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説明員(尾村偉久君) お手元に
資料を差し上げてございますが、今夏のポリオ流行の第二次緊急
対策という表示のもので、そこに去る六月二十一日に
厚生省で
決定いたしまして、生ワクの緊急投与をいたすことにいたしました
対策の要領をそこに書いてございます。その前に、ここに至ります本年のその後のポリオの流行状況をごくかいつまんで短時間に申し上げます。三枚目の表を
ごらん願いますと、そこに本年の七月七日までの患者数と、それから昨年の同時期七月九日まで、これが二日ズレのありますのは、週日のズレです。ずっと週報をとっておりますから。一昨年、三十四年の七月十一日までの対比を出してございます。一番下の計で申し上げますと、一番右の欄の三十四年七月十一日現在、この年は、年間を通じまして三千名も出ました年でございます。そのときの七百五十八名に対しまして、昨年一千五百二名、本年は一千四百十八名、昨年より現在におきまして約百名少のうございますが、一昨年に比べますと、約二倍弱ということで、依然として昨年の大異常流行年と同様のテンポで進んでいる、こういう状況でございます。ただし、この内訳を見ますと、一番下の欄にございます九州各県、特に佐賀、長崎を除きまして、熊本、大分、宮崎、鹿児島とそれからその上の欄にございます福岡、この五県とそれからすぐ関門をへだてております山口県、この六県が非常な異常な状況にございまして、昨年と比べていずれも多い。特に熊本が昨年の三十七名、一昨年の二十一名に比較いたしまして、二百三十七名という十倍に近い数を出しておる。それから福岡県が昨年の二十六名、一昨年の三十九名に対しましてほぼ二百名という、この両県が最も異常な状況でございます。これと対比いたして非常に特徴のございますのが、一番上の北海道が一昨年の二十一名に対しまして昨年の現在百六十三名というこの年の五月から流行の始まりました相当な時期に達しておったのでございますが、本年は昨年の三分の一以下、約四分の一というような状況で、本年はそれほど異常な状況でないというので、昨年の北の端から本年は南の果てに飛んだ、しかも昨年は五月以降が主としての流行でございましたのが、本年は二月ごろから熊木を中心にいたしましてはやり出した、すなわち大体温度十度から十五度の時期に、本年はこの付近が猛威を発揮し出したという特殊な結果から見ましても、それからこの北から南にわずかな期間を経て流行が移動したという特徴を持っておるわけでございます。
それから次の四枚目のページの第一表というのが左にございます。これはただいまの表と比べまして、二週間以前の表でございます。要するに、週間発生、二週間にどれだけ出るかというのの対比のために出したのでございますが、前の千四百十八名に比べて二週間以前が千百七十四名、すなわち二週間で約二百四十名の増数、一週間で百二十名ということでございますので、大体一日に十六、七名の発生を見ておるということでございまして、やはりことしに入りましてから最近の週間発生はもちろん最多になっているわけでございます。一日の発生患者から見ますと、昨年ほどではございませんが、相当な異常流行を見ておる、こういう状況でございます。でしかも特徴といたしましては第二表にございますように、先ほど申し上げました山口を含みました九州
地方六県、この六県の小計がちょうど六月二十四日、左の一表と同じ週に五百九十六名、全国当日千百七十四名のちょうど半数以上を占めておるわけでございます。他の四十県は従って半数以下ということで、非常にこの六県に片寄って異常な状況にある。昨年北海道が多数出たと申しても、やはり千五百二名中の百六十三名でございますから、これはほぼ一割の状況でございますが、今回はかくのごとき非常な
地域的な集約性を持っておるという非常な特徴を持っておるわけでございます。その下に、念のために四十県の中で、特徴のあります昨年出ました北海道との対比、北海道は本年はこの六月二十五日のときの比較では半分、それから岩手県が昨年年度間通じましては特定のごく小さい部落
地域に多発をいたしましたが、このときにはまだそれを出ておらずに、しかも岩手県全体としては昨年の三倍近いという特徴を持った
