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政府委員(尾村偉久君) お
手元に
昭和三十六度熊本県急性灰白髄炎患者発生
資料というのをお配りしてあります。それに基づきましてまず熊本の実地指導をいたしました結果をまず御
説明いたします。
第一ページにございますのは、熊本県も含めまして
全国的な本年一月から以降、いわゆる本年になりましてからのポリオの発生
状況でございます。そこに三十六年、三十五年と、それから、三十五年の、昨年の一月から十二月までの年間と、こういうのを出しております。患者の数を見ますと、一番下の合計の
全国的な趨勢といたしまして、
昭和三十五年——昨年の三月二十六日までに三百五十七名の発生がありましたのに対して本年は遺憾ながら若干の増加をいたしておりまして、三百八十四名と、一日違いでございますが、これは週がずれておりますので、週の統計でございますので、こういうことでふえております。しかも、そのふえております県というものは、ある県に集中をいたしておりまして、むしろ下から申し上げた方がいいのでございますが、鹿児島、宮崎、大分、熊本、福岡と、いわゆる九州の七県のうち佐賀と長崎という例外を除きまして、
あとの五県でいわゆるこの増加のほとんど原因をなしておるのでありまして、この五県がもし前年と同数なりせばこれは合計いたしますと三百以下になりますので、
全国的な趨勢は昨年よりも二割程度少ない
状況でございますが、ここに集中をいたしております、これに次ぎますのが、やはり九州にすぐ隣合っております山口県、これが三名でありましたのが十六名、これが主でございまして、
あとは数には影響いたしませんが、ごく上の岩手県が昨年この時期には二名でありましたものが八名という、率では四倍になっておりますが、数ではそれほど
全国的に影響がない。その他はそれほどふえたのはまずまずなくて、むしろ昨年多かった県は横ばいないしは非常な減少を見ておる県が大部分でございます。さようなわけでございますので、私どもの方でこの九州地区を非常に重視いたしまして、あらかじめこの九州地区が昨年、率が比較的低かったものでございますので、ことにその夏までのは低くて、秋以降増勢をみたという特殊な
状況にございますので、ここに派遣をいたしまして詳しく
調査をしたわけでございます。その結果が次のページ以降に書いてございます。
次のページにございますグラフは、一番上の非常に高いグラフは、過去十年間における一番その週ごとに高かった患者率というものを全部高いところだけを集めてやった最大値でございます。それから一番下の実線が過去十年間で、その月で一番少なかった年のその月ないしは週の数というものをやりましたのが最少値でございます。やはり月ごと、週ごとに見ますと、十年間でも非常な年によって幅があるということで、そのまん中の点線が十年間の平均中央値でございまして、それと比べますと、一番太い三月までの本年の冬における
実績というものは、十年間の平均
実績を上回った傾向を示したわけでございます。これがそこでわかるわけでございます。もっとも過去の一番高い年ばかり集めたものよりも少し低い。二月下旬はさらにそれを上回る、こういう数字でございます。疫学的に本年の立場を春までの
状況で判断する
資料でございます。
それからその次が熊本県下の詳しく調べました数字でございまして、ここでごらんのように、昭年三十四年は六月から下が、いわゆる伝染病予防法の届出
制度が六月からでございますので、指定いたしましたのが六月でございましたので、その以前のは非常に数値があやしいので、法によりまする以降をとったわけでございます。これをごらん下さいますと、
昭和三十五年、昨年の三月までは累計、一月から三月まで八名でございます。一月一名、二月六名、三月一名、これが熊本県の
実績でありましたのが、本年は三十六年の右にありますように、そこにございますように、一月三十二名、二月二十九名、三月は、これは十八日現在までの数で十七名、合計いたしまして七十八名、対比いたしますと十倍に近い非常な発生率、こういうことになるわけでございます。それを棒グラフにいたしますと、次のページにございますように、三十四年は普通の
全国の率より低うございましたが、傾向といたしましては、夏に向かっての増加というのが三十四年、そこにきれいに出ております。ところが、昨年は全般的に低かったのでございますが、夏の多かった月は七月にぽんと出ておりますが、全体として
全国の趨勢ないしは昨年多発した県の趨勢をとらないで、一月以降ずっと不整の波で一向ふえないということで、七月にふえて、八月に落ちまして、いわゆるここで落ちる波を形成するものと思いましたところが、十月から非常な増勢を見まして、むしろ夏の五、六、七、八の趨勢が十月から始まって冬に半年移向したような形で現在に推移しておるわけでございます。ちょうど三十四年の夏の波の次の波が間を抜いて、ここに非常な高い波で一つの山を描き出した、こういう形でございます。
それからその次のページが先ほど言いましたように、これを発生率を普通疫学的にいう場合の人口十万対年罹患率に、これを三カ月の
実績を形成した場合に、これを
全国の率とそれから熊本県の率というのを対比いたしますと、
