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政府委員(島村武久君) お手元に配付いたしました
昭和二十六
年度科学技術庁予算要求総表と申します簡単な資料によりまして、
科学技術庁関係の
予算の概要を御説明申し上げたいと思います。
二枚目の一番最後の欄をごらんいただきたいと存じますが、
昭和三十六
年度科学技術庁関係
一般会計予算の歳出
予算総額が百十九億三千二百十七万円、別に国庫債務負担行為額二十四億四千八百八十八万三千円が計上されております。これを次の欄にございますが、前
年度の歳出
予算額百十三億九千万円余り、国庫債務負担行為額四十三億九千六百六十四万円に比べますと、歳出
予算額におきましては五億四千百七十六万四千円の
増額となっております。ただし国庫債務負担行為額におきましては十九億四千七百七十五万七千円の減額となっているわけであります。
第一ページに戻りまして、
事項別に御説明申し上げたいと思います。
まず第一に、新
技術開発機関の設置についてでございますが、その機関の
設立のために必要な法案につきましては別途審議をお願い申し上げる予定でございますけれども、この機関を
設立いたします目的は、
わが国において発明されましたいわゆる国産新
技術のうち、
技術的内容は優秀であるけれども、危険負担の
観点から民間が独力でこれを
企業化することをちゅうちょいたしますようなものを、この機関で取り上げまして、これを育成し、
企業化しようとするものであります。国産新
技術の
企業化につきましては、全然
明年度は新しい試みというわけではございませんで、すでに
昭和三十三
年度以来三年間にわたりまして、小
規模ながら試験的に理化学研究所において
実施して参ったところでございます。その経験の上に立ちまして、この際、この仕事を一段と
強化いたしますため、理化学研究所から分離いたしまして新しい特殊法人として独立せしめようとするものでございます。ここにございますように、三十六
年度予算案に計上されております三億円は
出資金でございまして、この機関が研究
開発のために民間に委託いたします
開発委託費と一部が管理
運営費になる予定でございます。なお
設立に際しましては、
政府は
昭和三十三
年度以来、理化学研究所の
開発部門に別途
出資して参りました
出資金三億四千万円を引き継がせることにいたしておりますので、この機関の資本金に対する
政府の投入金額は六億四千万円となる予定でございます。なお木経費につきましては、大蔵省所管の部に計上いたされております。
第二番目に、所管試験研究機関の整備について申し上げます。
最初の航空
技術研究所におきましては、昨年完成いたしました遷音速風洞等の設備の整備をいたしますほか、機体関係の試験研究
施設の整備を行なうことにいたしております。これらの諸
施設の整備と航空
技術に関します試験研究に必要な経費といたしまして歳出
予算額十九億四千四百八十四万二千円と国庫債務負担行為額三億二千二百万円が計上されております。次の金属材料
技術研究所でございます。金属材料
技術研究所におきましては金属材料の試作研究を行なうための基本的な諸設備に
重点を置いて整備をはかっている最中でございますが、金属材料の物理的、化学的試験研究装置が、まだ整備途中にございますので、引き続いてこれらの設備の
充実に努める経費も含めまして、全部で七億七千四百七十三万円を計上いたしたわけでございます。
三番目の放射線医学総合研究所につきましては、原子力の御説明のところで申し上げることにいたしまして、大きな三番目の理化学研究所の移転及び設備
拡充について申し上げます。理化学研究所は民間におきます唯一の総合研究所として特色ある研究活動を続け、種々の業績をあげて参っておりますが、何分にもその
施設は狭隘かつ老朽化いたしておりますので、
明年度は郊外に新しい土地を求めまして移転させたいと考えております。このため一部の建物あるいは土地造成関係の契約を結べるように
措置いたしました次第でございます。また研究活動の
強化と研究室の
拡充につきましては、ほぼ前年と同額を
政府側から
出資するということに
計画いたしております。この理化学研究所に対しまする
明年度の
政府出資金総額は四億三千万円、それに国庫債務負担行為額は二億八千八百三十万七千円、これも大蔵省所管として計上されております。
第四番目の原子力平和利用研究の
