○
政府委員(
小山進次郎君) お
手元に差し上げてあります
資料の中の
国民年金法の一部を
改正する
法律案に対する
修正案要綱というものがございます。一枚
刷りで非常に簡単なものでございます。
先ほどお話がありましたように、この三点について
衆議院の
社会労働委員会で一応おきめになりましたので、その
内容を御
説明いたします。
第一点は、
障害年金、
母子年金、準
母子年金及び
遺児年金の
受給資格期間の短縮をおきめになったのであります。
障害年金を初め、これらの
年金の
受給資格期間は現在の
制度では三
つきめでございます。
一つは十五年以上納めでおればもらえるというのが
一つでございます。その次は
拠出期間が五年以上ある場合においては、その五年以上の
拠出期間がその人の被
保険者期間の三分の二以上になっておればよろしい、これが第二でございます。それから第三には、引き続く三年間の被
保険者期間の全部が
保険料の
拠出期間で満たされているか、あるいはその半分が
拠出期間であり、
残り半分が
免除期間であるというような場合にはよろしいと、こういう三つの
きまりがあるわけでありますが、これに加えましてさらに、被
保険者期間が一年以上の場合におきまして直近の一年間の全部が
納付済み期間で満たされておればこれに
障害年金や
母子年金や準
母子年金や
遺児年金を支給するというように改められる御
決定になったのであります。このきっかけになりましたのは、今回御
審議をいただいておりまする
政府提出の
政府案におきましては、
制度が発足いたしましてから、つまりことしの四月一日から三年間たつまでの間は、この
障害年金などに要求されておりまする三年間という
期間を
経過的に短縮する
仕組みを
規定したのであります。
規定の仕方はややややこしゅうございますが、簡単に申し上げますと、一年以上たったならば、三年に満つるまでの間は、その
期間は全部
拠出期間で満たされておるか、あるいはその半分が
免除期間であり、
残りが
拠出期間であるというような場合には、三年間たつまでの間は、
障害年金やその他の
年金に対する
受給資格期間が満たされるものとして取り扱う、ただしこの場合の
年金額はやや
減額をする、そういう
意味の
経過規定が置かれたのであります。この
経過規定について
衆議院の
社会労働委員会でいろいろな角度から御
検討になりました結果、
与党、
野党すべての
方々の
共通の
考えとして、これはこんな
経過措置をしないで、やはり恒久的な
措置をする必要がある、なお、
金額も
減額をしないで普通の場合と同じにする必要がある、こういうようなお
考えを持たれたようでございまして、その結果がこのような
修正に表われたわけでございます。この
修正がありました結果、当初の
改正案で
経過措置というふうに
考えました場合には、
原価でおよそ百億
程度のものがふえるという予想でありましたのでありますが、この
修正措置の結果これが二百四十億
程度にふえることになりました。毎年の
予算額に直しますと、大体十三億強に当たります、その
程度の
規模のものになるわけでございます。こういうふうに一年間という
期間が
経過措置から
恒久措置に直されましたので、従って
経過措置について
改正案が
規定しておりました幾つかの
関連条文はすべて削除する、そういう
内容の調整をされたのであります。
それから第二は、
遺児年金の額の引き上げをされたのでございます。現在の
制度では、
遺児年金は父または母が納めた
保険料に基づいて父または母が受けるべきであった
老齢年金の額の四分の一という
規定の仕方がしてございます、ただしこの四分の一の額が年に直して七千二百円、月に直しますとちょうど六百一円になりますけれ
ども、この六百円を下るようなときは六百円とする、こういうきめ方になっておるのであります。その結果どういうことになるかと申しますと、その
資料にありまするように、結果といたしましては三十年
未満の
拠出である場合は、その四分の一といいますと、すべて月六百円以下になりまするので、三十年
未満までは一律に月六百円、言いかえればそういう
最低保障の額をきめまして、第一子が六百円、第二子以降の一人について四百円ずつ加算していく、こういう
きまりになっておったのであります。これについてもずいぶんと御
意見がございまして、そもそもこういった
遺族年金系統の
年金額のきめ方としては、
本人が受けるべきであった
老齢年金の半分というのがまあ大体原則と