全国率は人口十万対、この冬の間の年に伸ばしますと、二程度でございます。熊本はそこにございますように、十七、八、ことに週によりまして二月には二十幾つという高い波にいきます。今落ち始めた、こういうような形でございます。これをさらに次のページ、六ページにございますように、発生の町別に昨年出たところにまた出ているところと、それから昨年出ないところにことし高率発生した、これを分けてここに掲げてございます。ここで見ますと、二つございまして、熊本市とかあるいは次のページに出ておりますが、八代市、それから人吉市という、人吉保健所管内というのがこれに当たります。大きな三市につきましては、市でつかんだために昨年もことしも相当出ている。こういう形でございます。ただし、これはさらに市の中を町別、これは地域別に分けますと、必ずしも同じところに重なって出ているというのではなくて、昨年出たところとは別のところに発生するという
状況も相当見受けられます。その他の村につきましては、かなり昨年出ておらなかったところに今年出ているというのが相当散見いたされます。いわゆる三十五年の方が棒が引いてあって、三十六年の方に三月まで出ているというのがここに出ております。こういうふうな工合でございまして、大づかみにいたしますと、九州の熊本県、ほかの県もそうでございますが、概して昨年の秋以前においては、
全国よりも発生率が低かったというところが秋から増勢になりまして、今年は
全国平均は非常に冬に向かって出た、しかもその
同一県内におきましても、村別に見ますと、昨年、一昨年という工合に、皆無であったところに新発生を見ている、こういうような
状況がうかがわれるわけでございます。
それからずっと飛んでいただきまして、九ページというところに今の発生の
状況の対比を地図に表わして、その熊本県の地図に表わしております。それでごらん願いますと、×印というのは、昨年一年かかって出した熊本県の総数でございます。熊本県全県下で一月から十二月まで一年かかって百十三名、それを×印、それを一名を一×といたしまして出たところを村別に一年間のを出しております。〇印は、今年のわずか八十日ほどの間に出ました七十七名の数を〇印で出しております。ここでこまかく言いますと非常に切りがございませんので、大まかに言いますと、先ほど申し上げましたように、熊本市、まん中は一年間に相当数出ております。そこに二十六名前年出ました。年間通じて出た。これがすでに三月間で十四名出ている。これが熊本市でございます。ただし、中のグラフは必ずしも重なっておらぬ、別な地域に出ているところが多い。同様なことが八代市、西の海側八代市、一番下の南にございます鹿児島県境にあります人吉市、これは昨年の年間五でありましたのが、今年は三月ですでに六名出ている、こういうような
実績でございます。
そのほかに、非常に注目いたすべきものは、熊本のここに川があるわけでございますが、この沿岸になるわけでございますが、東の方、熊本市から東の白水村というのがございます。これは昨年、一昨年出ておらぬところにすでに三月間に三名出ている。高森町も三名、久木野村もなかったところへ一名、蘇陽町というのが右下にございます。そこらのところがいわゆる新発生で、昨年、一昨年は全然出ておらぬために、四才、五才までおそらく未感染の、免疫のできておらぬものが多いと推定されるようなところでございます。それからその北側に行きますと、やはり洫水村というようなところ、それから大津町、これも昨年一年で一名がもうすでに二名というようなところ、それから西側の方、三名あるいは植木、有名なあの歴史的のところでございますが、植木もなかったのが一名出ているというふうに、大体熊本市の北側を横に帯状に昨年、一昨年出ておらぬかったところに出て、しかもこれは人口から推計いたしますと、この三名、四名とは言いますけれども、非常に高率に当たるわけでございます。この年代の子供の数から見ますと、三名自身が非常な高率になる、こういうふうなところでございます。南の方の地区では割合とそういうふうに全然出ておらなかったところまで発生したというのは少のうございます。帯状に特定なところにかなり傾向がある、こういうことがわかったわけでございます。その次のページ、最後のページの、図の5と申しますのは、これは、熊本県と、それから
全国の、
昭和三十四年の、これは年間でございますが、それと、今度の熊本県の多発の年令別の対比をいたしてみたわけでございます。そうすると、七十八名の熊本県の、白の方が熊本県の年令別でございます。この零才から始まりまして、一才が一番多い。それから二才、順次逓減いたしますが、ここの特徴は、三十四年度の、詳しくやりました
全国の総発生の年令別百分率に比べまして、五才のところ、六才のところ、ここで、熊本の方が高い。それから三才のところも高い。二才もやや高い。こういうことでございまして、これで見ますと、いわゆる過去の三十四年のときの
全国の大数計算による分布よりも、いわゆる今度の予防接種の対象になりました一才半、ちょうどこの一才に含まれますが、それをこえる二、三、五、六のところに相当分布しておるということでございまして、これは、先ほどの例から見るように、主として出しております熊本並びに熊本市の北側の帯状の地域が、過去において発生しておらない、従って、そのまま当時零才、一才の者が移行しまして、免疫のできないままに移行している率が高いであろう。そこに今度入ったために上がっておるということでございまして、これは、こういう地帯には、従って、高年令層まで、ある程度接種をしておかないと、今後危険である。こういうことになるわけでございます。