推進でございますが、(1)日本原子力研究所から最後の(12)その他原子力
行政費まで合計いたしまして七十五億七千九百十三万六千円が歳出
予算額となっております。別に国庫債務負担行為額は十八億三千八百五十七万六千円でございます。これは前
年度と比べますと若干減少いたしておりますが、後に御説明申し上げますように、初
年度的な
施設整備費の減及び八番目の核燃料物質等の購入費の減が響いておるわけでございます。
まず、日本原子力研究所でございますが、原子炉の
開発につきましては、
昭和三十三
年度より建設を行なって参りました国産一号炉は、三十六年秋ごろには完成させることといたしております。これにより原子炉の数は三基完成いたすことになりました。目下建設中の動力試験炉は
昭和三十七
年度に完成する予定といたしております。さらに
明年度は新たに原子力船に関する研究を進めますために、遮蔽研究用の原子炉の建設を開始することにいたしております。また半均質型原子炉につきましても臨界実験装置の運転等、その研究
開発を進めて参りましたが、その成果は
わが国独自の研究といたしまして期待されておりますので、
明年度引き続き工学的分野も含めて総合的にその
推進をはかって参りたいと考えております。このほか原子炉特別研究室の新設を初め、原子力の基礎研究並びにこれらに関連する各種試験研究、
技術者の養成、訓練等の業務を
強化して参る予定でございます。このため原子力研究所には四十四億四千万円の歳出
予算額と、十一億一千二百七十六万一千円の国庫債務負担行為額を要求いたしております。
次に原子燃料公社について申し上げます。核原料物質の探鉱は人形峠、あるいは倉吉地区等に
重点を置きまして探鉱を
実施し、鉱量、品位の確定に
努力するとともに、山形県小国地区と新規有望鉱床の探鉱にも力を注いでいくことにしております。金属ウランの製造につきましては、東海製錬所の精製還元試験設備によって試験を続行いたしまして、
明年度は約十二トンの金属ウランを製造する予定にいたしております。
なお核燃料の再処理につきましては、
所要の
調査と準備を
明年度にいたしたいと考えております。これらの
事業を行ないます経費といたしまして、
政府出資金は十三億二千万円を計上いたしております。
放射線医学総合研究所につきましては、第一期整備
計画の最後として、残っておりました付属病院の建設も今月中には完成いたしますので、
明年度からは本格的に診断治療等の研究が
実施できる運びとなっております。しかしながら、放射線による人体の障害及びその予防の研究、並びに放射線の医学的な利用等の試験研究はきわめて重要であると痛感いたしておりますので、引き続き研究
施設の設備の
拡充整備をはかりまして、その研究を
推進いたしたいと考えるのでございます。このために五億四千四百七十九万四千円を計上いたしております。
国立機関の試験研究とございますのは、
関係各省の
行政機関に所属いたしますところの研究所の原子力平和利用に要する経費でございます。国が行なわねばならない固有の研究分野に関連いたしまして、核融合あるいは原子力船の研究、原子炉用材料等の研究あるいは放射線標準の確立、放射線利用核原料物質の
調査等、原子炉の
開発利用等に直接関係いたします研究テーマに対しまして、それぞれ研究機関の特色に応じました研究活動を期待することといたしまして、六億三千二百七十二万九千円と、国庫債務負担行為額九千六百二十二万四千円が計上されております。
次に民間
企業等の原子力平和利用研究の
助成でございます。原子炉及び付帯的材料等の国産化をはかりますための試験研究、及び核燃料、放射線障害防止機器材料、放射線化学等の試験研究を
促進させるために、民間
企業に対して前
年度に引き続いて補助金を交付いたしますとともに、核融合、原子力船、ウラン濃縮、核燃料等につきましては、これまた前年同様民間に研究委託費を交付いたしまして、試験研究の
開発をはかる予定にいたしております。このために補助金といたしまして一億八千三耳九十万円、委託費といたしまして一億二千六百十万円、合計三億一千万円が計上されております。
六番目の核原料物質の探鉱奨励につきましては、民間鉱業権者の行なう核原料物質の探鉱の奨励でございます。千二百万円を補助金といたしまして計上いたしております。
七番目は放射能
調査でございます。大気、海洋、土壌、上下水、動植物及び食品中に分布されております自然放射能または人工放射能につきましては、これを定期的、組織的に測定
