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説明員(辻英雄君) ただいまのお話は、
一般的には
中小企業全体の争議の
状況が第一点かと思いますので申し上げたいと思いますが、三十五年の六月から十二月までに発生しました
企業全部を含めました争議件数は約千百六十でございます。そのうち
従業員が三百人
未満の
中小企業において発生しましたものが約五百八十でございまして、
総数の約半分を占めておるわけであります。全体の争議の件数は、
企業全部を含めてみますと、最近全体としては
減少の傾向にございますにもかかわらず、
中小企業では逆に
増加の傾向にあるということは非常に
中小企業がやはり問題が多いという点は御指摘の
通りかと思います。争議の
内容についていろいろ特徴点もあろうかと思いますが、従来
中小企業の争議は消極的要求と申しますか、
賃金引き下げの反対あるいは首切りの反対という争議が一昨年あたりまで非常に大きなウエートを占めておりましたのが、最近の
経済事情の好転あるいは労働組合の力の強くなった点もあろうかと思いますが、そういう点も含めまして、消極的要求よりも積極的要求がふえておるというのが最近の争議の
内容的な特徴でございます。
なお、争議に関連いたしまして、
中小企業全体になぜかような争議が多いのかというのが御指摘のように基本的な問題でございますが、根本的に見ますと、やはり日本の現在の
経済構造に非常に格差があって、その結果といたしまして、
中小企業の労働
条件が大
企業に比べますとよくないということが
一つの基本的な原因であるということは確かにさように申せると思います。
第二に、やはり
中小企業の
労使双方が
労使関係のあり方というものに未成熟でございまして、なれない、そのためにいろいろ無用なトラブルが起きやすいという点も
一つの
中小企業全体の争議の特徴であろうかと思います。それらの点、いろいろ基本的に問題がありますが、私ども
労政関係を担当いたしておりますものといたしましては、根本的にやはり
中小企業においても、近代的な
労使関係というものが
労使双方によって理解されるようなふうにしていきますことが当面の問題であるというように考えまして、すでに一昨年あたりから特に強くいたしまして、そういう旨の通牒等も出しました。昨年はことに
国会等でも
中小企業のそういうことのための
補助金を少額でございますが、約二千四百万ほどちょうだいいたしまして、これによって、この当面の紛争の合理的な処理と同時に、基本的な
労使関係の教育のためのいろいろな措置を講じておるというのが現在の
段階でございます。従って、具体的に争議が起こりました場合に、
労政機関が直接に介入するということは、これは十分に警戒し、自戒しなければならないのでございますけれども、大
企業の場合と違いまして、
労使だけで解決することが非常にむずかしい場合が多うございますので、向こうの方の御要望等に沿って、できる限り争議を円満に合理的に解決するように、やむを得ないものにつきましては、なるべくすみやかに労働
委員会の揚で解決をするというような方法で、当面の問題の処理としては指導をいたしておる、かような概況でございます。
なお、全体として、よくなってきたか、悪くなってきたかと申しますとむずかしい問題かと思いますけれども、日本全体の
労使関係の中で、
中小企業の面がおくれておりますのが、だんだんにそういうところの問題点が表に出てきておるというのが
一つの現象でありますけれども、同時に、一昨年以来、一昨年は特に御
承知の主婦と生活社でありますとか、田原製作所でありますとか、長期かつむずかしい争議があるいは時には非常に暴力的な行為等も出まして、遺憾な争議も多かったのであります。最近は比較的全体としまして、
経済の好況もありましょうしあるいは
労使が自覚してきた点もあろうかと思いますが、全国的に見ますと、非常に社会的な不安を起こすような争議は
一般的には減りつつある。ただ、先ほど先生の御指摘のありましたような、たとえば病院でございますとか、そういうような
労使関係がまだ近代化されていない点が強く残っている分野でまだまだ困難な争議というものが起こっているというように概況を私ども判断をいたしております。