さような意味で、今回、この熊本と、それから大体同様な、数ははるかに少ないのでございますが、大分、それから宮崎につきましても、同様な傾向がございまして——今度
調査の結果でございますが、これは数が、二十一とか二十三でございまして、いわゆるこういう統計的な比較
資料にまでなりませんので、大体同傾向の地帯を見つけておりますので、これを一括いたしまして、山口県を含めて、この九州地区については、特別対策を至急やる必要があるということで、九州の方面防疫本部というようなものを作って、地域も遠いために、電話連絡その他の指示も非常に徹底いたしませんので、さようなものを作りまして、来たる二十日に、福岡において、関係の衛生部長の本部作りの初会合を催す。それまでに私の方から専門の担当官を常駐させまして、この特別対策の指揮に当たる。それから、熊本初めこの濃厚県は、県自体にも対策本部をこの際至急作る。これは、昨年北海道に夏作ったと同様なものを今から準備をしておく。こういうような対策を立てまして、綿密なこういうような対象ごとに臨時予防接種をいよいよ実行する。それによりまして、危険である五、六才までのところの万全の免疫を作っておく、こういうような方策を、今度の派遣の結果きめたわけでございます。昨日までに、関係の衛生部長を全部東京に招集いたしまして、打ち合わせも済みまして、いよいよ二十日までには全部発足する、こういうことにいたしたわけでございます。もちろん、そのためには、ワクチンの供給は、ことに重点的にこれはスムースに必要量を増す、こういうふうにする予定でございます。
それから、ごく簡単に北海道のことしのやはり派遣いたしまして
調査した結果を申し上げますと、北海道は、昨年の同時期までに二十一名でありましたのが、ことしももう同数でございまして、二十二名。二十一名が二十二名でございます。大体横ばい。ただし、地域別に非常に問題でございますので、詳細な
調査をいたします。昨年は、北海道を、南から北に向かいまして、いわゆる旭川を含むまん中の、道中央を縦走する濃厚地帯に、主として発生いたしました。千数百名を出したのでございます。ことしはその
状況がどうかということで、道の西と東に未感染地帯が残っているので、ここに多発するのではないかということを
調査の
目的にいたしまして
調査いたしました。現在まで二十二名のわずかな
状況でございますので、明白にその疫学的な関連はまだつかめておりませんが、ただ、概して今度は全道に非常に散発しておる。この二十二名は東の方にも西の方にもごく散発しておる、集中はしておらないということでございますので、ことしは、従って、昨年の濃厚流行地帯にはそれほど出ない。出るとすれば、むしろ東と西の両わきの方に出る可能性がある。こういうことで、北海道については、かなり全道にわたりまして免疫
調査を、子供の血液をとりましてそれぞれ抽出
調査をいたしました。そのデータも出ておりますので、これに基づいて、北海道についてもことしはかなり能率的な人工免疫をやろう、こういうような計画にいたしております。
ただ、予防接種の関係でございますが、熊本につきましては、この七十八名の発生と、すでに済みました予防接種の
状況を見ますと、昨年度の夏、いわゆる任意接種といたしまして配給したものが若干ございます。そのほかに、本年の暫定
措置によりまして、第一回目は一月下旬から始まりまして大体二月の上旬に終わる。それから第二回目接種は二月の下旬というよりも、三月の上中旬に二回目を大体終わった。約五万六千CCを配給いたしました。要請に基づいた分は全部出した、こういうことでございますが、これの実施率を見ますと、この施行率は大体八〇%ということでございます。これらの一月、二月に相当他の県より多発したにかかわらず、やはり実施率は悪い。で、今度だいぶ、県と多発した町村について調べたんでございますが、まだいわゆる公の方の機関のセンスというものは、それほど重大に思っていない。これは、
全国的なよその県との比較が、中におりますとわからぬせいで、あたりまえのような程度と思っておるわけです。外から、非常な、他と比べて特別に多いということに初めて気がつくというようなことでございまして、今度、従って、対策本部等を作って、他と違って非常に重大な
状況にその土地があるということを刺激もいたしますし、指導も厳重にいたしますので、これは上がる、こういうわけでございます。
従って、今回の熊本県の多発と予防接種の効力の問題は、予防接種の方がおくれておりまして、発生の方がそれを先行したので、効果は云々できないということで、今後まあ何らかの効果がある。それから熊本県の七十八名の患者は、いずれも今回の暫定予防接種あるいは昨年の任意予防接種をいずれも全然受けておらぬ者のみから出ております。ただ唯一の例外は、大分県に二名だけ、本年の予防接種を受けた者から発生した者が二名、予防接種関係で出ております。従って、これは免疫は全然できておらぬ。従って、潜伏
期間中に一回目の予防接種をやって発生したものと時期的に推定される、こういう
状況でございます。
北海道につきましては、暫定予防接種ではございましたが、二才半までこれを強制をいたしまして、北海道は、昨年にかんがみまして、三月までの暫定は
全国的には一才半まででございましたが、北海道だけは二才半まで特別承認で拡大をいたしまして実施をした。これが北海道の、あるいは増勢を今後押える上に非常に有効かと、もちろん四月以降は
法律改正により三才までは
全国的にいたす。それから特別地区には臨時予防接種もかねてやる、こういう予定でございます。