調査いたしまして、放射能障害防止
対策等の資料とする必要がございますので、前年に引き続き国立機関及び公立の衛生研究所に対しその
調査を
実施させることといたしました。四千七百十六万五千円が計上されております。
八番目は核燃料物質等の購入等とございます。これは日本原子力研究所を初め大学及び民間等の原子炉が漸次完成して参りますので、これに使用いたします濃縮ウラン等の燃料の手配は
政府が一元的に行なうことになっておりますために、アメリカ合衆国よりの購入または賃借に必要な経費、並びにこれら燃料の一部のものにつきまして加工、再処理等に必要な経費といたしまして、歳出
予算額一億二千九十七万円と国庫債務負担行為額六億二千九百五十九万一千円が計上されております。
その他、原子力
技術者の海外留学、放射性廃棄物処
理事業
助成、原子力
委員会及び原子力事務処理のため一億五千百四十七万八千円を計上いたしました。
なお、第三十四回
国会におきまして、衆参両院の付帯決議をいただきました原子力
委員会の原子炉安全審査部会のことにつきましては、別途原子力
委員会設置法の一部を
改正する法律案の御審議を願うことにいたしております。
所要経費についても
増額をはかることといたしております。
なお、この表に出ておりませんけれども、原子炉等の運転及び核燃料物質の使用等によりまして、原子炉
事業者が原子力損雷を賠償することによって生じます原子力
事業者の損失を補償いたしますために、別途原子力損害賠償補償契約に関する法律案の御審議をお願いすることにいたしております。
政府は
昭和三十六
年度におきまして、二十億円までをかような契約を締結できる限度額に定めたいと存じまして、
予算書の
一般会計予算総則にその旨掲記いたしてございます。
次に二ページに移りまして、宇宙
科学技術開発の
推進について申し上げます。米ソ両国を
中心に最近目ざましい
発展を遂げて参りました宇宙
科学技術の研究につきましては、
わが国におきましても宇宙の利用及び宇宙
科学技術に関する
重要事項を
調査審議する機関といたしまして、昨年四月総理府に宇宙
開発審議会が設置されまして、ようやく
開発の緒につきかけたところでございます。三十六
年度は前年に引き続きまして、
内外の
開発状況の
調査及び日米両国間の科学者会議の開催等、基礎的の
調査研究ということを行なわねばならないと考えております。三十五
年度に研究委託費を交付いたしました気象観測用ロケットにつきましては、
本年度中にその設計ができ上がりますので、
明年度はこれを基礎にいたしまして、ロケット本体の試作をいたすべく
計画をいたしております。次に、人工衛星等に装備される計測装置等の
技術は
わが国では先進国に劣らず進んでおります。国際
協力の一環といたしまして、これらの計測機の有機的装備の研究を民間
企業等に委託いたしたいと考えております。これら宇宙
科学技術開発の経費といたしまして七千三百九十五万二千円が計上されております。
六番目の特別研究
促進調整費について申し上げます。
各省各庁の所管にかかわります研究業務の総合的の
促進をはかり、かつまたその相互間の
調整をはかりますために、前
年度初めて特別研究
促進調整費一億円が計上せられました。従来
年度中途において新しい研究を行なわなければならないような事態が発生した場合、及び
各省各庁の
協力による試験研究の遂行にあたって、研究機関相互の
施設資材等の不均衡の
計画のため、研究の
促進を阻害する要因になっておりました
予算的
措置という問題が、この経費によって解決することになりました。きわめて有効適切の研究
促進策であるという確信を得ましたので、
明年度はその範囲も特に
促進する必要のある特別の研究に
拡充することにいたしまして、一億三千万円の要求額を計上いたしました。
七番目の多数
部門関連試験研究の
助成について申し上げます。多数
部門の
協力を要する試験研究、及び各種
部門に共通する試験研究を、総合的に
実施しようとする者に対しまして、補助金または委託費を交付いたしますことにつきましては、
明年度は水質汚濁防止、大気汚染防止、水温利用及び実験用純系動物の研究等を継続研究といたしますほか、新しく人工降雨の研究を取り上げる予定にいたしております。この研究の成果は単に人工による気象の制御にとどまらず、
水資源の
