であろうと思います。しかし、いつまでもそれを許可するということになりますと、穏当を欠くわけでございますので、それは三十年の三月までということでお約束をして、許可をしておる、こういうところでございます。三十年までは正規使用料をいただいております。三十年から先は、これはいわゆる私の方は不法占拠ということでございまして、契約はいたしておりません。従って、使用料のかわりに、これは賠償金というものを徴収いたしております。
  22. 天田勝正

    天田勝正君 そうすると、あとでよろしいですから、どういう人が許可したのか、それをお知らせ下さい。いつでもそうなんです。不当の許可などを与えても、何人責任を負わないのです。私はかつて二十九年、いわゆる空気木炭事件というのを取り上げて質疑をしたことがありますけれども、あの際にも四十九億の金がどこかへ行っちまった。行っちまったけれども、行っちまったという事実があっただけであって、何人責任をとった人はない。私は、人のやることですから、間違いがあるということは重々承知をいたします。けれども、その間違いが起こっても何人責任を負わないということに、国民怒りを感ずるのです。今も御説明を聞けば、まあまああいているんだから——あいているという理屈はないですよ。私は、必要があるから国民税金を使って取得をして、国有財産をやっているんであって、あいているなんていう理屈はどこにもありません。  それで、今度は聞きますが、終戦後、二十五年五月十五日、この日までは明らかに不法占拠であって、これは金を取っておりませんね。さらに、この二十五年五月十五日から契約をして、三十年三月三十一日までの間、これはいかなる条件で契約をいたしましたか。  次に、その後さらに居すわって不法占拠をしておるんだが、これは賠償金を取っておると言うけれども、どういう基準で、幾らの額で取っておりますか。
  23. 山下武利

    説明員山下武利君) ちょっと、今のお尋ねの点は、私の方に資料がございませんので、はっきりしたことは申し上げかねますが、論理上当然のことといたしまして、占拠されております期間については当然使用料を徴収しておると思います。従って、二十五年に許可がありましても、さかのぼって使用料を徴収したものと考えますが、ちょっと資料がございませんので、はっきりしたことは申し上げかねます。  それから、三十年三月三十一日以降の分につきましては、使用料相当分賠償金ということでもって徴収をいたしております。
  24. 天田勝正

    天田勝正君 そんなことだから、だめなんですよ。きょうもこの問題を本委員会で取り上げるなどということは、もう会期中からきまっておったんです。そして念のために、昨日も本院の事務局からちゃんときょう御出席の各役所には通知をしてあるのです。今私が質問するなどということは、この項を質問するなどと言っていないけれども国民代表としては当然、どう国が——というより、国民がということになるのですけれども、それが不当に侵害されているかどうか、聞くのはあたりまえなんです。あたりまえのことを聞いて、その用意がしていないなんというざまだから——あえて私はざまという。それだから、国民税金をむだに取り上げられるという結果になる。私はそういうことは承服できません。よって直ちにこれも、この資料を取り寄せて下さい。そうでなければ、その次々と十四もある事例質問していきましても、いつもその問題につっかえて、あいまいになる。そういうあいまいは困りますから、この問題はまた後に質問いたします。  引き続きまして、先ほどの問題に戻りまして、佐藤管理部長質問しますが、私の管財局長に対する質問をあなたさっき聞いておられませんけれども国立国会図書館分館のあるところ、今本院議員会館並びに速記者養成所の使っている中に三百坪不法占拠されているところがある。それで、占拠した者は大部分が旧陸軍に勤めておった者だ、こういうお答えで、大部分ということなんであって、全部とは言わない。これは衆議院所管であるけれども衆議院所管に移ったのは二十三年であって、それから本院が使用するに至ったのも、これも二十三年。そのときにはすでに不法占拠をされたままで、この面積だけ移管されておった、こういうことなんだけれども、その本院が使用するに至ったときの不法占拠がいかなる状態であったか。私は、目見当とすれば、そのときにもうすでに十七戸のうち十戸はおったと、こう思うけれども、本院が使用するようになってから、さらに数戸がふえている。その間、本院管理部としては、どんどんふえているものを見ておったのかどうなのか。さらにまた、それが不法占拠と気づいた後に、二十三年なんですから、今日まで十三年であります。十三年の間不法占拠を見過ごしておったのはどういうわけなのか。さらに次には、それらの不法占拠者に対して、ただずっと今日まで使用さしてきたのか、この高い地所を。そうして国民が住宅や宅地に困っているときに、まことにこれが温情というならばおそろしい温情なんです。こういう経緯について、一つお述べ願いたいと思います。
  25. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) ただいま御指摘土地につきましては、大体経緯は今御指摘通りでございますが、当時大蔵省所管でありました会館及び速記者養成所を建築いたしますための用地のうち、主として会館の現在建っております用地不法占拠しております——不法といいますか、居住しておりました者、これに当時立ちきの要求をいたしたわけであります。立ちのきを要求いたしましたが、当時終戦後の混乱した状況もございまして、その者たち立ちのく先がないという事情がございましたので、現在の大部分道路敷になる土地に移転することで話がついたわけでございます。そのときに本人各自から誓約書が出ておりまして、居住に関していつでも立ちのくという誓約書が差し入れてあるわけであります。その後も、本院並びに所管しております衆議院といたしましては、たびたび立ちのきを請求いたしたわけでございますが、そのまま現在に至ってしまっておるわけでございます。  で、現在道路公団におきまして、道路を拡張いたしますために、大体立ちのきについての話し合いがついたというふうに聞いております。また、数名の者は、すでに立ちのきを開始いたしておるようでございます。  その後に純然たる不法占拠者が三名おるわけでございますが、この三軒につきましては、それが建てます当時も、建てました後にも、立ちのきを再三衆議院と連名をもちまして請求いたしたわけでございますが、建築そのものは、これは建築が不法であるかどうかということは、都の建築局等の許可、不許可の問題でございますし、これを訴訟に訴えてまで、仮処分その他の方法をもってこれを建築をこばむということまではいたさないで、現在に至ったわけでございます。
  26. 天田勝正

    天田勝正君 まことにけしからぬ答弁ばかり聞くのだ。そしてまた、私が質問したうちに一つ答えていないことがあります。それは、不法占拠が十六年間にわたったのだけれども、その間において金を取ったのか取らないのか、取ったのなら幾ら取ったのかということを聞いておるのだけれども、これはまだ答弁しませんから、これから別の質問をしたその答弁の際に合わせて答弁願いたい。  今、答弁の中に、道路敷に移っていくということで話が一たんついた、こういうことだったんだけれども、まことにけしからない話なんだ。今国民が交通難のおりから、毎日のようにどの新聞かに投書のありますことは、業者であろうと何だろうと、道路で商売したり、梱包したり、仕事したりしている。一時的に自転車に乗って来たり、自動車で来たり、こういうことはいいけれども、そこのところに置きっぱなしで、これはまことに困る、こういうことをしょっちゅう言っておる。今の道路だって狭くて、その狭いものを一ぱいに使いたい。それをあるエゴイストによって勝手に私用に供されておる。おそらくどなたも気づいておるだろうけれども、毎日の新聞に出ておる。しかるところ、どこの道路敷だか知らぬけれども、そこに移っていく話し合いがついたということに至っては、とても常識ある者としては驚く答弁というほかございません。そういうことを一体役所はするのですか、しないのですか。  それから、建築の基準は東京都庁の方だなどと言うけれども不法占拠をしておるという事実はあなた方知っておるのですよ。衆議院に移ろうと、参議院に移ろうと、大蔵省にあるうちからの不法占拠なんです。そういうところにあとから建築されるのに、これは東京都の方だなどという考え方は、これは責任なすり合いだと思う。それを裁判に訴えてもどうもあったものじゃない。そういう不当なものにこそ裁判をしなければ、国民税金が守れませんよ。どうしてそういう気持になってくれないのか。そして、それは不法占拠土地であるがゆえに、建築許可については、基準については、都庁においても中止してもらいたいと、一通の手紙をやりさえすれば片がつくでしょう。そういうときは、向こうの責任だといって、それはおれの方でなく建築基準の手をつけるべきことじゃなどと言ったら、だれもやりますよ。それは一体どういうわけなんです。  それから、管理部長でなく大蔵省側に聞きます。この不法占拠の人に、同じ大蔵省の、今専売公社になりましたが、当時は大蔵省の専売局の所管であるたばこを許可したのはどういうわけです。不法占拠をしておる者に……。そういうことで、どこに一体役所の権威がありますか。これもついでに伺っておきます。
  27. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) これは現在からお考えになりますれば、また当時もその気で考えれば、そういうことであったかと存じますけれども、一方では、とにかく会館を建てなければならない。しかるに、そこに、不法であるけれども事情があって、つまり旧陸軍職員等で住む家がなくて、そこへ終戦後のといいますか、戦争中の混乱の後に、焼け跡に建てた、こういう事情から、とにかくその者をどこかにやって会館を建てなければならぬ。一方でそういう要請もあったわけでございます。従いまして、そのときに、すぐその連中がどこかに居住するところがあれば退去を要請することもできたと存じますけれども、実際問題として、そこに居住しております者をのかせて家を建てなければならないというまあ差し迫った事情から、やむを得ず、将来道路敷になるところでもあり、本人たちも誓約書を入れて何とか居住先が見つかるまで置いてくれ、こういうことでありましたので、当時そういう事情を勘案いたしまして、そこへ移転を認めた、かように存じております。  なお、使用料の問題でございますが、これは使用許可しておりませんので、使用料は取っておりません。これはいつでも立ちのかせるためには、逆にいえば、使用料を取れば、使用料を取って使用を認めれば、これはその期間は立ちのかせ得ない状況になりますので、そういう処置がとってあったものと思います。
  28. 山下武利

    説明員山下武利君) たばこ小売の許可事情についてお尋ねがございました。私はその方の担当でございませんので、どういうふうな事情でたばこの店が許可になったか、その辺のことはお答えすることができかねるわけでございます。
  29. 天田勝正

    天田勝正君 まだ、他の委員各位がよく御存じですけれども、私はこのことを幾たびか本委員会指摘しておる。初めてじゃない。それで、現在の管財局長はあるいは知らないかもしれぬ。しかし、知らないといったって、今までの管財局長が、歴代の者が知っておる。知っておることを、すでに後任者に伝えないということに、今日の役所が問題にならないほど腐っておると国民からは言わざるを得ない。かりに現在の管財局長、あなたの責任でないまでも、役所自体の系統に問題がある。それなら、それについては直ちに、その当時だれが許可したのか、担当に至るまでお調べになって、本委員会に直ちに文書をもって提出していただきたい。  佐藤管理部長、まことに不当な答弁です。当時の状態は、今あなたが言ったような状態とはまるで違うのです。一般の善意ある市民は、防空壕やそれから掘立小屋に居住しておったんです。あるいは住むに家なくして、遠いいなかからリュックを背負って通っていたんです、東京に。私も、国会議員といえども、宿舎もなければ会館もなかった当時、やむなくして私自身のごときも、片道、当時汽車が途中で蒸気が上がらなくてとまったなどという、今から見ればこっけいなことまであった。窓にはガラスが一つもない。そして支線に乗りかえて、延々四時間ずつかかって通ったんです。ここでおそくなれば、当時議員に第一期になった人は、ここにも堀さんいらっしゃいますけれども、この中で議員がどれだけこのテーブルの上に寝たかもしれない。そういう状態の中で、善意国民というものは他人の所有や国民財産を侵してはおらないのですよ。それが実情なんです。ところが、あそこにあれしたのは、現にここにも書いてある通り、軍の人間でしょう。最もその当時として困らざる人たちです。そして最もその当時恵まれた階級なんです。軍におったというだけで、一般国民がかゆをすするような時代に、軍に関係しておる者のうちに行ってごらんなさい。今われわれが生活するがごとき生活をしておったんです。最も恵まれている者が、当時のやむを得ざる事情などという、そういうのが標準になるならば、今だって、善意国民で、そして宅地や家屋に困っている人たちがこの事実を知るならば、さっきも言った通り、日比谷公園であろうと、上野の山であろうと、全部住宅になってしまいますよ。それで、あと手がつけられないんだ、まあまあ裁判までに穏やかに——穏やかという言葉はまことに穏やかに聞こえるような言葉だけれども、そういう不当な者にこそ取り締まり法規の最大限を活用することが、国民財産を守るゆえんだと私は感じておる。そういうのが一体事情になりますか、どうなんですか。なるなら、それは政府でもよろしい、参議院事務局の方針であるというならよろしい、そういうのが正常なる理由になるというならば、発表してごらんなさい。あすから日本の国有財産はめちゃくちゃになる。もう一ぺん聞いておきたい。
  30. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) 私は現在管理部長をしておりますので、その責任を云々して言うわけではございませんが、私の承知しておりますところはそういうことなんでございまして、これ以上のことは私も当時の事情をつまびらかにいたしませんので、もし後刻でよろしければ、よく事情を調べましてまたお答えいたしたい、かように存じております。
  31. 天田勝正

    天田勝正君 さっき、道路敷に移転させることで話し合いがついたというのは、それはだれがやったんですか。
  32. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) 道路敷のところに移転しました当時は、嘆願書提出されておりまして、嘆願書が小林事務総長あてに提出されております。これに対しまして、誓約書を取りまして移転を認めましたのは、当時小林事務総長でございます。
  33. 天田勝正

    天田勝正君 役所は持続しておるのでありますから、前任者のやったことは後任者が責任を負うということでなければ、役所というものの存在はありません。前の人がやったことで、今度あとの人は知らぬのだというならば、これは国民役所などというものを全然信用しなくなる。それで、言いますけれども、さっきから言っているように、道路そのものが国民財産なんですよ。国有財産不法占拠された上に、役所が一体国民財産である道路に移れなどという協定をするなどということは不法行為だと思う。そんなことができるならば、ちょっとした責任のある役人になれば、片っ端から宅地として住まわせることができるようになります。これはあるいは、言うなれば、本院議員たる私どもみんなにも責任はあるでありましょう。そういうことをするならば、まあしかしわれわれも本院の事務局それ自体を今のように黙ってまかせるというのでなしに、それぞれ一々の行為に対して各党各派の、あるいは代表者なりあるいは議運の委員長なり、しかるべきところで一切その承認を得ない限りは何事もなし得ないということも、お互い議員として考えなければならないと思うのです。そこで、それらの点については後刻つまびらかに本委員会に対して報告をしていただきたい。わからないということでありますから、ほかの質問もありますから、この問題はこれでやめておきます。
  34. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 関連して。今天田委員から、もう前回も、たびたび数年来質問があるわけですが、私も前回質問をいたしたのですが、まだそのほか参議院会館の敷地の中に家が建っておりますね。あれは何軒建っておりますか。
  35. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) 参議院会館の敷地の中には、他の家が建っているものはございません。
  36. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 しかし、参議院会館のわれわれのところに、今便所の少し向こうから上に上がっているところの地所は、一体どこの地所です。とにかく国有財産に違いない。
  37. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) あそこは衆議院財産でございます。
  38. 天田勝正

    天田勝正君 それは私が答えるのはおかしいんだ。おかしいのですが、今管理部長はそこらのところは事情を知らないのです。今参議院議員会館の敷地内には、そういう宅地は建っておらないといえばおらない。おるといえばおる。おかしい答えだけれども、それはこういう事情なんです。あの電車道の、今でもわずかに赤れんがが残っております。あの赤れんがからこっちは国有財産で、その向こうは道路なんです。はっきりしている。そのときに、すでに陸軍残りの連中があそこに不法占拠しておったものだから、本院の会館を作るのと、それから速記者養成所を作るにあたって、あの電車道のところまで、境まで国有財産一ぱいに使いたいのだけれども、いるから使うことができない。やむなく、その分だけ引き下がって作っている。それで答弁には今のようなしゃくし定木な——引き下がって作っている部分から見れば、そこにはおりませんと。もともとはこっちのものなんだ。こういう事情なんです。だから、当時私はあそこの建築委員をしておった。だから、直ちにそれは立ちのかしてそして速記者養成所にすべしと、こういうわけだったが、ちっともそれをしないんだ、十六年間。だから、今日少し声を大にしてせざるを得ない。  そこで、次の問題に移りますが、次に、やはりそこに見える三角地帯、旧陸軍高級副官のいた所でありますが、そこに当初の不法占拠者のほかに、あらためて林田龍喜なるものが今日居住しておる。これは昭和二十六年になって入ってきた。前々のに同じ地所の中に、門も何も同じ、入るところも同じ、前々から不法占拠であるところへもう一人不法占拠者が入ってきて、そしてその不法占拠に入るときに許可した。ずいぶん国民の常識から見ればおかしな話なんです。その入居する許可をする土地自体が、ほかの者の不法占拠の場所なんですよ。そこへ肩車のように今度はまた入れたんです。それを許可しているんです。だれがこれを許可したんですか。こういうことを国民が知ったら、実に驚いてしまいますよ。
  39. 山下武利

    説明員山下武利君) 本件許可所管関東財務局であります。この許可昭和二十六年の四月でございまして、やはり先ほどお尋ねのありました高級副官官舎、前の問題でございますが、それと同じようなことで、昭和三十年の三月までという条件で貸付契約を締結しております。ところが、その後やはり依然としてこれが立ちのきに応じないということで、先ほどの措置と全く同様なことで、再三これも内容証明でもって要求をしておるという実情でございます。これも前の件とほぼ同様なことで、大体解決のめどはついたというように聞いております。
  40. 天田勝正

    天田勝正君 この許可した林田龍喜なるものは一体何者ですか。それからもう一つ、やはり同じく許可したとはいいながら、昭和三十年三月三十一日まで期限付で貸したはずなんです。ところが、初めから入る前に許可をしたくらいなんですから、それを十分約定を守る人だと、前から居すわりしちゃってそいつへ追っかけて貸したというケースじゃないのです。入る前に許可しているんですよ。そうすれば、許可した当該官吏というものは約定期間が過ぎたならば必ず出るという見通しを立てなければならぬ。そうでなければ不当に国民財産を侵害したことになる。いいですか。ところが、その後これもまた居すわりでしょう。そこで先だって、まあ私に文句言われるものですから、先だって最近解決のめどがつきましたと言っているのだけれども解決のめどより前に、そういう約定も何も守らないような連中にばたばた許可するということ自体国民怒りを感じます。これは一体いかなる者で、そうしてその後どういう処置をとったんですか。
  41. 山下武利

    説明員山下武利君) どうもはなはだ恐縮ですが、手元に資料がございませんのですが、この入居を許可しました当時は公務員であったと思います。それで公務の執行上、当時公務員宿舎が非常に払底しておりました関係から、便宜これに貸したという事情があったものと思います。しかし、これはほんの一時的なことでございますから、むろん期限付でもってこれを認めるということで、普通財産の貸付許可ということであったと思うのでございますが、やはり先ほどと同じようなことでもって立ちのき先がないというようなことから、なかなか契約を履行されないというはなはだ遺憾な事態になったわけでございます。使用料は正式な契約期間につきましては正式に取りまして、それは納めてございます。期間の過ぎましたあとは、やはり先般の例と同じことで賠償金ということでもって徴収をいたしております。
  42. 天田勝正

    天田勝正君 これまた満足すべき答弁ではありません。そういう当時、おりから公務員住宅が逼迫しておりましてなどといって、大てい陸軍の居すわりだったり、どうせそういうことを許可されておるのは高級官吏にきまっているんです。ほんとうに住宅に困っている人にはやりっこはない。とにかく昔の高級副官の住宅なんですから。今ほかの役所状態を見たって、それはまさに局長、次官クラスのうちです。そういうところへ入る者は、下っ端でほんとうに住宅に困っておるという人ではございませんよ。だから、一体何者だと聞いているんです。そういうことも答弁にならないんでありますが、これまたきょうの答弁になるように準備すべきが、本来本院で取り上げるという以上は十分注意しなければならぬ事柄なのに、それもしてこない。遺憾でありますけれども、次回までにちゃんと、委員長、お願いします。
  43. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 委員長より管財局長に申し上げますが、ただいまの天田君の質問につきましては、後日回答のできるように御準備願います。
  44. 天田勝正

    天田勝正君 次に移ります。次には、資料十三、新宿戸山町旧陸軍戸山学校の跡であります。この土地が三百三十九坪三三、建物が百四坪、関係不法占拠十三世帯、この問題であります。これは終戦後からすでに不法占拠をいたしておって、そうしてこれこそほんとうに住宅困窮者にうちを提供しなければならないとして、都営住宅の敷地として都がほしいということから、都に譲り渡したんじゃなくて、国の方から事情まことにもっともだ——こういう場合こそもっともなんです。もっともということで都へ貸した。都へ貸しところが、都の方ではほんとうに困窮者に——これは今指摘した土地よりも膨大な土地ですが、それへ都営住宅を建てて、真に住宅に困っている者に提供しよう、こうはかったところが、この中の今指摘した坪数だけは不法占拠者がどうしても立ちのかない。手に余して、東京都の方からまた国の方へ返されちゃった。これは大蔵省所管から衆議院から本院にと、こうぐるぐる回ったそういうケースと違って、事情の中には似たところもあります、不法占拠のままで貸した。だから、東京都の方では手に余してそいつを返してきた。そこで、今度は昭和二十三年の三月二十八日に国立第一病院に所管がえをした。そうしたところが、今度は結局その不法占拠をした者が、使用料が金額が高いのすったのということで、これが折り合いがつかない。そういうものが一つあって、一方においては今度は国立第一病院に所管がえされたものが、今度はその病院の方でよそへ売っちゃった。一体国立病院に所管がえをしたというのは、国立病院が当然使わなければならないから所管がえしたはずなんです。それを国立病院の特別会計という別建会計があるゆえに、売っているんですね。簡単にこれを売り払うということは、まあ法律的にはできるでありましょう。法律的にはちゃんと責任はだれもがのがれるようにできているが、そういうことを一体していいものなんですか、どうなんですか。不思議なケースですよ。これをよそへ売っちゃってもいいものだったら、国有財産として大蔵省で売ったらいい。こういういきさつからして、何か不法占拠者とつながりがあるのじゃないかという疑いを持たざるを得ない。直接やったのじゃ工合が悪い。よそへ所管がえをしておいて、今度は国立病院の方から売った。まことに納得できないのですから、この点についてはもう少し経緯をこまかく話して下さい。
  45. 山下武利

    説明員山下武利君) これは非常に古いケースでありまして、私のところではあまり十分な資料が残っておりませんのですが、昭和二十三年当時、ここにありますところの国立第一病院に所管がえした部分というものにつきまして、厚生省の方からぜひこれを自分の方に所管がえしてほしいということで、当時病院は一般会計でありました関係で、無償で厚生省所管がえになったものでございます。その後どういう事情でこれが売り払われたのか、三十五年の十二月に特別会計の所属の建物として相手方に売り払われているのでございます。この辺の事情につきましては、どうも私どもの方はちょっと所管が違いますので、その辺の事情は今のところつまびらかにいたさないのでございます。国有財産の全体の管理から見ますというと、一部のものがこういうふうに売り払われるということは非常に遺憾なことであると、今のところ私ども考えているわけでございます。
  46. 天田勝正