ところでございます。東京は昨年とほぼ同数、現在もほぼ同数でございます。しかし、一昨年と比べますと三倍というテンポを持っておるわけでございます。ほぼこの六県を除きました他の四十県の
一般の中でこういう三県あたりが特徴を持っております。
あと宮城県というような、あるいは群馬県というようなごく小部落に若干数多発しているというごくわずかな特徴を持っておりますが、他はあまり特有なことがなく、昨年のほぼ半数近いテンポで進んでおる、こういうことでございます。
その次のページの五ページをお開き願いますと、これが従来しからば昨年と違う点は、本年の一月以来六カ月以上一才半未満には
予備費による暫定
措置で注射をし、さらに四月以降は一才半以上三才まで、法の改正に基づきまして拡大して法定のソークワクチン注射をして参ったのでございます。とれとの関連が昨年と対比されるわけでございますが、この接種をした者としない者とを分けて、患者発生がどうなっているかということを、これは非常に手数のかかる
調査でございましたが、一応その特徴のある熊本以下四県についていたした
資料でございます。
そこでありますように、熊本県の場合には三月終わりまでに接種を二回以上やった、六カ月ないし一年六カ月の児童、これは一番最初に暫定
措置でやった者、これが二万二千五百名ございまして、その中からの六月までの発病者が八名、
ところが、いろいろな事情で受けなかった者、これが一万二千五百七十名ございます。これから三十一名、すなわちこれを対比いたしますと、罹病率は熊本におきましては、接種完了者は三十五名、人口十万対三十五名、一方は二百三十九名すなわちほぼ八倍、八分の一程度に罹病率が落ちております。北海道の場合は同様な分け方をいたしますと、やった者からはこの六月までには発病皆無、やらなかった三万七千名からは十名出ている、これは二十六、こういうことでございます。それから岩手県は同様にやりました四千三百名は、ここは少しおくれておりまして、従って三月までに終わった対象者は少なかったのでございますが、これはゼロ、それから当時しなかった者で六月までに発病した者は四名、十七ということになっております。それから今非常に出ております福岡県でございますが、これは二回以上完了者、患者総数が九十九名のときの五月末までの総計でございますが、これで見ますと、三才未満の者で二回以上やりました者で出た者が九名、一回だけやった者から四名、全然未接種の者から五十五名、六十八名というのが全体、それからそれの上の年令と六カ月未満の者は、これはいずれもやっていないわけでございますが、これからは一回完了からは二名で、接種しない者からは二十九名、合計いたしますとほぼ百名、九十九名、その中で一回以上やりました者が十五名、全然やらない者から八十四名、こういうことでございまして、一回ないし二回でもすでに相当な効果を現わしておりまして、十倍から二十数倍の罹病率の低下、こういうような状況になっておると思います。
それからその次のページでございますが、六ページ、これが週間発生の疫学的な移動でございまして、一番上の点線、高い山の点線が、昨年以前十カ年間の——十回週があるわけで、同じ週が十回ございますから十週でございますが、その中で一番高い週間の発生をずっとつないだものが、一番上の点線でございます。それから一番下の点線は、十週ずつございます中の一番低い週をつないだものが一番下の点線、これの中央値をとりましたのが過去十年間のいわゆる平均値といいますか、それがまん中のぎざぎざの点線でございます。これに対して本年の週間発生がどうなっておるかといいますと、実線でございまして三十六と書いてある、これが一月以来過去十年間の中央値を上回りまして、ときどきたとえば七、八週目に最高値に達して、その後大体ほぼ中央値と最高値のまん中にきておったのでございますが、五月末から過去十年間の最高値を上回るような週間発生を見出した、こういうことでございまして、これが五月末からの傾向でございまして、現在に至るまで先ほど言いましたように週間百二十名の、ちょうど左の目盛の一〇〇の
ところを上回って続いているわけでございますので、これは過去十年間を飛び越えて発生している状況でございます。この六月に入りまして一そう異常な状況、ことに福岡を中心に異常な状況が継続しているという
資料でございます。