開発、台風防災等の研究にも関連いたすものでございます。大いに期待をかけておる次第でございます。これらの研究に対します補助金及び委託費といたしましては、六千七百十万円が計上されております。
第八番目に資源の総合利用方策の
調査について申し上げます。資源
調査会を
中心といたしまして、土地資源、
水資源保全、防災及びエネルギー等、資源の基本的問題について利用方策の
調査を継続的に行ないますとともに、特定の河川の治山治水についての総合的
調査、並びに資源
開発の
進展に伴ない生じます資源構造の変化等につきまして、特別の
調査を
計画的に行なう予定にいたしております。これらのための
調査に必要な経費といたしまして二千六百六十二が四千円が計上されております。
九番目に日本
科学技術情報センターの整備について申し上げます。理工学
部門及び原子力関係の情報の収集及び提供業務につきまして、着実な
発展を期することに
努力して参りましたが、まだ情報の収集数、提供内容等につきまして不十分な点が多々見受けられますので、
明年度は質と量との
向上に一段の
改善を加えて参りたい考えでございます。このために補助金及び
出資金といたしまして一億四千八百万円を計上することにいたしました。
十番目の日本
科学技術振興財団整備の項について申し上げます。昨年三月発足いたしました日本
科学技術振興財団は東京本部のほか、大阪、名古屋等にも地方本部を設けまして、その
事業たる
科学技術の普及宣伝、
開発等、
科学技術振興の
国民的基盤培養のための諸
事業もようやく緒につきまして、今後の
発展が期待されております。
政府といたしましても、
明年度も引き続き補助金を交付いたしまして、ますます
事業の
拡充をはかり、特に産学連繋のための諸
施設等を整備させる予定にいたしております。このための補助金として一億円を計上いたしております。
次に国際
技術交流の
強化でございます。海外先進
諸国と
科学技術の交流をはかりますことは、当面
わが国海外
技術の
振興上きわめて重要なことと考えますので、毎年派遣いたして参りました研究公務員の海外留学生を増員いたしました。また日豪両国
科学技術者の交流でありますとか、各種国際会議への積極的の参加とをはかる予定にいたしております。またアジア
地域の電子
科学技術の交流をはかりますために、本年秋東京で開催されます第一回アジア電子
技術会議、これはまだ仮称でございますけれども、これにつきましても開催費の一部の経費に充てますために補助金を交付する予定にいたしております、なお、この表に数字が出ておりませんが、このほかに
科学技術アタッシェの増強につきましては、
明年度一名を増員することにいたしまして、その経費は外務省所管に計上されております。以上のような国際
技術交流の
強化をはかる経費といたしましては、外務省所管分を除きまして七千四百九十四万六千円が計上されております。
その他
科学技術一般行政関係といたしましては、二億八千二百八十四万円が計上されておりますが、そのおもなものは発明
実施化試験の
助成がございます。優秀な発明考案であるにもかかわらず、
経済的の理由からその発明の見本を試作することもできないというような個人または
中小企業に対しまして交付いたします、発明
実施化試験補助金及び開放発明機関に対する設備補助金は前
年度と同額を計上いたしました。また地方発明センターでございますが、発明に関する諸
施設を総合的に
運営いたします、いわゆる発明センターを設置したいという要望が各地方に相当ございますので、
昭和三十五
年度に広島及び京都を
中心とします地方に発明センターの
設立されますに際しまして、補助金を交付いたしたわけでございますが、
明年度は兵庫地方及び新潟地方に設置を予定されております地方発明センターに対しまして、その
施設整備のための経費の一部を補助いたしまして、その育成をはかりたいと考えております。その他
科学技術会議の
運営費といたしまして約一千万円、海洋に関します
調査研究のうち、
重要事項を
調査審議いたします海洋
科学技術審議会の設置に必要な経費として七十万円、その他
一般行政事務処理費として二億一千七百九十二万九千円を計上いたしたわけでございます。これらは
科学技術長期計画の
策定費「
内外科学技術調査費、
技術士法の施行費、
科学技術の普及啓発費、各種審議会の
運営費、内部部局の事務費、人件費等となっております。
以上が概要でございますけれども、
科学技術庁関係の三十六
年度予算につきまして御説明申し上げました。