    天田勝正君 大ていそういうふうに、所管が違いますという答弁があるだろうと思っていた。そこで、これは私は一般論として聞くが、法律的には多分ちょうどのがれる道ができているのです。だけれども、常識的におかしいでしょう。国有財産を、同じ政府大蔵省が、管財局が本来所管しているものであるけれども、しかし特別会計ができればそこへ所管がえするというのは、他にもたくさんあるのです。そのこと自体を問題にしているのじゃない。だけれども、林野特別会計というものがかりにあって、そこへ所管がえをするという場合には、林野庁なり何なり、当該役所が必要であるから所管がえするのです。その先へ行って売っちまうようなものだったら、所管がえなんかする必要はさらにないのです。国民から見ればそういう常識ですよ。  それで、確かに国立病院の特別会計は、直接には厚生省所管であることは私も承知しているが、といって、すべての特別会計が審議されるのは、大蔵省がここへ来て説明し、審議するのは本委員会であります。大蔵省とは無縁ではないのです、特別会計は。でありますから、一般論として、所管がえをした財産が、何十年も使って、その当初使用目的とした理由が消えたという場合は、これは売り渡してもやむを得ないでしょう。また、その売り渡す場合も、当該会計で処分せずして、本来からすれば、大蔵省の方へ戻して、それから国有財産として処分する、これが普通なんです。本来からすれば、国有財産なるものの所管庁である大蔵省に戻す、こうすれば、大蔵省にすれば、それは国立病院特別会計としては要らないけれども、この財産は他の国の何かの目的に使えるのです。所管がえした特別会計の範囲内で、要らなくなったからといって売っちまうのでは、国有財産はどこかへ行っちまうのですよ。そういうことはどうなんですか。会計処理上の不当だと思いませんか。どうなんですか。
  47. 山下武利

    説明員山下武利君) これは先ほど申しましたように、非常に古いケースでありますので、その当時の担当の人に聞かないと実はよくわからないのでありますが、昭和二十三年に厚生省から所管がえを要望されましたいきさつは、おそらくこれを病院として活用したいということであったと思うのでございます。その後、いろいろとこの中に入っている人との折衝がうまくいかないで、病院にすることを断念されて、これを売って財源を満たされて、の財源でまた別にその施設を求められたというのではないかと、これは実は厚生省の方に伺わないとはっきりいたしませんですが、私の方で伺っております範囲ではそういうふうに思われるのでございます。  会計上の処理は、はなはだ形式論で恐縮でございますが、所管がえをいたしますときは一般会計で無償所管がえになっております。その後に病院特別会計というのに独立をいたしまして、普通財産の施行令によりますと、大体病院とかその他企業に属する財産を売り払います場合には、普通財産所管がえをする必要がない、引き継ぎ不要財産ということになっております。特別会計のままで処理をするというのが原則になっておるわけでございます。その原則に従って処理をされたものと考えます。
  48. 天田勝正

    天田勝正君 当時の事情をつまびらかにしないというのですから、それは私は後刻これまたつまびらかにしてもらいたいと思います。けれども、私は国民の代表者として実に不思議だから、一般論として今お伺いをしているのです。会計の種分けについては、一般会計、特別会計と、こういう形であるし、一面国有財産使用する面からいいますと、大きくいうならば裁判所の系統、国会、そして行政府と、こういうふうに私は三本になると思います。会計の種分けとしては、別に考えるならば、かりにさっきから問題にしておりましたここの不法占拠の問題にしても、三角地帯はいまだ大蔵省が持っている。そして旧陸軍参謀本部土地衆議院が持っている。けれども、もし衆議院が持っておるから、衆議院自体で要らなくなったら、これは衆議院の方で売り払って別にそれは汚職ではない、それは衆議院の費用に充ててもよいということになれば、金銭自体つじつまが合う。が、そういうことをして私はいいものではないと思っている。国民の聞きたいところは、一般会計、特別会計という区分じゃないのですよ。衆議院が使おうが、あるいは厚生省が使おうが、農林省が使おうが、その当該所管庁において使わなくなったら、これは要らなくなったのだから、一たんは大蔵省管財局に移す、そうすると、かりに衆議院が要らなくなったならば、今度は厚生省が使うという場合もあるだろうし、そのときにあらためて管財局の方から厚生省が要るというなら厚生省、農林省が要るというなら農林省にやるという、こういう措置がしかるべきだというのが国民の常識なんです。だから、一般論として、これを移しかえしてすぐに売り払っている、特別会計では。国立病院がすぐに売り払うというようなものは、はなから要らなかったということになる。こういうことが特別会計に所管がえすることによってどんどんできるということじゃ、特別会計それ自体国民からすれば危なくて信用できなくなる。ですから、当時の経緯は別として、さようなことがしかるべきことか、不当なことか、この一般論を私はまず聞いておるのです。そうでなければ、管財局なんか要らなくなってしまいますよ。
  49. 山下武利

    説明員山下武利君) 所管がえ後にすぐに売り払ったと、今御質問がありましたが、私の方にあります資料では、所管がえは昭和二十三年でございまして、病院から相手方に売り払われたのが三十五年でございまして、十二年以上たっておるということでございます。この間に、もちろん所管がえの事情といたしましては、病院として使うという理由があったものと想像されるわけでございますが、いろいろな事情から相手方との話がうまくいかないで、これを売り払わざるを得ないということになったものと想像されるわけでございます。  それから、国有財産の会計上の処理の根本原則についてのお尋ねでございますが、もちろん、天田委員御承知のように、不用の財産はこれを、一般会計相互間でありますれば、普通財産所管がえをいたしまして、管財局監督のもとにこれを処分をするという大原則があるわけでございます。特別会計と一般会計の間では、有償でもって取引が行なわれるということでございます。ただ、先ほど申し上げましたのは、要するに、特別会計の中のたとえば造幣、印刷、あるいはアルコール、郵政、国立病院、その他約二十ばかりあるのでございますが、こういういわゆる企業的な特別会計に属するところの財産は、それ自身を一般会計に引き継ぐことなしに中でもって運用するということが国有財産法の原則になっておるわけでございまして、これは企業的な会計の独立性を尊重した規定だと思うのでございます。たまたまこの財産は、病院特別会計ができました後に、そういうふうな売り払いが行なわれました関係から、一般会計から無償でもらったものを特別会計が売ったというふうな異例な状況になっておると思うのでございます。原則は、そういうことで間違いはないと思うのでございます。
  50. 天田勝正

    天田勝正君 これは、いずれにしても、との種のものは、国民わかりのするような処分の仕方でなければ、法律的な会計法の条文などということを持ち出されても、かりに国民の方が疑えば二通りある。国立病院特別会計に移したけれども、特別会計はその建物を要らないのでさっそく売っちゃった。そうすると、そこに国立病院の方と何か買い取る者との中につながりがあるのではないか、まず一つこういう疑問が生じます。それからもう一つは、もともと大蔵省の役人との間に何かが存在していて、しかしじかにやるのは工合が悪いから、特別会計に所管がえをしておいて、そしてすぐ売り払っちゃった。こういうところには、相互にちゃんと了解、通報制があって、これは自分の方の所管がえにはなったけれども、しかしもう要らないから売りたいとか、要らないから大蔵省に返すから、他に必要なところに提供してくれとか、何かそういうものがなければ、責任がどこに行っちゃうかわからない。このようなことについてここでやりとりしていると、それだけで時間をとりますから、どういうこともちゃんと経緯を明らかにして次には出していただきたい。  そこで、次に聞きますが、ここに依然として十三世帯不法占拠者があるのでありますけれども、これにつきまして債務確認書をとったのが三名ある。これは明らかに債務であるということを向こうも認めておる。金は取らないけれども、とにかく認めただけは良心的だ。十三世帯のうち三名が承知して、あと六名は金額の点で折り合わないので返事をしない。返事をしなければ、いつまでも不法占拠のままでおるわけです。こういったばかなことでいいのですかね。結局、通算すれば不法占拠十六年ですよ。これを普通の家賃を払ったことに換算すれば、りっぱな住宅が他にできちゃう。これはほかの者が承諾しないから、それでしようがないのだと、こういうことなんですか、どうなんですか。
  51. 山下武利

    説明員山下武利君) この相手方は、旧陸軍許可を受けたということで、終戦当時からずっとこの建物に居住しておった者でございます。これにつきましては、いろいろ御意見もあろうかと思いますが、当局といたしましては、占拠当時のいきさつからいたしまして、貸付することもやむを得ないという前提でもって貸付の交渉をいろいろやっておったのでございます。その中に、使用料の点をめぐって当局の申し出に応じないという者があることは、非常に遺憾でございますが、せっかく今のところ努力中でございます。
  52. 天田勝正

    天田勝正君 結局、全般として聞きますが、この質問しておる中には、詐欺して売ってしまったものもあるのです。それでも、あなた方の方は訴訟しても民事ばかりやっているのです。詐欺なんですよ。国有財産を、またさらに自分の所有なりとして売ってしまったものすらあるのです。きょうはもう十二時になって、時間がありませんので、その一つについては私は言いませんけれども、そういう相手さえも民事だけに終始している。何分にも相手があって、相手が承知しないからと、こういうふうになっている。相手が承知しない場合には、今指摘した例でも、今まででも十六年、これから民事などやっておったのでは四、五年たつのはわけないですよ、そうすると、二十年。大体二十年といえば、人間の就職してから稼ぎどころを全部国の財産の上に不当居すわりしてしまったということになる。これは訴訟しておれば必ず五年くらいかかります。しかも、刑事事件にでき得ることすら、そういう太い連中にだけ特別な温情を加える、これが私は解せないのですよ。私が解せないのではない、国民が解せないのです。さっきのだって、国立病院で所管がえしてそれを直ちに売り払うくらいのものならば、それこそ真に住宅に困って橋の下におる連中を収容してやった方が、どれほどよい政治であるかはかり知れません。ですから、こういうものは民事で、向こうが承知しなければ結局やむを得ないで、このまま済んでしまうのですか。まずこの件についてはそれだけにしておきます。あと詳細出てからお聞きします。
  53. 山下武利

    説明員山下武利君) 決して話がつかないからそのまま役所の方が泣き寝入りしてしまうというようなことではございませんで、相当強硬に使用料の交渉はやっておるわけでございます。向こうとしてはできるだけ安くしてもらいたいということがありまするし、私の方といたしましては、あくまで適正な使用料でなければ契約が成立しないということから、なかなか話がつかないという場合もあります。しかし、そこのところは、できるだけ早期に解決すべく今努力しておるところであります。
  54. 天田勝正

    天田勝正君 この際警告しておきますが、さっきから言うように、古いことで経緯がわからないというのだから、経緯を明らかにして出してもらってから、本委員会で取り上げてもらいたい。ただ、いかにも、十六年ですよ。これはもう十六年も居すわりをして、そうして国の言い分を承諾しない。どう考えたって善意国民じゃないのですよ。そんなことなら、国有財産をみんなに解放したらいいですよ。ずるいやつだけが、どうもそういう条件じゃ承諾しない。そういう条件じゃ承諾できないといって居すわるのは得にきまっているのだ。それではあまりアンバランスで、一般国民は了解できないのですから、それでこの際警告しておきます。その者がどうにもならぬというならば、次の国会にはさっそく整備して、国有財産の確保に関する法律でもなんでもいい、仮称ですが、こういうものでも直ちに提出しなさい。この問題はまた別の機会にします。  もう一つだけ、昼前に指摘いたします。過日の新聞にも、日比谷公園と裁判所の間の道路を直しまして、幅員を広げて、そして非常に自動車が混雑しておったのが助かった、こういう写真入りで記事が出ている。ただし、その中には、非常に魔の場所が出現した。その魔の場所というのは、ナイトクラブがあすこに出張っておって、その地帯だけ、ちょうどあの広い歩道部だけが出張っちゃっている。歩道が小さくなっておるので、あすこが最近魔の場所になったと、こういうことが一月ばかり前でありますけれども、写真入りで報道されました。  この経過は、最初に社団法人日本国際文化協会、名前はまことにけっこうな団体に国が貸した。旧貴族院の議長官舎の跡であります。ところが、それがその協会なるものに貸したら、さっそくその翌年には、その一部の六百六十坪——六百六十坪といえば、今やあの地帯は何億であります。そういうものを、今度は最高裁に貸した。実に驚くべきものです。国の財産を民間に貸している。今度はその民間会社は国に又貸しをしている。そしてこちらから貸す方はただ同様で、民間の団体が今度は国の機関に貸すときには十分な使用料を取っている。こういう商売が一体許されるならば、これは何人だってやりたくなってしまう。まず、この貸した事情はどういうわけですか。国有財産国民税金を使って保有するということは、国民全般の福祉のための行政をするために必要だから確保する。それを、名前がりっぱであろうと何であろうと、民間団体に貸して、その民間団体の用に供するために借りているというならば話はわかる。これを今度、一体国の機関にまた貸すと、こういうことがあっていいものかどうなのか。国民の常識からすれば悪いことだと、簡単にそうなる。伏魔殿です。これは一体どうですか。  ところが、まだこの先がある。さらにその翌年には、残りの三百五十坪に木造の二階建の家を建てて、今でもある。それで、これを登記をして、これは旅館です。今度は、建て終わって登記をしたら、翌日にはさっそく東洋観光株式会社なるものに所有権の移転登記をしちゃった。ところが、今度はまた、その先があって、その所有権の移転登記を受けた東洋観光という会社が、さらにこれを転貸した。又貸ししちゃった。これは第三国人。そうしてまたこの男が、今度はウイリアム、ハリス、ザビエル、小池という男に貸した。今とうとうドライブ・イン・ナイトクラブになっちゃった。そこのところだけ道が広がったのがひょっと狭くなっている。だから、そこでしょっちゅう交通事故がある。そういうばかばかしいことが一体あっていいものかとうか。これは資料にも出ているのですから、政府側においても御承知なんです。御承知であれば、何らかの手を打たなければならないというのが国民の常識なんです。この点は一体こういうことですか。  まず第一の、民間に貸して、その貸した団体が今度は国に貸した。これは民間に貸した条件、それから貸し料、国の方で今度借りて、裁判所の方で借りて幾ら払ったか、それから始めて下さい。
  55. 山下武利

    説明員山下武利君) これは現在係争中の事件でございまして、非常に長いいきさつがあるわけでございますが、そもそもこの国際文化協会というのに貸したのは、昭和二十三年の七月のことでございます。このいきさつは、当時の文書によりますと、衆議院及び参議院の事務総長の連名で、東京財務局長あてに、雑種財産の貸付について依頼の件というのがございまして、当時社団法人の国際文化クラブが今建築中の国会図書館の予定地のところに財務局から許可を受けて建築に着手をするという際でございましたので、国会の方から、さしあたりその工事の中止方を申し入れて、そのかえ地といたしまして、ここの土地をあっせんしたいということでございました。当時この土地は、参議院から雑種財産として財務局に引き継がれたものでございました。この土地、これはもと貴族院議長官舎敷地でございます。これを同クラブに貸付方お取り計らいを願うという書簡がございました。そこで、おそらくそれに基づいたものと思いますが、昭和二十三年の七月三十日に文化クラブの建設敷地として貸し付けたものでございます。その後に、翌年になりまして、その一部を最高裁に転貸しておられるのであります。この辺の事情が私は実はよくわからないのでございますが、この借料はおそらく無償であろうと思います。その残りのところに、さらに木造二階建旅館一棟というものを建築いたしました。二十五年の八月十日に保存登記をいたしました。その建物が東洋観光興業株式会社に所有権移転登記をされました。その東洋観光なるものから、さらに第三者に転貸をいたしました。そして結局、ドライブ・イン・ナイトクラブというものになったということは、今御指摘通りでございます。  これは国有財産使用として、はなはだ遺憾なことでございますので、その事実が判明いたしましたので、国はさしあたり、国際文化協会に対しまして、賃貸借契約を解除して原状回復を要求するとともに、昭和二十八年の十二月に東洋観光ほか関係者に対しまして、建物の収去、土地明け渡し及び建物明け渡しを要求いたしましたが、相手が応じませんので、昭和二十九年の五月に東洋観光外三名に、相手方所有の建物に対して譲渡等の禁止の仮処分を申請をいたしました。同月三十一日に仮処分の執行をいたしました。それから、同年六月二十一日には建物収去、土地明け渡し請求訴訟を提起いたしました。訴訟の結果といたしましては、昭和三十三年の八月二十一日になりまして被告会社の建物の買い取り請求を容認する国の一部の勝訴の判決があったのでございまして、これに対しまして、原告も被告もともに控訴をいたしまして、現在は東京高裁に係争中でございます。で、国の控訴いたしました理由は、これはあくまで無断使用であるからして、借地権は生じていない。従って、建物の買い取り請求を容認する判決には服しがたいということでございます。現在、まあ申し上げましたように、東京高裁に係争中の事件でございます。
  56. 天田勝正

    天田勝正君 これまたとてもややっこしゅうて、同僚各位だって私が言っただけでは頭に入り切れないほど複雑なんです。それで、これも私が質問した中にまだとても答えられないものがある。高裁じゃとても無理だ、最高裁の方で……。幾ら人に払う契約をして、今日まで幾ら払ったのか。どだいおかしいでしょう。国の財産を民間の団体に貸して、その民間の団体が今度は裁判所に貸した。借りた裁判所はそれに金払っている。それが結局不当だったから、その裁判所に今訴えているというんだ。ずいぶん奇妙きてれつ、こういうことがすでにあるというだけで、国民はいやになりますよ、実際。これは私はさっきから本院に幾ら関係のあることばかりをどんどん言ってきたんですがね。これはもともと、ここには三百五十坪と書いてあるけれども、三百五十坪の問題ではないのです。千十坪の問題なんです。東京のどまん中で千十坪というのは、借地権だけだって大へんなものです。そこをその国際文化協会なるものに貸したんです。千十坪といえば、百姓するといったって三反百姓ができるという始末ですよ。そういうものが、一国際文化協会なるものが三反三畝を使うということに不審に思わないというところに、この問題が起きてくる。まず第一に貸すときに、これはもともと国の財産であるけれども所管は旧貴族院。それで、自然に貴族院がなくなったから、そのあとを本院が引き継いだ。本院が引き継いだものを、これは旧貴族院のあれですから要らないというので、大蔵省の方へ返した。返したあとが、さっき述べたような事態になっちゃって、とうとう何と六百六十坪を除いた三百五十坪につきましては、旅館を建てられちゃって、これが移転登記になって、それをさっそく翌日には他へ売って、そうしてそれを買った者がまた第三国人に売って、その第三国人が今度また別の第三国人に売っちゃった。それで、今度は訴える先は最高裁だというわけなんでありまするから、もう少しくこの点は裁判所側にもちゃんと大蔵省の方で調べてもらいまして、私の質問については、これは聞いている同僚委員各位も聞きたくなったろうと思う。そうでありますから、これもとても尽きませんので、一つ整備されて次にお伺いしたいと思います。  一番最後の問題は、これはややこしいケースでありますけれども、ずいぶん新聞にも書かれて、本院、衆議院でも問題になったことでありますから、質問は短くやりますが、いわゆる虎の門公園事件であります。これにつきましては、ごく最近、本院の決算委員会で取り上げられまして、数年前にもこれは衆議院参議院ともに決算委員会において、二十八年ごろに決議がなされております。そうして大蔵大臣に、すみやかに公園復原のために適切な措置を行なうようにというので、要望がなされておる事件であります。ところが、その要望がなされた後に、さらにニュー・エンパイア・モータースという会社が、今ごらんのようにりっぱな鉄筋コンクリートの家が建てられてしまった、こういうことでございます。そうして、こういう居すわりの連中は、言い草がふるっている。原状回復はできない、原状回復はできないからそのまま使用を認めてもらいたい、こういうわけのようであります。それで、明け渡しなんかにはとても応じられない。そこで、こちらから訴訟している。  ところが、今度ここに不思議なことは、これは大蔵省や本院でもともに不思議に思っていることなんですが、裁判所もこのごろは私は全然信用できなくなっている。さっきの例を見ても、それが一つであります。今指摘した問題も、裁判所の方では和解をしろと言っているのですね。裁判所だけは、われわれはこれは尊厳を認めていかなければ、法治国としての秩序は成り立たないのでありますから、これにはとかくの批判を私はしたくないのです。こういう、これは生活に困っているのでも何でもない。事情やむを得ないのでも何でもない。今あげたのは、事情やむを得ないんじゃないものばかりあげたのでありますが、ことに大事業家です、これは。その大事業家が居すわっているものを、むしろ懲罰式にそういうものを追い出してもらいたいというのが国民の感情であろうのに、裁判所の方は、和解をしろ。どうして和解をしますか。現に鉄筋コンクリートの建物を建てて堂々と営業を営んでおるのに、和解をすれば、向うの言い分を聞く以外に道がない。これは私は国民の声として言うのであって、しかし、こういうものに対してはこれこそ断固たる処置をとらなければ、裁判所といえどもそれは間違っておるということを国側で申し立てなければ、どうも国の機関に国が申し立てるというのはおかしな話だけれども、そういう事態になっちまった。これは結局管財局としては、あるいは大蔵省としては、大臣ともしっかり腰を据えてもらわなければならぬのだろうと思いますが、目下、どういう処置をとろうとされておりますか。
  57. 山下武利

    説明員山下武利君) 本件につきましては、天田委員よく御存じのことと思うのでございますが、昭和二十八年の七月八日及び七月十五日にそれぞれ衆参両院におきまして決議が行なわれております。衆議院は決算委員会参議院は本会議でございますが、いずれも同じ趣旨であります。これは、虎の門のもとの小公園をすみやかに原状回復した上で公園として使用するように適切な措置をとるようにというような趣旨でございます。大蔵省といたしましては、それに基づきまして返還要求、原状回復を求めたのでございますが、相手が応じませんために、訴訟になって今日に至っておるということでございます。また、現在のところ第一審の判決もないのでございますが、最近裁判所の方から本件和解に応ずる意思はないかというお問い合せがございまして、私といたしましては、非常にはっきりした衆参両院の御決議もあることでありますからして、御決議の趣旨に沿った方向の和解であるならばそれは考えることもできるけれども、原状回復ということを前提にしない和解であるならば、これはよほど国会の御意思を伺ってみなければ何ともきめかねるという態度をとったわけであります。
  58. 天田勝正

