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国務大臣(
池田正之輔君) ただいま
議題となりました
核原料物質、
核燃料物質及び
原子炉の規制に関する
法律の一部を
改正する
法律案について、その
提案の
理由及び要旨を御
説明申し上げます。
わが国における原子力の研究、開発及び利用は、
昭和二十九年その緒について以来、着々進展し、すでに運転中の
原子炉は二基、近い将来設置されるものは相当数を数えるに至っております。また、
核燃料物質の製錬、加工、再処理等の研究開発も、原子燃料公社及び日本原子力研究所を
中心に行なわれ本年秋に
予定される国産一号炉の完成によってその成果が明らかにされようとしております。
一方、
核原料物質、
核燃料物質及び
原子炉の規制に関する
法律が、
原子炉の設置及び運転、製錬、加工及び再処理の事業並びに
核燃料物質の使用について、平和目的及び
計画的利用の確保並びに災害の防止を目的として、
昭和三十二年に制定されて以来、
政府として、その施行に万全を期して参った次第でありますが、研究、開発の進展に伴い、法制定当時予想されました
事態にも若干の変化が生じてまいりましたので、法施行の経験に徴し、現行法に
改正を加え、規制の
方法の適正化をはかる必要があると考え、この
法律案を今
国会に提出するに至った次第であります。
以下この
法律案の要旨について御
説明申し上げます。
第一は、国際規制物資の使用等に関し、必要な規制を行なうことであります。
原子力の平和利用に関する日米、日英、日加各協定、国際原子力機関憲章に基づいて入手する
核燃料物質、
原子炉その他の設備、資材すなわち国際規制物資につきましては、平和利用確保の見地より、これら各条約に相手国
政府機関の行なう立入検査、報告徴収等のいわゆる保障措置について規定されています。
これらの条約の実施につきましては、従来は国際規制物資の使用が主として原子燃料公社及び日本原子力研究所に限られておりました
関係上、それぞれ、原子燃料公社法及び日本原子力研究所法により支障なく運営して来ましたが、今後の研究、開発の進展に伴い、広く民間において使用されることが予想されますので、条約の一そう円滑な実施をはかるために、国際規制物資の使用について立入検査、記録報告、移転の制限等に関し、必要な規定を設けた次第であります。
第二は、臨界実験装置についての規制の
強化をはかったことであります。臨界実験装置につきましては、従来、
核燃料物質の使用についての規制措置を適用して来たのでありますが、今後、その設置数の
増加及び規模の大型化が予想されますので、諸外国の事例をも参考とし、検査、保安規定、主任技術者の選任等に関し、
原子炉に準ずる規制を行なうこととした次第であります。
第三は、
原子炉施設について定期検査に関する規定を設けたことであります。
原子炉施設の検査につきましては、現行法上その設置及び変更時における施設検査、性能検査の規定があり、またその他必要な場合においては、随時立入検査を行なうことができるのでありますが、
原子炉災害の防止については特に万全を期するために、
原子炉施設のうちその安全性に関し重要な部分について、毎年一回定期検査を受けなければならないものとした次第であります。
第四は、一定量以上のプルトニウム及び使用済燃料の使用に関する規制を
強化したことであります。
プルトニウム及び使用済燃料は、他の一般の
核燃料物質と異なり、放射能が強く、かつ、毒性を有する等の危険性からみて、施設及び取扱いの面において万全を期する必要があります。このため、従来の
核燃料物質の使用についての規制に加うるに、施設検査、保安規定に関する規定を設ける等規制の
強化をはかった次第であります。
第五は、原子力施設検査官を置くことであります。
原子炉施設等の施設検査、性能検査及び定期検査に関する事務は、一般行政事務と異なり、高度の学識と経験を要することにかんがみ、今回、検査
関係の規定の
整備を機会に一定の
資格を有する者に限りこれを行なわせることとし、検査に万全を期せんとするものであります。
以上が
核原料物質、
核燃料物質及び
原子炉の規制に関する
法律の一部を
改正する
法律案の
提案の
理由並びに要旨であります。
何とぞ慎重御
審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。