○
参考人(一柳
勝晤君)
原子力研究所労働組合の一柳でございます。
この
法案に関します御
意見を申し上げる前に、最初に私の立場を御説明させていただきたいと思います。
私は今
加藤先生の方から
お話がありましたように、いわゆる
原子力研究所の職員、すなわち第二者としての立場を持っておる者でございます。しかしながら一方私の家族は東海村に住んでおりまして、そういう
意味においては私の家族は
第三者の立場にあるわけであります。そういう
意味で、第二者、
第三者、その両方の立場に立って、きょうは発言をさせていただきたい。そういうふうに考えます。私の発言の要旨をちょっと書き物にいたしましてお配りいたしましたから、それを後ほど御参照いただければ非常に幸せだと思います。
まず第一に、この
法案自体が持っております問題、第二番目にこの
法律を施行する、あるいは施行以前にいろんな点が問題になってくるわけでございます、そういう種類の問題。第三番目に、これは第二者という立場から、第二者の補償に関する問題についての私の
意見。その
三つに分けて
意見を申し上げます。
まずその
原子炉といったような、
原子炉の
施設が万一
事故を起こしまして、それが付近に住んでる方たちに御迷惑をおかけした、そういうような場合には、これは
一体どうなるのか。これはわれわれ
原子力に関する研究開発に従事しておる者にとりまして、前からずっと最大の関心事の
一つであったわけであります。一方地元住民といたしましては、これは先般
原子力発電会社がコールダーホール型
原子炉を東海村に置くという問題が発生しましたが、当時科学
技術庁長官であられた中曽根国務大臣がおいでになられまして、
原子力で万一
損害が起こった場合には、これは完全に補償するのだというお約束をなさったわけです。その約束がございまして、
原子力に関する
損害補償というものが完全な形で行なわれることを非常に強く要望しておったものでございます。そういう
損害補償に関する
措置というものが今回おそまきながらこの
法案として国会で御
審議いただける段階になったわけです。われわれの手元にもその
法案が参りまして、過日来私ども集まりまして慎重に検討さしていただいたわけです。そこでわれわれの
意見を申し上げますと、はなはだ遺憾ながらこの
法案に関しましては失望をしたということを申し上げざるを得ないのです。どういう点でわれわれが失望したかという点をまず以下順を追って御説明申し上げます。
まず第一に、この
法律によりましては、この
法律は
原子力損害というものを補償するという建前になっております。しかしながら、この
法律は
原子力損害全部をカバーできないと言っております。これはどういうことかと言いますと、この
法律の第一条
目的及び第二条、そこを見てみますと、この
法案によってカバーされる
原子力損害というものは、
原子炉を
運転される、そうして核燃料物質、それに汚染されたもの、それによって起こった
災害、そういうふうに
規定してある。そういたしますと、たとえば
原子力事業者、たとえば原研というものを例に取ってみますと、原研には
原子炉以外の
原子力施設がある。たとえばラジオ・アイソトープの製造工場とかヴァン・ド・グラーフ装置とか、あるいはホット・ラボラトリーとか、いろいろのものがあります。そういうものが火事を起こした場合には、そこから放射能が出て参るわけであります。そういう
事故は
原子炉の
事故と全く同じなんです。それから核燃料物質だけを対象にしておりますが、原研では核燃料物質以外にも放射性物質をたくさん扱っております。放射性物質は何か間違って海に流れて、そうしてその辺の魚がだめになった、そういう場合にはこの
法律の適用はないと思います。さらにもう
一つ、この
法律は原子燃料の核分裂と書いてございます。ですから、もし将来、核融合というものがございますが、そういうものを利用する
原子炉ができる、開発されると思います。そういうものの
損害——そういうものの
事故を起こした場合の
損害というものは、この
法律ではカバーできない。そういう
意味でこの
法律のそういう点は直していただかなければならぬのじゃないかというふうに考えております。それから第二点といたしまして、この
法律は確かに
原子力に関する
損害を補償しようということで出てきたわけでございますが、この
法律ができただけでは、
原子力に関する
損害というものは、有効に補償されないということでございます。そういうことは、どういうことかというと、まず
原子力損害は、普通放射線
災害として現われて参ります。放射線
災害はどういう特色を持っているかということについて申し上げますと、放射線というものは人間の五官でわかりません。被爆したかどうかということは被爆した本人にわからない。それから放射線によって被爆いたしまして身体障害を発生した。ところがその身体障害は、放射線に当たったという