    天田勝正君 国会の意思は定まっておりまして、衆参両院の決算委員会において、すみやかに原形に復して児童公園にせよということなんです。今さら国会の意思を聞いていただかなくても、はっきりしておる。この決算委員会の報告は本会議で報告されまして、これまた全会一致で承知しておる。ですから、国会に聞いてみなくてもいいんです。私はこの際、裁判所も信用できない。裁判官の頭を疑わざるを得ないのです。これはあなた方に質問する言葉ではないのだが、国民ほんとうにしゃくにさわります。東京のこれだけ土地がなくて、今や子供の遊び場もないというのに、これまた毎日ではないけれども、しょっちゅう新聞に投書が来る。だから、国会はせめてあそこだけでも——ないところを買うということはできないのだが、もともとあの国有地は児童公園だから、児童公園に戻しなさいということなんかは、これは国会でなくてもあたりまえだと思う。だから、衆参両院ともにこれを何ほど取り上げたか。これで大体八年前です。そうして裁判は、これは一ぺん口頭弁論は終結したのです。終結して、今度は裁判官が引き延しをやっているのだが、この奇怪なことには国民は疑惑を持たざるを得ない。終結したものを、今度は一年もたってから、もう一ぺん口頭弁論を再開した。それで職権和解を勧告してきたのでしょう。そういうことです。職権和解ですよ。この裁判官たるや、実にもうけしからぬと思うのだが、そういうことなんです。ですから、国会の意思は定まっておるのだし、あれだけ当時虎の門公園事件として新聞にも書かれて、世論からも指弾された問題でありますから、そういう裁判官などを相手にしないで、和解に応じない、国会の意思は定まっておるということで、これこそあなた方がやるにやりやすいことなんです。国会で議決、これはもう最高機関としてどうにもならない、やるのだという態度を示せば、私は非常にやりいいケースであるとともに、ことに東京のどまん中で居すわりが平気で行なわれるということになれば、これはもう道義地に落ちます。一罰百戒というのは、こういうとき用いなければ……。一罰百戒で、相手があした首をくくらなければならない相手には、ちょっと手心を加えなければなりませんが、こんなものを取りのけさしたって一向困らないような連中にこそやりなさい。これこそずるい見本なんですから。そういうことによって国民財産を侵害されてはなりません。ですから、これは大いに腰を据えて、今さら国会の意思を聞くも何もいったって、どこへ聞きますか。議長に聞いたって、ちゃんと決議案があるのだから、意思はその通りですと言うほかはない。そこらのところはむしろ逆に、裁判官はけしからぬと思っていたのだけれども、あなた方もどうもけしからぬという気になってくる。このニュー・エンパイア・モータースという会社は、一体代表者はだれですか、それをまずお答え下さい。
  59. 山下武利

    説明員山下武利君) 社長は吉岡照義という人であります。
  60. 天田勝正

    天田勝正君 それじゃ、予定しましたのはたくさんありまして、今三つばかり例をあげたのですけれども、お聞きの通り、結局他の例をあげましても、とても全部国民の納得するような答えはこれは用意されておらないのであります。ですから、今まで質問した部分も含めまして、次に委員長の計からいで、適当な機会に委員会が開かれるときまでには、ちゃんと用意をされて、そうして来てもらいたい。ですから、私は委員長にこの問題はきょうで終わりだということでなしにしてもらいたい。お願いします。  それで、きょうはほかの閉鎖機関の問題もございますので、私は午前中の質問はこれで終わりたいと思います。    ——————————
  61. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) この際お諮りいたします。  現在理事が二名欠けておりますが、本日はこのうち一名について補欠互選を行ないたいと思います。互選の方法は、前例に従い、成規の手続を省略し、この際委員長は理事に佐野廣君を指名いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  なお、質疑は午後に譲りまして、午後の再開時間は、午後一時といたします。  これをもって暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩    ————————    午後一時二十一分開会
  63. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 休憩前に引き続きまして、委員会を再開いたします。  最近における設備投資金融問題に関する件を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大臣に二つの問題についてお伺いしたいのですが、一つはガリオアの問題なんですが、それからもう一つは、最近の経済情勢につきまして、予算編成のときに予定したいろいろな条件と、その後の実際の設備投資なり、あるいは物価なり、国際収支に非常に相違が出てきておりますが、そういう点について倍増計画というものをここで手直しをしなければならない情勢になっているのじゃないかと思いますが、そういう点について時間の許す限り質問したいと思います。  まず第一に、ガリオアの問題ですけれども、六月十日に覚書が調印されましたが、この内容はどういうふうになっているか。新聞の報ずるところによりますと、大体三つからなっておる。一つは、民間供給計画に基づく援助、それから第二が、占領地域の統治、救済のための援助、占領地域の経済復興のための援助、それと余剰物資援助、これが含まれていると言われています・が、この項目についてそれをどのくらいにこの金額を見積もっておるのか。つまり、覚書に調印した金額は四億九千万ドルですが、その四億九千万ドルを算出した根拠ですね、その点をまず伺いたいのです。
  65. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) ガリオア、エロアの問題は、御承知のように、米側との問に基本的な合意に達しましたので、六月十日に小坂外相とライシャワー大使との間で覚書に調印が行なわれたわけでございますが、その返済期日とかあるいは返済通貨等、返済の条件という具体的な細目については、これから日米間で折衝の上決定して協定を作成するという今段取りになっていますが、この協定を作成するときまでに、この両国で打ち合わせた、今御質問にありました債務総額をどういうふうに見たとか、あるいはこの四億九千万ドルと算定した根拠というようなものについて、これも両国に行き違いのないように、この問題も最終的に折り合いをつけることになっておりますので、ちょっときょうここで私が、こういう根拠でこういうふうになったと詳しいお話ができないのでございますが、むろん根拠のあることでございますが、今両国でこの根拠についての説明というようなものもいろいろやっておる最中でございますので、総額をどうして、率をこういうふうに見たとかいうことを、ちょっとここで今のところ詳しく申し上げられないのです。  問題は、御承知だと思いますが、この問題の処理については、反対債権というものもございますので、これをどういうふうに見るかという問題、一応全部日本が反対債権は考慮されておるということになっておりますが、この考慮の仕方も、たとえば全体の額で控除して、そうしてドイツ等の例もございますから、一定の率で計算をやってみると、一つの金額は出る。そうじゃなくて、かりに向こう側の主張の率でこの額を出して、それからネット控除をする、日本の言う反対債権を引くという数字はこうなる、いろいろの交渉をやった結果、最もここらが妥当であるという額に落ちついたということになっておりますので、その出たものがこういうことによってこの額は妥当だというようなものについての率とかやり方については、そういうあらゆる考慮をやって出た額でございますので、今両国においてもそういうものの相談をしておりますから、もう少しこれはお待ち願いたいと思います。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 六月十日に小坂外相とライシャワー大使との間にかわされた米国の戦後対日援助処理に関する覚書ですね、これによりますれば、新聞の報ずるととろでは、四億九千万ドル、年利二分五厘ですね、十五年で償還返済すると、これは大体違いないのでございますか。
  67. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 内容は、四億四千万ドルを十二年間で支払いする、残りの五千万ドルを十二年の後三年間で支払いをして、総額四億九千万ドルを十五年間で返済する、こういうのが内容でございます。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは利息を入れますと、総額どのくらいになりますか。時間がございませんから、そういう点あとで何か資料で聞かしてもらっていいです。  あと続けたいと思うのですが、今、大蔵大臣の御答弁ですと、その四億四千万ドルを十二年間で返し、あと五千万ドルを三年間で返すというのですが、これは違いないとして、それでは、こういうふうに返済の金額ははっきりきまっておるのに、調整がついたのに、そのもととなる援助総額がはっきりしていないというのはどうもおかしいのです。それで、この援助の内容が、さっきお話ししたように、ガリオアとエロアと、それから米国の民間供給計画に基づく援助というのも入っていますね。そういう余剰物資の援助も入っているように新聞では報じておる。私、時間ございませんから、いろいろ伺いたい点があるのですが、ただ疑問点について伺っておくのですが、余剰物資の援助がその中に入っているというのはどういうわけなんですか。
  69. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 余剰物資は、ガリオアと同じように、これは向こうが債務と心得ておるのでございますので、ドイツのときにはこれは除かれたということがあっても、こちらの場合にはこれを入れるということに私ども同意しておるわけでございます。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この余剰物資というのはどういうあれですか。前にアメリカから余剰物資の、余剰農産物の援助協定に基づくものかどうか。あれですと、ちゃんと協定ができておりまして、一億ドルの援助を受けて、千五百万ドルは学童に無償でくれて、残り八千五百万ドルの七割を、それを日本政府が積み立てて使って、あと三割はアメリカが使う、こういう協定があるのですね。その協定に基づく余剰農産物の援助なのか、そのほかのやつか、それがはっきりしないのですよ。それでは、もしそうだとすれば、そういう協定があるのですからね、ちゃんと返済協定があるのでありますから、それが入るというのはどうもわからない。
  71. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 今、とにかく日米間でこういう具体的な協定を作成する段取りに入っておりますので、それができましたら、協定できましたら、できるだけ早い機会に国会に提案して御承認願いたいと思ってやっておりますので、このときまでには政府の今までの折衝、それからこういうものに対する協定の基礎、そういうものについて全部整理して提出するつもりでおります。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その援助を受けた金額が、それがわからないでですね、返済額が四億九千万ドルにきまったというのは、どうしてもわれわれ割り切れないのです。その本協定ですね、本協定ができた場合は、その援助額というものをはっきりその内容別に発表されるわけでございますか。
  73. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) この援助の総額というようなものにつきましては、大体日本側の——どもがこの間の国会で報告しましたように、今日本側で確実として確認し得るものの作業をやっておると前に申しましたが、一応それができましたために、日本側としては債務の総額について一定の主張をしております。大体協定はこの主張がいれられた形になっておりますが、米国も、その米国の示した数字と日本側の示した数字のどういう形によってこういうふうにしたというものは、向こうにも国会に対するものもございますし、そういうような点で、今協定のこまかいそういうものの基礎についての説明ということも両国でやっておりますので、私どもが協定成立後国会の御承認を願いますときには、援助総額をどう見たというような問題、全部これは国会にお出しして説明するつもりでおります。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは臨時国会に出されるおつもりですか、その承認を。
  75. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) これはまだ、臨時国会までに間に合うかどうか、これはまだその時期は今のところはっきりわかりません。できるだけ早く協定をやって、そうして協定でき次第国会にお出ししたいと考えております。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ政府の方も何か腰だめ的にきめたような感じをわれわれは受けるのですが、はっきりしたあれですね、総額の計数整理などもまだはっきり出ていないように思いますし、アメリカとの間にその間もはっきり一致していないようですが、この問題についてはまたあとで大きな問題になってくると思いますが、まあほかの質問もいたしますので、時間がございませんから、この問題についてはその程度にとどめます。  次の質問ですが、最近、大蔵大臣も御承知のように、設備投資が非常に予算編成の前提として予想したよりも著しく大きくなってきているようであります。また、それが原因になって国際収支の赤字も予想外に大きくなっており、しかもこれは単に一時的ではなく、かなりこの赤字も長く続くのではないかというような状態も出てきております。あるいはまた、物価の問題も楽観できなくなってきておりますし、そういう予算編成の前提となる条件が非常にまあ狙ってきておるのですが、その点について大蔵大臣はどういうようにお考えか。われわれ見るところでは、このままでは済まされないのではないか。まあ設備投資につきましては、これを何とかやる方法についてはいろいろ問題はあるでしょうが、この行き過ぎについては何か調整に手を打たなきゃならないのじゃないか。さらにまた、ひいては所得倍増なり高度成長政策の手直しをしなければならない段階に来ておるのではないかと思うのですが、この点については大蔵大臣はどうお考えですか。
  77. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 私どもが今年度の予算編成のときに見込んだいろいろな経済指標というものは、御承知の通り今全部狂っておりますが、しかし、それはまあできるだけ私どもの方は安定基調の上に高度の経済成長を達成しようという趣旨から、いろいろの今年度の施策も予算編成当時いろいろ考えたわけでございますが、ただその後変わっていることは、当初の予想より以上に経済成長が進んで、大きく予想よりも各指標がみな伸びているということから、いろんな問題が起こり、御心配をかけておるわけでございますが、しかし最近の様子を見ますというと、そうやはり私どもは心配する事態ではない。成長が高ければ高いほどいいというものではなくて、これをあまりに急激な変化を与えないようにやっていくことが望ましいので、少し行き過ぎと思われる点についての適度の調整は必要かとも思いますが、ただいまのところの推移を見ますと、もし経済が私どもが心配しているような方向に行っているとしますれば、やはり何といっても物価というものが経済の集中的表現ともいわれておるものでございますから、物価動向というものを常に見ていろいろ心配しないといかぬということになろうと思います。  この最近の物価の動向は、御承知のように、卸売物価は昨年の八月からずっと上がってきましたが、ここでようやく卸売物価の落ちつきが見られまして、四月から今日まで、ことに四月半ばごろからは、もう数週間、わずかでありますが、引き続き卸売物価下落傾向でございまして、四月から〇・四%ないし六%というようなふうに落ちて参りまして、今ようやく落ちついてきている。この落ちついた形で推移するだろうというのが私どもの考えですし、相当供給の余力もございますし、ここで物価を上げる特別の隘路というようなものはございませんので、卸売物価から破綻が見えてくるというような情勢は従来のところ見られないこと。それから消費者物価につきましては、この五月に入りまして、半年ぶりに下がるという傾向になって参りましたし、これも今後の予想をいたしましても、そう大きく上がるという方向ではないと思われますので、まず物価面は非常に落ちついているということが言われましょうし、  今度、設備投資の面で見まても、当初、予算編成当時は、三兆一千億円という予想でございましたが、これより多くなることは事実だろうと思います。しかし、どれくらい設備投資が今年は多くなるかという問題を見ますというと、これも最初希望計画を政府の各機関でとって集計した数字は相当大きくなっておりますが、合理化審議会の吟味が加わったり、あるいは一般の企業家及び金融業界の慎重な態度というようなものが非常に出てきましたために、最終的にいって今年度の設備投資がどのくらいになるかということははっきりはいたしませんが、一時希望計画をとったときのような数字が実際に実行される金額であるということはもうないと私どもは見ておりますので、この点を考えますというと、これから先行きの国際収支面ということを見ましても、後半期の輸出期へ入った場合の国際収支の改善というものは私どもははっきり見越される。早ければことしの九月は経常収支の均衡が見られやせぬかというようなことまで見られるというような状態でございますので、私はここで今までの政府の成長政策を、大きい基調の変化によってこれを変えなければならぬというようなところへ迫っておるというふうには考えていませんし、概して、いろいろ心配すべき問題はございましても、私はこの当初の予想より少し多い成長率になっておるんじゃないかと今のところは考えております。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、まあ今までのところという条件がついておりましたが、従来の方針を続けていく、手直しする必要はないと、こういうお考えですね。
  79. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 手直しの考えは、私はする必要はないんじゃないか。というのは、大体国際収支もおそらくこの五月が不均衡のピークであって、六月はこの赤字幅は五月よりは減ってきますし、七月、八月、九月といくことによって、この今までの不均衡回復というものは大体予想されますので、国際収支も悪いときのピークを私は越えていると思っています。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一番いわゆる最近の行き過ぎといわれる現象の中心になっている問題は、設備投資にあると思うんですが、設備投資は、今大蔵大臣、そんなに行っていないんじゃないかというようなお話があったんですが、大体どのくらいのお見通しですか。最初の計画では、見通しでは、三兆一千四百億ですね。どのくらいのお見通しですか。
  81. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) まあ民間から希望計画をとったときの数字は大体三兆六千億から、まあ見方によっては、通産省の推算では四兆億近いという数字も出て参りましたが、三兆六千億円程度の設備投資があるだろうといわれておりましたが、この産業合理化審議会の答申によりますと、通産省所管法人の三十六年度の設備投資額一兆七千九百四十八億円の数字のいろいろ吟味の結果、千四百億円近い調整が加えられて、一兆六千億という程度になっていますが、この答申も、実際の投資にあたっては、金融情勢とかあるいは企業家の慎重な傾向というものによって、ここまであるかどうかということもはっきりいたしませんし、通産省所管以外の他の設備投資がどれぐらいになるかというのも、これは推定でございましたが、この設備投資の調整と歩調を合わせていくということを見通しますというと、三兆六千億よりは実際には低い設備投資になってくるんじゃないかと思われますが、しかし、三兆一千億という当初の見込みより多い設備投資をやることは間違いないと思います。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは当初の見込みより非常に大きくなっていることによって、最低私は三兆六千億と思っておったが、中には三兆八千億あるいは四兆くらいの予測もありましたが、三兆六千億としても、これは当初の予測と非常に違ってくると思うんです。それは、三兆六千億の民間設備投資を中心として、成長率は予想より非常に大きくなるわけですね。そうしますと、国際収支の面についてももちろん影響が出てくるし、その点について今大蔵大臣は非常に楽観的なお話でございましたが、当面の財政金融の問題としてすぐ問題になってくることは税金の自然増収ですね、これがまあかなり大きくなるんじゃないかと思うんです。そうして税の自然増収が大きいために、それとまた貿易の赤字がかなり予想より大きくなっているために、そこに政府対民間収支の当初予想と非常に狂いが出てきているわけですね。それで金融を逼迫さしている。そういう状態になっているのですが、この点についてどうなんですか。たとえば当初の予想では、大体政府対民間収支は千六百億の揚超の予想だったと思うんです。ところが、このままでいきますと、大体逆に千四百億から千七百億ぐらいの——いや散布超過、千六百億の支払い超過という予想だったわけです。それが逆に千四百億から千七百億ぐらいの揚超になると思うんですね。そうしますと、これはもう資金の需給関係に大きな相違が生じてくるんでありまして、こういう点についてはどうお考えですか。特に税金の自然増収ですね、三十五年度においては、その後千億以上増収があったと思うんですが、この点も伺いたいんですがね。三十六年度においてもまた予想より成長率が大きい、そのために自然増収が多くなって、それが貿易の入超と合わせて非常に金融を逼迫している、こういう状態になっているのです。この点、どういうふうにお考えになっておりますか。
  83. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) さっき御了解を得た通り、私はちょっと出席して、すぐ帰って参りますから、そのあとお答えいたしますので、その間もしできたら、税収の問題とかいろいろな問題について、事務当局がおりますから、私の帰ってくるまでお願いします。
  84. 村山達雄

    説明員(村山達雄君) ただいまの木村先生のお話でございますが、問題は二つあると思いますが、一つは、三十五年度の経済指標が三十五年度の第二次補正予算を計上した当時見通された指標とどれくらい一体動くのか、これによる自然増収、これは結果的には三十五年度自然増収に現われるわけでございますが、その分子があるのではないか。この問題が一つと、それからただいま御指摘のありましたように、設備投資その他が実際のこの前の計画よりも相当伸びるとした場合に、三十六年度の税収がどういうふうに変化するか。この二つの問題だろうと思うわけです。  その前に、まだ三十五年度の決算数字はわかりませんが、四月末現在で見ますと、第二次補正後九百二十七億程度の自然増収になっているのであります。この内訳は、この前の予算委員会でも御説明したと思いますが、源泉所得税におきまして約二百億、法人税で二百億、申告所得税で百七十億程度、それから関税で約百億、こういうふうになっております。原因別に見てみますと、給与所得につきましては、確かに昨年の年末の賞与の見積もり方、これが過少であった。対前年予算では一四%程度のアップと見ておりましたのが、一九%ぐらい実際は臨時給与でもってよけい支払われた。こういった点、あるいは配当の支払い金が、われわれが考えておりましたよりも三十五年度においてふえました。こういうことが主たる原因になってございます。それから申告所得税の方はむしろ実態的に申しますと、不動産の譲渡所得は最近非常にふえまして、土地の値上がりブームによりまして非常にふえました。それによる増収、それから配当の増加による分、営業所得が予算より若干ふえた、こういう問題は実態的にもちろんございますが、もう一つは資金繰りから来る問題がございまして、確定申告のときの税額が予定納税額の税額に比べまして二割以上アップいたしますと、その二割をこえる分については法定の期限の三月十五日ではなくて、その後三カ月間分納できる、こういう制度になっておりますが、納税者の方は資金繰りがだいぶゆるやかになっておりますので、その徴収猶予の制度を利用しないで相当即納される部分がある。こういうことによる増収が非常に目立っておるわけでございます。法人税につきましても、御案内のように、申告のときの税額の半分は即納いたしますが、残りの半分につきましては、自後三カ月間分納できるわけでございます。これもやはり資金繰りの関係からいたしまして、その徴収猶予を相当放棄されて即納された分、それによる増収が相当ある。それから本人の会社の申告と税務署の調査が違う場合に更正いたしますが、その更生の増差税額が、三十五年度の場合相当下期に固まっておった、こういうような事情があります。それから、これは経済指標と申しますか、われわれの見積もりの方も問題でございますが、売り上げがふえましても所得率が低下いたしますと、当然所得は減るわけでございます。この所得率の低下、所得率を幾らに見るかという問題はあるわけでございますが、三十五年度の予算では一〇〇%、対前年度同じ程度を見ておりましたのが約八%ぐらい上がりました。この要素が非常に大きいわけでございます。それから関税につきましては、御案内のように最近非常に輸入がふえまして、特に機械を中心として輸入が非常にふえてきた、こういう問題があって、結局それやこれやがございまして、九百二十七億程度出たものであろう、かように考えておるわけでございます。  で、三十六年度の予算の見積もり方は、実はこれは計算の技術的な方法でございますが、予算編成当時、確定しております最近実績の過去の課税実績をもとにいたしまして、それからその当時の経済指標に比べて三十六年度の経済指標がどれくらい伸びるか、この測定をいたしまして、その伸び率を掛けておるわけでございます。ただ、間接税につきましては、それよりももっと確実な方法がございまして、たとえば酒でいいますと、三十五酒造年度の生産石数は四百七十万石というふうにきまってございます。これは今後変わる見込みはないわけでございます。それからまた、ビールにいたしましても、業界の生産計画は、たとえば五百九十万石である。こういうものは国民所得の増加によって、多少は計画は変わるかもしれませんが、なかなかちょっとやそっとではこの計画は変わらないんじゃないか、こういう面がございます。砂糖等につきましても、これは農林省見込みの輸入見込み数量をもとにして計算しているわけでございます。三十五年度のいろいろな経済指標が上がりまして、この見込みが変わって参りますと、当然変えて参らなければいかぬ、こういう性質のものでございまして、ある程度物資別に機械的に出ておる。先ほど申しました全体のGNPの関係でどうなるかという問題は、従って主として直接税の関係でございます。おっしゃるように、これがもし非常に伸びるということになれば、その限度において相当の増収が期待されるわけでございます。ただ、われわれが非常に心配しておりますのは、何分にも年度に入りまして二カ月でございます。物価の動向がどうなるか。それから特に大きな問題は、今後の金融情勢が非常に税収と関係がございます。それからもう一つは、法人の今年の所得率がどうなるかという問題、それがまた法人税につきましては、会社の決算態度と密接な関係を持ってございます。減価償却にいたしましても、準備金にいたしましても、ある最高限度はきめておりますが、各会社はその最高限度を利用するわけじゃございませんで、将来の見通しとの関係において、そのうちどれだけ利用するかということにかかっております。これらもまた結果的に見ますと、所得率の一部として反映されるわけでございますが、そういう要素で今後のことがかなり心配で、なかなか楽観要素もございますし、悲観材料もあるということでございます。  ただ、今までの実績を申し上げますと、五月末までの税収がわかっておりますが、それによりますと、一般会計で三千百八十八億。予算額の一兆六千六百四十八億に対しまして一九・二%という収入歩合になっております。これを前年度の税収の決算見込額に対する割合一五・六に比較いたしますと、三・六%の上昇率を示しております。従いまして、今までのところは相当引き続き順調であるということは申し上げられると思いますが、将来の見通しにつきましては、何分にも二カ月しかたっていないということ、それからいろいろな材料が今後ございますので、まあ的確なことは申し上げられないという次第でございます。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十五年度四月末での今の九百二十七億。そうしますと、決算では大体どのぐらいになる見通しですか。やはり一千億近くなる……。それともう一つ、三十六年度について大体成長率九・八%になっている、一応名目で。ところが、実際はこのままでいきますと、二%から一二%ぐらいになると思われるのですよ。そうしますと、一%狂うと約五百億ぐらい増収になると思われますね。そうすると、三%狂えば千五百億自然増収がふえる。どうも三十六年度は少なくとも、まあこれは目の子勘定ですけれども、三十五年度で二千九百億、予算よりも自然増収があったわけですね。大体あるのですね。三十六年度は少なくとも私は二千億ぐらいの自然増収が予想されるのじゃないか、こう思うのですが、その点どうですか。
  86. 村山達雄