考えてよろしい、それを
国民年金の場合において、ことさら四分の一というふうにしておることは
保険財政上の事情があるということを除いてはあまり
意味がない。のみならず額があまりに少な過ぎる、こういった御
意見がこれまた
与党野党の
方々共通の御
意見として非常に強く出て参ったわけであります。その結果、かねてからこの問題について、これは
遺族年金の普通の
考え通り二分の一にすべきであるという、そういう支配的な
考え方に従って、
修正の
内容をおきめになったのであります。その結果、
最高額の場合には二万一千円ということになったのであります。御
承知の
通り、二十五年の
拠出で
老齢年金は二千円になりますのでその半分というと、二十五年でちょうど千円ということになります。従って、
拠出期間が二十五年よりも少ないという場合には、すべてこの
遺児年金の額は月千円を割る額になりまするので、それではせっかく額を引き上げようとした
趣旨が達せられませんので、これも
最低保障額を設けまして二十六年
未満の場合はすべて月千円とする、こういうような
改正にされたわけであります。その結果、第一子が月千円、第二子以降月四百円ということになりまして、
遺児年金の額もやや体をなして参ったのであります。この
金額はかりに
子供が二子おりますと、第一子が千円、第二子が四百円で合わせて千四百円、これを
子供二人に分けまして七百円ずつをおのおのがもらう、こういうことでございます。決して長男が千円で次男が四百円というわけではないのであります。ただ計算上の基礎がそうなっているというだけのことでございます。
それから第三点は、
福祉年金の
本人所得の
制限についてかなり大きい
緩和が行なわれることになったのであります。現在の
制度によりますというと、
福祉年金の
受給権を持っておりまするものでも、その人の
所得が年十三万円をこえているときには
支給停止ということになっているのでありますが、この場合にもしその人が
義務教育終了前の
子供をかかえておりまする場合は、
子供一人について一万五千円ずつを十三万円に加えて、
先ほど申し上げました十三万円というものを
考える。従って、
子供が一人あれば十四万五千円をこえた場合に
支給停止になる、こういう
仕組みになっていたのであります。この点について今度御
審議をいただいておりまする
政府提出の
改正案は、一人一万五千円というものを単に
子供にとどめないで、孫でありまするとか、あるいは兄弟まで、弟や妹まで及ぼすという
措置をとることに案の
内容をきめているのであります。これは年をとった方で孫を養っておられる方もあるし、また、今度準
母子年金ができることに伴いまして、弟や妹を養っていかなければならぬという場合もありますので、
子供だけでは気の毒だというので、孫と弟妹ということをこの一万五千円の
対象に加える、こういう案になっておったのでございます。これに対しましてさらに
衆議院の
社会労働委員会でいろいろ御
検討になりました結果、一万五千円というのはいかにも気の毒だ、特に現在の
所得制限のきめ方が比較的
母子世帯にきびしいと言われている現状からしても、この際に
母子世帯に一番響くような
本人所得の
制限緩和をぜひやらなくちゃいかぬ、こういうような強いお
考えからいたしまして、この一万五千円というのを三万円に引き上げるということをおきめになったのであります。これも
社労の
皆さん方の御
意見が大体そこに帰着したわけでございます。
この
改正によりまして、実は
福祉年金部門におきまして当初見込んでおりましたよりもさらに少なく見ましても一億五千万
足らずの支出が必要になるわけでありますが、これはすでに組まれておりまする
国民年金関係の
予算の中の
予備費でまかなえるということで、
政府側といたしましてもこれには御同意申し上げるということになったわけであります。
なお申し落としましたが、
遺児年金につきましては
先ほども申し上げました
内容の
改善によりまして、従来よりも約四割費用がふえることになりました。しかし、
遺児年金は全体として
規模が小そうございますので、これでもって
原価で約二十億
程度、毎年の
予算に直して換算をいたしますと約一億一千万
程度というような響きの出る
修正内容になるわけでございます。御
修正になることをおきめになりましたのはそういうような点でございます。
なおこれとともに、これもお
手元に差し上げてありますが、
国民年金法の一部を