因果関係、その
因果関係は現在の医学でははっきり出てこない。つまり確率でしか表現できない。それから第三番目に、放射線による障害というものは、何と申しますか、すぐ出てこない。
後発性、潜在性という言葉で言っております。これはたとえば広島で原爆に当った方が最近それが何でもないのに突然亡くなられた、そういう事態があった。それから最もおそろしい放射能の障害は遺伝的障害として現われるんです。最後に放射線障害の特色といたしましては、放射線というものはどんな微量であっても障害を引き起こす可能性があるんです。従って
関係のない人はできるだけ放射線に当たらないようにすることが必要であるということが放射線
災害の特色なのであります。
こういうことでありますと、そういう放射線
災害というものを救済するために、まずこういう
法律で補償するのだということをきめると、これはもちろん必要であります。しかしそれと並行して、
事故が起こった場合に
被害者となることが予想される付近の人たちの線量管理と申しておりますが、付近の人たちの何と申しますか、放射線をどれくらい受けたかということをはかる、それがふだんから行なわれていなければ、幾ら当たったかということは本人がわからない。こういうことでございます。それからその障害と放射線に当たったという事実との間の
因果関係が確率でしか表わせないということは、これはある人が何か障害を起こす。たとえば白血病とか骨ガンとか、そういう障害を起こした。そうすると、そういう障害を起こした人が以前において放射能を浴びたという事実がある。そうすると、それはそういう人がそういう障害を起こしたということ、その障害を起こしたら、それは放射能による障害なんだと見なすということ、そういうものの
考え方が必要になってくるわけであります。こういう
考え方は今探したところではないわけであります。その点非常に困るわけであります。
で、今人間について申し上げましたが、土地とか建物とかそういうものが被爆した場合、それを補償しようとする場合も同じであります。やはりそれは障害が起こった場合に、障害が現われる可能性がある地域というものを前もって放射線管理をしておきませんと、障害が起こった場合どれくらい当たったかということがさっぱりわからない。そうすると、そういう処置がとられていないと、この
法律で補償するということはきめても、実際幾ら補償するか、幾らお金を払うかということを算定する段になって非常に困難になってくる。従ってその
原子炉の周辺の土地に対する放射線管理がまずこの
法律と同時に行なわれること。それから放射線
損害が起こった場合に、その人が過去において放射線を受けたという事実がある場合は、それは放射線
災害であると見なす。この
二つのことがこの
法律の実効をもたらす、この
法律が有効になって
被害者にお金が支払われるということにには、どうしてもそういう
措置が必要だと思います。それが二番目の問題。
第三番目の問題は、この
法律は
原子力に関する
損害を
賠償するということになっておりますが、その中でこれでカバーしておるのは比較的小さな
損害ばかりであるということであります。ということはどういうことかと申しますと、この
法律で
賠償措置額ということで五十億円というお金がきめてございます。この五十億円というお金は科学的な
事故想定をやりまして、
事故が起こった場合、これこれこれくらいの地域がやられる、そうするとこれくらい補償するためには五十億円要るというふうに計算されてきめられたお金ではない。これは
保険会社が引き受けられる最高引受
限度額というもので押えられておるわけです。五十億円というと非常に大きいような気がするのでありますが、実はあまり多い金額ではないのであります。ということは、たとえば東海村、あの辺の土地というものは坪当たり千五百円くらいいたしております。五十億円と申しますと三百万坪でございます。三百万坪と申しますと、原研の敷地のほぼ三倍、東海村全体の量からいいますと、五分の一からその
程度だと思います。その
程度の土地を汚染したから買い上げようという金額にしかならない。さらにたとえば東海村には
原子力発電会社、それから、
原子力研究所、原子燃料公社、そういうものが一ぱいあるわけでございます。その中でたとえば
原子力発電会社が
事故を起こしたと仮定いたしますと、そういたしますと、原研は
原子力発電会社に対して、同じ
原子力事業者ですが、
第三者になるわけであります。そうすると、原研の資産というものを評価いたしますと、現在のところでも三百億をこえているのじゃないか。そういたしますとどうもその五十億円というものはあまり適当な金額ではないというふうに考えております。これにつきまして、この