七ページ、最後のページは、これは年令別に、しからばどういうふうに発生しているかという数字でございまして、法律の対象になっておりますソークワクチンを二回までやった者が、零才、一才、二才、ここまでございます。三十四年、すなわち異常流行でなかった、日本の常態における年間の患者分配率が在の欄でございます。三十四年、全国で今の接種をやるべき年代、三十四年は何もやっておりません。これが七一%までがいわゆる二才以下、三才未満でございます。ここに出ておる。
ところが、本年の今半数を占めております九州方面、これの六県の数の分析から見ますと、二才以下、すなわち三才未満は六三%、ほぼ普通の日本の、何にもやらなかったときと比べて一〇%患者分配率が落ちておる。これは先ほどの
資料でおわかりの
通りに、一月以来のおくれはいたしましたが、予防接種の効果が相当に現われてきておるのを表わしておるわけでございます。従いまして、この予防接種の対象になっておらなかった三才、四才、五才、一応六才未満という、学校へ行く前の
ところでしぼりました八七・九%、これが普通の発生状況でございます。
ところが、本年の九州では八五%までということでございますので、この三才から五才までの年令階層の合計が本年はふえておる。昨年はこの三つを合計いたしますと一九%になりますが、本年はその部分が約二三%に増加しておる。ここに患者分配率がある程度ふえておる。それから六才から九才までに至りますと、これはほとんどふえておらないのであります。六才以降、九才までの
ところ、九三%が九四%になっておるというわけで、若干ふえております。しかし、それ以上の者、すなわち小学校の五年以上、十才以上になりますと、平常の年が、ここから先は六・五%を占める。全患者の六・五%が十才以上、ずっと高年令まで、全体から見ますとわずかな数でございますが、本年はそれがさらに減りまして、二・四%ということになります。いわゆる年令の移動という部分は、十才以上には少しも及んでおらない。十才以上の発病数は減っておりますが、いわゆる高発年令である三才から九才までの予防接種をやっておらぬ対象の部分にふくれておる。そのふくれた部分だけが、接種をやりました二才、一才、零才の階級で約一〇%減少しておる、こういうことでございます。これがございますので、今般の予防接種法に基づくものが全然間に合わない。ことに六月に入りましてからの異常流行の様相から見まして、三才から特に五才までが一番ふくれておりまして、何らの免疫を受けておらぬここに重点を置く。さらに六才から九才までの
ところにおきましては、流行の兆のある
地域に対しては、これを相当に強くやる。それと二才未満でやってない者はもとよりのこと、やっておりましても、まだ一回で今に達している者、二回やったがごく最近二回が終わった者という者は効果が不十分であろうというので、これは
地域の特殊性もございますが、ほとんど全部が希望するということで、対象とする、こういう状況でございます。
以上のようなことでございますので、先般の法律改正のときにいろいろ御
説明申し上げました当時は、こういうような当時のデータ、それから伝染病予防
調査会の流行見込みというものを徴しまして、七割一分を占めておる三才未満にことしはとりあえずやれば、全国的にはまず相当に減少し得る。特殊流行を来たさない、こういう見込みでやったのでございますが、菌の関係もございましょうし、また、気候の関係等もございまして、その点は確かに有効に働いておりますが、全国的なことしの特徴に対しては、必ずしも十分な
防疫の
対策にならないということで、急遽千三百万人に及ぶ生ワクの追加投与というものを踏み切りまして、
大臣が御発表になった
通りで、すでに十二日に千万人分が到着いたしまして、さらに数日を出ずして残りの三百万人分も到着し、全部をこの七月二十日ごろから数日ないし十日のうちに全国的に投与いたしまして効力を発揮させよう。これによりまして、八月以降の発生は相当かなり大幅に防遏できる。ことにそのほかにすでに三十五万人分の検査済のものを、流行
地域であります福岡、熊本にはもうすでに六月中に投与をいたしまして、これは防遏の目的をもちまして試検投与を相当量やっておりますので、これも効果を今現わしつつあるということで、これと相待ちまして、今後相当有効な
防疫ができるだろう。こう存じている次第であります。