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政府委員(尾村偉久君) 第一点のなぜもっと早くからこの予防措置を、ことに予防接種による予防措置を講じなかったかという御
質問でございます。これはその
資料の三十九ページの点かと思いますが、ここにございますように、
昭和二十六年に四千二百名という高率な発生を見ましてからずっと三十一年に至るまで、むしろ減少の傾向にありまして、しかも当時諸外国の例を見ますと、日本の約十倍とか、十二倍というものすごい猛威をたくましゅうしました。むしろ日本のいろいろな条件があまりこれには被害を受けないで、だんだんと減少するのではないか、こういうような見通しが当時立てられておったわけでございまして、しかも当時三十一年くらいまでは予防接種がまだ世界的に研究中でございまして、まだ実施に至っておらない、こういうような
状況でございまして、
一般的な伝染病予防のやり方のみできた。ところが、三十二年を転機といたしまして、患者の発生は年々急に増加を始めたわけでございます。そこで、これはどうにもならぬというので、三十二年に当時の伝染病予防調査会に、どうもおかしげな傾向にある、この対策をどうしたらいいかということを諮りまして、それで伝染病予防調査会はまず第一に、今までこれは届出伝染病というようななまやさしい取り扱いであったのを、赤痢や腸チフスのごとく伝染病予防法による他の厳重な法定伝染病と同じ扱いをすべきがまず第一歩であるという答申を得まして、それに基づいて結局実施いたしますことにして、三十四年六月指定伝染病にいたしたわけでございます。と同時に、当時進んでおりました世界のソーク・
ワクチンの研究の成功に基づきまして、これも取り扱う。すなわち日本でも実施するということで、まずこれの輸入をした場合の検定をぜひいたさなければいけませんので、検定の能力の付与、それから国産も必要である。こういうような重要なものを外国品だけに仰いでおっては、もしとだえた場合どうしたらいいかというので、これの生産計画を三十三年以降立てまして、予研に逐次
予算を国費で盛っていただきまして、モデル・プラントを作り、それから検定施設を三十三年以来逐次整備したわけでございます。大体その進行の仕方で、三十五年くらいを頂点といたしました、この日本の再び増勢に変わりました年々二割ないし三割程度の増加に対するスピードに対してはちょうどこの態勢でいいであろう、こういう当時の学者の意見、それから
行政の方針を立てましてきたわけでございます。ところが、昨年の三十五年に一挙にして、その前年の二倍というような異常な発生を見ました。そのために予防接種液の製造計画、輸入計画も急激に歩調が合わなくなったわけでございます。御承知のように、昨年の夏以来、緊急措置、しかもそれはおくれおくれというような
状況でございます。従って、これを逆に言いますと、昨年からのこういう重大な変化に対する流行予測、その他がまあ少し間違っておったというか、あるいはこういう突発の大流行というものが、当時のすべてのデータでは予測できなかった。こういうようなことの結末でございまして、しかもいずれにいたしましても、こういうような大流行が出て、犠牲者がふえたということは、これはまことに遺憾なことでございます。そういうようなことで三十五年の予備費等による緊急措置、それから三十六年から最後の仕上げである
予防接種法の
改正、こういうものを正規に実施に移す、こういうことになったわけでございます。
それから第二点の、いわゆる先進国と称せられる国、ちょうど四十六ページにございますように非常に多いのでございまして、その四十六ページの
資料をごらん願いますと、たとえば最も激しいのは世界でも相当文化の進んでいるというデンマーク、これが今から数年前の一九五二年には人口十万人当たり百三十一人起こり、当時日本におきましては二・七人ということでございますから、五十ないし六十倍という濃厚な発生を見た。アメリカにいたしましても、当時は三十六名というやはり日本の十四、五倍、こういうふうな
状況であったわけであります。当時日本では、これはむしろ被害の少ない側で安心した側でございまして、国内の学者といたしましては、この小児麻痺というのは、発生した人には気の毒であるけれ
ども、大体千人に一人くらい発病するので、ですからほとんど生まれた子供が日本においては大体
最初からいろいろの環境から洗礼は受けておる。しかし、日本人で発病するのは千人に一人で、九百九十九人までは軽い感染を受けて、何ら臨床症状を起こさずに、むしろ免疫だけ獲得する。ちょうど今言っておる生
ワクチンによる免疫効果のようなものを日本の
状況では自然的に受けておる。それで、万々一、千人に一人くらい体質の弱い者が発病する。ところが、アメリカ等では文化が進んでいるために、環境衛生等が進んでいるために、生まれてからごくわずかしか洗礼を受けない。結局、洗礼を受けるのは、だんだん社会に出る、学校に行くとか町中を非常に毎日出歩くという
状況になって初めて濃厚な洗礼を受けて、それによってしか免疫を受けない、受けるチャンスがないので、洗礼を受ければ濃厚に受ける。それで年長者に爆発的にどんどんふえる、こういうような学説の見解でございます。ルーズベルト大統領もあれはたしか大学卒業当時に初めて感染をした。そういうような学説に今までなっておったわけでございます。従いまして、学説から言いますと、環境衛生がよくできておる所は年長になって起こる。その場合に従って子供のときよりも洗礼のチャンスが何倍もある、こういう場合であると、その国には患者の発生数はずっと多くなる、こういうことでございます。逆に、
最初から環境が悪いところは起こらない、ただし、起こった場合には、そのごく身近な周辺には環境が悪いために伝播の可能性は非常に濃厚である。従って、そういう所に未感染の者がもし足を踏み入れると、これは的確に起こるということになっておるわけでございます。従って、昨年の日本の流行の地域を見ますと両者がございます。初めて東京などからきた子供の周辺が非常に環境が悪いために同じような年配の子供に起こったという旭川地区の不良衛生地区、これは今の後者の問題で、ございます。それから
割合モデル地区になっておるところで集団的に発生したのはやや年令が高い方に傾いておる。それはすなわち少し文明国的な傾向を持った発生の仕方、こういうような
実績が今のところ出ております。