法案が衆議院で科学
技術特別
委員会で御
審議になりましたときに、
原子力産業会議の大屋敦
参考人でございましたかが、五十億円というものは外国の例から見るとなかなかいいところにいっている、英国では五百万ポンドということで、従って五十億円ということでございまして、なかなか数字的によく合っているという
お話がありました。しかし英国と
日本とは非常に違うのであります。たとえば英国の発電所
一つ例をあげて見ますと、バークレーという発電所がございます。その発電所をとってみますと、周囲一マイル以内はゼロであります。五マイル以内で八千四百人であります。東海村は一マイル以内千九百人、五マイル以内五万五千人になっております。つまり事情が違っております。そのまま金額がイコールだということは私は非常に間違った
考え方である、そういうふうに考えております。それからそういうわけで、五十億円というものは必ずしも適当な金額であるとは思われない。
次に、五十億円をこえる
損害があった場合はどうするかということでございます。これは
賠償法の第十六条を見ますと、これも
加藤先生あるいは
金沢先生の方からおっしゃいましたように国がこれを
援助するということになっております。ところが何と申しますか、こういうことを国会あるいは
政府の方々の前で申し上げるのは、はなはだ申しわけないのですが、われわれ
被害者になる立場の者から申しますと、
援助するということだけ書いてあって、その内容がどういうことかということがさっぱり書いてないということは非常におもしろくないという感じがいたすわけであります。その点について先ほど
加藤さんの方から、外国の例を御引用になりましたが、たとえばアメリカでございますと、アンダーソン・プライス法というのがございますが、それによりますと、
政府の補償
限度額というものは、
原子力事業者というものが補償するある
一定の額というものがある、それをオーバーするときには
政府が補償するということになっているわけですが、その場合の
政府の補償
限度額というものが五億ドル、千八百億円でございます。その千八百億円までは
政府が補償するということになっております。西ドイツあたりを例にとってみますと、五億マルク、四百五十億円までは
政府が補償するということになっております。イギリスの場合は
日本と似ているということでありますが、その場合は補償するということをきめてあって、何ぼ補償するかということは国会できめるのだということになっております。つまり
日本のように
援助するという表現とはいささか——いささかじゃなくて相当
程度違いがあるということを申し上げざるを得ないのであります。
もう
一つございまして、大規模
天災地変、社会的な動乱というものによって引き起こされました
原子力損害というものにつきましては、この
法律におきましては、そういうものは
原子力事業者自体が「この限りでない」ということで
免責されております。従ってこの
法律の建前は
原子力事業者が一般の人に対して支払う補償金の支払いということが
原子力事業者の
損害であるとみなして、その
原子力事業者に
政府あるいは
保険会社が金を払うという形になっておりますから、
原子力事業者自体が
免責されてしまいますと、これは
政府も
保険会社の方も何も
責任を負ってくれないということは、異常に巨大な
天災地変あるいは
社会的動乱によって引き起こされた
原子力事故というものは、だれも
責任の負い手がないのだということでございます。何といいますか、これは
天災地変だからしようがないというお考えなのかもしれませんが、
天災地変とは申しましても、
原子炉というものがなかったと仮定いたしましたら、
原子力事故というものは起こらないのでございます。そういう
意味で、
原子炉の
事故というものは、これはあくまで人災的なもの、しかも
原子炉の周辺の地域の住民というものは
原子炉によって直接何も
利益を得られないのでございますから、そういうものの立場から申しますと、はなはだ迷惑千万な天災であるというふうに申し上げざるを得ないのでございます。で何と申しますか、この
法律には最初に
目的というのが、
第三者の
保護、
原子力事業の健全育成、これが
二つの大きな
目的になっている。それであまり大きな
損害まで
原子力専業者に持たせるということは、
原子力事業の健全育成ということとどうも相反して工合が悪いということであれば、そういうことをおきめになった
政府において異常に巨大な
天災地変による
原子力損害というものは
賠償されるということをわれわれは強く要望する次第であります。
以上がこの
法案自体に関する
問題点でございますが、その次にこの
法案が施行されます、あるいは施行以前に必要となる諸問題につき申し上げます。
先ほどこの
法律案が実効があって、