    説明員(村山達雄君) この九百二十七億という数字、これは決算でどうなるか。大して動かないと思います。おそらく動いて四、五億程度の幅じゃなかろうか。どちらにしても十億以下であることは間違いなかろうと思います。その程度の幅を持った数字だと思っております。  それから、本年度の自然増収、これははなはださっき申し上げましたようにむずかしい問題でございます。先ほど御説明申し上げましたように、三・六%ぐらい昨年に比べて好調であります。しかしながら、毎月々々の好調の度合いはそれぞれの月によりまして変わって参る。しかもその年の景気によりましてこれが上がる年もある、下がる年もあるというわけでございまして、今後のほんとうの見通しでございますが、今までのところは非常に順調である。先生おっしゃいましたように二千億は出るのじゃないかというのは、今のところ、どうもわれわれは確信を持って申し上げられないので、特に先ほどの、つづめていいますと、所得率の問題、決算態度の問題、金融情勢の問題、この辺が一番大きな問題じゃないか。その前にもちろんGNPの問題もございますが、そういった諸要素がございますので、なかなかむずかしい。ただ、われわれの計算の方法は、国民所得に対する弾力性とか、そういうふうにとっておりませんで、各税日ごとにそれぞれ従来の経験からしてこれが一番合っているという方法をとっておりますので、いろいろな計算の方法はございますが、それが動いた場合でも、われわれ、法人とか、申告所得税については生産指数、物価指数に関連していろいろ税収をはじいている次第でございます。    ——————————
  87. 天田勝正

    天田勝正君 私は、委員長に本日質問としてお願いいたしましたのは、台湾、朝鮮両銀行の問題、外地簡保の問題、郵便年金、振替貯金あるいは占領地保険の問題等多岐にわたるわけであります。しかし、そのやり方といたしましては、事務的な事柄を積み重ねた上で、そうして池田内閣の方針について大臣質問する、こういう順序をとりたいと思っている。そこで、大臣は長くいられないのでありますから、きょうなるべく具体的に、質問のある木村委員にも時間を割かなければなりませんから、ついては事務的な質問と  いえどもそれを聞いておいていただきませんと、最後の締めくくりの答弁が出てこないと思う。それで、大臣はずっといられないにいたしましても、二人いる政務次官のいずれかに出席求められませんか。——まあ、それは調べていただくといたしまして、最初に朝鮮銀行、台湾銀行の預金者の問題について質問するわけでありますが、過日委員長を通じて資料提出を求めまして、そのうち両行の貸借対照表は出て参ったのでありますが、これが閉鎖時とそれから新会社設立時と二つに分かれておりまして、このつながりが普通一般の会社、銀行等の貸借対照表と趣を少しく異にいたしておりますので、この脈絡が私は不明なんであります。そこで、この貸借対照表があるのでありまするから、直ちにこの間の損益計算書も用意されていると思いますので、これを質問を続けている間に一つお取り寄せ願いたいと思います。  それで、今私が質問いたします焦点は何かといいますと、結局当時の役職員あるいは株主に対しては不当に厚い処遇をいたし、その反面預金者に対してははなはだしく不利な扱いをいたしている。ここに焦点を合わして質問をするのでありますから、そのつもりで一つ答弁者もお願いいたしたいと存じます。  まず第一に、この朝鮮銀行、台湾銀行、二つの閉鎖機関は、これはちょうど国内における日本銀行の位地にある発券銀行でありまして、特別の権能を与えられております。でありまするから、その後の閉鎖機関としての監督も私は大蔵省側においては日本銀行に準じてやっておられると思うわけでありますが、さようでありますか。
  88. 山下武利

    説明員山下武利君) ただいまお尋ねの点でございますが、朝鮮銀行及び台湾銀行は、終戦後におきまして閉鎖機関整理委員会の手でもって清算を行なっておったのでございますが、平和条約の発効後は単独清算に移行しております。
  89. 天田勝正

    天田勝正君 それは何をいうにも、これから質問いたしますけれども、とにかくこの両行が日本銀行同様に発券銀行であるという特殊性があるのです。その特殊性から生ずるまた問題がここに出てくるわけです。これが今日これから質問するわけですけれども、そういうことだから、単に閉鎖機関であるというだけの私は監督であってはならないと思う。法律的にいかがであろうとも、及ぼすところは実に膨大なんでありまするから、特別に大蔵省としても私は厚い監督をし、きびしい目をもって臨んでおると、とれが法律の条文がいずれであろうとも当然であろうと思うのでありますけれども、そういう態度で臨んでいませんか。
  90. 山下武利

    説明員山下武利君) 朝鮮銀行、台湾銀行はもちろん戦前におきましては発券銀行でありましたが、閉鎖機関となりまして後は、一般の閉鎖機関と同様の扱いを受けておるのでございます。昭和二十年九月三十日に閉鎖機関の指定を受けましてからは、ほかの閉鎖機関と同じ扱いのもとに清算を続行して参ったのであります。
  91. 天田勝正

    天田勝正君 これはまあ、かみしもを着たような答弁です。その閉鎖時が九月三十日であるということは、おそらく本委員会では何人も承知しておる事柄なんです。問題は、その閉鎖にされなければならない機関であったと、それはさっき私も指摘したが、特殊な権能も与えられておる。で、いうなれば、預金者の方から見たときに、それはなるほど朝鮮総督府というものが、国内の内地と違うものがまたあって、そうしてまたその総督府の中に発券銀行という朝鮮銀行、あるいは台湾においては台湾銀行、こういうものが利用されておった。しかし、いずれも国家権力というか、国家の機能を果たすために、便宜外地においてはそういう処置をとったというだけで、やはり預金者、国民の方からするならば、その預金なり何なりは、国を信用するという形から私はその預金者との関係が生じたと、こう思うのでございます。で、それを特別な閉鎖機関になった後は、普通の閉鎖機関と同じだから、発券銀行であっても何でも特別に扱わないのだ、そういう話はどうも国民の側からするならば、私はおかしいと思うのです。しかし、そうなればこのことは大臣にも聞かなければなりませんから、先に進みます。  そこで、第一に聞きたいのは、その営業停止時であります。閉鎖機関に指定されたのは九月三十日でありますけれども、おそらく営業停止をしたのはこの終戦即刻であったと思います。その時点におきまする朝鮮、台湾両銀行のその当時における預金者の数、額というものは、全部わかりませんか。
  92. 山下武利

    説明員山下武利君) 天田委員御要求の資料にもそういう御要求がありましたのでありますが、朝鮮銀行及び台湾銀行の外地にあります店につきましては、終戦後に資料を持って帰れなかったものが非常にたくさんありまして、預金者等の数の実数も実は不明でありまして、正確なお答えができないような状況にあります。
  93. 天田勝正

    天田勝正君 それは朝鮮、台湾両銀行は、この提出された資料で、支払ったもののうち、外地預金と国内預金と分かれておりますけれども、この際の国内預金というものは朝鮮銀行ならば朝鮮の中を言うのではなくして日本中だけを言う、外地というのはそうするとここで言っておるのは朝鮮だけをさす、あるいは台湾銀行の場合は台湾だけをさす。それも不明確である、こういうことですか。
  94. 山下武利

    説明員山下武利君) おっしゃられる通りでありまして、国内預金としてあげてありますのは国内にあります店舗の預金の払い戻しだけのものであります。外地預金としてあげております件数並びに金額は、閉鎖機関として明らかに指定されました後に内地でもって外地の預金は支払い得る状態になりましたのでそれを支払いました実績をあげているわけであります。
  95. 天田勝正

    天田勝正君 繰り返すようですけれども、その国内というのは日本内地だけだ、今現在の日本だと、そういうことですね。  そういたしますと、次に、総額の一番の根拠は不明確な点があるのでありますから、どうも遺憾なことでありますが、それが不明であるというのは、ああした特殊銀行でありますから、形態は違いましょうが、他の機関、たとえば満鉄などはやはり向こうが本社でこちらは支社という形でありましょうけれども、しかし、ほとんどそれが混乱がなかった。これは預金のごときものではございませんけれども、とにかく混乱がなかった。そのことは、特殊な会社なるがゆえに、東京支社なるものにほとんどの帳簿、まあ二重保管といいますか、そういう用意ができておった、ここにあると思うが、どんなすみの職員でもそこに行けばわかるという形になっていた。これは金銭と違って人と研究の成果の問題ですけれども、そういう用意をすべきであったけれども、していなかったというのははなはだ遺憾である。国内には、そうすると、朝鮮なら朝鮮の中にあった店舗で預金あるいは貸付、そういう方の国内の、東京支店と言ったと思うのですけれども、それぞれ朝鮮、台湾ですね、それは何も今私が指摘したような特殊な注意は払わなかったのですね。
  96. 山下武利

    説明員山下武利君) 何も資料がなかったというわけではないようでございますが、先ほど申しました終戦の年の九月三十日に閉鎖機関に指定されましたときに、相当たくさんの帳簿書類等が占領軍の手で持ち去られたといったようなことがありまして、相当資料が散逸をいたしております。従って、総体の正確なことは把握しがたい状態であるというのが実情のようでございます。
  97. 天田勝正

    天田勝正君 次に、特別、この株主、役職員等が、われわれから見れば理由のわからない分け取りをやった、預金者だけが不利なことをやられたという一つの例でございますけれども、営業停止時に役員、職員に退職金を支給しましたね、一たん。この退職金が、資料によりますと、朝鮮銀行においては三千九百二十九万二千円、台湾銀行においては千四百七十一万六千円、そうしてこのほかに、朝鮮銀行においては五百三十一万六千円、台湾銀行においては七百七万六千円、こういうものを支給しているのですね。今日の貨幣価値からすれば、下落をし、さらに下落をして参りましたから、この数字は何ら驚くに足らない数字である。しかし、当時の貨幣価値から見たら、これは驚くべき数字なんです。すなわち、これを私が一人当たりに割ってみましたところが、朝鮮銀行の場合は、普通まあ退職というのでありましょう、これが一万五千八百三十一円。一方、何を理由にしてかわからないものが二千百四十一円であります。でありますから、合計一万八千円ばかりになります。台湾銀行においては、同じく一万五千六百円に七千四百九十六円でありまするから、これは二万三千円以上になります。こういうものは何を根拠にして支払われ、これを監督の衝に当たった大蔵省はそのままお認めになったのですか。どういうことです。
  98. 山下武利

    説明員山下武利君) 今お尋ねのありましたところの、朝鮮銀行について三千九百万円余り、それから台湾銀行につきまして一千四百万円余り、そのほかに外地において支払いました分が、朝鮮銀行について五百三十万円余り、台湾銀行について七百七万円余り、こういうことになっておるわけでございます。これは終戦当時に両行についてありましたところの正規の退職金支払い規定に基づく分であります。外地において支払った分というものを外書きにいたしましたのは、当時すでに外地でもっておやめになったような方がありまして、それを退職金規定に基づいてお支払いをした、外地においてお支払いをした分であります。その他の方につきましては、その後に内地でお支払いをしておるということになっておるわけでございます。
  99. 天田勝正

    天田勝正君 これは、当然監督の衝に当たった大蔵省は御存じだと思いますが、それは従来の退職規定等にあったものですか。ないものですね。
  100. 山下武利

    説明員山下武利君) ただいま申し上げました金額の支払いに関する限りは、当時ありました退職金支払規定に基づく支払いであります。
  101. 天田勝正

    天田勝正君 後刻、これに見合う貸借対照表がありますけれども、私はそれと照合した場合に、ずいぶんこの額は、一人当たりにして当時の貨幣価値からして高いのでありますけれども、高いにしても、あえてこれが合法だというならば、朝鮮銀行においては先に指摘した三千九百万何がしというもの、台湾銀行については千四百七十一万何がし、これがそうじゃないか。貸借対照表を見ますと、その数字はあります。あとのはどう考えてもつじつまの合わないものです。合わなくても、この——後刻指摘しますけれども、大体その長などというのは、大蔵省の役人が行っておったために、そういうことでいい加減に目をつぶったというのと違うのですか。
  102. 山下武利

    説明員山下武利君) 決してそういうわけではございませんのでありますが、閉鎖機関の特殊清算は、もちろんこれは大蔵大臣監督に属しておる仕事でありますが、これを実際に行ないますのは、大蔵大臣が選任しました特殊清算人でありまして、従いまして、従来からこの特殊清算事務につきましては、たとえば債権を免除するといったような分につきましては、これは一々大蔵大臣承認をするというふうにいたしておりましたが、債務の弁済ということにつきましては、これは特殊清算人の責任におきましてこれを行ないまして、大蔵大臣が一々この支払いについてこれに関与するということをやっていないわけでございます。この退職金支払いの問題につきましても、これは当然に特殊清算人の責任におきまして、銀行債務として認めたものを支払ったものというふうに解しているわけでございます。
  103. 天田勝正

    天田勝正君 私はこういうこまかしいことをなぜ言うかというならば、それはあなたの方じゃ、必ずそういうふうに、特殊清算人がやったことで、わが方は知らぬ、こうおっしゃるし、そうなれば、その損害を受けた預金者の方は、特殊清算人を背任か横領で告発しなきゃならぬということになって、そうやったらいいじゃないかということに論議の発展がなると思います。しかし、私は根本的に、私どもも考えなきゃいかぬし、皆さん方も考えてもらわなきゃならない事柄は、特殊清算人になる人は、みなおのおのその、この場合は銀行の長でありました。スタッフも持っております。ですから、法律手続も、いざ争いの場合も、どういうことでもできる人です、その人は。また、そういうことのできる機関であります。ところが、一般の預金者大衆というものは個々ばらばらでありまして、力がないのであります。一々手続したくも、一つ一つの預金になれば小額であって、それを争いをしておるいとまがない。そういういとまのない人をこそ、国の機関が守ってあげるということでなければ、国の機関の価値はないのです。私はそういう観点に立って質問しているし、お答えもそういう立場に立ってお答え願いたい。  それじゃ、お聞きしますが、このあとの、内地へ来て支払ったものなどというのは、結局はこれは何といったって、不当支払いなんです。それは別として、正当な支払いだというべきと思われる、まあ該当するらしいと思われる。じゃ、三千九百二十九万、一人当たり一万五千八百、こういう支払いがなされまして、その後、今度は解散になったときに、私が計算してみたところが、役職員という込みでなくて、分けてみると、重役さんが一人三百六十三万円も取っています。こういうことも、どんなに預金者が不利になって、役職員が分け取りしたといっても、それは大蔵省は手をつけるものじゃない、こういうのですか。どうなんです、その点は。
  104. 山下武利

    説明員山下武利君) もちろん、この閉鎖機関の特殊清算につきましては、大蔵大臣監督責任を持っておるわけでございます、しかし、先ほど申し上げましたように、個々の債務の弁済につきましては、これは特殊清算人限りで行なうのでございまして、特に大蔵大臣の指示または承認ということを要しないということになっておるわけでございます。そこで、ただいまお話しでありました、正規の営業停止時にありました退職金支払い規定のほかに、別に役員が一人当たり三百万円以上の退職金に相当するようなものを支給されておるということの御指摘がございますが、本件につきましては、実は終戦当時台湾銀行及び朝鮮銀行におきまして、役員会でおのおの決議があったわけでございまして、さしあたりこの正規の退職金は支払うけれども、事態が非常に緊急非常の場合であるので、後に妥当な解散手当を支給するということの決議があったということでございます。もちろん、これは文書等で残っておるわけではございませんが、しかし大蔵大臣といたしましては、当時の実情を勘案いたしまして、とうてい資料など持って帰れるというような事態ではなかったわけなのでございます。特殊清算人がまあ当時の役員でもございました関係から、それを信用するほかはないわけでございまして、これを認めたということでございます。  それから、なお、役職員に退職金を非常にたくさん支払ったために預金者の方がもらい分が少なかったというふうな意味の御指摘があったように思いますが、それはそうではございませんで、預金者に対しましては、預金債務はその銀行は両方とも完済をいたしておるのでございます。ただ、いろいろ問題が今でもありますのは、その当時換算率というものをきめまして、朝鮮及び台湾における当時の情勢を勘案いたしまして、日本銀行券に対するある程度の比率をつけております。具体的に申しますと、日本銀行券の二に対して朝鮮銀行及び台湾銀行券は三というような比率をつけております。いわゆる換算率を三対二ということにきめました関係から、預金者の方としては何か自分の預金が支払われるときには削減をされたというようなお気持もあるやに承っておるのでありますが、これは実は当時でも国会で相当問題がございましたのでありますが、法定換算率として実は法定をされて、法律の規定に基づいて支払われたものでございまして、まあ御意見は今何かとあろうとは存じますけれども、われわれといたしましては、少なくとも法律に基づく支払いでありまして、法的には預金債務は完済されておる、こういうふうな立場に立って解釈しておるわけであります。
  105. 天田勝正

    天田勝正君 それは大へんなことなんです。そこらのところが、いつも役所責任すりかえのいい口実になるところなんです。好適例なんです、この場合。この解散がきまりのついたのは三十二年でしょう。そうしてその換算率なんていうのは、終戦直後のあの混乱の時期なんです。とてもどう清算してみたって、そんなものが株主にもまともには払えないだろうし、役職員にもまともには払えないだろうし、預金者にも払えないだろうという時点に立って、そういうことがきめられたのです。だから、そっちに何か責任が法律できめられたのだからといってしまったのでありますけれども、その後だんだん清算してみると、おそろしい剰余金が出てきたのです。ここに問題があるのですよ。だから、あなたは三分の一というものは法定されたのだからそれで完済されたと言っているけれども、預金者は三分の一切り捨てられて、そのかわり株主の持ち分も三分の一少なくなったのだと、役員も職員の取り分もこれも三分の一だけは少なくなったのだというならば、話はわかる。そうではないというととろに問題があるのですよ。なるほど法定されたでしょう。しかし、それは混乱期においてされた。あとだんだんやってみたらば、ちっとも切り捨てなどをする必要がないという事態がここに出てきた。ですから、朝鮮銀行の場合でいえば、株主は三十倍でしょう。間違いないでしょう。三分の一切られるどころか、三十倍になっているのでしょう。どうなんです。あれは台湾銀行の場合、株主は十倍に認められているでしょう。
  106. 山下武利

    説明員山下武利君) ただいまの御質問では、清算時について預金債務を支払う資金がなかろうということを前提にして換算率をきめたのではないかというふうなお話がございましたが、私の知る限りはそういうことではございませんで、これは一般に外地につきましては、それぞれ換算率をきめたのでありますが、たまたま朝鮮及び台湾につきましては、三対二ということにきまったのでございます。これはひとり鮮銀、台銀ばかりでございませんので、一般に使われておりました金融機関、それから預金債務並びに送金債務等につきまして、全部その換算率が適用されておるわけでございます。  そうして、第二の御質問は、預金者をそういうふうにして換算率でもって不当な待遇を与えておきながら、株主に対しては数十倍に上ぼる配当、かわりの新会社の株式を与えたのは不当であるというふうなお話でございますが、これはまあいろいろ御意見あるかと思いまするけれども、預金債務というものはあくまで額面でもって表示されておるのでございまして、それに対して換算率をかけたところを支払えば、これは一応債務としては完済されたと考えなければならないと思います。そうしてその残りましたところの債務をすっかり返済いたしまして、先ほどのお話のありました役職員等の退職金その他のいろいろな未払いの債務を引きまして、それから国に対して税金あるいは納付金というふうなものを押えまして、残りの分を株主に按分をいたしたのでございます。その結果が、たまたま台銀につきましては十数倍、鮮銀につきましては三十数倍といったような額になっておるわけでございます。これはこの設立の経路というものを考えて下さればあえて不当というわけではないと思います。
  107. 天田勝正

    天田勝正君 どうもおかしいね。私どもは多数預金者のお互い立場を守るために、かりに過去において法律的に適用したことをやったにしても、これはあとでどうもアンバランスであるということを考え、そこに金がないならとにかく、金があるなら、その弱い多数者を守るという立場でお互いがここで審議しなければならぬと思うのだけれども管財局長の答弁を聞いていると、何か銀行の幹部の代理で、その言い分をここで代弁しているような気がして私にはならない。だって、あれでしょう、もともとこの役職員に対する退職金というのは、もうこの清算時に与えてしまったのですよ。あとは権利のない人なんですよ。これも朝鮮銀行の場合なんかは増額して与えてあるけれども、私の調べでは、そのときにどこできめているかわからない。どこもきめない。というのは、その日に朝鮮銀行の総裁は内地におったのですよ。きめる人はないのですよ。どさくさに分け取りしているのですよ、国の特殊の機関が、発券銀行の連中が。これは役員も職員も入っておりますけれども、私はむしろうがっていうならば、役員が分け取りをするために職員も同様に見ならったといってもいいと思うのですよ。どこもきめていない金さえ分け取りしているのですよ。それがこの資料三に提出されておる数字なんです。あと権限を失った者が、今度は解散時になると、さっき言ったように、役員については三百六十三万円というものを取っているのですよ。それはどういうわけなんですか。どう考えたって二重取りでしょう、これは。そう思いませんか。この三百六十三万円という役員が取ったのは、どういうのでしょうね。これは納得いきませんよ。
  108. 山下武利