改正する
法律案に対する
附帯決議を、これは
衆議院の
社会労働委員会の
全員一致でおつけになりました。これは
委員会として御
決定になったのでございます。この
内容のうち特に若干
いきさつのあるものだけをかいつまんで御報告申し上げたいと思います。
いきさつのありまするものは、主として大きい二の各
項目に
関係がございます。大きい二の一は、「
保険料の
免除を受けた場合にも、少なくとも
納付した場合と同様の
国庫負担を付することとし、
保険料免除を受けたものの
年金額を引き上げる全
期間免除のものにも
年金を給付すること。」かように御
決議になっております。この
決議内容は、
国民年金の性格から見ますというと、非常に大きい
意味を持った
決議の
内容でございます。ここで言われております
意味はこういうことでございます。御
承知の
通り、
国民年金制度に対しては
政府は相当の
国庫負担をいたしておりますが、
国庫負担の
やり方といたしまして、納められました
保険料相当額の二分の一を
保険料の
拠出時において
国庫から入れる、こういうきめ方になっておるのであります。そういうふうにして入れました
国庫負担を含めまして、
年金の
条件をきめます場合において、おおむね納められました
保険料にほぼ比例をして、若干の例外はございます、年をとった
人々にやや有利になっておるとか、あるいは
免除を受ける
人々に多少有利になっておるという点はありますけれ
ども、おおむねの
傾向としては、納めた
保険料にほぼ相応ずるような
年金額のきめ方になっているわけであります。この事実に対しまして、非常に強い御批判が、これは主としてかねてから
野党の
方々に強かったのであります。少なくとも
保険料を納めることのできるものには二分の一
程度の
国庫負担がつく。ところが、貧困なるがゆえに
免除を受けたという
人々に対しては、国は何にも
国庫負担をつけないという結果になって、従って、物事を非常に単純化して
考えても、六十五才になってもらう三千五百円というものの中には三分の一、つまり千百何円かの
国庫負担分が入っているはずだ、そうだとすれば、その分だけは
保険料が貧困なるがゆえに納められなくて
免除になった人にもつけるべきじゃないか、こういうようなお
考えであるわけであります。その
考え方を非常に強く立張されました。その
程度ではもちろん十分とは言えないけれ
ども、
最小限度そこまで持っていかなければ、この
制度によって
所得が多少なりとも再配分の
方向に向かって調整されていくという機能が出ないじゃないか、こういうことで非常に強い御
主張がされました。この点については
厚生大臣はもちろんのこと、
総理大臣に対しても強く御質問がありまして、その結果、
方向としては、将来そういう
方向を目ざして
改善をしていくべきだということについては、
政府側もそういうふうに
考えるという御答弁を申し上げたのであります。そういう
背景をもちまして1の条項は特に入れられたのでございます。この
項目は非常に大きい
財政上の影響を持っているわけでありまして、かりに
制度の
対象になっておりまする人に、非常に機械的の話しでありますが、毎年三割だけ確実に
免除者がある。その
免除者にここにいわれておるような
国庫負担をつけるということになりますと、おそらく四十五億前後の金を毎年一応用意するというだけのかまえをしなければいけまいという大きい
意味を持っている問題でございます。
それから
あとの点はそこに書いてありまするように、特に
いきさつとして申し上げるほどのことはないのでありますが、小さい3の
本人の
所得制限の十三万円を十五万円以上に引き上げるということが特に
金額として明示されましたのは、これも主として
野党側の
委員の
方々の強い御
主張が
背景になっているわけでありますが、御
承知の
通り、今度の
地方税法の
改正によりまして寡婦とか
老齢者とか、
障害者は
所得が十五万円に達しない場合においては、
市町村の
住民税をかけてはならぬということになったわけであります。つまり従来十三万と
規定されておったのが十五万というふうに改められたわけであります。そうだとすれば、それとのつり合い上、これは早急に
福祉年金の
所得制限の
金額もそこへ持っていくべきである。こういうような
考えから特にこの点が
金額として明示された、こういうような
いきさつでございます。
大へん雑な申し上げ方でございましたが、以上のような
経過でございます。