被害者に対して現実に金が払われるためには周辺地住民の放射線管理、それから
被害を受ける可能性のある地域に対しての放射線の管理、それから
事故が発生したのちに何らかの障害が起こったら、それは放射線障害とみなすのだというこの精神、この
三つのものはこの
法律を実効あらしめるために必要な
三つの柱のようなものであると申し上げたわけでございます。そのほかにも
事故が起こったときには
損害をできるだけ少なく食いとめる
措置というものは、これはぜひとも必要でございます。ということは、これは
事故だということを発見いたしまして、それを付近の民衆に通報する機関、そういうものは現在ございません。そういうものを至急
設置する必要がございます。それから
事故が起こったときにやはり逃げなければなりません。その退避を有効に指揮する機関、そういうものは現在ございません。そういうものを至急整備しなければならぬ。さらに大事なことは、こういう機関でございます。たとえば、
事故の認定とかあるいは
事故の通報とか、
事故の退避を指揮する機関とか、あるいは住民の被曝線量及び健康を管理する機関とか、そういうものは単に
原子力事業者、原研なりにまかされたのでは工合が悪いということでございます。ということは、原研とか、
原子力事業者はそういう
事故を起こす側でございます。ですから
事故が起こってなかなか、何といいますか、そんなことはないと思いますけれども、なるべく
損害は少なくしようとか、くさいものにはふたをしようという傾向があるわけでございます。ですから、そういう機関は原研とか、
原子力事業者以外の
第三者によって作らなければならぬ、そういうことでございます。これは、
第三者によって作らないということは、これはたとえば放射線のおそろしさという本を書いたラップという人の言葉によれば、裁判官と被告人は同一人であるような
関係に過ぎないからだと、そういうふうに説明されております。そういう
関係について申し上げますと、この
法律の中で、
原子炉損害賠償が起こった場合、そうしてそれに関連して紛争が起こった、それを審査する機関として
損害賠償紛争審査会というものを設けております。この
法案によりますと、これが科学
技術庁の付属機関となっております。ところが科学
技術庁と申しますのは、今申しましたように、
原子力事業者の側に立つといっては語弊がありますけれども、
原子力の開発を推進する側でございます。従って、厳密な
意味では
第三者にはならぬ。これをたとえて申しますと、その付属機関に紛争審査会を設けるということは、
第三者にとって著しく公平を欠く
措置であるということは、先ほどのたとえで申しますと、何といいますか、どろぼうの子分が裁判官であるというようなのと同じ
関係になるわけでございます。以上
事故が起こった場合
損害をできるだけ少なく食いとめる
措置について御説明したわけであります。
さらに大事なことは、
事故を起こさないようにするということが非常に大事であります。そのためには何といいますか、現在
原子炉をいろいろ認可する場合には、種々の安全審査部会がございまして、そこで審査するわけでございます。安全審査に関する明確な基準、敷地に関する明確な基準ができておりません。非常に残念でございますが、そういうものができておりません。こういうものは至急作る必要がございます。ということは、そういうものがないままに
原子炉はだんだん置かれてきております。ですから東海村には現在すでに世界に例をみないほどたくさんの
原子炉が
集中しつつあるわけでございます。
原子炉の安全審査というものは一基ごとに行なわれるわけであります。だから、それが全体たくさん集まってきたらどういうふうになるかということを判断する個所がないのであります。これは敷地安全審査基準というものを置かないことから出てくる必然的な結果であります。そういうものを作らなければならぬ。それから万一
事故が起こったときに、その敷地に人がいなかったら全然
災害が起こらぬわけでございます。そういう
意味において、敷地というものは非常に大きな安全装置になるわけであります。そういう
意味において、
原子炉の置かれた周辺を整備する、これは整備するという
意味にはいろいろございまして、
原子炉都市にするのが
一つの整備であります。それからまわりをグリーン・ベルトにするのも
一つの整備であります。われわれはその際に
事故を押えるのが
一つの整備であります。しかも少ない方へ押えた方がいいじゃないか。そういうふうな
措置は有効にとらなければならぬ、そういうふうに考えております。
以上、この
法案に対する
問題点並びにこの
法案の施行に伴う
問題点について一応
お話申し上げたのであります。
最後に、私先ほど申しましたように、第二者の立場でございますが、第二者に関する補償がこの