    説明員山下武利君) 規定できまっている退職金を支払ったから、それで新しいその解散手当というものを支給する権限はないのだというお話でございますが、それは先ほど申し上げましたように、終戦のときに役員会の申し合わせということがございまして、当時の状況を勘案しておって、適当な解散手当を支払うということの決議をいたしているのでございます。決して正規の規定の退職金をもらったから、新しい解散手当をもらう権限がなくなったのだというふうには、われわれは解釈しておらないのでございます。また、その当時の役職員の方の言を信用するほかないのでございますが、そういうふうなことで支払われたものでございます。  なお、本件につきましては、昭和三十一年に衆議院の大蔵委員会で附帯決議がございます。「閉鎖機関の従業員の解雇手当の支給に関し、旧役員より指定日以前の重役会決定事項につき、書面による申出があったときは、終戦時における混乱事情、他の閉鎖機関の場合との権衡等を考慮の上、政府において善処すること。」という附帯決議があるわけでございます。こういう決議の御趣旨にも沿うものというふうにわれわれは考えているわけでございます。
  109. 天田勝正

    天田勝正君 私は事務的な問題を積み重ねて、それから大臣に一括して質問した方が、これは審議の効果も上がると思うし、大臣もいいと思ったのですが、こういう御答弁ばかり繰り返したのじゃとてもしょうがないから、あらためて大臣の御答弁を聞かなければならぬと思う。ところが、大臣ということになるというと、ここに他の委員もだいぶ待っておられる。これはずっと続くので長くなりますから、大臣のいるうちに、他の委員の方にも一つやってもらって、それからまた一つ、私も大臣質問いたしたいと思います。    ——————————
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前回に引き続いて大臣に伺っておきたいのですが、時間がどうも少ないので、問題点だけ質問いたしますが、要するに、この政府の所得倍増計画なり高度成長政策は第一年目に入ったわけですが、その入ったとたんに、計画と実際とが非常に狂いが生じて、そうして設備投資の面、国際収支の面、物価の面、あるいは雇用の面、あるいは金融情勢の面ですね、そういういろいろの面に摩擦とか矛盾が顕著に現われてきているわけです。そこで、この政策を手直しする必要ないかという質問をしたところが、大蔵大臣は、その必要がない、設備投資についても行き過ぎではない、国際収支も心配ない、物価も心配ない、みんな心配ないというお話なんです。  そこで、これから具体的に御質問していきたいと思うのですが、この調査で参りますれば、少なくとも設備投資三兆六千億の線でかりにいくとしますれば、成長率が大体二%か一二%くらいになると思うのですが、そうすると、計画の九・八%よりは非常に上回るわけです。この成長率は高過ぎると思うか思わないか、大蔵大臣、どう思うのですか。
  111. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 成長率は私は少し高過ぎると思っています。しかし、こういう問題も、今となって言うのはおかしいことでございますが、ことしの成長率をどう見るかというときに、予算編成当時にもいろいろ問題ございました。昨年の成長率から見て、急に、ことしいろいろなこの情勢が続いているときに、去年の成長率からことし一度に落ちるということは考えられませんので、まだことしも昨年の余波を受けて高度成長が続く場合には、一一%くらいの伸び率というものが初年度のものではないか。そうして昭和三十七年ごろから鈍化するというような形をとってくるだろう。そういうことからいきまして、三年間の平均の伸び率を九%と私どもは見たわけでございますが、三年度平均九%程度の伸び率を、そういう伸び率を見ることが妥当だということであの九%という数字を出したわけですが、九%は初年度、二年度、三年度が全部九%というわけではございません。去年から続いておる、ことしは九%以上実際は高いだろう、そういうことで九%というものをきめておる関係から、私どもが今の成長は当初予想したよりは多いとは思っておりますが、九%という字にこだわって、これは政府の見込みより非常に狂ったものであるというふうにあわてる必要のないことだと、私どもはそう思っているのです。実際問題としては、私どもは三年間九%ということは、ことし九%ということではなくて、ことしはもう少し多いという最初から予想をもった見込みでございますので、この点は一見大きい狂いのようですが、そうではなくて、その狂い方もそう多くはない、いずれにしろそのときの予想よりは伸び過ぎたというふうに考えていますが、そう大きい狂いだというふうな感じは持っておりません。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私もパーセンテージばかりを何も問題にしているわけではない。成長率が高ければ高いほどいいのはあたりまえなわけですね。しかし、高過ぎるということは何によって証明されるのかといえば、その結果としていろいろな摩擦が出てくる場合、国際収支が赤字になるとか、物価が上がったとか、あるいは雇用の面にいろいろの支障を生ずるとか、あるいは金融情勢に混乱を生ずるとか、いろいろ摩擦が、矛盾が出てくる場合、高過ぎると言わざるを得ないのです。そこで、現に国際収支の面に赤字が出てきた。物価も、大蔵大臣はさっき心配ないと言いましたが、私はそう楽観はできないと思います。雇用の面については、現に中小企業は非常に弱っているわけです、零細企業は。そういう摩擦も出てきているわけです。金融情勢については、千六百億の散布超過と予想されたのが、このままでいけば逆に千四百億、あるいは千六百億ぐらい逆に揚超になるのじゃないか。そういうことがまた非常に金融を引き締め、逼迫さしておる、こういうような摩擦が出てきているわけですよ。そこで、大蔵大臣は、高過ぎるということの理由として今私いろいろ摩擦が出てくるということを申し上げましたが、それについて大蔵大臣はみんな心配ないということで片づけているわけです。設備投資も、国際収支、物価、雇用、金融情勢も。  そこで、一つ一つ伺ってみますが、さっき設備投資は心配ないと言われましたが、大体三兆六千億ぐらいの線、あるいはそれを下回るのじゃないかというお話ですが、大体三兆六千億を上回るような場合は、それは押えるという手を打つのであるかどうか。どの辺でこれを調整するというめどをおつけになっているのですか。
  113. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) これは何兆何千億になるかということは、実際にはわかりませんので、今こういう基本計画の数字を集計して、そこから推定すると、ここあたりまでは行くかもしれぬという推定でございますので、そうすると、少しやはりこれは多過ぎるという感じを私どもは持っておりますので、できるだけここで設備投資に慎重になってもらうことが好ましいというふうに考えて、いろいろな形で、十分なことはできなくても、行政指導面で行なえる面もございますし、金融を適宜に締めるという方向によってこれを押えるということもできますし、そういう今いろいろなことをやりながら、自主的にできるだけ業界が慎重に、企業家が慎重になるようにという方向への努力を私どもはやっておりますので、その結果が最後にどの辺に落ちつくかという問題でございまして、三兆六千億をこしたから手を打つとか、こさなければほうっておくという問題じゃなくて、一つの趨勢が見られる以上は、できるだけこれをなだらかにするというためにいろいろな私どもは考慮を今払っておる段階であるということでございますので、民間もこれに協力するような空気ができてきましたから、その様子によると、当初推定された数字よりは少なぎみのところへとまってくれるだろうというふうに、私どもは今少し設備投資について一ころよりも楽観的な気持に今なっておるというだけでございます。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣のお考えを伺いますと、やっぱりいろいろな手を、直接ではありませんが、打っているというように見える、うかがえるわけですが、やはり心配ないのじゃなくて、非常に心配していることであって、直接ではございませんが、そういう形でまあ手直し的な措置を講じているというふうにも理解されるわけですが、しかし私は今のような程度で民間の設備投資を自主的にそういうように抑制できるかどうか。特に、私はもう最近のいろいろな新聞等で、国際収支は赤字である、それから行き過ぎである、日銀では利上げをするのではないか、公定歩合を上げるのじゃないか、そういうような気運が出て参りますと、私は業者は逆に今早くやっちゃわなければ規制されるのじゃないかというので、むしろ私は拡張競争に拍車をかける面も出てくるのじゃないかと思うのです。で、大体のやはりめどというものをつけてやらなければならないのであって、そういう点どうなのですか。私どもは何も業者を信用しないというわけじゃないのですが、それはいかにりっぱな、個人的にはりっぱな人でも、今の各社競争してこの合理化投資、あるいは自由化に備えるための投資をあせっているときに、自主的にこれを調整できるとは、私は期待できぬのではないか。それは個人的にはそうしたいと思っても、会社自体はそういうことを許さない仕組みになっていると思うのですが、そういう点どうなのですか。
  115. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) それは確かにおっしゃられる通りだと私も考えております。やはり設備投資意欲が強いということは、やはり日本の自由化というものがもう差し迫っている問題である、こいうことは、一般に経済界が意識しておりますので、従ってやはり自由化に対処する合理化というようなことは、企業家としては本能的にそういう意欲を持つはずでございますし、そういう潜在的に投資意欲が強くなっているという基礎はあるのですから、従って、ここでそういう必要性に立脚している合理化投資に対して、これを政府が不必要に押えるのだというような態度をとるという場合には、昭和三十二年度のいろいろな経験を見ましても、ここでかけ込み設備というようなものを誘発するおそれというものも私は十分にあろうかと思うのであります。従って、やはり私どもの態度としましては、この合理化の質が問題であって、国内の景気が、需要が多いからといって、量産を競うような投資というものはここでできるだけ押える。しかし、国際競争に将来勝つための質的な合理化、必要な合理化というものは、政府はやはり順を追ってやらせるんだ、決して必要なものは押えないが、一時的に集中されるととが経済にいろんな問題を起こすのだから、これをなだらかにやるように、政府は押えないが、そこを慎重に時期的に集中しないように業界自身も自重してやってもらいたいというようなことをあらゆる機会に申しておりますし、また資金需要の面につきましても、銀行の窓口を通じてもできるだけそういうものの選別を十分にやるように、いろんな形で今この設備投資の集中化というものを避ける努力をしているところでございまして、これを国際収支の現状から見て必要なものまでとめてしまうというような態度は、今政府はとっていないということでございます。
  116. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 少しわかりかけてきたのですが、やはり行き過ぎでないとは全然政府も断定していないわけです。大蔵大臣としてね、やはりその懸念はあると。そこで、どういう方法で、急激なショックを与えないような形でこれを押えたらいいか、そういう方法論ですね、そういうことについていろいろ考えていると、こういうことでございますか。
  117. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) そういうことでございます。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから次に、じゃ、伺いたいのですが、国際収支について、この国際収支の赤字はいろんな原因がありましょうが、輸入が急激にふえたということ、特にそれは設備投資が直接の原因になっていることは、内容を検討してみますと明白なんです。そこで、よく、二十億ドルも外貨があるのだから少しぐらい赤字になってもかまわない、心配ないという考え方があるようでありますが、私はそう思わないのです。今の二十億ドルの外貨保有といったって、短期資金がかなりのウエートを占めているのですから、そう私は楽観できないと思う。結局、国際収支が政府は二億ドルの総合で三十六年度の最後に黒字を見るという予想になっておりますが、この調子でいけば、私は総合で二億ドルの黒字を見ることは困難ではないか。むしろ赤字になるのじゃないかと思います。そういうことになると、私は、これは最近よく引用されておりますが、フィナンシャル・タイムスのことしの五月幾日ですか、フィナンシャル・タイムスの五月二十六日号ですね、書いております。日本の短期資金についてやや警告的な論説を書いておるのですよ。国際収支が順調に黒字を出して心配ない場合は、短期資金の流入ということについて何も心配することはないけれども、もし国際収支の赤字がずっと続く、それに懸念ができたような場合、外国の銀行がクレジット・ラインの拡張を拒否するとか、また短期資金の引き揚げ、ホット・マネーの引き揚げということが起こり得ないとも限らないと思うのですね。そうなりますと、経常収支において赤字、その上に資本収支において短期資金の引き揚げによって急速な赤字が生ずる懸念も出てくると思うのですよ。だから、私はそういう面で決してこれは楽観できないと思うのです。しかも、日銀が利上げして、公定歩合を上げて、設備を抑制するのじゃないか、設備拡張を抑制するのじゃないか、そういうような気運になってくると、また、今までは思惑輸入とか緊急輸入がないから心配ない、心配ないと言っておりましたけれども、思惑輸入が起こるような心配も出てくるのじゃないかと思うのですね。そういう点、大蔵大臣はどういうふうに考えておられますか。
  119. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 今までの輸入増を分析してみますと、いわゆる思惑輸入というのは私は今のところないと思っております。昭和三十二年度のときのような、いわゆる思惑輸入というものはない。ただ、多く輸入したのは綿花だと思いますが、これは御承知の通り、先高であることがわかっておりますし、安い材料を仕入れて在庫補充を早くやっておくという必要があったから、この綿花の輸入が多かったということが言い得ると思いますが、これはむしろ健全な、実質的には健全な輸入ということが言えると思いますが、従って、今後まだ鉄鋼、製鉄原料というような在庫補充が十分に行っていない部門の輸入というものは、高水準を続けると思いますが、綿花そのほかの輸入というものは、もうここからだんだんに減っていくという状態になることははっきりしておりますし、思惑輸入というものは今後そうないだろうと、こう思うのです。一つは貿易自由化ということが安全弁になっていること、自由化してなければ、政府がいつとめるかわからないということで、その輸入を急ぐということがあるかもしれませんが、自由化が進めば、必要なときには買えるということですから、業界が急ぐ理由はないということで、貿易自由化というものが進んでいることが、私は国際収支のこういうところでは一つの安全弁の役割を果たしていると考えていますので、その心配はないだろうと思っております。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今自由化のお話が出ましたが、大蔵大臣は今度IMFの総会で八条国の勧告を受けると私は思うのでありますが、大蔵大臣はどういうふうにお考えになりますか。そうしますと、もし勧告を受ければ、自由化の速度は少なくとも一年ぐらい早まるのではないか。それはまた私は日本の貿易、国際収支にもかなり影響が出てくるのではないかと思うのですが、この点どうですか。
  121. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 今まで政府の立てた自由化計画は、私どもも若干早めるつもりでいろいろな準備をやってきましたし、またプログラムよりも早めている部分も実際にございますが、やはり計画に従って、一定の準備をしながら自由化をすることが、経済にとっては望ましいと思いますので、その早め方を特に速度を上げて経済に打撃を与えるということは、私ども感心しませんので、日本の今の実情から見て、今までの計画を少しずつ早めるというところあたりが適当で、急速な早め方というものはむずかしい問題をやはり経済に起こす可能性があるというような実情について、今いろいろ説明をしているところでございます。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 現状ではどうですか。結局、八条国の勧告を受けざるを得ないのではないですか。政府も大体その前提でいろいろな措置を考えている、こう見ていいのですか。
  123. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 今のところ、今年度勧告を受けるか受けないかの見通しは、全く今私どもにはわかりません。コンサルテーションの過程においても、向こうの考えているところを私どもが的確につかめるというところまでは、今行っておりません。要するに、日本のいろいろな実情について今調査をしている段階でございまして、その結果についての見通しは、私どもには今のところ全くわかりません。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その八条国への移行が早過ぎる、だから一年ぐらい待ってくれというふうに、政府はいろいろに折衝しているように新聞には出ておりますが、これまでの政府のそういうことに対処する仕方が私は非常に矛盾していると思うのです。国民に対しては、日本の国際収支は心配ないのだ、二十億ドルも外貨があるのだ、外貨準備は心配ない、心配ない、と言いながら、今度はIMFの方に向かっては、国際収支が最近悪いのだ、二十億ドル持っていても、その中に短期資金がたくさんあって、決して安心じゃない、安心じゃない、こういうふうに説明しているわけでしょう。その点、私は矛盾していると思うのです。私は決して二十億ドル外貨があるから安全である、心配ない、十分であるとかいうべき性質のものではないと、こういうふうに思っているのですが、そこでもう一つ国際収支について伺いたいのは、経常収支につきまして輸出が今後ふえるだろうということを楽観的に見ているようですが、対米輸出がかりにふえても、これまでの経験ですと、対米輸出がふえたときには、東南アジアその他の方の輸出がふえない、こういうような……。で、対米輸出が減ったときに、東南アジアその他の方の輸出でカバーしていけるかどうか。私は必ずしも対米輸出の増加にそんな大きな期待を——それはふえるかもしれませんが、今の設備投資の行き過ぎによる輸入の急増を十分カバーできるほど期待していいのか。この点どういうふうにお考えですか。
  125. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 今までの輸出の伸び工合を見ますというと、対前年度に比べて輸出が減っているわけじゃございません。平均したら六、七%の伸びを示しておるということは事実でございます。ところで、その内容を見ますと、五月なら五月を見たら、前と比べて大洋州向けが少しにぶっている。東南アジアは前年度同期に比べて、三〇%近く輸出は伸びておる。欧州に対しては非常に伸び方が多くて、八〇%近い昨年に比べて伸びを示している。なぜそれが輸出が全体として伸びない計算になるかと申しますと、これは結局対米関係で、アメリカが同期に比べて毎月々々減っているということが一番の原因だとは思います。アメリカがふえるかふえないかということは、日本の貿易の三分の一を左右している国ですから、この影響は大きいので、ようやくこの五月、六月の信用状から見ますというと、何カ月ぶりに初めて対米輸出が前年度同期に比べてふえるという方向をとってきましたので、この傾向を持続していくということでしたら、まずその面からの国際収支の回復というものも相当期待されるということは私は言えるだろうと思います。
  126. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 言葉を返して失礼のようですが、東南アジアにつきましては、あれでしょう、アメリカの輸出が非常に減退していって、東南アジアが非常にふえて、それでそれをカバーしたのですが、その後東南アジアあるいは大洋州の増加が急に減ったことが、輸出の伸び率を大きくできない一つの大きい原因になっていると思う。その点、東南アジアに順調に伸びているようなお話ですが、私はそうではないと思うのですが、しかし問題はアメリカに対する輸出がふえないというわけじゃない、しかし、それをもって最近における設備投資の行き過ぎによる輸入の増加、それに基づく輸入超過、国際収支の赤字というものを十分にカバーできるほど期待できるかどうかという点にあるわけです。これは結局、見解の相違になりますから、大蔵大臣は事態をなるべく楽観的に楽観的に、心配ないように、いろんな政治的配慮もあるからそういうふうにお答えになると思うのですが、従ってこれ以上この点についてはお伺いいたしません。  次に伺いたいのは物価です。物価については、六月に入ってからこれが安定してきていると。だから、卸売物価については心配ないというお話ですが、しかし前年同期に比べたらまだ高いと思うのです。それでよく日銀総裁が言われますが、国内の物価が高くなれば輸出意欲を減殺する。輸出するより国内に売った方が得である、そういうことから、国際収支にも影響が来るわけです。今後私は今の成長率をかりに続けていけば、物価は楽観できない。ことに、今度の災害が起こったような場合、また物価が上がると思うのです。特に木材なんかについてはものすごく上がっているわけです。一時木材も下がりぎみになりましたが、今の木材の絶対的不足はなかなか緩和できないと思うのです。今の行き過ぎた設備投資が続けば、私はこの基本的制度と違うのでありますから、今の不換銀行券の管理通貨制度のもとで、物価が設備投資やなんか行き過ぎた場合、これが上がらない、そういうふうに私は楽観できないと思うのです。もちろん、将来には設備過剰の問題もありましょうが、当面としては私はやはり物価情勢についても楽観できないと思います。特に最近消費者物価が、また国会が終わってから東京都あたりでは、電車賃とかあるいは水道料金、それからバス料金を上げる計画があります。あるいは東電も電力料金を上げようとしておる。CPIが上がってくる、そうすれば賃金も上がってきます。そうすれば、卸売物価にはね返らないことはないのです。政府は、または大蔵省は、予算編成については物価という問題は非常に重要だと思うのですが、どういうふうにお考えになっておりますか。その点伺いたいと思います。
  127. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 物価は昨年の夏ごろから大体上がってきておる問題でございまして、私どもが予算編成する当時、ことしの一月当時からは上がっていることは事実でございますが、今まで上がった原因を見ますというと、木材にしろ鉄鋼材にしろ、みな理由がはっきりしておって、そのために物価桁数が上がったということになっておりますが、そのつどその原因をつかんで対処することによって解決して、全体として今少しずつ下がる方向へ来たということでございますから、たとえば今度の災害というようなことで、そういう臨時的な原因のために若干今の趨勢とまた違った現象が出てくるかもしれませんが、これはもう短期的な現象に終わることははっきりしていると思いますし、全体として見てどういう方向にあるかといいますと、これだけ経済の進みが早いときですから、全体として強含みであることは間違いありませんが、しかし、それによる供給の力というものが劣っているわけではございませんので、物価動向が今後相当上がるだろうという方向は私はないだろうと思うのです。
  128. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は、消費者物価と卸売物価との関係については、全然これは関係ないとお考えになっておりますか。CPIは上がってきているのですよ。また今後上がろうとしているのですよ。それは当然賃金に響いて参りますよ。そうしますと、コストに響いてくるわけですから、卸売物価に当然影響があると思います。それから、災害による一時的な物価騰貴が、これは一時的なものだから心配ないといいますけれども、これまでの例を見ましても、今の通貨制度のもとですと、物価が上がると、それにつれて必要通貨量がふえると貸し出しもふえ、そういう形でそこに固定化してしまう可能性があるわけです。そういう点で私は楽観できないと思うのですが、その点はどうなんでしょうか。やはりCPIについても、これを何とか押える措置が必要じゃないか。前に値上がりムードをストップするということを閣議できめたようでありますが、これはどういうふうに今後するのでありますか、この点も伺いたいのです。
  129. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 今消費者物価を構成する中にはいろいろなものがございまして、特にサービス業を初めとしまして、賃金の上昇ということによって物価が上がったという面も相当にございますし、これらはやはりわれわれが成長政策というものをとっていく過程で、企業間の格差解消というような、格差が是正されていくこれは一つの現象と見ることもできましょうし、消費者物価の上がりという中にはこれはやむを得ないものも相当に含まれておろうと思いますが、そのほかの部面においてはこれはできるだけ上げないことがいいのですから、政府の中には物価についてのいろいろな対策をする機関もできておりまして、便乗値上げとかいろいろな、そのほか特に必要のない値上げを押えるというような努力も今やっておりますし、従来消費物価の値上げに影響を多く与えておった季節的ないろいろな野菜とか魚類とか、そういうようなものも、ただいま見ますというと、今がそういうものの出回り期で、現にそういうものは下がっている。従って、五月以降の消費者物価もわずかでありますが、〇・一%にしろ下がる傾向というのを示しているというのが実際でございますので、私は経済に確かに行き過ぎはございますが、これがほんとうに憂うべきものを中に含んでおるとするのでしたら、物価に落ちつきが出てくるというようなことはあり得ない。今の物価の落ちつき工合というものを見ますというと、国際収支の見通しから見ましても、五月が大体ピークに思われますし、設備投資もそう過熱をもたらすような方向ではなくて、相当慎重な態度というものが今一般に出てきておるので、この調子でいったら、この行き過ぎを押えるといういろいろな個々の調整策はとるにしましても、全体の政策について変更を加えるとかというようなことは全くなくて済むのじゃないかと、楽観論と言われるかもしれませんが、全体の今の様子を見て、まだ政府がいろいろ騒いで自分の政策を変更するとかなんとかいうような問題に迫られているというような事態では全くないだろうと思っております。
  130. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 消費者物価について、大蔵大臣はあまり上がらないようなお話でしたが、最近では政府部内でも、新聞なんか見ますと、少なくとも三十六年は三%は上がらざるを得ないだろう、政府の見通しでは一・一%になっておりますけれどもね。その後通常国会が終わってから、すぐ東京都あたりが公共料金の引き上げをやりましたが、これは東京都がやりますと、全国的にこれはみんな右へならえしますね。その波及というものも私は決して軽視できませんし、少なくとも三%は上がるんじゃないかと思うのです。これはまた議論になりますから……。  最後に、雇用問題についても、これは伺いたいのですが、大蔵大臣所管ではございませんから、金融対策について伺いたいのです。先ほどもちょっと触れたんですけれども政府対民間収支が非常に見通しが狂うわけですね。それが少しぐらいの狂いじゃなくて、政府の見通しが約千六百億の散布超過であるのに、このままでいけば、逆に千四百億から千七百億の引き揚げ超過になるんじゃないか。この原因はどこにあるかということは、もう大蔵大臣よく御承知だと思うのです。自然増収、税の引き上げ、それから国際収支の赤字ですね、そういう面から来ていることは明らかだと思うのです。これに対してどういう措置を講じられるのか。それで、最近また公定歩合の引き上げとかが問題になっておりますし、そういう点についてどういう金融措置を講じるのか、この点を伺いたいです。
  131. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) まあ私どもの見通しでは、七月から八月にかけて金融が相当引き締まり基調に推移すると思っておりますが、金融引き締まりは根本的には経済拡大のために企業の資金需要が強いということが原因になっているわけですが、それに国際収支の問題が加わって、財政の揚超という事態、税収の問題とからんでの財政揚超という問題がからんでいるわけでございますが、そのうちで国際収支が悪くなれば外為に通ずる揚超というものは始まるわけですが、これは自然の調節作用をなしておるものでございまして、そういうことによって金融が自然と締まっていくということは、これはむしろいいことかもしれませんし、できるだけこういう設備投資の問題が起こっているときですから、金融は引き締めの方向でいくべきものだろうと思っています。しかし、問題は、これが財政によって特に金融にしわ寄せしているという問題がある場合には、これに対してはまたこれによる適切な方法をとるべきだと思っております。従って、金融引き締めという基調をくずさない形で、私どもは七月から九月にかけての財政揚超期に対してはそれに対応する措置は考えたいと今思っております。
  132. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 財政面からはっきり、三十五年度の自然増収もさっき主税局長に伺いましたが、第二次補正を組んだあとでの自然増収は、四月までで九百二十七億、それから本年度に入ってからもやはりかなりあると思うのです。財政面から金融の逼迫をもたらしている要因はかなり大きく、特に最近では自然増収が非常に多いわけですね。こういう金は一体どういうふうにするつもりなんですか。この九百二十七億というのは、これは結局翌々年度に使うことになると思うのですが、この金はどういうふうに運用をされるのですか。今どうなっているんですか。九百二十七億という引き揚げになっているわけでしょう。それからまた、自然増収が出てきますわね。それを民間に還元する方法をとらなければ、財政面から金融を圧迫することは明らかであります。それでこういう点はどういうふうに処理されるのですか。さっき大蔵大臣は、七月−八月の金融逼迫というものはやはり予想されるので、適当な措置を講ずると言われますが、それはたとえば買いオペをやるとかなんとか、そういうことをさすのか、その辺はどうも私はわからないのですね。自然増収で非常に税金が吸い上げ超過になった場合、これと民間金融との調整の処置はどういうふうにされるのですか。
  133. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) この点はさっき申しました方針で、私どもも所用の調整を必要と考えて、今そのやり方については十分検討をしているところでございます。
  134. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その方針というのはどうするのですか。
  135. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 方針というのは、さっき申しましたように、金融の引き締め基調というものは今の場合必要でございますので、これをくずさないという立場で、ただ財政収支の面から不必要な金融の圧迫を生ぜしめているという部分についての考慮はわれわれはすべきものであるという考えのもとに、やり方についていろいろ今検討しているところでございます。
  136. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 やり方というのはあれですか、たとえば買いオペとか、そういうようなことをさしているわけですか。
  137. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 方法はいろいろあると思いますが、今具体的なことはちょっと……。
  138. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に一つ、前に予算公聴会で、慶応大学の高木教授が、自然増収で引き揚げ超過になった資金を減税基金みたいにプールしておいて、それで減税を年度内でもできるようにしたらどうか、こういう提案をされて問題になったことがあるのでありますが、私どもどうも百億や二百億、三百億ぐらいの予算以上の税収じゃないのでして、最近では三十五年度では二千九百億の実際に税収があった。最近非常に自然増収が多いわけですから、これについては年度内においてもやはり減税というものはすべきじゃないかと思うのですけれども、大蔵大臣、どうお考えですか。  それから、さっきの九百二十七億というのは、実際どういうふうになっているのですか、その点もちょっと伺いたいと思う。
  139. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 今の最後の点は、理財局長から答弁をさせます。  税収の多いという問題と年度内減税の問題でございますが、御承知のように、今年度発足してからまだ三カ月でございますので、今のところどうするということは時期が早いと思いますが、この自然増収の傾向ももう一、二カ月見ますというと大体の推定もできるというような事態になってきますれば、私どもはこれにどう対処するかということについて、今おっしゃられたようないろいろな問題も含めた検討をしたいと思っております。
  140. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 木村委員指摘のように、第二四半期におきましてはおおむね二千億の揚超になると思われるのですが、個々の揚超資金は、一応当座の支払いに充てまするために二百億円程度日本銀行の当座預金にいたしますほか、食管外為に対する振りかえ措置をいたしまして、食管外為はこれをもちまして日銀保有の糧券なり外為証券なりの償還に充てる。それから、あるいは預金部に預託いたしまして、預金部が日銀保有の糧券とかあるいは為券を買い入れる、こういうような運用のいたし方をいたしているのでありますが、現在のところ日銀保有の糧券、為券の金額は約五百億程度でございますので、どうしても運用いたそうといたしますれば、市中の持っておりまする短期証券を買い入れるよりいたし方ない、こういう状況でございます。    ——————————
  141. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) 先ほどの天田君の、閉鎖機関中引揚者預金に対する質疑に関連いたしまして、委員長よりこの際特に水田大蔵大臣に要望しておきたいと思うので、お聞き取りを願いたいと思います。大臣もお聞きの通り天田君に対する当局の答弁は、だれが聞いても納得のいった答弁とは思われません。天田君が時間の関係上本日は預金関係のみ取り上げましたが、おそらく、問題になっておりまする中国関係生命保険等に関する質問もおそらくあったと思いますので、これらの問題はいずれも当時終戦の混乱のさなかに行なわれただけに、今日になってみまするとまことに割り切れない、あと味の悪い問題が多分に残っておるように思えるのでございまして、この際、特に大蔵大臣におきましては、これらの事情を十分勘案いたしまして、でき得る限り本問題に関し善処されたいことを要望いたしたいと思います。  なお、本閉鎖関係調査事項は次の機会にも重ねて開きたいことを付言いたしておきます。
  142. 天田勝正

    天田勝正君 委員長が、すでに私が質問の通告をした部分につきましても御指摘になりましたので、私は、大臣が三時半という話だったそうでありますから、幾らもおられないと思うのです。そこで、この際の質問は大まかに申し上げるのでございますが、まず第一点は、朝鮮、台湾銀行の預金者と、それから役職員と株主と、これらに対する処遇があまりにアンバランスであるということを指摘してきたのでございます。これらをずっと指摘して、最後に内閣の方針をお聞きすると、こういう形が大臣にとっても時間をとらずして便利であろう、こう考えてきたわけでありますが、すなわち、これらの銀行は、御案内の通り朝鮮、台湾、それぞれの地域におきましては、日本内地における日本銀行の立場と同様でございまして、単なる普通の市中銀行ではございません。ところが、ここに、これらが閉鎖機関に指定されました結果として、実に役職員に対しては驚くべき退職金が支払われておるのであります。それに、さらに、解散にあたりましての手当とかいうものにあたりましても、その後解散事務等には一向携わらない人たちまでも含めまして、これまた驚くべき支払いがなされておる。これは倍数は当時の規定には全くないものが当初の支払いにおいても行なわれておるのでありますから、これは何倍であるかということは指摘ができません。ともかく最もはなはだしいものは、役員は営業停止時において退職金を受け取ったのみならず、解散にあたりましては一人当たり三百六十三万円などというとほうもない取り方をしておる。株主においては台湾銀行の場合は十倍、朝鮮銀行の場合は三十倍。ところが、預金者にはそれぞれに三分の一切り捨て、こういうことであります。管財局長の答弁では、その換算率は法定したものだ、こういう木で鼻をくくったような答弁でありますけれども、それはあの混乱時に、今委員長指摘されたように、とうてい株主の立場も守られるどころのさたではない、役職員の手当などとてもどうなるかわからない、預金だってどうなるかわからないという混乱の時点においてきめられたものであって、あと清算してみたところが、そういうふうに幾らでも金の余裕があって、新会社を作るだけの余裕もりっぱにあった。こういうことであれば、もっと預金者の立場が守られるべきはずであります。これについて、ちょうどこれらの機関の代理みたいな工合に管財局長は答弁するのでありますけれども、私はそれならば逆のここに資料も持っております。  それは、この閉鎖機関令が審議をされまして、その改正案が本院に出されて、この委員会にかかったのでありますが、それは三十一年の五月十五日であります。その際も本院はこれに憂慮いたしまして決議いたしたのであります。「政府は、本法の実施に当り、預金者その他の関係者の特殊事情を考慮して、適宜の措置を講ずること。」、こういうことを言っている。さらには同閉鎖機関令第十一条に、「特に預金者等小額の債権者の利益を考慮し」、こうなっている。ちっとも国会並びに法律に明示した考慮がなされていないということは明瞭であります。預金者は一律、小額であろうと何であろうと、それは全部三分の一切り捨て、そうして役職員だけは普通の常識をこえて、ことに役員に至っては二重取りに三百六十万円も取っておる。こういうことは法律的にはつじつまを合わせようとも、それは当を得ない処置であることは明瞭であります。でありますから、こういう問題につきまして、まず内閣としては再検討をして適正な処置をとられる御用意があるかどうか、この点を聞いておきたいと思います。
  143. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) まあ、こういうような処置は終戦ということに伴った異常な措置でございまして、当時軍事補償打ち切りを初めとしまして、この種の措置を全面的にとったわけでありますが、そのとき作った法律によって処理したことがいいか悪いかと言われても、一応法規に沿った処置であるなら、これは適法であって、あのときとしては全部済んでいる。しかし、今になっていろいろ見るというと、こういう不合理がある、矛盾があるということを言い出しますというと、これはまあ、この問題だけじゃなくて、終戦に伴って国会がきめた処理というものは、ことごとくいろいろな問題を含んでいるということは御承知の通りだと思います。従って、こういう問題の処置を、もとの、異常事態ではなくて普通のときの、今普通に立て直ってきたのだから、今の状態から見てもとのあのときの処置を直せるものがあったら直すということでしたら、これはそういう方針によって政府国会も相当強い決心をして、そういう問題を全部見直すかということにもなりましょうし、なかなか簡単に一つ、二つの特殊問題だけを他と切り離して今からさかのぼってこれを動かしていじるなどという措置は、私は実際的にはむずかしいと思います。
  144. 天田勝正

    天田勝正君 むずかしい問題だけあげればそうです。しかし、終戦のときにはいろいろなものが規定されました。それがあとで直っている例がたくさんあります。軍人恩給なんかもその一つでしょう。それで、あれも打ち切りになって、打ち切りになったままならば国民も税負担が軽いんだ。しかし、それも直した例もあるし、それから一たんある時点において支払った給料についてもさかのぼってさらに増額するとか、あるいはこれから野溝委員指摘されるでありましょうけれども、混乱期とすれば済んだ支払いに対してもバック・ペイを行なったとか、それはあげていかなくてもその事柄々々によって私は処理できるもんだと、こう思っておる。この際私が指摘しているのは、大臣、誤解してもらっては困るんですが、ああいう混乱期でやむを得ざる事態だから、株主も三分の二になっちゃったと、役職員も、その取るべき本来の規定であっても、それぞれ三分の二になったんだ、従って預金者も三分の二でがまんしてくれという話なら、法規のむずかしい言葉よりも国民も納得するんです。ところが、そうでないということを私は指摘しているのです。役職員の退職も、規定になんかないことを終戦のその日にきめたと称しているんですよ。その日に、朝鮮銀行の場合。きめたと称しているけれども、だれがきめたんだ。そのとき総裁は朝鮮におらないのですよ。総裁は朝鮮におらない。本店におらずして、きめたと称しておる。それで普通の規定よりもおそろしく高いあれを払っておる。ですから、一人当たりさっき指摘しましたけれども、その正規と称するものだけでも一万五千八百円平均、こういうことは当時たとえば類似の日本銀行なり正金銀行なりでも普通の、当時でしたら中学出ぐらいの十五年いた人の平均を取ったり、あるいは役所で判任官十五年という人の平均を取ったら、おそろしい違いがあることがすぐはっきりします。今一万五千円といえば何でもないけれども……もそうでしょう、そういうふうにしている。そのほか、さらに内地に帰ってきて、全く理由のないものをさらに取っている。それでその後清算事務と称して、今度は十何年経過して、その間に何にも勤めてない人もある。それを含めて今度は、さっき指摘したように、役員に至っては三百六十万円も取っておる。そうして株主は三十万円だと、それで預金者だけは三分の二と。一ぺんきめたことを変えろといえば、国会政府もよほど腹をきめてかからなければとおっしゃるけれども、全部のことを考えなくても、これはおかしいと思う。そうしてさっきお聞きすれば、それは清算人の責任であるというお話もありました。でありますから、一部にはその清算人に対して背任の訴えも出ておる事実があります。けれども、たまたま台湾銀行の場合は訴えがあったけれども、一般の預金者というのは個々ばらばらでありますから、なかなかそういう法律的な手続もできないし、手なれていないのですよ。一つ々々ということになれば容易でない。でありますので、むしろそういう無力多数のものの代理としてわれわれ国会政府も物事に対処しなければならぬのではなかろうか。その観点に立ってお互いに、あなた方のあげ足をとろうというのじゃないのですよ、お互いにここで国政を調査しようというのが私どもの立場だし、最初にお願いしておった点でございますので、私はこれはぜひ——今即答できないならば考慮してもらいたい。  次に、時間がないようでありますから、もう一点だけ申し上げますが、それじゃ、次に朝鮮の簡保あるいは郵便年金、もう一つ指摘しますけれども、潜在主権はあるという沖繩における簡保の問題、これらはどちらかというと大蔵大臣質問するのは無理かもしれませんけれども、しかし、まあ閣僚でありますので……。そういうところのものは未処理になっているのですよ。これは日韓交渉との関係にあるという、政府提出資料にも書いてあります。これは日韓関係交渉が、何かこういう処理のために関係があるのですか、どうなんでしょう。その点だけお聞きしておきます。
  145. 荒巻伊勢雄

    説明員荒巻伊勢雄君) 朝鮮並びに台湾関係、沖繩関係の郵便貯金あるいは簡易生命保険の支払いの問題につきましては、郵政省の、政府の立場といたしましては、その債務を承継いたしまして、現在におきましてはそれを支払うという前提のもとに、いろいろと交渉は外務省を通じまして交渉を続けて参っているわけでございます。そうしまして、沖繩のお話でございますれば、沖繩の関係につきましては、二十八年に奄美群島に関する日米間の協定ができました以降におきましては、南西諸島一般と奄美群島に関する債権債務の日米間の決済という大きなワクを前提といたしまして、それに合わせて郵便貯金等、あるいは簡易生命保険等も支払いをするということで進んで参ったのでございます。しかしながら、この間の債権債務の確定につきましては、日米間にまだ若干の意見がございまして、最終的な数字の調整がついておりませんので、少なくとも郵便貯金と簡易生命保険の日本政府の支払い額につきましては、数字的にも確定いたしましたものがございまするので、これを切り離して支払いをするようにということを日本政府側からも申し入れ、沖繩当局におきましても大体その線で了承されつつあったのでございますが、若干の沖繩側の条件といたしまして、たとえば一円を一ドルにしてもらいたいといったような要望、あるいはもしそれが困難であるならば、支払いが延びた今日までの利息を、一般貯金とは違った形の、遅延利息と申しましょうか、そういうような利率をもっと考慮された支払いの内容にしてもらいたいだとか、あるいは現地の郵便局、沖繩の郵政庁が支払いまする手数料を相当見てもらいたいというような要望が出て参ったのであります。この線に従いまして、一円を一ドルに換算してお払いするということは、大蔵当局の方針もありまして、さようなことはとうてい了承せられないのでございまするけれども何分にも支払い遅延になった事実というものは、現地の住民としては非常に困っているわけでありますので、利率等につきましては、できるだけ考慮する。それから沖繩郵政庁の手数料等につきましても、何とか考慮するということで、三十六年度の、今年度の予算におきましては、一応昭和二十八年以降の元金に対しましての利率を五分をつけるというような考えのもとに、大体郵便貯金におきましては六百二十六万円、それから簡易保険関係につきましては四百九十三万円の見舞金をつける。このほかに沖繩郵政庁への手数料として諸謝金という形で百五十万円をつける、こういうようなことで、予算的に一応郵政省並びに大蔵省のお話し合いもつきまして、予算を組んで今日それを実行するために、総理府の南方連絡事務局を通して最終の話し合いを進めておるという次第になっておるわけでございます。
  146. 天田勝正

    天田勝正君 今御答弁の内容は、資料で一つお願いしたいと思います。  それから、答弁の中に、お聞きの通り、さようなことはなかなか大蔵当局も承知してくれない云々という言葉がありました。私はその通りだと思う。ですから、何事も大蔵当局へ私は質問せざるを得なくなってくる。ですから、その換算などをどうなるのか、政府の、大蔵省とも相談した統一されたところを次には用意をしてもらいたい。どだい、中国関係の保険、これは民間の会社でありますけれども、この問題にしたっても、終戦の二十年の六月四日に大蔵省の銀行局長が通牒を出している。そして三十分の一だとか五十分の一だとか、すぱっと切り捨てて、これは別にどこの法律でどうというんじゃないけれども、通牒が生きちゃってにっちもさっちもいかない。それで結局今日それがずっと流れてきておるという次第でありまするから、それらのことも郵政省の方でもちゃんと心得てもらうことと、大蔵省の方ではやはり対応する政府一致の意見というものを次の質問の場合に用意してもらいたい、こう思います。    ——————————
  147. 野溝勝

    ○野溝勝君 さっそくですが、緊急の問題の方からお伺いしたいと思います。  今回の集中豪雨に、政府当局関係各省の連絡会議を開きまして、これに対する心配をされておるようでございますが、特に今回の集中豪雨の大災害をこうむり災害救助法を適用されておる、長野県初め被害県に同情にたへません。長野県は予想以上に被害が多いのでございます。そこで、政府のこれに対する対案を見ると、予備費八十九億円でまかなえるというようなことが新聞に発表されておるのですが、これだけの大災害に対して予備費でまかなっていけるのですか。その点を一つお伺いして、なお大臣に聞きたいことは、きょう一日の天候はとういうふうにいいんですけれども、まだ気象観測ではわからぬと言われています。そうすると、続いて起こる災害に対する予想もしなけりゃならぬと思うのです。でありますから、ただ観念的に言うんじゃないんですけれども、至急補正予算を組まなきゃならぬように感ずるんでございますが、この点どういうように考えておるのですか、お伺いいたしたいと思う。
  148. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) きょう災害対策の中央協議会というものを開いて、今開いている最中でございます。で、各省から被害状況の報告があり、実情についての把握も事務的に早急に行なわれることと思っていますが、ただいままでの報告によりますというと、特に災害のひどい地域が二、三ございますが、そのほかは三十何県にわたるという非常に広範囲な災害であるかわりに、風を伴っていない関係もございましたでしょうが、水の引き方から見て、割合に今後の復旧には今までと違ったむずかしい問題がない災害でありゃせぬかということでございまして、それはもう災害額のいろんな報告、それに対する今後予備費の支出というものを考えてみますと、現在の予備費の範囲内で私どもは一般にやっていけると思っております。で、問題は、ここで政府として予算上どういう措置をとったらいいか、起債の問題もあり、税制上の問題もあり、金融上の問題もございますので、この措置については、これはすでにたびたびのことでございますので、割合に政府部内は災害に対する措置というものは今適切に迅速にいく訓練もできておりますので、これは大蔵省といたしましても、ほとんど地方機関に対しましても、あるいは保険会社というものに対しましても、国税庁においても、もう現地に通達済みというくらいまで事は運んでおりますから、この四つの措置だけは今回の災害の場合は万全を期せられるだろうと私は考えております。
  149. 野溝勝

    ○野溝勝君 私が心配なのは、政府関係の建設省、農林省関係の被害高を合わせましても、二百五十数億でしょう。さらに公共事業の方も二百数十億でしょう。それだけの政府関係機関からの御報告があって、予備費でまかなえるということに対しては、あまりにおざなり的ではないか。この辺、われわれにはわからぬのですよ。ですから、私は、補正予算を組み臨時国会を開いて万違算なきを期したらどうかということを聞いたのでございますが、それでもまかなえるという自信が関係官庁との間にできておるのですか。
  150. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 大体そういうことだと思います。
  151. 野溝勝

    ○野溝勝君 これは最後の情報を見なければわからぬが、いつも問題のあるのは、罹災者の窮状に対する処置が微力であって、不平不満の声はいつの災害にもあるのですよ。ですから、今大臣は簡単に言われますが、経験があると言われている大臣は、政府を督励して万遺憾のないようにしてもらいたい。それで、かりにこの予備費でまかなえないという場合が起こった場合は、これはどうしようという考えを持っておられるのですか。
  152. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 災害によって、この予備費でまかなえない、予算をここで補正しなければ対処できないという場合は、通常、予算補正の国会を開いていくのが今までの例でございますし、そういう事態が起こりましたら、むろん、これは政府も予算補正の国会をお願いするということもあると思いますが、今の事態ではその必要は全然ないものと考えております。
  153. 野溝勝