法案から除かれておるということについて一言申し上げたいと思います。
その点につきまして、こういう第二者の安全体制及び補償という問題につきましてわれわれの根本的な
考え方というものをまず申し上げますと、それは国際放射線防護
委員会——ICRPと申しておりますが——というものがございます。そういうのから放射線に関する勧告が出ております。それによりますと、放射線というものはいかに微量であっても何らかの障害を起こす可能性はあるのだ、つまり、放射線に関する下限はないというのが最近の
考え方になりつつございます。と申しますことは、昔は放射線について許容量という
考え方があった。ここまであったっていいのだという
考え方があった。だんだん許容量という
考え方が後退して参りまして、われわれのような
従業員にとりましては、結局何らか障害の起こる可能性はあるけれども、それと仕事をやっている
利益、その
利益との比較において考慮するようなものである。だから、放射線というものはこれ以上当たったらもういかぬのだ、そういう
意味で最下限というふうに押えられております。昔のようにこれだけ当たったらいいのだという値ではなくなりつつあるわけであります。そういうことからいうと、できるだけ放射線に当たる機会を少なくする。放射線障害に関する
危険性が多少とも考えられる場合には、予防的な補償が常にとられなければならぬ。それがわれわれの
考え方の根本的なものでございます。
以下、
三つの点に分けまして、第二者のことを申し上げます。
まず第一番に、補償々々という場合に、安全体制が確立されなければならないということでございます。安全体制を確立いたしますためには、これは先ほど
第三者のところで申し上げましたことと全く同じことでございまして、
事故に関する監視所を作るとか所員への通報、待避する場合の指揮とか、そういうふうな体制を確立するということが必要なんでございます。これは使用者だけにまかしておけませんので、労使双方で選出された
委員会からなる機関において十分に検討、対策を講じなければならぬということを考えておるのでございます。しかも、東海村というところは現在、先ほどちょっと触れましたように、
原子炉が世界に例を見ないほど密集しつつある傾向にある。しかもお隣には米軍射撃演習場がございまして、模擬爆弾の投下ということがときどき行なわれておる。そういうような状況は、非常に安全対策にとりまして好ましくない事例でございます。従って、これらの問題は至急解決されなければならぬ、そういう工合に考えております。
それから第二番目に、先ほどちょっと話に出ました予防補償という問題でございます。予防補償という
考え方につきましては、放射線被曝による障害が発生する以前に、常にそれを予防するため予防補償というものは絶対に必要であるという
考え方でございます。この
考え方につきましては、現在原研におきましては、組合側と所側でそれぞれからそれを研究する
委員会ができておりまして、それで話し合いをいたしました。そうして
意見の一致を見ております。現在理事長に答申案を出しておる段階でございます。その内容といたしますのは、三レム以下の放射線につきましては毎月定額手当を出していただく、それ以上につきましては被曝線重に比例した手当を支給さるべきである、そういう内容でございます。
三番目は、万一障害が起こりました場合には、その障害に基づいてその補償は完全補償、完全でなければならないということでございます。で、いわゆる労災法の方で
規定されております補償には、療養補償それから障害補償その他補償が
規定されておるわけでございますが、療養補償はもちろんのことでございまして、その障害補償とか何とかかんとかいうやつの中に放射線障害に関する
特殊性が織り込まれてこなければいけない。具体的に言いますと、非常にゆっくり出てくるということ。それから障害と放射線被爆との
因果関係が画一にしか表わせない。それから最後におそろしい影響が遺伝的に現われてくるというような、こういう
特殊性が織り込まれていなければならない。従って、たとえば、第二者補償というものにつきましても、請求の権利だけは組合に留保する、そういうことになっております。
このような第二者に関します各種の予防補償あるいは各種の補償、こういうものにつきましても、こういうものを考えますホーム・グラウンドと申しますものは、どうも
日本については、
原子力のことは後進国であるということで、外国の先例を取るということが多いわけでございますが、先ほどから何ども申しておりますように、
日本は
日本なりの
特殊性があるということでございまして、そういうことをよく考慮した上で物事を考えていかないと、非常に誤った結果になるのじゃないかということを申し上げたいのでございます。
以上をもちまして一応私の
意見の開陳を終わります。