    ○野溝勝君 では、希望申し上げておきます。私も明日から実際に視察調査に入るのですが、特に各省でもその視察調査をやられているらしいのですが、今回の集中豪雨の被害は思ったよりもひどいということを感じています。政府もそういうことを発表しておる。ですから、大臣も、ただ単に儀礼的なことを言うのではなく、みずから調査になり、出かけることも必要じゃないかと思う。こういう点を強く希望しておきますが、その点、大臣の考えはどうですか。
  154. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 実は私どももその災害の実情を知りたいと思って、会議に出ておって、対策としては一番こちらが必要な官庁だと思いましたので、いたかったのですが、ここにどうしても来なければということで来て、実情の把握をやっておりません。これを見てから、これは十分災害に対しては対処する考えでございます。    ——————————
  155. 野溝勝

    ○野溝勝君 次に、大臣にお伺いしておきたい。先ほど木村君との質疑の中に、依然として楽観論を述べられておるようなんですね。どうも今日の経済成長と設備投資関係、あるいは貿易の関係、あるいは物価の関係等に対しましては、先行き大した心配がないようなふうな御答弁なんですが、大蔵省自体におきましても、今日の経済の不安を感じ、各局はそれに対する情勢の見通しをいろいろと検討をし、それをまとめられておるのでございますけれども、それに対して大臣御承知ですか。
  156. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 承知しております。
  157. 野溝勝

    ○野溝勝君 承知をしておるというならば、一体関係官庁、特に大蔵省が主でございますが、国際収支の総合収支の中ですでに八千万ドル以上の赤字が出ていることを不安に感じておらないわけなんですか。財政金融と対民間収支の方でも、二千億の引き揚げ超となっているわけなんです。こういう情勢から見て、不安であるということは当然である。さらに、前年との比較も発表されておるのでございますが、こういう不安の情勢の中にあって、なぜ大臣は前から主張された楽観論で押し通そうとするのですか。
  158. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 楽観ばかりしていると言われるのですが、楽観はしていないということを、さっきから、日本経済の問題点が幾つかある、それに対してわれわれはこれに対する対処策は慎重に考えておるということを言っているわけでございますが、ただ、不安だ不安だというのですが、どこが不安だということになりますと、今八千万ドルと言われたのですが、日本のまだ貿易規模が二十何億という時代に、二年間に十一億ドルも経常収支の赤字を出しても日本は切り抜けてきているという、過去の今日まで来ていることを考えてみますと、今の経済規模におきまして、ここに若干の赤字が出るにしましても、原因もわかっておりますし、またそれじゃ先行きどうなるかといういろんな見通しについても、私どもは真剣に考えておりますので、そういう点から見れば、国際収支が心配だ心配だ、どうにもならなくなるという方向ではないと私どもは思っておりますので、その点を申し上げているので、この不安だ不安だでは解決しませんで、不安な点も出ておるから、これに対して十分対処策を講ずるといって、私どもはいろいろ今やっているときでございますが、そういう考慮によって先行きの見通しも立てておりますし、現在の日本の外貨の地位とか、過去私どもがたどってきた外貨事情、そのときの経済規模との関係の影響力とか、いろいろなものを考慮して、特に今までの日本経済に何もなかったのに、今のこのときに不安だ不安だというのは、私ほんとうによくわからないのです。
  159. 野溝勝

    ○野溝勝君 水田君、白ばくれることはやめようじゃないか。お互い日本の国民を代表しておるのですから。私はそういう意味でまじめに質問しておる。だから、大臣も少し反省しつつ答えてほしい。大体あなたの言うのはおかしいじゃないか。不安があるから、そういう点を心配しておる。私はそれがほんとうだと思うのですよ。何も、神様だってそう何もかも御利益がありはせぬよ。いわんや人間のやることに一々ケチをつけよとして質問しているのではない。政府が一つの経済展望を誤ったからといって、政治経済このスピードの時代に、ことに世界的経済の距離の短縮された今日、何も政府が経済収支の見通しをはずれたから、どうというのではないのですよ。けれども、現実に、池田総理大臣が渡米され、アメリカで貿易関係初め経済の問題なんかについても、総理は率直に述べられておるじゃないですか。対米貿易ではいつも米からの輸入は三倍以上の超である、日本からの対米輸出はその三分の一くらい、これをどうしてくれる。これは事実なんですよ。さらに紡績初め諸問題についても、いろいろ主張されておる。けれども、アメリカでは反省の結論が出ない。してみると、経済成長の見通しも国際収支の関係も、不安になるのはあたりまえである。池田首相渡米後、貿易の見通しを再検討しなくてはならない。あなた自身が日銀に働きかけ、資金に対しては貿易拡大、貿易の生産性に大いに協力してくれということを強調されておるじゃないですか。以上の情勢であるのだから、私も心配する。決して野党だからどうとか、与党だからどうとか、そんな意味で質問すんじゃないのですよ。ですから、そういう点について理解されたい。なお、大蔵省局長が御出席になっている。あなたも、国際通貨基金の会議に出席される時間も迫っているから、この際関税問題並びに為替制限等の問題をお聞きする。決して個人的な気持で聞くのじゃないのですから、今申しましたように、あなた自身が不安の点もないではないと渋々言われたから、そういう点はまず何とか解決をして、従来の方針を堅持したい、こういう御意見のように私は理解した。だから、その不安の点というのは、せんじ詰めれば貿易不振だと思うのでありますが、この点に対してざっくばらんに、大臣、どう対処案を考えていられるのですか。
  160. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 設備投資による国際収支の逆調がかりにあったとしましても、今予想しておった程度の日本の輸出増というものが見込めたら、まだ事態は相当よくなることだと思いますし、輸入の中には、さっき話しましたように、そう不健全なものはない。いろいろなところから検討してみても、まあやむを得ない、日本の経済成長に見合った、また自由化を前にした合理化投資にもある程度見合った輸入であるということが言えますとしますというと、問題は輸出増進ということをもう少しやらなければならぬというところに来ますので、私どもはいろいろ輸出増進策を協議して、今一つ一つ実行に移しておりますが、そこで私どもがいろいろ考えていることの一つは、ただ輸出を伸ばそうというだけでしたら、実際はいろいろ手があるのです。現に各国から日本に対してこういう援助をしてくれ、そうして日本の物資を入れるにしてもいろいろな要望があって、私どもがそれに対処し切れないでいるという実情から考えますというと、輸出をめちゃめちゃにふやせばいいのだという立場でやろうとするなら、まだ政府のやる手は幾らでもあるということになるのですが、どういうことをやっても、結局今輸出をふやそうということは、やはり外貨事情も不安のないようにしていこうという考え方があるからのことでございまして、そうでなくてもいいんだということでしたら、日本は、たとえば頭金をみんな取らない。外国からは、どんどん外貨を出してものを買う。買ったものを外国へ長期で売って、外貨は、将来にわたる債権は確保するが、当面日本の外貨事情はどんどん悪化してもいいのだというところに徹すれば、またいろいろの方法が出ますが、それはそう簡単にはいきません。やはり国際収支が要するにそう黒字が出なくても、成長期でありますから、なるたけ均衡するようなところに保てれば、安定の上に高度成長がある程度やれるということになりますし、外貨不安を起こさないような適当な保有を持って日本の輸出を進めていこうということになりますと、そこにおのずからまた制限がございますので、そこらをどう勘案した輸出政策をやって、もう少しふやすのがいいかというようなことが、具体的には私どもの一番苦心している問題でございますので、そういう点は十分責任のある政府としては考えて対処したい。今の考えで、いろいろなことを私どもやりますが、それによって見るというと、そう心配ない事態の推移を一応期待できるというふうに私どもは考えておるということでございまして、心配しないわけでもないので、心配するからいろいろな対策を立てて、その見通しを楽観的な見出しの方へ努力しているということでございますので、いたずらに楽観しているというわけでは絶対ございません。
  161. 野溝勝

    ○野溝勝君 そこで、大臣、あなたのお話がわからぬのですがね。大体、貿易を拡大するならばやる手があるというのですがね。だから、やたらに貿易を拡大するということのみに力を入れるわけにいかぬ。それならあなたの監督しておる金融機関は、日銀初め市中銀行まであげて貿易拡大のために資金の集中投資をしろということを言っておるのですが、この点は矛盾を感じませんか。
  162. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 通常の貿易が拡大することが一番私どもは望ましいことで、それに要する資金量というものは十分確保したいということでございます。ただ、貿易にもいろいろございまして、日本から物をどんどん売って収支のバランスを合わすということだけでしたら、まだほかに方法はございますが、要するにそれは外貨問題とからんでくる問題でございますから、そこらを慎重に考えていくということでございます。
  163. 野溝勝

    ○野溝勝君 この問題は、池田総理が帰ってから必ずあなた方の間に相談があると思うのでございますが、いずれにしても、今日までの知り得る範囲、さらに外電等を通しまして知り得る範囲においては、国際情勢の展望は、特にアメリカ中心の経済というものはなかなか容易でないという私は判断を持っております。そこで、金融財政担当のあなたも多分それは勘づいておられると思うのです。しかし、具体的のことは総理が帰ってからでしょう。いずれにしても、今日の情勢から見ると、くどいようではあるが、貿易に対する先々は明るいものではないと思います。そこで、そうかといって、貿易に力を入れぬ限りは日本経済の発展はない。その点が非常にめんどうなところでございますが、一応そういう方針を政府が示した以上は、その責任を負わなければいかぬ。しかし、その場合貿易品の撰択指導が大切と思う。政府、日銀の金融方針では、市中銀行初め地方銀行も金融の梗塞をおそれて、いわば日本の産業経済には大きな揺れが来る予感があるのです。この点を私は心配しておる。  そこで、大臣にお伺いしますが、日本の経済の成長の一つとして、外貨の保有ドルを高く評価しておる。このことは私はよくわかると思う。しかし、現実にこの外貨の保有ドルがどんどん少なくなっていくのはどういうわけでしょう。そこへもっていって、政府の答弁を聞くと、二月、三月ごろまでは大体原料輸入で、これは差しつかえない。毎年の恒例であって、次の経済発展への段階としてであるから、外貨の減少は心配ない。そのくらいは心配ない、こう言われておるのです。けれども、二四半期になっても依然として外貨がどんどん減ってゆく。そこへもってきて、輸入ユーザンスの問題、ユーロ・ダラーの減少問題が出ております通り、今までと違って非常な勢いで減少しておるじゃありませんか。こういう事態に対しまして、一つ親切に、大臣、その間の展望を話してもらいたいと思います。
  164. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) まあ上半期というものは常に輸入期であり、下半期は輸出期と、日本においてはそういうことになっていますが、従って、私どもはこの季節的に輸入期である上半期の貿易収支というものは、最初から一応赤字であるということを見込んでおったわけですが、その見込み方よりもまあ実際は大きいということでございます。じゃ、この赤字幅というものが今後どうなっていくかという下半期の見通しも、今いろいろな角度から関係者で検討しておりますが、輸出期に入った場合には、相当国際収支の改善が見込める。年度間を通じて経常収支が黒字になるということは今のところ見通しませんが、今の国際収支の赤字幅というものは非常に縮められるというふうに今考えておりますことと、それから外貨の面についても、短期円の問題、これはユーロ・ダラーなどは今月期限が来ておるものもありますので、これを払うということのためにいろいろな問題があると思いますが、外国銀行も決算期であるというようなことから、銀行が日銀に金を買いに来る、ドルを買いに来るというような問題も今起こっておりますが、しかし、これが一応決済すれば、また外国銀行がそれをどれだけこちらへ預けてくるかということは、もうちょっとたってみないとわからない問題ですし、決してそういうものについて私どもが安心しておるわけじゃなくて、この動きはもう十分気をつけているつもりでございますが、そういう問題とも合わせていろいろ考えてみましても、私は設備投資というものの慎重さがここで少し加わってくれたら、国際収支というものはそう心配する必要はないじゃないかと今思っているところです。幸いにこの設備投資も、ひところ私どもがいろいろな推計数字を出したときには、これは相当行き過ぎだと思いましたが、今の見通しによりますと、ほんとうの実施という段階になって、そこまではいかなくて済みそうな今慎重さが見られるというところに、若干私どもは心配の度をゆるめておるということでございますが、物価の動向、そういったものを全部総合してみまして、ここで相当の今落ちつきが出てきて、五月あたりがいろいろなことのピークということで、事態は少しずつ改善されていく方向だというふうに私どもは考えております。
  165. 野溝勝

    ○野溝勝君 大臣は真剣に考えていただきたいと思うのです。単にアメリカの決算期だからユーロ・ダラーの問題がだんだんと少なくなってくるというだけでは、片づけられないと思うのです。大体今までの毎年の比較をしてみると、本年ほど急ピッチになっておるときはないのです。毎年決算期があります。それなら、同率前後なら理解できるが、そうでない。なかなか国際情勢から見ても、日本経済の処理というか、運営というものは相当気をつけなければならぬと思うのです。  それに、今大臣がお話しになったように、こういう複雑な不安な情勢の中に、依然として設備投資を放漫にしておくというのは誤りを大きくすると思うのです。放漫にしておらぬといいますけれども、実際今の設備投資は、国内消費を当て込んで、経済の成長が一一%であるとか、九%であるとか、ただ数字でおもちゃにしておるだけです。一つの意図をもった数字なんかはマジックですから。しかし、国民が戸迷いするから、迷惑だ。今の国内の経済状態というものは、もうピークに来ていると思うのです、消費経済は。しかし、業界は貿易不振をカバーするために、設備投資をどんどんやっていく。大小の会社は次の転換策として必要以上に土地建物を買っている。工場も作らなければ、土地ばかり買っている。そのほかに設備ばかりすれば、税金をのがれるから、必要経費は課税対象にならないということで、今のうちにドンスカドンスカやって買収しておけというわけで、無政府的な設備投資をやっておるのですよ。特に、先般かわられましたが、石野さんが銀行局長当時、あるいは企画庁の調査局長が見えまして、私は懇々とこの委員会において懇談質疑をしたわけです。その際にも申し上げました通り、大体資本主義経済では需要供給の経済の速度から見ても、そのことは言えると思うのです。供給量以上に設備をしておるのですよ。こんな矛盾したやり方というものはないと思う。それに対して政府資金を出す。特に産業機関から自主調整をしてこれ以上設備をしては困るというペルプ事業、あるいは企業体の調整申出に対しても、取り上げない、これは一つの例でございますが、まるで自主調整の意見と全然違った方向に政府の施策が行っている。こういうやり方をやっておったのでは、日本産業は危険だと思うのです。ですから、そういう点に対する政府の一貫した方針がないと、とんでもないところへ船が行ってしまうと思うのですが、こういう点について、今、大臣設備投資の問題について心配をしておるような、しておらぬような、はっきりした答弁ではないのですが、よく聞き取れなかったのですが、この点、どう考えておいでですか。
  166. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 設備投資の動向を見ますと、三十三年から四年で三〇何%というふうな伸び率ですし、三十四年から五年にはまたさらに大きい三八%というようなことで来ておりますので、本来なら、今年は前の設備投資の稼働期に入ってきますから、設備投資がある程度自然に抑制されていく年回りではないかと私どもは、今までは、当初見込んでおったわけです。過去のあり方を見ても、そういう線をたどっておりますので、今年あたりは設備投資が相当鈍化する年という見通しをつけておりましたが、そうじゃなくて、昨年からの趨勢が今年もなお続いて参って、経済企画庁やこの通産省を通じて、いろいろ民間の予定計画というようなものを出させて集計してみましたところが、意外に大きい数字になっておりますので、私どもはこれはやはりこの通りやらせることは行き過ぎであると考えましたので、できるだけこれを合理的にするために、審議会の吟味を経たり、またさっきおっしゃいましたようないろんな合理化の質を十分に考えて、特に急がなければならぬと思われないものについての抑制方法は、あるいは金融面を通じまして、いろんなほかの指導を通じて、できるだけこれを押えるという方向で今努力しておりますので、何とか、一挙に設備投資というようなものを下げるということは経済のほかに影響するところも大きいものですから、私はやはり二〇%以内ぐらいの伸び率に設備投資が本年度おさまってくれるなら非常に、日本経済は波を立てないで安定的なこの高度成長を遂げられるというふうに一応考えて、その方向への努力をしておるのでございますが、これは政府が何%にすると、三兆幾らにとどめるというようなことはなかなかむずかしい問題でございますので、全般として企業家がこれを行き過ぎた場合の先行きの問題を考えて、自分自身の責任においてこれを慎重にやってくれという要望を、機会あるごとに、政府筋が民間に今頼んでいるときでございまして、民間もそういう態勢が少しずつここで出てきているときでございますから、私はそう行き過ぎのところまで行かないで、この問題はうまくいくのではないかと思っているわけです。
  167. 野溝勝

    ○野溝勝君 あなたも国際収支と重大な関連のある通貨基金の会議に行かれるのでございまして、お忙しいので、私は時間を制約して申し上げておるのです。現下の産業経済の動向の中で私が心配している一つは、今の設備投資の問題ですが、これが税制との関係もあるわけなんです。これはまあ巨大産業にかかわらず、中小企業にかかわらず、ほとんど今日は設備投資に多くの力を入れている傾向なんです。先年の経済不安のあったときには、設備投資をやったものがぼろいもうけをしたというようなことを、今日も業界は夢を見ているようですね。それに課税対象からはずれるというようなことのために、この放漫なる設備投資が行なわれ、思惑もあるだろう、こういう点が多分に含まれていると思う。この点は大蔵大臣として留意してもらいたい。  さらに、今申しましたように、何でもむちゃくちゃに設備投資をやめろ、こういうような暴言的な議論をするつもりはない。貿易上必要なる設備投資であり、日本の国民生活に必要なる産業設備投資である、この点はおのずからわかると思うのです。この点に対し、大蔵大臣は、任期中に一つこの点だけでも、日本経済の立て直しの一環として方針を出されたらどうか。大臣としての足跡が大きく残るのじゃないかと思う。この点は、大臣、どう考えておるか。
  168. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 私は足跡は残したいのですが、足音をはっきりさせるような形はいけない。こういう微妙な経済問題につきましては、なるたけ足音を立てないで、音を立てないで、心配な方向は黙って是正するというような行き方をやるのが一番いい方法だと思いますので、なるたけ言わずにいろいろな努力をしているというときでございますので、今の行き方をやっていけば、大体いいのじゃないかと思います。
  169. 野溝勝

    ○野溝勝君 水田大蔵大臣、あなたがまじめな、けれんのない気持の持主であることはよくわかっています。そうして非常に無理をやらないというこの気持もわかっています。しかし、日本の経済をやはり立て直すというためには、あるいは現在の日本の経済というものを維持するというような考えに立てば、水田大臣も、この自重の程度は一つ乗り越えてもいいのじゃないかと私は思っています。そこで、先ほどあなたがお話しになりました通り、大蔵、通産当局といたしましては、心配されまして三つの見解を発表しておるわけですね。一つは経常収支が当初より悪化しておる。だから、外貨準備二十億ドルを割っている。今日、これは相当重大な問題だということが一つ。それから、一つには自由化計画は順調に進んでおる。日本の関税水準は西欧各国より非常に低い。さらに、わが国に対するところのガット三十五条の特恵国待遇の援用問題が解決されずにおる。こういうようなことが国際収支の悪化と関連して問題になっておる。きょう国際通貨基金の会議に出られるにあたりまして、この点は特に強調されまして、さらに貿易問題等に対する大体の動きもわかると思うのです。そうしたならば、どうするかということをやはりそろそろ私は案を打ち出していい時期じゃないかと思うのです。これを最後に、特に希望と同時に私の意見を申し述べて、あなたに対する質問を終わりたいと思います。誠意ある御答弁を願っておきたいと思います。
  170. 水田三喜男

    ○国務大臣水田三喜男君) 事態は確かに私どもの予想したより経済の伸びは早い、少しよくなり過ぎるという方向で、そのための問題が起こりかけておるという事態でございますので、よくなり過ぎたむしろ悲鳴で、悪くなり過ぎたためのわれわれが今あわてていろいろなことをするということは、全く反対の現象にぶつかっておるときでございますので、こういうときこそが一番やはりやり方としてむずかしい時期だ。不景気を景気よくしようということの方が政治として、また行政当局としてもやりいいのでございますが、よくなり過ぎると困るという時期にぶつかっておる時期でございますから、また特にそのための慎重さを必要としますので、下手まごつくと、これまた輪をかけさせるということにえてしてなりがちなものでございますから、過去の経験から見て、私どもは十分慎重に、御心配されておる点は、これは大いに心得てやりたいと思っております。そういうことでございます。
  171. 野溝勝

    ○野溝勝君 局長さん方は、今私の質問をお聞きのことと思いますので、それに基づいて一ついろいろこまかい質問をいたしますけれどもお答え願いたいと思います。  最近金融が逼迫してくるというような情勢がありまして、銀行初め金融機関は警戒ぎみなんでございます。こういう傾向に対しまして、当局はそういう傾向があるかないかということ、あるとすればそれに一体対処しようとするのか、その点、一つ銀行局長からお伺いしておきたいと思います。
  172. 大月高

    説明員(大月高君) 大体最近の金融の情勢は、基調として引き締まりぎみでございますことは、仰せの通りでございます。ただ、この引き締まりの原因が、いわゆる設備投資の意欲が旺盛である、そのために資金の需要が強いということに基因しておりますので、この引き締まりの基調をゆるめるということはむしろ適当でない、こういうように考えておるわけであります。ただ、先ほどお話のありましたように、七月、八月、九月、相当財政面の揚超がございます。これが資金の供給面において、相当金融をまた締める原因になると思います。この点は、全体の基調を引き締めるということは当然でございますけれども、それが異常に金融を締めるということであっても適当でないという感覚を持っておりますので、その辺の調整は、引き締まりの基調のもとに何らか方策を考えたい、検討いたしたい、これがただいまの考え方でございます。
  173. 野溝勝

    ○野溝勝君 特に商工中金などは、今年度は前年度と違って資金調達が困難になっておる。であるから、なかなか要求を満たすことができないで困っておる。大体商工中金などは、ほとんど資金は政府資金であります。こういう場合に対しては、どういう一体お考えを持っておられますか。
  174. 大月高

    説明員(大月高君) 最近、全般的に金融債の市中の消化というものは、そうよろしくございません。これはお話の通りでございます。商工中金につきまして、現在消化のルートは三つございまして、一つは、政府の財政投融資計画に基づきまして、資金運用部におきまして商工債券を引き受けてもらう。それから第二は、金融機関に対しまして、主として長期債でございますけれども、これを引き受けてもらう。第三は、主として短期の割引債券は市中一般の公募による、こういう方式によっております。最近の状況によりますと、政府の方は予定通り引き受けておりますが、金融機関につきましては、予定よりも若干、月一億ないし一億五千くらいは上回った消化をしておりまして、この点の懸念はないわけでございますが、割引債券の消化につきましては、金融がある程度逼迫しているという問題もございますが、また別に公社債の投資信託ができまして、それとも食い合っているというような関係もございまして、消化が若干落ちておる、こういうことでございます。しかし、その全体の三つのルートを通じまして考えますれば、従来予定いたしております金額に比較いたしまして、やや少な目でございますけれども、さしあたり困るということはない。商工中金自体の資金繰りといたしましても、数十億の公募をいたしておるというような状況でございますので、長期的に商工債券の消化がペースとして非常に落ちませんように、ある程度促進策は今後いろいろ考えていく、それによって対処できるものと考えております。
  175. 野溝勝

    ○野溝勝君 大蔵当局は一貫してどうも楽観論なんですが、特に商工中金の資金調達の第一は、何としても割引債券なんですよ。それが実際に売れ行きがうまくいかぬ、だんだん悪くなってきておるというこの現実は、これは私は重大に考えておるのですがね。そこで、どうして一体これが売れ行きが悪いか、はけが悪いかというと、御承知だと思うが、今日の中小企業は流動資金に忙しく、相当金詰まりで、ために受け入れるだけの余力もないと思うのです。そこで結局は、どういうふうにしてこの商工中金の事業を生かすかというならば、やはり政府資金にたよることになると思うのですね、別の意味において。結局政府は、この商工中金の資金の関係について、前年度よりわずか、三百二十億ですか、その前が二百五十億でしたか、ちょっとこまかい数字は忘れましたが、そんなわけで資金量は依然として少ないのですね。そこへ持っていって、先ほど大臣からも話がありました通り、貿易に資金を多く回すというようなことで、日銀もそういう指導をしておるし、市中銀行もまたこれに協力しておる。勢いそうなってくると、地方銀行も大体中央に多くの資金を出しておりますから、その傾向になってくると思うんです。そうすると、ますます中小企業あるいは商工業者は弱ってくるという事態になってくると思うんです。そういう点について、銀行局長、どういうふうに考えておりますか。
  176. 大月高

    説明員(大月高君) 今年度の商工中金全体の貸し出しの純増ベースは、仰せの通り三百十億でございまして、昨年度の目標は二百五十億でございます。その三百十億は、先ほど申し上げました商工債券と、それから預金の増加によってまかなう予定でございますが、若干割引債券において消化面の困難があるということを除きましては、そう今のところ非常に重大な支障を生ずるとは見ておりません。で、その三百十億の金を中小企業に回すにつきまして、貿易の疎通のために金融をする問題と一般の商工業に融資をするという問題とが競合して、一般の方になかなか金が回らないんじゃないか。ただ地方銀行自体としても、貿易々々ということになりますと、一般の方に金が回らないと、こういうお話でございますけれども、輸出の面におきましては、むしろ中小業者の輸出関係の金融というのは相当多いわけでございますので、貿易に関係のない中小企業金融もあわせてやるということになりますれば、今の貿易金融を大いにやるということと中小企業金融とは必ずしも矛盾しない、二つの効用をかね合わせておると、こういうように考えておりまして、特に支障はないんではないかと考えております。
  177. 野溝勝

    ○野溝勝君 そこで、局長さんにお伺いするのですがね、心配ないと思う、心配ないと思うだけじゃ、過ごされないんです。と申すのは、実際今の大きな経済動脈でありまする国際収支の関係から見ても影響されるのでございますから、日本の金融財政は大企業に集中される傾向が強く、中小企業の金融、商工中金の資金調達の点について努力してもらいたい。政府資金もふんだんに支出するわけにもいかぬが、財投の分配率を考える必要がある。他の金融機関とのにらみ合いですな。特に今日市中銀行は、先ほど話した通り、さらに地方銀行もやはり利益のあるところに集中する傾向がある。これは石野さんが銀行局長当時から私は述べておる。さらにそこへもってきて、大いに金融が梗塞してくると、何か歩合の引き上げかなんかやってもらわぬと、地方銀行も証券界と太刀打ちもできない。また預金も少なくなってくる。引き出しばかり多くなり、これじゃ融資もできないという羽目に今陥っているような状態らしいんです。そこで、この混乱の中で一貫して中小企業資金に専念しているのは相互銀行らしいんですがね。相互銀行は金利が高い、だからいやだといってみても、商工中金は資金量は少ないし、中小企業公庫の金もそうだ。それと地方銀行もなかなかいかない。結局、相互銀行が大体この間にあって努力している。最近の同協会の報告を見ると、九〇%ぐらいは中小商工業者の方へ融資をしておるわけです。この役割は非常に大きいわけです。この大きな役割の相互銀行を今後中小企業のためにどういうふうに協力させようとするか、一体運営してもらうように努力するつもりなのか、その点を一つ。
  178. 大月高

    説明員(大月高君) ただいま全体の中小企業金融についていろいろな機関をどういうふうに考えるか、特に相互銀行につきましてどう考えるかというお話でございますが、やはり中心は一般の金融機関から中小企業に対して金が出ておるという部面が一番多いわけでございまして、都市銀行、地方銀行合わせまして中小企業に対しては大体三〇数%の金が出ておるわけでございます。ただ、政府関係の三つの機関全部合わせましても、全体の総中小企業金融の中でせいぜい八%か九%、こういう程度でございまして、やはり主力は民間の金融機関にある。しかも、中小企業金融につきまして、特に相手方の企業の内容をよく知っておるという面からいたしますと、やはり中小企業をもっぱらやっております相互銀行、信用金庫、信用組合、この系列のものが、最もいわばかゆいところに手が届くような金融をやっておるであろうと考えております。そういう意味におきまして、従来も大蔵省の行政指導方針といたしましても中小企業の専門機関を育成する、こういう傾向にあったわけであります。現在相互銀行の資金量は一兆円をこえまして、信用金庫も八、九千億になっております。そういう意味で、一般の銀行に対する中小金融機関のウエートが戦後非常に上がってきておりまして、中小企業の金融の疎通に役立っておるのではないかと、こういうふうに考えております。
  179. 野溝勝

    ○野溝勝君 それほど今日中小企業者——まあ企業という言葉はあいまいですけれども、中小商工業金融にそれだけ大きな役割を果たしてやっておるのに、なぜ政府は依然として普通銀行だ、特殊銀行だという区別をするのか。もうそんな時代ではないと思う。往年の無尽会社当時と違いまして、もう十数年にもなっておるわけで、銀行体制もできておるわけで、信用金庫、信用組合に対しましては——信用組合などは県の段階において認可をするのでございますから、これは別問題でございますが、これについてはあとで申し上げたいと思います。しかるに銀行当局は、これだけの大きな役割を果たしているのに相銀を特別扱いのような考えを持っておるということは、現下の金融政策から見て間違っておると思う。特に現実の事態から見て、一そう中小商工者に協力をしてもらわなければならぬ段階だと思う。そのかわりに、預金の方は二年くらいの長期預金にしてやるとか、あるいは今まで普通銀行でなければ預託を許さぬというような、たとえば恩給金の処理取り扱いにしろ、あるいは県金庫の問題にしても、あるいはタバコの耕作基金の問題にしても、あるいはその他厚生省のやっているそれぞれの資金の問題にしろ、こういうようなものをなぜ一体普通銀行と別扱いにするのですか。今銀行局長からお話がありましたごとく、数字的に見ても大いに役割を果たしておる。それならば、政府は、お前の方は金をほかから貸してくれぬから仕方なく借りる。仕方なく借りるというこの考え方を直すには、金利を安くしなければならぬ。そのためには預金を受け入れるに容易な制度にしなければならない。当局はもっと親切に、かつ正しい見解を持って金融界の運営に当たらなければならぬと思うのですよ。新銀行局長としてこの点に対してどういうふうに考えておられますか。
  180. 大月高

    説明員(大月高君) 普通の銀行と相互銀行につきまして、いろいろな制度の面において取り扱いが違っているということは仰せの通りでございますが、これはやはり制度といたしまして相互銀行は今年でようやく十年であります。非常な発展の速度ではございますけれども、しかしその内容におきまして、資産、信用の充実におきまして、これは理屈ではなくて、現実に何十年の歴史を持っておる金融機関と、創設以来十年程度の金融機関とでは外部の見る考え方が違っておる。それから現実に長年かかって内部の留保を積み重ねてくるわけでございますから、やはり年数がたっておるということは内部を固くするゆえんでもあり、人的な組織の面におきましても、やはり強固でございますし、あるいは組織自体もやはりしっかりしておる。こういういろいろな要素を総合いたしますと、やはり全体の——個々の相互銀行、個々の銀行の比較は別でございますけれども、全体のレベルにおきましては、やはり相互銀行は普通の銀行に比べて若干劣っておる点が多いと。これは現実でございます。ただ、われわれといたしましては、新しい制度を立て、新しい機能を特に中小企業につきまして期待いたすわけでございますので、これが育成につきましては大いに努力いたしておりますが、そういう意味で段階があるのは、これはある程度やむを得ない。しかし、将来においてはできるだけこの格差を縮めていく努力をいたしたいと思います。また業界におきましても、その意気込みで大いにおやりになっておる、こういうふうに考えております。  で、いろいろ取り扱いの際につきましても、そういうような現実がだんだん同じ方向へ向かいますれば、また同じようになると。これは一般の公平の原則から当然であろうと思うわけであります。ただ、普通の銀行と相互銀行とは制度が別になっておりますので、やはりそれぞれ期待するところが違っておりますし、あるいはやる業務に特色があるからでございまして、たとえば相互銀行におきましては相互掛金というものを中心にして、ほかの金融機関では絶対にやれない保護された特色を持つ機能を営んでおる。しかも、それは中小企業金融に徹するという指導原理がございまして、ほかの一般の銀行とはそれだけ違った特色を持っておるわけでございますから、完全に同じものにするということでなしに、それぞれ特色を発揮して中小企業金融に役に立ってもらう、これがやはり制度が別になっております建前上当然であろうかと、そういうような気持で今後やっていきたいと思います。
  181. 野溝勝

    ○野溝勝君 銀行局長ね、制度が、制度がと言いますが、しかし公平を欠く制度や時代に沿わないことは改めていいと思うのですよ。その、あなたから次官なり大臣なり上司に対し積極的に意見を開陳すべきものだと思うのです。それは皆さん相当努力しておる、その努力を否定するわけじゃないのですよ。しかし、新しい時代において国民経済に大きく役立つすべてのものに対しましては、行政官として考えて善処すべきであるという意味です。  そうしていま一つ申し上げたいのは、大企業になると社債発行などもできまして、金融の道も開けているわけであります。中小商工業者になるとそういうことができません。どうしても金融機関にたよる以外に道がないわけです。そういう場合に、今日相互銀行全部というわけじゃないのですが、今あなたのお話では、銀行は長い間の経験を積み重ね努力をしてきたというけれども、今日相互銀行の実力のあるものより劣る普通銀行が幾らもあるのですよ。それで、私は画一にものを言うのじゃないのです、金融機関ですからね。何もかも画一にしろと言うのじゃない。しかし、今申したように、内容が地方銀行より有力なものになって一般的にも信頼の高まっている、そうした有力筋のものに対しては、金融制度に対するために改革したらどうか。検討を行なって、将来に希望を持たして、中小企業商工業者にも資金の要求に応ずるようにさした方がいいのじゃないか。その一つとして先ほどいろいろの話をあげたのです。たとえば支店の設置などもそうです。普通銀行に対しては簡単にします。相互銀行に対してはなかなかやかましい。こういうことは私は時代的じゃないと思うのです。それよりは、金融政策上欠陥がある、あるいはまずい点があるという点については、十分監督すべきだと思う。この点をどう考えておられますか。努力するというならわかるのでございますが、何ら、あたりまえだという考えならば、私は断じてこれは承服しない。
  182. 大月高

    説明員(大月高君) 先ほど申し上げました場合にも、個別のケースは別といたしまして一般論としてはそうだと申し上げたわけでございまして、それぞれの相互銀行をとりますれば、また銀行の中のそれぞれに比べましてはるかに優秀なものも多いということ、これは事実でございます。たとえば日本銀行との取引一つ考えましても、今逐次取引の範囲を拡大しているわけでございます。それは資産、信用が向上するに伴いまして、従来の銀行と同じように取り扱ってきている。ただ、全体のレベルからいいますと、やはり日本銀行の取引をやっている数は少ないのだと、こういうことでございます。  で、店舗の問題につきましても、やはり新しい制度を育成するという趣旨におきまして、毎年普通銀行と相互銀行とどちらの店がたくさんできているかと申しますと、相互銀行の方がはるかにたくさんできているわけでございます。これは統計的にそうなっております。その結果、一般の銀行と相互銀行との間の格差が逐次狭まっている。逆に、むしろ普通の銀行の方で、自分らには非常にきびしい、相互銀行の方に非常に行政が甘いのじゃないかという非難があるくらいでございまして、われわれといたしまして、新しい制度を早く強固な組織でりっぱな機能を果たしていけるように育成したい、これが一貫した精神でございますので、仰せの通りにやっていきたいと存じております。
  183. 野溝勝

    ○野溝勝君 銀行局長にはあと一つで質問を打ち切ります。今お答えの中にもありましたようにですね、実際中小商工業者の資金というものは窮迫してくると思うのです。おそらく私の展望では、後半期に至ってより一そう窮迫してくると思う。そういうときに、政府資金は限度があるということで、民間資金に依存度が多くなり協力してもらわなければいかぬ、そういうことを十分考え、それがためには金融機関をフルに公平に——公平にといっても力の内容の問題もありますから、そう観念的にものを言うのじゃない。ですから、そういう点を総合的に十分把握されて、金融機関に対しては昔から同じようなやり方でなく、困難もございましょうが、脱皮して近代性を持たせるよう指導されたい。干渉も入りましょう。しかし、それは日本の金融業の比重が中小企業に強くなった、中小商工業者の希望にこたえるように一つ御配慮を願って再検討願いたいと思うのでございますが、この点いかがでございますか。
  184. 大月高

    説明員(大月高君) 中小企業金融機関を育成するにつきましては、十分検討を加えて努力していきたいと思います。
  185. 野溝勝

    ○野溝勝君 次に、理財局長お尋ねするのでございますが、理財局長も新任でありますので、特にこの際私はお伺いしておきたいと思うのです。最近、日本の経済、まあ金融財政全体を通しまして、非常に国際性が強くなってきたわけなんです、影響が。特に財政金融の問題については、十分なる監督を必要とすると思うのです。特に、業務の監査制度においては充実をはかる必要があると思うのです。これは例でございますが、先年外国に参りましたときでございますが、特に会計行政のよくいっておる点について私は感心して来ました。日本が近代国家としてこれから国際的に動く際には、この会計事務、会計行政、これが完全にいかなくては、今後の国際経済競争に太刀打ちが容易じゃないと思うのです。たまたま、日本におきましても会計士法というものができておりまして、非常に外国に行っても感心されておりました。しかるに、この会計士法の運営並びに扱い方について、どうも最近当局の考え方におかしいところがあるのではないかと思うのです。というのは、なぜ一体この会計士をもっと広範囲に協力させないか、またさせる道を選ばぬかと思うのです。先般理財局が決定になりました、今までの一億円以上の会社に対する監査は会計士を必要とするということになっておりましたが、この範囲を今度は広めた点はけっこうです。けれども、その他については、どうも最近、せっかく希望を持てる知識人に対して、非常に不安を与えてきています。ざっくばらんに申せばですね。  計理士会の諸君が、試験を受けないでこの資格を与えろというような動きを示したらしいのですが、これは国会には問題にならないかったのですが、この点は、絶えず、近代人として将来に希望を持っておる会計士の諸君並びに今大学へ行っておる学部の諸君が非常に心配をしているわけです。特に会計士法につきましては、さきに自民、社会、この全会一致ということで、近代国家形成のために必要だということできめたのです。新理財局長は、会計士の広範な協力方に対しましてどういう御見解を持っているか、この際お伺いしたいと思います。
  186. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) お話のように、日本は、近代国家といたしまして、企業経営の堅実化をはかる上におきまして、企業会計の健全化をはかる必要が十分あると思っております。そういう意味におきまして、企業会計の健全化をはかり、かつまた、投資家の利益を保護する意味からいたしましても、高度の専門的な知識並びに経験を持っておりまする公認会計士、これの活用については十分考えて参りたい、かように考えております。
  187. 野溝勝

    ○野溝勝君 最近、六月八日の朝日新聞ですが、こまかいことは省略いたしますが、神奈川県の横浜の信用金庫の使い込み事件、あるいは長野県の埴科における農業協同組合の使い込み事件、その他まあ続々資料があるのでございますが、枚挙にいとまありませんが、こういう金融機関に対しまして会計士を協力させるというようなことは、これは考えておりませんか。この点は特に銀行局においても責任があると思うのでございますが、理財局長に対して、一つ見解を聞きたいと思う。
  188. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) その新聞、私拝見いたしておりませんが、信用金庫にそういう事件があったことはまことに遺憾でございます。信用金庫、あるいは農業協同組合、あるいは信用組合等に対しまして、こういう金融機関に対しまして、公認会計士を活用するかどうか、これにつきましては、公認会計士を、法的に公認会計士の監査証明を必要とするというふうにいたすことも一案かと思いますけれども、御承知のように、金融行政の立場から、大蔵省なり、あるいは農林省なり、あるいは都道府県というものが 別途の監督検査をいたしておりますので、相当重複するきらいもございまするので、直ちに公認会計士を活用するという方法につきましては検討を要するのじゃないか、かように考えておりまして、なお銀行局方面とも十分打ち合わせいたしたいと思っております。
  189. 野溝勝

    ○野溝勝君 きょうこの委員会に皆さんのお忙しい方々をお呼びして、私がこう長々と意見を開陳するのも、銀行局長にしても理財局長にいたしましても、新任早々でございますので、この機会が最もよい機会と思いまして、委員会の了解を得まして、皆さんをおいでを願ったわけなんです。それですから、この機会に平素考えておる意見を申し述べて、特に理財局長、銀行局長の御答弁が得られましたので、これ以上私は申し上げませんが、どうか一つ、せっかく近代国家を形成する上に大きな役立ちを持っておる、また外国からも日本の会計士法に対しましては感心をしておるわけです。あたりまえのことなんです。しかし、そういうような形はできたけれども、この応用運営、こういう点につきましては、一段と政府当局、ことに大蔵省関係当局が真剣に考えていただきたいと思う。特に先ほど申しましたように、信用組合というものは大衆性があってよろしいように思いますが、今日のように資金が量的に変貌してきた今の金融財政のもとにおきましては、ああいう県知事だけの認可でよいか、どうかは問題がある。いろいろ悪い弊害がある。検討して改めるべきであると思うのです。そういうような点も考えると、その前の措置として業務の運営について、金融機関でございますから、関係人民と申しては失礼でございますが、人々に心配をかけないようにしなければならぬと思う。それなら、せめて責任ある会計士の認定といいますか、証明といいますか、それくらいのものはこの際やってしかるべきものだと思う。そういう点について、銀行局長、理財局長から非常にまじめな御答弁がありましたので、いま一応、一つ銀行局長、理財局長の御両氏から、近い機会にそういう両局の間においてそうした研究をするというお言葉がありますならば、これで私の質問を打ち切りたいと思います。
  190. 宮川新一郎

    説明員宮川新一郎君) 先ほどお答え申し上げましたように、金融行政の立場からする監査との関係がございますので、直ちに公認会計士の監査証明を財務諸表につけさせるというわけには参りませんけれども、十分銀行局とも連絡協議いたしまして、善処いたしたいと思います。
  191. 大月高

    説明員(大月高君) ただいまの理財局長のお話にもございましたように、銀行行政の面としての検査というものは政府は相当厳重にやっております建前がございまして、この制度と公認会計士の監査の制度をどういうふうに調和するかというむずかしい問題もあると思います。今の御趣旨は十分了解いたしましたので、後ほど相談してみたいと思います。
  192. 野溝勝

    ○野溝勝君 最後に、石野新主計局長にお伺いしておきたいと思います。これは主税局長から聞く方が正しいのでございますが、あなたにも関係がありますから、あなたからお答え願いたいと思います。と申すのは、先ほど私が申し上げましたごとく、今日の税制には欠陥があると思うのです。これは主税局と一つ御相談を願いたい。あなたのために在任中の一応参考に申し上げるのです。というのは、今は設備投資がムードです。それは課税対象から省けるわけです。ですから、いろいろのものを、土地を買ったり、家を建てたり、最近どうです、会社の寮の多くなったこと。そうして何をやるかというと、あけておいて割烹のまねみたいのをやっている。これは国家経済上非常に惜しいというか、残念でたまりません。だから、こういうのを、国民経済に必要なものでもない、貿易上必要なものでもない、こういうのは悪性インフレの道に通ずる傾向にあるから、むしろ動因になる。この際主税局と相談をされて、課税の対象にし、産業界の自省を促す必要があると思うが、どうですか。内容は、今言った通り、貿易上に必要なものであり、あるいは国民経済上必要なるところの施設であるという点は、やはり需給の関係から十分にらみ合わせ、あるいは貿易政策上からにらみ合わせて、その角度から一つの方針を立てて、新しい課税費目とする方針を、この際新しく確立をしなきゃならぬと思う。こういう点は、むしろ主計局の方から主税局に申し込んでしかるべきものだと思うのでございますが、この点、いかがお考えでございますか。
  193. 石野信一

    説明員(石野信一君) 発言の機会をお与えいただきましたので、ついででまことに恐縮でございますが、ごあいさつもかねて申し述べさせていただきますが、六月の十六日付で銀行局長から主計局長にかわりまして、主計局長を拝命いたしました。銀行局長当時いろいろ格別にお世話になりましたが、今後、主計局長としてますますお世話に相なると思いますが、皆さんによろしくお願いいたします。  まあそういう次第で、かわりましたばかりで、ただいまいろいろいろの問題を勉強いたしております。税の問題につきましては、何と申しましても担当は主税局でございまして、まあ現行のお話のような税制も、産業政策なり、国民経済全体との関係、いろいろな観点も考慮されてできておる制度と思いますが、御意見の点につきましては、主税局にも十分連絡をいたしまして、いろいろの立場から問題はあると思いますが、一つ検討させていただきたいと思います。
  194. 大竹平八郎

    委員長大竹平八郎君) これにて本日は散会いたします。    午後五時十四分散会